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2015年5月22日 (金)

マリーゴールドは黄金の恵(木村拓哉)花言葉は真心(上戸彩)

クリスチャンにとってマリーゴールドは特別な花の一つである。

特にカトリック信者にとって・・・それは聖母マリアのシンボルとして「マリアの黄金の花」の意味を持つ。

原作の「ヨシコ」にあたる久の妻の名はドラマでは「恵」である。

聖歌でマリアは「恵にあふれた方」として讃えられる。

なにしろ・・・処女懐胎して・・・神の子に恵まれた聖なる母なのである。

その名を冠したマリーゴールドの花言葉の一つに「別れの悲しみ」があるのは・・・聖なる母の聖なる息子が結局、反逆者として十字架にかけられる運命だったからだろう。

ただの母親としては「絶望」を感じるしかないわけである。

一方で・・・オレンジ色のマリーゴールドには「真心」という花言葉がある。

太陽神アポロンを愛した水の妖精クリスティや、少年クリムノンはアポロンを愛するゆえに命を失う。

死んでしまうほどの愛・・・それを真心とは言えないと言うのは冷淡の極みである。

愛するものにとってマリーゴールドは特別な花なのである。

で、『アイムホーム・第6回』(テレビ朝日20150521PM9~)原作・石坂啓、脚本・山浦雅大・林宏司、演出・田村直己を見た。2001年のフジテレビヤングシナリオ大賞受賞者の投入である。「世にも奇妙な物語」や「ハードナッツ!」などの脚本家だが・・・原作からの改編が複雑になっているので・・・チェック役が必要になったか、主人公が登場しないパートの助っ人かといろいろと妄想できるわけだが・・・おそらく・・・脚本的にもおしてるんだよね。まあ・・・大胆なチャレンジをしているわけだから・・・生温かく見守りたい。

今回の最大のアレンジは・・・「久の妻の涙」をここに持ってきたということである。

原作ではラストを飾る「アイテム」なのである。

おそらく・・・ここからドラマは原作からテイクオフしていくということなのだろう。

原作では地道に暮らしていた父親が大物キャスティングで「父帰る」をしたり、原作には登場しない・・・致死率の高さでは定評のあるキャスティングのサッカー・コーチの不倫な感じとか・・・原作から消えている前妻の再婚相手とか・・・やたらと陰謀渦巻いている模様の葵インペリアル証券とか・・・原作とは違う何かが爆発する予感に満ちているのでございます。

ここまで・・・使われた鍵をチェックしておこう。

① 前妻・香と義理の娘・すばるの暮らす野沢家の鍵

② 友人・山野辺の居室の鍵

③ 良雄の玩具を隠した秘密の倉庫の鍵

④ 義父のワイン庫の鍵

⑤ 単身赴任をした南茨城の部屋の鍵

⑥ 実家の家路家の鍵

そして・・・今回は⑦別荘の鍵を使用する。

自宅の鍵を一本とすると・・・十本の鍵なら・・・残りは二本である。

少し、鍵が足りないんじゃないかな・・・。

まあ・・・最終回に・・・「ただいま」と言って帰宅すれば・・・ハッピーエンドなのだが。

原作では爆発するのは最後だが・・・ドラマは最初に爆発しているからな・・・。

「今の家族を大切にしよう」と決意した久(木村拓哉)・・・。

しかし、妻・恵(上戸彩)と幼い息子・良雄(髙橋來)の顔は相変わらず仮面にしか見えない。

そんなある日・・・恵は蓼科高原にある別荘で週末を過ごすことを提案する。

「別荘って・・・」

「ウチの別荘に決まってるでしょう・・・母から譲ってもらった・・・」

「・・・」

「お義母さんのことが心配だと思うけど・・・たまには気分転換も必要でしょう」

「そうだね」

「良雄も楽しみでしょう」

しかし・・・良雄は浮かない顔をしている。

「バーベキューするわよ・・・」

母親に言われて漸く喜色を浮かべる良雄だった。

東京を離れれば・・・何かが変わるかもしれない・・・久は期待を込めて別荘行きに同意したのだった。

しかし・・・その夜・・・久の携帯電話には非通知の着信が繰り返される。

そして・・・家路家の扉の前には怪しい人影が佇むのだった・・・。

葵インペリアル証券の末端に位置する第十三営業部。

自分の記憶にない別荘に行くことに不安を感じる久。

同僚の四月(わたぬき)信次(鈴木浩介)は久の様子に敏感に反応する。

「どうしたの・・・」

「週末に・・・蓼科にある別荘に家族と行くことになりまして・・・」

「巨乳の美人妻と週末に高原の別荘で過ごす・・・それでなんで憂鬱な顔なんだよっ」

漸く、出社してきた小机部長(西田敏行)は二人の会話を小耳にはさむ。

「幸せはお裾わけしないとねえ・・・」

一二三(ひふみ)努(猪野学)、五老海(いさみ)洋子(阿南敦子)も激しく同意する。

そこへ・・・轟課長(光石研)が出勤し、お小言モードになって久は危機を脱するのだった。

一方、第一営業部では営業部門執行委員の勅使河原(渡辺いっけい)が営業成績トップの黒木(新井浩文)を賞賛し、第一営業部員とは思えないほど影の薄い岩下(野間口徹)と戸倉(矢野聖人)を叱責する。

「アフリカ支店に飛ばすぞ」

「それだけは勘弁してください」

「男が簡単に頭を下げるなよ」と言った傍から駐車場の車の中で小鳥遊(たかなし)優愛(吉本実憂)に頭を下げる勅使河原だった。

「頼む・・・家路久の監視を再開してくれ」

「嫌です」

「君がやってくれないと・・・僕は困ったことになるんだよ」

「・・・」

とにかく・・・充実しすぎているチョイ役軍団の出番を作るだけでも・・・プレッシャーなんだな。

一体・・・家路久はどんな恐ろしい秘密を忘却しているのか楽しみだ。

そして・・・聖心カトレア幼稚園では園児サッカークラブのコーチ・本城(田中圭)が良雄とパスを交換する。

「そうか・・・家族で別荘にいくのか・・・楽しそうだな」

「・・・さあね」

「なんだ・・・一緒に遊べるだろう・・・お父さんと・・・・・・・・・・・・・お母さんとも」

本城・・・微妙な間を作ったな。

「・・・わかんない」

どうやら・・・良雄は別荘にあまり期待していないらしい。

一方、旅行の準備をする恵はわざとらしいほどにノリノリである。

それが本心なのかどうかも・・・わからない家路。

物憂い気分になるのだった。

「どうしたの・・・お母さんのことがやはり・・・気がかり・・・」

「いや・・・なんだか・・・胸騒ぎがするんだ・・・」

「・・・」

その時、家路家の電話が鳴った。

しかし・・・それは朗報だった。

弟の浩(永井大)が母親の肝臓病の治療に希望が出て来たことを報告してきたのである。

「TIPS・・・なんだい・・・それ」

「Transjugular Intrahepatic Portosystemic Shuntの略だってさ」

「日本語で言ってくれ」

「経頚静脈的肝内門脈肝静脈シャント形成術だってさ」

「まったくわからない・・・」

「肝硬変などで門脈圧が上昇すると静脈瘤の破裂の危険や腹水がたまったりするんだって・・・だから門脈圧を低下させるために・・・専用の穿刺針を用いて肝静脈から肝実質を貫き門脈枝にガイドワイヤーを通して門脈と肝静脈の間に金属ステントを用いて短絡路を作製するんだって・・・要するに血管のないところに血管を造ってしまうらしいよ」

「・・・で、どうなるんだ」

「とにかく・・・母さん・・・今回は死ななくてすむかもしれない・・・」

「母さん・・・家に生きて家に帰れるかもしれないのか」

「それで・・・静岡の専門病院に行くことになった・・・詳しいことが決まったらまた・・・連絡するよ」

「よかったな・・・浩」

「よかったよ・・・兄さん」

とにかく久の母・母親・梓(風吹ジュン)の余命は少し延長される可能性があるらしい。

医学の進歩の勝利である。

久は母の命が長らえることに喜びを感じる。

もちろん・・・恵は喜んだ。しかし、その笑顔は久には見えない。

そして・・・久は恵と良雄とともに・・・蓼科の別荘にやってきたのだった。

長野県の蓼科高原は自然に恵まれた保養地である。

久は身も心も洗われるような気分になるのだった。

「なんか・・・蓼科最高だな・・・」

「あなた・・・ウキウキしているわね」

「だって・・・空気が美味しいじゃないか」

「あらあら・・・とうちゃこ~」

「え・・・うそ・・・」

久は想像以上にゴージャスな別荘・家路に驚くのだった。

「嘘ついてもしょうがないじゃない・・・」

恵は笑顔を絶やさない。

しかし・・・そこにはやはり演技の気配があった。

恵や良雄は・・・久とともに別荘にやってくるのは初めてではないのだった。

しかし・・・記憶のない久を気遣って・・・その点をスルーしているのである。

古い別荘を母親から譲られた恵は・・・夫の久ともに・・・別荘を設計し、リフォームしたのである。

恵のそういう思い出を・・・久は失っているのだった。

「お母さん・・・よかったわね」

「うん・・・なんだか・・・元気が出て来たよ」

「そう・・・じゃあ・・・さっそく・・・バーベキューをしましょうか」

「そうだね・・・良雄・・・準備を手伝うかい」

「うん」

家路家の三人は絆を深めようとしていた。

そこに現れる・・・第十三営業部の人々・・・。

「あれ・・・家路さん・・・奇遇ですね」

「奇遇にも程があるだろう・・・」

「うわあ・・・バーベキューですか」

「うわあ・・・私なんか・・・ちょうどお肉を」

「うわあ・・・日帰りしますから・・・大丈夫ですよ」

「うわあ・・・夜は家族水入らずで」

「蓼科まで日帰りは・・・逆につらいでしょう」

「いざとなったら社の保養所に泊りますからっ」

「それにしても・・・企業の保養施設より大きい別荘って・・・」

「別荘でバーベキュー・・・庶民の憧れです」

「病気の奥さんは・・・」

「たまには・・・息抜きが必要なんです・・・」

「・・・」

結局・・・和気藹々で・・・盛りあがるバーベキュー。

「家路がお世話になっております」

「うわあ・・・奥さん・・・本当にお美しい・・・」

「うわあ・・・良雄くん・・・可愛い・・・目元なんか・・・家路にそっくり・・・」

「え」

家路の心に刻まれた恵の言葉が蘇る。

(良雄があなたの子供だと本当に思っているの)

言葉の真意を理解できない久は不安になるのだった。

「どうしたの・・・」

「いや・・・なんでもない」

そこに近所の農家の人(神保悟志)が野菜の出張販売にやってきた。

「張り込みですか・・・」

「八百屋です」

「潜入捜査か何か・・・」

「八百屋ですってば・・・」

「まさか・・・逃亡中の殺人犯じゃ・・・」

「八百屋です・・・三千円です」

「・・・たらの芽はどうしたら美味しいですかね」

「天麩羅がお薦めです」

「バーベキューなんですけど」

「油をひいた鉄板で焼いてもいいですよ・・・ご主人・・・なんだか・・・雰囲気変わりましたね」

「え・・・」

「去年もいらしたでしょう・・・去年は無愛想な人だなと思いました・・・坊ちゃんも元気がなかったし・・・」

「・・・」

久は別荘を訪れたことがあったという可能性にようやく思い至ると同時に・・・それが事実だと知ったのである。

通り魔のようにバーベキューをエンジョイした第十三営業部の上司と同僚たちは東京方面に去って行った。

「すまない・・・せっかくの休日なのに・・・」

「いいえ・・・にぎやかで楽しかったですわ」

蓼科高原に夕闇が訪れた。

「去年も・・・ここに来たんだね」

「ええ・・・でも去年は・・・お受験のために・・・父親らしいことをしている・・・」

「アリバイ作りみたいな・・・」

「ええ・・・少し川遊びをした後は・・・良雄はドリル・・・あなたは電話でお仕事していらしたわ・・・」

「・・・」

今の久は昔の久の生きざまにやりきれなさを感じる。

どうして・・・そんな風にしか生きられなかったのか・・・。

人の性格は・・・どのように作られるかについて諸説あるが・・・基本的には記憶の堆積によるものと考えられる。

良くも悪くも久は記憶を積み重ねて・・・そうなったのだろう。

しかし、事故によって・・・過去五年間の記憶をほとんど失い、それ以前の記憶も曖昧なものになってしまった久は・・・分からないことだらけの現実に怯えながら生きている。

それが・・・今の久から・・・かってあった傲慢さを消し去っていると考えることはできる。

久は昔の久の影におびえる良雄の心を感じいたたまれなくなった。

「良雄・・・」

良雄は子供のためのスペースで積木を使って遊んでいた。

良雄の心にドリルの影があるのを久は感じる。

「何をしてるんだ」

「お家を作ってるの・・・これは木だよ」

積木を重ねただけの木に愛おしさを感じる久。

「そうか・・・木か・・・」

「うん」

「良雄・・・明日はいっぱい遊ぼうな・・・」

「・・・」

「川で魚を釣ったり、山に登ったり・・・」

「本当?」

「本当だよ」

「わ~い」

良雄は飛びあがって喜ぶのだった。

ゴージャスな別荘の天井は高いのだった。

夫の姿を見つめて微笑む恵。

良雄を寝かしつけ久と恵は庭で星を見た。

「星に願いを・・・ピーターパンだっけ・・・」

「ピノキオよ・・・ピーターパンは右から2番目の星・・・」

「すまない・・・」

「謝ることなんてなくてよ」

「僕は時々・・・自己嫌悪を感じる」

「・・・」

「君や良雄との記憶を・・・思い出を共有していないことが・・・申し訳なくて」

「そんなの・・・気にする必要ないわよ・・・そりゃ・・・思い出してくれたらいいけど・・・今のあなたは・・・前より優しいし・・・思い出なんて・・・また作ればいいでしょう」

「・・・」

「私は・・・今のあなたがいてくれるだけで・・・幸せなの・・・」

恵は頬をそっと久の肩に乗せる。

久は恵の温もりを感じたような気がする。

久は恵の手をそっと握る。

しかし、その手はやはり手袋をしているような肌触りだった。

呪い・・・という言葉が久の心に浮かぶ。

一体・・・どんな呪いが・・・自分にはかかっているのだろう。

献身的な妻が・・・慕ってくれる息子が・・・怪物に見える呪い・・・。

その時、久の携帯電話に着信がある。

それは・・・非通知のものだった。

「・・・また・・・非通知だ」

恵の中に・・・不安が膨れ上がる。

恵の心の内は秘められているが・・・いくつかのシーンで恵が・・・久と以前の家族との間に交流があることを気付いている暗示はある。

恵の心に香(水野美紀)が浮かんでいるのは間違いないだろう。

「久さん・・・あなた・・・私のことが見えているのかしら・・・」

久は秘密に触れられた気がして身構える。

「久さんは・・・変わった・・・私達との生活をずっと大事にしてくれている・・・でも・・・久さんが本当に私たちとむきあっているのか・・・わからなくなる時があるの・・・久さん・・・あなたは・・・誰を見ているの・・・」

久は息を飲んだ。

恵の仮面の目の位置から・・・こぼれ落ちる・・・一筋の涙に気がついたのだ。

(恵が泣いている・・・どうして・・・うれしくて・・・そんなわけはない・・・悲しくて・・・俺が彼女を泣かせているのだ)

久は手を伸ばす。

ふくよかな恵の胸の頂き。

しかし・・・そこは聖地のようで・・・久には触れる勇気がなかった。

久の両手は漸く恵の両腕にたどり着く。

だが・・・妻と過ごした日々が欠損した久には・・・妻を抱き寄せることができないのだった。

夫のためらいを感じた恵はその場を取り繕う。

「ごめんなさい・・・私・・・少しお酒を飲みすぎたみたい・・・先に休ませていただくわ」

恵は別荘の扉を潜った。

恵を呼び止めることも追いかけることもできない久だった。

愛している自信も愛していない自信もない。

記憶がないというのはそういう恐ろしい状態なのである。

風に瞬く無慈悲な星たちが久を見下ろす。

不安な心を宥め・・・久が寝室にやってきたのは・・・夜更けだった。

その時・・・着信がある。

送信者は・・・香の娘・すばる(山口まゆ)だった。

久は寝室から抜け出し・・・再び屋外に出る。

恵は夫の様子を窺っていた・・・。

時計が時を刻んでいく。

人と人を近付ける時・・・そして、人と人を遠ざける時。

久はまだ自分の愚かさに気がつかない。

人が何かを失うのは・・・それなりの理由があることを・・・。

「すばる・・・」

「お父さん・・・」

「どうしたんだ・・・非通知で電話していたのも・・・すばるなんだろう」

「・・・」

沈黙は肯定の証である。

「何かあったのか・・・」

「ううん・・・何でもない・・・つい・・・電話しちゃっただけ」

「・・・」

「お父さん・・・今、どこにいるの」

「蓼科というところだ・・・」

「知ってる・・・そこって八ヶ岳の側でしょう」

「うん・・・八ヶ岳の西側だ・・・」

「昔、お父さんとお母さんと八ヶ岳に登ったよ・・・覚えてる?」

「・・・ああ・・・そうだったな」

「麓から登って・・・途中で山小屋に泊って・・・それから頂上まで登ったよね」

「うん・・・覚えている・・・すばる・・・まだ小さかったのにがんばったよな」

「うん・・・死ぬかと思ったよ・・・でも・・・頂上から見えた景色を今も覚えている」

「そうか・・・いい天気だったよな」

「うん・・・いい天気だった」

「すばる・・・本当は・・・何かあったんじゃないのか」

「ううん・・・何もないよ・・・じゃあね・・・お父さん」

「すばる・・・」

電話を切る直前・・・すばるが泣いていたような気がする久。

揺れる久の心・・・。

久の心の中には・・・本当の家族が・・・香とすばるであるという記憶が居座っているのである。

思わず久は振り返る・・・。

今の家族が眠っているゴージャスな別荘がそびえ立つ。

しかし・・・その家族と過ごした時間はほんの僅かしかないと・・・感じてしまう久なのである。

「今の家族を大切にして・・・」

昔の妻の妹・祥子(蓮佛美沙子)にそう言われ・・・そうしようとした久だったが・・・たちまち心は彷徨い始めるのだった。

久にかけられた呪いは底知れぬ暗黒へと久を導いているようだ。

愛している母親さえも疎んじる昔の久の心の歪みはおそらく今の久をも呪縛しているのである。

その謎はまだ解明されていないのだろう。

黒い蝶が父と子を誘っている。

高原を吹き渡る爽やかな風。

父と子は一緒に蝶を追いかける。

良雄は夢中になって。

久は夢中になっていた頃を思い出して。

久の心から一瞬鬱屈は消え去っていた。

遥かなる山々が久を見下ろす。

蓼科山、車山、そして八ヶ岳。

遊び疲れた二人は家路に着く。

ふれあい橋の袂で良雄は見上げる斜面に生えたマリーゴールドの花を見つける。

「きれい・・・」

「うん・・・よく見つけたな」

「お母さんのために・・・持って帰りたい」

「ここは立ち入り禁止だからムリだよ」

「お母さん・・・オレンジ色が好きだし・・・なんだかしょんぼりしていたから・・・」

「・・・」

久は自分の迷いが良雄の心を傷つけたことを感じる。

(どうして・・・こうなってしまうんだろう)

久は困惑するのだった。

傷ついた子供が大人になって・・・また子供を傷つける。

あやまちは必ず繰り返されるのだ。

それもまた呪いなのである。

久と恵は帰り支度をする。

「すまなかった・・・」

「え」

「いや・・・会社の人間が来たり・・・」

言葉を濁す久。

「気にすることないですよ・・・良雄もたくさん遊んでもらって・・・きっとうれしかったと思います」

「・・・」

しかし・・・良雄は別荘の周囲から消えていた。

「良雄・・・隠れていないで出てきなさい・・・帰るのよ」

恵は広い別荘の中を探して回る。

久は外に出る。

良雄の言葉は記憶に残っている。

「あの花を・・・」

久はふれあい橋に走る。

森の中を走る久。

心の闇が・・・明るかった高原を暗がりに変えるのだった。

マリーゴールドを採取しようとして崖を登った良雄は滑落していた。

血を流して倒れている良雄を発見した久は我を忘れて・・・駆け寄る。

「あなた・・・」

「救急車を呼んでくれ・・・」

「無理よ・・・山奥ですもの」

「・・・」

突然、久の中に記憶が蘇る。

前にもこんなことがあった。

久は良雄を抱きあげた。

「僕が・・・良雄を運ぶ」

「あなた・・・」

「この道の先に・・・病院があったはずだ・・・」

「ええ・・・」

久は良雄を抱いたまま・・・走りだす。

「医者に・・・医者に見せないと・・・」

久は必死だった。

本当は動かしていけないのかもしれない。

しかし・・・何もしないではいられない・・・。

「良雄・・・・しっかりしろ・・・死んだりするなよ・・・」

久は思い出していた。

別荘で・・・良雄は熱を出したのだ。

そして・・・今と同じように・・・久は良雄を抱えて・・・病院に走ったのだ。

あの時・・・良雄はもっと・・・軽かった。

良雄は蓼科吉田病院で意識を回復した。

「傷は浅いし・・・骨折もしていない・・・意識もしっかりしているし・・・心配ありませんよ」

医師は久と恵に告げた。

命はいつも綱渡りをしながら・・・時を過ごしていくのである。

呪われた久にも救いの道は常に示されているのだった。

久は・・・仮面の上に絆創膏を貼った幼い息子を見つめるのだった。

バス亭で良雄は久の膝の上で眠ってしまった。

「去年のこと・・・思い出した」

「え」

「良雄が熱を出して・・・あの病院に運んだことだけ・・・良雄・・・少し重くなった気がする」

「当たり前でしょう・・・成長しているんだもの・・・」

「そうか・・・」

「久さん・・・よかったね・・・」

「うん」

恵はそっと久の手を握る。

よかったのは・・・良雄が無事だったことなのか・・・久が記憶をとりもどしたことなのか。

おそらく・・・両方なのだろう。

翌日、良雄は大事をとって幼稚園を休んだ。

本城は愛しい人を見つめるように・・・良雄と家路につく恵を見つめるのだった。

もちろん・・・本城は・・・何か重大な秘密を隠しているのだった。

勅使河原は久を屋上に呼び出す。

「九州支店に移動になった。九州本部の本部長になるんだ・・・」

「おめでとうございます」

「左遷だよ・・・」

「え」

「家路・・・本当に何も思い出せないのか・・・」

「はい・・・」

「おまえ・・・本当に変わったな・・・善人になった・・・すごく間の抜けた善人に・・・」

「・・・」

「まあ・・・何も思い出せない方が・・・幸せかもしれないな」

勅使河原が何か重大な秘密を握っているのかどうか・・・現時点では不明である。

脚本家がいいアイディアを最終回までに思いつくかどうかだな。

久の携帯電話にすばるからの着信がある。

「ごめんなさい・・・私・・・」

「香・・・」

「すばるが何度も電話したみたいで・・・」

「いや・・・」

「ちょっと・・・親子喧嘩しちゃって・・・そっちに逃げようとしたみたい」

「・・・」

「でも・・・もう大丈夫だから・・・」

「そうか・・・」

「煩わせて・・・ごめんね」

「いや・・・何も問題ないなら・・・」

「うん」

しかし・・・香は久に嘘をついていた。

「お父さんにこのことは話さないで・・・約束よ」

「うん・・・でもお母さん・・・」

「大丈夫・・・お母さん・・・ガンになんか負けないから・・・」

城立大学病院・・・。

香はそこに入院するのだった。

図鑑を見た良雄は花の名前を知った。

「マリーゴールド」

「危ないことしちゃダメよ」

「うん・・・今度は絶対にお母さんにプレゼントするよ」

「そういう聞きわけのないことを言っているとドローン飛ばして逮捕されるようなバカになっちゃうぞ」

「・・・」

良雄はマリーゴールドの夢を見る。

「ようやく・・・眠ったよ」

久は目の前にいる二人を大切にしようと・・・もう一度心に誓う。

「恵・・・別荘で言ったよね・・・」

「・・・」

「僕が誰を見ているか・・・わからないって・・・」

「・・・」

「僕は・・・君と良雄から・・・目そらさないって・・・決めたんだ・・・」

「久さん・・・」

久は覚悟を決めて・・・仮面の妻を見つめる。

あの唇っぽい感じがするあたり・・・あそこに唇があるのか・・・そこにキスをすけば・・・キスがてきるのか・・・キスをしているような気がする・・・キスをしているのか。

退院後・・・初めてのキス。

恵は思わず下半身から力が抜けるのだった。

本当に抜けてるみたいだぞ・・・。

さすがだな・・・。

久は・・・唾液を注ぎ込み・・・男としての本能が蘇ったような気がした。

恵は久の唾液を味わい・・・配偶者としての久を吟味する。

そういう人間の本能が呪いを打破するのではないか・・・。

久の心に希望が灯る。

もしかしたら・・・今なら・・・恵の顔が・・・。

しかし・・・そこにあるのは仮面だった。

失望を隠せない久。

恵は久の動揺を察知する。

「どうしたの・・・」

「いや・・・」

「なにか・・・あるのなら・・・おっしゃって・・・隠さないで」

「僕には・・・君が見えない・・・」

「え・・・」

「事故にあってから・・・君と良雄が何を考えているか・・・分からなくなってしまったんだ・・・悲しんでいるのか・・・怒っているのか・・・表情が読みとれないんだ・・・」

「・・・」

「僕は・・・君の顔がわからないんだよ・・・」

「久さん・・・」

めまぐるしく変わる恵の表情。

自分の夫の苦しみへのいたわり・・・そして苦しみの原因が自分にあることの驚き。

そして・・・心の痛み・・・。

久と恵は問題を共有したのだった。

ワインカラーの黄昏は人を子供に変えるわ

星を飾るみたいに灯しましょう照明を

お帰りなさい私のところへ

いつだって構わない・・・

SHYな言い訳

仮面でかくして

踊ろ踊ろ

かりそめの一夜を

きっとお前もなやめる聖母

棄てな棄てな

まじなプライドを今は

勅使河原は小鳥遊に忠告する。

「家路には深入りするな・・・それが君のためだ・・・」

その意図は不明である。

単に・・・勅使河原は小鳥遊に未練があるだけなのかもしれないし・・・。

関連するキッドのブログ→第5話のレビュー

Ihhc006ごっこガーデン。愛の呪縛と生活の部屋セット。

アンナバーベキューぴょん、バーベーキューぴょん。タラの芽をオリーブオイルで炒めるぴょん。クロアゲハを捕まえて、高嶺の花をゲットして、ダーリンの御姫様抱っこ全力坂、仮面の涙の衝撃・・・秘密で秘密の秘密がぴょんぴょんぴょん。ですがーーーっ。ダーリンの超絶凄技キスがーーーーーっ。すべての記憶を奪うのぴょん。あっはーんで何もかも忘れちゃうのぴょ~ん。ぼぎゃああああああああんっ

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