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2015年5月29日 (金)

黒い印のついた鍵(木村拓哉)白いパンの秘密(上戸彩)

戯曲「父帰る/菊池寛」は大正六年(1917年)に発表された。

およそ・・・百年の時が流れている。

しかし・・・父と子の情は・・・それほど変わらないわけである。

「俺は父親がないために苦しんだけに、弟や妹にその苦しみをさせまいと思うて夜も寝ないで艱難した・・・」

出奔した父の帰還に長男は怨みを爆発させる。

しかし・・・父親が去って行くと・・・。

「行ってお父さんを呼び返してこい」と弟に命ずるのだ。

父親の姿が見えないと知ると・・・長男自身が狂ったように家を飛び出して幕となる。

新約聖書「ルカの福音書」には「放蕩息子の帰還」というイエス・キリストの教えが伝えられている。

家を飛び出し・・・自由奔放に過ごした息子が零落して生家に戻ってくる・・・年老いた父親は息子を抱擁で迎えるのである。

それが父の愛というものだからであると・・・イエスは訓える。

二千年前まで遡上しても・・・父と子の情は・・・この世の理の一つなのである。

脚本家は「コード・ブルー -ドクターヘリ緊急救命-」でも主人公を父親に捨てられた男として設定している。

今回もドラマ・オリジナル設定なので・・・きっとお気に入りの主題なんだな。

原作では非常に曖昧な「家路久」の暗黒面を「幼少期の体験の反復強迫」として説明したわけである。

非常に巧妙な仕上がりになっていると考える。

で、『アイムホーム・第7回』(テレビ朝日20150528PM9~)原作・石坂啓、脚本・林宏司、演出・星野和成を見た。久(木村拓哉)は妻・恵(上戸彩)と事故以来、最初のキスをする・・・変化を期待した久だっだが・・・妻も息子の良雄(髙橋來)も・・・素顔を隠した仮面の存在のままであった。「妻と子供を愛したい」と思いながら・・・その顔を見ることさえできない。久の心の闇は深いのである。何故・・・自分だけが・・・妻と子供の顔を見ることができないのか・・・久は自分の妻や子供への愛を疑い・・・そして自分自身を信じることができないのだった。

久は遠い記憶を夢見ていた。

久を捨てた父親・洋蔵(北大路欣也)・・・。

幼い久は父親を慕う。

父親の手は久の手を暖かく包み込む。

しかし・・・その手は振りほどかれ・・・父親の背中は遠ざかって行く。

「お父さん・・・お父さん・・・」

久は泣きながら父親を求めるのだった・・・。

目が醒めれば・・・診療室である。

久の主治医・筑波良明(及川光博)は脳外科医だ。

脳の損傷による久の病状は順調に回復し、脳波の測定や・・・画像診断でも特に問題点を見つけられないのである。

久の悩みに医師としてアドバイスすることはないのだった。

「キッスしたのに・・・変化なしですか・・・」

「・・・」

「そのキッスは・・・ディープなやつでしたか・・・」

「関係あるんですか」

「いえ・・・些細なことが気になるタイプなのです」

「右京さんかっ」

「今回は鑑識さんもゲストに来ますからね・・・」

「それはともかく・・・僕はどうしたらいいのでしょうか」

「それは・・・精神科医の仕事なんですよ・・・まあ・・・私も医師ですから・・・精神的な問題にも一応興味はあるのですけど・・・」

「興味って・・・」

「とにかく・・・非常に特定の事柄について・・・あなたの意識は・・・感覚を遮断・・・あるいは変容させていると言えます」

「つまり・・・妻と子供だけを特別なものとして感じているということですか」

「察しが早くて・・・助かりますね・・・言わば・・・あなたの心は妻と子供が仮面をつけているように見える眼鏡をかけているわけです。触っても仮面のような感触があるということは・・・感覚器すべてに変換システムが作用しているようです」

「なんで・・・そんな器用なことが・・・」

「人間の能力は計り知れないものですよ・・・芸術家たちの仕事を考えてみてください・・・あなたにピカソのような絵が描けますか?・・・あるいはロダンのような彫刻が・・・」

「・・・」

「つまり・・・どうすれば・・・奥さんやお子さんの顔が見えるようになるか・・・と聞かれたら・・・その眼鏡を外しなさいと言う他はない」

「眼鏡なんてしてません」

「たとえですよ・・・とにかく・・・あなたの心は・・・何か問題を抱えている・・・失われたあなたの記憶は実は・・・失われていないのかもしれません」

「?」

「つまり・・・記憶はあるが思い出せない・・・あるいは思い出したくないのかもしれない」

「・・・」

「そういう封印された秘密の記憶が・・・あなたの心の扉の鍵なのかもしれない」

「秘密の記憶・・・」

「ええ・・・秘密の記憶です」

「思い出せない記憶をどうすれば思い出せるのですか」

「それがわかったら・・・私はノーベル賞をとれると思います」

「・・・」

この世界でも医師は万能ではないのだった。

一方・・・恵はストレス発散の手段としてパンをまな板に叩きつけていた。

「表情がわからないなんて・・・どういう意味なの」

妻としては・・・夫から「何を考えているのかわからない」と言われただけである。

まだ・・・自分が久にとって「不気味な仮面の女」であるという自覚はないのだった。

お茶の間的には・・・良妻賢母であり・・・巨乳であり・・・美しく献身的な女である恵が初めて夫の現状に不満を持っていることを示したことになる。

事故前の久より・・・事故後の久の方が素敵になったと夫に告げた恵だが・・・その心にも秘密が隠されていることをうっすらと匂わせたわけである。

久の失われた記憶の中に・・・恵の隠された一面があることは間違いないのだった。

家路家の電話の呼び出し音が鳴り、恵は警視庁江戸川南署(フィクション)の刑事(板尾創路)から家路久について事情聴取される。

受診のために遅刻した久は第十三営業部が社内監査を受けていることに驚く。

監査担当員の野上(六角精児)に「キンショー法は大丈夫でしょうな」と問われた轟課長(光石研)は「錦糸町生まれです」とこれ以上なく頓珍漢な返答で応じる。

「証券マンが金融商品取引法を知らないなんておかしいでしょう」と思わず解説する久だった。

「課長・・・動揺しすぎです・・・まさか、不正を・・・」

「不正なんてとんでもない・・・・私は葵インペリアル証券に一生を捧げる覚悟であります」

野上は轟課長のコンピューターから「転職情報のファイル」を発見するのだった。

「転職をお考えなんですな・・・」

誰もが人には言えない秘密を持っているものだ。

この後・・・野上は小鳥遊(たかなし)優愛(吉本実憂)の「アマチュア力士半裸画像」や五老海(いさみ)洋子(阿南敦子)の「サンバダンス」動画などを発見するのだった。

みんなオフィスに私物持ち込み過ぎである。

思わずメモをする久に「しなくていいです」と注意する小鳥遊だった。

そんな・・・ドタバタ監査を終えた家路が帰宅すると良雄は「パパ参加歓迎・親子遠足in動物園・・・6月13日(土)」の案内を見せる。

「こんなのあるのか」

「去年は一緒に行ったでしょ・・・忘れたの?」

「いや・・・忘れてないよ」

「今年も来る?」

「行くに決まってるだろう」

どうやら・・・久は息子の良雄には記憶がないことを詳しく説明していないらしい。

まあ・・・幼稚園児には難しい話ではある。

記憶というものについて正確な知識を持つことは大人にも難しい話だからな。

もちろん・・・過去五年間の記憶を失っている久には去年の遠足の記憶はない。

ただし・・・恵に「幼稚園の行事にはほとんど参加していなかった」と最近言われた記憶はあるのだった。

(だけど・・・親子遠足には参加していたのか・・・どうしてなんだろう・・・)

記憶がないので・・・理由もわからない久である。

しかし・・・忘れていたと思っていた別荘での記憶の一部を思い出すことができた久。

ひょっとしたら何かを思い出すのではないかと期待と不安を感じるのだった。

そこへ・・・息をきらした恵が帰宅・・・。

お茶の間がそんなに走ったら・・・と思わず心配するがこれはドラマである。

「大変なの・・・お父さんが・・・久さんのお父さんが・・・」

「僕の・・・お父さん・・・?」

久の父は・・・久が11歳の頃に事業に失敗して出奔し・・・それ以来消息不明だったのである。

家路洋蔵は定食屋で無銭飲食して警察に留置されていた。

取調で久の名前が出たために・・・家路家に電話があったのである。

とりあえず恵がかけつけ・・・洋蔵の証言などから久の父親である可能性が高いことを確認して帰宅したのだった。

「親父が・・・無銭飲食・・・」

半信半疑のまま・・・久は洋蔵の身元引き受けのために江戸川南署に向かう。

「いやあ・・・無銭飲食というか・・・財布を忘れただけらしいんだけど・・・店の従業員が通報しちゃってね・・・そうですか・・・十一歳の時に家出して・・・それきりってこと・・・それじゃあ・・・息子さんにも心中穏やかでないことがおありでしょうなあ・・・しかし・・・ここはどうか穏便にお願いしますよ・・・で・・・お父さんに間違いないですか・・・」

「はい・・・父だと思います」

そこへ・・・江戸川区内の一人暮らしの老人の福祉を担当するNPO法人のボランティア・北村和子(大島さと子)がやってくる。

刑事とも顔見知りらしい。老人ケアのボランティアとしてマニュアル化された笑顔を仮面のように張り付けた女である。恐ろしいほどの演技プランだな。大島さと子・・・存在感ありすぎだぞ。

「こちら・・・例の息子さん」

「あら・・・あまりお父様に似てないのねえ」

笑いながら穏やかではないことを言う女なのである。

「あの父は・・・」

「お父様・・・足がちょっと不自由なんですけど・・・とてもお元気よ」

北村が笑えば笑うほど表情を失う久だった。

係官に付き添われ、足を引きずった洋蔵が現れる。

ますます・・・どんな顔をしていいかわからない久だった。

洋蔵は悪びれた様子もなく久に言った。

「カツ丼が・・・出なかった・・・注文していいかなあ」

手続きをすませた久は・・・洋蔵にいくらかの金を渡すと後の始末を北村にまかせて帰宅するのだった。

恵の仮面を見ると・・・押さえていた感情を爆発させる久。

「何十年も家族を捨てっぱなしにしておいて・・・一言の謝罪もなく・・・カツ丼が食べたいだぜ・・・なんなんだよ・・・あいつ・・・呆れて・・・ものも言えないよ」

「それで・・・この後・・・どうなさるつもり・・・」

「しらないよ・・・勝手にしろ・・・とっとと死んじまえだよ」

事故後初めて見せる・・・久の剣幕にたじろぐ恵・・・。

「あの・・・実家の方にはお知らせした方が・・・」

「冗談じゃないよ・・・浩だって・・・おふくろのことで大変なのに・・・あんな奴のことで面倒かけられないよ」

「・・・」

恵の無言の応答に気勢をそがれる久。

「僕がそう思うのは・・・おかしいかな」

「いえ・・・あなたがそう思うのは仕方がないのかもしれませんが・・・ちょっと・・・」

「ちょっと・・・なんだい」

「今日の久さんは・・・昔の久さんのような・・・こわい顔をしているので・・・」

「こわい顔・・・僕が」

そこへパジャマ姿の良雄がやってくる。

「どうしたの・・・」

「なんでもないよ・・・」

「内緒の話・・・」

「いや・・・なんでもない・・・ただの嫌な話だよ・・・」

「いやなはなし・・・」

「大人の話だから・・・良雄は知らなくてもいいんだよ・・・それより・・・歯を磨いたのか」

「ううん」

「だめじゃないか・・・虫歯になっちゃうぞ~」

臭いものにフタをするように良雄と洗面所に向かう久を恵はお茶の間にだけ見せる憂いを含んだ瞳で見つめるのだった。

いわゆる一つの思わせぶりな表情である。

それは・・・久の父親との関係が久と良雄の関係に影を落すことへの憂慮なのか・・・それとも大人の秘密に関する憂鬱なのか・・・あるいは今の久が見せた昔の久の顔に対する複雑な心境なのか・・・それはまだ謎である。

城立大学病院では娘のすばる(山口まゆ)と妹の祥子(蓮佛美沙子)が野沢香(水野美紀)の病状について医師からの説明を受けていた。

「すでに患者本人様には病状をご説明しましたが・・・ご本人からお二人への説明を依頼されましたのでご説明いたします・・・患者の野沢香さんは胃がんでステージ1Bです。早期胃がんですが・・・リンパ節転移が認められます」

インフォームド・コンセントの時代となって・・・家族に告知するよりも患者に告知するのが一般的になっている。正しい病状を説明しなければ本人が治療方法を選択できないからである。

患者の家族は言葉を失うのであった。

病室で端末を使い、笑顔でスケジュール調整をするライター稼業の香。傍らのすばるは不安を隠せない。

「フリーライターにとっては入院なんて死活問題なのよね」と祥子に軽口をたたく香。

「それ・・・笑えません」

「心配しないで・・・とにかく・・・入院の間だけ・・・すばるのことよろしくね」

原作と違い、香は再婚しておらず・・・祥子も未婚である。

香の妹の祥子は姪のすばるをしばらく預かることになったらしい。

病院からの帰路。すばるは伯母に気持ちを吐き出す。

「連絡したいんだけど・・・」

「誰に・・・」

「・・・お義父さん」

「気持ちは分かるけど・・・お姉さんが反対しているでしょう・・・今はお義兄さんにはこのことを伝えるわけにはいかないの・・・お義兄さんも・・・いろいろとあるでしょう」

「・・・」

香の連れ子であるすばるには久とは血縁関係はない。

養子縁組をしていなければ、香が離婚した以上、すばると久は赤の他人である。

しかし・・・すばるにとって・・・久は心情的なお父さんなのである。

大人の事情は中学生の心を痛ませるのだった。

病室のベッドでは香が笑顔を消して・・・深刻な表情を浮かべている・・・。

帰宅した洋蔵は録画されたテレビ番組を見る。

経済ニュースで株式動向を解説する葵インペリアル証券の社員・・・2009年の家路久。

洋蔵はくいいるように・・・小さな画面の中の息子の姿を見つめる。

壁には小さな魚拓が飾られている。

つつましくわびしい・・・老人の生活する小さな部屋・・・。

そこに飾られているのは今はコンビニエンスストアになってしまった・・・家路酒店の店前の洋蔵と幼い久の写真なのだ。

筑波良明の診療室にやってくる久。

「僕が・・・子供の顔を認識できないのは・・・僕と父親との関係が・・・関連している可能性はあるでしょうか」

「あなたと・・・あなたのお父様・・・」

「僕の・・・その父親への・・・特別な感情が・・・つまり・・・憎しみが・・・僕に正常な親子関係を・・・その・・・」

「ああ・・・負のスパイラルってやつですか」

「・・・」

「虐待された子供が親になって・・・子供を虐待するという・・・」

「虐待はしていません」

「ええ・・・そういう単純なものではないのです」

「・・・」

「たとえば・・・無意識というものがあるという仮説があります」

「仮説なのですか」

「そうです・・・無意識を見た人はまだいませんからね」

「・・・」

「人の心の在り方を説明する一つの方便にすぎません」

「心の在り方」

「そうです・・・たとえば・・・子供の頃の嫌な記憶を大人になってすっかり忘れてしまったとします」

「はい」

「しかし・・・その記憶は意識はされないが・・・無意識の中に残っている」

「はあ・・・」

「たとえば・・・飼い犬が死んだ日に雪が降っていたとしましょう」

「ええ」

「飼い犬のことも・・・その死も・・・いつの間にか・・・忘れてしまう」

「・・・」

「ところが・・・何故か・・・雪を見ると涙がとまらない・・・」

「ああ」

「実は・・・犬が死んだのは老衰だったのですが・・・幼い子供は自分が餌をやり忘れたのが原因だと思いこむ」

「え・・・」

「しかし・・・それも忘れてしまう」

「は・・・」

「ところが何故か空っぽの皿を見るのが苦痛で・・・必ず食べ残しをするようになる」

「・・・え」

「やがて・・・皿を空っぽになるまで食べる人間を激しく憎むようになる」

「そんな・・・」

「人間の心は複雑です」

「やはり・・・僕が父親を憎んでいるから・・・息子の顔が仮面に・・・」

「わかりません・・・あなたが本当に父親を憎んでいるのかどうかも・・・わかりませんし・・・なにしろ・・・あなたの気持ちなんて・・・あなたにだってわかっているのかどうか・・・とにかく・・・CTには映りませんから・・・私にはあなたの本当の気持ちを知る術はないのです」

久は良雄を迎えに行って幼稚園教諭(大島蓉子)と園児のためのサッカークラブのコーチ・本城(田中圭)と面談をする。

「最近・・・良雄君、明るくなりましたね」

「そうですか・・・」

「サッカーでもリーダーシップを発揮するようになりました」

「へえ・・・」

「近頃は・・・良雄くんと遊ぶ機会も増えたそうですね」

「会社の部署が変わったので・・・」

「とにかく・・・親子が共に過ごすことはとても大切なことですよ」

久は壁に貼られた絵に気がつく。

「あれは・・・」

「去年の親子遠足の絵です」

「実は・・・僕には去年・・・遠足に参加した記憶が・・・ないのです」

「まったく覚えていないのですか」

背を向けた久に何故か・・・鋭い視線を送る本城なのである。

まるで死のフラグを立てているようだ。死亡率の高さでは抜群の田中圭だからな。

「ええ・・・でも・・・この絵はなんだか・・・楽しそうだ・・・僕と良雄は手をつないで・・・ゾウとペンギンとキリンを一度に見ている・・・」

ますます・・・眼光が鋭くなる本城。これは・・・殺意の一歩手前の憎悪じゃないか・・・。

そのことには全く気がつかず・・・良雄と手をつないで家路につく久。

良雄の描いた絵が・・・久の気持ちを和ませる。

たとえ・・・仮面の息子でも・・・心を通わせることはできるかもしれない。

世の中の普通の父と息子のように・・・。

久の希望は高まるのだ。

つまずいたってずっと歩いて

いつも流されないように汗をぬぐって

もう帰ろう

おかえりの笑顔が待ってる

あたたかいスープのように愛が待ってるから

しかし・・・帰宅した久を待っていた恵は動揺を隠せない。

ボランティア・北村和子と洋蔵が家路家を訪れていたのだ。

「え・・・」

「福祉を担当するものとして・・・一応・・・お話しあいをしていただきたいと考え、訪問させていただきました」

「お父様もいろいろと事情があるでしょうから・・・久さんも・・・」

「僕には特に話はありません」

祖父は孫に微笑みかける。

良雄は見知らぬ男に愛想笑いを返す。

「とにかく・・・事業に失敗して・・・背負った負債については・・・洋蔵さんが地道に働いて返済終了していますし・・・」と北村は笑みを浮かべる。

「自分で作った借金を自分で返すのは当然じゃないですか」

冷静さを失い・・・膨れ上がる感情をもてあます久。

「言いわけはしない・・・」と傲然とした態度の洋蔵。

「そりゃ・・・そうでしょう・・・僕と母さんを捨てたことは間違いなく事実なんだから」

子供のように唇を尖らせる久。

もはや自分自身をコントロールできず・・・何者かが久に憑依したようだ。

それは・・・久の中で再生され続けた満たされぬ想いの集積が無意識から噴火しているようなものだった。

僕は父親に捨てられた

僕は父親に捨てられた

僕は父親に捨てられた

「しょうがない・・・事業は男のロマンだ」

「好き勝手して・・・大人しく稼業をしていればよかったんだ」

僕を捨てた父親だ

僕を捨てた父親だ

僕を捨てた父親だ

「サラリーマンにはわからないかもしれん」

「僕をまともに見ることもできないんでしょう」

「お前の嫁に見惚れていた」

僕を愛してくれなかった父親だ

僕を愛してくれなかった父親だ

僕を愛してくれなかった父親だ

「それにしても・・・高そうな家だな・・・嫁のマンションに住まわせてもらって・・・口だけは達者になったな」

「あ・・・あああ・・・もう・・・いいです・・・お帰り下さい・・・」

お父さんなんて死ねばいい

お父さんなんて死ねばいい

お父さんなんて死ねばいい

恵は仕方なくタクシーを呼んだ。

洋蔵は呆けた表情でタクシーに乗り込む。

北村はにこやかに運転手に行先を告げる。

その夜・・・恵は咳込んで先に休んでいた。

久は妻を気遣ったが・・・妻が起きているのか寝ているのかもわからない。

「どうしたの」

気配に気がついた恵に声をかけられ・・・漸く恵が起きていることを認識する久・・・。

「大丈夫かい」

久は仮面に触れたが・・・恵の体温を感じることはできない。

「たいしたことないわ・・・」

「一日くらいゆっくり休んだ方がいいよ」

「ありがとう」

「良雄の送り迎えは僕が行くし・・・パン教室に返す予定のお皿も僕が返してくる」

「でも・・・」

「ずっと続けてたんだから・・・一日ぐらい休んでもいいじゃないか」

「・・・お父様のことだけど・・・本当にこれきりにするつもり・・・」

「だって・・・あの男と・・・何を話せばいい・・・最悪の男じゃないか・・・息子の嫁に色目なんか使いやがって・・・僕は年の離れた弟なんか欲しくない・・・」

「あなたが年の離れた弟だったんでしょう・・・まあ・・・華麗なる一族の話はさておき・・・たとえ父親が犬畜生だたとしても・・・せっかく会えたんだから・・・もっと話をするべきよ・・・親子なんだから・・・許すとか許さないとかじゃなくて・・・お互いのことを知るべきなんだわ・・・」

「あの男のことなんか・・・知りたくもないよ・・・」

しかし・・・翌日・・・久は母親の梓(風吹ジュン)に電話をかける。

父親との再会を心に秘めて・・・。

「俺って・・・小さい頃・・・親父とどうだったのかな・・・」

「なによ・・・突然・・・」

「なんだか・・・急に気になって・・・」

「あんたは・・・お父さん子だったよ・・・」

「お父さん子・・・」

「なんてったって最初の男の子だったし・・・お父さんはお前のことを可愛がったからねえ」

「え」

「お父さんはすごく心配性でね・・・外に出歩く時は・・・いつもお前の手を離さなかったものさ」

「ええ」

「子供はいつ飛び出すかわからないから・・・絶対手を離すなって言うのが口癖だったよ」

「えええ」

「近所で三回も車にはねられた子がいたしね」

「そんな子が・・・注意力散漫にも程があるだろう・・・いや・・・それはともかく・・・そんなこと全然覚えていなかったよ」

「なつかしいねえ・・・あの人・・・今はどうしているのかねえ・・・」

「・・・」

筑波良明の診療室にやってくる久。

「記憶とは何か・・・ですか」

「ええ・・・」

「仮説では・・・」

「また仮説ですか」

「ええ・・・記憶を見た人はいませんからね」

「・・・」

「しかし・・・認知心理学では記憶のメカニズムをある程度、説明しています・・・まあ、共通認識できる程度には・・・ですが」

「はあ・・・」

「たとえば・・・今という瞬間の記憶があります」

「はい」

「これは一瞬で忘却される」

「そうですか」

「たとえば・・・私が今と言った時・・・」

「はい」

「いまのいを忘れないとどうなりますか」

「さあ」

「いいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいって言う感じになるのです」

「ああ・・・ですね」

「いを記憶して忘却し、まを記憶して忘却するからいまという言葉が認識できるわけです。この認識を人は記憶します・・・つまり・・・私が今と言った記憶です」

「へえ・・・」

「これを短期記憶と呼びます・・・短期記憶によって・・・人は言葉の意味を見出したりする情報処理をするわけです。これもまた考えると凄い作業なんですよ」

「・・・」

「で・・・私が今と言ったことを来年、あなたがふと思い出すとしたら・・・それが所謂、長期記憶です・・・人は記憶というと・・・これをイメージするわけです」

「そうなんだ・・・」

「記憶力には個人差があります・・・私が何年何月何日何時何分何秒に今と言ったか記憶している人もいるかもしれませんが・・・多くの人が今と言ったような言わなかったような気がする程度のものです・・・記憶なんてそういう曖昧なものなんですよ」

「曖昧な・・・」

「記憶は幻想の一種ですからね・・・本当にあったことも・・・夢で見たことや・・・単に想像したことも・・・記憶として残る場合があります・・・」

「え」

「そうなると・・・本人にもそれが現実の記憶かどうかわからなくなったりします・・・」

「ええ」

「たとえば・・・飼っていた猫が飼っていた金魚を食べちゃったとしましょう・・・」

「えええ」

「ものすごく金魚が好きだったとしたら・・・猫を憎むかもしれません」

「・・・」

「でも・・・そのうち・・・いなくなった金魚を忘れて・・・猫が好きになるかもしれない」

「・・・」

「しまいには・・・猫が殺した金魚は死んで当然だったと思うようになるかもしれない」

「そんな・・・」

「記憶が曖昧なものである以上・・・それに伴う感情も移ろいやすいものなのです」

「・・・」

「それが・・・人間の心なんですよ」

体調不良の恵に代わってパン作り教室に持ち帰った皿の返却にやってきた久は講師から恵が教室に忘れていた調理ノートを渡される。

そのノートを覗き見て・・・ふと周囲を見渡した久は壁に貼られた生徒たちの集合写真を目にとめる。

そこには・・・恵と香が並んで笑っていた。

「香が・・・この教室に・・・」

写真の恵が仮面に見えたのか・・・それとも香の姿に気をとられて・・・恵そのものが目に入らなかったのか・・・についてはスルーである。

そこに祥子がやってきたからだ。

「なぜ・・・お義兄さんがここに・・・」

「祥子ちゃんこそ・・・」

「私は姉が・・・仕事が忙しくてこの教室を退会することになったので・・・届けを」

「僕は・・・妻が体調を崩したので・・・代わりに返却する皿を・・・」

「え・・・」

「恵と香が同じ教室で・・・パンを・・・」

「これって・・・偶然かしら・・・でも姉さん・・・そんなことは一言も・・・」

「妻も・・・」

「前の妻と今の妻がパン教室で密会って・・・結構・・・ミステリーですよね」

「・・・こわいぐらいだよ・・・」

久は妻が秘密を持っていたことに驚いた。

浮気がばれた男の心境か・・・。

まあ・・・香との関わりを・・・久は恵には内緒にしていたつもりだからな・・・。

男は何故かそういうことはばれないと思うものなんだな。

バレバレなんだけどな・・・。

病室で祥子は香に椿事を報告する。

「あの人に病気のことを言ったりしなかったでしょうね」

「仕事が忙しいって言っておいた・・・それより・・・なんでお義兄さんの新しい奥さんと・・・同じパン教室に・・・」

「それは今は聞かないで・・・」

「あ・・・ストーリー的な・・・」

「そうじゃなくて・・・入院中だからストレスを感じたくないの」

その件について・・・恵に尋ねるべきか迷っている久に恵から連絡が入る。

(ボランティアの北村さんから・・・連絡があって・・・久さんが鍵を持っているはずだとおっしゃるの・・・)

「鍵・・・?」

(お父様の家の鍵・・・久さんに一年ほど前に送ったそうよ・・・黒い印がついているそうだけど)

久は鍵束の中にそれがあることに気がついた。

「これ・・・親父の家の鍵だったのか・・・」

(お父様・・・今、住んでいる部屋から埼玉県にある施設に移るそうなの・・・で・・・鍵は返却する必要があるからって・・・)

「・・・わかった・・・」

帰宅した久は鍵を恵に渡す。

「鍵を送り返さずに持っていた・・・ということは・・・いつかお父様に会いにいくつもりだったのじゃあないかしら」

「僕が・・・」

「北村さんの話ですけど・・・お父様・・・久さんの出ていたテレビ番組を録画して・・・くりかえし見ていたそうよ・・・」

「テレビ番組・・・」

「・・・五年くらい前に・・・久さんはビジネスニュースに出たとか・・・」

「ああ・・・」

「お父さん・・・この家の電話番号を知っていたということは・・・久さんのことを気にかけていたってことよね・・・うれしかったんじゃないかな・・・あなたに会えて・・・」

「施設・・・って」

「要介護2だそうよ・・・身体がご不自由のようでしたし・・・三年前に脳梗塞をなさって・・・」

「自業自得だよ・・・」

「でも・・・北村さんのお話では借金のために家族に迷惑をかけないようにと家を出たみたいだし・・・まあ・・・久さんが・・・捨てられたと怨むのも仕方ないとは思うけど・・・」

「・・・」

「間違えるよ・・・人は・・・」

含みを残すセリフである。

恵もなにか・・・間違いを起こしたのか・・・。

しかし・・・ここまで結構・・・思わせぶりだからな・・・。

・・・って思わせておいて・・・「昼顔」的な何かに・・・なのか。

まあ・・・ホームドラマとよろめきは表と裏のような関係だからな。

鍵を受け取った恵は・・・返却のために出かけて行く。

「本当にいいの・・・私が返してしまって・・・」

「うん・・・頼む・・・体調は大丈夫?」

「今日は・・・一日、休んでいたから・・・」

「・・・すまない」

久は惑乱する。

恵と香のこと・・・。

そして・・・自分と父親のこと・・・。

(クソ親父・・・お父さん)

久は父への想いをふりきるように良雄のお迎えに出向く。

聖心カトレア幼稚園でお迎えを待っていた良雄は待ちくたびれて眠ってしまっていた。

「遅くなってすみません・・・」

「良雄くん・・・さっきまで起きて待っていたんですけどね・・・」

何故か・・・最初に登場した時から・・・久に含むところがあるような・・・本城である。

お迎えが恵でないことに落胆しているようでもある・・・。

「子供は・・・親をいつも待っているって言います」

「はい?」

「去年の遠足の時もそうでした・・・」

「え?」

「遠足の途中で・・・あなたは仕事の電話を受けて・・・教諭に良雄くんを預けてどこかへおでかけになったんですよ・・・」

「・・・」

「僕はみていました・・・置き去りされる良雄くんと・・・振り向きもせずに去って行くあなたを・・・このことを・・・私は・・・お伝えしたくて・・・あなたの良雄くんに対する仕打ちを・・・ひどいことをしておいて・・・忘れてしまったのでは・・・なんだかなあ・・・って思うので」

「でも・・・あの絵は・・・あんなに・・・楽しそうなのに・・・」

「楽しかったんでしょう・・・途中までは・・・ずっと楽しかったらよかったのになあ・・・あの絵はそういう良雄くんの願望の表現なのではないでしょうか・・・」

「・・・」

「子供はね・・・親の顔色をうかがっているものです・・・親が笑顔でいるかどうか・・・それは子供にとって・・・死活問題ですから・・・」

ギラギラと敵意を丸出しにする・・・本城・・・やはり・・・死ぬ気かっ・・・。

良雄を抱いて・・・家路につく久。

恵は・・・良蔵の残していった久と父親の懐かしい写真を机の上に残しておいた。

《大切な思い出でしょ?》という付箋をつけて・・・。

最低な父親は自分だったのでは・・・と久は思う。

すばるを追いかけて・・・良雄を置き去りにした自分。

公園で待ち合わせしたのに良雄を忘れた自分。

動物園で良雄と繋いでいた手を放した自分。

良蔵がふりほどいた手を久はいつも求めていたのに・・・。

「反復強迫ですねえ」と筑波医師。

「反復・・・強迫・・・」

「これは精神分析医の範疇ですが・・・あなたは本当は手を放したくなかった・・・でも父親のことは愛している・・・愛している人を認めなければならない・・・だから・・・繋いだ手を離すことは・・・正しいことなのだという・・・歪みが生じる・・・欲求不満・・・正当化・・・歪み・・・この反復があなたの心で繰り返される。やがて・・・それは・・・したくもないことをしてしまう・・・行為となって現れる。子供の手を放さなければいけない。それは愛する父親のしたことだから・・・正しいから・・・放したくもないのに・・・あるいは無意識に・・・あなたは握っている手を振りほどくのです・・・愛しているから・・・愛を拒絶してしまうのです・・・それが反復強迫という心理現象です」

久は心の持つ恐ろしさに怯えを感じる。

目が覚めると朝になっていた。

家には久しかいない・・・。

久の心に押し寄せる寂寥感。

恵の置き手紙がある。

「良雄は私の母に預けてあります。久さんのお父様の引越しを手伝ってきます」

書き添えられた良蔵の現住所・・・。

蘇る記憶。

父と手をつないで懐かしい路を行く久。

久は父を見上げる。

父の顔に浮かぶ・・・微笑み・・・。

夕暮れに仰ぎ見る

輝く青空

日暮れて辿るは

わが家へと続く道

久は走る。

父の元へ・・・。

引越しは終わり、洋蔵を囲む北村と恵。

そこへ久がたどりつく。

「ちょっと・・・待って・・・待ってください」

「久さん・・・」

恵に浮かぶ安堵の表情。

天使なのか・・・それとも浮気な天使なのか・・・。

すでに予感にざわめくお茶の間・・・。

久は最寄りの公園のベンチで・・・父親とのひとときを過ごす。

「親父が家を出た後・・・本当に大変だったんだぜ・・・浩なんかまだ本当にヨチヨチ歩きのガキだったし・・・おふくろは朝から晩まで働いて・・・自分で言うのもなんだけど・・・俺はもう子供でなんかいられなかったんだ・・・とにかく頑張った・・・死に物狂いで勉強していい会社に就職したし・・・夜も寝ないで働いて八年連続で社長賞をとったんだ・・・」

「・・・知ってるさ・・・久・・・お前のことはなんでも知ってる・・・」

「・・・お父さん・・・」

「ずっとずっと・・・お前のことを見ていた・・・」

「・・・」

「・・・ええと・・・ところで・・・あなたはどちら様ですか・・・」

「・・・え?」

恵と北村が合流する。

「お父様・・・少し・・・認知に問題があるそうなのよ・・・」

「これまではなんとか・・・一人で暮らせたのですが・・・もの忘れの頻度が・・・この間の一件も・・・」

「ああ・・・それで・・・施設・・・ですか」

「ええ・・・費用の点などで・・・財政にも限度がありますので・・・ご相談に伺ったのです」

笑顔の仮面のボランティア北村は微笑む。

久はすべての事情を察する。

時代の波が久の足元を洗っている・・・それだけのことだったのだ。

四人は待たせているタクシーの元へ戻る。

洋蔵の手を引く久。

「親父・・・施設には時々訪ねていくから・・・そこでまた・・・ゆっくり話そうな・・・」

「はい・・・ご親切にありがとうございます」

そこへ一台の自転車が乱暴な運転で突っ込んでくる。

久は洋蔵を庇って前に出たので二人の手が離れてしまう。

「危ないじゃないか」と突然、怒声をあげる洋蔵。

「こんなところで手を離すな・・・事故にあったらどうするんだ・・・久」

「・・・」

「子供の飛び出しが一番危ないんだ・・・車に轢かれたら死んじゃうぞ・・・さあ・・・久・・・お父さんの手をしっかり握りなさい」

「・・・」

恵は微笑んだ。

「親にとって・・・子供はいくつになっても子供なんですねえ」

「そうなんですよ」

ボランティア北村は日常茶飯事を見つめる微笑みを浮かべる。

杖をつき・・・よろめきながら・・・久の手を引く洋蔵。

「ありがとう・・・ありがとう・・・親父・・・」

久は何かをこらえるように呟く。

無意識の海の底に潜んだ「怨み」はチッと舌打ちするのだった。

6/13(土)

動物園で久は良雄と手をつなぎ動物たちを見た。

仮面の良雄は時々、久を見上げる。

久は笑顔を返す。

楽しそうな久と良雄を見つめる本城。

本城は咳込んでいる。

なにか・・・恐ろしい感染症が首都圏を襲う予感で背筋が凍りつくお茶の間だった。

・・・期待しても無駄だぞ・・・これは「復活の日」の前兆ではないからな。

久は父親になった自分を受け入れる。

たとえ・・・息子の仮面が外れなくても・・・その幼い手は・・・久を求めているのだから。

洋蔵の施設のベッドサイドには・・・現在の久と洋蔵の写真が飾られている。

久の部屋には・・・昔の洋蔵と幼い久の写真が飾られている。

そして・・・久には幼い良雄がいる。

洋蔵から久へ・・・久から良雄へ・・・何かがつながっているのである。

よくわからない・・・何かが・・・。

葵インペリアル証券の社内監査は問題なく終了した。

監査員の一人が探るような目付で家路に声をかける。

「去年の五月末日・・・第一営業部に監査に入った時・・・当時、茨城の支店にいた・・・あなたは何故か・・・本社におられましたよね・・・」

「え・・・」

「妙だな・・・と思ったので記憶に残っているんですよ・・・何か・・・不味い情報でも・・・隠滅しに来たのでは・・・なんてね」

もちろん・・・記憶を失っている家路に心当たりはない。

しかし・・・悪い予感を覚える家路。

昔の悪い自分は・・・いろいろとやる男だったことはもうわかっているのである。

出世のためなら・・・なんでもやる男・・・。

鬼のような家路久。

自分が何かをしているのは確実のような気がする・・・今の久なのだった。

その日は・・・去年の親子遠足の日。

いつもは参加しない行事に参加した久。

電話で呼び出され・・・本社の監査に立ち会った久。

僕は何をしたのか・・・。

久は不安になり・・・病院に行った恵に電話をする。

「去年の親子遠足の日・・・僕は何かしたかな」

(去年・・・途中でお仕事に行かれて・・・それから私のパソコンを貸してくれっておっしゃって・・・)

「君の・・・パソコンを・・・そこに何か・・・ファイルを移した・・・とか」

(さあ・・・気になるのでしたら・・・ご自分で御調べになれば・・・)

「すまない・・・具合が悪いのに」

(もう少しかかりそうなので・・・良雄のお迎え・・・お願いできますか)

久は幼稚園に向かう。

「今日はサッカーどうだった」

「コーチが休みだから・・・もりあがらなかったよ・・・風邪ひいたんだって・・・だらしないよね」

「風邪か・・・流行ってるのかな・・・帰ったらうがいしろよ」

「うん」

久は恵のデスクに座る。

手元に置かれた手帳を何気なく広げる久。

久は無意識の何かに誘導されているのだった。

手帳のスケジュールに並ぶ・・・お休みの印。

5/15 食パン×休み

5/21 バケット×休み

6/2 コロネ×休み

恵はパン教室を休みまくっていた・・・。

「なんだよ・・・皆勤賞じゃなかったのかよ・・・」

悪い久が妻のパソコンに悪い秘密を隠しているかもしれない。

しかし・・・久の無意識の何かは別のものを捜していた。

マウスを握る手は誰かに操られたように恵のパソコンのファイルを貪るのだった。

たちまち・・・久はゴミ箱のフォルダに・・・恵の秘密のファイルを発見する。

「ああ・・・これはみてはいけない・・・ふぁいる・・・みてはいけない・・・ふぁいるを・・・ぼくはみる」

モニターに広がる・・・ベッドの上風で微笑む・・・恵と本城の禁断の画像・・・。

息が止まる久。

そこへ・・・平然と・・・恵が帰宅する。

お茶の間に木霊する幻の絶叫・・・。

関連するキッドのブログ→第6話のレビュー

Ihhc007ごっこガーデン。愛と修羅場のリビングルームセット。

アンナ工工工エエエエエエェェェェェェ(゚Д゚)ェェェェェェエエエエエエ工工工・・・ぴょんぴょんぴょん・・・と浮気がばれたらウサギとびでごまかすぴょん・・・ごまかせるか~・・・ダーリン相手に別の人と浮気するなんていうことは・・・想像外なのだぴょ~ん・・・まあ・・・わざとらしいほどにコンコンしてたので伏線通りですけどぴょ~ん。パパネタで涙腺緩ませておいてからのエロい展開ですか・・・そうですか・・・まさか・・・現在進行形の浮気で・・・久に対するあの献身的な態度なら・・・仮面魔女メグミですぴょ~ん

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