四十歳の独身女性です・・・好きになった人に妻子がいました(稲森いずみ)二十三歳ですが献身的な男性にプロポーズされたので受けちゃいました(渡辺麻友)
平和な社会は息苦しいものだ。
何故ならみんながルールを守っているからである。
授業を抜け出して屋上で煙草を吸ったりしてはいけないのである。
そう言うと・・・平和がすなわち管理社会なのかという疑問が湧くだろう。
温暖化という環境問題を考えてみよう。
二酸化炭素の排出規制というものがある。
そもそも動物はみんな二酸化炭素を吐く生き物なのである。
これを規制するということは・・・息苦しいのに決まっているのだ。
・・・おいっ。
面白そうだから何かやってみる。
それが制度によって阻まれる。
つまり・・・つまらなくなるのである。
しかし・・・多くの人は・・・戦争より平和の方がいいと思うのである。
そして・・・世界はどんどん・・・つまらなくなっていくのだ。
で、『戦う!書店ガール・第8回』(フジテレビ20150602PM10~)原作・碧野圭、脚本・渡辺千穂、演出・白木啓一郎を見た。みつどもえの不毛な視聴者争奪戦の続く・・・この枠。女性を主人公にした職業ドラマとしては「ナースのお仕事」や「ショムニ」の系譜である。実はこの枠では前期の裏枠で「まっしろ」という女性の職業ドラマが苦戦していた。そもそも・・・キッドは男子であるから・・・女性の職業ドラマを女性視点ではみていない。だが・・・どちらも脚本は女流作家なのである。もちろん・・・低視聴率がダメとは言わないが・・・やはり・・・お茶の間の共感を得られない・・・何かが共通してあるのだろうと思う。そもそも・・・お茶の間のお得意さんである・・・専業主婦の共感を得にくいのが・・・職業ドラマなのだが・・・専業主婦層の減少という現象をスタッフは読み間違えているのかもしれない。
そういう漠然とした世の中との相関関係とは別に・・・ドラマとしての分かりやすさという点で・・・おそらく・・・これはお茶の間には伝われにくいのではないかという「話」を二点、指摘しておきたい。
第一はプライベートとビジネスの境界線の話である。
ビジネスは基本的に競争である。
出版社は利潤を追求する企業にすぎない。
商品であるコミック雑誌「コミックヒート」に連載中の人気コミックは・・・出版社の財産である。
そしてコミックのキャラクターも財産である。
その財産を使用するにあたっては・・・決定権は企業にある。
その論理は「最大に儲けるための戦略」に基づいている。
それは非情の論理なのである。
一方で・・・その作品を生み出しているコミック作家は人間である。コミックを商品とする作業に直接携わる企業の社員である担当編集者も人間なのである。
人間には情がある。
担当編集者とコミック作家の間には情が流れているのである。
だが・・・担当編集者の任務はコミック作家を人気商品を生み出すシステムとして管理することなのだ。
ここに・・・ヒロインの一人、北村亜紀(渡辺麻友)が投入される。
プライベートで北村亜紀の友人であるコミック作家・あがちなお(浅利陽介)は亜紀の苦境を救うために自作のキャラクターのブック・カバーへの使用を許諾する。
まず・・・この友情が分かりにくい。下心がゼロだと言われるとますますわからない。
なにしろ・・・一回、お食事して意気投合しただけの二人なのである。
そして・・・あがちなおの個人的意志と出版社の企業論理の板挟みになるのが・・・亜紀の恋人であり・・・「コミックヒート」副編集長の小幡伸光なのである。
彼は・・・この行為が勤務する一ツ星出版にとって・・・損失をもたらすと上司に注意されながら・・・結局、プライベートを優先するのである。
義理と人情を秤にかけて・・・人情を優先する。
あげくの果てに・・・左遷されてしまう。
いい話なのだが・・・伝わらないんだよなあ。
なぜなら・・・義理と人情を秤にかけると義理が重たいのがお約束だからである。
つまり・・・これは少数派のいい話なのである。
なにしろ・・・日本という国は出る杭を打ち神童も二十歳すぎればただの人にしてしまう恐ろしい国なのだ。
第二に・・・四十歳まで独身で職業婦人として生きて来たもう一人のヒロイン・西岡理子(稲森いずみ)はいわゆる女の幸せとは無縁だったわけである。これがすでにお茶の間的には問題外なのだが・・・そんな理子にめぐって来た春の予感・・・。交際相手の田代敏之(田辺誠一)には妻子がいたのだ。
実は・・・ここまでは問題ないのである。
問題は・・・田代の妻子である。
現在、六歳になる子供のいる妻(紺野まひる)は不倫をして三年前に別居・・・子供を連れて他の男性と同棲していたのである。
なんじゃそれゃ・・・とお茶の間は思うわけである。
しかも・・・その三年間・・・田代は離婚していないのだ。
その理由は・・・子供を愛しているからである。
そして・・・その状況を隠して理子と交際していたのだが・・・。
妻が不倫相手と別れてやり直したいと戻ってくるわけである。
「しかし・・・今は君を愛しているので妻とは離婚する・・・しばらく待ってはくれないか」
そういう話なのだ。話としては成立しているが・・・お茶の間の共感は絶対に得られないと思う・・・。
だが・・・この脚本家はそういう話が大好きなタイプなのです。
いいんだよ・・・そんなに・・・奥深くしなくて・・・とキッドはそっと耳元で囁きたい。
まあ・・・そういうわけで・・・今回も視聴率的にはアレなんじゃないかな・・・。
愛する亜紀のために・・・自ら勤務する出版社を裏切って花形の編集部から裏方の総務部に左遷された恋人。
そんな事情を知らず・・・ブックカバー作戦で売上目標を達成して前途に希望を見出す亜紀。
その頃、編集部ではあがちなおが編集長(池田鉄洋)に突撃していた。
「彼を編集部にもどしてください」
「それは・・・会社として出来ないのです」
「じゃ・・・僕も・・・連載をやめます」
そこへ・・・木幡がやってくる。
「やめてください・・・僕は会社に迷惑をかけて・・・罰を受けて当然なのです。その上、先生が連載をおやめになったりしたら・・・傷口が広がるばかりです。第一・・・先生の作品を待っている読者には無関係な話です」
「・・・」
「僕のためを思うのなら・・・この件は・・・なかったことにしてください」
「木幡くん・・・」
結果として・・・木幡はコレ(女性関係)で左遷されました・・・という話なのだ。
人間として・・・あまりにも理不尽な展開に・・・胸が痛んだ木幡は・・・亜紀に真相を伝えにくるのだった。
「ええええええええ」
自分が無理なお願いをしたばかりに恋人が窮地に陥ったと知り・・・世間知らずのお嬢様である亜紀は・・・打ちのめされるのだった。
謝罪のために・・・木幡を直撃する亜紀。
しかし・・・気持ちの整理もつかず・・・慣れない部署での仕事に対応するために・・・亜紀につれない反応をする木幡だった。
亜紀は・・・とりかえしのつかない事態に困惑するのだった。
「今は・・・自分の仕事のことだけ・・・考えてください」という木幡の優しさも・・・。
亜紀を困惑させるのである。
一方・・・書店では新刊が入荷しないという新たなピンチが発生していた。
「七月閉店の予定なので・・・取次(問屋)に・・・吉祥寺店は出荷(納品)は最低限にするように指示しています」と谷田部社長(山中崇)・・・。
「そんな・・・それでどうやって商売をしろと・・・」と理子。
「そこは・・・店長のお手並み拝見ということでしょう・・・期待しています」
結局・・・既定路線の変更はしないという話なのか・・・本心の見えない社長なんだな。
とりあえず・・・個別発注と・・・他店舗の在庫で対応する理子。
前途多難な理子は・・・忠臣・三田(千葉雄大)といつもの公園でランチを食べる。
そこで迷子を発見・・・やってきた母親に引き渡すという不気味なエピソードが挿入される。
キャスティング的にこのままではすまないからである。
やがて・・・出版社が直接の取引に応じてくれることになり・・・新刊入荷不足は解消する。
亜紀の失調を見抜いた理子は自宅に招待し、父親(井上順)の手焼き煎餅と理子の手作りカレーでもてなす。
「煎餅屋なので煎餅蒲団しかないが・・・泊っていきなされ」
昭和のだじゃれで心が解けた亜紀は・・・件の一件を告白する。
「振り返った時に、この道を歩いてきてよかったと思える未来にすること・・・彼はあなたに・・・そう言いたかったんじゃないかな」
「悩んでいないで・・・前を向け・・・そういうことですか」
「そうよ・・・過去はとりかえしがつかない・・・これから・・・どうするかでしょう」
「・・・はい」
まあ・・・どうして償えばいいかわからないから悩んでいたんだけどな。
忘れろと相手が行ってくれるんだから忘れるがいい。
忘れるなと怨まれるよりマシなんだから。
ねえ。
出勤前に木幡を急襲する亜紀。
「私・・・がんばります・・・」
「うん・・・それからもう一つ・・・」
「何ですか」
「一生、僕の側にいてほしい」
「はい」
これはプロポーズなんだよな・・・そして承諾と・・・本当に判りづらいぞ。
一方・・・一人ランチの三田は・・・件の母子が・・・田代の妻子であることを目撃してしまうのだった。
「どういうことですか」
田代を追及する三田。
「理子さんを・・・不幸にしたら・・・許しませんよ」
「・・・」
その夜・・・理子を訪ねる田代。
「君が好きだ」と理子を抱きしめる。そして「だから・・・待ってほしい・・・僕は戸籍上の妻がいるが・・・離婚すると決めているから」
「なんじゃそりゃああああああああ」
「とにかく・・・三田くんに殺されそうになったので」
「・・・」
打ちのめされる理子。
結婚直前だった前の恋人は・・・二股のあげく相手を妊娠させて結婚してしまったのである。
男運がないとかそういう問題じゃなくて・・・バカなんじゃないか。
三田は理子を慰める。
「私・・・彼に妻子がいると言われても・・・実感がなくて」
「この間、公園にいた迷子とその母親ですよ」
理子のイメージを手伝う三田だった。
考えようによっては・・・悪魔だな。
仕方なく・・・父親に相談する理子。
「だから・・・あの男はやめておけと言ったんだ・・・子供、何歳だって?」
「六歳」
「お前は・・・その子から父親を奪うのか」
いや・・・そんなことより・・・あなたの娘・・・四十歳で独身ですから・・・。
考えようによっては・・・この父も悪魔だな。
やがて・・・出版社の出荷の根回しをしてくれたのが田代だと知る理子。
「私のために・・・それほどに・・・」
しかし・・・そこで亜紀が告げる。
「振り返った時に、この道を歩いてきてよかったと思える未来にすること・・・理子さんの言葉・・・私、一生忘れません」
ああ・・・そんなこと言われては・・・妻子ある男性にアプローチできなくなる理子なのである。
「もう・・・お会いできません」
「どうして・・・」
「ドロドロが苦手で・・・この年まで独身なので・・・」
「ああ」
ああ・・・もう・・・お茶の間の共感とは程遠い世界がここにあります。
とてもよくできた「話」なんですけどね。
つまり・・・戦わないと結婚できない時代だと言うことです。
関連するキッドのブログ→第7話のレビュー
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