帰らじと思ひさだめし旅なればひとしほぬるる涙松かな・・・と吉田松陰(優香)
幕府老中暗殺計画の首謀者である吉田松陰は過激な革命家であったと言える。
しかし、結局、吉田松陰を処刑した幕府は倒され、吉田松陰は救国の英雄となる。
この極めて簡単な歴史的事実が・・・多くの庶民にとって不可解なのである。
たとえば・・・かって三里塚で管制塔を占拠した反体制過激派は・・・吉田松陰の申し子のようなものである。
しかし、松陰はある意味で彼らが反対する体制そのものなのである。
・・・靖国神社を否定するということは吉田松陰を否定することだ。
そういう人たちが反体制を唱えると・・・吉田松陰的な存在になってしまう。
つまり・・・自己否定することになるのである。
もちろん・・・そうなってしまうのは彼らの本質にあるのが暴力革命だからである。
それから時が立ち・・・現在では反体制の人々の基本は非暴力である。
あくまで民主的な手続きに従い、少数派としての民意を表明する。
当然のことながら・・・それでは革命は起こらない。
たとえ・・・沖縄県が反政府的多数派を形成しても、それが全国的な多数派になることは考えにくい。
あの頭のおかしな総理大臣が・・・「県外」とか「国外」とか言い出してどうしようもない袋小路に突入した記憶が新しいからである。
結局、どうしても今すぐ沖縄から米軍を追い出したければ・・・一戦交えるしかないのである。
そのための最初の革命家はなんらかの方法で死ななければならない。
しかし、米国大使暗殺計画を発表したくらいではなかなか死刑にしてもらえないのが現代の複雑なところである。
だから・・・最初の一人は特攻するしかないだろう。
しかし・・・果たして・・・それに続くものがいるかどうか。
すでに・・・20世紀の闘争でさえ・・・挫折したのである。
あの日の闘士たちがなんだか残念なことになっていることは周知の事実なのである。
一方で吉田松陰は必ず自分に続くものがあると信じ、自ら死地に飛びこんでいく。
「必死なので・・・もう二度と故郷を見ることはない・・・涙松も霞む旅立ち」
もちろん・・・そういう言葉に動かされるのは・・・時代の熱に浮かされる若者たちだけなのかもしれない。
だが・・・吉田松陰の革命は成功してしまうのだった。
そんなのありかよ・・・と多くの現状に不満を抱く庶民は思うんだな。
で、『花燃ゆ・第16回』(NHK総合20150419PM8~)脚本・宮村優子、演出・渡邊良雄を見た。例によってシナリオに沿ったレビューはikasama4様を推奨します。今回は野山獄の司獄官で松陰の一夜帰宅を独断で認可したために職を罷免され罪人となる福川犀之助の描き下ろしイラスト大公開でお得でございます。ついに来た「あるよの人」のイラスト・・・この日をどんなに待ちわびたことか・・・ジーク・ジオン。今回はなんといっても・・・DT殺しの淫婦のあったかいんだから~プレイ。そして・・・幻術師・富永有隣(本田博太郎)降臨ですな。一同爆笑ポイントでしたが・・・どうせなら大深虎之丞(品川徹)も登場して左右から責めてもよかったとも思いました。まあ・・・獄中ですから・・・どんな悪夢を見てもよろしいのでしょう・・・。とにかく・・・ここまて丁寧に吉田松陰を描くスタッフ・・・これが愛というものなのでしょうかねえ。
安政六年(1859年)、フランスはスペインと連合してベトナムへの武力侵攻を開始。ダナン、サイゴンなどを占領する。二月、神奈川港、長崎港、函館港開港。四月、吉田松陰の江戸送致が長州藩に命じられる。六月、神奈川(横浜)と東海道を結ぶ横浜道が開通。横浜港に外国人居留地が設置される。長州藩は幕府と松陰の護送方法ついて協議する。五月、長州藩は杉百合之助に松陰の引き渡しを命ずる。司獄官・福川犀之助の温情により松陰の一時帰宅が叶う。一夜が明け、役人五人、中間十五人、計二十人による松陰の江戸送致が開始される。松陰は腰縄を打たれ駕籠に押し込められ江戸へ向かう。同日、杉百合之助と杉梅太郎はお役御免となり謹慎処分を申しつけられる。およそ一ヶ月の旅程で六月下旬、江戸に到着した松陰は長州藩江戸屋敷から小伝馬町に入牢する。八月、徳川慶喜が隠居謹慎処分。九月、長崎にグラバーが来航。吉田松陰の江戸送致については長井雅楽が積極的に主導したとされる。このことが長井の寿命を縮めることになった。
江戸・彦根藩屋敷の奥の間に咸臨丸による渡米準備のために長崎より帰った服部半蔵こと勝海舟が呼び出されていた。
「参ったか・・・」と大老・井伊直弼が声をかける。
勝海舟は直参であり、公儀隠密であるために大老の配下ではない。
しかし、現在の将軍は幼少であるために大老がその意を受けているという形式になっており、半蔵は召喚に応じぬわけにはいかない立場だった。
「京での働き・・・苦労をかけた」
「勤めでございますれば」
「江戸城お庭番のものどももよく働くものよ」
「・・・」
公儀隠密の頭領は家康以来、服部半蔵だが・・・徳川の歴代の間にいくつかの指揮系統が生じている。古くは大和柳生衆、吉宗の代には紀州お庭番が公儀隠密の支配下にありながら独自の組織を持っている。
忍びのものの力を制御するいくつかの制約が歴代将軍によって構築されていた。
井伊大老の手駒である長野主膳は紀州の忍びである。
お庭番の忍び衆の本家筋にあたるものだった。
井伊大老誕生の背後には紀州忍びの暗躍がある。
将軍を唯一の上忍とする公儀隠密としては異例のことであり・・・半蔵としては苦々しくもある。
半蔵影の軍団、お庭番、柳生衆の間には静かなる縄張り争いさえ発生していたのである。
このことが・・・後に京における公儀隠密の衰退につながるのである。
しかし、それはまだ数年後の話だ。
「長州の吉田という学者のことだ・・・」
「牢での調べは・・・順調に進んでいると聞き及んでおりまする」
「だが・・・京の長野主膳の調べと齟齬が生じている」
「井伊様・・・あのものは・・・水戸への密勅を未然に防げなかったことで・・・いささか功をあせっている節がございます」
「ほう・・・公儀隠密首領は・・・そう考えるか」
「吉田は佐久間象山門下の学者であり、国を憂う志あるもの・・・一ツ橋派とは無縁でございまする」
「ふふふ・・・やけに庇うの・・・吉田は以前にも国禁を犯し密航を企てたというではないか」
「すべてはこの国の行く末を案じてのことでございます」
「しかし・・・そういう不逞の輩を野放しにすることは・・・将軍の威を損じるのではないか」
「寛容な態度で才を生かしてこその・・・威でございましょう・・・」
「なるほどのう・・・では・・・この直弼自らが・・・その心胆を改めるとしよう・・・」
「井伊様が・・・」
「異存はあるまいな・・・」
半蔵は・・・朋輩として・・・松陰の性癖を思った。
これは進退窮ったと半蔵は感じる。
「ございませぬ」
半蔵は唇をかみしめる。
江戸は夏の盛りを迎えようとしていた。
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