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2015年5月28日 (木)

あなたにお茶をさしあげたいのです(堺雅人)私を消そうとしてるでしょ(蒼井優)

穏やかな日々を過ごしたいと望む人。

刺激に満ちた今を追いかける人。

あなたはどちらでしょうか。

矛盾なく刺激に満ちた今を穏やかな日々として重ねる人がいるかもしれません。

欲しいものが手に入るとたちまち興味がなくなる人。

愛用の品が失われたらやりきれない気持ちで蹲る人。

あなたはどちらでしょうか。

来るものは拒まず去る者は追わず・・・そういう人もいるかもしれません。

もっと情熱的に・・・もっと淡々と・・・。

ありそうでなさそうな・・・心のときめき・・・。

あなたにもきっと心というものがあるのでしょうね。

きっと、そうだと思います。

で、『Dr.倫太郎・第7回』(日本テレビ20150527PM10~)原案・清心海、脚本・中園ミホ、演出・水田伸生を見た。血の滴るステーキを美味しいと感じる時・・・自分は他者を犠牲にしても心が痛まない人間だと知るでしょう。そういう人間の集まった社会で・・・お互いに最低限の犠牲を分かち合うのが法というものです。他人のものは盗まない。他人の命は奪わない。そういう約束の中で人々は我慢して生きるのです。それが出来ない人は少し精神が失調していることになります。だから世界には本当の悪人はいないし・・・本当の犯罪者もいないのです。しかし、頭がおかしかったですんだら警察はいらないとも思います。できたら変な人に関わらなくてすみますように・・・祈る他はないのですな。

精神科主任教授の宮川貴博(長塚圭史)は駐車場で傷ついた愛車と転倒した自転車を起こしている少年・深也(平林智志)を発見する。

愛車に傷を付けたのは深也だと断定した宮川は深也の母親で看護師の桐生薫(内田有紀)に損害賠償を請求する。

「本当に私の子がやったのでしょうか」

「そうでなかったとしたら・・・私は誰に弁償してもらえばいいのだ・・・困るじゃないか」

もちろん・・・宮川は明らかな発達障害者だが・・・そういう人間でも精神科医になれるのがこの世界なのである。

サヴァン症候群を伴う自閉症スペクトラムと診断されている深也はヒノリンこと日野倫太郎(堺雅人)の患者である。

頭のおかしな宮川に恐怖を感じた深也は逃げ出し、薫はわが子を追いかける。

「俺の車をどうしてくれるんだ」と苛立つ宮川。

その頃・・・ヒノリンは解離性同一性障害と診断した患者・ユメノあるいはアキラである夢乃/相沢明良(蒼井優)と診療室にいた。

「ギュッとして・・・」と求める患者の腕に触れるヒノリン。

「なんだい・・・抱きしめてもやれないのかい」

「ユメノさんでしたか・・・」

「言ったはずだよ・・・アキラにかかわるなって・・・」

「私はユメノさんともお話したかったのです」

「あんた・・・アキラをだまして私を消そうとしているんだろう」

「いいえ・・・そんなことはありません」

「だまされるもんか・・・」

ユメノは暴れ出して箱庭療法に使用するアイテムを散乱させる。

「ユメノさん・・・お茶を飲みませんか・・・アキラさんは飲んでくれました」

「いやなこった・・・」

ユメノはヒノリンの診療準備室に立て籠もる。

「あけてください・・・」

「・・・」

「それなら・・・このままお話しましょう」

「先生・・・」

「・・・アキラさん」

交替性の多重人格として振る舞う患者はユメノからアキラにスイッチする。

アキラは診療準備室の鍵を開け・・・ヒノリンを招きいれる。

診療室に深也が入ってくる。

自閉症スペクトラムに見られる変化を嫌う性質から・・・散乱したアイテムの整理整頓を開始する深也・・・。

箱庭療法用の動物フィギュアは行列を作るのだった。

自閉症スペクトラムとしての深也は言葉の発達にも問題があり、言語コミュニケーションに困難を伴う。

対人関係の形成にも問題があることになる。

宮川は「聾唖者に挨拶しないから無礼だ」と言うタイプの人間なのである。

もちろん・・・対人関係に問題があるのだ。

深也が患者であり、宮川が医師なのは程度の差に過ぎない。

もちろん、そういう個性の差が本人や家族にとって過酷なものであることは否めないのだ。

「私・・・何かしてしまったんですね」

「いいんですよ・・・今日はアキラさんが子供の頃の話でもしましょうか」

「いつも一人で・・・絵を描いていました・・・私・・・人見知りで・・・」

「人見知りは才能の一種だと言う人がいます。タモさんとか・・・」

「タモさん・・・」

「一人、一人が違う人間だと分かっている人は意外と少ないんですよ」

「・・・」

「それぞれの人について・・・どう接していいか・・・悩むのは・・・アキラさんが思いやりのある人だからです・・・」

「・・・私・・・何かしたんですね・・・ごめんなさい」

「いいんですよ・・・」

部屋を出た二人は片付けに熱中する深也を発見する。

「深也くんです・・・彼は片付けるのが大好きなんですよ」

「私・・・ユメノが散らかしたんですね」

「大丈夫です・・・散らかしたら・・・片づければいいんですから・・・」

理事長室には置屋の女将で元芸者の夢千代/伊久美(余貴美子)が円能寺一雄(小日向文世)に謝罪している。

「ご迷惑をかけてすみません」

「どういうことなのかね」

「夢乃は病気なのです」

「病気・・・日野先生にお世話になっています」

「なんだって・・・」

騒ぎの元が夢乃の兇悪な母親・菊千代/相澤るり子(高畑淳子)であることは秘す夢千代である。

しかし・・・権力者として自分の知らない秘事があることを我慢できない円能寺は診療室に向かう。

ヒノリンは深也と会話をしていた。

「深也くん・・・ありがとう・・・君のおかげで部屋がきれいになったよ」

うれしくてくるくる回りだす深也だった。

そこへ円能寺が権力者特有の我儘さで乱入する。

「夢乃はどこだ」

「お帰りになりました・・・今は別の患者さんの診療中です」

「夢乃はどういう病気なんだ」

「それは医師としてお答えすることはできません」

「守秘義務か・・・俺は夢乃の旦那だぞ」

「まさか・・・夢乃さんは・・・あなたと結婚を・・・」

「違う・・・芸者と旦那の関係だ・・・花柳界では俺は夢乃の親代わりだ」

「たとえ・・・ご家族でも・・・言えないことはあります」

いや・・・この場合は母親代わりの夢千代には病状を話して協力を仰ぐのだから・・・旦那である円能寺には話してもいいわけである。

しかし・・・それができない・・・ヒノリンの中には・・・夢乃に対する独占欲が芽生えている可能性がある。

その邪さは・・・ヒノリンにも夢乃にもよくない展開を招くのである。

円能寺が独善的であるように・・・ヒノリンも独善的なのである。

ここは独善と独善の争いなのだった。

その修羅場を察して逃亡する深也だった。

アキラは中庭で深也に再会する。

深也はピンクの象のフィギュアを持っていた。

「かわいいわね」

アキラは植え込みに大きな象が隠れているのに気がつく。

「あれは・・・」

「マ・・・マ・・・」

「お母さんなの?」

そこへ・・・深也の母親の薫がやってくる。

「まあ・・・深也・・・こんなところにいたの・・・」

「・・・」

深也を抱きしめる薫の姿に・・・アキラは憧れに似た想いを感じるのだった。

夢にまで見た母親の抱擁・・・アキラは与えられなかったものに愛着を感じるのだった。

喪失されたものへの愛着は・・・執着心を招き・・・補完されないことによって心に傷を負わせるのである。

夢千代的な性格を感じさせるユメノの人格は・・・防衛反応であると同時に母親の性格模倣であり・・・人間の心の持つコピー機能の成果とも言えるのだった。

ユメノはアキラを守ろうとするが・・・菊千代のコピーなので結局、守りきれないのである。

深也はサヴァン症候群という脳機能の特異性から生じる才能を持っていた。

造形力に優れた深也は子供美術展の彫刻部門でグランプリを獲得する。

宮川の愛人ポジションの矢部街子(真飛聖)は深也の個性を研究対象とすることを提案する。

宮川は脳機能局在の立場から深也の病状を解析することに興味を持つ。

ヒノリンの患者である深也を奪うために・・・街子が撮影したヒノリンとユメノのキス・シーンを円能寺に提示するのであった。

円能寺は嫉妬に我を忘れるのだった。

お座敷に夢乃を呼び出した円能寺は・・・件の写真を突きつける。

「あらあら・・・こんなことで怒っちゃダメですよお」

男を手玉にとることにかけては母親譲りの才能を持つ夢乃はキスで円能寺を宥め、写真を入手するのだった。

円能寺もなかなか本性をさらけださないのである。

こうして・・・路上キスの写真は・・・街子かせ宮川へ、宮川から円能寺へ・・・そして円能寺から夢乃へと渡って行く。

もう一人の当事者であるヒノリンは・・・医師としての致命傷になりかねない写真の存在をまだ知らない・・・。

そもそも・・・この写真はヒノリンが夢乃と恋に落ちた現場の写真である。

しかし、現在は夢乃は医師としてのヒノリンの患者となっている。

時系列を抜きにして考えれば医師が患者に性的接触をする倫理的に不適切な関係の動かぬ証拠になってしまうのだった。

「深也くんに・・・MRIを・・・それは無理です」

宮川の提案を否定するヒノリン。

「なぜだね」

「自閉症スペクトラムの患者にとって電磁的画像診断のシステムは脅威です」

「鎮静剤を投与すれば問題ないだろう」

「深也くんは実験動物ではない」

「まあ・・・母親の許可が出ればいいだろう・・・」と指示をする円能寺。

「彼女は賛成しないと思います」

「まあ・・・それは医師と患者の問題だ・・・君には夢乃の担当も外れてもらう」

「そんな権利はあなたにはありません」

「あるよ・・・君には拒否する権利はない・・・嫌なら病院から出て行きたまえ」

「え・・・」

ヒノリン親衛隊長の外科医・水島百合子(吉瀬美智子)も夢乃への嫉妬から敵となり・・・孤立したヒノリンは深也と夢乃を診療する権利を剥奪されるのである。

しかし・・・アキラがヒノリンを求めてやってくるのを止める権利は誰にもない。

「アキラさん・・・」

「この間・・・私が散らかしたものを片づけてくれた子に・・・御礼をしたいのです」

アキラは象のぬいぐるみを用意していた。

「そうですか・・・きっと喜びます・・・今夜、お祝いをするので・・・直接渡したらどうでしょう」

「・・・」

「きっと来てくださいね」

ヒノリンは患者としての夢乃に逢いたいのか・・・恋の対象に愛着を感じているのか・・・ヒノリン自身も危うい状態になっていた。

診療行為を禁じられた苦肉の策ともとれるが・・・精神的に問題のある患者を・・・医療従事者以外のものもやってくる家庭に招くのはヒノリンの失策と言っていいだろう。

その席でヒノリンは研修医の川上葉子(高梨臨)のテキサス ヒューストン精神医学校への留学を発表する。

恋愛を精神疾患の一つと考える発達障害を持つヒノリンはまったく気がつかなかったが・・・葉子を好きな研修医・福原大策(高橋一生)は突然の愛着対象の喪失に悲哀を味わうのだった。

その心的外傷は深いのだった。

その頃、アキラは「精神病なんてすべて甘え」という信念の持ち主と思えるヒノリンの守護神で実の妹の中畑まどか(酒井若菜)に猛攻撃を受けるのだった。モー子(ドラマ「木更津キャッツアイ」の登場人物)だけにな。いるのか・・・そのだじゃれだよの指摘。

「あんた・・・こんなところでなにやってるの・・・お兄ちゃんの患者か・・・なんだか知らないけど・・・家にまで来るなんて・・・おかしいんじゃないの・・・第一、お兄ちゃんには百合子さんという立派な交際相手がいるんだから・・・勘違いしないでね・・・さっさと消えなさい」

いくら・・・素人といえども・・・猛攻撃すぎる・・・モー子だけにな。

おすのかよっ。

精神病患者に対する偏見の固まりを代表するものとして勝ち誇ったまどかは・・・家に入り鍵を閉めるのだった。

アキラは打ちのめされ・・・ユメノは激怒する。

「ほらみろ・・・あんなやつ・・・ろくでなしだ」

大切な患者が実の妹から深刻なダメージを受けていることも知らず・・・葉子を好きだったことを大策から告白され驚愕するヒノリンだった。

「好きでした」とついに告白する大策。

「知ってましたよ」と葉子。

「あ・・・そうですか」

「先生は恋愛は一過性の病だと言ってましたが・・・私は一生ものだと思っています」

「あ・・・そうですか」

憐れだぞ、大策・・・憐れだ。

そして・・・葉子は明らかにストーカー気質を誇示するのだった。

深也が文字盤を使い・・・ヒノリンに自分の気持ちを伝えに来た。

おじさんたちより

ぼくはながいきするんだよ

ぼくがおとうさんになったとき

ぼくたちのこどもが

ぼくみたいにこまらないように

ママがぼくのためにがんばってるように

ぼくもがんばるよ

機械に入る

そうすれば偉い先生たちが

なにか良い方法を

おもいつくかもしれないから

ヒノリンは深也から科学の進歩には犠牲がつきものだという冷徹な事実を諭されるのだった。

深也は宮川の研究対象として身を捧げ、宮川の研究は一つの成果を上げるのだった。

つまり・・・「サヴァン症候群を伴う自閉症スペクトラムが脳内に特異的な血流変化として示される可能性」の示唆である。

まあ・・・意識の問題が解明されない限り、仇花となりかねないけどな。

一方で・・・狙いを秘匿しつつ・・・円能寺はエクレア依存症のヒノリンの主治医・荒木重人(遠藤憲一)を訪問する。

副病院長兼脳外科医主任教授の蓮見(松重豊)は視力に問題を抱えているらしい。

かってのライバル荒木は蓮見と再会して・・・何かに気がつく。

暴走する夢乃は・・・ヒノリンに復讐するために・・・例の写真を・・・賭博障害の相澤るり子に譲渡してしまうのだった。

「うわあ・・・なにこれ・・・おもしろい」

「好きに使えばいいのよ」

「( ゚∀゚)アハハ八ノヽノヽノ \/ \ 」

「( ゚∀゚)アハハ八ノヽノヽノ \/ \ 」

最も危険な母娘である。

荒木とヒノリンがいる診療室に・・・乗り込んでくるるり子。

「先生・・・患者に手を出すのって・・・医者としてどうなのかしら・・・」

「そりゃ・・・倫理的に問題がありますね」

「じゃ・・・この写真・・・五千万円で買ってちょうだい・・・」

ヒノリンは突然・・・医師として、人間として・・・男として崖っぷちに立ったのだった。

責任とるしかないよねえ。

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