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2015年4月30日 (木)

チョットマッテクダサイ(堺雅人)やさしいあなた(蒼井優)

フジヤマと並ぶ日本のシンボル、ゲイシャ・・・。

しかし・・・忍者と同じくらい日本人は芸者を知らないのだ。

何故なら・・・芸者を知るためには・・・人並み以上の経済力が要求されるからである。

知らないからこそ・・・多くの男性たちは本能的に憧れ・・・多くの女性たちは本能的に嫌悪するのだった。

そのために・・・昔から・・・女優にとって芸者役は禁断のエリアなのである。

ちなみに「夢千代日記」の夢千代(吉永小百合)さんは置屋の女将であって芸者ではないのだ。

芸者は金魚(秋吉久美子)さんである。

一部お茶の間から・・・芸者に対する非難渦巻く・・・このドラマ。

まあ・・・それが庶民の反応というものです。

で、『Dr.倫太郎・第3回』(日本テレビ20150429PM10~)原案・清心海、脚本・相内美生、演出・相沢淳を見た。うっとりしたいのでお座敷遊びのシーンをもっと入れて欲しいと思うのだがお茶の間がブーブー言うので控えめなんだなあ。ちなみに・・・慧南大学病院理事長・円能寺一雄(小日向文世)と夢乃(蒼井優)の関係は・・・いわゆる旦那と芸者の関係である。旦那はあくまで芸者の芸の世界を応援するスポンサーであって男女の関係はあってもなくてもよいのである。なかったら金を出さないというのでは粋ではなくなり、旦那としての品格が問われるのである。もちろん・・・場合によっては数億円の資金を提供してくれる旦那に対して芸者が懇ろになるのは吝かではないのだ。円能寺と夢乃の関係がどうなっているか問うのは無粋というものであるが・・・置屋の女将・伊久美(余貴美子)がお母さん的存在なら、円能寺はお父さん以上にお父さん的存在ということです。わかるかな・・・。

ちなみに・・・すべては時価なので・・・遠出の花代・壱壱拾萬円とかちょっとおねだり参百萬円とかは相場より高いとも言えるし・・・ほんのはした金とも言える。・・・念のため。

とにかく・・・円能寺はポケットから参百萬円出せるくらいのお金持ちなのです。

芸者・夢乃に激しく心奪われつつ、素顔のアイザワ・アキラに病んだ心を見出し精神科医として燃えるヒノリンこと日野倫太郎(堺雅人)の元へ、幼馴染で明らかに倫太郎に片思い中の外科医・水島百合子(吉瀬美智子)が入院患者について相談にやってくる。

救急搬送された弓子(宮本真希)が家庭内暴力の被害者の可能性があると言うのだった。

慧南大学病院では以前、家庭内暴力を装った自傷患者による濡れ衣事件が発生しており、対応は慎重にならざるを得ないのだった。

弓子の夫が警察庁の幹部である司(北村有起哉)であったために・・・円能寺理事長は穏便に対処するように外科の主任教授の蓮見榮介(松重豊)や精神科主任教授の宮川貴博(長塚圭史)に指示する。

上司の指示に従わないヒノリンは「手出し無用」と釘を刺される。

ある意味、社会性に欠けるヒノリンは暴れ馬のようなものだが・・・行政府報道長官・池正行(石橋蓮司)のような上客も持っているので簡単には捨てることができない上司たちなのである。

連日、報道陣に責め立てられる池は精神を病んでいた。

「ひどいんだよ・・・あいつら・・・意地悪な質問ばかりするんだ」

「学校でいじめられたものは・・・不登校などで心に傷を持つものです。いじめという行為には嗜虐性の人格障害が見受けられますが、そういう人間の中でも・・・学業成績の優秀なものは大方、マスメディアに就職して記者になります。新聞記者などというものは基本的にサディストの集団です」

「だろう・・・兇悪な宇宙人みたいだよな」

「ですね」

「俺はいつか・・・あいつらに苛め殺されるんじゃないかと思う」

「そうならないためにもATフィールドを全開しなければなりません」

「心を守るバリアだな」

「そうです・・・そのスイッチは鼻にあります」

「鼻にか」

「そうです・・・あなたの鼻を押しさえすれば・・・いつでもあなたは無敵なのです」

「ありがとう・・・先生・・・ありがとう」

気休めの天才・・・それがヒノリンなのである。

「一緒にお茶を飲みましょう」と患者としてのアイザワ・アキラを診療室に誘ったヒノリンは昼食持参で待つのだが・・・患者は来ないのだった。

アイザワ・アキラは・・・ギャンブル依存症で多額の負債を負い、自分の身の安全を盾に娘に金を無心する母親・相澤るり子(高畑淳子)からの強迫により発症した心の病によってヒノリンを・・・しつこい客として悪役化し・・・置屋の女将に告げ口するのだった。

たちまち・・・お母さん的女将とお父さん以上にお父さんの円能寺はヒノリンを急襲するのだった。

「いいかね・・・夢乃は君がうかつにデートに誘いだせるような一般的女子ではないんだ」

「たとえ花代を頂いても無理強いはできないんですよ」

「夢を見てはいけないよ・・・彼女にとっては・・・君なんかただのおじさんなんだから」

「一億や二億、簡単に動かせるような殿方でないとまともにお付き合いできないんですよ」

「・・・」

ヒノリンは道を違えた虫けらのように扱われるのだった。

「一体なんの話ですか」と事情を知らない看護師の桐生薫(内田有紀)・・・。

「芸者さんに参百萬円貢いだんですよ」と研修医になりたての川上葉子(高梨臨)・・・。

「なにそれ」

「返してもらったなんて言ってますが・・・それはきっと手口で・・・さらに大金を貢がされるのかもしれません」と研修医としては落ち付いている福原大策(高橋一生)・・・。

「なにそれなにそれ」

かわいいよ、内田有紀かわいいよ・・・である。

そういうポイントを逃さないようになったな。

しかも、脚本家チェンジで丁寧な作りなんだな。

「なんでそこまで言われないといけないんだ」

「ははは」

大学での出世競争に敗れ開業医となった荒木(遠藤憲一)はヒノリンの主治医である。

「なにがおじさんだ・・・じじいのくせに」

「おまえ・・・教授昇格の話があるそうじゃないか」

「どうしてそれを・・・」

「いいか・・・なれるときになっとけ・・・お前を待ってる患者のためにも・・・お前が偉くなるのは悪いことじゃないんだぜ・・・」

「・・・」

なぜ・・・患者を治療するのか・・・そこに患者がいるからだ。

使命感に燃えたヒノリンは・・・入院中の弓子を訪ねる。

「何か相談したいことはありませんか」

「まさか・・・夫のDVを疑っているの・・・」

「いえ・・・心配ごとがないか・・・お尋ねしているだけです」

「何もありません・・・」

弓子が嘘をついていると直感するヒノリンだった。

「美しい花ですね」

「主人が・・・贈ってくれたプリザーブドフラワーです」

「花粉アレルギーの心配がないので見舞い花としてはよろしいですね」

「優しい主人なのです」

「この花はなんですか」

「ガーベラですよ・・・御存じないんですか」

「これが・・・ガーベラか・・・花言葉は大切な家族ですね」

「あら・・・」

「ご主人はあなたを心から大切に思っているようだ」

「・・・」

弓子の夫・司は病院内の仮眠室で宿泊し妻に付き添っていた。

「お忙しそうですね」

「妻には申し訳ないと思っています・・・子供もおりませんので・・・淋しい思いをさせているのでは・・・と」

「奥様は忙しいあなたの身を案じておられましたよ」

「ゆっくりと養生してもらいたいと思っています」

しかし・・・業務連絡の着信が司の携帯電話を鳴らし続けるのだった。

円能寺に呼び出されるヒノリン。

「夫のDVを疑われるとは心外だと・・・奥様が転院を申し出られた」

「・・・」

「手出し無用という言葉の意味がわからないのかね」

「まったく・・・精神を疑われる精神科医とは・・・困りものだな」と嫌みを欠かさない宮川主任。

「患者や家族を監視するなんて言語道断だ」

「監視?」

監視していたのは研修医ペアだった。

「君たちか・・・」

「すみません」

「それで・・・」

「特に問題はなかったのですが・・・朝方、ご主人が大声出して暴れている気配がありました」

「なるほど」

迷える子羊を守る羊飼いは閃いたのだった。

「すみません・・・徹夜続きなんですが・・・仮眠室があいてなくて・・・相部屋お願いします」

司とともに就寝するヒノリン・・・。

明け方・・・睡眠中に暴れ出した司はヒノリンの鼻をへし折るのだった。

「レム睡眠行動障害です・・・脳腫瘍などの可能性もありますので・・・検査をお薦めします」

「まさか・・・自分が妻を傷つけていたとは・・・何故、妻は黙っていたのでしょう」

「あなたを傷つけたくなかったのでしょうね」

「そんな・・・」

「この病気は過度のストレスも病因となります・・・あなたは何か・・・重大な秘密を抱えているのでは・・・」

「・・・」

「心に抱えているものを吐き出すのも・・・大切なことですよ」

司は・・・妻に生花の白いガーベラを二輪贈るのだった。

700万早くしろ700万早くしろ700万早くしろ700万早くしろ700万早くしろ700万早くしろ700万早くしろ700万早くしろ700万早くしろ700万早くしろ700万早くしろ700万早くしろ700万早くしろ700万早くしろ700万早くしろ700万早くしろ700万早くしろ700万早くしろ700万早くしろ700万早くしろ700万早くしろ700万早くしろ700万早くしろ700万早くしろ

一方、夢乃はヒノリンの家にやってくる。

「夢乃さん・・・」

「中に入れてくれないんですか?」

「どうぞどうぞ、お入りください・・・いや・・・これは遠出になりますか・・・」

「内緒にしておけば大丈夫ですよ」

「・・・」

「お願いします・・・何も聞かずに七百万円貸してください」

「て・・・」

「もちろん・・・タダとは言いません・・・私、そのつもりで来ました」

「ぐ・・・」

「今夜は帰りません」

「ち・・・って・・・今夜は帰らない?」

「私をヒノリンのものにしてください」

帯を解く夢乃・・・甘美の極みだな。

「ちょっと待ってちょっと待って・・・夢乃さん」

若手コメディアンも見逃さないヒノリンだった。

そこへ・・・百合子が乱入して夢乃の目論みは泡と消えるのだった。

「どういうこと・・・私は抱けないのに芸者は抱くの」

「何を言ってるんだ君は・・・」

「言いすぎました」

洗面所経由で家路につく夢乃だった。

「彼女は・・・心が病んでいる」

「え」

「そういう人を放ってはおけないよ」

「・・・」

ヒノリンの心に蘇るのは・・・病んだ母親(宮本裕子)の姿だった。

警察庁幹部の汚職が明るみに出る。

情報源は・・・司だった。

元いじめっ子たちに責め立てられる行政府報道長官。

しかし、鼻を押せば無敵なのである。

「凄い感じで社会に貢献しちゃったな・・・」と呆れる円能寺理事長。

「転院は取り消すとお電話がありました」と理事長秘書(柊瑠美)は告げる。

キッド的には豪華な配置だ。豪快なメインライターの路線を継承しつつ「斉藤さん」の脚本家だけにほっこりとまとめてくるよ。

「面白いから・・・やはり教授にしちゃおうか」とニヤニヤする理事長だった。

「なぜ・・・夫の心を弄んだのですか」

「弄んだなんて・・・」

「あの人は・・・私が守ってあげたかったのに・・・子供ができないこんな私に・・・あんなに優しい夫を・・・私が守りたかったのに・・・」

「あなたは・・・こんな私じゃありません」

「・・・」

「ご主人にとって何より大切な方だ・・・」

「・・・」

「あなたが・・・ご主人を守りたかったように・・・ご主人もあなたを守りたかったのです」

「でも・・・私はあの人に何もしてあげられない・・・」

「そんなことはありません・・・ご主人は・・・あなたに白いガーベラを贈られた」

「・・・」

「白いガーベラの花言葉をご存じでしょう」

「・・・希望・・・」

「どうか・・・末長くお幸せに」

ヒノリンは夢乃に送信する。

(あなたは・・・一人ではありません)

アイザワ・アキラは病院にやってきた。

百合子はヒノリンの患者を優しく案内する。

ヒノリンは診療室に現れた。

「どうして・・・」

「あなたはずっと・・・一人で淋しかったんですね」

「なぜ・・・」

「私は心の医者なのです」

「・・・」

ついに少年のような医者と少女のような患者は出会ったのだ。

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2015年4月29日 (水)

愛があるなら年の差なんてって言うのなら告白しなさいよ(渡辺麻友)刺されちゃった(千葉雄大)リバース後もんじゃ(稲森いずみ)

「天皇の料理番」じゃなくていいのかよっ。

石橋杏奈が文句のない美人で黒木華がそうでもないが賢い女という澱みのない展開で・・・あえて語る必要のないドラマでした。

立身出世を遂げた人が・・・昔はどうしようもない男だったというファンタジーだからな。

あくまでフィクションだしな。

明治・大正・昭和という激動の時代があるじゃないか。

あまり激動していないエリアの話だからな。

東京に原爆が落ちたわけでもないしな、ガ島で将兵が餓死していた時も美味しい料理を作っていたわけだしな。

それ以上はやめとけ。

とにかく・・・あれはあれで楽しく見ればいいんじゃないの。

まあ・・・(木)(金)があるから・・・これ以上はボリューム増やせないよな。

とにかく・・・このドラマの脚本家の変態ぶりを見逃すことはできない・・・ただそれだけだ。

で、『戦う!書店ガール・第3回』(フジテレビ20150428PM10~)原作・碧野圭、脚本・渡辺千穂、演出・木内健人を見た。このドラマのヒロインは二人いる。一人は本が好きで好きでたまらないお嬢様の北村亜紀(渡辺麻友)で一人は書店員として筋金入りのアラフォー女・西岡理子(稲森いずみ)である。理子は結婚適齢期の終末にあたり・・・それなりに危機感を持っているが・・・出版社の営業をしている柴田(長谷川朝晴)に裏切られ・・・自我が崩壊し、柴田の相手が亜紀であると思いこんだあげくに自爆して果てる。一方、亜紀は茫然とする暇もなく生まれて初めて告白した相手の三田孝彦(千葉雄大)に好きな人が言われ失恋のショックを味わうのである。

しかも・・・三田の片思いの相手が副店長の理子なのである。

亜紀(23)、三田(26)、理子(40)である。

実年齢で言うと、渡辺麻友(21)、千葉雄大(26)、稲森いずみ(43)だ。

実年齢で20歳以上年上の女に恋愛バトルで敗れては発狂したくなること間違いなしだ。

ちなみに脚本家は稲森いずみの一個年下なのだった。

願望か・・・変態の願望そのままかっ。

とにかく・・・三田をめぐる三角関係は・・・大手書店「ペガサス書房」吉祥寺店に幽かな波風をたてるのだった。

折しも・・・吉祥寺周辺に万引きの常習犯が出没中なのである。

「まさか・・・三田さんの好きな人って・・・副店長じゃないでしょうね」

「それは・・・君には関係ないだろう」

「ありますよ・・・自分の好きな人が好きな人なんですから」

「・・・」

もちろん、亜紀や理子と同じように・・・三田も人より本と付き合っている時間が長いタイプなので・・・好きな人に告白なんて簡単にはできないのだった。

おわかりでしょうか・・・このドラマはしょうもない人たちのしょうもない話なのである。

とにかく・・・新人歓迎会での大失態を修復するために・・・亜紀を食事に誘う理子。

恋仇と仲良く食事なんかできるかと思う亜紀だったが・・・三田が喜んで参加するので仕方なく・・・三人で会食なのである。

三田はあなたを崇拝しているこ光線を照射するのだが・・・十四歳年下の男が眼中にない理子にはまったく通じない。

仕方なくヤキモキする亜紀なのである。

そこにライバル店ユニコーン堂の書店員で紫のバラの人である田代(田辺誠一)が現れ、さりげなく理子をデートに誘うのだった。

恐ろしいことに・・・柴田の件であれほど逆上した理子はサラッと田代と意気投合するのだった。

三田はモヤモヤし・・・それ以上にモヤモヤする亜紀だった。

萩原麻美(鈴木ちなみ)、日下(伊野尾慧)、遠野由香(木﨑ゆりあ)の書店員トリオは亜紀の異常に気がつき・・・たちまち失恋したと勘づくのだった。

普通の人たち、恐るべしなのである。

「なんで・・・よりによって・・・あの人(おばさん)を・・・」

「君は・・・あの人(神様)の素晴らしさを知らないんだ」

平行線をたどる亜紀と三田。

そんなある日・・・頭の悪い女子高生の素行を注意した亜紀は・・・逆恨みされて擬装万引の罠を仕掛けられる。

万引き犯はチームプレーで盗品を消し去ったのである。

「ひどいわね・・・言いがかりつけて・・・」

「土下座しなさいよ」

「土下座、土下座」

進退窮った亜紀・・・。

そこに理子が現れて・・・。

「謝罪はしますが土下座はしません・・・それ以上、おっしゃると強要罪になりますよ」と騒ぎを鎮めるのである。

亜紀は・・・理子の美点を認めるのだった。

そんな亜紀に対して編集者の小幡(大東駿介)は一方的な好意を寄せる。

「僕はあなたが好きです」

「え」

「本当はもっとロマンチックな告白をしたかったのですが・・・あなたがファミレスでいいと言うので」

「私・・・失恋したばかりなんです」

「米国で一人ぼっち・・・デブでブスではてしない物語だけがトモダチだったと言う・・・あなたを好きになった男です・・・あなたの気持ちが変わるまでおしまくります」

「・・・」

小幡→亜紀→三田→理子という恋の追いかけっこなのだった。

しかし、理子は紫のバラの人とのデートに熱中する。

東京に転勤してきた田代に対して東京案内デートである。

隅田川川下りでスタートするが・・・田代は超船酔い体質で・・・リバーでリバースなのである。

東京スカイツリーに到着するが・・・理子は高所恐怖症だった・・・おいっ。

おしゃれなパンケーキの店は行列で二時間待ち・・・結局、もんじゃ屋に落ち付く二人。

「よければ・・・僕とつきあってくれませんか」

「でも・・・」

「ゆっくりで・・・いいんですよ」

「ゆっくりと・・・」

もちろん・・・本当はあまりゆっくりとしていられない理子なのだが・・・基本的に・・・四十歳まで独身だったある意味ダメ女なのである。

ゆっくりと微笑むのだった。

そして・・・リバースの後のもんじゃなのである。

もう・・・それがやりたかっただけなんだな。

小幡の登場でモヤモヤからの脱出を決意する亜紀は・・・三田を煽るのだった。

「本当に好きなら告白するべきです」

「僕は見守っていたいんだ」

「逃げてるだけでしょう・・・告白もできないなんて・・・本気じゃない証拠です」

「・・・」

ダメ男に何を言ってもダメだけどな。

とにかく・・・亜紀は・・・三田と理子が上手く行ったらあきらめて・・・小幡との交際を視野に入れ・・・三田が玉砕したら・・・三田に再度アタックという腹黒さを露呈するのだった。

ものすごいヒロイン設定だぞ。

このように・・・理子は田代を・・・亜紀は田代をキープしつつ・・・三田の動向が待たれる展開である。

その頃・・・本社に呼び出された店長(木下ほうか)は社長から深刻な事態を申し渡される。

吉祥寺店に戻った店長に話しかけた理子は・・・監視モニターに万引き犯を発見するのだった。

駆けつけた理子・・・あろうことか・・・万引き犯はナイフを取り出すのだった。

そんな・・・万引き犯はいないだろうというお茶の間の絶叫の中・・・理子を守ろうと飛び出した三田は・・・刺されてしまうのだった。

若い男の子が命がけで守ってくれる・・・変態ロマンスの極みである。

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2015年4月28日 (火)

猛獣使いは命がけ(相葉雅紀)ストーカーがいっぱい(有村架純)甘いの嫌い(沢尻エリカ)裏切りの領収書刑事(山口紗弥加)ミニスカ女子大生ポリス(足立梨花)

真野ちゃんの背中を鑑賞できる「実写パトレイパー」を凌いで三週目に突入したぜっ。

猫がいなけりゃネズミたちが大騒ぎだからな。

探偵さんを呼んでまずは盗聴器探索回収だよな。

赤外線センサーを取り付けるか仮面ライダーを配置するかだよな。

二度あることは三度あるだったな。

三度目の正直じゃなかったな。

もう・・・くりかえしのギャグでしかないよな。

ごめんですんだら警察いらないよな。

高円寺じゃないよねっ。

だって毎日電車に乗る度・・・。

クレジットされたニャンコ星人、万歳!

・・・寝不足なのか。

だって・・・四月なのに真夏日なんですもの。

で、『・第3回』(フジテレビ20150427PM9~)原作・池井戸潤、脚本・黒岩勉、演出・中江功を見た。地獄というものを信じなければ人間は生きた人間を生きながら埋めたりするのだが生前の苦痛が永遠に続くことはないのと違い死後の責め苦は永劫に続くのである。そこには情状酌量も執行猶予もない。地獄の鬼たちは年中無休で罪人をお待ちしています。約束された阿鼻叫喚。信じる信じないは各自の自由である。

目には目を。歯には歯を。生き埋めには生き埋めを。

防犯カメラに映っていたのは・・・ダンボールで遮蔽した「名無しさん」の姿だった。

監視カメラの秘匿に失敗した健太(相葉雅紀)だった。

まあ・・・監視されてたら設置作業は隠蔽できないよね。

「家族の誰かが誰かに話した可能性がある」と明日香(沢尻エリカ)は指摘する。

まあ・・・盗聴されているなら問題外だけどね。

「じゃあ・・・話した相手が・・・名無しさん」

「あるいは・・・その関係者ね」

溺れるものは藁をも掴む・・・低い可能性に縋る健太である。

帰宅した健太を待っていたのは悪戯電話で大量に注文された宅配ピザだった。

認知症の疑いのある母親の珪子(南果歩)は四万円ほどの料金を素直に払うのだった。

「ピザがいっぱいってテンションあがるよね」・・・母の血を引く妹の女子大生・七菜(有村架純)は猜疑心より食欲だった。

「えええ」と小心者で吝嗇な一家の主である太一(寺尾聰)は少し驚くのだった。

太一は録画された監視映像を家族に見せる。

「名無しさんは・・・監視カメラのことを知っていた・・・誰かにカメラのことを話したでしょう」

「いいえ」

全員に心あたりがないのだった。

しかし・・・母親は近所の主婦たちにストーカーのことを話していたし、父親は会社の同僚に、妹は親友に・・・絶対、カメラのことを話している。

そもそも・・・健太も明日香に話しているのだ。

「軍隊を持たなければ戦争は起きない」という発想は・・・人間の心をここまで無防備にするのである。

いや・・・倉田家の人々が少しバカなんじゃないかな。

監視映像には自宅周辺の不審車両も映っていた。

その車は・・・陶芸教室の講師・波戸清治(眞島秀和)のものだった。

母親は・・・下村民子(堀内敬子)を通じて波戸から・・・ブローチをプレゼントされていた。

お茶の間では・・・「盗聴器?」の囁きが交わされるのだった。

電源、発信器、周辺機器の小型化で・・・盗撮カメラも盗聴器も超小型化された時代である。

今もあなたは監視されている可能性があります。

無邪気に波戸を賛美する母親に・・・波戸との不倫関係疑惑を抱く健太は嫌悪感を伴った不安を抱くのだった。

「ぼ・・・ぼくは・・・お父さんの方が・・・いいいいいいいいい男だと思う」

健太の言動に微妙な反応を示す家族たちだった。

健太は家族の危機意識の低さに絶望するのだった。

ナカノ電子部品に出勤した太一は領収書探偵の総務部契約社員・西沢摂子(山口紗弥加)から真瀬営業部長(竹中直人)の新たな不正の証拠を進言される。

電子部品商談会で販促ブースを共有するアサヒ電子と折半しているはずのコンパニオンの人件費をアサヒ電子が全額支払い、真瀬営業部長が架空請求で半額分を横領していると言うのである。

「今度の営業会議・・・社長や役員の前で真瀬営業部長を直接追及すれば・・・言い逃れできないと思います」

「よし・・・がんばろう」

太一は臆病者ではなくて・・・無能なのではないかと・・・そろそろお茶の間も気がついている。

案の定・・・営業会議で・・・真瀬営業部長は身の潔白を証明する。

しかも・・・証明したのは西沢摂子だった。

太一は飼い犬に手を噛まれ、三度目の土下座である。

しかし、全裸謝罪はなかった。社風じゃないんだな。

倉田家では母親が封筒に入れた十万円の半額が消えている事件が発生する。

「まさか・・・名無しさんが・・・家に忍びこんでいる・・・」

「警察に通報しよう」

「いや・・・もう一度よく調べてから・・・」

父親がそう言うのは・・・家族を疑っていることになるのだが・・・本人も家族も無頓着である。

みんな津波が迫って来ても見なかったことにするタイプなのだ。

お茶の間で神経質な人が悶絶死するレベルだな。

明日香にせっつかれ・・・健太は母親と不倫しているかもしれない・・・波戸と対決するのだった。

「どうして・・・家の近所で・・・長時間・・・駐車しているのですか」

「・・・」

「あなたが嫌がらせの犯人ですか」

「そんな・・・愛している人に嫌がらせなんか」

「ああああああああいしてるって・・・」

「僕はストーカーじやない・・・あなたのお母さんが好きで・・・つきまとっているだけなんです」

「スススススススススストーカーじゃないですか」

「・・・」

無罪放免である。

「なんで・・・追求しないのよ」

「自分の母親を愛しているなんて言われたら・・・もう・・・どうしていいかわからない」

「この根性無し」

一方、七菜の親友・保原万里江(足立梨花)は七菜にしつこく迫る辻本正輝(藤井流星)に文句を言って撃退するのだが・・・。

「今は就職の面接で大事な時期なんだから・・・邪魔をしないで」

・・・などと明らかに言わなくてもいいことを言ってます。

結局・・・名無しさんは正体不明のままである。

蟹江編集長(佐藤二朗)から「母の不倫観察日記」の連載を依頼された健太は断固拒否するのだった。

夜の摂子であるシルビアちゃんの店にやってきた健太は・・・父親の勤務する社名を耳にする。

「知ってると思うけど。うちは就業規則で派遣社員でもアルバイトは 禁止だから。バレたら解雇だよ?」

「・・・」

真瀬営業部長である。

摂子は弱みを握られていたのだった。

ま・・・それ以外にはこうならないのである。

しかし、二人が父親をおとしめているとは気がつかない健太だった。

だが・・・嫉妬した蟹江編集長は二人の密会を盗撮するのだった。

ま・・・タウン誌の編集者なんて・・・基本、探偵みたいなものだからな。

成す術なく帰宅した健太をいつになく緊張して怯えた七菜が待っていた。

「私の靴がないの」

「靴?」

「片方だけなくなってたの」

「・・・」

「きっと名無しさんが家に忍び込んでるんだよ」

「ここここここここここわいこといいいいいいいうなよ」

しかし、二階で物音がして・・・ゴルフクラブで武装する健太だった。

二階には机の上に置かれた白いハイヒール。

そして猫のガスがいた。

ガスの首輪にメモが装着されている。

(おじゃましました)

健太は恐怖でメモを持つ手が震えるのだった。

2015年度倉田家嫌がらせ事件容疑者ランキング

①位 ニット帽の男(名無しさん)

②位 真瀬営業部長

③位 明日香

④位 シルビア

⑤位 健太(二重人格)

⑥位 七菜(夢遊病)

⑦位 万里江(嫉妬)

⑧位 珪子(認知症)

⑨位 下村夫人(意地悪)

⑩位 ガス(ニャンコ星人)

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2015年4月27日 (月)

身はたとひ武蔵の野辺朽ちぬとも留め置かまし大和魂(黒島結菜)

高杉晋作の美少女妻・雅キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!

そこかよっ。

「留魂録/吉田松陰」に触れて「大和魂」に触れないのがコンテンポラリーなんだな。

まあ・・・「あえて死罪になるために未遂の犯行を自白」というのが・・・現世の人々の眉を顰めさせるからな。

「杉さんとこのご子息、とんでもないことをなさったみたいよ」

「奥様もさぞや、お困りでしょうねえ」

「うちの子じゃなくてよかったわあ」

・・・みたいな。

しかし・・・残念ながら・・・現代でも何割かの若者は・・・吉田松陰の死を「かっけええええええっ」と思うはずである。

それが若さというものだからな。

とにかく・・・松陰周辺の若者はそう思ったし、われもわれもと死地に飛びこんでいく。

そして・・・十年後には吉田松陰を処刑した幕府という体制は消滅してしまうのである。

大和魂はその後、大日本帝国が滅亡するまで吹き荒れるのだ。

そして・・・今も・・・たとえ・・・洗脳された人々がタブーとして封じようとも・・・いざとなったら燃えあがるのだ。

なんてったって・・・この国に生まれた以上・・・大和魂は誰もが潜在的に持っているからである。

で、『花燃ゆ・第17回』(NHK総合20150426PM8~)脚本・宮村優子、演出・渡邊良雄を見た。例によってシナリオに沿ったレビューはikasama4様を推奨します。今回はついに刑場の露と消える吉田松陰寅次郎の獄中イラスト大公開でお得でございます。為政者は極刑も辞さない覚悟で反逆者を処刑しますが・・・それが殉教者となることを最も恐れるものでございます。まあ・・・井伊大老としても「かくすればかくなるものと知りながらやむにやまれぬ首切り地蔵」の心境だったかもしれません。国難を乗り切ろうということでは両者の大和魂は一致している・・・しかし・・・悲しいかな・・・譜代大名筆頭と外様大名の下級家臣では・・・あまりにも身分が違いすぎる・・・話しても無駄だったということなのでございましょう。とにかく・・・いよいよ・・・現代人には想像するのが難しい・・・人斬りの嵐が巻き起こるのでございます。まさに作用反作用ですよねえ。まあ・・・このドラマがどこまでそれを描くのかは別として。

Hanam017安政六年(1859年)七月、江戸に護送された吉田松陰は評定所で取り調べを受ける。獄中の松陰を直接世話したのは高杉晋作である。晋作は松陰の獄中の便宜を図るために金銭的援助を行った。幕府は吉田松陰について特に疑義を抱いていなかったとされ、不穏分子との交際を理由に遠島に処する予定だった。しかし、松陰自らが未遂の反逆計画を自供。報告を受けた井伊大老が処刑を決したという。獄中で松陰は「留魂録」を記述。一通は遠島になった沼崎吉五郎に託された。晋作の父・小忠太は山口町奉行井上平右衛門の次女・雅と晋作の婚姻を理由に帰藩を願い出る。藩命によりやむなく晋作は江戸を出発。九月十四日、小浜藩士・梅田雲浜病死。十月七日、越前松平藩士・橋本左内斬首。二十七日、吉田松陰斬首。遺体は桂小五郎、伊藤利助らが引きとった。その日、松陰の母は松陰が帰郷した夢を見、父は自分が斬首された夢を見たと松陰の妹の一人・千代が証言している。高杉晋作が萩に到着したのはその数日後である。晋作は激昂した。

文は杉家に戻っていた。梅太郎と敏三郎がコロリに罹患していたのである。

城下でもコロリが再燃しており、久坂は藩医として多忙である。

「とにかく・・・体力勝負じゃ・・・それから・・・患者の汚したものは湯で消毒しなければならぬ」

父も兄もお役御免となった杉家は・・・藩から見捨てられたようなものであった。

三人の男子のうち・・・一人は獄中にあり、二人が病床にある父は黙々と畑を耕している。

文は恐ろしくて両親の心を覗くことができなかった。

梅太郎と敏三郎は病苦に呻いている。

しかし・・・江戸の松陰だけは淡々と日々を過ごしている。

すでに・・・伝馬町の牢内でも囚人たちに「先生」と呼ばれている。

高杉や周布政之助の金銭的援助により、牢内でも比較的安楽に過ごしている。

最初は松陰を苦しめた夏の熱気も和らいでいた。

「人の一生にも春夏秋冬がある・・・」と松陰は筆を走らせる。

「この世に生まれ、学ぶべきことを学び、人として働き、やがて眠る。それは歳月の長さとは無縁である。幼くして死ぬものにも四季はあり・・・老いて死ぬものにも四季はある。三十路にて冬の気配を感じれば・・・それは死が迫っていることに他ならない」

文はすでに死を決した松陰の透明な心を見る。

(兄上・・・)

文は心で呼び掛ける。

(どうか・・・その時は・・・文の心に逃げ込みなされ)

(文か・・・)

文は驚いた。

(ふふふ・・・感じるぞ・・・私にもわかる・・・お前が見えるぞ)

(兄上・・・)

(嘆くことはない・・・兄と妹といえど・・・一人の人だ・・・別の命だ)

(・・・)

(お前は・・・お前の道を行けばよい)

(兄上・・・もうよろしいのですか・・・なにも悔いはないのですか)

(文・・・これでいいのだ・・・僕にはそれがわかっている・・・お前にも分かっているだろう)

(・・・)

文はそれ以上、読心を続けることができなかった。

水を汲むために庭に出る。

山は赤く色づいている。

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八重の桜の安政六年

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2015年4月26日 (日)

風が吹けば花屋が儲かるですね(大倉忠義)ばっかじゃないのっ!(多部未華子)

「風が吹けば桶屋が儲かる」という言葉をどのように認識するかという問題がある。

一つには無関係な出来事を関連させて因果関係を探るという考え方がある。

「リンゴが落ちれば万有引力がある」ということである。

もう一つはこじつけてあたかも非現実的なことが現実であるかのように心理を誘導するトリックであるという考え方がある。

「憲法九条がなくなれば日本は即日開戦する」ということである。

これに際して・・・そういう戯言を信じてしまう人間の愚かさを自嘲するという考え方がある。

「風が吹けば桶屋が儲かるという言葉を信じる馬鹿が増えれば日米安保条約は破綻する」ということである。

どのレベルで「風が吹けば桶屋が儲かる」を考えるのかは・・・人それぞれの自由でいいと考える。

で、『ドS刑事・第3回』(日本テレビ20150425PM9~)原作・七尾与史、脚本・川崎いづみ、演出・中島悟を見た。「認知症患者に認知力を高める薬を処方すると患者の家族からクレームがくる」という話を医師がしていた。これは怒る気力もないほどにボケた患者がいる→患者に医師が気力を活性化する投薬をする→患者が家族に対する不満について怒る気力を回復する→患者が家族に怒りだす→家族は患者が怒りっぽくなったのは薬の副作用ではないかとクレームをつける・・・という経験談である。家族にしてみればうるさい患者より静かな患者の方がいいので・・・つまり下手に回復してほしくないという気持ちがあるわけである。これに対して医師が副作用ではありませんと真実を告げれば平行線なんだな。

所詮、すべての論理は詭弁にすぎないのです。

つまり、物理学の理論で原爆が出来るのは単なる偶然なのである。

・・・そういう詭弁なんだな。実証主義を完全に否定かっ。

すべての世界の責任は生きている以上、自分自身が負っているという実存主義を推奨しています。

他人がそうである方がなにかと都合がいいからな。

「火炎壜を使用した放火殺人事件」が連続して発生する。

「連続が不連続か・・・それが問題だ」

「火炎壜で人を殺そうとする人はやたらにいないでしょう」

「模倣犯かもしれないじゃないか」

「ですね」

「模倣犯だとしたら・・・不連続とは言いきれないんじゃないか」

「ですね」

「じゃ・・・火炎壜連続放火殺人事件捜査本部・・・でいいですね」

「いや・・・不連続説も捨てきれないので(仮)はつけといてくれ」

「用心深いですね・・・保身ですか」

「そこまで・・・言わなくてもいいだろう」

課長の白金不二子警視(吉田羊)の指揮の元、定年間際の近藤刑事(伊武雅刀)、有栖川係長(勝村政信)、中根刑事(中村靖日)、浜田刑事(八乙女光)たち川崎青空警察署刑事一課強行犯捜査係のメンバーたちは・・・被害者の荒木(中村憲刀)と由衣(西田麻衣)・・・そして新たな被害者・佐々木佑哉(ナカムラユーキ)の関係性を地道に捜査する。

しかし・・・佐々木佑哉が荒木と結衣に脅迫されていたことを報告しなかった黒井マヤ巡査部長(多部未華子)は自分のうかつさを呪い、代官さまこと代官山脩介巡査(大倉忠義)とまたもや独自の調査を勧めるのだった。

主人公の特権で・・・「焼死した死体」に注目するべきだと直感したマヤは半年前の「前田凛子の焼身自殺」の件に着目する。

遺族の人形作家の時枝(中尾ミエ)はマヤの事情聴取に応じるのだった。

「私の可愛いベイビーは成長して可愛いベイビーを生んだのです。可愛いベイビーはジャングルジムで遊ぶ子供に成長しました。人形なら成長しないのにねえ。しかし、ベイビーはジャングルジムから落下してしまいました。私の可愛いベイビーは自分の可愛いベイビーのために救急車を呼びましたが到着が遅れて可愛いベイビーの可愛いベイビーは天国に召されました・・・私の可愛いベイビーは自分の不注意を恥じて焼身自殺したのです・・・だから私は娘と孫をどちらも失ってしまったのです。私は思わずにはいられない・・・救急車がもっと早く到着していれば・・・ああ、私の可愛いベイビー・・・」

「はいはーい」

「代官さま・・・」

「すみません、つい」

「どうして・・・救急車は遅れたのでしょう」

「酔っ払いが道路で暴れて・・・渋滞になったんだそうよ」

主人公の直感で時枝を犯人と断定したマヤは酔っ払いを訪ねる。

しかし、酔っ払いの男・・・西川は「そんなこと言われても・・・だったら・・・悪いのは俺に酒を無理強いした先輩ってことになりますよ」と困惑する。

西川の先輩である神宮司は「ストレスをもたらした歯医者が悪い」と言うのだった。

歯医者は患者が悪いと言い、患者は上司が悪いと言い、上司は第三の被害者にお金を貢いでいたことが判明する。

そして・・・上司は第四の被害者となるのだった。

代官山啓子(岸本加世子)とかおり(瀬戸さおり)母娘にヘッドスパしてもらってリフレッシュしたマヤは緊急捜査会議に代官さまを招集する。

遊具プレイである。

「まわして」

「はい」

「もっと早く」

「はい」

「もっと」

「だんだん気持ちよくなってきました」

「とめて」

「はい」

「逆に回して」

「はい」

「もっと」

「はい」

「もっと」

「はい」

「とめて」

「ああっ」

もう少しだったのにと思う代官さま・・・なにがだよっ。

とにかく・・・渋滞を起こした西川が責任を転嫁した先輩から責任転嫁の連鎖があり・・・最初の放火殺人が起こったと推理したマヤだった。

西川まで・・・十人が殺される計算となる。

「なんで十人なんでしょう」

「なんとなくでしょう」

「なんとなくですか」

「原作者や脚本家が犯人がそれ以上考えるのは面倒くさいと設定したのよ」

「意味がわかりません」

「ばっかじやないの」

患者と愛人がデート中の川崎埠頭で犯人と対決するマヤ。

自殺しようとした人形作家から火炎壜をムチで奪取し、代官さまにパスするのだった。

「あつい」

「あなたを逮捕します」

「・・・」

しかし・・・人形作家は意識を失う。

犯人は脳腫瘍を発症していた。

「頭のおかしな犯行だとは思いましたが・・・脳腫瘍で・・・本当に頭がおかしくなっていたんですね」

「しっ・・・それ以上、言わぬが花よ」

「はいは~い」

春になれば桜が咲く。そして咲いた花は散るのが運命なのである。

しかし・・・来年になれば・・・桜はまた咲くのだ。

桜の木の寿命が尽きるまでは。

地球が破滅しない限りにおいて。

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2015年4月25日 (土)

せかいでいちばんすきなおんなのこはおよめさんです(山下智久)

途中で一瞬・・・「五番目のサリー」とか「24人のビリー・ミリガン」というダニエル・キイスの他の著作を思わせる描写があって・・・ちょっとドキドキしたわけだが・・・。

これは・・・「まぜるな!危険」のマークをつけておかないと・・・いけない部類である。

結局、現時点では多重人格や解離性同一性障害には踏み込まないようだ。

フェイントかよっ・・・なのである。

まあ・・・最近、なんでもありの傾向があるからな・・・ガチャッとやってくるのかと思ったぞ。

医学の進歩というものが・・・人類の平均寿命を確実に伸ばしてきたわけである。

その是非を悪魔は問うが・・・一般的には肯定的にとらえる。

しかし・・・秦の始皇帝が「不老長寿」の薬を求めたように・・・絶大な権力者が自分や近親者のためにあらゆる手段を行使してそれを開始すると・・・かなり恐ろしい事態が起こることは予想できる。

実際、闇の世界ではそういうことが現実化していると充分に妄想できるんだな。

で、『アルジャーノンに花束を・第3回』(TBSテレビ20150424PM10~)原作・ダニエル・キイス「Flowers for Algernon」、脚本・池田奈津子(脚本監修・野島伸司)、演出・酒井聖博を見た。東京都医学総合研究所は2015年4月、知的障害の原因の一つである結節性硬化症の病態メカニズムを解明したと発表した。脳内のシナプスの変性の要因となるたんぱく質の機能を抑制し正常化することの効果を確認したという。部分的にではあるが・・・医学は認知障害の克服のための前進を続けているわけである。このドラマはフィクションとして画期的な手法を虚構として構築しているわけであるが・・・方法が確立し、実施するためには・・・様々な問題が横たわっていることを暗示しているわけである。

状態を改善するために・・・リスクを承知で医療の恩恵を受ける時、患者は様々な承諾を行う。しかし・・・承諾する能力のないものは・・・どうすればいいのか・・・という問題である。

ここでは・・・責任能力のないものの保護者がその責任を負う。

「ドリームフラワーサービス」の従業員である白鳥咲人(山下智久)が新薬の服用と継続的刺激のためのナノマシーンを脳内に移植する手術を受けることを・・・咲人の育児を放棄した母親・窓花(草刈民代)は承諾する。

そして・・・脳生理科学研究センターからの謝礼を受け取ったのだった。

同僚からの私刑(リンチ)により負傷した柳川隆一(窪田正孝)は職場に復帰した。

「トラブルの原因と・・・お前たちのやったことは・・・聞いた」と経営者である竹部順一郎(萩原聖人)は鹿内大(勝矢)たち加害者をにらみつける。

「確かに・・・仲間を騙した隆一も悪い・・・しかし・・・お前たちが保護観察中であることを忘れるな・・・隆一が警察に訴え出れば・・・執行猶予を取り消されるものもいるんだぞ」

「いや・・・そんなことしませんけど」

「とにかく・・・治療費と慰謝料で・・・金の件はチャラだ・・・この件はなかったことにする・・・それでいいな」

一同は同意した。

「すみませんでした」と頭を下げる被害者の柳川。

「そんなにひどい怪我をさせるつもりはなかった」と鹿内も侘びるのだった。

食堂で同席した檜山康介(工藤阿須加)は同情する。

「怪我の具合は大丈夫か」

しかし、柳川はダミーの包帯を取り去るのだった。

「完治してました・・・」

「お前・・・本当にインチキ野郎だな」

呆れる康介だった。

「生きるための・・・知恵だよ」

そこに・・・東京麗徳女子大学に通う河口梨央(谷村美月)と小出舞(大政絢)が訪ねてくる。

「この間は途中で帰ってごめんなさい」

「まあ・・・しょうがないよ・・・咲人のことを隠していたんだから」と隆一。

「そういう言い方はないだろう」と気色ばむ康介。

「私・・・もう一度、咲人さんに会いたくて」と梨央。

「えええ」と驚く隆一だった。

「よかったら・・・葉山の別荘に招待したいんですけど・・・」

「別荘・・・」

その頃、咲人は脳生理科学研究センターでメディカル・チェックを受けていた。

「身体的には問題はないようです」と報告する杉野史郎(河相我聞)・・・。

「しかし・・・心理学的な側面からいくつか問題がありますね・・・アルジャーノン効果が発現するための基礎的メカニズムの機能不全が顕著です」

冷笑的な態度の小久保(菊池風磨)は慎重な意見を述べる。

「知的障害の改善のための・・・土台があるのかどうか・・・か」

研究チームのリーダー蜂須賀大吾(石丸幹二)は本質的な問題に言及する。

「しかし」と推薦者である望月遥香(栗山千明)は反論する。「彼には強い向上心があります」

「おりこうさんになりたいか・・・」

蜂須賀は微笑む。

「彼は被験者として・・・条件を満たしていると思われますが・・・」と遥香は主張する。

「総合的な判断は・・・私が下す」

蜂須賀は断固たる口調で研究員たちに告げた。

その頃、梨央は父親の興帝メディカル産業の社長・河口玲二(中原丈雄)を訪ねていた。

「お父様・・・お願いがあります」

「なんだね・・・」

「お友達と・・・葉山の別荘に行きたいの・・・」

「そうか・・・」

見つめ合う父と娘。

ついに近親相姦警報発令である。

しかし・・・父と娘には・・・別に深刻な問題があったのだった。

咲人はアルジャーノンを見学していた。

「あるじやのん」

「今、あるじやのんはお見合中なんだ」と飼育担当の小久保が説明する。

小久保は咲人に好意的だった。

「おみあい・・・なに」

「おみあいってのは・・・およめさんさがしさ」

「およめさん・・・なに」

「およめさんは・・・そうだなあ・・・世界で一番好きな女の子さ」

「せかいでいちばんすきなおんなのこ・・・」

「わかるかなあ・・・」

「せかいでいちばんすきなおんなのこ・・・およめさん」

「そうそう」

二人のやりとりをモニター室でじっくりと観察する蜂須賀。

蜂須賀は遥香と咲人をレストランでの夕食に招待する。

遥香は咲人のマナー違反が蜂須賀の気に触るのではないかと案じる。

「咲人くん・・・世界で一番好きな女の人は誰かね」

「・・・ママ」

「そうか」

「せんせは・・・およめさんいますか」

「咲人さん・・・そういうプライベートの質問は失礼よ」

「プラモデル」

「そうじゃなくて・・・」

「かまわんよ・・・咲人くん・・・私にもおよめさんはいたが・・・今は別々に暮らしているんだ」

「・・・だめ」

「咲人さん・・・」

「およめさん・・・せかいていちばんすきなおんなのこ・・・べつべつ・・・だめ」

興奮する咲人を冷静に見つめる蜂須賀。

「咲人くん・・・もう一度聞く・・・君はおりこうさんになりたいかね」

「おりこうさん・・・なりたいです」

「それでは・・・来週・・・私が君に魔法をかけてあげよう」

「・・・」

「こわいかね・・・」

「あるじゃのんまま・・・いっしょにいる・・・」

「もちろんよ・・・」

「やくそく」

咲人は小指を差し出した。

遥香は指きりに応じた。

咲人は微笑んだ。

「決め手はなんだったんですか・・・」

遥香は蜂須賀に尋ねた。

「彼には・・・知的な側面がある」

「それは・・・最初から」

「彼は私と君が親しいのではないかと心配していたよ」

「え・・・」

「そして・・・君と親密であることを私に示そうとした」

「そんな・・・」

「彼は・・・嫉妬していたのだ・・・嫉妬は愛のひとつの形だ・・・愛とは知性の証と言えるだろう」

「まさか・・・」

「そして・・・彼にもマザー・コンプレックスの形成が認められる・・・それもまた愛の形だ」

「実の母親とアルジャーノンの母親の区別もつかないのに・・・」

「それは些細なことだ・・・投影の一種に過ぎない・・・そしてそれもまた・・・ある意味で知的な行為だろう・・・私は確信した・・・彼はきっと・・・おりこうさんになる」

咲人はひまわり寮に帰宅する。

「どこへ行ってたんだよ」

「おりこさんになる」

「何言ってんだ」

康介と隆一は咲人を問いつめる。

「咲人は・・・手術を受けるんだ」

竹部が事情を説明する。

「なんだか・・・怪しいじゃないですか」

「しかし・・・咲人が望んだことだ」

「だって・・・咲人に危険があるかどうかなんてわかりっこないでしょう」

「きけん」

「やめろ・・・咲人・・・お前はいまのままでいいんだよ」

「だめです・・・たいとーじゃありません」

「たいとー・・・なんだそれ・・・」

「あ・・・それ・・・俺だ・・・俺が友達は対等じゃないと・・・なんていったから」

「なんだよ・・・それ」

「ばかだめ・・・おりこうなりたいです」

「とにかく・・・咲人がそう望んだんだ」

「・・・」

康介は何か悪いことが起きそうな不安を感じるのだった。

しかし・・・隆一は招待された週末のバカンスのことで頭がいっぱいだった。

楽しいことが待っている予感がするのだ。

「凄い別荘だな」と隆一。

「どんだけ・・・お嬢様なんだよ・・・」と康介。

「なんで・・・あんたたちまでついてくるのよ」と舞。

梨央は咲人と和気藹々である。

「だって・・・俺たちは咲人の保護者だもん」

「どうだか・・・変なことしたら・・・ただじゃおかないわよ」

「変なことってなんだよ・・・俺たちをなんだと思ってるんだ」

「少なくとも・・・あの子とはつりあわない人種でしょ」

「人種って・・・差別だ」

険悪になりかかる二人。

しかし、咲人に浣腸された隆一は激昂を便意に置換されるのだった。

「こらっ・・・漏れたらどうするんだよ」

「あいきょでしょ」

じゃれあう隆一と咲人を見て梨央はつぶやく。

「咲人さんて・・・凄いと思う・・・まるで天使みたい」

「えっ」と驚く康介。

「今だって・・・みんなを和ませたわ・・・」

「そりゃ・・・あいつだって色々苦労しているからな・・・喧嘩沙汰は嫌いみたいだし」

「ふうん」

微笑んで咲人を見つめる梨央に・・・心が動く康介だった。

舞も加わって室内プールで遊ぶ咲人と梨央。

梨央の笑顔に見惚れて康介はつぶやく。

「あの子・・・どういうつもりなんだろう・・・本気で咲人のことを・・・」

「まさか・・・それはないだろう。口実だよ・・・意外と俺かお前に気があるのかもしれないぜ」

「え・・・俺に・・・」

隆一に言われてまんざらでもない気がする康介だった。

シャワーを浴びながらガールズトークをする梨央と舞。

「私・・・ますます・・・咲人さんが好きになったわ」

「そうね・・・ルックスは申し分ないけど」

「咲人さんは・・・何もこだわることがない・・・明日どうなるかなんて心配もしない。・・・今をありのままに生きている」

「ま・・・それってバカってことだけどね」

「バカはだめです」

「え」

女子シャワールームでシャワーを浴びる咲人に絶叫する全裸の女子二人である。

青春だなあ。

正座する男子たち。

「まあ・・・勘弁してやってよ・・・御覧の通り・・・悪気はないんだから」

「私はいいけど・・・梨央は男の人に裸を見られるなんて初めてなんだからね」

「なんで・・・そんなことを言うのよ」と恥じらう梨央。

「はじめてって・・・」と色めきたつ康介。

「でも・・・咲人は別に女の裸に興味ないしね」と隆一。

「え」

「なあ・・・咲人・・・裸を見てどうだった」

「りおちゃんより・・・まいちゃんの・・・おっぱいおおきい」

「そうじゃなくて・・・ドキドキしたかい」

「ドキドキ・・・ありません」

「ほらね」

梨央は少し不満だった。

だから、梨央は咲人を浜辺の散歩へと連れ出した。

「私・・・咲人さんはいつまでも変わらないでいて欲しいの」

「かわらない」

「私・・・変わりたくないの・・・変わるのがこわいの」

「こわい」

「ねえ・・・咲人さんは私といて・・・ドキドキしないの」

「ドキドキ・・・ありません」

「まあ・・・こんなんことをしても」

裏ではミギーに憑依されたエスパーが役得でユイちゃんのおっぱいにタッチしているわけだが、こちらでは咲人が梨央の巨乳にタッチさせられるという展開である。

水着、シャワー、タッチ・・・サービス、サービス~なのか。

「・・・」

「私・・・なんてことを・・・ごめんなさい・・・私・・・あせりすぎね・・・でも・・・私には時間がないから」

自分がドキドキして歩きはじめる梨央。

潮風が紅潮した頬を弄る。

その時、梨央の視野に異常が生じる。

歪む世界・・・。

梨央は転倒する。

咲人は驚いて梨央に駆け寄る。

「りおちゃん・・・だいじょぶ・・・ですか」

梨央は顔を上げる。

「あなた・・・誰?」

「ぼく・・・さくと」

「・・・」

梨央は混乱する。

咲人も混乱する。

かけつけた舞は梨央の自宅に連絡を入れる。

梨央は脳生理科学研究センターに搬送された。

見慣れぬ女性に異和感を覚える遥香。

「この女性は・・・」

「第二の被験者だ・・・」と杉野研究員。

「え」

「彼女は知的障害者ではないが・・・変性性認知症を発症している」

「・・・」

「神経細胞の変性消失、大脳萎縮、神経原線維変化の多発が進行し、急速な知力の低下が予想される・・・つまり・・・咲人くんが発育不足なら・・・彼女の場合は急速な老化だ・・・」

「それならば・・・優先順位は・・・咲人くんより・・・高いのでは・・・同時、あるいは先行させるべきでは」

「あくまで彼女はセカンドだ」

「・・・」

「ファーストの神経細胞の発育再始動と・・・神経細胞の奇形修正、そして神経細胞の再構築の実用性が確認されてから・・・セカンドへの応用を試みるというスケジュールだ」

「・・・それじゃ・・・まるで・・・咲人くんは彼女のための実験台みたいじゃないですか」

「今が・・・違うとでも言うのかね」

「彼女は誰なんです」

「河口梨央さん・・・このセンターに資金援助してくれている・・・興帝メディカル産業の社長のご令嬢だ」

「・・・まさか・・・だから」

「・・・」

「どうして・・・違うと否定してくださらないのです・・・先生の理想は・・・」

「・・・」

「・・・失礼します」

遥香は混乱した。あってはならない不公平があったことに。蜂須賀の理想と自分の理想の大いなる差異に・・・。不公平な事例に自分が加担したことに。蜂須賀が自分に言いわけしないことに。蜂須賀が自分を必要としていないことに。蜂須賀が自分を愛していないことに。

咲人はツガイになったアルジャーノンを囃したてる。

「あるじやのん・・・およめさん・・・あるじやのん・・・よかったね」

興奮で頬を痙攣させた遥香がやってくる。

「あるじやのんのママ・・・」

「咲人さん・・・あなたはおりこうさんになりたいのよね・・・」

「おりこうさん・・・なりたいです」

「・・・そうよね」

遥香は不公平を糾したかった・・・しかし、それは咲人の願いではないのだ。

そもそも・・・咲人は生まれた時からある意味では不公平な身の上なのである。

「ごめんなさい」

遥香は退去するしかなかった。

「待って・・・あるじやのんまま」

「私は・・・遥香っていうの・・・」

「・・・はるか」

名前を呼ばれて遥香は涙を堪えることができなくなる。

背を向けた遥香を後ろから優しく抱く・・・咲人。

「咲人さん・・・」

「はるか・・・だっこしたい」

「え」

咲人は遥香の胸に手を伸ばす。

「おっぱい・・・ドキドキします」

「・・・」

「はるか・・・いっしょに・・・いてくれます」

「・・・ゆるして・・・一緒に・・・いてあげられないの」

「はるか・・・」

「・・・」

遥香は逃げるように研究所から去った。

遥香の不在は・・・咲人を不安にさせた。

咲人の外科的処置のために医療チームがプロジェクトに合流する。

見知らぬ白衣の人々に咲人の緊張は高まる。

「大丈夫だ・・・もうすぐ・・・君は・・・おりこうさんになる」

「おりこうさん・・・なりたいです」

手術当日・・・咲人の緊張はピークに達していた。

「望月くんとは連絡がつかないのか」

「電話に応答しません・・・彼女には融通のきかないところがありますから」

「長所は時に短所になるからね・・・小久保くん」

「はい」

「君はアルジャーノンを通じて咲人くんに好感を持たれているはずだ・・・君が望月くんの代役を務めたまえ・・・」

「ぼくが・・・」

手術台で器具を設置された咲人はついに我慢の限界に達した。

「はるか・・・いません」

「僕がついている・・・大丈夫だ・・・彼女は来られないんだ」

「やくそく・・・」

「え」

「はるか・・・いません・・・やくそく」

咲人は手術台を下りた。

「ちょっと・・・咲人くん・・・待ちたまえ・・・」

咲人は意表をつくスピードで・・・更衣室に向かうとコートをはおり・・・そのまま裸足で病院から抜け出す。

「いないか・・・」

「いない」

「警備室から報告がありました・・・すでに病院外です」

「なんていう・・・素早さだ・・・」

「とにかく・・・捜すんだ」

裸足の愚か者は街を行く

天使が彼を導いて行く

恋の熱が蒸気を噴き出し

恋の道をまっしぐら

咲人は捜す。世界で一番好きな人に続く道を。

しかし・・・途中で一度迷ってしまう。

世界で一番好きな人はママ・・・。

蘇る・・・遠い記憶。

ママがお休みした日。

「そんな顔するなよ・・・」

父親の白鳥久人(いしだ壱成)が幼い咲人の頭を撫でる。

「お母さんは・・・別にお前を嫌いになったわけじゃない・・・」

咲人には意味がわからない。

「ただ・・・少し・・・お母さんを休みたくなったんだ」

咲人には意味がわからない。

「大人には・・・いろいろあるからな」

咲人には意味がわからない。

走りだした車の背後で・・・母親と妹・花蓮(篠川桃音)の姿が小さくなっていく。

咲人には意味がわからない。

しかし・・・とても嫌な感じがした。

とてもとても嫌な感じがした。

咲人には悲しいという意味がわからない。

「おとな・・・いろいろあります」

咲人の中で街の光景がシャッフルされる。

「ママ・・・おやすみちゅう・・・」

咲人はいくつかの道筋をとりのぞく。

「ママのま」のカードが示す道は消えて行く。

「あるじゃのんのママ・・・はるか・・・」

キラキラした遥香のイヤリング。

優しい微笑み。

柔らかな胸のふくらみ。

咲人は目的地を発見した。

遥香は時間を気にしていた。

手術の時間は過ぎている。

研究員たちから何度も着信があったが無視した。

しかし・・・今度は蜂須賀から着信があった。

思わず・・・遥香は応答してしまうのだった。

「手術は・・・無事に済んだのですか」

「いや・・・咲人くんは手術を拒絶した」

「え・・・」

「もうすぐ・・・君のところへ現れるだろう」

「どうして・・・」

「咲人くんにとって・・・今は君が世界で一番大切な人だからだ」

「そんな・・・」

「君には君の心がある・・・それを誰も犯してはならないと思う・・・しかし、君は今・・・咲人くんの可能性を奪おうとしている・・・美しい音楽を聞いて美しいと感じることができるかもしれない・・・チャンスをだ・・・」

「・・・」

玄関のチャイムがなった。

扉の向こうに血を流し汚れた足の咲人が立っていた。

「どうして・・・ここにきたの」

「やくそく・・・」

「約束」

「ずっといっしょ・・・やくそく・・・」

「ばかね・・・」

「ばかだめ・・・おとなにはいろいろあるから・・・」

「え」

「はるか・・・せかいでいちばんすきなおんなのこ」

「・・・ありがとう」

「おやすみちゅう・・・しつれいします」

「いいのよ・・・」

遥香は咲人を部屋に招きいれた。

遥香は・・・咲人の聖なる足を洗い清めるのだった。

「いたい・・・」

「我慢しなさい・・・男の子でしょう・・・」

遥香は咲人と病院に戻った。

約束を果たすために・・・。

約束を守るのは人間として当たり前のことだからである。

咲人は満ち足りて手術台で眠りに落ちた。

こうして・・・馬鹿な咲人は死んだのだ。

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2015年4月24日 (金)

昔の自分に戸惑う男(木村拓哉)今の夫の方が好きな妻(上戸彩)

原作では主人公の妻と子供の素顔は最後まで明かされない。

ずっと仮面をつけたままである。

そのために物語の終盤はかなり痛々しい展開となる。

コミックという表現形式を見事に生かした作品なのである。

おそらくアニメ化されれば・・・表現はそのままになるだろう。

表情は・・・人の心を探る手掛かりである。

もちろん、悲しいから泣いているとは限らないし、嬉しいから笑っているとは限らない。

しかし、変化する表情は・・・それだけで生きている証になる。

原作では最後に仮面の女は一滴の涙をこぼす。

その描写が「万感の思い」を表現していることは間違いない。

仮面からあふれる「無表情の表情」が多くの読者の心を奪うのである。

この瞬間、原作は傑作となるのだ。

今回のドラマ化にあたり・・・仮面の女は素顔を最初から解禁している。

つまり・・・主人公の心象風景である・・・仮面をかぶった妻子と・・・実際の風景である素顔の妻子が混在した描写となっているのだ。

もちろん・・・上戸彩がずっと仮面をつけたままでは・・・せっかくの巨乳が台無し・・・いや、登場人物の心理があまりにもわかりにくいという状況がある。

あえて・・・言えば、木村拓哉が仮面の男という設定の場合を想像してもらいたい。

最初から最後まで仮面をかぶったスターのドラマはお茶の間向きとは言えないのである。

逆に・・・原作の肝とも言うべきシーンを封印した演出は・・・相当な覚悟を求められているとも言える。

少なくとも・・・素顔の上戸彩を見ているお茶の間に・・・仮面の女を見ているのでむしゃぶりつかない主人公の気持ちを悟らせるのは・・・一種の無茶ぶりじゃあるまいか・・・。

そういう意味で・・・木村拓哉はものすごくがんばってるよね・・・。

で、『アイムホーム・第2回』(テレビ朝日20150423PM9~)原作・石坂啓、脚本・林宏司、演出・七髙剛を見た。人間の心理は複雑怪奇なものである。たとえば、男が狼なので気をつけるべきなのにあまりにも羊だと落胆されたりするわけである。特に女がその気になっているのにその気にならない男は人間性を疑われたりする。しかし・・・まあ・・・世界というものは基本、残酷なものだと・・・多くの人間はおそかれはやかれ気がつくのだった。男が必ずしも性的欲望を自分に対して抱かないと気がついた時、女は大人の階段を登るのです。・・・そうなのか。いや・・・そうであってほしい。

妻が仮面女であるために・・・どうしても勃起したり射精したりする気になれない家路久(木村拓哉)はたまりにたまっているために今夜も淫夢を見るのだった。

事後の喫煙をする久。

明らかに声が妻の恵(上戸彩)でも前妻の香(水野美紀)でもない第三の女はベッドで囁く。

「ねえ・・・私の事を本当に愛している?」

久は無言で女の口をふさぐところで目が覚める。

事後であったので・・・夢精している可能性があります。

ここで注意しておこう。

久の主観による描写が挿入されてもそれが事実とは限らないということである

なにしろ・・・記憶喪失と記憶の混乱により・・・かなりの障害を持つ男の主観なのである。

本当は・・・久は時々、妻の顔を思い出し、欲情して、性行為をしているのかもしれない。

ただ・・・それを失念しているだけかもしれないのである。

主治医の筑波良明(及川光博)が指摘するまで・・・久は献身的な看護をしていた妻のことを全く記憶しておらず・・・一人で闘病していたと思いこんだりしているわけだ。

僕には忘れていることがある。

そして思い出したことをまた忘れてしまう。

これが・・・このドラマの大前提なのである。

もう一つ・・・久の過去を知る人物が・・・久の過去を語る時・・・それが必ずしも真実とは限らないということも忘れてはならない。

人間は嘘をつく動物だからである。

この二点を除くと・・・この物語の醍醐味は味わえないと思う。

謎に満ちた愛の物語という・・・このドラマの本質が見えてこないからである。

視力の問題で眼鏡をかけている人には一つの例があげられる。

世界は眼鏡をかけている時とかけていない時の二種類ありますよね。

生まれてから眼鏡をかけたことのない人は今すぐ目をつぶってもらいたい。

ほら・・・ブログの続きが読めない世界があったでしょう?

このドラマは主観と客観という二つの視点が脈絡なくチェンジしていくという難解な手法によるものなのです。

つまり、恐ろしく手強いドラマと言えるのでございます。

目が覚めた久は寝室を出る。

妻が料理をしている気配がある。

幼い息子は妻にまとわりついて「絵本を読んで」とせがんでいる。

これが・・・「我が家」か・・・と久は思う。

あれが「僕の妻と息子」か・・・。

しかし、二人は仮面をつけている。

仮面に見えるだけで・・・触れば柔らかい温もりがあるはずだと久は期待する。

しかし・・・そこには・・・不気味な仮面の感触があるだけだった。

狂った久の脳は・・・何故か・・・妻と子供の顔を認識できない。

久にとって妻子は怪物だった。

それでも久はなんとか・・・夫として・・・父親として振る舞おうと努力するのだった。

朝食前のひととき・・・息子の良雄(高橋來)に絵本の「浦島太郎」を読み聞かせる久だった。

「むかしむかしうらしまはたすけたかめにつれられてりゅうぐうじょうにきてみればえにもかけないうつくしさ・・・」

久はふと思う。

竜宮城から帰還した浦島太郎は・・・自分自身ではないのかと。

病院から戻ると・・・家には見知らぬ家族が待っていたのだから。

「ついに浦島太郎は玉手箱をあけてしまいました」

「・・・」

「すると玉手箱からもくもくと白い煙がたちのぼり・・・気がつくと浦島太郎は白髪頭のおじいさんになってしまったのです」

「おとひめさまは・・・いじわるなのかな」

「何が入っているのかわからないものに・・・手を出す時には気をつけないとね」

「うん」

素直で・・・賢い息子である。

しかし・・・久は・・・息子を心から可愛いと思うことができない・・・自分に戸惑うのだった。

自分の父親に怪物あつかいされていることを息子が知ったらどんなにショックだろうか。

久は疾しい気持ちになる。

そして・・・そう感じる自分を訝しむのだった。

「さあ・・・できたよ」

仮面の女が朝食の皿を食卓に置く。

「フレンチトーストか・・・」

妻の作るフレンチトーストの味は思い出せない。

そもそも・・・妻の作るフレンチトーストを食べたことがあるのかどうかも思い出せない久だった。

怪物の作ったフレンチトーストはフレンチトーストの味がした。

「レンタルビデオ店から・・・延滞の電話があったわ・・・」

「延滞・・・」

「延滞料金・・・凄い金額になってたわよ・・・レンタルした作品は・・・淫乱巨乳OL・・・不倫はダメよ~ダメダメ・・・って・・・凄く恥ずかしいタイトルでした」

「げろげろ」

久はあわててAVソフトの捜索を開始するのだった。

発見したソレを早速、再生してみる久。

少し・・・頭がおかしい人なので勘弁してあげてください。

「課長さんダメよ~ダメダメ・・・あっ・・・あっ・・ああん・・・」

「浦島太郎が変なビデオ見てるよ」

「あなたっ」

「いや・・・これ・・・見たら・・・何か思い出すかと思って・・・」

あわてて・・・リモコンを操作した久はスタッフクレジットを再生する。

そこには・・・。

懐かしい名前があった。 

僕の親友の名前だ。

AV監督の山野辺俊(田中直樹)は久の大学時代の友人だった。

休日であることを思い出した久は・・・山野辺に会いたくて会いたくてたまらなくなるのだった。

久の頭は溢れ出す山野辺の記憶でいっぱいになるのである。

まるで突然、恋人に会いたくなったように家を飛び出す久だった。

「あなた・・・どちらへ」

「友達・・・友達に会ってくる」

久は鍵束の中に・・・山野辺の部屋の鍵があることを思い出していた。

狂った久の行動力は常人の目には奇異に映るものと言える。

久はAVの制作会社の倉庫を間借りしている山野辺の部屋に無断で上がり込むと一心不乱に調理を始める。

久の心は・・・忘れていた記憶を思い出したことによる懐かしさに狂おしいまでに満たされているのだ。

帰宅した・・・山野辺は・・・唖然とするのだった。

「やあ・・・お邪魔しているよ・・・今、豚肉のピリ辛炒めを作ってるんだ」

「家路・・・」

「久しぶりにお前の作品を見て・・・懐かしくなって・・・お前の顔が見たくて・・・」

「・・・そうか」

久は戸惑いを感じる。

記憶にある山野辺はもう少し・・・若かったのである。

五年間の記憶を失った久にとって山野辺は突然、五歳年老いたのだ。

「・・・」

「家路・・・事故に会ったって聞いていたが・・・元気そうだな」

「うん・・・でも・・・俺・・・少し混乱しているんだ」

「・・・」

「でも・・・淫乱巨乳OLを見て・・・すぐにお前の作品だってわかったよ・・・すごくスタイリッシュな作品だったから・・・」

「おいおい・・・AVだぜ・・・抜けるか抜けないか・・・それだけだ」

「・・・」

「半年前・・・突然電話してきて・・・お前、俺に・・・いつまでAVなんて撮ってるんだって言ってたじゃないか」

「俺・・・そんなこと言ったのか・・・」

「覚えてないのか・・・」

「俺は・・・記憶喪失らしい・・・」

「そうか・・・いい匂いだな・・・学生時代を思い出すよ」

「・・・だろう」

二人は豚肉のピリ辛炒めを食べた。

「懐かしい味だ・・・」

「だろう・・・」

「本当に記憶喪失なのか」

「五年間くらい・・・まるで思い出せない・・・」

「五年・・・」

「なあ・・・俺の最初の結婚のこと・・・知ってるよな」

「ああ・・・最初の奥さんな・・・確かライターをやっていて・・・知りあってすぐに結婚するって聞いて驚いたよ・・・結婚式にも出たしな」

「俺・・・どうして離婚したのかな・・・」

「さあ・・・何もかも思い出さなくてもいいんじゃないか・・・時には思い出さない方が幸せなこともある・・・」

「・・・」

「今のお前には美人の奥さんがいるんだし・・・」

「美人なのか・・・」

「なんだよ・・・贅沢な奴だな・・・奥さんとなんかあったのか・・・」

「いや・・・すごく尽くしてくれている・・・だけど・・・なんだか・・・それが重いんだよ」

「おい・・・本当に・・・何も覚えていないのか」

「うん・・・それどころか・・・思い出してもまた忘れてしまったりするんだ」

「そりゃ・・・大変だな・・・」

「あのさ・・・俺、また・・・来てもいいかな・・・」

「・・・いいさ・・・友達だからな・・・」

「俺さ・・・ある人に俺は友達なんていない人間だって言われたことがある・・・」

「・・・」

「だから・・・友達がいたことを思い出して・・・凄くうれしかったんだ」

「確かに・・・お前は・・・友達なんていないタイプだったよ・・・」

「・・・」

「でも・・・俺たちは確かに友達だったよ」

山野辺は複雑な微笑みを浮かべた。

久はその笑顔に安らぎを感じるのだった。

「だけど・・・家路・・・お前は少し変わったよ」

「そうか・・・」

「うん・・・昔のお前はもっとギラギラしていた」

「ギラギラ・・・」

「そう・・・自信に満ち溢れていて・・・」

「昨日のことも忘れたりする人間が・・・自信なんて持てないよ」

「・・・そうか」

久は家に戻った。

山野辺と過ごした時間があまりにも楽しくて・・・自分の家に馴染めない自分を憐れに思う。

そしてそう思うことは・・・妻や息子に対して後ろめたさを生じさせる。

ますます・・・自分の家にいることが息苦しい久だった。

「山野辺っていう・・・大学時代の親友に会ってきた」

「そうなの・・・」

山野辺の名前を聞いた妻の顔色が変わったことに久は気がつかない。

なにしろ・・・妻は・・・仮面の女なのだ。

筑波良明の診療室は広い。

「先生は脳外科医なんですよね」

「そうですよ。しかし、精神科医でもあり、精神分析家でもあります」

「すごいですね」

「そうでもないですよ。あなただって証券マンで夫で父親じゃないですか・・・」

「どうして・・・妻や子供の顔が・・・」

「まだ・・・仮面のように見えるのですか」

「はい・・・見えるだけでなく・・・触っても・・・」

「私の顔はどうです・・・」

「理知的でアドバイザーとして頼もしい感じがします・・・」

「お上手ですねえ」

筑波は絶えず部屋のカーテンを開け閉めして部屋の明るさを調節する。

一種の神経症的症状と言えないこともない行動である。

「明るい方が落ち着きますか・・・それとも暗い方が」

「はあ・・・」

「人によっては点滅している方が安らいだりするかもしれません」

「ピカピカ、パチパチですか」

「そう・・・寄せては返す波の音だったりね」

「風に瞬く星空のように」

「ニンジンの嫌いな子はいますよねえ」

「ええ」

「ニンジンの好きな子はニンジンに食欲を感じる・・・しかし、ニンジンの嫌いな子は吐き気を感じます」

「ものすごく嫌いなんですね」

「そうです・・・人間の心は驚くほどデリケートなもので・・・しかも個性があります」

「・・・」

「あなたは・・・物理的ダメージで脳に損傷を負った・・・そのために記憶が損なわれています」

「・・・」

「これは脳外科医としての私の診断・・・しかし、精神科医としては・・・あなたの心に何か問題があると感じます」

「心にですか」

「そうですよ・・・極めて限定的な視覚的情報を・・・瞬時に・・・別の視覚的情報に置換する・・・そういうアクロバットのような心理ですからね・・・あなたの病状は・・・」

「アクロバット」

「そうです・・・つまり・・・枯れ尾花を見ているのに幽霊を見たと思い、美人を見ているのにブスだと思ったり、眼鏡がブラジャーに見えたり、パンツが帽子に見えたり、Y字路が女性の股間に見えたりするようなものです」

「最後の方のたとえはよくわかりません」

「つまり・・・修正されない錯覚・・・そういう心理が生じているのです・・・まあ、倒錯心理の一種ですね」

「どうして・・・そんなことが・・・」

「わかりません・・・心理なんて・・・神の領域ですからねえ・・・日常生活に支障がなければ・・・時には無視することも大切ですよ」

「原因不明ですか」

「そうです・・・あなたの場合は脳を損傷していますし・・・奥さんや息子さんに特別な思い入れがあるからかもしれない」

「特殊な思い入れ・・・」

「そうですねえ・・・恐怖とか・・・あるいは愛とか」

「恐怖と愛じゃ・・・まるで違うじゃないですか」

「そうですか・・・私は同じようなものだと思いますけれど」

筑波は閉じたカーテンを開け、開いたブラインドを閉じて微笑む。

朝のバス亭で・・・離婚した妻・香(水野美紀)の連れ子だったすばる(山口まゆ)を見た久は声をかける。

「おはよう」

しかし、すばるは無視するのだった。

「反抗期続行中よ・・・」

背後から香の声がする。

「以前も・・・こんな風に一緒になったこと・・・あったのかな」

「あなたは・・・もっと早くに出勤していたんじゃないの・・・離婚してからはほとんど会っていないわよ」

「そうか」

離婚した記憶がない久は違和感を持つ。

香の言葉が悪い冗談にしか聞こえない。

(離婚したなんて・・・何故、そんな嫌なことを言うのか・・・いや・・・それは事実・・・僕が忘れているだけ・・・)

久の意識は揺れるのだった。

まるで仲睦まじい夫婦のように語りあう久と香を・・・。

自宅の窓から・・・恵は複雑な面持ちで見下ろす。

久の生活圏・・・狭すぎるのだが・・・少なくとも記憶を失う前の久は離婚した妻子の住まいの近辺に新居を構えるような選択をする男だったことは間違いないのだ。

何故・・・そんなことをしたのかは今はまだ不明である。

大手証券会社の「葵インペリアル」第十三営業部に出勤した久を轟課長(光石研)は舌打ちで迎える。

「第一営業部から回って来た仕事がある」

「第一から・・・」

「つまり・・・かってはお宝だったが・・・今はゴミとなった仕事ってことだ」

「何も・・・そこまでご自分を卑下なさらなくても・・・」

「俺を一緒にするな・・・お前たち向きの仕事だってことだよ」

「はあ・・・」

「弱小メーカーの鬼山機械は中根物産の関連企業ということで第一が取引していたのだ」

「大手の系列ってことですか・・・」

「しかし・・・中根は鬼山を切ったんだよ」

「つまり・・・ただの弱小メーカーになっちゃったということですね」

「そうだよ・・・それで第十三に担当替えになったんだ」

「鬼山機械ってどんな会社なんですか」

「小さな部品を作ってるそうだ」

「小さな部品を作る小さなメーカーか・・・なんだか、可愛いですね」

「何を言ってるんだ・・・怒ってんだよ」

「はあ」

「鬼山機械の社長が・・・第一から第十三に担当替えになったことが不満なんだそうだ」

「つまり・・・ないがしろにされていると」

「そうそう・・・なにしろ・・・うちは十三だからっ・・・て俺に言わせるな」

「・・・」

「対応に格差があるというのは企業イメージを損なうからな・・・ご機嫌とってこい・・・」

「課長は・・・」

「私が出るほどのことではない」

いかにも頑固な町工場の親父的な鬼山健三社長(西岡徳馬)は久の持参した菓子折りを叩きつけるのだった。

「こんなものを持って来いなんて・・・私は言ってない」

「いや・・・ご挨拶ですよ・・・これ・・・美味しいんです」

「なめてんのか・・・バカにしてるのか・・・私を・・・」

「いえ・・・とんでもございません」

「とにかく・・・帰れ・・・仕事の邪魔だ」

「じゃ・・・あらためて・・・伺います」

同行した四月と書いてワタヌキ(鈴木浩介)は呟く。

「時間を改めてと言われてもなあ・・・」

「ワタヌキさんは・・・奥さんのことがあるから・・・後は僕がやっておきます」

「お子さんのお迎え大丈夫ですか」

「今週は妻がやってくれますから」

「そうですか」

恵の日常は謎めいているが・・・良雄の送り迎えをしたりもするらしい。

「よかったわね・・・初めて・・・お父さんが本を読んでくれて」

「・・・」

「前より・・・お父さん・・・優しくなったみたいよね」

「なんだか・・・ベタベタして・・・気持ち悪いよ」

「あらあら・・・」

良雄・・・なんだか・・・凄いぞ。

そして・・・そういう良雄に動じない恵も・・・ただものではない感じがするのだった。

しかし・・・良雄は園でトラブルを抱えているらしい。

良雄を囲むいかにも意地悪そうな園児たち。

久の主観と客観的な現実の入り組んだ時空間の推移は曖昧である。

一日の出来事が一週間だったり、一週間の出来事が一日のようにも見える。

お茶の間は混乱するかもしれないが・・・これはそういうドラマなのである。

気が強い女がタイプだったよな 

人前では涙を見せないみたいな・・・

一日に何回も豚肉のピリ辛炒めを作っているように見える久だが・・・単に山野辺の部屋に入り浸っているだけなのだ。

「また・・・来たのかよ・・・何だよ・・・急に」

「いや・・・学生時代に・・・そういう話をしたような気がして」

「ああ・・・確かに・・・俺は強い女が好きだよ・・・俺が弱い男だからな」

「お前が弱いってことはないだろう・・・この年まで・・・夢をあきらめないなんて・・・なかなかできないぜ」

「それは・・・皮肉か・・・」

「だって・・・映画を撮ることを諦めたわけじゃないだろう」

「AVだって・・・映画だ」

「それは・・・どうかな」

「おいっ」

営業統括担当の執行役員・勅使河原洋介(渡辺いっけい)は第十三営業部の派遣社員・小鳥遊(たかなし)優愛(吉本実憂)に久の監視を命じている。

「特に変わったところはありません・・・仕事は真面目ですが作業能率は悪いし、早退や欠勤も目立っています・・・まさにポンコツです」

「しかし・・・あの男に限って・・・油断は禁物なんだよ」

「そんなに危険な男だったんですか」

「そうだ・・・いろいろな意味でな」

久が昔の上司に監視されている理由は謎である。

「また・・・きてるのか・・・会社、さぼってるのか」

「いや・・・今日は取引相手を夜・・・接待するんで・・・今のうちにお前とメシすませようと思って」

「俺はお前のカミさんじゃねえよ」

「・・・」

「じゃ・・・昔の映画でも見るか・・・」

「お前の作品か・・・」

「そうだ・・・お前も通行人で出てるぞ」

「へえ・・・」

「主演女優は・・・お前の今の奥さんだ」

「え・・・」

「最初にあらすじを話してやるよ」

「妻が・・・映画に・・・」

「主人公は・・・やり手の証券マンだ・・・昔のお前みたいな・・・」

「・・・」

「男には親友がいた・・・いつまでも夢を見ているような芸術家だ・・・主人公は複雑な家庭に育ち・・・どこか世界を憎んでいるようなところがあった・・・しかし、優秀な男で東京大学を卒業して証券マンになったんだ・・・しかし・・・大学時代に知り合った芸術家とは妙に深いつきあいになった。男は芸術家を蔑んだ目付で見ることもあったし、芸術家にとって男はたくさんいる友人の一人にすぎなかった。しかし・・・お互いに自分にはないものを相手に求めていたのかもしれない・・・芸術家には恋人がいた・・・。主人公は彼女を芸術家から奪い・・・結婚する」

「おい・・・それって・・・」

その時・・・妻から着信がある。

良雄が園で友達にケガをさせたらしい。

「ごめん・・・いかなくちゃ・・・」

「・・・」

残された山野辺の顔に浮かぶのは自己嫌悪だった。

良雄は園で友達を突き飛ばし・・・頭部に怪我をさせていた。

病院に久が到着するとちょうど手当が終わったところだった。

「軽傷だそうです」

「申し訳ありません」

「いいのよ・・・あまり気になさらないで・・・」

相手の母親は穏やかに微笑む。

久は恵から事情を聴く。

「家に玩具がないことをからかわれたらしいの」

「玩具がないって・・・」

「嫌だ・・・あなたが全部捨てちゃったんじゃない・・・良雄がドリルのノルマをさぼったから・・・」

「ドリルのノルマ・・・」

「それに・・・トレジャーランドのお宝ボックスが家にあるって言い張って・・・」

「東京トレジャーランドの・・・」

「子供なら誰でも行きたいところですもの・・・」

「俺は・・・良雄をトレジャーランドに連れて行ったのかな」

「いいえ・・・一度も・・・」

「・・・」

「だから・・・お宝ボックスなんてあるわけないのに・・・子供だから夢と現実がごっちゃになってしまったのかもしれないわ・・・」

「玩具か・・・」

「ほら・・・この写真に玩具の車が写ってるでしょう・・・こういうの全部捨てちゃったのよ」

久は玩具の写真を見た瞬間、忘却していた記憶が蘇ったことに気がつく。

「すまない・・・ちょっと・・・用事を思い出した・・・」

「そうですか」

キーホルダーの十本の鍵。

一本は家の鍵。一本は離婚した家族の住む家の鍵。一本は親友の山野辺の部屋の鍵。そして・・・四本目の鍵は・・・レンタル倉庫の鍵だった。

離婚した時の荷物や・・・仕事の資料などを収納してあったのだ。

そこに・・・良雄の玩具をすべて隠したのだった。

久は倉庫の扉の鍵を開く。

書類や久が仕事で獲得した社長賞などのトロフィーなどに混じり・・・片隅に良雄の玩具類があった。

そこで・・・久は・・・あるはずのないものまで発見してしまう。

トレジャーランドのお宝ボックス・・・そして・・・久と良雄のトレジャーランドでの記念写真。

行ったことのないトレジャーランドに・・・久は良雄と行ったことがあるらしい。

しかし・・・写真に映る良雄が・・・久の目にはどのように見えたかは伏されるのだった。

久はトレジャーランドのお宝ボックスをのぞいた玩具を持ちかえった。

「あ・・・飛行機・・・ロボットも・・・」

「捨てていなかったのね」

「うん」

「壊れてたのもあるけど・・・僕が頑張って修理するよ」

「ありがとう」

「良雄・・・お父さんもちょっと壊れてるんだ」

「・・・」

「でも・・・がんばって修理するから」

「あなた・・・」

久は妻を見る。

しかし・・・そこにいるのは仮面の女。

久は良雄を見る。

しかし・・・そこにいるのは仮面男子だった。

「また・・・豚肉のピリ辛炒め・・・作ってるのか」

「これで最後にするから・・・」

「この間は言いすぎた・・・恋人を奪われたなんて言ったけど・・・あれは俺の願望混じりだからな・・・お前の奥さんのことを一方的に俺が憧れていただけだ・・・なにしろ・・・自分の映画の主演女優なんだから」

「これ・・・鍵を返すよ・・・考えてみたら、いくら友人の家だからって・・・勝手にあがりこんじゃ・・・まずいよな・・・」

「まあ・・・気にするな・・・お前もいろいろと大変みたいだし・・・」

「俺たち・・・本当に友達だったんだな」

「そうさ・・・いいことばかりじゃなくても・・・なんだかんだ・・・付き合うのが・・・腐れ縁ってやつだ」

「腐れ縁か・・・」

「奥さん大事にしろよ・・・それからこれ・・・この間、上映できなかったから・・・焼いておいたよ」

久は「昔の映画のディスク」を入手した。

「今はお前の奥さんだけど・・・俺の主演女優でもあるから・・・コピーだけどな」

「当然さ・・・作品の著作権は監督のものだ」

「いつもそうだといいけどな」

山野辺は一般映画の監督をする話が流れたばかりだった。

そういう事情を久は知らない。

たとえ知ったとしても・・・すぐに忘れてしまうのだろう。

そういう冷たさは・・・久の本来の性格の余韻なのかもしれなかった。

久が席を外している時に第十三営業部に鬼山社長がやってくる。

「家路くんはいるかい」

「今・・・席を外しておりますが・・・」

「そうか・・・とにかく・・・礼を言いに来た・・・介護ロボットの件、株式公開で資金調達もできたので・・・事業として軌道に乗ったと伝えてくれ」

「はい・・・?」ワタヌキは戸惑う。

「あの男・・・変な奴だな・・・勝手に家に上がり込んで・・・俺の・・・病気の家人を勝手に介護したりして」

「え」

「なんだ・・・いないのか」

鬼山社長は上機嫌で帰って行った。

「ありました・・・業界ニュースに・・・鬼山機械が介護ロボット事業に貢献・・・話題になってます」

五老海(いさみ)洋子(阿南敦子)が素晴らしいインターネットの世界をチェックして告げる。

「なんだ・・・また・・・家路くんのお手柄か」

小机部長(西田敏行)は微笑んだ。

「こりゃ・・・部長賞出さないとだな・・・最近、奥さんと倦怠期みたいだから・・・ホテルのスイーツの宿泊券でもプレゼントしようかな・・・やはり・・・夫婦は合体しないとにっちもさっちもいきませんからな・・・うひっ」

久はありがたく部長賞を受けた。

妻が喜んだからである。

いろいろと気になる人もいる久の家のリッチな暮らしぶり。

原作では妻の実家が資産家という設定なのだが・・・ドラマでも一応そうらしい。

一泊旅行を楽しむ娘夫婦のために良雄を預かる妻の父親(堀内正美)と母親(山口美也子)は・・・。

恐ろしいほどの豪邸に住んでいた。

仮面でかくして

かりそめの一夜を

迷いこんだイリュージョン

時を止めた楽園

夜景の美しいホテルのスイート・ルーム。

「うわあ・・・おっきい窓・・・」

「・・・」

「うわあ・・・おっきいベッド・・・」

「・・・」

「おっきいわねえ」

いつもよりはしゃぐ妻だった。

恵は窓辺で久に寄り添った。

久は恵にキスしようとしてためらう・・・。

そこにいるのは不気味な仮面の女なのである。

久のためらいに気がついた恵は・・・動揺を隠しながら・・・無邪気を装うのだった。

恵・・・あまりにも・・・せつないぞ。

バスルームに去った妻。

久は思わず・・・「昔の映画」を再生する。

そこには・・・美しい恵が微笑む。

しかし・・・それが久の目にどう映ったかは・・・秘されるのである。

ただ・・・久は画面から目を背けるのだった。

これは世にも憐れな・・・ありふれた愛の物語なのだ。

関連するキッドのブログ→第一話のレビュー

Ihhc002ごっこガーデン。ホテルの小部屋的こころうらはらセット。アンナキャーッ・・・アンナのお部屋から比べると小さな窓で小さなベッドだけどダーリンと一緒ならどこでもパラダイスぴょ~ん・・・それにしても・・・寸止め、蛇の生殺し、おあずけキッスは反則ぴょん・・・じらされて女はさらに燃えるのぴょんぴょんぴょん・・・う~んいけず~ぴょんまこお友達に怪我をさせても相手に恐縮される恵ママ・・・実は園のボスママでしゅかーーーーーっ。仮面じゃなくて久の前だと猫かぶってるのか・・・勉強になりましゅっ。秘密だらけのこのドラマ・・・なにしろ・・・久は謎を解いても忘れちゃうんだから・・・迷宮から脱出できないタイプなんじゃね・・・じいや・・・おらおやつはフレンチトーストが食いてーだ・・・まめぶ汁もなmana何より圧倒的な・・・恵の大きい胸~♪・・・とりあえず仮面はおいといて殿方はそこにむしゃぶりつくのでは~・・・これはもしかして・・・主人公の我慢ゲームなのでは┐(´-`)┌

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2015年4月23日 (木)

たこさんが海で死んだ・・・何にも悲しいことはない(堺雅人)タモリさんがお好きなんですね(蒼井優)

「心ポッキー」とこれは・・・選択に迷うところである。

どちらかといえば・・・底辺の人々の赤裸々な「恋愛」を描いた「心ポッキー」にもそれなりに楽しいところがあるが・・・「もしもし~なにしてるの」って芸者さんに言われてうっとりしたいので心が晴れるのだった。

若夏ばっぱ(徳永えり)や宮下アユミ(山下リオ)には未練があるが・・・理事長秘書(柊瑠美)を発見し、心が決まるのだった。

結局、そういうところかよっ。

そういうところです。

で、『Dr.倫太郎・第2回』(日本テレビ20150422PM10~)原案・清心海、脚本・中園ミホ、演出・水田伸生を見た。地球にはおよそ72億人以上の精神病患者がいるわけだが、ほぼ全人類じゃないか。いや、全人類だ。もちろん・・・キッドも心を病んでいる。多重人格の時点でな。今日も親友から電話があり一時間くらい話してしまったので自分自身の貴重な時間が失われたことを一時間くらい気に病んだわけである。・・・お前、友達いないだろう。本当に世間様と言うのは面倒くさいなあ。まあ・・・いいじゃないか、一時間くらい無駄にしても・・・どうせ人生そのものが無駄なんだから。

現実的な妄想はそこまでだ。

精神の病には病因についての三つのカテゴリーがある。

脳を弾丸で撃ち抜かれた場合などの外因性、脳に弾丸が発生した場合などの内因性、そして脳に弾丸が発生するなどと考えだす心因性である。

心がどういうものかを誰も知らないのに心因性などと言い出すところが・・・精神の病の科学の妖しいところなのである。

そういう妖しい領域に踏み込みたくないのが精神科主任教授の宮川貴博(長塚圭史)なのである。

一方、天才である慧南大学病院の精神科医・日野倫太郎(堺雅人)は妖しい精神分析手法を用いて妖しい患者の心にアプローチし、もつれた糸を解きほぐすように・・・反社会性の流れから個性を救い出すのだった。

まあ・・・あくまで・・・脚本家による都合のいいフィクションだから可能な話なのでけして妖しい精神科を信用しないでください。

発狂しているものが発狂しているものを発狂していると断定するだけの医療機関ですからねえ。

三十歳となり研修医としては落ち付いている福原大策(高橋一生)は研修医になりたての川上葉子(高梨臨)に恋をしているので・・・倫太郎に悩みを打ち明ける。

「彼女が僕に告白を求めていることは明らかなのです」

「やめておきたまえ・・・恋は精神科の医師にとって百害あって一利なしだ」

その模様をモニター室で眺めた倫太郎の幼馴染で外科医の水島百合子(吉瀬美智子)はちょっと落胆するのだった。

看護師の桐生薫(内田有紀)はニヤニヤするのだった。

しかし、倫太郎は芸者・夢乃(蒼井優)に激しく魅かれる自分を意識する。

桜の下の情熱的な口付。

そしても素顔の夢乃の素っ気ない態度。

倫太郎ははたして・・・夢乃に興味深い治療対象を見出しているのか・・・それとも。

芸者遊びが大好きな円能寺一雄理事長(小日向文世)はニヤニヤしながら秘書に命じて倫太郎を招集する。

夢乃に会えると思うとニヤニヤする倫太郎である。

出版社の要請により、特別な患者として幻想小説家の風間(辻萬長)の診断することを要請される宮川主任と倫太郎だった。

風間は出版社の生死を握るベストセラー作家だったが、前作の「螺旋の女」を評論家に酷評されて以来、精神の不調を訴えているのだった。

最初から不機嫌だった風間だったが・・・遅れてやってきた自身の私設秘書・むつみ(堀内敬子)を見ると錯乱する。

「その女は偽物だ」

「先生・・・」

暴れた風間は転倒して頭を打ち、救急車で運ばれるのだった。

同席していた夢乃は指先を自傷し、慧南大学病院に同行するのだった。

「ひのりん・・・私も怪我しちゃいました・・・」

「外科の先生に手当をしてもらおう」

百合子は危険な猛獣を見る目で夢乃の傷に包帯を巻く。

「先生は・・・日野先生の恋人ですか」

「ただの幼馴染よ」

「あら・・・こわいお顔・・・」

「・・・」

ニヤニヤできない百合子だった。

夢乃は倫太郎の携帯電話に自分を登録する。

「どうして・・・この間、私に気がつかなかったのだろう」

「それは・・・きっとお姉さんです」

「え」

「私たち、双子の姉妹なんですよ」

「そうだったのか」

風間の治療方針についてのカンファレンス(検討会)を行う席で対立する宮川と倫太郎。

「患者はF20.0の妄想型統合失調症ですので投薬治療を行います」と宮川。

「もう少し、患者と対話してみるべきなのでは」と倫太郎。

「そんなことは時間の無駄だ・・・投薬で症状は改善される」

「しかし、誤診なら・・・患者は無駄に投薬されることになる」

「どちらが正しいのかね」

円能寺はオブザーバーの脳外科の主任教授の蓮見榮介(松重豊)に説明を求める。

「わかりません・・・相撲取りとレスラーが戦っているようなものなので」

「どちらも・・・上半身裸じゃないか」

「日野先生の分析治療では時間がかかりすぎる」

「それは困るな・・・出版社は風間氏に次回作を一刻も早く書かせたいんだ・・・」

「しかし・・・患者と話もしないで・・・診断するのは早急すぎます」

「何故・・・患者と話をする必要があるのかね」

「・・・ただなんとなく」

「主治医は宮川主任にしましょう」

選ばれなかった倫太郎は大学での出世競争に敗れ開業医となった荒木(遠藤憲一)の精神分析を受診するのだった。

「宮川の野郎、親の七光のくせにえばりやがって・・・」

「最近、そういう傾向はないな」

「円能寺何て腹黒いくせにニヤニヤしやがって」

「腹黒いやつほど金を持ってるからな」

「ちっくしょおおおおおおおお」

そこへ・・・夢乃からメールが着信する。

主治医の特権でメール内容を確認する荒木。

「そんな特権はないっ」

(お忙しいですか・・・私がメールをしたらご迷惑でしょうか)

(そんなことはありません)

主治医の特権でメールを返信する荒木。

「だから・・・そんな特権はないってばあ」

(今度のお休み、会っていただけますか)

「よろこんで・・・と」

「ちょっと・・・何をやってんですか・・・ちょっと」

「はい・・・送信と」

「やめて・・・やめて・・・ちょっとお」

「送信しちゃった」

ニヤニヤする荒木。

負けずにニヤニヤする倫太郎。

もはや・・・ニヤニヤドラマだな。

置屋に呼び出された倫太郎は遠出の花代十万円を請求されつつボート乗り場に向かうのだった。

「あれ・・・嘘なんです」

「え」

「私には双子の姉はいません・・・あの時は・・・少し、気が動転していて」

「・・・」

「父の手術代に三百万円必要だと言われて」

「わかりました・・・三百万円は私が用意しましょう」

「うれしい・・・」

本名のアイザワアキラの口座番号を教える夢乃。

こっそり小さく舌を出すのだった。

かわいいよ、夢乃さん、かわいいよなのである。

しかし・・・なぞの女・相澤るり子は公営ギャンブル場から金の無心をする。

「身内の不幸は嫌でしょう」

「・・・」

「ねえ・・・早く・・・お金よこしなさいよ」

身内宣言である。

相澤るり子とアイザワアキラは・・・母と娘なのか・・・。

完全に病気の母親に支配されているのか・・・。

何故か、用意した現金をATMで振り込む倫太郎。

三百万円はたちまち相澤るり子に流れて行くのだった。

風間のファンである百合子から代表作の「幻影」を借りた倫太郎は・・・作中に登場するムササビが秘書のむつみであると主人公の特権で直感する。

主人公の特権で風間が・・・むつみへの求婚を諦めて、結婚相手を世話したことを知った倫太郎。

倫太郎は老いぼれ作家に「むつみにブレゼントしようとした指輪を飲み込んだ風間の胃袋のレントゲン写真」を突きつけるのだった。

「幻想の恋でも・・・恋は甘美なものですな」

「ムササビがむつみだったとはな」

「カキピーの柿の種だけをたべるのです」

「ピーナッツアレルギーだからな」

「すべて・・・お見通しか」

「主人公の特権ですから」

「ニヤニヤ」

「ニヤニヤ」

風間は鬱屈した思いを吐き出したことで快方に向かう。

倫太郎は風間のサイン本を入手するのだった。

いつもお世話になっている百合子への御礼なのである。

倫太郎が芸者に三百十万円貢いでいるとは知らずに喜ぶ百合子だった。

「風間氏は恋愛感情のもつれによるストレスを心的要因とするF1x.5の精神病性障害で一ヶ月以内に症状が治まったので短期精神病性障害です・・・治療の必要はありません」

「え・・・じゃ・・・治療費もらえないじゃない」

しかし・・・風間が執筆活動を再開したために・・・謝礼が入るのでニヤニヤする円能寺だった。

夢乃はそんな円能寺に電話でおねだりするのだった。

「おこづかいくうださい」

「いくら欲しいのかな」

「一千万円くらい」

「ニヤニヤ」

帰宅した倫太郎を待ち伏せする夢乃。

「これ・・・お返ししようと思って」

「お父さんの手術は・・・」

「事情を知った親戚が出してくれることになりました」

「それはよかった・・・」

三百万円が帰って来たためか・・・夢乃に会えたからか。

ニヤニヤする倫太郎。

ニヤニヤする夢乃。

二人の幸せそうなニヤニヤに・・・お茶の間のニヤニヤが止まらない。

ニヤニヤ万歳!

恋愛万歳!

変態万歳!

妄想万歳!

妄想族万歳!

謝罪にさようなら!

美しい洗濯好きの方、僕の脳みそもジャブジャブ洗ってください。

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2015年4月22日 (水)

張り切って雑誌を妊娠させましょう(渡辺麻友)あのね附録を挿入して緊縛するだけだからっ(稲森いずみ)

「本は親友です」

・・・なんて言ってる人は人間としてダメに決まってるだろう・・・な第二回である。

ヒロイン(年長者)の一方的な思いこみだけでほぼ一時間・・・。

やはり・・・この脚本家の変態加減は半端ないな。

うっとりしてしまったぞ。

さて・・・(火)10時のドラマみつどもえ・・・。

初回は・・・。

「美女と男子」*6.8%

「マザー・ゲーム」*9.8%

「戦う!書店ガール」*6:2%

・・・と仲良く*発進である。

まあ・・・当然の結果だよな。

とにかく・・・かわいいよ、木村文乃かわいいよが首位にたったのだ。

苦節ヒロインである・・・よかったよね。

一方で「篤姫」と「江」で天国と地獄を見た脚本家の「美女と男子」・・・。原作もので成功してオリジナルで失敗した人のオリジナルなのだが・・・これは・・・明らかに韓国ドラマのエッセンスで仕上げてるよね。

韓ドラ風の主人公たち、韓ドラ風のストーリー、韓ドラ風の本数・・・。

もう・・・うっひゃあ・・・という感じしかしません。

まあ・・・需要はそこそこあるだろうから・・・それはそれでいいか・・・。

とにかく・・・今季の(火)はコレで決定します。

で、『戦う!書店ガール・第2回』(フジテレビ20150421PM10~)原作・碧野圭、脚本・渡辺千穂、演出・白木啓一郎を見た。第1回は「人より本を好きな人」のストレートな話だったが・・・今回はそういう人が「人としてどれだけ痛い目にあうか」というストレートな話である。もちろん・・・二人のヒロインの年齢差や経済格差は歴然なので・・・ヒロイン(年長者)の方が明らかに傷は深く破綻しているのであるが・・・ヒロイン(お嬢様)もいつかは通る道なのである。なにしろ・・・本しか愛していないのに人並みに人に愛してもらえるはずなんか・・・ないんだから~。

出版社の営業をしている柴田(長谷川朝晴)と結婚を前提に交際していたつもりの大手書店「ペガサス書房」吉祥寺店副店長の西岡理子(稲森いずみ)は突然の別れ話に驚愕するのであった。

自分では恋愛していたつもりだったが・・・柴田にとってはただの遊びだったのである。

なにしろ、柴田は「仕事関係で知り合った女の子を妊娠させ責任をとって結婚する」と言うのだった。

どう考えても「交際終了宣言」なのだが・・・「現実」というものの恐ろしさを噛みしめないタイプの理子はただただうろたえるのであった。

そして・・・柴田の相手を大手文房具メーカー会長の孫娘でクソ生意気な部下・北村亜紀(渡辺麻友)だと断定するのだった。

そもそも・・・相手の部屋の合鍵さえ持っていない状態で・・・それなりに大事にされていると思っているところが・・・かなり「痛い人」の理子なのだが・・・。

今回はその「痛さ」を全編に渡って炸裂させます。

その痛さは・・・「最後から二番目の恋」の適齢期の終わったヒロインを凌駕する・・・「適齢期終了直後なのに自覚がない」という恐ろしい状況によって展開するのだ。怖いぞ~。

お茶の間で自殺者が発生してもおかしくない痛さだよな。

同僚で親友の尾崎(濱田マリ)は既婚者であるために・・・腫れものに触る態度で理子に接する。

しかし・・・それは「別れ話」を「プロポーズ」と予想するほどの浅い付き合いの上での社交辞令なのである。

本当に親友なら・・・もっと早く「理子の間違い」を正すべきだもんな。

理子から・・・「彼」を略奪したのは亜紀だと聞かされ、義憤にかられるが・・・だからといって何をするわけでもないのだ。

もちろん・・・キャスティング的にどう考えても誤解なのだが・・・登場人物にそれを知る権利はないのだった。

書架の本の入れ替えについて感慨にふける亜紀。

「悩ましい問題ですよね。新しい本を並べるためには・・・古い本をとりのぞかなければならない・・・でも・・・新刊が次から次へと出るんだから・・・しょうがないですよね」

「しょうがないって・・・」

奪った女が奪われた女にそこまで言うかと歯ぎしりをする理子なのであった。

しかし・・・現実の恋愛への適応力がない理子は・・・奪われた怒りを奪った本人にぶつけることもできずに悶々とするのだった。

その心の鬱屈を・・・女友達に吐き出したい理子だが・・・女友達は基本的に既婚者であって・・・そう簡単に付き合えないのだった。

なにしろ・・・基本的に・・・人より本を愛している人なのである。

尾崎にも「子供のお迎えがある」と誘いを断られ・・・行きつけの店・・・屋良部守(マキタスポーツ)が店長の沖縄料理店はなぜか満員なのである。

実は・・・三田孝彦(千葉雄大)は明らかに理子に思いを寄せていて・・・謎の客(田辺誠一)も「今度、東京を案内してください」などと軽くお誘いをしている。

しかし・・・柴田への未練で呪縛された理子は全くそれに気がつかない。

つまり・・・理子の恋愛力は中学生レベルなのだった。

痛い・・・痛すぎるぞ理子。

そして・・・一人カラオケに逃避する理子。

泣きじゃくりながら・・・いつか柴田とデュエットした「ロンリー・チャップリン」を熱唱するのであった。

その醜態を・・・萩原麻美(鈴木ちなみ)、日下(伊野尾慧)、遠野由香(木﨑ゆりあ)の書店員トリオは偶然見てしまうのだった。

「恐ろしいものを見た」

「何も見なかったことにしよう」

「そうしよう」

家に帰った理子を待つのは定年退職したのではなくうらぶれた煎餅屋主人だった父親の達人(井上順)だけである。

どんどん憂鬱になっていく理子である。

一方・・・週刊誌では「四十女、別れ話のもつれから交際相手の男を刺殺」というこれでもかな見出しが躍る。

店長の野島(木下ほうか)にネタふりをされ・・・亜紀が率直な意見を述べる。

「四十にもなってそんなことをするなんてどうかしてます・・・さっさと頭を切り替えて次に行けばいいのに」

(お前が言うか・・・)と鬼の形相となる理子だった。

とにかく・・・柴田に相手が誰なのか・・・はっきりと確かめたいと考える理子。

いや・・・相手が誰でも問題は変わらないけどな。

ついに・・・柴田の自宅に張り込みである。

例の記事と・・・理子の思いこみの激しさから・・・そういう事態もあると・・・怯えている柴田。

とにかく・・・理子のことをその程度にしか思っていない男なのである。

夜の闇の中に佇む理子を発見した柴田は脱兎の如く逃げる。

「なんで逃げるのよ」

思わず追いかける理子。

追い詰められた柴田は・・・刺される恐怖から理子を突き飛ばして逃走するのだった。

「え」

転んで手首を捻挫する理子。

心身ともに痛いのだった。

こんなに痛々しくみじめなヒロインが・・・かってあっただろうか。

その憤懣はついに・・・亜紀と三田の歓迎会の夜に爆発するのだった。

やけ酒を飲み続け早めに店に到着した理子は・・・実は亜紀に密かに思いを寄せる編集者の小幡(大東駿介)に胸の内を吐露するのだった。

「とにかく・・・あの人とは一緒にやってられないの」

「いや・・・亜紀ちゃんはそんな人ではないでしょう」

「あなたは・・・あの女のことがわかってないのよ」

もちろん・・・到着した亜紀はその言葉を立ち聞きしていたのだった。

「どういうことですか・・・そんなに私をやめさせたいんですか」

「・・・」

「私・・・帰ります」

「ちょっと待って・・・これはあなたたちの歓迎会だから」

「あんなこと・・・言われて・・・歓迎されているとは・・・思えません」

「だって・・・どうせ・・・結婚して退社するんでしょ・・・」

「結婚・・・退社・・・」

「産むんでしょ」

「うむ・・・何を・・・」

「とぼけないで・・・フェアリー産婦人科に通院してるでしょ」

「ごかいです」

「え」

「二階の産婦人科じなくて・・・五階の歯科です」

「ええ」

「私が誰と結婚するんですか」

「柴田さん・・・?」

「なんで・・・私が柴田さんと結婚しなきゃいけないんですか・・・全然、好みじやないし」

「えええ」

「どうして・・・そんな話に・・・」

「結婚しないの」

「交際さえしてませんよ」

「あああああああああ」

(なんだってえ。ししししししばたさんとはむかんけいって。そんな。まさか。そんな。うそでしょでもうそじゃなかったらわたしのきもちがこんていから否定・・・最初からごごごごごかいだったらごかいだったらごかいだったらぬれぎぬ妊娠じゃなくてはいしゃなのはがいたいのむしばなのあまいものたべすぎなのしれつきょうせいなのえええええ冤罪・・・私が冤罪を思いこみの激しい刑事が手柄欲しさに罪なき人を罪に陥れるみたいな極悪なことを私がひーっそれは駄目・・・謝罪・・・どこから何をあやまればいいの・・・恥・・・恥だわ恥ずかしすぎて舌噛むレベルだわ江戸時代なら切腹だわわわわわわわわわわロンリー・チャップリンときがすぎわたしがきえてもとおくをみつめるめにかかかかかかかかかぜがうつる~)

「副店長」

その時・・・店長や三田が到着する。

「どうしたんですか」

「き・・・気持ち悪い・・・頭が痛い」

三田は理子の発熱に気がつくのだった。

「凄い熱です」

「そりゃ・・・大変だ」

「とにかく・・・僕が家まで送ります」

「君の歓迎会なのに・・・」

「大事な副店長ですから」

「三田さん・・・優しいですね」

亜紀は理子を背負う三田にうっとりとするのだった。

出迎えた父親は「お世話になりました」と頭を下げるのだった。

三田はカレーライスを振る舞われうっとりとするのだった。

「なにもかもわすられないよ・・・です」

「ははは」

「今夜はこれで失礼します」

「明日の朝・・・この家から出社すればいいよ」

「ぼくは出ていくのです」

「お世話になりました」

・・・もういいか。

目覚めた・・・理子は・・・もう痛さを通り越して何も感じない心境である。

ふと・・・謎の男との約束を思い出す。

約束の時間は過ぎているが・・・一応行くだけ行ってみようと思うのであった。

二時間遅れで到着すると・・・お約束の横断歩道の向こうに男はいた。

しかし・・・信号待ちをしている間に男は待ちくたびれて去って行く。

道に倒れて誰かの名を呼ぶこともできない理子だった。

もう・・・すごいな。

ヒロイン(年長者)の暴走を受けて・・・三田を呼び出す亜紀。

「昔・・・雑誌に付録を挟む作業をしていた時、三田さんに私は・・・」

「・・・」

「痛い・・・血が出ちゃった・・・あの時、私・・・紙で指を切っちゃって・・・」

「・・・」

「こんな作業・・・好きな人なんかいませんよね・・・と・・・そういう私に三田さんは・・・」

「・・・」

「雑誌に付録を挟んでいると・・・雑誌に命を吹き込んでいるような気持ちになると」

「・・・」

「ああ・・・この人は私と同じくらい本を愛していると確信したのです」

「・・・」

「私は三田さんが好きです・・・私と交際してください」

「ごめん・・・僕には他に好きな人がいる」

「え・・・ええ・・・えええ・・・私、ふられたんですか」

(小さい頃から愛されて愛されすぎて社会に馴染めないから本に愛をそそぎこんで本は裏切らないから幸せだった・・・そんな私が本を愛する人を愛したのにその人がこんなに本を好きな私を愛さないなんてありえるのかしらありえるのかしらありえるのかしらありえ)

「・・・」

ヒロイン(お嬢様)も・・・思いこみが激しいのである。

いや・・・ヒロイン(年長者)より・・・望んだものは何でも手に入る道を歩んできたので・・・さらに性質が悪いんだな。

そして、三田は・・・。

(君が本を愛していることはよくわかっている・・・でも僕よりも君よりも彼女は本を愛しているんだ・・・だって年季がちがうんだ・・・君は来るのが遅すぎた)

妄想はそこまでだ。

ああ・・・とにかく・・・凄いよね。

変態を極めてるよね。

もう・・・お茶の間の誰もついてこれないんじゃないかってレベルだよ。

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2015年4月21日 (火)

吾輩は捨て猫、三毛猫でもホームズでもない(相葉雅紀)ゼラニウムの花言葉は誠実な友情(有村架純)狙った獲物は逃がさない(沢尻エリカ)領収書刑事(山口紗弥加)その名はガス(足立梨花)

お・・・二週目突入か・・・。

有村架純と沢尻エリカ・・・二枚も使われてはな・・・。

まだ・・・全部スタートしてないからなあ。

(月)(火)(水)は不安定だよな。

このドラマも不安定だけどな。

本来の主人公である父親のパーツとドラマ版の主人公である息子のパーツが・・・ジグソーパズルのように・・・形を成していないからな。

最後の最後でピタッとおさまるまでお茶の間は待てないよね。

おさまるかどうかもわからないしな。

とにかく・・・主人公の不安をもっともっと増していかないと・・・。

のほほんとしているからな・・・まあ・・・ライオンに襲われてものほほんとしていそうだしな。

で、『よう、わ・第2回』(フジテレビ20150420PM9~)原作・池井戸潤、脚本・黒岩勉、演出・中江功を見た。変化というものは不思議なものである。人は変化を求めることもあるが・・・そうでないこともある。どちらが本質なのかは謎だ。加齢によって奇矯な面が強調されてきた家人に苛立つこともあるが・・・本来、奇矯な人なので妙な安心感もある。桜並木はすっかり青葉になったが桜色から葉桜にそして緑色になる変化は・・・毎年のことなので馴染んだ情景でもある。だから・・・ストーカーも来なくなったら淋しく感じる人もいるだろう。・・・それはないと思うぞ。

月曜八時のドラマ枠がなくなって「水戸黄門」の話から昭和初期のラジオの話になった。

「たあでえたあでえがきつ~」と家人か歌い出し、「そういうラジオドラマの主題歌があった」という話になった。昭和18年(1843年)のNHKのラジオドラマ「潜水飛行艇飛魚号」のことらしい。原作は「怪鳥艇/海野十三」らしい。とにかく戦中の話なので資料の確認が困難なのである。

逆さ言葉による逆さ歌である。

つまり・・・「出た出た月が」をパーツごとにひっくり返した暗号文なのである。

子供たちはミステリー(謎)が好きだ。しかし、謎の源は耳に馴染んだ小学校唱歌なのである。

変わらないものを求め、変わるものを求める人の心の機微なんだな。

それは昔も今も変わらない。

いきなり・・・猫殺しと思わせておいて・・・生きてましたである。

怪我をした猫がポストに入っていたのだった。

こんなことばかりだと狼に食われるぞ。

しかし・・・今度は本当に殺されるかもしれないという不安は醸しだす。

想像力あっての恐怖なのである。

今、握った握り飯の具がおかかだったかしゃけだったか・・・忘れてしまう母親の珪子(南果歩)はあまり怖くないのかもしれない。

しかし・・・母親に認知症の気配があると息子の健太(相葉雅紀)は不安に思って然るべしだな。

妹の女子大生・七菜(有村架純)はミュージカル「キャッツ」に登場する「ガス」と子猫に命名する。そして可愛がるのである。母親の血筋だ。

妹もやがて認知症に・・・恐怖を感じる健太だった。

連絡を受けた派出所勤務の警察官・木下巡査(夙川アトム)は倉田一家から事情を聴取する。

荒らされた花壇、自転車のサドル切り裂き、ポストに子猫、怪文書、不審人物目撃・・・すでに単なる悪戯とは言えない状況である。

しかし・・・一家の主である太一(寺尾聰)をはじめ家族たちはどこか他人事で・・・危機意識が薄い。

「何か心当たりはありませんか」

「実は・・・」と漸く健太は「ホームでの出来事から男に追いかけられるまでの顛末」を話すのだった。

「なるほど・・・とにかくパトロールを強化します」

木下巡査は淡々と応じる。しかし・・・木下巡査が犯人の可能性さえあるわけだ。

健太は・・・少し不安を感じる。

一方、出勤した太一は領収書探偵の総務部契約社員・西沢摂子(山口紗弥加)から真瀬営業部長(竹中直人)の新たな不正の証拠を掴む。

飲食店から水増しされた領収書を入手し、配送課の平井課長(戸田昌宏)に接待費として請求させ着服しているという仕掛けである。

太一は懲りずにナカノ電子部品社長(近藤芳正)に報告するが・・・平井は真瀬の指図で・・・従業員の慰労会に流用したという人情噺を仕立てる。不正流用には変わらないが小さな会社ではよくあることと太一の指摘を揉み消す社長。

太一はまたしても・・・社内に波風を起こす悪玉に仕立て上げられる。

それなのに・・・理由もなく平井に謝罪する太一だった。

このままだと・・・不正が明るみに出た時・・・経理担当者として・・・太一が罪に問われるわけである。

社内では口の軽い部下が「いやがらせ事件」を吹聴し・・・噂になるという袋叩き状態の太一だった。

とにかく・・・青葉銀行からの出向者はナカノ電子部品にとって敵視するべき相手なのである。

これは・・・青葉銀行の依頼による社をあげての肩たたきなんじやないか。

つまり・・・摂子もグルの可能性があります。

とにかく・・・太一にもいやがらせを受ける可能性があるというフリである。

不安が募る上に暇な健太は・・・名刺を頼りに明日香(沢尻エリカ)が記者を勤める円タウン出版社を訪ねる。

蟹江編集長(佐藤二朗)のジグソーパズルをひっくり返した健太は・・・専属デザイナーとして採用されるのであった。

健太の職業は・・・デザイナーと言うよりフリーターと言った方がいいんじゃないか。

第一・・・高円寺のタウン誌なんて・・・経営に余裕があるのかよ・・・。

しかし・・・監視カメラ代金十万円を前借りさせてくれる太っ腹な蟹江だった。

「飲みませ~飲みませ~」と歓迎会に誘われた健太は夜の節子であるシルビアちゃんと接近遭遇するのだった。

帰宅した健太はポストから母親と陶芸教室の講師・波戸清治(眞島秀和)との密会写真を発見する。

まだまだ子供の健太には母親の浮気疑惑はたまらない不安材料となるのだった。

ちなみに・・・二人の仲をとりもつような下村民子(堀内敬子)も潜伏中である。

再び花壇を荒らされ、さらには車には十字架を刻印される倉田一家。

そして・・・七菜の親友・保原万里江(足立梨花)も妖しく潜伏中である。

明日香と「青海苔が歯についている」と指摘されるほど接近した健太。

ここが月9モードなんだな。

なんだ・・・相葉ファンの女子小学生に「キャーッ」って言わせたいのか。

湾岸テレビの女子アナを目指す七菜にしつこく迫る辻本正輝(藤井流星)を目撃する健太。

「何だお前は・・・」とお兄ちゃんパワーを発揮することもなく黙認である。

しかし・・・妹に男女の問題があるということにも不安を感じる健太だった。

こうして母も妹も自分も・・・誰かに狙われていると気がつく健太。

まあ・・・本来の主役である父親も狙われているわけだが・・・。

とにかく・・・変化を求めないタイプの健太はなんだか・・・とても不安になるのだった。

監視カメラになんだかよくわからないものが映っているのも不安である。

来週、このレビューがあるのかも・・・不安だ。

2015年度倉田家嫌がらせ事件容疑者ランキング

①位 ニット帽の男

②位 真瀬営業部長

③位 明日香

④位 陶芸教室の講師・波戸清治

⑤位 健太(二重人格)

⑥位 七菜(夢遊病)

⑦位 太一(ストレス)

⑧位 珪子(認知症)

⑨位 木下巡査

⑩位 ガス(ニャンコ星人)

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2015年4月20日 (月)

帰らじと思ひさだめし旅なればひとしほぬるる涙松かな・・・と吉田松陰(優香)

幕府老中暗殺計画の首謀者である吉田松陰は過激な革命家であったと言える。

しかし、結局、吉田松陰を処刑した幕府は倒され、吉田松陰は救国の英雄となる。

この極めて簡単な歴史的事実が・・・多くの庶民にとって不可解なのである。

たとえば・・・かって三里塚で管制塔を占拠した反体制過激派は・・・吉田松陰の申し子のようなものである。

しかし、松陰はある意味で彼らが反対する体制そのものなのである。

・・・靖国神社を否定するということは吉田松陰を否定することだ。

そういう人たちが反体制を唱えると・・・吉田松陰的な存在になってしまう。

つまり・・・自己否定することになるのである。

もちろん・・・そうなってしまうのは彼らの本質にあるのが暴力革命だからである。

それから時が立ち・・・現在では反体制の人々の基本は非暴力である。

あくまで民主的な手続きに従い、少数派としての民意を表明する。

当然のことながら・・・それでは革命は起こらない。

たとえ・・・沖縄県が反政府的多数派を形成しても、それが全国的な多数派になることは考えにくい。

あの頭のおかしな総理大臣が・・・「県外」とか「国外」とか言い出してどうしようもない袋小路に突入した記憶が新しいからである。

結局、どうしても今すぐ沖縄から米軍を追い出したければ・・・一戦交えるしかないのである。

そのための最初の革命家はなんらかの方法で死ななければならない。

しかし、米国大使暗殺計画を発表したくらいではなかなか死刑にしてもらえないのが現代の複雑なところである。

だから・・・最初の一人は特攻するしかないだろう。

しかし・・・果たして・・・それに続くものがいるかどうか。

すでに・・・20世紀の闘争でさえ・・・挫折したのである。

あの日の闘士たちがなんだか残念なことになっていることは周知の事実なのである。

一方で吉田松陰は必ず自分に続くものがあると信じ、自ら死地に飛びこんでいく。

「必死なので・・・もう二度と故郷を見ることはない・・・涙松も霞む旅立ち」

もちろん・・・そういう言葉に動かされるのは・・・時代の熱に浮かされる若者たちだけなのかもしれない。

だが・・・吉田松陰の革命は成功してしまうのだった。

そんなのありかよ・・・と多くの現状に不満を抱く庶民は思うんだな。

で、『花燃ゆ・第16回』(NHK総合20150419PM8~)脚本・宮村優子、演出・渡邊良雄を見た。例によってシナリオに沿ったレビューはikasama4様を推奨します。今回は野山獄の司獄官で松陰の一夜帰宅を独断で認可したために職を罷免され罪人となる福川犀之助の描き下ろしイラスト大公開でお得でございます。ついに来た「あるよの人」のイラスト・・・この日をどんなに待ちわびたことか・・・ジーク・ジオン。今回はなんといっても・・・DT殺しの淫婦のあったかいんだから~プレイ。そして・・・幻術師・富永有隣(本田博太郎)降臨ですな。一同爆笑ポイントでしたが・・・どうせなら大深虎之丞(品川徹)も登場して左右から責めてもよかったとも思いました。まあ・・・獄中ですから・・・どんな悪夢を見てもよろしいのでしょう・・・。とにかく・・・ここまて丁寧に吉田松陰を描くスタッフ・・・これが愛というものなのでしょうかねえ。

Hanam016安政六年(1859年)、フランスはスペインと連合してベトナムへの武力侵攻を開始。ダナン、サイゴンなどを占領する。二月、神奈川港、長崎港、函館港開港。四月、吉田松陰の江戸送致が長州藩に命じられる。六月、神奈川(横浜)と東海道を結ぶ横浜道が開通。横浜港に外国人居留地が設置される。長州藩は幕府と松陰の護送方法ついて協議する。五月、長州藩は杉百合之助に松陰の引き渡しを命ずる。司獄官・福川犀之助の温情により松陰の一時帰宅が叶う。一夜が明け、役人五人、中間十五人、計二十人による松陰の江戸送致が開始される。松陰は腰縄を打たれ駕籠に押し込められ江戸へ向かう。同日、杉百合之助と杉梅太郎はお役御免となり謹慎処分を申しつけられる。およそ一ヶ月の旅程で六月下旬、江戸に到着した松陰は長州藩江戸屋敷から小伝馬町に入牢する。八月、徳川慶喜が隠居謹慎処分。九月、長崎にグラバーが来航。吉田松陰の江戸送致については長井雅楽が積極的に主導したとされる。このことが長井の寿命を縮めることになった。

江戸・彦根藩屋敷の奥の間に咸臨丸による渡米準備のために長崎より帰った服部半蔵こと勝海舟が呼び出されていた。

「参ったか・・・」と大老・井伊直弼が声をかける。

勝海舟は直参であり、公儀隠密であるために大老の配下ではない。

しかし、現在の将軍は幼少であるために大老がその意を受けているという形式になっており、半蔵は召喚に応じぬわけにはいかない立場だった。

「京での働き・・・苦労をかけた」

「勤めでございますれば」

「江戸城お庭番のものどももよく働くものよ」

「・・・」

公儀隠密の頭領は家康以来、服部半蔵だが・・・徳川の歴代の間にいくつかの指揮系統が生じている。古くは大和柳生衆、吉宗の代には紀州お庭番が公儀隠密の支配下にありながら独自の組織を持っている。

忍びのものの力を制御するいくつかの制約が歴代将軍によって構築されていた。

井伊大老の手駒である長野主膳は紀州の忍びである。

お庭番の忍び衆の本家筋にあたるものだった。

井伊大老誕生の背後には紀州忍びの暗躍がある。

将軍を唯一の上忍とする公儀隠密としては異例のことであり・・・半蔵としては苦々しくもある。

半蔵影の軍団、お庭番、柳生衆の間には静かなる縄張り争いさえ発生していたのである。

このことが・・・後に京における公儀隠密の衰退につながるのである。

しかし、それはまだ数年後の話だ。

「長州の吉田という学者のことだ・・・」

「牢での調べは・・・順調に進んでいると聞き及んでおりまする」

「だが・・・京の長野主膳の調べと齟齬が生じている」

「井伊様・・・あのものは・・・水戸への密勅を未然に防げなかったことで・・・いささか功をあせっている節がございます」

「ほう・・・公儀隠密首領は・・・そう考えるか」

「吉田は佐久間象山門下の学者であり、国を憂う志あるもの・・・一ツ橋派とは無縁でございまする」

「ふふふ・・・やけに庇うの・・・吉田は以前にも国禁を犯し密航を企てたというではないか」

「すべてはこの国の行く末を案じてのことでございます」

「しかし・・・そういう不逞の輩を野放しにすることは・・・将軍の威を損じるのではないか」

「寛容な態度で才を生かしてこその・・・威でございましょう・・・」

「なるほどのう・・・では・・・この直弼自らが・・・その心胆を改めるとしよう・・・」

「井伊様が・・・」

「異存はあるまいな・・・」

半蔵は・・・朋輩として・・・松陰の性癖を思った。

これは進退窮ったと半蔵は感じる。

「ございませぬ」

半蔵は唇をかみしめる。

江戸は夏の盛りを迎えようとしていた。

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2015年4月19日 (日)

64じゃなくていいのかしら~?(多部未華子)えむじゃない・・・ちょっとばかなだけ・・・たにまない(大倉忠義)

いろいろな意味で谷間がないのだな。

あるかないかの谷間を好む人も多いぞ。

要するにマザコンかロリコンかって話だよね。

男はその二種類しかいないのかよっ。

後はゲイね。

結局、倒錯してるのか・・・男かどうかも疑問だぞ。

もう・・・人間性を疑われる流れになってるぞ。

悪魔でございます。

木曜日と金曜日に精魂使い果たしたのか・・・。

春ドラマのレギュラー・レビューは今のところ・・・。

(月)「ストーカーさん、いらっしゃい

(火)「私の好きな本だけをもっと世界におしつけたい

(水)「精神分析家と芸者その心の闇

(木)「アイムホーム

(金)「アルジャーノンに花束を

(土)「どS刑事」

(日)「花燃ゆ

・・・週の前半、タイトルおかしいぞ・・・。

っていうか・・・大河以外・・・オリジナルドラマがないぞ・・・。

本当は「心ポッキー」には頑張ってもらいたかったんだが・・・ちょっとグダグタなんだよな。

ちんちくりんな男、心がからっぽな男、はみだした女、痛いおばさんになった女という四人が・・・あまりにもそのまんまで・・・ドラマというより深夜のドキュメンタリーになってる感じが・・・おいっ。

ちょっとおしゃれがすぎちゃったかなあ・・・。

一方、「ヤメゴク」は・・・反社会的組織員の社会復帰の話なので・・・茶化してどうする・・・というグロテスクな色眼鏡が邪魔をするんだな。

「救いようのない話を面白おかしく」はいつもの路線じゃないか。

ケイゾクの二人。トリックの二人。スペックの二人はある意味、大スターだからな。

「ヤメゴク」の二人だって大スターじゃないか。

でも・・・刑事より・・・チンピラとその愛人の方が似合うよね。おいおいっ。

そもそも初回は「2時間スペシャル」の枠がとれなかったので前後篇にわけましたって感じじゃないか。

妄想はそこまでだ。

とにかく・・・土曜日はあるかなしかの谷間でお届けします。

で、『ドS刑事・第2回』(日本テレビ20150418PM9~)原作・七尾与史、脚本・川崎いづみ、演出・中島悟を見た。この枠は特撮ドタバタドラマというジャンルを構築しつつあるわけだが・・・今回は特撮部分は控えめである。黒井マヤ巡査部長(多部未華子)の華麗なる鞭捌きとヒロインの代官山脩介巡査(大倉忠義)の虐待アクションに絞られている。もう少しあってもいいよね。飛翔するトロフィーの先端が代官様のお尻に刺さるか刺さらないかのところでマヤが嫉妬のために鞭でからめとるくらいの描写が好きだ。お前の好みじゃダメじゃないか。

「書店ガール」と「どS刑事」は共に格差社会における特権階級のお嬢様が主役である。「お嬢様」が主役というのは王道だが・・・今回の二人は庶民から見てリアルに嫌な感じのキャラで仕上げてきているところがチャレンジなんだな。格差社会である以上、庶民はこれに対応しなければならないという・・・おぞましさがファンタジー感を醸しだす。ヒリヒリ感の差は主演の演技者歴の差に過ぎません。

いきなり・・・バイキング小峠が職質を受ける。

マヤはタレコミですでに小峠(本人なのかよ)がヤクの売人だと知っているので、代官さまを消しかけたのである。

案の定、小峠は鬘の下に覚醒剤を隠し持っていたのだった。

「なんてコントだ」と叫ぶ小峠(だから本人なのか・・・小峠はヤクの売人なのか)・・・。

しかし・・・付近で「火炎壜投げ込み放火アベック殺人事件」が発生する。

被害者はヤクザとその愛人・・・らしい。

しかも・・・二人の被害者からは覚醒剤が検出され・・・入手先は小峠(だから本人か)・・・。

暴力団員(小峠英二)と被害者は同じ組織の構成員だったのだ。

被害者の荒木(中村憲刀)と由衣(西田麻衣)が殺害された動機を求めて、川崎青空警察署刑事一課強行犯捜査係は捜査を開始する。

課長の白金不二子警視(吉田羊)はマヤを支配できない腹いせに中華屋ケンちゃん(菅裕輔)の「大蒜三倍レバニラ炒め」に冷たい視線を送るのだった。

殺された荒木の所属する組織の組長(徳井優)に事情聴取する中根(中村靖日)浜田(八乙女光)ペア。

「ヤメゴクにもそのうち呼ばれると思いますが・・・ヤクザなのか刑事なのか」と目の下の隈を強調する組長。

浜田は組長の盆栽破損の折に土下座していたので濡れ衣を着て賠償責任を負う。

定年間際の近藤刑事(伊武雅刀)の執念の聞き込みに辟易する有栖川係長(勝村政信)だった。

その結果、首筋に鯉のタトゥーをした構成員・江沢(光宣)が捜査線上に浮上する。

早速、課長は取調を開始するのだった。

しかし・・・マヤはタレコミにより・・・犯人が別人であることを知っていた。

江沢は荒木に片思い中で・・・手料理を食べてもらうために料理教室に通っていた。

犯行時間は授業中だったのである。

セリフ回しがあまりにも下手すぎてよくわからなかったが京浜医科大学法医学・ケンケン准教授(ミッツ・マングローブ)から殺された由衣(西田麻衣)が歯列矯正中だったことを知るマヤ代官さまペア。

歯科医における治療ごっこ、婚活パーティーのボーリング大会、瞬間接着剤で両手にボーリングボールプレイを経て・・・。

結婚詐欺師・福本(ダンカン)とその配下女子たちにたどり着くアベック刑事だった。

「あなたは・・・キスの時に相手の鼻をなめる性癖があった・・・そのためにあなたは交際相手に嫌われた・・・その恨みがあなたを犯行に駆り立てた」

「そんなの・・・みんなするだろう」

しかし・・・全員の同意は得られなかった。

「くさいのよ・・・そんなことされたら・・・後でたまらなくくさくなるのよ」

「あああああああ」

代官さまの「ファイト」で詐欺師グループは全員逮捕されるのだった。

「ええと・・・僕たちは放火殺人犯を追ってたんですよね」

「放火殺人も・・・結婚詐欺も・・・一般市民を泣かせることに変わりはないわ」

「ヤメゴクの大島さんは戸田さんの演技そのものですよね」

「そんなこと知ったこっちゃないわ」

「64はおしゃれな二時間サスペンス二週連続拡大版ですよね」

「そういうのが好きな人多いのよ」

そして・・・夜の闇の中で・・・新たな事件が発生する。

このドラマがどこへ向かって行こうとしているのかが最大の謎である。

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2015年4月18日 (土)

たいとうじゃない・・・ばかだから・・・ともだちいない(山下智久)

知的障害とは何か・・・実は答えはない。

そもそも・・・知性というものが何かを知っている人間はまだこの世にはいないのだ。

「アルジャーノンに花束を」が傑作なのは・・・まさにそのことを人類に表明しているからだ。

誰かが「これが知性ってやつなんだ」と決めつけても「そんなことはない」と誰かが否定すればそれまでである。

それなのに・・・あたかも「知的障害」というものがあると多くの人々が考えている。

これこそが・・・人類の愚かさの証明と言える。

しかし・・・この世には不都合というものが存在する。

多くの人間が容易に実行できる作業を特定の人間が不得意だったりするのである。

実は作業そのものが実行に値しない不合理なものなのかもしれないが・・・できる人々はこう考える。

できない人は何かが劣っていると。

その都合の悪さを人は知的障害と名付けたのだ。

それをそう呼んだ方が都合がいいから。

ただそれだけのことである。

で、『アルジャーノンに花束を・第2回』(TBSテレビ20150417PM10~)原作・ダニエル・キイス「Flowers for Algernon」、脚本・池田奈津子(脚本監修・野島伸司)、演出・吉田健を見た。学校教育においては効率よく教師が生徒に情報を伝達するために知能指数の標準化が求められる。あまりにも伝達の効率が悪い個人がいれば・・・授業の妨げになるからである。そのために知能指数が水準に及ばないものに「知的障害」があることを認定するのである。一方で「知的障害」を「不健康」と考えるのが医学的立場である。精神医学では「知的障害」を「精神遅滞」と呼称していたが「知恵遅れ」を差別と感じる一部意見により「知能障害」に名称変更される可能性がある。だが「遅滞」という言葉は「発達」という概念と結びつく。「発達障害」というニュアンスが生じるわけである。つまり、「知的障害」には「知的能力の発達障害」という意味が含まれる。「知的障害」と「発達障害」の境界については様々な意見があるが・・・事故による後遺症や加齢による認知症などを除外して知能の発達が遅滞する状態を言うにあたり・・・知的障害と発達障害にはさほどの差異はない。

場合によっては・・・誰かが「知的障害」というより「発達障害」という方が好ましいと感じる程度のことなのである。

知的障害を知覚できない知的障害者の場合・・・それが・・・保護者の立場から生じる感性であることは間違いないだろう。

つまり・・・親が嫌だと思うのだ。

「ドリームフラワーサービス」の従業員である白鳥咲人(山下智久)は経営者である竹部順一郎(萩原聖人)から給料を手渡される。

竹部は結婚式の通俗的な祝辞をアレンジして「堪忍袋、お袋、給料袋」などとスピーチするが・・・素行に問題のある従業員には耳に痛い内容である。

堪忍袋の容量不足で問題を起こし刑期を務めたものも多いのだ。

母親を守るために父親を刺した檜山康介(工藤阿須加)は前科者として結局、母親にも捨てられた。

知的障害者であるために中学生の時に母親に捨てられた白鳥を憐れに感じることで自分が救われた気分になる檜山だった。

そういう檜山の心理を見てとりつつ・・・共感を感じる柳川隆一(窪田正孝)・・・。

彼も両親に問題を抱えていた。

母親を捨て父親が出奔して以来・・・母親は心を病んでいる。

給料日に息子の職場にやってきた母親の京子(田中美奈子)は金を無心する。

「あれが美魔女ってやつだ」

「びまじょ」

同僚の母親を盗み見て康介は咲人に新しい言葉を教えた。

「お前のところにお父さんから連絡がなかったかしら」

現実から目を背けるもの特有の狂的な眼差しで京子は息子に問いかける。

「そんなものあるわけないだろう」

「でも・・・もうすぐ結婚記念日だし・・・ほら・・・去年は時計をプレゼントしてくれたじゃないか」

「・・・」

隆一は口を噤んだ。

美しい狂った母親は帰って行った。

脳生理科学研究センターでは復帰したアルジャーノンが迷路実験で記録を更新している。

研究チームのリーダー蜂須賀大吾(石丸幹二)は次の段階に進みたかった。

「臨床試験の準備はどうなっているかね」

「被験者がなかなか見つかりません」

「何故だ・・・知的障害を克服したいと考える人間は多いはずだ」

「しかし・・・実験にはリスクが伴います・・・脳外科的な施術には抵抗を感じる人がいますから」

「アルジャーノン効果は立証されているじゃないか」

「知的障害者関連の施設では・・・解答を保留する傾向があります」

「なにしろ・・・コンプライアンス(法令順守)が叫ばれていますからね」

「人体実験を禁止する法律などないぞ」

「先生・・・」

「どうでしょう」と冷笑的な態度の小久保(菊池風磨)が提案する。

「犯罪者の更生施設を視野に入れては・・・」

「なんだと・・・」

「ほら・・・時計仕掛けのオレンジのルドビコ療法ってやつですよ」

「犯罪者の性格矯正を理由に被験者を募るのか」と興味を示す杉野史郎(河相我聞)・・・。

「ふざけるな・・・アルジャーノン効果の最初の実証実験に犯罪者など使えるか」

激昂する蜂須賀だった。

「そもそも・・・アルジャーノン効果は洗脳ではない・・・脳機能の発育不全を改善して・・・潜在している知能を活性化するものだ」

「・・・」

「アルジャーノン効果の恩恵に浴する第一号被験者は・・・いわば・・・私の息子のようなものなのだ」

沈黙する一同。

蜂須賀が退出した後で・・・小久保は毒づく。

「何が・・・息子だよ・・・蜂須賀部長・・・少し、おかしいんじゃないか」

「何を言うの・・・それだけ崇高なものを先生は目指しているのよ」と望月遥香(栗山千明)は反論した。

「それだけとは言えない・・・」と事情を説明する西野。

「実は蜂須賀先生は・・・御子息を亡くしている。音大でヴァイオリンを専攻していた学生だった・・・彼は駅で無頼漢に絡まれてホームに突き落とされて轢死したのだ」

「え」

言葉を失う遥香だった。

脳生理科学研究センターは興帝メディカル産業の支配下にある。

蜂須賀は上から結果を求められていた。

「理屈はどうでもいい・・・金になるか・・・ならないか・・・ただそれだけのことだ」

「・・・」

「そろそろ・・・結果を出してもらいたい」

興帝メディカル産業の社長・河口玲二(中原丈雄)は蜂須賀を見下ろす。

東京麗徳女子大学に通う河口梨央(谷村美月)は小出舞(大政絢)に唆されていた。

「電話してみなさいよ・・・」

「でも・・・その気になったら連絡してほしいと言っておいたし・・・」

「だから・・・その気にさせるための電話よ」

「もう一日待ってみる」

「じれったいわね」

隆一は康介に車の交換を申し入れる。

「なんで」

「ナビが調子悪いんだ」

「ナビなしじゃ俺が困るだろう・・・」

「大丈夫・・・咲人がいるから」

「どういうこっちゃ」

「咲人は・・・人間ナビゲーションなんだよ」

「うそ」

事実だった・・・咲人は都内の地理に精通していた。

住所を言えば道順を示すことができるのだ。

「天才じゃん」

「まあ・・・右と左・・・まっすぐしか言わないけどな」

「ブーブー・・・さかなやのかど・・・みぎまがります」

「すげえな・・・風景で覚えてんのか・・・なんか・・・そういう映画見たことあるぞ」

「ブーブー・・・パンやめええええひだり」

「お前が・・・車の免許とれないなんて・・・なんか間違ってるよな」

「ブーブー・・・とうちゃこ」

「車を買う金もためてるのになあ・・・」

康介は・・・咲人をさらに憐れむのだった。

翌朝・・・三人はそろって休養日だった。

「なにすんの」

「予定なんかあるかよ」

康介の携帯に着信がある。

(もしもし・・・お久しぶりです)

「あんた・・・誰」

(え・・・忘れたんですか)

「だから・・・誰かって聞いてる」

(もう・・・いいです)

「切れちゃった」

再び・・・着信がある。

(忘れたってどういうことよ)

「あんた・・・さっきの子と違うな」

(いくら酔いつぶれたからって・・・覚えてないってことはないでしょう)

「酔いつぶれたって・・・何の話だよ」

鈍い康介とは違い隆一はそれだけで事情を察した。

「もしもし・・・お電話かわりました・・・咲人です」

(え・・・ああ・・・なんか違う人だったみたい・・・ほら・・・彼がでたわよ)

(あ・・・そうだったの)

(ほら・・・あんた話しなさいよ)

(あの・・・梨央です)

「ああ・・・梨央ちゃん・・・ごめんね・・・連絡しようと思ってたんだ」

(・・・)

「よかったら・・・遊園地に行かない」

(いいですけど・・・いつですか)

「今日・・・これから・・・」

(え)

「僕・・・友達連れて行くんで・・・よかったら」

(どうしよう・・・)

(なにがよ)

青春である。

ヨハン・ゼバスティアン・バッハ作曲「アリアとその変奏曲からなる2段の手鍵盤のチェンバロのための練習曲」が流れる蜂須賀の個室。

遥香はお悔やみを述べに現れた。

「音楽家のご子息の話を聞きました・・・この曲は思い出の曲なのでしょうか」

「この曲はグレン・グールドがピアノで弾いたものだが・・・弦楽器での合奏も可能だ。息子はそのヴァイオリンのパートを受け持ち練習に励んでいたものだ。ヴァイオリンケースをめぐるささいなトラブルで人命が損なわれるなんて愚かなことだと思わないかね」

「・・・」

「知能の高低と善悪は無関係だと言うものもいるが・・・この曲はバッハの弟子のゴルトベルクがカイザーリンク伯爵のために演奏し・・・その不眠症の悩みを解消したと言われることから俗にゴルトベルク変奏曲とも呼ばれるんだ。その時、ゴルトベルクは十四歳だったという。素晴らしい知的発達の成果がここにある。知能の高さは要するに情報処理能力の優秀さだ。犯罪のリスクを計算できる知能があれば犯罪が不合理であると察することができる。つまり・・・犯罪を趣味とする人間以外は知能が低いゆえに犯罪を起こすのだ」

「統計学的にはそうなります」

「知能の劣るものは同時に社会的弱者でもある。知能指数100以下のものは基本的に搾取される対象だ。人類全体を知能指数150以上に引き上げれば新世界は必ずやってくる」

「先生の崇高な理想に共感いたします」

「しかし・・・愚かな社会は飛躍のチャンスを見逃そうとしているのだ」

「私には・・・臨床試験の被験体候補者について考えがあります」

「ほう・・・」

合理性を神と崇める師と弟子は見つめ合う。

それは神と天使もしくは悪魔と魔女のようだった。

咲人と隆一そして康介は八景島シーパラダイスにやってきた。

「結局、お前もくるのか」

「お前だけだと・・・咲人に何をするかわからんからな」

「なんだよ・・・お前は咲人の兄貴なのか」

「お前こそ」

「可愛い子が来るとは限らないぞ」

「だから・・・俺はそういうことを」

「まさか・・・お前・・・DTなのか」

「ち・・・ちがう」

「チューもまだだったりしてな」

「チューしました」

「え」

「あのこと・・・チューしました」

咲人は近付いてくる梨央を指差した。

白い服の巨乳お嬢様・梨央と赤い服のスレンダー美女・舞を視認した隆一と康介は一瞬で喉が渇くのだった。

咲人は知能に欠陥があることをさらけ出し言い続ける。

「チューしました」

「え」

困惑する二人。

舞は眉をひそめる。

「おいおい・・・舞いあがりすぎだよ・・・咲ちゃん」

隆一は必死にごまかすのだった。

康介は舞の黒いストッキングに目を奪われていた。

束の間の幸福な時間。

咲人は梨央にまかせ・・・隆一と康介は舞の争奪戦を開始する。

しかし・・・舞は梨央のことが気にかかるのだった。

シロイルカのショーに目を奪われる梨央。

隆一と康介に囲まれる舞。

一瞬の空白の時。

咲人は空飛ぶイルカ・・・青い風船に目を奪われる。

ふらふらと風船を追いかける咲人。

四人が気がついた時・・・咲人の姿はない。

「迷子のお知らせをいたします・・・」

保護されていた咲人は四人を見ると安堵で泣きだすのだった。

「う、うえーん」

舞は決断した。

「帰ろう・・・」

「え」

「あ」

「おい・・・ちょっと待てよ」

しかし、舞は梨央の手を取って去るのだった。

「ちぇっ」

「あいつら・・・ひどいじゃないか」と義憤に燃える康介。

「バレちゃったら・・・しょうがないさ」と大人ぶる隆一。

「そんなこと」

「だったら・・・お前は咲ちゃんみたいな女の子と付き合えるか」

「・・・・・・・・・・つ、付き合える」

「なんだよ・・・その微妙な間は」

梨央と舞はパーラーのテーブルを囲んだ。

「おかしいと思ったけど・・・」

「・・・」

「私はね・・・梨央みたいな超お嬢様は・・・結局親の決めた結婚をするだろうと思ってる」

「まあ・・・」

「だから・・・一回くらい・・・好きな相手と恋をしてもいいかなって・・・友達として思ってた」

「そんな風に考えてたんだ」

「だけど・・・アレはないよね」

「アレって・・・」

「だって・・・あの人・・・知的障害者でしょう・・・」

「でも・・・可愛かったよ」

「え」

「私・・・好きになっちゃった」

「それ・・・普通じゃないよ」

「普通って何・・・」

「う・・・それを言うか」

「ドリームフラワーサービス」に遥香がやってきた。

応対する竹部社長。

「咲人の・・・知能を向上させる・・・ですって?」

「私たちの研究にご協力いただければ・・・咲人さんの知的障害はかなり改善されると考えます」

「ははは・・・それじゃ・・・咲人の願いが叶って・・・咲人はお利口さんになるわけか」

「咲人さんは・・・お利口さんになりたいのですか」

「私は・・・咲人は今のままで・・・幸せだと思いますがね」

「・・・」

「幸せっていうのは不幸せを知らないことでしょう・・・頭が良くなったら・・・そういうことを知ってしまう・・・それに・・・あいつを痛い目にあわせたくないんです・・・成功すりゃまだしも失敗してもっとバカになるかもしれないでしょう・・・」

「そういうリスクはほとんどありません」

「ほら・・・ゼロじゃないんだ」

「・・・」

「私はあいつの親から・・・あいつを預かっているんです・・・あいつは今のままでいい。私はありのままの咲人が好きなんですよ」

「では・・・咲人さんの親御さんをご紹介ください」

「・・・」

「親御さんの意向を確かめたいのです」

「馬鹿な子ほど可愛いって言葉知ってるかい」

「そうではない親がいることは知っています」

遥香は咲人の母親・窓花(草刈民代)の住居を訪問した。

「何ですって・・・」

「ですから・・・咲人さんの知的障害を緩和する・・・」

「あの子の馬鹿が治るわけないでしょう」

「・・・」

「私がどれほど・・・あの子の障害にとりくんだか・・・あなた・・・おわかり?」

「・・・」

「あの子の馬鹿を治そうと・・・必死に頑張った・・・でも・・・無理だったのよ」

「・・・」

「それから・・・私と私の娘があの子のためにどれほど悩み苦しんだか・・・知らないでしょう」

「・・・」

「あの子はもう・・・私の子供じゃないの・・・私はあの子を捨てたのよ」

「あなたは・・・もう・・・咲人さんの母親ではないとおっしゃるのですか」

「はい」

遥香は唇をかみしめた。

一日の仕事を終え・・・若者たちは余暇を楽しむ。

手慰みはインディアンポーカーである。

手札は一枚。頭上にかざし・・・見えない自分の札が相手に勝っているかどうかを予測するギャンブルである。

ルールとプレイヤー間の駆け引きがあるために・・・咲人には参加できない競技だった。

知的機能に制約があり、適応行動に制約があるのだ。

遊戯に興ずる同僚たちの側で・・・咲人は遥香から贈られたイヤリングを光に翳す。

「きらきら・・・きれい」

イヤリングの輝きが咲人を魅了する。

もっと刺激を得ようと咲人は・・・照明にイヤリングを近づけ・・・発見してはいけないものを見つけてしまう。

電灯の傘に取り付けられた鏡。

それは隆一が自分の手札を盗み見るために仕掛けたイカサマの道具だった。

自分の手札を知っていれば・・・勝負に負けることはないのである。

咲人は鏡の存在を暴露してしまう。

「おい・・・咲人・・・やめろ・・・」と慌てる隆一。

「なんじゃこりゃあ・・・」と従業員の親分格である鹿内大(勝矢)が血相を変える。

「八百長じゃねえか」と神田勇樹(前田公輝)・・・。

「お前・・・俺たちが誰かってことわかってんのか」と波多光佑(斎藤嘉樹)・・・。

「ムショ帰りの・・・こわいお兄さんたちです」

「わかってんなら・・・大人しく・・・ヤキをいれさせな」

たちまち・・・私的制裁を受ける隆一だった。

隆一への激しい暴行に泣きだす咲人。

「やめて・・・やめてよ・・・やめて・・・うえーん」

なぜ・・・そうなったのかわからない。

どうやって・・・とめていいかわからない。

だけど・・・悲しい咲人だった。

「金を出しな」

「はい」

「今までの分・・・全部だよ」

「ありません」

「ごめんですんだら警察いらねえんだよ」

「・・・」

「どこかで都合つけてきな」

よろめきながら・・・外出する隆一。

後を追いかける咲人。

残業していた康介が二人と遭遇する。

「どうした・・・」

「ちょっと・・・ヘマしてよ・・・これから・・・金を少しとりかえしてくる」

「母親のところへか・・・」

「・・・」

康介は二人を不安げに見守った。

母親に捨てられた自分と母親を捨てられない隆一を心の中で天秤にかけながら・・・。

(社長・・・人生で大切なのは給料袋と堪忍袋と・・・お袋だって・・・マジで俺たちにそう言うのか)

しかし・・・バカだから母親に捨てられた咲人のことを思うと気持ちが安らぐ康介だった。

「びまじょ・・・」

「母さん・・・少し、金を返してくれ」

「何言ってるの・・・」

「ヨツバローンって・・・母さん、また借金してるのか」

「しょうがないじゃない・・・いろいろ・・お金がかかるのよ・・・お父さんが帰って来た時、きれいにしてなくちゃ」

「帰ってくるわけないだろ・・・若い女作って出て行ったんだ・・・いい加減、目を覚ましてくれよ」

「ひどいこといわないで・・・あの人は帰って来るわ・・・去年だって・・・サプライズで時計を・・・」

「俺が買ったんだよ・・・俺が買ってやったんだ」

「出て行って・・・」

隆一は興奮状態から醒め・・・身体中が痛みだす。

「あれれ・・・これ・・・骨折れてるかな」

「だいじょうぶ・・・いたい」

「咲ちゃん・・・もう帰っていいよ」

「かえらない・・・いっしょにいます」

隆一の電話が鳴る。

「はい・・・」

(咲人か・・・どうした)

「やながわくん・・・かえらない」

(金・・・もどらなかったのか)

「やながわくん・・・ひとり・・・だめ」

(いいから・・・お前はかえってこい)

「ともだちだから・・・いっしょにいます」

隆一は電話を切った。

目がまわる。

「友達なんかじゃねえよ」

「はい」

「友達なら・・・金くれよ」

「はい」

咲人はサイフに入っていた二千円を差し出す。

「これだけか」

「かえったら・・・いちまん・・・にまん・・・もっと・・・あります」

「きゃはは・・・俺も落ちぶれたもんだ・・・バカに恵んでもらうとはな」

「バカだめ」

「いいから・・・帰れよ」

「かえりません・・・ともだち・・・」

「友達じゃねえって・・・言ってるだろう・・・いいか・・・友達ってのは対等なんだよ」

「たいとー」

「いてて」

立ち上がろうとした隆一は失神する。

「たいへん・・・やながわくん・・・おきて」

「・・・」

蜂須賀はアルジャーノンに語りかける。

「凄いぞ・・・迷路の構造を完璧に覚えているだけでなく・・・判断力が飛躍的に向上している・・・まるで私の言葉を理解しているみたいじゃないか」

アルジャーノンは考えた。

(スルト・・・コノオトコハ・・・あるじゃーのんガ・・・コトバヲリカイシテイルコトヲリカイシテイナイノカ・・・ナンテ・・・オロカナ・・・)

アルジャーノンは愚かな巨人を見つめた。

隆一を背負った咲人は助けを求めていた。

あの日のルートがよみがえる。

アルジャーノンのお母さんの家。

アルジャーノンのお母さんに助けてもらおう。

キラキラしたものをくれた・・・あの人に。

咲人は遥香の部屋にたどり着いた。

「たすけて・・・たすけて」

「え」

遥香は救急車を呼んで隆一を病院に運ぶ。

隆一は重傷だった。

咲人は待合室のイスに座る。

母親に連れられた女の子が大声で泣いている。

女の子の泣き声が霧の彼方から・・・咲人に記憶を喚起させる。

「うそつき・・・お父さんのうそつき・・・」

「だから・・・犬は買ってあげるって言っただろう・・・お兄ちゃんと二人で」

「いやだ・・・私だけの犬がいい・・・百点とったのは私だよ・・・お兄ちゃんはバカだからムリでしょ・・・」

「なんてことを言うんだ」

「この子は悪くないじゃないの」

「悪いにきまっている」

「悪いのはバカな咲人よ」

「きみは・・・それでも・・・母親か」

「うえーん」

咲人は胸が苦しくなる。

「とりあえず・・・大丈夫みたい・・・入院しなくちゃだけどね」

遥香がやってくる。

「たいとーって何ですか」

「たいとー・・・対等な関係の対等?」

「・・・」

「それなら・・・同じくらい・・・そういう意味よ・・・」

「同じ・・・同じじゃない」

「そう・・・対等・・・対等じゃない」

そこへ・・・竹部と康介が駆けつける。

「お世話になりました」

「今、一応処置が終わったところです・・・びっくりしたけど・・・とにかくよかった・・・彼がいなかったら・・・大変なことになていたかも」

「咲人は優しい・・・友達思いの奴なんです」

「ともだち・・・じゃない」

「え」

「ともだちじゃ・・・ありません・・・やながわくん・・・ぼく・・・たいとーじゃありません・・・」

「・・・」

「ともだちじゃありません」

「そんなことないぞ・・・咲人」

「やながくん・・・かなしいです・・・ぼく・・・いいこと・・・できない・・・ばか・・・だから・・・ばかはきらい・・・たいとーじゃない・・・ともだち・・・いない・・・ともだち・・・ひとりも・・・いません」

「・・・」

「ばかだから・・・ばかきらい・・・ともだち・・・いない・・・たいとーじゃない・・・うえ・・・ともだち・・・うえ・・・ばか・・・・うえうえ・・・・ばか・・・うえん・・・ばかだから・・・」

「でも・・・あなたは優しいじゃない」

「うえ・・・・うえーん」

遥香は泣いた。竹部も泣いた。康介も泣いた。隆一は心も身体も痛かった。

「ねえ・・・アルジャーノンに会いにこない?」

「あるじやのん?」

「そうよ・・・アルジャーノン」

咲人は微笑んだ。

遥香は竹部を見る。

竹部はうなだれた。

遥香に連れられて咲人は研究所にやってきた。

ケージの中のアルジャーノンを見つけてはしゃぐ咲人。

その様子を観察する横須賀。

私は愛とは花のように咲くものだと考える

だから・・・君は愛の花を咲かせる種のようなもの

傷つくことをおそれていては

愛のつぼみにさえなれない

夢の中にいたら

いつまでも愛のチャンスは訪れない

「君はお利口さんになりたいかね」

「おりこうさん・・・なりたいです」

「そうか・・・それなら・・・君に魔法をかけてあげよう・・・」

「まほー」

「君はお利口になれるよ・・・世界中の誰よりも・・・」

蜂須賀は微笑んだ。

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2015年4月17日 (金)

アイムホーム(木村拓哉)ただいまって言いたかった人(上戸彩)

帰る家があることは素晴らしいことだ。

遠い山に日が落ちて、チャイムが響き渡り、夕闇の街で家路につく人々・・・。

それが幸せというものなのである。

この世にはそれ以上の幸せはないのだ。

原作者は問いかける。

私の帰る家はどこにあるのかと・・・。

二つの祖国を持つものは不安な気持ちに揺れるだろう。

帰るべき我が家への道筋は迷路になっている。

自分の家族はどちらの故郷にいるのか。

ゆえに・・・この物語はどこにもいない本当の自分を捜す旅路の話なのだ。

で、『アイムホーム・第1回』(テレビ朝日20150416PM9~)原作・石坂啓、脚本・林宏司、演出・七髙剛を見た。原作にはいくつかの先行系があるが・・・最初に妄想できるのは短編小説「鍵/筒井康隆」(1978年)である。主人公は転居を繰り返してきた男で昔棲んでいた部屋の鍵を発見して過去へ遡上し始める。ノスタルジックに彩られた幻想譚である。次にコミック「火の鳥・復活篇/手塚治虫」(1970年)が妄想される。一度死んだ主人公は生物が無機質なものに感じられロボットに愛を感じるようになるのだった。この二つの作品を前提に「アイムホーム」(1999年)は結晶したものと妄想できるわけである。

そして・・・それは明らかに美しい宝石となっている。

キッドは原作者のデラシネ的な反戦思想にはまったく共鳴しないが、この作品にはいつも胸を打たれるのだった。

ドラマ化によって原作は書店を捜せばあると思うが・・・簡単に知りたい人には天使テンメイ様の記事を推奨いたします。

僕は「ただいま」って言いたかったんだ。

だから急いでいたんだ。

大手証券会社の「葵インペリアル」第一営業部のエースだった家路久は仕事を終えて家路を急いでいた。

工場を通過した久はガスの噴出に足を止める。

重大な事故の予感。

誰かに報告すべきか躊躇した一瞬。

爆発事故が発生し・・・直撃を受けた久は熱傷によって心肺停止する。

生と死の境界線を彷徨った後で蘇生した久の脳には後遺症が残された。

事故から過去、五年間の記憶が曖昧なものとなってしまったのだ。

主治医となった脳外科医の筑波良明(及川光博)は久に告げる。

「心肺停止によって心身ともにダメージを受けています。なにしろ・・・三ヶ月も意識を失っていたのですから・・・様々な高次脳機能障害が発症することが予想されます」

「たとえば・・・」

「仕事の内容が思い出せなかったり・・・親しい人間が誰だか判らなかったり・・・幽霊や怪物を見たり・・・まあ・・・色々ですよ・・・幽霊とか見えませんか」

「今のところは・・・」

「そりゃ・・・残念」

さらに三ヶ月の間、身体機能のリハリビテーションに取り組んだ久は職場に復帰することが可能なほど回復したのであった。

営業部のエースの復帰に喜んだ営業統括担当の執行役員・勅使河原洋介(渡辺いっけい)だったが・・・久が仕事内容を忘却していることを知ると・・・とりあえず第十三営業部への配置転換を命じるのだった。

「まさか・・・家路さんが・・・」

営業部の後輩で家路の休養中にエースとして頭角を現した黒木(新井浩文)は久に疑いの眼差しを向ける。

以前の久は油断のならない人物であったらしい。

かっては久の部下で今は黒木の部下となった岩下(野間口徹)や戸倉(矢野聖人)も同意する。

勅使河原に至っては・・・第十三営業部の派遣社員・小鳥遊(たかなし)優愛(吉本実憂)に久の監視を命じる。

「何かを企んでいるかもしれない」

久は何か恐ろしい男であったらしい。

しかし・・・今や簡単な仕事さえ指示を仰がなければ処理できず・・・第十三営業部の轟課長(光石研)に舌打ちされる久なのであった。

社員食堂で昼食を取る久は小鳥遊や小机部長(西田敏行)と同席する。

「気にしないでいいですよ」と小鳥遊。

「・・・」

「ここはどうせジジ捨て山だからね」と小机部長。

「え」

「私なんか・・・社長レースに敗れてここだから」

「だから・・・皆さん、社員食堂に来ないんです・・・出世している同期に会いたくないから」

「君も・・・」

「私は派遣社員なので関係ありません」

とにかく・・・第一営業部から第十三営業部へと転落した久なのである。

しかし・・・と久は思う。

僕には帰る家があると・・・。

仕事を終えた久は家路につく。

久が帰宅すると雑誌のライターをしている妻の香(水野美紀)と中学生の娘・すばる(山口まゆ)は留守だった。

干したままの洗濯物を取り込み・・・アイロンをかけ始める久。

久は家事が得意だった。

そこへ・・・娘のすばるが帰宅する。

「なにしてるの」

厳しい声で久を咎めるすばる。

「あれ・・・ブラジャーにアイロンかけちゃいけないんだっけ・・・ごめん・・・父さん、うっかりしてた・・・メモしなくちゃな」

記憶の曖昧な久はメモによる補完を行っていた。

「なに言ってるの・・・」

そこへ・・・妻の香も帰宅する。

「どうして・・・家にあなたがいるの・・・」

「え」

「事故でおかしくなったという話は聞いていたけど・・・忘れたの・・・私たち離婚して・・・もう五年になるのよ」

「あ・・・」

「どうやって・・・家に入ったのよ」

久はメモをたどり・・・記憶から喪失されている事実を見出す。

「そうか・・・僕たちは離婚していたのか」

「・・・」

「ごめん・・・鍵を持っていたから・・・つい・・・これ・・・返します」

久は鍵束から野沢家の鍵を抜く。

かって家路家だったこの家は・・・今は野沢香・すばる母娘の住居だったのだ。

香がもはや妻ではないことに驚き・・・混乱しながら・・・茫然とする二人を残し・・・久は退去した。

五年前に離婚した久は新しい家庭を築いていたのだった。

しかし・・・久は新しい家族との思い出を何一つ思い出せないのだった。

それどころか・・・野沢家からさほど離れていない新しい家路家に存在する現在の妻・恵(上戸彩)と四歳になる息子の良雄(高橋來)には異常なまでの違和感を持つ久なのである。

久は鍵束を見た。

十本あった鍵は九本になっている。

何故・・・こんなに鍵を持っているのか・・・久は当惑する。

そのうち・・・一本は家の鍵だが・・・残りの八本の鍵についての記憶は欠落しているのだった。

久は帰宅する・・・家で待っていたのは・・・仮面をつけているとしか思えない妻と息子だった。

笑っているのか・・・怒っているのか・・・表情が何も読みとれないのだ。

原作では・・・妻と子は常に「仮面」をつけたキャラクターという久視点の存在だったが・・・ドラマでは・・・久の主観と・・・現実的客観の映像が交錯する演出になっている。

原作では見えない恵と良雄の表情を見るのは新鮮で・・・なんだか得した気分になるのだった。

表現方法としては選択が難しいところだが・・・ドラマ版はこれでよかったと考える。

どちらにしろ・・・人間の顔が仮面をかぶったように見えるという病状はかなり超現実的な設定でお茶の間には想像が難しいかもしれないからな。

二つの視点を見せることで状況はわかりやすくなっているはずだ。

とにかく・・・原作では想像するしかなかった久の妻は上戸彩似の美しい人だったのである。

物語は久の視点で語られて行くのでたとえば・・・医師の説明を聞く恵の後ろ姿などの説明的描写などはかなり控えめである。仮面の妻と子供は久にとってもミステリアスな存在なのでリアルな描写はかなり抑制されているのである。つまり・・・いかにも久が一人で闘病しているような描写でもそこには妻が存在している可能性があることを想像する必要がある。社会復帰した久はようやく・・・妻が仮面をつけているように見えるところまで・・・回復したということなのである。看病しているのに認知されないのは悲しいことですよ。

僕には忘れていることがある。

そして思い出したことをまた忘れてしまう。

人間が「わかっていること」は記憶の連鎖あるいは連続性のもたらす意識である。

生まれてから現在に至るまでの記憶の集積が自分というものを形成している。

脳を損傷したことによる記憶の脱落により・・・久の人格は変容してしまっている。

どう変わったのかを本人は知ることができない。

そして・・・他人の気持ちは想像の範囲で察するしかないものであるために周囲の人々にも久が変わったことは気付かれにくい。

現在の久は自分というものを見出せない不安から・・・穏やかなキャラクターになっている。

しかし・・・お茶の間は・・・周囲の人々の反応から・・・かっての久がそうではなかったことを感じ取るのだった。

少なくとも・・・五年前に離婚した家族の家の近所に新居を構える久はどこか・・・傲慢な気配を漂わせる。

そして・・・離婚した家族の顔は認識できるのに・・・現在の家族の顔が認識できないのは一種の呪いと考えることもできる。

どういう経緯で久が離婚に至ったのかは今は明らかではないが・・・少なくとも娘のすばるには両親の離別という苦痛を与えているのである。

「ただいま」

「おかえりなさい」

仮面妻の恵はにこやかに久を迎える。

しかし・・・久には不気味な仮面が見えるだけである。

仮面息子の良雄もただ不気味なのだった。

仮面をつけた妻と性行為をすることは久には抵抗があった。

同じベッドに寝ながら行為にいたらないのは・・・瀕死の重傷から蘇生した夫を妻が気遣っているという状況なのだろう。

朝食を作るのは久の日課だったらしい。

久ははりきって旅館の和定食のような料理を仕上げるが・・・料理を見た良雄は泣きだすのだった。

「あなた・・・良雄は和食が苦手で・・・朝はパンにしましょうって・・・約束したばかりでしょう」

「あ」

「良雄も泣くことないでしょう・・・お父さんは・・・忘れん坊なのよ」

「ごめん・・・今、すぐにパンを焼くから・・・」

「ほら・・・お父さん謝ってるでしょう・・・謝った人にはなんて言うの」

「・・・」

「もういいよって・・・許してあげなくちゃ・・・」

「もういいよ・・・悪いのは僕なんだから」と久。

久は妻たちの顔に触れてみる。

しかし・・・その顔は陶器のように硬質な手触りなのだった。

久の手は妻や子供の温もりさえ感じることができないのだ。

思わず良雄の頬に触れた指先に力が入る。

「いたい・・・」

「あなた・・・何をするの・・・」

「あ・・・ごめん」

「いやねえ・・・さっきのこと・・・根にもっているの」

「いや・・・」

「子供みたい・・・」

すぐに泣きだす良雄の緊張した態度から・・・久が粗暴な男だった過去が醸しだされるのだった。

しかし・・・妻の恵からはそういう屈託は感じられない。

恵と久の関係も謎めいているのだった。

「ひびき野」というバスの停留所に向かう久は・・・野沢母子と肩を並べる。

「昨日は驚かせてすまなかった・・・」

「こんな時間に出勤なの・・・」

「今は・・・部署を移ったから」

「左遷されたの」とすばるは毒づく。

「・・・」

「今度は間違えないで自分の家に帰ってね」

香は皮肉を言って離れた。

バスを利用するのは久とすばるだけだった。

「お母さんとなんか・・・あったのか」

久はなんとなく母と娘に険悪なムードを感じ取っていた。

「関係ないでしょ」

「離婚したけど・・・お父さんはお父さんじゃないのか」

「実の父でもないくせに・・・」

「え・・・」

久はメモを確かめた。

十年前に久と香は結婚した。

すばるは香の連れ子で三歳だった。

つまり・・・久は三歳から八歳までのすばるの義理の父親だったのだ。

しかし・・・久のあやふやな記憶の中では・・・すばるは確かに愛しい実の娘だった。

久は自分の気持ちさえ・・・信じることができない自分に戸惑う・・・。

仕事らしい仕事もしないまま・・・久の業務は終わる。

「残業ですか・・・」と言葉をかける小鳥遊・・・。

「僕は・・・作業が遅いので・・・覚えたと思っていると忘れてしまうし」

「ポンコツですね」

「ひどいな・・・」

「気にしないでください・・・私とは比べられないほどの高給取りなんですから」

「・・・すまない」

久はメモを見る。

「しまった・・・息子を迎えに行く時間を忘れていた」

「あらあら」

初代ひょうきんアナウンサーに似た保育園の保母(山村美智)は久を嗜める。

「三十分くらい泣いてましたよ・・・彼がついていてくれたので泣きやみましたけど」

「良雄くんのサッカークラブでコーチをしています」

本城剛(田中圭)は今にも死にそうな顔で不服を申し立てる。

「あなた・・・本当に良雄くんのお父さんなんですか」

「間違いありません」

「でも・・・良雄くん・・・さっきからあなたの顔を見ようともしないし・・・」

「良雄は今・・・どんな顔をしていますか・・・怒ってますか」

「え」

おそらく事情を説明したのだろう・・・なんとか良雄を引きとることに成功した久だった。

久も不安だが・・・良雄はもっと不安なんだな。

良雄に気遣ってデザートを作る久。

「イチゴ好きだろ」

「嫌い・・・」

「え」

「ドリルをしなさい」と良雄に命じる恵。

「ドリルって・・・四歳でもう・・・そんなことを・・・」

「何言ってるの・・・あなたがやらせたんじゃない・・・」

「僕が・・・」

「・・・」

言葉も感情を示す要素なので仮面をつけていない恵と仮面の恵は幽かにトーンを変えているようだ。

とにかくゴージャスさに磨きがかかっているボデイが口ほどにものをいう人妻女優である。

「良雄って・・・前から・・・ああいう感じだったかな」

「むしろ・・・戸惑っているんじゃないかしら・・・厳しかったあなたが・・・急に優しくなったから」

「僕は・・・厳しかったのか」

仮面の上からパックをする恵は神秘的な眼差しを久に注ぐのだった。

久はバスルームに逃げるように去ろうとする。

「お背中流しましょうか」

「え」

「どうしたの・・・前は一緒に入ったじゃない」

「今日は・・・シャワーですませるから・・・」

仮面の女とセックスをすることに妙な抵抗を感じる久なのである。

しかし・・・恵のバストの存在感がますますとんでもない感じになってるからな。

ある意味、仮面の女だからという説得力がなくなるくらいだよな。

もう・・・演技力の問題じゃないものな。

その「圧倒的な魅力」を感じないという久の演技力は問われるけどな。

ギリギリセーフだよな。

もう・・・なんか異次元の演技パトルだよねえ。

子供とか・・・家族とか・・・。

そんなもの・・・本当に必要なのかな・・・。

激しい性行為の後で・・・抱いた女に背を向けて窓辺に佇む。

そんな夢を見た久。

無理をするからたまってるんだな。

客観的には穏やかに眠る美しい妻の寝顔・・・。

しかし・・・久の主観では冷たい仮面がじっと見つめているだけだ。

妻が眠っているのか・・・起きているのかも定かではない。

久は起きだして家族写真を眺めてみる。

しかし・・・写真の中の恵も良雄も仮面をつけているのだった。

家族の顔を思い出せないのか。

家族の顔を思い出したくないのか。

だとすれば・・・何故?

家族の顔を思い出すと心が痛むからなのか。

それは誰のせいなのか・・・。

懊悩する久は・・・別れた家族の写真を隠し持っていることに気がつく。

新しい家族を持つ時に以前の家族の記念品を持つことはある種のタブーである。

そういうことに抵抗のない久だったのか。

しかし・・・別れた家族の姿は久の目にありのままに映る。

現在の家族とは違い・・・ぬくもりのある昔の妻と娘・・・。

愛は記憶だからな。

仮面をつけた恵と良雄。

素顔の香(かおる)とすばる。

久は香とすばるこそが本当の家族であるような気持ちになる。

それは甘美な気持ちとともに罪悪感を久にもたらす。

「明日の約束・・・忘れないでね」

どこかへ出かけて行く仮面の女が久に告げる。

「もちろん」と答える久だが・・・なんのことかわからない。

この辺りの要領の良さが・・・久の油断のならないところである。

「良雄・・・すごく楽しみにしているから」と付け加える恵だった。

久はメモを確認する。

良雄の出生は・・・平成22年4月19日・・・。

明日が五歳の誕生日だった。

一緒に出かけて誕生日のプレゼントを買う予定。

そういうことを忘れてしまう久だった。

週末なので「第十三営業部」は「家路久の歓迎会」を行う部員たち。

エレベーターに乗り合わせた第一営業部の岩下と戸倉は優越感を隠さない。

「おやおや・・・こんなに早くから歓迎会ですか」

「暇な部署はうらやましいですねえ」

「四月さん・・・かってはバリバリやってたのに・・・残念ですねえ」

「・・・」

絡まれた四月をかっての部下から庇うようにエレベーターを下りる久。

一同は早い時間から飲み始める。

「私はねえ・・・社長の階段に足をかけていたんだよ・・・なにしろ・・・先代社長の娘と挙式したんだからね・・・その挙式の際中に・・・コレがアレしてさ・・・アレとコレで修羅場ったらないのよ。あぶなく・・・私はコレで会社をやめましたって事態よ。なんとか踏みとどまったけどね。第十三営業部でも部長は部長だからね」

「二次会はカラオケです」と張り切る五老海(いさみ)洋子(阿南敦子)だった。

四月はすでに泥酔していた。

「なんで歓迎会で・・・僕が解放しているんですか・・・」

「先輩・・・御苦労様です・・・握手」

「・・・」

「先輩の奥さんは・・・美人ですか」

久は仮面の妻を思い出す。

「いや・・・微妙な感じだけど・・・」

「でも・・・健康なんでしょう」

「うん・・・まあ・・・」

「何よりです・・・私の妻は・・・腎臓を病んでまして・・・」

「・・・」

「私が世話してやらねばならないのです」

「・・・」

「なにより・・・私は妻との時間を大切にしたいのです」

「・・・」

「だから・・・仕事をセーブして・・・セーブして・・・第十三部に・・・」

「そうですか・・・」

久は四月の手を握った。

そこには温もりがありました。

五年間の記憶が欠落した久は浦島太郎のようなものでもある。

「ワールドカップ・・・次はロシアですよ?」

「ブラジルは残念だったみたいだね」

「じゃ・・・大震災のことも?」

「大変だったみたいだね」

「今時の歌といえば?」

「KARAのミスターとか・・・」

「・・・」

la la la la la la la la la la la la la la la la la la la la la la la la la la la la la la la la la la la la.

友達以上恋人未満

セクシーな腰のきれが・・・久の過去の妖しさを示している・・・それはどうかな。

自分のノリの良さを以外に感じる久はカラオケ・ルームのトイレに向かう廊下で見知らぬ男に声をかけられる。

「あれ・・・家路さんじゃないですか・・・」

「はい」

「こんなところで・・・会えるとは・・・銀座のあの店に行きましょう」

「・・・」

雲井不動産専務の竹田雅夫(香川照之)は強引に久をタクシーに乗せる。

不安を感じていた久は車内から・・・夜の街を一人歩きするすばるの姿を目撃する。

だからといって・・・特に行動を起こさない久。

中学生がいる場所としては場違いで・・・本当にすばるを見たのか自信がなかったのか・・・それとも・・・久はそういう冷たい一面があるのかもしれなかった。

高級クラブのママ(高岡早紀)は久の耳元で囁く。

「ご無沙汰だったわね・・・どこで浮気してらしたのかしら・・・悪い人ね・・・ま・・・そういうところが・・・家路さんの魅力だけど・・・また・・・儲けさせてくださいよ」

ママと何回くらい寝たのか・・・ママに何を儲けさせたのか・・・全く思い出せない久だった。

「この男はいい男だろう」

どこの誰かもわからない男は家路のことを何でも知っているようだった。

ホステスたちは家路にうっとりとする。

「だけど・・・この男は悪い男なんです・・・なにしろ・・・自分の女をお得意さんに抱かせるような阿漕なことを平気でする人だ」

「まあ・・・こわい・・・だけど素敵」

久は自分がそういうことをした記憶が全くなかった。

「しかし・・・やる時はやるし・・・頼りになる男なんだな」

久は一瞬・・・男と自分が建築現場で話をしている情景を思い出す。

「あと・・・五百億円はいるんだ・・・」

「おまかせください・・・話はつけてあります」

「さすがだなあ・・・家路さん」

しかし・・・久にはそれが何の話なのかまったく理解できなかった。

男は酔い潰れた。

ママは囁く。

「お願いできますか・・・私、アフターなんで」

久は閉店した店内で男が目覚めるのを待った。

「あれ・・・・待っててくれたんですか」

「酔いが醒めたら・・・と思いまして」

「すいませんねえ・・・こんな落ち目の俺に付き合わせて・・・」

「落ち目・・・」

「またまた・・・家路さん・・・御存じでしょう・・・私が出世競争に負けたのを・・・」

「僕は・・・事故で・・・頭をやられて・・・いろいろなことを忘れてしまったんです」

「え・・・」

僕は一度死にました。

今、生きているのは奇跡のようなものだと言われています。

男は探るような目で久を見つめるのだった。

「そうですか・・・しかし・・・今日は楽しかった・・・昔を思い出しましたよ」

男は微笑んだ。

邪な世界では悪にもそれなりの価値がある。

時には汚濁が人を癒しさえするのだ。

久は男の語る過去の自分に馴染めない。

香の夫であり、すばるの父親だった頃の家族想いの自分を信じたかった。

しかし・・・現実の自分は家族を捨て・・・新しい家庭を作った男なのだ。

一体・・・どうして久は香と離婚することになったのか。

何一つ思い出せない久だった。

帰宅した久に香から連絡が入る。

呼び出された久は公園で別れた妻と会う。

「ごめんなさい・・・こんな時間に・・・」

「すばるがいなくなったって・・・」

「・・・」

「心当たりはないのかい」

「最近、あまり評判のよくない子と一緒にいたみたいなんだけど」

「・・・」

「金庫から五万円ほどなくなってるの・・・」

「とにかく・・・周囲を捜そう」

結局・・・すばるは見当たらなかった。

すばるの携帯電話の番号を聞き出した久は電話をかけてみる。

(・・・誰?)

「すばる・・・お父さんだ」

電話は切れた。

自宅に戻った久は深夜テレビのドキュメンタリー番組を見る。

「今の子は・・・お金目当で・・・何でもするからね・・・それから・・・若い子とやりたい男はいくらでもいるし・・・そういう需要がある以上供給すればビジネスになるわけでしょう・・・世の中にはひどい男はいくらでもいるから・・・俺たちは・・・女の子の安全を守ってるわけよ・・・囲いって・・・囲いなんてイメージ悪いでしょう・・・」

昔からいくらでもある組織的少女売春の話だった。

しかし・・・今の久にとっては胸が苦しくなるような話だった。

香から着信がある。

(すばるが帰宅しました)

久は安堵して睡魔に襲われる。

何があってもお父さんなんだ。

それだけは信じてほしい。

久は良雄と百貨店に出かけた。

付属の遊園地で良雄はカートに夢中になる。

「そろそろ・・・プレゼントを買いに行こう」

「もう一回・・・ねえ、もう一回」

「しょうがないなあ・・・」

久はテーブルで良雄を見守る。

その時・・・視野に妖しげな男と一緒のすばるが飛び込んでくる。

思わず追いかけようとして・・・良雄のことが気になる久。

「お父さん・・・すぐに戻ってくるから絶対にここを動くなよ」

「うん」

久はすばるの行方を追いかけた。

すばるは逃げ水のようにどんどん遠ざかる。

追いかけても追いかけても見失いそうになるのだった。

半年前に死にかけた男は体力が衰えている。

やがて・・・すばると男を発見した久の前に・・・危険な雰囲気の若者たちが立ちはだかる。

「おっさん・・・なんだよ」

「どいてくれ・・・その子に用があるんだ」

「あらあら・・・昼間から・・・どすけべえ丸出しかよ」

「僕はその子の父親だ」

「えー、うそー」

「嘘じゃない・・・その子はいい子だ・・・僕のかわいい娘だ・・・五歳の誕生日にバースデーケーキの蝋燭を吹き消しそこねて・・・泣きだすような・・・繊細な女の子なんだ。人参は嫌いだがホウレン草は大好きな・・・ちょっと変わったところのある子なんだよ」

「おっさん・・・何言ってんだ」

「返してくれ」

久は思わず道端のスクラップを武器として振りあげた。

「お父さん・・・」

すばるが振り返る。

若者たちは殺気立つ。

その時・・・屈強な男たちが現れた。

茫然とする久の前で若者たちは現れた男たちに捕縛される。

「はい・・・そのまま・・・そのまま・・・あなたは・・・?」

「その子の父親です」

「なるほど・・・ちょっとご足労願えますか」

「はい」

お茶の間は「良雄は!」と絶叫するのだった。

しかし・・・久の記憶からは仮面をかぶった息子の存在は消去されているのだった。

「つまりですな・・・あの男たちは囲いと称して少女たちに管理売春させていたわけです。売春していた中学生の中にあなたの娘・・・・のクラスメートがいて・・・相談されたあんたの娘さんが・・・手切れ金の五万円をもって一人で交渉に来たというわけです・・・このグループに目をつけていた我々は仕方なく逮捕に踏み切りました・・・あんたの娘さんは少しこわいもの知らずが過ぎますな・・・」

「はい・・・あの・・・私・・・離婚してまして・・・」

「ええ・・・お母さんがひきとりに見えるそうですよ」

「何か・・・お飲みになりますか」

「はい・・・あ」

久は良雄のことを思い出した。

駆け戻った遊園地にいたのは・・・ウサギのお面をかぶった別人だった。

「良雄」

久は幼い子供を放置した自分の行為に愕然とする。

僕は・・・。

僕は・・・。

僕は・・・。

「良雄」

良雄は迷子として事務所に保護されていた。

「いいお子さんですね・・・パパが迎えにくるといって・・・あの場所から動こうとしなかったのです」

「・・・」

久はいたたまれない想いがした。

事務所には妻の恵が先着していた。

「良雄・・・ごめん」

妻が怒っているのか。

息子が泣いているのか。

久にはわからない。

「ほら・・・お父さん・・・謝っているから・・・許してあげなさい・・・」

恵がどういう気持ちでそう言うのか・・・久には分からない。

「パパ・・・迷子になっちゃったの」

良雄が許してくれたのかどうか・・・分からない。

だが・・・息子の言葉に久の心はゆれる。

「そうなんだ・・・お父さん・・・また迷子になっちゃった」

久はオムライスを作った。

オムライスを・・・良雄は好きだったはずだ。

優雅なデミグラスソースではなく・・・野卑なケチャップソースのかかったオムライス。

祈るような気持ちで料理を置く久。

「うわあ・・・オムライスだ」

「よかったね・・・良雄・・・パパはちゃんと良雄の好きなオムライスを作ってくれたよ」

「ありがとう・・・パパ」

よかった・・・と久は思う。

しかし・・・良雄が本当に喜んでいるのかどうか・・・久には分からなかった。

久は出勤し・・・恵は部屋の掃除を始める。

恵は・・・家族写真の中に・・・久の昔の家族の写真を発見し顔色を変える。

僕には大切な家族がいます。

どうして大切なのかはまだわかりません。

葵インペリアル証券の受付で竹田雅夫は久を呼び出した。

「最後にひとつだけ・・・一緒に仕事がしたくて・・・」

「僕にできるかどうか・・・できたら・・・四月という同僚におまかせ願えませんか」

「家路さんがそういうなら・・・」

「信頼できる人だと思います」

呼ばれた四月は驚く。

「雲井不動産の・・・竹田専務・・・」

「私の裁量での最後の仕事なんですが・・・公募増資をお願いしたい」

「額はいかほどでしょう」

「ざっと二千億円ほどですな」

「かしこまりました」

突然の巨額取引に営業部は色めき立つ・・・。

「なぜ・・・情報が・・・」

「どこの会社ですか」

「うちの第十三営業部だ」

「え」

蒼ざめる一同である。

黒木は久に詰め寄った。

「どんな手を使ったんです」

「さあ・・・よくわからない・・・僕には難しいことなので・・・とにかく・・・僕は今・・・家のことで頭がいっぱいなんた」

「・・・」

僕は家族の名前を読んでみた

君の歌が聴こえてくる

誰かが僕の名前を呼ぶ

だけど僕は夢を見る

君のところへ続く家路

僕の家族が住む家は月光に照らされている

世田谷行きのバスにのり・・・八つ目の停留所で下車。

横断歩道を渡ってまっすぐ行った四つ角のすぐ目の前。

四階建てのマンションの四〇一号室。

そこに僕の妻と子供が待っている。

恵は仮面をつけていた。

「あなた・・・私のことを愛してるの」

「もちろんさ・・・ほら・・・ここにメモしてある」

メモには「・・・を愛していることを確信した」と書いてある。

しかし・・・誰を愛しているかについては・・・何者かによって塗りつぶされていた。

久には恵が笑っているのか・・・怒っているのかは分からない。

「じゃ・・・聞くけど・・・良雄が自分の子供だと思っているの?」

「え」

久の帰るべき場所はどこにあるのか。

旅はまだ始ったばかりなのだ。

そして・・・旅の終わりに宝石はきっと王冠に変わるのだろう。

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昼顔

Ihhc001ごっこガーデン。仮面風景パート1セット。アンナキャー。ダーリンを待ちくたびれてお風呂に入りすぎてのぼせちゃったぴょ~ん。目のやり場に困るダーリンが最高なのだぴょんぴょんぴょん。お背中ながしサービスタイムに突入するのぴょん。洗って洗われてすべすべお肌になるのぴょ~んmana四月になったら着物から綿を抜くからわたぬきさん、天敵いなけりゃ小鳥も遊ぶよタカナシさん・・・って、転移時空間を間違えた~o(≧∇≦)oキャー♪」まこ妊娠妻を気遣って家事にいそしむ亭主の鑑・・・っていうかアンナ姉ちゃん・・・ぎゃぼーんと盛ってるんでしゅか~シャブリ妻も同僚も国民的美少女なのでありました~

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2015年4月16日 (木)

Dr.倫太郎(堺雅人)私と堕ちてくださいね(蒼井優)

そこかっ。

今季もいろいろとかぶっているわけだが・・・。

まず・・・心の闇ということで「ようこそ」「心ポッキー」そしてこれがかぶっている。

離婚ネタで「心ポッキー」と「恋愛時代」・・・おそらくあれも。

吉祥寺ということで「心ポッキー」と「書店ガール」が・・・。

「心ポッキー」・・・。

「心ポッキー」もけして落せないドラマなのだが・・・。

(水)は蒼井優の魅力が半端ないんだな。

久しぶりに・・・うっ・・・となったね。

これで(仮)ラインは・・・。

(月)「ようこそ」

(火)「書店」

(水)「ドクりん」

(木)「アイムホーム」

(金)「アルジャーノン」

(土)「どS」

(日)「花」

・・・埋まってしまった。

(木)は決定事項かよ。

「アイムホーム」の裏の「やくざやめますかそれともにんげんやめますか」が面白かった場合、「ようこそ」か「どS」が消える可能性がまだ残っている。

「書店」は残るのかっ。

消える可能性が高いのは・・・「どS」かな・・・。

「天皇」は・・・。「心ポッキー」にワンチャンスはないのか。

「64」もあるんだよな・・・。

だめだ・・・考えれば考えるほど・・・定まらない・・・。

とにかく・・・「心」が迷う春ドラマですね。

まとめんなよっ。

で、『Dr.倫太郎・第1回』(日本テレビ20150415PM10~)原案・清心海、脚本・中園ミホ、演出・水田伸生を見た。春だから・・・みんなメンタルに走っているのか。「ようこそ」のストーカーあるいは強迫神経症、「書店」のブック・フェチ、「心ポッキリ」の鬱、「アイムホーム」の記憶喪失、「アルジャーノン」の知的障害、「どS」のサディズム・・・発狂しまくってるな・・・。みんな頭がおかしいのです。そもそも・・・人類なんてみんな病んでいるのだ・・・それが悪魔の言うことか・・・。とにかく・・・蒼井優、かわいいよ蒼井優だけは言っておきたい。日舞素敵だった・・・。そこだけずっと見ていたい・・・お前が病んでるぞ。

壊れた心はどうすれば治るのか・・・そもそも治るものなのか・・・という話である。

たとえば・・・性犯罪者が心の病だとして・・・矯正は出来ても・・・治癒はしないのではないか。

そもそも・・・正気ってなんだって話になるしな。

たとえば「死」を病気の一種だとして・・・完治すると「不死」になるわけだが・・・それはもう一種の病気じゃないのか・・・なんだよな。

慧南大学病院の精神科医・日野倫太郎(堺雅人)は精神分析的手法によって精神の病にアプローチして・・・それなりの実績をあげている。

これを心理的精神医学としておく。

一方、同期の宮川貴博(長塚圭史)は画像診断に基づく投薬という物理的精神医学の信奉者である。患者の処理数では圧倒的に有利である。そのためなのだろう・・・宮川は精神科の主任教授なのだ。

精神の病気ということでは脳外科という分野がある。

脳外科の主任教授の蓮見榮介(松重豊)は倫太郎や宮川主任より一回り上の世代で副病院長となっている。

病院内の序列は蓮見副病院長、宮川精神科主任、倫太郎ということだ。

しかし、テレビ番組のコメンテーターとして人気のある倫太郎は・・・経営トップの一人、円能寺一雄理事長(小日向文世)のお気に入りである。

「ドクター倫太郎のいる精神科」が・・・病院の売りになると考えているのだった。

倫太郎の人気の秘密は・・・ワンセット50分のカウンセリングである。

患者の心に寄り添える特殊技術により・・・ストレスを抱える有力者からも信頼されているのだ。

池正行(石橋蓮司)行政府報道長官(フィクション・・・まあ官房長官です)もその一人だった。

「総理がさ・・・また失言したんだよ・・・陸軍と海軍が協力しなければ不測の事態に対応できないって・・・そりゃ・・・自衛隊は軍隊だよ・・・戦車や戦闘機に乗ってるんだから・・・自衛車とか自衛機とか一々言わないだろう・・・でも軍隊じゃなくて自衛隊っていうお約束なんだから・・・自衛隊って言っとけばいいんだよ・・・それなのにさ・・・もう・・・そういうどうでもいいことにいちいちああだこうだこと応えるのに疲れちゃうんだよ」

「ですねえ」

「もうやってらんないんだよ」

「まあ・・・あったかいお茶でも飲んで・・・」

「できれば死にたいよ」

「死ねたらいいですねえ」

「そうだよなあ・・・」

「しかし・・・記者たちの意地悪に負けたら口惜しいですよね」

「うん」

「あいつら・・・長官を困らせたいんですよ」

「そうなんだよ」

「だから・・・笑ってやればいいじゃないですか」

「笑っていいの」

「いいんです・・・心から笑う必要なんかありません・・・えへへって表情作るだけで・・・ざまあみろじゃないですか」

「えへへ」

「いいですねえ・・・えへへ」

「えへへ」

「あ・・・時間です」

「え・・・もう」

「スマイルですよ・・・嘘でいいんだから」

「スマイルだな」

にこやかに記者団に対応する長官だった。

「いろいろとあるが・・・苦しい時ほど明るい未来に希望を抱くことが必要でしょう・・・えへへ」

「・・・」

政府関係者にも好評の倫太郎を上手に活用したい円能寺理事長は芸者遊びで饗応する。

新橋の置屋の女将であり、自らも芸者の益田伊久美(余貴美子)はお座敷で医師たちを接待するのであった。

円能寺のお気に入りの芸者・夢乃(蒼井優)はこうして倫太郎と出会うのだった。

年収一千万円以下の男は・・・客として魅力がないと考える夢乃だったが・・・円能寺が倫太郎を教授候補として紹介したことで・・・少し関心を持つのだった。

一方・・・倫太郎は恋愛沙汰には無縁の男である。

患者の心に寄り添うことが・・・倫太郎の生きがいであった。

倫太郎の幼馴染で外科医の水島百合子(吉瀬美智子)はそんな倫太郎に好意を寄せている。

巨乳の妹で・・・子供もいる主婦の中西まどか(酒井若菜)は四十歳を過ぎても独身の倫太郎の身を案じて時々、実家に様子を見に来る。

若くして死んだ母親を慕って・・・錯乱し・・・自殺仕掛けたこともある倫太郎の過去を知っている二人は酔い潰れた倫太郎を見守るのだった。

精神科には二人の研修医がいる。

すでに三十歳となり研修医としては落ち付いている福原大策(高橋一生)と研修医になりたての川上葉子(高梨臨)である。

葉子は倫太郎のファンであり・・・密かに恋愛感情も抱いている。

「先生の理想とする治療とはどのようなものでしょうか」

「医師と患者が共感することです」

「患者が医師に恋愛感情を持ったら・・・どう対処するべきでしょうか」

「それが患者の症状を快方に向かわせるなら・・・結婚しても構いません」

「え」

「しかし・・・それでは一人の患者しか治療できないので・・・精神科医は恋愛感情を利用して患者を導き・・・その他の対象に興味を向けさせるべきでしょう」

「医師が患者を好きになったらどうすればいいのでしょう」

「その場合は患者が完治してから・・・食事に誘うのが無難ですね」

「先生にはそういう経験がおありですか」

「ありません・・・精神病は・・・完治しませんから・・・そして恋愛感情というのは一種の病気です」

「・・・」

「人間には二種類しかいないのです・・・自分が狂っていることを自覚しているものと・・・自覚していないものの二種類です」

通勤の途中で飛び降り自殺志願者の阿川繭子(近藤春菜)に遭遇する倫太郎。

屋上にかけあがり・・・柵を越える倫太郎だった。

「来ないで」

「あなたとお茶したいだけです」

「お茶・・・」

「飛び降りる時は一緒にいかがですか」

「心中・・・それもいいわね」

「でしょう・・・」

「私・・・つかれちゃったの」

「そうでしょうねえ・・・あなたは・・・頑張り屋さんみたいだ」

「・・・」

「だから・・・もう頑張らなくてもいいんですよ」

「そうよ・・・私は・・・永遠の休暇を・・・」

「素晴らしい」

「落ちる」

「落ちます」

抱き合って墜落する二人。

しかし・・・地上にはすでに救助マットが敷かれていて命拾いである。

通院を開始する繭子・・・。

倫太郎は繭子の周辺の状況を研修医たちに調査させる。

繭子はOLで出世と同時に部下から嫌がらせを受けていた。

倫太郎は看護師の桐生薫(内田有紀)に命じて「氷」を用意させる。

ここまで・・・幼馴染に昼顔妻、妹にモー子、看護師にキャッツアイ、研修医にシンケンピンク、芸者にアリスと物凄い布陣だな・・・。

ハーレム倫太郎かっ。

倫太郎は繭子に氷を握らせる。

「冷たい」

「もっと感じて」

「痛い」

「もっと」

「痛い・・・痛い・・・」

「もっと感じてください・・・あなたの温もりで・・・氷が融けるでしょう」

「・・・」

「痛みはいつか・・・過ぎ去っていきます」

「・・・」

「もう・・・がんばらないで・・・」

「私・・・なんでみんなに嫌われたのかなあ・・・豚って言われて・・・デブって・・・」

「ねたみですよ・・・みんなあなたに嫉妬してたんです」

「嫉妬・・・私なんかを・・・ねたむなんて」

「人間はうらやむ生き物です・・・自分より恵まれたものを許せないんですよ」

「そんな・・・バカみたい・・・」

「あなたは何も悪くないんです」

「・・・」

桜の季節。

病院に芸者の夢乃が現れる。

「夢乃さん・・・」

「先生にどうしても会いたくなって・・・来ちゃいました」

「え」

「先生・・・私と・・・落ちて」

「いいですよ」

夢乃は倫太郎の唇を奪うのだった。

倫太郎は夢乃が心に苦しみを抱えていることを予見する。

夢乃は恐ろしい女(高畑淳子)に金を奪われる。

「明良(あきら)・・・あんたは私から逃げられないよ」

「わかってます・・・」

「なんだい・・・これっぽっちか」

「ハハハ」

「しっかり稼ぎな」

夢乃は明良として街を彷徨う。

倫太郎は見かけて声をかけるが無視されるのだった。

大学での出世競争に敗れた荒木(遠藤憲一)は開業医となっていた。

蓮見副病院長のかってのライバルである。

荒木医師は倫太郎の主治医なのだ。

「無視されちゃったよお」

「芸者の時と・・・素顔の時は別人格か・・・」

「そうなのかなあ・・・」

「まあ・・・客商売だからなあ」

「ええええええ」

宮川主任教授は・・・倫太郎の人気を妬んでいる。

部下の矢部街子医師(真飛聖)は「桜の下のキス」の画像を見せる。

「いい写真でしょう」

「いい写真だな」

世界は悪意に満ちている。

夢乃に憧れる芸者の小夢(中西美帆)も忘れないでください。

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2015年4月15日 (水)

戦う!書店ガール(渡辺麻友)あなた本だけが友達だったのね(稲森いずみ)

「本は親友です」

このこだわりは素晴らしいな。

「ボールはともだち」と同じ領域だからな。

あくまで「本」が友達なのであって・・・作者への敬意はあまりないところが「こだわり」なんだよな。

だからこそ・・・作者が本にひれふすクライマックスは涙が止まらなかったよ。

さて・・・「絶対泣かないと決めた日」シリーズで主演女優の立て方に覚醒した脚本家が「最高の人生の終り方〜エンディングプランナー〜」で新境地を開いた後・・・いろいろあって原作ものである。

物凄いアレンジを加えてきたが・・・実にいい感じに仕上がっている。

榮倉奈々や杏はそれなりに実力派だが・・・未知数と言えるまゆゆをここまで生かしてくるとは・・・。

天晴れだな。

で、『戦う!書店ガール・第1回』(フジテレビ20150414PM10~)原作・碧野圭、脚本・渡辺千穂、演出・白木啓一郎を見た。いつの間にか最大の激戦区となった(火)10時である。仲間由紀恵、木村文乃、まゆゆという女の争いなんだな。文乃が上下で板挟みになっているような感じもするよ・・・。原作のアレンジというより前日譚的な感じになっているこの作品は言わば正攻法とも言える。NHKは長丁場らしいし、TBSは物凄く「名前のない女神」みたいなので・・・(火)はこれがレギュラーになりそうである。とにかく・・・週の中盤が重いのは確実だからな。週明けや週末はなるべく軽くしたいのだ。とにかく「本」の好きな女の子が・・・「出版社」で「本作り」ではなくて「書店」で「本売り」の道を選ぶ・・・そうすると「本」が主役になれるわけである。「古書店」ではなくて「書店」というのがコンテンポラリーなんだよな。キッドはここに魅かれるのだった。

大手書店「ペガサス書房」に勤務する北村亜紀(渡辺麻友)は新宿店から吉祥寺店に転勤が決まり、高層マンションに転居する。引越業者が運ぶのは大量の書籍。新居は書庫のような趣きである。そこはかとなく漂うリッチなムード。

「センターに置くのは大事な本だよね」

置かれたのは「はてしない物語/ミヒャエル・エンデ」(1979年)である。映画「ネバー・エンディング・ストーリー」の原作だ。

23歳の書店員としては贅沢な住居だが・・・大手文房具メーカー会長の孫娘というお嬢様なのだった。

児童書についてはかなり造形が深い亜紀はふと「しろねこくろねこ/きくち ちき」に目をとめる。

吉祥寺店ではちょうど副店長の西岡理子(稲森いずみ)が「しろねこくろねこ」を書棚に押し込んでいた。

理子はベテラン店員で・・・管理職としての評価も高い。

つまり・・・しろねこもくろねこもねこだという話なのである。そうなのかっ。

転勤者はもう一人、かって理子の部下だった三田孝彦(千葉雄大)である。

書店員として三田は理子を尊敬している。

三田は転勤前日に出社して作業を手伝う優等生なのだった。

「あら」

「お客さんが手にとりやすいようにという・・・本の並べ方から教えてもらいましたからね」

心が和む理子なのである。

しかし、店長の野島(木下ほうか)は注意を促す。

「明日から吉祥寺勤務になる北村亜紀君は・・・北村文具店のお嬢様なんだ・・・コネ入社だからね・・・そのことを覚えておいてね」

ご機嫌とれってのかよ・・・と心では思うがにこやかに頷く理子なのである。

公私の公ではとにかく落ち度のない理子なのだった。

しかし、同僚で親友の尾崎(濱田マリ)には行きつけの店・・・屋良部守(マキタスポーツ)が店長の沖縄料理店ではプライベートの愚痴をこぼす。

「彼氏とご無沙汰なのよ」

「もう・・・長いもんねえ」

理子は出版社の営業をしている柴田(長谷川朝晴)と交際しているのだが・・・結婚に至っていないのだった。

理子は四十歳・・・ある意味ヤバイのだった。

初日のスタッフ会議。

挨拶もそこそこに元気よく意見を述べる亜紀である。

「こちらの店舗は地味です・・・華がないというか立体感が感じられません。ポップも出版社が作ったものがお義理程度に置かれているだけですし。もっと派手にしちゃいましょうよ・・・ぱ~っと、 もっと明るく・・・このお店を変えちゃいましょう!」

呆気にとられるスタッフ一同なのだった。

理子はお嬢様に教育的指導を開始する。

「北村さんはコミック担当でお願いします」

「私は児童書担当を希望します」

「希望通りに配属されるとは限らないのよ」

「でも・・・コミックのプロは三田さんですし・・・私は児童書には自信があります」

「思い入れが強すぎるジャンルを担当させないというのがうちの方針なの」

店員の一人、萩原麻美(鈴木ちなみ)は亜紀の言動に呆れるのだった。

事情通の日下(伊野尾慧)はダークシステム的に情報を伝える。

「怖いもの知らずのお嬢様らしいよ・・・億ションに一人暮らしの帰国子女で・・・身につけているものはすべて高級ブランドのみ」

「げろげろ」

「あの北村文具の会長の孫でついた仇名が三代目」

「げろげろげろ」

休憩時間に書店内カフェで三田を相手に不満を爆発させる亜紀。

「得意分野をつぶそうとする方針なんて・・・おかしいじゃないですか」

「・・・」

「三田さんだって・・・得意のコミックやりたいでしょう」

「僕はチャンスだと思うよ」

「チャンス?」

「知らなかったことを知るチャンス。幅広い知識を得られるチャンス。プロフェッショナルな書店員になるチャンス。 そういうふうにね」

「・・・」

三田の言葉は素直に聞ける亜紀だった。

原作では交際相手である。

気分を変えてコミックの勉強を始める亜紀・・・そこへ顔馴染みの柴田が編集者の小幡(大東駿介)とやってくる。

「これ・・・差し入れ」

高級洋菓子である。

亜紀と親しげな態度の柴田を不快に思う理子である。

しかし、柴田は「大事な話がある」とホテルのレストランでの食事に理子を招くのだった。

一方、小幡は亜紀に見惚れるのだった。

原作では結婚相手である。

もちろん・・・ドラマはドラマなので先のことは分からないことにする。

中華料理店で理子は尾崎に「それはいよいよプロポーズなのでは」と冷やかされる。

カウンターに並んだ謎の客(田辺誠一)は「プロポーズだったらいいですねえ」と呟くのだった。

理子は定年退職した父親の達人(井上順)と二人暮らしである。

酔い潰れた父親の老いた顔を見ると・・・このままではいけないとふと思う理子だった。

そういう哀愁とは無縁の亜紀はスタッフ会議でバリバリと店舗改革案を提出する。

「やっぱりもっとポップを使いませんか?・・・ポップでお客様にわかりやすく本をアピールしましょうよ」

「うちの店舗ではなるべくポップは置かないようにしてるんです」

「書店員の手書きポップなんて売り上げアップの必須ツールじゃないですか」

「背中を押してすすめるよりお客様自身で選んでもらうほうが大切だという考えです」

「売り場を盛り上げたいという情熱はお客様にも伝わるんじゃないでしょうか?」

「温度差が開けばその分離れるお客さんもいます」

「何でそんなマイナスなことばっかり考えるんですか?」

「リスク管理も私の仕事だから」

「まずやってみればいいじゃないですか・・・店長はどう思います」

「そうだね」

店長は・・・亜紀に甘いのだった。

「え」

三田は理子のために・・・亜紀をなだめようとカフェに誘う。

しかし、亜紀は前進あるのみだった。

「コミックと児童書の情報を交換しませんか?」

「え・・・」

「三田さんのおっしゃるように書店員のプロになりたいので・・・コミック担当を頑張ります」

「ああ・・・」

三田の手にした「ぐりとぐら/中川李枝子(作)山脇百合子(絵)」に目をとめる亜紀。

野ねずみのぐりとぐらを主人公とした絵本で450万部の超ベストセラーである。

「カステラ食べたくなっちゃった」

「何で」

「23ページです」

「・・・」

「さあ・・・出来た頃だぞ。ぐらがお鍋の蓋を取るとまあ黄色いカステラがふんわりと顔を出しました。やあ・・・おいしそう。みんなは目をまあるくして感心しました。そのおいしかったこと・・・」

絵本を暗誦する亜紀に好意を感じる三田である。

本好き魂が疼くのだった。

「小学生向けの歴史コミックと言えば何ですかね」

「みなもと太郎の風雲児たち・・・かな」

「ですよね~」

意気投合する二人だった。

コミック・売り場に炸裂する亜紀の手作りポップ。

評判は上々で売上も伸びるが・・・理子は苦々しく思う。

そこへ・・・不審人物が登場する。

翌日、亜紀の手作りポップは撤去されていた。

「誰がこんなことを・・・」

「私よ」と理子。

「どうして・・・こんなひどいことをするんですか?」

「自分の好みを押しつけてるだけのポップだから」

「でも売上アップしてます」

「何かを際立たせれば何かが沈んでしまう・・・そういう弊害もあるの」

「・・・」

「たとえば・・・この恋愛推しのポップ・・・たしかにこのコミックは恋愛が全面に描かれてる・・・だけど作者は親子のあり方について考えている人や仕事で壁にぶち当たってる人にも読んでほしいと思ってる」

「なんで・・・副店長に作者の気持ちが」

「昨日、本人が来店なされておっしゃったのよ」

「え」

「あなたはポップで自分の気持ちを表現しているだけ・・・本を選ぶのは・・・あくまでお客様。同じ本を読んで星を5つ付ける読者もいればマイナス評価の読者もいる。同じ人間が同じ本を読んでも出合った時期によって感じることや受け取るものは違う。そういったことを踏まえてポップを作らなければいけないの。自分の意見や感想を尊重されたいのならブログでも書けばいい。悔しかったら私を納得させるポップを書くことね」

書いてるぞ・・・ブログを今。

基本的に妄想だけどな。

そして・・・あくまで前向きな亜紀は理子を納得させるポップ作りに向けて邁進するのだった。

その目に新刊本の「famale/アリー」(フィクション)の広告が入る。

「アリーか・・・」

アリー(橋本じゅん)はマツコなみに人気のあるオネエで「famale」は処女小説だった。

翌日のスタッフ会議は本社の谷田部社長が参加してのものだった。

「時代の流れでどこの書店も年々売り上げが落ちています・・・本を並べてるだけじゃ生き残れません。売り上げアップのためにできること何かアイデアがあればいつでも気軽に提案してください」

「はい」

「君は?」

「北村亜紀と申します」

「ああ・・・おじいさまはお元気ですか」

「はい・・・アリーが私小説を出すことはご存じですか?」

「ベストセラーになるんじゃないかな」

「アリーのサイン会をうちでやるというのはどうでしょう」

「しかし・・・簡単にはスケジュールをもらえないんじゃないか」

「アリーって・・・私の祖父の会社の商品のイメージキャラクターなんです」

「・・・」

炸裂するコネ爆弾である。

暴走するお嬢様に・・・反発する一般庶民たち・・・。

しかし・・・。

「今度の土曜日吉祥寺店に来てくれるんです・・・3時間ゲットできました」

「え・・・そんなこと・・・急に言われても・・・」

だが走りだしたお嬢様は止まらないのだった。

イベント準備に追いまくられる一般庶民の不満は爆発寸前である。

理子は亜紀に意見するのだった。

「みんなもともと抱えてる仕事が減るわけじゃないんだし頼むときはもうちょっと配慮しないと」

「私 間違ったことしてますか?」

「間違ってはないわ・・・でも・・・みんなに気持ちよく協力してもらったほうがいいでしょ?」

「ご機嫌取りながら足並みそろうのを待ってる時間がもったいないと思うんです。誰かが引っ張らないと成り立たないと思います」

「・・・」

「それから金曜日遅番でお願いします」

「え・・・イベントの前日じゃない」

「午前中はどうしても用事があるので」

亜紀の常識を越えたマイペースに戸惑う理子だった。

イベント前日・・・亜紀不在のまま準備を開始する店員たち。

「あの・・・三代目は・・・」

「みんなにはほんとに負担かけてしまって申し訳ないと思ってるけど決まったからには成功させたいって思ってるの」と仕方なくリーダーシップを発揮する理子だった。

準備の途中で亜紀から連絡が入る。

「副店長・・・今日お休みさせていただいてもよろしいでしょうか?・・・実は今、福岡なんですけど・・・午前中の飛行機で戻る予定が急な豪雨で飛行機が飛ばないんです」

絶句する理子だった。

翌朝・・・出勤した理子は疲れ果てて眠る亜紀と・・・欠勤の理由を知るのだった。

物凄い長蛇の列となった客の群れである。

しかし・・・問題が発生する。

ナーバスになったアリーが客との握手会を拒否したのである。

「マネージャーが勝手に組んだスケジュールで・・・客寄せパンダになんかなりたくないわ」

「えええ」と驚く亜紀。

「私、帰る」

「私はアリーさんにやっていただきたいんです。いいイベントだったと言われたいんです。お願いします!」

「どうせろくに中身も読んでないくせに!・・・どいつもこいつもみんなそう!・・・読む前から所詮タレント本だ・・・駄作だ・・・印税稼ぎの銭亀だっていいかげんなことばっかり!・・・あんたたちだって適当に本を売りたいだけなんでしょ?」

「本を売ることのどこがいけないんでしょうか。本を多くの人に届けたいという気持ちのどこがいけないでしょうか。ここは書店です。私たちは書店員です。本を売るのが仕事なんです。アリーさんこそご自分の本を たくさんの方に読んでもらいたくはないんですか?」

「もう二度とその口を開かないで。くそ女~!」

「待ってください」と理子が割って入る。

「彼女の準備したポップを一目見てください」

「ポップ?」

会場にエリーを案内する理子。

そこには・・・本に書かれたアリーの思い出の地を巡った写真バネルが展示されていた。

「あなたの口から・・・私に説明しなさい」

「・・・」

「この写真は?」

「これはアリーさんが高校時代大好きだった学食のオムライスです。トマトソースとケチャップを選べるけどいつもケチャップで食べていたとあったので私もケチャップで頂きました。本当においしかったです」

小学校のグラウンド。通学路の坂道から見た夕日。お友達の家の庭にあったもくれんの木。駄菓子屋さんのおじいちゃん・・・。

アリーのふるさとの情景がそこにあった。

「私は・・・彼女のポップは素晴らしいと思います」

「私はこの本を読んでアリーさんをすごく身近に感じました。子供の頃に子供同士で隣にいる自分を想像しながら読みました。ひとと違うことは周りに理解されにくいです。子供の頃は特にさびしかったんだろうなと思います。でも大人になって気付いたんですよね・・・アリーさんは。振り返ってみれば小さな幸せや小さな喜びがあったこと。寂しいだけじゃなくてかけがえのない思い出があったってことに。とってもすてきな本です。人に生きる勇気を与えてくれる本です」

本しか友達のいない女の恐ろしい説得力である。

アリーはやる気になった。

イベントは大成功である。

しかし・・・本社では・・・ネット事業拡大のために・・・店舗の廃止が検討されていた。

吉祥寺店はその第一候補なのである。

一方・・・理子は柴田とレストランで逢う。

しかし・・・プロポーズではなく別れ話を始める柴田。

「仕事関係で知り合った女の子を妊娠させてしまって・・・責任をとって結婚するつもりだ」

「え」

女の子・・・妊娠・・・結婚・・・嫌な予感に震える理子。

店を出た柴田を思わず追いかけた理子が目にしたのは・・・。

タクシーに同乗する・・・柴田と亜紀だった。

「ええええええええええええ」

これはミスリード・・・それとも脚本家の暴走・・・発表は次回の放送をもってかえさせていただきます。

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東京バンドワゴン~下町大家族物語

書店員ミチルの身の上話

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2015年4月14日 (火)

ようこそ、わが家へ(相葉雅紀)パンツは見せない(有村架純)そこかしこにある危機(沢尻エリカ)

都会ではホームレスは珍しくない。

下町の商店街によく見かけるホームレスがいたりする。

ある種の病気で顔面が崩れているホームレスと毎日のようにすれちがったりもする。

そういう存在は不気味で恐ろしい。

この世界にはおぞましい現実が確かに存在するのである。

冬の季節に雑居ビルのエレベーター・ホールに蹲るホームレスもいる。

通報されて近所の派出所から警察官がやってくる。

職務質問にも無言である。

警察官が派出所に同行させたとしても・・・罪を問うことは難しいのだ。

やがて・・・ホームレスはエレベーター・ホールに舞い戻る。

こういうものは呪いの領域に属している気がする。

ドラマに登場するホームレスたちには奇妙な人間性がある。

それは非常にうそくさいのである。

しかし・・・実在するホームレスたちはただ悪臭を放つだけだ。

同様にドラマに登場するストーカーにも似た匂いがある。

そこにはどこかうそくさい・・・幻想のストーカー臭が感じられるのだ。

鼻をつまんでそれに耐えることができれば・・・そこそこサスペンスを楽しめるのかもしれません。

で、『ようこそ、わが家へ・第1回』(フジテレビ20150413PM9~)原作・池井戸潤、脚本・黒岩勉、演出・中江功を見た。原作では銀行から取引企業に出向している父親が主人公である。ドラマの主人公の息子の職業設定に比べて・・・父親のそれが濃厚なのはそのためである。気にしなければそれまでだが・・・オリジナル部分と原作部分の接合がかなり色違いになっていて・・・物凄く違和感を感じる。まあ・・・ドラマとはそういうものだと思って気がつかないフリをするしかないのだな。

銀行員だった父親・太一(寺尾聰)と幼い健太(相葉雅紀)は休日に釣りに出かけた。

そこで反社会勢力的な人々に圧迫された父親はすごすごとテリトリーを放棄する。

幼い健太は卑屈な父親の態度を軽蔑し不満を抱く。

しかし、結局、臆病者として成人した健太だった。

だが・・・あの日の父親に感じた複雑な感情のしこりは今も心にくすぶっている。

パッケージ・デザイナーという職業を選んだのもそれが原因かもしれなかった。

あげくの果て・・・健太のデザインは無難過ぎて陳腐だと酷評されることもある。

そういう時、健太は忸怩たる気持ちを味わうのだった。

その日、健太が似合わない行動に及んだのもそういう日常のストレスが噴出したと言えるのかもしれない。

帰宅途中の駅のホームで割り込み乗車をしようとした男に腹を立て・・・男を押し倒した上で叱責したのである。

「順番を守ってください」

周囲の乗客たちは健太に味方をした。

「そうだ、順番守れよ」

「謝れよ」

しかし・・・ニット帽をかぶった割り込み男は無言だった。

見知らぬ女が割って入る。

「謝るか・・・逃げるかどちらかしかないと思うんですけど」

男は逃げた。

発車のベルが鳴る。

健太はあわてて電車に乗り込んだ。

「あなたが取った行動はとても立派だったと思います」

見知らぬ女が健太に声をかけた。

美しい女だった。健太の心は騒ぐ。

「いえ・・・」

「それだけです」

「え」

「勘違いしないでくださいね」

健太は心に釘を刺された。

東急田園都市線の江田駅(神奈川県横浜市青葉区)で下車した健太は似合わない行動の結果生じたわだかまりを抱えて市営バスに乗り込む。

そして・・・車内にニット帽をかぶった男を発見するのである。

(あの男だ・・・あの男がいる・・・まさか・・・逆恨みか・・・俺に復讐する気なのか・・・暴力を振るう気か・・・俺を殴る気か・・・まさか・・・刺されたりして・・・いやだ・・・こわい・・・いやだ)

臆病な健太は身体が震えだすのだった。

降車するべき停留所でギリギリのタイミングで扉をくぐる健太。

しかし・・・発車したバスはすぐに一時停止し・・・ニット帽の男が下車してくるのだった。

「ひえ」

健太は脱兎の如く逃げ出した。

だが・・・ニット帽の男は化け物のようなスピードで健太を追いかけてくるのだった。

「ひえええええええええええええええええええええ」

家の周囲を駆けまわり・・・なんとか男をふりきった健太。

我が家に戻った健太は・・・鍵をしめようとして突然開かれた扉に支えを失い宙を舞う。

しかし、現れたのは妹の女子大生・七菜(有村架純)だった。

「パンツ、見たでしょう」

兄を見下す七菜だった。

健太の家族は他に出世争いに敗れて取引先のナカノ電子部品に総務部長として出向している父親の太一と母親の珪子(南果歩)である。

珪子は専業主婦であり、趣味で陶芸教室に通っている。

妹の七菜は父親に馬乗りになりマッサージをする孝行娘である。

もちろん・・・あざといお茶の間サービスです。

しかし、かわいいよ、七菜かわいいよと言う他ありません。

女子大生の娘にマッサージされながら死ねたら天国に行けます。

とにかく・・・そんな平穏な家族の団欒を「ストーカーのようなものに襲われた体験談」で壊すこともできない健太は・・・押し黙るのだった。

しかし・・・翌朝・・・母親の大切に育てている花壇の花は何者かに荒らされていたのだった。

背筋の凍りつく健太である。

恐怖とは予感である。

 

恐怖とは不明である。

 

恐怖とは不安である。

その根本にあるのは「死」である。

「死ぬかと思った」というのは恐怖の経験を示す言葉なのである。

想像力の発達したものは・・・荒らされた花壇から・・・自分の死を思い浮かべるものなのだ。

散らされた花弁に気がつかず・・・うっかり足をすべらせて・・・転んで頭を打って・・・死んだらどうしようと思うのだ。

それはちょっと違うんじゃないか。

何者かが荒らした花壇・・・その何者かは自分に悪意を持っているかもしれない・・・ひょっとして自分に対して殺意を持っているのではないか・・・その何者かが花びらを契るように自分を殺すかもしれない・・・こわい。

そっちそっち。

怖いもの知らずとは・・・そういう想像力のないバカのことなので・・・そういう想像力の働かない人はこのドラマ向きではないと思う。

働き過ぎて怖くて見れないと言う人は問題外として。

やがて・・・自転車のサドルが切り裂かれ、捨てたゴミがチェックされ、新聞受けには子猫の死骸が置かれ・・・と事態はエスカレートするのだった。

あの日の女に再会した健太は無防備に事情を明かす。

キッドならば尾行して・・・女の正体を見極めた上で相談するが・・・世の中はそういう人間ばかりではないからな。

女はタウン誌を発行している円タウン出版社の記者・神取明日香(沢尻エリカ)で事件に興味を示すのだった。

もちろん・・・臆病な健太は「事件」と見なされることがすでにこわいので取材を拒否するのだった。

健太は親に似て臆病者という設定だが・・・発端の事件に限らず、ゴルフクラブを持って不審者を追いかけたり、暗闇に挑んだりと・・・いざとなったらやるタイプである。そもそもデザイナーなどという明らかに不安定な職業についていることが・・・矛盾しているわけだが・・・そこはまあ・・・脚色の意向なのだろう。

つまり・・・臆病だけどちょっとバカなんだな。

本来の主人公である太一は臆病というよりは用心深いタイプと言える。

そうでなければ銀行員は勤まらないからである。

出向先は曰くありげな企業で・・・銀行からの出向者が次々に退職に追い込まれているらしい。

「青葉銀行」の同期で人事部の八木(高田純次)は「君ならその状況を改善してくれると期待している」などと友情めかしたことを言うが本心はもちろん不明である。

「ナカノ電子部品」の真瀬営業部長(竹中直人)は不正を不正とも思わない姿勢で太一を敵視する。

「おえらい銀行からの天下り様には叩きあげの気持ちが分からないのでござろう」

「いやいや・・・そんなことはございませぬ」

二人とも去年の大河ドラマ出身である。

一方・・・明らかに精神的に不安定そうな・・・太一の部下で契約社員の西沢摂子(山口紗弥加)が配置されていて・・・夜は怪しいパブにお勤めである。

そのパプに明日香の上司である蟹江編集長(佐藤二朗)が通い詰めているところが・・・偶然なのか・・・仕掛けがあるのかは謎なのである。

「ナカノ電子部品」の持川社長(近藤芳正)もコンプライアンス(法令順守)的に問題ありそうな人物である。銀行には知られたくない不正経理があるのかもしれない。

そういうわけで・・・太一もまた「嫌がらせ」のターゲットになる資格は充分なのだった。なにしろ、原作的には主人公である。

そうなると・・・倉田一家の他のメンバーも同様なタイプということになるだろう。

妹の七菜の元カレである辻本正輝(藤井流星)は七菜の親友である保原万里江(足立梨花)によればものすごいストーカー気質らしい。

若春子(「あまちゃん」のゴーストシンガー)とマメリン(「あまちゃん」のアイドル)の時空を越えた友情なんだな。

健太と七菜の母親である珪子の通う陶芸教室には・・・嫉妬深そうな主婦・下村民子(堀内敬子)も通っているし・・・講師の波戸清治(眞島秀和)は異常者をやらせたら天下一品の配役である・・・そんなことはないと思うぞ・・・。

つまり・・・倉田一家は・・・「ねらわれたご家族」なのだった。

雨の夜・・・倉田家周辺には怪しい人影が出没する。

みんな・・・フードをかぶって怪しげである。

健太を追いかけた男は・・・洗練されたファッションを身につけてショートホープの愛煙家であること以外には顔も名前も不明である。

フードをかぶったのは・・・事件に興味を持つ明日香・・・妹のストーカー・・・そして・・・陶芸教室の波戸先生だった・・・。

波戸先生は明らかに変質者の眼差しでニヤリと笑うのだった。

一同爆笑の瞬間である。

そして倉田家には「たのしいお宅ですね。またおじゃまします」とファクシミリが電送されるのだった。

はたして・・・健太とその家族は・・・この危機を乗り越えることができるのか・・・。

そして・・・月9としては健太と明日香がキスするのか・・・。

さらに・・・七菜は「ななな」と打つだけで変換される・・・いや、またしても凌辱対象なのか・・・まあ・・・そこが一番気がかりである。

相葉主人公のドラマはまたしてもレギュラー・レビューの当落線上を彷徨っているな。

これは妹が頑張るしかないんだな。

まあ、チョコレートの時はそれでもダメだったけどな。

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ファーストクラス

隣のレジの梅木さん

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2015年4月13日 (月)

死而後已の四字、言簡にして義広し・・・いっそ死んでくれたらとセイラさん(宮崎香蓮)

テロリストのリーダーにしか見えないという意見もある吉田松陰だが・・・それはある意味正しい。

そもそも・・・テロリズムを愚かと感じる人にはテロリストの心情を正しく理解することは困難なのである。

しかし、それではそういう愚かな行為の指導者が何故、偉人の列に加わっているのかという問題が残る。

明治維新という名の政権交代劇がいつ始ったのかは異論があるが・・・安政の大獄から・・・という考え方がある。

安政の大獄による刑死者は水戸藩家老・安島帯刀、福井藩士・橋本左内など多数いるが、長州藩士としては吉田松陰ただ一人である。

水戸藩主・徳川慶篤や福井藩主・松平春嶽が隠居・謹慎処分になっているのに対し、長州藩主は処分を免れている。

吉田松陰も死罪は充分に免れたわけだが・・・老中の暗殺計画を自ら進んで告白したことにより、斬罪となったのだ。

結果として長州藩が倒幕に成功した時・・・その最初の戦死者が吉田松陰だったということになるわけである。

もちろん、結果論だが・・・吉田松陰が教育者であったことが・・・長州藩の動向に影響を与えたことは間違いない。

長州における倒幕の立役者はほぼ松下村塾の縁者であった。

つまり・・・吉田松陰が死ななければ明治維新は起こらなかったかもしれないのである。

倒幕は幾多の屍の上に成立するが・・・その先駆者の名誉が吉田松陰に捧げられる由縁である。

松陰は武士の心得たる「士規七則」を唱えた。

その最初は「およそ生まれて人たらば、宜しく人の禽獣に異なる所以をしるべし」で始るが、最後は「死而後已」で締めくくられる。

「死而後已(死ぬまで止むことなし)という四字に込められた意義は大きい。堅忍果決(決めたことを果たすために強く忍ぶこと)も確固不抜(物事に動じない精神力)も死而後已の覚悟がなければ成立しないのである」というのが「士規七則」の結論なのである。

これこそが「己の死」を供物として捧げる吉田松陰の尋常ではない起爆力の奥義なのだ。

「とにかく俺が死ななければ何も始まらない・・・」というわけである。

「死んで花実が咲くものか」とは相容れぬ話だ。

吉田松陰は言わば賢くも正しい聖なるテロリストなのである。

で、『花燃ゆ・第15回』(NHK総合20150412PM8~)脚本・大島里美、演出・安達もじりを見た。例によってシナリオに沿ったレビューはikasama4様を推奨します。今回は野村靖・入江すみ兄妹の兄・入江九一の描き下ろしイラスト大公開でお得でございます。一人、また一人と松下村塾の英霊たちが顔を揃えて行く・・・壮観でございます。江戸幕府・大日本帝国・日本国と名称を変えるこの国の妖しさが匂い立ちますねえ。はたして・・・国家というものはどこまでが連続的で・・・どこまでが不連続なのか・・・誠に悩ましいものでございます。とにかく・・・どんなに愚かで・・・どんなに命を粗末にして・・・どんなに馬鹿馬鹿しくても・・・そういう幾多の犠牲の元に今があると知ることが何よりも大切なのではないかと思う今日この頃・・・今回は文の嘆きと松陰の叫びの交差点・・・なかなかに素晴らしい出来栄えだったと考えます。もはや名作大河の香りがいたしました。

Hanam0151600年の関ヶ原の合戦から大坂の陣や島原の乱などの内乱鎮圧戦争を経て一揆などを除けば徳川幕府は250年を越える平和を維持してきた。幕藩体制において戦争は夢のまた夢となったのである。たかだか七十年の平和で平和ボケしてしまう民衆がどのくらいボケていたのか・・・想像もできない状態なのである。その中で一部の先覚者たちが恐ろしい百年・・・戦争の世紀を予感していたとしも・・・それを実感できる民衆はいなかったのだ。しかし、ユーラシア大陸の片隅で生まれた覇権主義者たちは圧倒的な科学力でアジアの眠れる国々を容赦なく征服し始めた。黒船はやがて巨大な戦艦となり、陸には戦車が疾駆し、大空を戦闘機や爆撃機が支配し、海中へ宇宙へと超兵器は次々に生み出され、やがて神の領域へと足を踏み入れた人類は放射能をまき散らし、地球さえも破壊する軍事力を手にする。その幕開けこそが・・・安政の大獄なのである。一方的な侵略に屈しないために・・・総力戦に耐えうる国家を創設しなければならない。幕末の知的巨人たちは恐ろしい洞察力で・・・その必要性を認識していたのだった。眠れるものと覚醒しようとするものの軋轢。それが幕末動乱の真実である。

長州藩の江戸藩邸と京の長州屋敷、そして萩城下の文書連絡は御用商人の定期便や、急使の往還などの他、御用で移動する士族への委託など様々な手段がある。公儀隠密はそのすべてを検閲するわけではないが・・・指令により吉田松陰の関係者への監視は重くなっている。江戸から京を経由して廻船で萩に帰国する入江九一は船中で睡魔に襲われた。

春花の術で九一を昏睡させた公儀隠密・松羅の亀太郎は九一の荷を改める。

久坂や高杉など松陰門下からの手紙を速読し、亀太郎はすばやく姿を消した。

夜の海に飛び込んだ亀太郎は綱をたぐり海上に潜ませた忍び船にたどり着く。

綱を解き、浜へと漕ぎ出しながら亀太郎は報告に想いを巡らせる。

松陰の弟子たちは口を揃えて軽挙妄動を慎むように師を諌めている。

その軽挙の中身については秘されているが・・・松陰が門下に宛てた文には仔細が述べられていたのである。

「老中暗殺のこと」

「藩主を誘因し天子に攘夷の許しを得ること」

いずれも穏やかならぬ文面だった。

すでに忍びの掟に反し、松陰に心酔しつつある亀太郎はできるなら報告に手心を加えたいところだった。

しかし、江戸にも公儀隠密がいて監視している以上、うかつなことをすれば亀太郎に疑惑がふりかかるのである。

亀太郎は松陰の暴走に困惑していた。

江戸における公儀隠密の首領は塚原一楽斉こと山岡鉄舟である。

鹿島忍びの流れを組む塚原一族は家康以来の忍び奉公を続けている。

一方で蔵奉行を務める小野一族は文書改めの集団でもあった。

吉田松陰の私設・情報機関・松下村塾とは比べ物にならない公儀隠密の諜報中枢である。

小野の龍三郎は塚原一楽斉宅の奥の間に定期連絡に現れた。

「すると・・・吉田と申すものは老中暗殺を企てていると申すか」

「その方法までを文に認めております」

「たわけか・・・」

「いかがいたしましょう」

「まもなく・・・お頭が長崎での表の務めを終えて江戸に戻ってきなさる」

「半蔵様が・・・」

公儀隠密総帥・服部半蔵の当代は勝海舟なのである。

「吉田松陰は半蔵様のご学友で・・・手心を加えろというお達しだ」

「しかし」

「まあ・・・すでに獄中にある梅田雲浜との関係からお咎めなしということには参るめえ」

「御意」

「その・・・老中暗殺だの、藩主誘因だのという物騒な文言は秘して・・・梅田とご政道に対する非難あること・・・許し難しというあたりで手を打とう」

「それならば・・・遠島ぐらいですみますな・・・」

「第一、毛利様は・・・将軍継承においては中立のお立場だ・・・老中様方も無暗めったら敵を増やしたくはねえからな」

「では・・・吉田についてはそのように・・・次は橋本についてでございます」

長州藩では藩主・敬親が胸を痛めていた。

藩の宝であり、師と仰ぐ松陰の言動について目付からただならぬ報告があがっている。

「世話が焼けるのう・・・」

「近く、幕府より召喚の報せがあるやもしれませぬ」

御側衆筆頭となった長井雅楽は表情を変えずに告げる。

「なんとする」

「もとより・・・松陰先生は・・・謹慎の身・・・幕命とあれば従う他ありません」

「・・・」

「しかし・・・松陰先生は江戸にも慕う者多い学者でございますれば・・・それほどの咎めはございますまい」

「そうか」

「本来・・・この粛清は将軍継承に反対のものに対する処罰でございます。松陰先生の言動はそれとは無関係でございますれば・・・」

「それもそうじゃのう」

「ここは素直に召喚に応じれば無罪放免ということになりましょう」

「うむ・・・ならばそうせい」

しかし・・・松陰の信念は・・・俗人の及ばぬ境地に達していたのだった。

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2015年4月12日 (日)

ドS刑事どえ~す(多部未華子)私は貴女の玩具でございます(大倉忠義)

さて・・・春ドラマの幕開けである。

(月)未定

(火)未定

(水)未定

(木)未定

(金)「アルジャーノンに花束を」

(土)未定

(日)「花燃ゆ」

・・・だけどな。

「花」がかぶってるな。

春だからな。

コレは・・・確定じゃないのか。

(水)(木)の裏表と・・・(土)の裏がな・・・。

しかし・・・(木)(金)は重量級が来るんだから・・・軽くしておきたい気持ちはあります。

で、『ドS刑事・第1回』(日本テレビ20150411PM9~)原作・七尾与史、脚本・川崎いづみ、演出・中島悟を見た。手堅い感じのユーモア・ミステリのドラマ化である。SMという性的倒錯がモチーフになっているが「矯正執行」ほどの深みはない。支配と被支配の関係性が曖昧だからな。どちらかと言えばわがままお嬢様物語である。性的快楽ではなく苛めっ子の喜びを肯定しているわけである。主題は「言葉責め」で・・・精神的虐待を楽しむことの面白さを追求していくのみである。まあ・・・考えようによっては・・・凄い問題作だ。つまり・・・。

人を苛めるって素敵だよねえ・・・。

・・・という話だ。

川崎青空警察署(フィクション)管内の派出所「青空みなみ交番」(フィクション)勤務の警察官・代官山脩介巡査(大倉忠義)は「廃工場でチンピラが暴れている」という通報を受け、現場に向かう。

おっかなびっくりで廃工場を探査した代官山は血まみれの死体を発見し、腰を抜かすのであった。

出動する川崎青空警察署刑事一課強行犯捜査係・・・。

メンバー構成は以下の通りである。

課長 白金不二子警視(吉田羊)

係長 有栖川恒夫警部補(勝村政信)

刑事 近藤徳二巡査部長(伊武雅刀)

刑事 中根昌信巡査(中村靖日)

刑事 浜田宗一郎巡査(八乙女光)

現場に・・・赴任したての刑事が姿を見せる。

警察庁次長の父親に溺愛され・・・人事権にさえ介入するという我儘お嬢様刑事と噂される黒井マヤ巡査部長(多部未華子)である。

上司の白金課長や、有栖川係長を無視して・・・勝手に捜査を開始するマヤヤ(自称)に呆れる一同。

「警察は縦社会です」

「私の父はその社会の雲の上の存在なのよ」

「そんな韓国の航空会社ご令嬢みたいなこと言われましても」

死体を発見してパニックに陥り、現場を荒らしてしまった代官山の腰抜けぶりを目にしたマヤヤはたちどころに父親におねだりして辞令を下すのだった。

マヤヤの相棒、大韓・・・じゃなかった刑事・代官様誕生である。

「そんなことを勝手に・・・」

「正式な辞令です」

「しかし、パートナーをあなたにするとは決まってないわ」

「すべて決定事項です」

命令系統を完全に無視するマヤヤに唖然とする白金課長だった。

捜査一課は廃工場周辺で目撃された不良グループが何らかの事情を知っているものとして捜査を開始する。

しかし、父親の威光で捜査費を濫用できるマヤヤは街の情報屋を使い、独自の捜査を展開するのだった。

捜査一課は不良グループのリーダーを重要参考人として留置し、取調を強行するが男にはアリバイがあった。

死体を司法解剖した京浜医科大学法医学・ケンケン准教授(ミッツ・マングローブ)のセリフがあまりにも下手すぎてよくわからなかったが・・・死体は死後に損壊されていた。

「つまり・・・複数犯に見せかけた単独犯ということね」

「よく・・・今の下手なセリフ回しで判断できますね」

「台本通りよ」

「ああ」

被害者の青山(小林健一)の部屋を捜索したマヤヤと代官様はベッドの下から「謎の女の写真」を発見する。

「美人ですね」

「どう見ても女装した矢柴俊博だろうが」

青山の人間関係を調査するために・・・青山が警備員として働いていた信用金庫に聞き込みに向かう二人。

応対したのは副支店長・五十嵐(矢柴俊博)だった。

「あの人の声・・・50%の確率で・・・通報者です」

「代官様・・・50%というのは半々・・・つまりどちらとも言えないってことだろうがっ」

「ですね」

とにかく・・・尾行を開始する二人。

「なんで・・・尾行するんです」

「殺された青山と五十嵐の間にトラブルがあったという報告があった」

「誰から?」

「一般市民の情報提供だ」

五十嵐は女装サロンの店内に消えるのだった。

「代官様、潜入捜査だ」

「え」

「一部視聴者はイケメンの女装に萌えるのだ・・・変態だからな」

一部お茶の間の期待に応えるだけのために女装する代官様。

マヤヤは父親におねだりして捜査令状を取得するのだった。

女装した矢柴俊博にそっくりの五十嵐に驚く女装した代官様。

マヤヤは五十嵐のロッカーから凶器を発見するのだった。

店内に乗り込むマヤヤ。

「お話を伺いたい」

「あなた、だあれ・・・」

「とぼけなくてもいいですよ・・・副支店長」

「いやあ・・・」

「あなたは女装趣味を青山に知られ、強請られていた・・・そして口封じのために殺害したと認めますか」

「誰からも好かれる男でいるための・・・ストレス解消だ・・・女装くらいいいじゃないか」

「誰からも好かれる?」

マヤヤの眼光は鋭さを増し、獲物を見つめる猫の形相となる。

「あなたの上司に聞きました・・・あなたが部下になってからずっと不快な気分が続いていると・・・あなたの部下全員が出来ればあなたと会話したくないと言ってます・・・あなたの奥さん、浮気していますよ。浮気相手とできれば再婚したいと言ってます。あなたに抱かれて快感を覚えたことは一度もないと。今では同じ部屋で呼吸するのも苦痛だそうです。あなたの娘さんはあなたの娘であることが自殺したくなるほど嫌だそうです。できれば死んでほしいと言ってました」

「ひでぶ」

「うわああああ・・・もうやめてあげてください」と代官様。

「代官様、確保だ」

号泣する容疑者を逮捕するもらい泣きの代官山刑事だった。

かけつけた捜査一課たち。

「正式な手順をふみなさい」と課長は叱責する。

「すべて・・・許可されています」

「私は許可していません」

「課長の許可よりも・・・警察庁次長の許可の方が重い・・・それだけのこと」

「・・・」

定年間違い近藤刑事は重々しくつぶやく。

「代官山くん・・・きれいだ」

「うわあああああああああああああああああああああああああっ」

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2015年4月11日 (土)

アルジャーノンに花束を・・・胸いっぱいの愛をこめて(山下智久)

古典的名作のドラマ化である。

原作者のダニエル・キイス氏は2014年6月に薔薇という名の花を咲かせる春の夢から覚めて故人となった。

ある意味でこのドラマはレクイエムなのだろう。

物語は1959年に生まれ、1978年には小尾芙佐氏による日本語訳が刊行された・・・知性とは何かについて多くの示唆を世界に与え続け、今に至る。

必読書などというものは押しつけがましいが・・・本書を読まずしてSFは語れないとキッドは考える。

現在でも書店であるいは図書室で簡単に手に入るものと信じている。

それでも・・・ざっと要約を知りたい方は天使テンメイ様の記事を推奨いたします。

で、『アルジャーノンに花束を・第1回』(TBSテレビ20150410PM10~)原作・ダニエル・キイス「Flowers for Algernon」、脚本・池田奈津子(脚本監修・野島伸司)、演出・吉田健を見た。2002年には脚本・岡田惠和による連続ドラマ化が行われている。原作のチャーリイ・ゴードンにあたる人物はユースケ・サンタマリアが演じている。基本的には二時間ドラマでも表現できる素材なので・・・連続ドラマでは脚色が重要となってくる。2002年版はかなり秀逸な出来だったと記憶している。原作者に感謝したいのはタイトルが「ネズミの名前」がらみであることである。舞台を日本に移しても・・・ネズミの名前が「アルジャーノン」で何の問題もないのである。原作が書かれた時代から・・・知的障害者についての問題はかなり変容してきた。それても家族に知的障害者を持つ人々にとってはある種の抵抗を感じさせる物語であるのかもしれない。それは時に苦い感情を呼び覚ますからである。しかし・・・この物語が知的障害者の地位の向上に関与していることは間違いないだろう。

クールに決めようぜ

俺はマジなのさ

学校じゃおしえてくれないことを

二人でためしてみようじゃないか

ぶちこんでやる

ぶちこんでやる

ぶちこんでやる

お前にたっぷりぶちこんでやる

おらおらおら

「花屋」の店員である白鳥咲人(山下智久)は配達者の助手席に座っている。

運転手は柳川隆一(窪田正孝)である。

カーラジオからは「胸いっぱいの愛を/レッド・ツェッペリン」が流れている。

咲人は車の運転に憧れているが・・・免許を取得することは難しい・・・知的障害者なのだ。

その知的水準は・・・筆記試験の問題が読めないレベルである。

ひらがなを覚えるのがやっと・・・なのである。

咲人は三十歳の青年だが・・・知能は幼児の域を脱していないのだ。

隆一はそんな咲人の面倒を見るのも仕事のうちだった。

咲人は昔なら「馬鹿」とか「間抜け」とか「低脳」とか呼ばれただろうが・・・隆一はただ「咲ちゃん」とだけ呼ぶ。

もちろん・・・咲人の知能に問題があることを知っての上である。

咲人は青空に黄色い風船が浮かんでいるのを発見する。

その光景は咲人の遠い記憶を刺激する。

遊園地で世界で最も有名なネズミを象った黄色い風船が空高く舞い上がって行く。

手放してはいけないものを・・・咲人は手放してしまったのだ。

「何で離しちゃうの?・・・何で何度言っても離しちゃうの?」

ママ・・・咲人の母親である白鳥窓花(草刈民代)は嘆く。

「そんなことくらいいいじゃないか」

パパ・・・父親の白鳥久人(いしだ壱成)は咲人を庇う。

しかし・・・ママは咲人の知的障害を認めることができないのだ。

「バカな子は嫌い」

その言葉は咲人の心に突き刺さる。

その頃・・・興帝メディカル産業の研究室ではマウスを使った実験が行われていた。

出口を求めて迷路を走るネズミのアルジャーノン・・・。

分岐点には○×の記号によって正しい順路が示されていた。

アルジャーノンは記号の意味を認知して・・・出口への最短距離を進む。

ネズミの知性化に成功する蜂須賀大吾(石丸幹二)の研究チーム。

研究員の望月遥香(栗山千明)は蜂須賀に賞賛の眼差しを注ぐ。

遥香は蜂須賀に上司と部下を越える執着を感じている・・・。

帰宅した遥香に花束が届く。

花屋は「ドリームフラワーサービス」・・・配達員は咲人と隆一だった。

「おとどけです」

「どなたからですか」

「どなた・・・どなた」

「ふざけないでください」

「すいません・・・こいつ、ちょっと足りないもんで」

隆一の説明で・・・事情を察する遥香だった。

咲人は遥香のイヤリングに心を奪われていた。

イヤリングに触れる咲人・・・。

「え」

「すいません・・・キラキラしてれば何でも触っちゃうんです」

「ああ」

「あの・・・会社にクレームの電話とか・・・勘弁してください」

「しませんよ」

遥香は送り主が蜂須賀であることに心を奪われていた。

薔薇には「クラシック音楽のコンサート」のチケットが添えられていた。

遥香は期待に胸が膨らむのだった。

部屋を出た咲人は煙突の上に風船を発見する。

お詫びに手間取った隆一は煙突を登っている咲人を発見する。

「パパは言いました・・・風船には夢がつまっていると・・・ママは夢のつまった風船を咲人に失くしてほしくないからおこったんだ・・・ぼくはおりこうになりたい・・・ママはバカがきらいです・・・おりこうになるとママが好きになってくれます・・・だから・・・おりこうになりたいです」

咲人は煙突を登って高みへとたどり着く。

その危うさに・・・隆一は眩暈を感じるのだった。

「ドリームフラワーサービス」の経営者である竹部順一郎(萩原聖人)は刑務所に新たな従業員を迎えに来た。

問題を抱えた従業員を受け入れるのが竹部の経営方針なのだった。

出所した檜山康介(工藤阿須加)は母親(朝加真由美)のために父親を刺した男だった。

しかし、母親は康介を捨て新しい男の元へ去っていた。

「とにかくさ・・・一生懸命働いてくれればいいから」

「あの・・・俺・・・」

「無理に話さなくていいよ・・・うちは・・・君みたいな事情のある奴ばかりだから」

不良少年や非行少年を経て社会の底辺である花屋の配達員に踏みとどまった青年たち。

もちろん、再底辺の犯罪者との境界線に立っているわけである。

康介もまた更生して社会復帰を目指す若者である。

しかし・・・康介は「悪事」を働いた意識は低い。自分の置かれた立場に不条理なものを感じている。それは知性がある証でもあった。

だが・・・健全な精神は正義の鉄槌もまた暴力であると認識することを求められる。

それが社会制度というものなのである。

傷ついた獣である康介は仲間たちとの友好関係を疑うのであった。

班長である鹿内(勝矢)の歓迎の握手さえ拒む康介。

仲間たちはそういう康介に共感を伴った苦笑を禁じ得ない。

同じ穴の狢(むじな)だからである。

携帯端末による株取引に熱中している隆一もまたニューフェイスと距離を置く。

しかし・・・知性に欠陥のある咲人にはそのような複雑な人間関係を適切に処理することが難しい。

親愛の情を示すためにグーチョキパーのジェスチャーをするだけだ。

「あいきょでしょ」

「何だ・・・てめえ・・・」

「なかよし」

「何だよ」

嘲笑による挑発行為と誤解した康介は戦闘体制に移行しかける。

「こいつ・・・生まれつき・・・ちょっと足りねえやつなんだ」

隆一のフォローで漸く、事情を察する康介だった。

正義感の強い康介は・・・社会的弱者に対する自分の粗暴なふるまいを恥じる。

自分の無知を恥じ、想像力が働かなかったことを恥じる。

しかし・・・それを素直に表現することはできない。

痴呆に痴呆というレッテルが貼られていないことを忌々しく思うからだ。

最初からそういう奴だと知っていれば恥をかかなくてすんだのだ。

康介の複雑な思いに揺れる。

すべては知性のなせる業(わざ)である。

難治性神経疾患の研究者であった蜂須賀はALG(アルファリポキサンチングルコシド)という酵素をニューロンに投与し高頻度電気刺激を与えることで選択した脳領域にシナプス形成を誘導することが可能であると考えた。

マウスによる検証実験で・・・脳神経細胞のシナプス結合促進が明らかとなり・・・平均的マウスの10倍の知力を持つ「アルジャーノン」が誕生する。

蜂須賀はこれを「アルジャーノン効果」と名付け、人体への応用を視野に入れる。

しかし・・・脳に関連した人体実験には社会の抵抗が予想されていた。

「臨床試験は時期尚早では・・・」と研究員の小久保(菊池風磨)は懐疑的である。

「蜂須賀先生の総合的判断です・・・問題ないでしょう」と遥香は牽制する。

「まあ・・・科学に絶対はありませんからね・・・とにかく・・・アルジャーノンの管理は徹底してください・・・今の処・・・唯一の成功例です」

蜂須賀の研究はノーリスクとは言えない現状だった。

しかし、成功例がある以上、「脳神経細胞を目覚めさせ脳を最大限に活用できるアルジャーノン効果はあります」と断言できるのだった。

アルジャーノンは人間たちの言葉にじっと耳を傾けていた。

その知能はさらに高まりつつあった。

三つのコップのどれに玉が入っているかを当てるギャンブルで隆一は小金を稼いでいた。

玉を一つ隠し持つトリックで金を巻き上げるのだ。

古典的なイカサマ賭博である。

背後で観察していた康介はコップの底に粘着テープが貼られている仕掛けを見破っていた。

だからといって口出しをしようとは思わない。

休憩時間に何をしようとそれぞれの自由だった。

しかし・・・咲人が千円を巻き上げられた時には静かな怒りを感じる。

それは・・・ルール違反じゃないのか・・・と感じるからだった。

一般人と障害者に対する差別感情が康介の倫理観に連結されている。

それもまた知性によるものだった。

蜂須賀はヨハン・ゼバスティアン・バッハの「ゴルトベルク変奏曲」を鑑賞していた。

研究資料を持った遥香が入室する。

「この曲・・・お好きなんですね」

「天才による美の創出の極地がここにある。人間の知能が未開発である証拠だ。誰もがバッハのような知性を獲得すれば・・・人類は世界をさらなる高みに導くことになるだろう。この世から・・・愚かさは消え・・・素晴らしい新世界がやってくる・・・」

「アルジャーノン効果に人類の未来がかかっているのですね」

「その通りだ・・・邪悪な犯罪・・・不経済な戦争・・・すべては知性の貧困がもたらすものだ・・・アルジャーノン効果はそれを必ずや打破すると・・・私は信じる」

「私も信じます」

師弟は危険な賭けに猛進するのだった。

「そらのそ・・・たんぼのた・・・ぬいぐるみのぬ」

咲人はあいうえおカードでひらがなを覚える努力を続けていた。

しかし・・・それは「ぬ」ではなく「ね」だった。

「ねずみのねだよ」と口を出す康介。

「ねずみのね」

「ねずみの絵を描いてあるやつはないのかよ」

「ない」

「毎晩・・・勉強してるのか」

「ばかなこ・・・きらいです」

「仕方ないだろう・・・生まれつきなんだから・・・」

「おりこう・・・なりたいです」

「利口になって・・・どうする」

「ブッブー」

「車か・・・お前、運転したいのか」

「みんな・・・うんてんします」

「でも・・・免許は無理だろう・・・」

「ゆめ・・・てをはなしたら・・・とびます」

「え」

「・・・」

「・・・お前も飲むか」

缶ビールを勧める康介。

首をふって拒否する咲人。

「ろぼっと・・・なります」

「ロボットって・・・まあ・・・いいや」

馬鹿は愛されるものだ。

愛とは高いところから低いところへと流れるものだからである。

康介はすでに咲人を愛し始めている。

「花屋」の定休日。若者たちは異性を求めて街へ出た。

隆一には作戦があった。

「咲ちゃんは・・・黙っていれば極めつけのイケメンなんですよ・・・三十歳とは思えない永遠の美少年だ」

「かもな」

仲間たちは認める。

「だから・・・女を釣る餌にするんです・・・黙って立ってれば・・・向こうから・・・寄ってくる」

「なるほど」

「こんにちは・・・かわいいね・・・これで・・・もう大漁まちがいなしっす」

しかし・・・思い通りにはならず・・・仲間たちは餌から目を離す。

腰の軽い女が餌の美貌に食いつくが・・・遅れてやってきた女の男が因縁をつけるのだった。

「人の女に手を出してんじゃねえよ」

「だめ」

「だめに決まってんだろう」

「こんにちは」

「何」

「かわいいね」

「ちょっと・・・顔貸しな」

「かおかし・・・」

その頃・・・何者かがアルジャーノンの飼育ケースを解錠していた。

アルジャーノンは自由を感じる。

アルジャーノンは旅に出た。

暴行された咲人はパトロール中の警察官に保護された。

竹部が引きとりにやってくる。

「お手数かけました」

「職務質問したら泣きだしちゃって・・・ねずみのねしか言わないし・・・緊急連絡カードを保持していたので」

「咲人・・・おまわりさんはこわい人じゃないんだよ」

「うえっ・・・うえっ・・・てっぽうバンバン・・・うえっ・・・ごめんなさい」

「いや・・・バンバンしないから・・・アメリカじゃないし・・・」

「はくじん・・・こくじん・・・バンバン」

「君・・・黒人じゃないでしょ」

「テレビで見たのか・・・咲人・・・頭いいなあ」

竹部は咲人を落ちつかせるためにハンバーガーを与える。

「ほら・・・食べろ・・・あいつら・・・お前をほったらかしにして・・・しょうがねえな」

「・・・」

「あとで怒ってやるからな」

「怒っちゃ・・・だめです」

「あったかいうちに食え」

「どうしたら・・・おりこうになれます」

「いいんだよ・・・お前はそのままで」

「・・・」

「お前の親父さんには世話になったんだ・・・頼まれたからには俺はお前をずっと守ってやる」

「ばかなこ・・・きらいです」

「え」

「ばかなこは・・・きらい・・・ばかなこきらい・・・ばかだめ」

「おい」

パニックに陥り走りだす咲人。

「おい・・・咲人・・・待て・・・待てったら」

追いついた竹部は咲人を抱きしめた。

たまらなく可愛いかったから・・・。

仲間たちとは別行動の康介は連絡のとれない母親に会いに行き、冷たい仕打ちを受けていた。

花屋の共同浴場で康介は後悔の念に涙する。

そこへ傷だらけの咲人が入ってくる。

「いたい」

「お前・・・どうした・・・誰にやられた」

「しらない」

「かばってるのか・・・俺は弱い者いじめは嫌いだ・・・」

「・・・」

「そうか・・・余計なお世話か・・・」

アルジャーノンには発信器が取り付けられていた。

研究員の杉野史郎(河相我聞)は捜索を続ける小久保を叱責する。

「まだ・・・見つからないのか」

「ネズミとは思えない移動速度なんですよ・・・アルジャーノンの奴・・・交通機関を利用しているみたいだ」

「なんだって」

「鉄道やバスに乗っているのかもしれない」

「・・・」

アルジャーノンは花屋を訪問していた。

「ねずみのね・・・」

窓の外のアルジャーノンを招く咲人。

「こんにちは・・・」

「・・・」

「かわいいね」

「・・・」

「おなまえは・・・」

アルジャーノンはあいうえおカードに前足を乗せた。

「あ」

アルジャーノンは頷いた。

「る・・・じ・・・や・・・の・・・ん」

「・・・」

「あるじやのん」

二人は友達になった。

「おうち・・・どこ」

「・・・」

「し・・・ぶ・・・や・・・しぶや・・・しってます」

河口梨央(谷村美月)は女友達の小出舞(大政絢)に再会する。

資産家で企業経営者の娘である梨央と父親が横領の罪で会社を追われた舞は疎遠になっていた。

「元気だった?」

「あんたの父親が私のパパをクビにした割にはね」

「・・・」

「分かってる・・・悪いのは私のパパ・・・でも私たちの関係も終わりでしょ?」

「・・・」

「もう・・・お嬢様のあんたとは棲む世界が違うから」

「でも・・・友達でしょう」

「今夜、クラブでパーティーあるの・・・ただし彼氏同伴だよ」

「・・・」

「ほら・・・無理でしょ?」

康介は隆一に絡んでいた。

「あいつのこと殴ったの・・・あんたか」

「違うよ・・・」

「あいつのこと・・・利用するの・・・やめろよ」

「何言ってんだ・・・俺はあいつのこと可愛がってるぜ」

「だったら・・・金返してやれよ」

「イカサマだからか」

「フェアじゃないだろう」

「あいつがパーだからか・・・あいつを特別扱いして・・・蔑んでるのはお前の方じゃないのか」

「・・・」

「前科者の新入りが分かったようなこと言うなよ」

康介は逆上した。

やりきれない気持ちは出口を探していた。

康介は隆一を殴り倒した。

隆一は鋏を掴んだ。

にらみ合う二人。

咲人は暴力沙汰に怯える。

「咲人・・・俺たち・・・友達だよなあ」

「うん」

「あんたみたいな奴のこと・・・空気が読めないって言うんじゃないの」

一触即発である。

咲人は一輪の黄色い花を翳した。

「おはな・・・ちょっきん」

「・・・」

「あいきょでしょ・・・あいきょでしょ・・・」

二人は咲人の獲りあいをしても虚しいことに気がついた。

咲人は誰のものでもない・・・みんなのものなのだ。

蜂須賀とのデートを期待していた遥香はコンサート会場に見知らぬ男が現れて驚く。

蜂須賀は教え子同士のお見合いをセッティングしていたのだった。

「私・・・帰ります」

「それは残念だ」

咲人はアルジャーノンを家に帰そうと思った。

康介は咲人を見咎める。

「どこへ行く・・・」

「しぶや」

「一人で大丈夫か」

「いけます」

「俺の携帯持って行け・・・なんかあったら・・・電話しろ」

パートナーを求めて渋谷を彷徨う梨央と偶然衝突する咲人。

「咲人って妹いるんですよね」

「いるね」

「これって・・・近親相姦的なアレですか・・・実は兄妹みたいな」

「かな」

「またかって言われますよね」

「だね」

一部お茶の間の心配をよそに・・・経済力でパートナーをドレスアップする梨央だった。

「あらら・・・マジできたんだ」

「彼氏・・・連れて来た・・・咲人さん」

「すげえ・・・パパに頼んで発注したの・・・」

「・・・」

「じゃあ・・・乾杯しなくちゃ・・・」

「乾杯」

「ちがうよ・・・シャンパンを口移しでね」

素直に咲人に口移しを敢行する梨央。

「どうして・・・来たの?」

「友達だから・・・」

「こっちが心配になるよ・・・友達として」

咲人はロボットのように踊りだし・・・たちまち酔い潰れた。

アルジャーノンはダンスフロアを走ってみた。

遥香は蜂須賀を訪ねていた。

「今日は・・・休めと言ったのに・・・」

「・・・」

「どうやら・・・サプライズは失敗だったようだな」

「私には恋愛は必要ありません・・・ただ、先生にお仕えしたいのです」

「それだけでは人生を楽しむことはできないよ」

「いいんです・・・アルジャーノンを逃がしたのも私です」

「何だって」

「小久保は先生の研究に懐疑的です・・・アルジャーノン紛失の責任を取らせて解雇すべぎす」

「馬鹿な・・・そんな思いつきでアルジャーノンを逃がしたのか」

「先生のためです」

「もしも・・・アルジャーノンを失ったら・・・解雇されるのは君だ」

「え」

「帰りたまえ」

「そんな・・・私・・・先生のことがす」

扉は閉められた。

それにしても・・・栗山千明と大政絢の二枚使いで・・・谷村美月がキュートなお嬢様。

見事なキャスティングだな。

もうまとめて処理しておくしかないな。

かわいいよ・・・研究バカ・・・かわいいよ。

かわいいよ・・・遊んでる風の女・・・かわいいよ。

かわいいよ・・・巨乳のお嬢様・・・かわいいよ。

「誰か・・・携帯貸してくれ・・・咲人に連絡したい」

「自分のがあるだろう」

「俺のは・・・咲人に・・・」

「使えよ・・・」

敵に塩を送る隆一だった。

「もしもし・・・」

「もしもし・・・」

「え」

「ごめんなさい・・・咲人さんと一緒なんですけど酔っちゃってほんの一口シャンパン飲んだだけなんですけど」

非常階段で咲人を介抱する梨央。

運命が咲人を高みに向かわせるのだ。

「今からお友達が迎えに来てくれるって・・・ごめんなさい、私門限とっくに過ぎちゃって・・・ママにしかられちゃう・・・私の番号・・・携帯に入れといたからよかったらまた電話ください・・・ありがとう・・・何かとっても楽しかった」

咲人はママの夢を見る。

幼い妹の上に落下した咲人。

泣きだす妹・・・。

「何してるの・・・花蓮に何したの・・・私・・・もう嫌・・・無理よ・・・もう無理」

ママは泣き叫ぶ。

「妹の名は花蓮」

「近親相姦ネタ警報とりあえず解除だな」

「先は長いけどな」

知性とは何だろう。

わざわざ韓国まで行って雑貨店で万引きしようと決意する意志の力のことか。

そんな馬鹿は国外追放しろうと正直思う認識の力のことか。

ベット・ミドラーが歌う映画「ローズ」の主題歌の「ローズ」・・・。

最高の歌姫・ジャニス・ジョプリンに捧げられたレクイエム。

優れた知性を持つジャニスがヘロインの過剰摂取で死に至る選択の力のことか・・・。

アルジャーノンを追って遥香は咲人と邂逅する。

「キラキラ・・・」

「このイヤリングとアルジャーノンを交換して」

「あるじゃのん・・・ママ」

「そうよ・・・ママみたいなもの・・・アルジャーノンがいないと・・・あの人に許してもらえない」

咲人は袖からアルジャーノンを解放する。

色とりどりの花園で知的障害者はそれなりに幸福であるように見える。

無垢ゆえに・・・愛されて・・・守られて・・・。

愛は流れて行くと言う人がいる

考えても落ち込むだけだと

愛は危ないものだと言う人がいる

たちまち手首は血まみれになると

愛は犬が食事の前に感じる気分だ

永遠にお預けだったらどうしよう

関連するキッドのブログ→あしたのジョー

MR.BRAIN

Hcal001ごっこガーデン。星降るナイトクラブセット。エリ二期連続いきなりキス・シーンなのでス~。もう段取りとか気分とか・・・そういうものは無関係な時代なのですか?・・・でも・・・やることはやるのでス~・・・それが知性というものならば~やはりアイキョでしょ?まこ「時代を超越したミラーボール回りすぎ~・・・しょして・・・またもや・・・初回からキスでしゅ~・・・まさか・・・このままセカンドラブ的なものに・・・それは・・・ナイか?mariとりあえず、次は私の番ですよ~

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2015年4月10日 (金)

医師たちの恋愛事情(斎藤工)桜の花も散りまして(相武紗季)

自分の生まれた街で半世紀も暮らしていると変化に戸惑うことがある。

自分の生まれた病院が高層化されたりもする。

新病棟と旧病棟の落差に眩暈を感じたりもする。

巨大な組織のシステムの更新は興味深くもあり、馬鹿馬鹿しくもある。

人はどれくらい生きれば満足するのだろう。

長く生きた人を見送るのはそれなりにまったりするものだ。

それもまた人生だ。

遠い街で血縁者が死ねば出かけて行く場合もある。

近所で知人が死んでもそれを知るのは噂話だったりもする。

人と人のつながりは不思議なものだ。

生と死の間に病院があるのは都合がいい。

家族は死因を疑われることもなく・・・警察に取調を受けることもない。

それだけでも・・・医師という職業の存在はありがたい・・・という時代なのである。

で、『医師たちの恋愛事情・第1回』(フジテレビ20150409PM10~)脚本・秋山竜平、坂口理子、小山正太、演出・田中亮を見た。複数脚本家によるが・・・それほど乱雑な感じがしないのでいいチームなのだろう。冬ドラマでは「まっしろ」という暗礁に乗り上げて隕石が落下し奈落の底へ沈下していく難破船のような作品があったが・・・医療ドラマと恋愛ドラマのミックス・ジュースとしては・・・こちらはまあまあの滑り出しだったのではないだろうか。まあ・・・だからといって「踊る大捜査線」の青島みたいな性格のドクターが年上の美人女医と相合傘する場面が見せ場のドラマにうっとりしたりはできないのである。悪魔なものですから。

「心ポキ」では実年齢50才の女優が45才のヒロインを演じていたわけだが、こちらでは実年齢45才の女優が42才のヒロインを演じるわけである。つまり・・・年齢より若く見えるということなんですな。

一方、お相手の主人公は実年齢33才なのに35才の役である。つまり実年齢的にはひとまわり違うのにドラマでは七つ年上の女になっているのだ。

どんな事情なんだか知らないが・・・実年齢29才の相武紗季は31才の麻酔医である。

老醜漂うゲスト患者を演じる織本順吉は実年齢88才だ。

もうなんだか・・・それだけで胸がいっぱいになりました。

外科医・守田春樹(斎藤工)は手術技術のスキルアップを目指し、江洋医科大学附属病院にやってきた。先輩である第一外科准教授の仁志祐介(伊原剛志)を頼ったのである。

患者第一主義の春樹は医師ではない渡辺幹夫(生瀬勝久)が経営管理部長として君臨し、病院経営の黒字化を目指す姿勢に戸惑いを感じる。

赴任前夜、ホテルのバーで仁志と旧交を温めていた春樹は・・・結婚式場で急病人が出たという報せを聞き、駆けつける。

しかし、そこでは結婚式に出席していた外科医・近藤千鶴(石田ゆり子)が先着し、処置にあたっていた。

二人は協力して救命するのだった。

運命の出会いである・・・ドラマだからっ。

翌日、江洋医科大学附属病院で再会する二人。

折しも、カンファレンスルームでは春樹の前任者が・・・不適切な恋愛沙汰で病院を追われたことが問題になっていた。

「恋愛をする暇があったら医者として病院経営の黒字化を真摯に目指してもらいたい」

渡辺部長は釘を指すのだった。

もちろん・・・余計なお世話である。

何故か・・・すでに魅かれあう春樹と千鶴なのです。

しかし・・・先輩として春樹の行動に危うさを感じる千鶴と自分の正義を暴走させる春樹は前戯として小さな衝突を繰り返すのだった。

不妊治療中の内科医・市川友子(板谷由夏)や、シングルマザーの麻酔医・河合奈々(相武紗季)はそんな二人を生温かく見守るのだった。

奈々は結婚相手を募集中であるが・・・第一外科講師の高橋宗太郎(平山浩行)に誘われても応じない。高橋の本命が千鶴であることを見抜いているのである。

入院医療費の定額支払い制度を導入している江洋医科大学附属病院では入院から退院までには一つの病気しか治療しないのが基本方針である。同時に二つの病気を治療したのでは病院側の負担が大きくなるからであった。まあ・・・やや拡大解釈ですが。

また・・・各科における縄張り意識も強く、外科医が産科的施術を行うのもタブーであった。まあ、そういう設定ということですが。

少し、熱血要素強調の虚構化が過ぎている気もしますね。ま・・・ドラマだからな。

脚本家三人は医療技術担当、病院経営担当、恋愛担当なのか・・・。

全員、そこそこだからな。

「患者第一主義」の春樹は千鶴を巻き込んで産科の領域にあたる手術を実行し、渡辺部長のブラックリストに乗るのだった。

退院間際の患者・三浦(織本順吉)は窓から桜を眺めていた。

「もう少し・・・入院していたいのだが・・・」

「一度退院して・・・再入院してください」

「冷たいねえ・・・昔はもっと優しかったのに・・・」

「・・・」

「桜はねえ・・・散り際が一番美しいんだよ」

明らかに死相を浮かべる三浦だった。

主治医の千鶴にとって・・・三浦は新人時代に初めて担当してから長い付き合いのある患者だったのだ。

廊下で三浦に出会った春樹は症状を聞きだし、千鶴に追加検査を提案する。

「一度・・・退院してもらって外来を通してもらわないと・・・診療できないのよ」

「一刻を争う状態だったらどうするんです」

「大病院には大病院のやり方があるの・・・三浦さんだけを特別扱いにはできないのよ・・・手術の数をこなして・・・スキルを磨くためにここに来たんでしょう・・・それなら、病院の方針に従いなさい・・・ひとりの患者に時間をかけて寄り添いたいのなら田舎の小さな病院に帰りなさい」

「・・・」

退院する三浦に懇願する千鶴。

「必ず・・・明日、もう一度病院に来てね」

「・・・」

しかし・・・公園で倒れた三浦は緊急搬送されてくるのだった。

春樹は懸命に蘇生を試みるが・・・三浦は帰らぬ人となった。

病院の中庭で桜を眺める千鶴。

散りゆく桜が風に舞う。

「一昨日も命を救ったし・・・昨日も命を救った・・・でも今日は救えなかった」

春樹は千鶴をそっと抱きしめるのだった。

桜吹雪とともに・・・二人の恋は幕を開けるのだった・・・ドラマだからっ。

関連するキッドのブログ→ラスト・ドクター〜監察医アキタの検死報告〜

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2015年4月 9日 (木)

心がポキッとね(阿部サダヲ)神です(藤木直人)信者です(徳永えり)ですね(山下リオ)

ウルトラシリーズ(空想特撮シリーズ)の第1作「ウルトラQ」(1966年)の第14話「東京氷河期」で女性カメラマン・江戸川由利子(桜井浩子)は「世界の26億人が私の写真に注目する」と叫ぶ・・・それから、およそ半世紀である。

世界の人口はあくまで推定だが1961年にはおよそ30億人に達していたと言われる。

由利ちゃんはちょっと控えめに見積もっているわけである。

ちなみに山口智子は1964年生まれなのでちょうど半世紀である。

現在、世界の人口は72億人を突破したと言われる。

山口智子が生まれてから50億人近く増加しているのである。

気が遠くなる話である。

半世紀で50億人増えた人類が1年に100万人くらい死んでもどうってことがないような気がする。

特に意味はありません。

で、『心がポキッとね・第1回』(フジテレビ20150408PM10~)脚本・岡田惠和、演出・宮本理江子を見た。医療監修に香山リカが入っているのでおそらく心の病を扱ったドラマになるのだろう。精神の計量化が達成されていない科学力では・・・精神の医学は統計的手法に依存する。どういう精神が健康でどういう精神が病的なのか・・・あくまで推定するしかないのである。殺人者に精神鑑定が行われるということは・・・少なくとも正気の人間が殺人することが可能であるという話である。頭のおかしい人とおかしくない人の境界線があるのかないのか・・・これは実に悩ましい問題だ。

たとえば・・・「山口智子は蛭子能収に似ている」などと言えば正気を疑われたりするわけである。

ある意味、抹殺されかねない言動だ。

このドラマに登場する人々はおそらくそこまで常軌を逸してはいないのだろう。

ただ・・・少し・・・思わしくない言動や行動があり・・・悩める人々なのである。

そういう人々を眺めることはある程度・・・楽しいのである。

まあ・・・結構、痛いドラマだと考える。

小島春太(阿部サダヲ)は四十才になる家具の修理人である。

家具の職人ではなく・・・アンティーク家具店「Lío Bonito!」の店主・大竹心(藤木直人)が街で拾ってきた家具・・・つまりガラクタを使用に耐えうるように修復するのが仕事なのだった。

ちなみに・・・春太自身も・・・ホームレス時代に大竹に拾われた「こわれもの」なのであった。

春太はかっては・・・大企業に務める営業マンだった。それなりに優秀なトップ・セールスマンだったがノルマの重圧によって破綻し、五歳年上の妻の小島圭子(山口智子)の貞淑を疑ったあげくに暴力をふるい離婚、仕事もむ失ってしまったのだった。

うらぶれて公園にうずくまっていた春太は「なにしているの?」と大竹に声をかけられ・・・現在に至るのである。

近所にある白神メンタル相談所で白神所長(山西淳)に身の上を赤裸々に語る春太だった。

「愛する人を傷つけてしまったので・・・二度と恋はしないと誓ったのですが・・・最近、淋しくて仕方ないのです・・・できたら自分より背が高くて気の強い女と恋をしたいと思ってます」

白神は無言で・・・春太の告白に耳を傾け、料金を受け取るのだった。

「Lío Bonito」はスペイン語で心が乱れるほど美しいという意味である。

春太は・・・そういうものを渇望しているらしい。

「Lío Bonito!」の店員・糸山扶美(徳永えり)は「悩んでいることがあったら・・・何でもいってください」と春太に付きまとう。

その理由は「店長に命じられたから」である。

糸山の言動は明らかに過剰なお節介であり・・・糸山もまた正気が疑われる。

そういう糸山を「あんたは本当にかわいそうな人が好きねえ」と嘲笑する店員の庄司加代子(池津祥子)であるが・・・彼女もまた店長の前では目を輝かせるのだった。

おそらく・・・「Lío Bonito!」の従業員は皆、大竹の「ひろいもの」なのだろう。

大竹は・・・家訓である「使えないものはない・・・壊れたものは直せば使える」を忠実に守る男であり・・・女性にとっては存在することが・・・神なのであった。

神のような男が・・・正気と言えるのかどうか・・・まだ明らかにはされない。

そもそも・・・あまり儲かるとは思えない骨董家具店の経営者が・・・あまり有能とは思えない従業員を拾い集めていることが・・・少しおかしいのである。

大竹には交際中の女性がいる。

空間コーディネーターという怪しい職業の鴨田静である。

三十八歳の大竹より七歳年上のシズカは・・・実は圭子だった。

春太は元妻が・・・雇用者と同棲を開始することをまだ知らないのだった。

ブログの愛読者数をこよなく愛するシズカもまた少しおかしい人間である。

自分より若く美しい女に対する競争心が尋常ではないのだった。

そして・・・いつまでも若く美しい自分に執着しているのだった。

大竹は結婚を前提にシズカと交際している風なのだが・・・どうやら・・・シズカもまた大竹に拾われた人間の気配が濃厚である。

嵐の前の静けさの中・・・春太は公園で変な女に出会う。

牧野江里子(山下リオ)に追われる葉山みやこ(水原希子)である。

背が高くて気が強いみやこは・・・春太の理想のタイプだった。

夜桜の下で・・・江里子の追跡からみやこを守った春太は・・・翌日、糸山に金の無心に来たみやこと再会する。

みやこは糸山の高校時代の同級生なのである。

春太はみやこの身の上話を聞くことになるのだった。

「私・・・恋をすると見境がなくなるタイプなの。好きな人に付きまとって警察沙汰になったこともあるわ」

「君を追いかけていたのは・・・」

「あの女も私の好きな人を好きだったの・・・私がストーカーみたいなものなのに・・・自分の恋愛がうまくいかないのを私のせいにして・・・私につきまとっていやがらせをしてくるのよ」

「ストーカーのストーカーか・・・」

「でも・・・私には神様がいるから・・・」

「神様?」

「何もかも失った私に・・・なにしてるのって声をかけてくれた・・・」

何故か・・・嫌な予感に胸が騒ぐ春太だった。

もちろん・・・みやこの神様は・・・大竹だった。

大竹はあらゆる女を狂わせる魔性の男らしい。

職場で・・・ライバルへの賞賛を耳にし、逆上したシズカは・・・同棲記念のホームパーティーを開催する。

公園で寝ていた無職で住所不定のみやこを拾った大竹は・・・春太を住まわせている自宅の空き部屋に・・・同居させることにする。

「もう・・・恋はしないんだから・・・問題ないよね」

魔性である。

ホームパーティーで・・・元夫婦は残酷な再会をするのだった。

思わず素知らぬ顔をする春太とシズカ。

そしてみやこは神様に同棲相手がいることを知り、嫉妬心を剥き出しにするのだった。

女に愛されすぎる男と女を愛したいが愛されない男。

拾う人間と拾われた人間たちの・・・妖しい物語の幕が上がるのだった。

物凄く・・・微妙な話だなあ・・・。

今回・・・離婚ネタがあちこちでかぶるみたいだな。

まあ・・・山下リオ徳永えりが出ているので・・・見るけどね。

関連するキッドのブログ→続・最後から二番目の恋

Hcgg2015skp01ごっこガーデン。拝観料無料のフジッキー神社開設中。

まこ二階は呪文料理レストランになってましゅ・・・テキサスバーガーもありましゅ!

みのむししゅてき!」

アンナ休憩中はここでランチするびょん

くう裏表が悩ましいわあ・・・・

シャブリなのでありました~

ikasam4西行と信西の魔界転生ですな

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2015年4月 8日 (水)

チーム・バチスタFINALケルベロスの肖像(桐谷美玲)逆恨み(栗山千明)なんですーっ(加藤あい)

二時間で済む話を・・・二時間だった。

映画だからな。

延々と続く・・・伊藤淳史・仲村トオル版の「チーム・バチスタ」シリーズの最終章である。

ドラマ・シリーズのヒロイン二人に新ヒロインを加えてヒロインのスリーカードだ。

加藤あい・栗山千明・桐谷美玲の三枚を揃えるなんてそれだけでうっとりである。

怪物犬と言えばオルトロスだが・・・兄にあたるケルベロスは地獄の番犬の異名を持つのだった。

そもそも、冥界への道は一方通行である。

なぜならば、ケルベロスが地獄の門に立ち、来るものは拒まず、去るものは食っちゃうからだ。

三つ首が8時間交替で眠るので24時間監視可能の優れ物である。

不眠症になったりすると大変だし、子守唄で三頭ぐっすりしちゃうと・・・地上はゾンビであふれるけどな。

で、『チーム・バチスタFINAL ケルベロスの肖像(2014年劇場公開作品)』(フジテレビ20150407PM9~)原作・海堂尊、脚本・後藤法子、演出・星野和成を見た。医療ミステリというジャンルでは医療ミスと死因の特定が大きなスペースをしめるわけである。一方で生存率の向上と尊厳死という医学における大きな主題が影を投げかける。「生きたいのに生きられない人のために生きろ」という説教は「死にたいのに死ねないから殺してくれ」という叫びとまっこう対立するのである。

寿命がのびて長生きするのはいいことだ・・・って思える人はきっと幸せなんだよな。

悪魔は・・・本当にそうなのかとふと思うわけである。

少なくとも・・・この物語のヒロインたちに抱かれて死ねるなら悔いはないよなあ。

三人のうち誰でもいいから~。

ま、それはそれとして・・・。

「医療ミス」による「患者死亡」の「隠蔽」を阻止することも含めて、死因不明社会の打破に効果があるとされる「Autopsy imaging(画像診断による検死)」、略して「Ai」を普及させるために厚生労働省大臣官房秘書課付技官兼医療過誤死関連中立的第三者機関設置推進準備室室長の白鳥圭輔(仲村トオル)はAiの権威である東堂文昭マサチューセッツ医科大学上席教授の招聘に成功する。

日本国と桜宮市そして東城大学医学部付属病院が連携して開設するAiセンターには超高性能MRI「リヴァイアサン」(フィクション)が納品されるのである。

その記念イベントで・・・東城大学医学部付属病院不定愁訴外来責任者兼医療過誤死関連中立的第三者機関設置推進準備室室長補佐の田口公平(伊藤淳史)は初の日本国産戦車・61式戦車に乗ってパレードをするのだった。

グッチーは軍事おタクだったのである。

その姿を見つめる桜宮すみれ(栗山千明)は患者の希望を叶え、安楽死を提供してきた桜宮病院一族の生き残りである。白鳥によって不正を暴かれ、父と姉を失ったすみれは激しい怨みに苛まれていた。

一方、取材記者の一人で医療ジャーナリストの別宮葉子(桐谷美玲)は何故か、グッチーに強い関心を示すのだった。

その頃、国際的なピアニストの船橋律子(有森也実)は海外から帰国し、別荘の地下室で夫を含む多数の遺体を発見していた。

律子の夫・船橋直樹(中丸新将)は白鳥の上司だった。

地下室で発見された十人のうちただ一人の生存者である内科医の榊陽一(二階堂智)は東城大学医学部付属病院のERに搬送される。

ジェネラル・ルージュこと速水晃一(西島秀俊)や佐藤(木下隆行)、和泉(加藤あい)、そして滝沢(松坂桃李)たちERの医師たちは救命に尽力する。

解剖によっても判明しない・・・死因をリヴァイアサンを駆使して明らかにする東堂教授。

重水による中毒死・・・死者たちは監禁され重水を摂取させられ死亡したのだった。

事件は大量殺人事件となったのである。

そんな折・・・「三月のAiシンポジウムに爆弾を投下する」という脅迫状がグッチーの元に届く。

殺人犯は誰なのか・・・脅迫状の送り主と同一人物なのか・・・。

白鳥とグッチーは捜査に乗り出すのだった。

やがて・・・殺されたメンバーが薬害訴訟に関係した役人と製薬会社そして治験に参加した医師であることが判明する。

薬害の被害者の実情に詳しい別宮葉子の紹介で新薬の副作用による後遺症に苦しむ患者・根本(品川徹)を訪問した白鳥とグッチー。

「しかし・・・新薬によって苦痛を免れた人も多いのです」と釈明する白鳥。

「それでは・・・誰を・・・恨めば・・・いいのですか」

全身麻痺の根本に問われ・・・言葉を失うグッチー。

別宮は白鳥を追及する。

「千人を救うために一人を苦しめるのが医療ですか」

「副作用は予見できなかった」

「いいえ・・・副作用の報告は握りつぶされたのです」

「証拠は・・・」

「内部告発者の証言があります・・・しかし・・・記事を書いても握りつぶされるのがオチでしょう・・・」

「・・・」

「内部告発者は・・・陰湿な圧力を受けて・・・自殺しましたよ」

「君は・・・」

不穏な気配を感じた白鳥は・・・玉ちゃんこと玉村誠刑事(中村靖日)に指示して別宮葉子の過去を調査する。

別宮は被害者遺族だった。

「そんな・・・彼女が犯人だなんて・・・」と動揺するグッチー。

「彼女は・・・重水を入手していた」と白鳥。

だが・・・別宮は行方をくらますのだった。

やがて・・・生存していた榊医師が意識を回復する。

しかし・・・脳障害で顔を見ても識別が出来ない相貌失認を発症していた榊医師は・・・犯人の顔の特徴を説明することができないのだった。

一方・・・別宮の死んだ母親こそが・・・榊医師の患者だったことが判明する。

そして・・・Aiシンポジウムの開催日がやってきた。

会場に現れたすみれは・・・白鳥の呪われた過去を暴くのだった。

白鳥は・・・「患者の体内に置き忘れた手術器具」という「医療ミス」を隠蔽した医師の一人だったのだ。

「言いわけしなさいよ・・・当時、研修医だった自分には何もできなかったとかなんとか」

「ごめんなさいでしたーっ」

謝罪する白鳥だった。

その時、東城大学医学部付属病院のコンピューター・システムは外部から操作され・・・投薬レシピが改竄されるという緊急事態が発生する。

容体が急変した榊の緊急手術が開始されるが・・・ついにシステムはダウンするのだった。

別宮はスーパー・ハッカーだったのだ。

病院の屋上で対峙する真犯人とバチスタ・チーム。

「どうして・・・こんなことを・・・」

「被害者遺族の言葉は握りつぶされても・・・十人殺した女の言葉は無視されないから」

「榊医師は・・・関係ないじゃないか」

「あの男は・・・患者を・・・苦しんだ母の顔を覚えていなかった」

「違うよ・・・榊先生は・・・顔を覚えられない病気なんだ」

「え」

かわいいよ、真犯人、かわいいよである。

こうして・・・医療ミスの隠蔽をめぐる長い物語の幕は閉じたのだった。

やはり・・・二時間でよかったのだな。

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2015年4月 7日 (火)

戦う女・・・愛人と愛人の娘と私(門脇麦)

別メディアからのお下がり放送である。

オムニバスドラマ+トークショーというパッケージの全五話を連夜放送なのであった。

トークショーのメンバーはYOU、友近、エリイ(Chim↑Pom)、そして門脇麦である。

ガールズトークであるが・・・友近の「女子アナの悪口」、門脇麦の「男の子と度胸試しでバッタを食った話」などである。

メンバーの共通点は「子供の頃はママの買ったパンツを穿いていたこと」だった。

それはある意味・・・幸せなことだからな。

親の浮気、損失、離散に巻き込まれる子供は時にそういう幸せとさえ無縁になるわけだが。

で、『戦う女・第1回』(フジテレビ201504070025~)原作・小泉今日子、脚本・演出・垣内美香を見た。主人公はパンツ屋(女性向けのランジェリー・ショップ)の店員(門脇麦)である。店員は妻子ある男(山中崇)と不倫をしている。男は首尾よく立ち回っているつもりらしいが妻(篠原ゆき子)は夫の不審な行動を察している。日曜日にパンツ屋とのデートに出かけようとする夫に幼い娘(小菅汐梨)のお守を命じるのだった。

「たまの休日くらいのんびりさせてくれよ」

「休みの日くらい子育てに参加しなさいよ」

「・・・」

「だせー車」

夫と娘を残し、息抜きに出かける妻だった。

営業車の中で妻の残したシナモン入りドリンクのカップの口紅を拭うだせー夫。

「もうすぐお客さんがくるけど・・・いい子にしてるんだぞ」

「お客さんって誰?」

「お父さんの先生だ」

「先生?」

現れたのはパンツ屋だった。

だせー男は娘連れなのでデートの中止を申し立てるがパンツ屋は聞く耳を持たないのだた。

こうして・・・愛人と愛人の娘とパンツ屋は郊外へのドライブを開始する。

「これ、飲んでいい」

男の妻の飲み残しとは気がつかず、ドリンクのカップをとりあげるパンツ屋。

「あれ・・・シナモンが入ってる・・・シナモン嫌いじゃなかったっけ」

「君が好きだから・・・」

だせー男は正妻と愛人に間接キスをさせる無神経な男でもあった。

ピクニックエリアでパンツ屋の用意した生ハム入りのサンドイッチを食べる三人。

娘は父親の行動になんとなく不審を感じるのだった。

「生ハム美味しいぞ」

「いらない」

「美味しいのに」

「おしっこ」

「ええ~、さっき、大丈夫か・・・聞いただろう」

「私も行くわ」

「ええ~、さっき、大丈夫か・・・聞いただろう」

パンツ屋は愛人の正妻の娘と手をつないで林の中に消えるのだった。

「ええ~、その辺でかよ」

娘は父親の愛人に尋ねる。

「先生はお父さんに何を教えているの」

「お父さんはバカだから・・・いろいろとね」

「男の人は女の人と違ってバカだからね」

「だよね~・・・一人でできる?」

一人ではできない幼女である。

仕方なく・・・愛人の正妻の娘の毛糸のパンツとタイツとパンツを脱がすパンツ屋。

幼女は背中を向けた父親の愛人の鮮やかな下着の色に心を奪われるのだった。

「今日は毛糸のパンツじゃ暑いでしょう」

「でも・・・タイツと毛糸のパンツはセットだから」

「だったらタイツも脱いじゃえばいいでしょう」

「うん」

パンツだけになった幼女の股間を爽やかな風が吹き抜けるのだった。

「気持ちいいでしょう」

「うん」

なんとなく仲良くなる二人・・・大きくなって振り返ればいろいろとアレな思い出の一ページである。

美味しいものがある

たこ焼き

餃子

お好み焼き

帰り路で変な歌を歌う父と娘。

パンツ屋は急に悲しくなって泣きだすのだった。

だせー交際すぎるものな。

帰宅した娘は突然の遠出に疲れてぐったりと寝入るのだった。

帰宅した正妻は娘を起こす。

「こんな時間に寝たら夜、眠れなくなるよ」

「ママ・・・ママ・・・ママ」

娘は母親に抱きつく。

「なんで・・・タイツ脱いでるの」

「・・・」

「今日、暑かったもんね」

あふれ出す幼女の涙。

いろいろとだせー一日だったもんねえ。

基本的に人生なんてだせーもんだよねえ。

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ブラック・プレジデント

八重の桜

続・最後から二番目の恋

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2015年4月 6日 (月)

忠ならんと欲すれば孝ならず・・・と頼山陽(井上真央)

「忠ならんと欲すれば孝ならず、孝ならんと欲すれば忠ならず」とは「日本外史/頼山陽」で父・清盛と後白河法皇の権力闘争の板挟みとなった平重盛が語ったとされる言葉である。

「日本外史」が著されたのは文政十年(1827年)で安政の大獄から遡ること半世紀前である。

天皇に対し武士は忠を尽くすという意味で・・・歴代の武家の盛衰を物語ったこの書は幕末の尊王思想に大きな影響を与えたと言われる。

武士の忠が主君に対するものではなく、天皇に尽くすものであるという思想は・・・身分の低い知識人たちに甘美な夢を与えたのである。

吉田松陰が急に狂を発したのではなく・・・半世紀の積み重ねが・・・一種の天皇崇拝教の拡散と浸透をなさしめ・・・維新から大日本帝国の滅亡へと続いて行く情熱を発火させたのである。

徳川幕府が藩を支配し、藩士は藩主に忠義を尽くすという常識に対し、天皇の前の人民平等の夢が・・・非常識の極みであることは間違いない。

将軍位継承問題の余波である安政の大獄は吉田松陰の命を奪うが・・・頼山陽の三男である頼三樹三郎の命も奪う。

しかし・・・殉教者が出れば・・・宗教的情熱はより激しく燃えあがるものなのだ。

下積みが長かったとはいえ高等遊民であった井伊直弼はその一点を見誤ったと言える。

夢に酔った若者たちは家族のことも国家のことも・・・知ったことではないからである。

ただひたすら・・・自分が特別な人間であろうとするばかりなのだ。

宗教者というものは釈迦にしてもキリストにしても信念のためには家族も王国も躊躇なく捨てるタイプなのだから。

こうして・・・現実主義者は時には夢追い人に打ち砕かれるのだ。

で、『花燃ゆ・第14回』(NHK総合20150405PM8~)脚本・大島里美、演出・末永創を見た。例によってシナリオに沿ったレビューはikasama4様を推奨します。今回は彦根藩主にして安政の大獄の黒幕、徳川幕府大老・井伊直弼の描き下ろしイラスト大公開でお得でございます。吸血鬼ドラキュラの物語に魅せられた頃・・・孤独な革命戦士は反体制に身を投じるために家族を捨て去る決意を迫られる。血を吸って生きるヴァンパイアの如く・・・同志を得ることは・・・仲間に人間をやめることを求めることになる。指導者はその恐ろしさに耐えうる資質を要求されるのですな。そう言う意味では吉田松陰は恐ろしいまでに冷徹でございます。我が身が灰になろうと・・・同志が十字架にかかろうと・・・闇の王国が築ければそれでよしと決意しているわけでございます。まあ・・・庶民にとっては・・・ある意味、大迷惑ですが・・・それが歴史の原動力というものでございますからな。そういう人物を美化するもよし、嘲笑するもよし・・・すべては心のおもむくままに・・・と考えます。井伊直弼も人、吉田松陰もまた人でございますゆえ。

Hanam014安政五年(1858年)四月、大老に就任した井伊直弼は勅許を得ないまま日米修好通商条約に調印。将軍継嗣者を徳川家茂に定める。七月、徳川慶勝、松平慶永、徳川斉昭・慶篤、そして一橋慶喜に対する隠居謹慎命令が下される。家定は死去し、第14代将軍・徳川家茂が任じられる。一橋慶喜派の重鎮・薩摩藩主・島津斉彬は軍事的上洛(出兵)により、叛旗を翻すことを計画するが急死する。八月、一橋慶喜派の水戸藩などに朝廷は開国策見直しを求める戊午の密勅を下す。徳川家茂派の関白・九条尚忠は辞職。九月、老中筆頭・間部詮勝は京都所司代による一橋慶喜派の鎮圧を開始。梅田雲浜、橋本左内ら尊王主義者や公家の家臣を捕縛して江戸に送致する。吉田松陰は間部詮勝の暗殺を計画し、藩主に意見を具申。発覚を恐れた直目付・長井雅楽は松陰を投獄する。水戸藩では幕府恭順派(諸生党)と反対派(天狗党)の闘争が発生する。幕藩体制の支持者と反体制派の軋轢は各藩を動揺させていくのだった。

文は久坂玄瑞の鬱屈を感じている。

夫婦の契りを結んでから文の感度はあがり、兄・松陰と同様の遠隔感知が可能になっている。

文の精神感応技術は進歩を続けている。

京の小浜藩屋敷に近い望南塾に向かう玄瑞の心の綺を萩城下に居ながら感じるのだ。

・・・攘夷の志を持つ人物は多いが・・・その質が悪いのである。

尊皇ゆえの攘夷であるが・・・公家たちの具体的な方策は・・・結局、武家頼りなのであった。

武家に頼るとなれば・・・結局は幕府に縋ることになる。

その幕府に攘夷の意向がない以上・・・話はそこで止まってしまう。

望南塾の師として・・・梅田雲浜の舌鋒は鋭いが・・・幕府をいくら批判しても・・・状況は変わらないと玄瑞は嘆くようになっていた。

望南塾に集まる有象無象の輩は「攘夷、攘夷」と口にするが・・・結局は京の酒や女に溺れるだけのことだ。

「しばし」

玄瑞の思考が伊藤利助の言葉によって停止する。

文は心の触手を玄瑞を通じて利助に伸ばした。

文が最近、取得した感応術である。

文はそれを中継と名付けていた。

利助の心が飛び込んでくる。

利助は緊張していた。

「どうした・・・利助」

「なにやら・・・不穏の気配がありまする」

玄瑞もようやく・・・前方で騒ぎが起こっていることに気がつく。

望南塾を捕り方が囲んでいる。

「所司代の手のもののようです」

「うむ・・・」

駆け寄ろうとする玄瑞の袖を利助が掴む。

「なりませぬ・・・」

「しかし・・・」

利助は・・・周囲に忍びの気配を感じていた。

望南塾の周囲には結界が張られている。

「飛び込んでも・・・何もできませぬ」

「・・・」

「あれは・・・雲浜先生・・・」

「お縄につかれたか・・・」

利助の視覚を通じて文は・・・梅田雲浜の姿をとらえる。さらに松下村塾の塾生でもあった赤禰武人が捕縛されているのを知った。

「ここは・・・成行きを確かめて・・・長州の仮屋敷に戻り、対策を講じるしかありませぬ」

「だが・・・赤禰が・・・」

「騒ぎを起こさず・・・所司代に手をまわして解き放ちを願い出るしかございません・・・ここで共に捕縛されたのでは・・・それもかないませぬぞ」

利助の先を読んだ思考に・・・玄瑞はようやく追いついた。

(うちの人は・・・融通が利かない)

文はため息をついた。

利助は監視されていることに気付きながら素知らぬ顔で・・・玄瑞を促して来た道を引き返す。

夏の終わりの京の都には公儀隠密が結集していたのだった。

安政の大獄の幕が開く。

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2015年4月 5日 (日)

化石の微笑みと好きな人と手を繋ぐ喜びについて(杉咲花)

2013年のテレビ朝日21世紀新人シナリオ大賞の受賞作である。

2002年には古沢良太がデビューのチャンスを掴んだのだが・・・その後の受賞者たちの活躍ぶりを見ると・・・十年に一人の逸材という言葉が脳裏に浮かぶのだった。

新人賞の選考基準はいろいろとあるだろうが・・・何より・・・審査員の好みが大きいと思う。

たとえば・・・この賞の場合「戦争万歳」を主題に添えたりしてはいけないのだと思う。

まあ・・・そこそこのテーマとそこそこのストーリー、そしてそこそこのセリフを書けるといいんだろうなあ。

たとえば、セリフにしてもプロだって・・・なんだかなあ・・・というセリフを書いてしまう。

朝ドラ「まれ」の第六回では・・・成長したヒロインに近所の女性が「お父さんまだ帰って来ないの・・・六年もたつのに」とつぶやくのだが・・・う~ん、どうだろうと思うのだった。

六年もたつのに今さら「まだ帰って来ないのか」と問いかけるようなキャラクターじゃないんだよな。

七年後にワープして・・・六年前に父親が失踪しているという状況を一言で説明しようとして・・・明らかに不自然なセリフを書いてしまった・・・脚本家も演出もオンエアまできっと聞き流していたんだよなあ。

うかつだが・・・まあ、多くのお茶の間も聞き流してくれるかもね。

自然なセリフって・・・うっかりを許さないんだけどね。

で、『化石の微笑み』(テレビ朝日201503292340~)脚本・吉田光洋、演出・河合勇人を見た。作中に金属類回収令(昭和16年公布・昭和18年改正・昭和20年廃止)が登場する。武器生産に必要な金属資源を補うために官民所有の金属類回収を行う目的で制定された大日本帝国の勅令である。すでに昭和13年頃から不要不急の金属類の回収の呼びかけは始っている。昭和16年には国家総動員法に基づく金属類回収令を公布施行され、職場・家庭の区別なく根こそぎ回収へと進んで行くわけである。集める方ではなく出す方の立場で言うと「供出」ということになる。昭和17年には「まだ出し足らぬ家庭鉱」というスローガンが叫ばれる。マンホールの蓋・ベンチ・鉄柵・灰皿・火鉢・火箸・花器・仏具・窓格子・金銀杯・時計側鎖・煙・置物・指輪・ネクタイピン・バックル・釜・箪笥の取手・蚊張の釣手・店の看板・・・なんでもかんでも供出しないと非国民なのである。

そして時は流れた。

中村彩美(杉咲花)には認知症を発症した祖母がいる。

時々、孫のことを妹の京子(草村礼子)だと錯誤する幸子(草笛光子)だった。

彩美の母親・雅恵(堀内敬子)だけでは面倒を見きれないため・・・彩美は家の近所の高校に進学したのだった。

ある日・・・錯乱した幸子は近所の神社で土を掘り返す。

偶然、通りかかった彩美のクラスメートである宮原和哉(小関裕太)は幸子の亡夫・忠信と錯誤され・・・老婆に手を握られてしまう。

和哉にとって・・・それは特別な意味を持っていた。

和哉は強迫性障害の一種である潔癖症患者で「他人の手に触れるとパニックに陥る」という精神失調があったのだが・・・泥だらけの老婆の手には嫌悪感を感じなかったのである。

おそらく・・・人として認知されなかったのであろう。

ある意味、ショック療法であり、和哉の症状は緩和の方向に向かいだす。

老婆を捜しに来た彩美に好意を持っていた和哉は・・・忠信に成りきることで・・・京子に成りきる彩美と親睦を深めるのだった。

一体・・・幸子はなぜ神社で穴を掘っていたのか。

幸子の妹で・・・彩美の大叔母にあたる京子に事情聴取すると・・・戦争中の出来事が浮上する。

死んだ母親の形見であるペンダントを供出しなければならなくなった姉妹。

見かねた近所の少年・忠信が土中に埋めてしまうことを提案したのだった。

非国民であることを覚悟した忠信と幸子の馴れ初めだった。

戦後、ペンダントを掘り出した二人は夫婦になったのだった。

掘り出されたペンダントは妹の京子が保管していたのだ。

事情を知った彩美はペンダントを借り受ける。

しかし、そこで・・・京子は意外なことを語る。

「姉さんと二人で老人ホームに入る」と言うのだ。

何のために近所の高校に入ったのか・・・京子は母を問いつめる。

「もう・・・限界なのよ」

母の言葉にやりきれない気持ちを抱く彩美だった。

そのことを和哉に相談する彩美。

「大変だね」

「でもね・・・もうおばあちゃんから解放される・・・なんだかホッとしている自分がいるの・・・そういう自分が嫌になるの」

「しょうがないさ・・・人間だもの」

「ありがとう」

思わず彩美は和哉の手に触れようとして・・・感電したように身を引く和哉に驚くのだった。

「いや・・・違うんだ」

女として拒絶されたと勘違いした彩美は深く傷心するのだった。

「違うって・・・何が・・・もう・・・いいよ」

立ち去る彩美。立ちすくむ和哉だった。

人間に触れないという弱点を他人に告げることに抵抗がある和哉なのである。

好きな女の子に嫌われたショックで寝込む和哉。

そこに・・・小学校の同級生だった深田健介(山田裕貴)が訪ねてくる。

和哉の障害の原因は・・・健介のいじめにあった。

しかし、中学でいじめにあった健介は・・・和哉のことを思い出し・・・謝罪に訪れたのだった。

「なんで・・・今頃・・・」

「どうしても・・・あやまりたかった」

「今さらなんだよ」

逆上した和哉は思わず健介に殴りかかる。

大人しく殴られる健介に・・・和哉は慰められるのだった。

「治った・・・誰かを殴れるなんて・・・凄い」

「何の話だよ・・・俺はただ・・・ごめんなさいって」

「・・・」

「気がすんだのか」

「ありがとう・・・」

「え」

触れる・・・俺は人間を触れる・・・好きな女の子に触れるんだ。

高まった和哉は彩美の家まで走るのだった。

「何しに来たの」

「君を触りに来た・・・」

「え」

「僕は病気だったんだ」

「まさか・・・みんな!エスパーだよ!でも見たの」

「なんだ・・・それ・・・なぞの転校生なら見てたけど」

「テレビ東京って凄いよね」

「そうじゃなくて」

「パンチラはしないわよ」

「それはそれで残念だ」

事情をうちあける和哉。

「つまり・・・誰にも触れない人だったってこと」

「うん・・・でも・・・今は君の手に触れてみたい」

「いいよ」

二人はそっと手を握った。

庭の若い二人の姿に縁側の幸子は化石のような遠い記憶を蘇らせる。

そして・・・微笑む。

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13歳のハローワーク

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2015年4月 4日 (土)

みんな!エスパーだよ!番外編~エスパー、都へ行く~どエロいミニカースペシャルだに(染谷将太)

スピンオフなので・・・いや・・・「みんエス」なので・・・あまり、難しいことは考えたくない。

が・・・一応、時系列を見ておこう。

本編では・・・時間を遡上した主人公が最強エスパーとして覚醒し・・・地球を救うのだが・・・これはそれ以前の話である。

ヒロインが東京に転校し・・・失意の時間を過ごす主人公に発生した分岐の一つということになるのだろう。

ヒロインからの「謎のメール」を受け取った主人公は仲間と共に上京するのだった。

なにしろ・・・「映画化」も決定しているわけである。

もう・・・なんでもありの極みになっています。

で、『みんな!エスパーだよ!番外編~エスパー、都へ行く~』(テレビ東京201504040012~)原作・若杉公徳、脚本・田中眞一(他)、演出・園子温を見た。分岐点ではエスパー美由紀(夏帆)が不参加である。浅見教授(安田顕)の説明では「処女を喪失すると能力も消失する可能性がある・・・彼女はもう処女ではないのかもしれない」ということだが・・・単にキャスティングできなかったんだろう・・・。映画版には出てもらいたいものだ。やはり・・・美由紀あっての「みんエス」じゃないか。

嘉郎(染谷将太)は東京に戻った浅見紗英(真野恵里菜)から「助けて」というメールを受信する。

紗英は消息不明となり父親の浅見教授は「誘拐」を疑い、秘書の秋山(神楽坂恵)に命じチーム・エスパーを上京させるのだった。

嘉郎は永野輝光(マキタスポーツ)、先輩の榎本洋介(深水元基)、同級生の矢部直也(柾木玲弥)とともに東京・浅草寺に集結し、紗英の通う定時制・都立汐満高校(フィクション)に乗り込むのだった。

転入生として・・・やってきたチーム・エスパーを待ちうけるのは・・・謎の女生徒たちである。

「もうすぐ・・・夜がくる・・・そしてどこかで・・・猫が鳴いている」

スケバン軍団を率いる冴子(桜井ユキ)がミニスカをはためかせる。

静かなるパンチラの予感・・・。

しかし・・・元が女子高で・・・定時制なだけに・・・女生徒たちはさらにエロに特化しているのだった。

キャバクラ嬢軍団を率いるタイトなドレスのハルカ(橋本マナミ)・・・風俗嬢軍団を率いるカリナ(平岡亜紀)に至ってはお店の制服かっ・・・なのであった。

勃起・・・いや奮起するチーム・エスパーである。

女生徒たちはなぜかミニカーを武器にプレイするのだった。

教室ではスケバン軍団がクラス委員の橘シズカ(北原里英)をいたぶっていた。

「てめえ・・・先公に・・・ちくっただろう」

「許して・・・ミニカーはやめて」

「こうしてやろうか」

「あ・・・そこは・・・」

ミニカーがまくりあげるスカートの裾・・・高まるパンチラの予感。

なにしろ・・・そういうドラマなのである。

そこへ・・・担任の梶本幸雄(片桐仁)がやってきて転校生を紹介するのだった。

女生徒たちはリップ型棒付きキャンディでチュッパしまくるのだった。

いわゆるフェラ顔サービスである。

なにしろ・・・そういうドラマなのである。・・・もう、わかったぞ。

そもそも・・・「劇場版」の宣伝も兼ねているのに・・・「劇場版告知」に一切、新撮映像がないという・・・製作快調ぶりなのだ。

梶本教諭の話では紗英は風邪を理由に欠席したらしい。

「しかし・・・こんな学校なので・・・嫌になったのかもしれない」

「スケベな生徒しかいないからね」

スケバン軍団のリーダー・冴子が嘯く。

橘シズカの危機を救った嘉郎はたちまち・・・紗英のことを失念してシズカとの恋に落ちるのだった。

何故か・・・もてもてのチーム・エスパー。

直也は風俗嬢軍団のスケベイス包囲網で心太(トコロテン)攻撃で骨抜きにされる。

心太を通して透視するとちょうどいい感じになるのだった。

・・・いつもは内蔵ばかり見ているからな。

洋介は冴子たちにスポーツカータイプのミニカーで責められ、絶頂を味わう。

そして・・・テルさんはキャバクラ嬢たちの特殊車両で使命を忘れるのだった。

孤立した嘉郎とシズカが激しいパンチラを見せるために激突する。

図書室の蔵書「団鬼六全集」を散乱させるシズカ。

「制服なんかでごめんなさい・・・水着に着替えるのでチャンネルはそのままで」

フィクションであることを登場人物が強調するメタフィクション(超虚構)の手法が今回の主題であることが暗示されるのであった。

フィクションであることを登場人物が無視していることが一種のお約束である以上、これはお約束に対するツッコミで・・・タブーを冒しているという意味ではボケでもある。

ボケであり、ツッコミであるというメタフィクションによってフィクションの存在基盤は脅かされるのだった。

水着に着替えたシズカはお約束で図書室の梯子に登るのだった。

何故か、水着より下着に反応する一般男子だが・・・図書室で見上げる水着にはより大きな反応があるのだった。

お約束で梯子から落下するシズカをお約束で受けとめた嘉郎はお約束でシズカの胸を掴み一部お茶の間を絶叫させるのだった。

ケータイ刑事もハロプロアイドルも通った道をAKB48メンバーも通って行くのである。

この道を女優に対するモラハラ通りだとかどっかのバカが言い出さないことを祈るばかりである。

そもそも・・・女優はパンチラしてナンボのビジネスなのだから・・・おいっ。

「私のミニカーは・・・エコカーなの」

汐満高校は生徒一人一人にミニカーがサービスされるのだ。

嘉郎の道路を環境に優しく走るシズカのエコカー・・・。

「急ブレーキ」

「あ」

「バックバック」

「あ」

「嘉郎くんは何キロで走りたい?」

「え」

「10キロ・・・50キロ・・・100キロ」

「免停になるだに・・・」

「だにだに」

基本的に・・・スタッフは・・・ゆうこりん(小倉優子)の「カーセブン」のCFがとことん好きなんだと妄想する。

「ミニカーを一緒に走らせたいだに」

激しく巨大なテントを張りながら嘉郎は欲情するのだった。

「だにだに~」

仲良くミニカーを走らせる二人・・・すると。

「おはよう・・・モーニングコーヒー一緒に飲もうよ」

モ娘。を口ずさみながら二人の傍らをさりげなく通りすぎる紗英だった。

「浅見さん・・・?」

「なんでここに・・・嘉郎くんが?」

「浅見さんが・・・助けてってメールを・・・」

「それは・・・1983年に結成された日本のロックバンド・あぶらだこのライブのチケットがとれなくて・・・なんとかならないかって・・・」

「学校を休んでたのは?」

「風邪を引いたのよ」

「なんだ・・・帰ります」

「待って・・・せっかく会えたのに・・・もう帰るの」

シズカは見つめるのだった。

「もう少し・・・いるだに」

紗英は二人を生温かく見つめるのだった。

浅見教授に電話で報告する嘉郎。

担任教師の名前を聞いた教授は蒼ざめる。

「なに・・・カジモトだと・・・」

嘉郎は紗英とシズカを見失い・・・ミニカー百合妄想に浸るのである。

二人ともエロいよ・・・二人ともである。

つまり・・・今回のゲストはめがねっ娘サービスなんだな。

一方、教授は秘書の乳を揉みながら・・・つぶやく。

「今回は・・・マケそうだ」

「・・・」

「やってみてくれ」

突然、流れ始めるインチキなエンディング・テーマ&クレジット。

「違う・・・間違っている」

「すみません」

秘書はどうやら・・・予知能力以外の能力を獲得したようだ。

それは時間に関係しているがメタ(超)超能力であるらしい。超々いい感じなのかもしれない。超々々いい感じ。超々々いい感じ・・・。

「今度はマケそうだ」

「マケますね」

これはフリなのだが・・・ほぼなんのこっちゃである。

再び二人を発見した嘉郎。

「一緒に星を見ましょう」

シズカは嘉郎を屋上に誘うのだった。

「私も一緒にいくわ」と紗英。

「あそこにあるのがはくちょう座のスピカ」

「スカイツリーが見えるよ」

両手に花の嘉郎は戸惑うのだった。

《なによ・・・この女・・・》

《田舎くさい女ね》

激しい乙女のライバル心がテレパシストの嘉郎に流れ込む。

いたたまれなくなる嘉郎。

二人になった紗英とシズカは火花を散らす。

「まさか・・・あなた・・・嘉郎くんのこと・・・」

「え」

そこへ・・・スケバン・風俗嬢・キャバクラ嬢たちが合同で現れる。

「嘉郎くんのことが・・・なんだって」

たちまち・・・緊縛されミニカー責めでパンチラでアッハーンである。

SMサービスだった。

そういうドラマだからね。

二人のどエロい画像を送信された嘉郎は驚愕する。

そこへ・・・教授から緊急通信が入る。

「すべては私の宿敵・・・カジモトの仕掛けた罠だ」

チームエスパーは紗英の救出に向かう。

しかし、立ちはだかるカジモトシスターズ。

カジモトは・・・超能力否定論者だった。

教授を否定することで地位を得たカジモトは・・・エスパーたちの出現により・・・窮地に立たされたのだ。

エスパーたちの童貞を喪失させ・・・超能力を消失させる・・・都立汐満高校・定時制はそのためにカジモトが仕掛けた罠だったのだ。

「さあ・・・童貞を卒業させてあ・げ・る・・・」

エロい女子たちの誘惑に揺れるテルさん。

「卒業するだに」

「何を言ってるんだテルさん・・・TENGAがあれば女はいらないっていつも言ってただに・・・僕たちは超能力で地球の平和を守る使命があるだに」

嘉郎の言葉に覚醒するテルさんだった。

「やるだに」

「敵の武器を奪うんだ・・・あのミニカーは・・・アヌスにさえ突っ込んでくるエロいものなんだに」

「なにっ」

興奮したテルさんは冴子のミニカーをサイコキネシス(念力)で吸引する。

裸体テレポートした洋介は全裸で女生徒たちを脳殺する。

直也は女生徒たちのカラダの秘密を暴露するのだった。

ついに囚われの紗英を救出する嘉郎。

教授たちも合流したところで・・・カジモトが現れる。

「これまでだ」

「ふふふ・・・まだ・・・お前たちには最後の敵がいる」

「なんだって・・・」

最後の敵・・・それはシズカだった。

「え」

「私はお父様のために・・・あなたに近付いたの・・・」

「そんな」

「二人は父と娘だったのか」

「私の復讐計画を紙芝居形式で披露しよう」

「残念だったな・・・カジモト」

「何?」

突然、エンディング・テーマ&クレジットが流れ出す。

「もう番組も終わりだ・・・だからお前は復讐することができないのだ」

「そんな・・・」

「お父様・・・私たちの負けよ・・・タイム・テーブルには逆らえないもの・・・」

父と娘は退場した。

「一分あまりました」

「巻いたな」

「巻けました」

「秘書の秋山くんはエンドクレジットを流す能力を身に付けたのだ」

ねえ・・・哺乳類はやめよう

爬虫類になろう

もう五回も発射しちゃった・・・

歌う石崎ひゅーい・・・踊り出す・・・ハロプロとAKBとTENGAのフィナーレである。

踊るエロ女生徒たち・・・。

風俗嬢軍団・・・リカ(澤真希)、ユキ(田代さやか)、ミリ(坂本亜里紗)、メイ(晴野未子

キャバクラ軍団・・・エイミ(吉永まり)、アイリ(古川真奈美)、ユリエ(美咲こころ)、ミユナ(池上喜美)

スケバン軍団・・・妙子(黒岩(加藤)桃子)、充子(奥津菜々子)、彩子(広野未奈)、幸子(高柳結恵

メタフィクションの勝利・・・劇場版もこの調子でお願いします。

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2015年4月 3日 (金)

恋愛時代(比嘉愛未)スクール水着ではありません(佐津川愛美)

比嘉愛未は競泳用で佐津川愛美はセパレーツである。

そこかよっ。

原作が90年代なので・・・色々とアレだが・・・書店員とインストラクターは永遠に不滅であってほしいと考える。

今日は地下鉄に乗って四駅先のフィギュアも売ってる大書店に行ったのだが・・・乗客が全員、スマホをしていた。

そういうムードはこのドラマにはないわけだが・・・インターネットで地方局のラジオを聞けるアップデートはそれなりにしているのである。

離婚した二人といえば・・・「最高の離婚」が思い出されるが・・・どちらかといえば原作的にはこちらが先行系である。

今季は離婚ドラマとして「アイムホーム」があるが・・・こちらの原作はほぼ同時期。

流れとしては「恋愛時代」→「アイムホーム」→「最高の離婚」である。

ちなみに「恋愛時代」は恋愛要素が強く、「アイムホーム」は家族愛要素が強い。

「最高の離婚」はある意味、ミックスなのである。

で、『恋愛時代・第1回』(日本テレビ201504022359~)原作・野沢尚、脚本・藤井清美、演出・藤村享平を見た。「たぶらかし-代行女優業・マキ-」以来のこの枠の制作協力がホリプロである。佐津川愛美も出るがそのうち香椎由宇も出るのだ。制作協力が吉本興業よりあっさりしていて・・・それなりにお色気もあるのだった。

五年前、23才だった衛藤はる(比嘉愛未)は書店員の早勢理一郎(満島真之介)にナンパされて交際開始する。

一年後に結婚。

一年半後に離婚。

それから・・・二年半の歳月が流れて・・・はるは28才になっている。

理一郎とは行きつけの店が一緒で・・・いまだに顔を合わせることが多い。

時には待ち合わせてレストランで食事をすることも・・・。

離婚したのに・・・お互いに未練があるらしい。

「あんなことがなければ離婚しなかったよねえ」と年の離れた大学生の妹・しず夏(松川星)は二人の仲を評すのだった。

あんなことの内容は秘密である。

喧嘩するほど仲がいい二人は・・・会えば喧嘩になるのだった。

口論がもつれて・・・「お互いに・・・再婚相手を紹介すること」になるのだった。

この時点で・・・なんだかなあ・・・なのであるが・・・まあ、いいじゃないの。

スポーツ・ジムのインストラクターを務めるはるは・・・生徒の喜多嶋竜一(佐藤隆太)に水泳を教えたりしているのだ。もちろん・・・・喜多嶋はなんとなく・・・はるに気があるわけである。

なにしろ・・・元朝ドラヒロインなのである。

悩んだはるは・・・父親で牧師の衛藤銀一(大石吾朗)がパーソナリティーを務めるローカル局のラジオ番組の電話悩み相談に匿名で参加するのである。

「別れた男に女を紹介することになり・・・悩んでいます」

「それは今でも彼を好きだからなのでは」

「しかし・・・会えば喧嘩してしまうのです」

「それは・・・あなたたちが・・・子供だからでしょう」

「え」

「大人になったあなた自身を彼に紹介したらどうでしょう」

「・・・」

すべてを見抜いているような・・・お導きなのである。

結婚して離婚しているのに親しく交際する。

夫婦漫才のような職業的パートナーならありえる話である。

「あんなこと」という夫婦生活が破綻するような深刻なトラブルを協力して乗り越えられなかったのは・・・お互いに未熟だったから・・・はるはそう考えたらしい。

要するに「結婚」に対する覚悟の問題である。

さらに言えば「家族」というものをどのように理解しているかという問題だ。

まあ・・・逆に言うとあまり深く考えないから成立している・・・ということも世の中にはある。

やがて認知症になるという前提で人生設計をする人はそれほど多くないのである。

「彼と人生をやりなおしたい」と決意したはるは・・・理一郎にそれを伝えようとする。

しかし、呼び出された理一郎は二人の結婚式の式場スタッフで・・・花嫁姿のはるに一目惚れをして以来四年間片思いしていたという永冨匠平(淵上泰史)を連れて来たのである。

「彼を・・・紹介する」

想いが通じず、裏切られた気分のはるは逆上するのだった。

「あ・・・そう」

「・・・」

「じゃ・・・ここから・・・あなたはもういいでしょ」

「え」

結局、理一郎は・・・そういう想像力に欠けるタイプの男なのである。

彼女に彼を紹介したら・・・自分が彼ではなくなるとは夢にも思っていなかったのだ。

まあ・・・そういう自分の嫌なことには敏感で・・・他人の嫌なことには鈍感な生き物が・・・人間なのだと言ってしまえばそれまでである。

そういう人間しかいなければ・・・そういう人間と折り合うしかないのが人生なんだな。

はるは「本心」をねじまげていくわけだが・・・それもまた人生だと思う人と・・・それは間違っていると思う人がいる。

後者はハラハラしながら・・・二人を見守っていく。

前者はそんなことで・・・主人公たちが周囲の人々を巻き込んでいくのはどうかと思うのである。

こうして・・・はると匠平のカップル(仮)がスタートするわけだが・・・はるは・・・理一郎に自分以外の女を紹介する気はさらさらない。

しかし・・・そんなはるの前に・・・幼い娘・彩(横山芽生)を連れた同級生の小笠原かすみ(佐津川愛美)が現れるのだった。

理一郎は・・・書棚のポップに・・・「すべての原因はあなた自身にある」というキャッチフレーズを見出す。

まあ・・・糸がもつれていくのは・・・誰かが解く努力をしないからだという考え方もあるが・・・糸はもつれる性質を持っているという考え方もあります。

精神は病むものである。

基本的に自殺するような傾向の魂の片鱗があるので・・・注意が必要なのである。

でも・・・他人のフリ見てわがフリ直せって言うからな。

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2015年4月 2日 (木)

食の軍師~おでんのちくわぶに天下三分の計は関係ありません(津田寛治)

そこかよ・・・。

春ドラマの先陣をきってるからな・・・。

TOKYO MXだけどな。

グルメとドラマというジャンルは基本しょうもない感じがするんだが・・・。

「ランチの女王」もあるじゃないか。

「女くどき飯」はレビューしなかったけどな。

「孤独のグルメ」とか「深夜食堂」とか・・・おいしいものがあれば・・・あとは雰囲気で・・・というのがなんか嫌だ。

嫌なのかよっ。

まあ・・・おいしいものはドラマで見るより・・・自分で食べた方がいいよね。

結局、食いしん坊かっ・・・。

で、『食の軍師・第1回』(TOKYO MX201504012330~)原作・泉昌之、脚本・田口佳宏、演出・宝来忠昭を見た。トレンチコートの男・本郷(津田寛治)が基本的にあまり高級ではないが美味しい「食」を求め・・・できるだけスタイリッシュに「食事」をするというだけの話である。なぜか・・・ライバルであるパーカーの男・力石(高岡奏輔)が同じ「店舗」に現れ・・・どちらが格好良く食べることができたかの戦いとなる・・・その時、本郷の脳内では食の軍師・諸葛亮孔明(篠井英介)が策を授けるという幻想が展開するのである。

ほら・・・やはり・・・しょうもないじゃないか。

初回のテーマは「屋台のおでん」である。

かねてから目をつけていた屋台にやってきた本郷。

しかし・・・ふらりとやってきた力石に先手をとられる。

熱燗

コンニャク

大根

ゴボウ巻

・・・である。△、○、□にこだわる本郷はしてやられた感に身悶えするのだった。

闘志を燃やす本郷の注文は・・・。

熱燗

ハンペン

ゆで卵

ちくわぶ

白い・・・白いぞ。

東京育ちには意外なことだが・・・ちくわぶもはんぺんも関東ローカルである。

キッドなんてすき焼きにもちくわぶ入れちゃうのに・・・。

外道だな・・・。

ちなみに・・・ハンペンは白身魚と山芋、ちくわぶは小麦粉であるのでかぶっているようでかぶっていないのだ。

一矢報いた気分の本郷だが・・・白石は攻め込む。

ばくだん(玉子巻)

牛スジ

しらたき

なんとなく・・・関西系の匂いがする。

しかし・・・本郷もばくだん、牛スジ、しらたきは好物なのだった・・・ゆで卵食べてるけどな。

こってり、こってり、あっさりの組み合わせを求めて・・・本郷がたどり着いた正解は・・・。

タコ(足)

イカ巻き

昆布

・・・なんとなく・・・破れかぶれな感じがする。

しかし・・・本郷はいい勝負に持ち込んだ気になり・・・止めの「ふくろ」(餅入り巾着)に狙いを定める。

ここで二人の女性客が参入。

力石セットである「コンニャク、大根、ゴボウ巻」を注文。

なんとなく・・・自分の女を獲られた気分になる本郷・・・見ず知らずの女性たちである。

そこで・・・力石が・・・。

ふくろ

二人の女性が同調・・・。

ふくろはネタ切れとなる。

「くそ」

敗北感におそわれた本郷は・・・。

ちくわぶ(二回目)

・・・好きなんだな・・・。

しかし・・・女性客たちは・・・。

「ちくわぶって意味わかんないわよね」

「だよね」

ここは東京じゃないのか・・・。

とにかく・・・痛撃を浴びた本郷は・・・熱燗をおかわりして・・・悪酔い・・・醜態をさらして二日酔いである。

本郷は・・・おでんに敗れたのである。

なんのこっちゃ・・・。

第一、つみれだ・・・なぜつみれをオーダーしないのだっ。

そして、厚揚げで・・・じゃがいもだろうがっ。

そもそも春なのに・・・おでんかよっ。

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2015年4月 1日 (水)

2015年春ドラマを待ちながら(キッド)

三月の終わりの日の東京は春の陽気で・・・道行く人の中には半袖のシャツの人がいた。

花冷えの後、いきなり初夏は嫌だな。

夏より冬の方が好きなので・・・せめて長めの春にしてもらいたい。

さて・・・いつもフライング気味で日本テレビの深夜がスタートするので・・・「待ちながら」である。

四月二日(木)からの・・・「恋愛時代」である。原作は小説「恋愛時代/野沢尚」(1997年)である。

キッドの好きな映画ベスト1000にランクインする「深紅」の原作・脚本家である。自殺してからもう十年以上たつのか・・・何故死んだのだ。

この枠で大丈夫なのか・・・とも思うが・・・比嘉愛未、満島真之介というキャスティングにはそそられる。

ついでに・・・四月三日(金)のテレビ東京深夜は・・・「みんな!エスパーだよ!番外編 ~エスパー、都へ行く~」がある。「染谷将太をめぐりダブルヒロインが恋とパンチラに火花を散らす!! 」ってどんなキャッチフレーズだよ・・・真野恵里菜は健在だが・・・夏帆は不在で・・・北原里英らしい。

ある意味・・・パーフェクトにフィニッシュしておいて・・・どういうことだ・・・と思いつつ・・・見るよね。

パンツついでに原作・小泉今日子のCSドラマ「戦う女」が四月六日からフジテレビ深夜で連夜放送である。

主人公はパンツ店主(門脇麦)なのだ。

春はパンツを穿いて・・・なのか。

冬ドラマが恋愛一色だったので・・・脱いだからな。

(月)は「ようこそ、わが家へ」相葉雅紀で沢尻エリカで有村架純だ・・・基本的に当選確実だが・・・今季は(木)あたりでよれるので・・・ペンディングなんだな。

(火)は夜10時に荒井修子VS渡辺千穂が変態対決である・・・おいっ。「マザー・ゲーム ~彼女たちの階級~ 」VS「戦う!書店ガール」で木村文乃、長谷川京子、安達祐実VS渡辺麻友、稲森いずみ、鈴木ちなみなのだ。このメンバーで伊賀VS甲賀のくのいち合戦をやってもらいたいくらいだ。・・・妄想逃避するなよ。まあ・・・フジの方がTBSよりも爽やかな気がするよね。TBSには檀れいや貫地谷しほりもでるからな・・・っていうか・・・「マザー・ゲーム」は同じ企画を杏・主演でやってたよね。強烈な子役そろえて・・・。NHKの「美女と男子」の仲間由紀恵と徳永えりもあるわけだが・・・。

深夜に山田孝之の「REPLAY & DESTROY」もあって・・・ベンディングだ。

(水)は「Dr.倫太郎」の中園ミホで堺雅人、「心がポキッとね」の岡田惠和で阿部サダヲが激突である。これはもう・・・ペンディングにするしかなね・・・・・おいおいおい。

(木)は「アイムホーム」である・・・これは譲れない・・・じいやが。

ヤメゴク ~ヤクザやめて頂きます~」もそそるけどね・・・「安堂ロイド」のロイド(木村拓哉)とサプリ(本田翼)妹(大島優子)刑事の娘(山口紗弥加)が裏表に分裂しているんだよな。

この演出・堤幸彦の「ヤメゴク」が面白かった場合・・・(月)(火)(水)のどれかが消えるわけだな。

(金)は「アルジャーノンに花束を」である・・・これも譲れない・・・じいやが。栗山千明、谷村美月、大政絢のスリーカードだしな。

(土)は多部未華子の「ドS刑事」でほぼ決定なのだが・・・山本美月の「64(ロクヨン)」は脚本・大森寿美男なので・・・(月)(火)(水)のどれかを消す可能性があるよね。

(日)は「花燃ゆ」続行・・・。ただし・・・「天皇の料理番」が「仁」レベルの出来だと・・・(月)(火)(水)の・・・もう、いいぞ。

た、谷間はありますか・・・あるっと言ってもないっと言ってもエイプリールフールである。

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