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2015年3月 4日 (水)

なにが理想の病院ってやつなんだ(堀北真希)これが理想の病院ってやつなのか(志田未来)

以前にも書いたが・・・このドラマは近未来SFである。

自由診療制度が前提となった医学界を描いているらしい。

はっきり言って・・・この「架空の世界」の造形が上手くいっていない。

保険診療制度と自由診療制度の違い・・・それさえもほとんど説明されていないのだ。

日本全体がどういう社会状況になっているかも全く描かれない。

たとえば・・・医療が金で買える時代になっているのなら、政治献金はおろか選挙権も金で買える世の中なのかもしれない。

保険診療制度の枠内でも病院の経営には様々な差異がある。

東大を頂点とする大学病院がどの分野でも最高の医療を提供しているかというとそうでもない。

地方の病院の経営難は保険診療制度下でもあるわけである。

企業系の病院には・・・そこはかとなくリッチな匂いが感じられる部分がある。

古い病院と新しい病院では・・・居心地の良さがまるで違う。

そういうものが新世界ではどうなっているのかが一つのポイントである。

上下関係や派閥争いに巻き込まれる看護師の人間関係を描くのなら・・・この設定は必要ないんじゃないかな。

最初から・・・疑問に思っていたのだが・・・もはや・・・このまま、最後までなんじゃこりゃで行くしかないんだよね。

次はもう少し・・・頑張ってもらいたいよね。

プロデューサー、お前だ。

で、『まっしろ・第8回』(TBSテレビ20150303PM10~)脚本・井上由美子、演出・加藤新を見た。ナイチンゲールが「傷病兵の看護」という戦争方法を開始した時、同時に生まれたのが「苦痛の前の人間平等」であり、敵味方の区別なく看護するという戦略的な手法である。もちろん、戦術的には無茶苦茶であり、敵は殺し、味方を治すのが正しいわけである。しかし、捕虜も治すことは世間体がいいのである。ビジネスの世界では薄利多売ではなく、高級志向で生き残りという戦術もあるわけである。超高級病院は「貧乏人は死ぬしかなくても金持ちは助ける」というお茶の間に背を向けたブラック・ユーモアが前提となる。それ以外にはないのである。

今回、帝都病院と東王病院の対立軸を謎のセンター長(石黒賢)が語るのだが・・・。

「医学的な成果となるような病気の治療に専念し、成果とならない病気は無視するという帝都病院の方向性ではなく・・・あらゆる病例を平等に扱う方向性を目指す」

しかし・・・それは経済力のあるお客様に対してのみ・・・ということなのである。

ええと・・・何かがおかしいですよね。

おかしいと思うキッドが間違ってますか。

そして・・・「東王病院」は「個人病院」らしい。

ええと・・・つまり・・・センター長のポケットマネーで運営されているということなんですかね。

あるいは・・・センター長がすべての資金を調達しているっていうか・・・。

まだ・・・外資系で・・・中国マネーが流れ込んでいる設定の方がリアリティーを感じるな。

鬼怒川の廃業ホテル改装病院かよっ。

それで嫉妬に狂った公立病院がスキャンダルでつぶしにかかってくる・・・中国マネーは転売で・・・ロシアマネーが流れ込んでくるのか。

まあ・・・とにかく・・・今回の話をまとめておこうよ。

つらいけどねえ。

外科学会の会長を務める帝都大学の仲野幸助 (宅麻伸) の用件は・・・。

「帝都大学の医師が東王病院の看護師にストーカーされて暴力をふるわれた件の管理責任の追及」だった。

対応するセンター長は・・・当事者である木綿子(高梨臨)と居合わせた朱里(堀北真希)そして菜々(志田未来)を呼びだす。

父親と確執のある医師・孝太郎(柳楽優弥)も同席する。

仲野の一方的な言い分に「事実とは違う」と主張する朱里と菜々。

人に逆らわれるのが大嫌いな仲野はたちまち・・・朱里と菜々もターゲットにするのだった。

「こんな生意気な看護師、やめさせちまえ」

恩師である仲野に慇懃に対応するセンター長。

「たかが痴話喧嘩に大袈裟じゃないですか」

「おや・・・私が間違っていると言うのかね」

「名ばかりの恩師と違って看護師は実戦力ですから」

無礼なセンター長だった。

「じゃ・・・お前の処はつぶさせてもらう」

捨てゼリフを残してチンピラのような医学会のドンは去って行くのだった。

結局、不倫を暴露されて木綿子だけがいたたまれない感じになる。

「私の父親は狂犬のような男だからやばいですよ」

「私は弟子だったから・・・よくわかってる」

問題のある医学界ではないので・・・一方的な悪者に仕立て上げられて木綿子はオロオロと泣き寝入りする覚悟を決めるのだった。

「しっかりしなさいよ」と朱里と菜々・・・ダブル・ヒロインかっ・・・は木綿子を叱咤するが・・・。

「だって不倫ナースだもの」と脚本家の不倫ドラマのヒロインみたいなことを言う木綿子。

「だって・・・あの医者だって同罪じゃないの」

「奥さんや子供に悪いもの・・・」

「なんじゃそりゃ」

ナース・ステーションでは薬物中毒ナース・さくら(MEGUMI)が朱里と菜々を問いつめる。

「不倫ナースって何よ・・・私たちの評判まで落ちるのよ」

お前が言うなである。

「・・・」

しかし・・・一部メディアがあることないことを書き始め、院内は騒然となる。

「東王病院のストーカーナースの闇」

「貧乏人お断り・・・セレブ病院の奢り」

「悪人だらけの入院患者リスト」

個人情報漏洩である・・・ものすごい損害賠償裁判になるわけだが・・・セキュリティーどうなってんだ。

すべてはチンピラドクターの差し金らしい。

お客様やその家族からの問い合わせに混乱するナースステーション。

そもそも・・・そういうクレーム処理部門がなければ・・・セレブ御用達が成立しないだろうが。

お気に入りの看護師長(木村多江)がオペ担当になり・・・末期がんを告知されたお客様患者の大江様(眞島秀和)は癇癪起こしてインタビューに答える。

「この病院は医者はクズだし・・・ナースはキャバクラ嬢みたいなもんですよ・・・アハハ」

なんだか・・・いきなり奈落の底に突き落とされた東王病院。

本当に残念な感じだ。

そもそも・・・セレブという設定そのものが揺らいでる。

たとえばG病院の医者がとてもじゃないが危なくて勤務先の病院には家族を入院させられないので東王病院に・・・というのが基本だろう。

マス・メディア経営者だって・・・政治家だって・・・権力者はみんな東王病院のお客様なのだから・・・帝都病院だって・・・そういうものに敵対できないだろう・・・。

そういうところが意味不明なんだよ。

大江様は「君は僕のこと愛しているんだろう・・・」と看護師長に迫る。

あくまで「おもてなしです」と対応する看護師長だった。

大江様・・・退院すればいいじゃないか。

それともふられたことを絶対認められないタイプか・・・。

ついに・・・チンピラドクターから最後通告があり・・・関係者が集合する。

「俺か・・・ナース三人かどっちかやめたら許してやると仰せだ」

「川崎の非行少年ですか」

「私・・・やめます・・・」と木綿子。

「私も・・・看護師はどこでもできるから」と菜々。

「じゃ・・・私も・・・お暇を・・・」と朱里。

「いえ・・・三人を採用した私に責任がある」と看護師長。

「いや・・・私がやめる」とセンター長。

「ここでどうぞどうぞってどんなコントですか・・・なんで・・・こんなことで」と朱里。

「そうだ・・・センター長・・・理想の病院から逃げる気か・・・15年前みたいに」と菜々。

「憶えていたのか」

センター長は菜々の母親を見捨てた過去があるのだった。

つまらない症例だったからという理由で。

「小学生の君からもらった手紙とってある・・・母を見捨てるなんてひどい・・・って書いてあったんで・・・いつも反省している」

「・・・」

「わかった・・・やめるのはやめよう・・・みんなでがんばろう」

「よかった・・・私、やめる気なかったので」と朱里・・・。

何もかもが虚しいな。

センター長はナースを集めて秘策を明かす。

「これからの医療は美容師さんみたいにするべきなんだ・・・お客さんに似会う髪型をチョイスするようにお客さんに見合った看護をしようね」

「・・・」

「大変です」

「どうした」

「大江様が安楽死したいって・・・」

「つまり・・・それなりの顔のお客様が・・・椎名林檎みたいな髪型を要求している事態だな」

まあ・・・とにかく・・・もう・・・主役が花束もらっているので・・・なるようにしかならないんだよな。

冒頭に書いたように「ナイチンゲール」には大いなる矛盾がある。

つまり、崇高な人間は薄汚いということである。

そういう意味では脚本はよくできている。

薄汚い人間が時々、崇高になる話なのである。

だが・・・お茶の間ビジネスとしては・・・ちょっとね。

腹黒いがお人好しの朱里と計算高いが純情な菜々。

二人がぶつかりあって成長していくおたんこナースなドラマが見たかったなあ・・・。

関連するキッドのブログ→第7話のレビュー

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