医師たちの恋愛事情(斎藤工)桜の花も散りまして(相武紗季)
自分の生まれた街で半世紀も暮らしていると変化に戸惑うことがある。
自分の生まれた病院が高層化されたりもする。
新病棟と旧病棟の落差に眩暈を感じたりもする。
巨大な組織のシステムの更新は興味深くもあり、馬鹿馬鹿しくもある。
人はどれくらい生きれば満足するのだろう。
長く生きた人を見送るのはそれなりにまったりするものだ。
それもまた人生だ。
遠い街で血縁者が死ねば出かけて行く場合もある。
近所で知人が死んでもそれを知るのは噂話だったりもする。
人と人のつながりは不思議なものだ。
生と死の間に病院があるのは都合がいい。
家族は死因を疑われることもなく・・・警察に取調を受けることもない。
それだけでも・・・医師という職業の存在はありがたい・・・という時代なのである。
で、『医師たちの恋愛事情・第1回』(フジテレビ20150409PM10~)脚本・秋山竜平、坂口理子、小山正太、演出・田中亮を見た。複数脚本家によるが・・・それほど乱雑な感じがしないのでいいチームなのだろう。冬ドラマでは「まっしろ」という暗礁に乗り上げて隕石が落下し奈落の底へ沈下していく難破船のような作品があったが・・・医療ドラマと恋愛ドラマのミックス・ジュースとしては・・・こちらはまあまあの滑り出しだったのではないだろうか。まあ・・・だからといって「踊る大捜査線」の青島みたいな性格のドクターが年上の美人女医と相合傘する場面が見せ場のドラマにうっとりしたりはできないのである。悪魔なものですから。
「心ポキ」では実年齢50才の女優が45才のヒロインを演じていたわけだが、こちらでは実年齢45才の女優が42才のヒロインを演じるわけである。つまり・・・年齢より若く見えるということなんですな。
一方、お相手の主人公は実年齢33才なのに35才の役である。つまり実年齢的にはひとまわり違うのにドラマでは七つ年上の女になっているのだ。
どんな事情なんだか知らないが・・・実年齢29才の相武紗季は31才の麻酔医である。
老醜漂うゲスト患者を演じる織本順吉は実年齢88才だ。
もうなんだか・・・それだけで胸がいっぱいになりました。
外科医・守田春樹(斎藤工)は手術技術のスキルアップを目指し、江洋医科大学附属病院にやってきた。先輩である第一外科准教授の仁志祐介(伊原剛志)を頼ったのである。
患者第一主義の春樹は医師ではない渡辺幹夫(生瀬勝久)が経営管理部長として君臨し、病院経営の黒字化を目指す姿勢に戸惑いを感じる。
赴任前夜、ホテルのバーで仁志と旧交を温めていた春樹は・・・結婚式場で急病人が出たという報せを聞き、駆けつける。
しかし、そこでは結婚式に出席していた外科医・近藤千鶴(石田ゆり子)が先着し、処置にあたっていた。
二人は協力して救命するのだった。
運命の出会いである・・・ドラマだからっ。
翌日、江洋医科大学附属病院で再会する二人。
折しも、カンファレンスルームでは春樹の前任者が・・・不適切な恋愛沙汰で病院を追われたことが問題になっていた。
「恋愛をする暇があったら医者として病院経営の黒字化を真摯に目指してもらいたい」
渡辺部長は釘を指すのだった。
もちろん・・・余計なお世話である。
何故か・・・すでに魅かれあう春樹と千鶴なのです。
しかし・・・先輩として春樹の行動に危うさを感じる千鶴と自分の正義を暴走させる春樹は前戯として小さな衝突を繰り返すのだった。
不妊治療中の内科医・市川友子(板谷由夏)や、シングルマザーの麻酔医・河合奈々(相武紗季)はそんな二人を生温かく見守るのだった。
奈々は結婚相手を募集中であるが・・・第一外科講師の高橋宗太郎(平山浩行)に誘われても応じない。高橋の本命が千鶴であることを見抜いているのである。
入院医療費の定額支払い制度を導入している江洋医科大学附属病院では入院から退院までには一つの病気しか治療しないのが基本方針である。同時に二つの病気を治療したのでは病院側の負担が大きくなるからであった。まあ・・・やや拡大解釈ですが。
また・・・各科における縄張り意識も強く、外科医が産科的施術を行うのもタブーであった。まあ、そういう設定ということですが。
少し、熱血要素強調の虚構化が過ぎている気もしますね。ま・・・ドラマだからな。
脚本家三人は医療技術担当、病院経営担当、恋愛担当なのか・・・。
全員、そこそこだからな。
「患者第一主義」の春樹は千鶴を巻き込んで産科の領域にあたる手術を実行し、渡辺部長のブラックリストに乗るのだった。
退院間際の患者・三浦(織本順吉)は窓から桜を眺めていた。
「もう少し・・・入院していたいのだが・・・」
「一度退院して・・・再入院してください」
「冷たいねえ・・・昔はもっと優しかったのに・・・」
「・・・」
「桜はねえ・・・散り際が一番美しいんだよ」
明らかに死相を浮かべる三浦だった。
主治医の千鶴にとって・・・三浦は新人時代に初めて担当してから長い付き合いのある患者だったのだ。
廊下で三浦に出会った春樹は症状を聞きだし、千鶴に追加検査を提案する。
「一度・・・退院してもらって外来を通してもらわないと・・・診療できないのよ」
「一刻を争う状態だったらどうするんです」
「大病院には大病院のやり方があるの・・・三浦さんだけを特別扱いにはできないのよ・・・手術の数をこなして・・・スキルを磨くためにここに来たんでしょう・・・それなら、病院の方針に従いなさい・・・ひとりの患者に時間をかけて寄り添いたいのなら田舎の小さな病院に帰りなさい」
「・・・」
退院する三浦に懇願する千鶴。
「必ず・・・明日、もう一度病院に来てね」
「・・・」
しかし・・・公園で倒れた三浦は緊急搬送されてくるのだった。
春樹は懸命に蘇生を試みるが・・・三浦は帰らぬ人となった。
病院の中庭で桜を眺める千鶴。
散りゆく桜が風に舞う。
「一昨日も命を救ったし・・・昨日も命を救った・・・でも今日は救えなかった」
春樹は千鶴をそっと抱きしめるのだった。
桜吹雪とともに・・・二人の恋は幕を開けるのだった・・・ドラマだからっ。
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