敵は無料で本を貸し出す奴らです(渡辺麻友)古本を安売りする奴らも鬼畜よ(稲森いずみ)
人生は戦の連続である。
書店が「戦う!」となればライバル書店だけが敵ではない。
図書館と古書店は油断がならないのである。
大型書店は基本的に小型書店を駆逐する。
素晴らしいインターネット時代になり、ネットストアが実店舗を圧迫する。
それよりも「本」が売れない時代も到来している。
それでもなんとか生き延びようとする「彼女たち」はサバイバル・ヒロインなのである。
そういう「描き方」もあったんだよなあ。
一方で視聴率*3.6%も過酷な現実である。
この枠の前番組の「銭の戦争」が平均13.3%だから10%くらい視聴者を失っているわけだ。
「銭の戦争」もみっつのドラマの激突で、TBSの「まっしろ」が平均*5.8%、NHKの「全力離婚相談」が平均*5.0%だったのでドラマは合計で20%超の視聴率を確保している。
前回の視聴率では①「マザーゲーム」*8.3% ②「美女と男子」*5.6% ③「書店ガール」*3.6%と合計が20%を割っているのでこの時間帯が低調になっていると言うこともできる。
プロデューサーは相当に心理的にきついだろうが・・・それほど気にやまないことも大切だ・・・。七月になれば何もかも遠い昔の話なのである。
音楽コンテンツが売れない時代になって・・・人間をノコギリで斬ろうとする危険領域の人間を含む愛好家にアイドルの握手サービスで売上を確保するビジネスが成功する時代である。
なりふりかまわぬ人の姿にあさましさを感じるか美しさを感じるかは人それぞれの感性が問われるんだなあ。
言いたいことが言える失うものが何もない自由っていいなあ。
で、『戦う!書店ガール・第7回』(フジテレビ20150526PM10~)原作・碧野圭、脚本・渡辺千穂、演出・木内健人を見た。精神的な困難を抱えた人のための心理療法の一つに「箱庭療法」というものがある。これは(水)「ヒノリン」にも登場するネタだが・・・ここではドラマとプロデューサーの視点で考えてみる。箱庭療法は縦57㎝横72㎝高さ7㎝の箱に砂を敷きつめ、人形や模型などの様々なアイテムを用意し、箱にアイテムを自由に配置する「遊び」を通じて庭を作る癒しの行為である。
箱というのは実は「枠」であり、アイテムとは「内容」なのである。
火曜午後10時のフジテレビ(制作は関西テレビ)の枠に何を積めるか・・・歴代プロデューサーは様々な庭を作ってきたのだった。
前回は帝国のスターを使った韓流ドラマのリメイクである。前々回はスター俳優を使ったファンタジー「素敵な選TAXI」(平均視聴率10.3%)、その前は破天荒な教師の学園もののリメイクで「GTO」(平均視聴率*7.2%)、その前が社会人が学生になる「ブラック・プレジデント」(平均視聴率*7.5%)で今回のプロデューサーはここに絡んでいる。
「ブラック・プレジデント」はどんな箱庭だっただろうか。
主人公は二枚目男優スター。優秀だがモラルに問題のある人物。これに対しヒロインは大学の講師である。恋愛要素として・・・優秀な秘書やピチピチの女学生と言ったライバルが配置されている。
しかし・・・「恋愛」よりも「お仕事」が前面に出ている。
特に「経済学」と「経済」の落差が拘りの一つになっていると言えるだろう。
キッドの観察で・・・すぐに気がつくのが「専業主婦」の不在である。
男女雇用機会均等法によって・・・不都合な存在となった「専業主婦」は実在するにも関わらずこの箱庭からは排除されているのである。
「視聴率がとれない」というのが一つの病気であるとすれば・・・これは無視できない病状の表出と言えるだろう。専業主婦はまだまだ大事なお得意さんなのである。
ちなみに「箱庭療法」というのは「おまかせ」なのであって・・・誰かが心に悩む人を導いたりはしないのが基本である。作っては壊す作業の繰り返しが病んだ人を癒すのだ。
さて・・・「戦う!書店ガール」はダブル・ヒロインである。一人は40歳の独身書店員・理子(稲森いずみ)であり、結婚歴はない。これはもう・・・「専業主婦」ではないのである。もう一人は23歳のお嬢様書店員・亜紀(渡辺麻友)。もちろん「専業主婦」ではない。
そして・・・ここでも「専業主婦」らしいレギュラー登場人物はほとんど登場しない。
ひょっとしたら専業主婦だったかもしれない理子の母は他界しているのだ。
これは・・・かなり病んでいます。
「箱庭療法」では・・・経過というものがある。
心の変化とともに箱庭の内容が転換していくわけである。
今回の「箱庭」では交際の始った亜紀と「コミックヒート」副編集長の小幡(大東駿介)の衝突が印象深い。
小幡「専業主婦になってもらいたい」
亜紀「結婚しても書店員は続けるつもりです」
小幡「ええええええええ」
なんとか・・・存在することを認めようとするが・・・断固として出来ない・・・患者の葛藤が観察できるのである。
誰が医者なんだよっ。
ペガサス書房の店長会議で谷田部社長(山中崇)に「吉祥寺店の存続」を願い出る西岡理子店長。
谷田部は「七月までに売上20%増を確保出来たら・・・考える。目標達成が出来なければ容赦なくつぶす」と回答する。
心配でかけつけたコミック担当の書店員・北村亜紀は「希望が生まれたんですね」と喜ぶのだった。
二人は「書籍」が好きすぎて「書店」も好きになってしまった変態なのである。
実は・・・それなら書店ならどこでも生きていけるので・・・何故、ペガサス書房の吉祥寺店でなければダメなのか・・・もう少し描き込むとよかったよねえ。
原作には・・・一号店が吉祥寺店という大ヒントがあるよね。
理子が最初に配属された店舗とか・・・亜紀が最初に本を買った店舗とか・・・何でもいいんだから。
同時に「吉祥寺」という都心ではないが・・・それなりに人気の街をもう少しアピールするべきだよねえ。
さらに言うならばペガサス書店というものがどのくらい「大手」なのかも説明不足である。
吉祥寺店の店舗構成もよくわからない。
専門店ではないので・・・従業員数から考えると百貨店的大型店にも見えるし・・・そうでもないように見えるのが難点なのである。
そういうディティールが少し不足していると考える。
高田愛子(工藤綾乃)の勤めるブックカフェ店は店内にあってもよかったのにな。
サイン会の場所となった多目的スペースはどこだったんだろう・・・。
吉祥寺店の店舗に愛着を湧かせなくてはダメなのだ。
恋人よりも書店が好きな女二人の話なんだから。
理子の出世を憎み、店舗閉鎖のリストラを目指すイヤミな野島エリア・マネージャー(木下ほうか)の策略により、理子に不信感を募らせ、移動願いを提出した書店員トリオ・・・萩原麻美(鈴木ちなみ)、遠野由香(木﨑ゆりあ)、日下圭一郎(伊野尾慧)は理子に呼び出され・・・謝罪される。
「店舗閉鎖の件で・・・頭が一杯になっちゃって・・・あなたたちの気持ちを考えられず・・・すみませんでした・・・」
誤解が解けた書店員トリオは・・・理子店長に忠誠を誓うのだった。
理子を同志と考える亜紀、最初から味方のレジ担当・尾崎(濱田マリ)、嫉妬から立ち直った経理担当(森岡豊)、理子さん一筋の三田(千葉雄大)、書店員トリオそしてその他の店員たち・・・この人たちがいないと主要メンバーはお昼休憩できないのだ・・・は一丸となって売上向上案を考える。
しかし・・・一発逆転の名案はそんなに簡単には出ない。
本当はここまでの伏線で・・・サイン会や朗読会での店員のスキルアップや、それなりの宣伝効果が潜在的要素としてあるというような流れをアピールすることもできたのだが・・・そういう解説者が置かれていないことも問題なのである。
理子にキスしようとするができない・・・理子の父親(井上順)と顔を合わせるとあわてて退散するという・・・奥さんいるんじゃないの疑惑のユニコーン堂の田代(田辺誠一)に解説させればいい。
「吉祥寺店単独のイベント展開は他店舗に問題視されるはず・・・それをコネ入社の亜紀さんや、地域振興の隠れ蓑で実行してきた理子さんは・・・本当は策士なんですよね」
「そんなことないです・・・単に結婚できなかった女なんですよ」
「う」
「アイディアは99%の努力と1%のひらめきである・・・とかなんとか書かれた実用書を読みあさり・・・考えに考え抜いたらポンというのが大切だとわかりました」
タブルヒロインをつなぐ三角形の頂点がキモオタで熟女好き設定の三田くんというのも一種の病状だよな。
亜紀の部屋を訪れた書店員トリオが「凄い・・・本棚が一杯」というのも実は甘いのである。
部屋を開けた瞬間に書棚であり・・・物凄い広いスペースなのに書棚しかなく・・・書棚に囲まれたロフトの寝室スペースしか居場所がないというのが書籍愛好家というものだ。
どんなに広くても広ければ広い分だけ書籍が増えるだけの話だ。
おまえのことかっ。
さて・・・ここで最も幻想色の濃い人気漫画家のあがちなお(浅利陽介)が登場する。
基本的に一ツ星出版の存在を左右するほどの大ヒット作を持っている男だ。
そんな男が吉祥寺店にやってくるのは誰がどう考えても亜紀とセックスがしたいという一点に理由が絞られるのだが・・・そこは今の処スルーである。
亜紀は本当は知っていて二人きりにはならず理子を巻き込むのだった。
そこへ「ブックカバーにマンガを掲載しよう」というアイディアを思いついた三田がやってくる。
自分が出版社に管理されていることも気がつかないあがちなおは「やりたい一心」で自分の人気キャラクターの使用許可を出すのだった。
ベテランの理子は「さすがに・・・無理があるのでは・・・」と躊躇する。
しかし・・・あがちなおは担当編集者の木幡に頼めばなんとかなると非常識な約束をするのだった。
木幡は「先生・・・キャラクターの二次使用に関しては・・・本社に決定権があるという契約です」と常識的な説得をする。
「だって・・・作者自身がいいと言ってるのに・・・おかしいだろう」
「しかし・・・出版もビジネスですので・・・」
「なんとかしてよ・・・」
仕方なく上司の編集長(池田鉄洋)にお伺いをたてる木幡。
「バカいってんじゃないよ。キャラクターは億単位で金を稼ぐためのアイテムだよ・・・そんなことで安売りしたら・・・商品価値が下がるだろう・・・そんなの言うまでもないだろう」
ここで・・・木幡は「話題作りの一環です」という説明の仕方もあるし・・・風通しのいい会社なら・・・そういう展開もありえる。
しかし・・・一ツ星出版は姑息な出版社という設定なのである。
恋人の亜紀と担当コミック作家・・・そして上司と勤務する会社の板挟みになって苦悶する木幡。
なんとか・・・「無理でした」と報告しようとするが・・・。
亜紀が「彼は今、一生懸命みんなのために戦っているはずです・・・信じて待ちましょう」と話しているのを聞き・・・判断力を失うのであった。
まあ・・・あらゆる読者が・・・コミック作家のファンであるわけはないが・・・ファンの異常な執着力は発揮され・・・コミック付ブックカバーは大成功。
「カバーおつけしてよろしいでしょうか」
「つけまくって・・・」
ということで・・・吉祥寺店は前月比124%の売上を達成する。
いや・・・ここは200%くらいは達成しないとダメだろう。
イベント効果は一過性だしな。
第二弾は難しいに決まっているし。
成功に湧く・・・吉祥寺店書店員一同・・・。
一方・・・木幡は重大な命令違反で・・・総務部に左遷が決定したのだった。
まあ・・・新聞に取り上げられるほどアピールできたら・・・お咎めなしの可能性はあるよね。
なにしろ・・・話題になったものが勝ちの世界なんだから・・・。
もちろん・・・低視聴率で話題になるのは・・・いろいろとアレでしょうけれど・・・。
それもまた・・・通過点って考えないと箱庭療法は成立しませんのでっ。
だから・・・誰が患者だよっ。
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