妹よ・・・お前が久坂玄瑞の妻としては稚劣であることは明らかだ(伊勢谷友介)
吉田松陰(伊勢谷友介)が妹・文(井上真央)に贈った言葉で現存しているものが安政四年(1857年)十二月五日付の「文妹久坂氏に適くに贈る言」である。
「久坂玄瑞は防長年少第一流の人物にして、固より亦天下の英才なり」で結婚相手の久坂を高みに持ちあげ「今少妹の穉劣なる、其の耦に非ざるや審らかなり」と妹の文を貶めるわけである。
耦とは二人が並んで田畑を耕す姿であり、夫婦の意味を含んでいる。
つまり・・・夫と肩を並べるには幼くて劣っていることを肝に銘じよと言うわけである。
この後も男女同権の世から見れば物凄く男尊女卑な文言が並ぶのだが、すでに嫁いだ二人の妹よりも年少の文は松陰が溺愛した妹なのである。
そして・・・結婚相手の玄瑞は・・・愛弟子である。
この夫婦が上手くいくように・・・余命僅かな兄は必死の思いなのである。
おそらく・・・文は松陰に似て・・・才気が溢れていたのであろう。
しかし、男と女が同権ではない時代では・・・それは危ういことであった。
松陰は・・・努力して夫に相応しい妻となるように妹を励ます。
その後で・・・「貞節専心」を説き、「再醮改適」を戒める。
「再醮改適」は離縁して再婚することである。
「そういうことをお兄ちゃんは絶対に許さない」と釘をさしているのだった。
まあ・・・吉田松陰が妹にそういう私信を送り・・・それが現存していることがある意味、奇跡なのである。
で、『花燃ゆ・第12回』(NHK総合20150322PM8~)脚本・大島里美、演出・渡邊良雄を見た。例によってシナリオに沿ったレビューはikasama4様を推奨します。今回は待望の優香演じる・文の姉にして小田島伊之助の妻・寿の描き下ろしイラスト大公開でお得でございます。一家勢揃いを楽しみにしておりますがあくまでマイペースでお願いします。お茶の間ビジネスと男尊女卑の時代の描き方の相克は悩ましいところでございますなあ。「昔はひどかった」と感じてくれるのはまだしも・・・女性に対してひどい描き方をしていると言い出す馬鹿がいるので困るのですよね。その結果、戦国武将からは側室の存在が消え、幕末維新からは芸妓が消えると言う恐ろしい歴史改変が進行するとという・・・。本来、杉家は儒家の一族ですから・・・一般家庭よりも正しい男尊女卑が家訓になっていたと思われます。ただし、女子が教養を積むことはよしとされていた。おそらく、寿は内向的な家庭に生まれた外向的な女だったのでございましょう。ようやく、杉家から解放されて社交を楽しめるようになった・・・お城の側で暮らせることが嬉しかったのでございましょうね。甘党の家に生まれた辛党は辛いものでございますから~。
安政四年(1857年)十二月、久坂玄瑞と文は婚姻する。この頃、幕府の老中首座である堀田正睦はアメリカ領事タウンゼント・ハリスと日米修好通商条約の交渉を行う。条約内容の合意を得た正睦は目付岩瀬忠震とともに安政五年(1858年)に入京し、孝明天皇の条約への勅許を得るために運動を開始する。しかし、開国に反対する岩倉具視らの抵抗によって三月、孝明天皇は勅許を拒否するに至った。この裏には将軍位継承問題が絡んでいた。徳川家定は病床にあり、徳川慶福(紀伊藩主)を推す南紀派と徳川慶喜(一橋徳川家当主)を推す一橋派が対立し、公武共に割れていたのである。勅許の妨害工作は一橋派によるものであった。正睦は一橋派との協調を模索する。しかし、正睦が江戸を留守にする間に南紀派が工作し、四月、大老に井伊直弼が就任し、一橋派は駆逐される。六月、直弼は勅許なしの条約調印に踏み切る。一橋派はこれを違勅調印として攻撃材料にする。日米修好通商条約調印についての幕政批判はやがて尊王攘夷運動として発展するのである。外交が権力闘争の道具となった瞬間であった。
雪のような花嫁衣装を着た文は松本川を渡った。
田床山の麓にある杉家から松下村塾を通りすぎ、松本川の西にある明倫館を越えて南に折れれば久坂家である。そこは城下町の片隅だった。
杉家と比べたらずっとにぎやかな街中である。
藩医としての役目柄、微録ながら城近くに居を構える久坂家なのであった。
家は萩城下を挟む東の松本川に対し、南西の橋本川に近い。
婚礼の儀はすでに松下村塾ですませており、塾生たちに伴われ、文は久坂家に向かったのである。
途中、高杉の屋敷から晋作がやってきて列に加わる。
塾生の中では格式が段違いの晋作だったが・・・足軽の伊藤利助と肩を並べて歩く。
しかし、言葉には遠慮がない。
「馬子にも衣装とはこのことだな」
「ははは」
「しかし、俺も馬が衣装を着ていると言われている」
「ははは」
晋作がおどけて顔を伸ばしたために利助は笑いがとまらなくなる。
「こりゃ・・・利助、笑いすぎじゃ」
晋作は自分で撒いた種を刈り取るが如く諌めるのだった。
文はそのやりとりを聞きながら微笑んだ。
この分では初夜の儀はいつになることやら・・・と考えたのである。
案の定、久坂家ではごく仲間内の酒宴となった。親戚縁者の少ない玄瑞なので仲間たちは遠慮がない。
文は花嫁装束を脱ぎ、先に床に入った。
十五歳の花嫁である。
横になっている間にうとうとする。
漸く酒席から解放された玄瑞が夫婦の寝室に入ってきたのは深夜である。
玄瑞は遠慮がちに布団にもぐりこんできた。
文は玄瑞が時々、手淫を行い、その際に自分の姿を思い描いているのを知っている。
なにしろ・・・松下村塾に入り浸る玄瑞にとって身近な女は文だけだったのである。
玄瑞はそっと文の胸に手を伸ばしてきた。
寝巻の上から形を確かめるように乳を撫でる。
「くすぐったい」
「・・・起きていたのか」
玄瑞の手が止まる。
文は両手を伸ばして下から玄瑞を抱き寄せた。
「今宵より・・・妻でございます・・・お好きになされませ」
「・・・」
玄瑞は無言で文の身体を抱いた。
くのいちとして一応、寝技も学んだ文であるが・・・実際に男と床を共にするのは初めてであった。
未通女ではあるが・・・他心通である文は・・・他人によって男女の経験を積んでいる。
今も玄瑞の心を読んでいる。
玄瑞の男根は屹立していたが・・・それを収める場所を見出せず彷徨っていた。
玄瑞の欲望に感応して潤い始めた秘所に文は玄瑞の男根を誘っていく。
「ここかのう・・・」
「さようです」
「む」
勢いよく繰り出されたものによって文は破瓜の衝撃を感じる。
玄瑞は遮二無二に動き始めた。
文は痛みに耐えながら・・・ずっと想いを寄せていた男との行為に悦びを感じていた。
「いくひさしく」
「うむ・・・いくひさしくじゃ・・・」
「あ」
「参る」
玄瑞はほとばしった。
短い夫婦生活の始りだった。
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