どれだけ世界が残酷でも関係無い・・・何も捨てることができない人には何も変えることはできないだろう(高良健吾)
「進撃じゃ」
「進発ではないのですか」
「進撃じゃ・・・京都から会津や薩摩を駆逐するのじゃ」
「朝廷に嘆願するのでは・・・」
「私は強い・・・すごく強い・・・だから私にはあいつらを蹴散らせることができる」
「しかし・・・敵は十倍ですぞ」
「お前らは臆病で腰抜けだ・・・ここで指をくわえて見てろ」
「何の危険も冒さず何の犠牲も払いたくありません」
「どれだけ世界が恐ろしくても関係無い・・・戦わなければ勝てない・・・人は戦うことをやめた時・・・初めて敗北する」
「・・・」
・・・気がすんだか・・・。
やはり・・・アニメにしか興味がないのか・・・歴史には何一つ・・・興味がないのか・・・この脚本家は・・・。
で、『花燃ゆ・第26回』(NHK総合20150628PM8~)脚本・大島里美、演出・末永創を見た。例によってシナリオに沿ったレビューはikasama4様を推奨します。今回は野山獄にて静かに出番を待つ高杉晋作の描き下ろしイラスト大公開でお得でございます。(・∀・)イイ!実に(・∀・)イイ!・・・哀愁の祈り・・・そして拳銃に口づけを・・・。なんだかんだ・・・ぐだぐたのままに半年たってしまいましたな。今回もかなり構成に問題がありましたよねえ。基本的に全国的な規模の時代劇では情報の時差が発生するわけでございます。都会で何かが起きても・・・田舎の人がそれを知るのはすべてが終わった後・・・。ただでさえ・・・流れが掴みづらいのに時系列入れ替えは禁じ手だとまざまざと感じましたな。そもそも・・・江戸時代が超管理社会だということが分かっていない感じですよねえ。武士になるということは・・・扶持を殿様からもらうこと・・・城下に住むということは屋敷を拝領すること・・・久坂家は急に出現できないわけで・・・士族になったら・・・屋敷は受領しなければならないわけで・・・養子縁組は藩に届けなければならないわけで・・・基本ですよね。
今回は要素としては①郊外の杉家から萩城下の久坂家への文のお引っ越し。②京都に進発し、洛外に陣を張った長州軍と京都防衛軍との駆け引き。③迫りくる四カ国艦隊。④野山獄での高杉晋作と周布政之助。この四点。
①に関しては「吉田家への見舞い」と「引越し先のお掃除」と「父母との別離」と「新居での主人公と養子」くらいの四点。これに「椋梨夫婦の暗躍」を加えるとなると・・・最後は「引越しのご挨拶」にするべきなのですな。
これが主軸です。
②については・・・「来島又兵衛と久坂玄瑞・桂小五郎ペアの路線的対立」と「芸妓・辰路の妊娠報告」と「朝廷の暗躍」と「毛利元徳と三条実美の上洛」と「禁裏への進撃開始」に分割されます。
素直に構成すると・・・。
吉田家への見舞い(萩)
芸妓・辰路の妊娠報告(京都)
引越し先のお掃除(萩)
朝廷の暗躍(京都)
父母との別離(萩)
来島又兵衛と久坂玄瑞・桂小五郎ペアの路線的対立(京都)
迫りくる四カ国艦隊(長崎)
毛利元徳と三条実美の上洛(三田尻)
引越しのご挨拶(萩)
禁裏への進撃開始(京都)
高杉晋作と周布政之助(野山獄)
新居での主人公と養子(萩)
・・・こういう流れになります。
なぜ・・・そうしないのか・・・不明ですな・・・。
だから・・・主人公は歴史から浮き上がり・・・歴史はドラマの中に埋没するという・・・不憫な感じになっちゃうのですなあ・・・。久坂の不戦の誓いとか・・・周布の温情人事とか・・・場面作りはそれなりに良いのですけどねえ・・・。構成が台無しにしているのですな。
元治元年(1864年)二条斉敬が関白となる。三月、英国留学中の伊藤俊輔、井上馨は米英仏蘭国連合艦隊による長州攻撃計画を探知。西郷隆盛が入京。四月、松平容保(会津藩主)が京都守護職に復職。松平定敬(伊勢桑名藩主)が京都所司代となる。五月、将軍家茂、江戸に帰府。六月五日、池田屋事件。十日、伊藤俊輔、井上馨は横浜に帰国。京都明保野亭で会津藩士が土佐藩士を襲撃。両者が切腹する。十五日、函館・五稜郭が完成する。天狗党の反乱に対し幕府は筑波勢追討令を出して常陸国・下野国の諸藩に出兵を命じる。十九日、四国連合は海峡封鎖が解かれなければ武力行使を実行する旨を幕府に通達する。二十四日、久坂玄瑞は長州藩の罪の回復を願う嘆願書を朝廷に奉る。二十七日、長州藩の入京が許可される。七月八日、禁裏御守衛総督・一橋慶喜は薩摩藩に出兵要請するが拒否される。十四日、毛利元徳、三条実美らが京都に向け長州を出る。十八日、一橋慶喜は長州藩兵に退去を呼びかける。有栖川宮幟仁・熾仁両親王、中山忠能らが参内し、長州勢の入京と松平容保の追放を訴える。会津藩擁護の姿勢を取る孝明天皇は一橋慶喜長州掃討を命じる。十九日、長州勢は京都蛤御門にて会津・桑名藩兵と衝突。薩摩藩は守備側として参戦する。
「探索のしのびがかえりませんな」
久留米水天宮の宮司だった真木和泉がつぶやいた。
石清水の軍議には重い沈黙が横たわっている。
「ここは・・・ひとまず難波に退くべきです」
あくまで入京嘆願を目指す久坂玄瑞が進言する。
「朝廷から返答がないということは・・・奸臣どもが妨げておるのだろう」
真木和泉が促すように来島又兵衛を見る。
「ここで退いては長州武士の名折れでござる」
木島は周囲を睨みつけた。
「後には引けぬな」
「うむ」
福原越後守、益田右衛門という二人の家老が頷いた。
久坂玄瑞の落胆に文は憐れを感じる。
身分の違いが流れを制している。成り上がり者は結果を求められる。前関白鷹司家を通じて奏上した赦免の願いが聞き届けられなかった今、玄瑞の立場は悪かった。
「守備兵を突破すれば・・・事は成る」
福原越後守は決断した。夜陰に乗じて各隊の長は散って行く。
文は唾を飲み込んだ。京都のそれぞれの御門は厳重な警備体制が整っていた・・・多勢に無勢である。攻めるには二倍の兵力と言われるのに・・・長州勢は十分の一の兵なのである。
「飛んで火にいる夏の虫やけ・・・逃げてください」
文は思わず叫ぶ・・・。
しかし・・・萩と京都はあまりにも遠い。
京都には公儀隠密が密集している。蟻の這い出る隙もないほどである。
潜入しようとした長州忍びはたちまち絶命する。
公儀隠密の斥候(うかみ)は天王山、山崎八幡、嵯峨天龍寺、伏見に分散した長州の陣をすべて監視している。
薩摩藩屋敷の蔵からは秘蔵の新型大砲が引き出されていた。
薩摩の鉄砲忍びは新型銃とともに集結を終えている。
長州の進発が決まった半刻後には会津藩は臨戦態勢を整えている。
長州軍は各所で待ち伏せされていた。
(兄上・・・これでいいのですか・・・この未来は正しいのですか)
文は亡き松陰に問わずにはいられない。
横浜から廻船に便乗して西に向かう伊藤俊介の焦りが伝わってくる。
クロフネの大艦隊が横浜に集結しているのである。
下関襲撃の準備が整いつつあった。
文の心には長州滅亡の気配がたちこめていた。
(長州は滅ぶのですか・・・)
文の心は祇園にいる辰路に飛ぶ。
辰路は・・・危機を玄瑞に知らせようとしていた。
しかし・・・綾小路、錦小路の二人のくのいちが行く手を阻んでいた。
「辰路様・・・なりませぬ」
「久坂様をお救いしたいんや・・・」
「堪え為され・・・」
「この腕にかけて・・・行く」
辰路の声に殺気が漲る。
その時・・・月に影が差した。
「朧・・・影」
「辰路・・・無駄じゃ・・・行けば・・・腹の子も助からぬ・・・」
「幾松様・・・」
「長州にはまだ使い道がある・・・戦は破れようが・・・敗れたものを救う道もある」
「救う」
「公儀隠密はこの機に京を焼くつもりじゃ・・・」
「そんな・・・」
「お頭は・・・混乱に乗じて・・・妾に長州を助けよと・・・命じられた」
「お頭が・・・」
「乱戦になれば・・・久坂様を落ちのびさせる隙は生じるやもしれぬ・・・」
「・・・」
「時を待つのじゃ・・・辰路・・・戦が始れば祇園を張っているみぶろどもも手薄になる」
辰路は唇をかみしめた。
マタギの衆を率いた来島又兵衛遊撃隊は進軍を開始した。
日本統一戦の幕開けである。
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