戦う!書店ガール(渡辺麻友)あなた本だけが友達だったのね(稲森いずみ)
「本は親友です」
このこだわりは素晴らしいな。
「ボールはともだち」と同じ領域だからな。
あくまで「本」が友達なのであって・・・作者への敬意はあまりないところが「こだわり」なんだよな。
だからこそ・・・作者が本にひれふすクライマックスは涙が止まらなかったよ。
さて・・・「絶対泣かないと決めた日」シリーズで主演女優の立て方に覚醒した脚本家が「最高の人生の終り方〜エンディングプランナー〜」で新境地を開いた後・・・いろいろあって原作ものである。
物凄いアレンジを加えてきたが・・・実にいい感じに仕上がっている。
榮倉奈々や杏はそれなりに実力派だが・・・未知数と言えるまゆゆをここまで生かしてくるとは・・・。
天晴れだな。
で、『戦う!書店ガール・第1回』(フジテレビ20150414PM10~)原作・碧野圭、脚本・渡辺千穂、演出・白木啓一郎を見た。いつの間にか最大の激戦区となった(火)10時である。仲間由紀恵、木村文乃、まゆゆという女の争いなんだな。文乃が上下で板挟みになっているような感じもするよ・・・。原作のアレンジというより前日譚的な感じになっているこの作品は言わば正攻法とも言える。NHKは長丁場らしいし、TBSは物凄く「名前のない女神」みたいなので・・・(火)はこれがレギュラーになりそうである。とにかく・・・週の中盤が重いのは確実だからな。週明けや週末はなるべく軽くしたいのだ。とにかく「本」の好きな女の子が・・・「出版社」で「本作り」ではなくて「書店」で「本売り」の道を選ぶ・・・そうすると「本」が主役になれるわけである。「古書店」ではなくて「書店」というのがコンテンポラリーなんだよな。キッドはここに魅かれるのだった。
大手書店「ペガサス書房」に勤務する北村亜紀(渡辺麻友)は新宿店から吉祥寺店に転勤が決まり、高層マンションに転居する。引越業者が運ぶのは大量の書籍。新居は書庫のような趣きである。そこはかとなく漂うリッチなムード。
「センターに置くのは大事な本だよね」
置かれたのは「はてしない物語/ミヒャエル・エンデ」(1979年)である。映画「ネバー・エンディング・ストーリー」の原作だ。
23歳の書店員としては贅沢な住居だが・・・大手文房具メーカー会長の孫娘というお嬢様なのだった。
児童書についてはかなり造形が深い亜紀はふと「しろねこくろねこ/きくち ちき」に目をとめる。
吉祥寺店ではちょうど副店長の西岡理子(稲森いずみ)が「しろねこくろねこ」を書棚に押し込んでいた。
理子はベテラン店員で・・・管理職としての評価も高い。
つまり・・・しろねこもくろねこもねこだという話なのである。そうなのかっ。
転勤者はもう一人、かって理子の部下だった三田孝彦(千葉雄大)である。
書店員として三田は理子を尊敬している。
三田は転勤前日に出社して作業を手伝う優等生なのだった。
「あら」
「お客さんが手にとりやすいようにという・・・本の並べ方から教えてもらいましたからね」
心が和む理子なのである。
しかし、店長の野島(木下ほうか)は注意を促す。
「明日から吉祥寺勤務になる北村亜紀君は・・・北村文具店のお嬢様なんだ・・・コネ入社だからね・・・そのことを覚えておいてね」
ご機嫌とれってのかよ・・・と心では思うがにこやかに頷く理子なのである。
公私の公ではとにかく落ち度のない理子なのだった。
しかし、同僚で親友の尾崎(濱田マリ)には行きつけの店・・・屋良部守(マキタスポーツ)が店長の沖縄料理店ではプライベートの愚痴をこぼす。
「彼氏とご無沙汰なのよ」
「もう・・・長いもんねえ」
理子は出版社の営業をしている柴田(長谷川朝晴)と交際しているのだが・・・結婚に至っていないのだった。
理子は四十歳・・・ある意味ヤバイのだった。
初日のスタッフ会議。
挨拶もそこそこに元気よく意見を述べる亜紀である。
「こちらの店舗は地味です・・・華がないというか立体感が感じられません。ポップも出版社が作ったものがお義理程度に置かれているだけですし。もっと派手にしちゃいましょうよ・・・ぱ~っと、 もっと明るく・・・このお店を変えちゃいましょう!」
呆気にとられるスタッフ一同なのだった。
理子はお嬢様に教育的指導を開始する。
「北村さんはコミック担当でお願いします」
「私は児童書担当を希望します」
「希望通りに配属されるとは限らないのよ」
「でも・・・コミックのプロは三田さんですし・・・私は児童書には自信があります」
「思い入れが強すぎるジャンルを担当させないというのがうちの方針なの」
店員の一人、萩原麻美(鈴木ちなみ)は亜紀の言動に呆れるのだった。
事情通の日下(伊野尾慧)はダークシステム的に情報を伝える。
「怖いもの知らずのお嬢様らしいよ・・・億ションに一人暮らしの帰国子女で・・・身につけているものはすべて高級ブランドのみ」
「げろげろ」
「あの北村文具の会長の孫でついた仇名が三代目」
「げろげろげろ」
休憩時間に書店内カフェで三田を相手に不満を爆発させる亜紀。
「得意分野をつぶそうとする方針なんて・・・おかしいじゃないですか」
「・・・」
「三田さんだって・・・得意のコミックやりたいでしょう」
「僕はチャンスだと思うよ」
「チャンス?」
「知らなかったことを知るチャンス。幅広い知識を得られるチャンス。プロフェッショナルな書店員になるチャンス。 そういうふうにね」
「・・・」
三田の言葉は素直に聞ける亜紀だった。
原作では交際相手である。
気分を変えてコミックの勉強を始める亜紀・・・そこへ顔馴染みの柴田が編集者の小幡(大東駿介)とやってくる。
「これ・・・差し入れ」
高級洋菓子である。
亜紀と親しげな態度の柴田を不快に思う理子である。
しかし、柴田は「大事な話がある」とホテルのレストランでの食事に理子を招くのだった。
一方、小幡は亜紀に見惚れるのだった。
原作では結婚相手である。
もちろん・・・ドラマはドラマなので先のことは分からないことにする。
中華料理店で理子は尾崎に「それはいよいよプロポーズなのでは」と冷やかされる。
カウンターに並んだ謎の客(田辺誠一)は「プロポーズだったらいいですねえ」と呟くのだった。
理子は定年退職した父親の達人(井上順)と二人暮らしである。
酔い潰れた父親の老いた顔を見ると・・・このままではいけないとふと思う理子だった。
そういう哀愁とは無縁の亜紀はスタッフ会議でバリバリと店舗改革案を提出する。
「やっぱりもっとポップを使いませんか?・・・ポップでお客様にわかりやすく本をアピールしましょうよ」
「うちの店舗ではなるべくポップは置かないようにしてるんです」
「書店員の手書きポップなんて売り上げアップの必須ツールじゃないですか」
「背中を押してすすめるよりお客様自身で選んでもらうほうが大切だという考えです」
「売り場を盛り上げたいという情熱はお客様にも伝わるんじゃないでしょうか?」
「温度差が開けばその分離れるお客さんもいます」
「何でそんなマイナスなことばっかり考えるんですか?」
「リスク管理も私の仕事だから」
「まずやってみればいいじゃないですか・・・店長はどう思います」
「そうだね」
店長は・・・亜紀に甘いのだった。
「え」
三田は理子のために・・・亜紀をなだめようとカフェに誘う。
しかし、亜紀は前進あるのみだった。
「コミックと児童書の情報を交換しませんか?」
「え・・・」
「三田さんのおっしゃるように書店員のプロになりたいので・・・コミック担当を頑張ります」
「ああ・・・」
三田の手にした「ぐりとぐら/中川李枝子(作)山脇百合子(絵)」に目をとめる亜紀。
野ねずみのぐりとぐらを主人公とした絵本で450万部の超ベストセラーである。
「カステラ食べたくなっちゃった」
「何で」
「23ページです」
「・・・」
「さあ・・・出来た頃だぞ。ぐらがお鍋の蓋を取るとまあ黄色いカステラがふんわりと顔を出しました。やあ・・・おいしそう。みんなは目をまあるくして感心しました。そのおいしかったこと・・・」
絵本を暗誦する亜紀に好意を感じる三田である。
本好き魂が疼くのだった。
「小学生向けの歴史コミックと言えば何ですかね」
「みなもと太郎の風雲児たち・・・かな」
「ですよね~」
意気投合する二人だった。
コミック・売り場に炸裂する亜紀の手作りポップ。
評判は上々で売上も伸びるが・・・理子は苦々しく思う。
そこへ・・・不審人物が登場する。
翌日、亜紀の手作りポップは撤去されていた。
「誰がこんなことを・・・」
「私よ」と理子。
「どうして・・・こんなひどいことをするんですか?」
「自分の好みを押しつけてるだけのポップだから」
「でも売上アップしてます」
「何かを際立たせれば何かが沈んでしまう・・・そういう弊害もあるの」
「・・・」
「たとえば・・・この恋愛推しのポップ・・・たしかにこのコミックは恋愛が全面に描かれてる・・・だけど作者は親子のあり方について考えている人や仕事で壁にぶち当たってる人にも読んでほしいと思ってる」
「なんで・・・副店長に作者の気持ちが」
「昨日、本人が来店なされておっしゃったのよ」
「え」
「あなたはポップで自分の気持ちを表現しているだけ・・・本を選ぶのは・・・あくまでお客様。同じ本を読んで星を5つ付ける読者もいればマイナス評価の読者もいる。同じ人間が同じ本を読んでも出合った時期によって感じることや受け取るものは違う。そういったことを踏まえてポップを作らなければいけないの。自分の意見や感想を尊重されたいのならブログでも書けばいい。悔しかったら私を納得させるポップを書くことね」
書いてるぞ・・・ブログを今。
基本的に妄想だけどな。
そして・・・あくまで前向きな亜紀は理子を納得させるポップ作りに向けて邁進するのだった。
その目に新刊本の「famale/アリー」(フィクション)の広告が入る。
「アリーか・・・」
アリー(橋本じゅん)はマツコなみに人気のあるオネエで「famale」は処女小説だった。
翌日のスタッフ会議は本社の谷田部社長が参加してのものだった。
「時代の流れでどこの書店も年々売り上げが落ちています・・・本を並べてるだけじゃ生き残れません。売り上げアップのためにできること何かアイデアがあればいつでも気軽に提案してください」
「はい」
「君は?」
「北村亜紀と申します」
「ああ・・・おじいさまはお元気ですか」
「はい・・・アリーが私小説を出すことはご存じですか?」
「ベストセラーになるんじゃないかな」
「アリーのサイン会をうちでやるというのはどうでしょう」
「しかし・・・簡単にはスケジュールをもらえないんじゃないか」
「アリーって・・・私の祖父の会社の商品のイメージキャラクターなんです」
「・・・」
炸裂するコネ爆弾である。
暴走するお嬢様に・・・反発する一般庶民たち・・・。
しかし・・・。
「今度の土曜日吉祥寺店に来てくれるんです・・・3時間ゲットできました」
「え・・・そんなこと・・・急に言われても・・・」
だが走りだしたお嬢様は止まらないのだった。
イベント準備に追いまくられる一般庶民の不満は爆発寸前である。
理子は亜紀に意見するのだった。
「みんなもともと抱えてる仕事が減るわけじゃないんだし頼むときはもうちょっと配慮しないと」
「私 間違ったことしてますか?」
「間違ってはないわ・・・でも・・・みんなに気持ちよく協力してもらったほうがいいでしょ?」
「ご機嫌取りながら足並みそろうのを待ってる時間がもったいないと思うんです。誰かが引っ張らないと成り立たないと思います」
「・・・」
「それから金曜日遅番でお願いします」
「え・・・イベントの前日じゃない」
「午前中はどうしても用事があるので」
亜紀の常識を越えたマイペースに戸惑う理子だった。
イベント前日・・・亜紀不在のまま準備を開始する店員たち。
「あの・・・三代目は・・・」
「みんなにはほんとに負担かけてしまって申し訳ないと思ってるけど決まったからには成功させたいって思ってるの」と仕方なくリーダーシップを発揮する理子だった。
準備の途中で亜紀から連絡が入る。
「副店長・・・今日お休みさせていただいてもよろしいでしょうか?・・・実は今、福岡なんですけど・・・午前中の飛行機で戻る予定が急な豪雨で飛行機が飛ばないんです」
絶句する理子だった。
翌朝・・・出勤した理子は疲れ果てて眠る亜紀と・・・欠勤の理由を知るのだった。
物凄い長蛇の列となった客の群れである。
しかし・・・問題が発生する。
ナーバスになったアリーが客との握手会を拒否したのである。
「マネージャーが勝手に組んだスケジュールで・・・客寄せパンダになんかなりたくないわ」
「えええ」と驚く亜紀。
「私、帰る」
「私はアリーさんにやっていただきたいんです。いいイベントだったと言われたいんです。お願いします!」
「どうせろくに中身も読んでないくせに!・・・どいつもこいつもみんなそう!・・・読む前から所詮タレント本だ・・・駄作だ・・・印税稼ぎの銭亀だっていいかげんなことばっかり!・・・あんたたちだって適当に本を売りたいだけなんでしょ?」
「本を売ることのどこがいけないんでしょうか。本を多くの人に届けたいという気持ちのどこがいけないでしょうか。ここは書店です。私たちは書店員です。本を売るのが仕事なんです。アリーさんこそご自分の本を たくさんの方に読んでもらいたくはないんですか?」
「もう二度とその口を開かないで。くそ女~!」
「待ってください」と理子が割って入る。
「彼女の準備したポップを一目見てください」
「ポップ?」
会場にエリーを案内する理子。
そこには・・・本に書かれたアリーの思い出の地を巡った写真バネルが展示されていた。
「あなたの口から・・・私に説明しなさい」
「・・・」
「この写真は?」
「これはアリーさんが高校時代大好きだった学食のオムライスです。トマトソースとケチャップを選べるけどいつもケチャップで食べていたとあったので私もケチャップで頂きました。本当においしかったです」
小学校のグラウンド。通学路の坂道から見た夕日。お友達の家の庭にあったもくれんの木。駄菓子屋さんのおじいちゃん・・・。
アリーのふるさとの情景がそこにあった。
「私は・・・彼女のポップは素晴らしいと思います」
「私はこの本を読んでアリーさんをすごく身近に感じました。子供の頃に子供同士で隣にいる自分を想像しながら読みました。ひとと違うことは周りに理解されにくいです。子供の頃は特にさびしかったんだろうなと思います。でも大人になって気付いたんですよね・・・アリーさんは。振り返ってみれば小さな幸せや小さな喜びがあったこと。寂しいだけじゃなくてかけがえのない思い出があったってことに。とってもすてきな本です。人に生きる勇気を与えてくれる本です」
本しか友達のいない女の恐ろしい説得力である。
アリーはやる気になった。
イベントは大成功である。
しかし・・・本社では・・・ネット事業拡大のために・・・店舗の廃止が検討されていた。
吉祥寺店はその第一候補なのである。
一方・・・理子は柴田とレストランで逢う。
しかし・・・プロポーズではなく別れ話を始める柴田。
「仕事関係で知り合った女の子を妊娠させてしまって・・・責任をとって結婚するつもりだ」
「え」
女の子・・・妊娠・・・結婚・・・嫌な予感に震える理子。
店を出た柴田を思わず追いかけた理子が目にしたのは・・・。
タクシーに同乗する・・・柴田と亜紀だった。
「ええええええええええええ」
これはミスリード・・・それとも脚本家の暴走・・・発表は次回の放送をもってかえさせていただきます。
関連するキッドのブログ→ビブリア古書堂の事件手帖
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コメント
木下ほうか……「残ってたのかなー、寝酒」(←氏ね)
騙されまいぞだまされまいぞ。単なるイイ人なわけがない(~_~;。
それはともかくキッドさま、なんなんでしょう、ダブルヒロインの世代間抗争というわけでもなく、コネ使っちゃいましょー!& 伏線なくプイっとシフトチェンジヒールアンドトゥで視聴者カチーン×2! ポップ書いちゃいかんのかい!っと稲森いずみにもカチーン!
読書体験が売りたいようで実は「本が売りたい」だけなのか逆なのか、いま一つ不明、「おまわり、お前が守りたいのは、規則か? 市民か?」などと思いながらも、もうずっとKindleでしか本を買っていない私なのでした。
怒ると指原に変わるとかやってほしいなぁ……
(木崎ゆりあが可愛い盛り?だというのはわかりました。プロフィール写真とかより輝いている)
投稿: 幻灯機 | 2015年4月15日 (水) 22時05分
✪マジックランタン✪~幻灯機様、いらっしゃいませ~✪マジックランタン✪
ふふふ・・・どちらかといえば丸ですが・・・
タヌキと言えばタヌキですからな。
今回、アイドルネタにしたくなかったので
学習参考書担当・遠野由香(木﨑ゆりあ)はあえて
カットしておきました。
物凄い視聴率だったので・・・解禁しておきます。
まあ・・・脚本家が久しぶりに変態に走ってきて
万歳三唱しておりますぞ。
あえて・・・説明しておきますが
四角いというより長方形のお嬢様も
超絶リス型四十女も・・・
基本的には三度のメシより「本」が好きなのですな。
男より「本」なのです。
つまり・・・変態なのでございます。
だから・・・最後に
長方形にリスが共感するのは・・・
「こいつ・・・本を愛してやがる」
なんですな。
基本的にアリーのことなんかどうでもいいという
姿勢が・・・
「本がかわいそう・・・」というセリフに結実していて
キッドはそこからずっと泣いてしまいました。
変なものを愛してしまう孤独は愛おしいものでございます。
この二人は趣味・読書とか・・・そういうレベルではないのですな。
庶民のリスにはお嬢様のような
本のハーレムは無理ですが
書店に勤めていれば
本に囲まれた
擬似ハーレムを味わえるということです。
図書館じゃダメなんだな。
自分が持ってる感じがしないから。
つまり・・・リスは書架に本を陳列するだけで
濡れる街角なのですぞ~。
長方形とリス・・・二人は絶対に交わりません・・・
何故なら、お互いに人間なんて
どうでもいいと思っているから・・・。
キッドがこのドラマを絶賛するポイントはここにつきるのでございます。
絶対に世の中はついてこないっ!
投稿: キッド | 2015年4月16日 (木) 01時59分