がんばれ!生徒会役員諸君!叛旗を翻せ!シカタナイ星に・・・(広瀬すず)
雅なお方は父に告げた。
「革命分子は粛清するべきではないか」と。
雅なお方の父は告げた。
「粛清は粛清を呼ぶ。和をもって貴しを貫くのだ」と。
この国のぬるま湯のような暮らしが世界から羨望される由縁である。
あまりの豊かさにとんでもない無頼漢さえ許されるこの国。
天変地異さえも力に変えるこの国。
この国で革命を叫ぶことは愚かだが・・・たまには愚か者たちに光があたってもいいのではないか。
もちろん・・・あくまでそれがコップの中の革命だったとしても・・・。
で、『学校のカイダン・第2回』(日本テレビ20150117PM9~)脚本・吉田智子、演出・南雲聖一を見た。階級闘争において下位者の上位者へのアプローチは二つである。一つは肯定で一つは否定だ。たとえばスポーツにおいて上位者を肯定することは基本である。上位者の力量を肯定することは実力の向上において不可欠である。同時に勝負の世界では上位者の弱点を研究し、上位者の存在を否定しなければ下剋上は果たせない。弱肉強食のルールではこのバランスが大切になる。肯定だけの追従者はいつまでたっても奴隷であり、暴走する反逆者は抹殺される。革命とは天使のように大胆に悪魔のように細心に平和共存の世界を転覆させるものなのだ。
私立明蘭学園高等学校という幻想空間は・・・ある意味で落ちこぼれの吹き溜まりである。
学園を牛耳るプラチナ8は・・・言うならば上流階級からの脱落者なのである。
なぜなら本当に有能な上流階級の子弟は・・・この学園には入学しないのだ。
学園を援助する経済的に豊かなプラチナ8の親たちは不憫な我が子のための揺り籠を構築しているわけである。
社会に出れば喰われるしかない弱者に・・・せめて学園の中だけでも貴族的な気分に浸らせてあげたいという親心である。
誉田蜜子理事長(浅野温子)はそのお目付け役なのである。
だから・・・学園で問題を起こせば・・・自分自身の名誉に傷がつくという基本さえできないおバカなお坊ちゃん、お嬢ちゃんを管理しなければならないのである。
プラチナ8が自分自身が落ちこぼれであることから目をそらすために・・・玩具として与えられたのが・・・落ちこぼれの中の落ちこぼれである七人の生徒会役員なのである。
このドラマは特権階級の八人と・・・大多数の平民・・・そして七人の貧民で構成されている。
実は貧民の八人目は・・・学外にいて・・・明らかに異常者なのである。
カイダンの怪人・・・雫井彗(神木隆之介)が本当に車イスが必要な身体障害者なのかどうかは明らかではないが・・・貧民に特権階級への反逆を唆すのは・・・どうやら、傷だらけの制服に込められた怨念があるらしい。
実際の世界ではこうした怨みがましい知識階級が・・・民衆を巻き込んで不幸をまき散らすことは珍しいことではない。
だが・・・ここでは虐げられたものの逆転勝利を楽しむのが一興なのである。
奴隷が自由を求める気持ちも社会の原動力に他ならないからだ。
それがなくては・・・社会はより良いものにならないんだもんね。
もちろん・・・本当のゲリラなら・・・特権階級に表だって勝負を挑んだりしない。
陰湿に大衆を扇動して血の雨降らさないとね・・・。
生徒会長・春菜ツバメ(広瀬すず)は窮地に陥った生徒会副会長の油森哲夫(須賀健太)を救うためにプラチナ8の悪事を暴く弾劾スピーチを敢行する。このために油森は強制された自主退学を免れ・・・ツバメの最初の革命同志となるのだった。
しかし・・・このことはプラチナ8の女王・麻生南(石橋杏奈)の逆鱗に触れ、策士である香田美森(杉咲花)にツバメ抹殺を指示するのだった。
何故か通学バスが故障し・・・代替車両のレンタルが必要となる。
物凄く自主運営しているらしい生徒会はレンタル料金を預かることになる。
生徒会会計の脇谷玉子(清水くるみ)は学校から支出された十万円をツバメに放課後まで保管するように頼むのだった。
十万円は・・・金庫に入れるよね・・・普通などといってはファンタジーは楽しめません。
いつもは弁当持参のツバメだったが食堂で「特別ステーキセット」(五百円)を食べようとして制止される。
限定八食は・・・プラチナ8専用だったのである。
この学校は・・・プラチナ8が学園生活を楽しむために・・・運営されていると玉子はツバメに説明する。
すべての生徒会予算はプラチナ8のために使われているのだった。
「なんじゃ・・・そりゃ・・・」と転校してきたばかりのツバメは驚くのだった。
「だって・・・この学校はあのおバカな八人の裕福な親の方々の寄付で運営され・・・私たちはそのおこぼれでただで勉強できるのよ」
「どんだけ・・・親バカなんだ・・・」
もちろん・・・放課後までに・・・十万円は消えてしまうのだった。
「責任をとれ・・・」と何故か・・・生徒会役員たちに追及されるツバメ。
役員による賛成多数のリコールで会長職を解任されてしまうのである。
「まんまと・・・敵にしてやられるなんて・・・本当にアホだな」とカイダンの怪人。
「敵に・・・」
「パンツ見えてるぞ」
「・・・」
お茶の間には見せてくれないのか。
「まずは・・・身の回りの観察をしろ」
怪人に命じられ生徒会役員を尾行したツバメは・・・紛失した金が玉子から美森に渡されるのを見て衝撃を受ける。
生徒会役員たちは美森から命令して共謀して紛失事件を仕組んだのだった。
やがて・・・ツバメは役員たちの私生活を覗き見て・・・追い詰められた彼らを知る。
会計の玉子は・・・幼い弟たちの塾費用を稼ぐために学校では禁止されたアルバイトをしていた。
中華料理屋の息子の御手洗いるまは放課後、店の手伝いをしている。無事に高校を卒業して親孝行がしたいのだ。
書記のハタロウ(藤原薫)はトランペッターであり・・・学園内での演奏活動を続けるためにはプラチナ8の許しが必要だった。無能な彼らは才能あるものを憎むのである。
同じように広報の轟メガネ(柾木玲弥)は校内でマンガ家修行をするために・・・チョロリことちひろ(加藤諒)はロボット研究のために・・・プラチナ8の嫉妬から逃れる必要があったのだ。
「だからって・・・私を裏切るなんて・・・」
気持ちを確かめるために玉子の家を訪れたツバメは開き直った玉子の言葉を聞く。
「自分を守るためには・・・他人のことを庇う余裕なんてないの」
公園のブランコに揺られて玉子は告げる。
ブランコは時計の振子。
ブランコはタイムマシーン。
しかし・・・幼い頃の自由さを取り戻すことはできない。
ツバメはそれ以上、玉子を責めることはできなかった。
翌日、事態はさらに悪化する。
お金を持った玉子の弟妹の写真が素晴らしいインターネットの世界に流れ・・・窃盗犯として玉子が警察に通報されたのだった。
国家権力を導入したのは美森である。
事情を知りすぎた生徒会役員を一掃する陰謀ごっこのためである。
そんなことをしても学校の名誉が傷つき・・・自分たちが損するだけだ・・・という計算はおバカさんたちにはないのだった。
事が公になれば・・・おバカさんたちのバカ親に責任を追及されるのは必至の学校側は対応に苦慮する。
玉子は・・・このままでは犯罪者になってしまう・・・とツバメは告げる。
「ごめんなさい。すべては私の悪戯です。お金が紛失したことになれば・・・生徒会長を辞めることができると思ったのです」
この言葉に乗った蜜子理事長兼校長は警官に対処して・・・事態を穏便にすませる。
なかったことにしてもらったのである。
「なんであんなこと言った・・・」と怪人。
「玉子ちゃんを助けたかったから・・・」とツバメ。
「しかし・・・このままでは同じことが繰り返されるぞ」
「どうすれば・・・」
「ゲリラの村を作るんだよ」
「村を・・・」
深夜の生徒会室に召集された役員たち。
「シカタナイ星人の皆さん・・・こんにちは・・・私がシカタナイ教の教祖です」
「・・・」
「ここには・・・みんなの夢があります。復活したトランペット。ロボットの試作品。両親に食べさせたい御馳走のレシピ。書きかけの漫画原稿・・・」
「うわあ・・・返せ」
「私には夢があります。それはみんなの夢を叶えること・・・」
「・・・」
「一人の小さな手・・・何もできないけど・・・」
「いつの時代だよ」
「それでもみんなが手と手を合わせれば何かできる」
「え・・・君と握手を・・・」
男子生徒会役員は全員・・・魔女の軍門に下ったのである。
「この平和な国では・・・団結して・・・法を犯さなければ何でもできるのです。サリンを撒いたりしなければいいのです」
「一体・・・何を・・・」
「さあ・・・自由を求めるこの旗の元へ集いなさい」
流れで集う七人だった。
ツバメが救った生徒会副会長と会計。そして・・・四人のツバメの手を握りたい男子である。
「一体何を・・・」
「ステーキナイフをステーキに刺すのです」
「刺すのは・・・フォークなんじゃ・・・」
翌日・・・団結した生徒会役員一同は・・・プラチナ8よりも早く・・・ステーキセットの食券を購入するのだった。
デブのいるまは二人前食べた。
革命の狼煙はあがったのだ。
赤信号、みんなで渡ればこわくないは革命の基本なのである。
束の間の勝利に湧く七人の革命戦士たち・・・。
しかし・・・彼らはまだ知らない。
食いものの怨みの恐ろしさを・・・。
とにかく・・・8VS7+1の対立構造が構築されたのだった。
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