きつく抱きしめあえばそれから(亀梨和也)身体が柔らかいのだ(深田恭子)
「アイ・ラブ・ユー」と「アイ・ラブ・ユー」が出会う時・・・人と人はイチャイチャするしかないわけである。
それが人類百万年の歴史なのだ。
しかし・・・その一瞬はなんと儚いのだろう。
キッドの経験では長くて一年くらいである。
もちろん・・・「恋」が終って「愛」が始るという美しい「嘘」もあるが・・・もしも、新しい「恋」が始ると「愛」など何の役にもたたないのである。
しかし・・・「恋」の「波」はゆっくりと通りすぎ・・・もう「愛」しかなくなるのが人生だ。
「ラブロマンス」はつまり・・・「恋の夢」だ。
もちろん・・・人によっては・・・「本当の恋」を知らずに人生を過ごすものもいる。
そういう人はせめて・・・この「恋の夢」に身を委ねてもらいたい。
ここには「恋」があります。
で、『セカンド・ラブ・第3回』(テレビ朝日201502202315~)脚本・大石静、演出・片山修を見た。「金曜ナイトドラマ」の枠では久しぶりに本格的なドラマの気配が漂っている。「死神くん」以来である。なにしろ・・・主人公とヒロインがスターなのである。スターとスターが恋に落ちる錯覚を感じさせるほど、リアルなラブロマンスはないのだ。お茶の間にお届けできる場面はさておき・・・これだけの美男美女があれだけ触れあってただではすまないだろうという妄想が炸裂するわけである。実に悩ましい。そして・・・二人には終わった恋の相手がそれぞれにいて・・・相手の方はまだ恋が終わっていない気配を漂わせている。その息苦しさがたまりませんな。これに加えて・・・二人はあまり家族に恵まれているとは言えない状況がある。主人公の家族は「冷たい父親」という影の存在だが・・・ヒロインの母親は「非常識の人」であり・・・その理不尽さがひたひたと押し寄せる。主な登場人物では何故かヒロインの不倫に異常な関心を寄せる女生徒だけが謎のポジションである。ひょっとすると「恋」に対して距離を置こうとする若者の象徴なのかもしれないな・・・。そういうわけで・・・分かる人にはこの物語が醸しだす「純文学」の香りがそろそろ届いているのではないかと考える。
一目見た瞬間に恋に落ちたコンテンポラリー・ダンサーの平慶(亀梨和也)と求められて恋に落ちた西原結唯(深田恭子)・・・。
「付き合っている人がいるなら・・・別れて欲しい」
そう言われて頷く結唯である。
「一緒に暮らそう」
たたみかける慶だった。
抱きしめられた瞬間に・・・身体が反応する結唯だった。
結唯の男性遍歴は明らかではないが・・・不倫中の同僚教師・高柳太郎(生瀬勝久)との逢瀬は五年目である。もはや「恋」のときめきをもたらすものではなかっただろう。まして・・・愛へと昇華するものでもない。それは倦怠と・・・惰性の・・・肉体関係にすぎない。
しかし・・・慶のひたむきな情熱は・・・結唯の眠っていた「恋の本能」に確実に点火している。
結唯は自分でも驚くほど濡れるのである。
慶という男性を受け入れる準備が素早く整うのだ。そして思いがけない痙攣が結唯の心を痺れさせるのだった。
倒れたペットボトルからこぼれる水のように溢れ出す情欲。
すべてを忘れさせる夜が来るのである。
ダンサーのしなやかな身体が・・・三十半ばの女教師に・・・この世に性のあることを思い知らせるのだった。
彼に抱かれるために生まれて来たと彼女に錯覚させるような快楽の波が打ち寄せるのだ。
だから・・・二人は今日も寝不足である。
「お前・・・疲れてるんじゃないか」
港湾荷役の飯場で仕事仲間の田島(寺島進)が心配するほどだった。
「・・・」
「お前、何か、別の仕事をしているのか」
「ダンサーです」
「ストリッパーか」
「ストリッパーじゃありません」
しかし・・・睡眠不足の慶は注意不足で足を負傷してしまうのだった。
多くのお茶の間がそうであるように「コンテンポラリー・ダンス」の認知度は恐ろしいほどに低いので・・・説明を避ける慶だった。
一方、今日も朝帰りの娘・結唯を待ち受ける・・・明らかに精神を病んでいる母・真理子(麻生祐未)・・・。
「親を舐めるのもいい加減にしなさいよ」
「そんな・・・」
「あなた・・・まさか・・・汚らわしい・・・不倫をしているんじゃないでしょうね」
「何を言ってるの」
「高柳先生も心配してくださっているのよ」
「高柳先生って・・・」
「私、あなたのことを相談しにうかがったのよ」
もちろん・・・三十半ばの娘が・・・外泊を続けてたくらいで職場の同僚に相談に出かける母親はあまり尋常とは言えない。所謂、過干渉である。
もちろん・・・子離れできない親は世の中に普遍的にいるのである。
そういう親は自分を異常とは思わない。親と子の絆を盲信しているのだ。
だが・・・そのようにしか生きていけない人を責める気はない。物悲しいがそれも人生の在り方だ。母一人子一人で寄り添って生きたっていい。しかし・・・年老いた母が先立つ時、年老いた子供は多くの場合・・・孤独の寂寥感だけを味わうことになるのである。
そのことに思いいたれない人間は侘しいのである。
結唯の母親・真理子はその象徴なのだ。
「今夜、話すから」
「逃げる気」
「教職を休むわけにはいかないの・・・お母さんだって・・・私がお給料をもらわないと生きていけないでしょう」
「・・・」
真理子は・・・専業主婦として娘に寄生している無職の女なのだった。
夫婦生活という「愛の営み」を破綻させた真理子は現実から逃避し続け、娘を呪縛し続けているのである。
恐ろしいことだ。結唯にとってこの家はこの世の地獄である。
家族と朝食を摂る高柳太郎(生瀬勝久)は結唯からの着信に慄く。
浮気相手として最高の獲物である結唯を失う予感があるからである。
厭らしい中年男の直感は・・・自分にとって都合の悪い事態には敏感なのである。
「別れ話」を切りだそうとしている結唯との接触を避けたい気持ちで一杯になる。
便器に排出された腹黒さが匂い立つ。
夫の不審な行動に妻(片岡礼子)は心の警鐘を打ち鳴らすのだった。
浮気は別れに際して愁嘆場を発生しやすい。
浮気が順調な間は綻ばなかったものが・・・別れ際に破綻して・・・発覚を招くことが多いのである。
別れから逃れようと結唯を遠ざけることが、結唯の焦りによる積極さを招き、事態を悪化させるのだった。
「どうしてもお話したいことがあるのです」
「無理なものは無理なんだよ」
登校中の生徒たちを唖然とさせる二人の教師だった。
「なんだ・・・あれ・・・」
「できているんじゃないの・・・あの二人」
「不倫かよ・・・」
「あんなジジイ相手にかよ」
「憐れ・・・」
丸山かなえ(宮武美桜・・・松山メアリや高月彩良そして桜庭ななみたちと一緒のメンバーである)も混じっている県立山王女子高校の生徒たちは囁く。
何故か、生徒の一人、竹内そら(小芝風花)は一線を画している。何らかの重要な役割を持っているのか。まさか・・・高柳太郎に恋をしているわけじゃないだろうし・・・。
同僚教師の上田波留子(秋山菜津子)もなにかと高柳太郎に絡んでくる。存在感があるだけにどのようなポジションなのか読みにくいんだな。
まあ・・・「恋の果て」を脚本家がどう描いてくるのか・・・御手並み拝見だ。
慶のレッスン場に現れる昔の恋人・野口綾子(早見あかり)・・・。
「怪我したの・・・」
「たいしたことはない・・・捻挫だよ」
「私・・・やはり・・・あの女が好きになれない」
「・・・」
「もう・・・来ないけど・・・身体に気をつけて・・・バイバイ」
ついに・・・愁嘆場を迎えることになった高柳である。
ラブホテルでの現地集合を拒絶され・・・ファミレスでの話し合いに意気消沈なのだった。
「別れてほしいのです」
「あの男か・・・いつから」
「あの日です」
「どんな男なんだ」
「よくわからないど・・・好きなのです」
先が見えない関係を続けて来た男はその時が来たことに抗うのだった。
「そんな・・・男で大丈夫なの」
お前がそれを言うかというセリフだが・・・言わずにはいられないんだなあ。
なにしろ・・・十五歳年下で美しい巨乳の持ち主をもう抱くことができなくなると思ったら目の前が真っ暗になるのだ。
「嘘ぴょ~ん」と言ってくれないかと虚しく視線が彷徨うのである。
「六歳も年下の男なんて・・・」
いろいろな言葉を飲み込む高柳。なにしろ・・・勝ち目がないのである。
しかし・・・澱んだ関係でも・・・そこには五年の歳月が横たわっている。
「高柳先生には感謝しています・・・今までありがとうございました」
優しい死刑宣告が下されるのだった。
夜の街をはじめて肩をならべて歩く二人。
高柳の未練が用心深さを上回ったのだった。
お約束でヤクザにからまれそうになり、脱兎の如く逃げ出す高柳。
その先にティッシュ配り中の慶が待っていた。
思わず見つめ合う二人。
「ダンサーが・・・なぜティッシュ配りを・・・」
「食べるためです」
「彼は国際的な賞を受賞しているんです」
「でも・・・食えないんだろう・・・」
「・・・」
「上司として・・・そんな相手との交際は反対だなあ」
「反対されても・・・別れるつもりはありません」
慶と結唯は寄り添う。
虚しく佇むもはや単なる上司である。
二人は立ち去る。
「待ってくれ」
ふりかえる二人。
「彼女を・・・頼んだぞ」
慶は幽かに頷くが・・・余計なお世話なのだった。
高柳の脳裏に渦巻く・・・結唯との痴態の数々。
あんなことをしておけばよかった。
こんなこともしておけばよかった。
悔やんでももうできないのだった。
もちろん・・・リベンジポルノをばらまく手はあるが・・・自殺行為である。
もはや・・・虚しく夜風に吹かれる他はなく、夫のそういう姿は確実に妻に何かを感じさせる。
「今日は大人しく寝ないと・・・」
「足を使えなくてもできるよ・・・結唯さんががんばれば」
「今日は・・・母と話をしないと」
しかし、キッチンに立つ結唯を背後から抱きしめる慶。
「結唯さんを見ていると・・・触りたくなる」
身体を入れ替えて慶を背後から抱きしめる結唯。
「私もだよ」
イチャイチャが止まらない二人だった。
「けいくん・・・けい」
「ゆいさん・・・ゆい・・・」
家路についた結唯の前に綾子が現れる。
「彼の昔の恋人です」
「・・・」
「慶をだめにしないで」
「だめにしません」
「ダンサーのことなんか・・・何もしらないくせに・・・やりまくって睡眠不足だから怪我だってするんだよ。あんなに狭いベッドに二人で寝たら身体が回復しないんだよ」
「気をつけます」
「慶をダメにしたら殺すからね」
「彼をダメにしないし・・・あなたにも殺されません」
「・・・」
年上の女の優しい対応に・・・虚脱する綾子だった。
帰宅した結唯は癒着する母親の真理子と対峙する。
「不倫はしてません」
「清いお付き合いなのね」
「彼と暮らそうと思います」
「なんですって・・・家を出るってこと」
「・・・」
「ママを捨てるの・・・ママより男が大事なの・・・ママの子じゃないみたい・・・ママがどんな思いで結唯ちゃんを育てたと思うの」
「お母さん・・・私はもう三十半ばよ・・・これまで一度だって・・・私の将来のことを考えてくれたことあった・・・この年まで一度だって・・・恋人がいないことの心配をしてくれたことなかったじゃない・・・このまま・・・一生、お母さんの面倒を見てはいられないよ」
「なんてことでしょう・・・私に飢え死にしろっていうの」
「私は私の人生を生きていきます・・・お母さんも自分の人生を生きてください」
荷造りをして家を出る結唯。
「じゃ・・・こうしましょう・・・彼を家に連れて来て・・・一緒に住めばいいじゃない」
真理子の不気味なお願いを振り切る結唯だった。
子供は自分のものと信じて疑わない真理子の信念は少し揺らぐのだった。
慶にドレスデンのカンパニー代表から連絡が入る。
二月十七日。
来日したライバルの一之瀬佑都(大貫勇輔)と再会する慶。
演出家の仕事の依頼は・・・。
「三月に日本で・・・かって君が主演した舞台『美しい悲劇』を一之瀬で再演したい・・・君にはスタッフに演出意図を伝える通訳を務めてもらいたい・・・」
「通訳・・・」
事情を聞いた結唯は慶の心情を思いやる。
ダンサーというものの認知度に問題がある日本社会。
父親にドイツでサッカーをしていると語られていた慶の心の傷・・・。
しかし、慶は胸を張る。
「君が現れて・・・止まっていた時間が動き出した・・・通訳の話も以前なら断っていたはずだ・・・だけど・・・今は違う・・・何かをやってみようと思えるんだ」
結唯は慶のために布団を買うのだった。
その夜・・・二人はようやく一息ついたのである。
性の営み抜きで幸せな時を過ごす二人。
「二週間・・・休みます」
仕事仲間に伝える慶。
「ストリップの巡業か・・・」
ついに踊りだす慶だった。
辛い潜伏の時から・・・女神と出会い・・・躍動する舞踏家。
その身体能力を示すアクロバットなパフォーマンスに無教養な男たちもも心を奪われる。
「なんだか・・・有難い感じだな・・・」
踊りきった慶の前に真理子が現れる。
「結唯を私に返してください」
困惑する慶だった。
一方、結唯には清算したはずの不倫関係が何故かのしかかってくるのだった。
女生徒たちは無邪気に「不倫」を責め立てるのだった。
ドラマが「美しい悲劇」となるのかどうかは・・・まだ不明である。
ただ・・・美しい物語になることは確かだろう。
しかし・・・恋は・・・本質的には悲劇なのだ。
だって必ず終わるものだもの。
関連するキッドのブログ→第2話のレビュー
エリ「K先輩の身体を気遣ってマットレスを購入するのでスー。フカフカであったかいのでスー。特別な寝具なのですよ~ムフフ・・・悲しい悲劇はこわいけど・・・喜劇になっても困るのです・・・あくまでラブロマンスでお願いしまス~」
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コメント
確かに特別なマットレスですわ~。
落ちてくるK先輩を受け止めるあったかい羽で
いっぱいにしておきたいのです~♪
3話にしてドラマらしくなってきました。
まさにむふ、ムフフの連発♪
愛は障害が多いほど燃えるから
耐えて見ていくだけデスね。
お屋敷の温室でいちご狩りしたので
タルトにしましたの。
じいやちゃま専用に紅茶には
ブランデーたっぷり入ってます~♪
投稿: エリ | 2015年2月21日 (土) 17時13分
✿❀✿❀✿かりん☆スー☆エリ様、いらっしゃいませ✿❀✿❀✿
お嬢様方の寝具は一組一千万円、鮮度を保つために
一日一回御取り換えしておりますぞ。
御昼寝用もございますぞ~。
まこ様は使い古しのクタクタがご希望なので
新品をまこロイドでいい感じに仕上げております~。
ごっこガーデン用のマットレスは
既製製品のレプリカ仕様ですが
本物の百倍のお値段になっております。
ヒロインのあきらめの境地が
主人公によって一変するところが
スリリングですな。
まとわりつくモンスター・マザー。
よどみきったお手軽な愛人。
地獄の泥沼をはい上がると
そこには恋の泉が待っていたのですな。
いつまでもいると思うな、子と愛人ですな。
一方、主人公の両親は今の処
セリフのみの登場。
トンビがタカを生んでしまった悲劇が匂いたちます。
元カノとの別れの経過も伏されているので
まだまだ奥行きが感じられますな。
そして・・・才能と努力と運命が絡み合う
芸術的境地の葛藤の予感もありますな。
そして・・・なかなかに計算された
映像美・・・。
まさに廃墟にパートカラーの花が咲いている感じが
全編に漂っておりますねえ。
本日はドイツの伯母様から
ハンバーグが空輸されてきましたので
御焼いたしました。
シェフ自慢の大根下ろしソースで
お召し上がりください。
温野菜と生野菜のチーズサラダも
御付けいたしまする。
投稿: キッド | 2015年2月21日 (土) 20時15分