拝啓、ナイチンゲール様、頭の中がまっしろなわけで(堀北真希)
本来、ドラマをレビューするのは・・・楽しさを分かち合いたいという意味合いがある。
もちろん・・・記録的な要素もある。
そして・・・おこがましいが・・・一種の文学的挑戦でもある。
なによりも妄想の表現の場だ。
だが・・・時にはネガティプな批評を展開したくもなる。
そういう意味で・・・これ以上ない作品になりつつあるな。
なにしろ・・・どこから修正するべきか・・・手遅れな感じにヤベエ作品になっているような気がする。
誰か・・・助けてください・・・という叫びが聴こえるよ。
で、『まっしろ・第4回』(TBSテレビ20150203PM10~)脚本・井上由美子、演出・今井夏木を見た。まず・・・脚本的には「昼顔〜平日午後3時の恋人たち〜」がそこそこ視聴率的な成功をおさめているところがひっかかっている。恋愛というよりも・・・「人妻の性」という古典的な主題が・・・お茶の間ビジネスとして成立したわけである。プライベートでも人妻となった上戸彩と・・・ずっとよろめき続けているような吉瀬美智子のコンビネーションが抜群だった。その影響が・・・無印ナースの堀北真希と看護師長の木村多江のコンビに濃厚なのである。単純な換骨奪胎なら・・・「不倫の道」を「ナイチンゲールの道」に置き換えて師弟愛を描いて行くのが筋なのだ。
しかし・・・「人妻」から「ナース」に置き換えたのに恋愛要素を前面に押し出そうとしたためにおかしなことになっていると断言できる。
なにしろ・・・人妻と違ってナースは人命を預かっている聖職なのである。
恋なんかしてる場合かってなっちゃいますから・・・。
「ナースのお仕事」が前提にあれば・・・恋愛してもOKなのである。
しかも・・・基本線は・・・ドクターとナースが定番なのは言うまでもない。
ところが・・・ここで「男はつらいよ~フーテンの寅」的な路線の選択である。
はっきり言って・・・渥美清をなめんなよなのだ。
少なくとも・・・イケメンの弟は必要だろう。
つまり・・・ドクター孝太郎(柳楽優弥)は弟であるべきなのだ。
そして・・・病院は個人経営のこじんまりしたものでいいのである。
「お姉ちゃん・・・あの患者はやめといた方がいいよ・・・」とバカな姉ナースを心配して見守るポジション。
佐藤センター長(石黒賢)と看護師長(木村多江)はおいちゃんとおばちゃんで・・・できの悪い姪の朱里(堀北真希)に手を焼くのである。
「私がいたんじゃ名医になれない・・・わかっているのよ弟よ・・・」でなくちゃ・・・。
ま・・・それはそれとして・・・ここにナースセンターを大奥と見なす主題が付加される。
その場合は将軍が必要である。将軍は唯一無二の存在だ。それを「患者様」にするのはかなり無理があるのである。もしもそこにこだわるなら入院患者一人という超特殊な設定にしなければならない。
あるいは病院長の寵愛を奪い合ってもいいが・・・なんじゃそりゃなドラマになるだろう。
しかし・・・そうでないと・・・イメージだけのスカスカドラマになってしまうのだ。
そこにさらに・・・近未来的な自由診療によるセレブ病院という要素が付加される。
当然、そこには理想の病院と格差社会の問題が横たわるわけである。
物凄く社会派ドラマにしないと成立しないことは言うまでもない。
もう・・・かなり破綻している感じが窺える。
ここに・・・朱里、菜々(志田未来)、木綿子(高梨臨)の青春模様の要素を・・・。
一体・・・どんだけの長編を作る気なんだ。
そして・・・今回は・・・セレブ病院も・・・ナイチンゲール物語も・・・無視して・・・看護師長の座のよくわからない争奪戦である。
まるで看護師長が看護婦による選挙で選ばれるかのような展開だ。
なぜ・・・そうなるかというと・・・このドラマには病院経営者や事務局が不在だからである。
なんじゃそりゃ・・・である。
もちろん・・・看護師国家試験に合格した看護師は自立性か高いわけだが・・・病院組織の管理職に対し造反するとなればかなりの問題意識が必要となる。
今回は・・・完ぺきな看護師長に対してそうでもない看護師たちがさくら(MEGUMI)の異常な扇動にのってサポタージュを展開するという流れである。
そうなれば・・・主軸は・・・看護師長とさくらであって・・・そんなドラマ誰が見たいんだということになるのである。
おいおい・・・とテレビに向かって呟き続ける感じのドラマになっています。
なぜか・・・看護師長に敵意を燃やすさくらは・・・オペナースの岩渕(水野美紀)を看護師長の対抗馬として担ぎあげることを画策する。
しかし・・・岩淵と看護師長は明らかに・・・何らかの絆で結ばれており・・・岩淵は簡単には誘いには乗らない。
おそらく病的な性格設定のさくらは「ちっ」と舌打ちをする。
エリートナースを集めた人事部のミスなのである。
一方で・・・なぜか・・・看護師長は・・・朱里に目をかける。
朱里は・・・お約束では・・・ふられた相手とはかかわらない主人公の常識を打ち破り・・・初回に登場して・・・できちゃった結婚をしたはずの元彼・・・誠吾(細田善彦)から謎めいた電話を受け困惑していた。
しかし・・・それはさておき・・・今回のゲスト患者が入院である。
看護師長が部下の不満を聞きだそうとしていた会食は中止になる。
緊急入院したのはプロサッカー選手の末長徹郎(蕨野友也)で選手生命に関わる手術が必要となる。
セレブ病院に入院してくるからには少なくとも代表選手ですでに欧州移籍が決まっているぐらいの大物であるはずだが・・・そういうムードはない。
そういう演出が出来ていないのである。
看護師たちは色めきたつが看護師長が担当に指名したのは朱里だった。
特に理由が説明されないために看護師たちの看護師長に対する不満の火種になるのだった。
例によって末長様に一目惚れした朱里は献身的な看護に努め・・・神社でお守りを取得したりする。
しかし・・・手術前に手術に対する不安を吐露した末長様は・・・オペナース岩淵に一喝され・・・心を奪われるのだった。
岩淵と感謝の記念写真を撮影した末長によって岩淵の名声は突然高まるのだった。
一方で菜々はオペナースを目指し、積極的に手術を見学する中でなんとなく孝太郎に好意を寄せ始める。
一方で長期入院患者の大江淳平(眞島秀和)に魅かれる木綿子は大江の心が看護師長にあることに嫉妬する。
一方でさくらは岩淵派閥を立ち上げるためにニャース明日香(菜々緒)やママさんナースとし恵(西尾まり)を巻きこんで「幸せなナースステーションの会」を看護師長主催の食事会の裏で決行するのだった。
もはやクーデターである。
とにかく・・・描き込みが足りないので・・・展開が空虚なのだなあ。
無印トリオは・・・両方の会から呼ばれ・・・どうしたものかと思案するのだった。
しかも・・・朱里と孝太郎のなんとなくうちとけた感じに嫉妬した菜々は・・・朱里に反発したりもする。
間に立った木綿子も・・・看護師長には不満を抱えている。
もはや・・・まっしろというより問題のあるナースステーションになったらしい。
しかし・・・それがちっとも面白くない感じなのは・・・問題のあるドラマになっているからだと考える。
風呂敷広げすぎなんだな。なんだなんだな。
お気に入りかっ。
もちろん・・・仕事に恋に一生懸命な朱里が何一つ報われず・・・失恋によって患者の健康の回復も喜べずやるせない思いを抱きろくでもない世界に埋もれて行くというアンニュイな物語を目指しているというのなら・・・それは成功の途上にあるのかもしれないが・・・。
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