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2015年6月30日 (火)

ラーメン大好き小泉さん(早見あかり)マシマシで(美山加恋)激辛で(古畑星夏)

小粒ながら谷間の確保が困難な夏ドラマ・・・。

先行スタートの一角・・・サバイバルをかけて登場である。

え・・・これがレギュラーになる可能性あるのか。

なんといっても楽そうだ・・・おいっ。

深夜ドラマというものは前衛的であってほしいと思う。

そういう意味では深夜ドラマの三大テーマに縛られすぎると・・・プログレッシブな感じが薄れる。

①B級グルメ・・・「深夜食堂」的なまったり感で勝負すると・・・睡眠薬になってしまう。

②裏社会・・・「ウシジマくん」を越えないよね。

③ホラー・・・なかなか怖くならない。

ホラー要素の中にはファンタジー要素があるので「みんな!エスパーだよ!」とか「牙狼〈GARO〉 -魔戒ノ花-」とか傑作や秀作も登場する。

裏社会には風俗産業もあり・・・「LOVE理論」など底辺の恋愛ものと言う展開がある。

B級グルメは「食の情報」という逃げ道が邪魔になってくることがあるので要注意なんだな。

食の軍師」とかうんちくはもういいよ・・・という気分になる。

まあ・・・このブログでは基本的にスルーしたいジャンルなのである。

だって・・・深夜にお腹がすくのは危険だもの・・・。

で、『ラーメン大好き小泉さん・第1回』(フジテレビ201506272340~)原作・鳴見なる、脚本・久馬歩、演出・松木創を見た。東日本大震災の混乱の中、「私はアイドルにはむいてなかった」とももいろクローバーを脱退した早見あかりである。そのためにももいろクローバーはももいろクローバーZになってしまったのだ。あれから四年・・・時々、ゴールデンにも登場し、朝ドラマにも進出したが・・・「ウレロ☆未確認少女」シリーズとか、「アゲイン」とか「セカンド・ラブ」とか・・・深夜に花開くあかりんだった。

「ラーメン大好き」と言えば小池さんだから・・・小泉さんはもじりである。しかし・・・小泉さんにはかなり・・・おタクでアイドルな響きがあるわけである。

初回を見る限り・・・美少女全開のキャラクター・・・しかも・・・ラーメンマニア・・・文句ありません。

謎の転校生・小泉さん(早見あかり)をこよなく愛する美少女マニアの女子高校生・大澤悠を演じるのが名子役だった美山加恋(18)だ。

成長してからは大人しい暗めの役柄が多かった美山加恋だが・・・「山田くんと7人の魔女」で脱皮して・・・キャピキャピの女子高生を演じている。これが・・・「ウルトラQ」のカネゴンレベル(最上級)の可愛さなのである。・・・そのたとえはどうかなっ。

小泉さんの・・・異常性は「ボケ」なので・・・大澤悠は「ツッコミ」である。

二人のラーメンに対する姿勢は漫才なのである

「一人でラーメンを食べたりするんだ」

「つるんで食べるものではありません」

「そんなあ~」

・・・かわいいよ、加恋、かわいいよ・・・かわいいよ、あかりん、かわいいよ・・・の連打なのである。

これに・・・大澤悠のクラスメートで「小泉さんて・・・転校してから・・・クラスに馴染もうとしないし・・・苦手」と言う中村美沙(古畑星夏)が第三の女として加わる。初回では明らかにされないが・・・原作的には激辛マニアなのである。古畑星夏は「きょうは会社休みます。」で綾瀬はるかの恋敵を演じた(18)である。

今回はツインテールの女子高校生になっているのであった。

もちろん・・・全員、なんちゃって女子高校生なのだ。

女子高校生とラーメン・・・無敵だ・・・無敵の香りがする。

下校時に小泉さんを目撃した大澤悠は親友の中村美沙の制止を振り切ってアタックを開始。

大澤悠につきまとわれながら小泉さんが到着したのはラーメン店「金色不如帰」だった。

小泉さんの食べっぷりに快感を感じる大澤悠なのである。

「そんなにおいしかったの・・・」

「三種のスープが絶妙で・・・とくにはまぐりの濃厚な味は・・・個性を際立たせています」

ラーメンに関しては饒舌になる小泉さんに・・・大澤悠は萌えるのだった。

小泉さんのストーカーとなった大澤悠は小泉さんを尾行して・・・ついに「ラーメン二郎 八王子野猿街道店」にまでやってくる。

「ラーメン二郎」愛好家・・・ジロリストの集う店舗で・・・大澤悠は傍若無人なセリフを連発。

「大ブタ・・・マシマシ(増量大)で」

小泉さんのオーダーを真似する大澤悠にジロリストは注意する。

「およしなさいよ・・・」

「私・・・お腹ペコペコだから大丈夫です」

・・・やはりカネゴンだ・・・。

そして・・・お約束の想定外の大盛り。

「えええええ」

しかし・・・小泉さんは極太麺の野菜上盛りなどのテクニックを見せつつ・・・完食である。

思わず拍手喝采のジロリストたち。

「うえ~ん・・・もう無理です~」

大澤悠は半分くらい食べ残す。

「しょうがないなあ・・・次は小ブタにしなさいよ」

優しい店主である。

しかも・・・大澤悠の食べ残しを・・・小泉さんは食べてくれるのだった。

大澤悠・・・感謝感激である。

「これからも一緒にラーメン食べてください」

おねだりする大澤悠。

「おことわりします」

ラーメン以外にはつれない小泉さんなのである。

「ああん・・・まってってば~」

カネゴンだな。

とにかく・・・楽しいぞ~。

見終わると・・・部屋の鍵をしめ・・・深夜でも開いているラーメン屋に向かうキッドだった・・・だから、やめろってば。

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2015年6月29日 (月)

どれだけ世界が残酷でも関係無い・・・何も捨てることができない人には何も変えることはできないだろう(高良健吾)

「進撃じゃ」

「進発ではないのですか」

「進撃じゃ・・・京都から会津や薩摩を駆逐するのじゃ」

「朝廷に嘆願するのでは・・・」

「私は強い・・・すごく強い・・・だから私にはあいつらを蹴散らせることができる」

「しかし・・・敵は十倍ですぞ」

「お前らは臆病で腰抜けだ・・・ここで指をくわえて見てろ」

「何の危険も冒さず何の犠牲も払いたくありません」

「どれだけ世界が恐ろしくても関係無い・・・戦わなければ勝てない・・・人は戦うことをやめた時・・・初めて敗北する」

「・・・」

・・・気がすんだか・・・。

やはり・・・アニメにしか興味がないのか・・・歴史には何一つ・・・興味がないのか・・・この脚本家は・・・。

で、『燃ゆ・第26回』(NHK総合20150628PM8~)脚本・大島里美、演出・末永創を見た。例によってシナリオに沿ったレビューはikasama4様を推奨します。今回は野山獄にて静かに出番を待つ高杉晋作の描き下ろしイラスト大公開でお得でございます。(・∀・)イイ!実に(・∀・)イイ!・・・哀愁の祈り・・・そして拳銃に口づけを・・・。なんだかんだ・・・ぐだぐたのままに半年たってしまいましたな。今回もかなり構成に問題がありましたよねえ。基本的に全国的な規模の時代劇では情報の時差が発生するわけでございます。都会で何かが起きても・・・田舎の人がそれを知るのはすべてが終わった後・・・。ただでさえ・・・流れが掴みづらいのに時系列入れ替えは禁じ手だとまざまざと感じましたな。そもそも・・・江戸時代が超管理社会だということが分かっていない感じですよねえ。武士になるということは・・・扶持を殿様からもらうこと・・・城下に住むということは屋敷を拝領すること・・・久坂家は急に出現できないわけで・・・士族になったら・・・屋敷は受領しなければならないわけで・・・養子縁組は藩に届けなければならないわけで・・・基本ですよね。

今回は要素としては①郊外の杉家から萩城下の久坂家への文のお引っ越し。②京都に進発し、洛外に陣を張った長州軍と京都防衛軍との駆け引き。③迫りくる四カ国艦隊。④野山獄での高杉晋作と周布政之助。この四点。

①に関しては「吉田家への見舞い」と「引越し先のお掃除」と「父母との別離」と「新居での主人公と養子」くらいの四点。これに「椋梨夫婦の暗躍」を加えるとなると・・・最後は「引越しのご挨拶」にするべきなのですな。

これが主軸です。

②については・・・「来島又兵衛と久坂玄瑞・桂小五郎ペアの路線的対立」と「芸妓・辰路の妊娠報告」と「朝廷の暗躍」と「毛利元徳と三条実美の上洛」と「禁裏への進撃開始」に分割されます。

素直に構成すると・・・。

吉田家への見舞い(萩)

芸妓・辰路の妊娠報告(京都)

引越し先のお掃除(萩)

朝廷の暗躍(京都)

父母との別離(萩)

来島又兵衛と久坂玄瑞・桂小五郎ペアの路線的対立(京都)

迫りくる四カ国艦隊(長崎)

毛利元徳と三条実美の上洛(三田尻)

引越しのご挨拶(萩)

禁裏への進撃開始(京都)

高杉晋作と周布政之助(野山獄)

新居での主人公と養子(萩)

・・・こういう流れになります。

なぜ・・・そうしないのか・・・不明ですな・・・。

だから・・・主人公は歴史から浮き上がり・・・歴史はドラマの中に埋没するという・・・不憫な感じになっちゃうのですなあ・・・。久坂の不戦の誓いとか・・・周布の温情人事とか・・・場面作りはそれなりに良いのですけどねえ・・・。構成が台無しにしているのですな。

Hanam026元治元年(1864年)二条斉敬が関白となる。三月、英国留学中の伊藤俊輔、井上馨は米英仏蘭国連合艦隊による長州攻撃計画を探知。西郷隆盛が入京。四月、松平容保(会津藩主)が京都守護職に復職。松平定敬(伊勢桑名藩主)が京都所司代となる。五月、将軍家茂、江戸に帰府。六月五日、池田屋事件。十日、伊藤俊輔、井上馨は横浜に帰国。京都明保野亭で会津藩士が土佐藩士を襲撃。両者が切腹する。十五日、函館・五稜郭が完成する。天狗党の反乱に対し幕府は筑波勢追討令を出して常陸国・下野国の諸藩に出兵を命じる。十九日、四国連合は海峡封鎖が解かれなければ武力行使を実行する旨を幕府に通達する。二十四日、久坂玄瑞は長州藩の罪の回復を願う嘆願書を朝廷に奉る。二十七日、長州藩の入京が許可される。七月八日、禁裏御守衛総督・一橋慶喜は薩摩藩に出兵要請するが拒否される。十四日、毛利元徳、三条実美らが京都に向け長州を出る。十八日、一橋慶喜は長州藩兵に退去を呼びかける。有栖川宮幟仁・熾仁両親王、中山忠能らが参内し、長州勢の入京と松平容保の追放を訴える。会津藩擁護の姿勢を取る孝明天皇は一橋慶喜長州掃討を命じる。十九日、長州勢は京都蛤御門にて会津・桑名藩兵と衝突。薩摩藩は守備側として参戦する。

「探索のしのびがかえりませんな」

久留米水天宮の宮司だった真木和泉がつぶやいた。

石清水の軍議には重い沈黙が横たわっている。

「ここは・・・ひとまず難波に退くべきです」

あくまで入京嘆願を目指す久坂玄瑞が進言する。

「朝廷から返答がないということは・・・奸臣どもが妨げておるのだろう」

真木和泉が促すように来島又兵衛を見る。

「ここで退いては長州武士の名折れでござる」

木島は周囲を睨みつけた。

「後には引けぬな」

「うむ」

福原越後守、益田右衛門という二人の家老が頷いた。

久坂玄瑞の落胆に文は憐れを感じる。

身分の違いが流れを制している。成り上がり者は結果を求められる。前関白鷹司家を通じて奏上した赦免の願いが聞き届けられなかった今、玄瑞の立場は悪かった。

「守備兵を突破すれば・・・事は成る」

福原越後守は決断した。夜陰に乗じて各隊の長は散って行く。

文は唾を飲み込んだ。京都のそれぞれの御門は厳重な警備体制が整っていた・・・多勢に無勢である。攻めるには二倍の兵力と言われるのに・・・長州勢は十分の一の兵なのである。

「飛んで火にいる夏の虫やけ・・・逃げてください」

文は思わず叫ぶ・・・。

しかし・・・萩と京都はあまりにも遠い。

京都には公儀隠密が密集している。蟻の這い出る隙もないほどである。

潜入しようとした長州忍びはたちまち絶命する。

公儀隠密の斥候(うかみ)は天王山、山崎八幡、嵯峨天龍寺、伏見に分散した長州の陣をすべて監視している。

薩摩藩屋敷の蔵からは秘蔵の新型大砲が引き出されていた。

薩摩の鉄砲忍びは新型銃とともに集結を終えている。

長州の進発が決まった半刻後には会津藩は臨戦態勢を整えている。

長州軍は各所で待ち伏せされていた。

(兄上・・・これでいいのですか・・・この未来は正しいのですか)

文は亡き松陰に問わずにはいられない。

横浜から廻船に便乗して西に向かう伊藤俊介の焦りが伝わってくる。

クロフネの大艦隊が横浜に集結しているのである。

下関襲撃の準備が整いつつあった。

文の心には長州滅亡の気配がたちこめていた。

(長州は滅ぶのですか・・・)

文の心は祇園にいる辰路に飛ぶ。

辰路は・・・危機を玄瑞に知らせようとしていた。

しかし・・・綾小路、錦小路の二人のくのいちが行く手を阻んでいた。

「辰路様・・・なりませぬ」

「久坂様をお救いしたいんや・・・」

「堪え為され・・・」

「この腕にかけて・・・行く」

辰路の声に殺気が漲る。

その時・・・月に影が差した。

「朧・・・影」

「辰路・・・無駄じゃ・・・行けば・・・腹の子も助からぬ・・・」

「幾松様・・・」

「長州にはまだ使い道がある・・・戦は破れようが・・・敗れたものを救う道もある」

「救う」

「公儀隠密はこの機に京を焼くつもりじゃ・・・」

「そんな・・・」

「お頭は・・・混乱に乗じて・・・妾に長州を助けよと・・・命じられた」

「お頭が・・・」

「乱戦になれば・・・久坂様を落ちのびさせる隙は生じるやもしれぬ・・・」

「・・・」

「時を待つのじゃ・・・辰路・・・戦が始れば祇園を張っているみぶろどもも手薄になる」

辰路は唇をかみしめた。

マタギの衆を率いた来島又兵衛遊撃隊は進軍を開始した。

日本統一戦の幕開けである。

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2015年6月28日 (日)

2015年夏ドラマを待ちながら(キッド)

去年は7月1日の記事だったのだが・・・夏ドラマがフライング気味に始っているので早めに対応である。

昨日の東京は雨上がりの夕焼けで空が真っ赤に燃えていたしな。

現在、某衛星放送では「あまちゃん」が放送中である。

思わず・・・ユイちゃん系のドラマが見たくなる展開だ。

ユイちゃんが終わってしまいそうな・・・週なのである。

しかし、キッドは「ムジカ・ピッコリーノ」(NHK教育テレビ毎週金曜日 17:35 - 17:45)を見るのだった。

6月26日(金)放送の「たくさんのかけら」は「Fly me to the moon」を斎藤アリーナを演じるベロニカ(GMT47)が歌ったのである・・・逆だろう・・・これでいいのだ。

ベロニカも頑張っているんだなあ・・・。

連続テレビ小説 「あまちゃん」では第19週から登場である。

そろそろ・・・紅白歌合戦の後の話を見たいよねえ・・・。

アキちゃんを「映画」とか「スライム」とかでしか楽しめないのはものたりないのだ。

アキちゃんとユイちゃんを見たいんだよな。

夏ドラマのラインナップにあってほしかったよ・・・クドカン。

ま・・・他のみんなが・・・スケジュールくれないのかっ。

さて・・・春ドラマは精神的に問題ある人一色だったわけだが・・・夏はもう少し普通でいいと思うよ。

(月)は「恋仲」・・・種市先輩・・・じゃなかった福士蒼汰と本田翼のラブロマンス・・・なんだ・・・月9なのかよっ。変態路線終了かっ。市川由衣、山本美月、新川優愛もいるし・・・ぼんやりと見たいと思う。チェック・ポイントは家入レオの主題歌「君がくれた夏」・・・。「カエルの王女さま」の「Shine」、「確証〜警視庁捜査3課」の「Message」、「海の上の診療所」の「太陽の女神」・・・そして「Nのために」の「Silly」と楽曲的にも主題歌としてもはずさない・・・「Silly」に至っては・・・この歌がなければ名作として完成していないぐらいの比重になっていた。続いたら凄いよな・・・。

(火)は栗山千明、菜々緒、小芝風花の「HEAT」か西内まりや、夏菜、若村麻由美の「ホテルコンシェルジュ」なのだが・・・また共倒れか・・・。

(水)は「リスクの神様」が戸田恵梨香なので選択の余地がないのだった。

(木)は去年に続いて木曜時代劇でまったりする予定。南沢奈央の「まんまこと」である。これにも市川由衣が登場するのだ。だが・・・「探偵の探偵」は北川景子と川口春奈なのである。場合によっては週末がもつれるかな。脚本次第だなあ。

(金)は西荻弓絵の脚本で「民王」で人格入れ替わりファンタジー。なんといっても久しぶりの本仮屋ユイカが楽しみだ。死神くんの悪魔(菅田将暉)も出るよ。主役の人は主役でいいのか・・・という問題はある。湯けむりスナイパーじゃないんだから・・・。

(土)は「ど根性ガエル」である。二次元から「はらちゃん」が来たのは・・・ピョン吉が三次元化することの伏線だったんだな・・・。「銭ゲバ」は最終回の後でひろしに転生したんだな・・・。すでに妄想でいっぱいである。京子は吉沢京子でなくていいのか・・・。去年、還暦を迎えられたよ・・・。今なら・・・有村架純がベストだと思うが・・・前田敦子も悪くはない。少し陰りのある方向になっちゃうのか・・・。「平清盛」なら加藤あいとか深田恭子の線もあるし、リアル同級生なら・・・宮﨑あおい、綾瀬はるか、前田亜季、蒼井優、松下奈緒とかも・・・。ほら・・・京子ちゃんのキャスティングだけでかなり悩ましいもの・・・七つも年下の京子ちゃんて・・・すでにファンタスティックだよな。

沢尻エリカだってありだったよな。長澤まさみも・・・。

もう、いいか。

(日)は「花燃ゆ」だが・・・唐沢寿明と麻生久美子の「ナポレオンの村」も捨てがたい・・・捨てるけどね。小野寺薫子(優希美青)の「デスノート」までは手が届かないな・・・っていうか谷間なしじゃないか・・・。まあ・・・(土)以外は臨機応変で・・・。

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2015年6月27日 (土)

まれびと来りてふらふらする(土屋太鳳)ヒロイン批判キターッ!(清水富美加)二股女許すまじ(中村ゆりか)

朝ドラマも夏を迎えるのだった。

ドラマ内時空は2003年9月になっていて1983年8月10日生まれの主人公も20歳になっている。

2003年は朝青龍が第68代横綱に昇進した年でスペースシャトル・コロンビア号がテキサス州上空で空中分解した年だ。イラク戦争が始り、「千と千尋の神隠し」が第75回アカデミー賞長編アニメ映画賞を受賞し、俳優・古尾谷雅人が自殺し、国際ヒトゲノム計画によるヒトゲノム解読の全作業が完了し、元衆議院議員の辻元清美が、秘書給与詐欺容疑で逮捕され、九月には安倍晋三が自民党幹事長に就任している。

あれから12年か・・・

「デート〜恋とはどんなものかしら〜」の藪下依子の少女期を演じた内田愛はこの年に生まれたんだな。

だから・・・ヒロインは今年32歳になっています。

ふりかえれば・・・何度目かの何もかも懐かしいお年頃である。

もう・・・きっと若くないって呟くんだな。

で・・・今週は思い出せば赤面のエピソードが展開していくのだった。

で、『まれ・第73回~』(NHK総合20150622AM8~)脚本・篠﨑絵里子、演出・川上剛を見た。語り・戸田恵子である。経済的に破綻して難民となり、東京から能登半島の外浦村(フィクション)に都落ちした津村一家はなんだかんだで土地に定着し、津村希(土屋太鳳)は朝ドラマにはまれな巨乳ヒロインに成長したのだった。地道にコツコツ生きようとした稀だったがそれでは話が膨らまないのでパティシエになる運命に目覚め・・・現在では横浜のフランス菓子店「マ・シェリ・シュ・シュ」で修行中なのである。

能登で知り合った幼馴染たちとはなんだかんだ交際が続いている。

朝ドラマ名物・仲良し三人組のみのり(門脇麦)は稀の弟・一徹(葉山奨之)と結婚し、稀の初恋の男・紺谷圭太(山崎賢人)の恋人だった一子(清水富美加)は大阪のブティック店員となり、心境の変化から圭太と破局する。

一方、「マ・シェリ・シュ・シュ」のオーナーパティシエ・池畑大悟(小日向文世)の息子で司法書士の大輔(柳楽優弥)から交際を申し込まれた稀は「おはよう」と言われてときめいていたのでその気になる。

大悟の再婚相手の連れ子で大輔とは血のつながらない妹である美南(中村ゆりか)は親友となった稀によって大好きだったお兄ちゃんを奪われてしまうのだった。

ところが・・・成人式で帰郷した稀は久しぶりに会った圭太に「おはよう」と言われ、こちらにもときめいてしまうのだった。

幼馴染の圭太とファーストキスの相手である大輔。

二人の男にときめいてしまった稀はうろたえるのだった。

このままでは・・・朝ドラマではなくて・・・昼メロのヒロインになってしまうからである。

「いいのよ・・・別の自分が目を覚まして・・・よろめく感じでも」

魔性の女・桶作文(田中裕子)は囁くのだった。

ふらふらする・・・ヒロインの元へ・・・なんだかんだ理由をつけて集まってくる登場人物たち。

一子がやってきて・・・「圭太とは別れた」と宣言すると・・・稀は「そんなの圭太がかわいそう」と言い出し・・・「じゃ・・・あんたがつきあえば・・・いいげ」と言われると「そりゃ・・・私は圭太が好きげろ」とうっかり口に出す稀。

それを立ち聞きしていた美南に「じゃ・・・お兄ちゃんのことは」と追及され・・・滅多打ちである。

この時の「ああ・・・もう」という「こんな気持ち・・・うまく処理できたことがない」感じがトレビアンでした・・・。

この一瞬のために三ヶ月か・・・。

その後・・・朝ドラマのヒロインとして・・・けじめをつけるために・・・大輔に交際終了宣言をする稀なのだが。

その時の衣装が・・・おっぱいを強調しまくるものすごい衣装だったために・・・。

大輔が「おい・・・その衣装で・・・絶縁宣言って・・・これは何かのプレイなのか・・・抱かせないけど私の裸は見せてあげる的なありえない感じのエロ劇画演出なのか・・・」と心の中で叫んだことは充分に妄想できるのだった。

ま・・・予告していたので谷間の途中経過報告をしておきます。

谷間だけにな。

意味深かっ。

週末にはケーキと漆の祭典を成功させた稀と圭太が二木高志(渡辺大知)の恋に悩む友達のための「ラブ・ソング」に背中を押されカップリング成立なのだった。

低学歴(高卒)の職人同志の恋、即できちゃった婚なら少子化対策もバッチリだな。

まあ、夢と夢とが激突するんだろうけどな。

次は・・・最終回の頃にお会いしましょう。

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2015年6月26日 (金)

恋愛あるある。(戸田恵梨香)ないない。(黒木メイサ)ですよね。(佐々木希)

業務連絡でございます。

ココログではシステム安定化のため、サーバー、データベースの移行を実施いたします。それに伴い、PCの閲覧以外の機能が利用できなくなります。大変申し訳ありませんが、ご了承のほど宜しくお願い致します。

実施日時:6/29(月) 9:00 - 15:30

読者の皆さんにおかれましてはメンテナンス中はコメント投稿ができませんのでご注意くださりませ。

まあ・・・谷間なので・・・よかったなあと考えます。

ただし・・・ココログは結構、時間にルーズなので予定は前後する場合がございます。

お含みおきください。

で、『恋愛あるある。』(フジテレビ20150624PM10~)脚本・鈴木おさむ、演出・石井浩二(他)を見た。「ココリコミラクルタイプ」風のオムニバス・ドラマである。まあ・・・番組ナビゲーターがリリー・フランキーなのがご愛嬌なんだな。谷間は・・・日本テレビのストレートなバカドラマとフジテレビのおしゃれ風なバカドラマの激突なのか・・・。ショート・ストーリーという意味では三本立てのドラマのどれもが似たような流れ、似たようなオチで・・・切れ味鋭い感じは全くない。まあ・・・ハッピーエンドをのほほんと楽しみたい人向きなんだろう。

『社内恋愛あるある』(演出・髙野舞)・・・道山清美(黒木メイサ)は学生時代のサークル内恋愛で面倒くさい三角関係を体験し、フィールド内での恋愛を自ら禁じている面倒くさい女である。

しかし・・・同僚の玉木謙一(淵上泰史)と社内恋愛を始めてしまう。

エレベーターの中でキスをしてウキウキの清美だが・・・謙一が他の女性社員と会話しているのを見るだけでモヤモヤしたりする。

面倒くさい女だからな。

やがて・・・仕事の上で謙一より評価される清美。

謙一にプロポーズされるが・・・そこに・・・男の嫉妬心を見てしまう。

仕事に恋愛がからむことほど面倒くさいことはないよね。

でも・・・そういうのが生きがいの人もいるからなあ・・・。

映画監督とか・・・映画監督とか・・・映画監督とか。

『シングルマザー恋愛あるある』(演出・洞功二)・・・あるあるネタというのは・・・共感を求めて安心したい心理を根底にするというが・・・シングルマザーなんて・・・本当にそれぞれなんじゃないのか・・・。夫との離別の仕方も・・・死別から夫が飲む打つ買うの果てに人を殺して刑務所に入っている場合まで様々だろうしな。もちろん・・・片親なので・・・子供は経済的にも時間的にも・・・両親健在の場合よりも不自由な感じもするだろうが・・・両親そろってたって恵まれていない場合はいくらでもあるしな。

とにかく・・・経済的な理由で離婚したシングルマザーは再婚相手に経済的な豊かさを求める・・・あるある・・・ということらしい。

キレやすい性格で失職して歯科助手になったシングルマザー・赤井仁江(佐々木希)・・・。

その相手が「奥歯に白い歯を入れることができる」・・・大手建設会社の御曹司・・・黒田智治(千葉雄大)である。

いつもの思い詰めやすい美少年的な男・・・「書店ガール」の時とキャラクターが一緒過ぎる。

誰か・・・千葉雄大に別のキャラクターを見出してくれ。

仁江は子供のことを考えて・・・相手にいろいろなものを求めてしまう。

そのことで・・・肝心の恋愛がおろそかになるのだった。

そんな・・・仁江を優しく包み込む御曹司なのである。

まあ・・・佐々木希なら再婚は難しくないし、相手にも不自由しないと言う話である。

ちがうだろうっ。

『同棲恋愛あるある』(演出・石井浩二)・・・・・・大学時代の先輩のホテルマン・青柳芯太(ムロツヨシ)と同棲することになったクレーム処理・オペレーターの小澤真理(戸田恵梨香)の長めのコントである。・・・コントって言っちゃったよ。だらしない男と神経質な女の組み合わせによる不調和というもっともありふれた展開だが・・・同棲だと解消、結婚だと離婚に至る流れだ。海で排尿、プールで排尿、バスルームで排尿・・・あなたはどこまで許容範囲ですか・・・という話だ。

発達障害だった青柳は・・・他人が自分を責めるのは・・・品質向上のための期待感を伴っているということに気がつき・・・人間として成長するのだった。

そして・・・真理は「我慢」ではなく「努力」という言葉で自分を納得させるのだった。

まあ・・・人と一緒に暮らせる人とそうでない人がいる・・・という考え方もあります。

処世術的なドラマ・・・毒にもクスリにもならないが・・・スカッとしたいお茶の間は・・・潜在しています。

後は・・・もう・・・好みの問題だしねえ。

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2015年6月25日 (木)

永遠のぼくら sea side blue(有村架純)昨日をもう一度(成海璃子)不倫の真実(清野菜名)

快調にとばすバカドラマの連打。

今回は青春バカドラマである。

まあ・・・基本的に青春はバカだからな。

バカッターの皆さんが「若春子」と「大吉」の「再会」とか、「朝市キター」とか「どうでもいいけど武もキター」「鴨居英一郎キター」とか「まれの圭太キター」とか「平滋子」と「平重盛」は「叔母さんと甥だ~(血縁はない)」とかで萌えている頃・・・。

「ピカレスク」の桐谷怜子(清野菜名)キター!、伝説のキャバ嬢「六本木のマザーテレサ」こと大山信子(高橋ひとみ)キター!とニヤニヤした人は変態仲間として認証します。

で、『永遠のぼくら sea side blue』(日本テレビ20150624PM9~)脚本・渡辺千穂、演出・西村了を見た。脚本家は変態なので・・・相変わらずお茶の間の評判は芳しくないが・・・今回は20世紀の名曲二曲をテーマとした爽やかな青春歌謡ドラマである。過去に呪われた現在をどのように未来につなげていくか。「本能」のようなものが・・・鍵ではないかという主張はバカにもわかるのではないかと思う。

死ぬな・・・生きろという話である。

さとり世代とゆとり世代の区別は難しいが、ニュアンスとしては・・・さとり世代の方が知性的なバカに育っている感じだろうか。

「ジャイアンの声の人・・・死んじゃった」(ゆとり世代)

「木村昴さんが成人してたてかべ和也さんとお酒が飲めてよかった」(さとり世代)

そのたとえはどうかな・・・。

さとり世代の自覚がある松岡あおい(有村架純)は偏差値高めの文系大学三年生。

父親(矢島健一)のコネで大手不動産への就職も決まっていて将来の不安はないが・・・それでいのかという・・・漠然とした疑問を胸に抱えている。

幼馴染の永田拓(山崎賢人)は成績優秀なあおいを追いかけて生きているゆとり世代の代表である。

あおいの幸せを願っているが・・・幸せにできるのは自分ではないと諦めの境地に達している。

あおいは「写真」の腕前もなかなかで・・・好きな「海」の写真を撮って・・・水族館の「フォトコンテスト」に応募すると・・・グランプリを獲得してしまう。

優秀なあおいの側にいることは・・・拓の喜びである。

拓はあおいの助手として生きて行きたい男なのだ・・・どんな目標なんだよ。

「フォトコンテスト」の作品の前で記念撮影をしているあおいに・・・声をかける日本海洋大学海洋生物研究ゼミの大学生・芹沢亮(浅香航大)と飯野奏介(矢本悠馬)・・・。

水族館と連携して・・・「海洋生物のワークブック」を制作しているのだという。

本の表紙を飾る写真を・・・あおいに撮影してもらえないかと持ちかける芹沢だった。

引き受けたあおいを他のメンバーに紹介する芹沢。

大学のOBで水族館の職員(小沢一敬)と不倫中の丹羽麗子(清野菜名)や巨乳美女の佐伯夢花(成海璃子)・・・そして、グループのリーダーで大学院生の山内航汰(窪田正孝)・・・。

研究に協力している漁船の船長・鰤沢勝男(柳沢慎吾)の船からの積み下ろしを手伝う間に若者たちはすっかり仲良しになる。

しかし・・・あおいの胸はときめいていた。

航汰はあおいが高校生の時に「海」への興味をもたせた大学生だったのである。

子供相手の「生物教室」で・・・教えていた航汰の言葉。

「動物は・・・どうすれば生きていけるか・・・本能で知っている・・・人間だって・・・そうなんだよ」

あおいは・・・その一言で「海」と「海に生きる生物」と「その人」が好きになってしまったのである。

しかし・・・それは・・・忘れかけた昨日のことだった。

ラジオにリクエストしたことがあるかしら

私の好きな曲を推したい気持ち

歌が流れ出したら思わず口ずさむ

一人でニヤニヤして

つい昨日のことかと思っていると

もうずっと昔

でも私は忘れない

シャララって

オウオウって

お気に入りの曲は覚えているものよ

あおいはたちまち恋におちるのだった。

航汰もあおいの恋する瞳に気がついて・・・心を騒がせる。

航汰は情緒不安定な佐伯夢花に振り回される日々に疲れていたのだった。

佐伯夢花は「恋多き女」で「男にだらしのない」母親(高橋ひとみ)に振り回され続けていた。

そのために・・・「恋人の気持ち」を疑い続ける疑心暗鬼に囚われていたのである。

航汰の気持ちを確かめるために・・・喧嘩をして・・・別れを切りだす。

航汰が追いかけてくれるのを待っているのである。

「そんな・・・試すようなことばかりして・・・いつか後悔するぞ」

密かに夢花を想っている芹沢は忠告する。

「私たちは・・・もう別れたのよ」と嘯く夢花だった。

嵐の夜、調査先の島で二人きりの夜を過ごすあおいと航汰。

二人は一つの毛布にくるまって・・・お互いの秘密を打ち明ける。

「ずっと前から好きでした・・・私が海を好きなのは・・・航汰さんがいたからです」

「昔・・・大好きだった友達が海で死んで・・・僕は海がこわくなった・・・君に出会って・・・その傷が癒えた気がする・・・いつも輝いている・・・君が好きだから」

相思相愛の二人なのだった。

影を求めるあおいと光を求める航汰なのである。

取り残された影である夢花は乱れる。

「航汰は私のものよ」

「君とは別れたじゃないか」

「・・・」

「僕はあおいさんを愛しているんだ」

別れのゲームが現実のものとなって・・・夢花は我を失うのだった。

睡眠薬を飲んで入水自殺を図る夢花。

しかし・・・ずっと夢花を見ていた芹沢は人命救助をするのだった。

「俺たちの好きな海を汚すなよ・・・」

夢花の脱落により・・・チームは瓦解する。

そして・・・航汰もあおいとの連絡を断つのだった。

いつのまにか・・・幕を閉じた青春。

苦い思いをかみしめるあおい。

就職活動で訪れた街で・・・あおいは・・・航汰と再会した時の写真を発見して驚く。

写真家の近藤瞬二(東出昌大)の個展だった。

「あれ・・・君は・・・」

「これ・・・私です」

「勝手に撮ってすまなかった・・・しかし・・・素晴らしい一枚だろう」

あおいは船着き場で青春を謳歌する自分たちを見た。

「でも・・・今は・・・もう壊れてしまった」

「そうかな・・・大切なことを忘れない・・・そういう気持ちは誰にでもある」

「本能みたいな・・・」

「そう・・・そして・・・そういう気持ちがあれば・・・大切なものはなくなったりしないんだ」

あおいは・・・夢花を訪ねるのだった。

「私・・・皆さんが好きでした」

「私は・・・あなたが・・・嫌いよ」

「・・・」

「でも・・・それはあなたのせいじゃないの・・・私の醜く歪んだ心が・・・そうさせる」

「私はワークブックを・・・完成させないで終わるのが嫌なんです」

「私だって・・・嫌よ」

哀しいことがあるから

泣きたい気持ちになる

人間がいっぱいで

自分なんてとるにたらない

でも見える人には見える

色の違いがわかる

知っているかい

君の本当の色は

まぶしいくらいに輝いている

びっくりだろう

あおいの輝きは・・・夢花の心を照らすのだった。

「やりたかったことをやらないなんて・・・バカみたいだものね」

夢花は・・・求心力を持っていた。

夢花がいれば航汰抜きでも・・・ワークブックは完成するのだった。

拓は・・・あおいに告げる。

「隠していたけど・・・航汰さん・・・親が倒れて・・・故郷に帰るんだって・・・」

あおいは空港に走るのだった。

「なんで・・・黙って行こうとしたの・・・」

「だって・・・遠距離恋愛なんて・・・淋しいじゃないか」

「淋しいのくらい・・・我慢しなさい」

二人は虹色に輝くキスをするのです。

まあ・・・青春はこのくらい甘酸っぱいよね。

そうであってほしいよね。

まあ・・・こんなことができるのは選ばれた人だけかもしれないけどね。

とにかく・・・昨日はもう来ないよ。

キッドの経験上・・・それは確かなことだと思う。

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2015年6月24日 (水)

かもしれない女優たち(真木よう子)売れるか辞めるか(水川あさみ)オール・マクラではありません(竹内結子)

もうひとつの別の世界の話である。

2015年に女優の竹内結子、真木よう子がいない世界である。

そして・・・女優の水川あさみは「スター・ウォーズ/フォースの覚醒」に主演しているのだ。

まあ・・・「スター・ウォーズ」の七作目はこれから公開されるので・・・水川あさみが主演していないとは言い切れないのだが・・・。

どちらにしろ・・・水川あさみはこの世界の水川あさみではなく・・・恐ろしいことに映画「金田一少年の事件簿・上海魚人伝説」(1997年)で楊麗俐を演じていないのだ。ドラマ「のだめカンタービレ」(2006年)の三木清良も演じていないのである。

恐ろしいことだな。

まあ・・・いなければいないで・・・小倉優子、中村愛美、浅見れいな、ソニン、中島美嘉とかがその穴を埋めたかもしれないな。

どういう人選だよっ。

で、『竹内結子真木よう子水川あさみかもしれない女優たち』(フジテレビ20150623PM10~)脚本・バカリズム、演出・関和亮を見た。もうひとつの別の世界は歴史改変ファンタジーの産物である。歴史ではもしも・・・ヒトラーが早死にしていれば歴史が変わっていたかもしれないというのは禁句である。とにかくヒトラーは実在していたわけである。だが・・・妄想の世界では・・・そういうもしもの世界は常套手段なのであった。だって面白いんだもん。

Kamoj001女優・真木よう子は1982年に千葉県で生まれた。2005年の映画「パッチギ!」のチョン・ガンジャ役で注目を集め、ドラマ「SP 警視庁警備部警護課第四係」の笹本絵里、大河ドラマ「龍馬伝」のヒロイン・お龍などを演じたスターである。

しかし・・・こちらの世界の真木よう子は「パッチギ!」のオーディションで落選・・・売れない女優として2010年を迎えてしまう。本来は「SP THE MOTION PICTURE‎ 野望篇」が公開された年である。しかし・・・こちらの世界の真木よう子はラーメン屋でアルバイトしながら・・・小劇場の無名劇団の舞台に立ち、映画やドラマでその他大勢の脇役を演じているしがない女優なのだった。世界は歪み始めたのである。バイト仲間の女の子・三浦紗英(生越千晴)はそんなよう子の舞台を見て「素敵でした」と感激してくれる。しかし、一般人の紗英は「竹内結子さんに会ったらサインもらってください」とおねだりするのであった。

鬱屈する・・・よう子である。

やがて・・・よう子はアルバイトをバーテンダーにジョブ・チェンジ。そこで知り合った雑誌の編集者はよう子が日記として描いているコミック「日刊真木よう子」に注目するのであった。

「子供の頃の夢は女優か・・・漫画家でした」と語るよう子。

ある日・・・コンビニで見た週刊誌の表紙に紗英の顔を発見し・・・驚く。

原宿でスカウトされた紗英は人気モデルになっていた。

紗英が連続ドラマのヒロインに決定したと知り・・・よう子の気持ちはドス黒く染まるのだった。

女優・水川あさみは1983年に大阪で生まれる。1997年、映画「金田一少年の事件簿・上海魚人伝説」で楊麗俐役を掴むと、「仄暗い水の底から」「渋谷怪談」「深紅」などに出演。ドラマ「西遊記」のヒロイン・凛凛を演じて人気女優となり、「のだめカンタービレ」の三木清良で実力を発揮する。しかし、世界の歪みは進行し・・・「金田一少年の事件簿・上海魚人伝説」のオーディションに落選した水川あさみは・・・映画やドラマでその他大勢の脇役を演じているしがない女優になってしまったのだ。

バイト先のお客さんに「竹内結子さんに会ったらよろしく言ってくれ」と言われて困惑するのだった。

水川あさみと同期の女優・白石奈緒(奥村佳恵)は舞台「ガラスの仮面」で姫川亜弓を演じて注目され・・・いつの間にかスター女優になっていた。

奈緒は昔と変わらぬ友情をあさみに示そうとするが・・・それが苦痛でしかないあさみ。

「同情するなら役をくれ」と思うのだった。

ある日・・・病院の受付Aと病院の受付Bという端役で隣り合わせる真木よう子と水川あさみ・・・たちまち意気投合するのであった。

「なんで売れる子は売れるのかしらね」

「みんなマクラよ。マクラでマクラでオールマクラなのよ」

「よく言った」

スターとなった白石奈緒や三浦紗英を妬みまくるドス黒い二人である。

そんな・・・あさみの唯一の救いは恋人である。

最悪・・・女優を辞めて結婚してもいいか・・・と思い始めるあさみ。

女優・竹内結子は1980年に埼玉県で生まれた。1996年に原宿でスカウトされた結子は堂本光一の相手役でデビューすると、映画「リング」「黄泉がえり」などヒット作に恵まれ、ドラマ「ランチの女王」「プライド」などでトップ女優となる。2010年にはドラマ「ストロベリーナイト」の姫川玲子で実力を発揮するのだった。しかし・・・世界の歪みは竹内結子にも波及するのだった。原宿でスカウトされにもかかわらず・・・スターダストプロモーションという事務所名がなんとなく恐ろしくて連絡しなかったのである。騙されてひどい目に会いそうな感じもするものな。

こうして・・・普通の女子高校生、普通の女子大生となった結子は出版社に入社・・・地味な編集者になってしまったのだ。

モデルで女優の三浦紗英にインタビュー取材をする結子。

「原宿でスカウトされて・・・」と語る紗英。

(私だって・・・)とふと思う結子だった。

「演技には興味があったんですか?」

「真木よう子さんという尊敬する女優さんがいて・・・」

(誰だよ・・・それ・・・)

取材から帰った結子は上司から単行本の出版企画の提出を命じられる。

提示されたのは・・・コミック「日刊真木よう子」である。

売れない女優の書いたマンガなんか売れるかよ・・・と思った結子。

しかし・・・「真木よう子」の名を口にした三浦紗英の人気にあやかることを思いつく。

帯の推薦文に・・・「三浦紗英」の名前があれば・・・売れるかもしれない。

こうして・・・「日刊真木よう子」は出版され・・・好調なセールスを示す。

編集者・竹内結子、漫画家・真木よう子の誕生である。

出版を祝って祝杯をあげる結子とよう子。

そこへ・・・あさみがやってくる。

「私も女優を辞めて・・・結婚しようと思うの」

しかし・・・あさみの恋人の画像を見て蒼ざめる結子。

あさみの恋人は結子の交際相手だった。

修羅場である。

そこへ・・・結子の上司が「映画化決定」の話を持って現れる。

勝者となった・・・感じのよう子に・・・敗者として意気投合する・・・結子とあさみ。

しかし・・・結子にも「社長賞」が贈られるという話になる。

あさみは・・・唇をかみしめる。

結子もよう子もいたたまれぬ思いに苛まれるのだった。

だが・・・あさみにかかった一本の電話が・・・世界を揺り戻すのだった。

すこし・・・反対側まで・・・。

「私・・・スター・ウォーズのオーディションに・・・合格しちゃった・・・」

「えええええええええええ」

ほんの少しの勇気と根気があれば・・・。

人生は美しいフィクションとなるのかもしれない。

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2015年6月23日 (火)

ワイルド・ヒーローズ!暴走族VS国家権力!風を愛する友!(桜田ひより)

土曜よりもさらにバカさを増した日曜である。

しかし、わかりやすい娯楽に徹してバカドラマを提供することはテレビの使命とも言える。

なんてったってお茶の間にいるのは基本的にバカな人々なのである。

素晴らしいインターネットの世界に少しバカを奪われたと言っても・・・まだまだ、バカを相手のビジネスは成立するのだった。

人はバカとして生まれ・・・バカとして生き・・・かなりバカになって死んでいく・・・そういう生き物だからである。

日曜の夜にそっと花開くバカの花。バカバカしくて面白いぞ。

それでいいのだ~。

で、『ワイルド・ヒーローズ・第1回~最終回(全10話)』(日本テレビ201504192230~)脚本・蛭田直美、演出・佐藤東弥(他)を見た。脚本家は日本映画製作者連盟の「第39回城戸賞」(2013年)で準入賞した人で・・・奇想天外な定番話を堅実にまとめている。この手の話に需要があれば・・・なかなかに期待がもてそうだ。奇談に・・・もう少し信憑性を加える工夫が欲しいが・・・そんなことを言ってもな・・・。

日本風な国家の・・・地方都市・・・。

医療機器メーカーに勤務する営業マンの瀬川希一(TAKAHIRO)は転勤によって十年ぶりに故郷に戻ってくる。

希一は高校時代、ヤンキーグループ「風愛友(フー・アー・ユー)」の一員で喧嘩上等の不良であり・・・仲間たちからキー坊と呼ばれていた。

しかし、総長の田川(塚本高史)を頂点とするヤンキー・グループは暴力団からの麻薬汚染を許し、傘下の「風愛友」は希一を中心にこれに抗する。

ついに・・・100対6の壮絶な激突が起きる・・・しかし・・・その日が大学受験と重なった希一は抗争の現場に現れなかったのだ。

再婚する母親(朝加真由美)のために・・・ヤンキーから足を洗うことを決意した希一である。

しかし・・・仲間を裏切った希一と裏切られた仲間たちにはわだかまりが残る。

そして・・・「ヘタレのキー坊」は伝説となっていたのだった。

そんな・・・希一の前にヤクザの若頭となった田川に追われる謎の少女(桜田ひより)が現れる。

少女に救いを求められた希一はヤクザの手から少女を守る。

だが・・・少女を逃がすために・・・希一は田川に囚われてしまう。

希一は少女をかっての仲間の一人、チョコこと佐伯春太郎(岩田剛典)に託す。

しかし・・・希一の居場所を田川に密告したのはチョコだった。

希一の帰還を知って集まったかっての仲間たち・・・ミッキー(青柳翔)、ポンジャラ(野替愁平)、ピーちゃん(八木将康)、テンテン(黒木啓司)の心情は複雑だった。

しかし・・・事情を知っているミッキーは語りだす。

「仲間より・・・親をとるなんて・・・だっせえけどさ・・・ほら・・・ウチのおふくろ・・・最近、認知症になっちゃっただろう・・・今なら・・・わかるんだよ・・・親孝行しなきゃやってらんねえ・・・あいつの気持ち。あいつはよ・・・俺たちより先に背負っちゃったんだよ・・・家族って重荷・・・つるんで好き勝手やってきた俺たちより・・・あいつの方が・・・きっと痛かったんじゃねえか・・・心がよ」

「なんで・・・そのこと黙ってたんだ」とチョコ。

「俺だって・・・ずっとムカついてたんだよ」

そこへ・・・ミッキーを慕う高校生のメロス(佐藤大樹)が少女を連れて現れる。

その頃、ヤクザの事務所では・・・希一が拷問を受けていた。

「ヘタレのキー坊のくせに頑張るじゃねえか」

「俺は負けないんだよ・・・負けたって思わないから」

「ああ・・・お前はそういう奴だったよなあ」

「・・・」

「あの時も・・・お前がいればあいつら勝てたのか」

「だから・・・負けてないんだって・・・俺もあいつらも」

「アホか・・・」

だが・・・ヤクザの事務所に殴りこみをかける「風愛友」のメンバーたち。

「本当にアホばかりだな」

ダンスのような乱闘で「風愛友」は希一を奪還するのだった。

チョコの経営するカラオケボックス『ウララ』に帰還した希一たちは旧交を温める。

そこへ・・・顔見知りの刑事・赤城(内藤剛志)がやってくる。

少女に捜索願いが出ていて保護しに来たと告げる赤城。

「この子・・・名前はなんて言うんです」

「五嶋日花里ちゃんだ・・・」

しかし・・・田川に指令を出していたのは赤城だった。

ヒカリの背後には・・・底知れぬ闇が広がっている・・・。

・・・という第一回である。

ヤクザも警察も・・・さらには怪しい宗教団体も動かす謎の組織・・・。

ヒカリは彼らの「儀式」のために必要な存在だったのだ。

その「儀式」とは・・・実の父親を娘に殺させ・・・闇の象徴である「レインマン」を継承させるものだった。

ヒカリの母親である陽子(横山めぐみ)が現在のレインマンなのである。

表の国家権力を裏から操る男たちは「儀式」を通じて・・・あらゆる非合法を超越する存在として結束を固めるのである。

ヒカリも十一歳の誕生日に・・・父親の幸雄(大浦龍宇一)を殺す宿命を背負わされていたのだった。

闇の組織の支配下にある教団「かがやきの方舟」から逃れた美史(水沢エレナ)も加わり、廃墟に立て籠もった希一たちは・・・儀式の日を妨害するために徹底抗戦を展開する。

そして、最終回・・・。

廃墟に突入する機動隊を撃退した・・・「風愛友」だったが・・・闇の組織はついに・・・百人の特殊部隊を送り込む。

銃火器で武装した特殊部隊・・・。

しかし・・・「彼らに私は殺せない」とヒカリが申し出て・・・ヒカリを盾にした武装解除に成功する希一。

輪になってヒカリを守護する男たち。

そして・・・ヒカリの誕生日は終了する。

ついに・・・歴史の闇を支配した「レインマン」の継承は阻止されたのだった。

闇の男たちは呟く。

「ヒカリだけでは世界は焼き尽くされてしまう」

「この世には雨が必要なのだ」

「その象徴たるレインマンが・・・」

しかし・・・そんなことはないのだった。

希一たちは・・・恐ろしい妄想の世界から解放され・・・日常に帰還していく。

しかし・・・日常とは・・・ひょっとしたら・・・ただの集団幻想にすぎないのかもしれない。

レインマンを失った世界は・・・滅びのカウントダウンを始めているのかもしれません。

とにかく・・・幻想に満ちた春ドラマはこんなところでも花開いていたという話である。

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2015年6月22日 (月)

むすびてもまたむすびてもくろかみのみだれそめにしよをいかにせむ(小島藤子)

いよいよ・・・「池田屋事件」である。

ここから、幕末は怒涛の流れとなる。

そうなると・・・物凄く事件が連続して発生し、物語作者は取捨選択を迫られる。

吉田松陰の妹・杉文(井上真央)という歴史的にはほぼ無名の実在の主人公をめぐる物語である。

その存在を語ろうとしてお茶の間のいろいろな機微に抵触しまくるわけだが・・・まあ、基本、フィクションなのでそれはいいわけである。

問題は脚本家の構成力の問題である。

第22回から第25回までは大島里美が担当しており・・・ある種の連続性がある。

構成の基本中の基本はフリオチという二分割で・・・ここは「フラグ」と「フラグの回収」という名称で考える。

前回は「吉田稔麿と妹の吉田ふさの今生の別れ」が描かれてフラグが立ち、今回は「池田屋事件で吉田稔麿が殺害される」というフラグの回収が行われる。

問題はこの回収に・・・吉田ふさ(小島藤子)のリアクションが含まれないのである。言わばワサビ寿司を食べて・・・「辛い」と言わないようなものなのだ。

もちろん・・・主人公と主人公の夫のリアクションも大切だが・・・基本的に他人事である。

ワン・クッション置いているのでピンとこないのだ。

なぜ・・・そうなるかというと・・・「禁門の変」が迫っているわけである。

そのために「久坂玄瑞」や「入江九一」のフラグをたてる必要がある。

ついでに・・・「高杉晋作の妻・出産」や「四カ国連合艦隊の下関占拠」や「伊藤・井上の帰還」や「高杉出馬」のフラグもたてなければならない。

フラグをたてまくり、回収できなくなる・・・これを構成ミスと言います。

フラグをたててもたてても歴史的事件が続き満足に回収できない場合どうしたらいいでしょう・・・。

足軽(非藩士)の子・吉田栄太郎は藩士に立身出世して吉田稔麿となり・・・わずか一年。

辞世の句に苦渋が滲む・・・。

で、『燃ゆ・第25回』(NHK総合20150621PM8~)脚本・大島里美、演出・橋爪紳一朗を見た。例によってシナリオに沿ったレビューはikasama4様を推奨します。今回は池田屋事件に遭遇しつつ、路上で死んだために何故死んだのか明らかではない吉田稔麿の末期の姿描き下ろしイラスト大公開でお得でございます。海街diary四姉妹描き下ろしイラストもキター!・・・大河ドラマにお茶の間向けの勧善懲悪的要素を持ち込むのは・・・ある意味で創作力の敗北と言ってもいいのですな。「戦争」に「善悪」はない・・・と言いつつ・・・第二次世界大戦は大日本帝国が一方的に悪かったという主張と似ています。当事者にとってはたまったものではないですが・・・勝者には都合がいいわけです。勧善懲悪によって・・・主人公に感情移入をして・・・自分の正義や自分の勝利を疑似体験する・・・。そういう愚民迎合を続けていると「芸術」は確実に死んでいきますからねえ。せめて・・・過去に何があって今があるのか・・・そういうことを感じ取れるドラマにしてもらいたいと願う今日この頃ですが・・・ニュータイプの力に感服してエルメスの後衛を申し出るリック・ドムのパイロットのような吉田稔麿の死でもいいのに・・・意味不明すぎるぞっ。

Hanam025元治元年(1864年)三月、一橋慶喜は禁裏御守衛総督に就任する。横浜鎖港をめぐって賛成する慶喜と鎖港反対の島津久光が対立。朝議参預体制は瓦解する。高杉晋作が野山獄に投獄される。米国南北戦争で北軍のユリシーズ・グラント中将は南軍に対しバージニシア州における荒野の戦いを開始。四月、島津久光は西郷隆盛を京都に残し京都から撤退。土佐浪士・岡田以蔵捕縛。五月、幟仁親王・熾仁親王が国事御用掛に任命される。慶喜は摂津国沿岸を視察。久光は薩摩に帰陣。山内容堂が土佐勤王党の弾圧を開始。坂本龍馬、お龍と出会う。勝海舟は神戸海軍操練所を発足する。六月、新選組の山崎烝が梅田雲浜の弟子で商人の古高俊太郎を捕縛。京都守護職・松平容保の襲撃計画の容疑で池田屋に集結中の尊王攘夷・勤王浪士を急襲。斬り捨てによる勤王浪士の壊滅作戦であり、「洛中放火」などの「容疑」は捏造と疑われる。会津・桑名藩との連携もあり・・・薩摩藩の退去によって生じた洛中の動揺を鎮静化させるための計画的な治安維持行動と考えられる。長州藩士・吉田稔麿や土佐藩士・望月亀弥太も殺害される。長州藩・京都留守居役の桂小五郎の死が守居助役の乃美織江によって誤報され、激昂した長州藩士は千名を越える兵力で京都への進発を開始する。

封鎖中の長州藩・京都屋敷は河原町にあり、長州藩の定宿として利用された池田屋は徒歩五分の距離にある。また桂小五郎が懇意にしていた対馬府中藩の京屋敷までも徒歩五分である。

京都で暗躍する吉田稔麿は河原町のこの三点をテリトリーにしていた。

対馬府中藩では尊皇攘夷派と佐幕派によるお家騒動が起きており、桂小五郎はその仲介者として宗氏屋敷(対馬藩邸)に出入りしていたのである。

柳生新陰流の剣士である吉田稔麿は隠し目付けとして桂と在京浪士との連絡役となっていた。

昼下がり、久坂玄瑞の愛人である芸妓・辰路の使う童女の鞍馬が遊郭「霊山楼」に登楼中の稔麿に文を持ってきた。

別室に待っていた辰路は・・・急報を伝える。

「みぶろ(新撰組)がおかしな動きをみせてはります」

「例の風説がらみか・・・」

「そうどすえ・・・志士のみなはんが・・・御所に火つけをなさるという噂は御存じでしょう」

「くだらん・・・御所に放火など・・・勤皇の志士がするはずがない」

「すべてはみぶろのたくらみ・・・そやけど・・・今日は枡屋のご主人をつかまえはって・・・なにやら・・・騒動を起こすという話どす・・・」

「そりゃ・・・物騒な話じゃ」

稔麿は夕暮れの河原町に戻る。

池田屋には数名の志士が集まっていた。

「なんじゃ・・・騒がしいの」

「四条の枡屋喜右衛門が新撰組に捕縛されたきに」と土佐の望月亀弥太が叫ぶ。

「取り戻さならんという話です」と長州の出身である広岡浪秀が告げる。

「桂さんは・・・」

「藩邸じゃないでしょうか」

稔麿は池田屋を出て、長州藩屋敷に向かう。

すでに洛中は夕闇に包まれている。

家中のものは桂が「宗対馬守屋敷にいる」と告げる。

稔麿は対馬藩邸に急ぐ。

夜半に漸く、桂と合流した稔麿である。

「闇の中に斥候(うかみ)の気配があります」

「そうですか・・・」

「池田屋には宮部鼎蔵殿や北添佶摩殿など同志が集まっているそうです」

「そりゃあ・・・剣呑じゃ・・・」

あわてて・・・対馬藩邸を辞した桂は・・・門で立ち止まった。

「こりゃ・・・いけん・・・」

桂は長州一の剣士である。

闇の中に立ちこめる殺気を読んでいた。

「河原町に結界が張られている」

「新撰組ですか・・・」

「いや・・・これは・・・公儀隠密が本気になっているんじゃ・・・」

「池田屋に・・・知らせますか」

「もう遅い・・・」

稔麿は銃声を聞いた時には桂に押されて地を這っている。

銃弾が対馬藩邸の壁を穿つ。

「会津の鉄砲忍びじゃ」

「とうりゃ」

稔麿は跳ね起きて柳生流風車の術を放った。

回転する稔麿の小太刀は樹上に潜んだ忍びの首を切断する。

「逃げるしかない・・・とにかく藩邸に逃げ込むんじゃ」

桂はそう言いながら藩邸とは別の方向に走り出す。

稔麿は藩邸に続く道を選ぶ。

どちらかが生き残るかもしれない・・・という選択だった。

桂は適当な商家の屋根を選んだ。

飛びあがると闇に潜む。

仮死の術で桂は屋根瓦と一体になった。

稔麿は池田屋を避けて路地を抜けた。

そこに土方歳三、斎藤一、原田左之助らの無数の新撰組隊士が立っていた。

「こりゃ・・・てごわいけー・・・生きては帰れんじゃろうーか」

「池田屋の不逞の輩はほとんど討ち取った・・・大人しく縛につきな」

歳三は無表情に言いながら・・・抜刀した。

「ふん・・・柳生新陰流殺人剣の奥義をとくとみよ」

「そんな・・・技など・・・通用せんぞ・・・そりゃ」

「太刀割りじゃ」

稔麿は歳三の刀剣を二つに折った。

しかし、その刹那、左右から必殺の槍が稔麿の胴体を貫いている。

「む」

「ふ・・・三人一組の必殺の陣じゃ・・・左右から刺されば動けまい」

「ごふっ」

「まったく・・・刀を折るなど・・・修業の成果だねえ」

「くそったれえが」

「そりゃ」

斉藤一が正面から居合を一閃する。

稔麿の首は宙を舞った・・・。

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2015年6月21日 (日)

おへそは二度見せる(多部未華子)最終回サービスですね(大倉忠義)

また、つまらないドラマをレビューしてしまった・・・。

十三代目石川五ェ門かっ!

まあ・・・レビューしたんだから・・・本当は面白かったんだよな。

この世につまらないものなどない・・・。

誰だよっ!

しょうもないドラマほどかわいい法則です・・・。

どんだけ上から目線なんだよっ!

①うな丼 ②親子丼 ③カツ丼

歴史的に古いものから並べよ。

・・・並んでるじゃないかっ。

どんだけに・・・どんだけ~。

こうして・・・春ドラマはほぼ終了しました・・・。

で、『ドS刑事・最終回(全11話)』(日本テレビ20150620PM9~)原作・七尾与史、脚本・川崎いづみ、演出・中島悟を見た。川崎青空警察署(フィクション)管内で刑期を終えた「無差別傷害事件」の犯人が連続的殺害される事件が発生する。自警団のKDF「川崎デイジーフラッグス」の犯行と判明するが逮捕されたKDFのリーダー・赤沢(小林且弥)は警察庁の榊礼子警視正(青山倫子)が身柄を引き取ってしまう。その背後には警察庁審議官・東野清正警視監(石黒賢)が暗躍していることを察知する黒井マヤ巡査部長(多部未華子)だった。

ここで・・・例の一覧を確認してみよう。

巡査 遠藤鶴(本刈屋ユイカ)「ゴンゾウ 伝説の刑事」→代官様(大倉忠義)はココ!

巡査部長 恩田すみれ(深津絵里)「踊る大捜査線」→黒井マヤはココ!

警部補 柴田純(中谷美紀)「ケイゾク」→有栖川係長(勝村政信)はココ!

警部 大澤絵里子(天海祐希)「BOSS」→白金不二子課長(吉田羊)はココ!

警視 銭形舞(堀北真希)「ケータイ刑事」

警視正 銭形愛(宮崎あおい)「ケータイ刑事」→榊礼子はココ!(理事官級)

警視長 沖田仁美(真矢みき)「踊る大捜査線」

警視監 銭形泪(黒川芽以)「ケータイ刑事」→東野清正審議官はココ!

警視総監 橘朝子(かたせ梨乃)「奥様は警視総監」

ちなみにマヤの父親は警察庁次長(警視監)である。

警察官としての最高階級は警視総監だが・・・行政府としての警察庁には警察庁長官(階級外)というトップがいる。

ナンバー2が警察庁次長でナンバー3は審議官を含め、複数存在する。

ちなみに警視総監は警視庁(首都警察)のトップ。警察庁次長は全国的な警察組織の実質的トップと考えることもできる。

ちなみに・・・本来、神奈川県にある川崎青空警察署を管轄するのは神奈川県警察本部である。

東京本社の重役が支社の一営業所の顧客を接待するような異常事態だよっ。

「この件は終わりです」と宣言する白金課長だったが・・・鬱屈を抑えきれずに警察庁に向かう。

もちろん、マヤも勝手に同行するのだった。

応対する榊警視正・・・。

「手短に・・・」

「榊警視正は・・・家族を無差別殺人犯に殺害されていますね・・・そして・・・無差別傷害事件の出所に関するものなど内部情報が流出している。この件は・・・あなたの上も関係している」とマヤ。

「・・・」

榊警視正とマヤはにらみ合う。

「なぜ・・・挑発したのです」と白金課長。

「藪をつつけば蛇がでますから」

「・・・」

浜田刑事(八乙女光)は蛇につつかれて階段から転落し、近藤徳二巡査部長(伊武雅刀)は謎の集団に暴行されて負傷する。

そして・・・KDFのリーダー・赤沢が証拠不十分で釈放されるのだった。

「単独行動を禁じます」と白金係長。

「我々は・・・狙われているんですか」と怯える有栖川係長。

中華料理「来来軒」の従業員・ケンちゃん(菅裕輔)は恩人の近藤刑事の入院に憤慨する。

「警察官に暴力ふるうなんて・・・相手は一体・・・誰なんですか」

「警察官だったりして」と中根刑事(中村靖日)・・・。

目を見かわすどS課長とどS刑事だった・・・。

チューリップ型回転遊具で回るマヤと代官様。

「ストップ」

「ひらめきましたか・・・」

「・・・」

マヤは嘘の「代官様の母親の急病」で代官様を帰宅させると・・・単独行動をとるのだった。

たちまち・・・餌に食いつく・・・闇の警察官たち・・・。

「マヤの失踪」・・・驚いた代官様は・・・一人回転遊具でひらめきにチャレンジ。

京浜医科大学医学部の法医学准教授ケンケン(ミッツ・マングローブ)の存在を思い出す。

ケンケンは・・・マヤの鞭内蔵特殊警棒に発信器を仕込んでいた。

GPSで廃工場を割り出したケンケン。

代官様は・・・単身、捜索に向かうが・・・もちろん・・・あっさり拉致されてしまう。

何故か・・・マヤのお尻の匂いを嗅ぐ体位で拘束される代官様。

ものすごく変態的なサービスである。

マヤは凌辱と屈辱を同時に体験するのだった。

そこへ現れる・・・東野審議官。

「黒幕がそんなに簡単に現れていいの」

「延長なしなので」

「なぜ・・・こんなことを・・・」

「前科者の粛清は・・・再犯確率の低下を実現し・・・私の評価が上がります」

「私の父親が許さないわよ」

「あなたの父上は目の上のタンコブです・・・いつか除去します」

「・・・」

「私のアリバイが成立する時間に・・・あなたは死ぬのです」

「僕は殺してもいいですが・・・黒井さんは助けてください」

「君は・・・彼女のオマケで死ぬのだ」

「えええええええええええええええ」

その頃、ケンケンは事態を刑事一課に伝えていた。

白金課長と刑事たちは全員出動するのだった。

しかし・・・現場到着後・・・煮え切らない部下たちだった。

ああ・・・このドラマを見ると・・・いつもアニメ「ディック・トレイシー」が見たくなるんだよな。

ブル巡査部長とボケチャッタブルズだ・・・。

マヤは体位を変えて・・・お尻のポケットから・・・件の棒を代官様に取り出させようとするが・・・棒は床の隙間から落下してしまう。

「この役立たず」

「・・・」

しかし・・・二度目のチャレンジで接着剤どSを取り出すことに成功する代官様。

「やった・・・」

「あなたは何もしてないわ・・・あなたは単なる足手纏いよ・・・」

「足は纏いになりません」

「ばっかじゃないの」

過去の失敗を回顧されて・・・涙ぐむ代官様。

「そんな・・・まるで・・・ボクが・・・無能みたいじゃないですか」

「無能なのよ」

ついに泣きだす代官様。

泣き声を聞きつけて見張りの男がやってくる。

その足元を「どぴゅ~っ」と瞬間接着するマヤだった。

マヤの金的キック一閃で悶絶する見張りの男。

代官様は拘束具の鍵を発見するのだった。

一方・・・ついに突入した白金組。

闇の警察官と川崎青空警察署は銃撃戦を展開。

全弾発射の後で白兵戦「ファイト」に突入する。

代官様が例の棒を拾い・・・マヤにパスすると・・・おへそがサービスされる。

脱出しようとした東野審議官と榊警視。

しかし、白金課長が威嚇射撃でその足を止める。

「この国の法律では・・・私を裁くことはできない・・・」

拳銃自殺を試みる闇の審議官。

しかし・・・大盤振舞のおへそサービス(二回目)で阻止するマヤ。

屋上に揃う・・・マヤ、白金、榊・・・奥二重の女祭りか・・・。

「逮捕します」

「逮捕します」

マヤと白金は獲物を分け合うのだった。

こうして・・・神奈川県川崎青空区(フィクション)の平和は守られたのである。

狂気の連打だった春ドラマ・・・人間は狂気でも生きていけるという話がオチなのだ。

さあ・・・夏は・・・完全に常軌を逸している「岡田惠和版・ど根性ガエル」どえす。

一番楽しみだ・・・。

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2015年6月20日 (土)

THE LAST COP/ラストコップ・・・家なき刑事(唐沢寿明)独身寮に入居してください(窪田正孝)

バカドラマは土曜日だけにしてほしいのに・・・時々、ここにもやってくるよな。

いいじゃないか・・・どうせ、谷間なんだから・・・。

これも一種の世代間交流ドラマで・・・「ようこそ、わが家へ」とコンセプトは一緒だ。

原型としては・・・浦島太郎その後で・・・だよな。

ほぼ素人が脚本書いているので・・・いろいろと無理はあるが・・・なにより・・・30年前のこだわりが・・・ひどいな。

現在、主役の実年齢が52歳なのである。

30年前だと・・・22歳で・・・そもそも・・・リーダーシップのある先輩刑事としては・・・若すぎるのだ。

そのために・・・当時2歳年下の娘が現在32歳で・・・佐々木希(27)がいろいろな意味で微妙なことに。

第一・・・娘がもの心つかないうちに再婚した妻・・・ある意味・・・ものすごく切り替え早いスピード再婚だ・・・。

せめて・・・25年前にすれば・・・少なくとも・・・27歳の刑事ならそれなりにリーダーシップを発揮できる年齢になっていたはずだ。

なぜ・・・30年かというと・・・カメオ出演の斉藤由貴がデビュー三十周年だからなのである。

大人の事情すぎるだろう・・・。

で、『金曜ロードSHOW!・THE LAST COP/ラストコップ・第一話』(日本テレビ20150619PM9~)脚本・佐藤友治、演出・猪股隆一を見た。演出はベテランなので・・・このものすごい話を強引にまとめあげるのだった。斉藤由貴が「卒業」で歌手デビューし、「スケバン刑事」で連続ドラマ初主演した1985年・・・。

兇悪なテロリスト・カグラを廃墟に追い詰めた若き京極刑事(唐沢寿明)。

しかし・・・カグラは「お前は何も分かっていない・・・」と謎の言葉を残し自爆。

爆発に巻き込まれた京極は意識不明の昏睡状態となる。

残された二十歳の妻・加奈子(和久井映見)は二歳の娘を抱え・・・途方に暮れるのだった。

十八歳で結婚か・・・京極の後輩刑事の鈴木(宮川一朗太)は加奈子に接近し、たちまち深い仲になる。そのために・・・娘は鈴木を実の父親と疑わない。

ちなみに・・・配偶者が意識不明のまま・・・離婚できるのか・・・という疑問がある方も多いだろう。

離婚原因の一つに・・・配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき・・・医学的判断を基礎として裁判官の判断があれば・・・民法第770条によって離婚請求が認められる場合がある。

つまり・・・加奈子はかなり面倒な手続きを経て・・・離婚しているのだ。

そこに・・・愛はあまりないよねえ。

そして・・・鈴木はただちに加奈子と結婚しているわけで・・・人情紙風船である。

鈴木結衣(佐々木希)は実の父の存在を知らずに・・・32歳になったのだ。

しかし・・・三十年目・・・病院のベッドで・・・京極刑事は目を覚ます。

「デビュー三十周年記念番組」の斉藤由貴の歌声が奇跡を起こしたのだった。

「あああ・・・斉藤由貴が・・・すげえ・・・老けてる・・・本当に今は2015年なのか」

浦島太郎となった京極は・・・妻・加奈子の現住所を訪ねる。

しかし・・・表札には「鈴木」の名が・・・。

「どういうことだ・・・」

「ごめんなさいね・・・私・・・再婚したの・・・だってお医者様は・・・もうあなたは目を覚まさないって言うし・・・」

「・・・」

「結衣はまだ二歳だったから・・・今の夫を本当の父親だと思っているの・・・だから・・・あなたは名乗りをあげたりしないでね」

「・・・」

「本当に・・・今さら目が覚めるなんて・・・困った人ね・・・」

「ひでぶ」

和久井映見史上、最も薄情な女房と言える役柄である。

署長の鯨井雅高(田山涼成)から・・・加奈子の再婚相手が後輩の鈴木誠(宮川一朗太)だと知り・・・逆上かる京極。

「だって加奈子さんは・・・先輩の看病でやつれ果てていたんです」

「看病って・・・どれくらい」

「ええと・・・一ヶ月くらいです」

「お前ら・・・結婚何周年だよ」

「来年で三十年になります・・・」

「ひでぶ」

三十年寝たきりだった京極は筋力が衰えていたため・・・普通、身動きできないぞ・・・女性の柏木サオリ刑事(黒川智花)にも軽くノックアウトされてしまう。

署長はそんな京極に現役復帰を命ずるのである。

おりしも・・・首都は謎のテロリスト「シーサー」の脅威に直面していた。

格闘家の五十嵐圭吾(鈴之助)とハッカーの安藤光輝(山崎育三郎)の二人組は・・・ロボット・クレーン車の自動操縦装置を乗っ取り、イベント会場でふなっしー(ふなっしー)をふっ飛ばす。

警戒中の京極は五十嵐に叩きのめされ・・・パートナーとなった望月亮太刑事(窪田正孝)は法令順守のために犯人に発砲できず・・・嘲笑される。

変わり果てた三十年後の世界に順応するために・・・望月刑事の住居に強引に居候する京極刑事・・・。

「オフロガワキマシタ」

「なんだ・・・女と暮らしているのか・・・」

「音声ガイダンスですよ」

「温泉外人ダンスさんなのかっ」

まあ・・・ジェネレーション・ギャップネタの変形でございます。

離婚した妻に口止めされたが・・・娘の職場に向かう京極・・・。

気付いてもらいたいのだが・・・娘はまったく気がつかない。

それどころか・・・実の父が他にいる事実を知らないのである。

その辛さに・・・望月刑事は少し同情するのだった。

「カグラ」と「シーサー」の間に共通点を見出した京極は「カグラ」の捜査資料を探すがそれは紛失していた。

三十年前の上司・遠藤勇二(佐野史郎)はその件について怪しい態度を見せる。

背筋が凍りつくほどのストレートな展開である。

やがて・・・シーサーは・・・「首都空港」で「ハッキング」による「航空機墜落」テロを開始する。

刑事の直感で犯行を読んだ京極は望月と現場にかけつける。

たまたま・・・ねらわれた旅客機には結衣が搭乗しているのだった。

「あらゆるサーバーが乗っ取られています」

「どういうことなんだ・・・」

「とにかく・・・首都機能が麻痺しているのです」

「一体・・・どうやったら・・・飛行機を遠隔操作できるんだ」

「自動操縦装置と手動操縦装置の切り替えをハッキングでロックされているんです」

「機内に切り替えのための物理的手段があるだろう」

「そういうことは脚本家に言ってください」

安藤光輝は旅客機の自動操縦装置にアクロバット飛行の後に急降下というプログラムを命じていた。

結衣は「キャー」と叫ぶしかないのだった。

格安航空機であるために客室搭乗員は・・・稀である。

しかし・・・直感で「シーサー」の二人組の所在を突き止めた京極はビルとビルの間を大ジャンプ、トレーニングの成果、スマホで防弾、手榴弾をキャッチなどのそれなりのアクションでシーサーを確保する。

「お父さん・・・ありがとう」

駆けつけた鈴木に抱きつく結衣・・・。

京極は唇をかみしめる。

「明日・・・精力をつけるために・・・卵たくさん飲んでいいですよ」

望月はそれなりになぐさめる。

「いや・・・明日からはプロテインを飲むつもりだ・・・」

それなりに三十年後に順応し始めた京極だった。

安田慎平刑事(松尾諭)は出番の少なさに憮然とする・・・。

しかも・・・続きは別メディアで・・・展開である。

まあ・・・続きはそれほど気にならないので構わないと考える。

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2015年6月19日 (金)

永き混沌からの帰還(木村拓哉)ウェルカムバック(上戸彩)

自分というものをあなたはどんな風に感じるだろうか。

鏡があれば正面から見ると・・・映っているのが自分なのだろう。

鏡を見慣れていれば・・・おなじみの顔がある。

今、このブログの記事を読んで・・・頭の中に言葉か響く。

響いているのは・・・どんな声なのだろう。

自分の声だとすれば・・・それも自分の一部なのだろう。

周囲を見回せば・・・モニター画面の周囲に世界が広がっている。

室内ならば窓が見えたりもするだろう。

路上ならば頭上には宇宙が広がっている。

壁の向こうの景色を知っていればあなたは自分のテリトリーにいるのかもしれない。

おそらく足元では地球が回転しているに違いない。

果てしなく広がる世界の中心にいるのはきっと自分なのだろう。

そっと声を出せるなら囁いてみてもらいたい。

あなた自身の名前を・・・。

もしも・・・自分の名前を記憶しているのなら・・・。

自分が今、何を考えているか。

考えることができますか。

で、『アイムホーム・最終回(全10話)』(テレビ朝日20150618PM9~)原作・石坂啓、脚本・林宏司、演出・七髙剛を見た。銀河系の星の数ほどもある神経細胞は各所で興奮したり落ちついたりしながら明滅を繰り返す。感覚器から流れ込む情報は膨大で見たものをすべて記録していたらたちまちハードディスクは一杯になってしまう。瞬間の記憶を消去しつつ、断片をピックアップして注文した冷やし中華を眺める。紅ショウガ、錦糸卵、細切りのキュウリ、メンマ、叉焼、バンバンジー、ハム、クラゲ、グリーンアスパラ、ねぎ、もやし、トマト、カリフラワー・・・具を乗せすぎじゃないかと・・・あなたは一瞬、戸惑う。辛子は・・・辛子はどこなんだ・・・皿の縁に乗っているのか・・・それとも調味料セットの中にあるのか。皿の縁がズームされる。寄りすぎて皿の白だけが眼前に迫る。おい・・・カメラを引けよ・・・引いてんのか・・・どこだよ・・・ここは・・・辺り一面が真っ白で・・・何も見えない。ホワイトアウトじゃないか。すべてが白い世界。差し伸べた自分の手も白い。ここはどこだ・・・私は・・・誰だ?

「あなたも・・・仮面に見えた」

メグミ(上戸彩)の言葉がヒサシ(木村拓哉)の混乱した心に響く。

仮面なのか・・・ボクの顔も仮面なのか。

姿見の鏡面に映る・・・ヒサシの顔はたちまち・・・仮面に見える。

「あなたと結婚してから・・・私には・・・ずっとあなたが何を考えているか・・・わからなかったの」

「・・・」

「こわかった・・・あなたの気持ちがわからないことが・・・だって・・・私はあなたの妻になったんですもの・・・」

「・・・」

「話しかけても・・・あなたはいつも私と話すことが時間のムダみたいにおっしゃって・・・」

ヒサシは荒野に立っていた。

メグミが食事の支度を終えている。

夕食だ。しかし・・・今は投資の重要な局面なのだ。使えない部下からの報告は滞り、折り返しの連絡待ちが三件もある。テーブルについて・・・食事を味わい・・・妻と会話している時間はない。なにしろ・・・無価値だ。

「あなた・・・お食事は」

「そんなヒマはない」

漸く、使えない部下の一人から着信がある。

「何やってんだ・・・お前の情報待ちだって言っただろう・・・どれだけ損失増やせば気が済むんだよ・・・」

荒野の各所に炎が燃え上がる。仮面のヒサシは炎に身を焦がす。

だめだ・・・ここに・・・いたら焼け死ぬ・・・。

ヒサシは走りだす。しかし・・・どこへ逃げればいいのだ・・・白い荒野には・・・方角さえない。

「でも・・・生理が遅れて・・・検査で・・・赤ちゃんを授かったことがわかったの・・・」

メグミの声がする。

なんだ・・・ヨシオの話か。

「私・・・あなたに・・・報告した・・・あなたが喜んでくれると・・・思ったから」

職場は混乱していた・・・買収計画の進んでいた企業に他の買い手がついたのだ。

とにかく・・・状況を把握しなければならない。

「確かなのか」

「これから・・・病院に行って・・・」

「じゃ・・・はっきりしたら・・・また連絡してくれ」

「・・・」

「今、忙しいんだ」

どこからか風が吹いてくる・・・白い風が吹いてくる。

冷たい風。濡れる身体・・・。

ブリザードなのか。これはブリザードなのか。

ヒサシは叫ぶ。

(メグミ・・・助けてくれ・・・)

「メグミ・・・」

「でも・・・事故にあってから・・・あなたは変わった・・・」

「・・・」

「私・・・昔のあなたのこと・・・話したくなかったの・・・今のあなたが変わってしまうのが・・・こわかったの・・・」

「昔の・・・家路久に・・・」

「ごめんなさい・・・でも・・・それじゃあ・・・ダメなのよね・・・昔の久さんから・・・私が・・・ただ逃げているだけだもの・・・」

「すまない・・・考えられないほどのクズで・・・」

「だから・・・私は離婚届を単身赴任していたあなたに・・・送ったのです」

「・・・」

「すると・・・あなたは・・・離婚は嫌だとおっしゃって・・・」

「・・・」

「それから・・・電話を毎日・・・くれるようになったのです」

「・・・」

「一度会いたい・・・どうしても会って話をしたいとおっしゃって・・・」

「・・・」

「あの日・・・会う約束をしました・・・そして」

爆発だ。爆発だ。大爆発だ。

そして・・・暗闇。

動かない・・・身体が動かない。

苦しい・・・痛い・・・苦しい・・・だけど・・・声が出ない。

身体が焼けただれている。

身体が凍りついている。

白い。世界は白い。

(だれか・・・助けてくれ・・・メグミ・・・ここはどこなんだ)

シャララン。

鍵束の音がする。

鍵だ・・・鍵がある。

鍵で扉をあけたら・・・ここから出ていけるのか。

だけどここには扉がない。鍵穴さえない。

ただ・・・白いだけの世界。

仮面の女が食器を洗っている。

仮面の息子が玄関で囁く。

「またお母さんに内緒で遊園地にいこうね」

ヨシオ(髙橋來))の言葉が木霊する。

オカアサン、ナイショ、ユウエンチ。

オカーサンナイショオオオオユーーーーエンチーーーーーー。

「いってらっしゃい」

「いってきます」

どこに行くのだ。会社に。しかし・・・第十三営業部はもうないのだ。

お前だけは特別だ。

バーレーンに左遷されたのに・・・。

なぜ・・・特別なんだ・・・。

それは昔のお前が何かしたからだろう・・・。

昔の俺・・・なんでそんなにクズだったんだよ・・・。

一体・・・お前は何がしたかったんだ。

誰かに教えてもらいたい。

誰か教えてくれないか。

ここは・・・天国ですか・・・それとも・・・。

知っている顔がある。

白い部屋だ。しかし・・・ここには窓がある。

病院だからな・・・診療室だからな。

「また・・・あなたですか」

「事故に会うまえに・・・妻から・・・仮面をつけているみたいだと言われたんです」

あ・・・この人は医者だ。脳外科医の筑波良明先生(及川光博)だ。ボクの主治医じゃないか・・・。

「なるほど・・・それがショックで・・・鮮明な記憶となり・・・恐ろしいほどの暗示力を生みだしたのかもしれない」

「・・・」

「あなたに・・・奥さんやお子さんの顔を見せまいと抵抗している誰かがいるのかもしれない」

「誰かって・・・」

「あなたの中のもう一人のあなたですよ・・・昔のあなた・・・家庭を顧みなかった男の意地みたいな・・・」

「そんな意地を張ってどうなるんです」

「わかりません・・・私はあなたではないので・・・」

「不安なのです・・・昔のボクがもっともっとひどいことをしているような気がして」

「いいじゃないですか・・・もう昔のことですし・・・」

「そんな・・・」

「あなたは・・・愛されたいと思っている・・・でも・・・裏切られたらどうしようと怯えているのかもしれない」

「だから・・・自分自身のことを知らなければならないのです・・・そうでなければ・・・妻の気持ちもわからないし・・・」

「気持ちがわからない・・・まだわからないのですか・・・」

「だって・・・記憶がないのですから」

「また・・・忘れてしまったのですね」

「・・・何をですか」

「この記録ですよ・・・毎回お見せしてるのに・・・」

「・・・」

「あなたのリハビリの記録ですよ・・・」

「ボクの・・・リハビリ・・・」

「あなたは・・・事故の後・・・しばらくは身動きできなかったんですよ・・・それどころか・・・動けるようになるのかどうかもわからなかった・・・何ヶ月もリハビリしたんですよ」

「・・・」

「もちろん・・・指導したのは理学療法士ですが・・・なにしろ・・・あなたは身動きも意志の疎通もできなかったんです・・・常にあなたの麻痺した身体に刺激を与え続ける人間が必要だったんた・・・ほら・・・ごらんなさい・・・これはあなたを担当した療法士が撮影したものだ・・・あなたをマッサージしているのが誰だかわかりますか」

そこには仮面の女が映っていた。

「メグミ・・・」

「そうですよ・・・あなたの奥さんです・・・あなたの麻痺が融けるまで・・・あなたの奥さんがあなたを献身的に介護していたんです・・・」

「一ヶ月後には奥さん・・・腱鞘炎になっています」

「メグミ・・・」

「二ヶ月後には奥さん・・・腰を痛めています」

「・・・」

「わかりますか・・・傷だらけの奥さんの献身ぶりが・・・少なくとも・・・意識を取り戻したばかりのあなたには分かっていた・・・」

ビデオの中の久は呻いた。

「メグミ・・・ありがとう・・・愛している・・・メグミ・・・」

「そんな・・・」

「そうですよ・・・私はこれを何回もあなたに見せた・・・あなたが・・・奥さんの愛を疑うなんて・・・ありえないことだ」

「・・・」

「それなのに・・・あなたは・・・病室を出ると・・・それを忘れてしまう」

「このメモが・・・」

「誰を愛しているか・・・わからないって言うんでしょう・・・だけど・・・昔の自分がいつどこで誰を愛したか・・・なんて・・・今のあなたにとって何だと言うんです・・・」

「・・・」

「あなたの中の誰かが・・・名前を消したのかもしれない・・・自分が誰かを愛してることが許せない・・・あなた自身が」

「・・・」

「だから・・・ほら・・・あなたは・・・自分がメグミさんに愛を告げていることさえ・・・信じられないんでしょう・・・」

「昔の私はひどい男で・・・ウソくらい・・・」

「だって・・・この時のあなたは・・・事故の後のあなたなんですよ・・・今のあなたのスタートラインでしょう・・・」

「・・・」

信じるな。誰の言葉も信じるな。自分の言葉も信じるな。

良く考えろ・・・お前が誰かを愛してるなんて・・・。

そんなことがあり得るのか。

だれだ・・・お前は・・・ヒサシは叫んだ。

荒野の彼方に人影がある。黒い人影。笑う人影。

あれは・・・オレじゃないか。

目の前にサッカークラブのコーチ・本城(田中圭)が立っている。

恵の昔の恋人だった男。

「家路さん・・・私はあなたにどうしても言いたいことがあるんです」

「・・・」

「家路さん・・・あなたは・・・本当にひどい男でした・・・事故の後・・・あなたは・・・とても・・・マシになった気がする・・・でも・・・僕にはそれが信じられないのです・・・。あの頃・・・メグミはとてもやつれていた・・・まるで・・・毎日・・・暴力をふるわれているような哀しい顔をしていました。僕が知っている昔のメグミとは大違いだ・・・どうして・・・そうなったのか・・・みんなあなたのせいですよ・・・僕は何度も言いました・・・あなたと別れるべきだって・・・メグミも決心したのです・・・ところが・・・事故があって・・・あなたは変わった・・・でも・・・本当なんですか・・・あなたはウソをついているだけなんじゃないですか・・・また・・・メグミを苦しませるために・・・今は・・・イツワリの仮面をつけているだけなのじゃないかと・・・」

「・・・」

「どうなんです・・・家路さん・・・」

ヒサシはついに我慢できなくなった。

「なんでだよ・・・なんで・・・人の妻を呼び捨てなんだよ」

「あ・・・すみません・・・つい・・・昔の習慣で・・・」

「・・・しょうがないか・・・スポーツバカだもんね」

「すみません・・・スポーツバカで・・・」

「とにかく・・・今はそっとしておいてくれないか・・・」

「・・・許して下さい・・・少し・・・言葉が過ぎたようです」

「今の君が・・・メグミのことを好きだということは分かったよ・・・」

「・・・」

「つらいだろうな・・・好きな人が・・・僕の妻なんだから」

「今・・・意地悪してますか」

「ちょっとね・・・」

「・・・」

「ストーカーとかしないでくれよ・・・」

「だ、大丈夫です・・・メ・・・奥さんが幸せなら・・・それでいいのです」

「・・・僕にも・・・どうすればいいのか・・・わからないんだ」

「・・・」

男たちは見つめ合った。

女たちも見つめ合う。

恵は久の前妻・香(水野美紀)の病室にいた。

「ごめんなさいね・・・あなたを不安にさせて・・・」

「・・・」

「あの人・・・本当におかしいよね」

「・・・」

「これを手伝ってくれたんだ・・・」

香は遺作になるかもしれないインタビュー記事を見せた。

「優しくなっちゃったんです」

「びっくりだよね・・・」

「・・・」

「仮面か・・・なんだか・・・面倒なことなっているよね・・・」

「・・・」

「でもさ・・・夫婦だって・・・他人なんだもん・・・お互いの気持ちがわからないことだってあるんじゃないかな・・・」

「・・・」

「少なくとも・・・私も・・・結婚していた頃・・・あの人の気持ちなんて・・・よくわからなかった・・・」

「・・・」

「私・・・今度・・・新しい人と結婚するつもりなんだ・・・」

「え」

「ほら・・・バツイチだし、子連れだし・・・ガンだしで・・・いいのかよって思うけど・・・でも・・・彼・・・優しくて・・・だから・・・甘えることにした」

「・・・」

「だから・・・私のことは気にしないで・・・あなたはあなたの幸せだけを考えて・・・」

「私の・・・」

「そうでしょう・・・だって・・・これはあなたたち夫婦の問題なんだから・・・」

「香さん・・・ありがとう」

「えっへっへ」

恵は希望を感じた。

(そうね・・・いろいろあるけれど・・・あの頃より今はずっとマシだもの・・・)

恵の心に浮かぶ・・・家の組み立て玩具。

久が良雄のために組み立てた・・・模型の家。

昔の夫と今の夫は別人だ。

でも・・・どちらも家路久なのだ。

そして・・・恵は久を・・・。

久はサッカー場に立っている。

子供たちの声が風に乗って聴こえるが・・・姿は見えない。

「7対0だぜ・・・」

「ひどい点差だな」

「俺は言ってやったよ・・・サッカーなんてやめちまえって」

「お前は負けるのが嫌いだもんな」

「そうだよ・・・自分の息子が敗者になるなんて・・・我慢できない」

「お前だって敗者だろう」

「俺は勝者だったよ」

「誰も愛していないし・・・誰からも愛されていないのにか」

「その上・・・仕事もできないお前より勝ってるだろう・・・」

「虚しい勝利だな」

「お前には言われたくないよ」

「ああ・・・俺も自分で言ってて・・・しょうがないと思ったよ」

ヒサシは振り返る。

しかし・・・そこには夕暮れの街があるだけだった。

ガチャッと鍵の音がする。

自分の家の鍵と・・・これは貸倉庫の鍵・・・いや・・・玩具の鍵・・・。

ああ・・・トレジャーランドの宝箱の鍵か・・・。

あ・・・ボクとヨシオは・・・トレジャーランドに・・・。

メグミには内緒で・・・。

なぜ・・・どうして・・・。

ああ・・・貸倉庫だ・・・貸倉庫に・・・宝箱がある。

そこに・・・ボクは秘密を隠したんだ。

すべての秘密を・・・。

久は白い地面を掘った。

白い砂が山となり・・・宝箱が現れた。

金貨がザックザック・・・そして・・・この記憶媒体には・・・不正経理の証拠が記録されている。シンガポール支店で生じた損失を補填するために・・・企業買収の金額を水増しし・・・実態としての粉飾決算を行ったのは・・・当時のシンガポール支店長で・・・現在の葵インペリアル証券の社長である上王子悟史(沢村一樹)だ。

久は手掛けていた企業買収を利用された形だったが・・・そこは阿吽の呼吸だ。

久は保険としてこのカードチップを準備した。

当局の追及をかわすための擬装左遷にも応じたのだ。

だが・・・そんなことはどうでもいい・・・問題はこっちだ・・・。

あの日・・・久は・・・良雄を連れ出し・・・トレジャーランドで良雄の唾液を関東DNA鑑定センターの職員に採取させたのだ。

久は・・・良雄がわが子であることに疑いを抱いたのである。

学生時代からの親友・山野辺俊(田中直樹)と恵の性的関係への疑惑。

それは・・・久の人間不信の暗い情念の炎によるものだった。

久は誰も信じない。

しかし・・・鑑定の結果は・・・99.99%・・・父子・・・。

良雄はわが子だった・・・。

お前は・・・妻には内緒と言いながら・・・支払いにカードを使った。

明細書を妻に見られても平気だと思ったのか。

お前は・・・確かめずにはいられない。

どんなに傷つけても変わらぬ愛を・・・。

一体・・・お前は何がしたいのだ。

男は・・・妻を裏切るものだ。

男は・・・息子を捨てるものだ。

久・・・お前は馬鹿だ・・・お前は狂ってる。

うるさい・・・うるさい・・・うるさい。

俺は・・・お前を許さない。

どうする気だ。

お前を破滅させてやる。

はははははは・・・お前もやはり俺だなあ・・・。

久は恵に自宅の鍵を返す。

「久さん・・・どうして・・・」

「思い出した・・・僕は君の不貞を疑って・・・良雄のDNA鑑定を・・・」

「そうよ・・・それに気がついて・・・私は・・・離婚届を送ったの・・・」

「もう・・・僕は自分のひどさに・・・どうしていいのか・・・わからない・・・」

「久さん・・・私は・・・」

「僕は・・・自分の罪を清算するつもりだ・・・」

「久さん」

秘書室で合言葉を言う。

「ブラックプレジデントはエロ男爵」

「こちらへどうぞ」

秘書の西澤真理(佐々木希)は社長室への秘密の扉を開く。

「おやおや・・・ついに記憶がもどったのかね」

「あなたと私の不正の証拠をお返しします」

「さて・・・役員はどのポストにする・・・海外事業部担当はどうかね」

「それは・・・お断りします」

「なんだって・・・」

ヒサシは警視庁に向かう。

不正の証拠のコピーがあるのだ。

内部告発するのだ。

そんなことをして何になる。

何もかもハメツだ。

どうしてだ・・・。

俺はこんな世界大嫌いなんだ。

俺は自分自身がダイキライなんだ。

子供か・・・。

しかし・・・大人の第十三営業部の部員たちは・・・久の監視役だった・・・小机部長(西田敏行)を筆頭に・・・社長を裏切り・・・久が本質的に無罪であることを立証する。

久は無罪となり・・・釈放されてしまうのだった。

気がつくと久は・・・荒野の門の外に立っていた。

白い部屋の外に広がる・・・大都会。

(あははははは・・・無実の罪で捕まるつもりだったのに・・・無罪になっちゃった)

(ばかだ・・・おまえは・・・大間抜けだ・・・)

(報いだよ・・・自分を愛さなかった報いだ・・・)

ヒサシはあてもなく家路につく・・・。

サイレンの音が鳴り響く。

公園から見下ろす街。

立ち上る煙・・・。

「あ・・・家じゃないか」

マンションから黒煙と炎が見える。

(メグミ)

ヒサシは走りだす。

(ヨシオ)

消防車がヒサシを追い抜いて行く。

煙の中から・・・恵の両親が現れる・・・。

「お義父さん・・・お義母さん・・・」

「お隣から・・・出火して・・・あっという間に・・・」

「良雄・・・」

消防士が良雄を抱えてやってくる。

「お母さんがまだ・・・中にいる・・・お母さんを助けてよ」

久はマンションを見上げた。

「あ・・・待ちなさい・・・」

消防士たちの制止を振り切り・・・久は炎の中に飛び込んだ。

「メグミ・・・」

ヒサシは咳込みながらドアをあける。

「メグミ・・・」

床に倒れた恵がいる。

「メグミ・・・」

久は動かないメグミを抱きかかえる。

「メグミ・・・いやだ・・・一人ぼっちにしないでくれ」

久は煙の充満した廊下に出る。

「僕は・・・君を守りたい・・・」

炎が噴き出した。

「僕には・・・君しか・・・いないから・・・」

天井が崩れ落ちる。

久は恵を庇って瓦礫の下敷きになる。

燃えあがる・・・久の衣服。

「ごめん・・・め・・・ぐ・・・」

ヒサシの記憶は遠ざかる。

「いたぞ・・・ここに二人いる」

「要救助者・・・二名確認」

ヒサシは白い荒野に佇んでいる。

「ダメな奴だな・・・」

「父さん・・・」

「しっかりしろ・・・」

「僕は・・・何ひとつ・・・」

「これからだ・・・久・・・男は・・・いつだって・・・これからだって」

「父さん・・・もう無理だよ」

「ばか」

久は目覚めた。

病院の処置室。

「家路さん・・・わかりますか」

「ここは・・・」

「大丈夫ですよ・・・」

「恵は・・・」

「となりの処置室にいます」

久は飛び起きた。

「家路さん・・・ダメです・・・落ちついて・・・」

「恵・・・恵・・・恵・・・」

「大丈夫ですよ・・・奥さんも無事です」

久は転げ回った。

「恵・・・」

「久さん・・・」

恵が久の顔を覗き込む。

「恵・・・」

「久さん・・・」

ヒサシは仮面の妻を見上げる。

仮面・・・仮面ってなんだ・・・。

恵は・・・恵に決まっている。

「ろくでなしの男を愛してくれる・・・世界でただ一人の女神じゃないか」

めがみ・・・めがみ・・・めぐみ・・・めぐみ・・・。

懐かしい顔が微笑んでいる。

愛しい妻が泣いている。

久は恵を取り戻した。

(馬鹿だな・・・そんなに信じて・・・裏切られたらどうするつもりだ)

黒い人影がつぶやく。

久は囁いた。

(お前は・・・ただの臆病者なんだよ)

夕暮れの街。

夏が近づき・・・陽はまだ残る。

久は足取りが軽い。

家路は明るく照らされている。

そこには・・・愛しい妻と息子が・・・久を待っている。

「ただいま・・・」

「おかえりなさい・・・あなた」

「おかえりなさい・・・お父さん」

久は帰宅した。

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Ihhc010ごっこガーデン。愛の光に輝くマイホームセット。

アンナ全身全霊で・・・妻と子だけを愛するダーリン・・・だけどうっかりヒーローにもなってしまうダーリン。いいのだぴょん・・・ありのままのダーリンで・・・少しサービス過剰でも・・・だって・・・それはダーリンの宿命なのだぴょん・・・もう・・・妻のことが心配で心配で・・・無事な姿を一目見たくて・・・身悶えして・・・ついに仮面の呪いを打ち砕く物語・・・じいや・・・どうして・・・仮面はなくなったの・・・なになに・・・忍者が正気を取り戻すために自分の膝とかを手裏剣でグサッとさすみたいに・・・点滴の針とか・・抜きまくったからって・・・じいや~・・・それはちょっと違うと思うのぴょん

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2015年6月18日 (木)

彼氏が結婚するから仕事をやめると言い出しまして(蒼井優)それは少し様子が変ですね(堺雅人)

人間は模倣する生き物である。

そもそも、遺伝子は基本的にコピーシステムなのである。

親が笑えば子も笑うのだ。

親が歩けば子も歩くのである。

日本人に囲まれれば日本人になっていく。

親が狂えば子も狂う。

精神病患者に接し続ける精神科医は当然、精神を病むわけである。

ものまね芸人が模倣するように・・・人はあらゆるものを真似てしまう。

ニヤニヤされたらニヤニヤするしかない。

若者の真似をしようとしてうっかり腰を痛めて・・・もう若くないと悟るのだ。

だから・・・精神病は伝染する病なのだ。

常識的には間違ってるぞ。

で、『Dr.倫太郎・最終回(全10話)』(日本テレビ20150617PM10~)原案・清心海(協力・和田秀樹)、脚本・中園ミホ、演出・水田伸生を見た。基本的には精神科医が美人の患者さんと相思相愛になれたらいいなあ・・・という妄想の話である。ここに気がつくと話全体が気持ち悪い感じになるので気がつかない方がいいだろう。そもそも、キッドはドラマなら基本的になんでもいける口なので大丈夫だ。しかし、世の中にはスターが好き過ぎてドラマと現実と自分の妄想の区別がつかなくなる人もいるので注意したい。特に私生活でおめでたいことがあったスターのドラマがなんとなくつまらないとか・・・いつもはもっと面白いはずなのにとか言い出したら要注意である。

キッドは基本的に受動的な人間なのでドラマに限らず、巨大掲示板とか、ツイッターとかもいつまでも眺めていることができる。

こうして記事を書いているのだから・・・書きこんだり、つぶやいたりもできるはずなのだが・・・なんとなく億劫なんだな。

だから・・・書きこんだり、つぶやいたりできる人は積極的でうらやましい。

だが・・・じっと眺めていると・・・明らかに様子のおかしい人はいて・・・おやおやと思うわけである。

誰が見ても美人の女優を美人ではないと言い出したり、誰が見ても演技の上手な役者を下手だと言い出す人は・・・どれだけ美人でどれだけ演技が上手なのか・・・すごく不思議な気持ちになります。

しかし・・・まあ・・・基本的に誰もが少し頭がおかしいんだよなあ・・・と納得もできるのだ。

このドラマの主人公は明らかに最初から狂っているわけだが・・・そう思わない人は正常なのか・・・異常なのか・・・不明なんだなあ。

思春期の家族の死によって深刻な精神失調を経験したヒノリンこと日野倫太郎(高橋楓翔→堺雅人)は病んだまま精神科医になったのであった。

しかし・・・精神分析的手法で患者に共感することで症状を改善するスーパー・ドクターとして患者に人気を博すのだった。

だが・・・母親からの育児放棄と虐待によって乖離性同一性障害を発症した新橋の芸者・夢乃/相沢明良(木内心結→蒼井優)との出会いがヒノリンの凍った心を加熱処理するのだった。

「これきりにしましょう」と夢乃に告げられたヒノリン・・・。

病院内で夢乃を追いかけたヒノリンは・・・患者を抱きしめてしまう。

「別れろ切れろは芸者の時にいう言葉です・・・僕はずっとあなたといます」

ヒノリンは・・・中学生以来・・・初めて女子を好きになったのだった。

ねえ・・・頭おかしいでしょう。

幼馴染であり・・・ヒノリンに片思いをし続けて三十年超のキャリアを誇る外科医・水島百合子(吉瀬美智子)は茫然とする。

報告を受けたヒノリンの主治医・荒木重人(遠藤憲一)は状況を看護師・桐生薫(内田有紀)を相手に再現して確認する・・・。

「抱きしめたって・・こうじゃなくて・・・こうか」

・・・明らかにセクハラである。

「どう思いますか」

「かなり本気だな」

「それは患者に対してですか」

「いや・・・そうではないかもしれん」

「じゃ・・・どうなんですか」

「わからん・・・なぜなら・・・俺はヒノリンじゃないから」

「・・・ああ」

激しく動揺する・・・百合子だった・・・。

ヒノリンは謹慎中なのをいいことに夢乃を時自宅に連れ帰る。

愛犬・弥助はモフモフと二人を癒す。

夢乃はヒノリンがずっと一緒にいるという約束を果たしたことに心を開く。

ヒノリンの許容を模倣した夢乃は明良を許し、明良は夢乃を許す。

二人の自我境界線は曖昧なものとなり・・・明良は恋が叶ったことにより・・・幼少時代から求めていた安堵を感じ・・・夢乃は警戒心を解いて・・・分離中の自我は一部融合するのだった。

明良でもあり夢乃でもあるユメノアキラはヒノリンとの同棲ごっこをエンジョイするのだった。

「ずっと一緒なんですね」

「ずっと一緒だよ」

「お風呂も一緒ですか」

「一緒だとも」

「ベッドもですか」

「もちろんだよ」

「うれしいな」

「ボクもうれしいよ」

その頃、菊千代こと・・・夢乃の母親・相澤るり子(高畑淳子)はますます心を荒廃させる。社会的規範は心から脱落し・・・精神的退行は進む。そして・・・ついに無銭飲食を働くのである。

一方・・・慧南大学病院の理事長・円能寺一雄(小日向文世)は新病院買収計画が大臣の脱税発覚によって頓挫したことにより・・・心身に異常を起こしていた。

副病院長兼脳外科医主任教授の蓮見(松重豊)、精神科主任教授の宮川(長塚圭史)は狂を発した円能寺に困惑する。

「だれだ・・・だれが俺の邪魔をする」

「いえ・・・理事長の邪魔など・・・」

「日野か・・・あいつか・・・」

「日野は謹慎中です」

「みんな・・・俺を騙す気か」

「そんな・・・」

「蓮見・・・お前、馬になれ」

「馬・・・」

「俺は・・・天下をとるんだ」

「天下・・・」

「俺を誰だと思ってるんだ・・・俺は・・・信長だ」

「信長・・・」

イチャイチャ中の二人は・・・卵の白身と黄身をかきまぜる。

「まざっちゃいました」

「まざっちゃったねえ」

「私・・・もう夢乃でも明良でもないような気がします」

「僕は君に合鍵を渡すよ」

しかし・・・ヒノリンに夢千代こと置屋の女将・益田伊久美(余貴美子)から着信がある。

夢千代は菊千代が無銭飲食で逮捕されたことを告げるのだった。

警察署に実母の身柄を引き取りに行く夢乃・・・ヒノリンと夢千代は付き添うのだった。

「娘さんが身元引受人になりますか」と担当官。

「もし・・・引き受けない場合は・・・」

「処分が決まるまで拘置することになります」

「・・・」

「私が代わりに・・・」と申し出る夢千代。

「いえ・・・私が・・・私の母ですから」と夢乃。

「無理しなくていいんだよ」と夢乃の手に手を重ねるヒノリン。

「大丈夫です・・・先生がいつも一緒にいてくれるから・・・」と夢乃・・・。

そこへ菊千代が現れる。

「あきら~・・・おかあさん・・・おかねがないのに・・・おなかすいたんだよ~」

「・・・」

四人はヒノリンの家に戻るのだった。

「なんで・・・こんな家にこなくちゃいけないのさ」と菊千代。

「無銭飲食した女がなにいってんだ」

「あんたこそ・・・五千万円をどうしたんだよ」

「・・・」

「ねえ・・・明良・・・こんな家を出て・・・二人で昔みたいに仲良く暮らそうよ~」

「お母さん・・・もう嘘はやめて・・・」

「嘘・・・何が嘘なのさ・・・」

「私・・・お母さんが帰ってくるのを一人で待ってた・・・冷蔵庫の中がからっぽになっても・・・お母さんは帰ってこなかった。お腹がすいて・・・お腹がすいて・・・金平糖もなくなったし、ケチャップもなくなったし・・・お金もないし・・・お腹がすいて・・・お腹がすいて・・・食べるものはないし・・・お腹がすいて・・・帰ってきたお母さんは・・・男の人と仲良くしてた・・・私は部屋の外に出された・・・お腹がすいて・・・寒くて・・・風が冷たくて・・・お母さんは私にあんたなんか産まなければ良かったって言った・・・私は・・・お母さんに抱きしめてもらいたかったのに・・・私とお母さんは・・・いつ・・・仲良く暮らしてたの・・・」

「そりゃ・・・お前・・・お前が覚えてないだけさ・・・」

「私はそれから働いて・・・置屋のお母さんに踊りを教えてもらって・・・働いて・・・踊りは好きだった・・・お母さんは私を褒めてくれた・・・私は追い出されたりしないように・・・働いて・・・働いて・・・明良じゃなくなって・・・夢乃になって・・・お金を・・・あなたに・・・渡して・・・」

「仕方ないじゃないか・・・お金が必要だったんだよ」

「置屋のお母さんは優しかった・・・いつも私を守ってくれた・・・」

「夢乃・・・」

「あんたは・・・私から・・・お金をとっただけじゃないか・・・」

「明良・・・」

「もう・・・私は・・・私なの・・・お母さんとは・・・さよならするの・・・」

「さよなら・・・明良のお母さん」

「え・・・」

「ありがとう・・・夢乃のお母さん・・・」

「夢乃」

「明良のお母さん・・・最後に一度だけ抱きしめてあげる・・・あなたもさびしかったのよね」

「あ・・・あきら・・・」

「お母さん・・・いつも・・・私のために心配してくれて・・・ありがとう・・・これからは・・・私・・・いっぱい親孝行します」

「夢乃・・・」

「いやだ・・・あきら・・・捨てないでおくれよ・・・」

夢乃は夢千代としっかりと抱き合う。

菊千代は迷子のように夢乃の裾を掴んで泣きじゃくるのだった。

ヒノリンは微笑んで・・・その光景を見つめる。

アキラとユメノは限りなく一つに近い人格に統合されたようだ。

アキラの記憶とユメノの記憶は共有された。

ヒノリンがアキラに共感したことをユメノが模倣し、ヒノリンがユメノに共感したことをアキラが模倣する。

共感とは感情の模倣であると同時に・・・自他が同じ感覚を得ているという幻想を共有することなのである。

擬似的な一体感が・・・人間を孤独の監獄から一時的に解放することで精神をリフレッシュさせるのである。

「ヒノリンはいつもがんばらなくてもいいっていうよね」

「僕が中学生の時・・・帰宅すると部屋がいつもより綺麗になっていました・・・僕は母が頑張ったんだなと思いました・・・すると・・・電話がかかってきて・・・母が電車に飛び込んだことを伝えられたのです」

「それは・・・きっと・・・どうしようもないことだったのよ・・・かわいそうなヒノリン」

「同情」と「共感」のニュアンスに差異を感じる人は「同情するなら金をくれ」と思いつつ「愛し合い一緒に感じたい」と思っているのである。

ヒノリンの電話がなる。

「早く来てくれ・・・」

「今は愛しあってるんですが」

「俺のことはどうでもいいのか」

行政府報道長官の池(石橋蓮司)を心療するヒノリン。

「お前が切れって言ったから切ったのに・・・まだ責められる」

「責められるようなことをしたのですか」

「俺は何もしていない」

「何か・・・まだ隠していることがあるのでは」

「人には言えることと言えないことがあるだろう・・・たとえば・・・正常位と騎乗位のどっちが好きかとか」

「僕はどちらもしたことがありません」

「童貞かっ」

「人間は秘密を持っている相手には敏感なものです・・・そして秘密が知りたくてたまらない生き物なのです」

「別件で疑われ・・・痛くもない腹を探られるのか・・・」

「そういうこともあるかもしれません・・・正直ものの頭に神が宿ると言います」

「頭隠して尻隠さずだな」

ヒノリンの共感療法は・・・池長官を死地に追いやるのだった。

ヒノリンの電話が鳴る。

「お前は俺が病気だというのか」

円能寺は頬を痙攣させながら言う。

「いわゆる・・・チック症状ですね」

「ふざけるな・・・だれが・・・こいつを呼んだ」

「私です」と蓮見副院長。

「みんな・・・何故・・・私に逆らう・・・」

「私は言われた通りに謹慎していました」

「ニヤニヤするな」

「こういう顔なんです」

ヒノリンは蓮見と密談する。

「どうかね」

「急性のストレス性障害でしょうか・・・錯乱なさっているようです」

「・・・だね」

宮川主任は矢部街子(真飛聖)ら愚痴る。

「なぜ・・・みんな・・・あいつばかりをチヤホヤするんだ」

「先生には・・・私がいるじゃないですか」

「ちがう・・・私だって・・・患者にあいされたいんだ」

「患者にチヤホヤされて・・・どうする気ですか」

「・・・」

ヒノリンは・・・荒木の診療室を訪ねる。

「円能寺さんの診療をお願いしたいのです」

「お前がやれば・・・いいだろう」

「私は・・・精神科医を辞すつもりです」

「そうか・・・本気の恋をしたからか・・・」

「はい」

「それは・・・」

ビョーキだという言葉を飲み込む荒木である。

荒木は告知しない主義らしい。

患者によっては病名を知って病状を悪化させる場合があるからである。

そこへ・・・ギャンブル依存症の治療のために荒木診療所の住み込みの家政婦となった菊千代が現れる。

「あんた・・・何しに来たのよ」

「心配しないで・・・こいつも患者だから」

「あら・・・そうだったの・・・道理でおかしなことばかり言うと思ったわ」

「・・・」

菊千代は・・・反復筆記による暗示療法中である。

「私は・・・ギャンブルしなくても・・・大丈夫です」

私はギャンブルしなくても大丈夫です

私はギャンブルしなくても大丈夫です

私はギャンブルしなくても大丈夫です

「もう・・・お腹が減って・・・書けない」

「頑張りなさい・・・昼休みまであと百回」

「私は・・・天丼が食べたい・・・それがダメならカツ丼が食べたい・・・それでもだめなら玉子丼」

「ドンドンガバガバ・・・じゃ・・・うな丼にするか・・・」

「先生・・・大好き~」

菊千代に春が訪れたらしい。

ヒノリンは夢乃に青いワンピースをブレゼントした。

「ありがとう・・・ヒノリン」

ヒノリンは夢乃と弥助を連れて海までドライブした。

「ありがとう・・・ヒノリン」

浜辺で弥助と幼女のように戯れる夢乃。

絵にかいたように幸せな二人と一匹・・・。

「ありがとう・・・ヒノリン」

ヒノリンは幸福だった。

定例の記者会見で・・・脱税大臣と円能寺理事長とのパイプ役を疑われる池長官。

「隠してるんでしょう」

「隠してません」

思わず・・・擬似頭髪を脱落させる池長官。

沈黙する取材陣。

半分の記者たちは思わず・・・頭を隠す。

いたたまれない気持ちで夢千代はテレビを消す。

「池さんも大変ねえ」

「あれじゃ・・・お小遣いもねだれないわ・・・」

小夢(中西美帆)もしょんぼりしてしまうのだった。「円様も・・・大変そうだし」

「円様を悪く言ってはだめよ・・・円様を悪く言う人がいても・・・私たちにとっては・・・大切な恩人なんだからね」

夢千代の背後から幽鬼のように現れる円能寺・・・。

息を飲む小夢・・・。

「ありがとう・・・夢千代」

「円さま・・・」

夢千代は円能寺の痙攣する頬を優しく撫でる。

母親が子供の傷を手当するように・・・。

ヒノリンの電話が鳴る。

「俺は・・・終わりだ・・・融資が受けられず・・・病院買収ができない」

「理事長はなぜ・・・ここに」

「さあ・・・俺はもうすっからかんだ」

「ここに大切なものがあるからではないですか」

「ここに・・・おい・・・夢千代・・・ここになんか・・・あるのか」

夢千代は涙ぐむ・・・。

「おい・・・夢千代・・・どこに行った」

「はい・・・ここにおりますよ」

「ここに大切なものがあるんだそうだ・・・お前・・・わかるか・・・」

「さあ・・・何でしょうねえ」

微笑む・・・夢千代・・・。

夢千代にも春が訪れたらしい。

「俺は・・・三男で・・・二人の兄は医者だ・・・買収しようとしていた病院は親父の経営する病院だ・・・俺は愛されなかった・・・だから・・・親父からすべてを奪ってやることにしたんだ」

「それは・・・素晴らしい情熱ですね・・・復讐は常に美しいものです」

「そうか・・・」

「しかし・・・憎悪のエネルギーは時に・・・自分自身を燃やしてしまう場合があります」

「・・・」

「火加減が大切なのです」

「・・・」

「地震が起きたら火を止める人は多いでしょう」

「最近は自動的に止まるぞ」

「そうです・・・理事長も・・・自動的にブレーキがかかっているんですよ」

「・・・」

「危険が去るまで・・・じっとしている・・・それも大切なことです」

「私は・・・どうすればいいのだ」

「何もしなくて・・・いいんですよ・・・あなたは・・・充分に働いたじゃありませんか・・・」

「・・・」

「神様だって・・・週に一回は休むのです」

「なるほど」

長い坂道を登って・・・二人は日野家の墓にやってくる。

そこには美しい百合の花が揺れている。

夢乃は百合の花言葉「失楽園の涙」「母の乳」「処女の気負い」を思い浮かべる。

「私は・・・二十七年連続で墓参りをしませんでした・・・私の父は海外で仕事をしていました・・・私の母は・・・その間・・・父以外の男性と恋愛をして楽しんでいたのです。それを知った私は・・・母を問いただし責めることもできずに・・・ただ・・・心の中で嫌悪したのです・・・しかし・・・母はそのことに気がついたのでしょう・・・鬱屈して・・・ついに自殺してしまった・・・」

「先生のせいではないですよ・・・」

「私は・・・こうして・・・母のお墓の前で・・・あなたに伝えたいことがあるのです・・・夢乃さん・・・私と結婚してください・・・私はあなたを愛しています」

「・・・」

「返事は今でなくて構いません」

「いえ・・・今・・・お断りします」

「ぇぇぇぇぇぇぇえええええええええ」

「先生・・・患者を医師が愛してしまうのは・・・逆転移ですよ・・・先生の本に書いてありました・・・」

「・・・しかし・・・私の気持ちは・・・」

「恋愛は一過性の精神障害の一種だと・・・それに・・・お母さんは先生のせいで自殺したとは限りません・・・ひょっとしたら愛人に冷たくされて絶望なさったのでは・・・あなたは・・・母親に捨てられ・・・一人残されて・・・それを怨んで女性不信になってしまった。私にお墓の前で告白したのは・・・母親以外の別の女性を愛することを見せつけて・・・お母さんへの怨みを晴らすつもりだったのでしょう・・・」

「そ、そんな・・・」

「私・・・患者にのぼせあがって・・・プロポーズしちゃうような・・・そういう方とは結婚を考えられません・・・先生・・・しっかりしてください」

「はい・・・」

「最後に・・・お聞きします・・・私の病気・・・良くなってますか」

「かなり・・・よくなってますね」

「ありがとう・・・ヒノリン」

「あの・・・でも・・・なにか・・・あったら・・・電話してくださいねえええええ」

背を向けた夢乃は必死に唇をかみしめる・・・。

邪悪な妹・中畑まどか(酒井若菜)は呆れる。

「お兄ちゃんをふるなんて・・・お兄ちゃん・・・手玉にとられちゃったの」

「とられてないもん」

「医者をやめるつもりだったの・・・」と考え込む百合子。

「医者は患者とは恋愛できないからね」

「私・・・ちょっと用事を思い出した」

百合子は去って行く。

「なんだよ・・・百合子の奴・・・」

「そりゃ・・・百合子さんだって怒るわよ・・・」

「なんでだよ・・・」

「まさか・・・お兄ちゃん・・・百合子さんの気持ちがわからないの・・・」

「気持ちって」

「お兄ちゃんのことが好きなのよ」

「ええええええええええええええええええええええええええええええええええええ」

まどかは心の底から兄を蔑んだ。

百合子は夢乃を訪ねていた。

「好きなんでしょう」

「あなただって・・・」

「私は・・・」

「だって・・・ヒノリンのこと好きじゃなくて・・・どうしてここに・・・」

「・・・」

「私・・・結婚なんてしてる場合じゃないんです・・・実母の借金返済をしなくちゃいけないし・・・置屋のお母さんにも楽をさせたいし・・・芸者としてお金を稼ぎまくらないと・・・」

「夢乃さん・・・」

「ヒノリンのこと・・・よろしくお願いします」

「このドラマでは・・・患者以外のことを考えて・・・たとえば・・・結婚したりする医者は・・・堕落した医者なんですよね」

「医者に対してあまりにも幻想抱き過ぎですよね」

研修医・福原大策(高橋一生)は「ふられたんですね」と復讐する。

桐生の息子は文字盤で「ふ・ら・れ・た」と同情する。

桐生は連絡事項を伝える。

「先生・・・講義のお時間です」

「・・・」

ヒノリンは教壇に立つ。

「精神分析的心療の・・・成果は・・・共感療法にあると・・・私は信じています・・・科学的に患者の心を分析し・・・善意に基づいて・・・全身全霊で・・・患者の心に寄り添う・・・それが愛です・・・愛と言わずになんと呼べばいいのでしょう・・・私はこれからも患者を愛し続けます・・・見返りは診療報酬以外に求めてはいけません」

こうして・・・人類は発狂し続ける。

精神科医たちは・・・発狂しても・・・大丈夫・・・それは一種の個性・・・それにみんな一緒と囁き続けるのである。

そんな人類を乗せて今日も地球は回るのだ。

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2015年6月17日 (水)

マザー・ゲーム〜彼女たちの階級〜戦え!お母さん!(木村文乃)

谷間だ・・・。

長かったなあ・・・春ドラマの谷間なしのレビュー・・・。

で・・・レギュラーとなった「戦う!書店ガール」の裏番組である。

本来・・・主演女優・木村文乃はレビュー対象である。

しかし・・・初回があまりにも「名前をなくした女神」だったので・・・回避を決意したのだった。

まあ・・・豪華キャスティングすぎて・・・(木)(金)のことを考えると・・・逃げざるを得ないのである。

そもそも・・・「マザー」に「ゲーム」がついているとなるとそれだけで危険な匂いがするわけである。

絶対にそこそこ面白いもんな・・・。

結果として・・・激戦区(火)の今季の勝者は・・・マザー軍団だった・・・。

で、『マザー・ゲーム〜彼女たちの階級〜・第1回~最終回(全10話)』(TBSテレビ20150414PM10~)脚本・荒井修子(他)、演出・塚原あゆ子(他)を見た。シングル・マザーの蒲原希子(木村文乃)は弁当屋「デリキッチン・ごはんや」の経営者である。一人息子の陽斗と書いてハルト(横山歩)を由緒正しい「しずく幼稚園」に入園させたことから・・・格差渦巻くマザー・ゲームに巻き込まれることになるのだった。しかし・・・たくましく生きて来た希子にとって階級差などないも同然だったのだ・・・。他人の家庭に遠慮なく踏み込んで・・・ママ友たちの闇をあばき・・・この世に光をもたらす暴れん坊ママ・・・これはその物語である。

まあ・・・そういう話ですよね。

ゲームと言う意味では・・・おそらく・・・ウィトゲンシュタインの言う「ゲームと呼ばれているものは共通の要素として持っているがどのように定義づけようとしても必ずその定義から外れてしまうようなものを含む存在」としてのゲームなのだろう。

それは・・・希子が・・・ハルトを「しずく幼稚園」から卒園させるという人生ゲームでもあるし・・・母親として経営者として女として人間として幸せになろうとするゲームでもある。そして・・・幸せを価値とすれば・・・他の母親よりも多くの価値を獲得しようというゲームでもある。

たとえば・・・母親たちはお受験で名門小学校に子供を合格させるという一種のゼロサム・ゲームを繰り広げる。

それは勝者が幸福であるという前提によるゲームなのである。

だが・・・プレイヤーたちは・・・お受験ゲームの勝敗とは別に幸不幸を味わうことになる。

現代社会はますます複雑になっていく。しかし・・・社会は結局、相互依存によって成立している。社会に生きる人々は誰かが獲得して誰かが失う(win-lose)というゼロサム・ゲームではなく、両方とも得をする(Win-Win)という非ゼロサム的なゲームとして社会生活ゲームを考えるべきなのである。

足をひっばるよりも・・・助けあう・・・そのことがお互いを幸福にする・・・希子の明快な戦略は・・・マザーたちを変革していくのである。

さて・・・希子によって幸せになっていく・・・マザー軍団である。

ラスボスとなるのが・・・大企業の令嬢・小田寺毬絵(檀れい)・・・なにしろ「平清盛」の待賢門院様である。最初は希子の理解者として登場するが・・・長男の子育てに失敗してひきこもりにしてしまったという心の闇を抱えているわけである。

もちろん・・・希子の最終兵器「おいしいお弁当」が炸裂するのは言うまでもない。

最初の味方である希子の幼馴染・神谷由紀(貫地谷しほり)はやせてもかれても(やせもせずかれもしないが)朝ドラ「ちりとてちん」のヒロインである。見栄をはってセレブ妻になろうとして借金生活・・・転落人生一歩手前で希子の友情パワーで救われ・・・改心するのだった。

クールな才女である後藤みどり(安達祐実)は夫の浮気やモラルハラスメントさらにはDVに悩む。しかし、直球一本の希子に感化されて離婚を決意し新たなる人生に踏み出す。なにしろ、家なき子で北島マヤなのである。

そして・・・基本的に・・・セレブでない希子を徹底的にいびる敵役が・・・矢野聡子(長谷川京子)である。しかし・・・兇悪な義母・静子(長谷川稀世)によって嫁いびりをされており・・・いびりの連鎖が花開くのだった。しかし・・・結局は希子の浄化力で嫁姑まとめて体質改善されてしまうのである。

大河ドラマで朝ドラマで超人気子役で「ドラゴン桜」の真々子先生で・・・この濃さ・・・たまらんらんである。

これにそれぞれの可愛い子役、嫌な夫、愛人(男女)やブサかわいい犬なども加わっててんやわんやなのである。

希子の元夫・樫山秀徳(岡田義徳)などいてもいなくても同然の存在感なんだな・・・。

まあ・・・それでも視聴率10%を獲得するのが困難な(火)10である。

この不毛な戦いは来期もつづくんだな。

次は栗山千明・菜々緒・小芝風花VS西内まりや・夏菜・若村麻由美・・・。

いい勝負かな・・・。

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2015年6月16日 (火)

家康、秀吉、そして信玄・・・だけどタイムトラベルものではありません(相葉雅紀)グッドラッコ(有村架純)そしてビリオジへ(沢尻エリカ)

綾瀬はるかからお兄ちゃんに選ばれなかった主人公だった。

ニット棒の男は広瀬すずに40歳だと思われた34歳の人ではなかった。

誰がVS嵐の話をしろと・・・。

楽しかったなあ・・・おっぱい三姉妹ともうすぐ17歳の16歳。

夏っぽい夏帆とスラリとのびた長い脚の長澤まさみ・・・。

そして・・・ついに綾瀬はるかからお兄ちゃんに選ばれなかった主人公のドラマ・レビュー完走である。

なんだろう・・・それなのにこの達成感のなさは・・・。

まあ・・・主人公の妹と主人公のパートナー目当てだったからな。

いいのだ・・・すべては結果なんだから。

所詮、綾瀬はるかからお兄ちゃんに選ばれなかった主人公のドラマなんだもの。

で、『ようこそ、わが・最終回(全10話)』(フジテレビ20150615PM9~)原作・池井戸潤、脚本・黒岩勉、演出・中江功を見た。印象としては例年より早めの春ドラマのフィニッシュである。全10話の嵐だな。一話少ない「書店」はすでになく、一話多い「どS」がトリである。「どS」・・・あなどれないな。シークレットゲストが真犯人ということで・・・大物でなければ成立しない展開である。ニット帽の男(市川猿之助)で・・・一部お茶の間のお嬢様方はガッカリだが・・・昨年の大河ドラマの徳川家康(寺尾聰)と豊臣秀吉(竹中直人)がキャスティングされた流れで「風林火山」(2007年)の武田信玄なのか・・・。誰得なんだ・・・。

まあ・・・原作の主人公・太一(寺尾聰)の倉田ファミリーに視点を移し、長男の健太(相葉雅紀)を主人公に仕立てなおしたドラマ版。寺尾聰(68)~相葉雅紀(32)~有村架純(22)まで幅広いターゲットを狙ったホームドラマとして一定の評価はできる。

たくさんの小事件に対して・・・それぞれの真犯人が明らかになっていくというミステリとしても小学生なら楽しめたのではないか。

視聴率的にも前作「デート」の平均12.5%とそれほど変わらない数字で・・・この時代なのでまずまずと言える。

もう、視聴率10%越えたら・・・大成功でいいんじゃないかという時代なんだな。

いいのかよっ。

主婦の専業主婦の占める割合が五割を切ったというクイズ番組のデータがあったが・・・専業でない主婦というのも・・・本当はよくわからない。

なんとなく・・・兼業主婦というのは・・・農家のおかみさんレベルの物凄く大変なポジションのような気がする。

夫婦揃って高額所得者は別格としても・・・いろいろと困難な時代になっているのは明らかだよねえ。

高所得の女性と結婚したい男が増えて行くのはある意味、自然な流れとも言える。

男の魅力次第だもんな。

春ドラマは「結婚の条件」という意味でも・・・いくつかの例があったわけである。

アイムホーム」はまだ未完だが・・・資産家の娘と結婚した男の話だし、「書店」ではサラリーマンが働く財閥のお嬢様と結ばれている。「倫太郎」では主人公が結婚どころか恋愛もしないのだ。「アルジャーノン」のヒロインも理想の男としか結婚しないムード。「どS」は問題外だが・・・主人公はパートナーをお見合いで求めたりしている。そして・・・この作品では母親はヒロインを嫁候補としてもてなすのだが・・・主人公にその気があるのかどうか・・・まったく読めないまま終了だ・・・。

大丈夫なのか・・・日本と・・・スタッフがふと思っているような気がするよ。

古き良き日本のマイホームパパ・太一は・・・出世コースから外れつつも家族を大切にする男。

そのために・・・健太は自由業という勝負の泥沼に足をつっこんでいる。

母親の珪子(南果歩)はどこか不気味な明るさを持った由緒正しい専業主婦である。

本人に悪気があるわけではないのだが・・・ある種の人間の神経を逆なでするようなところがある。

「無期懲役の判決」を受けて「よかった・・・これでまた人が殺る」と嘯く被告が実在する国では殺されてもおかしくないキャラクターなのだ。

そういう家族に囲まれて・・・「私がしっかりしなくちゃ」と頑張る健太の妹・七菜(有村架純)なのだが・・・所詮・・・井の中の蛙でカエルの子はカエルなのである。

親友に裏切られるという初歩的なミスを犯すのだった。

なにしろ・・・裏切るような人間は親友とは呼べないのだ。

だが・・・ニット帽の男と健太の出会いから始る名無しさん事件は・・・倉田ファミリーを少しだけ変革していったという話だったらしい。

そう言われるとそうなのかもしれないが・・・何がそうだったのかはよくわからないのである。

七菜は言う。

頼りないお兄ちゃんだと思ったけど・・・私を庇ってナイフで刺されてくれました。

お母さんは・・・いつも明るくて・・・家に放火されそうになっても笑っていて・・・それも一つの取り柄なんだと思いました。

お父さんは・・・給料をもらってくるし・・・浮気したりギャンブルしたりもしない。それってすごいことなんだなあ・・・と。

ああ・・・倉田家・・・よく今まで無事にこれたな・・・とつい思ってしまうのだった。

ナカノ電子部品の総務部契約社員のシルビア/西沢摂子(山口紗弥加)と太一は真瀬部長(竹中直人)に最後の決戦を挑む。

夫のピンチに珪子は青葉銀行人事部長代理・八木(高田純次)とホテルで密会。

昔の好(よしみ)で協力を求めるのだった。

太一と珪子と八木は青春を共有した仲間だったのである。

彼らは善意という同族意識で・・・結束している。

もっとも・・・珪子に頼まれないと八木は動かないのでそれなりに下心もあるわけである。

コネ入社で父親が顔の効く男らしい部下の若葉(田中美麗)からの情報もよせられ・・・真瀬部長の過去が明らかになっていく。

真瀬部長はかって青葉銀行から融資を打ち切られ社長が自殺した会社に在籍し・・・自らも多額の負債を背負った。さがみドリル社は当時、なんらかのつながりから真瀬部長の借金を肩代わりしたらしい。

真瀬部長はナカノ電子部品の営業職を得て、会社の利益に貢献しつつ、非合法な手段で私腹を肥やす不気味なビジネスマンに仕上がったのである。

イーグル社の社長、さがみドリル、真瀬がグルになり・・・計画倒産でナカノ電子部品から三千万円を巻き上げるという詐欺行為が成立したのだった。

持川社長(近藤芳正)は会社を食いものにされているのに気がつかないお人好しさんだったらしい。

最後の最後まで肝心の裏をとらないというつめのあまい太一だったが・・・自分の失策を挽回したいという高橋(橋本稜)の情熱でドリルの本当の納入先の協力が得られ・・・ついに真瀬部長の不正は立証されるのだった。

何代にも渡る総務部長の部下として・・・真瀬部長の不正と戦い続けてきた領収書刑事シルビアはついに報われるのだった。

持川社長に慰留された太一はなぜか・・・シルビアを後継者に指名すると・・・青葉銀行の閑職にと戻って行く・・・なんだ・・・この特命出向部長的な幕切れは・・・。特命出向部長シリーズでも始めるつもりか・・・。

確かにシルビアは真面目にコツコツやるタイプだが・・・いきなり管理職というのは・・・社内的にもいろいろ問題があるんじゃないか・・・。

結局・・・太一と健太をつなぐ人物となったシルビアは結局・・・円タウン出版社の怪人物・蟹江秀太朗(佐藤二朗)と結ばれる。

蟹江は天才的な編集者で・・・あえて・・・世捨て人として高円寺に潜伏しているというドリームな展開である。

「ビリギャル」ならぬ「ビリオジ」が明日香(沢尻エリカ)と健太の共同作業で出版されるのがオチである。まさに楽屋オチだ・・・。

ニット帽の男は社会に適応できなかったお坊ちゃんである赤崎信士(市川猿之助)・・・。

彼もまた元編集者である。

明日香とはパーティーで知り合い・・・しつこく交際を迫った過去があった。

しかし・・・明日香自身は顔も覚えていない相手だったのである。

ジャーナリストとして・・・それはどうかと思うが・・・まあ、人の顔を覚えられないことってキッドには良く分かることなので・・・許容範囲である。

赤崎は明日香に声をかけようとして健太に邪魔をされ・・・暗い情念の矛先を・・・健太へのストーカー行為に転換してしまったらしい。

結果的に・・・嫌がらせをすればするほど・・・健太と明日香の仲を深めるという悪循環。

赤崎は倉田家の不幸を楽しむことが最優先になっていたわけだが・・・健太と明日香がイチャイチャしていることに苦悶もしたのではないか・・・・。

第三の盗聴器を発見して・・・罠を仕掛け・・・ついに赤﨑の氏名と住所を突き止める健太。

しかし・・・直前に赤崎のことを思い出した明日香は名刺から・・・それを事前に察知していたのである。

明日香は衝動的にストレートな復讐・・・自転車のサドル切り裂きを実行してしまう。

えーと・・・それは健太への愛が芽生えたっていう解釈でいいのかな。

愛するものを殺されたものはゴルゴ13の依頼者になる的な・・・。

「あなたはもう名無しさんじゃないんだ・・・あなたを絶対に許さない」

健太はそう言うが・・・氏名も住所もわかっているご近所の人が少し常軌を逸しているととんてもないことになる事例を知らないのか・・・。

とにかく・・・赤﨑は逮捕され・・・一件落着である。

七菜は地方局の面接試験で・・・週刊誌ネタを郵送した赤崎の最後の罠を「自分語り」で乗り越える。

「ストーカーに狙われたことで家族の大切さに気がついたのです」

静岡のテレビ局の偉い人は感動して七菜を採用するのだった。

七菜は・・・地方局のアナウンサーとしてめざましテレビに登場・・・ま、これも一種の楽屋オチなんだな。

わかる人だけにわかればいいの方向性が微妙に間違っているような気がするがこれは好みの問題なのかもしれない。

最後は明日香のちょっとした間違いを健太が見抜いて愚直な正義が勝利をおさめる。

たとえ・・・社会に不健全な人が発生しても多くの人が健全なら大丈夫という話なのである。

しかし・・・呪われた倉田家には・・・人知を越えた感じの黒い影が迫る・・・。

妖怪「花壇あらし」である。

2015年度倉田家嫌がらせ事件容疑者ランキング

①位 逆光の人影(今度こそ・・・)

②位 健太(主人公的妄想)

③位 七菜(ツッコミ上手になりすぎ)

④位 銭湯主人(富士山の怨み)

⑤位 珪子(能天気大賞)

⑥位 太一(トッピングかけすぎ)

⑦位 青葉銀行人事部長代理(人妻狙い)

⑧位 蟹江タウン誌編集長(銭湯でわいせつ行為)

⑨位 岡田(軍師)

⑩位 ガス(にゃんこ星人)

名無しさん殿堂入り

コピーキャット万里江(逮捕)

盗聴マニア波戸(逮捕)

怪盗有閑マダム(逮捕)

文書窃盗犯・高橋(改心)

怪文書送信犯・平井(改心)

野瀬部長(謝罪)

ニット帽の男・赤崎(逮捕)

明日香(厳重注意)

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2015年6月15日 (月)

彼方なる峯の白雲・・・夕暮れに・・・見れば哀しも世の事思ふに(井上真央)

幕末の情感というものが維新までにいくつかのピークを迎えるとすれば・・・文久四年と元治元年にまたがる1864年はひとつの重要な頂きを形成していると言えるだろう。

風雲急を告げた文久年間の終焉と・・・ついに幕をあける幕末戦乱の予感。

京都を追放された長州藩を始とする尊皇攘夷派の志士たちは・・・反乱分子として都に潜入、潜伏する。

治安活動の任にあたる新選組を始とする取締諸隊が台頭し公武合体派の意を受けて都で詮議をする。

人斬りたちは攻守所を変え闇に身をひそめる。

一触即発の緊張感である。

クロフネによる侵略の恐怖に怯えるものとそれを受容しようというものの駆け引きはついに全国津々浦々に伝播している。

関東では天狗党が挙兵し、長州には四カ国艦隊来襲の時が迫る。

出入りの禁止された京都へ・・・長州藩士たちはかっての同志を頼り出没する。

人々の心は・・・朝廷と幕府の間で・・・鎖国と開国の間で・・・戦争と平和の間で振り子のように揺れるのだ。

長崎、下関、萩、三田尻、大坂、淀、京、江戸・・・男たちは海路、陸路を通じて往還を繰り返す。

天涯孤独の男・・・久坂玄瑞が・・・旅の途中で夕暮れに峰にかかる白雲を見る。

そこに見出したのは・・・明日をも知れぬ我が身か・・・。

それとも・・・一人・・・家を守るただ一人の家族・・・二十歳を過ぎたばかりの妻か。

そして・・・思うようにならぬ世のことを嘆きながら・・・けして家路にはならない旅を続ける玄瑞。

東へ西へ。

まさに・・・志士達の心が燃える幕末の京都へ・・・。

そして・・・旅の空から・・・玄瑞は文に手紙を書くのである。

「本当に歌にもならぬ・・・つまらないことなのです・・・急ぐ旅なので野宿をいたします・・・草枕などをしていると風で目が覚めます・・・朝の風は冷たいのです・・・月光は清いけれど秋風は寒いのです・・・」

それが最後の秋になるとは知らぬ身なのである。

で、『燃ゆ・第24回』(NHK総合20150614PM8~)脚本・大島里美、演出・橋爪紳一朗を見た。例によってシナリオに沿ったレビューはikasama4様を推奨します。今回は添役だった益田氏の支流の周布政之助に実権を奪われて地方回りの後、返り咲きを狙って暗躍する祐筆・椋梨藤太の描き下ろしイラスト大公開でお得でございます。権力闘争に敗れて左遷された後・・・消息不明だったのが残念ですな。いわば・・・椋梨藤太は実直な苦労人で・・・あくまで藩という国家の安泰を考えていたとも言える人物。村田清風や坪井九右衛門などが登場しないので・・・藩政における派閥の対立がもう一つ曖昧なのが辛いところでございます。長井雅楽がいつの間にか切腹もせずに退場したりと・・・見せ場を作る気がない・・・あるいはそういう部分に興味がないというテイスト・・・フラストレーションがたまります。ここからは・・・椋梨藤太は悪役に徹すると思いますが・・・反対勢力一掃の密談を立ち聞きするのはやはり文がくのいちだった証拠と割り切るしかありません。まあ・・・妄想の文は立ち聞きの必要のない女ですけれども~。とにかく・・・ここからは椋梨藤太が藩内政治の演技者の要として夫人とともにドラマを引っ張ってくれたらいいなあ・・・と祈る今日この頃でございます。たとえ・・・主軸は深夜アニメ風大河ドラマだったとしても・・・。

Hanam024文久三年(1864年)九月、新撰組を拝命した壬生浪士は主導権を巡って水戸派と試衛館派が対立。試衛館派の近藤勇水戸派の首領・芹沢鴨を暗殺し、主導権を握る。水戸派は次々に粛清され、土方歳三・沖田総司・山南敬助ら試衛館派が主流となり、年の瀬には近藤勇を頂点とする新選組が成立する。十二月、朝廷は参与会議を設置し、幕府と雄藩諸侯による公武合体政治を模索する。都落ちした三条実美らは警護に当たる遊撃隊首領・来島又兵衛らを扇動し、武力をもって京都に進発し長州の無実を訴える進発論を提唱。京都に残留した久坂玄瑞は情勢判断から進発派に自重を指示。文久四年一月、進発のための偵察目的で高杉晋作は脱藩し京都に潜伏。文久四年(1864年)二月、元号は元治に改元される。将軍徳川家茂の二度目の上洛。幕府と朝廷は横浜港の閉鎖をめぐり対立する。京都における幕府と薩摩の軍事力の優勢を説き桂小五郎が高杉晋作を説得、帰藩を促す。元治元年(1864年)三月、フランス公使ロッシュ横浜着。関東で水戸藩尊皇攘夷派の天狗党が反乱を開始。高杉晋作は帰藩し萩城下・野山獄に投獄される。

京都からの追放を命じられた長州藩士は連絡のための藩屋敷に留守役を残し、大坂藩屋敷に撤退する。しかし、情勢を探索するために池田屋、吉田屋など懇意の旅籠や料亭などに拠点を構築していた。

久坂玄瑞と桂小五郎は京都市中に潜伏し、大坂藩屋敷の家老・益田親施と連携する。藩主の嫡子・毛利定広は謹慎を命じられ、長州藩で唯一残った軍艦・癸亥丸に乗船して瀬戸内海を西に向かっている。

大破した庚申丸は復旧工事中である。

このために・・・長州軍の海路往還は一便となっている。

進発派の暴発を抑えるために高杉晋作は廻船に乗り込み、大坂藩屋敷に入る。

この時の独断行為が脱藩行為とみなされるわけである。

下関、三田尻、萩、山口に分散した藩政は混乱し、連絡系統は乱れている。

高杉は・・・京都の反長州勢力の実力を視察するために洛中へと歩を進める。

潜伏中の長州忍びたちは薄氷を踏む思いで高杉を迎えた。

四条通りの呉服問屋・岩国屋が会合場所である。

京都に潜伏中の久坂玄瑞、吉田稔麿らは夜陰に乗じ、市中警戒の目を逃れ、町人に変装して会合場所へと向う。

しかし・・・京都を制する公儀隠密の諜報網はその動向を補足していた。

久坂らは泳がされていたのである。

だが・・・手柄を求める新撰組隊士たちは独自の捜索を展開していた。

夜回りをする新撰組のネズミたちは・・・路上の久坂玄瑞に目を光らせる。

通報を受けた沖田総司は二人の部下とともに・・・洛中の派出所を出る。

「そこのもの・・・またれよ」

「なんでしゃろ・・・」

「このような夜分にどこへ行く」

「遊郭に遊びに行かれた旦那様のお使いで店に戻りますのや」

「店の名は・・・」

「三条の増田屋でおます」

「ふ・・・長州の田舎侍にしては・・・京言葉が上手なこった」

「・・・」

「おめえの顔は見かけたよ・・・長州の久坂だろう」

「なんのことやら・・・わかりまへんな」

「ちょっくら・・・顔かしてもらおうか・・・おいら聞きてえことがあんだよ」

「ふん・・・新撰組は田舎者揃いと聞いたが・・・訛りが強くて何を言ってるかわからんな」

「ふん・・・江戸から見ればそっちが田舎っぺなんだよ・・・あんた医者坊主なんだろう・・・おいらはこれでも白河藩のれっきとしたお武家様だぜ」

「・・・」

「で・・・どうする・・・大人しく・・・ついてくれば・・・悪いようにはしねえよ・・・京都から出て行ってもらうだけだ・・・あんた・・・やっとうの方はからきしだろう・・・」

北辰一刀流の免許皆伝である沖田総司は幽かに殺気を見せる。

その時路地から白い手がのびた。

「玄瑞はん・・・こちらへ・・・」

玄瑞は誘われるようにフラリと身体を揺らすと・・・その姿が闇に消える。

「お・・・」

面妖な成り行きに沖田総司は緊張する。

目の前から一人の大柄な男が消え失せたのである。

「こりゃ・・・あやかしか・・・」

月光が冷え冷えとした京都の街に注いでいる。

沖田は気配に気がついた。

前後から二つの人影が近付いてくる。

「気をつけな・・・なんか・・・くるぜ」

「・・・」

隊士の一人は早くも抜刀する。

現れたのは忍び装束の女だった。

「くのいちか・・・」

前方のくのいちが棒手裏剣を投げる。

沖田は抜き打ちで手裏剣を打ち返した。

「ぎゃっ」

背後で隊士の声が上がる。

うつ伏せに倒れた隊士は後方のくのいちの棒手裏剣を背中で受けていた。

残った隊士は後方のくのいちに切りかかるが一撃をかわされた時には首が虚空を待っている。

「おりゃ」

沖田は一気に前方のくのいちへと距離をつめ、必殺の突きを放つ。

しかし、くのいちは路上の塀へと飛びあがっていた。

「ほほほほほ」

背後から飛来した棒手裏剣を叩き落としながら、沖田は距離をとった。

二人のくのいちはすでに塀の内にある樹木に身を移している。

「さすがは・・・新撰組一の美男子・・・男前の上に剣の腕も見事どす」

「なんだよ・・・つれねえな・・・顔ぐらい見せな」

「ほほほほほ・・・今は名乗るだけにしておきましょうぞ・・・妾は綾小路・・・」

「妾は錦小路・・・」

「今宵は・・・これにて・・・」

「待ちやがれ」

身を翻したくのいちたちは闇に消えていた。

路上には茫然とした沖田と・・・二つの隊士の骸が残るばかりである。

「こりゃあ・・・京の都ってやつは・・・あなどれねえな」

文は沖田から玄瑞に心を移した。

玄随は辰路に手を引かれ・・・約束の店に向かっている。

どうやら・・・闇にひそむ・・・都のしのびは・・・今は長州に味方をする気らしい。

文は今度こそ・・・辰路の上忍を突きとめようと心を澄ます。

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2015年6月14日 (日)

ふりそで刑事どえす(多部未華子)デイジーの花言葉は無邪気で平和なお人好し(大倉忠義)

ドラマの世界では庶民が優雅な暮らしをしている描写がある。

もちろん・・・タイアップなどの営業により・・・いつのまにか・・・リッチな生活空間になってしまうという本末転倒の事態もあるわけだが・・・やはり・・・スターに相応しい背景というものをスタッフが表現してしまうからだろう。

少し前のドラマ「若者たち」では貧乏を絵に描き過ぎて・・・普通の生活をしていたつもりの貧乏人の反感を買った惧れはある。

「アイムホーム」は資産家の娘と結婚したので設定的に問題ない。

「ようこそ、わが家へ」は銀行員の中流家庭なので許容範囲。

「戦う!書店ガール」は一人暮らしの女子が涙目になった可能性がある。

「Dr.倫太郎」は親から譲られた古い家に住む医師ということで納得できるだろう。

「アルジャーノンに花束を」はそれぞれの格差に応じた展開だがお嬢様の別荘などが許せなかった庶民もいるはずである。

そして・・・「ドS刑事」を代表するBARBER「代官山」の店舗と住宅。

醸しだされる昭和の香り。

夢も希望もない感じの佇まいがお茶の間に優しいのではないかと妄想するのだ。

そういうものが視聴率に反映していたら嫌だなあと感じる今日この頃である。

で、『ドS刑事・第10回』(日本テレビ20150613PM9~)原作・七尾与史、脚本・川崎いづみ、演出・山田信義を見た。今回、レギュラー・レビュー記事を書いている作品で唯一・・・淡々と10回を越えて行く本作品。しかも・・・このゆるい展開で前後篇仕立てである。なんでもありだなっ。今回は「無差別傷害事件」の前科者が「連続殺人」されるという足し算展開である。前提として・・・川崎青空警察署(フィクション)管内に何人もの「無差別傷害事件」の犯人が生活しているわけである。どんだけ、キレやすい住人が集まっている地域なんだよっ。川崎か・・・川崎の話なのか。まあ・・・あくまで神奈川県川崎青空区(フィクション)の話なんだよな。今回、本庁からゲストで榊礼子警視正(青山倫子)が現れる。本庁と言えば警察庁らしいが・・・川崎青空警察署を管轄するのが神奈川県警でもないのかよっ・・・まあ・・・そういうことでいちいちストレスを感じていると無差別殺傷を起こしかねないので注意したい。

まさか・・・脚本家・・・川崎市を東京都だと思ってるんじゃないだろうな・・・。

忘れなさい・・・あくまで架空の話なんだから・・・。

代官様こと代官山巡査(大倉忠義)は本間のおじさんこと本間巡査部長(佐戸井けん太)を父親のように慕っているらしい。

本間のおじさんは梅干しを漬けるのが得意なのである。

代官様の母・啓子(岸本加世子)は手土産の梅干しを喜ぶ・・・申し分のないフラグである。

代休をとった代官様は妹・かおり(瀬戸さおり)とともにホテルへ向かう。

黒井マヤ巡査部長(多部未華子)がお見合いし、緊急欠席したマヤの父親の代理として啓子が付き添うことになったのだった。

相手は外科医の西岡(尾関伸嗣)・・・。

結婚願望が強いらしい振袖姿のマヤはすまして・・・「あ・・・はい」の返答のみ。

「マヤさんは・・・どうして・・・刑事に・・・」

「もちろん・・・犯人をいたぶるためです」

ついに・・・本性を出すマヤだった。

そこで食い逃げ事件が発生する。

無銭飲食をした富樫(松浦祐也)は追跡したマヤと代官様を振り切るが・・・自警団のKDF「川崎デイジーフラッグス」に行く手を阻まれる。

KDFのリーダー・赤沢(小林且弥)は「警察に通報しても・・・無銭飲食では・・・すぐに釈放されるだけ・・・料金は我々が立て替えます・・・彼には罪を悔いあらためるように私たちが支援しますので・・・」とホテルの支配人を説得するのだった。

「地域の若者たちが自警団を組織するなんて・・・恰好いいですね」と相変わらず底の浅い発言をする代官様・・・。

「ふん」と鼻を鳴らすマヤ。

しかし・・・翌日・・・無銭飲食をした富樫は死体で発見されるのだった。

死因は胸部を鋭利な刃物で刺されたこと。

捜査を開始した川崎青空警察署の刑事たち。

何故か、刑事一課長・白金不二子(吉田羊)に従順な態度を示すマヤに・・・有栖川係長(勝村政信)は感動する。

「いつのまにか・・・あの面倒くさい黒井刑事を飼いならしたのですか」

「飼いならす・・・私はそんなことはしません・・・私は部下にそれぞれの信念に基づいた覚悟で職務を全うすることを望んでいます。私の仕事はすべての責任を取ることです」

「・・・上司の鑑ですね」

部下の刑事たちは有栖川係長にも訓示を求める。

「私は・・・君たちに自由に捜査してもらいたい・・・そしてすべての責任を・・・と・・・問う」

「なんじゃそりゃあ」

やがて・・・不審な白いワンボックスカーの目撃情報が寄せられるのだった。

しかし・・・第二の殺人事件が発生。

被害者の共通点は・・・「無差別傷害事件」の前科があるということだった。

「無差別傷害事件の被害者による復讐」の可能性を考える刑事たち。

しかし・・・マヤの直感は・・・KDFに疑いの目を向けさせる。

KDFの事務所を訪れたマヤと代官様・・・。

「あの後・・・彼をどうしました・・・」

「反省を促して解放しましたよ」

「一体・・・どういう権限で・・・」

「警察は事件が起こらなければ・・・動かない・・・いや・・・動けないでしょう・・・その隙間を我々が埋めるんです・・・自分たちの街の平和は自分たちで守るべきだから」

滔々と自説を述べる赤沢をマヤは蔑むのだった。

「よくわかったわ・・・あなたたち・・・警察ごっこが大好きなのね」

団員たちに浮かぶ憎しみの色・・・。

代官様はハラハラするのだった。

そして・・・マヤは本間のおじさんの梅干しをおいしくいただく・・・完全なるフラグである。

致命傷となった刺し傷は刺した後に「グリッ」と刃先を回転させている点も共通していた。

「グリッ」というイメージに恐怖を感じる代官さま。

「じゃ・・・グリグリならどうなのよ」

「もっとこわいです」

「ともかく・・・犯人はどSね」

「でも・・・止めを刺したら死んでしまうので早く楽になれるんじゃ・・・」

「なるほど・・・苦しみを長引かせた方がどSかもしれない」

不毛な話である。

しかし・・・今度は本間巡査部長が無数の打撲痕を残して殺害される事件が発生する。

マヤは・・・最近出所した・・・無差別傷害事件の犯人の一人が犯行現場の近くで働いていたことに注目する。

その男・・・高橋佳市(松本実)を逮捕したのは・・・他ならぬ・・・本間巡査部長だった。

「じゃ・・・本間のおじさんを殺したのはこいつ・・・」

公僕であることを忘れ私怨に燃える代官様・・・。

「飛猿・・・お前か」

「忍者じゃないよ・・・」

「じゃ・・・あずみか」

「妊娠中です」

しかし・・・高橋は服役後、本間の紹介で真面目に働いていたという。

その日・・・覆面をした男たちに拉致されようとした高橋を本間が救ってくれたらしい。

「何故・・・すぐに通報しなかった・・・」

「だって・・・こわくて・・・」

「・・・」

マヤは怒りに燃える代官さまに刑事としての職務を思い出させるために回転遊具にのせるのだった。

「回します」

「どうぞ」

「警察ごっこの好きな男たち・・・罪を償った元犯罪者たち・・・連続殺人事件と無差別傷害事件をつなぐのは・・・歪んだ正義心・・・」

「正義の心が歪んだら・・・正義ではないのでは・・・」

「その通りよ・・・罪を憎んで人を憎まず・・・刑事の基本よ」

「・・・」

二人は高橋を尾行する。

やがて・・・現れた自警団KDFのメンバーたち。

高橋は白いワンボックスカーで拉致される。

マヤは刑事たちに出動を要請するのだった。

「犯罪を未然に防ぐために害虫は殺す・・・それが正義だ」

高橋を監禁中の現場に踏み込むマヤ。

「ストーカーに見栄っ張りに負け犬に貧乏ゆすり・・・あなたたちはヒーローじゃなくてただの迷惑な人たちよ」

「ひでぶ」

仮面ライダー斬月に良く似た団員・貝藤孝(加門良)はナイフを振りかざす・・・。

しかし・・・意外なことに拳銃の名手だった有栖川はナイフを弾丸で弾き飛ばすのだった。

「耳がキーンとなりました」と代官様。

マヤのムチが犯人たちに炸裂するのだった。

しかし・・・主犯である赤沢は現場から姿を消していた。

貝藤孝たちは赤沢の指示を自供するが・・・「証拠はないでしょう」と嘯く赤沢。

そして・・・取調室に突然現れた榊礼子警視正は赤沢の身柄を本庁に引き渡すことを命ずる。

浜田刑事(八乙女光)たちは「赤沢が本部にいた」目撃情報を持ちかえるが・・・すでに赤沢の身柄は移送されていたのだった。

深刻な表情でシリアスに決める川崎青空署の刑事たち・・・。

今さら・・・そんなことをされてもな・・・。

とにかく・・・お腹を出さなかったマヤはノースリーブで肩を出すのだった。

サービスなんだな。

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2015年6月13日 (土)

あいはあおいはなおりこうさんになるゆめはきせき(山下智久)

ヒトが生まれて何万年かが過ぎてコトバが生まれた。

ヒトは「あ」と言った。

世界は「セカイ」になった。

宇宙は「ウチュウ」になった。

愛は「あい」になった。

母は「ママ」になった。

花は咲いた。

仲間は「トモダチ」になった。

夢は見るものではなく語るものになった。

そして・・・いくつかの夢は叶えられた。

数千年が過ぎた。

夜は輝きに満ちた。

冬はホットになった。

電話はスマートになった。

そして・・・人々は敬い、蔑み、慈しみ、憎み、助けあい、殺し合って・・・不可能を可能にして・・・時を刻む。

人間は砂時計を作った。

砂はさらさらと落ちる。

時は過ぎ去り・・・そして続いて行く。

で、『アルジャーノンに花束を・最終回(全10話)』(TBSテレビ20150612PM10~)原作・ダニエル・キイス「Flowers for Algernon」、脚本・池田奈津子(脚本監修・野島伸司)、演出・吉田健を見た。「こころの時代」で放射線防護学者が学生時代の実習を振り返る。致死量の放射線をマウスに照射し、経過を観察し、マウスが死に至った後は解剖し、放射線がマウスの内部にどのような変化をもたらしたかを考察する。こうして学生たちは知識を深めるとともに「放射線」の持つ恐ろしさを学ぶのだという。「フクシマ」という現実の中で暮らす人々をサポートする知性はこうして育まれたのだ。名もなきアルジャーノンたち・・・無数の言葉を知らぬ動物たちの犠牲で人間は「今」を生きているのである。そういうことが現実にあることを想像させる物語。それだけで・・・このドラマはトレビアンなのだ。人間はそういう世界に生きているのである。

原作が生まれて半世紀。知恵遅れやうすのろまぬけは世界から消え、知的障害者を虐待するものは社会的制裁を受ける時代が到来している。

子育てが割の合わないビジネスとなり、人々の老後を地域社会が心配する世の中。

しかし・・・障害を持って生まれて来た子供たちの親は「ありのまま」を受け入れるしかないのが実情だ。

わが子が普通の子供とは違うことへの苦渋。

しかし・・・それを「救い」として受容することを要請する社会。

理想と現実の中間で・・・人間はおりあいをつけようとあがく。

できることなら・・・アルジャーノン効果が現実のものとなりますように・・・。

神の試練から選ばれたものたちをお救いくださいますように・・・。

悪魔も祈らずにはいられないのだった。

そういう・・・様々な表現の制約を抱えながら・・・見事に美しい着地を決めた最終回である。

実は(木)(金)はかなり内容が重複している。両方ともに「知能」や「記憶」に問題がある主人公。そして・・・背後には親子関係を軸にした人間関係の問題が潜んでいる。なぜなら原作の魂は「アルジャーノンに花束を」から「アイムホーム」へと受け継がれているからである。その中間地点には「鉄腕アトム」や「火の鳥」と言った手塚治虫の諸作品が置かれているような気がする。あるいは・・・脚色されたドラマは双方を経由していると言っても良い。人間は実は「心」についてあまり多くを知らない。しかし・・・多くの人々は自分に「心」があることを疑わない。そういう人々の心に対する無知を・・・「アルジャーノンに花束を」も「アイムホーム」もある程度暴きたてる。

たとえば・・・「アルジャーノンに花束を」では知性化した咲人は・・・知的障害者・咲人の記憶を利用することができるのに・・・知性を失った咲人はそれが不能になってしまう。

それについて説明不要で理解できるもの・・・説明が必要となるもの・・・説明しても理解できない者と・・・お茶の間知性には差が生じるのである。

願わくば・・・それぞれが・・・自分がそれほど知的ではない存在だという自覚に至ってもらいたいものだ。

「私ってバカだったの・・・」と悟ることがお利口さんへの道だからである。

・・・もう、いいんじゃないかな。

望月遥香(栗山千明)は亡き父親・久人(いしだ壱成)の博愛精神に汚染された白鳥咲人(山下智久)の決断を翻意させるために利己性の高い母親・窓花(草刈民代)に救援を求める。

「他の誰かのためでなく自分自身のために時間を使ってほしいのです」

「それが・・・自己中心的なあなたのためなのね・・・」

「・・・妥協点です」

「ドリームフラワーサービス」の竹部順一郎(萩原聖人)は聖人としての久人の功徳を説く。

「お前たちは・・・みな罪人だ・・・しかし・・・真実の優しさを知れば・・・悔い改めることができる・・・あの方は・・・聖なる咲人をお残しになった・・・」

母親の京子(田中美奈子)に金銭的援助を求められ犯罪者となり、服役した柳川隆一(窪田正孝)は・・・聖なる咲人の秘密を知り・・・自らが真実の優しさに触れて癒されたことを自覚する。

聖なる咲人に対して罪人である隆一こそが対等な存在ではなかったのだ。

蔑まれるべきは自分・・・その境地に達した瞬間、聖なる隆一が覚醒する。

聖なるアルジャーノンはALG試薬の副作用によって発狂し、自傷のために死に至る。

アルジャーノンの使徒である小久保(菊池風磨)は超知性により神となった咲人とともに聖なる樹海に遺体を埋葬する。

アルジャーノンの知性化は人間の賢さの徴(しるし)、アルジャーノンの死は人間の愚かさの証(あかし)だった。

すでに・・・超知性によって・・・自分の運命を正しく認識した咲人は「最大限の知性の有効活用の選択結果」として・・・「興帝メディカル産業」社長の河口玲二(中原丈雄)の娘・河口梨央(谷村美月)の進行性要素性障害の治療に専念する。

しかし・・・48時間を越える昏睡状態となった梨央は嗜眠性脳炎を発症し、危機的状況に陥るのだった。

「彼女は救えるはずだ・・・しかし・・・タイムリミットは迫っている」

強化型ALG試薬の投与によって起こる爆発的知能退行の時はそこまできていたのだった。

脳生理科学研究センターの元研究員・杉野史郎(河相我聞)は際どいゲームに感じる高揚感を抑えつつ咲人に聞く。

「次の一手は」

「手術しかありません」

「スタッフは」

「私を施術した脳外科医およびナノマシーン・テクニシャンに術式を説明します」

「15分で」

「ラボから・・・私が開発した試薬が到着したら・・・手術を開始します」

「試薬の名前はどうします」

「仮にWU新薬としましょう」

「wake up(目覚めよ)・・・ですね」

「UとUとでW・・・なんでもありません」

「成功の確率は・・・」

「人為的なミスがなければ百パーセント」

「その数字は・・・科学者としては恐ろしい数値ですね」

「私は科学者である前に・・・奇跡を信じるものですから」

脳生理科学研究センターには蜂須賀大吾部長(石丸幹二)だけが勤務していた。

出勤した遥香は驚く。

「他の研究員は・・・どうしたのです」

「仮眠室だ」

「まだ勤務開始から20時間しか・・・」

「不眠不休で活動できる人間ばかりではない・・・作業効率を考えたまえ」

「・・・」

「君も休息するべきだ・・・もう48時間以上、睡眠をとっていないだろう・・・」

「眠れないのです」

「・・・愛だな」

「もう・・・本当にチャンスはないのでしょうか・・・」

「咲人が退行は避けられないと計算したのなら・・・おそらくそうなのだろう」

「・・・」

「しかし・・・」

「・・・」

「試合終了まで・・・私はあきらめない・・・それに」

「それに・・・」

「これが最後の試合と言うわけではない」

「・・・」

蜂須賀は思索に集中するためにお気に入りの曲のボリュームをあげる。

遥香は咲人の個室のベッドに身を横たえ・・・窓花との会話を反芻する。

「あの子の父親もそうでした」

「亡くなった・・・お父様・・・」

「困っている人を放っておけない人だったんです。優しい人と言えば・・・そうですが・・・家族が困難を抱えている時には・・・意味不明としか思えない」

「・・・」

「私だって・・・母親です・・・できれば・・・咲人を手放したくなかった・・・だけど、花蓮を守るためにはそうするしかなかったの」

「・・・」

「理想の男性を愛して・・・彼がそうではなかったと気がついた時、あなたの愛はどうなるのかしら」

「・・・」

「結局、男が理想に殉じれば・・・女は現実的選択をするしかないのよ」

「・・・」

「それとも・・・あなたは何か・・・特別なことをするのかしら」

「特別なこと・・・」

「たとえば・・・あなたがこの世界の現実と戦うこと・・・」

「私が・・・」

「ええ・・・だって・・・世界は無慈悲なものだから」

遥香は窓花の押しつぶされ歪んだ知性を感じる。

遥香は時計を見る。

秒針は世界の残酷さを示すように時を刻む。

その歩みが止まった時・・・遥香は眠りに落ちていた。

咲人は時計を見る。

そこには遥香が微笑んでいる。

世界で一番の知性を獲得した男を賞賛する微笑み。

(私には奇跡の一瞬があった)(私は時の流れを越えてそれを手にしたのだ)(今・・・私はあるべき現実に着地寸前だ)(しかし・・・この飛翔の間に)(私自身が奇跡を起こしたとしても)(誰も私を責めないだろう)(目の前にいる人間が闇に消える前に)(少し手を差し伸べるだけ)(私が高みにあったことを)(記念して・・・)(遥香・・・どうかわかってください)

咲人は新薬の効果をもう一度再検討する。

(すべては・・・タイミングだ)

研究室の窓辺に気配がある。

聖なる久人の幻影は微笑みかける。

(パパ・・・もう少しだけ・・・時間をください)

久人が声をかける。

「白鳥さん・・・御面会の方が・・・お母様だとおっしゃっているのですが」

咲人は現実に帰還する。

「母が・・・?」

医療センターの中庭で咲人は窓花と邂逅した。

「遥香さんに頼まれてきたのよ」

「遥香に・・・」

「悪い子ね・・・女を泣かせて」

「・・・」

「あなたにお嫁さんが来る日なんて・・・思ったこと一度もなかったわよ」

「・・・」

「この子はなんのために生まれて来たのか・・・毎日毎日考えた・・・地獄だったわ」

「・・・」

「それにしても・・・お父さんと同じようなことをするなんて・・・やはり・・・親子なのねえ・・・そんなところ・・・似なくてもよかったのに・・・」

「お父さんが・・・」

「あんたの面倒みてくれた人がいたでしょう・・・」

「竹部さん・・・」

「あの人のお腹にはお父さんの腎臓が一つ、入っているのよ」

「・・・」

「今のあなたには・・・その・・・リスクがわかるでしょう」

「お父さんが・・・ドナーに・・・」

「私は泣いてとめたのよ・・・やめてって・・・家族のことだけを考えてって・・・」

「・・・」

「それなのに・・・」

「もう一つの別の世界では・・・あなたはもっと惨めだった。世界が今よりずっと残酷だったから・・・あなたの心は押しつぶされて・・・打ちひしがれた・・・しかし・・・世界はずっと優しくなったのです」

「何を言ってるの・・・」

「昨日読んだ小説の話ですよ・・・お母さん・・・僕を生んでくれてありがとう・・・そして・・・ごめんなさい・・・息子として・・・あなたに何一つ・・・報いることができずに・・・」

「咲人・・・」

咲人は老いた母親を抱きしめた。

母親は輝きに包まれた。

だんだんと良くなっていく世界に母と子は生きていた。

河口社長はやりきれなさを敵意に転じていた。

裏切り者を粛清することは・・・支配者の常套手段なのである。

「興帝メディカル産業」の法律顧問たちが蜂須賀を急襲する。

「あなたを刑事告訴する用意があります」

「罪状は・・・」

「研究開発の目的外の資金流用による詐欺罪です」

「私の専門分野について・・・私以外のものが・・・それを立証できるとでも・・・」

「するさ・・・」と河口社長は牙を剥いた。「訴訟沙汰は・・・こちらの専門だ・・・お前から何もかも奪ってやる」

「お好きになさるがいい」

「お前の唯一の成果である・・・白鳥咲人が娘を救えなかった場合・・・即座に訴訟を開始する」

「そんな・・・強迫は必要ありませんよ」

「・・・」

「彼は為すべきことをする・・・ただそれだけです」

「私は・・・私のできることをする・・・それだけだ」

「あなたは・・・彼に実験台を与えた・・・それだけのことです」

「・・・」

「しかし・・・それが・・・あなたの娘にとって唯一の希望なのです・・・咲人にとって私がそうであったように・・・」

「なんて傲慢な男なんだ」

「・・・」

二人の傲慢な男は見つめ合った。

檜山康介(工藤阿須加)は隆一とルーカス・バーガーでランチを食べていた。

「え・・・この店・・・閉めちゃうの?」

老いた店主は微笑んだ。

「このバーガーも食い納めか・・・」

「そう思うと・・・・凄く美味い気がするな」

「お前・・・この間まで食欲ゼロの男だっただろう」

「だって・・・咲人が来てくれたんだ・・・もう大丈夫だろう」

「お前って・・・想像を越えた単細胞だな」

「それ・・・悪口か」

「いや・・・だけどさ・・・あまり・・・期待しすぎると・・・咲人だって・・・神様じゃないんだから」

「・・・わかってるさ・・・でも・・・俺は信じることにしたんだ・・・あいつに出来なかったなら・・・仕方ないってさ」

「ああ・・・そう」

咲人は・・・竹部を訪ねていた。

「申し訳ありませんでした」

「なんだよ・・・お前に謝られるような覚えはないぞ・・・」

「私は・・・あなたの善意を踏みにじった・・・」

「そんなんじゃねえよ・・・お前は最初から天使だったんだ・・・お前が俺に腹を立てた時・・・俺はちょっと驚いただけだ・・・だって・・・天使が怒るなんて・・・想像もしていなかったからな」

「私が天使ですか・・・」

「そうだよ・・・頭が少し・・・回らない奴が・・・誰もがお前みたいな・・・善良な奴になるとは限らねえ」

「・・・」

「馬鹿だって悪賢い奴はいる・・・俺はそういう奴をたくさん見て来たんだ」

「・・・」

「お前は・・・あの親父さんに躾けられて・・・天使になったんだ・・・」

「・・・」

「ここに来る奴は・・・みんな最初はお前と同室にする・・・」

「そうでしたね」

「人をだました奴もいれば・・・人殺しだっている・・・みんな物騒なやつらだ」

「・・・」

「だけど班長だって・・・隆一だって・・・みんなお前に心を洗われたんだよ・・・天使に逢ったら回心するしかないからな・・・お前は・・・そういう役割をしてたんだ」

「私が・・・役に立っていた」

「そうだ・・・俺はお前と言う人間をそういう道具として使ってたんだ・・・ある意味、ひどい話かもしれないが・・・今のお前なら・・・許してくれるだろう・・・」

「私は・・・愚かな時も・・・あなたの役に立っていたんですね」

「みんなのだよ・・・」

「・・・」

「お前は・・・これから・・・もっともっと・・・人様のお役に立つんだろう・・・だから・・・もう行きな・・・でも・・・たまには顔を出せよ・・・ここはお前の家なんだからさ・・・」

咲人は静かに頭を下げた。

遥香は咲人の着替えを届けた。

「オペをするそうね」

「ナノマシーンによるショック療法だ・・・そして魔法の薬の投薬・・・問題は投薬のタイミングだ・・・早すぎれば・・・目覚めない・・・遅すぎればダメージを与えてしまうかもしれない」

「成功したら・・・一秒でも早く戻ってきてね」

「・・・」

「どうしたの・・・」

「退行がいつ始るか・・・わからない」

「それは言わないで・・・」

「強化型を使用した以上・・・神経細胞に深刻なダメージが残る可能性もある」

「こわいことを言うのはやめて・・・」

「元の僕に・・・戻らないかもしれない」

「脳機能が不全になると・・・」

「とにかく・・・退行が始ったら・・・君とは会いたくない」

「え」

「君に見られるのはいやだ・・・」

「何を言ってるの・・・」

「君の言葉を理解できないかもしれない・・・君との思い出を思い出せないかもしれない・・・君を忘れてしまうかもしれないんだ・・・」

「・・・」

「そういう僕を・・・君に見られるのは耐えられない」

「私は・・・」

「僕からのお願いだ」

「諦めるなんてできないわ・・・あなたも諦めないで」

「すまない・・・時間が来たようだ」

遥香は立ちつくした。

医療スタッフに手術の進行手順を告げる咲人。

「患者の問題点は神経細胞の入力拒否です・・・その情報の途絶は連鎖反応し・・・細胞全体が沈黙していく。手術はナノマシーン投入による強制入力と脳細胞活性化において入力拒否の改善を期待できる新薬の投与になります。効力があれば・・・逆の手順で脳細胞全体が覚醒することになります」

医療スタッフは術式の問題点を討議する。

杉野は咲人に語りかける。

「さすがだな・・・短時間で・・・この方法にたどり着くとは・・・」

「すでに・・・基礎研究は終わっていたものばかりで・・・私は組み合わせを提示しただけです」

「あらゆる分野に精通した天才だけに許された選択だよ」

「お願いがあります」

「なんだね」

「私はおそらく・・・手術中にその時を迎えるでしょう」

「なんだって・・・」

「私がその時を迎えたら・・・」

「・・・」

「遥香から・・・私を隔離してほしいのです」

「それは・・・彼女にとって・・・」

「僕のためなのです・・・男の見栄ですよ」

「・・・」

「そっと隠して・・・ここから僕の存在を消してください」

「君が・・・それを望むなら・・・」

「杉野さんは・・・どうするつもりですか」

「君にはお見通しだろう」

「博士のところへ戻るのですね」

「ご明察だな・・・私はあの方をお守りするために・・・このプロジェクトを企画したのだ・・・私には君たちのような天才性はないが・・・悪知恵は働くんだよ・・・先生が窮地に追いやられることはわかっていた・・・」

「あなたがそうするかどうかは・・・フィフティー・フィフティーだと思っていました」

「うん・・・少し・・・迷ったよ・・・君の成果を受け継ぐだけで私は名声を得ることができる・・・しかし、そんなもの・・・天才の下で働く面白さに比べたら・・・」

「あなたが・・・そういう方でよかった」

咲人は別れの儀式を続ける。

小久保の小さな願いを叶えるために・・・同席を許した。

母親・窓花と妹・花蓮(飯豊まりえ)との最後の晩餐・・・。

「僕は・・・信じられないほど・・・料理が下手なんだそうだ」

「私と違って・・・台所に立ったことないんだもの・・・仕方ないわ・・・料理は慣れと経験ですもの」

「また・・・遊びに来てもいいですか」

「どうぞ・・・また兄と一緒にいらしてくださいね」

「・・・」

花蓮のガードは固い。

まあ・・・生き別れになっていたお兄ちゃんが山Pそっくりだったらしばらく他の男は眼中に入らないよな。

小久保は酩酊した。

仕事を終えた隆一と康介はひまわり寮でビールを飲む。

二人は咲人の「ね」のカードを発見する。

「ねずみのねだな」

「康介・・・ひとつだけ・・・言ってなかったことがある」

「なんだよ・・・」

「あの人のこと・・・許してやってくれ」

「誰だよ」

「咲人の彼女さん・・・」

「・・・」

「あの時な・・・大変だったんだ・・・咲人のクスリ・・・副作用が出たらしい」

「え」

「元に戻っちゃうかもしれなかったんだ」

「・・・そんな」

「でも・・・咲人が来てくれたってことは・・・問題が解決したってことだと思う」

「・・・」

「だから・・・仕方なかったんだろう・・・俺たちを門前払いにするしか」

「うん・・・でも・・・」

「なんだよ・・・」

「問題が解決してなかったら・・・どうなるんだ」

「・・・」

「まあ・・・でも・・・どうってことないよな・・・咲人は・・・咲人だから」

「ああ・・・単細胞って幸せだな・・・」

「なんだよ・・・悪口か」

咲人は蜂須賀を訪ねた。

「お疲れ様です」

「どうやら・・・そっちは目途が立ったようだな」

「ええ」

「私も次の一手を考えてみた」

「さすがですね」

「結局・・・神経細胞学的アプローチあるいは化学的な薬物処理には限界があるということだ」

「そうですね・・・脳内物質とレセプターという構造的な問題がありますから」

「そうなると・・・遺伝子工学的アプローチが考えられる・・・しかし・・・それでは君には間に合わない・・・」

「はい」

「だから・・・ATG試薬の投与方法の見直しに可能性があると思う」

「再投与した場合の退行をどう阻止するかですね」

「問題は・・・鍵となるたんぱく質構造の解明だ」

「それには・・・膨大な時間が必要となるでしょう」

「・・・」

「もう一つ・・・退行によるダメージの問題があります」

「うん・・・再投与が可能なほど・・・君の脳細胞が残留するかどうかだな」

「それにおそらく・・・再投与した場合・・・人格の統合が困難になるかもしれません」

「当然、原因となる生成物質のメカニズムを解明しなければならない」

「先生の戦いは続くのですね」

「私の命がある限り・・・」

「先生・・・私は・・・性善説と性悪説について考察してみました」

「哲学か・・・時間があれば・・・じっくり議論してみたいものだ」

「先生は・・・知性が・・・悪を駆逐するとお考えでしたね」

「そうだ・・・合理性があれば・・・弱肉強食の論理は平和共存の論理に劣ると誰もが気がつくはずだ」

「しかし・・・先生は競争を知らない・・・生まれついての天才です」

「・・・」

「私は・・・弱者の気持ちもわかるし・・・強者の気分もわかっているつもりです」

「なるほど・・・」

「ヒトの遺伝子はまだまだ未解明です・・・たとえば・・・言語を使うための文法の遺伝子があるのかどうかさえ・・・わかっていない。雌雄のある動物たちはみな・・・阿吽の呼吸で性行為を行います。その遺伝子はどこにあるのか。餌を認識した動物たちがリアクションとして狩猟を行う・・・その遺伝子はどうなのか・・・善の遺伝子や悪の遺伝子はどうでしょう・・・。私たちの神経細胞は・・・空間を有している。それゆえに電子的なノイズが発生します。その曖昧さが・・・どうやら風味を醸しだしているらしい・・・」

「量子力学的なアプローチか・・・」

「私たちの心は・・・結局・・・幻影を見ているだけなのかもしれません」

「面白いな・・・」

「いつか・・・また・・・先生と愛について語ることができたらと・・・私は願うのです」

「そうだな・・・すまない・・・君に・・・つらい思いをさせてしまった・・・」

「いいえ・・・先生は・・・私に素晴らしい記憶をプレゼントしてくれた・・・それで充分ですよ」

「咲人・・・けれど私は・・・」

「先生・・・お元気で・・・」

咲人は蜂須賀の心に陰りを見出していた。

強靭な天才の心は・・・また繊細で・・・壊れやすいものでもある。

しかし・・・蜂須賀の心を癒す時間は・・・咲人に残されていないのだ。

窓花は遥香を訪ねた。

「ごめんなさいね・・・私にはあの子を説得できなかったわ・・・だって私より・・・ずっと賢いのですもの・・・」

「いいのです・・・お母様・・・無理を言ってすみませんでした」

「いいのよ・・・あなたは・・・自分のしたいようにすれば・・・」

「・・・」

「女は忘れようと思えば忘れるふりができるし・・・我慢しようと思えば結構辛抱強いの・・・なにしろ・・・妊娠したり出産したりするわけですから・・・」

「私には自信がありません」

「そんなもの・・・誰にもないんじゃないかしら・・・ただね・・・私は思うの」

「・・・」

「愛は自由だって・・・」

「愛は自由・・・」

「だから・・・あなたの好きにすればいいの・・・」

そして・・・患者・河口梨央の手術開始の時刻がやってきた。

咲人は自身の感覚器に違和感が生じたのを察した。

(来た・・・もう少し・・・神様・・・あと少しです・・・あと数分の猶予を・・・)

咲人は精神というものの存在を感じる。

全身の細胞がその時の訪れを遅延させるために奮闘しているのだ。

(手術は順調だ・・・すでに・・・タイミングはカウントダウンできる・・・数秒の誤差なら・・・問題ない)

現実が遠ざかる。

聖なる久人が立ち上がる。

(パパ・・・)

(邪魔しないで見えないよ)

(じゃんけんぽんあいきょでしょ)

(パパ・・・グーはチョキに勝てるんだよ)

(10・・・9・・・)

(モニターが)

(パーはグーに)

(3・・・3・・・ああ)

(きっと・・・今だ)

咲人の合図で・・・杉野は投薬チームに開始を告げる。

「咲人くん・・・これでいいんだな・・・咲人」

咲人は意識を喪失した。

杉野は手術室の別の出口から・・・咲人を連れ出した。

咲人の警護チームは・・・咲人を移送する。

遥香の携帯に蜂須賀からの着信がある。

手術は終了した。

堪え切れず遥香は病院へ向かう。

咲人はホテルの一室で目を覚ます。

「伝えなくては・・・ならない・・・今の僕の気持ちを・・・数分後のぼ・・・ぼくに・・・」

咲人はメモを書く。

さくとへ・・・。

ママにあわないで・・・。

かなしませるから・・・。

はるかに・・・。

あわないて・・・てい・・・で。

あ・・・い・・・して・・・・・る・・・・・・カ・・・ふ・・・ふ・・・ら。

あ・・・る・・・じゃのん・・・の・・・おはかに・・・・・・・・・・。

梨央は目覚めた。

遥香は道に倒れる。

咲人は女性が倒れているのに気がついた。

女性は泣いている。

咲人はポケットを探るとキラキラしたものをプレゼントした。

そして・・・微笑んだ。

咲人が歩き去っても・・・遥香はいつまでも蹲っていた。

「一体・・・彼はどうしたというのだ」

白紙の小切手で鼻をかんだ咲人について河口社長は杉野に問いただす。

「彼は・・・知性のすべてを・・・お嬢様に捧げたのです」

「・・・」

咲人は消息をたった。

康介は退院する梨央に花束を贈る。

「咲人さんにも・・・御礼を言わなくちゃ・・・」

「あいつ・・・いなくなっちゃったよ」

「え」

「それに・・・これで絵本ごっこは終わりだ」

「どうして・・・」

「現実では・・・お姫様と前科者は・・・住む世界が違いすぎる」

「そんな・・・」

「お前がそう思わなくても・・・俺がそう思うんだよ」

「・・・」

「じゃあな・・・」

隆一は小出舞(大政絢)の出入りするクラブにやってくる。

「なんだ・・・こいつ」

「ストーカーか」

「黙ってて・・・」

「お前・・・なんでシカトしてんだよ」

「別れ話なんてききたくないわ」

「あ・・・そう」

「なんでよ・・・梨央と彼が別れたって・・・私たち関係ないじゃない」

「お前・・・梨央ちゃんとダチなんだろう・・・」

「・・・」

「気不味いんだよ」

「馬鹿じゃないの・・・」

「・・・」

「私たちって・・・お似合いなのに」

「じゃあな・・・」

「最後にキスくらいしていきなさいよ」

「え」

「サービスよ」

モニターの中で・・・蜂須賀は自殺しようとしていた。

なだれ込む研究員たち。

「ダメですよ・・・ALG-βの過剰摂取なんて・・・」

「君たち・・・」

「咲人くんからの指示で・・・先生を24時間監視していたんです」

「咲人が・・・」

「ええ・・・父が自殺する可能性があるから・・・目を離さないようにと・・・」

「私を父と・・・」

「先生・・・やりましょう・・・彼を取り戻すんです」

「・・・」

「彼はまだ・・・生きているんですから」

「うん・・・そうだな・・・時間は有限だが・・・チャンスがないわけではない」

「新しい研究を・・・」

「始めよう・・・ありがとう・・・諸君」

「ドリームフラワーサービス」に小久保がやってきた。

「僕は・・・アルジャーノンの友達です・・・ここに・・・咲人くんの対等の友達はいませんか」

隆一と康介が手をあげた。

「これ・・・咲人くんからの伝言です」

「あんたも・・・伝書鳩か・・」

「伝書鳩・・・なんですか・・・それ・・・」

「ぽっぽろーっ」

隆一と康介は咲人の端末を手に入れた。

「なんだよ・・・これ」

「アルジャーノンの埋葬地点です・・・きっと・・・咲人くんは・・・そこに」

「・・・」

隆一と康介は冒険の旅へ出発した。

汽車に乗り、川を越え・・・深い森の彼方。

青い薔薇の花園で咲人は眠っていた。

「お姫様かよ」

「これからどうする・・・」

「お前の知らないもう一つの別の世界で・・・僕たちはサマーヌードだったんだ」

「なんだよ・・・それ・・・」

遥香は迷子を拾った。

「大丈夫だよ・・・きっとママはすぐ見つかるから」

「・・・」

「お姉ちゃんとジャンケンしょうか・・・」

「お・・・お姉ちゃん?」

「お姉ちゃんです」

そこへ・・・黄色い風船をもった母親(伴杏里)がやってくる。

「ごめんね・・・お母さん・・・風船もらおうと思って」

遥香は母と子を見送る。

母と子の二つの黄色い風船が風に揺れる。

(私はあきらめない・・・私は必ず・・・あなたを取り戻す・・・私は科学者ですもの)

夏の浜辺・・・。

ルーカス・バーガーを引き継いだ隆一は海の家を開いていた。

康介はハンバーグをやきまくる。

「あいきょでしょバーガー・ツー入りました」

「おう」

浜辺で咲人は客引きをする。

「かわいいね・・・ばーがーたべない?」

水着の女子たちははしゃぐ。

「お・・・また釣れたみたいだぞ・・・」

「ルアーがいいもんな・・・」

隆一は笑う。

康介も笑う。

咲人も笑う。

笑顔に囲まれて・・・今・・・咲人はうれしい気持ちでいっぱいだ。

けれど・・・咲人には夢があるのだ。

いつか・・・お利口さんになること。

きっと・・・夢は叶うものだ。

少なくとも・・・咲人はそう思っている・・・。

そして、時計は静かに時を刻む。

関連するキッドのブログ→第9話のレビュー

Hcal010ごっこガーデン。奇跡の青い薔薇の花園セット。

エリ咲P先輩と二人・・・森の奥で暮らしまス~。ネズミの妖精たちも遊びにきて・・・森の果実を食べたり、キノコを採ったり・・・川で魚釣り・・・はちみつもいただきまス~。クマさんにあったら死んだフリをしまス~。毎日、笑顔でス~。これ以上の幸せなんて・・・この世にないのでス~。でも・・・今日はちょっと暑いのでじいやにかき氷を出前してもらうのです・・・じいや・・・宇治金時ね~・・・アイスクリームもトッピングしてね~

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2015年6月12日 (金)

君の顔が仮面に見える(木村拓哉)あなたの顔も仮面に見える(上戸彩)

「我思うゆえに我在り」と哲学者デカルトが述べて数百年が過ぎた今。

デカルトが存在して思惟したことを信じる人は多いのだ。

今、キッドの拙文を読んでいるあなたが存在して思惟していることをキッドも信じたい。

しかし・・・21世紀になっても・・・人間の心がとこにあるのかは・・・よくわかっていないわけである。

多くの人間は優れた感覚器を持っている。

鏡に映るものが現実を反映するものだと知る人は多い。

しかし・・・たとえば日本語を知らない人がこの文章に接しても・・・なんだかなあ・・・と思うわけである。

視覚障害者には文面を見ることはできない。

このように・・・それぞれの人間は同じ世界に生きていても違う何かを見ている可能性がある。

今回、主人公が「仮面に見えている」と告白したことを・・・「二回目じゃないのか」と感じる人も多いかもしれない。

しかし、前回の告白は「表情がわからない」なのである。

告白された方は・・・「表情がわからないって何よ」と少し戸惑っていたようだ。

お茶の間は「妻の顔が仮面であること」という主人公の認識を視覚的に見せられて・・・主人公と情報を共有している。

一方で・・・主人公には見ることのできない「妻の顔」も見せられているのである。

主人公には「仮面」に見えるが他の人には「仮面」には見えない。

この設定を理解するためにはなかなかに知性を要求されている。

二度目の告白はさらに・・・主人公が自分の状態を他人にわかってもらうことの難しさが表現されるのである。

「あなたは仮面をつけている」と言われて・・・自分が「白い笑い仮面のようなアレ」を装着していると理解できる人はこのドラマを見ているお茶の間の人にほとんど限られる。

主人公の妻は「仮面」を何かのたとえと考えるというのが普通の認識なのである。

主人公は・・・「仮面をつけている」→「表情が見えない」→「相手の気持ちがわからない」と訴える。

しかし、相手は「気持ちがわからない」→「表情が見えない」→「仮面ってなんだよ」と感じるわけである。

今回・・・妻も「夫が仮面に見える」と言い出すのだが・・・その「仮面」が主人公が鏡に映した自分の顔に装着されているものと同じとは限らないのである。

妻は「あなただって・・・表情が乏しくて何を考えているのかわからない」と言いたかっただけかもしれないのである。

もちろん・・・そういう認識はある程度・・・原作の世界観に影響されているという発想もある。

ドラマ版では・・・実は「仮面に見える感染症」のウイルスが存在していて・・・これからみんなが感染し、「仮面に見える人だらけの世界」になっていく可能性もあるわけだ。

まあ・・・それはそれで面白いのだが・・・そうはならないと考える。

で、『アイムホーム・第9回』(テレビ朝日20150611PM9~)原作・石坂啓、脚本・林宏司、演出・七髙剛を見た。このドラマはもちろん「愛の物語」だが・・・人間の心とは何かという問題についていろいろと投げかけてくる。その深みを楽しんでも良いし・・・スルーしても良いという二重構造になっているわけである。「記憶を失うってどういうことなのか」「人間に性格はあるのか」「人を愛することとは何なのか」・・・そういう深みをあれやこれや考える過ぎると時間がいくらあっても足りないことになるわけなので。しかし・・・主人公・家路久(木村拓哉)の事故前と事故後の変化については少し言及したい。

ここで・・・愛というものの本質を・・・「保存」と考える。

本当かどうかは証明されていないが・・・保存には二種類あると言われている。

「自己保存」と「種の保存」である。

「自己保存」についてはそれぞれがある程度・・・共通理解できるだろう。

しかし、「死ぬかもしれないこと」をしたがる人もいるのが人間の面白さである。

一方で「種の保存」はなんとなく・・・高尚な感じかもしれない。「絶滅危惧種を救え」とか「人類全体のことを心配しよう」とか言われても・・・困惑する人も多いだろう。

しかし・・・「エロいことをやりたいか」と言われれば・・・その根底に「種の保存」があることをなんとなく意識することはできるだろう。

「愛」が「保存」である。

「自己への愛」と「種への愛」がある。

ここまで・・・よろしいでしょうか。

基本的に・・・事故前の久は・・・「自己への愛」が強く・・・「種への愛」が弱かった人と考えることができる。

事故後の久はかなり・・・「種への愛」が強まっているわけである。

これを別の言葉で言えば・・・「自己愛」と「博愛」となる。

ここに「家族」が挿入されるのである。

「自分」と「家族」と「全人類」・・・。

「家族」は自分と全人類あるいは全生命の中間点なのである。

主人公は事故前には・・・自分中心すぎて・・・家族と上手に接することができなかった。

事故後には・・・家族を越えて博愛主義になっているわけである。

中間点にある・・・家族と・・・どうやって折り合いをつけるか・・・そういう話なんだなあ。

事故の直前から数年間の記憶を失った久にとっておぼろげながら記憶のある野沢家の人々は懐かしく親しみのわく人々である。

現在の妻である恵(上戸彩)や息子の良雄(髙橋來)には馴染みがないどころか・・・人間とも思えない仮面の存在なのである。

しかし・・・周囲の人々は・・・繰り返し・・・久に「現在の家族を愛しなさい」と諭す。

そして・・・久もなんとか家族を大切にしようと考える。

しかし・・・心はあっという間に・・・昔の家族のところへ向かってしまう。

実は・・・昔の家族は自分の中の記憶にある存在・・・つまり、結局、久は自分を愛してしまうのである。

他人をないがしろにして・・・自分だけを愛してしまう人・・・久の別れた妻である香(水野美紀)はそういう傾向のある久をクズと呼ぶのだった。

昔の久を知る人々は・・・久を「悪」だと言う。

恵も・・・「昔のあなたより・・・今のあなたがいい」と言う。

良雄は・・・昔の久には怯えているほどだ。

一方で・・・昔の久を評価する人も多い。香の父親・野沢和也(寺田農)もその一人であるし、香の娘のすばる((山口まゆ)もそうなのである。妻よりも・・・義理の父親や、義理の娘に評価される男・・・昔の久が・・・家族を苦手としていたことが・・・なんとなく浮かび上がるわけである。

自分でもなく他人でもない・・・家族との距離感を掴めない人は・・・意外に多いのではないかと考える。

このドラマの普遍性はそこにあると思うのだ。

「別れた妻がガンを発症して病床にある・・・とても看過できない」と久は主張するのであるが・・・一歩、間違えればその論理は「別れた恋人が他の男性と交際している・・・とても看過できない」というストーカー心理と同じなのだ。

別れた妻・香に・・・優しい一面を見せる久は・・・仮面の妻・恵以上に不気味に見えることがある。

それは・・・常に「家族を愛することができない心」を久が潜ませているからであろう。

もちろん・・・それを感じなくてもドラマを楽しむことはできる・・・二重構造なのである。

病室で突如、錯乱してしまう香・・・久は現在の家族を放置して病室に駆けつけ・・・離婚した妻を抱きしめるのだった。

ある意味・・・木村拓哉だから許される・・・展開なのである。

そして・・・鎮静剤で静まった香を残し・・・久はすばるから錯乱に至った事情を聴きだすのだった。

「お母さんは・・・オオイズミヨータローって政治家をずっと追いかけていてやっと本人のインタビューに成功したの・・・雑誌で記事にした後で単行本にする気だったみたい・・・でもドクターストップがかかって・・・記事を他のライターさんが書くことになって・・・きっと口惜しくて頭がおかしくなっちゃったんだと思う」

「相変わらず・・・仕事が一番なんだな」

「私は両親そろって仕事大好き人間の娘だもんね」

「・・・すまない」

「いいのよ・・・別に育児放棄されたわけじゃないし」

「すばる・・・難しい言葉を知ってるな」

「もう、中学生だし・・・ライターの娘よ」

「・・・」

「ごめんね・・・また呼び出しちゃって・・・」

「すばるが謝るようなことじゃないよ」

「だって・・・良雄くんに悪いもの・・・」

「え」

「ねえ・・・写真見せてよ」

「・・・」

「いいでしょう」

複雑な気持ちで家族写真を見せる久。娘に浮気を責められているような気分なのか・・・。

「かわいい・・・」

「平気なのか」

「だから・・・もう子供じゃないもん・・・だって良雄くんは・・・私にとって弟みたいなものでしょう・・・血はつながってなくても・・・」

「・・・」

「こっちがとっちゃったみたいで・・・悪いなって思って・・・だって私も嫌だったもんね・・・お父さんが仕事で帰って来ないの・・・」

「いや・・・家は・・・平気だよ・・・全然、大丈夫だよ」

虚勢を張っているのか・・・目をそむけているのか・・・表情を失う久。

すばるはそういう久を興味深く観察する。

久は落ちつきを取り戻した香を訪ねる。

「なんで・・・もっと早く言ってくれなかったんだ」

「・・・あなたに心配してもらうことじゃないのよ」

「ほっとけないだろう・・・」

「だから・・・あなたと私は・・・もう無関係なのよ」

「・・・」

久は香の説得に耳を貸す気はないようだった。

他人がどう思うかより・・・自分がどう思うか・・・それが久のポリシーなのである。

何よりも・・・久にとって現実の家族から逃避できる大義名分は必要なのである。

久が「大丈夫」と言い切った現在の家族たち・・・。

恵の表情は暗くなり・・・良雄は不安のために妙に明るくふるまっている。

「お父さん・・・家が壊れちゃったよう」

「家が・・・壊れた」

作りかけの模型の家は・・・良雄が床に落したために・・・バラバラになっていた。

「大丈夫だよ・・・また作りなおせば・・・」

「じゃあ・・・なおしてよ」

「よし・・・でもその前に・・・歯を磨いてきなさい」

良雄を洗面所に追い払うと久は恵に言う。

「僕は何を訊いても平気だ・・・昔、僕が何をしたのか・・・話してくれ」

恵が話したくないという気持ちは無視して・・・自分が訊きたいという気持ちを優先する久。

相手のことを思いやらない性分は久の中に居座っている。

悪魔のように囁き続ける久の中の久である。

(そうだ・・・家族なら・・・何でも願いを聞いてくれる・・・俺を一番優先してくれる・・・)

しかし・・・恵にとって・・・それは話すことに抵抗がある・・・忌まわしい記憶なのである。

「話してくれ」

「・・・」

口を閉ざす恵に・・・久は理不尽な憤りを感じるのだった。

恵の中に去来する・・・元カレであるサッカークラブのコーチ・本城(田中圭)の言葉。

「あの日のことが・・・忘れられるわけはない」

恵にとってそれはつらいつらい記憶らしい。

おそらく・・・それは本城と恵のことではなくて・・・久と恵のことなのだろう。

それほど恵を辛い目にあわせておきながら・・・久は何一つ覚えていないのである。

「妻が話してくれないんです」と愚痴る久。

第十三営業部の四月(わたぬき)信次(鈴木浩介)は「それは倦怠期だね」と月並みなことを言う。

「倦怠期を脱するには・・・相手と結婚した時のフレッシュな気持ちを思い出すりが一番さ・・・その人を選んだ理由とかさ・・・」

月並みなアドバイスだが・・・記憶喪失者には不向きな箴言である。

(恵と結婚した理由・・・)

もちろん・・・それが思い出せれば苦労はないのである。

そこへ・・・轟課長(光石研) が現れ・・・「第一営業部の企業買収案件の応援業務」を伝える。

轟課長は喜色満面で部屋を出るが・・・それが「重要書類のコピー作業」と知り、課員一同意気消沈するのだった。

書類ケースを大量に移送中の廊下で・・・久は眠れる森から来た昔の知人(ユースケ・サンタマリア)に遭遇するのだった。

「どちら様ですか・・・」

「いやだな・・・ミスター・ブレイン、私ですよ・・・雲井不動産の竹田の部下のトマリです」

「竹田専務の・・・」

「七年ぶりですかね・・・港区の不動産の件でお世話になりました・・・あの後・・・リーマンショックで大変だったのに・・・上手く売り抜けたと噂に聞きましたよ」

「・・・」

久の中に浮上する曖昧な記憶。

(投資目的の不動産・・・借金して・・・購入して・・・土地価格の暴落・・・返済不能の債務)

追い詰められた息苦しさの幽かな記憶の痕跡。

久は・・・業務を放棄して・・・法務局で登記簿を確認するのだった。

平成19年10月16日 購入

久は確かに高額の不動産を購入していた。

しかし・・・不動産価格は下落して、久は投機に失敗したのだ。

平成21年7月12日 売却

買い手は「森電産」・・・恵の父親・森龍夫(堀内正美)の経営する会社だった。

久と恵が結婚したのは・・・平成21年6月30日である。

「お父さん・・・この土地・・・相場より・・・かなり高値で買ってくださっていますよね」

「久くん・・・記憶がないから・・・仕方ないが・・・あれはビジネスだよ・・・君は私の会社のためにしっかりとしたプランを作って・・・取引を成立させたんだ」

「僕の・・・不動産投資の失敗を・・・尻拭いしてもらったんじゃ・・・」

「誤解だよ・・・確かに最終的には清算することになったが・・・あくまでビジネスの上での問題だ・・・君が気にすることはない・・・」

ここにもまた一人・・・過去の久を擁護する人が現れたのだった。

しかし・・・久の中の久は囁く。

(お前は・・・妻の親の資産が目当てで・・・結婚したんじゃないか・・・恵じゃなくて・・・恵の親の金が欲しかったんだろう・・・)

少なくとも恵の巨乳を見る限り、そうとは断言できないが・・・疑心暗鬼を内蔵した久の心は揺れるのだった。

(僕は恵を最初から愛していなかった)・・・何故か、久はそう思いたがるのである。

久の中に・・・家庭や・・・家族をめぐる狂おしい何か・・・おそらく愛憎が渦巻いているのである。

もちろん・・・それは久が父親に捨てられた子供であったことが関係しているわけである。

父親との再会でそれを乗り越えたはずの久だったが・・・潜在する心の傷跡は久をまだ拘泥しているらしい・・・。

久は最初の傷が作った傷のすべてを克服しなければ過去の自分と決別できない。

そのためには恵の協力は必要なのである。

しかし・・・それは恵にとっても苦痛を伴う作業なのである。

久は・・・まだ・・・そのことに思い至れないのだった。

コピー業務に戻った久は・・・いかにも怪しいメモを発見し・・・それが不正な粉飾決算に結びつくことを洞察する。

「これは・・・運用失敗による2000億の巨額損失を・・・実質評価額1000億の企業買収を3000億の仮装売買で成立させ・・・差額で補てんした・・・金融商品取引法に違反した行為の証拠になる可能性があります」

「おいおい・・・そんな物騒なこと言うなよ」

「まずいですよ・・・」

「よし・・・聞かなかったことにしよう」

「でも・・・上が私たちが知ったことを知ったら・・・」

「・・・他言無用だ」

しかし・・・小机部長(西田敏行)はタヌキ寝入りだった。

「はい・・・あの件が・・・部員にもれまして・・・いえ・・・家路には問題ありません・・・呆けた頭でたまたま当たりを引いた感じですから・・・なにしろ・・・表沙汰になれば・・・逮捕されるのは彼自身ですからな・・・はい・・・その他の部員についてはしかるべく・・・」

小机部長は・・・恐ろしい男だったらしい。

おそらく・・・電話の相手は・・・次回のゲストなのだろう。

あるいは・・・ゲストの敵対者か。

そんなこととは露知らず・・・家族サービスのためのハンバーグを用意した久は現在の家族と過ごす時間はないがしろにして・・・昔の家族のために奉仕活動を開始するのだった。

久にとって離婚した野沢家の人々は・・・もはや「家族」ではないので尽くせるのである。

関係各所に根回しして・・・香のライフワークを可能にするお膳立てを整えるスーパー久。

医師も説得して・・・香のために娘のすばると協力して良き夫ごっこを始める久だった。

その「異常な好意」を受けとめる香。

幻想の家族は・・・過去に達成されなかった理想の家族を追体験するのだった。

香のやりがいのある仕事を応援する娘と夫・・・。

結婚中には実現することのなかった・・・幸福な生活。

幻の野沢家の三人は・・・徹夜でそれを成し遂げる。

その際中に突然、悩みを香に打ち明ける久。

結局・・・久は誰かに甘えたい男なのである。

「妻の顔が仮面に見えるんだ」

「人間なんて誰もが素顔なんて見せていないんじゃないかしら」

あくまで一般論で応じる香。

お茶の間以外には・・・久はイラストでも描いて説明する必要がある。

まあ・・・イラストに描かれても・・・信じない人は信じないよな。

しかし・・・イラストを描くのは禁じ手らしい。

なにしろ・・・ドラマの世界では仮面グッズは販売されていないのだから・・・。

とにかく・・・昔の家族に尽くしたことで・・・久の中で何かかスッキリしたらしい。

香の新しい恋人・清原(山崎樹範)に久はバトンタッチする。

清原がモヤモヤした気分になっても・・・久には知ったことではないからである。

しかし・・・久を責めることはできない。

記憶の障害者として・・・久は必死に「今」を生きているのだ。

だが・・・良雄は父親と過ごす時間を刻々と奪われ、心に傷を重ねて行く。

入院中の前の妻を内緒で見舞う夫に傷つく妻の心情も久には思いやれない。

しかし・・・ついに・・・正直に打ち明ける久。

「香さんが・・・胃がん・・・」

「だから・・・何かをしてやりたかった・・・」

「そうですか・・・」

久はスッキリしたかもしれないが恵は明らかにモヤモヤするわけだ。

恵は「昔のことが知りたい」と要求する夫の要望に応じて・・・ついに事故の時に久が持っていたカバンを提示する。

その意味を判じかねる・・・久。

小机部長が動き・・・久はバーレーンへの海外赴任を命じられる。

久より価値の低い部員たちは研修センターで三ヶ月の猶予を与えられ全員リストラである。

本当にポンコツだったんだな・・・。

第十三営業部は消滅するのであった。

すべては・・・「AOI1113プロジェクト」という不正に絡んだ後に記憶喪失になった久に対する処置であったらしい。

久に想いを寄せるハケンの女・小鳥遊(たかなし)優愛(吉本実憂)は小机に釘を刺される。

「君の好きな家路くんね・・・彼は被害者じゃなくて・・・事件の張本人だからね」

大きく・・・遠回りをして・・・どうやら原作に続く道へと曲がって行く物語。

何故か・・・仮面に見える妻と息子・・・。

結局、企業戦士として辞令には従わざるを得ない身の上・・・。

虚しい思いを抱えて・・・久は例のカバンから離婚届を発見する。

「自分の子供だと思っているの」という恵の言葉。

行ったはずのない遊園地の記念写真。

恵が様々な包帯に感じる封印された過去。

久はメモで誰を愛していたと書きしるしたのか。

様々な謎がフィナーレになだれ込んでいく。

「一緒に行ってくれとは・・・とても言えない・・・カバンから離婚届が出て来た・・・僕は離婚するつもりだったのか・・・」

「ちがうわ・・・離婚届を送ったのは・・・私・・・」

「え」

「・・・」

「だから・・・僕には君が仮面に見えるのかな・・・」

「え・・・」

「僕は君や良雄の顔が・・・仮面に見えるんだ」

「そんな・・・」

「・・・」

「私もね・・・あなたの顔が仮面に見えるの・・・」

「ええっ」

思わず・・・鏡を覗き込む久。

そこにあるのは・・・仮面の顔だった。

「えええ」

久の帰る家は・・・どこにあるのか・・・それとも・・・。

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Ihhc009ごっこガーデン。愛と憎しみのお家模型セット。

アンナたくさんの家庭をまたにかける悪のダーリン・・・そして・・・父なき娘や父なき息子を量産・・・そんなことをしていたら・・・家なきダーリンになってしまうのぴょん。真実の愛に気がついて・・・帰る道を見つけ出して・・・ダーリン久が・・・心から・・・ただいまって言えるように・・・全力でお祈りするのぴょ~ん。僕のどこがスキってしつこく言われてみたいのぴょ~ん。そしてみんなには悪人だけど・・・私だけは特別でしょって言ってみたいぴょんぴょんぴょん・・・・みんなにはクール、アンナにだけはホットなダーロイド、じいや、スタンバイしてね・・・夏はクールバージョンに切り替えるけどね~

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2015年6月11日 (木)

心弱きもの汝の名は人間なり(堺雅人)全人類があなたの患者でも私は違います(蒼井優)

心という曖昧なものをヒトは「心」と名付けたわけである。

「心」は言葉に過ぎない。

犬や猫は複雑な言葉を持たないが・・・心は持っているらしい。

この場合の心とは「考え」とか「思い」の意味である。

犬や猫は餌を見れば「食べたい」と思うし、どうすれば餌を「食べられるか」を考える。

さらに餌を持った人間・・・たとえば飼い主が近付けば、明らかに喜びの感情を示す。

犬は尻尾をふるし、猫はニヤリとするのである・・・それはどうかな。

心の医師である主人公は「あなたとずっと一緒にいます」とか「あなたを救いたい」とか言葉巧みにヒロインに接近する。

「心」という言葉の上では通用するが・・・本当の心は言葉で存在しているわけではない。

言葉にならない心は態度で示すしかないのである。

「医師と患者」は「男と女」になってはいけないと主人公がいくら言葉を重ねても・・・男と女である現実は変わらない。

登場人物の中で・・・最も頭のおかしい主人公がついにその正体を現すのだった。

で、『Dr.倫太郎・第9回』(日本テレビ20150610PM10~)原案・清心海(協力・和田秀樹)、脚本・中園ミホ、演出・水田伸生を見た。男が女を性的に求め、女が男を性的に求めることは人間の生殖行為において極めて自然なことである。しかし、性同一性障害や、性的倒錯の精神的な病理により、それを正しいと言い切ることのできない世の中になっている。そういう個性を抑圧することは基本的人権を抑圧するからである。同時に結婚しない選択や、子供を作らない選択も否定できなくなり・・・自然な方が生きづらいところまで社会は歪みつつあるわけである。恋愛ドラマなんか見たくないという歪んだ気持ちが社会を支配し・・・男と女の自然な気持ちを嘲笑する。ある意味、このドラマはそのアンチテーゼである。なにしろ・・・主人公は「恋愛感情」を心の病と認定し、基本的に自分が恋愛することを禁じ、相手に恋愛感情をもたれたら・・・交際断行しながら・・・できれば全人類を癒したいという・・・超絶的に歪んだ人格の持ち主なのだ。

そんな・・・ヒノリンこと日野倫太郎(高橋楓翔→堺雅人)に恋をした研修医・川上葉子(高梨臨)は留学という名目で体よく海外に追放されてしまうのである。

ヒノリンの幼馴染で外科医・水島百合子(吉瀬美智子)はヒノリンを愛してしまったために・・・ずっと独身を余儀なくされているのだった。

そんな・・・ヒノリンが夢乃/相沢明良(木内心結→蒼井優)と桜の季節に路上キスしている写真が写真週刊誌「fresh」に掲載され・・・世間の下世話な関心に慧南大学病院は揺れるのである。

外科医・水島は・・・「愛しているヒノリンとドクター・ヒノリン」の間で動揺する。

しかし・・・長い歳月で外科医・水島の耐久度は恐ろしいレベルに高まっているので平気なのだ。

一方・・・愛している実の兄を・・・あらゆる女性から遠ざけようとする邪悪な妹・中畑まどか(酒井若菜)は・・・せっかく意地悪してやったのに・・・夢乃と兄が性的な行為をしていることに心の病を深めるのだった。

「こんなの・・・本当のお兄ちゃんじゃない・・・私は信じない」

ちなみに・・・まどかは夫も子供もいる・・・主婦である。

しかし・・・その描写は・・・明らかに病んでいるのだ。

円能寺一雄理事長(小日向文世)は夢乃とヒノリンの支配者として・・・飼い犬に手を噛まれた思いで憤慨する。

「どうなってんだ・・・みんな・・・金にならなさすぎるじゃないか」

「・・・」

「一体・・・あの写真は誰が撮った・・・そして誰が雑誌社に売りこんだ」

「匿名の人間から送られてきたもので・・・」

精神科主任教授の宮川貴博(長塚圭史)は言葉を濁すが、撮影者は部下の女医・矢部街子(真飛聖)である。

そして・・・雑誌社に売り込んだのはおそらく・・・兇悪な母親・菊千代/相澤るり子(高畑淳子)で・・・母親に写真を渡した夢乃が・・・写真を入手したのは・・・円能寺からである。

間抜けだ・・・みんな間抜けなのだ。

「とにかく・・・ヒノリンは謹慎」

「しかし・・・患者が・・・」

「後のことは・・・彼にまかせる」

「御意」

ヒノリンの主治医・荒木重人(遠藤憲一)が返り咲くのである。

荒木はヒノリンの先輩だが・・・ヒノリンの患者でもあった。

「先輩・・・大丈夫なんですか」

「大丈夫だ・・・」

荒木はストレスから・・・摂食障害を起こしていた。

研修医・福原大策(高橋一生)は恨みごとを言う。

「先生・・・恋愛禁止って言ってたのに・・・芸者さんとキスするなんて・・・」

「あれは事故のようなものだ・・・それより・・・荒木先輩が過食しないように注意してくれ」

「過食症なんですか・・・」

荒木は大量のお菓子を診察室に持ち込んでいた。

記者たちが殺到する病院。

「下世話な話ですが・・・医師と患者が治療と称して性的交渉を持つことはよくあるんですか・・・あるとしたら・・・うらやましいな」

「ここは病院です・・・お静かに」

ヒノリン親衛隊の一人・看護師・桐生薫(内田有紀)は必死に対応する。

一方、元芸者の夢千代/伊久美(余貴美子)の営む置屋にも押し寄せる記者たち。

テレビ番組のコメンテーターであり、ベストセラー作家であり、大学病院の医師であるヒノリンと新橋の売れっ子芸者とのスキャンダルはスキャンダルとして申し分ないわけである。

下世話なお茶の間はそういう話が大好きなのだ。

言わば歌舞伎役者の三角関係ネタのようなものだ・・・そのたとえはどうかな。

必死に憐れな夢乃(アキラ)を守ろうとする夢千代。

しかし、夢乃(ユメノ)は強靭な精神で応対する。

「ここは・・・置屋だよ・・・芸者と話したかったら花代出しな」

本来・・・ヒノリンを悪人に仕立て上げるためなら・・・記者たちの好感度をあげるべきだが・・・夢乃にはそういう悪知恵はないのだった。

ただ・・・ヒノリンを困らせてやりたいのである。

もちろん・・・愛しているから。

しかし・・・ギャンブル依存症の菊千代はひたすらに軍師金が欲しいのである。

理事長室に乗り込む菊千代。

「お前誰だ・・・」

「お忘れですか・・・菊千代ですよ」

「お前か・・・今回の件を仕掛けたのは」

「そうですよ・・・五千万円で手をうちますよ」

「お客さんがお帰りだ」

一瞬で騒動の構造を把握した円能寺だが・・・その精神に何が去来するのかは明かされない。

巨大な経済力によって円能寺もまた・・・心を腐食されているのである。

謹慎中のヒノリンを政治力にものを言わせて受診する行政府報道長官の池(石橋蓮司)・・・。

「困るよ~・・・君がいないと私はダメになっちゃうよ~」

「ご迷惑かけてすみません・・・お茶飲みますか」

「飲むよう~」

「どうしました・・・」

「板挟みなんだよ~・・・困っちゃうよ~」

ヒノリンは割り箸で池の指を挟む。

「痛いよ~」

「ですから・・・片方を折っちゃいましょう」

「え~・・・それができないから・・・困っているんだよう」

「しかし・・・一番大切なのは・・・あなた自身です」

「そうかなあ」

「じゃ・・・箸を折らないで指折っちゃいますか」

「やだよ~」

「だったら箸を折らないと・・・」

「そうかあ・・・」

円能寺は荒木とエクレアを食べる。

「せっかく・・・ヒノリンで儲けようと思ったのに・・・もう・・・君に頼むしかない」

「御意」

荒木は明らかに本心を隠しているが・・・もともと怖い顔なのでよくわからないのだった。

追い出した男を呼びもどした円能寺も・・・かなり切羽詰まっているのだ。

円能寺から金を引き出すことに失敗した菊千代は・・・置屋にヒノリンを呼び出すのだった。

夢乃を守りきれないことに憔悴し始めた夢千代も同席する。

「五千万円ちょうだいよ」

「お断りします」

「なんだよ・・・五千万円くらいいいだろう」

「あなたはギャンブル依存症です・・・病気を治すためには資金源を断つことが大切です」

「なんだい・・・娘だけじゃなく、私まで病気にする気かい」

ついに堪え切れなくなる夢千代。

「あんたは・・・いつまで自分の娘を食いものにする気だい」

「あの子は私の娘だよ・・・切っても切れない親子の縁ってものがあるのさ」

「あの子はあんたの借金返すために・・・慣れない仕事を頑張って・・・ついに病気になったんだよ」

「何言ってんだ・・・きれいごとぬかしやがって・・・あたしから円さま・・・盗ったのはあんたじゃないか」

「何を言ってるんだい」

「あたしは・・・器量だって頭の良さだってあんたには負けたさ・・・でも・・・夢乃はあんた以上の芸者になるよ・・・親の仇を娘が打つんだ」

「あんた・・・そんなことを・・・」

狂った菊千代はあることないことを口走る。

そのあることないことに付き合えば夢千代もおかしくなっていくのだった。

夢乃はその気配を察して割って入る。

「もういいよ・・・先生がその気がないなら・・・事を荒立てるまでさ・・・」

「夢乃・・・」

夢千代はユメノの狂気に傷つくのだった。

「先生もアキラのことはあきらめたらどうだい」

「私はアキラさんとずっと一緒にいると約束しましたから」

「ふん・・・できもしない約束なんてするもんじゃないよ・・・」

菊千代と夢乃は共謀して・・・記者会見を開くのだった。

「娘はあの医者に騙されて傷ものにされたんです」

そこへ・・・火元が自分であることに気がついた宮川&矢部は消火活動に乗り込む。

「乖離性同一性障害では・・・記憶に問題が発生する場合があります・・・そもそも・・・この写真はいつ撮られたものですか・・・」

「それは・・・」

「現在のあなたに・・・この時の記憶はあるのですか」

「・・・」

「答える必要はありません」と会場に乗り込むヒノリン。

「日野・・・」と宮川医師。

「日野先生・・・宮川先生は日野先生を援護しようと」と矢部医師。

「ありがとう・・・しかし、これは患者さんのためになりません」

「どういうことなんですか」とざわめく医師。

「これは医師と患者の問題です・・・守秘義務があるのでこれ以上は申し上げられません」

「そんなこといって・・・不祥事を隠蔽する気ですか」

「すべての責任は医師である、私にあります」

「夢乃さん・・・日野さんはああおっしゃってますが・・・」

その時・・・記者たちの間に立ちふさがり・・・夢乃を庇ったヒノリンの行動に・・・。

ユメノの中でアキラが目覚める。

アキラは会場から逃げ出すのだった。

「なんだよ・・・私がいるよ」と菊千代は叫ぶ。

「あなたに訊きたいことはありません」

「畜生・・・なんだい・・・あたしは夢乃の母親だよ」

しかし・・・記者たちの興味はヒノリンにあるのだった。

副病院長兼脳外科医主任教授の蓮見(松重豊)は荒木を訪ねる。

「あのことに今もわだかまっているのか・・・」

「・・・」

「過去に日野くんを巻き込むのは・・・」

「そんなことはないよ」

「しかし・・・」

「日野には・・・俺たちのような思いをさせたくないんだ」

「円能寺は・・・本当は精神科を中心とした新病院の院長に日野を据えるつもりだった」

「・・・」

「それがダメになるとお前・・・そして今度は俺だ」

「・・・」

「そういうことに・・・あいつを巻き込みたくない・・・あいつには患者と真摯に向き合ってもらいたい」

「荒木・・・」

しかし・・・荒木の心身症はついに荒木に出血を強いるのだった。

吐血した荒木は過食症による胃潰瘍を発症していた。

「俺もいたんだよ・・・彼女の葬儀に・・・」

「あれは俺の責任だ」

「違う・・・俺は・・・彼女を愛していた」

「えええ」

被害妄想と短期記憶障害の病状で受診した里中(町田マリー)を診察した荒木は逆転移により・・・彼女に恋愛感情を抱いてしまった。

「本当は・・・別の病院での手術を勧めるべきだった・・・しかし・・・俺は院内のしがらみに負けて・・・愛する女を売ったんだ・・・」

「荒木・・・」

ドクターX的なものになった外科医・水島百合子は緊急手術で荒木を救命する。

「先輩・・・」

駆けつけたヒノリンに荒木は告げる。

「優秀な精神科医であるためには優秀な主治医が必要だ・・・俺は・・・今、ひとつの山を越えた・・・お前も越えてみろ・・・」

「山ですか・・・」

「まあ・・・とにかく・・・お前はお前の患者に向き合えってことだ・・・」

ヒノリンの親衛隊長として・・・日野家に食糧支援する百合子・・・。

「あの時・・・桜が咲いていたから・・・彼女が患者になる前よね・・・」

「そうだ・・・」

「あの時・・・キスしたのは・・・ユメノさんだったのかしら・・・それともアキラさん」

「さあ・・・まだ・・・病気に気がついていなかったから・・・」

「大事なことよ・・・」

「しかし・・・あれは事故みたいなもので・・・」

「それは・・・あなたの逃げ口上じゃないの・・・」

「え」

「お母様のことがあるから・・・あなたは自分に恋愛を禁じている・・・」

「医師として・・・恋愛感情は・・・」

「いいわ・・・でも・・・これだけは覚えておいて・・・女にとってキスは二通りあるの・・・一生忘れたくないキスと死にたいくらい忘れたいキス・・・」

「水島・・・」

「私・・・帰る・・・明日早いから・・・」

去って行く百合子をヒノリンは追わない・・・。

その頃・・・夢乃の不在を埋めるために小夢(中西美帆)が懸命にお座敷を務める。

「池さま・・・こちら・・・手のなる方へ」

「小夢・・・お前はかわいいなあ・・・」

小夢が去ると池は割り箸を割るのだった。

「新病院の件は・・・あきらめてくれ」

顔色を変える円能寺。

「大臣の汚職が明るみに出そうなんだ・・・そっちにも査察が入るかもしれん」

「ふざけんな・・・元々・・・そっちが持ちかけた話じゃないか・・・今までいくら使わされたと思ってんだ・・・俺はお前に小遣あげる親戚のおっさんじゃねえぞ・・・馬鹿にしてるのか」

ついに・・・逆上する円能寺。

円能寺もまた・・・ある種の病に冒されているのだった。

円能寺は自分を全能の神様だと信じているのである。

大きすぎる経済力を持った人間が陥りやすい病である。

彼らは思う。金で買えないものはないと。だから・・・自分は神だと。

帰宅しない夢乃を案じて憔悴する夢千代。

「菊千代があんなことを思っていたなんて・・・私のせいで・・・夢乃は」

「あなたのせいじゃありません・・・夢乃さんはきっと帰ってきますよ」

夢乃は夕暮れの階段に腰掛けている。

百合子はヒノリンを電話で呼び出す。

「日野先生・・・急患です」

「しかし・・・僕は謹慎中で・・・」

「先生でないとダメなんです・・・特別な患者さんです」

「夢乃さんが・・・」

ひのりんは診療室に駆けつける。

夢乃は箱庭療法の砂を撫でていた。

「おまたせしました・・・」

「先生・・・アキラを消してやってよ・・・」

「ユメノさん・・・ユメノさんとアキラさんはひとつになれますよ」

「だけど・・・アキラがいると・・・うまくいくこともうまくいかないんだ・・・」

「あの時・・・アキラさんを感じたのですか」

「よくわからない・・・アキラが・・・私の邪魔をしたんだ」

「それは・・・アキラさんとユメノさんが融合し始めたってことです・・・あなたの病気は快方に向かっているんですよ」

「先生・・・どうして、アキラがいいんだい」

「ユメノさんもアキラさんも大切な人格です」

「マザコン同志だから・・・」

「・・・」

「ふ・・・私、自分で地雷を踏んじゃった」

「ユメノさん」

「つまり・・・それって自爆じゃないか」

「ユメノさん・・・」

「じゃ・・・先生・・・アキラの恋を叶えてやっておくれよ」

「え」

「アキラはね・・・生まれて初めて・・・恋をしたんだよ・・・先生に・・・」

「私は医者です・・・患者とは・・・男と女の関係にはなれません」

「ずっと一緒にいてくれるんじゃなかったのかい」

「もちろん・・・医者として・・・」

「それじゃ・・・ダメなんだよ・・・アキラの苦しみは終わらない・・・また裏切られたってことじゃないか・・・先生を信じて・・・また裏切られたってことなんだよ」

「・・・」

「じゃ・・・さよなら・・・もう・・・お会いしません」

去って行く夢乃。

ヒノリンは苦悩する。

(私は医者だ・・・私は恋愛はしない・・・彼女は患者だ・・・恋してはいけない相手だ・・・それで・・・いいのか)

ヒノリンの心の殻は破れた。

(いやだ・・・いやだ・・・彼女と・・・別れるなんて・・・耐えられない)

ヒノリンは走りだす。

百合子は驚いてヒノリンを見る。

しかし・・・ヒノリンの目に百合子は映らない。

ヒノリンが求めているのは夢乃だけ。

気配に気がついた夢乃がふりかえろうとする。

ヒノリンは夢乃を抱きしめる。

ヒノリンは夢乃をつかまえた。

求めあう心と心。身体は心に従って一心同体となって・・・。

ユメノとアキラは一つになって・・・。

ヒノリンとユメノとアキラの三角関係の終了。

唖然として二人を見守る・・・病院の人々・・・。

これは・・・もう・・・フィナーレだよな。

来週は長いエピローグか・・・。

それとも・・・ヒノリンを・・・ユメノが手玉に・・・。

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2015年6月10日 (水)

フィナーレはオールナイト書店で(稲森いずみ)ウェディングドレスはサービスです(渡辺麻友)

書店とは書籍を売る店である。

書籍が印刷されるようになって数世紀が過ぎて今や、書籍はどこにでもある。

しかし・・・その歴史は曲がり角に差し掛かっている。

もちろん・・・明日、書籍が消え、書店が消えるようなことはないだろうが・・・書籍そのものの存在感はここ数年でかなり薄くなっているのではないだろうか。

もちろん、それは少子化の影響も大きいだろう。

やはり・・・新しい本を買うのは新しい人たちだからだ。

「大量」の意味には様々なものがあるが・・・「大量」の中に特殊なものが混じっていることが「良質」に関係がある。

絶滅危惧種が保護されるのは遺伝子の多様性が有益と考える人々がいるからだ。

しかし・・・「書籍」はそういう意味で「種」を絶滅させている気がするのである。

なぜならビジネスだからな。

もちろん・・・好みの問題というものはある。

書店で・・・絶滅危惧種の本を買うためには常時、大書店に出入りする必要がある。

「売れる本」が大量に積まれている横で・・・「売れない本」がたちまち売り切れるからである。

昔は・・・売切れたら「入荷」を待てばよかったが・・・今は・・・それで終わりなのだ。

文庫売り場にはあの時代劇の人の本が大量に並んでいる。

もちろん・・・それは面白い本なのだが・・・キッドにとってすごく面白いかというとそうでもないのだな。

暗い本屋をめぐり・・・煤けた本棚の中から・・・夢にまで見るほど好きなSFシリーズのバックナンバーを捜す。

あの喜びを今の子供たちはきっと味わうことはないのである。

で、『戦う!書店ガール・最終回(全9話)』(フジテレビ20150609PM10~)原作・碧野圭、脚本・渡辺千穂、演出・白木啓一郎を見た。打ち切りという噂もあるが話としては滞りなくまとまって全9話で良かったような気がする。視聴率的苦戦は裏番組との兼ね合いもあるが、豪華キャストを揃えるのが普通の時代に・・・このキャストでは仕方ないとも思うのである。ダブル・ヒロインは問題ない。恋愛軸で考えると・・・三角関係も含めてダブルヒロインの恋の相手が、大東駿介、千葉雄大、長谷川朝晴、田辺誠一である。・・・渋すぎる。ダブルヒロインの家族は、西岡理子(稲森いずみ)の父親・達人(井上順)だけ・・・淋しすぎる。そして、仕事面ではダブルヒロインをつぶしにかかる合理的経営陣に・・・山中崇、みのすけ、木下ほうか・・・いやあ・・・弱すぎるよね。主なゲストが浅利陽介、紺野まひる、橋本じゅんだ。

このキャスティングじゃ・・・数字とれないぞ。

だから・・・まあ・・・ドラマの中身はそこそこだったんだと思う。

書店員としての仕事以外には・・・なにもない独身の中年女性・西岡理子と・・・お嬢様育ちで恋愛相手には不自由しないピチピチの北村亜紀(渡辺麻友)・・・。

理子にとっては目障りで・・・自分が負け犬であることを自覚させるだけの存在である亜紀。

しかし・・・亜紀は書籍を愛する情熱を理子と同じくらい持っている。

いつしか・・・二人の間には年齢も経済格差も乗り越えた友情が芽生え・・・「書籍」にはなんの愛情もない・・・ビジネス優先の二代目経営者たちを共通の敵として「書店」の生き残りをかけて共闘する。

だが・・・時代の流れには抗するべきもない。

だけど・・・二人は夢をあきらめない・・・という話である。

こう書くと・・・物凄くわかりやすい話だが・・・実際には表現が難しい話である。

まず・・・年上のヒロイン・理子は・・・家族は営業実態があるのかないのかわからない煎餅屋の一人娘・・・結婚適齢期はとっくにすぎて交際中の男は妊娠した若い女性との結婚を選択する。自殺してもおかしくない鬱な人生である。しかし・・・なにしろ・・・演じるのが・・・アンチエイジングに澱みのない美人女優なのである。・・・わかりにくいだろう。

次に・・・年下のヒロイン・亜紀は浮世離れした高級マンションで一人暮らしなのだが・・・ドラマ的誇張が少なく・・・ある意味、リアルすぎるのである。今、日本を代表する抜群のアイドルは皇室のあのプリンセスだと思うが・・・そういうムードを醸しだす必要がある。専属の執事は絶対に必要だろう。交際相手もセレブばかりで・・・だからこそ、人気のモデルやアーティストを下に見ることができるのである。やろうと思えばナッツ・リターンが可能なポジション。本当は書店なんか・・・その気があれば店ごと買い上げることができるくらい余裕の資産力。そして、エリート揃いの家族。そういう女がなんで書店員やってんだよが毎回、お約束なくらいがよかったと考える。

何も持たない女と持ちすぎてる女・・・まずはこの落差があって・・・どうしようもなく消えて行く書店という絶滅危惧種を保護する話になっていくのだ。

とにかく・・・二人にとっては・・・うっとりする恋愛よりも・・・おいしい御馳走よりも・・・素晴らしい実人生よりも・・・書店で本を売るのが好きという変態の話なのだから。

「理子さん・・・イベントで本が昨日の三倍売れました」

「やったわね・・・あははははははははははははは」

「えへへへへへへへへへへ」

・・・という話なのである。

「昨日・・・ことわっちゃった・・・田代さんのプロポーズ」

「えええ・・・どうしてですか」

「だって・・・子供から・・・お父さんを奪ったら可哀想だし・・・」

「子供ごともらえばいいじゃないですか」

「えええ」

「いいですよ・・・実の母親を慕いつつ・・・まま母の美しさに翻弄される義理の息子」

「それ・・・面倒くさい」

「そんなこと言ってるから・・・四十まで結婚できないんですよ」

「ええ~・・・そうかなあ」

ドラマ版では・・・亜紀は理子狙いの三田に振られる設定なのだが・・・それもダブルヒロインのバランスを考え過ぎた失敗だと思う。

三田も小幡も亜紀狙いで・・・男を見せた木幡にお嬢様育ちの亜紀が魅かれて選択するという方が亜紀の性格が示されるはずだ。

「風と共に去りぬ」がしたいなら・・・三田は同級生のかわいらしい女の子を選んでいるべきで・・・年上上司狙いは・・・混迷を深めるばかりなのである。

今回のキャスティングならブックカフェ店員の愛子(工藤綾乃) を眼鏡っ子設定にすればいい。

どうしてもヒロインがらみにしたいなら亜紀に振られて理子狙いを始める方がまだいい。

「三田くんに花束もらっちゃった・・・」

「私がふったんで・・・頭おかしくなったんですね」

「ひでぶ」

このくらいがよかったと思う。

とにかく・・・理子は理がかちすぎて婚期を逃した恋愛下手だが・・・亜紀は書店員の鑑としては最高の存在として慕う・・・これが主題なのである。

最後の最後まで・・・本当は吉祥寺店についてどう考えているのかを明かさない・・・ペガサス書房の谷田部社長(山中崇)なのだが・・・そういう謎を秘めた人物として・・・役者としては申し分のない演技力を発揮していたが・・・やはり・・・お茶の間はそういう演技をそれほど評価しないんだな。

原作では谷田部は創業者を引き継いだ二代目社長である。

まるでスカッとしない直属上司を演じる野島(木下ほうか)は傍系だが・・経営者一族なのである。

だから・・・無能でも・・・経営サイドに属するのが仕掛けの一つになっている。

ドラマ版がこれを隠匿してしまった理由は不明だが・・・その分、話は分かりにくくなっている。

書店員たちが全員、正社員というのもやや不思議な感じである。

そうであれば・・・組合があって・・・もう少し話は複雑になるはずだ。

店舗閉鎖、リストラとなれば不当解雇問題が発生するからである。

理子の行動で・・・もっともヒロインらしくないのは・・・その隠蔽体質であるだろう。

店舗閉鎖の問題も・・・店員解雇の問題もすべて一人で抱え込む。

まるで・・・それが「責任感の証明」のように振る舞う理子だが・・・明らかに時代に適応していないのである。

阿吽の呼吸で親友の志保(濱田マリ)が理子の代弁者になるわけだが・・・これこそ・・・古臭いヤクザ映画の世界である。

全員が正社員の設定なら・・・リーダーは問題をメンバーと共有するべきで・・・それができないダメ女として描きたいなら・・・その旧世代ぶりの殻をやぶるのは亜紀の役目だろう。

「何もかも背負いこんだってだれも褒めてくれませんよ」

「え・・・そうなの・・・」

「大体・・・理子さんは一人で何も解決できないじゃないですか」

「・・・」

「そもそも・・・本が好きな時点で・・・一人でこつこつやるタイプなんですよね・・・みんなの上にたってあーしろこーしろが苦手なんですよね」

「・・・」

「だから・・・みんなになんでもうちあけて・・・やってもらえばいいんですよ」

「・・・それじゃ・・・店長として・・・」

「お飾りでいいんですよ・・・年はとっていてもそれなりに美人なんだから・・・」

「ひでぶ」

結局・・・イベント案を出しているのは三田や亜紀なのだ。

実際は見守りタイプの上司なのに・・・自分がなんとかしなければと力む・・・それがお茶の間に一人相撲の滑稽感として伝わらないと楽しめないわけである。

そして・・・売上20%を目指した最後の秘策・・・「オールナイト書店」である。

ペガサス書店吉祥寺ホテルとなった店舗で・・・限定客が宿泊できるサービスなのである。

宿泊料は・・・三冊以上の書籍購入だ。

どうなんだ・・・全従業員が・・・残業手当をもらって・・・その上で売上出るのか・・・これは売り上げ倍増戦略ではなくて・・・話題性による宣伝効果を狙った展開なんじゃないか・・・。

とにかく・・・商店街とタイアップして・・・銭湯や夜食を確保するお祭り展開。

寝そべって夜通し読まれた本が・・・その後、売り物として書棚に戻されるのは・・・古書店や図書館の本が基本的に嫌いなキッドには絶対・・・無理だ。

立ち読み禁止の本屋の方が好きなんだな。

まあ・・・御蔭で同じ本を何冊も買っちゃうけどな。

とにかく・・・書店員たちは・・・楽しい夜を過ごしたのだ。

結果・・・売上目標は達成されず・・・閉店決定である。

本社から戻った理子の開口一番が・・・「みんな・・・どうしたの」である。

最後まで・・・隠蔽体質が抜けないのだ。

書店員一同・・・退職覚悟で団結しているのにである。

「どうなりましたか・・・」

「・・・閉店です」

「・・・」

「でも・・・残りたい人がいれば・・・私が本社とかけあいます」

「それを言ったら・・・誰の首を切るか決めろというエリアマネージャーと一緒ですよ」

「一蓮托生の意味もわからないんですか・・・」

「みんな・・・力不足でごめんなさい」

しかし・・・そこにホワイトなユニコーン堂が登場である。

「今度・・・吉祥寺店を出店することになりました・・・全員、引きとります」

「万歳」

そもそも・・・吉祥寺はチェーン展開される書店の激戦地である。

ペガサス書店しか・・・ないみたいな設定そのものが・・・実はファンタジーだったのである。

からっぽになったペガサス書店。

「理子さんはどうしてユニコーン堂に行かなかったんですか」

「そろそろ・・・新しいことをやりたいと思って・・・」

「何するつもりですか」

「それは秘密・・・あなたは・・・」

「私は結婚式をしますよ・・・花嫁姿でも見せないことにはサービス悪いって言われちゃうから」

「書店員慰安旅行の回で海の家水着サービスとか温泉旅館入浴サービスもしなかったよねえ」

「まあ・・・先輩・・・年も年なんで無理させられませんから・・・由美かおる路線もありだと思いますけどね」

「時代劇枠がもう少しあれば・・・」

「ドラマ視聴率平均5%時代になれば・・・復活すると思います」

「過渡期なのよねえ」

お約束の結婚式・・・抜群の飛距離でブーケは亜紀から理子へ・・・。

エピローグ。

おしゃれな自費出版ビジネスも兼ねる趣味の書店をそこそこ成功させている理子。

そこへ亜紀がやってくる。

「来たのね」

「そろそろ・・・私が必要かなって思いまして」

「や・・・疫病神のくせに・・・」

「この店・・・暗くないですか・・・もっと明るくしましょうよ」

「亜紀・・・恐ろしい子・・・」

一話が抜けていたとは思えない・・・澱みない展開である。

とにかく・・・これで来週は・・・谷間なのである。

長かったなあ・・・春ドラマの谷間なし・・・。

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2015年6月 9日 (火)

僕のことは嫌いでも家族は苛めないでください(相葉雅紀)能天気家族の憂鬱(有村架純)犯罪の影に女ありですか(沢尻エリカ)

邪悪なものとの戦いは悩ましいものだ。

どのくらい邪悪なのか・・・見当がつかない場合はなおさらだ。

法の番人である警官も反社会組織からの組織的復讐には弱者となる。

弱者の味方である弁護士も反社会組織に家族ぐるみで埋葬される可能性はある。

路上喫煙を咎めて刺されたらどうしようと思うのである。

そういう様々な事例が人々の正義の心を呪縛する。

見て見ぬフリはけして悪とは言えないのだ。

一方、常に少数である社会的な勝者は・・・常に敗者たちのリンチを考慮しなければならない。

「恋人を裏切るなんて人として間違いだ」なんてもっともらしい口実で制裁されてしまう可能性があるのだ。

悪からも善からも・・・常にあなたは狙われている。

人生一寸先は闇なのである・・・くれぐれもご用心なのである。

まあ・・・悪魔は本当は・・・あなたのことなど・・・何があっても・・・ニヤニヤ見守るだけですが。

で、『ようこそ、わが・第9回』(フジテレビ20150608PM9~)原作・池井戸潤、脚本・黒岩勉、演出・谷村政樹を見た。心の闇が花開く春ドラマも終盤戦である。(月)はストーカーという犯罪者が主題となっているのである意味一線を越えている・・・ストーカーの動機には心の闇がつきものだが・・・大きな声では言えないが被害に遭う人にも何か・・・心に問題があるのではないか・・・というような主張が醸しだされている。善人であることはすでに邪悪なことだと言う話である。基本的にはそれを言ったらおしまいなのだが・・・そういうことを仄めかすことができるのがドラマというコンテンツの魅力なのである。()は格差社会においての人間の階級化の問題も含んでいる。同じ能力に生まれたものが家柄によって獲得できる幸福に差が生じる。平等でないことの認識によって生じる心の闇が根底に流れているという話・・・そうなのかよっ。()は心の病気のお医者様の話だが・・・もちろん・・・本人が心の病人なのである。(木)は記憶障害者の話だが・・・実は心がもとめているものと実際に手に入れるものとのズレの話である。(月)は外から壊される話だが・・・()は内から壊れて行く話である意味対極的だ。「いらっしゃい」と「ただいま」の落差ね・・・。「ただいま」と言って「いらっしゃい」と応じられた時の違和感なんだよな。()は心なんていうものが本当にあるのかという恐ろしい話である。()は難しい話はやめて・・・心のままに生きようという最も愚かな結論が癒しなのだということである。まあ・・・すごい・・・春の心の嵐です。

ああ・・・ついに相葉雅紀のドラマを完走できそうだ・・・しかし、油断は禁物だ。来週、放送がなかったり、PCがぶっ壊れたり、地獄から召喚状が届いたりするかもしれからな。

祈りましょう。世が事もないことを・・・自分だけは幸せでありますように・・・と。

呑気な息子・健太(相葉雅紀)は・・・母親の浮気の証拠写真を倉田家に送り付けたかもしれない民子(堀内敬子)の家にのほほんと家庭訪問を実行。そして民子の庭で盗品の宝石箱を発見し・・・突然、危険を感じる。

いや・・・最初から危機感をとお茶の間はため息をつくもの続出である。

そして・・・史上最強の能天気主婦・倉田珪子(南果歩)は自宅に民子を招きいれていた。

民子は能天気な珪子の脳に打撃を加え・・・昏倒させる。

そして灯油をばらまき・・・ライターに火をつける。

それから・・・健太の帰宅を待つのだった。

何故・・・待つのか不明だが・・・明らかに主人公に配慮して待機だよな。

「おまたせ」

「待ちくたびれちゃった」

「母さん・・・しっかり」

「私を見なさいよ」

「ええと・・・撒いたのは灯油ですか・・・ガソリンですか」

「よく・・・わからない・・・」

「待っている間・・・ライターつけっぱなしだと・・・気化して引火して大爆発ですよ」

「いいのよ・・・この能天気ワールドにはそういう物理現象は無関係なの」

「どうして・・・こんなことを」

「待って・・・今、バカ女が目を覚ますから」

「はい・・・バカ女って誰ですか」

「母さんだよ」

「えええええ」

「この人・・・イライラさせられるでしょう」

「生まれてからずっとなので・・・よくわかりません」

「じゃ・・・しょうがないわね。私、夫が失職して出奔して・・・セレブじゃなくなったのに・・・この女にいつもイライラさせられて」

「すみません・・・母さんも謝って」

「よくわからないけど・・・ごめんなさい・・・」

「盗聴マニアの講師のことは前から知ってた。私は時計を調べたから。逆に講師を脅して手下にしたの。とにかく生活費を稼ぐ必要があったので空き巣に入ったのは私、倉田家がストーカー被害にあっているのを知って・・・もっと苦しめばいいと思った。それで無言電話とかいやがらせしてやったのよ・・・それなのにこの女・・・能天気にも程があるわ・・・何があってもヘラヘラしちゃってさ・・・」

「僕は・・・浮気写真で傷つきましたけど」

「それが普通でしょう・・・この女ときたら息子が刺されて障害者になっても笑って陶芸教室に通い続けるてヘラヘラしてるのよ」

「・・・」

「だから・・・犯罪者にしてやろうと思ったのに・・・」

「そんな・・・私のことは嫌いになっても・・・倉田家は嫌いにならないでください」

「死ねっ」

しかし・・・主人公だけに許される出火前の馬鹿力で民子のライターを叩き落とすことに成功する健太だった。

「母さん・・・警察に電話して・・・」

「え・・・なんで・・・」

「か・・・母さんのばかああああああああああ」

仮釈放された身分で留置中の民子に面会が許されたらしい波戸(眞島秀和)・・・。

共犯者なのにかっ。

「何しにきたのよ・・・」

「僕は・・・あなたの作品が一番だと思います・・・珪子さんは銀賞レベルだけど・・・あなたは金賞です・・・私は金賞の女が好きなのです・・・あなたこそ私にふさわしい」

「変態に言われたくないわ」

「芸術家というものは・・・基本的に変態なのです」

「・・・」

「私はすべてを失いました・・・しかしあなたは失いたくない」

「お似合いの二人オチかよっ」

「怪盗夫婦ってどうですか・・・」

「企画、通らなそう・・・」

地方局のアナウンサー試験から帰宅した七菜(有村架純)は兄や名探偵・神取明日香(沢尻エリカ)とともに・・・油臭くなった家の消臭に励む・・・リキか・・・リキのステマかっ。

「試験どうだった」

「次は最終面接よ」

「じゃ・・・サプライズパーティーしなくちゃ」

「・・・」

明日香は能天気に慣らされた倉田家の兄妹を憐れむのだった。

一方、能天気な妻の無能な夫・太一(寺尾聰)はナカノ電子部品で窮地に立たされていた。

真瀬部長(竹中直人) がさがみドリル社から仕入れイーグル精密機械社に売却した件で、イーグル社が倒産し・・・三千万円の手形が不渡りとなったのである。

その件で・・・持川社長(近藤芳正)は太一の責任を問う。

「報告書をあげました」

「そんな報告書知らん」

「え・・・」

報告書は消えていた。

その件で・・・三千万円の損失がすべて太一の責任であったかのように指弾する真瀬部長。

そして・・・何故か、謝罪する太一だった。

その後で・・・総務部契約社員のシルビア/西沢摂子(山口紗弥加)にしめあげられた太一の部下・高橋(橋本稜)は報告書を真瀬部長に渡し・・・回収した真相を白状する。

えええ・・・太一・・・総務部長なんだから・・・なぜ、直接社長に言わない・・・などというお茶の間の叫びはスタッフには届かないのだった。

とにかく・・・まだ最終回ではないのだった。

高橋さえ・・・責めない太一の臆病ぶりに・・・部下の一人・若葉(田中美麗)は絶句する。

さらに・・・ドリルの本当の納入先が現れ・・・事件の真相は最終回に持ち越される。

一方で・・・青葉銀行の人事部長代理八木通春(高田純次)はナカノ電子部品から出向者の変更の打診があったことが伝えられる。

出向とは言え、一種の再就職である・・・そこから返品されたとなると太一の銀行での立場はあってないようなものなのである。残された選択は・・・早期退職しかないのではないか。

思わず愚痴る夫に・・・敏感に反応する妻。

「あなたが仕事の話をするなんて珍しい・・・」

仕事を家庭に持ち込まないでと言わんばかりの能天気さである。

そして・・・珪子は何故か・・・昔、三角関係だったという八木とホテルで密会するのだった。

まあ・・・思わせぶりだってわかっているが・・・波戸の件から・・・何も学んでいない珪子なのである。

父と子をつなぐ絆であるシルビア/西沢摂子は健太に「愛人疑惑の写真」を持ちこむ。

蟹江タウン誌編集長(佐藤二朗)の活躍で・・・いきなり・・・撮影者であると断定される平井配送課長(戸田昌宏)・・・。

しかし、犯行の理由は・・・「西沢さんが好きだからあ・・・」である。

シルビアと太一の仲を裂こうとしたらしい・・・まあ・・・本当にどうでもいいぞ・・・。

結局・・・すべては・・・初期の名無しさんの犯行にヒントを得て・・・名無しさんになりすましたものたちの犯行だったのである。

その原点は・・・健太の割り込みをしたニット帽の男に対する注意。

さらにその原点は・・・太一の無法者に対する謝罪だった。

しかし・・・健太はそのことで父親を追及する気持ちはない。

「何かを守りたいと思ったら・・・人は・・・余計なことをしなくなる」というのが正解と考える遺伝子が流れているからだ。

結局・・・未解決の名無しさんの犯行は・・・。

①健太を追いかけて怖がらせる

②花壇を荒らす

③また花壇を荒らす

④自転車のサドルを破損させる

⑤ゴミを漁って健太の仕事を妨害

⑥倉田家を監視してショートホープの吸い殻を遺棄

⑦ガスをポストに

⑧FAXで怪文書

・・・であるらしい。

健太は決着をつけるために・・・駅で名無しさんを張り込む。

そして・・・ついに発見するが・・・直接対決である。

写真を撮るとか・・・住所を割り出すとか・・・そういう発想はまるでないのだった。

ニット帽の男を問いつめた健太は逆襲され・・・階段から転げ落ちる。

通行人たちは見て見ぬふりをするのだった・・・。

しかし・・・主人公の特殊な不死身の力でかすり傷しか追わない健太だった。

そして・・・お茶の間だけが知る・・・ニット帽の男の「MH」のアクセサリー。

そのアクセサリーを持つ男と親密な交際をしていたらしい明日香。

明日香にとって・・・健太は・・・MHの男を釣るための餌に過ぎなかったのか・・・。

「倉田家嫌がらせ事件のすべて」の出版を企画するらしい明日香・・・。

その・・・狙いは最終回待ちである。

そういうこととは露知らず・・・父と子は対話する。

「父さん・・・大変だけど・・・がんばれよ」

「お前もな・・・」

いや・・・せめて・・・二人で力を合わせろよ・・・基本的に無力なんだから・・・。

そして・・・家に落書き事件発生である。

防犯カメラ・・・どうなった・・・。

2015年度倉田家嫌がらせ事件容疑者ランキング

①位 ニット帽の男(真の名無しさん・・・体型的にO氏がS氏か明日香の恋人ならM氏かN氏は大穴だな)

②位 明日香(今回出番薄め)

③位 七菜(今回出番不足)

④位 通りすがりの人(未登場)

⑤位 健太の中学時代の同級生(未登場)

⑥位 倉田夫妻(夫婦で楽しむ自虐プレイ)

⑦位 青葉銀行人事部長代理(高田純次)

⑧位 蟹江タウン誌編集長(サングラス不法所持)

⑨位 銀行員(小市慢太郎)

⑩位 ガス(にゃんこ星人)

名無しさん殿堂入り

コピーキャット万里江(逮捕)

盗聴マニア波戸(逮捕)

怪盗有閑マダム(逮捕)

文書窃盗犯(野放し)

怪文書送信犯(野放し)

野瀬部長(野放し)

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2015年6月 8日 (月)

いつしか暗き雲霧を払いつくして百敷の都の月をめで給ふらん(鈴木杏)

文久三年(1863年)八月十八日の政変は・・・公武合体派による尊皇攘夷派の朝廷からの排除である。

しかし、実際は長州藩が主導した大和行幸に孝明天皇が拒否反応を示し、周辺のものがその意を汲んで京都守護職の会津藩を動かしたのだろう。

そもそも・・・異国に恐怖する天皇が・・・自ら攘夷の先頭に立つことなどありえないのである。

ある意味で長州は幻想に酔ってしまったと言える。

一方で薩摩藩は七月に薩英戦争を経験し、敵の実力を知った。

元々・・・公武合体派としての流れを持っている薩摩藩は単純な尊皇攘夷派ではない。

長州の独走を苦々しく感じる在京諸藩の空気にも敏感だった。

こうして・・・長州の代弁者である三条実美ら七人の尊皇攘夷派の公卿が失脚することになるのである。

十八日に謹慎を命じられた公卿たちは二十四日には官位を剥奪され、九月九日には改名を命じられる。

三条実美は三条実となった。

そして・・・京を追放され都落ちとなる。

これが所謂、「七卿落ち」である。

御門警備の任を解かれた長州藩士は・・・追放された公卿たちを護送することになる。

随伴した久坂玄瑞この時、「七卿落ちの歌」を吟じたと言う。

復讐の誓いである。

しかし・・・尊皇攘夷派である彼は・・・誰に復讐するつもりだったのか。

彼らを追放したのが・・・他ならぬ・・・孝明天皇だったのに・・・。

もちろん・・・天皇はその責任を問われたりはしない。あくまで彼らは尊皇なのである。

長州藩の怒りが・・・実行者であった京都守護職に向かうのは必然であった。

で、『燃ゆ・第23回』(NHK総合20150607PM8~)脚本・大島里美、演出・安達もじりを見た。例によってシナリオに沿ったレビューはikasama4様を推奨します。今回は長州遊撃隊総督で蛤御門の戦いの戦死者・来島又兵衛政久とある時はかわいい生徒会長、ある時はかわいい女子大生の黒島結菜が演じるかわいい高杉雅ちゃんの二大描き下ろしイラスト大公開でお得でございます。まあ・・・もはやキッドにとって最大の楽しみなので出番が少ないとガッカリします・・・。さて・・・久坂玄瑞が京都で馴染みの遊女が出来ようが、そのことを妻に告白して汚らわしいと罵られようが・・・構わないわけですが・・・今回は悲しい女を演じた辰路も少し・・・美少女の面影がありましたな。スーパー美少女子役と地味な演技派女優の間で迷う鈴木杏・・・哀愁でございます。一方・・・キワモノ子役からスター女優となった主人公。年齢がフィットしてきて・・・今回は自然な演技。流石の存在感を示しましたねえ。「いいですよ」と言いながらの生理的拒絶。これこそが・・・井上真央の本来の持ち味・・・前フリ長すぎでございますよね。この一瞬のために・・・22回って・・・。

Hanam023文久三年(1863年)七月、鹿児島湾において薩摩藩と英国海軍が戦争状態に突入。京都における薩摩藩の軍事力が低下する。攘夷決行の主流となった長州藩家老・益田親施は孝明天皇に謁見し天皇による攘夷親征(大和行幸)(の実行を奏する。八月四日、朝議にて攘夷砲撃に非協力的であった小倉藩の処分が決定する。これに反対する鳥取藩主・池田慶徳が参内し、朝廷に混乱が生じる。長州藩の急進的な姿勢に公武合体派の公卿と大名は大和行幸の中止に傾く。十三日、大和行幸の詔が発せられる。十五日、国事御用掛の尊融法親王(中川宮)は京都守護職・松平容保に混乱の収拾を求め、会津藩は公武合体派の盟友である薩摩藩と共謀。十六日、中川宮は政変計画を奏する。十七日、孝明天皇は中川宮に密命を下す。十八日、会津藩・薩摩藩の軍事力を背景に公武合体派は朝廷クーデターを決行。長州藩は堺町御門警護の任を解かれ、三条実美・三条西季知・四条隆謌・東久世通禧・壬生基修・錦小路頼徳・澤宣嘉ら尊皇攘夷派の公卿は失脚した。十九日、長州藩の千余人は七卿とともに都落ちする。九月、撰鋒隊と奇兵隊の対立により騒動が発生し、事件の責任を問われ高杉晋作は奇兵隊総督を罷免される。土佐浪士の吉村虎太郎らは大和行幸の先鋒となるべく挙兵していたが反乱分子に認定され天誅組の変としてまもなく鎮圧され壊滅する。関白の鷹司輔煕(水戸藩派)は長州への同情を示すがまもなく解任される。後任は水戸藩派であり公武合体派の二条斉敬となる。

文は京都における夫の周辺を探っている。

玄瑞は尊皇攘夷派の公卿との密会に祇園の遊郭を利用していた。玄瑞が芸妓の辰路と馴染みになり、女色に耽溺していることに悋気は感じない。文はくのいちだからである。

くのいちとしての文は京都の忍びたちの暗躍ぶりに関心を寄せていた。

玄瑞の贔屓する辰路もまたくのいちであった。

辰路の上忍を突きとめるべく、心の網を張った文は迷路に迷い込む。

辰路は情報を様々なつなぎ役に伝えていた。

しかし・・・そのつなぎ役たちは時には公儀隠密であり、時には薩摩の忍びであった。

「情報をあやつる忍びか・・・」

文はつぶやく。

敵味方に情報を流し・・・思惑にはめて行くのは忍びの常道である。

だが・・・それならば操り手としての上忍がいるはずである・・・けれど、辰路の周辺にその手ごたえがないのだ。

辰路が情報を伝える相手は無数であり・・・玄瑞さえ・・・その一人であった。

辰路を操り、情報を操作する操り手の正体がつかめない。

文は辰路が情報を流した相手を一人ずつ、追いかけて行く。

薩摩藩の忍びは薩摩藩の実力者(実質的藩主)・島津久光の目付けの一人であった。

その任務は長州藩の動向・・・特に公卿対策を探ることである。

玄瑞は長州藩の朝廷工作のキーマンであり、その動向を薩摩藩は逐一掴んでいる。

長州忍びも対応するが・・・それは後手を踏んでいる。

文はもどかしさを感じる。

公儀隠密は会津藩と密接な関係を持っていたが・・・その首領である服部半蔵は上洛した浪士の群れに混じっている。

半蔵の正体は旗本の一人だったが・・・その動きは慎重だった。

忍びの集団としては圧倒的な組織力を持っているはずの公儀隠密の動きは静謐さに満ちていた。まるで闇に潜む何かを恐れているようである。

小さな忍びの集団は京都に無数に潜んでいる。

公卿の一人が飛騨忍びを飼っていたりするのである。

そういう忍びたちは基本的には主人の護衛役で手いっぱいだった。

そういう小勢力は・・・天下の忍びである公儀隠密にとっては脅威にはならない。

では・・・半蔵は何を恐れているのだろうか・・・。

文は突然・・・思い至った・・・。

天皇の忍び・・・。

京都の影には・・・そういうものがあるはずである。

それらは闇に潜んで滅多に姿を見せぬと言う。

しかし・・・心の探り手である・・・文に正体を隠せる相手はいないはずだった。

だが・・・八月十八日・・・長州藩に危機が迫った時・・・文は漸く気がつくのだった。

辰路の操り手は・・・心を隠す術を心得ているのではないか・・・。

そして・・・もしや・・・。

自分は心を覗かれているのではないかと・・・。

闇の中で・・・何者かがニヤリと笑った気配に・・・文は驚愕するのだった。

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2015年6月 7日 (日)

オリジナルと区別がつかないコピーたちの戯れ(多部未華子)コスプレ刑事に愛の賛歌を(大倉忠義)

著作権というものはデリケートな権利である。

たとえば・・・脚本家たちは脚本という著作物でメシを食うわけだ。

もちろん・・・趣味で脚本を書いていてメシを食わない人もいるだろうから・・・例外はあるだろうが・・・プロを名乗る人たちは仕事が基本的にメシの種だ。

そういう意味ではこのブログはいくら書いてもタダなのでメシの種ではない。

しかし・・・著作物であるかどうかを問われれば・・・一応、著作物である。

一種の公開日記で・・・キッドという人間の記録である。

その行為が法に抵触することはありえることである。

殺したい人間を殺せば殺人罪なのであって・・・いくら「公開日記です」と言っても司法関係者はしかるべき態度で応じるわけである。

素晴らしいインターネットの世界が発生し・・・情報の流通は加速度的に増大する。

その中に・・・様々な「著作物」に対する感想を持つ人間は多いだろう。

そういう人間が・・・「それ」を公開して表現する時・・・様々な法律との兼ね合いはあるわけである。

「それ」について語ることは・・・ものすごくいけないことである可能性もある。

他人の「メシの種」を奪う可能性があるからである。

誰もが簡単に複製を作れる時代・・・「売り物」を「無料」で配布されたら・・・おまんまの喰いあげだ。

それは・・・「表現の自由」や「情報へのアクセス権」という理念と違って死活問題なのである。

キッドにはそういうシステムをある程度、理解しているつもりである。

その上で・・・他者の権利を侵害するかもしれない「言葉」を使って著作行為をしている。

キッドという人間がそうせずにはいられないからである。

権利を主張する人たちは基本的に損得を考える人たちである。

なにしろ・・・何かが・・・自分たちの得を損に変えているので是正したいと思うわけだから。

その行為が自他にとって有益か無益かはさておき・・・デリケートな問題に触れて・・・狂犬にかまれる人がでないことを祈るばかりの今日この頃なのである。

で、『ドS刑事・第9回』(日本テレビ20150606PM9~)原作・七尾与史、脚本・川崎いづみ、演出・中島悟を見た。ちなみに今回のレビューと前フリとは基本的に無関係です。前フリはあくまで一般論でございます。ただし・・・今回はドラマの中にコスプレイヤーが登場し、厳密に言えば著作権問題の根底にあるオリジナルとコピーの関係が暗示されていると言えなくもありません。

そもそも・・・誰が見ているかわからないテレビ番組はドラマであるにも関わらず「これはフィクションです」という断りをしなければならないという不自由さを持っている。もちろん・・・ノンフィクションだと思う知能に不自由な人がいるからである。

実際の警察と違うとか・・・実際の病院と違うとか・・・クレームをつけるバカがいるから・・・川崎青空警察署(フィクション)なのである。

しかし・・・そういうネーミングにもスタッフは知的活動を費やすのである。

つまり、川崎青空警察署という「オリジナル要素」があるのである。

もしも・・・これに著作権があることに配慮するとこの記事に「川崎青空警察署」という文字配列は使用できなくなる。「神奈川県にある最近無惨な少年死亡事件の起きた市町村名と晴れた日の空模様を合体した架空の警察署」とでも書かなければならない。

で・・・その管内で殺人事件が発生する。被害者は「海江田ちさと」(フィクション)であるが・・・これをオリジナルであることに配慮すれば・・・「第10代民主党代表と同姓で某アイドルグループのチームA所属で1990年生まれ、総選挙最高順位37位のメンバーと同名の姓名」とでも書かねばならない。

話が進まんわっ。

被害者は海江田ちさと(北浦愛)で23歳のフリーターだった。

死因は胸部を刺されたことで、死体は自宅アパートの一室で発見された。

死体の第一発見者は同郷の友人・墨田緑(寉岡萌希)である。

有栖川係長(勝村政信)は「上司や部下とは正反対の控えめな性格」と被害者を断じて地雷を踏むのだった。

被害者宅には荒らされた形跡もなく、被害者周辺にも怨恨などの動機が見つからないために捜査は難航する。

しかし・・・独自の捜査力を持つ黒井マヤ巡査部長(多部未華子)と代官様こと代官山巡査(大倉忠義)は被害者宅に乗り込む。

そこで・・・第一発見者の墨田から・・・生前にちさとから預けられたという玩具の時計を渡されるのだった。

最も疑わしいのは第一発見者だが・・・もちろん・・・マヤは墨田を疑わない。

しかし・・・「合鍵を持っていたということは・・・」と一応、疑うのだった。

「ばっかじゃないの」ポイントだが・・・誰かが「疑ってはいけないポイント」を思いつかなかったのでスルーである。

被害者宅で・・・マヤが注目したのは・・・被害者の書棚の配列だった。

「パンドラの黙示録/新橋カイト」

「悲しみの侵略者たち/新橋カイト」

「鏡の大戦/新橋カイト」

「勇者ハヤトの追憶/新橋カイト」

「バベルの落とし穴/新橋カイト」

「魔王ルシールの逆襲/新橋カイト」

しかし・・・代官さまは・・・被害者り質素な暮らしぶりに憐れを感じる。

だが・・・書棚から・・・二人は被害者の意外な一面を示す写真を見つけるのだった。

ちさとは・・・コスプレイヤーだったのだ。

早速・・・コスプレイヤーとしての潜入捜査を思いつく代官さま。

命令もしていないのに・・・変身する代官さまをマヤは不快に感じるのである。

しかも・・・女装ではなく・・・ダーク・ヒーロー・コスプレである。

恥じらいを示さない飼い犬に手を噛まれた思いがするマヤなのである。

本来・・・コスプレとは仮装であるが・・・現在ではオリジナル・キャラクターに扮する遊びである。

キャラクター業界では・・・ファンによるキャラクターの二次使用を寛大に見守る傾向がある。ファンあっての業界であり、次世代のクリエーターの発掘場所として有効と考える風潮もあるからである。しかし、一部の業界人は・・・いかなるキャラクターの二次利用も・・・権利の侵害と考えたりもする・・・欲の皮がつっぱっているからである。

愚かで悲しい心根だ。

そういうわけで・・・なんだかよくわからないキャラクターの集うコスプレイベント・・・。

「デート」のクォリティーはないのだっちゃ。

そこで・・・マヤは不審なカメラマンを発見する。

被害者の手帳からイベント会場を割り出した刑事一課長・白金不二子(吉田羊)と係長の目を逃れようとするドクロ帽の男。彼はちさとの名前にも反応を示すのだった。

だが・・・ドクロ帽の男は姓は違うが、係長の息子・新山(田村健太郎)だった。

ちさとがドクロ帽の男に付きまとわれていたという情報があり、事情聴取を受ける新山。

「僕は・・・彼女の友人です・・・ストーカーでも・・・変質者でもありません・・・本の貸し借りをしたり・・・」

「あなた・・・新橋カイトのライトノベルを発表順に言いなさい」

マヤは突然、命じるのだった。

「カイト先生はライトノベル作家ではありません・・・ライトノベルというには重い」

ちなみに新橋カイト(フィクション)である。

「とにかく・・・おっしゃい」

「悲しみの侵略者たち/新橋カイト」

「パンドラの黙示録/新橋カイト」

「バベルの落とし穴/新橋カイト」

「魔王ルシールの逆襲/新橋カイト」

「勇者ハヤトの追憶/新橋カイト」

「鏡の大戦/新橋カイト」

・・・というのが発表順だった。

つまり・・・ちさとの部屋で本は順不同で並んでいたのである。

「え・・・そんなのよくあることじゃないですか」と代官さま。

「・・・」

おそらく・・・新橋カイトの愛読者であるマヤにとって・・・それはありえないことだった。

つまり・・・あの部屋で・・・誰かが・・・本を並べなおしたのだ。

何のために・・・何かを・・・探すために・・・。

もちろん・・・穴だらけの推理であるが・・・これが持ち味である。

「天麩羅そばの天麩羅が小さいのが許せない係長」と「海老たっぷりチャーハンの海老が少ないのを認めない課長」のいる警察署の話なのである。

もう・・・少し、面白くなってきたよ。

「どうして・・・デカワンコのコスプレイヤーがいないのか」と疑問を持ちつつ、「玩具の時計」の成分分析をケンケン(ミッツ・マングローブ)経由の秘密の特急便で依頼するマヤ。

使用された塗料が有害であることが判明する。

そして・・・ちさとのアルバイト先がギャラクシー・トイズという玩具会社であることを突き止める近藤巡査部長(伊武雅刀)。

件の時計の玩具・・・「エナジー・ウォッチ」はギャラクシー・トイズの商品だった。

ずっとコスプレイヤーだった情報屋(石井正則)から「エナジー・ウォッチの危険性を隠蔽したままギャラクシー・トイズが製品回収を進めていたこと」という情報を得たマヤは・・・超能力で容疑者と断定したギャラクシー・トイズ社長(金児憲史)に罠を仕掛けるのだった。

その罠とは・・・ざわちん(ざわちん)の特殊なメイクアップ術で・・・墨田緑をちさとに変身させることだった。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・まあ、いいか。

死んだはずのちさとに呼び出され・・・動揺する社長。

「お前は・・・俺が殺したはずだ・・・密かに回収した商品を勝手に持ち出して・・・告発するとか・・・おかしなことを言い出したお前が悪い・・・とにかく盗んだものを返せ」

「そこまでよ」

スケバン刑事というよりは・・・七十年代スケバン風にコスプレした課長は・・・マヤと共闘して悪徳社長を逮捕するのだった。

「ファイトなしですか・・・」

物足りない気分の代官さまだった。

代官さまの母はとりあえず・・・マヤの父とキスはしたらしい・・・。

とにかく・・・そろそろ・・・川崎青空署の皆さんが・・・好きになってきた今日この頃です。

習慣性とは恐ろしいものだよね。

夏服なのにヘソなしってシースルー愛好家を喜ばせるだけじゃないか。

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2015年6月 6日 (土)

私は人生を手に入れた・・・そして人は皆それを失う運命なのだ(山下智久)

はるかマクロの世界では銀河は回転し、膨張し、時には衝突して想像を越えた火花を散らす。

そしてはるかミクロの世界では素粒子は回転し、反転し、時には高速でどこかへ消失する。

その中間で・・・幸せの青いを惑星に生まれた人類はつかのまの人生を瞬くように感じる。

体内では分子が結合し、分解し、生産され、消費され、自分以外の何者かと反応する。

太古から積み上げられたヒトの感性は時には争うことに歓喜する。

時には愛することに耽溺する。

時にははるかな過去をふりかえり・・・時にははるかな未来に想いを寄せる。

一人一人の個性はバラエティーにあふれ・・・同じ人間は一人もいないように見える。

しかし、多くの人間は自分と他人を区別する。

自分とそれ以外の世界を違うものだと考える。

だが・・・そう思う前に・・・自分と世界に境界線はなかった。

やがて・・・多くの人は夢見る・・・世界と一つになる夢を・・・。

そして・・・多くの人が夢は必ず叶うことに気がつくのだ。

時が経てば・・・自分は消え・・・世界だけが残されることを。

で、『アルジャーノンに花束を・第9回』(TBSテレビ20150605PM10~)原作・ダニエル・キイス「Flowers for Algernon」、脚本・池田奈津子(脚本監修・野島伸司)、演出・酒井聖博を見た。感染した人間を死に至らしめることでMERSウイルスは認知される。疫病と戦い続ける人類は多くの死者たちの屍を踏みしめて戦いの狼煙をあげる。千年前には呪いにしか思えなかったものが・・・今は見えるのだ。しかし、ウイルスもまた刻々と進化し、見知らぬ姿を誇示するのだった。ウイルスと人類の死闘はこれからも続いて行く。「お前はなぜ我々を傷つけるのか」と問うても相手は無言である場合が多いが・・・人類は相手が言葉を解そうと解さぬまいとに関わらず・・・その正体を明らかにしようとする生物なのである。

そういう人類の最前線の戦いのはるか後方で・・・花を配達するのが仕事である男たちは些細なことで喧嘩するのである。

「お前の彼女・・・またおねんねか」

「豚野郎」

「なんだと・・・こら」

完全なる植物状態に移行しつつある進行性要素性障害による遷延性意識喪失状態の東京麗徳女子大学生・河口梨央(谷村美月)を思い・・・出口なしのストレスを抱える檜山康介(工藤阿須加)は鬱屈を発散させるために鹿内大(勝矢)に肉体的闘争を仕掛けるのだった。

巨体の前科者は苛立った前科者の挑戦を受け入れ、乱暴を開始する。

たちまち・・・「ドリームフラワーサービス」の商品である花々は散乱し、暇を持て余していた従業員たちは肉弾戦見物に熱狂するのだった。

金のかかる女に縁のある柳川隆一(窪田正孝)は株式市況を眺める。

しかし・・・心には様々な情報が渦巻いている。

交際相手としては申し分ない小出舞(大政絢)・・・。しかし、舞の親友の梨央は死に至る病の床にある。康介の苛立ちの原因もそこにある。そして二人の希望は・・・天才となった白鳥咲人(山下智久)に託される。だが・・・咲人と恋人の望月遥香(栗山千明)にただならぬ危機が襲っていることを洞察力に優れた隆一は感じてしまうのだった。

女子大生と肉体交渉をもって・・・お気楽にその日を楽しみたい・・・。

隆一の簡単な望みを世界は叶えようとはしないのだった。

商品ケースが壊され、ガラスの破片を握りしめた鹿内が殺意を秘めた眼差しで康介を見つめたところで・・・漸く、竹部順一郎社長(萩原聖人)がかけつける。

「おまえら・・・何やってんだ・・・」

「・・・」

「そうか・・・やりたいなら・・・やれよ・・・くだらねえ・・・殺しても何の得にもならねえ相手を殺して・・・損をしたいならすればいい・・・人間、やりたいことをやるのが一番だからな」

「・・・」

二人は気が殺がれるのだった。

「隆一・・・お前も見て見ぬふりしてないで仲裁しろよ」

「うっかりしてました・・・」

「じゃ・・・しょうがねえな・・・」

暗い研究室では・・・咲人が知的障害者の記録映像を眺めていた。

それはかっての咲人自身の姿である。

「もうすぐ・・・全体会議の時間よ」

「昔の僕を見ていた」

「なんだか・・・懐かしいわ」

「僕は・・・彼の笑顔・・・昔の僕の笑顔は一種の防衛的擬態だと推測していたんだ」

「学会でのスピーチの時ね・・・」

「しかし・・・こうしてみると・・・彼は実に屈託なく笑っている」

「昔のあなたは・・・生きていることをそれなりに楽しんでいたと思う」

「そうかもしれないね・・・確かに・・・もっとお利口さんになりたいと願っていたが・・・それが叶わない願いだとは思いつかなかったし・・・だから絶望もしなかった」

「ええ・・・あなたは知的障害者とは言えなくなってしまったけど・・・知的障害者が悪いことだという考え方は・・・この世界では悪とみなされる」

「そうだね・・・奇跡が起こらない世界ではあるがままを受け入れることが・・・善だから」

「そういう意味では・・・少女の性的搾取という名目で少女の裸体画像を悪とするこの世界は裸体になった少女の名誉は無視するのよ。すべては世界の誰かの優先順位によって決定されるなにかにすぎないの」

「凡庸な人々には芸術は時には有害だからね」

「だから・・・あなたが知的障害者でなくなったことは必ずしも善ではないわけ・・・だけど・・・あなたが昔のあなたに戻るのは・・・私にとって受け入れ難いことだわ」

「僕だって・・・そうさ・・・君を愛して・・・君に愛される・・・そういう僕でなくなるのはつらい」

「・・・私は・・・あなたがどうなっても・・・」

「僕は・・・最悪の結果についての考察については留保している・・・今は・・・そうならないように最善の努力を尽くすことが最優先だから・・・」

「咲人・・・」

「遥香・・・」

二人は見つめ合い・・・耐えられなくなってキスをするのだった。

その時、会議開始の時間を告げるチャイムが鳴った。

研究室には研究員が顔を揃えていた。

蜂須賀大吾部長(石丸幹二)は研究方針を発表する。

「咲人と私の結論はALG試薬の強化型の開発となった」

「しかし・・・ALG試薬の副作用について解明できていない今・・・それは危険なのではないでしょうか」と杉野(河相我聞)は異議を提唱する。

「副作用の解明による・・・安全性の高いALG試薬の改良は理想的だが・・・試験のために膨大な時間が必要となる・・・タイムリミットが迫っている今・・・選択肢としては断念するしかない」

「・・・」

「脳細胞の活性化の反作用のように起こる・・・退行現象に対応するために・・・脳細胞そのものを増殖させ・・・脳機能の活動領域を広げることが当座の目標だ」

「いたちごっこですね・・・」と小久保(菊池風磨)が呟き、全員から睨まれる。

「その通りです・・・しかし・・・タイムリミットがある程度、延長できると考えます」と咲人。

「その間に・・・次の一手を考えたいということだ」

全員は二人の天才の意図を了解した。

「これが・・・強化型ALG・・・名称・ALG-βの組成表だ・・・」

「二人の天才のレシピ・・・素敵」と小沼由美子(松本若菜)がささやき・・・全員から睨まれた。

「作業開始だ」

一同はそれぞれの任務についた。

白鳥家では花蓮(飯豊まりえ)が窓花(草刈民代)のために食事を作っていた。

「お母さん・・・私はお兄さんにもう一度会ってみるつもり・・・昔のことを謝って・・・許してもらいたいの・・・だって世界でたった一人のお兄さんなんだもの・・・お母さんも一緒に」

「私はいいの・・・私にはあなたがいるもの・・・」

「それはウソでしょう・・・お母さん・・・本当はずっと・・・お兄さんのことを考えているもの」

「・・・」

「小さい頃から・・・ずっと・・・私がお兄さんに意地悪をしたのは・・・本当は・・・お兄さんのことだけでなく・・・私のことも見てもらいたかったからなんだもの・・・」

「花蓮・・・」

「障害者を抱える家庭ではよくある話よ・・・仕方ないわ・・・私は普通で・・・お兄さんより恵まれていたんだから・・・今だから・・・そう思えるの」

康介は梨央を見舞い・・・病室でストレスをためる。

無意味な暴力をふるっても何も解決できないことはわかっていた・・・しかし、他にどうすることもできなかったのだ。

梨央が花になっていく時間を黙って見つめるだけ・・・。

康介は無力な自分を呪う。

隆一はハンバーガーを食べていた。

舞から着信がある。

「何してるの・・・」

「ランチだよ・・・」

「バッカじゃないの・・・」

「君も食べればいいと思うよ・・・」

嵐は過ぎ去った。

やり過ごすのだ・・・。

どうしようもないことは・・・やがて・・・どうしようもなく終わるのだから。

咲人の個室に蜂須賀がやってくる。

「彼は今、仮眠中です」

「そうか・・・これは・・・強化型の効果についての予測データだ」

「預かります」

「具合はどうかね」

「今は特に際立った変化はありません」

「いや・・・君のだ」

「私のご心配をいただけるとは・・・」

「彼が息子だとすれば・・・君は娘のようなものだ」

「・・・」

「私に言えることは・・・ただ一つだ・・・今を大切にすることだ」

「彼が彼でなくなった時のことを考えるなと・・・」

「そうだ・・・その時、君が彼をどう思うかは・・・その時・・・考えればいい」

「愛が・・・消えてしまうのではないかと・・・私は恐れています」

「当然だ・・・彼を失うことは世界の誰にとっても大いなる損失なんだから・・・だが・・・私は・・・彼が強化型によってどのように変化するのか・・・知りたい気持ちも抑えきれない」

「先生はそういうところが魅力的なのです」

「だが・・・彼は違う・・・そうではないかね」

「そうです・・・私は・・・彼が知識よりも愛を求めているところが気に入っているのです」

「君たちの愛が末長く続くことを・・・私は祈るし・・・そのために手段は選ばないつもりだ」

「先生・・・」

咲人は夢を見ていた。

父親の白鳥久人(いしだ壱成)は微笑む。

「お前には誰にも負けない愛嬌がある」

「あいきょ」

「そうだ・・・もっと笑いなさい・・・愛嬌をふりまくんだ」

「あいきょ・・・」

「いいぞ・・・咲人・・・愛嬌さえあれば・・・お前はきっと幸せになれる・・・愛嬌だ」

「あいきょ、あいきょ、あいきょ」

咲人は自分が父親に厳しく躾けられていたことに気がついた。

そして・・・アルジャーノンは死んだ。

小久保は考えた。

(アルジャーノンが死ねば・・・解剖される・・・特に脳は完全に切り刻まれ・・・脳内に残っている物質はすべて分析されるだろう・・・もちろん・・・全身に張り巡らされた神経細胞の各所も徹底的に解析される・・・解剖が終わったら・・・アルジャーノンは影も形もなくなってしまうだろう・・・人類の科学の発展に多大な貢献をした・・・一匹のネズミ・・・アルジャーノンのことを覚えている人間は・・・きっと俺だけだ・・・アルジャーノン、お前はそれでいいのか・・・俺は・・・嫌だな)

小久保はアルジャーノンをケージに収納すると飼育室を抜けだした。

アルジャーノンの脳波が消えたことに研究室の数名が気がつく。

「どうした」

走り去る小久保に杉野が声をかける。

「アルジャーノンが死にました」

「え・・・」

「遺族として・・・解剖は拒否します」

「何を言ってるんだ」

小久保は脱出に成功した。

竹部はひまわり寮の食堂にやってきた。

「朝の件はすまなかった」

「・・・」

頭を下げる竹部に鹿内は戸惑う。

「結局・・・俺も・・・元はお前たちと一緒だ・・・頭にくると見境がなくなっちまう・・・」

「・・・」

「お前たちの親代わりなんて言っているが・・・親としたら下の下だよな」

「説教ですか」

「説教じゃない・・・これを見ろ」

竹部は腹の手術跡を見せる。

「随分・・・派手な手術ですね」

「腎臓の移植手術だ・・・若い頃・・・俺はお前たちよりずっとひでえ・・・ワルでさ・・・人を殺すわ・・・モノは盗むわ・・・女は犯すわ・・・やりたい放題だ・・・で・・・ある日突然、動けなくなって・・・病院で医者に腎臓が両方いかれてるんで・・・死ぬしかないって言われたよ・・・そしたら・・・学校の先輩が訪ねてきた・・・まあ・・・顔を知ってる程度だったけど・・・親戚だったんだよ・・・親父の親父の弟の子供の子供くらいの親戚で・・・よくわからないが・・・血縁だった・・・その人がくれたんだよ・・・腎臓ひとつ・・・俺はさ・・・バカみたいな奴がいるもんだとびっくりしたよ・・・でもな・・・そのバカのおかげで今も生きてるんだ・・・俺にとってあの人は神様と同じなんだよ・・・だからさ・・・俺の気持ちを・・・お前らに少しでもわかってもらいてえんだよ」

「説教じゃないですか」

「まあな・・・」

「それって・・・咲人の親父さんですか」と隆一。

「・・・」と無言で同意する竹部だった。

大手製薬会社「興帝メディカル産業」の河口玲二社長(中原丈雄)は杉野に電話をする。

「あの話はどうなっている・・・」

「今・・・タイミングをはかっています・・・こちらでも少し残務処理があるので」

「わかっているだろうが・・・時間がないのだ」

「わかっておりますとも」

着替えのために一時帰宅する遥香を待ち伏せする隆一。

「お話することは何もないわ・・・」

「何かあったんでしょう・・・」

「・・・」

「この間咲人ちゃんと話した時・・・何か様子が変でした」

遥香は秘密を守ることが苦手なタイプである。

非情とはもっとも縁遠いタイプなのである。

「退行するの」

「タイコー」

「前の咲人さんに・・・戻ってしまうのよ」

「え・・・」

「それが・・・どんなことか・・・対等な友達になった・・・あなたには・・・わかるでしょう」

「そりゃ・・・あんまりだ」

「そうよ・・・ひどいのよ・・・だから・・・なんとかしなくちゃならないの」

「・・・」

「社長令嬢の話も知っているわ・・・でも・・・そのことは秘密にして・・・彼が知ったら・・・」

「自分のことよりも・・・彼女のことを助けるって言い出すかもしれないから・・・」

「そうよ・・・時間がないの・・・優先順位の問題なのよ・・・」

「あなたは・・・」

「そうよ・・・咲人を助けたいの・・・他の誰でもない彼を・・・」

「・・・」

隆一は咲人のために何かをしてやりたかった。

しかし・・・できることはないのである。

隆一は自分の無力を噛みしめる。

咲人は小久保が帰ってきたことを知った。

「やあ・・・」

「よく考えてみれば・・・アルジャーノンは君の友達でもあった。君のために解剖されることを彼は望むだろうと思ってさ」

「ありがとう・・・でも・・・その必要はない」

「・・・」

「行こう・・・どこか・・・美しい場所へ・・・友達を弔うのに相応しい場所を探そう・・・」

「・・・」

二人は赤い車に乗った。

「この原生林なんか・・・どうかな」

「いいね・・・この容器の中なら・・・獣の餌にはならないし・・・」

「素敵だね・・・僕はお葬式は初めてなんだ」

「だけど・・・本当にいいのかい」

「もう・・・すべての計算は終わっている」

「そうか・・・さすがだな・・・でも・・・不安や恐怖はないのかい」

「不安や恐怖は未知から発するものだ・・・もちろん・・・私だって全知全能ではないけれど・・・そういうものへの対処の仕方は理性が制御できる範囲についてはわかっている。それにALG試薬の効能には不安物質の制御が入っているんだ」

「変性した体内物質による鎮静か」

「それと・・・不安物質のレセプターを埋めてしまう効果もある」

「それって・・・少し、ヤバイんじゃないの」

「まあ・・・ALGは明らかに危険ドラッグの類だね」

「・・・」

「君がアルジャーノンに文字を教えたのかい」

「アルジャーノンが文字を知っていたかどうかはわからない・・・ごく初期に・・・芸として仕込んだんだ・・・文字の上に餌を置いてね」

「・・・」

「アルジャーノンを百万回さ・・・」

「百万回の孤独だね」

「そうさ・・・君と同じだ」

「友達はアルジャーノンだけか・・・」

「まあ・・・君には遥香くんもいるけどさ」

「もうすぐ・・・妹が私を訪ねてくると思うんだ・・・」

「紹介してくれるかい」

「まあ・・・君には少し高嶺の花かもね」

「ひでぶ」

夜明けの森林でアルジャーノンの葬儀はひめやかにおこなわれた。

「それは何・・・」

「遺伝子改良された花の種・・・何が咲くかはお楽しみ・・・」

「それは・・・完全にヤバイだろう」

「大丈夫・・・たとえ・・・それで人類が滅びたとしても・・・生命が滅びるわけじゃない」

「おいおい・・・」

「今・・・僕は強化型を試用中なんだ・・・」

「知能指数が10000くらいある気がする・・・今、僕は宇宙と一体化している気がするよ」

「そこに・・・アルジャーノンはいるのかい」

「もちろん・・・」

「じゃ・・・伝えてくれ」

「いいよ」

「さよなら・・・アルジャーノン」

「うん」

康介は・・・咲人に面会するために研究所に不法侵入した。

たちまち・・・警備員に確保されるのだった。

そこへ・・・咲人たちが帰還する。

「何があったのですか・・・」

杉野が答えた。

「恋人を助けたい一心・・・ということだろう・・・」

「恋人?」

咲人は事情を知った。

咲人は蜂須賀に経過報告をする。

「なんだって・・・もう・・・強化型を試用したのか・・・何故・・・動物実験を・・・待たない」

「先生の計算よりも早くタイムリミットが来ることがわかったのです」

「・・・」

「それに・・・強化型では・・・マウスもラットもアルジャーノンと同じ・・・運命をたどることになるでしょう・・・」

「実験動物に同情していては・・・ストレスがたまるぞ」

「ただ・・・無駄を省いただけです」

「なぜ・・・あきらめるのだ・・・可能性はあるはずだ」

「いいえ・・・もう・・・計算は終了しています。強化型、改良型・・・共に私の知性を維持するのは不可能です・・・つまり・・・退行阻止の可能性はゼロです」

「・・・」

「しかし・・・進行性要素性障害による遷延性意識喪失状態の治療については・・・アイディアを持っています」

「それが・・・君の科学者魂か・・・」

「博士譲りですよ・・・」

「咲人・・・君の成功を祈る・・・しかし・・・私もあきらめない」

「ありがとう・・・博士」

咲人は涙を堪える遥香に声をかけた。

「素直に教えてくれればよかったのに・・・」

「嘘をついてごめんなさい・・・でも・・・」

「わかってるさ・・・僕が君なら・・・同じことをしていた」

「ねえ・・・もう一度・・・自分を最優先にはできないの」

「だめだ・・・僕は父親に洗脳されている・・・いざとなったら自分を犠牲にすることしかできない」

「私のために・・・」

「無理だよ・・・君は僕のために献身してくれるに決まってる」

「愛しているのに・・・」

「愛は・・・基本的に・・・悲しいものなのさ」

「・・・」

咲人は梨央の病室に向かった。

釈放された康介は・・・咲人を抱きしめる。

「誰のための抱擁サービスなのか」

隆一は微笑むのだった。

すべては杉野の計画通りとなった。

「薬学的アプローチで症状の改善を目指します。記憶の減退および意識の消失を新薬の投与で抑止することになります。最終的には脳外科およびナノマシーン技術の融合による施術を行う可能性を含めてプロジェクトをスタートします」

咲人はチームのリーダーとして梨央に対峙する。

梨央は長い眠りから目覚めるのだった・・・。

「咲人さん・・・」

咲人は一瞬・・・二人の出会いを思い出す。

この人を助けるのが・・・自分の運命だったのか。

咲人は父親によって植え付けられた自己犠牲精神コンプレックスの発動を感じる。

遥香は・・・窓花を訪ねていた。

「そう・・・あなたが・・・咲人の家族になってくれるの・・・私にお気遣いは無用よ」

「ちがいます・・・私はお願いに来たのです」

「・・・」

「彼は今・・・お父様の記憶に支配されて自己犠牲の虜になっています」

「ああ・・・彼は・・・家族を犠牲にしても社会奉仕をするタイプだから・・・」

「私は・・・そういう偽善的な態度が嫌いです・・・本末転倒ですもの」

「・・・で」

「彼に・・・自分のことだけを考えるように・・・命令してほしいのです・・・彼はママの言うことなら絶対に従うはずですから・・・」

「・・・」

窓花と遥香は見つめ合うのだった。

咲人は微笑む。

幻想の久人も微笑む。

どのような天才も・・・両親の支配からは逃れられないらしい・・・。

勝利の栄冠はどちらに輝くのだろうか・・・。

ねえ・・・パパとママ・・・どっちが好き?

関連するキッドのブログ→第8話のレビュー

Hcal009ごっこガーデン。アルジャーノンの眠る魔法の森セット。

エリああ・・・もう・・・咲Pは逝ってしまう運命なのですか・・・アルジャーノンの死因は・・・自殺・・・それとも薬物死・・・やはり司法解剖するべきだったのではないでしょうか・・・こうなったら遥香のヒロインパワーだけが頼りなのでスー。いざとなったら・・・ネクロマンサーハルカとなって・・・蘇生の術を使ってもいいのでス~。愛のために・・・・何がなんでも咲Pを助けてね~・・・普通の女の底力・・・見せてよ最終回~・・・グスン・・・命がふたつある人はひとつわけてください・・・お願い・・・光の国の人・・・

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2015年6月 5日 (金)

ラベンダーの香りの漂う時空(木村拓哉)過去の耐えられない重さ(上戸彩)

この世界に一人ではないことは幸福なのか・・・不幸なのか。

そもそも人は一人では生きられない・・・あるいは生きにくいわけである。

しかし・・・自分だけがいればいい・・・と思うことがある。

人間関係が煩わしいのは言うまでもない。

たとえば・・・近所を選挙でもないのに政党名を連呼しながら拡声器の大音量で「政治的なメッセージ」を叫びたてる車が巡回している時、体当たりで車を停車させ、運転手を引きずり降ろし「うるせえよ」と耳元で囁いてやりたいと考えても・・・いろいろなしがらみを考えて自主規制するわけである。

やりたいと思ったことをしないのはものすごいストレスだ。

ちなみに・・・このブログを読むためには検索してたどりつく必要がある。

それ以外の人は・・・愛読者である。

読むのも読まないのもあなたの自由である。

読んだ後に何かを感じる人もいるだろう。

人間はそういう時には表現したいこともあるので基本的にコメント欄はオープンになっている。

つまり・・・ここは双方向のメディアなのである。

もちろん・・・寄せられたコメントを公開するかどうかの判断はキッドが行うし、コメントに応答するかどうかもキッドが決断する。

しかし・・・公開されていないコメントを少なくともキッドは読むわけである。

そうでなければ公開されたコメントを読むことができないからだ。

ブログというメディアは素晴らしいインターネットの世界のほんの一部に過ぎないが・・・表現の自由を確保する場としては非常に優れていると言える。

基本的に表現の自由というものは「絶対」なのである。

いかなる規制も許されないから「自由」なのだ。

人間が一人しかいなければ・・・である。

しかし・・・人間の自由は衝突する場合があり・・・そこでは様々な軋轢が生じるものだ。

たとえば・・・このブログを読もうとすると否応もなく入ってくるメディア提供者であるココログの許可した広告のリンク。

開始当時から比べればものすごい情報量になってうるさいことこの上ない。

けれど・・・無料で表現をしている立場から・・・それをやめろとは言えないわけである。

なんという不自由さだろうか。

だが・・・表現する喜びはそういう書き手の不満を制圧するのである。

それでも書くのは自由である。

そして・・・書くからにはあらゆる自由のために書くのだ。

世の中のルールからどこまでも自由に書く。

「引用を拒否する権利」を主張するものはすればいい・・・しかし・・・こちらがルールを無視する権利もある。

そういう権利がないのであれば・・・自由なんてないのと同じだぜ。

自由とは失うものが何もないってことだから。

明日・・・このブログが消えていれば・・・それは自由であることの難しさの証明ということなんだな。

しかし、今はあなたがいて良かった。

独り言は虚しいものですから・・・。

で、『アイムホーム・第8回』(テレビ朝日20150605PM9~)原作・石坂啓、脚本・山浦雅大・林宏司、演出・田村直己を見た。久(木村拓哉)は妻・恵(上戸彩)のパーソナル・コンピュータのゴミ箱フォルダから恵とサッカークラブのコーチ・本城(田中圭)とのただならぬ関係を示す画像を発掘してしまう。そして・・・本城と恵が同時に喉の風邪に感染していることにオーラルでディープな唾液の交換など様々なあんなことやそんなことやこんなことを想像してモヤモヤするのだった・・・そこへ・・・恵が疑惑の息子・良雄(髙橋來)とともに帰宅するのである。

今回は原作の序盤のエピソード「アイジンの家」と終盤のエピソード「スバルの部屋」を交錯させた脚色になっている。香(水野美紀)が再婚していない点や・・・オリジナル・キャラクター本城の登場など・・・もはや・・・「もう一つの別の世界」となっている「アイムホーム2015」だが・・・麗しい愛人・杏子(吹石一恵)が実写化されたのは喜ばしいことである。妄想的には・・・恵と香、そして杏子、さらには娘のすばる(山口まゆ)、義妹の祥子(蓮佛美沙子)、そして派遣社員の小鳥遊(たかなし)優愛(吉本実憂)まで・・・みんなが家路久(木村拓哉)を愛しているわけである。・・・モテモテだな。

とりあえず・・・画像は見なかったことにする久・・・。

しかし・・・恵は夫の態度から・・・見られたことを察するのである。

ちなみに画像を繊細に見ると・・・そこには「2006年」という文字が見える。

つまり・・・それは・・・十年程前・・・久と恵が結婚する以前の画像なのであった。

十年前の画像を保存し続けるコンピューターは偉いという話なのだ。

ちなみに・・・このブログを書き始めたのが2006年で今使用しているのは当時から三台目のパソコンである。2006年の画像なんて・・・バックアップをこまめにする人だけが保持できる幻のアイテムだよな・・・お前が無精なだけだろうがっ。

もちろん・・・恵は本城となにやら密会しているので・・・「ほら・・・これ・・・懐かしい画像見つけちゃった・・・」となんらかのメディアで最近、受け取ったものかもしれない。

それはそれで・・・夫の立場から言えば・・・モヤモヤする話である。

そもそも「妻の浮気疑惑」というものは夫に様々な不安要素を感じさせるものだ。そのために脳内には不安を醸しだす脳内物質が多量に分泌され・・・この上なくモヤモヤするのである。大胆不敵にも主人公に感情移入していたものはいてもたってもいられなくなるという痛恨の一撃を・・・まあ、いいか。

モヤモヤから逃避するために・・・良雄から求められた付録の「お家の模型セット」の制作補助の仕事にとびつく久だった。

人間がサルを辞めてヒトになり、穴倉から出て家を作るようになってから・・・家路は常に歌われてきたのである。親の住む家、妻の待つ家。子供のいる家。一人暮らしの部屋でさえ・・・そこへ向かう人の心はどこか・・・せつないものなのだ。胸を一杯にするのが楽しさなのか苦しさなのかは別として。

この家族と一緒に暮らして行こうという決意が鈍る久なのである。

妻の不倫疑惑というモヤモヤを抱えて出社した久は次第に我を失っていく。

基本的に・・・記憶喪失者は精神が不安定なものである。

なにしろ・・・記憶と言う拠り所が曖昧なのだ。

事故以来・・・仮面にしか見えないけれど・・・献身的に自分を支えてくれた妻に秘密があること。それが・・・久の心を揺らしまくる。

心ここにない様子の久を案じて・・・第十三営業部の小机部長(西田敏行)は勤務終了後の酒席に誘う。

「浮気しているかもしれない妻と顔を合わせたくない夫」は誘いに応じるのだった。

家路家の崩壊の序曲である。

そもそも・・・憂鬱なこの物語は漸く本性を剥き出し始めたのだ。

家庭を捨てた父親を持つ久は理想の父親になるために家庭を捨てなければならないという矛盾を内在させているのである。

だから・・・過去の久は香とも離婚したし・・・恵に振り返りたくない過去を与えたのである。

家庭を大切にできない衝動を抱えた人間の屑・・・。それが本来の家路久なのである。

そのクズのクズたる由縁が明らかになろうとしている・・・。

模型作りの続きを一緒にしてもらうためにワクワクして帰りを待つ息子の良雄の希望を打ち砕くダメな父親となった久なのだ。

「何があったの・・・」

「酔えないんです・・・いくら飲んでも」

「そうなの」

「まったく酔えません・・・グースカピー」

「よ、酔ってるじゃん」

酔いつぶれて・・・タクシーに放り込まれた久は運転手に行先を告げる。

しかし・・・そこは家路家ではなく・・・白石杏子(吹石一恵)の暮らす部屋だった。

だが・・・久は例によって記憶の混乱を起こし・・・その部屋でカレーライスを作りはじめるのだった。

首尾よく野菜カレーを作り終わった時、玄関に人の気配がある。

「お帰り・・・杏子・・・って杏子って誰だよ」

正気を取り戻した久は見知らぬ家でくつろいでいる自分に愕然とする。

「やべえ・・・また・・・やっちゃった・・・」

あわててクローゼットに間男として隠れる久。

男性(田中要次)を伴って帰宅した杏子は「男にだらしない感じのセクシー美女」だった。

「本当にお茶飲んだら帰ってよ」

「お茶以外にもいろいろあるよ」

「やめてよ・・・不倫とか間に合ってるんで・・・」

「不倫もあるよ」

「あ」

久を発見する杏子。

「誰だ・・・こいつ」

「はじめまして・・・」

「久(キュー)ちゃん・・・」

修羅場は回避され・・・妻子のあるらしい男は帰宅し・・・仮面妻子のある久は杏子とカレーを食べるのだった。

「美味しい・・・」

「それで・・・あの・・・杏子さんと僕はどういう関係でしょうか」

「なんですって・・・兄さん・・・妹の顔を・・・」

「え」

「嘘です・・・本当に記憶喪失なんだ」

「・・・」

杏子は二年前から一年間、久と交際していたのだった。

二人の仲は久の左遷転勤によって清算されたという。

「交際って・・・」

「あの頃の久さん・・・凄かったわよ・・・四十八手ではすまずにものすごいプレーまで」

「そんな・・・」

「思い出したら・・・なんだか・・・プレーしたくなっちゃった」

「え」

「やろうよ」

「あ・・・もう・・・こんな時間だ・・・帰らないと」

「え・・・やらないで帰るの・・・」

「やらないで帰ります」

どんなプレーをしたのか思い出せない久は恐怖を感じたのだ。

家路家では妻と子供はすでに就寝していた。

(カレーがあります)という恵のメモをモヤモヤモヤモヤで見つめる久。

浮気してカレー帰宅してカレーは肥満の原因になるのでご注意ください。

妻の不倫に悩んでいた久は自身が過去に不倫していたことにショックを受けていた。

出社した久の元へ杏子が訪ねてくる。

「久しぶりだね・・・」と社員たちは杏子を出迎える。

「あの人誰なんですか・・・」

「知らないの・・・ミス葵インペリアル証券と言われた元社長秘書の白石杏子さん・・・」

「みんなが狙っていたのに・・・突然、退社しちゃって・・・」

「今は・・・生命保険の外交員なんだぜ」

口々に情報を伝える同僚たち。

「昨日はどうも・・・」

「はい」

脳殺フェロモンをまき散らす杏子に密かに久に想いを寄せる小鳥遊は殺意を感じるのだった。

久のモヤモヤストレスは高まる一方なのである。

その頃、恵は・・・案の定・・・本城と密会しているのだった。

「昔の写真が見つかっちゃった」

「昔の写真だって言えばよかったじゃないか」

「なんとなく・・・言い出せなくて・・・」

「僕にとっては・・・昔のことじゃないけどな」

意味深な発言をする本城なのである。

杏子は・・・久が忘れたメモ帳を届けに来たのであった。

「僕たちは・・・どうして・・・交際したんだろう・・・」

「私から誘ったのよ・・・だってあの頃のあなた・・・恰好よかったんだもの」

「・・・」

「奥さんとの関係が冷え切っているって言ってたわ・・・お嬢様育ちすぎて会話がかみ合わないとか・・・なんとか」

「・・・」

「それであんなことやそんなことそしてどんなこともする仲に・・・」

「うわああああああああああ」

一方で・・・久は小机から衝撃の事実を告げられる。

「君が・・・左遷された原因は・・・杏子ちゃんだよ・・・社長秘書に手を出した罪は重いよ・・・しかも不倫だ・・・社長は激怒されたよ・・・わかるだろう・・・」

「・・・」

混乱する久の元へ・・・すばるから呼び出しがかかる。

「大変なの・・・すぐに来て」

あわてて・・・野沢家に駆けつける久だった。

微笑んで久を迎えるすばる。

「えへへ・・・今日、お母さん・・・いないんだ・・・」

「え」

「なんだよ・・・急に・・・」

しかし・・・屋内に入った久は・・・野沢家のそこはかとない荒廃を感じる。

「どうしたんだ・・・お母さんは・・・」

泣きだすすばる。

「お腹すいたの・・・カニクリームコロッケが食べたい・・・」

仕方なくコロッケを作るすばる。

「お父さん・・・やっぱり上手だね」

「・・・」

「お母さん・・・天麩羅とか作らないから」

「コロッケは天麩羅じゃないぞ」

「お母さん・・・ガンなんだ」

「なんだって・・・」

蒼ざめる久。久の記憶の中では・・・香は今も久の妻なのである。

「この間・・・清原さんも作ってくれたけど・・・」

「清原さんって・・・」

「お母さんが再婚するかも知れない相手・・・私、嫌だったんだ・・・勝手に人の家でさ」

清原(山崎樹範)は香の仕事仲間だった。

この世界では・・・すばるの実の父親候補なのかもしれない。

この世界では・・・中学生すばるは・・・実の父親、幼少時代を過ごした久、そして香の再婚相手と・・・父親が変転していく落ちつきのなさである。

ある意味・・・かわいそうだ、すばるかわいそうだ・・・なのである。

「私・・・やっばり、お父さんがいい・・・明日もごはん作ってよ」

まあ・・・キムタク>やましげは仕方ないことだな。

「すばる・・・それはできない・・・無理なんだ」

久の記憶では今もわが子と言えるのは仮面の良雄ではなく・・・香の連れ子だったすばる(血縁関係なし)なのである。

しかし・・・現実では・・・すばるは五年前に別れた娘(血縁関係なし)なのだった。

そこへ・・・祥子がやってくる。

「お義兄さん・・・」

祥子の義妹としての願いは・・・久が現在の家庭で幸せになってくれることである。

「どうして・・・こんなに大事なことを・・・教えてくれなかったんだ」

「お義兄さん・・・わかっていると思うけど・・・もう離婚して・・・五年経っているのよ・・・」

「・・・」

「お義兄さんはすでに新しい家庭を持っているのよ・・・」

「だけど・・・僕にとっても・・・」

「もう・・・赤の他人なのよ・・・」

「別れた家族のことを心配しすぎたら・・・今のご家族は・・・どう思うか・・・考えてみて・・・」

考えてみなかった久である。

もちろん・・・久には記憶障害という重荷はある。

しかし・・・一つのことにこだわると・・・他のことはないがしろにしても平気な・・・クズの一面は・・・今もはっきりと現れているのだった。

その証拠に・・・すばるのことで頭がいっぱいになり・・・父親の帰宅を待つ良雄のことはどうでもよくなっているのである。

「お義兄さん・・・お姉さんには久さんが忘れている五年間があって今があるの・・・お義兄さんとは違う・・・好きな人がいるのよ・・・」

「・・・」

久にとって・・・それは受け入れ難い現実なのである。

家路家には「ひじき明太子」がある。

ひじきの苦手な久のために恵が工夫して作った逸品である。

それ以来、久はひじきが食べられるようになった。

しかし・・・久にその思い出はない・・・。

祥子は病室に立ち寄る。

「今日・・・お義兄さんが・・・」

「知ってる・・・すばる・・・叱られたくなくて先手を打ってメールしてきた」

「お姉さん・・・清原さんのことだけど・・・」

「いいの・・・今は・・・久の方がマシかもしれない」

「え・・・」

「清原さん・・・いい人でしょう・・・子持ちってだけでもアレなのに・・・ガンになった女を背負わせるの可哀想じゃない・・・その点・・・久はとにかく昔はひどいクズ男だったからね・・・なにしても平気かな・・・なんてね・・・」

「お・・・お義姉さん・・・」

「冗談だよ・・・」

しかし・・・香の精神は少し変調しているようである。

重い病は人の心を時に乱すものだ。

「あの写真・・・十年前なのよ・・・とっくに別れたんだけど・・・去年・・・幼稚園でバッタリあって・・・びっくりしちゃった・・・」

久はモヤモヤをついに恵にぶつけるのだった。

「どうして・・・昔の僕と君のことを話してくれないんだ」

「本当のことを言うと・・・きっと二人とも・・・耐えられないから・・・」

「え・・・」

モヤモヤモヤモヤモヤモヤモヤ・・・モヤモヤの倍返しだった。

久は・・・杏子の部屋の鍵を返却に向かう。

「僕が・・・左遷されたのは・・・君との不倫が原因なのかな」

「そうよ・・・社長がえらい剣幕で・・・社内倫理的にも問題があったしね・・・まあ・・・社長は少し、嫉妬していたのかも・・・御蔭で私も辞めなくちゃならなくなって・・・まあ・・・今の仕事、気に入ってるけどね・・・キューちゃんには・・・お前のせいでとばされたって言われたし・・・」

「すまない・・・君にそんなこと言える立場じゃないのに・・・」

「いいのよ・・・不倫なんて・・・どっちが悪いってわけじゃないでしょう・・・不倫された相手にしたら・・・両方悪いのよ・・・」

「・・・」

「それに・・・奥さんと仲が冷えているなんて・・・浮気男の常套句でしょう・・・本当は仲睦まじい夫婦だったりしてね・・・」

クズ男にはもったいない・・・優しいいい女の杏子だった。

「とにかく・・・これ・・・返すよ」

「持ってていいよ・・・たまにくればいいじゃない」

「そうはいかないよ」

「本当にしないで帰るの・・・」

「・・・」

久は強烈な誘惑を振り切る。杏子の香水・・・ラベンダーの香りは・・・久の記憶を揺さぶる。

今の久はリセットされて・・・クズからの脱出のチャンスが与えられているのだが・・・。

その記憶は・・・不倫相手との刹那の関係に感じた安らぎを伴っている。

まさに・・・それは・・・久がクズであった証なのだった。

去って行った久の残り香を杏子は吸い込む。

杏子にとって久は・・・愛おしい男だったのである。

久はクズで・・・魅力的な男だったのだ。

だから・・・恵は雨の中・・・泣いたのだろう。

そして・・・昔の男に慰められたのだ。

恵と本城は今も密会していた。

「こうして・・・逢うのも・・・もうやめにしないと・・・」

「どうして・・・」

「・・・」

「俺は・・・あの日の君を知っているんだぜ・・・」

意味深な二人である。

魅力的な愛人をふりきった久だったが・・・すばると香のコンビは・・・やはり久の家路を妨害するのだった。

「お母さんが・・・」

病院に駆けつける久。

香は狂乱し・・・ベッドの上で暴れていた。

「香・・・」

「いや・・・もう・・・いや・・・」

久は理由もわからず・・・香を抱きしめる。

「香・・・とにかく・・・落ちついて・・・」

「お母さん・・・」

泣きじゃくるすばる。

そして・・・両親が不在の家で良雄は玩具の家を破壊するのだった。

良雄・・・不憫だよ・・・良雄・・・。

秘密めいた・・・エリート社員・久の顛末の鍵は小机社長に託されたらしい。

だが・・・それは・・・この家庭のゴタゴタぶりにくらべたら・・・どうでもいいのでは・・・。

久・・・現在の妻と子供が仮面に見える。

恵・・・クズだった頃の久の記憶に苦悶する。

香・・・ガン。

すばる・・・新しいお父さん候補に馴染めない。

良雄・・・クズだった頃の久に怯える。

杏子・・・一人泣き濡れる。

久の母・・・死に至る病。

久の父・・・認知症。

久の弟・・・経営難。

祥子・・・姉の家庭が大変なのに家族が出張先で大けが。

恵の両親・・・とにかく孫が可愛い・・・あ、ここは平和だ・・・。

いよいよ・・・物語はクライマックスに向かって行くんだな。

① 前妻・香と義理の娘・すばるの暮らす野沢家の鍵

② 友人・山野辺の居室の鍵

③ 良雄の玩具を隠した秘密の倉庫の鍵

④ 義父のワイン庫の鍵

⑤ 単身赴任をした南茨城の部屋の鍵

⑥ 実家の家路家の鍵

⑦ 別荘の鍵

⑧ 実の父の部屋の鍵

⑨ 愛人の部屋の鍵

⑩ 自宅の鍵

それとも・・・自宅の鍵は除外で・・・もう一本あるのかな?

関連するキッドのブログ→第7話のレビュー

Ihhc008ごっこガーデン。アンナお嬢様専用衣装更衣室。

アンナキャー、妻として愛人として前の奥さんとして前の奥さんの妹として前の奥さんの娘として会社の同僚としてすべてのダーリンは私のものですぴょ~ん・・・どうした王子からの・・・ごめん・・・それはできない攻撃・・・せつないぴょん、せつないぴょん、せつないのぴょ~ん・・・久は本当の幸せを見つけることができるのでしょうか・・・本当の幸せ・・・それはきっと・・・青い鳥・・・最初からお家に・・・いるものなのかしら・・・じいや・・・クリコロ百個ね~みんなと食べるのぴょんぴょんぴょん

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2015年6月 4日 (木)

病める時も健やかなる時もあなたです(堺雅人)ニヤニヤしているお前も苦悶させてやろうか(蒼井優)

このドラマの主人公が・・・精神科医であるということに疑問を感じる人も多いだろう。

そもそも・・・「~科」と標榜する科目を認定するのは厚生省である。

基本的にお役人のすることなのである。

実状にそぐわないのは基本みたいなものだから・・・。

そもそも・・・「心の病」が何かということについて・・・「心」が何か判っていない人類には断定するのは難しい。

かって・・・「片桐機長の逆噴射」がお茶の間を騒がせた頃・・・「心身症」という専門用語がマスメディアによって頻繁に使われた。

心身症とは・・・精神的な何かが身体的な不調の原因と思われる場合の用語である。

で・・・それが・・・身体的な症状を伴うために純粋に精神病とは言えない・・・ということで・・・「心療内科」という科目ができたわけである。

ちなみに・・・うつ病を治療するのは精神科医で・・・うつ状態による身体的異常を治療するのが心療内科医である。

その二つを一般人が区別するのはかなり困難である。

心の病の人は・・・「精神科」よりも「心療内科」を好む傾向があると言う。

「精神がおかしい」のと「心がおかしい」のでは・・・後者の方が軽い感じがするのだろう。

「あなたは・・・鬱状態ではなく完全に鬱病ですから精神科を受診してください」

「ええええええええええええええええええ」

・・・こういう感じかな。

まあ・・・精神科医で心療内科医という医師はたくさんいるから大丈夫です。

ちなみにヒノリンはさらに天才的な精神分析医なのである。

で、『Dr.倫太郎・第8回』(日本テレビ20150603PM10~)原案・清心海(協力・和田秀樹)、脚本・相内美生、演出・相沢淳を見た。脳機能の局在説は有望な仮説である。しかし、脳内のシステムの全貌は明らかになったようで・・・なかなかならないのである。脳が動物の生態に及ぼす影響について観察の機会を完全には与えてくれないからである。人体の場合は基本的に事故などによって脳が損傷した場合・・・何ができなくなるかで・・・損傷した部分が機能を局在させていた可能性があると推測できるわけである。動物の場合は犬などの脳を少しずつ切り取り・・・何ができなくなるか観察したわけである。そういうことは犬を愛する人にとっては言語道断なアレかもしれないが・・・科学がそうやって進歩してきたことを否定することはできません。人間も精神病の患者の死体を解剖して脳内のホルモンの量などを測定し脳内物質の何が悪影響を及ぼしていたか推測したりするわけである。意志の相互伝達な不可能な患者を医師だってもてあますのだが・・・それもまた所見なのである。とにかく・・・精神科医はそういう見えない何かと日夜戦い続けているのである。

まあ・・・お茶の間的には手術を失敗しないスーパー外科医はなんとなく想像できるのだが・・・人の心を完全にコントロールしてしまうスーパー精神科医にはなんとなく妖しいものを感じるのだと思う・・・洗脳されたらどうしよう・・・と思うのですね。

桜の木の下でヒノリンこと日野倫太郎(高橋楓翔→堺雅人)とユメノあるいはアキラである夢乃/相沢明良(木内心結→蒼井優)が交わした夢のようなくちづけ・・・。

その光景を邪な心を持つ女医・矢部街子(真飛聖)が撮影し、その写真は精神科主任教授の宮川貴博(長塚圭史)から慧南大学病院の円能寺一雄理事長(小日向文世)を経て夢乃に渡り・・・そして娘の手から兇悪な母親・菊千代/相澤るり子(高畑淳子)の手元へ・・・。

街子の邪悪な心はついにるり子によって花開く。

「穏便に済ませたかったら・・・五千万円おくれ」

「警察がくるね」と居合わせたヒノリンの主治医・荒木重人(遠藤憲一)・・・。

「また・・・くるよ」

「助かりました」とヒノリン。

「あの女・・・人に騙され続けた顔をしていたな」

「辛酸は顔に出ますからね・・・」

「しかし・・・我々は顔相見ではない」

「精神科医ですよね」

「あれが・・・夢乃の母親のるり子か・・・昔、お座敷に出ているのを見たことがある」

「えええええ」

「たしか・・・菊千代と言ったな・・・」

「七人の侍かっ」

ヒノリンは夢乃に何かが起こったことを悟り、置屋の女将で元芸者の夢千代/伊久美(余貴美子)を訪ねる。

「この間・・・家で内輪のパーティーがあり、夢乃さんをお招きしたのですが・・・人見知りのアキラさんにはかえって迷惑だったかもしれないと・・・お詫びにきました」

実は・・・夢乃/明良は兄想いの中畑まどか(酒井若菜)の敵意に満ちた精神攻撃で病状を悪化させていた。

「お詫びするのは・・・こちらの方です・・・あの子の側にいながら・・・心の病に気がつかず」

「解離性同一性障害は医師でも診断の難しい病気ですから・・・あなたに落ち度はありません」

「・・・」

思い詰める夢千代だった。

お気づきのように円能寺理事長は医師ではなく・・・金の亡者である。

円能寺は新しい病院の買収に燃えている。

そのための補助金を引き出すために行政府報道長官の池(石橋蓮司)を接待するのだった。

その宴席に招かれた荒木はお座敷の外で夢乃を目撃する。

(なるほど・・・あれが夢乃か・・・ヒノリンを虜にするかもしれんな)

副病院長兼脳外科医主任教授の蓮見(松重豊)は荒木の登場に驚く。

「どうして・・・お前が・・・ここに」

「彼は精神科を担当してもらうつもりだ」

「しかし・・・日野くんは」

「彼は優秀だが・・・私の命令に従わないので・・・処分する予定だ」

「・・・」

池は補助金と引き換えに・・・大臣の息子の難しい脳腫瘍の手術を成功させろと条件を出す。

「おやすい御用だろう」

「患者を診てみないことには即答できません」と回答を保留する蓮見だった。

「そんなことは許さない・・・私の命令は絶対だ」

・・・円能寺は金によって人間を支配できるという恐ろしい心の病にかかっているのである。

しかし・・・実際に人は金によって心を支配されているのでお座敷は沈黙に支配されるのだった。

蓮見はヒノリンの診療室に殴りこみをかける。

「なぜ・・・荒木がウチの病院に・・・来るんだ」

「荒木先輩が・・・私は何もしりません」

「・・・」

この時、蓮見の挙動からヒノリンは蓮見の視力に問題があることを感じる。

「蓮見先生・・・視力検査をお受けになりませんか」

「必要ない」

研修医の川上葉子(高梨臨)がテキサス・ヒューストン精神医学校に留学したために傷心している研修医・福原大策(高橋一生)も蓮見の視力に問題があることを見抜くのだった。

円能寺から夢乃への接触を禁じられたヒノリンだったが・・・構わずに心療を続行中である。

「私・・・踊るのは好きなんです」

「そうですか」

「お座敷のことはよく覚えていませんが・・・踊っている記憶はあります」

「私もお座敷であなたの踊りを見たことがあります・・・踊りのことはよく判りませんが・・・美しいと思いました」

「ありがとうございます・・・私・・・小さい頃から何をやっても上手くできなかったんですが・・・踊りだけはお母さんに褒めてもらいました」

そのお母さんが・・・菊千代なのか・・・夢千代なのか・・・ヒノリンは判断に迷う。

菊千代だとすれば・・・明良の人格も・・・幼いアキラと今のあきらの間に記憶の不連続性が発生しているのかもしれない。

ユメノがアキラを守っているように・・・アキラもまた幼い頃のアキラを守っているのかもしれない。

幼い頃のアキラは菊千代から虐待を受けながら・・・母親を慕わずにはいられなかったのだから。

ヒノリンは・・・アキラとユメノの融合の手掛かりを求めていたが・・・まだそれを得ることはできない。

母親がひどい人間だったと・・・幼いアキラに認めさせることは難しい。

夢乃が菊千代の模倣人格であることは幼いアキラの傷心と無関係ではないはずである。

アキラもユメノも拒絶する幼いアキラの心の障壁。

しかし・・・そこを突破しなければ・・・ユメノとアキラの人格は統一されないのだ。

さらに・・・夢乃も・・・菊千代コピー人格と夢千代コピー人格に分離しているのかもしれなかった。

観察される・・・多重人格は・・・アキラ、アキラ(幼少)、ユメノ(菊千代コピー)、ユメノ(夢千代コピー)と増殖傾向にある。

治療を終えた明良は置屋に帰宅する。

置屋では小夢(中西美帆)が踊りの稽古に出るところだった。

「私もすぐに支度をします」

「いいのよ・・・無理をしなくても・・・たまにはお休みしなさい」

夢乃が不憫で思わず優しい言葉をかける夢千代。

夢千代に抱きしめられたアキラは・・・ユメノに心を奪われる。

「けけけけけけけ・・・お母さんまで・・・あの男に洗脳されて・・・みんなあたしを消そうとしている・・・平気よ・・・私は・・・お座敷にでるわよ・・・だってそうじゃなかったら・・・誰がお金を稼ぐのさ」

変貌した夢乃に驚愕する夢千代だった。

(こんなに・・・なるまで・・・気がつかなかったなんて・・・)

夢千代は女将として心を痛めるのだった。

蓮見の病状についてヒノリン親衛隊長の外科医・水島百合子(吉瀬美智子)と相談するヒノリン。

「蓮見先生が・・・視力低下について・・・処置しないのは何故か」

「外科的な問題ではないから・・・」

「つまり・・・心因性の神経障害である可能性がある」

「先生は・・・半年ほど前から・・・手術数が・・・減っているわ」

「心の問題がどこにあるのかが・・・問題だ」

「蓮見先生は・・・隠すと思う」

ヒノリンは荒木を訪ねる。

エクレア依存症の荒木はエクレアを食べていた。

「荒木先生・・・しばらく量を控えないと・・・」

「蓮見のことだろう・・・」

「・・・」

「俺のエクレア依存症は・・・十年前からだ・・・」

「何があったんです」

「その古い週刊誌を見れば判る」

「・・・これは・・・」

「医療事故があったんだよ・・・患者は里中という女性で・・・俺の患者でもあった」

被害妄想と短期記憶障害の病状で受診した里中(町田マリー)は脳内で腫瘍が発生し、脳外科医の蓮見に委ねられた。

荒木は記憶の保護を求めて最新の術式で海馬の保護を主張する。

しかし、手術の難易度が高くなることを回避するために蓮見は旧来の術式で腫瘍の除去を優先させる。

患者は命をとりとめたが・・・記憶に障害が残ったのだ。

「俺にとっても苦しい記憶だ・・・反吐が出るくらいにな・・・実際に執刀したあいつにとっては・・・もっともっと苦いだろう・・・」

「しかし・・・蓮見先生は・・・十年間・・・嘔吐しなかった・・・」

「死んだんだよ・・・半年前・・・その患者が・・・そこで・・・何かあったんだろう」

「古傷を開くような何かが・・・」

「おそらくな・・・・ゲロゲロゲロ・・・」

「・・・」

荒木もまたトラウマによる過食と内臓疾患を発症していたのである。

明良は夢乃との交換日記を書きながら眠っていた。

その髪を撫でる夢千代。

(私は大丈夫・・・お母さんは優しくしてくれる・・・だから・・・夢乃・・・もう出てこないで)

「夢乃・・・」

夢千代は何もしないで見守ることに辛抱できなくなってしまった。

菊千代の巣に殴りこむ夢千代。

土下座攻撃をするのだった。

「お金は・・・私がなんとかする」

「なんとかって・・・一億・・・いや五千万・・・くれるのかい」

「いいわ・・・私が五千万円用意する・・・だから・・・金輪際・・・夢乃とは手を切っておくれ」

「・・・わかったよお・・・五千万円くれるならそうするよお・・・」

しかし・・・そんなに簡単に金づるを手放すことはしない菊千代だった。

早速・・・夢乃を呼び出すのである。

「あきら・・・あんたは・・・もういいわ・・・」

「え・・・」

「もう・・・いらないってこと・・・」

「なんで・・・」

「夢千代が・・・お金をくれるって・・・あんたとはもう会うんって言うのさ」

「そんな・・・」

「じゃあね・・・バイバイ・・・」

「いや・・・お母さん・・・捨てないで」

「ほら・・・最後にあんたの好きな金平糖をやるよ・・・」

「いや・・・お母さん・・・いや」

わだかまる最強の人格・・・幼いあきら・・・は夢乃/明良を支配する。

「いや・・・いや・・・いや・・・」

「あっははははは」

夢千代に対する勝利を確信する菊千代だった。

二人の間にも・・・情念が渦巻いているのである。

蛇の生殺しをしているとは気付かず・・・幼馴染の百合子と食卓を囲むヒノリン。

「どうして・・・そんなことにこだわるのだろう」

「事件は・・・円能寺理事長が金で解決したという噂よ」

「医療とは関係のない話じゃないか」

「倫太郎・・・あの人たちは・・・大学病院という組織の中で医者をやってるの・・・みんな組織の中で出世競争をしているのよ」

「患者を犠牲にしてか・・・」

「みんな・・・何かを犠牲にするのよ・・・あなただって・・・」

「僕・・・」

「お母さんのことで・・・自分を犠牲にしているでしょう・・・」

「え」

百合子の言葉に硬直するヒノリン。

(なんだって・・・母が・・・どうした・・・何が犠牲・・・玉子焼きはおいしいな)

素早く・・・苦い記憶を封印するヒノリンを百合子は・・・諦めを噛みしめるように見つめるのだった。

百合子は考える・・・長い長いオアズケの日々を・・・。

しかし・・・ヒノリンへの初恋を捨てることはできないのだ。

病気の女よりもっと憐れなのは 

ずっと幼馴染の女です

スーパー精神科医ヒノリンは蓮見を監禁し矯正治療に踏み切る。

「蓮見先生・・・視力が・・・」

「MRIによって脳そのものに異常はみられない・・・視神経にも問題ない・・・だからといって心因性の神経障害なんて・・・あやしい診断は受け入れられない」

「先生・・・精神の病は・・・それでもあります」

「本当にあるのか」

「荒木先生からお聞きしました」

「・・・」

「半年前に何があったんです」

「患者が死んだのだ・・・俺は葬式に出た」

蓮見は患者の母親(長谷川稀世)に詰られた。

「十年間・・・娘は私に・・・あなたは本当に私の母親なのかと問われ続けました・・・それが母親としてどんなに苦しいことか・・・おわかりになりますか・・・私は十年前に・・・娘と一緒に死んでいればよかったと・・・何度も何度も・・・」

「・・・」

「記憶を忘れることは難しいことです。忘れるためには思い出すしかありません・・・忘れようとして思い出せば記憶は深まって行く。忘れようとすればするほど忘れられなくなっていくのです」

「私は・・・記憶より・・・患者の生命を優先した・・・しかし・・・それで患者の人生を台無しにしてしまったのだ・・・何故なら・・・記憶は命と同じだからだ」

「しかし・・・記憶を残しても死んだら・・・記憶も消えてしまいます」

「・・・」

「あなたは・・・間違ったことをしたかもしれない・・・大切なのは・・・間違いを受け入れることです」

「それで・・・視力が回復するのか」

「わかりません・・・しかし・・・心はいつか・・・あなたを許してくれるかもしれない」

「どうすれば・・・」

「お休みするのです・・・心が・・・あやまちを・・・それによって起こった悲劇を・・・受け入れる時まで・・・」

「しかし・・・」

そこへ百合子がやってくる。

「患者の容体が急変しました」

「別の医師を・・・」と提案するヒノリン。

「それでは手遅れです」と百合子。

「君がやってくれ・・・私が指示をする」と蓮見・・・。

「・・・」

「結局・・・人間は・・・できることをやるしかないんだ・・・」

二人の外科医は手術室に消える。

「どうだ・・・癒着がものすごいですね」

「できるか」

「やります」

百合子は外科医として・・・できることをやる。

ヒノリンは手術室で立ちすくむ。精神科医にはできることはないのである。

そこへ看護師の桐生薫(内田有紀)がやってくる。

「夢乃さんから・・・お電話です」

「わかった・・・」

ヒノリンは自分のできることをする。

「どうしました・・・」

(おかあさんに・・・すてられた・・・あんたなんて・・・もういらないって・・・おかねがはいるから・・・わたし・・・いらなくなったって・・・)

「今・・・どこにいるのですか」

しかし・・・電話の向こうでは泣き声が聞こえるだけだった。

そして・・・電話は切れた。

ヒノリンは夢千代に連絡する。

「夢乃さんは・・・」

(みあたりません・・・何か)

「何か・・・あったのでしょうか・・・夢乃さんは・・・菊千代さんに用済みって言われたみたいなんですが・・・」

(私が・・・菊千代に金を都合する約束を・・・私・・・何かいけないことを・・・)

「いいえ・・・あなたは悪くありません・・・とにかく・・・夢乃さんが戻ったら連絡を・・・」

手術は成功した。

百合子はドクターXでもあったらしい。

そして・・・帰宅したヒノリンは・・・家に侵入して家探しをする夢乃と遭遇する。

「夢乃さん・・・」

「わたし・・・おかねがいるの・・・わかるでしょう・・・おかねがないと・・・お母さんに捨てられちゃうのよ・・・」

「夢乃さん・・・そんなことはありません」

「あんたと会ってから・・・ロクなことがないわ・・・あんた・・・アキラを騙して私を消そうとしているんでしょ・・・」

「あなたを消そうとなんてしませんよ」

「うそつき・・・私をだますなんて無理よ」

「楽しいことも・・・苦しいことも・・・大切なあなたの記憶です・・・私はアキラさんとユメノさんが・・・お互いに記憶を共有してもらいたいと思うんです・・・ずっと一人の自分でいられた方が・・・素晴らしいことだと思うから」

「なに・・・言ってんの・・・あんたに何がわかるの・・・毎晩、好きでもない男たちに愛想をふりまいて・・・もう一度するって言って・・・そうやって・・・生きて来た私の・・・」

「・・・」

「あんたも・・・おなじ苦しみを・・・味わえばいい・・・」

「夢乃さん・・・」

逃げ出す夢乃。

しかし・・・ヒノリンは逃げた女を追いかけたりはしない。

逃げた女を追いかけるのは男のすることだ。

ヒノリンは男ではなく・・・精神科医なのである。

理事長室で秘書(柊瑠美)から「金づるの手術の成功」を報告され・・・円能寺は上機嫌で幸せなら手をたたこうを歌い出す。

しかし・・・届けられた週刊誌の記事が円能寺を嫌な気分にさせる。

それは支配できない男と支配していたつもりの女が懇ろになっているという・・・円能寺の狂った心には受けいられない出来事の報せだった。

のほほんと出勤してきたヒノリンは・・・「精神科医・・・患者の女性と不適切な交際・・・被害者の芸者が告発」という記事を百合子に突きつけられるのだった。

百合子は・・・「男女交際しないはずの男」が男女交際(路上キス)している現場写真に精神崩壊寸前だった・・・。

ヒノリンは思わず心に「(ノ∀`) アチャー」という絵文字を・・・。

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2015年6月 3日 (水)

四十歳の独身女性です・・・好きになった人に妻子がいました(稲森いずみ)二十三歳ですが献身的な男性にプロポーズされたので受けちゃいました(渡辺麻友)

平和な社会は息苦しいものだ。

何故ならみんながルールを守っているからである。

授業を抜け出して屋上で煙草を吸ったりしてはいけないのである。

そう言うと・・・平和がすなわち管理社会なのかという疑問が湧くだろう。

温暖化という環境問題を考えてみよう。

二酸化炭素の排出規制というものがある。

そもそも動物はみんな二酸化炭素を吐く生き物なのである。

これを規制するということは・・・息苦しいのに決まっているのだ。

・・・おいっ。

面白そうだから何かやってみる。

それが制度によって阻まれる。

つまり・・・つまらなくなるのである。

しかし・・・多くの人は・・・戦争より平和の方がいいと思うのである。

そして・・・世界はどんどん・・・つまらなくなっていくのだ。

で、『戦う!書店ガール・第8回』(フジテレビ20150602PM10~)原作・碧野圭、脚本・渡辺千穂、演出・白木啓一郎を見た。みつどもえの不毛な視聴者争奪戦の続く・・・この枠。女性を主人公にした職業ドラマとしては「ナースのお仕事」や「ショムニ」の系譜である。実はこの枠では前期の裏枠で「まっしろ」という女性の職業ドラマが苦戦していた。そもそも・・・キッドは男子であるから・・・女性の職業ドラマを女性視点ではみていない。だが・・・どちらも脚本は女流作家なのである。もちろん・・・低視聴率がダメとは言わないが・・・やはり・・・お茶の間の共感を得られない・・・何かが共通してあるのだろうと思う。そもそも・・・お茶の間のお得意さんである・・・専業主婦の共感を得にくいのが・・・職業ドラマなのだが・・・専業主婦層の減少という現象をスタッフは読み間違えているのかもしれない。

そういう漠然とした世の中との相関関係とは別に・・・ドラマとしての分かりやすさという点で・・・おそらく・・・これはお茶の間には伝われにくいのではないかという「話」を二点、指摘しておきたい。

第一はプライベートとビジネスの境界線の話である。

ビジネスは基本的に競争である。

出版社は利潤を追求する企業にすぎない。

商品であるコミック雑誌「コミックヒート」に連載中の人気コミックは・・・出版社の財産である。

そしてコミックのキャラクターも財産である。

その財産を使用するにあたっては・・・決定権は企業にある。

その論理は「最大に儲けるための戦略」に基づいている。

それは非情の論理なのである。

一方で・・・その作品を生み出しているコミック作家は人間である。コミックを商品とする作業に直接携わる企業の社員である担当編集者も人間なのである。

人間には情がある。

担当編集者とコミック作家の間には情が流れているのである。

だが・・・担当編集者の任務はコミック作家を人気商品を生み出すシステムとして管理することなのだ。

ここに・・・ヒロインの一人、北村亜紀(渡辺麻友)が投入される。

プライベートで北村亜紀の友人であるコミック作家・あがちなお(浅利陽介)は亜紀の苦境を救うために自作のキャラクターのブック・カバーへの使用を許諾する。

まず・・・この友情が分かりにくい。下心がゼロだと言われるとますますわからない。

なにしろ・・・一回、お食事して意気投合しただけの二人なのである。

そして・・・あがちなおの個人的意志と出版社の企業論理の板挟みになるのが・・・亜紀の恋人であり・・・「コミックヒート」副編集長の小幡伸光なのである。

彼は・・・この行為が勤務する一ツ星出版にとって・・・損失をもたらすと上司に注意されながら・・・結局、プライベートを優先するのである。

義理と人情を秤にかけて・・・人情を優先する。

あげくの果てに・・・左遷されてしまう。

いい話なのだが・・・伝わらないんだよなあ。

なぜなら・・・義理と人情を秤にかけると義理が重たいのがお約束だからである。

つまり・・・これは少数派のいい話なのである。

なにしろ・・・日本という国は出る杭を打ち神童も二十歳すぎればただの人にしてしまう恐ろしい国なのだ。

第二に・・・四十歳まで独身で職業婦人として生きて来たもう一人のヒロイン・西岡理子(稲森いずみ)はいわゆる女の幸せとは無縁だったわけである。これがすでにお茶の間的には問題外なのだが・・・そんな理子にめぐって来た春の予感・・・。交際相手の田代敏之(田辺誠一)には妻子がいたのだ。

実は・・・ここまでは問題ないのである。

問題は・・・田代の妻子である。

現在、六歳になる子供のいる妻(紺野まひる)は不倫をして三年前に別居・・・子供を連れて他の男性と同棲していたのである。

なんじゃそれゃ・・・とお茶の間は思うわけである。

しかも・・・その三年間・・・田代は離婚していないのだ。

その理由は・・・子供を愛しているからである。

そして・・・その状況を隠して理子と交際していたのだが・・・。

妻が不倫相手と別れてやり直したいと戻ってくるわけである。

「しかし・・・今は君を愛しているので妻とは離婚する・・・しばらく待ってはくれないか」

そういう話なのだ。話としては成立しているが・・・お茶の間の共感は絶対に得られないと思う・・・。

だが・・・この脚本家はそういう話が大好きなタイプなのです。

いいんだよ・・・そんなに・・・奥深くしなくて・・・とキッドはそっと耳元で囁きたい。

まあ・・・そういうわけで・・・今回も視聴率的にはアレなんじゃないかな・・・。

愛する亜紀のために・・・自ら勤務する出版社を裏切って花形の編集部から裏方の総務部に左遷された恋人。

そんな事情を知らず・・・ブックカバー作戦で売上目標を達成して前途に希望を見出す亜紀。

その頃、編集部ではあがちなおが編集長(池田鉄洋)に突撃していた。

「彼を編集部にもどしてください」

「それは・・・会社として出来ないのです」

「じゃ・・・僕も・・・連載をやめます」

そこへ・・・木幡がやってくる。

「やめてください・・・僕は会社に迷惑をかけて・・・罰を受けて当然なのです。その上、先生が連載をおやめになったりしたら・・・傷口が広がるばかりです。第一・・・先生の作品を待っている読者には無関係な話です」

「・・・」

「僕のためを思うのなら・・・この件は・・・なかったことにしてください」

「木幡くん・・・」

結果として・・・木幡はコレ(女性関係)で左遷されました・・・という話なのだ。

人間として・・・あまりにも理不尽な展開に・・・胸が痛んだ木幡は・・・亜紀に真相を伝えにくるのだった。

「ええええええええ」

自分が無理なお願いをしたばかりに恋人が窮地に陥ったと知り・・・世間知らずのお嬢様である亜紀は・・・打ちのめされるのだった。

謝罪のために・・・木幡を直撃する亜紀。

しかし・・・気持ちの整理もつかず・・・慣れない部署での仕事に対応するために・・・亜紀につれない反応をする木幡だった。

亜紀は・・・とりかえしのつかない事態に困惑するのだった。

「今は・・・自分の仕事のことだけ・・・考えてください」という木幡の優しさも・・・。

亜紀を困惑させるのである。

一方・・・書店では新刊が入荷しないという新たなピンチが発生していた。

「七月閉店の予定なので・・・取次(問屋)に・・・吉祥寺店は出荷(納品)は最低限にするように指示しています」と谷田部社長(山中崇)・・・。

「そんな・・・それでどうやって商売をしろと・・・」と理子。

「そこは・・・店長のお手並み拝見ということでしょう・・・期待しています」

結局・・・既定路線の変更はしないという話なのか・・・本心の見えない社長なんだな。

とりあえず・・・個別発注と・・・他店舗の在庫で対応する理子。

前途多難な理子は・・・忠臣・三田(千葉雄大)といつもの公園でランチを食べる。

そこで迷子を発見・・・やってきた母親に引き渡すという不気味なエピソードが挿入される。

キャスティング的にこのままではすまないからである。

やがて・・・出版社が直接の取引に応じてくれることになり・・・新刊入荷不足は解消する。

亜紀の失調を見抜いた理子は自宅に招待し、父親(井上順)の手焼き煎餅と理子の手作りカレーでもてなす。

「煎餅屋なので煎餅蒲団しかないが・・・泊っていきなされ」

昭和のだじゃれで心が解けた亜紀は・・・件の一件を告白する。

「振り返った時に、この道を歩いてきてよかったと思える未来にすること・・・彼はあなたに・・・そう言いたかったんじゃないかな」

「悩んでいないで・・・前を向け・・・そういうことですか」

「そうよ・・・過去はとりかえしがつかない・・・これから・・・どうするかでしょう」

「・・・はい」

まあ・・・どうして償えばいいかわからないから悩んでいたんだけどな。

忘れろと相手が行ってくれるんだから忘れるがいい。

忘れるなと怨まれるよりマシなんだから。

ねえ。

出勤前に木幡を急襲する亜紀。

「私・・・がんばります・・・」

「うん・・・それからもう一つ・・・」

「何ですか」

「一生、僕の側にいてほしい」

「はい」

これはプロポーズなんだよな・・・そして承諾と・・・本当に判りづらいぞ。

一方・・・一人ランチの三田は・・・件の母子が・・・田代の妻子であることを目撃してしまうのだった。

「どういうことですか」

田代を追及する三田。

「理子さんを・・・不幸にしたら・・・許しませんよ」

「・・・」

その夜・・・理子を訪ねる田代。

「君が好きだ」と理子を抱きしめる。そして「だから・・・待ってほしい・・・僕は戸籍上の妻がいるが・・・離婚すると決めているから」

「なんじゃそりゃああああああああ」

「とにかく・・・三田くんに殺されそうになったので」

「・・・」

打ちのめされる理子。

結婚直前だった前の恋人は・・・二股のあげく相手を妊娠させて結婚してしまったのである。

男運がないとかそういう問題じゃなくて・・・バカなんじゃないか。

三田は理子を慰める。

「私・・・彼に妻子がいると言われても・・・実感がなくて」

「この間、公園にいた迷子とその母親ですよ」

理子のイメージを手伝う三田だった。

考えようによっては・・・悪魔だな。

仕方なく・・・父親に相談する理子。

「だから・・・あの男はやめておけと言ったんだ・・・子供、何歳だって?」

「六歳」

「お前は・・・その子から父親を奪うのか」

いや・・・そんなことより・・・あなたの娘・・・四十歳で独身ですから・・・。

考えようによっては・・・この父も悪魔だな。

やがて・・・出版社の出荷の根回しをしてくれたのが田代だと知る理子。

「私のために・・・それほどに・・・」

しかし・・・そこで亜紀が告げる。

「振り返った時に、この道を歩いてきてよかったと思える未来にすること・・・理子さんの言葉・・・私、一生忘れません」

ああ・・・そんなこと言われては・・・妻子ある男性にアプローチできなくなる理子なのである。

「もう・・・お会いできません」

「どうして・・・」

「ドロドロが苦手で・・・この年まで独身なので・・・」

「ああ」

ああ・・・もう・・・お茶の間の共感とは程遠い世界がここにあります。

とてもよくできた「話」なんですけどね。

つまり・・・戦わないと結婚できない時代だと言うことです。

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2015年6月 2日 (火)

どこにでもいる特別じゃない母は専業主婦A(相葉雅紀)私のお兄ちゃんが一人でできるワケがない!(有村架純)実名報道の判断は記者に委ねてください(沢尻エリカ)

「64」かっ。

ある意味、対極的だよな。

「暑苦しさ」と「生ぬるさ」の対決かっ。

どっちも否定するのかよっ。

・・・悪魔が担当しています。

(木)(金)で良心が披露困憊中か・・・。

日韓ハーフで杏の義母という女優は実力派だが・・・一部お茶の間をイライラさせるほどの能天気キャラの造形は実力を発揮しすぎている気がする。

「梅ちゃん先生」の良妻賢母でも・・・「あいくるしい」の不倫妻でも・・・とにかく・・・際立つ存在感が・・・臭いと感じる人には刺激的すぎるのですな。

キムチの話かっ。

そこまでにしとけよ・・・。

で、『ようこそ、わが・第8回』(フジテレビ20150601PM9~)原作・池井戸潤、脚本・黒岩勉、演出・相沢秀幸を見た。ついに名無しさん二号、名無しさん三号が登場である。本家名無しさんがまだいるとしたら・・・真犯人は四人なんだな。家族一人一人にストーカーならママに二人だったので五人目がいたりするかもな・・・。名探偵・神取明日香(沢尻エリカ)でオリジナル・シリーズにすればいいと思うよ。頼りにならない相棒・健太(相葉雅紀)と愉快な家族つきで・・・。七菜(有村架純)は静岡県の女子アナに就職させればスケジュール調整も容易だろう。・・・なんの話だよっ。

陶芸教室仲間のナカジマさんの家に空き巣が入り、現場には倉田珪子(南果歩)が波戸(眞島秀和)から贈られたアクセサリーと珪子の指紋のついたペットボトルが残されていたために・・・牧方刑事(乃木亮介)たちは珪子に事情聴取のための任意同行を求める。

しかし・・・そこは誰もが能天気になってしまう倉田家のファンタジー・フィールドなのである。

居合わせた明日香の指摘で・・・逮捕状のない刑事たちはお茶の間での事情聴取を強いられるのだった。

「私・・・うっかり他人の家に入ったりしません」

「本当?」と七菜は母を信用しないのだった。

「うっかり・・・人のものを盗んだりしません・・・」

「お母さんなら・・・うっかり逮捕されちゃうかもしれない・・・」と七菜は不安になるのだった。

「どう考えても・・・捏造っぽいですよね」と明日香。

「まあ・・・そうなんですが・・・物証がある以上・・・嫌疑がね・・・」

健太と太一(寺尾聰)はハラハラと見守るのだった。

役立たずの息子と父である。

倉田家の男どもがっ。

とにかく・・・健太の退院祝いは済し崩しに終了するのだった。

ナカノ電子部品では総務部契約社員のシルビア/西沢摂子(山口紗弥加)が「手形」に不安を感じると同時に太一の進退問題に言及する。

青葉銀行の触手として太一が出向先で定年を迎えることができるかどうかの正念場なのである。

太一は「例のドリル」の売却先企業の前途を危ぶみ・・・青葉銀行の知人(小市慢太郎)と連絡を密にするが・・・真瀬部長(竹中直人) の策謀の魔手は太一の部下・高橋(橋本稜)にも伸びて行く。

三千万円の損失の責任を・・・太一に押し付ける気配が濃厚なのであった。

太一は「善処する」と余裕を見せるが・・・残金不足となった取引先はすでにもぬけの殻なのである。

もう・・・ダメじゃないかな。

はたして・・・領収書刑事シルビアは・・・敵か、味方か・・・。

そして・・・太一の周囲に・・・名無しさんはいるのかどうか・・・。

まあ・・・基本・・・どうでもいい感じは拭えない・・・。

一方、母にかかった濡れ衣を晴らすために動き出す健太。

それを察知した七菜は明日香に救援要請をするのだった。

「お兄ちゃん一人では・・・どうにもならないと思うので」

「・・・ですね」

脳天気な母・珪子は陶芸教室の仲間たちに急襲される。

おそらく・・・ブローチを発見した中島夫人は桂子の犯行と決めつけているのだった。

そして・・・お茶の間の誰もが疑う民子(堀内敬子)はニット帽の女だった。

「ブローチは返したはずです」

「しかし・・・紛失した」

シラを切る波戸・・・。

しかし・・・明日香は波戸の車内に受信機を発見する。

防犯カメラで中島夫人が「どろぼう!」と書いた紙を投函したことを突き止めた健太&明日香は中島家の盗聴器検索を開始する。

盗聴器は波戸が生徒全員に贈った置時計から発見されたのだった・・・。

波戸は・・・セレブ主婦たちの・・・家を盗聴する・・・怪盗紳士だったのである。

ひっそりと受信範囲で盗聴を開始する波戸・・・。

「そこまでです」と主人公として決める健太。

「私はラジオを聞いていただけだ・・・」

「あなたは・・・録音もしていますよね・・・後でチェックをするために・・・」と明日香。

「う」

「刑事さんたちがすでに家宅捜索していますよ・・・ねえ」

「私たちの見せ場をとらないでください・・・署に同行していただけますか」と牧方刑事。

怪盗紳士は凄い敵意の視線で素人探偵たちを睨むのだった。

の、呪われそうだ・・・。

盗聴怪盗シリーズもあるな・・・ないぞ。

怪盗紳士は・・・倉田家に盗聴器を仕掛け、五万円を盗み、失恋の復讐のために桂子に罪を着せようとしたことをあっさり自供する。

しかし・・・明日香は・・・「桂子と波戸の密会盗撮写真」の撮影者について指摘する。

「そんなの・・・波戸が・・・」

「波戸・・・写ってますよね」

「あ」

「あ・・・じゃないですよ」

「でも・・・遠隔操作で自撮りを」

「なんで自分と人妻との密会写真を投函する必要が」

「あ」

明日香は桂子から二人のデートを知る人物・・・民子の存在を訊きだす。

のほほんと・・・容疑者宅に接近する健太。

荒廃した家の中で・・・民子は・・・ヘビースモーカーであることをアピールする。

「留守みたいです」

「洗濯物が・・・女物だけですね」

「・・・おかしいですか」

「だって・・・ご主人がいらっしゃるんでしょう?」

「あ」

「あ・・・じゃないですよ」

翌日も下村家にやってきた健太。

留守の庭を覗きこんだ健太は・・・そこに盗まれた中島夫人の宝石箱を発見する。

「あ」

しかし、明日香はいないのだった。

「母さん・・・民子さんの電話番号を教えてくれ」

電話で母親に尋ねる健太。

(民子さんなら今・・・家にいるわよ)

「え・・・すぐに逃げて・・・民子さん犯人だから」

(え・・・バカねえ・・・民子さんが犯人なわけないじゃない・・・ゴンッ)

「あ」

くりかえすが健太は単独行動だった。

息子を信用しなかった母は鈍器のようなもので民子に背後から一撃され昏倒する。

ついに・・・狂気のセレブ悪女となった民子。

魔法で灯油を亜空間から取り出すと・・・部屋に散布して・・・煙草を咥えるのだった。

殺し屋か・・・潜入工作員なのか・・・。

それとも・・・能天気過ぎる専業主婦を社会から追放する会の秘密実行員なのか・・・。

健太は・・・母の安否を求めて家路につくのだった。

がんばれ、健太。負けるな健太。このドラマの主役は君なんだから・・・。

2015年度倉田家嫌がらせ事件容疑者ランキング

①位 ニット帽の男(真の名無しさん)

②位 民子(犯行中)

③位 金庫から書類を盗む男(スクールゾーン)

④位 牧方刑事(太陽がまぶしすぎた)

⑤位 牧方刑事の名もない同僚刑事(スクールゾーン)

⑥位 その他の主婦(意外な犯人)

⑦位 青葉銀行人事部長代理(高田純次)

⑧位 蟹江タウン誌編集長(シルビアさんと何もなさすぎ)

⑨位 銀行員(小市慢太郎)

⑩位 ガス(101匹猫ちゃんロンダリングに疲れる)

名無しさん殿堂入り

コピーキャット万里江(逮捕)

盗聴怪盗波戸(逮捕)

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2015年6月 1日 (月)

男ならお槍担いでお中間となって付いて行きたや下関(井上真央)

総力戦というものはあらゆるものが戦力であるということだ。

吉田松陰が描き、行くところまで行った近代戦争の結末は大日本帝国滅亡の時であった。

東は太平洋、西はアジア大陸・・・帝国はついに地球規模と言うべき領土・・・戦線を拡大していた。

そして・・・沖縄では上陸戦、東京では大空襲、広島、長崎と原爆が投下され・・・女子供だろうが容赦なく焼き尽くされて焦土と化す。

それが総力戦だ。

陣地防衛のために労働力として武士の奥方が土塁を築くのは・・・まさにその先駆けと言えるだろう。

男ならお槍担いでお中間となって付いて行きたや下関

国の大事と聞くからは女ながらも武士の妻

まさかの時には締め襷

神功皇后さんの雄々しき姿が鑑じゃないかな

オーシャリシャリ

「維新節」は伝説の戦の女神・神功皇后を手本として・・・女たちも戦力になろうと誓う・・・物騒な音頭である。

文久三年(1863年)五月は・・・昭和二十年(1945年)八月まで続く・・・攘夷八十二年戦争の開戦の年なのだ。

萩の女たちが国防婦人会のプロトタイプであることは言うまでもない。

「出て行け」・・・愚か者たちの叫びはいつも同じなのである。

それは・・・相手が「クロフネ」だろうが「米軍基地」だろうが一緒ですから・・・。

そして・・・歴史は繰り返すよねえ・・・。

で、『燃ゆ・第22回』(NHK総合20150531PM8~)脚本・大島里美、演出・安達もじりを見た。例によってシナリオに沿ったレビューはikasama4様を推奨します。今回は松門四天王奇兵隊傘下屠勇隊長で池田屋事件の戦死者・吉田稔麿の妹で婿養子を迎え吉田家を継ぐ吉田ふさの描き下ろしイラスト大公開でお得でございます。奇兵隊創設、八月十八日の政変、四国連合艦隊の攻撃・・・とすでに歴史的事実は明瞭ですが・・・それを誰もがわかるように見せてくれる大河ドラマの使命感のようなものは・・・まったく感じられないと言ってもよろしいでしょうねえ。男たちが痛い目にあった事実は駆け足で通り抜け・・・その時、女たちは着飾ってお祭り騒ぎで萩に土塁を構築した・・・そこか・・・そこ・・・ものすごく大切ですか・・・と誰もが言いたいかもしれない今日この頃・・・。まあ・・・井上真央、檀ふみ、優香、久保田磨希、黒島結菜、小島藤子、宮崎香蓮、芳本美代子、若村麻由美、銀粉蝶まで・・・凄いキャスティングなのでなんとか出番を作らなければいけないわけですが・・・完全に本末転倒じゃないでしょうかねえ・・・。まあ・・・キッドはこのメンバーが見られればある程度・・・許容しちゃいますけれど・・・。甘ちゃんかっ。目の保養優先かっ。今回のサブタイトル「妻と奇兵隊」はなんとなく小説「麦と兵隊/火野葦平」(1938年)を思わせますな・・・。徐州徐州と人馬は進むのですねえ。

Hanam022文久三年(1863年)五月十一日、米国商船ペンブローク号に下関砲台と長州軍艦が砲撃、ペンプローグ号は退避した。二十日、攘夷派の姉小路公知(右近衛権少将)が暗殺される。二十三日、仏国通報艦キャンシャン号に長州軍艦が発砲。交渉のために発進した搭載ボートにも銃撃を加え、仏国水兵などが死傷する。二十六日、蘭国軍艦メデューサ号に発砲、船体を損傷させ蘭国乗員など数名が戦死。六月一日、米国軍艦ワイオミング号が商戦砲撃に対する報復攻撃のために急襲。長州軍艦・壬戊丸、庚申丸、癸亥丸は撃破される。双方に死傷者は発生したが長州海軍は壊滅し、射程外からの砲撃で沿岸砲台も多数破壊される。五日、仏国軍艦・セミラミス号、タンクレード号は海峡封鎖のための長州の沿岸砲台を粉砕。壇ノ浦などに仏国陸戦隊が上陸し、砲台周辺を占拠、近隣の村落に放火した。長州武士は陸戦を挑むが砲撃と銃撃の近代戦的運用に対応できず、撃退される。七日、長州赤間関にて高杉晋作は奇兵隊を結成する。豪商・白石正一郎は会計方に登用され後に長州藩士となる。長州藩は敵襲に供え挙国一致体制に移行し、徴兵制を開始したのである。一部郷村では一揆が発生し、一部士族と民衆の間には軋轢も深まっていた。第十四代将軍徳川家茂は最初の上洛を終え江戸に帰還。京都守護職・松平容保は京の治安活動を本格的に開始。壬生浪士組はその意を受け不逞浪士の取り締まりに取り組む。尊皇攘夷派と公武合体派の軋轢が深まる京に長州藩における攘夷派公卿・三条実美の連絡役として敗戦の将・久坂玄瑞は召喚される。長州・薩摩・会津三藩による主導権争奪戦が開始されたのである。

文は下関にやってきた高杉晋作を夫・久坂玄瑞の目を通じて見ていた。

坊主頭は無造作に伸びかけて散切り頭というべきカタチになっている。

その容姿は武士らしくなく・・・文はおかしくもありおそろしくもあった。

「奇兵隊・・・じゃと」

玄瑞は唖然とした。

「なんじゃ・・・それは」

「兵はこれ奇なりじゃ」

「・・・孫子か・・・」

学問的素養の範疇に玄瑞は安堵する。

(晋作らしい)(素朴な)(まさに奇抜)(しかし)(なにをしでかす気か)

玄瑞の心はめまぐるしく回転する。

「兵を募るのよ・・・」

「募る・・・」

「藩内の人間を全員、兵とする」

「なに・・・全員を武士とするというのか」

「いや・・・武士など無用の長物じゃ」

「なんだと・・・」

「下関の敗因を考えろ・・・」

「・・・」

「確かに・・・武器の差はおおきいだろう・・・しかし・・・問題はそこではない」

「そこではないだと・・・」

「武士とは本来、戦で相手を殺すものだ・・・そのためにこちらが殺されるのを覚悟せねばならぬ」

「・・・」

「しかし・・・戦のない世が続き過ぎたのだ・・・敵の砲撃を受けた時・・・武士たちはどうした」

「・・・それは・・・」

「恐怖で逃げ出したのだ・・・百姓、町人たちは呆れてその姿を見ているぞ」

「・・・」

「浜から山まで武具を投げ出して一目散じゃ・・・それはもはや武士とは言えまい」

「・・・しかし・・・烏合の衆とて同じだろう」

「違うぞ・・・奇兵隊に集うのは武士ではなく・・・兵士じゃ・・・松陰先生の言う西洋式軍隊における歩兵じゃな・・・」

「歩兵・・・」

「良いか・・・武士一人を戦闘に参加させるために足軽や中間小物の類が何人いるか考えてみろ」

「・・・」

「軽率のものでも十人だ」

「・・・」

「身分の高いものなら何十人もが一人のために奉仕することになる」

「それが・・・兵法というものだろう」

「アホらしい・・・その一人一人に銃を持たせて戦わせる・・・あっという間に兵力は十倍じゃ・・・」

「それでは・・・武士の面目は・・・」

「武士などいらぬ・・・西洋の敵との戦には・・・武士など何の役にも立たない・・・」

「お前・・・それを方々の前で口にする気か・・・」

「・・・言わぬさ・・・医者坊主から武士に成り上がったお前にだから言うのさ・・・生まれついての武士である俺が・・・それが・・・どんなに恐ろしいことか・・・一番わかってる」

「・・・」

「お前は・・・京に行け・・・姉小路様が暗殺され・・・何やら雲行きが怪しいようじゃ・・・攘夷派同志が仲間割れしている場合ではないからな・・・」

「お前は・・・」

「俺はお前の留守の間に・・・長州藩をぶっこわす・・・」

「藩を・・・」

文は感じた。

玄瑞の心で揺れる・・・羨望と・・・尊敬・・・そして・・・友への寄せる思いを・・・。

「用心しろよ・・・」

「お前もな」

文は見た。高杉晋作の蒼白な顔に浮かんだ微笑みを・・・。

文久三年の熱い夏が迫っていた。

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八重の桜

龍馬伝

篤姫

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