出る杭は打たれるのかよっ(稲森いずみ)能ある鷹は爪を隠しませんっ(渡辺麻友)
今季は何故か・・・レビュー対象作品が原作ありのドラマばかりである。
たとえば大河ドラマ「花燃ゆ」はオリジナルというが・・・日本史という原作があるし、主人公は実在の人物である。これをフィクションと断ると・・・世の中にはノンフィクションなんてないというのと同じだ。
もちろん・・・キッドは現実も含めて、森羅万象は「虚構」にすぎないという理念を持っているが、時には妄想と現実を区別するかのようにふるまう。
言論というものは相対的なものだからである。
出版やテレビなどというシステムは媒体(メディア)と呼ばれる。
基本的には情報伝達(コミュニケーション)のシステムは送り手と受け手、そして媒体で構成されている。
受け手の数が大きい媒体はマス(大量)をつけてマス・メディアと呼ばれるわけである。
新聞やテレビによって大衆が情報を得ることがマス・コミュニケーションである。
だから、新聞やテレビのことをマスコミと言うのは厳密には間違っている。
さて、出版物をドラマ化するのはいわばメディアをチェンジすることである。
これにも・・・小説の映画化とか、舞台劇化とか似て非なるものがあるがそれは省略する。
原作を忠実に再現するといっても・・・たとえば文章を視聴覚化することは・・・様々な矛盾を抱えている。
「爆撃によって東京は廃墟と化した」という文章を忠実に視聴覚化しようとすると予算がいくらあっても足りないわけである。
しかし、「戦前の東京の風景写真」「爆撃機の写真」「焼け跡の写真」に「「爆撃によって東京は廃墟と化した」とナレーションするだけという手法もないわけではない。
ここが原作の脚色者(ドラマのスタッフ)とお茶の間の駆け引きの醍醐味である。
また・・・より小さなメディアからより大きなメディアへのチェンジには・・・受け手の知的レベルの拡大という問題が生じる。
放送作家は先輩たちにこう教えられる。
「バカでもわかるようにするのが俺たちの仕事だ」
だから・・・バカでない人は・・・「なるほど・・・これがバカに向けた情報の送り方か」という目で・・・お楽しみくださいという・・・送り手たちの願いを感じる必要があります。
とにかく・・・そのように原作は脚色されてテレビ番組になるのである。
(月)のように原作の主人公が主人公の父親になったりするのは結構チャレンジである。
(火)は主人公をダブルにして少し若くしている。
(水)は物語をでっちあげている。
(木)はテーマにこめられた救いを増幅している。
(金)は半世紀の世界の変化を反映している。
(土)は水増しである。
みんな・・・それなりに苦労しているんだな。
で、『戦う!書店ガール・第5回』(フジテレビ20150512PM10~)原作・碧野圭、脚本・渡辺千穂、演出・白木啓一郎を見た。人は快感を求める生き物である。人が何に快感を求めるのかは個人差があるが・・・自尊心をくすぐられていい気分になるという方法がある。たとえば・・・大衆にはマス・メディアに対する憧れというものがある。情報の発信者になることは社会的に支配的な立場であるような感触があるからだ。そのために女子アナに女子が憧れるわけである。最近はそうでもないかもしれないが・・・新聞記者になるというのもそういう傾向があるわけである。新聞という巨大な企業の一員になることは・・・必ずしも新聞記者になることではない。新聞配達員や、コンビニの店員だって・・・新聞を流通させる重要な歯車である。だが・・・そのことでメディアの一員として自尊心をくすぐられる人は少しバカっぽい。そういう意味では「本を愛する書店員」も同じレベルという考え方もある。だが・・・ベストセラー作家より・・・書店員の方がお茶の間に親近感があるはずである。しかし・・・「ゴーストライター」の方に親近感を感じるという一般人が多いのが社会の醍醐味というものなのだな。あはは。
原作では小幡伸光(大東駿介)の妻である北村亜紀(渡辺麻友)が未婚であるという、様々な大人の事情を感じさせる脚色のこのドラマ・・・。
前回で急接近した一ツ星出版の「コミックヒート」の副編集長・伸光と亜紀。
デート中に伸光は改めて告白。
「つきあってください」
「はい」
「ええええええええ」
伸光の優しさを素直に受け入れることにした亜紀である。
なにしろ・・・お嬢様なのでおおらかなんだな。
そして・・・ドラマは原作の世界に一歩近づいたのである。
一方、斜陽産業である「書店」の経営危機はペガサス書房の吉祥寺店にも押し寄せる。
ペガサス書房の谷田部社長(山中崇)は「ネット書店」展開に力を傾注するために一号店である吉祥寺店を始め、上野店、錦糸町店の三店舗の閉店を決める。
それがどのくらい経営的に不可避のことであるかは説明されないが、とにかく、そのための人事として・・・吉祥寺店の野島店長(木下ほうか)は東京地区のエリア・マネージャーに昇格する。もちろん、店じまいを円滑に進めるためである。
それに伴い・・・副店長の西岡理子(稲森いずみ)は店長に昇格する。
何故か・・・理子には・・・二ヶ月後に閉店する店舗のつなぎの店長であることは明かされず、ペガサス書房初の女性店長と持ち上げられるのだった。
物語は合理化を目指す企業と、保身に汲々とするする幹部社員、責任を一身に背負うタイプのベテラン主人公Aとマイペースすぎる若手主人公B、そして混乱する現場と急展開を迎えるのだ。
理子に対する信頼に目覚めた亜紀や、店員たちは理子の昇進を無邪気に喜ぶ。
しかし・・・理子とほぼ同期の経理担当店員である畠田(森岡豊)だけは複雑な気持ちを感じるのだった。
何故・・・年下の女が・・・上司になるのか・・・と。
しかし・・・吉祥寺店のトップになった理子は理想の書店の構想に燃え・・・部下の心情には無関心だったのである。
同時に「新店長は人望があるようだ」という社長の何気ない感想は野島エリアマネージャーの心をざわつかせる。
小心者の配慮も恐ろしいものなのである。
帰宅した理子は父親で元せんべい屋店主の達人(井上順)に店長昇格を報告する。
「ふうん・・・そうか」と予想通りの塩対応の達人だったが・・・内心では娘の昇進を喜んでいたようだ。
店舗改革のために理子が打った最初の一手は人事移動だった。
「幅広い商品知識が大切」という理子の理想により、担当部署の配置転換が行われる。
そもそも・・・児童書担当の亜紀をコミックに、コミック担当の三田(千葉雄大)を児童書に配置したのも理子だった。
新人事により・・・書店員トリオは・・・慣れない部署に移動する。
文芸書担当の萩原麻美(鈴木ちなみ)は学習参考書担当に。
学習参考書担当の遠野由香(木﨑ゆりあ)は雑誌担当に。
雑誌担当の日下圭一郎(伊野尾慧)は文芸書担当に。
短期的には商品知識力の低い店員の出現となるが・・・長期的には人材が育成されるという考え方である。
もちろん・・・新店長として実績をあげる必要がある理子としては冒険的な手法である。
実際に・・・知識の低さが顧客とのトラブルの原因となる事態が発生する。
書店トリオは新人事に対する不満を感じるのだった。
「何も・・・苦手なことを・・・わざわざ・・・」と思うのである。
先行して配置転換された亜紀はトリオの不満を感じ取ると同時に、理子の深謀遠慮を感じることもできた。
初めて伸光を自宅に招いた亜紀はお弁当作りに熱中していた。
「え・・・もう・・・愛妻弁当・・・」
「違います」
いや・・・交際相手を自宅に招いた以上・・・いや、お嬢様なので婚前交渉はしないのか。
とにかく・・・亜紀は話題の書籍「嫌がらせ弁当/ttkk」をヒントに苦闘中の書店員トリオを励まし、店長の理子を援護するつもりなのである。
「反抗期の娘にキャラ弁を作り続けた母親の話か・・・」
「嫌がらせも・・・愛情表現ですからね」
「一番、是非が曖昧なテーマだよなあ」
「日本は出る杭は打たれる社会ですが帰国子女は爪を剥き出しです」
「背中に爪あと・・・一部愛好家はうっとりだね」
二人は親密交際中なのである。
人気雑誌「NOTICE(論評)」の取材で「働く女性の仕事術」についてインタビューを受ける理子。仕切ったのは野島エリアマネージャーであり・・・そこには思惑があるが悪意に鈍感な理子は気がつかない。
「書店員に大切なのは商品知識と本を愛する心です」と持論を展開するのだった。
どうやら・・・昼休みは営業休止するらしい・・・ペガサス書房。
「まっしろ」もそうだったが・・・シフトという概念はスタッフには希薄なのである。
ランチタイムに・・・書店トリオにスペシャルランチを振る舞う亜紀。
「参考書万歳」と麻美に。「文芸LOVE」と日下に。「付録を忘れるな」と由香(木﨑ゆりあ)に。
嫌がらせメッセージの入ったキャラ弁当。
トリオは一瞬、怒るが弁当が美味いので喜ぶのだった。
「がんばれ」と励ますことが許されない時代の面倒くさい応援方法らしい。
ま・・・すべては臨機応変にするしかないんだよな。
ハラスメント(嫌がらせ)の駆逐がすでにハラスメント(嫌がらせ)なんだから。
二人の主人公の阿吽の呼吸で・・・順調にスタートする・・・新店長体制。
しかし・・・本店での店長会議に・・・新店長として初めて理子が出席する日の朝・・・。
公私の私が・・・理子の幸福な気持ちを打ち砕くのだった。
食卓で意識不明の父親を発見した理子は我を忘れるのである。
救急車で運ばれる父親に付き添った理子は動顛して携帯電話を自宅に置き忘れるという失態を演じるのだった。
処置室に入った父親を見送った理子は公私の公を思い出す。
公衆電話で吉祥寺店に連絡をとる理子。
電話をとったのは邪心に囚われた畠田だった。
「父が脳梗塞で倒れて病院にいます・・・店長会議に欠席することを伝言願います」
「それは大変だ」
思わず口にする畠田だったが・・・伝言は悪意によって揉み消すのだった。
その様子に不審を感じる亜紀だった。
父親の容体が安定して再度、吉祥寺店に連絡する理子。
今度は亜紀が応対する。
電話を変わり、無断欠席の理子を責める野島エリアマネージャー。
「連絡もしないなんて・・・どういうことだ」
「畠田さんに伝言をお願いしたのですが」
「・・・」
視線をそらす畠田の様子で・・・すべての状況を把握する邪心仲間の野島だった。
「店長が君に伝言を頼んだそうだが・・・」
「電話は確かにあったのですが・・・電波状態が悪くて聞き取れませんでした」
「・・・そうか」
しかし・・・亜紀もまた・・・よからぬ男たちの気配を感知していた。
お見舞いにかけつける親友の尾崎(濱田マリ)と下心満載の三田。
「こんな息子がいたらよかったのにね」という尾崎の冗談に・・・唇をとがらせる三田。
下世話な尾崎は三田の下心を察知するのだった。
永遠の美少年キャラの三田くんを美しく描くドラマは難しいんだな。
ある意味、エロすぎるのか・・・。
今回は・・・外見は好青年だが・・・中身はキモオタなので・・・その気持ち悪い部分が滲みでてしまうというキャラ設定・・・可哀想に。
ブックカフェ店員の高田愛子(工藤綾乃)と年相応の恋をして・・・爽やかにヒロインを助ける天使にキャラ変更してもらいたいぐらいだ・・・。
妖艶な男と妖艶な女でますます妖艶になっちゃう可能性もあります。
出社した理子に・・・「無断欠席のお詫びに行く」と告げる野島。
「私は・・・無断欠席扱いになっているのですか」
「畠田くんは君の伝言内容が不明だったと言っている」
「そんな・・・畠田さんは確かにそれは大変だと労ってくれました」
「すると・・・君は畠田くんが・・・ミスをしたと報告するつもりか」
「・・・」
「部下のミスは君のミスだ。幸い・・・御家族の不幸は伝家の宝刀だ・・・父親が危篤状態の君が動顛したことは不問になるだろう。しかし・・・畠田くんのミスはただではすまない」
「・・・」
「よく考えてみたまえ・・・年下の女が上司になった・・・縁の下の力持ち的存在の彼の気持ちを・・・妻子がある彼の立場を・・・上司として・・・」
「そんなのわかりません」
畠田を連れて乱入する亜紀だった。
「どう考えても悪いのは畠田さんです。何が年下の女の上司ですか。縁の下の力持ちなら何しても良いんですか。家族があるなら人間としてダメでしょう・・・悪いことをしたら謝る。畠田さん・・・店長にあやまってください」
「・・・」
正論を押して押して押しまくるお嬢様に圧倒される大人たち。
ついに理子は決断する。
「畠田さん・・・配慮が足りず申し訳ありませんでした・・・力不足の私ですが・・・これからも部下として支えてくれるようにお願いします」
「・・・」
「エリアマネージャー、本店に無断欠席のお詫びに伺います」
心の咎めた男たちは部屋から去る。
「店長・・・」
「北村さん・・・畠田さんにあんな口を聞いてはいけないわ・・・だけど・・・うれしかった・・・ありがとう」
「・・・理子さん」
庶民って面倒くさいと思う亜紀だった。
書店を出る理子の前に畠田が現れる。
「つまらないプライドで・・・つまらない嫌がらせをして・・・すみませんでした」
「・・・」
畠田は上司が自分を査定する立場にあることを漸く思い出したのだった。
こんなに・・・嫌な人間関係はないだろうというあなたは幸せ者である。
まあ・・・こんなもんだなと思うあなたは御苦労様。
役員室で野島は説教を続ける。
「君が至らぬことを僕が代弁したまでだ・・・自分では気がつかないことはある」
「確かに・・・店長時代・・・店長の気がつかないことを私が随分フォローしましたから」
ついに牙をむく理子。
「今度は私を無能あつかいか・・・つなぎの店長のくせに・・・」
「え・・・」
口が滑った野島だった。
まあ・・・いつまでも秘密にしておける事でもない。
社長は社長室で・・・雑誌「NOTICE」の記事を読んで何やら考えている。
社長の経営者の力量はまだ明瞭ではない。
書店トリオは理子のインタビュー記事の内容に激昂していた。
「ネット書店の時代に・・・商品知識のない書店員は無用・・・ゆとり世代の教育には苦労が絶えない・・・云々」
記事内容は書店員に対する誹謗中傷に満ちていた。
「理子さんがこんなことを言うなんて・・・」
七月に店舗閉鎖という重い秘密を抱えた理子は・・・書店員たちの指弾に驚く。
「一体・・・理子さんは・・・吉祥寺店をどうするつもりなんですか」
言葉を失う理子だった。
理子は野島を問いつめる。
「なぜ・・・私を貶なことを・・・なさるのですか」
「何度言ったらわかるんだ・・・すべて上司としての・・・教育的指導だよ」
「・・・」
「私に悪意があるというのなら・・・証拠を見せたまえ・・・私が君を故意に貶めているという証拠を」
ニヤリと笑う店長。
理子は自分の甘さを痛感するのだった。
あの・・・どこか・・・頼りない店長が・・・こんなにも処世術に長けた狡猾な男だったとは。
理子は・・・例の失恋事件でも明らかなように・・・周囲に甘い幻想を抱く傾向があるのだった。
そういう意味では・・・打たれ続けた亜紀の方が強靭さを秘めている。
そこへ・・・ユニコーン堂の田代(田辺誠一)からお誘いの電話である。
弱い女になった理子は・・・入院中の父親を放置して・・・沖縄料理店「わらゆん」に向かうのである。
全国の娘を持つ父親、涙目の瞬間だ。
事情を聞いた田代は慰める。
「どうでしょう・・・思いきってユニコーン堂に来ませんか。僕はあなたをスカウトしたい。一緒に理想の書店を作りたいのです」
「田代さん・・・」
公私ともに揺れる理子の心。
その様子を・・・野島は見ていた。
・・・探偵かっ。
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