ピーターパンの影はどこにいる?(木村拓哉)ピーターパンのいないところに(上戸彩)
「ピーターパン/ジェームズ・バリ」の知恵ある老人ソロモンは諭す。
「世界には二つの現在は存在しない・・・現在をやりなおすことはできない」と。
ピーターパンは忠告を無視して・・・母親の元へ帰るチャンスを逃し、永遠の少年になってしまうのだ。
しかし、それが何だと言うのだろう。
ピーターパンは子供たちの中で永遠の時を生きる。
現実の光の中で影を持たないことなど我慢すればいいだけの話だ。
しかし、子供たちは思い知るのである・・・自分がピーターパンにはなれないことを。
これまでにも述べて来たが原作コミックの主人公は陰惨な世界で生きている。
これは原作者の激しい現実否定の姿勢によるものである。
原作者の主観によれば・・・前世紀末の日本の暮らしは理想には程遠かったわけだ。
「ホーム3 親の住む家」で主人公は父親と母親が弟のヒロシとその妻・サチコ、そして甥のアキラと五人で暮らしている「家路酒店」に里帰りする。美味しい母の手料理を食べ・・・妻や息子の顔が仮面に見えないことを相談するつもりだった。ところが・・・家は24時間営業のコンビニエンスストア「Bac Mart Welcome!」に変貌していた。年老いた父親は主人公を歓迎するが、両親と同居している弟は冷たい。母親は寝たきりで認知症を発症し、嫁の悪口を延々と呟き続ける。そして店の経営は行き詰っている。落胆した主人公は引きとめる父親を残して実家から逃げ出す。追いかけて来た甥は「おじさん・・・よく来れたね・・・店をコンビニにするように言ってそれきり・・・おばあちゃんを入院させようとお父さんが言った時も家で介護するべきだと言ってそれきり・・・勝手すぎますよ・・・これ、おじいちゃんが土産にって・・・」・・・主人公は懐かしい故郷がすでに消滅したことを思い知り・・・在りし日の追憶に浸る・・・。
主人公を溺愛する父親の気遣いが・・・救いになるどころか・・・重くのしかかるのである。
世紀を越えて・・・ドラマは「2015年の親の住む家」を原作からかなり修正する。
その修正の是非は・・・お茶の間に委ねることにしよう。
ただ一つ言えるのは・・・20世紀だろうが・・・21世紀だろうが・・・時は過ぎ去って行き・・・変わらないものなど何一つないということである。
問題なのは・・・今をどう生きるかなのだ。
そういう意味では・・・「2015年のホームドラマ」として・・・スタッフは新たな地平を開拓しているとキッドは考える。
たとえ・・・原作にあった「困窮」の度合いが・・・かなり甘くなっているとしても・・・。チェーン展開しているコンビニ事業者が経営に失敗した場合の悲惨さなんてストレートに言えないしね・・・。大スポンサーなんだから。
で、『アイムホーム・第5回』(テレビ朝日20150514PM9~)原作・石坂啓、脚本・林宏司、演出・七髙剛を見た。記憶の喪失を伴う高次脳機能障害となっている主人公・家路久(木村拓哉)は仮面をつけているとしか思えない妻子をなんとか受け入れようとようやく心に決めた。障害者となった久を優しく見守る妻・恵(上戸彩)と父親としての自分を慕う幼い息子・良雄(髙橋來)の存在が感じられ始めたからである。それが・・・久の現在の現実なのである。しかし・・・妻子が仮面の怪物に見える状況は改善の気配を見せないのだった。
葵インペリアル証券の末端に位置する第十三営業部。
すぐに曖昧になる記憶を補強するために久は手帳に記されたメモを確認するのだった。
「つまり・・・これまでわかったことは・・・かっての家路さんが・・・出世に目がくらんだひ・と・で・な・し・・・だったということですね」
同僚の四月(わたぬき)信次(鈴木浩介)はメモを覗きこんで囁く。
「なんですか・・・それ」
「あれですよ・・・滝川なんとかの・・・お・も・て・な・し・・・」
2013年ブエノスアイレスで開かれたIOCの夏季東京五輪誘致のプレゼンテーションにおいて滝川クリステルが使用した「お・も・て・な・し」のフレーズは「新語・流行語大賞」を受賞した。
過去、五年間の記憶を忘却している久には理解不能なのである。
「そうか・・・浦島太郎さん・・・ですものね・・・」
「東京五輪って・・・」
「2020年に開催決定ですよ」
「ええっ」
「そこからか・・・」
「滝川クリステルがニュースJAPANのキャスターを降板したことは・・・覚えています」
「好みのタイプだったんですか・・・」
「・・・」
「見た目残念な奥さんとは・・・その後どうなんですか・・・」
「なんとか・・・やってます」
「見たいな・・・写真あるんでしょう・・・見せて下さいよ・・・見せてくれてもいいじゃ~ん」
仕方なく・・・恵と良雄と撮った家族の画像を披露する久。
「え」
「・・・」
「凄い美人じゃないですか~・・・なんか・・・国民的美少女が爆乳になりましたって感じ・・・」
「・・・」
「この家は・・・」
「妻の実家です・・・」
「美人で巨乳で逆玉って・・・家路さん・・・謙遜するのも程がありますよ・・・それじゃ・・・イヤミだよね~」
「・・・」
久は・・・切実に妻の素顔を見たいと思うのだった。
「家路さんの実家はどうなんですか・・・」
「家は・・・貧しかったよ」
「最近は帰ったんですか」
「・・・」
「帰ったら・・・何か思い出すんじゃないですか」
「・・・」
その頃・・・恵は久の前妻・野沢香(水野美紀)の通うパン教室に潜入していた。
一向に上達しない恵のパンを焼く技術に・・・手を焼いた講師(宮地雅子)はどうやら上級者らしい香を紹介する。
恵が香が久の前妻であることを知っていることはほぼ確実なのだろう。
久と香が親しくしていることを知っている恵にはなんらかの思惑があることが予想される。
家路という名を聞いて・・・ライターである香が何も感じないはずはないので・・・水面下で二人の女は怪しいバトルを展開しているらしい・・・。
その意図は今の処・・・不明である。
一方・・・聖心カトレア幼稚園の「はっぴょうかい」が近付き、カモメ組の良雄は劇「ピーターパン」でピーターパンを演じることが決定する。
プレッシャーで蒼ざめる良雄だった。
妻と子がそんなことになっているとは知らず・・・家路は・・・実家の鍵を取り出す。
そして・・・寄り道をするのだった。
懐かしい・・・故郷へ・・・。
しかし・・・五年前に「家路酒店」のあった場所にはコンビニ「イエジ」が建っていたのだった。
戸惑う久の目の前にコンビニの制服を着た七歳年下の弟・浩(永井大)が現れる。
実の弟との再会に顔が綻ぶ久。
しかし・・・浩は憎しみに満ちた目で久を睨むのだった。
「今頃・・・何しに来たんだよ・・・」
「え」
久は・・・弟が何故・・・自分に冷淡なのか・・・分からない。
稼業に身を入れず・・・久が十一歳の時に父親は出奔した。
その時・・・浩は四歳だった。
それなりに苦楽を共にした兄弟だったはずだ。
少なくとも・・・久が高校を卒業して家を出るまでは・・・。
その時・・・浩はまだ・・・小学生だった。
それから・・・母親が店をやりながら・・・浩を育て・・・浩は結婚して「家路酒店」を継いだはずなのだが・・・。
「久おじさん・・・」
見知らぬ男子中学生に声をかけられ・・・身構える久。
しかし・・・男子中学生には記憶に残る面影があった。
「アキラくん・・・いつの間にかこんなに大きくなって・・・」
「一年前は小学生でしたからね・・・」
「え・・・一年前に会ってたの・・・」
「事故で大変だったって・・・聞いてたけど元気そうですね」
「・・・僕って・・・浩・・・君のお父さんと何かあったのかな」
「会えば・・・ケンカしてたじゃないですか・・・まあ・・・おじさんは大企業に勤めるエリートだし・・・うちの親父は・・・暴走族の元リーダーだから水と油だとは思いますし・・・高卒でできちゃった結婚して・・・生まれた僕が言うのもなんですけど・・・」
「なんか・・・君には親近感を感じるよ」
「おじさん・・・なんだか・・・丸くなりましたね」
「え」
「昔は・・・高飛車の見本みたいだったのに・・・」
「・・・母ちゃん・・・いや・・・婆ちゃんも店に出てるのかな」
「今日は・・・自宅(いえ)にいると思いますよ」
「ありがとう・・・行ってみるよ」
久は近所にある実家に向かう。
おそらく・・・浩一家は・・・店舗の二階あたりで別居しているのだろう。
スティックをかついだアキラは関東における「プライド」の再放送を見てホッケー部に入部したと妄想できる。
浩は久を見送ると母親(風吹ジュン)に電話をかける。
「なんだって・・・久が帰って来たの」
「何しに来たんだろう・・・あの事・・・話そうか」
「だめよ・・・あの子には・・・まだ秘密にしておかないと・・・」
「・・・」
浩は・・・何か問題を抱えているらしい。
それは・・・素晴らしいインターネットの世界に関係しているようである。
浩は何故か・・・巨大掲示板5ちゃんねるにアクセスするのだった。
そこには・・・。
「コンビニイエジ」に対する誹謗中傷が書き込まれていたのだった・・・。
久は・・・実家から遠ざかっていた理由を思い出す。
久は・・・なんとなく母親が苦手だったのだ。
父親が出奔した後で・・・つまり久の実の父はどこかで生きているわけである・・・母親は店をきりもりしながら女手ひとつで二人の子供を育て上げた。
(母は家のことばかり考え・・・半径一メートルの範囲で生活しているような女だった)
と久は語るが・・・それは幼い久にはそう思えたという話である。
実際の母親は酒店の経営者である。
専業主婦ではないのだ。
だが・・・すでに児童から生徒になっていく久には学校という世界があり、母親は昼間の仕事を終えて家にいたわけである。
おそらく・・・父親に捨てられたショックと・・・経済的な苦しさが・・・久の中に鬱屈した感情を形成していったのだろう。
店を経営しながら家事を行い、家庭菜園までしていた母親は一種の超人だが・・・久の屈折した目には・・・生活に疲れた貧乏くさい女として映ったらしい。
久は家計を助けるためにバイトをする苦学生だった。
経済的にゆとりがあれば・・・もっと偏差値の高い学歴を得られたはずだった。
その思いが・・・母親に対するネガティブな感情を生み出し、経済的豊かさにこだわる人格を育んだようだ。
こうして・・・大学生となった久は独立し・・・やがて上昇志向の固まりのような証券マンとなったのだった。
しかし・・・それは失われた過去の話である。
今の久は・・・笑顔で久を迎える母親の老いた姿が気にかかるのだった。
「久が帰ってくるなんて久しぶりねえ・・・だじゃれじゃないわよお・・・大けがしたっていうけど・・・大丈夫だったの・・・恵さんが大丈夫だっていうから・・・見舞いにもいかなかったけど・・・元気そうで安心したわ・・・でも・・・無理しちゃだめよ・・・あなたは・・・頑張りすぎるところがあるから・・・」
(母ちゃん・・・)
久は妙に息苦しくなるのだった。
帰りにコンビニ・イエジに寄った久は弟を問いつめる。
「なあ・・・母さん・・・なんだか・・・おかしくないか」
「年取ったんだよ・・・」
「でも・・・具合が悪そうだし・・・病院に連れていった方が・・・」
「なんだよ・・・突然帰ってきて・・・偉そうに・・・余計なお世話なんだよ」
「・・・」
実は秘密を抱えて口が重い浩なのである。
腑に落ちない思いを抱えて仮面妻と仮面息子の待つ家に戻る久だった。
「お母さん・・・よく手作り野菜を送ってくれたんですよ」
「・・・」
「それなのに・・・あなた・・・貧乏くさいって言って・・・それを嫌がって・・・電話で断ったりするから・・・私、一度謝りに行ったこともあるんですよ」
「え・・・そうなの」
「優しいお母さんなのに・・・あなたはどうして・・・あんなひどいことを言うのか・・・私にも分かりませんでした」
「・・・」
「でも・・・今の久さんは・・・以前とは違って・・・その・・・優しくなったじゃないですか・・・だから・・・これから親孝行なさればいいんじゃないですか」
「・・・うん」
久は良雄が居間にいないことを不審に思う。
「幼稚園でピーターパンをやることになったんです・・・でも、あの子、人前で何かするのが苦手だから・・・ふさぎこんでいるみたい」
「ああ・・・僕にも覚えがある・・・幼稚園で桃太郎をやって・・・舞台でセリフを忘れて・・・そしたら母さんが・・・がんばれって・・・大きな声を出して・・・ますます恥ずかしくなって・・・そう言えば・・・母さんのことが苦手になったのは・・・その時からかも・・・」
「まあ・・・ひどい・・・母親なら子供を応援するのは当たり前じゃないですか」
「そうか・・・あれは・・・当たり前だったのか・・・よし・・・僕は・・・良雄を励ますよ・・・良雄の劇の練習相手をする。練習して自信を持てば・・・人前でも平気になるかもしれないし」
「だと良いんですけど」
良雄の部屋に向かった久を・・・恵は微笑んで見送る。
しかし・・・そのことを知っているのはお茶の間だけなのである。
「あなたはだあれ・・・」
「家路良雄・・・」
「そうじゃなくて・・・セリフ」
「お父さんは誰なの・・・」
「だからウェンディーだよ」
ピーターパンはティンカーベルとともにウエンディーを迎えに来る。
ウエンディーは弟たちと・・・「在らざる国」に旅立つのだった。
そこで・・・永遠の少年と冒険を繰り広げるウエンディー。
ピーターパンはウェンディーに迷える子供たちの母親になることを求める。
「じゃあ・・・あなたがお父さんになるの」
「え」
ピーターパンは父親になることを拒絶し・・・ウェンディーは夢から醒めるのだった。
ある日、ウェンデイーは自分がフック船長のような男と結婚していることに気がつく。
そして、つぶやくのだ。
「ワニに食われちまえばいいのに」
四月(わたぬき)は久に里帰りの感想を聞く。
「家のことばかり考えている母親を嫌っていたことを思い出しました」
「だから・・・君は最初の奥さんにライターなんてやってる女性を選んだのかもね」
「・・・」
「でも・・・結局、良妻賢母と仕事の両立なんてスーパーウーマンじゃなきゃ無理だし」
「・・・」
「そういう女性と結婚して専業主夫になったらどうかな」
「え」
「そしたら・・・今の君の奥さんは僕に譲ってください」
「だって、四月さん・・・奥さんいるじゃないですか」
「病弱だし・・・なんなら・・・トリカブトを・・・」
そこへ社長に怒られたので会社を仮病で休んじゃったシンドロームの轟課長(光石研)が現れる。
「ランチタイム、まぜて~」
課長は幼児退行現象を起こしている。
パン教室では恵が香にアプローチする。
「男の人って・・・バリバリ働く女性をかっこいいと思うんでしょうねえ」
「さあ・・・どうかしらね・・・でも、結婚したら・・・メシまだか~しか言わなくなるのよ」
「え~・・・そうなんですか~」
(なんで・・・別れた嫁のところにアドバイスを求めてくるのよ)
(なんで・・・別れたくせに・・・夫と親しそうなんですか)
「どこかへ行ってしまえ」とピーターパンはロストハウス仲間を追い払う。
「ああ・・・ピーターパン・・・私、死んだの」
「いいや・・・ドングリが野蛮な原住民族の矢をくいとめた・・・」
「まあ・・・」
「よかったよ・・・君が助かって!」
「・・・いいぞ、よしお、ピーターパンになりきってるな」
「でも・・・本番だと・・・みんな見てるし・・・」
「そうだ・・・こうしよう・・・魔法のマカデミアンナッツを食べるんだ」
「まほうのまかでみあんなっつ?」
「そうだ・・・お父さんと分かち合おう・・・そうすれば・・・お父さんと良雄は一心同体になれる」
「本当・・・」
「本当さ・・・さあ・・・食べて」
「うん」
「甘いだろう」
「うん」
「ガリガリするだろう」
「うん」
「一緒だろう」
「一緒だね」
「こわいのは一人ぼっちだって思うからだ」
「お父さんがいればこわくなくなる?」
「その通りさ・・・」
久はハートを叩く。
「お父さんのここにはいつも良雄がいる」
「僕のここにはいつもお父さんがいる」
「いいぞ・・・ピーターパン」
「いこう・・・ウェンディー」
ノリノリの二人だった。
久はコンビニ・イエジの素晴らしいインターネットにおける広告戦略を模索するために・・・検索してみた。
「コンビニエンスストアエイジ」の検索結果
5ちゃんまとめ コンビニエンスストアエイジ炎上事件
Switterまとめ コンビニエンスストアイエジ炎上事件
ミコミコ動画 おまいらを激昂させる暴力店長イエジ
「え・・・」
あらぬ万引きの疑いをかけられた男性客が投稿した件
(投稿者 松山茂 @shigerucamera)
これが悪徳コンビニ店主!
証拠もないのに・・・客に万引きだと言いがかり!
監視カメラを確認して冤罪発覚!
しかし、謝罪なし!
それどころか暴力で接客!
こんな店長、許せますか!
僕は泣き寝入りは嫌だ!
皆さんのご支援をよろしくです!
暴力店主・家路久を許さない!
#拡散希望
「浩のやつ・・・粘着されてんのか・・・」
その頃・・・浩は母親とお茶を飲んでいた。
「兄貴・・・突然、何しにきたんだろう・・・ずっと家に寄りつかなかったのに」
「あまり・・・お兄ちゃんを責めないでやって・・・中学の頃から酒屋手伝って・・・小さい頃から家事も手伝って・・・高校に入ってからは大学卒業するまでバイトして・・・苦しい家計を助けてくれたんだからね・・・」
「だからって・・・金の亡者みたいになって・・・」
「でも・・・なんだか・・・あの子、変じゃなかったかい」
「そういえば・・・なんだか・・・ギスギスしてなかったな・・・」
「あの子・・・頭がおかしくなったんじゃ・・・」
「まともになったとは・・・思えないよね」
とにかく・・・原作では一番久思いだった働き者の父親は消え・・・久の人間不信は蒸発した父親への怨みに置換されたようだ。
善人すぎだ父親への反発より・・・無責任な悪い父親への復讐心の方が・・・ストレートでわかりやすいということなのかもしれない。
再び実家への旅を決意する久。
母親をどこか旅行に誘い、骨休みをさせたいと思う久。
そして・・・弟の苦境をなんとかしてやりたいと考えるのだった。
コンビニエンスストア・イエジには松山茂(遠藤要)が現れた。
「だからあ、あやまってくださいよお」
「こっちが悪くないのに謝れるか」
「あなた・・・やめて」
性根から腐ったゴミみたいな男を鉄拳制裁しようとする浩を妻のサチコ(広澤草)は必死で制止するのである。
「そっちが誠意ある対応をしてくれるまでえ・・・抗議しますよお」
キモオタデブ風の男は捨てゼリフほ残して去って行く。
久は弟から事情を聞く。
松山茂はコンビニイエジの元店員だった。
勤務態度に問題があったので解雇したのだが、客として来店すると万引きを実行したのである。
茂は現行犯逮捕したが・・・何故か店内の防犯カメラの映像は停止していた。
おそらく、店の事情に詳しい茂がなんらかの細工をしたのだろう。
すべて・・・店を貶めるための計画的犯行だったのだ。
「しかし・・・証拠がないんじゃ・・・」
「店り売り上げも落ちているし・・・つぶれるって噂が出て取引先も納品を渋りだして・・・うちは・・・個人経営だし・・・苦しいから・・・なんとか嫌がらせをやめてもらいたいんですけど」
「浩・・・ここは頭を下げた方がいいんじゃないか」
「こっちは・・・何も悪くないのにか」
「・・・」
「せっかく始めた店だろう」
「何言ってんだ・・・あんたが・・・始めた店じゃないか・・・俺は個人経営のコンビニには無理があるって言ったのに・・・なんてった品揃えに流動性がなくなるし・・・24時間営業はできないし」
「コンビニイエジ」は営業時間「6:00-22:00」である。
「え・・・俺が・・・」
「資金は出す・・・協力するって言ってたくせに・・・いざ、始めたら・・・音沙汰なしって・・・」
「・・・すまなかった」
菓子折りを持った久は弟の代わりに茂の自宅を訪問し、頭を下げる。
「なにとぞご容赦くださるようにお願いします」
「あらあ・・・なあにい・・・店長さん、こないのお・・・責任者がこないんじゃあ・・・お話にならないわねえ」
久のやりての記憶喪失さんパワー始動である。
商品の卸売業者を訪問し、言葉巧みに納品再開をお願いするのだった。
そして・・・嫌がらせにやってきた茂と対決するのだった。
「あの・・・どうしても・・・苦情をとりさげてもらえませんか」
「まだそんなこといってるのお・・・うけるう・・・」
「確かに・・・店の防犯カメラには何も映ってませんでしたけど・・・向かいのマンションの防犯カメラには・・・あなたのしたことがはっきり映ってました・・・」
「え」
「これ・・・コピーですけど・・・警察に届けることもできます・・・あなたのやってることは窃盗、証拠隠滅、威力業務妨害、強要、肖像権侵害、名誉棄損になりますよ」
「・・・」
「ただ・・・あなたが・・・これまでの投稿を削除してくれれば・・・穏便にすませたいと考えてます」
「・・・それだけでいいのお・・・」
「こちらも・・・客商売なので・・・」
「わかったわよお・・・」
茂は退散した・・・。
「本当に・・・嫌がらせなくなるんですか・・・お義兄さん」
サチコは泣きだすのだった。
「なあ・・・浩・・・おふくろのことなんだけど・・・」
「兄貴・・・口止めされてたんだけど・・・おふくろ・・・肝臓をやられてる」
「え」
「来週・・・検査して・・・結果次第では入院しなくちゃならねえ・・・それで・・・おそらくもう・・・退院できないって」
浩も泣きだすのだった。
「おばあちゃん・・・死んじゃうのか」
アキラも泣きだすのだった。
久は泣くきっかけを失った。
「あんたは・・・本当に料理が上手になったねえ・・・野菜もしっかりメントリするし」
「母さんに仕込まれたからだろう・・・本当は面倒くさくて嫌だった・・・だけど習慣になっちゃったんだよ」
「そうかい・・・」
「母さん・・・来週、良雄の幼稚園で発表会があるんだ・・・よかったら・・・見に来ないか」
「いいのかい」
「是非、来てください・・・お願いします」
「どうしたの・・・久・・・泣いたりして・・・」
「タマネギが・・・」
「古典だねえ・・・」
派遣社員・小鳥遊(たかなし)優愛(吉本実憂)は営業部門執行委員の勅使河原(渡辺いっけい)に定時報告をするのだった。
「家路久に異常ありません」
「そうか・・・」
「いつまでこんなことを続けるつもりですか」
「君は家路久の本当の恐ろしさを知らないのだ」
「とにかく・・・私・・・もううんざりなんですけど・・・」
「なんだと・・・」
「誰か他の人に業務を・・・」
「まさか・・・お前・・・家路久に・・・籠絡されたのか」
「ろ・・・ろうらく?」
五月の最後の土曜日。
久は恵と幼稚園の発表会にやってきた。
病院での検査を終えてかけつける久の老いた母。
「母さん・・・走ったりして」
「なんだか・・・爽やかなの・・・シュワーってしてるの・・・歌いたい気分」
「それはおやめになった方が・・・」
舞台にピーターパンが登場する。
「え・・・良雄じゃない・・・」
「ピーターパンは五人よ・・・良雄は五番目のピーターパン」
ムービー・カメラを油断なく構える恵。
「そろそろ・・・こういうCM来るかもね」
「・・・ああ」
「稼げる間に稼がないと・・・」
「ところで・・・良雄、一番最後じゃ・・・緊張するんじゃ・・・」
「あ・・・いよいよよ」
良雄は舞台に登場した。
ウェンディーが叫ぶ。
「ピーターパン、あなたも一緒にロンドンに来ない?」
しかし・・・緊張でセリフが飛ぶ良雄。
「どんぐりだ」と叫ぶ久。
しかし、恵はあわてずにカンニングペーパーを差し上げるのだった。
「・・・ありがとう・・・でも・・・僕は人間の世界には住めない・・・だってすぐに大人になっちゃうもの・・・僕は浦島太郎じゃなくて・・・ピーターパンだから・・・未だ在らざる国に帰るよ。僕の住処・・・ネヴァーランドに・・・さよなら・・・小さなお母さん」
拍手喝采・・・。
夕陽の川べりを二組の母と子が行く。
恵と良雄・・・そして・・・久の母と久・・・。
「うれしかった・・・孫のピーターパンが見れるなんて・・・最高」
「母さん・・・」
「でもね・・・来週から入院することになっちゃった・・・」
「・・・」
「久・・・母さんの願いはただ一つよ・・・」
「・・・」
「お前が・・・いつまでも・・・母さんの息子でいること・・・ただそれだけ」
「母さん・・・」
川面を風が渡って行く。
久の元へ母の不揃いで栄養満点の野菜が届く。
恵が添えられた手紙を読み上げる。
「夏採れの野菜を送ります・・・家族で栄養つけてください・・・母より・・・ですって」
久は恵を見た。
仮面が少し悲しそうな顔に見える。
何故か・・・そう感じる久だった。
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