十七歳でキッチンを読みました(稲森いずみ)愛し合えないのでケーキを食べました(渡辺麻友)
短編小説「キッチン/吉本ばなな」が発表されたのは1987年のことである。翌年、短編集「キッチン」が発刊される。
ドラマの登場人物である西岡理子(稲森いずみ)は四十歳の設定であるので「十七歳の時に読んだ」ということは二十三年前である。
つまり、1992年頃のことだ。
発表から四~五年たっていて・・・あまりタイムリーとは言えない。
もちろん・・・ベストセラーだから・・・どこかで十七歳の女の子が読んでいてもおかしくないのだが・・・なんとなく・・・そういう時差の言いわけが欲しくなるのである。
ドラマの中で引用されるのは一種の定番部分で・・・印象としてはとてつもなく浅いのである。
だから・・・なんだというわけではないのだが・・・どうせ、視聴率がここまで*6.2%↗*6.4%↘*4.6%という番組だ。
もっと趣味に走ってもよかったのじゃないかと思う。
少なくともダブルヒロインが「キッチン」VS「はてしない物語」で語りつくして平行線とかな。
・・・誰がみるんだよっ。
で、『戦う!書店ガール・第4回』(フジテレビ20150505PM10~)原作・碧野圭、脚本・渡辺千穂、演出・木内健人を見た。21世紀最初の十年間で日本にある書店数は30%減少した。書籍と言う文化はもちろん曲がり角にあるのだろうが・・・まあ、あと百年くらいは「本」というものは残るだろう。そういう斜陽産業の話である。無理に盛り上げようとしなくてもいいんじゃないのかなと思うのだ。ここまで第一話は新刊本の著者によるサイン会、第二話は雑誌に付録を梱包する話、第三回は万引き常習犯による書店員殺傷事件である。・・・死んでないぞ・・・片思いの相手である副店長の理子を守って名誉の負傷を遂げた三田孝彦(千葉雄大)は全治一週間だ。で、今回はコミック「怪獣メダル」(フィクション)のアニメ声優による朗読会を吉祥寺北商店街と協力して開催する大手書店「ペガサス書房」吉祥寺店なのである。
本来の責任者である三田が入院中のために・・・理子はお嬢様店員の三代目こと北村亜紀(渡辺麻友)に白羽の矢を立てる。
和を大切にしない帰国子女にチームワークを学んでもらおうという目論みなのだった。
愛し合ってるか~い。
・・・なんだよ・・・天国からの声か。
そうなんだよな・・・愛し合ってないんだよな。
なぜかというと・・・譲れないからなんだな。
亜紀が好きだと告白したんだから三田は亜紀と愛し合えばいいのである。
しかし・・・三田は理子が好きなので亜紀とは愛し合わないのだ。
かといって・・・三田が理子にアタックするかといえばしないのである。
そのくせ・・・理子にアプローチしてくるライバル店・ユニコーン堂の田代(田辺誠一)の動静を嗅ぎまわる三田なのだった。
なんか・・・ウジウジしてやがる。
愛し合ってるかい・・・イエーイというノリがないのは悲しいぜえ。
とにかく・・・理子の引き抜きも視野に・・・積極的にデートを申し込む田代なのである。
「また、もんじゃ食べにいきましょう」
「ええ」
「いつ・・・いくの・・・スケジュールを決めるなら今でしょう」
沖縄料理店「わらゆん」の店主・屋良部(マキタスポーツ)は二人の背中を押すのだった。
「理子さんの人生に影響を与えた一冊は何ですか」
「面接試験みたいですね」
「いや・・・単に理子さんのことを知りたいのです」
「十七歳の時に読んだキッチンです」
「吉本ばなな・・・か」
「通俗的ですみません」
「いや・・・ベストセラーだってそれなりに価値はありますからね」
「書店員としては無難な答えですよね」
「闇の中、切り立った崖っぷちをじりじり歩き、国道に出てほっと息をつく。もうたくさんだと思いながら見上げる月明かりの、心にしみ入るような美しさを、私は知っている・・・か」
「あら・・・」
「まあ・・・暗唱するならここって感じですか・・・あなたの人生はどう変わったんです」
「母がガンで死んだんです」
「・・・なるほど」
「人間は何かを選べない・・・どうにもならないことがあるって・・・そういう所が女子高校生にはぐっと来るでしょう」
「ですね・・・家族という、確かにあったものが年月の中でひとりひとり減っていって、自分がひとりここにいるのだ・・・と」
「まあ・・・父親はまだ生きているんですけどね」
「現実世界では感傷ばかりにはひたっていらませんからね」
「とにかく・・・小説って凄いなあと思いまして」
「書店員になったんですね」
「はい」
「面接官なら合格点出すなあ」
「やった~」
愛し合ってるか~い。
しかし・・・そんな理子も三田に「田代さんとお付き合いしてるんですか」と問われれば・・・。
「いやだ・・・まだ知り合ったばかりだし・・・何言ってんのよ」
愛されないことを恐れて防護幕全開なのである。
そして・・・亜紀には「付き合って下さい」と積極的に迫る編集者の小幡(大東駿介)がいるのだが・・・。
「いま・・・失恋中なので・・・」とあきらめきれない気持ちで答えないのだ。
愛し合ってるか~い・・・イエーイってみんな言わないんだよ。
いいことばかりはありゃしねえ・・・。
子供たちに人気のアニメの原作コミック「怪獣メダル」に注目した亜紀は声優による朗読会を提案する。
しかし、開催まで一週間。
萩原麻美(鈴木ちなみ)、日下(伊野尾慧)、遠野由香(木﨑ゆりあ)の書店員トリオの反応は鈍い。
「やる気がないなら・・・私、一人でやります」
理子は亜紀にチームワークの大切さを説こうとしたのに裏目に出るのだった。
愛し合いたい小幡は私情丸出しで亜紀を応援するのだった。
「何かを成し遂げようとする時は・・・正攻法だけではダメなのさ・・・コネを使うのも大切だよ」
「そういうものなの・・・」
まあ・・・亜紀は就職そのものがコネなのだが。
三田に未練がある亜紀はケーキを買って病室にお見舞いに行くが・・・理子と親しげに話す三田の姿に退散する。
なんて素敵な夜だろう
一人でケーキを食べるなんて
いつも夢見てたことさ
一人でケーキを食べるなんて
恋を振り切り、突進する亜紀は「怪獣メダル」の出版社と接触して・・・声優のスケジュールを抑える。
しかし・・・イベント開催のためには人手不足なのであった。
そんな亜紀に理子は社内報を見せる。
そこには・・・吉祥寺店トリオが書店員としての情熱を熱く語っている記事があるのだった。
「本を愛しているのはあなただけじゃないのよ」
「・・・」
会議で・・・亜紀は頭を下げるのだった。
「一人ではできません・・・私のことは嫌いになってもかまいません!・・・でもペガサス書房のことは嫌いになってもならないでください!」
「あんたの会社かっ」
「イベントを成功させたいんです」
「しょうがないわねえ」
簡単にデレるトリオである。
かわいいぞ、トリオ、かわいいぞ。
愛し合ってるか~い。
イエーイ!なんだな。
しかし、直前で問題が発生する・・・イベント会場の物販を出版社が直売することを条件に出したのである。
「じゃ・・・うちは一銭も儲からないじゃん」
店長(木下ほうか)は難色を示す。
愛し合ってないのか~い。
「やりましょう・・・始末書は私が書きます・・・ここは地元へのPR活動の方が大切です・・・地域の皆さんがきっと喜んでくれますから」
愛し合ってるのか~い。
理子の言葉に励まされる亜紀だった。
ゲラゲラポーなイベントは子供たちに混じって大きなお友達も多数参加して大盛況だった。
「これで・・・ペガサス書房が物販できたら・・・言うことなかったのに・・・」と小幡。
「一緒に口惜しがってくれてありがとう・・・」と亜紀。
「え・・・」
「一緒にお酒を飲みませんか」
「残念会・・・それともデート?」
「両方です」
悪い予感のかけらもないさ
ぼくら夢を見たのさ
とってもよく似た夢を・・・
愛し合ってるかい
イエーイ!
一方・・・三田は田代を訪ねる。
「引き抜きのために・・・店長に近付くなんて・・・僕は許さない」
「彼女がもっと実力を発揮できる職場があるなら・・・それはいいことだと思う。いずれにせよ・・・自分を守るために・・・好きな女性に告白することもできない根性無しの坊やに何か言われる筋合いはないね」
「・・・」
しかし・・・田代は優しく三田の肩をたたくのだった。
勇気のない君は・・・彼の歌声に耳を澄まそう。
大切なことはただ一つ。
愛することではなくて愛し合うことだ。
おい・・・命日過ぎてるぞ。
関連するキッドのブログ→第3話のレビュー
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