悪は滅びずそして善は死なず~映画・妖怪人間ベム(亀梨和也)
人類の歴史は血塗られている。
今もパリは血にまみれている最中である。
愚かな行為こそが人間の生業と言えるだろう。
正義は悪の一種であるので振りかざせば悪を呼ぶわけである。
人間の正義という悪に立ち向かい善を為し得るのは・・・不死身の妖怪人間だけなのだ・・・。
なにしろ・・・彼らは正義の剣を抜かないのである。
悪を封じるのは無抵抗の犠牲だけなのである。
悲しい話です。
で、『映画 妖怪人間ベム(2012年劇場公開作品)』(日本テレビ20150109PM9~)原作・アサツー ディ・ケイ、脚本・西田征史、監督・狩山俊輔を見た。キッドのブログ休眠中の連続ドラマの劇場版である。語れなくて残念だったドラマだったので劇場版のオンエアを待ちかねていた。(金)は「怪奇恋愛作戦」と「山田孝之の東京都北区赤羽」のテレビ東京の深夜二本立てが快調にスタートで・・・どちらも一同爆笑の完成度なのだが・・・特に緒川たまきのミニスカートでスキップ・・・殺す気満々の金曜日なのでもう少し様子見である。各曜日が出そろった所で谷間が発生するかどうか・・・でございます。
古代のバビロン帝国の地では・・・この世のはじまりは原始の水によるものとされている。
ティアマット(苦い水)とアプス(甘い水)が交わり世界が生まれたのである。
人間はティアマットから生まれたとするものとアプスから生まれたとするものはそれぞれの正しさを争ったという。
それぞれが・・・両者の交わりという考えを想いつかないのが人間の愚かさを物語る。
生物学者・緒方晋作(柄本明)は「生命を生み出す水」の研究中に絶命する。
完成寸前だった緑色の液体から分離したティアマット(悪の成分)は緒方博士の死体と融合することで人間として蘇生する。
名前のない男の誕生である。
残されたアプス(善の成分)は分裂を繰り返し・・・純粋な善の結晶として三体の妖怪人間となる。
名前のない男は緒方博士の体内に残ったアプスを取り入れているために純粋な悪とは言えないが極悪の超人となっていた。
一方でアプスのみの妖怪人間は・・・心の美しさとは裏腹に醜悪な容貌を獲得する。
人間になるためには・・ティアマットを体内に取り入れる必要があるが・・・悪に染まることをためらうのが善なるものの性質なのである。
妖怪人間となったベム(亀梨和也)、ベラ(杏)、ベロ(鈴木福)の三人は・・・ティアマットを放出し、人間を悪に染める名前のない男との軋轢の果てに・・・人間を守る存在となることを決意したのだった。
しかし・・・異種に排他的な人間たちと距離を置くために孤独な旅を続けるのである。
妖怪人間であることを人間に知られると「モンスター」として排除される宿命である。
妖怪人間の個性としてベムは男性的に、ベラは女性的に・・・そしてベロは少年として成長している。
個性的ではあるが・・・三人は「人間に憧れ、悪に染まることを恐れる亜人間」であることにおいては同種の存在である。
三人は懐かしい街にやってくる。
二十世紀の後半にしばらく過ごした海辺の街・・・。
そこで三人は名前のない男に悪に染められた人間の魔手から・・・一人の少年を救っていた。
そのために正体が晒され・・・警官に追われて街を去ったのである。
歳月は流れ・・・怪異の記憶は遠くに去っていた。
ベロは足が不自由な少女・上野みちる(畠山彩奈)と出会い、恋心を抱く。
交通事故で足に障害を残したみちる・・・事故はみちるから母親の小百合(観月ありさ)を奪っていた。
亡き母を想い・・・嘘の日記を綴るみちる。
日記の中で母はみちるを優しく見守るのだ。
街には大手の製薬会社の本社があり・・・奇怪な現象により社員が命を落していた。
やがて・・・ベムたちは・・・森に潜むモンスターの存在に気がつく。
モンスターは死んだはずの小百合だった。
小百合の夫であり・・・みちるの父である上野達彦(筒井道隆)はかって・・・ベムたちが救った少年だった。
彼は事件の現場で緑色の液体を浴びた植物の葉をお守りとして持っていた。
それはけして枯れない葉だったのだ。
製薬会社の不正行為を暴き、告発しようとした達彦は社長の加賀美(中村橋之助)によって口封じのために殺されかかったのである。
そのために・・・小百合は死んだのだが・・・葉によって蘇生したのである。
しかし・・・ティアマットをとりいれた小百合は・・・憎悪を制御できずに怪物化してしまうのである。
娘を傷つけることを恐れた小百合は森に身を隠したのであった。
怪事件の捜査にやってきた妖怪人間と旧知の間柄である夏目章規刑事(北村一輝)は事情を知ると・・・妻の菜穂子(堀ちえみ)や娘の優以(杉咲花)、緒方小春(石橋杏奈)らの緒方博士所縁の人々を招集する。
障害を持つ娘が運動会の徒競走で・・・健常者と一緒に走る姿を応援しようと小百合に呼び掛けるのだった。
健気なみちるの姿に涙する小百合。
小さな幸せの一時は・・・しかし・・・保身に走る加賀美社長によって壊される。
上野一家を殲滅しようとした加賀美社長。
小百合は家族を守るために完全なるモンスターと化す。
加賀美社長の命を狙うモンスター小百合。
しかし・・・それを制止するベムだった。
「化け物・・・」と命を救われても感謝しない社長。
「そんな奴、捨てておけばいいじゃないか」と反発するベラ。
「俺は悪くない・・・少しの犠牲で・・・多くの人が助かるのだ」と社長。
「犠牲になる人の痛みを想ってください」と告げるベム。
そして・・・三人は・・・モンスターを葬るのだった。
あの日と同じように警察がやってくる。
「悪を見過ごせば・・・人間である意味はない・・・」
悪の力に怯えてすくんでいた達彦は勇気を取り戻すのだった。
三人の妖怪人間は・・・何も知らない警官たちを飛び越えて闇に消えるのだった。
悪(ティアマット)と善(アプス)の戦いは・・・世界の終焉まで続くからである。
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