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2015年3月31日 (火)

まれ・・・めったにないいい名前(松本来夢)でも人間ってそれだけでは生きていられない(戸田恵子)マチルダさ~ん(中川翔子)

ヒロインの土屋太鳳はまだおあずけである。

だから・・・もう一回くらいレビューするだろう・・・連続テレビ小説第92シリーズである。

現代劇で美少女のヒロインは朝ドラマでは視聴率的に厳しいのが普通である。

その理由はあえて語らない。

ここではキッドのブログにおける脚本家・篠﨑絵里子について振り返っておく。

ここまで表記は誤字である篠崎絵里子になっている。

「﨑」だと検索しにくいからな。

初登場は早い。「クロサギ」(2006年)である。

当時のレビューは短いが・・・原作ものとはいえ・・・豪華メンバーでなかなかに見せるドラマだった。

次が「有閑倶楽部」(2007年)である。超有名原作で・・・そこそこという感じ。

そして「だいすき!!」(2008年)である。キワモノドラマだが・・・構成力とセリフに手堅い手腕を感じさせた。何と言っても「鹿男」を視聴率的に圧倒したところが・・・凄いのだった。

この年の夏ドラマはキッドじいや的に「CHANGE」「コード・ブルー」「Tomorrow」というお嬢様三本立てというイベントがあったわけだが「Tomorrow~陽はまたのぼる~」がレビュー対象になっている。オリジナルということでやや主題の展開にたどたどしさが残ったが・・・相変わらず手堅いのである。

キャットストリート」は爽やかな印象を残している。

手堅い総合力が発揮されたのが「スマイル」である。素人のような脚本家がグダグダにしたドラマを受けて最終回直前に起用され・・・なんとか立て直すという力量を示す。

ヤマトナデシコ七変化♥」はまた原作もので・・・無難な印象だが・・・ドラマとしてアニメを越えられなかった感じは仕方のないところかもしれない。

恋とオシャレと男のコ」は深夜なので特に言及しない。

東野圭吾ミステリーズ・最終回・再生魔術の女」「花の鎖」「紙の月」と・・・湊かなえや角田光代などの文芸あるいはミステリもこなすようになる。

そして映画「あしたのジョー」である。ものすごくまとめたよね。

つまり・・・なんにせよ・・・手堅いという脚本家なんだな。

そして・・・キッドはなんだかんだ・・・高めの評価をしているという・・・。キッドじいや中心だけどな。

まあ・・・そういうわけで・・・きっと手堅い朝ドラマになると考えます。

で、『まれ・第1回』(NHK総合20150330AM8~)脚本・篠﨑絵里子、演出・渡辺一貴を見た。語り・戸田恵子である。大河ドラマがシャア(池田秀一)なのに朝ドラマがマチルダ・アジャンって・・・しかも、元夫婦だ・・・あの世代なのか。ただし・・・ブリブリな感じでナレーションしています。ヒロインがパティシエになるというスイーツなメルヘンだからかっ。

父・津村徹(大泉洋)、母・津村藍子(常盤貴子)という強力な両親の元に生まれて来た希(松本来夢土屋太鳳)である。

「希」とは織った布であり、糸からすれば成ったものだ。そこから・・・成りたいと願うことや、珍しいものといった意味が派生してくる。しかし・・・稀な望みとなれば・・・実現が困難な夢想のニュアンスも生じるわけである。

はたして・・・まれなドラマになるのかどうか・・・手堅い脚本家だけに・・・奇妙な感じがいたします。

で・・・両親は「素敵な夢を実現させる子になってもらいたい」と願ったわけである。

ひょっとしたら入浴剤を発明するのか・・・だれがお湯が緑色になる話をしろと・・・。

しかし・・・そう願う父親が・・・ものすごく・・・夢見がちな男・・・しかも実行力なしのダメ親父だったために・・・希は・・・ちょっとねじくれた子供に育ってしまったのだった。

いきなり・・・自己破産である。

津村一家は夜逃げ同然で・・・石川県・能登半島に都落ちである。

まあ・・・藍子夫人はお風呂に沈められなくてよかった。しかし、そうなれば借金返済なんてあっという間じゃないのか。・・・おいっ。

とにかく・・・闇金ウシジマくんが絡んできそうな父親の性格設定なのだった。

「お父さん、正座しなさい」

「一発あてるからね」

「やめてよ・・・地道にコツコツしてよ」

親に小言を言う小学生である。

まあ・・・ヒロインの幼少時代なのでこんなものなんだな。

成長すると・・・ヒロイン・トリオには蔵本一子(清水富美加キター!)や寺岡みのり(門脇麦)が加入する。

一家は縁あって寂れた民宿に転がりこむのだが・・・経営者が桶作元治(田中泯)と桶作文(田中裕子)というこれまた重厚な布陣である。

とにかく・・・共演者は・・・なんだかんだ豪華の極みなんだな・・・キッドの好みで言うと中村ゆりか、中川翔子、ふせえり、鈴木砂羽、おりかえして柳楽優弥、小日向文世、ガッツ石松、篠井英介、中村敦夫である。

うっとりします・・・。

とにかく・・・やはり・・・手堅く始ったのです。

一回くらいは・・・かわいいよ、まれかわいいよを言いたいと思うのです。

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2015年3月30日 (月)

西洋人、歩兵を以て軍の骨子となす、是れ孫子の所謂正なり・・・と吉田松陰(星田英利)

安政五年(1858年)九月に吉田松陰は「西洋歩兵論」を著している。

松下村塾は一種の情報機関であり、各地に散った塾生の諜報を集約するシステムであった。

三月に兵学者・村田蔵六(大村益次郎)は江戸で桂小五郎に最新西洋兵学の講義を行っている。

このことが「西洋歩兵論」に反映していることは充分に考えられる。

兵学者松陰は洋式軍隊の核心が歩兵にあることを直感し、これを孫子の兵法になぞらえて正道とし、これを和式化するための方策を論ずる。

西洋歩兵が「節制練熟で精悍剛毅の兵」であることにより、「遊戯三昧」の兵しか持たない我が軍に「勝算断じてあることなし」と述べている。

彼我の差を埋めるために松陰は長州藩の大番士(中級士族)を大坂に派遣し(緒方洪庵塾に学んだ)岡村貞次郎(浜松藩)へ師事させ、歩兵指揮官として養成することを第一に挙げている。

この指揮官に足軽・農兵を訓練させることにより、歩兵力を持つことを提唱するのだった。

これは・・・まさに奇兵隊を示唆するものである。

次に「洋式歩兵」という「正」があれば「白兵戦」という「奇」が成立することを松陰は主張する。

我が軍の近接戦闘能力が優れていることを松陰は祈るような想いで語るのだった。

「突撃」戦法は日清・日露で花開くが・・・太平洋戦争においては「玉砕」として悪名を晒すのである。

松陰の理想と・・・世界の現実は激しく激突するのだった。

装備の不利を補うべく・・・敵軍上陸を阻止するために地雷を敷接するのは近代戦では常道だが・・・それを大量生産化するシステムを持たない松陰は・・・暗殺の手段としての流用を模索する。

天才と狂気は紙一重の見本がここにあります。

で、『花燃ゆ・第13回』(NHK総合20150329PM8~)脚本・宮村優子、演出・安達もじりを見た。例によってシナリオに沿ったレビューはikasama4様を推奨します。今回は長州藩の側近連の中でも開国思想の強い航海遠略策でおなじみ長井雅楽の描き下ろしイラスト大公開でお得でございます。羽場裕一がキャスティングされた時点で悪役的でございます。まあ・・・主人公の兄をある意味、殺す人物でございますからねえ。緩やかな世界支配ということでは米国は幕府ポジション。これに叛旗を翻す長州過激派は・・・まさにイスラム過激派と同じポジションであり・・・実際にテロリズムを展開していくことになりますので・・・一緒だ・・・と言われればそうでございますよね。つまり、イスラム過激派が米軍を打倒することもないわけではないということでしょう。ロシアと中国とか、中国とEUとか組み合わせは定かでないけれど・・・米国倒幕運動が展開した時に・・・日本が会津藩のポジションになることもありえるわけでございます。まあ・・・もう少し先かな。松陰の革命闘争は半世紀に渡って勝利を重ねたあげくに腐敗し・・・全世界から袋叩きになって終結する。何が正しくて何が悪かったのか・・・結果論で論じるのは簡単で悲しいことでございますけれども。

Hanam013安政五年(1858年)六月、鯖江藩主・間部詮勝は南紀派の大老・井伊直弼によって勝手御入用掛兼外国御用取扱担当老中として幕閣入り。九州より東海道にかけてコレラが流行。長州藩医で蘭学者の青木周弼・研蔵兄弟はコレラ治療に貢献したとされる。藩医・山根文季の長男で藩医・小野家の養子となった小野為八は三浦半島における沿岸警備の実体験から地雷の有効性に開眼する。帰国した小野は松下村塾に入門。折しも要人暗殺の方法論を研究中だった松陰は地雷の利用を想起する。七月、高杉晋作は萩を出発、八月、江戸に到着する。九月に間部詮勝は入京し、京都所司代・酒井忠義と一橋派の粛清を開始。梅田雲浜を捕縛。長州藩の足軽・品川弥市右衛門の長男・品川弥二郎が松陰門下となる。松陰の弟子で長州藩家老の益田親施は周布政之助らと共に朝廷の意思に従って攘夷を決行すべきと江戸幕府に提言。朝廷に対しては忠節、幕府に対しては信義、祖先には孝道という長州藩の三大原則を明らかにする。こうした長州藩の動きの背後に吉田松陰の言説があることは幕府探索方の諜報により井伊直弼の知るところとなっていた。江戸藩邸には久坂、桂、山県、伊藤などか顔を揃えている。萩の松陰が間部詮勝のために砲撃部隊を進発させると決意したため、高杉たちはこれを諌めた。

「先生、おやめください」

「先生、薩摩の西郷も潜伏しました」

「先生、時期が悪いです」

「先生、自重してください」

江戸や京都に滞在中の弟子たちの書簡を読んで松陰は微笑む。

「みんな・・・震えております」

「兄上が物騒なことを申し上げるからです」

「物騒なことではないぞ・・・皆、現実になることだ」

「間部様は長生きなさるのでしょう」

「うむ・・・大老は僕と刺し違えることになるがな」

「兄上、そのことは避けられぬことなのですか」

文は松陰の心を読んで・・・それを知っていながら・・・どうしても口に出さずにはいられなかった。

「文よ・・・時の先を知るということは・・・運命を受け入れる覚悟をするということなのだ。僕がいつ死ぬかはいくつかの可能性に分れるが・・・僕は最も価値のある死を選んだことになると思う。少しばかり長く生きたとて志と無縁では生きる意味がない」

「ただ・・・漫然と生きて行く幸せもあるのではありませんか」

「もちろんだ・・・そのように生きたいものはそのように生きる。僕は僕の死ぬべき時に死にたい・・・それだけだ」

文は松陰の心の中にある眩しいほどの精気に触れ・・・言葉を飲む。

松陰は文に優しく微笑んだ。

「大和の人は皆、西方浄土に恋こがれてきた。韓の国、唐の国、さらには天竺。しかし、さらに西方の耶蘇教を信じる者たちが大いなる力をもって天竺も唐の国も征服しつつある。侵略された国の民は征服者の奴隷となるのが理だ。僕はそれを望まぬ。君主は時にそれを許し、民の苦しみを余所目に私腹を肥やすだろう。僕はそれを許さぬ。天朝を軸にこの国を一つとし、色目人たちの横暴に立ち向かわせるのだ」

「・・・」

「そのための一つの流れを作る僕の死を僕は誇らしく思う」

「文はただ兄上に長生きしてもらいとうございます」

「許せ・・・文・・・それはならぬのです」

文はますます輝きだす松陰の心に思わず目を閉じる。

しかし・・・心眼は閉じることができない。

文はただ涙を流し・・・嗚咽をもらした。

世界はゆっくりと変転していった。

太平の世にふんぞり返り、志士達の懸命の努力を嘲笑する想像力のかけらもない馬鹿どもの生きる世へと・・・。

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2015年3月29日 (日)

おろかものにも春は来ますか?(麻生久美子)

ここ数日のレビューは谷間の谷間なので「沖縄県民の民意の自粛への祈り」を捧げている。

多数決絶対の民主主義において、民意と総意は微妙に違う。

つねに少数意見があるのである。

日米による軍事同盟を否定し、自国領土からの他国の軍事力を完全に排除すべしという意見もある。

そもそも・・・国家というものは虚構である。

人間の営みにおける方便のようなものだ。

国家と国民はギブ・アンド・テイクの関係に過ぎない。

沖縄県というエリアが日本国に属する歴史的経緯も天皇家の歴史に比べればほんの僅かである。

しかし、徳川幕府における幕藩体制というものを考えると琉球王国と薩摩国が大日本帝国に統合されることにあまり差異はないのである。戊辰戦争では東北諸藩は統合のための実戦さえ体験している。

以来、帝国の日清、日露の戦役を経て・・・沖縄は明らかに日本の一部になっていった。

敗戦に伴う大日本帝国の滅亡と日本国の誕生において・・・沖縄は米国の統治下に残された。

そこから・・・日本に沖縄が返還されるまでの歳月がある。

歴史的知識は教養である。

教養である以上、素養の深さには個人差がある。

「米国兵の犯罪率」や「軍用機の事故率」が「市民の安全」を脅かすことは「原子力発電所の事故」が「放射能汚染」を発生させるのと同じリスクである。

そのリスクは「安全保障」や「エネルギー危機」に対するリスクと二律背反的な要素を含んでいる。

人間の知的能力には格差があり・・・必ずしも理解は合一のものではない。

つまり・・・愚か者は常にある。

総合的に判断すれば・・・基地移転は「是」である。

それを「否定」する愚かさが多数を占めないことを祈るのである。

馬鹿につける薬はないのである。

で、『・第11回~最終回(全12話)』(テレビ東京201503210012~)脚本・小峯裕之(他)、演出・ケラリーノ・サンドロヴィッチを見た。四季のある国では春は一年後にやってくるのが普通である。赤道直下は基本的にいつも夏だ。地球の裏側では春の時に秋である。とにかく・・・春は一種の無限ループなのである。太陽系の終焉までの話としてはそうなる。それとは別に虚構の世界では時間旅行的な無限ループがある。今季のドラマでは「問題のあるレストラン」では・・・主人公がくりかえし変な場所でレストランをオープンするループ、「デート」では主人公がくりかえしおでかけをするというループが展開したが・・・時は流れている。米軍兵が戦争によって狂を発し、罪のない沖縄の少女をレイプすると沖縄県民が怒り、日本政府は動揺し、米国が謝罪するというループと同じだ。ロシアのマダムが「練習すれば誰でもトリプルアクセルは飛べる」と発言すれば賛否は分れるわけだが・・・「反対すれば否定できる」とは限らない。スポーツに反復練習はつきものだ。たとえば剣道では素振りをする。毎日、面打ちを百本すれば一年間で三万六千五百本になる。その間に軌道は修正され、筋力は増強され、打撃力はアップする。棒一本で簡単に人が殺せるようになるのである。リフレインというものは・・・実は恐ろしいものなのである。しかし・・・時にはふりだしに戻るという・・・恐ろしい魔法が描かれるのだった。

このドラマの登場人物は基本的に・・・知性に欠陥がある。

落語で言えば・・・全員、与太郎なのだ。

しかし、与太郎にも格差があり、与太郎のボケに与太郎がツッコミをいれるという展開である。

その馬鹿馬鹿しさが頂点に達する最終話である。

ちょっぴり馬鹿なお茶の間は・・・物凄い馬鹿たちに心地よい優越感を感じるのだった。

「温泉に行かないか」と夏美(麻生久美子)を誘う三階堂刑事(仲村トオル)・・・。

「いいけど・・・いやらしいことしないでよ」と期待に鼻の穴をふくらませる夏美。

「皆さんもご一緒に行きましょうね」と唄子(犬山イヌコ)たちに声をかける三階堂。

夏美は馬鹿だった。

しかし・・・応募していない抽選に当たって「必ず七人で参加しなければならない温泉旅行ご招待」に応ずる三階堂は馬鹿の中の馬鹿なのだった。

こうして・・・夏美と三階堂、唄子と眠山(山西惇)、冬(緒川たまき)と黴田(水澤紳吾)、そして、秋子(坂井真紀)の七人は鬼神村に向かって旅立つのだった。

悲別(大倉孝二)と萌香(今野鮎莉)はお留守番である。

しかし・・・鬼神村には八十年に一度、七人の人間を生贄として捧げないと鬼が出てきて滅びをもたらすという伝説があった。

旅館の女将(高橋ひとみ)、番頭(山本龍二)をはじめとする従業員一同、植木職人(鈴木浩介)やおでん屋(オクイシュージ)までが旅人の命を狙っているのだった。

そうとは知らずにさっそく・・・植木職人に一目惚れする秋子だった。

そして・・・UNOとタロットカードを間違えた黴田は斧で両断され・・・助けを求める秋子の電話に悲別はボケ続け、秋子は結局、植木職人に毒殺され、唄子と眠山は竹輪ダイナマイトで爆死、三階堂は風邪薬と称する毒薬を致死量以上飲んだ上におむすびを追いかけて崖から落ち、温泉で冬は感電死である。

謎の老婆(中村メイコ)は不吉な歌を歌うのだった。

宇宙人ピピは

杉本哲太の義母なのだ

UNOはタロットカードでやれないこともない

・・・全然、違うぞ。

そして・・・ついに夏美も槍で刺し抜かれてしまう・・・。

全滅である。

しかし・・・その時、夏美が着用していた装身具は眠山がらみの妖しいグッズ・・・。

「壊れると一日やりなおしペンダント」だったのである。

槍で壊れたペンダントの機能が発動し・・・夏美は鬼神村のバス停留所に到着した場面にワープする。

ちなみに・・・「夏美の記憶だけが持ち越し」というアイテム効果があります。

「早く帰りましょう」という夏美。

「今、到着したところじゃないか」と一同。

三階堂は世界地図を広げ旅館を目指す。

馬鹿なので・・・危機を説明できない夏美。

馬鹿なので・・・夏美の話を聞かない一同である。

しかし・・・夏美はみんなの命を守るために馬鹿なりに孤軍奮闘するのだった。

ああ・・・馬鹿、かわいいよ馬鹿なのである。

ドタバタが展開し・・・ついに刻限がやってくる。

巨大な鬼が出現し・・・村は滅び・・・七人は助かるのだ。

「やった・・・」

「ペンダントのおかげだ」

「こんなもの・・・嫌い」

夏美は忌まわしい記憶を断ちきるために・・・ペンダントを破壊するのだった。

たちまち・・・一同は鬼神村のバス停留所に・・・。

バカは失敗から何も学ばない。

沖縄の人たちがバカなのか・・・日本政府がバカなのか・・・戦争をやめられない人類が馬鹿なのか。

それは・・・死ななきゃ分からないことと定められています。

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素敵な選TAXI

みんな!エスパーだよ!

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2015年3月28日 (土)

LIVE! LOVE! SING! (石井杏奈)生きて愛して歌うこと(木下百花)GIGつもり(皆川猿時)

ドラマというものがなぜあるのかはよくわからない。

しかし・・・たとえば阪神淡路大震災と東日本大震災について何かを伝えようと考えると・・・なかなかにもどかしいものがある。

それは軍艦と戦車と戦闘機を運用する集団を総理大臣が「わが軍」と述べると何故か「いけない」らしいというもどかしさに通じるものだ。

明らかに変なことが・・・変ではありませんと言われる時は大体・・・大日本帝国の敗戦がからんでいる。

そして・・・日本国という国が「憲法」という首輪をつけた犬のようなものであることが判明するのである。

もちろん・・・世界の虜囚となった日本国民が・・・その恩恵で・・・70年間、世界で起こった様々な戦争から・・・ある程度、隔離されていたことは喜ばしいことなのかもしれない。

そして・・・その状態の方が・・・来るべき世界でも国民の多くを幸福に導くのかもしれない。

しかし・・・明日、自衛隊員を全員、国外に追放して・・・「軍人ゼロ」の国家にしますという宣言に国民の半数以上が同意するだろうか。

絶対しないよねえ。

武力を保持しないが、自衛のための武力は保持する・・・そういう言葉の遊びをいつまで続けるつもりなのか。

血に飢えた野獣の前に裸で立つ人は誰ですか?

どこにいますか?

本気ですか?

それとも世界には血に飢えた野獣なんかいないのですか?

乗客百人乗せて山に突っ込むパイロットもいませんか?

そういうつもりですか?

つまり・・・そういう能天気な人々が存在する現実がある以上、もどかしいことを描くドラマはあるのです。

で、『特集ドラマ・LIVE! LOVE! SING! 生きて愛して歌うこと』(NHK総合20150310PM10~)脚本・一色伸幸 、音楽・大友良英、演出・井上剛を見た。東京大空襲から70年、沖縄返還から43年、北朝鮮による横田めぐみさん拉致から38年、地下鉄サリン事件、阪神淡路大震災から20年、東日本大震災から四年である。日本という国は次から次へと災厄に見舞われて復興につぐ復興を重ねて来たのである。沖縄だって・・・いい加減・・・本土なみに戦後になりたい気持ちはわからないでもない。しかし・・・福島原発事故はそういう気持ちにかまっていられないほどの大惨事なのだ。基地が移転するくらい我慢しろ・・・と日本国民のうち、キッドはそう思っている。もちろん・・・暴言である。しかし・・・放射能汚染がどれほど深刻であるのかは一万年くらい分からないのである。少なくとも今、生きている人が死ぬまでには解決しないことは明白だ。そういう土地に生まれた人の気持ちを想像してみてください。沖縄返還四十年が・・・東日本大震災の発生によってうやむやになった口惜しさはわかるが・・・堪えろよと考えます。

神戸在住の高校生・水島朝海(石井杏奈)は担任教師の岡里(渡辺大知)と交際中である。

この設定ですでに撤退する人も多いだろうが・・・まあ、もうすぐ卒業で、岡里の母親・ミドリ(南果歩)も公認の不純異性交遊なので大目に見てもらいたい。

おそらく、神戸(フィクション)の淫行条例は緩やかなのだろう。

卒業イベントの「合唱」で「しあわせ運べるように」を選曲した岡里。

「阪神淡路大震災なんて・・・チャラい」と叫ぶ朝海。

「え」

母親は「あの歌・・・震災を思い出すから・・・嫌いや」と言うが・・・朝海はそれ以来、不登校になってしまい、岡里とも連絡を断つのだった。

ちなみに「しあわせ運べるように」は神戸復興を願い神戸市内の小学校の音楽専科教諭が作詞・作曲したものである。

地震にも負けない強い心を持って

亡くなった方々の分も

毎日を大切に生きてゆこう

傷ついた神戸を

元の姿に戻そう

支え合う心と明日への希望を胸に

曲の出来栄えについては賛否あると思う。

教え子でもあり、恋人でもある朝海をいろいろな意味で案じた岡里は朝海の家に張り込み、外出した朝海を尾行する。

ストーカーじゃねえか。

三ノ宮駅で男と合流し、阪神電車に乗り込んだ朝海を詰問する岡里であった。

「どうしたんだよ・・・この人・・・誰なんだよ」

「つけてきたの・・・きもいんですけど」

「だって・・・」

「小学校の同級生の佐藤勝くんだよ・・・これから同窓会するんだ」

「え・・・」

無口な佐藤勝(柾木玲弥)は微笑む。

やがて・・・赤毛のヤンキー女・橘香雅里(木下百花)も合流するのだった。

東京を越え・・・彼らが向かうのは福島だった。

四人目はずんぐりむっくりの渡部本気(前田航基)だった。

彼らは一部帰還困難区域の富岡町や浪江町を連想させる富波町(フィクション)の出身だった。

四人の東日本震災被災児と・・・阪神淡路大震災を五歳の時に被災した教師は・・・侵入不可のゲートを越えて・・・日本に見捨てられた街へと潜入するのだった。

そこは・・・あの日のまま・・・放置され・・・復興の見込みのない廃墟だったのである。

若者たちをゲートに導いたのは牛飼いのモーさん(中村獅童)だった。

帰還困難区域に置き去りにされ、放射能汚染された牛たちに餌をやるためにトラックで通っている。

ゲートの警備員である自称シンガーソングライターつもりやん(皆川猿時)は若者たちの密航に気がつくが見て見ぬフリをするのだった。

やせ衰えた牛たちを見て香雅里ははしゃぐ。

「あの牛の名前はカルビ」

「どれがカルビ」

「食べられんぞ」

「汚染牛だもんね」

朝海たちを招集したのはずんぐりむっくりだった。

小学校の校庭に埋めたタイムカプセルを掘り出すこと。

そして・・・初恋の人である朝海に逢いたかったのだった。

「俺な」

「知ってるよ・・・あんたが私に性欲丸出しだったこと」

「性欲って・・・」

「あんなことがなかったら・・・付き合ってたりして」

「え」

ずんぐりむっくりと手をつなぐ朝海だった。

一人前に嫉妬する岡里だった。

誰もいないはずの海で幽霊のような女(ともさかりえ)に出会う若者たち。

「何してるんですか」

「釣りよ」

「え・・・」

女は廃墟でライブハウスを経営していた。

「お客さんなんかいないでしょ」

「あんたたちみたいのが来るからね」

女が未亡人であることを・・・夫らしき漁師(津田寛治)の写真で察する朝海だった。

朝海も孤児である。

同級生たちはみな・・・家を失い・・・故郷に帰ることもできず・・・各地に行っていたのだった。

漸く・・・岡里は復興した神戸がチャラいことを悟るのだった。

「ごめん・・・あの唄を・・・朝海に歌わせるのは・・・拷問みたいなことだったな」

「好きだよ・・・先生」

「俺な・・・一つ上の兄貴が震災で死んだ・・・よく覚えてないのに・・・毎日、毎日・・・責められているような気がしてる・・・二十年間ずっとだ」

「申し訳ねえんだよな」

「そうや・・・」

朝海は岡里にキスをするのだった。

若者たちはライブハウスでまどろんだ。

朝海は幻影の祭りの中にいた。

夜空に花火が咲き、蛇踊りが練り歩く。

地震なんてなかったつもり

津波なんてなかっ たつもり

原発事故なんてなかったつもり

絆なんてなかったつもり

日本が ひとつであるつもり

それで安心なつもり

みんなみんな生き てるつもり

自分が正しく生きてるつもり

つもりつもりつもり

翌朝、女は若者たちを小学校に送る。

海へ戻る女に朝海は叫ぶ。

「きっとみつかるよ」

「みつかっても・・・死んだことがわかるだけだ」

「・・・」

「つらい夢がつらい現実になるだけだ」

「うん」

荒れ果てた校舎でずんぐりむっくりは途方に暮れる。

「どこに埋めたか・・・わからんな」

しかし・・・無口な勝はタイムカプセルを探し当てるのだった。

ずんぐりむっくりは・・・ミニカーを取り戻した。

勝は・・・失われた家族写真を取り戻した。

香雅里は未来の自分への手紙を取り戻した。

「看護師さんになりましたか」

「期待が重すぎて・・・やめた・・・今は親には言えんとこで働いてる」

「キスはしましたか」

「毎晩、お客と数えきれんくらいしてる」

「・・・幸せですか」

「何も考えなければね」

「年齢バレたら大変じゃないの」

「横浜だから平気」

朝海は・・・ガチャポンのカプセルに・・・小学校の空気を封入していた。

開くと・・・澱んだ未来の匂いがする。

「復活するつもり・・・」

泣くだけ泣いて若者たちは・・・現実の世界に戻っていく。

歌えと言われれば「しあわせ運べるように」も歌う。

笑いたい時には笑う。

朝海は生きているのだ。

帰れる故郷がある人は基地があるくらい我慢しろなんだな。

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サイレント・プア

東京が戦場になった日

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2015年3月27日 (金)

紅白が生まれた日(松山ケンイチ)音楽試合でランラララン(本田翼)

敗戦から七十年である。

昭和二十年(1945年)に十歳だった子供が八十歳になってしまう時の流れ・・・。

「戦争」に善悪はない。

しかし・・・戦争に負ければ・・・敗者は勝者に謝罪し続けなければならないのだ。

許しを得るためには・・・もう一度戦争をして勝つしかないのである。

今に見ておれ・・・そう思う人はほとんどいないかもしれない。

いい加減に勘弁してよ・・・そう思う人は多いかもしれない。

だが・・・一億玉砕をしないで・・・戦後の平和を堪能してしまったので・・・鬼畜米英や暴支や露助に復讐しようとはもう誰も思ってないんだよね。

そういうあれやこれやの・・・はじまりをふりかえるのは大事なことである。

で、『放送90年ドラマ 紅白が生まれた日』(NHK総合20150321PM9~)脚本・尾崎将也、演出・堀切園健太郎を見た。20世紀初頭、ラジオによる放送というシステムが生まれると大正十四年(1925年)、日本でもNHKの全身となる東京放送局が開局する。さらに日本では昭和十五年(1940年)にテレビ放送の実験も開始されるが・・・太平洋戦争の開戦により中断・・・テレビ放送は昭和二十八年(1953年)の本放送開始を待つことになる。つまり、昭和二十年(1945年)には・・・放送といえば・・・ラジオだったのである。

昭和二十年八月・・・日本は無条件降伏をした。敗戦である。

大日本帝国は解体され、首都東京は連合国によって占領された。

「大日本帝国」が敗北したことを国民に周知させるために・・・放送が重要な役割を果たしたことは言うまでもない。

平和な民主主義国家を建設するため連合国軍最高司令官総司令部(GHQ)は日本に進駐軍として君臨し、軍事独裁政治を行う。

日本の放送局はGHQの内検閲担当部署(CIE)に管理されることになった。

その支配は日米地位協定が締結される昭和二十七年(1952年)まで続く。

そして・・・日本国に米軍基地がある以上、占領はまだ続いているのである。

そういう状態を日本国民が許容している以上、沖縄県民もある程度、理解する必要がある。

これは・・・善悪の問題ではなく・・・現実なのだから。

どうにもならないことは・・・あるのです。

兵士として出征した放送局員の新藤達也(松山ケンイチ)は生還する。

故郷・広島は原爆により焦土と化し、東京もまた焼け野原だった。

職場に復帰した新藤を待っていたのは・・・「連合国の勝利を美化する宣伝」のための番組作りだった。

すべては・・・占領軍の意のままだったのである。

戦前はアナウンサーだった竹下光江(本田翼)は雑用係として復帰していた。

戦時に宣伝放送の技術を高めたCIEの職員は新藤にキューの振り方から指導する。

新藤はラジオ・ディレクターとして再教育されるのだった。

日系二世の通訳・ジョージ馬淵(星野源)は「平和な時代が来たことを国民に伝え、仇討ちや暴力などが禁じられたことを知らしめよ」と新藤に伝える。

新藤は・・・生き残った自分が「娯楽番組」を作ることに恥じらいを感じる。

そんな新藤を光江は戦後強くなった「靴下」いや「女」として支えるのである。

焼け跡には・・・焼かれたラジオがゴロゴロと転がっていた時代である。

やがて・・・戦後最初の年末に・・・特別番組を作ることになり、企画が求められる。

新藤は「紅白歌合戦」を提案するが・・・「合戦」が戦争を連想させるということでNGとなり、「紅白音楽試合」として認められるのだった。

男と女が歌で競い合う・・・平和な時代の象徴としての娯楽番組だった。

白組司会には古川ロッパ(六角精児)・・・。

「新聞には俺の名前が先にのるんだろうね」

「もちろんです」と光江。

赤組司会には水の江瀧子(大空祐飛)・・・。

「新聞には私の名前を先にのせてね」

「はい」と光江。

かわいいよ、本田翼かわいいよである。

ディック・ミネ(小松和重)や芸者の市丸(原史奈)などがキャスティングされていく。

「川田正子ちゃんにも歌ってもらいましょう」

「兵隊さんの汽車・・・まずいだろう」

童謡歌手・川田正子(石井心愛)は戦時中、出征兵士を送る歌を歌っていた。

兵隊さんを乗せて 

シュッポ シュッポ シュッポッポ

バンザイ バンザイ バンザイ

「歌詞なんて変えちゃえばいいんです」

かわいいよ、本田翼かわいいよである。

こうして、童謡「汽車ポッポ」は誕生した。

十月に公開された映画「そよかぜ」の挿入歌「リンゴの唄」を歌った並木路子(miwa)は人前で歌うことに抵抗を感じていた。

「戦死した人々を思うと・・・どんな顔で歌ったらいいのか・・・わかりません」

「わかります・・・私もそうだから・・・」

光江もまた・・・家族を戦火で失っていたのだった。

「放送はマイクの前で歌うだけです・・・あなたの歌いたい顔で歌ってください」と新藤。

「・・・」

「あなたの唄で励まされる人がきっといます」

かわいいよ、本田翼かわいいよである。

こうして・・・大晦日の一時・・・敗戦国民を慰める「紅白音楽試合」の生放送が始る。

検閲のために「台本通り」に放送しなければならないお約束である。

しかし・・・ディック・ミネは放送開始後にドタキャンしてくるのだった。

「どうしましょう」

「司会の二人に歌ってもらう」

「でも・・・台本変更の許可をもらわないと・・・」

しかし・・・占領軍の責任者は不在だった。

「私がサインしましょう」とジョージ馬淵がペンをとる。

「責任問題になりませんか」

「戦時中、両親は強制収容所送りになりました。私は軍に志願し、米国のために戦った。私は米国人になった。しかし・・・七輪で焼くメザシの焦げる匂いを嗅いだ時・・・自分がジャップであることを思い知ったのデス」

「ありがとう・・・ミスター馬渕」

赤いリンゴに くちびる寄せて

だまって 見ている 青い空

リンゴは何にも いわないけれど

リンゴの気持ちは よくわかる

放送を聞いた敗戦国民たちは・・・局舎に集まって来た。

「ありがとう・・・ラジオ」

「ありがとう・・・リスナー」

送り手と受け手が・・・共にボロボロだった時代。

会長をはじめ局員一同・・・初心に戻って最低賃金で働いたらどうかと思います。

せめて・・・公共放送の名の元に金儲け事業はやめようよ。

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安堂ロイド~A.I. knows LOVE?~

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2015年3月26日 (木)

私の父はチャンポンマンやけん家出するばい(荒川ちか)

1999年度生まれには吉田里琴、大橋のぞみ、優希美青など子役、元子役、アイドル女優などが顔を揃えているわけだが・・・今年はみんな16才になっていくのである。

つまり、中学を卒業して高校生に・・・芸能人としてひとつの節目なんだな。

このドラマはNHK BSプレミアムの水曜プレミアムスペシャルで2013年12月18日に放送されているので・・・荒川ちかの13才の頃のメモリアルである。

アイドルグループ乙女新党を2014年7月に葵わかなとともに卒業し・・・今年は一種の正念場なんだな。

女優としては早熟で存在感抜群である。

しかし・・・道程は長いのである。

末長く、頑張ってもらいたいと考える。

で、『私の父はチャンポンマン~長崎発地域ドラマ~』(NHK総合20150215PM3~)脚本・清水有生、演出・江崎浩司を見た。日本国は未曽有の危機に直面している。しかし、日常生活を営む人々にはそういう実感がないのが一般的である。その危機は東日本大震災が象徴するだろう。原発事故により放射能汚染された土壌からはどうしようもなく放射性物質が流出する。その危機を実感した市民は原子力エネルギーに用心深くなる。エネルギー危機が発生するのである。21世紀になったというのにロシアや中国というあまり民主的ではない大国が領土的野心を隠さない。実際に日本近海に侵略の手を伸ばしている。国防危機が発生しているのである。いかに穏健派は違うと言っても教義に「異教徒の奴隷化」を含むイスラム教の原理主義者が台頭している。本質的な宗教改革がなされない限り、テロリズムの嵐は止まないだろう。国際社会としての危機なのである。個人主義の時代・・・こういう危機に対処するのは困難を極める。教育者が裏金を作ってブランド品を購入している場合ではないのである。普天間基地の移転先を県外に求めれば、頭のおかしな指導者なら国外と言い出すかもしれないが・・・辺野古が妥協の着地点であることは明白なのである。沖縄県民である前に日本国民である・・・それが嫌だと言い出せば・・・みんなが困ったことになるのだ。今は耐えがたきを耐え忍びがたきを忍ぶ時代なのである。七十年間そうだったし・・・四年前からさらにそうなのである。それが歴史認識というものだ。知識人はそういうことをよく考えてもらいたい。

東日本大震災からさらに遡る二十年前の平成三年(1991年)、雲仙普賢岳から火砕流が発生し、報道、消防関係者を中心に死者43名の大惨事となった。噴火活動は四年間続く。

前田徳市(山口智充)は火砕流によって破壊された大野木場小学校の卒業生だった。

福岡市で就職した徳市だったが妻に先立たれ・・・娘の七海(荒川ちか)を連れ、故郷の長崎県雲仙市小浜町に戻って市の地域振興課に務めている。

かっては温泉街として観光客で賑った小浜町・・・しかし、災害以来・・・復興は達成されていなかった。

徳市は・・・街興しの決め手として・・・小浜チャンポンの売り出しを置き、自らイメージ・キャラクター「チャンポンマン」に扮するのだった。

地元の中学に通う七海にとって地獄の始りである。

たちまち「チャンポンマン」の娘だから「ちゃんぽん」と仇名がつけられ、給食で「チャンポン」が出れば「ちゃんぽんがちゃんぽんを食べている」と囃したてられるのである。

しかし、「やめろ」と言われても「やめないこと」に定評がある徳市なのである。

小浜町の全外食産業が「チャンポン」をメニューに加えるという行政指導を開始する徳市。

しかし、「寿司屋でチャンポンが出せるか」と寿司屋は激怒するのだった。

食堂「大将」の主人・北川(金子昇)も「小浜ちゃんぽん友の会」の会長に勝手に指名され困惑するのだった。

小浜一のチャンポンを作ると言われる食堂「峰岸」の主人の峰岸(石橋蓮司)もインチキ臭いチャンポンマンの活動を苦々しく思っていた。

しかし・・・実の娘や職場の上司に反対されても・・・我が道を行くチャンポンマンだった。

「小浜チャンポン祭り」で一日千食を完売するのが目標である。

「オバマ大統領に来てもらって小浜チャンポンを食べてもらおう」とホワイトハウスに手紙を出す始末である。

変わりものの父親になんとか・・・耐えていた七海だったが・・・ある日、父親が朝帰り。

父親が持っていた名刺からスナック「ルビー」を突きとめてた七海は・・・徳市が「ルビー」のママである赤石由美(田中美里)と親しくしているのを知り・・・ついに家出を決意する。

「捜さないでください・・・これからは一人で生きて行きます・・・七海」

置き手紙を残し、家を出る七海だった。

七海、かわいいよ七海である。

とりあえず・・・遠足で行った雲仙普賢岳に向かう由美なのである。

そこで起こった出来事は・・・七海の生まれる前の話なのだ。

あてもなく彷徨う家出中学生・七海の前に由美が現れるのだった。

家出支度をして歩いていた由美を見つけ、尾行してきたのだ。

「七海ちゃんでしょ・・・お父さんがよくあなたの写真見せてくれるから・・・ちょっと顔貸しなさい・・・」

「なんですか・・・」

七海が連れて行かれたのは廃業した温泉旅館「赤石」である。

「ここはね・・・夫の生まれた旅館なの・・・私の夫はね・・・あなたのお父さんの同級生なのよ・・・夫はこの旅館を再建するのが夢だった・・・だけどガンで死んじゃったのよ・・・そしたら・・・あんたのお父さんが帰ってきて・・・もう一度・・・小浜の街を復興させたいって・・・だから・・・うちのスナックでもチャンポンだすことにしたの・・・あんたのお父さん、徹夜でスープの特訓してくれたわ」

「あ」

仕方なく・・・家出を中止する七海・・・父親は・・・置き手紙さえ読んでいないのだった。

イベントのことに夢中だったのである。

「ち」

「お帰り」

「チャンポンマンなんてあかん」

「なんで」

「空も飛べんし」

「空か・・・」

目を輝かせる父親だった。

「え」

新聞とテレビが街興しの取材にやってきた。

海岸に記者を呼び寄せたチャンポンマンはハングライダーに乗って・・・空から舞い降りるのだった。

荒らぶる鷹のポーズを決めるチャンポンマン・・・。

とりあえず・・・派手なパフォーマンスでお茶の間の心を掴んだのである。

チャンポンマン・・・いや小浜チャンポンブームがやってきたのだった。

食堂「峰岸」を襲うチャンポンマン。

「チャンポンお願いします」

「お前に食わせるチャンポンはない!」

「昔・・・小浜の街は・・・温泉客の下駄の音がカランコロンと・・・響いてました。俺はあの音を子守唄に育ちました・・・あの音をもう一度聞きたいんです」

「わしだって・・・同じじゃ・・・しかし、お前のやり方はまちがっとる。みんながチャンポンを作ったら・・・不味いチャンポンもまじる・・・小浜チャンポンの名が廃る・・・」

「俺は・・・小さい頃から・・・チャンポンを食ってきました・・・俺の味で確かめたチャンポンは絶対美味い・・・俺の舌を怖がってるんじゃありませんか」

「なんじゃと・・・」

チャンポンを十杯食べて救急車で運ばれるチャンポンマン・・・。

「アホじゃのう・・・」

イベントの準備中のチャンポンマンを見舞う峰岸。

「陣中見舞いじゃ・・・」

「ありがとうございます」

七海は・・・イベントが成功するのかどうか・・・気がかりだった。

セーラー服をなびかせて会場に走る七海。

盛況である。

思わず、父親を手伝う七海。

「千杯、完売ばい」

「万歳」

苦しいのは・・・どこも同じ。

やる奴はやる・・・ただそれだけである。

ああ・・・チャンポン食べたい。

「チャンポンマンねまだまだだよね」

「え」

「だって・・・必殺ワザがないし」

「必殺ワザか」

「チャンポンビームとか」

父と娘は・・・観光足湯につかりながら・・・対話するのだった。

地域活性化は結局、地域でするしかないのだった。

誰もが助けてほしい時代なのである。

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2015年3月25日 (水)

警部補・杉山真太郎〜吉祥寺署事件ファイル(谷原章介)お父さんは刑事・・・なのね(本田望結)

59年という半世紀を越えるドラマ枠の消滅である。

最初の頃のスタッフなんてみんな彼岸に行ってるような気がする。

お茶の間ビジネスの栄枯盛衰がこの枠にはしみついている・・・。

基本的にはファミリー向けのドラマを提供してきた枠と言えるだろう。

好みにもよるが・・・絶句するような駄作もあったけれどそれなりに名作も送りだしている。

最近では「名もなき毒」「ペテロの葬列」の杉村三郎シリーズが印象深い。素晴らしい作品だが平均視聴率は*9.3%、*7.6%とフタケタには届かなかった。

枠に力がないとどんな良作も数字がとれない証拠のようなものだ。

2013年から月曜ミステリーシアターとしてミステリに特化したわけだが・・・それも仇花だったようだ。

その前は第43部を数える「水戸黄門シリーズ」(2011年終了)などの時代劇や「ハンチョウシリーズ」あるいは「こちら本池上署シリーズ」などの刑事ドラマもあった。

「こちら本池上署シリーズ」(2002~5年)といえば・・・署長とその家族という・・・ミステリにホームドラマを持ちこんだスタイルである。

署長の娘を演じたのが加護亜依で・・・いろいろな意味で懐かしい。

最後の作品となるコレは刑事とその家族の話である。

で、『警部補・杉山真太郎〜吉祥寺署事件ファイル・最終回(全11話)』(TBSテレビ20150323PM8~)脚本・もろさわ和幸、演出・竹園元を見た。警視庁吉祥寺警察署刑事課の刑事・杉山真太郎警部補(谷原章介)は愛妻の香織(酒井美紀)に先立たれ、長女の小学生・美晴(本田望結)に「お母さんより仕事が大切なのか」と責められ辞表を提出する。しかし、上司の岡崎課長(佐野史郎)や義母の青柳芳江(高橋惠子)に叱咤激励されて職務を遂行するのだった。

国民が政府に不満を抱くのはよくあることである。人間は基本的に不満を抱く生き物で・・・災難を自分より他人のせいにしたがるのである。それはそれでいいと思うが批判する場合はそれなりに覚悟が必要だ。特に自分の愚かさをさらけ出す批判者は弾圧されてしまえばいいのに・・・と思うことがある。

沖縄県民の苦渋はよくわかる・・・しかし・・・どうしようもないことは世界に満ちている。

愚かな選択で・・・苦渋が深まることのないように祈りたい気分である。

杉山真太郎は体調不良を感じている。

そのために知り合いの医師(山本圭)の病院で検査を受けるように勧める義母・・・しかし、杉山は単なる胃炎、義母が手術の必要な悪性腫瘍であることが判明する。

おりしも・・・吉祥寺署管内の路上で交番勤務の芹沢巡査長(吉永秀平)が殺害され、拳銃を強奪される事件が発生する。

残された妻(月船さらら)を案ずる杉山刑事。

重大事件なので警視庁が介入するところだが・・・いろいろな意味で予算がないので所轄が処理するのである。

永峰刑事(要潤)と香川刑事(片瀬那奈)は捜査の結果、現場付近の防犯カメラに映る野球帽とマスクで顔を隠した男を発見する。コンビニで携帯カイロと手袋、パンと缶コーヒーを購入し、ナンバープレートを隠した原付バイクには暴走族「血路」のステッカーが貼られていた。

「血路」は解散していたが・・・その過程で芹沢巡査長は深く関与していたのである。

村田刑事(石黒英雄)は捜査線上に浮かんだ「血路」の元総長・山根(土屋裕一)に事情聴取に向かうが、元総長にはアリバイがあった。

その帰路、村田は銃撃され重体となる。

現場にはレンタルビデオ店の会員証が残されていた。

会員証の男は万引きの常習犯(今野浩喜)でかって村田が検挙した男だったが・・・この万引きの常習犯にも村田銃撃時のアリバイがあった。

義母の手術が始り、病院に到着した杉山。

娘の美晴がかわいい看護師とかわいくない看護師の人間違いをしたことからヒントを得る。

「お茶の間には最初からそうだと思われていただろうが・・・最終回なのに・・・ベタな交換殺人とはな・・・」

「お父さん・・・病院にいても何の役にも立たないから・・・お仕事に行きなさい」

「美晴・・・」

娘の健気さに萌える杉山刑事・・・。

芹沢巡査長の葬儀で鎌本署長(榎木孝明)が襲撃されるが岡崎課長が犯人を逮捕する。

犯人は万引きの常習犯・三島ザビエルだった。

「ごめんね黒幕」

素晴らしいインターネットの世界で知り合った三人は・・・交換殺人を実行していたのだった。

三人目の男は・・・元刑事(清水紘治)だった。

サイレンを鳴らして到着する杉山刑事を不敵に待ちかまえる元刑事。

「なんでこんなことを・・・」

「警察官として働いて・・・負傷した俺を・・・警察は反社会勢力との交流を理由に免職処分にした・・・怨恨による犯行だ・・・珍しくもあるまい」

「原発事故があって酷い目にあっても・・・基地問題で不満があっても・・・失恋しても・・・学校の成績が悪くても・・・社会的に差別されていても・・・犯罪をする理由にはなりません・・・なぜなら・・・犯罪者にならない人もいるからです」

「そういう奴は・・・結局、自分以外の大切な誰かがいるやつなのさ」

「あなたは・・・悲しい人だ」

刑事たちは自分の行く末に想いを馳せる。

「ああなりたくなくなかったら・・・結婚しろ」と杉山。

「相手がいませんよ」と長峰。

「私が相手になってもいいわよ」と香川。

「え・・・」

夫婦刑事篇も楽しそうだが・・・枠はもうないのだった。

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サマーレスキュー〜天空の診療所〜

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2015年3月24日 (火)

今日の日はさようなら(杏)明日の日を夢見て(長谷川博己)

お似合いの二人というものは客観的なものである。

美男美女とか・・・馬鹿さ加減とか・・・そういうものがなんとなくフィットしていると誰かが思うのである。

しかし・・・自嘲的な感じで・・・本人がその言葉を使う時もある。

「私にはあんたのようなクズがお似合いかもね・・・」なのである。

「私が美人過ぎるから・・・イケメンすぎるあなたにしか似合わないのよ」となどと言えば殴られる可能性がある。

一方で相性のいい二人というのは主観的なニュアンスがある。

「なんとなくうまがあうんだよな」などとつぶやいてもそれほど問題はない。

「二人の相性はバッチリって占いの本に載ってた」というのも本人がそう思いたい場合が多い。

相性のいい二人がお似合いであること。

これが自他ともに認めるナイスカップルである。

お似合いなのに相性最悪と思っている二人は・・・馬鹿馬鹿しさが漂うんだよな。

つまり、夫婦喧嘩は犬も食わないのである。

で、『デート〜とはどんなものかしら〜・最終回(全10話)』(フジテレビ20150323PM9~)脚本・古沢良太、演出・武内英樹を見た。「恋愛ドラマはあたらない」と言われて久しく・・・刑事ドラマや医療ドラマだらけになったお茶の間ビジネスなのだが・・・ついにしびれをきらしたのか・・・今回は恋愛して恋愛して恋愛しまくっているわけである。そして・・・やはり・・・視聴率的にはいろいろアレで・・・視聴率上位は「相棒13」とか「DOCTORS3~最強の名医~」とかである。その中で・・・(月)のコレはかなり頑張っている。「恋愛していなさそうな感じ」がそこそこ受け入れられたのだろう。そもそも「恋愛」が苦手な人々のパロディーだしな。キッドのレビューで言えば(火)の「まっしろ」は「ナースのお仕事」と同じ構図なのにストレートに表現できずに大失敗。(水)は「怪奇恋愛作戦」だとしてもおふざけである。「残念な夫」はリアルすぎたし、「○○妻」はいつものように奇をてらっているだけ。(木)は恋愛に至る前後の人生の話でロマンチックがすぎたかもしれない。(金)の「セカンド・ラブ」は素晴らしい恋愛ドラマだった。(土)の「学校のカイダン」は小学生向けとしては最高である。ラストのキスシーンでは男子小学生の悲鳴があがるインパクトだ。(日)の「花燃ゆ」は王道なのだが大河としては邪道すぎるとも言える。まあ・・・恋愛がちょっと恥ずかしい時代・・・もはや虚構にまで腰が引けてしまうのかもね~・・・。大丈夫か、日本・・・まあ、余計なお世話か。

21年前・・・「数学者・藪下小夜子・講演会」で在りし日の母親・小夜子(和久井映見)の言葉を拝聴する小学生の藪下依子(内田愛→杏)である。

「ピュタゴラスはアルケー(万物の根源)は数であると主張しました。宇宙は法則によって支配され、それは数式で示されます。人間が生まれるのも死ぬのもすべては数によって支配されているのです。皆さんが誰かと恋におちるのも数によって定められています。それを運命と呼んでも良い。もしも・・・運命を変える力があるとすれば・・・それは人知を越えた神の数式に他ならない。つまり・・・運命を変えたいのなら神の数式を解かなければならないということです」

万福寺駅から電車に乗った母と娘。

娘は切符の数字で四則演算を行い10にする遊びがお気に入りである。

3478

たちまち解を得るちび依子だった。

8×(3-7÷4)=10

一応、計算してみよう。

7÷4=1.75

3-1.75=1.25

8×1.25=10

以上である。

「正解ね」

「私、この切符が欲しい」

「ダメよ」

娘を甘やかさない母である。

そこに・・・ちび巧(山崎竜太郎→長谷川博己)が現れる。

おそらく、アリス・コンプレックスが発動し、幼女に好意的になったちび巧・・・ちなみにちび佳織(高野友那→国仲涼子)がチョコレートを渡せなかった翌年である。

事情を察したちび巧は自分の切符をちび依子に渡してしまう。

(二人の秘密だよ)的なニュアンス発生である。

母と子が途中駅で下車すると・・・巧は切符を紛失したことを母の留美(風吹ジュン)に告げる。

ニートの気配が漂うのだった。

キセルはしないが・・・母親には迷惑をかけても恥じるところのない巧なのである。

ホームで巧と目を合わせる依子。

少なくとも・・・依子は・・・この時、恋に落ちたのである。

2年後のバレンタインデーで依子がチョコを渡せなかったのは・・・初恋の人・巧がどこにいるか・・・分からなかったからである。

そして・・・時は流れた。

谷口務(平田満)・留美夫妻の再出発のための結婚式から数日後・・・。

依子と鷲尾(中島裕翔)はお食事デート中である。

「鷲尾さんは食欲があって気持ちがいいですね・・・谷口さんは食が細くて・・・」

「もう・・・谷口さんのことは忘れてください・・・」

「できるでしょうか」

「いい方法があります・・・谷口さんとのことをノートに書きだすんです。昔の恋人を客観的に見ることができる手法です」

「やってみます」

こうして・・・巧との思い出をノートに認め始める依子。たちまち・・・ノートは一杯になり・・・。

ちなみに・・・依子は巧を・・・いつ初恋の人だと気がついたのかという問題がある。

恐ろしい記憶力を持つ依子なのである。

おそらく・・・谷口家で・・・巧の昔の写真を見た時には確信していたであろう。

つまり・・・依子はずっと片思いをしているのである。

それが片思いと自覚しているかどうかは別として。

一方、巧は佳織と自宅でデート中である。

依子が自分色に染めた書架を染め直す佳織。

二人はアーティストの事務所を立ち上げると同時に絵画教室を共同経営する準備に入っている。

「助かるよ・・・藪下さんは分類がメチャクチャだから・・・」

「あのさ・・・もう藪下さんの話はしないでくれる・・・サプライズパーティーが終わったら、もう電話するのも・・・会うのもやめて」

「・・・わかった」

巧は明らかに依子に恋をしているが・・・今は・・・身を引いている状態である。

自分はともかく依子にとって鷲尾の方がベスト・パートナーだと考えるからだ。

もちろん・・・佳織と交際していることが嫌なわけではない。

男だからな。

二人の女を愛するなんて造作もないのである。

しかし・・・本当に好きなのは・・・。

サプライズ・パーティーとは・・・鷲尾が企画した依子の三十歳の誕生会である。

俊雄(松重豊)にも島田宗太郎(松尾諭)にも相談し、宗太郎はノリノリでバースデイケーキマンになるのだった。

「その日・・・プロポーズしたいと思います」

「そうか」と俊雄は父として目を潤ませる。

会場は・・・絵画教室である。

そして・・・三月二十二日・・・依子の三十才の朝が来た。

亡霊の小夜子は依子の誕生日を祝福する。

しかし・・・日曜日なのに・・・鷲尾からデートのお誘いがないのだった。

仕方なく電話する依子。

「どうしているかなと思いまして」

「日曜日なのに・・・急な商談が入って・・・すみません」

「いえ・・・」

仕方なく、俊雄に電話する依子。

「ごめん・・・今日は剣道仲間から飲み会にさそわれて」

「そうですか」

二人はサプライズ会場の準備に向かっている。

「あらあら」と嘲笑する小夜子。

「しっ」

仕方なく、巧に電話しようとして思いとどまる依子。

ノートに・・・巧との思い出を筆記しまくるのだった。

一方・・・依子との完全なる別れに苦しみを感じる巧。

気分転換のために街へ出るのだった。

何しろ市庁舎前の書店で「南くんの恋人」でおなじみの内田春菊のサイン会があるのだ。

購入した書籍にサインをもらい市営バスに乗り込んだ巧はレジャーとしてのバス・ツアーを楽しむ依子と遭遇するのだった。

映画「卒業」と同じ構図で・・・後部座席で肩を並べる二人。

「谷口さん・・・何をしているのです」

「ちょっと本を買いに」

「もう・・・ひきこもりとは言えませんね」

「ええ・・・あ・・・誕生日おめでとうございます」

うっかりなのか・・・それともそれだは言いたかったのか・・・サプライズを無視する巧。

「あ・・・ありがとうございます」

「藪下さんは・・・」

「レジャーです」

「ああ・・・路線バスの旅的な・・・じゃ・・・鉄道でも・・・」

「切符は好きです」

「切符・・・」

「ポンポコポーン」

「なんじゃそりゃ」」

依子は・・・おそらく巧は忘れているであろう・・・記念の品を取り出す。

「四則演算で10になります」

「そうですか」

依子は巧の反応にガッカリする。

サプライズのことが心にかかり巧はそれどころではないのである。

思わず切符を落してしまう巧。

ドタバタと拾おうとして巧は依子の左手の薬指を踏み、依子は巧の鼻を頭突きする。

「鼻血が・・・」

「まったく・・・」

前の席に座っていた老女(白石加代子)が巧にティッシュを差し出す。

「仲がよろしいのね」

「私たち・・・そういうのじゃありません」

「お互いに別の人と付き合ってますから」

「そう・・・お似合いに見えたから・・・」

「とんでもない・・・お互いに別の人と恋を楽しんでいます」

「恋が楽しい・・・」

とにかく・・・魔法使いのおばあさんにしか見えない老女は微笑む。

「恋は楽しいものかしら・・・むしろ、苦しいものでしょう。恋が楽しいなんておままごとみたい・・・私なんか・・・そりゃあ・・・ひどい相手と結婚して・・・苦しい思いをしてきました・・・でも・・・相手に死なれてみると・・・淋しくて淋しくて死にたくなるくらい・・・恋なんて・・・底なし沼のようなものよ・・・けして、足を踏み入れないで」

依子の誕生祝いにと・・・真っ赤な林檎を一個くれる老女だった。

老女が去った後でつぶやく依子。

「恋が苦しいなんて・・・」

「ありえないよなあ・・・」

巧も嘯くのだった。

その頃、巧の不在に気がついた佳織は巧に電話をかける。

「どこにいるのよ」

「マナー違反ですよ」

「誰かと一緒?」

「藪下さんと・・・」

電話は切れる。

次に依子の携帯に着信がある。

「大変です・・・お母様が自宅で倒れたそうです・・・すぐに帰りましょう」

「いや・・・たいしたことないと思うけど・・・」と事情を察した巧。

「何を言っているのですか」

依子は巧と共に谷口家に急行するのだった。

もはや・・・明らかに巧は・・・依子の鷲尾との婚姻を無意識に拒絶しているのだった。

しかし・・・サプライズ・パーティーは滞りなく進行する。

「ハッピーバースデー」

「留美さん・・・寝ていないと」

「いえ」

「鷲尾さん・・・商談は」

「いえ」

「お父さん、飲み会は」

「いや」

「いいんです・・・依子さんをみんなでだましたんですよ」

「え」

「サプライズパーティーだよ」とバースデイケーキ。

「どなた?」

「とにかく・・・ろうそくを・・・」

漸く・・・自分の誕生日をみんなで祝ってくれていると理解した依子。

「うれしいです・・・こんな・・・誕生日・・・生まれて初めてです」

バーベキューパーティー開催である。

宗太郎はお祝いに「恋という名の奇跡に乾杯」を歌うのだった。

ラリラリラン

ほろ酔い

匂いがつかない

あの歌をきかせて

好きな人がおると

ユリーフランキーは重めなの?

「なかなかいい歌だった」

「佳織と巧、鷲尾と依子さんの幸せを見て・・・勇気をもらった俺は離婚寸前のあいつとやり直すことに・・・」

顔はほとんど見せないが明らかにヤンキーな宗太郎の妻(石川ひとみ)である。

「実は・・・私もお見合いを・・・」と俊雄。

見合い相手はニ十五歳年下の看護師(羽村純子)だった。

務も教育評論家として再生する意欲を見せているという。

そして・・・巧も働くことに・・・。

依子は感激した。

「恋の力は偉大です・・・若年無業者が働きだすなんて・・・」

「さて・・・そろそろ・・・鷲尾くんと二人で・・・続きを」

「皆さん、ありがとうございました。こんな素晴らしい誕生祝いを・・・夢のようです。これも鷲尾さんのおかげです・・・谷口さんとデートしていた頃は想像もできませんでした」

「君もひどかったけどね」

「何がです」

「いつもにらみつけて」

「にらんでいません」

「口をとがらせて」

「アヒル口です」

「アヒル口だって」

熱くバトルを始める二人。

「おいおい・・・やめろよ・・・まるで夫婦漫才みたいな」と宗太郎。

「夫婦って言うな」と俊雄。

「大丈夫です」と鷲尾。

「私も気にしてませんから・・・だって依子さんと鷲尾さんはアツアツですものね」と佳織。

しかし・・・サッカー観戦デートではサッカーのこと。ボーリングデートではボーリングのことしか語れない依子。ただならぬ空気の重圧は高まり続ける。

「ここでやります」とついにプロポーズに踏み切る鷲尾。

「結婚してください」

「ありがとうございます」

「それは・・・イエスってこと」

「イエスです」

一同が束の間の安堵をするのだった。

鷲尾は指輪を取り出すが・・・死ぬほど腫れた薬指は受け付けないのである。

「あなたが踏んだから」

「君が手を出すから」

「お前たち・・・バスで何やってんだ」

佳織の女の直感が炸裂する。

「どうして・・・今日に限ってバスにのるのよ・・・」

「本当に偶然なんだ」

「偶然なら余計にタチが悪いわ・・・それって運命じゃない」

ヤンキー女は運命に弱いのである。

「なんで・・・谷口さんの思い出ばかり・・・」

「あのノートがいけないんです」

すでにノートは四冊目に突入していた。

「ひどい・・・依子さんの頭の中は谷口巧でいっぱいだ」と泣きじゃくる鷲尾。

「お前ら・・・頭にくるな」と佳織。

「結局・・・お前ら・・・好き合っているんじゃないか」

「そんなことはない・・・鷲尾さんといると楽しいし、谷口さんといるのは苦痛です」

「佳織と一緒にいると安らぐんだ」

「私とは苦しくなかったってことでしょう」

「そうだな・・・恋って苦しいものだからな」

「恋が・・・苦しい?」

「プロポーズは・・・撤回します」

「私も」

「どうして・・・」

「だって・・・お前たち恋をしてるじゃないか」

「ししててまなせいんよ」

「息もピッタリだし」

「多数決をとろう」

依子と巧以外・・・依子と巧の交際に賛成なのだった。

「そんなの・・・ダメだ・・・僕が彼女を幸せにできるはずがない・・・鷲尾くん・・・彼女を幸せにしてやってくれ」

「私のような心のない人間が・・・谷口さんと付き合ったら・・・谷口さんを壊してしまう・・・佳織さん・・・谷口さんを幸せに・・・」

「すげえ・・・すげえ・・・愛の告白だよ・・・最高のロックンロールだよ」

「こんなのはじめて・・・なんていう思いやりの暴走なの・・・バリバリ伝説すぎる」

「・・・うらやましいです」

「そういうことだ・・・解散」

土下座した二人を残し・・・退出する一同だった。

残された二人は禁断の果実を見つめる。

手にとりかじってみる依子。

一つのリンゴを君と二人でかじる

君の方が少し大きくかじる

そして二人で仲良くかじる

このリンゴは魔法使いのおばあさんからもらったもの

お金を払わなかったのでおつりももらえなかった

間接キスの後でついに唇を交わす巧と依子だった。

「よくもお彼岸ネタをパスしたわね」と微笑む小夜子。

俊雄にナース姿をサービスするのだった。

あまりにもかわいそうな噛ませ犬の二人は・・・なんとなく意気投合するのだった。

留美は務の家で赤い下着を装着する。

「どんなに・・・苦痛でも・・・その人がいなくなったら・・・生きている意味がないと思う気持ち・・・それが恋なのかもしれません」

「そんな・・・底なし沼は・・・こわすぎる」

寄り添う二人に・・・モーツァルト作曲の歌劇「フィガロの結婚」の「恋とはどんなものかしら」が流れ出す。

恋とはどんなものなのか

知っているなら教えてほしい

僕の胸を疼かせるもの

これが恋ってやつですか

僕にはとんとわからない

なにしろもやもやしています

とにかくなにかが欲しいような

うれしいような

せつないような

氷の世界

灼熱地獄

右往左往するばかり

昼も夜も区別なく

そわそわして

ため息ばかり

それでもまだ見ぬ幸せが

すぐ近くで待っている

そんな希望に急かされる

これが恋ってものですか?

四月になって・・・桜の季節。

依子と巧はデートをする。

依子は春に合わせてカエルで装うのだった。

満開の桜の木の下で依子は巧に問いかける。

「まだ見ますか」

「もう少し見ましょう」

巧はそっと依子と手をつなぐ。

依子は初恋の人を手中におさめたのだった。

「あなたにしては上出来ね」

桜の下から小夜子が囁いた。

ちなみに螺旋を描いてふりだしに戻るということでは「問題のあるレストラン」とまったく同じ展開である。ま・・・この形式はある意味、無難だもんね。

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2015年3月23日 (月)

妹よ・・・お前が久坂玄瑞の妻としては稚劣であることは明らかだ(伊勢谷友介)

吉田松陰(伊勢谷友介)が妹・文(井上真央)に贈った言葉で現存しているものが安政四年(1857年)十二月五日付の「文妹久坂氏に適くに贈る言」である。

「久坂玄瑞は防長年少第一流の人物にして、固より亦天下の英才なり」で結婚相手の久坂を高みに持ちあげ「今少妹の穉劣なる、其の耦に非ざるや審らかなり」と妹の文を貶めるわけである。

耦とは二人が並んで田畑を耕す姿であり、夫婦の意味を含んでいる。

つまり・・・夫と肩を並べるには幼くて劣っていることを肝に銘じよと言うわけである。

この後も男女同権の世から見れば物凄く男尊女卑な文言が並ぶのだが、すでに嫁いだ二人の妹よりも年少の文は松陰が溺愛した妹なのである。

そして・・・結婚相手の玄瑞は・・・愛弟子である。

この夫婦が上手くいくように・・・余命僅かな兄は必死の思いなのである。

おそらく・・・文は松陰に似て・・・才気が溢れていたのであろう。

しかし、男と女が同権ではない時代では・・・それは危ういことであった。

松陰は・・・努力して夫に相応しい妻となるように妹を励ます。

その後で・・・「貞節専心」を説き、「再醮改適」を戒める。

「再醮改適」は離縁して再婚することである。

「そういうことをお兄ちゃんは絶対に許さない」と釘をさしているのだった。

まあ・・・吉田松陰が妹にそういう私信を送り・・・それが現存していることがある意味、奇跡なのである。

で、『花燃ゆ・第12回』(NHK総合20150322PM8~)脚本・大島里美、演出・渡邊良雄を見た。例によってシナリオに沿ったレビューはikasama4様を推奨します。今回は待望の優香演じる・文の姉にして小田島伊之助の妻・寿の描き下ろしイラスト大公開でお得でございます。一家勢揃いを楽しみにしておりますがあくまでマイペースでお願いします。お茶の間ビジネスと男尊女卑の時代の描き方の相克は悩ましいところでございますなあ。「昔はひどかった」と感じてくれるのはまだしも・・・女性に対してひどい描き方をしていると言い出す馬鹿がいるので困るのですよね。その結果、戦国武将からは側室の存在が消え、幕末維新からは芸妓が消えると言う恐ろしい歴史改変が進行するとという・・・。本来、杉家は儒家の一族ですから・・・一般家庭よりも正しい男尊女卑が家訓になっていたと思われます。ただし、女子が教養を積むことはよしとされていた。おそらく、寿は内向的な家庭に生まれた外向的な女だったのでございましょう。ようやく、杉家から解放されて社交を楽しめるようになった・・・お城の側で暮らせることが嬉しかったのでございましょうね。甘党の家に生まれた辛党は辛いものでございますから~。

Hanam012安政四年(1857年)十二月、久坂玄瑞と文は婚姻する。この頃、幕府の老中首座である堀田正睦はアメリカ領事タウンゼント・ハリスと日米修好通商条約の交渉を行う。条約内容の合意を得た正睦は目付岩瀬忠震とともに安政五年(1858年)に入京し、孝明天皇の条約への勅許を得るために運動を開始する。しかし、開国に反対する岩倉具視らの抵抗によって三月、孝明天皇は勅許を拒否するに至った。この裏には将軍位継承問題が絡んでいた。徳川家定は病床にあり、徳川慶福(紀伊藩主)を推す南紀派と徳川慶喜(一橋徳川家当主)を推す一橋派が対立し、公武共に割れていたのである。勅許の妨害工作は一橋派によるものであった。正睦は一橋派との協調を模索する。しかし、正睦が江戸を留守にする間に南紀派が工作し、四月、大老に井伊直弼が就任し、一橋派は駆逐される。六月、直弼は勅許なしの条約調印に踏み切る。一橋派はこれを違勅調印として攻撃材料にする。日米修好通商条約調印についての幕政批判はやがて尊王攘夷運動として発展するのである。外交が権力闘争の道具となった瞬間であった。

雪のような花嫁衣装を着た文は松本川を渡った。

田床山の麓にある杉家から松下村塾を通りすぎ、松本川の西にある明倫館を越えて南に折れれば久坂家である。そこは城下町の片隅だった。

杉家と比べたらずっとにぎやかな街中である。

藩医としての役目柄、微録ながら城近くに居を構える久坂家なのであった。

家は萩城下を挟む東の松本川に対し、南西の橋本川に近い。

婚礼の儀はすでに松下村塾ですませており、塾生たちに伴われ、文は久坂家に向かったのである。

途中、高杉の屋敷から晋作がやってきて列に加わる。

塾生の中では格式が段違いの晋作だったが・・・足軽の伊藤利助と肩を並べて歩く。

しかし、言葉には遠慮がない。

「馬子にも衣装とはこのことだな」

「ははは」

「しかし、俺も馬が衣装を着ていると言われている」

「ははは」

晋作がおどけて顔を伸ばしたために利助は笑いがとまらなくなる。

「こりゃ・・・利助、笑いすぎじゃ」

晋作は自分で撒いた種を刈り取るが如く諌めるのだった。

文はそのやりとりを聞きながら微笑んだ。

この分では初夜の儀はいつになることやら・・・と考えたのである。

案の定、久坂家ではごく仲間内の酒宴となった。親戚縁者の少ない玄瑞なので仲間たちは遠慮がない。

文は花嫁装束を脱ぎ、先に床に入った。

十五歳の花嫁である。

横になっている間にうとうとする。

漸く酒席から解放された玄瑞が夫婦の寝室に入ってきたのは深夜である。

玄瑞は遠慮がちに布団にもぐりこんできた。

文は玄瑞が時々、手淫を行い、その際に自分の姿を思い描いているのを知っている。

なにしろ・・・松下村塾に入り浸る玄瑞にとって身近な女は文だけだったのである。

玄瑞はそっと文の胸に手を伸ばしてきた。

寝巻の上から形を確かめるように乳を撫でる。

「くすぐったい」

「・・・起きていたのか」

玄瑞の手が止まる。

文は両手を伸ばして下から玄瑞を抱き寄せた。

「今宵より・・・妻でございます・・・お好きになされませ」

「・・・」

玄瑞は無言で文の身体を抱いた。

くのいちとして一応、寝技も学んだ文であるが・・・実際に男と床を共にするのは初めてであった。

未通女ではあるが・・・他心通である文は・・・他人によって男女の経験を積んでいる。

今も玄瑞の心を読んでいる。

玄瑞の男根は屹立していたが・・・それを収める場所を見出せず彷徨っていた。

玄瑞の欲望に感応して潤い始めた秘所に文は玄瑞の男根を誘っていく。

「ここかのう・・・」

「さようです」

「む」

勢いよく繰り出されたものによって文は破瓜の衝撃を感じる。

玄瑞は遮二無二に動き始めた。

文は痛みに耐えながら・・・ずっと想いを寄せていた男との行為に悦びを感じていた。

「いくひさしく」

「うむ・・・いくひさしくじゃ・・・」

「あ」

「参る」

玄瑞はほとばしった。

短い夫婦生活の始りだった。

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2015年3月22日 (日)

男の人に好かれるタイプです(真野恵里菜)牡丹の花言葉は高貴な恥じらいです(麻生久美子)

そこかっ。

谷間の谷間に突入である。

冬ドラマのレギュラー・レビューも「デート」を残すのみなんだな。

冬と春の間には春のお彼岸があって・・・幽霊シーズンなんだよな。

シーズンなのか。

夏はお盆の幽霊シーズン。

秋は秋のお彼岸の幽霊シーズン。

冬は年末年始の幽霊シーズンがあるけどな。

一年中、幽霊シーズンじゃないか・・・。

2015年冬ドラマは・・・恋愛ドラマ特集みたいだったので・・・これがレギュラーでも良かったよな。

しかし・・・美中年女ばかりで・・・ちょっとアレなんだよな。

ケラは美少女に興味はないとか言ってるが・・・単に恐妻家なんじゃないのか。

ま・・・恐妻家は愛妻家だからな。

いくつになっても美少女って・・・妖怪じみてるけどな。

で、『・第9回~第10話乙女☆純情奇譚』(テレビ東京201503070012~)脚本・田中眞一、演出・濱谷晃一を見た。「牡丹灯籠」プラス「小さなおうち」という感じでお嬢様幽霊・霧島霞(真野恵里菜)が登場する。太平洋戦争の空襲による死者は70年前には日常茶飯事で幽霊化していたわけである。一日で十万人が無念の死を遂げる・・・なかなかないことだ。一方で「牡丹灯籠」は中国明代の小説「牡丹燈記」をルーツとする三遊亭圓朝の怪談噺である。「お露新三郎」から「お札はがし」の件をモチーフとした作品は数知れず、一種のお約束である。

あらすじを言えば・・・旗本・飯島平左衛門の娘・お露が浪人・萩原新三郎と相思相愛になる。しかし、新三郎が奥手でなかなか逢いにこないので・・・恋やつれでお露は絶命してしまう。看病していた女中のお米もほどなく後を追い・・・お嬢様と女中という最強の幽霊コンピが誕生する。やがて・・・お盆の季節がやってきて・・・カランコロンと下駄の音を響かせ、牡丹灯籠を手にお嬢様と女中が・・・新三郎の家にやってくる。やつれて行く新三郎を案じた周囲のものが死霊除けのお札などで結界を張るが、欲にかられたものがお札をはがし・・・憐れ、新三郎は祟り殺されるのである。まあ、幽霊側からすればハッピーエンドである。

さて・・・そういうことで・・・お露にあたるのが空襲で死んだご令嬢の霞、女中のお米がばあやの草壁静子(木野花)という布陣。ターゲットは霞の許嫁にそっくりの三階堂刑事(仲村トオル)なのである。

悲別(大倉孝二)とともに遺体捜索中の三階堂は森の中でクマに襲われた霞と出会う。

拳銃でクマと対話した三階堂は足を痛めた霞を背負って霧島家のお屋敷まで送り届ける。

迎え出たのは家政婦の静子。

三階堂は勧められて海老料理をごちそうになるのだった。

静子の舞いで眠りに誘われた三階堂。

霞は三階堂の寝顔を見つめる。

「次の満月の夜が期日でございます」と囁く静子。

「わかっています」と応じる霞。

何やら・・・妖しい二人なのである。

ただ一つ明らかなことは・・・霞、かわいいよ霞ということだ。

すっかり霞の虜になった三階堂は喫茶「面影」で想いを語る。

そこへ・・・霞がやってくる。

男なら誰もが憧れる美しいお嬢様に・・・唄子(犬山イヌコ)は思わず採点する。

霞 100点

萌香(今野鮎莉)18点

夏美(麻生久美子)3点

・・・なのだった。

「ゾンビ」映画を見て・・・ゾンビを「心のない体の腐った人」と呼び、ポップコーンを「とうもろこしの炒ったもの」と呼ぶ浮世離れした霞。

好きなスイーツはシベリア(羊羹のカステラサンド)である。

零戦の設計者が主人公のアニメ「風立ちぬ」の時代の人であることが暗示されるのだった。

霞とデートする三階堂はウキウキだが・・・次第にやつれて行くのである。

「死相が出ている」と洞察する眠山(山西惇)なのである。

黴田(水澤紳吾)が修行中の寺に差し入れに行った冬は昭和十九年撮影の写真に霞そっくりの少女を見出し・・・真相に迫る。

このままでは・・・三階堂がとり殺されると危惧した夏美は原因不明の過労で入院中の病院に駆けつける。

「その話は本人から聞いた・・・でもどうしても一緒にいてくれと頼まれたんだ」

「え」

「俺は頼まれたら嫌とは言えない男だ」

「ええ」

「俺は彼女と一緒にあちらの世界に行く」

「ぇぇぇ」

怨霊としての正体を露わにした静子は病院から三階堂を攫っていくのだった。

霧島家の菩提寺の住職(ミッキー・カーチス)は写真の由来を語る。

霞のお見合い前日に霧島家は空襲で全滅していたのだった。

そして・・・霞のお見合い相手は・・・三階堂に瓜二つの帝国軍人だったのである。

お見合い相手に未練を残した霞は亡霊となってしまったのだ。

事情を聞いた三階堂は軍服に着替えて旅立つ決意を固める。

「満月の夜に冥界へのゲートが開きます・・・これからはずっと一緒ですね」

「うん」

三階堂の体全体に幽霊を寄せ付けない経文を書くことで対抗しようとするが・・・人体に写経は職人的技量を求められるので・・・なんだかんだ困難を極めるのである。

仕方なく夏美は単身で幽霊屋敷に乗り込む。

「三階堂は連れていかせない」

「三階堂さんは私のもの・・・誰にも渡さない」

霞も怨霊としての正体を見せて夏美は為す術もないのである。

ついに・・・ウェディングドレスに身を包み・・・新婚旅行に旅立つ準備万端の霞。

霞、きれいだよ霞・・・なのだった。

「夏美・・・もういいんだよ」と三階堂。

「よくない」

「関係ないじゃないか」

「関係あるもの・・・私、あなたに言えてないことが・・・」

必死に三階堂にすがる夏美。

そのみじめな姿に心を動かされる・・・霞だった。

「よく考えたら・・・向こうには本物のあの方がおられる・・・三階堂さん・・・あなたはその無様な女性を・・・幸せにしておあげなさい」

「霞ちゃん・・・」

「月がきれいですね」

霞は旅立った。

花嫁は・・・夜汽車にのって・・・あの世に向かうのである。

三階堂と夏美は・・・現世の森に戻ってくる。

そこにはお屋敷の名残はないのだった。

セット費用が捻出できなかったのだ。

「月がきれいですねは・・・夏目漱石が翻訳したアイ・ラブ・ユーだね」

教養を示す眠山。

「夏目漱石って誰ですか」

教養とは無縁の三階堂だった。

こうして・・・夏美は・・・愛しい幼馴染の奪還に成功したのである。

しかし・・・だからといって何かが変わることはないのだった。

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2015年3月21日 (土)

今日まで二人は恋という名の(亀梨和也)旅をしていたのだ(深田恭子)

男と女は分裂した細胞片でございます。

運命によって引き裂かれた二人は宿命のためにめぐり会うのです。

そのために男と女は自分に欠けているものを相手に求めます。

しかし、元は一つなので同一であった証拠も欲しいのです。

自分にはないものと自分と共通するものを同時に満たすことは難しい。

恋が苦しい由縁でございます。

楽をしたければ妥協するしかございません。

妥協しない二人が恋の高みに登るのは困難を伴います。

けれど、何としたことでしょう。

世界は奇跡であふれているのでございます。

で、『セカンド・ラブ・最終回(全7話)』(テレビ朝日201503202315~)脚本・大石静、演出・片山修を見た。異性に理想を求める人の恋の成就は難しい。相手にとっての理想の人にならなければならないのです。「結婚」は個人の妥協を社会が保障する制度と言うことになります。簡単に言えば「結婚」を使えばある程度のハードルや落差は補完されるわけです。シンデレラ・ストーリーがゴールを結婚と決めているのはそのためです。脚本家の拘りは「結婚」を使わないハッピーエンドと言うことになりますが・・・これはきっと「女」の意地なのでございましょうねえ。それはそれで哀愁ですな。

個人の自由を尊重しすぎて人間としての共通認識を見失う。これはコンテンポラリーな問題ですが・・・いつの時代にもそうだったとも言えます。

未来がもっと良くなるようにと・・・人間は願いすぎるのかもしれません。

ま、そこが悪魔の思う壺なんですけどね。

ダンスという芸術に目覚めた平慶(亀梨和也)は「恋と仕事の両立」を目指すが、パートナーは「結婚」を目指す。二人の目的地が同じであることを・・・二人は見出すことはできない。

西原結唯(深田恭子)はパートナーが「仕事」と結婚しているとは夢にも思わないが・・・恋が終わった時に思い出しか残らないのは困ると思うのだった。

平慶は「好きなのに従わない相手」に戸惑いつつ、世界ツアーに旅立ち、西原結唯は「好きだから自分」を鞭打つのである。

平慶は・・・「仕事」で成果を出し・・・高みに登るが・・・心は満たされない。

「恋」を奪われたからである。

帰国した慶は・・・早速、失われたものを探し始めるのだった。

あれから・・・一度も応えてくれない・・・恋人を求めて・・・。

本当に困った奴だな。

格差社会においては情報もまた格付けされる。

しかし、格付けに必要な権威というものが拡散し、情報の価値は非常に曖昧なものとなる。

たとえば・・・コンテンポラリー・ダンスというものを無知な人々が理解不能であるがゆえに嘲笑すれば、コンテンポラリーダンスは嘲笑されるものとなるのである。

もちろん、意味のないつぶやきだけが世界のすべてではないが・・・それが日常となればものすごい価値の下落がまかり通るかもしれない。

古典芸能のような伝承芸能の真髄は失われ、究極的な創作の意味も失われる。

戯言だけが蔓延するわけである。

たとえば・・・しっとりとまとめあげられたこのラブ・ロマンスにうっとりできる能力さえ失われる・・・恐ろしい世界がそこまできている気がする。

コミック「舞姫テレプシコーラ」においてはローザンヌでクラシックの素養よりもコンテンポラリーのセンスが問われる時、創作力を持たないダンサーは表現力を失うのである。

振付師といえばアイドルのパフォーマンスのスタッフという認識しかなければ「世界」がいかにその才能を待望しているかということを理解できない。

自分の無知を知らず、未知のものを嘲笑することほど愚かなことはない。

このドラマにはそういう怒りがこめられていると考える。

お茶の間とは別に虚構の世界では・・・アスリートが国際大会で優秀な成績をあげたのと同じインパクトで世界(主にヨーロッパ)で高い評価を受けたアーティストとなった慶の帰国を待ちかまえる日本の報道陣。

一足早く出迎えたマネージャーの野口綾子(早見あかり)は大衆の望むスタイルを慶にレクチャーする。

このドラマにおける綾子はすでに天使の役割となっている。

神に選ばれた崇高な魂を・・・愚民から守る守護天使なのである。

同時に綾子は・・・慶と結唯という不器用な二人の人間を厳しく導く使命がある。

そういう役割を背負わされた人間の苦悩にももう少しスポットライトをあててもよいが・・・全七話では少し尺不足である。

あかりん、かわわいいよあかりんと言う他はないのだった。

「手荷物なんて持たないで・・・飾らないと・・・日本人は素晴らしさの分からない人種なのよ」

「飾らない人が受けるんじゃないのか」

「それは一般人の場合よ・・・選ばれた人のイメージがないとどこまでもぶらさがってくるわよ」

「・・・」

報道陣がつめかける。

「帰国された感想をお願いします」

「今の気持ちを一言で」

「今、何が食べたいですか」

「この喜びを誰に伝えたいですか」

「面白いコメントをお願いします」

馬鹿の質問に・・・笑顔で答える慶だった。

世界の果てまで踊りに行って成功をおさめた慶だったが・・・心の片隅では結唯の不在を常に嘆いていたのである。

「成功の秘訣は何ですか」

「人生を変えるためには・・・女神に出会うことが必要でした」

死にかけた自分を蘇生させてくれた・・・美しい女神が恋しくてたまらない舞踏の男神なのである。

女神の声が聞きたくて世界の果てから電話をした慶だったが・・・結唯は応答しなかった。

仕方なく慶は県立山王女子高校を訪ねるのだった。

「あ・・・平慶・・・どうしてこんなところに・・・」

ざわめく女生徒たち。

綾子とは別の意味で天使としての役割を果たす竹内そら(小芝風花)は最後の出番を果たすためにつぶやく。

「先生に逢いに来たのよ・・・ここでは逢えないけどね」

努力ではどうにもならない天に与えられた美しさの存在を認めるための天使なのである。

このドラマは三人の天使と・・・馬に蹴られて死ぬ二人の人間で構成されている。

ちなみに・・・人の恋路を邪魔する奴は馬に蹴られて死んじまえ・・・ということです。

馬死に一号の教師・高柳太郎(生瀬勝久)が校門に立つ。

「何しに来た」

「結唯さんに逢いに」

「いませんよ・・・彼女はもうここにいない」

職員室に慶を招き入れる高柳だった。

同僚教師の一人は慶のファンで写真集にサインを求めてやってくる。

嫉妬で苦悶する高柳である。

高柳は結婚制度の象徴である。それが・・・単なる国家的な契約制度に過ぎず・・・愛とは無関係である・・・と言うのが国際人の慶のポジションなのである。

「なぜ・・・彼女と結婚しなかったのだ」

「愛は求めました」

「わからん・・・君のようなもののために・・・僕がなぜ・・・家庭を失い・・・結唯くんも失ったのか」

「二兎を追うもの・・・」

「それ以上言うな」

「教えてください・・・彼女は今どこに・・・」

「誰が教えるか・・・お前なんか悶え死ねばいい」

どこかで馬がいななくのだった。

慶は結唯の実家を訪ねる。

馬死に二号である母親・真理子(麻生祐未)はテレビに登場する有名人の来訪に昇天すると同時にずる賢く振る舞う。

狂躁的な人格は激しく分裂するのだった。

「何故だか分からないけど死ぬほど嬉しいわ・・・サインをください」

「教えてください・・・彼女は今どこに・・・」

「知らないわ・・・あなたが連れて行ってしまったから・・・今は一人で暮らしているのでしょう」

しかし・・・神は母親の携帯電話の着信音を響かせる。

表示された「結唯」の文字に素早く反応する慶だった。

「もしもし・・・お母さん」

「今・・・どこにいるの」

「慶・・・」

「百人一首なの・・・百人一首なのね」

どこかで馬の蹄の音がする。

ついに・・・慶は結唯の居場所を突き止めた。

農芸化学総合研究所・・・。

公立高校の化学教師だった結唯は民間の研究所の研究員になっていた。

結唯は職場の研究施設を慶に案内する。

「食糧危機に備えた効率的な野菜工場の研究をしているの・・・私の専門はレタスよ」

「レタスの花言葉は冷たい人だよ・・・」

「そうねえ・・・思い通りにならないところは慶に似ているかも・・・」

「結唯と一緒に暮らしたい」

「私にもようやく・・・夢が出来たの・・・慶に話を聞いてもらえてうれしいわ」

「結唯が好きなんだ」

「でも・・・まだまだなのよ・・・レタスは手がかかるの・・・あなたにふりまわされている時間はないのよ」

「・・・」

レタスに敗北したとは信じられない慶だった。

天使である綾子は慶を厳しく鞭打つ。

「ストーカーのように追い回して、重くなったら捨てて、一年間ほったらかしにして、欲しくなったらまた求める・・・彼女はあなたのおもちゃじゃないのよ・・・」

「そんなつもりじゃない」

「あなたにはそうじゃなくても・・・彼女にはそうだったってこと・・・私と彼女は違うのよ・・・私はあなたの才能に惚れてしまったけど・・・彼女はそうじゃないんだから」

「・・・」

「さあ・・・彼女のことはあきらめて・・・凄い仕事しなさい。ドイツのハンブルグ州立劇場のオファーが来たわ・・・あなたに芸術監督を・・・カンパニーを設置してもいいって・・・あなたは・・・ついに一流になったのよ」

「彼女と一緒じゃなきゃ・・・嫌だ」

「子供かっ」

第三の天使である上田波留子(秋山菜津子)がパリから帰国する。

「別れちゃった・・・彼に若い恋人が出来て」

「ひどい・・・」

「でも・・・私は後悔してないの・・・何にもないより・・・思い出があるだけマシでしょう」

「私も別れました・・・私も後悔してません・・・このままじゃ・・・ダメだと気付けたのは彼のおかげですから」

「愛とはけして後悔しないものなのよ」

「くだらないんですけどね」

「くだらないのよねえ」

二人は高柳を呼びだしカラオケをするのだった。

「ようやく・・・子供たちに会えるようになりました」

「あんたも大変ね」

「結婚と言う制度は結局・・・家族を守るためのものなんですね」

「そうよ・・・そこに愛はあるけど・・・恋はないの」

「私には愛もなかったようです」

「残念だったわね」

「現地集合は・・・」

言いかけた高柳を蒼ざめた馬が睨みつけるのだった。

研究所に綾子がやってきた。

「いつか・・・言ったわよね・・・慶をダメにしたら殺すって・・・」

「・・・」

「あいつ・・・あんたと一緒じゃなきゃ・・・ドイツに行けないって言うの・・・」

「・・・」

「なんとかして・・・」

結唯は天使の願いを聞き届けた。

思い出の噴水公園に慶を呼び出す結唯・・・。

「ドイツで仕事があるんでしょう」

「そうだ・・・一緒に来てほしい」

「私は行けない・・・私にはレタスがあるから・・・」

「・・・」

「私はもう・・・あなたを必要としていない・・・あなたも一人で行きなさい」

「世界で踊って・・・自分で振付をして・・・気がついたことがある。俺の芸術に・・・ダンサー・平慶は必要ないって・・・それを認めることができたのは・・・君に出会えたからだ・・・」

「私も・・・あなたのダンスは素晴らしいと思う。でも・・・それだけ・・・私が欲しいのは・・・あなたのダンスじゃなかったの・・・最後に一つだけお願いしてもいいかな」

「最後って・・・」

「私のために・・・ラストダンスを踊って・・・」

二人で楽しむのは一緒に踊るためのダンス。

しかし・・・慶はソロ・ダンサーなのだった。

慶は踊った。

噴水池の水を組むパフォーマンス。

少年は渇いていた。

雫は霊感をもたらした。

踊る喜び。

目覚めた少年は螺旋を描く。

少年は流れの中で生年へと成長していく。

目指すのは神々の棲む高み。

アラベスク。そしてアクロバット。

優雅な古典と斬新な工夫がせめぎ合う。

虚空に手を伸ばした青年は限界を知る。

残されたのは永遠の孤独。

結唯は別離の悲しみに涙する。

しかし・・・終わりを繰り返さないために・・・今は去るしかない。

男と女が対等の存在であるために・・・結唯は試練を突破しなければならないのだった。

スターに寄り添う闇にはなれない。

小さくても星になる・・・結唯の決意は固い。

結唯の研究所ではグローバル・チャレンジという人材育成プログラムがスタートしていた。

研究成果の海外における事業展開である。

結唯は化学のエキスパートの道を選択していた。

そもそも・・・そういう能力がありながら・・・結唯は怠惰な世界に安寧していた人間だったのである。

やればできる子の原動力が恋の力であることは言うまでもない。

これをお伽噺と言うのは容易いことである。

しかし・・・本当に欲しいものを手に入れる人間は・・・こうした限界に挑戦し、捨て身になるのが普通なのである。

そして・・・運命は微笑んだ。

結唯の赴任先は・・・ドイツのハンブルグ州だった。

エルベ川の畔で暮らす慶の元へ結唯から連絡が入る。

「ドイツでもレタスの世話ができるのよ」

「きっと・・・来てくれると思っていた」

「待っていてくれて・・・ありがとう」

二人は見つめ合う。

二人には言葉はいらない。

重なり合う美しいシルエット・・・。

これが恋というものだ。

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Sl007_2ごっこガーデン。冷たい心が熱い恋をするレタス畑セット。エリ天才的ダンサーと恋をするためには美しいだけではだめなのですね。美しいことは必要条件に過ぎないのでス~。努力して努力してレタスを栽培しまくることが必要だったとは・・・。ハンバーグにはやはりレタス・サラダですものね。トンカツにはキャベツですけど・・・。じいや~、ハンバーガーにマヨネーズと玉ねぎとシャキシャキレタスをはさんで~。後、トマトも・・・そしたら・・・アルジャーノンロイドのでき具合をチェックします。チューッて鳴きますか・・・アルジャーノンは世界で二番目に有名なネズミでしょうか~?

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2015年3月20日 (金)

スプーン一杯のアイスクリームの幸せ(真木よう子)山羊を頭に乗せた少年(菅田将暉)

山羊を頭に乗せるのが悪魔であることは言うまでもないことだ。

当然、問題ガールは魔女なのである。

「ビニール傘泥棒」とか「一生の思い出」とか・・・気が遠くなる話を始める時は呪文を唱えています。

エンディングで・・・小鬼と化した主人公はカップルの邪魔をしたり、落書きしたり、悪戯をしまくるのだが、変な場所で店を始めるのもその延長戦に過ぎない。

善良な女の子やゲイたちは巻き込まれて痛い目に遭いながら、魔女の呪縛からは逃れることができないのである。

男と女が同じ人間だと認め合うことと・・・男と女が主導権を争うことは違う。

しかし、人と人は冷蔵庫のプリンや冷凍庫のアイスクリームを争うために生まれてくるのだ。

それを愛と呼んでもいいだろう。

で、『問題のあるレストラン・最終回(全10話)』(フジテレビ20150319PM10~)脚本・坂元裕二、演出・並木道子を見た。スプーン一杯の不吉が幸せの予感をたやすく奪うのが世界である。まあ・・・スプーン一杯に乗っているのが一口目のスープなのか・・・苦い薬なのかは謎である。ドラマには二種類あって心を洗うドラマか心を汚すドラマかなのだが、その二つは同じものである。美しくて楽しくて幸多いものを憎まずにはいられない人も多いのだ。なにしろ・・・クラスにはかわいい子よりも・・・以下略。

生徒会長にウナギイヌを奪われた高等遊民のドラマではシャッフルが激しいが、こちらでは省略が激しい。

スプーンが落ちてから二週間が過ぎ去って「ビストロ・フー」の最後の営業日になるわけである。

ある程度の知的能力がないと・・・「流れ」が把握できなくなってしまう可能性がある。

「どうして・・・こんなことに・・・」が少しずつ紐解かれて行くことに耐えられない人も多い。

人間には埋めがたい格差が内在している証である。

省略された出来事は次のようになっている。

①雨木社長(杉本哲太)を殴った傲慢なシェフ・門司(東出昌大)はビストロ「SYMPHONIC OMOTESANDO」を解雇される。

②「ビストロ・フー」からのスプーン落下を目撃し、警察に通報した男は・・・かねてから「世界」を憎悪している怪物で・・・幸せそうな人々を断固として許さない。

③「ビストロ・フー」は安全対策として落下防止ネットを設置する。

④しかし、おそらく、近隣住民である怪物は「騒音」「衛生問題」「害虫駆除」「鼠対策」「風紀の乱れ」などありとあらゆる難癖をビルのオーナーに仕掛ける。

⑤ノイローゼとなったビルのオーナーは店舗契約の更新を拒否する。

⑥雨木社長の謝罪の意思を認めなかった五月(菊池亜希子)は週刊誌記事を解禁する。たちまち、社会からのバッシングが巻き起こり、客商売である「ライクダイニングサービス」は経営的に問題が発生し、責任を取らされた雨木社長は解任される。

⑦スキャンダルによって息子の小学生受験に失敗した雨木社長の後妻は夫と子供を残し出奔する。

⑧東京の桜は散り、過ごしやすい季節となった。

そして、ビストロ・フーの長い一日が始るのだ。

巻髪ちゃんこと藍里(高畑充希)はガード下で魔女・田中たま子(真木よう子)に誘惑される。

「ここでレストランをやりましょう」

「いやあああああああああああ」

悪夢である。

三千院(臼田あさ美)は家族団欒のお茶の間で、ハイジ(安田顕)は銭湯の湯船で、喪服ちゃんこと結実(二階堂ふみ)はアスレチック・クラブで登壁中にそれぞれ呪いをかけられる。

三人の女と一人のゲイに同じ夢を見させるたま子の魔力恐るべしである。

雨木社長の実の娘であるパーカーちゃんこと千佳(松岡茉優)は早朝のコンビニに並ぶ週刊誌の表紙を眺め複雑な心境になる。

「セクハラ社長・電撃辞任」の文字が躍る。

ビストロ「SYMPHONIC OMOTESANDO」は休業中である。

買い物帰りのパーカーちゃんをソムリエで弁護士の烏森(YOU)が待ち伏せし、懐くのだった。

「いやあん」

「いいじゃないのお」

冷凍庫のアイスクリームをめぐりグリーンの喪服ちゃんはレッドの巻髪ちゃんをぬかみそくさい女に仕上げる。

五月から春の便りが届き、喧騒を避けて高村新(風間俊介)の家で暮らしていることが伝えられる。

ここからは築きあげた幸福が唐突に理不尽に破壊されるシークエンスの前の段である。

登場人物たちの人間的成長が丁寧に綴られて行く。

きゃりーぱみゅぱみゅ(きゃりーぱみゅぱみゅ)が来店し、CAPSのパフォーマンスを従業員と客を巻き込んで繰り広げる。

量産型を鎧として身にまとっていた巻髪ちゃんは都会的な女同士の自然の交際を身につける。カスタマイズされた量産型として発展したのである。

東大出身のプライドに憑依されていた喪服ちゃんは「霞が関の官僚」と「表参道のウエイトレス」に職業的格差がないことを確信する。

離婚調停中の元専業主婦・三千院は働く女として息子のヒロム(庵原匠悟)を定期的に手元に置けるようになっている。

来店した初恋相手にラブレターを渡そうとしたヒロム・・・。

しかし、勇気の出ないヒロムは巻髪ちゃんでお茶を濁すのだった。

昼の部のレストランの空には虹がかかる。

「虹が出ています」と告げる巻髪ちゃん。

隠語の害虫の出現かとあわてる従業員一同。

初恋の人に微笑みかけられ立ち上がるヒロム。

悪戯な風に飛ばされた恋文を屋根に登って確保する喪服ちゃん。

雑用係という名のゼネラル・プロデューサーの雄姿を賞賛する巻髪ちゃん。

恋の花咲くレストランの成立である。

流れるような展開だ。

常連客の持田(遠藤雄弥)と恋人(入山法子)はすれ違うがたま子は仲をとりもつのだった。

休憩時間に傲慢なシェフ・門司は弟子の悪魔くんである星野大智(菅田将暉)を連れて賄いを差し入れする。

星野大智は喪服ちゃんへの謝罪を繰り返す。

「もう・・・大丈夫です・・・私は好きな人に頑張れと言わないタイプですが・・・あなたには頑張れって言えますから」

「・・・」

「星野さん・・・出身はどちらですか」

「山形です・・・高い所が好きで山羊と木登りしたこともあるっす・・・俺がてっぺんまで登ったら山羊が俺を登ったっす」

初体験の相手を克服する喪服ちゃんなのである。

東大ちゃんと中卒ちゃんの間にはそれほどの隔たりはないのだった。

傲慢なシェフはたま子を口説く。

「一緒にレストランをやらないか」

俺の女房になれから進化した傲慢なシェフ。

しかし・・・魔女は簡単には攻略できない。

魔女にとって長所は短所である。

短所を修正すれば長所も削除されてしまうというこの世の真理をわきまえている。

男と女は付かず離れずが醍醐味なんだな。

パーカーちゃんは傲慢なシェフとオムレツ勝負をしてまたもドローに持ち込む。

傲慢なシェフは・・・魔女の愛し子にフライパンを贈ることにする。

休業中の「ビストロ・シンフォニック表参道」に侵入する二人。

そこで・・・パーカーちゃんは父と腹違いの弟に遭遇する。

荒んだ父親は・・・週刊誌の記事を一瞥する。

「何が・・・二代目社長の甘えだ・・・俺は父親に何一つ与えられなかったのに」

「・・・」

「お前が大きくなったら俺のために・・・社会に復讐してくれ」

「・・・」

一人になった弟に姉は囁く。

「私は・・・あなたに何もしてあげられない・・・でも・・・私が学んだことを教えてあげる・・・一つ、人に優しくすれば自分が優しくなる・・・一つ、人のことを分かれば自分のことがわかる・・・一つ、人を笑顔にすれば自分も笑顔になれる・・・大人になったら・・・また会いましょう」

「アイドルのトップでもなく・・・芸能界のトップでもなく・・・人を笑顔にさせる天下をとるんですね」

「はじめてのももクロかっ」

汝、誰のために灯を点けるか?

我、道を見失いし時

我が迷い人のために点けた灯が

我を導くこともあり

閉店のための作業手順を話す喪服ちゃんは泣かない約束したばかりなのにもう涙なのだった。

七人のメンバーは・・・軌道に乗った「ビストロ・フー」の最後をなかなか受けとめることができない。

しかし・・・魔女たま子は気持ちを切り替えて営業準備を始めるのだった。

「シャンパン冷えてない」

「イカが解凍されてません」

夜の部の最後の客が勘定をすませると「ビストロ・フー」は終焉の時を迎える。

「どうして・・・閉店しなければならないのですか」

「これからなのに・・・奇跡のように・・・回りだしたのに」

「黒字なのに・・・」

「これでいいのよ・・・毎日が奇跡だった。みんなと一緒に働いて毎日が楽しくて仕方なかった・・・そうやって自分がまともだと思うことを続けるの。そうすれば明日は必ずやってくる」

三千院は初めて屋上に来た自分を思い出す。

生きる自信のなかった自分。

喪服ちゃんは処女だった頃を思い出す。

量産ちゃんは初期の不具合を思い出す。

ハイジは孤独なゲイだったことを思い出す。

パーカーちゃんは・・・家なき子だった頃を思い出す。

今は大切な思い出が宝物になっていた。

仲間たちと新しい一歩を踏み出すのは・・・それほど恐ろしいことではなかった。

ハイジは悲しい恋の物語を暗闇で打ち明け・・・女たちは涙するのだった。

星空が忍び笑う夜。

もうひとつの別の世界では万事が順調である。

誰かが優しさを学び、自分を学び、愛を学んだ世界。

それは夢の中にだけ存在するのだ。

悪魔の撒く不和の種は・・・あまねく世界を不調和に導くからである。

それから・・・三百日の月日が過ぎた。

女たちはたま子に召集された。

海辺の廃屋から飛び出す魔女・・・。

海中からはホテルのレストランに勤務する傲慢ななシェフと悪魔くんが現れる。

「それが・・・新店舗か・・・負ける気がしないぜ」

女たちは高慢なシェフに賛意を示す。

「だって・・・潮風と潮騒があるんですよ・・・こんな海の見える場所で食べるごはんは美味しいに決まっています・・・みんなで一緒にやりましょう」

「いやいやいや」と後ずさる一同だった。

しかし・・・魔女の呪いから逃れることはできないのである。

結局、この世にはどうしようもなく男と女が食事する場所が必要なんだから・・・。

・・・三人娘の恋の物語を夏くらいに見せてくれてもいいよ。

「わたしの大好物は・・・焼き鳥のタンとスルメ~」

どこかで誰かがあの空にむかって歌っているようだ。

関連するキッドのブログ→第9話のレビュー

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2015年3月19日 (木)

杉下右京(水谷豊)VSダークナイト(成宮寛貴)調教失敗!

いきなり、ネタバレかよっ。

谷間の「相棒最終回スペシャル」だが・・・今回は甲斐亨卒業スペシャルでもある。

season11~13までの相棒とお別れである。

このブログの休養期間を考えるとひとつの節目を感じるのだな。

season13の後半には第11話の鑑識員・早乙女美穂(奥田恵梨華)、第12話の女子大生・久我沢舞(早織)、第14話の令嬢・新宮奏(松本来夢→笹本玲奈)、第17話の陣川の妹・美奈子(水崎綾女)と特筆すべきゲストも多かったのだがレビューはスルーである。

陣川美奈子は再登場に期待したい。

また・・・緊縛されちゃった・・・でいいと考えます。

で、『相棒 season13 最終回スペシャル』(テレピ朝日20150318PM8~)脚本・輿水泰弘、演出・和泉聖治を見た。ダークナイトと言えば最近ではバットマンの異名である。ナイト(騎士)はキング(王)の守護者であり、民主主義の世界では民衆の守護者に他ならない。しかし、民衆は油断のならない存在であり、清濁併せのむのが日常茶飯事なのだ。そのために・・・普通の騎士では対応できない事態に闇の騎士が狩りだされるのである。正義と悪の戦いにおいて・・・暴力は善悪を超越し・・・必ずしも悪ではないからだ。しかし、弱者にとって強者は存在自体が悪しきものであるという潮流が・・・闇の騎士に悪の烙印を捺すのである。暴力を否定する法を暴力で守護する。あらゆる警察官はその相克に晒されるのである。

ダークナイト・甲斐享(成宮寛貴)は最初から暴力的な存在であった。

しかし、杉下右京(水谷豊)は亨に「正義の心」を見出し、相棒として指名する。

警察庁次長の甲斐峯秋(石坂浩二)は不肖の息子を退職に追い込もうと人材の墓場である特命係に希望を抱く。

キャビンアテンダンドの笛吹悦子(真飛聖)は亨がダークナイトであると知りつつ、亨の子を宿し、亨の行く末を案じる白血病患者である。

ダークナイトは法の支配を逃れ、悪事を行う悪漢たちに鉄拳制裁を行うヒーローである。

しかし、その正体を知るものはいない。

疑わしきは罰せず、被害者よりも加害者の人権を擁護し、制裁よりも更生を目指す公序良俗に飽き足らない民衆は英雄としてダークナイトを賞賛するのだった。

やがて・・・ダークナイトが初めての殺人事件を起こす。

一人の青年が逮捕されるが・・・杉下右京は容疑者がコピーキャット(模倣犯)であることを直感する。

コピーキャットが取調中に脱走したことを知る筈のない甲斐亨がうっかり言及し・・・右京はダークナイトの正体に戦慄する。

右京はダークナイト事件に関連した一つの事件を突きとめる。

脱法ドラッグによる心神喪失者の起こした殺人事件。

釈放された犯人への鉄拳制裁。

被害者の兄は・・・甲斐亨の親友だった。

コピーキャットが鉄拳制裁され、再逮捕された時・・・甲斐亨にはアリバイがあったが・・・亨の親友にはなかったのだ。

「俺はダークナイトじゃない」

「そうですか・・・しかし、コピーキャットに制裁をしたのはあなたでしょう」

「・・・」

「つまり・・・妹の復讐を果たしてくれたダークナイトに・・・あなたは恩返しをしたということですね」

「俺は何か悪いことをしましたか」

「残念ながら・・・暴行傷害は犯罪です」

甲斐亨は正体を明かす。

「あなたからは・・・逃れられないとわかってました」

「正義のために・・・私を殺しますか」

「そんなことできるわけないじゃありませんか」

「それならば・・・あなたはダークナイトになるべきではなかった」

激昂する右京。

しかし、亨の親友は嘯く。

「警察が放置した悪の被害者は・・・ただ苦しみに耐えるしかないんですか」

「それが・・・法秩序の根本原理ですから」

「甲斐亨は馬鹿野郎ですが・・・あなたほどではないようだ」

「おや」

甲斐亨は懲戒免職となったが・・・管理責任を問われ、ラムネから停職処分を申し渡される右京。

もちろん、悠々自適の海外旅行に出かけるのだった。

父親の特権を利用して見送りに来る亨・・・。

「ご迷惑をおかけしました」

「私とあなたの関係が終わったわけではありません」

「ありがとうございます」

「私とあなたは途中です」

「・・・」

杉下右京にとって世界で正しいのは・・・自分だけなのである。

それは・・・もちろん・・・恐ろしいことだ。

恐ろしいことから目を離せないお茶の間は・・・次の犠牲者をしばらく待つのである。

関連するキッドのブログ→相棒 season13 元日スペシャル

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2015年3月18日 (水)

PEARL NURSE(堀北真希)ようこそ輝く時間へ(志田未来)忘れないでね(高梨臨)

真珠のナースかよっ。

思いきってユーミンを使うような切れ味が欲しかったよな。

主題歌もフワフワしていたからな。

「fighting -φ- girls/miwa」・・・何のインパクトもないからな。

先週のMステで「デート」から「問題のあるレストラン」という主題歌リレーがあってインパクトあったからな。

まあ・・・いろいろな意味で黙祷したいと考える。

すべてのナースは大江様のために。

主人公が最終回に死ぬのは王道だからな。

やはり・・・大江様が主人公だったんだな。

黙祷・・・なんだな。

で、『まっしろ・最終回(全10話)』(TBSテレビ20150317PM10~)脚本・井上由美子、演出・今井夏木を見た。生老病死は人間の「苦」の基本である。病院にはそのすべてがある。ナースが白衣の天使と仇名されるのは伊達ではないのである。看護婦と看護士の時代から看護師の時代に推移したのに・・・ナースにこだわったこのドラマ。男女同権の世界でも女性に特性があり、「お注射」してもらうなら・・・ナースがいいと思う人はまだ多いはずである。ま、ほぼ男性の主観だがな。なんだかよくわからないドラマだったが・・・きっと・・・病気の時くらいみんなに優しくしてもらいたいという誰かの欲望が成立させたドラマなのだろう。病院で冷たくされるほどつらいことはないからな。

優しくしてくれるなら・・・人間性は問わない・・・そういう主張はわかりました。

東王病院のすべてのナースは祈る。

末期がんを告知された大江様(眞島秀和)の帝都病院の仲野幸助 (宅麻伸)による手術の成功を・・・。

しかし、祈りも虚しく、仲野は手術を断念する。

手の施しようがなかったのである。

「何故・・・殺してくれなかったのだ」

「・・・」

「帰りたい・・・東王病院へ」

仲野は東王病院のセンター長(石黒賢)に電話するのだった。

「患者の希望だ」

「お断りします」

ナースセンターでは受け入れの是非について論争があった。

元看護師長(木村多江)と看護師長(水野美紀)は病院の決定を伝える。

「納得できません」と朱里(堀北真希)は主人公の意地を見せるのだった。

「お客様がお金持ちならどんな望みも叶えるのがこの病院の存在意義でしょう」

「よくいった」

医師たちのカンファレンスの場に乗り込む赤いナースと白いナースたち。

「なんで・・・転院を認めないのですか」

「だって・・・こっちにだって意地があるだろう」

「くだらない・・・意地なんかじゃ・・・病院経営はできませんよ」

「そりゃ・・・そうだけど」

「お金はいくらあっても困りません・・・それに究極のホスピタリティーとかの大義名分も名誉回復できるじゃありませんか」

「・・・わかった」

「まったく・・・男ってやつは・・・いくつになってもプライド馬鹿で困るわ」

「メイビー」

大江様は東王病院に出戻った。

「やるからには・・・最強の布陣にしないとな・・・」

センター長は・・・赤と白に交替を命じるのだった。

白の看護師長復活である。

朱里も主人公特権で木綿子(高梨臨)とともに大江様担当となるのだった。

木綿子は死期の迫る大江様を想うだけで涙ぐむ。

「涙は禁物だっぺ」と菜々(志田未来)・・・。

「・・・」

「指きりすっぺ」

「指きり?」

「指きりゲンマン泣いたら針千本飲ます」

「近未来なのに・・・」

「注射針はたくさんあるもんね」

「そこか」

大江様専用特別室で看護を開始する朱里と木綿子だった。

「はい・・・アーンして」

「さすがは高い金払っただけはあるな」

「お金じゃありません・・・愛です」

「残念だが・・・私はもはや勃起しない」

「いいんですよ・・・木綿子は片思い愛好家なんです」

「そうか・・・みんな優しいな」

「大江様らしくありませんよ・・・」

「すまない・・・もう毒を吐く元気が・・・グエッ」

急変する大江様だった。

ナースコールよりも早く処置用具を持ってかけつける看護師長。

成長著しい孝太郎(柳楽優弥)の処置で一命をとりとめる大江様。

「また・・・助けるのか・・・どうせ死ぬんだから・・・四月一日より早く死にたい」

「何故です」

「誕生日だ・・・享年四十より三十九のほうが早すぎた死のイメージあるだろう・・・全集の売れ行きにもかかわることだ」

「だからといって・・・殺せません」

「じゃ・・・葬式をしてくれ」

「え」

「病院で葬式・・・新しいサービスだ」

「結局・・・ブラックなところに来ましたね」

大江様のための生前葬会場が院内に設営されるのだった。

「ナースは全員出席でお願いします」

「ナースコールがあったらどうするの」

「いつもみんなで飲みに行くじやないですか」

「それもそうね」

大江様は無宗教であるために・・・式次第は献花のみである。

「主人公特権で司会を務めさせていただきます。大江様に献花しつつ一言、お別れの言葉をお願いします。まず・・・赤い方から」

「こういう時のために黒い制服も必要ね」

「ああ・・・黒のナース・・・なんだか萌える」

「私、苦手なんですけど」

「せっかくだから・・・自分の宝物みたいなトーク・テーマで話してくれ」

仕切る故人だった。

それぞれに・・・患者との思い出だとか、家族だとか、有名人のサインとか月並みなことを語るナースたち。

最後になった司会の朱里は言葉につまり、泣きだすのだった。

「針千本飲ますぞ」

「あらあら・・・仕方ない司会者ね・・・大江様、最後に一言お願いします」と看護師長。

「まったく・・・くだらない・・・言葉なんて無意味だ・・・俺は助けてもらいたいんだよ・・・もっともっと生きた・・・グエッ」

急変する大江様。

看護師たちは死力を尽くすのだった。

もちろん・・・ナースコースはなりやまない。

Broken heart 最後の夜明け

肩にアゴをのせて耳元でささやくわ

私はずっと変わらない

大江様は誕生日の数日後に逝った。

私物を整理した朱里は遺稿を発見する。

「看護師長宛てです」

「まあ・・・新作・・・しかも完結している」

「一財産ですね」

「口を慎みなさい」

微笑む看護師長だった。

「日本には・・・看護師が百万人いるが・・・君が一番好きだ。君には白がよく似合う。君は僕の心に咲いた・・・まっしろな・・・花」

ついに落涙する看護師長だった。

「ラブレターかよっ」

孝太郎は父を訪ねた。

「どうして・・・手術をしなかったのです」

「仲直りしたかった」

「何故です」

「孫の顔が見たいんだ」

「好きな娘はいます」

屋上に朱里を呼びだす孝太郎。

「付き合ってくれないか・・・勉強会に」

「告白するんなら・・・堂々としなさいよ」

「デートしてください」

「嫌」

「なぜだ」

「新任の先生にキラリンしちゃったんだもん」

「・・・」

しかし・・・ゴーストライターとここをかけもちしているニャース(菜々緒)は朱里の獲物をかっさらっていく・・・。

「あ・・・ひどい」

「主に笑っています」

とにかく・・・さくら(MEGUMI)はまんまと訴追を逃れたのだった。

頑固で言いたいことを言う主人公がなぜ犯罪者を告発しなかったのかは謎だ。

そして・・・無印ナースは真珠ひとつナースになったのです。

プ・・・プロデューサー・・・終わってよかったな。なんだかんだ反省しろよな。

これほど終わってホッとするドラマ・・・記憶にないぞ。

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2015年3月17日 (火)

あなたいい人ね(杏)僕の人生は幻想だった(長谷川博己)

このドラマは技巧をこらしている。

このレビューではあえて・・・時系列のシャッフルという構成を解体しているが・・・時にはそれが「面白さ」の大半を破壊することになっていると考える。

しかし、複雑な構成による芸術は・・・たとえば脳機能の低下した人には理解が困難なものである。

なんだかわからないもの・・・になってしまうのだなあ。

今回で言えば「2015年3月15日の結婚式」が全編に散りばめられている。

視聴者の興味は「一体、誰の結婚式なのか」という点に絞られる。

例によって前回の結末である「2月14日」から「3月15日」に至る一ヶ月が語られる展開である。

コンテンポラリー(同時代性)は「わかりやすさ」の重要な点で・・・季節ネタはその常套手段である。

このドラマは少し過去である「去年の年末やクリスマス、正月、バレンタインデー」をあえてチョイスしながら、ホワイトデーを通り越して、最終回に主人公の誕生日をあてている。

今回はドラマの中の季節と現実の季節がフィットしているわけである。

つまり・・・それから七日後の主人公(杏)の誕生日は・・・春のお彼岸の頃なのである。

今回、主人公が落下した時、頭を打った時にヒヤリとする気配があったのは・・・主人公のパートナーが「喝采」を歌ったりするからである。

王道の「月9」と同じように「主人公の死」もまた王道なのだ。

主人公の残された寿命は七日間かもしれないのだ。

さて・・・そういう「終わり」がお茶の間に受け入れられるかどうかは別として・・・。

「彼(長谷川博己)はどうして高等遊民になったのか」という第二の主題の解答がある。

そこで物語は十三年前の21世紀初頭の就職氷河期に遡る。

今回は・・・十三年間の物語でもあるわけだ。

登場人物の回想はそれが嘘か本当かはわからない。

しかし・・・人柄を知るために時間が作り上げた複雑な構造体である「心」を紐解くのはドラマの常套手段でもある。

心が苦手の主人公はそういうものが・・・本当は心から好きなのだ。

この作品に人間ドラマとしての素晴らしい面白さがある由縁である。

で、『デート〜とはどんなものかしら〜・第9回』(フジテレビ20150316PM9~)脚本・古沢良太、演出・石川淳一を見た。映画「転校生」で主人公とパートナーが落下すると心が入れ替わる仕掛けをどれほどの人が知っているのかは定かではないが・・・専業主婦が男女雇用機会均等法によって撲滅されていることを正しく理解している人の割合も定かではない。巧(長谷川博己)は就職に失敗したことによって高等遊民化という現実逃避を試みる。労働の対価として報酬を受け取るという生命活動の放棄である。それは一種の徴兵拒否であり、「戦争で兵隊にとられるくらいなら大きくならないでほしい」という母の願いに答えるものでもある。巧はこうして矛盾した合理性を貫くのであるが・・・やがて「喝采」だの「夜明けのスキャット」だの女性ボーカルの歌謡曲を愛するようになる。つまり・・・女になりたいと思い出すのである。だから・・・「転校生」における男女逆転は巧の一つの理想なんだな。

自分に芸術家として大成する見込みがないと考えた巧は就職活動を展開する。

依子(杏)ほどの学歴をもたない巧はここで何度かの挫折を味わい、自信喪失のスパイラルに入って行く。

そのあげくに大手出版社の面接試験で「無能」の烙印を自ら押すのである。

「君の父上は教育評論家の谷口務(平田満)なのか」

「ああ・・・時々、テレビで薄っぺらいコメントをしてる人ね」

「入社した後で父上の本を出版したいなどと言わないでくれ」

「我が社から出る本はもう少しメジャーなので」

「ハハハ」

父親に対する侮辱と嘲笑。

それに愛想笑いで答える巧。

父親が著名人であることは・・・当然、巧の心に反発を感じさせると同時に拠り所にもなっていたはずである。

それを根底から覆す社会の評価。

巧の人格は崩壊し・・・闘志は奪われ・・・巧にとっては社会そのものが恐怖の対象となる。

「自分はこの恐ろしい社会で人として生きていけない」

巧はニートとなった。父親は教育者としての地位と名誉を放棄した。

そして・・・歳月は流れたのである。

2015年2月14日の夜・・・。

「これ・・・」と佳織(国仲涼子)が差し出すチョコレート。

「考えさせてくれ」と逡巡する巧。

「私のことなんか・・・嫌いよね」

「いや・・・むしろ・・・好きだ」

「半端じゃなく好きになってよ」

「努力します」

依子(杏)は鷲尾(中島裕翔)はチョコレートに差し出す。

「私に恋を教えてください」

「喜んで」

「鷲尾さんのデータを教えてください」

「は?」

「鷲尾さんに恋をするためには鷲尾さんのことをより深く知る必要があります」

鷲尾の誕生日の8月9日にピンとくる依子。

89は好きです。フィボナッチ数列の第11項目の数字であるし、どんな数字であっても各位の2乗を足すと必ず1か89になるんです」

つまり・・・有名芸能人にそっくりということである。・・・どういうことだよ。

ひとりになった依子は・・・巧に電話をかける。

「鷲尾さんとデートすることになりました」

「僕も・・・佳織と」

「考えてみれば破廉恥ですね今日まで谷口さんと交際をして結納まで交わしたというのに明日は別の男性とデートをするこういうのを奔放な男性遍歴というのでしょう私もとんだ尻軽女になったものです」

SJの戯言である。

「僕もとんだスケこましだ」

DTの寝言なのだった。

もちろん・・・結局気になって電話をしてしまう恋愛ドラマの常套手段だが・・・本人たちに自覚はないらしい。

もちろん・・・お互いに片思いをしているという誤解の場合もあります。

しかし・・・誰が誰を好きかなんて本人にも分からないし、恋愛なんて妥協の産物という観点から・・・真相は最終回まで封印されるのが基本なのである。

「お互いに電話をするのはやめよう」

「わかりました」

お互いの本心を本人がわからないかもしれないので・・・お茶の間にもわかるはずないという展開なのだった。

こうして・・・依子と鷲尾、巧と佳織という新たなる組み合わせの「デート」が繰り広げられていく。

しかし・・・巧から「ありのままでデートしろ」とアドバイスをされたにも拘らず、徹夜で「デート対策」をしてしまう依子だった。

小夜子(和久井映見)の亡霊が囁くのである。

「あるがままのあなたが世間に通用したことなんてあったかしら」

「恋」をするためにフェネチルアミンが必要という知識を得た依子は徹夜で同物質を含有するチーズ、ワイン、チョコレートを過食するのだった。

ジャージ姿で待ち合わせ場所に現れた依子をエスコートした鷲尾は・・・そこそこ可愛い女に依子をドレスアップして人力車デートを開始する。

睡眠不足と振動によって多量の吐瀉物をまき散らす依子だった。

一方、横浜ヤンキースタイルではなく、横浜トラお嬢様スタイルで巧を迎えに来た佳織。

映画館でデートするつもりが・・・自宅でDVD鑑賞である。

巧が選択したのはソ連出身の映画監督アンドレイ・タルコフスキーのスウェーデン映画「サクリファイス(生贄)」(1986年)である。

タルコフスキーのデビュー作は「僕の村は戦場だった」である。第二次世界大戦の独ソ戦場で偵察兵となった少年の話だ。少年はドイツに勝つために貴い犠牲となる。同様に「サクリファイス」の主人公は核戦争による破滅から世界を救うために我が身を捧げるのである。

主人公は・・・世捨て人なのだ。

もちろん・・・デートで見る映画としては35点くらいです。

「色彩が素晴らしいだろう」

「・・・確かに」

「よかった・・・じゃ、次はこれを読んでくれ」

「海辺の叙景/つげ義春」(1967年)を推奨する巧だった。

短編だが・・・熱狂的なファンを持つ作品である。

この短編から「雨のクロール/森田童子」(1978年)が生まれ、「君はクロール/渡辺美里」(1986年)、「クロール/東京事変」(2004年)と自由形歌謡史が続いて行くのである。おいっ。

そもそも・・・そういう熱狂的なファンのいる漫画家が漫画を描かないというのが「無能の人」なのである。

「次はゲンセンカン主人だ・・・ギョホギョホでグフグフなんだ」

つまり・・・つげ義春が許されるなら自分も許されると佳織を洗脳しようとする巧なのである。

しかし・・・佳織は・・・。

「こんなのデートじゃねえよ・・・カラオケ行くよ」

「え」

カラオケルームでヤンキー仲間と合流した佳織は巧にEXILEを強要するのだった。

ちなみに「エグザイル」を「エクザイル」と発音する巧は依子の「エクソシスト」というボケをひきだすことに成功する。

これは考えようによっては脚本家がEXILEなんてヤンキーの聴くクソ音楽だと主張しているということです。・・・おいっ。

巧のヤンキー耐性は低く設定されているようですが・・・書棚に「ゴリラーマン」がある以上、それは表面上の問題である。

ついでに「めぞん一刻」で響子と三鷹コーチがゴールインする展開が今の依子と鷲尾ルートであり・・・それはないなと思うのが常道です。・・・おいおいっ。

電話しない約束を反故にして依子に電話する巧。

「どうでした」

「・・・」

「あれほど言ったのに・・・努力してしまったんですね」

「・・・」

「ブルース・リーが言っています・・・考えるな、感じろと」

「指先に囚われては月を見逃すということですね努力しないように努力します」

「・・・」

留美(風吹ジュン)は佳織を気遣う。

「本当に巧でいいの・・・昔はヒーローだったけど今はニートよ」

「私には巧くんが・・・一番、変わっていないきがします」

「そうかしら」

連日、デート攻勢を強める佳織と鷲尾。

徐々にやつれて行く巧と佳織である。

つまり・・・「怪奇恋愛作戦」(テレビ東京)における牡丹灯籠状態である。

しかも「セカンド・ラブ」(テレビ朝日)における肉体交渉抜きなのである。

依子は婚前交渉に供え、トレーニングメニューを筋肉よりもスタイル重視に切り替え、デート用衣装で通勤し、睡眠不足で弁当を作り忘れ、業務でミスを犯すところまで追いつめられる。

巧はEXILEを完全に理解するために研究を重ね、ついには「夏目漱石全集」を研究費のために売り払おうとするのだった。

ついには「残業」や「風邪」を理由に「デート」から逃避する二人。

しかし・・・巧と依子はお互いに電話をしまくっていたのだった。

表面上は「相手のデートの成功」を祈ってのことだったが・・・もちろん、深層心理は・・・。

依子が自分を避けているのではないかと・・・俊雄(松重豊)に相談する鷲尾だった。

俊雄は個人情報の壁を突破して・・・依子の携帯を盗み見る。

谷口さん

谷口さん

谷口さん

鷲尾さん

谷口さん

谷口さん

谷口さん

娘の恋の履歴の恐ろしさを見る父だった。

誤解だか真相発覚だか定かでないまま・・・対策会議が開かれるのだった。

佳織と鷲尾に「ダブルデート大作戦」を発令する島田宗太郎(松尾諭)である。

巧と依子は佳織と鷲尾によってアイス・スケート場におびき出されるのだった。

滑れない二人はリンクの中央でお互いを支え合う。

「隠れてコソコソされるのが一番嫌」

「愛する人の幸せを願うのが本当の愛ですから」

「愛するって・・・誰が」

「巧くんと依子さんに決まってるでしょう」

「僕がこの・・・へんてこな女・・・個性の強い女性と・・・」

「私がなぜ・・・ニート・・・高等遊民と脳内で分泌されるのはフェネチルアミンではあるけれど不快感を伴うノルアドレナリンなのに」

「じゃ・・・どうして・・・デートでつまらなそうにしてるの」

「楽しんでる・・・だけど・・・自分が自分でなくなってしまいそうでこわい」

「不本意なんです・・・デートが楽しくて・・・仕事が手につかないんです」

「なんだ・・・お前ら・・・恋をしているのか」

「え」

巧は佳織に押し倒され、依子は鷲尾に抱かれる。

「結局・・・俺だけが・・・」

退場する宗太郎・・・。

スケート場の人々は二組の変なカップルから必死で視線そらすのだった。

ついに恋をしたと・・・とりあえず信じた依子は鷲尾を結婚式場に案内する。

「巧さんと結婚するつもりでしたが・・・結婚式を挙げてくれますか」

「それは・・・できません・・・男として気持ち悪いので」

もちろん・・・鷲尾がイエスと言わないのは・・・本当の愛を持っていないからである。

依子がしたいと言うのならするべきなのだから。

気をとりなおした依子は・・・キャンセル料を惜しみ・・・留美と務に「結婚式」を奨めるのだった。

巧の罪を滅ぼしたいと願うからである。

もちろん・・・依子にとって巧は一番大切な人だからである。

つまり・・・依子にとって鷲尾は恋のお相手。巧は幸せになってほしい人なのである。

依子は恋をスルーして愛しているのだな。

しかし・・・両親についてはわだかまりのある巧。

DTとしては両親の性交渉を連想させるすべてが痛いからである。

「パパに抱かれるママなんて不潔」なのである。

両親の結婚式から逃走した巧。

捜し出すのが佳織ではなくて依子であることがポイントなんだな。

「これをのりこえなくては・・・」

「・・・」

基本的に恋も愛も脳内における物質のやりとりに過ぎないのである。

すべては脳が壊れるまでの過程に過ぎないのだ。

両親の結婚式に連れ戻された巧はついに「あの日」のことを語りだす。

息子が自分のために傷心したことを悼む務。

「あなたは子育てに失敗なんかしていません・・・巧さんは優しい人になったからです」

依子は務を慰めるのだった。

「また・・・失敗したわね」と小夜子。

「でも・・・恋はしてる」と依子。

「あらあら・・・あなた・・・これが恋だなんて・・・本当に思っているの」

留美の投げあげたブーケは巧と依子がキャッチするのだった。

果たして・・・依子は誰かと結ばれるのか・・・。

それとも・・・誰かの腕の中で短い生涯を終えて母と娘が仲良く亡霊となるのか・・・。

素晴らしいフィナーレは・・・きっと一抹の寂しさとともに訪れるに違いない。

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2015年3月16日 (月)

妻を娶るは子孫相続の為なれば子なき女は去るべし(宮崎香蓮)

江戸時代の女子教育のための覚書のようなものが「女大学」である。

基本的に男尊女卑で貫かれているため、女子に基本的人権がない体裁である。

もちろん・・・当時の女性がそのように生きたとは言えない。

教科書通りに生きるのは昔も今も困難だからである。

嫁としての心得の一つがタイトルの教えである。

この辺りを発想の元として「子を産まぬ嫁を姑がいびる」という定番が生まれるわけだが、「女大学」は次のような続きがある。

「しかれども、夫人の心正しく行儀よくして妬みなくば同姓の子を養うべし」

養子があれば実子がなくても大丈夫なのである。

教えというものはこのように無理がないことが大事なのである。

まあ・・・さらに「妻に子がなくとも妾に子があれば去るに及ばず」と続き、一夫一婦制を完全に否定するところが・・・結局、男尊女卑なのだが。

で、『花燃ゆ・第11回』(NHK総合20150315PM8~)脚本・宮村優子、演出・末永創を見た。例によってシナリオに沿ったレビューはikasama4様を推奨します。今回は憂国の志士・前原一誠のイラスト描き下ろし大公開でお得でございます。吉田松陰を描くにあたって現在の政治と一番の齟齬があるのは「国体」の問題だと思われます。なにしろ、今は「象徴」でございますからね。「主権」が天皇にあった時代の源泉をあまり大きな声では描かない姿勢が要求されていると思われます。前原一誠をあまり平民擁護的に描くのはむず痒いのですが・・・国民皆兵に反対するのが・・・国民のためなのか・・・士族という特権階級のためなのか・・・微妙でございますからねえ。「日本政記/頼山陽」(1845年)の件で言葉を濁すあたりが一種の限界ですな。すべては天朝のためと叫ぶところですからな。ともかく・・・妹を想う兄と姉の対比、藩政におけるそれぞれの方針の対比を重ねてくるあたり・・・なかなかドラマでございますよね。まあ・・・「愛する小田村と一生つながりたいから寿を嫁に出し、愛する久坂と一生つながりたいから文を嫁に出す」・・・妄想的には松陰のホモホモしさが高まりまくる今日この頃でございます。

Hanam011嘉永七年(1854年)三月、ペリーと幕府は日米和親条約を締結。安政四年(1857年)十月、ハリスは修好通商条約締結を求めて江戸城に登城する。時の老中・堀田正睦は苦渋の選択を迫られるのだった。十三代将軍・家定の健康は優れず、将軍位継承問題は南紀派、一橋派の抗争として火花を散らす。十二月、下田奉行・井上清直と目付・岩瀬忠震は条約締結にむけて交渉を開始する。英国と仏国は清国を侵略中である。余波は長州におよび、幕府に対する穏健派と改革派は多数派工作を展開する。開国による密輸貿易の損失を案じる周布政之助は明倫館派閥による多数派工作に成功し、開国に備える緊縮財政を主張する椋梨藤太を一時、中央政務から遠ざけることに成功する。長州における開国反対派と開国派の誕生である。やがて経済政策としての開国反対政策は尊王攘夷という狂気を育み始めるのだった。もちろん・・・それを推進するのは藩政から遠く離れて理想論を謳歌する松下村塾の愉快な仲間たちであることは言うまでもないのだった。下級武士や明倫館からの落ちこぼれを集めた私塾はこうしてテロの温床となっていくのである。

「重臣の周布様と先生の義兄弟が組んだ謀反は成功したそうでございます」

伊藤利助がつぷやいた。

「利助は耳が早いのう・・・まるで忍びのようだ」

松陰は呟いた。

「いえ・・・巷の噂でございます」

「なにしろ・・・密貿易は・・・藩の貴重な財源だからな」と高杉晋作が嘯く。

「開国などされては・・・せっかくの財政再建が振り出しにもどってしまいます」と海岸地方の産業振興を研究する前原一誠が持論を展開する。

「幕府の狙いはあくまで貿易の一元化だからな」と久坂は応ずる。

松陰は微笑んだ。

「ところで・・・久坂くん」

「何でありましょうか」

「私は君と師弟ではなく・・・兄妹となりたいと考える」

「え」

「文と夫婦になりたまえ」

「ええ」

「何か・・・問題でも・・・」

「いえ・・・確かに・・・文様は・・・才女でございますれば」

「そうだろう・・・わが妹ながら・・・他人の心が良く分かる・・・心映え優れた女子じゃ」

「何でもお見通しのようで・・・怖い時があります」

「ふふふ・・・さすがは久坂君・・・慧眼じゃのう・・・で」

「否も応もございません」

「うん・・・めでたい」

もちろん・・・松陰にとって・・・すべては決まりきったことである。

松陰の妹と久坂玄瑞は婚姻する運命なのだ。

松陰はあまり幸福とはいえない夫婦の未来も知っているが・・・それは瑣末な出来事に過ぎない。

すべては回天の大事業のため。

民の命は天子に捧げるために在るのだから・・・。

「万歳三唱だ」

「久坂くん、結婚おめでとう」

万歳を三唱する松下村塾の若者たちだった。

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2015年3月15日 (日)

主人公は唇を(神木隆之介)奪っちゃいましたからね(広瀬すず)私なんか16才で全裸披露よ(浅野温子)

素晴らしい革命の世界へようこそ。

まあ・・・革命なんてクズのすることだからな。

とりあえず・・・16才の現役美少女高校生が毎週見られたので・・・お茶の間男子は万歳三唱するしかないのだった。

何よりも・・・バッチリ主演なのである。ほぼ全シーンに出ているからな。

地獄先生ぬ〜べ〜」丸山隆平

金田一少年の事件簿N」山田涼介

弱くても勝てます〜青志先生とへっぽこ高校球児の野望〜」二宮和也

ここのところ・・・ずっと主演が男子だったしな。

その前が「戦力外捜査官」武井咲(20)だけどな。

土曜ドラマは一年の半分は女子高校生ヒロインにしてもらいたいよな。

それでこそ男女同権だよな。

それにしても広瀬すずの快進撃は凄いよな。

今回も危なく「全部出たと~チューしたと~(広瀬すず)」というタイトルにしそうだったからな。

個人的には今季一番だよな。

お前・・・クズだな。

だって・・・。

(月)凝りすぎ

(火)最悪

(水)谷間

(木)三人娘待ち

(金)短いのだ

(土)かわいい

(日)そうせい

・・・ほらな。

クズすぎる・・・。

で、『校のカイダン・最終回(全10話)』(日本テレビ20150314PM9~)脚本・吉田智子、演出・南雲聖一を見た。明蘭学園高等学校の不祥事が明らかとなり、理事長兼校長の誉田蜜子(浅野温子)は窮地に立たされる。復讐を果たした車椅子の怪人・雫井彗(神木隆之介)の真の目的を知った生徒会長・ツバメ(広瀬すず)は衝撃で失神するのだった。

すべては・・・夢だったのか。

怪人と過ごした胸躍る輝かしい日々は・・・。

風に吹かれた革命の季節は・・・。

時代遅れの「いちご白書」は・・・。

いじめによる障害者の発生とその隠蔽。

誉田校長のイメージダウンは明蘭学園高等学校のイメージダウンである。

高校は存亡の危機にさらされるのだった。

保健室で目覚めたツバメを見守る同志たち。

学園の女王・麻生南(石橋杏奈)、みもりんこと美森(杉咲花)、会計玉子(清水くるみ)・・・ツバメを含めて四天王だな。

「彼は・・・彼は・・・どこ・・・」

「いつの間にか消えちゃった」

「学校にはいない」

「学校は大変なことになっているよ」

「彼に・・・彼に・・・会いに行かなくちゃ」

革命ツバメ軍団リーダーたちはツバメとともにマスメディアの包囲網を突破し、丘の上の洋館に急ぐのだった。

待ちかまえる雫石(伊勢崎)だった。

「どうして・・・あんなこと・・・」

「最初から言ってるだろう・・・お前に学校をのっとれと・・・すべては計画通りだ」

「そんな・・・最初から私を利用していただけだって言うの」

「その通り・・・お前と校長に世間の注目を集め・・・すべてを吹き飛ばすためさ」

「みんな・・・彼と二人だけにして」

革命リーダーの言葉は絶対なのである。

ツバメは怪人と対峙するのだった。

「私は・・・あなたを信じてた・・・全部ウソだったって言うつもり・・・」

「だから・・・そうだって言ってるだろう・・・すべては終わったんだよ・・・校長は終わりだ・・・そして学校も終わりだ」

「私はそんなこと信じない」

「え」

「学校を終わりになんかさせない」

「ええ」

「私は学校を守る・・・生徒会長だもの」

「えええ」

怪人は校長と対峙するのだった。

「そんなに・・・私を憎んでいたとは・・・」

「こんな身体にされて・・・水に流せるやつがいたら・・・バカじゃないか」

「それもそうね」

「とにかく・・・これでチェックメイトだ」

「甘いわね・・・私がこんなことで終わると思うの」

「何・・・」

「学校は別の法人に売却するわ・・・学校は名前を変えて・・・私はそこで理事長を務める」

「しぶとい人だ・・・しかし・・・俺にはまだ最後の手段がある」

「・・・」

「死ぬ気になったらなんでもできますからね」

「伊勢崎・・・」

革命軍指令部に怪人から情報が入る。

「理事長は・・・学校を売却する気だ」

「そんな・・・」

「トクサ枠がなくなれば・・・お前たちはおしまいだ」

報告を受けて騒然とする生徒たち。

「私たちはみんなを見捨てたりしないわよ」と女王。

「そうだよ・・・生徒会長・・・みんなで楽しく学園生活を過ごそう」とみもりん。

「ありがとう・・・みんな」

「どうするんですか」と玉子。

「みんなで・・・学校にひきこもりましょう」

「いや・・・そういう時はたてこもりです」と副会長油森(須賀健太)・・・。

「よし・・・学園占拠だ」とキングの夏樹(間宮祥太朗)・・・。

「我々は戦うぞ」

「おー」

・・・なのだった。

全校生徒六百人は学校に立て籠もるのだった。

「六百人もいたのか」

「すごい団結力」

「みんな・・・お祭り騒ぎは大好きなんだ」

その夜のニュース。

「全校生徒が立て籠もるという前代未聞の事件が起きています。全員が未成年なのでモザイクすぎてなんだかよく分からない事態ですね」

「昔だったらタオルで顔を隠すところです」

「サングラスですよね」

「大沢たかおは部屋がまぶしすぎてサングラスをして寝るそうです」

「バツイチですけど独身ですよね」

「一般女性はラクダよりたかおが狙い目ですよね」

「君といた夏から二十年ですねえ」

「瀬戸朝香と同級生役だったんですよね・・・十歳も年上ですけどね」

「なんちゃって大学生ですよね」

「まあ・・・学園紛争の頃は彼らも生まれたばっかりですけどねえ」

「この雰囲気分かる人・・・もう定年ですよね」

「浅野温子がどれだけ凄い美少女だったか知ってる人もな」

「バリケード万歳」

「とにかく・・・元総理大臣よりバカで面白い状況です」

革命指令部に誉田校長から情報が入る。

「伊勢崎は・・・明日・・・とんでもないことをするかもしれない」

「校長は・・・学校を売り飛ばすつもりですか」

「・・・」

生徒会長は立ち上がるのだった。

「お集まりの皆さん、明日、三者会談を行います。校長と伊勢崎さんが学校に来たら道を開けてください」

そこへ・・・徳次郎(泉谷しげる)たち保護者軍団が食糧の差し入れをもって陣中見舞いに来るのだった。

「みんな、がんばれ」

「ありがとう、おじいちゃん」

「共闘と連帯だ」

金時教頭(生瀬勝久)と教師たちも生温かく生徒たちを支援するのだった。

「生徒会長・・・やりたいようにやればいい」

「ありがとう・・・教頭先生」

「教頭と連帯だ」

「だじゃれか」

そして・・・決戦の日は来た。

車椅子の怪人と学校売却書類を持った校長が現れる。

通学バスのゲートが開く。

生徒会長がバスの屋根に登り、どよめく報道陣。

「美少女生徒会長だ」

「ピンクのジャージを脱いだぞ」

「生放送だから顔は映すな」

「生脚をアップしろ」

「伊勢崎・・・一体・・・何をするつもり」

「あなたの罪を糾弾するために・・・この命を捧げてやる」

制服のネクタイで自分の首を締める怪人。

「バカ」

徹夜で考えた最後のスピーチを開始するツバメだった。

「ひどいことをされて悲しいのはわかります。ひどいことをした人に怒る気持ちもわかります。でも死ぬなんて馬鹿げている。死んだら世界が終わってしまう。死んだら世界を変えることなんかできない。あなたが死んだら・・・私の世界も変わってしまう」

「・・・」

「誉田校長の机には・・・あなたの資料がありました。あなたは・・・この学校を・・・卒業もしていないし・・・退学にもなっていない・・・あなたは留年扱いです」

「え」

「去年も・・・一昨年も・・・ずっと留年です」

「ええ」

「校長は・・・あなたが帰ってくるための素晴らしい学園を・・・目指していたんです」

「えええ」

バスから飛び降りてツバメは怪人にキスをするのだった。

「さあ・・・学園ラブコメを始めましょう・・・」

仕方なく拍手する報道陣一同だった。

革命は終焉し・・・学校に平和が戻ったのだった。

誉田校長はすべての責任をとり・・・金時校長にバトンタッチすると微笑んで教育界を去る。

ツバメと怪人はラブラブである。

「卒業まではお預けですよ・・・不純異性交遊になっちゃいますから」

「だれが・・・お前なんかと」

「それにしても・・・やっぱりコスプレみたいですよね」

「それが年上の人間に言うセリフか」

「なんですか・・・後輩のくせに」

「ぐぬぬ」

「私が三年生、あなたは二年生なんだから・・・上級生に対して敬意を払ってください」

「・・・」

革命よりも愛の方が大切だという話である。

そして、いじめのない学校、クズのいない社会は夢のまた夢なのである。

さらば・・・青春なのだった。

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2015年3月14日 (土)

もっと素直に僕の愛を信じて欲しい(亀梨和也)それはちょっと無理なのだ(深田恭子)

変化を求める男と安定を求める女のいつものすれ違いである。

しかし・・・最近、ここまで格差のある愛を描くのは大変なんだな。

男も女も安定志向強めだからなあ。

移動しやすい遺伝子と定住しやすい遺伝子という話もあったな・・・。

冒険心の遺伝子か・・・おっちょこちょいなので事故死しやすいという。

しかし、そういう人がいないと人類はここまで増殖できなかったよねえ。

カニミソを食べたりな。

獲物を求めて旅をする狩猟民族と収穫を待つ農耕民という背景もな。

しかし・・・いつも一緒にいたいと願う相手に一緒に行こうと言われて断るっていうのは・・・。

年齢的な問題かもしれんね。

まあ・・・年をとると草原とか砂漠はきびしいよね。

一階が銭湯というのも捨てがたいしね。

で、『セカンド・ラブ・第6回』(テレビ朝日201503132315~)脚本・大石静、演出・塚原あゆ子を見た。直感は一種の幻想である。しかし、経験から生じる見通しと論理の飛躍は紙一重とも言える。天才だけが見える道があり、凡人は見えない道に足を踏み出す気にはなれない。独走するトップランナーについていくのは大変なのだが・・・それを支えるボランティアがいないわけではない。だが・・・それが愛なのかと問われれば微妙なのである。それぞれの愛のカタチがあるのでこれ以上の言及は控えたい。そもそも芸術に身を捧げるものは・・・他人のことなんか・・・基本的にはどうでもいいのである。

もちろん・・・芸術という名のビジネスではそうとも言えないのだが。

我が道を行く振付師となった平慶(亀梨和也)はロンドンに旅立つ。

愛の巣に残された西原結唯(深田恭子)は不安な日々を過ごす。

自分を信じることが出来ない人間に他人を信じることはできないのだ。

自我の形成が不十分な結唯に・・・仕事に集中して我を忘れる慶の心情を理解することは困難なのだった。

・・・今、何してるの?

・・・仕事中

・・・ロンドンは寒い?

・・・仕事中

・・・今日、何食べた?

・・・仕事中

・・・まだ、起きてる?

・・・仕事中

不毛である。

結唯の希望は仕事が終われば慶が帰ってくることだった。

しかし、才能を爆発させる慶はロンドンのようなところの公園でダンス・カンパニーのプロデューサーから祝福を受ける。

「君の才能は素晴らしい・・・世界が君を待っている」

本来の大都市における公演の後で・・・平慶を中心とした世界ツアーが企画されたのだった。

狂気の母親・真理子(麻生祐未)はテレビの中で脚光を浴びる娘の恋人を見て衝撃を受ける。

思わず、録画を開始するのだった。

「結唯ちゃん・・・あげまんなの」

真理子はショックで正気に戻るのだった。

壊れたテレビは叩けば直る理論です。

年下の恋人を持つ同志・上田波瑠子(秋山菜津子)を自宅に招き、淋しさを紛わせる結唯。

「トタン屋根が素敵ね」

「雨が降るとうるさいんですけど」

「大きな声が出せるじゃない」

「出しました」

いよいよ・・・帰国する慶。

一度も連絡してこない慶のために・・・仕方なく、オフィスに電話する結唯。

応ずるのはマネージャーの野口綾子(早見あかり)である。

「あの・・・帰りの飛行機は・・・」

「ああ・・・あなた・・・聞いてないの・・・イーストエアラインの39便よ・・・成田着は15時30分」

恋人の元恋人に言われて揺れる結唯。

まあ・・・慶は人間としては最低の部類に属するが・・・芸術家なのである。

明日は慶に逢える・・・酢豚を作ろうと・・・希望にすがりつく結唯だった。

しかし・・・その日、予定を早めて帰国する慶だった。

「新しい企画がある・・・日本の仕事は早めに切り上げて・・・世界ツアーに集中したい」

「ちょっと待って・・・今、スケジュールに余裕はないわよ・・・それに・・・その仕事って・・・少し趣味的なんじゃないの」

「確かに・・・メジャーな仕事ではないが・・・やる価値があると判断した」

「それは・・・自分で踊れるから?」

「そういう問題ではない」

「一年前のことを思い出して・・・今は仕事を大切に・・・」

「とにかく・・・世界ツアーがやりたい」

業界人の綾子が危惧する決断である。結唯には雲をつかむような話だ。

帰ってこなかった慶を案じ、ふたたびオフィスに電話をする結唯。

電話に出たのは慶だった。

「どうして・・・帰ってこないの」

「仕事が忙しくて・・・事務所に泊った」

「だって・・・あなたの家はここじゃない」

「・・・」

「もう、私のことは嫌いになったの」

「そういうのが嫌なんだ」

「・・・」

混乱する結唯。

授業中、生徒たちが恋愛相談を持ちかける。

「先生、ふられた時にはどうすればいいんですか」

「そんなこと言っても無理だろう」

「でも年下の彼氏がいるんじゃね」

「それもホントかどうかわからんし」

言いたい放題の十代女生徒たちについにきれる結唯。

「わかりません。男の気持ちなんか分かるわけないじゃないの。大体、人間はお互い、何を考えているか・・・分からない生き物ですから」

「・・・」

竹内そら(小芝風花)は立ちあがった。

「好きです」

「え」

「ええ」

「えええ」

教室を飛び出したそらを追いかける結唯。

「びっくりしたよ」

「でも・・・先生が好きです。いつも先生に抱かれることばかり想像しています」

「うれしいけど・・・先生、好きな人がいるから・・・無理なの」

「先生、幸せですか」

「わからないけど・・・がんばる」

「そうですか・・・わかりました・・・あきらめます」

切り替えの早い十代だった。

慶は綾子が不満を感じるほど・・・機械的に仕事をこなす。

正気に戻った真理子は結唯を励ますのだった。

「焼売たべなさい」

「たべる」

「元気だしなさい」

「・・・」

「凄い芸術家だもんね・・・お母さん、お父さんに捨てられて壊れちゃったでしょ・・・」

「・・・」

「あなたが壊れてしまうんじゃないかと・・・心配になっちゃった」

「大丈夫」

「そう・・・じゃ・・・彼にサインもらってね。真理子さんへって書いてもらってね」

「お母さん」

揺れる心で慶のオフィスを訪ねる結唯。

もちろん・・・慶は不在である。見知らぬ男が応対する。

「平慶とどのような関係ですか」

「・・・来たことを伝えてください」

慶とは同棲しているが肉体関係しかない結唯だった。

夜になってようやく慶が電話に出る。

「綾子さんと一緒なの」

「彼女は関係ない」

「会いたいの」

「俺も話があるから・・・そのうち帰るよ」

「別れ話?」

「違うよ・・・なんでそうなる」

そうなるとしか思えないことをしているとは思わない慶だった。

結唯は餃子が食べたくなった。

昔の不倫相手である同僚教師・高柳太郎(生瀬勝久)は張り込んでいた。

「となりいいかな」

「となりに坐るの初めてですね」

「すまなかった」

「・・・」

「彼とは上手くいってないようだね」

「・・・」

「芸術なんて虚だからな・・・教師のように実のある世界とは違う。地味だけど教師の仕事は確実だ・・・芸術のように・・・不確かなものではない」

「確かに・・・先生の話は理解できます」

「どうだい・・・また・・・あそこにいかないか」

「・・・」

「出ようか」

自暴自棄になりかかる結唯だったが・・・踏みとどまる。

「すみません・・・一緒には行けません」

「えええ」

帰宅する結唯の前に慶が現れる。

一瞬前に別の男に抱かれようとしていたことは忘れる結唯だった。

「一年間、旅に出る・・・世界中で踊るんだ」

「え」

「アフリカ、中南米、中近東、そしてアジア・・・ありとあらゆるところで踊る・・・」

「ええ」

「仕事も捨て・・・お母さんも捨て・・・一緒に行こう・・・これが俺のプロポーズだ」

「結婚・・・するの」

「いや・・・結婚はまだ考えていない」

「えええ」

「でも・・・ずっと一緒にいたい」

「・・・考えさせて」

そう言う他はない結唯。

即答しない結唯を不満に思う慶だった。

男と女の間には暗くて深い河が流れているからである。

「じゃ・・・事務所に戻る」

「え・・・泊っていかないの・・・」

「仕事が終わらないんだ」

目の前が暗くなる結唯である。

やる気満々だったのだ。

学校と家の往復だけで暮らしてきた結唯。

慶の部屋で暮らしはじめるのも冒険だった。

そんな結唯に世界は途方もないのだった。

慶の再出発の日が迫っていた。

「本当に行くの・・・一年後には仕事はないかもしれないよ」

「素晴らしいことが待っている予感がする」

「あの人はどうするの」

「・・・」

慶の宿泊するホテルにやってくる結唯。

「一緒に行こうといってくれて・・・うれしかった」

「・・・」

「でも・・・無理」

「だって・・・俺のダンスを好きになってくれたんだろう」

「世界の子供たちに慶のダンスを見てもらうのは素敵なことだと思う・・・でも・・・私が欲しいのはそんなことじゃないの・・・ただ、慶と暮らして・・・美味しいものを食べて・・・時々、エッチをして・・・エッチの後に慶の寝顔を見る・・・そういう普通の幸せが欲しいの」

「普通ってなんだよ・・・世界中どこでだって・・・美味しいものはあるし・・・エッチだってできるし」

「でも・・・横浜の焼売は横浜で食べるから美味しいんだ・・・私には」

「・・・」

「ごめんね・・・今度会う時までには・・・私も慶に誇れるような夢を捜しておく」

「どうして・・・ダメなんだ」

「これ・・・金曜ナイトドラマなんだよ・・・世界中を旅する予算なんてないんだよ」

「・・・」

「さよなら」

去っていく結唯を抱きしめる慶。

「好きだ」

「好きだよ」

「好きだ」

「大好きだよ」

激しく求めあう二人。

しかし・・・恋は終わったのだった。

次週、フィナーレです。はたして・・・セカンド・ラブとは・・・ね。

去るものを追う習性だから・・・ストーカー慶が復活するんだな・・・きっと。

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Sl006ごっこガーデン。星空の下の夢の舞台セット。

エリK先輩のお誘いを断るなんてびっくり餃子の出来事でス~。だけどお母様はさておき・・・安定の教職を棒にふるのは難しいかもしれませんね~・・・庶民の皆さんは食いっぱぐれるのがこわいと風の噂に聞きますし~。じいや・・・食いっぱぐれるってどういうこと・・・焼き豚がなかったらステーキを食べればいいのではありませんか~。砂漠の風の音を聞きながら・・・星空の調べを聞きながら・・・海辺の潮騒を聞きながら・・・激しく燃えればいいと思うのでス~

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2015年3月13日 (金)

美人が脱いでいる時にやめろと言える男なんているのかよ(杉本哲太)パパ最低!(松岡茉優)

頭のおかしい男が総理大臣になったのか・・・。

総理大臣になって頭がおかしくなったのか。

頭がおかしいという問題もまた悩ましい。

マンガ「墓場の鬼太郎/水木しげる」の「妖怪大戦争」篇で沖縄の先の南の島から来た少年が・・・。

「島が妖怪に占領されてしまいました・・・誰か助けてください」と訴える。

街角で人々は・・・。

「きちがいか・・・」

「きちがいだな・・・」

・・・とつぶやいて通りすぎて行く。

ひどい・・・と読者は思うわけだが・・・。

実際に街角でこの少年に訴えられたら・・・。

本気で耳を傾けることができるだろうか。

事件の現場にこれでもかと積まれる慰霊の花束。

素晴らしいインターネットの世界で叫ばれる虚々実々。

新聞の朝刊で気を引く「文春」と「新潮」の見出し。

人々は恐れている。

満月の夜に自分自身がとんでもない目に会うのではないかと。

あなたの隣人がものすごいクズ野郎だったらどうしよう・・・と。

頭のおかしな連鎖は厄介だよなと。

で、『問題のあるレストラン・第9回』(フジテレビ20150312PM10~)脚本・坂元裕二、演出・加藤裕将を見た。「白夜の女騎士/野田秀樹」の舞台でレフ小僧といえば田山涼成で、ライト兄といえば佐戸井けん太である。実はライト兄は杉本哲太も演じている。とにかくなしくずしにロマンチックな虚構の中にいた人々がこれ以上なくロマンチックではないクズの中のクズを演じるのである。頭がおかしくなりそうだが・・・それが虚構の為せる術なのである。言葉は虚しく紡がれて暗黒の彼方に消えて行く。地獄の底に手を差し伸べても引きずり込まれる惧れがあるので君子危うきに近寄らずという言葉が生まれました。けして、虎穴にいらずんば虎児を得ずを思い出さないでください。

傲慢なシェフ・門司(東出昌大)は悪魔くんである星野大智(菅田将暉)に仲間としてアドバイスをする。

「自分の交際相手を風俗関係に売ったりしちゃダメだぞ」

「どうすれば・・・償えますか」

「とにかく・・・業者に返金して・・・誠意を尽くせ」

「はい・・・それでなんとかなりますか」

「とりかえしのつかないことをしたらとりかえしはつかないんだよ」

「ですよね」

「それでも・・・生きていくしかないんだから・・・あやまちはくりかえさないって誓うしかないだろう」

「でも・・・俺・・・バカだから・・・」

「だよな」

二人はケータリングで「LIKEDINING SERVICE」本社の会議室にランチをサービスするのだった。

雨木社長(杉本哲太)は五月(菊池亜希子)に対するパワハラの件で対応を迫られている。

「当社と社長の連名による謝罪と慰謝料二百万円の支払いが先方の要求です・・・回答期限は残り五日。これを過ぎると訴訟となるでしょう」

クレーム処理担当の法務部社員・杉崎(佐戸井けん太)が状況を説明する。

雨木社長はいつものように上の空である。

「またですか」

「表沙汰になるのはまずいですね」

重役たちの言葉にも表情を変えない雨木。

しかし、書類の上にスープをこぼすのだった。

それが単に行儀が悪いだけのようにも見え、内心の動揺を示しているようにも見える。動揺したとしたら・・・それが自分に対する批判的な言動に対する怒りなのか怯えなのかも定かではない。

雨木は心を閉ざした人間なのだ。

雨木は傲慢なシェフに声をかける。

「うまかったよ」

「ちょっと・・・お聞きしたいことがあります」

「何でしょうか」

「社長がある女性に訴えられるって聞きました」

「それで」

「訴えられるようなことをしたんですか」

「君、面白いね」

「もししたのなら・・・謝るべきです」

「会社として・・・しっかり対応している。心配しなくても店はつぶれないよ」

「信じていいんですか」

「もちろん」

自分一人の世界で生きている男。経済力で世界から守られている男。思った通りに生きている男は・・・誰も信じていないから何も気にならないのである。

傲慢なシェフは孤独な男と気になる女の間で揺れるのだった。

「ビストロ・フー」の女たちは他愛のない会話を繰り広げる。

「スプーンとフォーク・・・どちらの歴史が古いでしょうか」とハイジ(安田顕)が問う。

「フォークかしら」と田中たま子(真木よう子)が答える。

「残念でした・・・スプーンでした」

「ローマの頃からスープはスプーンで飲んだけど、肉は手づかみだから」

「ヨーロッパ人は野蛮だからね」

「箸こそが文明のあけぼのよね」

「でも手羽先は手で食べたい」と三千院(臼田あさ美)は手羽先を手掴み。

「手で手を食べる」とシェフちゃんこと千佳(松岡茉優)。

「手って言うな」と喪服ちゃんこと結実(二階堂ふみ)。

「手だった頃は羽ばたいてたのよねえ」と弁護士の烏森(YOU)。

「やめて・・・」

「東大の先輩として弱肉強食について語るのよ」

「東大率が高すぎるのね」と接客ちゃんこと藍里(高畑充希)・・・。

たま子は烏森と「別件」に入り、三千院は離婚調停が続くためにハイジと三人娘が「ビストロ・フー」を死守することになるのだった。

シェフちゃんは食材の注文を、接客ちゃんはサービス全般を、喪服ちゃんは運営をたま子から引き継ぐ。

「私にはできません」と喪服ちゃん。

「学級委員やってたんでしょう」とたま子。

「私の学期に・・・学級崩壊しました」

かわいいよ、三人娘、かわいいよである。

回答期限まで残り四日。烏森法律事務所は臨戦体制となる。

五月と高村新(風間俊介)は仲良く参戦である。

高村は判例の資料抜きだしを手伝うらしい。

お茶の間は・・・本当に味方なのか・・・最終回まで息を抜けないキャスティングなのだった。

たま子は・・・裁判に供えての証人捜しを担当するのだった。

しかし・・・証人たちは皆、「ライクダイニングサービス」の関係者である。

当然、緘口令が敷かれ、関係者の口は重いのだった。

たま子はついに・・・尻を触らずにはいられない土田部長(吹越満)に接触する。

「お前らが訴えたって法務部の連中の睡眠時間が減るだけだよ・・・勝てっこないよ」

カレー丼は美味いがそばの不味い蕎麦屋で向いあう二人。

「勝ち負けで訴えるんじゃありません」

「バッシングの誘導か・・・怖いよな・・・頭のいい女は」

「証人になってもらえませんか」

「俺はお前の敵だろう」

「泥だらけの仲間でもあります」

「男のかぶる泥と女のかぶる泥は違うんだよ・・・生涯賃金が違うんだから」

「泥をかぶった気持ちに男も女もないでしょう」

「重さが違うんだよ」

「助けてほしいんです」

「・・・俺の娘がさ・・・同じことされたら・・・俺が社長を殺す」

「・・・」

「お前、冗談だと思うか」

烏森弁護士に「要求の全面的な受け入れ」という連絡が入る。

別件チームに緊張が走るのだった。

その頃、ハイジと三人娘は奮闘していた。

コミュニケーションの苦手なシェフちゃんは異様な圧力を持つ食材業者・槇村フーズ(LiLiCo)に辟易している。壁際に追い詰められ怪奇ネイル女の恐怖を味わうのだった。

恐怖のためにキャベツを発注ミスするシェフちゃんだった。

かわいいよ、シェフちゃんかわいいよ。

接客ちゃんは喪服ちゃんに大学生相手の接客術をレッスンするのだった。

「うえーい、わんちゃんあるかも~」

「ワンチャンスですね」

「つんだわー」

「投了ですね」

「まじだりー」

「マジでダルいわっ」

しかし、つんつん量産型男子とまきまき量産型女子の人物特定が困難な喪服ちゃんである。

かわいいよ、喪服ちゃんかわいいよ。

プレッシャーで鬱屈するシェフちゃんと喪服ちゃんは接客ちゃんを呪うのだった。

「ヘアサロンで読みたくない雑誌置かれろ」

「夕方の変な時間に目覚ましなれ」

「猫の可愛かった瞬間見逃せ」

「宇宙のこと考え過ぎて怖くなれ」

挟撃されて身悶える接客ちゃんだった。

かわいいよ、接客ちゃんかわいいよ。

このコーナーだけは深夜の帯でずっとやってくれと星に祈りたい。

ああっ、これで熟睡できると寝入った時にキャンセルしそこなったアラームでたたき起こされることほど不幸なことはそうないからな。

そして・・・届く屋上一杯のキャベツの山。

「ウサギを飼えばいいんじゃない」

「キャベツが消えてウサギが残りますよ」

「ウサギ食べればいいんじゃない」

「ウサギ食べれません」

「ニシキヘビを飼えばいいんじゃない」

「表参道でそんなワイルドな店できますか、首締めます」

ハイジは呆れるが・・・ギックリ腰を発症して貞子となるのだった。

一日で挫折する留守番組だった。

緊張と緩和である。

もちろん・・・フリーホールはするすると上昇中なのだ。

約束の時間に雨木は来なかった。

やって来たのは苦情処理チームである。

「このたびは申し訳ありませんでした」

「・・・」

「示談交渉を始める前に藤村五月様のプライバシーに考慮してこの事案を一切公表しないことについて双方の誓約を交わしたいと考えます」

「・・・」

「誠意を持って対応いたしますので」

誠意のかけらもない対応に唖然とする一同だった。

高村は追求した。

「雨木社長はなぜ来ないのですか」

「雨木を含め私どもは深く反省しております」

「形だけの謝罪はいりません」

「まことにもってもうしわけございません」

五月は納得できなかった。

「裁判なら・・・雨木社長と直接話せますか」

「慰謝料を払われたら・・・それで終わる可能性も否定できません」

早くも手詰まりとなる別件チーム。

その頃、本日休業中の「ビストロ・フー」に二人のジュピターによって誕生日会を台無しにされた原宿ファッション界の著名人・伊達和美(銀粉蝶)からの予約が入る。

リベンジに燃える三人娘は再び立ち上がるのだった。

ハイジは貞子となってニョロニョロした。

満月の夜・・・遅く開いた店に・・・客は殺到するのだった。

心配になって様子を見に来たたま子は店の賑わいに胸をなでおろす。

そこに・・・傲慢なシェフが現れる。

二人は焼き肉デートをするのだった。

「裁判になんのか」

「分かってんなら聞かなきゃいいのに」

「傘泥棒の話を聞いた日・・・思い出したことがあった・・・俺の小学校にあっくんって奴がいて・・・すぐ人を殴るんで・・・みんなから嫌われてた・・・俺はあっくんの最後の友達だったんだけど・・・ある日、こっちに来んなって・・・俺も友達やめたんだ・・・夏休みになってあっくんは入院した・・・あっくんの父親に腹を蹴られて・・・ずっと暴力をふるわれてたらしい・・・俺が・・・こっち来んなって言ったことはさ・・・あっくんの腹を蹴ったことになるのかなって・・・」

「それは・・・ちょっと違うんじゃない」

「もしかしたら・・・雨木社長だって・・・誰かに蹴られているのかもって」

「・・・」

「ごめん・・・俺、また変なこと言ったか」

「やられたらやりかえす・・・でもやりかえす相手をまちがえてたら・・・まちがえられた相手がやりかえさなかったら・・・そりゃ・・・いろいろあるでしょう・・・だけど・・・もう・・・そういうことじゃない・・・殺すか殺されるか・・・だから」

「・・・」

「私たちは小学生じゃないのよ」

誰かが情報をリークして・・・ハイエナが餌に飛び付く。

「雑誌の取材が入ったわ」と烏森。

「それはいい報せなの」とたま子。

「スキャンダルは両刃の剣よ・・・こちらも痛い思いはするけれど・・・痛さを感じない相手に出血させることはできる・・・」

「当然、向こうにも取材が入るわね」

「おそらく・・・かなり・・・譲歩してくるでしょう」

たちまち・・・杉崎は懐柔交渉のために連絡してくるのだった。

「なるべく・・・穏便にすませましょう」

たま子は敵地に乗り込んだ。

「本人様は・・・」

「週刊誌の取材を受けています・・・記事にするかどうかは・・・そちら次第です・・・社長を呼んでもらえますか」

「お待ちください」

会議室には土田がいた。

「リークしたのはあなたですね」

「頭のいい女は嫌いだって言っただろう」

「私がお願いしたのは・・・あなたの手で泥を拭うことだったのに・・・」

しかし・・・二人は口を閉ざす。

会議室に傲慢なシェフはケータリングを用意する。

窓際ハゲ(田山涼成)もやってくる。

「どうしたんだ」と傲慢なシェフ。

「ここが・・・事件現場なの」

「え」

「ここで・・・私の親友は・・・殺されたのよ」

五月は「ウイークリー芸春」の記者に事件について語りはじめる。

たま子は雨木社長に対峙する。

「あなたは・・・自分が何をしたのか・・・憶えていますか」

「・・・」

「あなたは・・・彼女の顔も覚えていませんでした」

「・・・」

「あの日・・・彼女は不祥事の責任を一身に背負っていた」

「・・・」

「謝罪に訪れた彼女に・・・あなたは理不尽な要求をしたのです」

「彼女にも誤解があったと思う」

突然、服を脱ぎ出すたま子。

「やめたまえ」

「あの日、彼女を止めた人はいませんでした」

「・・・」

「この部屋にいた十六人の男たちは全員、誤解していたのですか」

「・・・」

「この部屋を出た瞬間、忘れてしまった彼女を・・・あなたたちは殺したのです」

「すまないことをした・・・心から謝罪する」

「あなたの口から・・・直接・・・謝罪してくれるのですね」

「もちろんだ」

たま子は雨木の目を見た。

雨木は深く頭を下げた。

全員が退室し・・・傲慢なシェフとたま子が残された。

「何故・・・あなたが泣いているの・・・」

「・・・」

たま子には分かっていた・・・傲慢なシェフは和解が成立したと思ったのだ。

そして・・・たま子は思い知っていた。

言葉の通じない人間がこの世に存在することを。

虚しい戦いは今、始ったのである。

しかし・・・雨木を引きずりだせたのは小さな勝利だった。

次の一手まで・・・「ビストロ・フー」に合流することはできるだろう。

三千院も森村家から我が子を一時預かることを認められて帰還する。

全員集合した「ビストロ・フー」は総力をあげて伊達をもてなすのだった。

問題児二人が仲睦まじく接待していることに微笑む伊達。

「ますます・・・いいお店になったわね」

「ありがとうございます・・・」

しかし・・・禍福は糾う縄の如しなのである。

客のスプーンは奇跡のように宙に舞い路上に落下するのだった。

その頃・・・ビストロ「SYMPHONIC OMOTESANDO」の厨房には雨木社長が現れていた。

「どうだ・・・上手いもんだろう・・・俺の謝罪っぷりは」

「さすがでございました」と窓際ハゲ。

「なにしろ・・・子供のお受験があるからな・・・裁判沙汰は絶対ダメだと女房がうるさいんだよ」

傲慢なシェフは卑劣な裏切りに逆上するのだった。

「嘘だったというのですか」

雨木社長は未熟な男が自分に敵意を抱いたことを察知した。

不遜だ・・・不遜でいいのは世界でただ一人俺だけだ。

「お前・・・首だ」

傲慢なシェフは正義の鉄槌を不遜な社長に振りかざす。

「やめてください」と縋り付く悪魔くん。

神聖な厨房は血に染まった・・・。

店と店の間の路上にパトカーがやって来た。

異変に気がつくたま子たち・・・。

「ちょっと・・・様子を見てきましょう」

しかし、屋上に現れる制服警官。

「あなたが落したのは・・・この普通のスプーンですね」

たま子の心は奈落へと吸い込まれて行くのだった。

眼球は目覚めの時を迎えてグリグリする。

世界はおいしいごはんだけでは出来ていないから。

三順目の序破急を終え・・・物語は怒涛のクライマックスになだれ込んでいくのだな。

地獄の悪夢とはこのことなのである。

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2015年3月12日 (木)

フラガールと犬のチョコ(瀧本美織)心を開いてあなたを待つ(波瑠)

フクシマの話である。

恐ろしいほどに地震保険のCMが入るわけだが・・・まあ、転ばぬ先の杖だからな。

福島県双葉町に実家があるスパリゾートハワイアンズのフラダンサーの実話風ドラマである。

主人公の飼い犬はあの日・・・緊急避難した家族たちから取り残されてしまう。

主人公の女友達も避難生活を余儀なくされる。

復興へ向けて踊りだす主人公たち。

フラガールの基本は「笑顔」である。

主人公の「笑顔」が隠す涙の現実・・・。

すっかり危機感を失った政治家やマス・メディアの皆さんに正座して見せるべきだよな。

なにやってんだ・・・おまえら・・・って言いたい人は必ずいるだろう。

ちなみに天使テンメイ様による福島県の放射線・放射能の減少記事はコチラです。

で、『フラガールと犬のチョコ』(テレビ東京20150311PM9~)原作・祓川学、脚本・関えり香、演出・神徳幸治を見た。谷間だがテレビ東京のスペシャル・ドラマは侮れないのである。特に主人公を演じる瀧本美織はあの日の朝ドラ「てっぱん」ヒロイン以来、最も素晴らしい主人公を演じていると言える。これは一種の運命の力じゃないのか。女優として、ある意味、物凄く被害者の一人だからな。三月十一日に第138回を放送して「てっぱん」は三月十二日から三月十八日まで中断したのである。ちなみにその翌週の脚本家は関えり香だった。

福島県双葉町で父・善光(田口浩正)と母・あや乃(中原果南)そして姉・愛海(佐藤めぐみ)と暮らす沙衣(瀧本美織)・・・七歳の時から愛犬チョコと育ってきた。

海岸は沙衣とチョコの散歩コースだったのである。

スパリゾートハワイアンズ・ダンシングチームの13代目のリーダーでダンサーの吉本美那子(菊池桃子)に憧れてオーデイションを受けた沙衣。

美那子は常磐音楽舞踊学院の鬼講師となっていた。

厳しいレッスンをする美那子のために鬱になる沙衣・・・。

いわき市出身の竹沢かすみ(波瑠)や同期の西村千香(小池里奈)や先輩の小松原薫子(上野なつひ)に励まされるが実家に逃げ戻るのだった。

チョコと散歩に出かけた沙衣はお守り代わりにもっていた「ダンサー美那子との記念写真」を丸めて投げ捨てる。

思わず拾って帰ってくるチョコだった。

「あきらめるな・・・って言うのね」

いや・・・それは違うと思うが・・・。

この日から・・・沙衣は心を入れ替えて猛特訓に励み・・・フラガールのエースとして成長するのだった。

そして・・・2011年3月11日がやってくる。

津波の被害を受け家を流された親友のかすみが家族が避難した避難所に向かった後で、福島原発の事故が発生するのだった。

沙衣の家族たちは緊急避難のためにチョコを家に残し双葉町を脱出する。

放射能汚染が深刻な事態をもたらす実感もないままに・・・。

そして・・・チョコは取り残されてしまったのである。

スパリゾートハワイアンズも震災の影響で営業休止となるのだった。

沙衣は避難施設の家族と合流するがそこにチョコの姿はない。

「チョコを連れて帰る」と泣き叫ぶ沙衣。

「無理なんだ」と諌める家族たち。

一ヶ月後、一時帰宅を許された善光は防護服の役人に食ってかかる。

「家を追い出されて・・・家族同然のペットを置き去りにしてきたんだ・・・もし、生きていたら連れ帰りたい・・・それの何が悪い」

「取り残されたペットは被曝している懼れがあります。ご家族の安全を第一にお考えください」

「ただちに危険とは言えないんじゃないのかよ」

「・・・」

帰宅した義光と沙衣は奇跡的に生きていたチョコと再会する。

しかし・・・連れては帰れない。

あるだけの餌を置き・・・断腸の思いで実家を後にする沙衣だった。

そして・・・次の一時帰宅の時・・・チョコは行方知れずとなっていた。

美那子の呼びかけでレッスンが再開する。

「こんな時にフラなんて・・・」と姉の愛海は次元を越えてA子属性を発揮するが、沙衣はいわき市に向かうのだった。

復旧のめどがたたず、一部施設を避難所として解放しているスパリゾートハワイアンズ。

支配人の長谷田(伊原剛志)は広野町から避難してきた老人(品川徹)の苦渋を見て、なんとか笑顔を取り戻したいと考える。

沙衣たちのレッスン場での臨時フラ教室の盛り上がりを見た長谷田はフラガールの被災地慰問を軸にした全国各地での無料公演「フラガール全国きずなキャラバン」を計画するのだった。

あの日以来・・・フラから遠ざかっていたかすみを双葉町での慰問ショーに招待する沙衣。

フラガールが最初に習う「クウレイマイレ」がかすみの閉ざされた心をひらくのだった。

私の願いはただ一つ

あなたのそばにいること

心を開いて

あなたを待っています

「こんな時にフラなんて・・・と思っていた・・・でも・・・今だからこそフラなんだね」

「私たちの笑顔がお客さんを笑顔にしてお客さんの笑顔が私たちを笑顔にするんだよ」

「みんな笑顔になるために生まれて来たんだもんね」

町には心ない人々もいた。

素晴らしいインターネットの世界には愛のない人々もいた。

しかし・・・フラガールたちは「困窮する福島の人々のために福島の安全なトマトをアピール」するのだった。

「福島が苦しんでいることを知ってもらいたい・・・そして福島を嫌いにならないでください」

悲しみや苦しみを笑顔に変えてフラガールたちは全国各地を行脚するのだった。

そして・・・スパリゾートハワイアンズの再会の日がやってくる。

沙衣は見事なソロダンスを披露するのだった。

名曲「メレ・オハナ(家族の歌)」が人々の心を揺さぶるのだ。

家族のために

声高らかに歌う

私の胸を飾るのは

あなたを想う愛のすべて

故郷の恵みで育ち

空に見守られている

ここにあるものは

あなたのために捧げる

私の愛のすべて

私の心の中には

あなたへの愛があるのです

私の心は

あなたへの愛で満たされています

沙衣は笑った。

みんなも笑った。

だから沙衣も笑うのだ。

ペットを救援しようとする人々がチョコを保護した。

沙衣はチョコと再びめぐり会ったのだ。

しかし・・・人々が故郷へ戻る道はまだ閉ざされている。

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フラガール

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2015年3月11日 (水)

君に物語を書いてあげる(眞島秀和)

そこかっ・・・。

まあ・・・もう・・・脚本家は堀北真希のためにも志田未来のためにも脚本を書いていないからな。

基本的には・・・医療というものに対する一般人の漠然とした不安を延々と書いているだけだ。

とにかく・・・ぐだぐだの一言に尽きるね。

平凡な主婦が不倫するのと・・・劇的要素に満ちた医療の世界に不倫があるのとは全く違うということが分かっていなかったようだ。

少なくともやるなら・・・堀北真希が不倫しないとな。

不倫が一種の病気だということがわからないので・・・看護婦たちがみんな精神を病んでいる感じが醸しだされるのだ。

まして、犯罪者が罪を追及されずに存在し続けるのもコンプライアンス的に問題外だしな。

悪意があるのは構わないが・・・それを野放しにしちゃ物語が成立しないんだよねえ。

とにかく・・・とってつけたようなセンセーショナルほど恥ずかしいものはないのである。

なんだか・・・これほどキャストが可哀想なドラマは久しぶりだなあ。

で、『まっしろ・第9回』(TBSテレビ20150310PM10~)脚本・井上由美子、演出・坪井敏雄を見た。ナイチンゲール症候群について言及されるが・・・これは病名ではなく、一種の俗説・・・言うならば文学的表現である。ナイチンゲールが傷病兵たちから守護天使のように慕われたという側面から見れば・・・患者が医者に対して好意を抱く陽性転移の俗称とも思われる。またナイチンゲール効果とも言うべき心理で看護した相手に好意を抱かれることを前提に患者に好意を抱く看護師も含まれる。まあ・・・要するに病院という特殊な環境の中で医療関係者と患者が特殊な感情を生じやすいという漠然とした話なのである。それをもっともらしく言っているだけです。

そういう言葉をドラマの中で安易に使うこと自体がちょっと恥ずかしいぞ。

とりあえず・・・救いようのないドラマになってきたので・・・あまり深く考えないことにしよう。

末期がんを告知されたお客様患者の大江様(眞島秀和)は絶望の淵で・・・朱里(堀北真希)と木綿子(高梨臨)に「安楽死」を求める。

絶句する二人のナース。

主治医の孝太郎(柳楽優弥)は「安楽死は日本では許可されていません」と正論を述べる。

どうせ・・・近未来SFなんだから・・・ありでもいいじゃないか。

「ここは・・・患者の願いは何でも叶えるんじゃなかったのかよ」と駄々をこねる大江様だった。

素晴らしいインターネットの世界で「東王病院は安楽死させてくれなかった」と感想を述べた大江様は「死ね」と書きこまれて傷つくのだった。

センター長(石黒賢)は「ただ・・・できないじゃなくて・・・もう少し、工夫してほしかった」とぼやくのであるが・・・できないものはできないのである。

元看護師長(木村多江)に恋をしている大江様は一目会いたくて「彼女に来るように言ってくれ」と木綿子に頼むが・・・木綿子は意地悪な気持ちからか・・・伝言を伝えない。とにかく・・・木綿子は頭がおかしいとしか思えないのである。

脚本家の看護師不信は病的なレベルだな。

キャスティング時にレギュラー出演が条件でもあったのか・・・倫理を無視して居座り続ける薬物中毒ナース・さくら(MEGUMI)は帝都大学病院からの引き抜き話に朱里を巻き込む。

ヤクザにからまれたように困惑する朱里である。

大江様に恋をしているらしい元看護師長は・・・看護師と患者に恋愛感情を持ちこむのは職業倫理として許されないと信じ、大江様に緩和治療を受けてもらう説得チームの参加を拒絶するのだった。

「死にたいから殺してくれ」

「殺人罪になるので殺せません」

不毛のやりとりである。

いつもの屋上で・・・落ち込む孝太郎を励ます朱里。

「私なんか・・・言葉を失ったのに・・・できないことはできないというあんたは偉いよ」

「まあ・・・結局、できないことはできないんだけどね」

虚しい会話である。

大江様が治療拒否をしているという情報を得た帝都病院の仲野幸助 (宅麻伸) は最新治療で治癒の可能性があると持ちかける。

「安楽死が無理なら・・・手術に失敗して死ぬのもいい」

大江様は転院を決意するのだった。

ナイトシフトはどうなってんだと言わざるを得ないナース全員集合の飲み会。

センター長の悪口を言われて激昂するニャース(菜々緒)・・・ひどい扱いだ。

頭のおかしい木綿子は酒を飲んでさらにおかしくなるのだった。

「私・・・看護婦だから・・・病気を治せない」

当然の話である。

仕方なく木綿子を連れ帰る朱里と菜々(志田未来)だった。

「ごめん・・・私も悪いことしてる」

「何」

「孝太郎のこと好きなの」

「それのどこが悪いの」

「だって・・・あなただって」

そこで・・・母親とセンター長の因縁と・・・センター長を探るために孝太郎に接近した事情を話す菜々。

思わず菜々を胸に抱く朱里だった。

「やめて・・・私・・・そういう趣味ないから」

「失礼ね・・・私だって」

今回、唯一の見せ場がこれだ・・・。

とにかく・・・新しい恋がしたくてやってきた主人公の目的は達成したのだった。

最終回前だけどな。

転院する大江様を見送るように元看護師長を誘いに行く朱里。

「これから手術なので行けない」と「まっしろな原稿用紙」を朱里に託す看護師長。

しかし、大江は・・・。

「こんなもの・・・いらない」と受け取りを拒否するのだった。

大江の去った病室で名残を惜しむ元看護師長。

朱里は主人公の意地で元看護師長を説得する。

「大江様を好きならお見舞いに行きましょう」

「看護師としてできません」

「制服脱いだら・・・ただの女ですよ」

「・・・」

孝太郎ももう一度父親の説得に向かうのだった。

「母を殺したように大江様も殺すのですか」

「今、成功している手術だって・・・最初は失敗している・・・それが医学の進歩というものだ」

「患者は実験動物ではありません」

「そりゃそうだ・・・貴重な実験人体だよ」

「鬼」

「青二才」

平行線である。

「医学の進歩ではなく・・・患者の幸せを考える医者を目指します」

「だから・・・好きにしろって言ってるだろうが」

「くそ親父」

「ばか息子」

虚しい・・・まっしろに虚しい。

「お見舞いにきました・・・えへへ」

「もう・・・遅い」

しかし・・・元看護師長の登場に血色がよくなる大江だった。

「大江様の小説の続きが読みたいのです」

「僕は死ぬつもりで手術はしない・・・生きるために手術するんだ」

大江は手を差し伸べる。

ためらう元看護師長。

「ここにいるのは・・・君の患者じゃないよ」

「大江様・・・」

二人は男と女になったらしい。

朱里はそっと病室を抜けだすのだった。

手術の成功率は・・・1%である。

百人に一人は助かるって微妙だよな。

果たして・・・大江様は小説の続きを書くことができるのか・・・。

何を期待すればいいのかわからない・・・フィナーレがやってきます。

東王病院スタッフ一同は・・・帝都大学の大江様の手術の結果待ちをするのだった。

「成功したら東王病院の面目丸つぶれだけど・・・失敗すればいいなんて言ったら人間性疑われちゃう」とつぶやくセンター長だった。

みんな・・・頭の中が・・・まっしろになって・・・。

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2015年3月10日 (火)

食卓のアジのひらき(国仲涼子)冬枯れの街の高い窓の男(長谷川博己)山椒魚(杏)恋のフーガ(中島裕翔)とチョコレート

ゴリラーマンとカバチタレと山椒魚が同じジャンル「生物」に分類されるわけだが・・・。

今回の主役は・・・「山椒魚/井伏鱒二」(1929年)であろう。

自分の棲家である岩屋から出られなくなってしまった山椒魚は・・・「自分自身の戒律」に縛られてしまった主人公たちの象徴だからである。

もちろん・・・主人公たちの屈折は一筋縄ではいかないので・・・「勇気がないから恋ができない」というのも「発達に問題があるので恋がわからない」というのも正解とは言えないのだろう。

ただし・・・「サイボーグ009」をこよなく愛する巧にとって・・・「後は勇気だけだ」というセリフは自己陶酔を招く。一方で・・・明らかに「寅さんフリーク」なので・・・勘違いにも憧れている。

そういう意味で時々、倍賞千恵子に見える国仲涼子は兄がいる以上・・・さくらなのである。

つまり・・・巧はもてない兄に憧れているのだ。宗太郎はなにしろ・・・フーテンの寅さんなんだな。

驚くほど・・・暗喩に満ちたドラマなのである。

終盤間際のパートナー・チェンジという月9のラブ・ロマンスの王道技を繰り出しながら・・・おしゃれな感じを醸しだすのはこういう遊びが縦横無尽だからである。

薄く流れるBGMが「糸/中島みゆき」だったりもする。

縦の糸と横の糸は・・・なぜ紡がれるのか・・・糸は意図がわからないと呟くものだ。

だじゃれかっ。

で、『デート〜とはどんなものかしら〜・第8回』(フジテレビ20150309PM9~)脚本・古沢良太、演出・武内英樹を見た。「結」なのでふりだしに戻るという順当な構成である。もちろん、一周してもらせん階段なので見える景色は些少ながら変わっている。もはや、主人公カップルはもちろん・・・その両親や・・・あて馬たちにもお茶の間は充分に感情移入ができている。パートナー・チェンジしてもいいくらいの愛着である。できれば、登場人物たち全員に幸せになってもらいたいという気持ちを抱いている。そうでない人はカッターナイフで斬りつけたり、無免許運転動画を公開したりするバカだということだ。バカじゃなくてよかったなあ・・・と思うばかりである。一口にバカと言っても愛すべきバカもいるし死ねばいいバカもいるのだな。世界はバカひとつとっても複雑でわかりにくいよねえ。

22年前・・・巧(山崎竜太郎→長谷川博己)は13才になっていた。「男はつらいよ」シリーズと「ローマの休日」に毒された映画少年である。渥美清とグレゴリー・ペックが混在して違和感を感じない奇妙なタイプである。勉強が出来てスポーツマンでハンサム。普通にもてるのだった。

佳織(高野友那→国仲涼子)は10才、留美(風吹ジュン)の絵画教室に通うスカジャン小学生である。

その題材は・・・「食卓の魚の干物」・・・なんて家庭的なんだ。

「美味いね・・・プロになれよ」

自分を天才と信じる中学生は・・・断言する。

絵の先生の息子で・・・憧れの近所のお兄さんに褒められた佳織はたちまち初恋をするのだった。

その年のバレンタインデー・・・チョコレートを用意した佳織。

しかし・・・先着した近所の女子たちのチョコを拒絶する巧だった。

「手作りのチョコは食べたくないな。そもそもバレンタインデーなんてお菓子屋さんの金儲けのための仕掛けなんだよ。そんなものにのせられるのは無教養ってもんなんだよ・・・嫌だねえ・・・教養のない諸君は・・・」

すっかり・・・寅さんになりきる巧である。

ちなみに演じる子役は「花子とアン」の安東吉太郎(幼少期)である。伸び盛りだな。

佳織はチョコレートを渡せませんでした。

それから時は流れた。

19年前・・・依子(内田愛→杏)は10才だった。

その年のバレンタイデー前日・・・ショコラティエ(いしのようこ)のいる洋菓子店でチョコレート菓子を購入する在りし日の小夜子(和久井映見)・・・。

「トラディショナル、シャンパーニュ、フランボワーズ、そしてフランマティエール」

「藪下先生スペシャルセットですね」

「ふふふ・・・依子はどうする」

「シュークリーム」

「そうじゃなくて・・・チョコレートよ」

小夜子は危惧を感じていた・・・自分と同じように特異な記憶力を持つ娘だが・・・情緒の発達に問題があるようだ。そもそも・・・チョコレートの専門店でシュークリームを・・・いやいや・・・ちょっと奥手なところがあるだけで・・・じっくりと見守っていくべきだ。

しかし・・・小夜子に残された時間は短かったのだ。

「好きな男の子にあげなさい」

小夜子は導きの手を差し伸べる。

翌日、学校で女子たちはお祭りを楽しんでいた。

しかし・・・依子ははしゃぐことができないのである。そもそも・・・チョコレートの苦みが苦手なのである。シュークリームの方が美味しいのだ。そんなチョコレートを何故、男子に贈らねばならないのか。もしも受け取ってもらえなかったらどうするのだ。そもそも・・・好きな男の子ってなんだろう。好きってなんだろう・・・。

母から与えられた命題を解くことのできなかった依子は・・・土手で涙を流してチョコレートを食べるのだった。

「どうしたの」

「好きな男の子がいなかったのでチョコレートを渡せなかった」

「そう・・・いいのよ・・・好きな男の子ができて・・・あげたくなったらあげればいいの」

夫の俊雄(松重豊)とチョコレートを分け合いながら・・・小夜子は娘の行く末を案じる。

依子は・・・人生に漠然とした恐怖を感じるのだった。

小夜子は洋菓子店を訪れた。

「いつか・・・娘が恋をしたら・・・小夜子スペシャルをお願いするわ」

「それまで・・・店をつぶせませんね」

それから時は流れた。

四か月前・・・島田宗太郎(松尾諭)は嫁に逃げられた。

佳織は実家に戻った。

そして・・・留美の絵画教室をアトリエ代わりに利用する。

すでに抽象画で無名のプロになっている佳織である。

描く絵は「冬枯れの街並みと高い窓の青い人影」だった。心象風景画すぎる・・・。

佳織の初恋はまだ終わっていないのである。

三週間前・・・留美の入院騒ぎの夜。

鷲尾(中島裕翔)は依子の部屋を訪ね・・・破り捨てた婚姻届を修復した巧と遭遇する。

「僕とつきあってください・・・僕はこの人と違って・・・あなたが好きなんです」

「好きと言って下さり・・・うれしかった・・・しかし・・・私たちは=ではありません」

「え」

「私は鷲尾さんをそれほど好きとは言えないので」

「二人は≠なのです」

「・・・」

「しかし・・・谷口巧さんとは=です・・・お互い好きではないので・・・ですよね」

「・・・はい」

巧の非常に複雑な同意である。

ほんとうにそうなのか。心にいつわりはないのか。いつわっていることに本人がきがついていないだけなのか。それはドラマ的に最高機密なんだなあ。

鷲尾はショックで婚姻届を破り捨てるのだった。

「すでに・・・契約は成立しています」

巧は契約書を差し出す。

鷲尾はついでに契約書も破り捨てるのだった。

「修復した婚姻届を役所は受理しないので・・・もう一度、婚姻届をもらう必要があります。契約書は作成し直します・・・今夜は遅いのでお帰りください」

鷲尾は泣きながら走り去るのだった。

「谷口さんも・・・今夜のところは・・・」

「はい」

愛のない結婚について・・・実は思うところのある・・・巧。

少なくとも・・・夜の道端で泣きじゃくる鷲尾を痛ましいとは感じている巧なのである。

翌日・・・俊雄と依子は結婚にまつわるセレモニーについて意見を交換する。

「お父さん・・・花嫁衣装の依子は見たいなあ」

「結婚式なんてお金の無駄遣いよ」

「しかし・・・年をとると楽しみが少なくなるんだよ」

「仕方ないわね」

後日・・・巧の部屋で契約書の確認をする依子。

例によって書庫の整理を始める依子である。

つまり・・・巧の世話をやきたい・・・と依子は思っているのだ。

「山椒魚は・・・生物のジャンルでよろしいですね」

「え」

依子は変化を好まない。変化は・・・たとえば・・・母を素粒子に還元したりする・・・のである。しかし・・・変化しないまま・・・大人になってしまった依子は・・・岩穴に閉じ込められた山椒魚なのである。

じゃ・・・巧は蛙か。

小蝦かもな。

「式場はお得なキャンセルが出たので三月に・・・逆算して結納は二月十四日にします」

「え」

「三十歳前に結婚という目標が達成されるからです」

兄妹を頼る巧である。

「・・・というわけで仲人を頼みたい」

「いや・・・そういうのはロックじゃないから」

嫁に逃げられた兄を慮る妹。

「とにかく・・・めでたいことだから・・・みんなでお祝いしようよ」

「ヤンキーな店は嫌だ」

「明日・・・私、留守だから」

「どこにいくんだよ」

♥☆♥☆♥☆♥☆♥☆♥☆♥☆♥☆♥☆♥☆♥☆♥☆

明日、久々に会えるわね

あなたの食べたいもの作ってあげるね

るんるん  @@

♥☆♥☆♥☆♥☆♥☆♥☆♥☆♥☆♥☆♥☆♥☆♥☆

盛りのついた母親にゲンナリする巧だった。

「ねえ・・・この間のハートどうするの」

「エロイやつは有料なんすよ」

「・・・」

たこやきパーティー開催である。

「バレンタイデーに結納なんてロマンチックね」

「気がつかなかった」

「バレンタインデーなど無意味です」

何故か参加している鷲尾は・・・佳織に賛同する。

「でも・・・好きな男の子にチョコレートをあげるのは・・・普通ですよね」

「そうよ・・・私もいろいろな人にあげてきたし・・・」

「本命には一度もあげてないけどな」

たこやきの毒が頭にまわった・・・兄だった。

いろいろと鬱憤がたまっているのである。

「お前には感謝してるんだ・・・結婚できるのも・・・お前のおかげだし」

「ちがうよ・・・佳織なんだよ・・・いろいろ・・・気を使ったのは」

「え」

「お前に・・・幸せになってもらいたいんだよ・・・好きだからな」

「ええ」

「本当に気が付いてないのかよ・・・ずっとずっと好きなんだよ・・・結婚寸前までいった男もいたのに・・・結局、お前のことが忘れられなくってダメになったんだよ」

兄の暴走に散水で消火する妹。

兄は巧に放水するのだった。

「なにすんだよ」

揉み合う二人・・・仲裁に入った鷲尾は兄を投げ飛ばす。

「なんでお前が結婚できるんだよ・・・小さい頃からもてやがって。何をやってもお前に敵わなかった・・・それなのにニートになんかなりやがって・・・俺はがんばったさ・・・仕事もしたし、町内会長もした・・・結婚もしたのに・・・結局、負けなのか・・・なんでお前が結婚できるんだよ・・・そんなのありかよ・・・俺の嫁は出て行って・・・昨日、離婚届が届いたのに・・・」

「えええ」

「ごめんなさい・・・でも・・・二人はお似合いだと思うよ」

「僕も・・・お二人の幸せを心から祈ってます」

佳織と鷲尾は潔く身を引くのだった。

しかし・・・巧と依子の心は揺さぶられています。

カラオケ残念会。

「おいかけておいかけてすがりつきたいの」

鷲尾は熱唱した。

「ごめんな」と謝罪する兄。

「もういいよ・・・すっきりした」と妹。

「お前は・・・これでいいのかよ」

「・・・はい」と鷲尾。

霊体の小夜子は依子にねだる。

「私も・・・結納に参加したい」

「おかしなことになるのでダメ」

「ケチ」

そして、時は流れ、今年もバレンタインデー~結納当日がやってきた。

「なんで・・・あんたが・・・」

「結納金の五十万円出したのは俺だ」

帰って来た父・谷口務(平田満)である。

「十三年もご無沙汰だったのに」

「いやねえ・・・私たちは十年もご無沙汰しなかったわよ」

「・・・」

戸籍上の夫婦で戸籍上の親子なので何の問題もないのだった。

霊体の小夜子は俊雄におねだりして参加するのだった。

どうやら・・・藪下家は霊媒体質らしい。

緊張すると頭が真っ白になる俊雄。

そもそも・・・儀式が苦手な務。

存在しない小夜子。

笑い上戸の留美。

ぐだぐたになる結納の儀だった。

それでも・・・なんとか両家の挨拶、新郎家からの結納、新婦家からの結納返しが仲人抜きの略式で行われ・・・新婦は婚約指輪をはめるのだ。

幾久しくお付き合いする両家なのである。

酒肴にあたり、ビールを買い出しに行く依子。

巧は二組の両親をもてなす・・・。

「本当にニートの息子でよろしいのですか」

「変わった娘ですが・・・幾久しくお願いします」

なんだかんだ意気投合する両家だった。

依子は一生に一度の大切な儀式を終えて・・・揺れるのだった。

時を越えて洋菓子店が出現する。

今は亡き母親のプロデュースしたチョコレート・コレクションを受け取る依子。

「好きな人が出来たら渡しなさい」

依子には好きな人ができたらしい。

しかし・・・好きな人にチョコレートを渡したら・・・=ではなくなってしまうのである。

夕暮れが近付いている。

「谷口さん・・・」

チョコレートを渡そうとして渡せない依子。

「なぜ・・・もらわなかったんだ」と誰もが思うのだった。務はお茶の間の代弁者である。

「くれなかったから・・・」

「そうねえ・・・依子さんにもわからないのかも・・・でも・・・あなたは・・・」と母に問われる巧。

「かわいそうねえ・・・結婚相手にチョコレートを渡せないなんて・・・」

両親と帰路についた巧は一人で引き返す。

河川敷の土手で一人でチョコレートを食べる依子。

頬を伝う涙。

巧は依子を発見した。

「チョコレートを渡そうとしてすみませんでした・・・バレンタイデーなんてくだらないのに・・・父母が昔・・・チョコレートを食べあっていたんです・・・だから・・・夫婦になったらそうしなければいけないと・・・思い違いをしていたのかもしれません」

ハンカチを差し出す巧。

「お父さんとお母さんが・・・チョコレートを食べあっていたのは・・・夫婦だからではありません。愛しあっていたからです。結婚しても・・・お互いを恋していたからです。依子さん・・・あなたがしたいのは・・・結婚ではありません。恋がしたいのです。僕と結婚するということはもう一生、恋ができないということです・・・それが悲しくて涙が出ちゃうのです。女の子だから」

DTなので・・・観念的に依子を理解する巧だった。

巧は依子からチョコレートをとりあげる。

そのチョコレートを包み直し・・・依子に返す巧である。

「えええええ」とお茶の間。

「僕にはそのチョコレートを受け取る資格はありません。所詮、二次元しか愛せない・・・恋愛不適合者ですから」

巧はあらゆるものから逃げて逃げて逃げまくりたい腰抜けなのである。

「・・・」

とまどう依子だった。

「チョコレートを彼に渡してください。彼はあなたを愛している・・・=になるかどうかはあなた次第です・・・勇気を出して恋を・・・」

「あなたはどうするのです」

「ぼくは・・・どうとでもなりますよ」

自分自身の恋から逃げ出したことを自覚しない巧なのである。

むしろ・・・なんとなくかっこいい自分に酔うのだった。

二人は婚約破棄をした。

俊雄は落胆とともに安堵するのだった。

娘の行く末は気がかりだが・・・同時に娘を手放すのは惜しいのである。

依子は巧を気遣った。

ボウリング場の鷲尾を通じて佳織に婚約破棄を伝えるのだ。

巧の世話をやきたいのである。

大好きな巧に唆されて・・・鷲尾にチョコレートを差し出す依子。

「私にできるかどうか・・・わかりません・・・でも・・・恋をしてみたいのです・・・私に恋を教えてください」

夕闇に包まれた谷口家の玄関。

巧を待ち伏せする佳織。

「結局・・・依子さんに捨てられちゃったんでしょう」

「・・・」

「私・・・拾ってあげてもいいわよ」

そっとチョコレートを差し出す佳織だった。

二十二年の思いを込めて・・・。

なんて重いんだ・・・巧は逃げ出したくてたまらない気持ちを堪えるのだった。

巧は「大脱走」50点、「ブリット」75点。

務は「大脱走」70点、「ブリット」80点。

俊雄は「大脱走」100点、「ブリット」未鑑賞である。

俊雄に「ブリット」を見せてやってくれ。

人間なんてみんな≒なんだから。

今回は構成論的に追記をしておこう。

構成とは要素の組み合わせであると同時に全体の細分化でもある。

今回は「=」と「≠」という主題があり、①「=」②「≠」③「=」という序破急の構成から「≒」という隠された主題が浮かび上がる趣向だったと思う。

具体的には「結納前」「結納」「結納後」の三部構成なのである。

このドラマはおそらく、1~4話までの「序」としての起承転結、5~8話までの「破」としての起承転結、そして9~10話の「急」としてのフリオチになるはずである。来週は相当大きくふってくるでしょう。

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2015年3月 9日 (月)

三千世界の鴉を殺し主と朝寝がしてみたい(井上真央)

幕末ものにつきもののこの都々逸・・・。

高杉晋作が歌うのが定番だが・・・作者は未詳である。

なにしろ・・・著作権は日本には当時なかったのだ。

そもそも・・・この都々逸がいつからあるのかさえ未詳だ。

最も、都々逸の流行は幕末であったと言われている。

寄席芸人で都々逸の祖として知られる都々逸坊扇歌が末期に「都々逸もうたいつくして三味線枕楽にわたしはねるわいな」と歌ったのが嘉永五年(1852年) である。

「添い寝」か「朝寝」かと言う話もあるが・・・「明烏」的には「朝寝」に決まっている。

遊女と客が一夜を共にしていると早朝、烏が啼いてやかましいわけである。

別れを惜しむ二人には迷惑なのである。

だから・・・烏を皆殺してしまえば・・・ゆっくり朝寝を楽しめるという話だ。

歌を解釈するのはそれぞれの立場による。

高杉がこの時期に詠うのは・・・「君主」との関係であってもおかしくない。

君主と政治について語りたくとも・・・若輩ものである。

自分の父親を含めて・・・とりまきが多過ぎて・・・昵懇にはできない。

いっそ・・・いろいろな意味で身を捧げて・・・藩主と朝寝がしてみたいなあ・・・と言うわけである。

おいっ。

なお、作者候補としては遊女好きの桂小五郎も知られている。

まあ・・・芸妓を妻とした男なのでストレートにわかる話だ。

この場合の三千世界の烏とは「婚姻をめぐる身分制度」である。

おいおいっ。

もちろん、坂本龍馬だっておかしくないが・・・ヨサコイ節があるので遠慮するべきなのだ。

おいおいおいっ。

で、『花燃ゆ・第10回』(NHK総合20150308PM8~)脚本・宮村優子、演出・渡邊良雄を見た。例によってシナリオに沿ったレビューはikasama4様を推奨します。今回は足軽と中間という武家奉公人の身分から総理大臣になった伊藤利助と池田屋で魁となる吉田稔麿の二大イラスト描き下ろしでお得でございます。幕末と維新で明暗を分ける二人が好対照ですねえ。運命の妖しさがございますな。一口に狂と言っても様々な狂い方があるという・・・。それが「志」という指向性によって分岐していくような描き方がなかなかに物語性がございますな。二人の女流のバトンタッチがなかなか面白い感じです。まあ・・・少し、趣味的であるので・・・視聴率は急降下ですな。なんとなく・・・「平清盛」が思い出されます。史実と虚構のバランスはなかなかなのに・・・お茶の間にはあまり受け入れられないという。結局、お茶の間は基本的に勧善懲悪で・・・誰もが知っている名場面が見たいのですな。「池田屋」で見たいのは新撰組であって・・・吉田稔麿じゃない・・・と言う。逃げる高杉晋作や逃げない桂小五郎には違和感を感じたりするのですな・・・苦笑ですなあ。ちなみに名もなき長州の遊女二人は高橋ユウ冨手麻妙かな・・・。一瞬でしたが粒よりに見えましたぞ。

Hanam010幕藩体制である。江戸には第13代征夷大将軍の徳川家定が健在だった安政四年(1857年)・・・長州藩主は第13代藩主の毛利敬親。藩主は藩においての独裁者である。しかし、将軍が政治を側近に委任するように藩主も側近に委ねる部分は多い。幕末の動乱にあたって有能な藩主は似たような政策に傾く。つまり、有能な人材の育成である。そもそも吉田松陰自身が下級武士からの抜擢なのである。椋梨藤太も名門の出身だが分家身分で一種の成り上がりである。周布政之助や高杉晋作の属する大番組は藩主直属の戦闘単位でもあるが側近集団でもある。幕府における側用人的側近筆頭をめぐる暗闘は常に展開している。独裁者は配下の下剋上を防止する意味でも派閥の抗争はある程度黙認するわけである。奥番頭、手廻頭、直目付など・・・側近筆頭の名目は流動的なのである。一方の派閥が力をつけすぎないように・・・側用人的な椋梨藤太の補佐として周布政之助を配置したりする。そうせい侯はなかなかの寝技を使う。しかし・・・この年、米国に続いてオランダも和親条約をより日本に不利な条件で追加条約とする。着々と進む西洋の侵略に・・・幕藩体制は危ういものとなっていくのだった。

「利助は江戸帰りだったな・・・」と松陰は雑談の合間に問う。

「はい・・・殿の参勤の折にお伴いたしました」

「面白かったか」

「何より・・・どこまでも続く街並みに仰天いたしました」

「であろう・・・私も江戸に出るまでは萩の城下は天下に指折りの賑わいじゃと思っておった」

「まさしく・・・しかし・・・御山に登れば一望できます・・・しかし・・・江戸は・・・」

「まるで果てしないからのう・・・」

江戸を見た二人の会話は・・・塾生たちの胸を疼かせるのだった。

文は読心によって・・・松陰や利助の見た江戸の情景を知っている。

同時に塾生たちの心に浮かぶ憧憬や嫉妬の情も読みとるのだった。

高杉晋作が問う。

「江戸の遊郭はどうじゃ」

利助の心は江戸の遊郭の記憶に移っている。

「さすがに・・・足軽奉公の身では参れぬか」と吉田栄太郎が呟く。

「吉原に参りましたぞ」

「なにっ」と思わず血相が変わる久坂玄瑞・・・むっつり助兵衛なのである。

「のぞいただけであろう」

「お仕えした志道聞多様がお誘いくださったのです」

「聞多めっ」と明倫館の学友である朋輩に先を越された高杉は舌うちするのだった。

「井上様には可愛がっていただきまして・・・」

「利助は・・・誰にも可愛がられるのう・・・」

「で・・・どうだった・・・吉原は・・・」

「それはもう・・・」

文は男たちの艶話好きに呆れて台所に戻った。

台所では敏三郎がつまみ食いをしながら・・・記憶を反復している。

文は敏三郎の心を読んでひやりとする。

利助の姿が浮かんだのである。

敏三郎は文の言いつけに背いて利助のあとをつけたらしい。

文は敏三郎の心に忍びこみ・・・敏三郎の記憶を追体験する。

城下の外れで利助を見つけた敏三郎はなんとなくあとを追いかけたのだった。

驚くべきことに利助は・・・松浦亀太郎を尾行していた。

そのことに気付いた敏三郎は姉のいいつけを思い出し足を止めた。

変事はその時、起こった・・・。

松浦亀太郎が振り向きざまに棒手裏剣を放ったのだ。

しかし・・・路上から利助の姿は消えていた。

敏三郎は見た。利助が道沿いの林の中に飛んだ姿を。

そして・・・利助は林の中の木から木へと飛び移り姿を消した。

恐ろしいほどの身の軽さである。

(猿飛・・・)

文は噂に聞く忍びの秘術のひとつを思い出した。

路上から亀太郎もまた姿を消していた。

敏三郎はおそるおそる城下に引き返したらしい。

公儀隠密と藩の横目付の暗闘が密かに行われていることを文は実感したのだった。

亀太郎は台所に魚を届けに来ていた。

「鯛が獲れましたので・・・」

「皆さん・・・お集まりですよ・・・おあがりなさいませ」

「はい」

亀太郎は喜々とした足取りで塾へと続く小道を歩み去る。

ふと・・・文は男たちの行く末を案じるのだった。

杉家の裏庭には夏の気配が迫っている。

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2015年3月 8日 (日)

主人公は割箸を(神木隆之介)咥えさせられましたからね(広瀬すず)校内放送を全国ネットでという悲願達成!(須賀健太)

佳境である。

気がつけば冬ドラマも最終回の季節に突入してきている。

もうすぐ彼岸なんだな。

その前にホワイトデーがあるので義理を果たす必要があるがな。

危なく「もしも君が望むなら僕は犬にでもなる」というタイトルにしそうだったぞ。

冬ドラマは「広瀬すず降臨」に尽きるよな。

「ゾンビになったアリス」からの「トラメガを持った生徒会長」と姉妹の落差が凄いよな。

これだけ整った顔立ちの美少女も久しぶりだからな。

整った美しさを憎む人々のバッシンクも凄いだろうなあ。

まあ・・・宿命だよね。

山田花子みたいな声ってデスり方があるみたいだけど・・・。

つまり、あまり美少女ではない山田花子みたいな声だって言いたいわけなんだろう。

もう・・・山田花子が可哀想で聞くに堪えないよな。

そんなこと言っても美少女がシコメになるわけないんだしな。

言い出した人は絶対ブスだよな。

で、『校のカイダン・第9回』(日本テレビ20150307PM9~)脚本・吉田智子、演出・鈴木勇馬を見た。明蘭学園高等学校の生徒会長・ツバメ(広瀬すず)は丘の上の洋館に潜む車椅子の怪人・雫井彗(神木隆之介)に唆され、ついに私立明蘭学園高等学校の生徒と教師を支配下に置くことに成功する。残るのは理事長兼校長の誉田蜜子(浅野温子)のみである。経済力による格差是正のために「特サ(特別採用)枠」制度を推進する誉田校長だったが・・・ツバメが学校を支配するためにはどうしても倒さなければいけない相手なのである。

「伊勢崎・・・って誰ですか」

怪人を伊勢崎と呼んだ金時教頭(生瀬勝久)に生徒会長は問う。

「写真でしか見たことはないが・・・第一期の特サ生徒で・・・生徒会長だったのが伊勢崎だ。不幸な事故で退学したと聞いている。五年前・・・私が赴任する前の出来事だが」

「不幸な事故」

誉田校長と対峙する車椅子の怪人。

「伊勢崎・・・なぜ・・・ここに」

「・・・」

駆けつけるツバメ・・・。

「二人は知り合いなのですか」

「まさか・・・あなたは伊勢崎と・・・不純異性交遊を・・・」

「していません」

「伊勢崎・・・」

振り返れば怪人は幽霊のように消えていた。

「どういうことなんです」

「あなたには関係がないことよ・・・」

誉田校長は言葉を濁す。

しかし・・・すでに怪人に魅了されているツバメの気持ちはおさまらない。

ラブホテルのようなお屋敷に直行である。

「先輩だったのですか」

「ああ・・・卒業はしてないけどね」

「事故って・・・」

「僕の本当の名は伊勢崎・・・あの学校で最初の特サ生徒で・・・生徒会長だった。当時もプラチナ生徒がいて一般生徒を差別していたんだ。僕はそれを見逃すことができなかった。僕は君のようにプラチナ生徒と絆を深めることはできなかった。あれはバレンタインデーの日。僕はプラチナの女生徒から生まれて初めて公園でチョコレートをもらった。するとプラチナたちが現れて僕をとりかこみ、お祝いの胴上げを始めた。僕は舞いあがり・・・そして地面に叩き落とされた。みんなが嘲笑していた。チョコレートをくれた女の子も一緒に笑っていた。しかし・・・僕はそんなことはどうでもよかった・・・あまりの痛みに悶絶しそうだったんだ。僕が身動きできないのを見て笑いはおさまった・・・プラチナたちは蒼ざめた。それから・・・僕は車椅子で生活するようになった。プラチナは親に泣きつき、親たちは弁護士を雇った。校長は悪意に満ちた事件を不幸な事故として処理した。僕はプラチナたちの謝罪の言葉の代わりに・・・多額の慰謝料をもらった・・・なにしろ・・・僕には親がいない・・・そうするより他にはなかった」

「そんな・・・ひどい・・・」

「それから・・・ずっと一人で暮らしてきた・・・そこへ君が現れた・・・僕の心は動いた・・・君なら僕と違う道を歩める・・・そう思ったんだ・・・」

「でも・・・校長先生は・・・あなたを見捨てたんですね・・・昔のプラチナはごめんなさいと言わなかったんですね」

「すべては・・・昔のことだ」

「だって・・・あなたは・・・歩くこともできない身体になってるのに」

「君のおかげで・・・立つことができたよ」

「結局・・・校長は・・・自分の出世のために・・・特サを・・・あなたを利用していただけ・・・」

「それも仕方のないことだ・・・」

「そんなの・・・許せない」

ツバメの中で・・・怪人を不幸にした誉田校長への憎しみが湧きあがる。

ツバメは仲間たちに封印された事件について話す。

「酷い話だな・・・しかし・・・俺たちだってついこの間まで同じようなものだった」とキングの夏樹(間宮祥太朗)は自嘲する。

「でも・・・そんな川崎の不良少年みたいなことをしたら・・・後になって心が痛まないのかしら」と学園の女王・麻生南(石橋杏奈)・・・。

「みんなで事件について調査してみよう」と美森(杉咲花)・・・。

一方、誉田校長は格差是正教育システムが評価され・・・汚職で辞任した文科大臣に代わり・・・民間からの入閣という噂が流れる。

事故が事件であったことは昔のプラチナたちの証言で明らかになった。

「そんなこともあったなあ・・・でも・・・あくまで遊びの中で起きた事故だからな・・・今さら・・・むしかえされてもね・・・イセヤの奴・・・生きてるのか」

昔のプラチナにはまったく反省の色はなかった。

しかも・・・障害者にしてしまった相手の名前さえ・・・うろ覚えなのである。

「今さら・・・昔のことをとやかく言わずに・・・今を大切にしなさい」と校長はツバメに忠告する。

「そんな・・・なぜ・・・その時・・・加害者たちの責任を追及しなかったのです」

「加害者なんて・・・大袈裟よ・・・みんな未来のある若者たちだった」

「伊勢崎さんの奪われた未来は・・・」

「彼だってちゃんと生きている・・・充分な保障も得たし」

「校長先生は・・・自分の立場を守るために・・・真相をうやむやにしたのではないですか」

「もし・・・そうだったとしても・・・そうしなければ・・・どうなっていたと思う・・・学校は終わりよ・・・あなたが・・・この学校に来ることもなかったのよ・・・」

「・・・」

「今だって・・・このことが明るみに出たっていいことはない・・・この学校はたたかれて・・・立ち行かなくなり・・・あなたは学校を失う」

「誰かの犠牲で成り立つ幸せなんて・・・欲しくありません」

「だから・・・犠牲なんてないのよ・・・あれは・・・事件ではなくて不幸な事故なのだから」

「彼に謝罪もしないのですか」

「悪いことをしていないのに・・・謝りようがないでしょう」

「あなたが・・・許せない人だということがわかりました」

「あなたがどう思っても・・・世界は変わらないわ」

ツバメからすべてを聞いた生徒たちは生徒会規約に乗っ取り・・・「校長追放」の署名運動を開始するのだった。

チョコもらってはにかんでいると胴上げされて落されるという苛めで障害者にされた男は・・・一同を殺処分にしていいと思う人もいるからな。

そういうことやってた人はそう思わない傾向があるらしいよ。

しかし・・・お前が言うかって言う奴もいるからな。

ツバメは事件現場で仰向けになり・・・怪人の気持ちを想像して泣きたくなる。

良い子のみんなは真似しないでください。

ツバサたちは教育委員会に事件の再調査を求めるが・・・相手にされないのだった。

「そんなことしている暇があるなら・・・勉強しなさい」

もっともである。

加害者たちは大学を卒業し、一流企業に就職したり、医者や弁護士の道を歩んでいた。

副会長油森(須賀健太)は怪人を訪ねる。

一部お茶の間向けのサービスショットである。

「退校させられそうになった時・・・助けてくれてありがとう」

「赤鼻のセンセイはひどかったな」

「だね」

「赤ちゃんは生まれた時・・・なんで泣くんだろう」

「喜びか・・・」

「悲しみか・・・」

「まあ・・・大抵の人は憶えてないよね」

「まだ記憶回路が起動してないかな」

「感情というものが形成されてないしね」

「記憶が先か・・・記憶が先かって話だよね」

「記憶あっての感情じゃないの」

「感情も記憶の一部にすぎないんだよ」

もちろん・・・懸命なお茶の間は・・・すべてが怪人の計画であることが分かる。

しかし・・・怪人のツバメに対するスキンシップの真意は不明なのだ。

「生徒会長はあなたのことを好きなんだと思います」

「君は生徒会長のことを好きなんだろう」

「・・・」

もちろん・・・最終回におけるツバメの武器は「愛らしさ」しかないんだな。

それはさておき・・・怪人は過去の秘密をツバメに開示し・・・最後の仕上げに入るのだった。

「謝ってもらいたいと思わないのですか」

「いいんだ・・・俺は忘れることにした・・・」

「忘れられないくせに・・・せめて校長先生には謝ってもらいたい・・・」

「俺は言葉こそが武器だと言ったけど・・・言葉が通じない相手もいる」

「だけど・・・あきらめたら・・・終わりでしょう」

「そうか・・・どうしても・・・やるのか」

「やります」

「最後のスピーチは厳しいぞ・・・ついてこられるのか」

「はい」

そして・・・発声練習のため・・・割り箸を咥える生徒会長。

姿勢を強制するために背中にものさしである。

もう・・・明らかにプレーだよね。

特訓の果て・・・二人はラブラブ姿勢で寝入るのだった。

とにかく・・・オーバーオール愛好家は満足したらしい。

かわいいよ、生徒会長かわいいよである。

その日・・・誉田校長の入閣決定の報せを待って・・・校内に集まる報道陣・・・。

「カリオストロの城」的オチが暗示されるのだった。

すでに・・・二重スパイとなった担任教師(金子ノブアキ)は校長に祝電を手渡す。

「講堂にて待つ。伊勢崎」

校長は講堂に向かう。

そこには生徒と教師が全員集合していた。

檀上にはツバメが立っていた。

「これは何の真似・・・」

「生徒会規約により生徒は学校で起きた事件を検証することができます」

「私は忙しいのよ」

「十分だけお時間をください・・・これは生徒全員の総意です」

教頭が立ち上がる。

「補足説明が必要な場合に備えて私も立ち会います」

「・・・」

「それとも・・・校長先生には何か不都合なことがありますか」

「十分だけよ・・・これは学校裁判なのかしら」

「音楽は鉄人28号 (2004年版アニメ)の千住明の劇伴みたいですが踊る大捜査線の松本晃彦が担当しています」

「無理矢理、悲壮感をあげようとしているのよね」

「校長・・・あなたは伊勢崎を知っていますね。彼は孤児でしたが学校に夢を持っていました。恵まれている子供と恵まれていない子供が絆を深めあい・・・未来に向かって進んでいける学校・・・その理想を託した論文でコンテストに応募した。論文コンテストの審査員だったあなたは・・・伊勢崎と出会い・・・母親代わりになった。プラチナ枠により資金を調達し、特別採用枠で一部生徒の学費負担を無料化する。伊勢崎のアイディアをあなたが実現したのです。そして・・・伊勢崎は特サの一期生になった・・・」

「・・・」

「しかし・・・特サの存在に反感を持つプラチナ枠の生徒たちは・・・ひどい事件を起こしてしまう。伊勢崎は暴力によって身体障害者となった。しかし・・・あなたは事件を隠蔽し・・・それを事故として処理しました・・・何故です」

「大を生かすために小を捨てたのよ」

「学校を守るために・・・伊勢崎は口を慎むべきだと」

「多くの生徒たちの未来を守ったの」

「守られた加害者たちは・・・社会人になっています。若くて無謀だった時の過ちを彼らは今では悔やんでいる・・・被害者に申し訳ないと思っている」

「・・・」

「なんてことはありませんでした・・・」

「・・・」

「彼らは事件のことなどすっかり忘れ・・・被害者の名前さえうろ覚えでした。反省のかけらもありません。ひどいクズです。校長・・・あなたの送りだした生徒たちはみんなそんなクズばかりでした」

「・・・」

「自分さえよければ他人がどうなろうと関係ない・・・最後は金が解決する・・・結局、あなたは教育と言う名のクズ製造をしているのです」

「私にどうしろと・・・」

「事件を隠蔽したことを認め・・・伊勢崎さんに謝罪してください」

謎の怪人・・・伊勢崎が現れる。

「いいわ・・・ごめんなさい・・・私が対応を誤り・・・・傷ついたあなたをさらに深く傷つけたことを心から謝罪します」

会見場には校内放送によってすべてが中継され・・・記者たちが騒ぎ始めていた。

「校長は・・・今、講堂にいます」と宣言する伊勢崎。

「レレレ」

伊勢崎の言葉に驚愕する生徒会長。

「ごめんなさいと言われたら・・・俺がはい・・・そうですかと受け入れるとでも」

「伊勢崎・・・」

「踏みつけられた痛みを忘れるためには・・・同じ痛みを踏みつけた相手に与えるしかない。裁きとは太古の昔からそういうものでしょう。校長先生」

「・・・」

「目には目を・・・歯には歯を・・・謝罪されたって始らない」

「そんな・・・」

一瞬で伊勢崎の意図を察した生徒会長。

すべてが・・・この日のための計画だった・・・自分は踊らされていた・・・校長が生徒を利用して出世したように・・・あの人は私を利用して復讐を・・・。

生徒会長は混乱し・・・ショックで卒倒する。

記者たちは講堂に乱入する。

「校長・・・今の話は・・・事実ですか」

革命のもたらすもの・・・それは終わりなき混乱である。

つまり・・・それが世界の真の姿である。

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2015年3月 7日 (土)

シングルベッドから世界へ(亀梨和也)私はとりのこされた気分なのだ(深田恭子)

酒を飲んでたで許されるなら世話ないよな~。

そこか。

しかし・・・もう・・・すっごく恥ずかしくてさ・・・。

死にそうなのかもしれないから・・・そっとしておいてやろうよ。

そんなことしちゃう人が国のトップの方にいるってアレだろ・・・。

アレだよなあ。

危機感ないんだよな。

明日、日本が終るっていう危機感がな。

「未亡人が妻子ある年下の男性と路上キス!」

もう・・・笑うしかないよね。

きっと・・・死んじゃいたい気分だよね。

でも・・・がんばろうね。

死ねばいいのになんて言わないからね。人間だもの。

で、『セカンド・ラブ・第5回』(テレビ朝日201503062315~)脚本・大石静、演出・片山修を見た。認知症を発症している人と接していると人間の愚かさの原点のようなものが見えてくる。たとえば抑制する力が激減するのである。つまり、行儀が悪くなるのだ。口の中に手をいれるなと言ってもたちまち入れるのである。そういう物分かりの悪さは小学生の勉強の苦手な子供レベルである。それと同じように酒を飲んだら車を運転してはいけないと言っても運転するし、路上キスはするなと言ってもするわけである。恋をするなと言ってもしちゃうのも同じなのである。・・・そうなのかっ。

人の嫌がることはしない。そういう人間としての最低のお約束が通じないのは困ったものだ。

人を殺すのも・・・不倫も・・・同じ罪であるということがわからなくなる人。

ねえ・・・どんなに人目を忍んでもばれる時はばれるのだ。

ばれた時にどんなことになるか・・・認知症でない人は想像できるはずである。

しかし・・・恋は一種の認知症なので・・・仕方ないんだよねえ。

平慶(亀梨和也)と恋に落ちた西原結唯(深田恭子)は二人だけが幸せならば他には何もいらない蜜月を過ごす。

しかし・・・幸せの絶頂は何故か続かないのだ。

心が死にかけていた二人だったが・・・結唯との出会いで蘇った慶は活発に動き始める。

一方、慶に見染められた結唯は刺激的な日々に幻惑されるあまり・・・慶の心の変化に不安を感じるのだった。

結唯は御伽話の世界に生きていて他人と対等な人間関係を構築できないのである。

結唯の願いはいつまでも変わらずに慶に愛されること。

しかし・・・慶は本能のおもむくままに動くタイプなのであった。

二人は愛し合っていたが・・・お互いの心は隔たりはじめて行く。

慶は結唯のためにさらなる高みに駆けあがろうとし・・・結唯は為すすべもなくその背中を見つめて佇むのだった。

狂気の母親・真理子(麻生祐未)に呪縛された結唯の魂は恐ろしいほどに幼いままだったのである。

結唯にとって人生はまだおままごとだったのだ。

振付師として脚光を浴びた慶は・・・挫折によって負った傷を癒すためにさらなる飛躍を求めていた。

次々と舞い込む振付の仕事。「踊り手」としての夢を失った慶は・・・「振付師」という自己表現の場を二度と失いたくないのである。

そのためには・・・全力を傾注する必要があった。

結唯は過ぎ去った蜜月の夢を追い・・・慶に子供のようにまとわりつく。

「創作バレエの振付」を考えている慶に・・・「タケノコの食べ方」を相談する。

自ら創作的な仕事をしたことがない結唯にはそれが凶悪な嫌がらせに似た行為だとは分からない。

ただ・・・上の空で答える慶にものたりなさを感じるだけなのである。

ものとものとの相互作用を実験で教える化学教師としては・・・少し・・・残念な感じである。

まあ・・・脚本家は基本、文系なので理系に対しては悪意があります。

慶はダンスに関しては・・・通訳の仕事ぶりからも分かるように能弁である。

だが・・・それ以外のことは基本的に無駄と考えるタイプだった。

同僚の上田波瑠子(秋山菜津子)の年下の恋人との旅行をうらやましく思う結唯は「温泉旅行」を慶におねだりする。

しかし・・・「怪我もしていないのに温泉に行くなんて無意味だ」と思う慶だった。

結唯は普通の享楽的でふしだらな一般女性であった。

唯一で最高の世界をストイックに目指す慶とは・・・水と油なのだ。

水と油だからこそ・・・情熱で爆発したりするのである。

オアシスだと思った慶の貧しいアパートが蜃気楼のように消えて行く予感におびえる結唯だった。

だからといって慶を憎むことはできないのである。

一般女性である結唯を愛しむ慶だったが・・・目の前に広がりはじめた未来に心を奪われる。

慶の振付はトップダンサーとして磨き抜かれた感性と舞台を追われた苦渋とが芸術性を高め・・・世間に好評をもって迎えられる。

一つの仕事の成功が次の仕事を呼び、その成功がまた仕事を呼ぶ。

このチャンスを逃すことはできないと慶は思い詰めている。

そういう慶を理解し・・・応援するには・・・結唯には知識も経験も足りなかった。

何よりも不足している自分に気がつくこともできないのだった。

「慶をダメにしたら許さない」と迫る野口綾子(早見あかり)に「ダメにしません」と言い返した結唯だが・・・その言葉には自信も根拠もなかったのだった。

ダンスは非言語的であるために国境を越える。

世界的に共通の価値観があり、そのために裾野は広い。

逆に世界で通用しなければ評価は高まらない。

雑誌のインタビューで「一時期の流行ではなく・・・永遠に通じるものを目指したい」という慶の言葉を読み解くことができない結唯だった。

海外からの慶へのオファーの電話に応じることのできない結唯。

集中力を保つために携帯電話を遮断したいという慶の思考を理解できない結唯。

結唯はあがけばあがくほど無能と言う名の底なし沼に沈んでいくのだった。

一方・・・結唯にとっては不毛の暇つぶしだった同僚教師・高柳太郎(生瀬勝久)との不倫関係は・・・清算された後も静かに尾を引いている。

結唯が無邪気に高柳という妻子ある男に与えた肉体は・・・確実に一つの家庭を破壊していたのである。

悪気はなかったではすまないのだ。

結唯はそういう想像力にも欠けていた。狂気の母親が育て上げた子供だからである。

荒廃した高柳家に・・・妻(片岡礼子)が離婚届を回収に来る。

「なぜ・・・なぜなんだ」

「若い女との性行為に溺れて私を顧みなかった男が何を言ってるの」

「え」

「触らないで・・・汚らわしい。この部屋・・・臭いわよ。腐敗したゴミと埃と・・・あなたの体臭が入り混じって吐きそうになるわ」

「・・・」

家族の去った家庭は地獄の気配が漂うのだった。

高柳は懊悩し、狂気を帯び始める。

実験室で残業する結唯の前に姿を見せる高柳だった。

「もう一度・・・やらせてくれないか」

「え」

「そっちも・・・あまりうまくいってないんじゃないか・・・いや・・・いってたって・・・少しはお時間あるでしょう」

「ジョークですか」

「やりたいんだよ・・・たまってるんだ・・・このままだとおかしくなりそうなんだ。君だって僕がそうなったら困るだろう。学校だって生徒だって困る。そうしないために人助けだと思って現地集合してくれ」

「やめてください」

「やめられないんだよ・・・もう・・・やめられないんだ」

「何がやめられないんですか」

救世主として現れる宅急便を抱えた魔女・・・ではなくて竹内そら(小芝風花)だった。

生徒の前で自制した高柳は逃走するのだった。

「こんなに遅くまで残っていたの」

結唯も生徒の前では体裁を取り繕う必要を感じた。

「私もやめられないんです」

「え」

何かを言いかけた結唯だが・・・基本的に教師としての情熱も持っていない結唯はスルーするのだった。

巨乳で美女で純情で公務員だが・・・何かが欠落している結唯なのである。

「先生は幸せですか」

謎めいた魔女ではなく生徒なのである。

帰宅した結唯は・・・慶をマネジメントする「オフィス」が知らぬ間に立ちあがっていることを知りショックを受けるのだった。

慶のマネージャーとなっていたのは綾子だった。

様子を見に行った結唯はオフィスから出てくる慶と綾子を目撃し、身を隠す。

「私だったら何でも言うこと聞くと思っているんだから・・・本当にエゴイストね」

「・・・」

「まあ・・・あの女じゃ・・・何もできないしね・・・ダンスのことも知らない。英語もドイツ語も喋れない。私ならあなたをプロデュースすることができるもの」

「・・・」

「今夜は奢ってもらうわよ・・・焼き肉ね」

厳しい現実を突きつけられ・・・悲哀を感じる結唯。

ブレイク寸前のアイドルグループから脱退し・・・女優業に賭けた女は残酷な敵役に徹するのだった。

あかりん、がんばってるなあかりんである。

行き場を失った結唯は・・・真理子に生活費を渡すために実家を訪れる。

クイズ番組を見続ける母親は・・・娘の里帰りに熱狂して夕ご飯を作りだす。

母親のだし巻き玉子の美味しさに泣きだす結唯。

「ほら・・・ごらんなさい・・・あんな男捨てて・・・ママのところに戻ってきなさい」

「春物の着替えを取りに来ただけよ」

「待ちなさい・・・帰って来なさい」

母親の蟻地獄から逃れ・・・春の夜の中・・・慶の幻を追いかける結唯だった。

どこで調べあげたのか・・・慶の元へ姿を現す高柳。

「何してんだお前・・・こんな時間にこんな女と・・・まっこりでもっこりか」

「あれ・・・この人・・・あの女の不倫相手だよ」

「返してくれよ・・・結唯を返してくれ」

「・・・」

慶と綾子はオフィスに避難する。

「あんな女・・・あの男に返しちゃえば」

「・・・」

「だって・・・棲んでる世界が違いすぎて・・・無理でしょ」

「彼女のこと・・・好きなんだ」

「ふ」

家路を急ぐ結唯の前に現れる高柳・・・狂気は人を移動させるよね。

「妻とは離婚した・・・だから結婚してくれ」

「一年前に・・・そう言われたらうれしかった・・・でも今は無理なんです」

「どうして・・・べつの女とよろしくやってる奴だぞ」

「彼のこと・・・好きなんです」

「あ」

結唯はだし巻き玉子にチャレンジした。

自分が美味しかったものを彼にも食べさせたい一心である。

しかし・・・彼が求めていないものを与えても虚しいのだ。

案の定、玉子料理には見向きもしない慶だった。

「もう・・・私のこといらなくなったの・・・」

「なぜ・・・」

「だって・・・私のことなんか・・・見えていないでしょう」

「今は・・・大切な時なんだ・・・俺はもう失いたくないんだ」

「抱いてよ」

自ら脱衣する結唯。

もう・・・温もり以外は信じられない結唯なのである。

もちろん・・・慶も結唯を嫌いになったわけではない。

たちまち・・・久しぶりに燃える男と女。

結唯は積極的に慶の肉体を求め、その精力を搾りつくそうとするのだった。

しかし・・・忘我の時はたちまち過ぎて行く。

「ロンドンの演出家から招聘された・・・」

「ロンドンって・・・どうして日本じゃだめなの・・・」

「夢を叶えるチャンスなんだ・・・邪魔しないでくれ」

「・・・」

慶は綾子と共にロンドンに旅立った。

結唯には空のシングルベッドが残されていた。

空っぽになった部屋を掃除する空っぽの結唯。

「君の夢は何だ」

「私の夢は・・・慶と結婚すること」

「・・・」

私は失敗した・・・散りゆく桜を見て・・・結唯は呟く。

才能のある人はない人に残酷だと結論する結唯。

しかし・・・話はこれからなのである。

二人の恋が終わったわけではないからだ。

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Sl005ごっこガーデン。さよなら日本の貧乏アパートセット。

エリああん・・・愛しているけど夢を追いかけて行ってしまうなんて・・・ひどい・・・でも素敵なのでス~。果たして・・・何が正解なんでしょう・・・①ひたすら待つ・・・②追いかけてロンドンへ・・・③とりあえずラーメン・・・じいや・・・来週はもしもの時の綾子衣装とロンドンセットもお願いね~・・・先輩三人と結婚するためには配偶者は三人までOKという法律改正が必要なんでス~

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2015年3月 6日 (金)

許したいけど許せない(真木よう子)忘れようとしても忘れられない(臼田あさ美)殺したくても殺せない(菊池亜希子)

問題意識は面倒くさいものだ。

「勉強しなさい」と言われて「何故」と考える間に勉強した方が効率がいい。

しかし、「殺しなさい」と言われて「何故か」と考えないで殺すと死刑になる場合がある。

面倒くさいことをある程度はした方がいいのである。

たとえば政党名である。

「自由民主党」と「民主党」のわかりにくさは尋常ではないわけである。

キーワードとしては「自由主義」と「民主主義」がある。

単純に考えると「民主党」は「自民党」から自由を抜いた政党ということになる。

つまり・・・民主党には自由がないのだ。

それでいいのか・・・と思うわけである。

民主党が与党として短命だったのは・・・もちろん・・・自然災害というショックもあるだろうが・・・自民党より自由がないからだと思う。マイナスなのである。

基本的に民主党は現在の自民党の立場になりたいだけで・・・何かを変革しようという意図は感じられない。

政策では戦わず、スキャンダル攻撃のみである。

やはり・・・政策の対立軸は明確にするべきだろう。

もちろん・・・民主党の中には対立を望まない人もいるだろうが・・・そこは妄想である。

「キーワード」として「自由主義」に対立するのは「平等主義」である。

だから「民主党」は「平等民主党」に改名するべきだ・・・あくまで妄想です。

略すと「平民党」になって発音は「ビョーミントー」である。

やや・・・ダサい感じもするが・・・「ジミントー」だってダサいと思えばダサいからな。

ニュース・キャスターが噛みそうな感じがしてそれだけでちょっと楽しい。

「病人党かっ」という陰口は必ず叩かれる。

しかし「自由」を重視するか・・・「平等」を重視するかで・・・旗色が鮮明になりやすいことは間違いない。

第三勢力として「自由平等党」という中途半端なないものねだり勢力も発生しやすくなる。

ただし・・・自由平等党はあまり民主的ではないのだな。

ついでに「共産党」は「共産独裁党」ぐらいの方がインパクトがあると思うぞ。

まあ・・・とにかく・・・名前からして不明瞭な政党は基本的にダメなんだと思う。

「公明党」も「創価公明党」の方が公明正大だよな・・・もう・・・いいんじゃないかな。

平等主義の根本は格差の是正ということになる。

富裕層を中間層に引きずり落とし、貧困層を中間層に引きずりあげる。

これを民主的に行う平民党を支持する人が中間層にどれだけいるかが勝負なのである。

本当に・・・もう・・・いいんじゃないか。

まあ・・・いつか富裕層になりたいという希望と貧困層になりたくないという恐怖のバランスの問題なんだな。

おい・・・どうしたんだよ。

いや・・・今朝・・・そういう夢を見ちゃったんで・・・。

夢の話は禁止。

男女平等の夢もまた見果てぬ夢なんだけどな。

で、『問題のあるレストラン・第8回』(フジテレビ20150305PM10~)脚本・坂元裕二、演出・並木道子を見た。母親には三種類ある。男の子の母親と女の子の母親と男女両方の母親である。性同一性障害児の母親はノイズとして無視する。男子に既得権が大きい社会では男子の母親は男尊女卑で女より男が有利であることに否定的にはなれない。我が子が可愛いからである。父親は男であるために子供の性別に関係なく・・・既得権益を守る。そうなると女の子の母親の選択は限られてくる。「女のくせに生意気な」と言われない子供を育てるか・・・男を操るしたたかな女に育てるかである。女性が人間として権利を主張しようとする時・・・それを援護する親は常に少数派なのである。

一部お茶の間の・・・ドラマ愛好家であればあるほど・・・このクズ男子であふれるドラマにおける高村新(風間俊介)の正体が疑われるキャスティングである。

そして・・・今までの処・・・まっこう期待を裏切る展開なのだった。

高村は・・・雨木(杉本哲太)の強要した全裸土下座謝罪というパワーハラスメントによって凌辱された過去を持つ五月(菊池亜希子)の恋人だった。

心折れ、帰郷した十一月生まれの五月は親戚の経営するカフェ「きっさ10」でウエイトレスをしながら司書の資格獲得を目指していた。

そこへ・・・東京の旅行代理店から出張してきた高村がやってきて・・・二人は恋に落ちたのだった。

学生時代の友人であるたま子(真木よう子)と三千院(臼田あさ美)は五月のその後に複雑な心境を持ちつつ・・・幸福を願うのだった。

高村は「プロポーズしているんです・・・返事はまだなんですけどね」と屈託がない。

しかし・・・五月はたま子に「事件のことは話してないんだ・・・彼には知られたくない気持ちもある」と告げるのだった。

事件について・・・「恥ずかしい」と母親に告げられ・・・傷口に塩を塗られた経験が五月を臆病にしていた。

複数の男たちの前で全裸になったことが・・・高村の心にどう響くのか・・・恐ろしかったのである。

その母親は・・・五月とともに上京していた。

竹下通りで迷子になった五月の母・静子(藤田弓子)を迎えに出る高村。

五月とたま子は雨木社長と裁判で戦うという行動への迷いが生じているように見える。

デリケートな「訴訟」であるために・・・弁護士の烏森(YOU)は様子見である。

一方、「ビストロ・フー」にはパティシェ・ハイジ(安田顕)の弟・恭平(矢野聖人)がやってくる。

ドライヤーちゃんこと藍里(高畑充希)はたちまち髪を掻きあげ耳を出すが・・・恭平が「兄の結婚式への出席問題」を話出して髪を下ろすのだった。

「臨戦態勢が過ぎる」と喪服ちゃんこと結実(二階堂ふみ)は批判するが「一生待機中でも困るわよ」と返される。

「私はセザンヌのように大器晩成なんです」

「ゴッホのように死後に評価されたりして」

「死んでからもてる私ってどうなんですか」

ハイジもシェフちゃんこと千佳(松岡茉優)も黙殺するしかないのだった。

今回は若手トリオとハイジは恭平の結婚式に集中する。

たま子、三千院、烏森は重い主題である五月問題に取り組むのである。

「女の園」であるが・・・それぞれのセリフに対応するそれぞれの表情が巧であり、何度も見直したくなる要素になっている。

特にセリフの少ない三千院のリアクションは素晴らしいアクセントになっている。

「つまらない人間ばかりの中で兄貴は面白い」と兄の女装を応援する弟のために最高のケーキを贈りたいと決意するハイジ。

ジェンダーの狭間で苦境にありながら・・・女たちを優しく包み込むハイジのために若手トリオも張り切るのだった。

パティシェとして飴細工の腕を披露するハイジと若手トリオのコント。

第一弾。

喪服ちゃん「ムンクの叫び」

ドライヤーちゃん「プリクラで撮った脚(異常にすらりとしている)

シェフちゃん「映画泥棒のキャラクター」

第二弾。

喪服ちゃん「アンビリバボーなおデブちゃん」

ドライヤーちゃん「カラコンの大きな目のトルソー」

シェフちゃん「血まみれナース」

ハイジ「・・・」

福井県から上京した静子は「女の幸せは結婚して家庭に入ること」を信奉する旧世代の象徴である。たま子を始め、喪服ちゃんやシェフちゃんに「ウチの嫁に来ないか」とアプローチする。

「こんな店で働きたい」と娘が言えば、母親は「こんな店で働いてないでお嫁さんになりなさい」と善意からの毒を吐くのだった。

「いつまでもこんな店続くわけないんだから」

「いつまでも続けたいと思っている」と反駁するたま子。

しかし、社員寮を大掃除して、美味しいうどんを振る舞う静子はメンバーたちに愛される良き母なのである。

そこには「男女平等」という見果てぬ夢を見るよりも「現状」の中で幸福を模索した方が賢いという選択肢が提示されている。

静子は・・・娘が訴訟を起こすことには反対なのだった。

たま子たちの心尽くしではとバスツアーを楽しんだ静子は心の内を明かす。

「東京に出るのだって・・・反対だった・・・これ以上、あの子に傷ついてほしくない・・・」

一方・・・ビストロ「SYMPHONIC OMOTESANDO」では赤字の責任をとってお尻を触らずにはいられない土田部長(吹越満)は左遷され、窓際ハゲの西脇(田山涼成)が代理を務めていた・・・窓際なので昇格はしないのだった。

敗北を認めた傲慢なシェフ・門司(東出昌大)は雪辱戦を果たすため、悪魔くんである星野大智(菅田将暉)を含めた厨房スタッフのチームワーク向上を図る。

「負けても戦い続けるものだけが勝者になれるのだ」

しかし・・・たま子も譲らない。

「勝っても勝っても戦いますから」

だが・・・たま子も・・・料理を愛することにかけては傲慢なシェフが一途であることは認めるのだった。

だが・・・二人には越えられない壁があるのだ。

「料理がすべてでその他は無関係」という傲慢なシェフ。

「料理はすべてと関係している」というたま子。

意地と意地が激突するのである。

敗者である傲慢なシェフはたま子に歩み寄りを見せるが・・・まだまだなのである。

ゼネラルプロデューサーの喪服ちゃんが予算度外視で進めるとある法律事務所の万年敗訴弁護士に似たハイジの弟の結婚式は恙無く展開する。

第三の性は一番の少数派なんだな。

それはともかく・・・もはや・・・「ビストロ・フー」は順風満帆状態なのである。

「彼とは別れてきた」と五月は報告する。

「喧嘩でもしたのかい」と静子。

「私は・・・司書の資格をとるって決めたし・・・せっかく、福井にもどったんだから・・・お母さんと暮らしたいし・・・」

「・・・」

しかし・・・そこへ自家製の肉まんを持ってやってくる高村だった。

「来ないでって言ったでしょう」

「肉まん作ったので・・・皆さんに食べてもらおうと思って」

ついに・・・告白を始める五月だった。

「私は・・・会社でひどいパワハラを受けたのです。楽しかった仲間たちの顔を思い浮かべながら・・・謝罪のために裸になるように命じられたのです。その件について訴訟を起こすのです」

「すぐに入籍しよう」

「何言ってるの」

高村は肉まんをふたつに割ってカラシを塗った。

「君が酷い目にあった時・・・僕はその場にいられなかった。でも、これからは君の苦しみを分かち合いたい。君と一緒に戦いたい。裁判になったら君と法廷に行って、帰りには二人で一緒に美味しいものを食べよう」

「この人・・・変でしょう」

たま子は涙を浮かべて微笑むのだった。

そこへ静子がやってくる。

「会社なんて男たちのものなんだよ」

「最近はそうでもないですよ・・・」

「だって女は出世できないだろう」

「まあ・・・幹部はまだ男性優位ですけど・・・」

「あれだけ・・・恥ずかしい思いをしたのに・・・どうしてまた恥をかこうとするんだい。狂犬にかまれただけじやないか。それなのにまた狂犬の中に入って行く必要なんてない。娘がそんな馬鹿なことをするなんて・・・私は死んだ方がマシだよ」

静子は捨て台詞を残し・・・去って行く。

「詐偽の被害者じゃなくて詐欺師の味方なのよ」と母を例える五月。

「・・・」

娘と決裂した静子は一人で帰り支度を整える。

たま子と駅へと向かう静子は雨木社長に運命の遭遇である。

「あの男か・・・」

静子は我を忘れて雨木を追うのだった。

「ダメよ・・・五月ちゃんのお母さん・・・」

ビストロ「SYMPHONIC OMOTESANDO」の店内で雨木社長の胸を叩く静子。

「あの子は・・・女の子なんだ・・・あの子は女の子なのに」

「なんだ・・・あんたは・・・」

雨木社長は静子を突き飛ばし店の奥へ姿を消す。

騒ぎを聞きつけて心が揺れ出した傲慢なシェフが姿を見せる。

「どうしたんだ」

傲慢なシェフは静子を背負って「ビストロー・フー」まで運ぶのだった。

傲慢なシェフが去り・・・たま子と二人になった静子は呻く。

「わからないよ・・・あんたたちの気持ちが・・・」と静子はたま子に問う。

「五月を想うお母さんの気持ちは分かってます。ただ・・・今は五月の思う通りにやらせてあげてほしいのです」

「人様と争うことなんか・・・いいことないよ・・・人を憎んだって仕方ない」

「五月は憎しみを捨てたいんです。裁判は涙か溜息か・・・心の憂さの捨て所なんです」

「ひばりちゃん」

「五月は許せない自分が許せないんです。ひどいことをされたのにひどいことをした人がひどいことをしたとみとめなければ・・・一生許すことができません。忘れようとすればするほど忘れられない。誰かと笑っていても・・・急に苦しくなって・・・トイレで隠れて泣くんです・・・そんな人間が幸せになれると思いますか」

「・・・」

たま子は五月のレシピノートを静子に見せる。

静子は娘の楽しそうな文字を追う。

仲間と働く喜びに満ちた日々。

そして・・・その終焉。

その日・・・一度死んだ娘をもう一度殺したのは・・・静子だった。

「母に・・・恥だと言われた。今日は私の誕生日なのに・・・誕生日になる度に今日のことを思い出さずにはいられないのに・・・一生・・・口惜しい誕生日になったのに・・・」

静子は日記を抱きしめた。

静子は娘に告げた。

「お前の好きなようにしなさい。そして・・・嫌なことがあったら・・・振り返りなさい。私はずっとあなたを見守っているから・・・振り返れば私がいるから・・・あなたを生んだ時から愛用している静電気バチバチの化繊の虎のセーターとともに・・・」

「一緒に殴りに行こうね」

ついに扉を開く「烏森法律事務所(仮)」・・・。

「刑事訴訟は難しいので・・・民事訴訟を起こします・・・必ず勝てるとは言いません。でも・・・全力を尽くします。こちらの請求は二点。雨木社長とその会社からの文書による謝罪。そして、慰謝料金五百万円です。受け入れられない場合は提訴します。その場合は・・・すべてを裁判所で語ってもらうことになります」

烏森はたま子にだけ・・・波及効果について打ち明ける。

「あえて・・・五月さんには言わなかったけれど・・・勝敗とは別に・・・裁判を起こすだけで相手には深刻なダメージが生じるでしょう・・・役員たちが女性社員に全裸謝罪させて社長がくるっと回ってみようかなんて言う会社・・・バッシングされまくるに決まってる・・・場合によっては社会的に葬りさられるわ・・・」

たま子は烏森の言葉にショックを受けるのだった。

店と店の間で逸品のヒラメを仕入れてご満悦の料理バカ・・・傲慢なシェフに声をかけるたま子。

「あのおばさん・・・大丈夫だった」

「うん」

「何があったんだ・・・」

「私の友達が・・・雨木社長にひどいことされたの・・・それで裁判になると思う」

「・・・」

「これは・・・私の気持ちだけど・・・あなたにはもっとふさわしい店があると思う・・・できればあの店をやめてもらいたい」

「裁判と店は無関係じゃないか・・・」

「そう・・・」

「なんだよ」

「わかったってこと」

「なにがさ」

たま子は傲慢なシェフの頬に触れた。

「私は・・・滅多に人を好きにならない。でも好きになったら・・・なかなか嫌いにならないの。だけどまっすぐな線とまっすぐな線は一度交わったら・・・それきりなんだよ・・・」

「まったく・・・わからない」

「だよね」

平行線ではなくて・・・一度は結ばれた二人だったらしい。

次は三回目の序破急の「急」・・・その後の展開はさすがに読めないのだった。

長い「急」かもね。

内容証明の通知書を受け取った雨木社長は闘志を漲らせるのだった。

ついに戦いの火ぶたは切られたのである。

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2015年3月 5日 (木)

ゴーストライター(水川あさみ)と小説家の綴り方(中谷美紀)

放送作家はほとんどテレビを見なかったりする。

忙しすぎてテレビなんて見ている暇がないからである。

自分の構成した番組のオンエアさえ見なかったりするわけである。

もっとも放送作家にもいろいろあって・・・ロケやスタジオ収録そして編集にまで立ち会うタイプもいる。

さらにオンエアも見た上で録画を見直したりするわけである。

どれだけ、責任感が強いというか・・・番組が好きなんだ・・・。

タレントがトークしていることがタレントの言葉だと信じているお茶の間の人にとって放送作家はいわばゴーストライターである。

表現ということで言えば・・・直接表現者と間接表現者がいるようなものだ。

だが・・・そもそも・・・劇作家と俳優はそういう関係なのである。

そういう意味では「小説」と「小説家」も似たようなものだが・・・「小説」を「小説家」の「言葉」と信じる人にとって「小説」が完成されるまでに携わる人間はみんなゴーストライターということになる。

「小説家自身」の「発言」はそういう怪しいシステムの中にある。

それでも・・・「小説家」の存在を愛する人々がいてそういう人々へのサービスがビジネスになるとしたら・・・「小説」って何なんだという疑問が残るわけである。

まあ・・・いいか・・・それも人間だもの。

一生かかっても読み切れないほどの「小説」があるのに・・・「小説家」のことなんてどうでもいいとみんなは思わないらしいので。

で、『ライター・第1回~』(フジテレビ20150113PM9~)脚本・橋部敦子、演出・土方政人(他)を見た。谷間に登場である。人間性再生ドラマというジャンルがあるとすればこの脚本家は第一人者と言えるだろう。もちろん・・・「人間」とは何かという問題はあります。ここでは「人に対する思いやり」とか「人が生きている実感」とか「なんとなくハートウォーミングな感じ」とか・・・「生きる喜びに満ちた幸福」な人間ということです。主人公たちは皆・・・最初は暗黒時代を生きていて・・・突然、ルネッサンスし・・・復興の時を生きるという展開になります。それがきっと人間の生きる道なんだな。

今回は・・・ベストセラーを連発し、ネームバリューだけでも利用価値が高いスター小説家の遠野リサ(中谷美紀)が主人公。もちろん・・・作家なので人間というものをある程度理解しているわけだが・・・そこは・・・自分自身のことは分かりにくいという手法で暗黒に突入させる。

つまり・・・かっては大傑作、大ヒットを生みだしたリサの才能は枯渇し・・・近頃、めっきり書けなくなっているのである。

しかし・・・リサという金の卵製造機を支配する出版業界を主体とするメディア・コンプレックスは・・・リサの都合は問わず・・・作品生産の維持を要求するのだった。

その代表者が「小説駿峰」の編集長・神崎(田中哲司)である。神埼はリサをコントロールするために肉体交渉も辞さない男だった。

小説家・遠野リサを演じる遠野理紗は・・・フライベートでの悩みを抱えている。

母親の遠野元子(江波杏子)は認知症を患い、介護付高齢者住宅で暮らしているが・・・娘の顔さえ認知しなかったりするわけである。

理紗の一人息子である大樹(高杉真宙)は母親に懐かず冷淡に接する高校生で・・・理紗の言葉にはまったく耳を貸さない。

つまり・・・多くの不特定多数には聞いてもらえるリサの話を・・・理紗の家族はまったく聞かないのである。

だが・・・リサにとっては・・・作品と・・・読者がすべてである。

その作品が書けなくなったのは・・・リサと理紗の心のバランスがおかしなことになってきた・・・ということだ。

リサとしては筆か進まない苦しみに喘ぐことになる理紗。

そこに・・・アシスタントとして川原由樹(水川あさみ)がやってくる。

神崎の部下である小田(三浦翔平)にとってはインパクトを与える小説の書き手なのである。

しかし・・・神崎にとってはリサの作品を生産維持することが大事なので・・・由樹にリサの代筆を依頼する。

こうして・・・リサのゴーストライター由樹が誕生する。

もちろん・・・由樹は小説を書く喜びを感じるが・・・同時にリサに支配される自分の存在を重く感じるのだった。

やがて書けない小説家と・・・書けるゴーストライターは決裂する。

由樹は自分がゴーストライターであることを明かし、裁判を闘うが・・・敗訴し・・・すべては妄想だったという烙印を押されてしまう。

しかし・・・由樹を失ったリサは・・・結局書けないのである。

突然・・・「ゴーストライターはいました・・・私は嘘をついていました」とテレビ番組の生出演で告白するリサだった。

由樹を葬り去ろうとしていた神崎は掌を返し・・・悲運の元ゴーストライターとして小説家・川原由樹の売り出しを開始する。

実はしたたかな女である川原由樹は小説家の道を歩きはじめる。

一方・・・小説家を辞めた理紗はそれなりに充実した日常を生き始める。

リサの秘書としてリサに人生を捧げた美鈴(キムラ緑子)は発狂して由樹を刺殺しようとするが間違ってリサを刺してしまうのだった。

ある意味・・・おバカさんである。

再会したリサと由樹。

「デビュー作・・・どうでしたか」

「言わなくてもわかるでしょう・・・自分の言葉を自分の名前で人目に晒すのは心を竦ませることなのよ」

「・・・」

「あなたを酷い目にあわせたけど・・・私にはわかるわよ・・・酷い目に遭いながら・・・それを面白がっている・・・もう一人のあなたがいることを」

「さすがは・・・遠野リサ・・・変わりませんね」

物語はまだ続いて行くが・・・今度は由樹が書けなくなって・・・理紗がゴーストライターになり・・・そのうち遠野由樹とか川原Rともう誰が誰だか・・・分からなくなっていくんだと考える。

まあ・・・本能寺ホテル炎上とか・・・私、刺されちゃいましたよお・・・とか・・・久しぶりに中谷美紀のちょっと頭のおかしい感じの演技が見れてよかったです。

「トリック」の山田と上田がゴールしたので、「ケイゾク」の柴田と真山の「今」も見たいよね。

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2015年3月 4日 (水)

なにが理想の病院ってやつなんだ(堀北真希)これが理想の病院ってやつなのか(志田未来)

以前にも書いたが・・・このドラマは近未来SFである。

自由診療制度が前提となった医学界を描いているらしい。

はっきり言って・・・この「架空の世界」の造形が上手くいっていない。

保険診療制度と自由診療制度の違い・・・それさえもほとんど説明されていないのだ。

日本全体がどういう社会状況になっているかも全く描かれない。

たとえば・・・医療が金で買える時代になっているのなら、政治献金はおろか選挙権も金で買える世の中なのかもしれない。

保険診療制度の枠内でも病院の経営には様々な差異がある。

東大を頂点とする大学病院がどの分野でも最高の医療を提供しているかというとそうでもない。

地方の病院の経営難は保険診療制度下でもあるわけである。

企業系の病院には・・・そこはかとなくリッチな匂いが感じられる部分がある。

古い病院と新しい病院では・・・居心地の良さがまるで違う。

そういうものが新世界ではどうなっているのかが一つのポイントである。

上下関係や派閥争いに巻き込まれる看護師の人間関係を描くのなら・・・この設定は必要ないんじゃないかな。

最初から・・・疑問に思っていたのだが・・・もはや・・・このまま、最後までなんじゃこりゃで行くしかないんだよね。

次はもう少し・・・頑張ってもらいたいよね。

プロデューサー、お前だ。

で、『まっしろ・第8回』(TBSテレビ20150303PM10~)脚本・井上由美子、演出・加藤新を見た。ナイチンゲールが「傷病兵の看護」という戦争方法を開始した時、同時に生まれたのが「苦痛の前の人間平等」であり、敵味方の区別なく看護するという戦略的な手法である。もちろん、戦術的には無茶苦茶であり、敵は殺し、味方を治すのが正しいわけである。しかし、捕虜も治すことは世間体がいいのである。ビジネスの世界では薄利多売ではなく、高級志向で生き残りという戦術もあるわけである。超高級病院は「貧乏人は死ぬしかなくても金持ちは助ける」というお茶の間に背を向けたブラック・ユーモアが前提となる。それ以外にはないのである。

今回、帝都病院と東王病院の対立軸を謎のセンター長(石黒賢)が語るのだが・・・。

「医学的な成果となるような病気の治療に専念し、成果とならない病気は無視するという帝都病院の方向性ではなく・・・あらゆる病例を平等に扱う方向性を目指す」

しかし・・・それは経済力のあるお客様に対してのみ・・・ということなのである。

ええと・・・何かがおかしいですよね。

おかしいと思うキッドが間違ってますか。

そして・・・「東王病院」は「個人病院」らしい。

ええと・・・つまり・・・センター長のポケットマネーで運営されているということなんですかね。

あるいは・・・センター長がすべての資金を調達しているっていうか・・・。

まだ・・・外資系で・・・中国マネーが流れ込んでいる設定の方がリアリティーを感じるな。

鬼怒川の廃業ホテル改装病院かよっ。

それで嫉妬に狂った公立病院がスキャンダルでつぶしにかかってくる・・・中国マネーは転売で・・・ロシアマネーが流れ込んでくるのか。

まあ・・・とにかく・・・今回の話をまとめておこうよ。

つらいけどねえ。

外科学会の会長を務める帝都大学の仲野幸助 (宅麻伸) の用件は・・・。

「帝都大学の医師が東王病院の看護師にストーカーされて暴力をふるわれた件の管理責任の追及」だった。

対応するセンター長は・・・当事者である木綿子(高梨臨)と居合わせた朱里(堀北真希)そして菜々(志田未来)を呼びだす。

父親と確執のある医師・孝太郎(柳楽優弥)も同席する。

仲野の一方的な言い分に「事実とは違う」と主張する朱里と菜々。

人に逆らわれるのが大嫌いな仲野はたちまち・・・朱里と菜々もターゲットにするのだった。

「こんな生意気な看護師、やめさせちまえ」

恩師である仲野に慇懃に対応するセンター長。

「たかが痴話喧嘩に大袈裟じゃないですか」

「おや・・・私が間違っていると言うのかね」

「名ばかりの恩師と違って看護師は実戦力ですから」

無礼なセンター長だった。

「じゃ・・・お前の処はつぶさせてもらう」

捨てゼリフを残してチンピラのような医学会のドンは去って行くのだった。

結局、不倫を暴露されて木綿子だけがいたたまれない感じになる。

「私の父親は狂犬のような男だからやばいですよ」

「私は弟子だったから・・・よくわかってる」

問題のある医学界ではないので・・・一方的な悪者に仕立て上げられて木綿子はオロオロと泣き寝入りする覚悟を決めるのだった。

「しっかりしなさいよ」と朱里と菜々・・・ダブル・ヒロインかっ・・・は木綿子を叱咤するが・・・。

「だって不倫ナースだもの」と脚本家の不倫ドラマのヒロインみたいなことを言う木綿子。

「だって・・・あの医者だって同罪じゃないの」

「奥さんや子供に悪いもの・・・」

「なんじゃそりゃ」

ナース・ステーションでは薬物中毒ナース・さくら(MEGUMI)が朱里と菜々を問いつめる。

「不倫ナースって何よ・・・私たちの評判まで落ちるのよ」

お前が言うなである。

「・・・」

しかし・・・一部メディアがあることないことを書き始め、院内は騒然となる。

「東王病院のストーカーナースの闇」

「貧乏人お断り・・・セレブ病院の奢り」

「悪人だらけの入院患者リスト」

個人情報漏洩である・・・ものすごい損害賠償裁判になるわけだが・・・セキュリティーどうなってんだ。

すべてはチンピラドクターの差し金らしい。

お客様やその家族からの問い合わせに混乱するナースステーション。

そもそも・・・そういうクレーム処理部門がなければ・・・セレブ御用達が成立しないだろうが。

お気に入りの看護師長(木村多江)がオペ担当になり・・・末期がんを告知されたお客様患者の大江様(眞島秀和)は癇癪起こしてインタビューに答える。

「この病院は医者はクズだし・・・ナースはキャバクラ嬢みたいなもんですよ・・・アハハ」

なんだか・・・いきなり奈落の底に突き落とされた東王病院。

本当に残念な感じだ。

そもそも・・・セレブという設定そのものが揺らいでる。

たとえばG病院の医者がとてもじゃないが危なくて勤務先の病院には家族を入院させられないので東王病院に・・・というのが基本だろう。

マス・メディア経営者だって・・・政治家だって・・・権力者はみんな東王病院のお客様なのだから・・・帝都病院だって・・・そういうものに敵対できないだろう・・・。

そういうところが意味不明なんだよ。

大江様は「君は僕のこと愛しているんだろう・・・」と看護師長に迫る。

あくまで「おもてなしです」と対応する看護師長だった。

大江様・・・退院すればいいじゃないか。

それともふられたことを絶対認められないタイプか・・・。

ついに・・・チンピラドクターから最後通告があり・・・関係者が集合する。

「俺か・・・ナース三人かどっちかやめたら許してやると仰せだ」

「川崎の非行少年ですか」

「私・・・やめます・・・」と木綿子。

「私も・・・看護師はどこでもできるから」と菜々。

「じゃ・・・私も・・・お暇を・・・」と朱里。

「いえ・・・三人を採用した私に責任がある」と看護師長。

「いや・・・私がやめる」とセンター長。

「ここでどうぞどうぞってどんなコントですか・・・なんで・・・こんなことで」と朱里。

「そうだ・・・センター長・・・理想の病院から逃げる気か・・・15年前みたいに」と菜々。

「憶えていたのか」

センター長は菜々の母親を見捨てた過去があるのだった。

つまらない症例だったからという理由で。

「小学生の君からもらった手紙とってある・・・母を見捨てるなんてひどい・・・って書いてあったんで・・・いつも反省している」

「・・・」

「わかった・・・やめるのはやめよう・・・みんなでがんばろう」

「よかった・・・私、やめる気なかったので」と朱里・・・。

何もかもが虚しいな。

センター長はナースを集めて秘策を明かす。

「これからの医療は美容師さんみたいにするべきなんだ・・・お客さんに似会う髪型をチョイスするようにお客さんに見合った看護をしようね」

「・・・」

「大変です」

「どうした」

「大江様が安楽死したいって・・・」

「つまり・・・それなりの顔のお客様が・・・椎名林檎みたいな髪型を要求している事態だな」

まあ・・・とにかく・・・もう・・・主役が花束もらっているので・・・なるようにしかならないんだよな。

冒頭に書いたように「ナイチンゲール」には大いなる矛盾がある。

つまり、崇高な人間は薄汚いということである。

そういう意味では脚本はよくできている。

薄汚い人間が時々、崇高になる話なのである。

だが・・・お茶の間ビジネスとしては・・・ちょっとね。

腹黒いがお人好しの朱里と計算高いが純情な菜々。

二人がぶつかりあって成長していくおたんこナースなドラマが見たかったなあ・・・。

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2015年3月 3日 (火)

人は誰でも恋をするもの(杏)俺になんの断りもなくいやらしい事しやがって(長谷川博己)

人は自分が愛しているものを貶されると怒りを感じる。

それは本当に愛しているのが自分自身だからである。

「愛するより愛されたい」も「愛されるより愛したい」も嘘で「愛しているものに愛されたい」が本音である。

親が子供を愛し、子供が親を愛するのが原点だからだ。

「恋」は「愛」ではない。

欲しいものを手に入れたいという欲望。

欲しいものを手に入れるためには自分さえも犠牲にできる心の病だ。

「ゴリラーマン/ハロルド作石」を愛読する男は「マンハッタンラブストーリー」の主人公を極端な無口に設定したりする。

「愛するより愛されたい」と聞いて「愛されるより愛したい」を思い出す人はKinKi Kidsのファンだ。

「パシフィック・リムの点数低すぎ」と思う人はおタクだ。

みんな・・・自分の愛するものを愛してもらいたいのだ。

それは・・・自分を好きになってもらいたいから。

まあ・・・誰にも愛される誰かなんて・・・無理なのだが。

で、『デート〜とはどんなものかしら〜・第7回』(フジテレビ20150302PM9~)脚本・古沢良太、演出・石川淳一を見た。谷口巧(長谷川博己)の書棚では「ゴリラーマン」が何度か目につくように配置されている。コミックのジャンルの一つである「ヤンキーもの」はどこか屈折を感じさせる。そもそもコミック作家たちはみんなおタクでヤンキーにカツアゲされる存在である。しかし、コミックの読者には一定数のヤンキーがいる。つまり、ヤンキーもののコミックはおタクがヤンキーに媚びを売っているビジネスなのだ。・・・おいっ。教育評論家の父と絵画教室経営の母を両親とするサッカー少年が・・・本人はあまり、ヤンキー的ではないが・・・友人にはヤンキー兄妹がいて・・・ヤンキーたちがなんとなく活躍するゴリラーマンを愛読するというのは屈折のひとつの象徴なのである。おタクは心の底ではヤンキーに憧れているんだなあ。

十三年前・・・チビ依子(内田愛)は胃潰瘍で入院中の母親が実は末期がんと知り、病室で生前の小夜子(和久井映見)に問い正す。

「嘘をついたのですか」

「あなたのためよ・・・お母さんが死んだら・・・あなたはショックを受けるでしょう。まあ、私はあなたにとってどうでもいい人かもしれないけど」

ショックで泣きだすチビ依子。

「ウソよ・・・あなたに泣かれるのが面倒くさかっただけなの・・・私のためについたウソなの・・・ごめんね」

小夜子はチビ依子を抱きしめる。

チビ依子は・・・母親のために泣かないと決めた。

2015年1月初旬・・・。

巧は藪下依子(杏)に母・留美(風吹ジュン)の病状を説明する。

「空腹時に痛みがあって食欲がないんです・・・検査で異常はなかったんですが」

「それは心配ですね・・・セカンド・オピニオンを求められることを推奨します」

「どこか・・・いい病院をご存じないですか」

「わかりました・・・しばらくお時間いただけますか」

「はい」

依子から紹介された中央医療センターで留美は医師から検査の結果を知らされる。

「胃潰瘍だったそうです」と巧は依子に報告する。

「胃潰瘍」は依子にとって邪悪な記憶を思い出させる病名だった。

手術が必要な状態だったために・・・入院し1月19日に手術することになる留美。

それ以来・・・沈みがちな様子を醸しだすのだった。

入院中の留美を見舞った依子は・・・。

「あなた・・・本当に巧と結婚してくれるの」

「今、結婚についての契約条件を協議中です」

「でも・・・好きじゃないんでしょう」

「・・・」

「いえ・・・責めてるけじゃないの・・・ただ・・・ニートを押しつけるみたいで・・・あなたに申し訳なくて」

依子の中で疑惑が確信に変わるのだった。

依子は父・俊雄(松重豊)に末期がん患者への対応について意見を問う。

「お母さんがガンだと分かった時は茫然としてしまって何も考えられなくなった。お母さんが逝った後で・・・ああしてやればよかった、こうしてやればよかったと後悔したよ。今もずっと後悔している」

依子は・・・巧に同じ後悔をさせたくなかった。もちろん・・・巧に好きになってしまったからであるが・・・本人に自覚があるのかどうかは不明である。

「何を言ってるんだ」と巧。

しかし・・・ヤンキー兄妹は・・・。

「そういえば・・・絵画教室を私に継いでほしいとか・・・」と島田佳織(国仲涼子)・・・。

「この間、巧の母ちゃん・・・葬儀社から出て来たぞ・・・まさか・・・自分で葬式の手配を」と宗太郎(松尾諭)・・・。

「この間の夜・・・土地の権利証とか・・・整理していた」と巧も思い当たってしまう。

「巧さんに心配をかけたくないので嘘をついているのではないでしょうか」と依子。

「そんな・・・」

「医師に聞いても守秘義務があるので教えてくれないでしょう・・・私たちは留美さんが隠したいと思うならそれに合わせるべきです」

「でも・・・」

「私たちは留美さんの生きている間にできることをするべきです」

「・・・」

「結婚の報告をして安心させてあげましょう」

「う」

結婚についての条件について真剣に検討を始める二人だった。

「この朝食のメニューって・・・」

(月)米飯、豆腐とわかめの味噌汁、サケの塩焼き、納豆

(火)トースト、サラダ、ヨーグルト

※ただし、第二火曜は野菜しか食べない日

(水)米飯、ホウレン草の味噌汁、野菜の煮物、たくわん、納豆

(木)トースト、玉子焼き、サラダ

(金)米飯、ジャガイモの味噌汁、アジの干物、納豆

※ただし、第一金曜は野菜しか食べない日

(土)米飯、ネギの味噌汁、焼き海苔、たくわん、納豆

(日)トースト、スクランブルエッグ、サラダ

「お小遣いが一月五千円って・・・」

「充分、文庫本が買えます」

「セックスは週三回、二十一時からって・・・」

「何回だったらできるのです」

「そういう問題じゃない」

「休憩をはさみましょう」

「もう・・・恥ずかしいんだから~」と一人身悶える巧。

階下で入院の支度をしている留美は巧の父親の写真を見ていた。

「いつ頃・・・亡くなったのですか」

「誰が」

「この方・・・巧さんのお父様ですよね」

「死んでないわよ・・・十三年前に出ていっちゃったの」

「え」

「籍もそのままだし」

巧を問いつめる依子だった。

「あんなの父親じゃない・・・音信不通だよ」

「戸籍上の父親なら結婚後は私の義理の父になります・・・放置できる問題ではありません」

「谷口勉・・・元・教育評論家だよ・・・今はどこにいるかも知らない・・・死んでる可能性もある」

「生きています・・・ブログをなさっています」

「え」

「世捨て人の晴耕雨読日記」

管理人のプロフィール

谷口務・1953年11月2日生まれ

元・教育評論家

元・神奈川県青少年教育促進委員

「映画評論なんかしやがって」

「チャットができます」

「やめろ」

「お父さんが家出した原因は・・・」

巧だった。教育評論家の息子がニートでは世間体が悪い。

父子喧嘩が夫婦喧嘩になり家庭内暴力で警察に通報され父は家を出たのだった。

巧の父親の家を訪問する二人。

谷口務(平田満)はすきま風の入る貧しい部屋に棲む警備員だった。

「藪下依子と申します」

「まあ・・・入りなさい・・・落花生しかないけど」

しかし・・・部屋を観察した巧は女ものの化粧品、日本ある歯ブラシ、二人分の寝具、赤と黒の女性用下着などを発見し・・・女の影に激怒するのだった。

「帰ろう・・・母はずっと一人だったのに・・・あの男は若い女とよろしくやってんだ」

「分かりました」

とにかく・・・十三年前・・・依子は母を亡くし・・・巧は父親と喧嘩別れしていたのだった。

夜を徹した協議は続く。

「慰謝料は欲しい・・・僕には生活力がないし・・・だけどどうして離婚のことまで」

「離婚後の子供の親権ですが」

「子供の親権は譲れない」

「私がお腹を痛めた子供ですよ」

「育てたのは僕だ・・・毎日、幼稚園の送り迎えをして・・・」

その頃・・・兄妹は鷲尾豊(中島裕翔)を呼びだしていた。

「ラストチャンスだ・・・明日、二人は入籍するから」

「・・・」

佳織と二人きりになった鷲尾は問いかける。

「あなたは・・・それでいいのですか」

「・・・」

「巧さんのこと・・・好きなんでしょう」

「こっちが・・・いくら好きだって相手が好いてくれなかったら・・・みじめになるだけよ」

「・・・」

ついに・・・合意に達した巧と依子。

「明日、帰りに婚姻届を区役所からもらってきます」

翌日、鷲尾は依子を呼びだすのだった。

「もしも・・・巧さんが婚姻届にサインしなかったら・・・僕にもチャンスをください」

「え」

「僕が依子さんを好きだっておわかりでしょう」

「いいえ・・・そういう通達がなかったので」

「え」

その頃、巧は手術前の母と会話をしていた。

「もしもの時は・・・行政書士に頼んであるから」

「たかが胃潰瘍の手術で大袈裟だなあ・・・ああ・・・なんだかお腹がすいちゃった・・・食堂でなんか食べてくるよ」

顔で笑って心で泣いている巧は屋上で号泣である。

「お母さん・・・死んじゃ嫌だよ・・・」

依子が病院に到着する。

留美は夫の写真を見つめていたのだった。

板橋区都市計画課長としての勤務中の俊雄は娘からの電話に応じる。

「十三年前に離別した配偶者の写真を今も大事に保管し見詰めている人物の気持ちを類推して教えてください」

「もう一度・・・言ってくれ」

依子はバイクで巧の父を迎えに行くのだった。

兄妹が病院に到着する。

「合意したのか」

「一応」

そこへ・・・依子が務を伴って到着する。

「あの人・・・なんだかすごく懐かしい感じだぞ」と兄。

「巧くんのお父さん・・・」と妹。

「死を目前にした配偶者と逢いたがっている配偶者が面会することを止める権利はありません」

「たとえ・・・そうだとしてもこんな奴・・・」

突然、土下座をする務。

「すまない・・・しかし・・・彼女が末期ガンと聞いて頭が真っ白になってしまった・・・私にできることは・・・彼女を看取ることだけだ・・・」

「わざとらしいんだよ・・・わざと貧乏暮らしなんかしやがって・・・」

「全部・・・あなたのせいではないですか」

「・・・」

「面会を許してあげないのなら・・・婚姻届を破ります」

しかし・・・巧は婚姻届を自ら破り捨てる。

「家族の再生なんて余計な御世話だ。なんでもテキパキしやがって・・・まるで、母さんが死ぬのを望んでいるかのようじゃないか。僕はもうやめた。茫然として何が悪い。母さんが死ぬって聞いて冷静でいられるか。結婚なんてしなくていい。母さんのそばにずっとついている。母さんだってそれを喜んでくれるはずだ」

「死ぬって誰が死ぬの」と留美。

「末期がんなのか」と務。

「いやねえ・・・胃潰瘍よ」

そこへ・・・看護婦が迎えにやってくる。

「手術の時間です」

「看護婦さん・・・母は胃潰瘍なんですか」

「そうですよ」

「守秘義務ですね」

しかし・・・手術はあっという間に終わる。

「先生」

「手術は無事終わりましたよ・・・三、四日で退院できます」

「え・・・本当に胃潰瘍なんですか」

「もちろん・・・」と主治医は部下に「どうだ、今夜一杯」と問う。

「いいですね」と応じる若い医師。

「ハハハハハ」と和気藹々で去る医師たち。

「守秘義務・・・」と依子。

「これって胃潰瘍じゃね」と妹。

「胃潰瘍だな」と兄。

「誰が・・・末期がんなんて・・・」と務。

一同は依子を見る。

依子は目をそらす。

「君だ・・・君が言い出した」

「・・・だって留美さんが」

アヒル口からキス顔を通りこして唇をつんと尖らせる依子だった。

病室にて一同は術後の留美を囲むのだった。

「どうして・・・身辺整理なんか」

「手術となれば気も弱る。死を前に覚悟するのは人として素晴らしいことだ」

「安心したらお腹すいちゃった・・・あなたの家にあった落花生おいしかったなあ」

「千葉産だからな」

「え」

「十三年ぶりじゃ・・・」

「五年前にバッタリ会って・・・それ以来。週一くらいでね」

「なんで黙ってたんだ」

「照れるものね」

「まさか・・・あの下着って」

「あれは父さんが買ったんだ」

両親がセックスして自分が生まれたことを知ってショックな小学生のような気分になる巧だった。

留美と務の仲睦まじい姿に何かを感じる依子である。

帰宅途中の依子は父に電話をした。

「頭が真っ白になって茫然として悲しみで何もできなくても・・・お母さんは幸せだったと思います・・・だから・・・悔やむ必要はありません」

「・・・ありがとう」

親子水入らずの病室。

「パシリムに35点なんてつけやがって・・・」

「何点ならよかったんだ・・・40点以上はやれんぞ」

「40点はアバターだろう」

「アバターは85点だ」

「なんて・・・センスがないんだ」

世捨て人と高等遊民・・・似たもの父子だった。

「働きたくないから・・・結婚する・・・不埒だが・・・それも生き方だろう・・・しかし、妻を支えて家庭を守るより・・・外に働きに行った方が・・・楽だぞ」

「・・・」

依子の部屋を鷲尾が訪問する。

「どうなったのでしょうか」

「婚姻届は破棄されました」

「それなら・・・僕とお付き合いして下さい」

「・・・」

そこへ・・・ゴミ箱から婚姻届を回収した巧が到着する。

笑いもせず・・・泣きもせず・・・見つめ合う三人。

全員、ゴリラーマン状態である。

鷲尾にとって悲しいことに・・・けして修羅場にはならないのだった。

なぜなら・・・予告編で話は結納にまで進んでいるのだ。

次週は二回目の結になります。

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2015年3月 2日 (月)

誰道天工勝人作 不知人作勝天工 万尋富岳千秋雪 却在斯翁一掌中(高良健吾)

高杉晋作は詩人であった。

漢詩「題不二石」は二十代前半の作とされる。

不二石は豊臣秀吉由来のものが有名だが要するに霊峯・富士山を思わせる奇岩・庭石の類である。

これを七言絶句で東行と号した晋作は詠う。

「自然の造形は人知の及ぶところではないと言う者があるが・・・それは自然を凌駕する人知というものを知らないからである。巨大な富士山に降り積もった永劫の雪さえも・・・俺様の掌中にあるということだ」

自然より人間の方が上だ。世界も時間も自己の中に存在するのだから。

晋作の傲慢な気魄が漲るわけである。

もちろん・・・不遜の極みであるが・・・若者なんてこのぐらいの方が頼もしいのである。

なにしろ・・・反乱軍リーダーでございます。

で、『花燃ゆ・第9回』(NHK総合20150301PM8~)脚本・大島里美、演出・渡邊良雄を見た。例によってシナリオに沿ったレビューはikasama4様を推奨します。家柄に縛られたものと身体的障害に縛られたものとの対比と共感による相互作用。まさにニュータイプの世界でございましたね。今回は長州きっての戦上手・高杉晋作の描き下ろしイラスト大公開でお得でございますな。卑怯とは武将に対して最高の名誉でございますし。本年度は描き下ろしが快調展開で嬉しいかぎりでございます。ジオンの血統をもてあますシャアと人とは違う才能に戸惑うアムロ・・・まさにガンダムそのものですな。貴族の中の革命家と聾唖者を一線上に並べるとはなかなかに大胆な作劇でございますよねえ。対比ということでは「官兵衛」の「村重と淀の方」のようなものですが・・・こちらは創作的なので一種の清々しさがありますな。まあ・・・どちらも些少わざとらしさは残りますが・・・まあ、ドラマでございますからねえ。痺れるような難解さを求めても無理でございましょう。さりげないことを説明不足と感じるお茶の間もございますし。

Hanam009幕藩体制というものを現代人がイメージすることは難しい。軍事独裁国家(藩)の軍事独裁連邦制(幕府)りようなものである。日本政府と地方自治体の関係にも似たところがあるが、反政府的でも沖縄県がおとりつぶしになったりはしないわけである。なにより身分制度が固定化され、職業選択の自由もあまりない。しかし・・・人材の登用にはある程度、流動性があったわけである。それは妊娠出産という自然現象に左右される。継承されるべき血統を保護するための養子縁組により、身分の変更が起きうる。同時に遺伝が必ずしも親の能力を継承しないことも身分制度の固定化に影を落す。下級武士の杉家から天才を認められて中級武士の吉田家の養子となった松陰や、罪人の子でありながら小田島家の養子となった伊之助は縁組によって階級差を克服したということになる。松陰が凡夫なら養子の貰い手がない場合もあった。その場合、松陰は厄介叔父として兄の家で飼い殺しになるのである。なにしろ・・・家禄は常にギリギリで下級武士には分家などの余裕はない。そういう仕組みの世の中で自分の自由意志で養子先のお家をつぶしてしまう松陰がどれほど変人だったかということに御留意いただきたい。そして・・・そういう奇人を慕うものが上流武士からも現れるということの不思議さも・・・。

文は二歳年下の弟・敏三郎の心も読める。

聾唖者である敏三郎は無音の世界に生きている。

そのために常人とは違う鮮やかな色彩の世界に生きていた。

敏三郎の視覚記憶は正確無比である。

能弁な兄と違い、敏三郎は無音の世界で独特の観察力を磨いていた。

姉が自分の心を読むことができることを敏三郎は幼少の頃から理解している。

すでに忍びとしてのしごきを受けている敏三郎の行動範囲は広い。

様々な場所に出入りする敏三郎の目を通して文は市中の様子を知ることができるのである。

「清国の商人の話では天竺で反乱が起きているそうです」

松下村塾では松浦亀太郎が独自の情報網による風聞を披露していた。

文は亀太郎が幕府の草のものであることを知っている。

敏三郎には筆談で亀太郎の跡をつけまわすことを禁じている。

うかつに触れれば命を奪われるからである。

「天竺のことはインドと言うのでございますな」

最下層の足軽の子である伊藤利助が口を挟む。

語学に才覚を持つ利助は独学で蘭語、英語を嗜んでいた。

文は利助が藩の目付け忍び(密偵)であることを知っていた。

伊藤家は目付け百姓としての任を解かれ、城下に戻っていた。

利助が松下村塾に密偵として送り込まれたのはその直後である。

敏三郎には筆談で利助の跡をつけまわすことも禁じている。

うかつに触れれば命を奪われるからである。

利助は高杉晋作のお気に入りである。

洋学の苦手な晋作は原書を利助に研究させているのである。

ある程度、利助に翻訳させると天才として内容が理解できる晋作だった。

その思考の飛躍力は文に眩暈を感じさせる。

文は敏三郎が晋作の供をすることを許していた。

高杉家の屋敷の豪華な暮らし向きを敏三郎が観察し、それを覗き見るのが文は好きだった。

高杉家の幼女たちはみな美しい着物を着ていた。

その様子に見とれる敏三郎を文は面白くも感じる。

文にもそろそろ・・・嫁ぐ季節が近付いていた。

身分が違いすぎるので高杉家に嫁ぐことはない。

おそらく・・・久坂家だろうと文は考える。

兄が時々、自分の縁組について考えることを知っているからである。

子供の時代が終わるのだ・・・夏の終わりを感じると文は胸が騒ぐのを感じる。

去りゆく季節を惜しむ気持よりもときめきが勝る。

文はまだ十五だから。

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2015年3月 1日 (日)

主人公は白いタイツを(神木隆之介)穿きませんからね(広瀬すず)

穿かないのかよっ。

何を期待してるんだよ。

いや・・・すごく似合うだろうなあって・・・。

どんだけ変態なんだよ・・・。

教師VS生徒会長といえば・・・東京都に有害図書指定(一同大爆笑)された「極めてかもしだ/山本直樹」(1986年)を思い出す。

「表現の自由」を迫害するものたちは地獄に堕ちるがいい・・・。

「自主性」と「指導性」の対立軸もまた永遠の課題である。

「近所でも有名な不良少年」の「自主性」をどの程度コントロールするのが正しいのか・・・川崎市は苦慮するべきだよな。

「極めてかもしだ」では「悪の権化のような生活指導の教師」と「品性下劣な生徒会長」が不毛な主導権争いを展開するわけである。

まあ・・・すべての教師は昔、生徒だったという話なんだな。

そして・・・すべての生徒が教師という職業を選ぶわけではないのである。

しかし・・・大人が子供を教えないと世界は落書きだらけになるんだぜ。

で、『校のカイダン・第8回』(日本テレビ20150228PM9~)脚本・吉田智子、演出・田部井稔を見た。明蘭学園高等学校の生徒会長・ツバメ(広瀬すず)は丘の上の洋館に潜む車椅子の怪人・雫井彗(神木隆之介)の口車に乗って学園の女王・麻生南(石橋杏奈)の洗脳に成功し、ついに生徒全員を支配下に置くことに成功する。しかし、生徒の自主性を尊重する理事長兼校長の誉田蜜子(浅野温子)と管理教育を徹底しようとする金時教頭(生瀬勝久)は対立するのだった。

しかし、誉田蜜子はマス・メディアに特別採用枠制度導入の成功をアピールする野心家の側面を見せる。

広告塔となったツバメはマス・メディアの取材に答えさせられるのだ。

「私の夢は・・・みんなが明るく楽しい学校生活を送れるように生徒が自主的にとりくむことです」

完全に洗脳された生徒たちは快哉を叫ぶ。

「生徒会長万歳」と。

しかし、金時は保護者会から「生徒の自主性を制限する取り締まり強化」の委任をとりつける。

翌朝、登校した生徒たちは厳しい生活指導を受けるのだった。

キングの夏樹(間宮祥太朗)は自慢の長髪を強制的に断髪させられる。

「俺たちは中学生か」

「今時、そんな規則あるのかよ」

「自分が鬘なので嫉妬しているのか」

生徒会室に集まった学園のリーダーたちは意見を交換する。

「金時は私たちの自主性を奪おうとしている」

「断固戦おう」

「意義なし」

「みんな何がしたい」

「音楽祭がしたい」

「いいね」

「本気の球技大会をしよう」

「いいね」

「俺は小説家になる」

「え」

「実は文芸誌の新人賞を受賞したんだ」

「すごい」

陸(成田凌)の文学賞受賞は生徒たちに勇気を与えるのだった。

早速、怪人に報告するツバメである。

「足は大丈夫ですか」

「気持ちの問題なのさ」

「気持ち」

何故か、ツバメを抱き寄せる怪人。

ドキドキするツバメ。

「セカンド・ラブにチャレンジですか」

「くんくん・・・シャンプーいい匂い・・・ってするか!・・・生徒の頂点に立ったからと言って学校を支配したことにはならないぞ」

「え」

「今度は・・・信念なき教師たちに鉄槌を下すんだ」

「・・・」

「屋上へ続く非常カイダンも昇るんだよ」

「それは・・・自殺ネタですか」

「ラッスンゴリライかっ」

「意味わかんね~」

陸の受賞を賞賛する誉田校長。

「我が校から芸術家が生まれるなんて・・・誉だわ」

しかし・・・教頭は真相を耳打ちする。

「あの文学賞には校長が関与しているんだよ・・・君は話題作りのために・・・受賞させられたんだ・・・君の実力じゃない。小説家なんて不安定な職業を目指すなんて・・・愚かなことだ」

校長・・・どんな権力を持っているんだ・・・。

自尊心を傷つけられた陸は自暴自棄となり・・・公園で原稿に火を放つ。

ツバメは陸を慰めようと追いかけて森林大火災に遭遇するのだった。

「そんな・・・」

放火犯人として取調を受ける陸。受賞は取り消され、停学処分である。

「放火ではなく・・・過失です」とツバメ。

「世間はそんなに甘くないんだよ」と教頭。

帰宅したツバメを怪人が待っていた。

ツバメの祖父の徳次郎(泉谷しげる)はメロンを差し入れるのだった。

怪人はツバメの下着を物色してから参考資料を示す。

「これは・・・」

そこには白いタイツを穿いた教頭が写っていた。

「タイツ金時だよ」

「タイツ金時」

副会長油森(須賀健太)や会計玉子(清水くるみ)そしてみもりんこと美森(杉咲花)たちは金時教頭の過去を洗うのだった。

勉強は・・・。

予備校教師として実績をあげスカウトされた金時は・・・それ以前に高校教師だったのである。

ツバメは金時が最後に教えていた学園を訪ねるのだった。

だから・・・勉強は・・・。

そして・・・金時が・・・「芸術に燃える生徒たちのために・・・自らタイツを穿く熱血教師」であったことを知るのである。

しかし・・・生徒は暴走し、職員室に放火するという事件を起こす。

責任を負わされた金時は職を追われ・・・生徒の自主性なんてクソだという信念に染まったのだった。

「どうすればいいの」

「今度は生徒が白タイツを穿くんだ・・・ロミオとジュリエットの悲劇を終わらせてやれ」

「事務所がなんて言うか」

「クソだな」

ツバメが持ち帰ったタイツを見た徳次郎は・・・。

「お前の彼氏はいい趣味だな」とうらやましがるのだった。

「おじいちゃんは若い頃になりたいものがあった」

「俺はフォーク・シンガーさ」

「え」

「知らないのか・・・黒いカバンをぶらさげて歩いているとおまわりさんに呼びとめられた」

「知らない」

「ち」

講堂に教頭を呼びだす生徒たち。

舞台では生徒たちが「ロミオとジュリエット」を演じる。

「おお・・・先生、あなたはどうして先生なの」

「茶番か」

ツバメは例のトラメガをとりあげる。

「先生はどうして・・・生徒が夢を持つことを嫌うのです」

「夢なんてもったって仕方ない。日本代表を夢見る小学生の何%が日本代表になれる」

「いい先生になろうとした先生がいい先生になれなかったとしても・・・それを生徒にあてはめないでください」

「くそ生徒はくそ社会人になるだけだ」

「先生の作るレールはそんなに完璧ですか」

「脱線はさせない」

「しかし・・・鉄道だけでは交通は成立しませんよ。新幹線じゃ、宇宙にはいけません」

「ふふふ・・・それで論破したつもりか」

「や~い・・・論破された~」

「宇宙なんかに何もいいことはないぞ」

「負け惜しみですか」

「第一、真空だ・・・息苦しいぞ」

「先生・・・これを見てください」

そこには白いタイツが並んでいた。

「これは・・・先生の教えた生徒たちの感謝のメッセージです」

「感謝だと」

「みんな・・・今は立派な社会人になってます・・・そして・・・先生のタイツの教えを守っているのです」

「・・・馬鹿野郎・・・」

教頭は陥落するのだった。

「先生・・・もう一度いい先生になってくれますか」

「・・・」

「先生、小説家を目指していいですか」と陸。

「いいよ・・・今しかできないことは今するしかないからな」

「応援してくれますか」

「俺の応援はハードだぞ・・・弱音なんて許さないからな」

「覚悟します」

その様子を監視カメラで見守る校長。

カメラに視線を送る怪人を発見するのだった。

ツバメも怪人に気がつく。

「心配だから・・・見に来てくれたんですか」とツバメ。

「まさか・・・お前、タイツ臭いぞ・・・かぶったのか」

「かぶりません」

立ち去る怪人を見咎める教頭。

「あれは・・・伊勢崎」

「彼を知っているんですか」

「彼は五年前に校長が起こした事件の被害者だ・・・」

「え」

階段上の校長は怪人を見下ろした。

「黒幕は・・・伊勢崎・・・あなただったのね」

「そうですよ・・・すべてはあなたに復讐するためです」

見つめ合う二人だった。

まるで天才刑事と天才犯人の如く。

そういうドラマも見たいぞ。

とにかく・・・ツバメ、勉強しないと進級できないんじゃないか・・・。

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