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2015年6月10日 (水)

フィナーレはオールナイト書店で(稲森いずみ)ウェディングドレスはサービスです(渡辺麻友)

書店とは書籍を売る店である。

書籍が印刷されるようになって数世紀が過ぎて今や、書籍はどこにでもある。

しかし・・・その歴史は曲がり角に差し掛かっている。

もちろん・・・明日、書籍が消え、書店が消えるようなことはないだろうが・・・書籍そのものの存在感はここ数年でかなり薄くなっているのではないだろうか。

もちろん、それは少子化の影響も大きいだろう。

やはり・・・新しい本を買うのは新しい人たちだからだ。

「大量」の意味には様々なものがあるが・・・「大量」の中に特殊なものが混じっていることが「良質」に関係がある。

絶滅危惧種が保護されるのは遺伝子の多様性が有益と考える人々がいるからだ。

しかし・・・「書籍」はそういう意味で「種」を絶滅させている気がするのである。

なぜならビジネスだからな。

もちろん・・・好みの問題というものはある。

書店で・・・絶滅危惧種の本を買うためには常時、大書店に出入りする必要がある。

「売れる本」が大量に積まれている横で・・・「売れない本」がたちまち売り切れるからである。

昔は・・・売切れたら「入荷」を待てばよかったが・・・今は・・・それで終わりなのだ。

文庫売り場にはあの時代劇の人の本が大量に並んでいる。

もちろん・・・それは面白い本なのだが・・・キッドにとってすごく面白いかというとそうでもないのだな。

暗い本屋をめぐり・・・煤けた本棚の中から・・・夢にまで見るほど好きなSFシリーズのバックナンバーを捜す。

あの喜びを今の子供たちはきっと味わうことはないのである。

で、『戦う!書店ガール・最終回(全9話)』(フジテレビ20150609PM10~)原作・碧野圭、脚本・渡辺千穂、演出・白木啓一郎を見た。打ち切りという噂もあるが話としては滞りなくまとまって全9話で良かったような気がする。視聴率的苦戦は裏番組との兼ね合いもあるが、豪華キャストを揃えるのが普通の時代に・・・このキャストでは仕方ないとも思うのである。ダブル・ヒロインは問題ない。恋愛軸で考えると・・・三角関係も含めてダブルヒロインの恋の相手が、大東駿介、千葉雄大、長谷川朝晴、田辺誠一である。・・・渋すぎる。ダブルヒロインの家族は、西岡理子(稲森いずみ)の父親・達人(井上順)だけ・・・淋しすぎる。そして、仕事面ではダブルヒロインをつぶしにかかる合理的経営陣に・・・山中崇、みのすけ、木下ほうか・・・いやあ・・・弱すぎるよね。主なゲストが浅利陽介、紺野まひる、橋本じゅんだ。

このキャスティングじゃ・・・数字とれないぞ。

だから・・・まあ・・・ドラマの中身はそこそこだったんだと思う。

書店員としての仕事以外には・・・なにもない独身の中年女性・西岡理子と・・・お嬢様育ちで恋愛相手には不自由しないピチピチの北村亜紀(渡辺麻友)・・・。

理子にとっては目障りで・・・自分が負け犬であることを自覚させるだけの存在である亜紀。

しかし・・・亜紀は書籍を愛する情熱を理子と同じくらい持っている。

いつしか・・・二人の間には年齢も経済格差も乗り越えた友情が芽生え・・・「書籍」にはなんの愛情もない・・・ビジネス優先の二代目経営者たちを共通の敵として「書店」の生き残りをかけて共闘する。

だが・・・時代の流れには抗するべきもない。

だけど・・・二人は夢をあきらめない・・・という話である。

こう書くと・・・物凄くわかりやすい話だが・・・実際には表現が難しい話である。

まず・・・年上のヒロイン・理子は・・・家族は営業実態があるのかないのかわからない煎餅屋の一人娘・・・結婚適齢期はとっくにすぎて交際中の男は妊娠した若い女性との結婚を選択する。自殺してもおかしくない鬱な人生である。しかし・・・なにしろ・・・演じるのが・・・アンチエイジングに澱みのない美人女優なのである。・・・わかりにくいだろう。

次に・・・年下のヒロイン・亜紀は浮世離れした高級マンションで一人暮らしなのだが・・・ドラマ的誇張が少なく・・・ある意味、リアルすぎるのである。今、日本を代表する抜群のアイドルは皇室のあのプリンセスだと思うが・・・そういうムードを醸しだす必要がある。専属の執事は絶対に必要だろう。交際相手もセレブばかりで・・・だからこそ、人気のモデルやアーティストを下に見ることができるのである。やろうと思えばナッツ・リターンが可能なポジション。本当は書店なんか・・・その気があれば店ごと買い上げることができるくらい余裕の資産力。そして、エリート揃いの家族。そういう女がなんで書店員やってんだよが毎回、お約束なくらいがよかったと考える。

何も持たない女と持ちすぎてる女・・・まずはこの落差があって・・・どうしようもなく消えて行く書店という絶滅危惧種を保護する話になっていくのだ。

とにかく・・・二人にとっては・・・うっとりする恋愛よりも・・・おいしい御馳走よりも・・・素晴らしい実人生よりも・・・書店で本を売るのが好きという変態の話なのだから。

「理子さん・・・イベントで本が昨日の三倍売れました」

「やったわね・・・あははははははははははははは」

「えへへへへへへへへへへ」

・・・という話なのである。

「昨日・・・ことわっちゃった・・・田代さんのプロポーズ」

「えええ・・・どうしてですか」

「だって・・・子供から・・・お父さんを奪ったら可哀想だし・・・」

「子供ごともらえばいいじゃないですか」

「えええ」

「いいですよ・・・実の母親を慕いつつ・・・まま母の美しさに翻弄される義理の息子」

「それ・・・面倒くさい」

「そんなこと言ってるから・・・四十まで結婚できないんですよ」

「ええ~・・・そうかなあ」

ドラマ版では・・・亜紀は理子狙いの三田に振られる設定なのだが・・・それもダブルヒロインのバランスを考え過ぎた失敗だと思う。

三田も小幡も亜紀狙いで・・・男を見せた木幡にお嬢様育ちの亜紀が魅かれて選択するという方が亜紀の性格が示されるはずだ。

「風と共に去りぬ」がしたいなら・・・三田は同級生のかわいらしい女の子を選んでいるべきで・・・年上上司狙いは・・・混迷を深めるばかりなのである。

今回のキャスティングならブックカフェ店員の愛子(工藤綾乃) を眼鏡っ子設定にすればいい。

どうしてもヒロインがらみにしたいなら亜紀に振られて理子狙いを始める方がまだいい。

「三田くんに花束もらっちゃった・・・」

「私がふったんで・・・頭おかしくなったんですね」

「ひでぶ」

このくらいがよかったと思う。

とにかく・・・理子は理がかちすぎて婚期を逃した恋愛下手だが・・・亜紀は書店員の鑑としては最高の存在として慕う・・・これが主題なのである。

最後の最後まで・・・本当は吉祥寺店についてどう考えているのかを明かさない・・・ペガサス書房の谷田部社長(山中崇)なのだが・・・そういう謎を秘めた人物として・・・役者としては申し分のない演技力を発揮していたが・・・やはり・・・お茶の間はそういう演技をそれほど評価しないんだな。

原作では谷田部は創業者を引き継いだ二代目社長である。

まるでスカッとしない直属上司を演じる野島(木下ほうか)は傍系だが・・経営者一族なのである。

だから・・・無能でも・・・経営サイドに属するのが仕掛けの一つになっている。

ドラマ版がこれを隠匿してしまった理由は不明だが・・・その分、話は分かりにくくなっている。

書店員たちが全員、正社員というのもやや不思議な感じである。

そうであれば・・・組合があって・・・もう少し話は複雑になるはずだ。

店舗閉鎖、リストラとなれば不当解雇問題が発生するからである。

理子の行動で・・・もっともヒロインらしくないのは・・・その隠蔽体質であるだろう。

店舗閉鎖の問題も・・・店員解雇の問題もすべて一人で抱え込む。

まるで・・・それが「責任感の証明」のように振る舞う理子だが・・・明らかに時代に適応していないのである。

阿吽の呼吸で親友の志保(濱田マリ)が理子の代弁者になるわけだが・・・これこそ・・・古臭いヤクザ映画の世界である。

全員が正社員の設定なら・・・リーダーは問題をメンバーと共有するべきで・・・それができないダメ女として描きたいなら・・・その旧世代ぶりの殻をやぶるのは亜紀の役目だろう。

「何もかも背負いこんだってだれも褒めてくれませんよ」

「え・・・そうなの・・・」

「大体・・・理子さんは一人で何も解決できないじゃないですか」

「・・・」

「そもそも・・・本が好きな時点で・・・一人でこつこつやるタイプなんですよね・・・みんなの上にたってあーしろこーしろが苦手なんですよね」

「・・・」

「だから・・・みんなになんでもうちあけて・・・やってもらえばいいんですよ」

「・・・それじゃ・・・店長として・・・」

「お飾りでいいんですよ・・・年はとっていてもそれなりに美人なんだから・・・」

「ひでぶ」

結局・・・イベント案を出しているのは三田や亜紀なのだ。

実際は見守りタイプの上司なのに・・・自分がなんとかしなければと力む・・・それがお茶の間に一人相撲の滑稽感として伝わらないと楽しめないわけである。

そして・・・売上20%を目指した最後の秘策・・・「オールナイト書店」である。

ペガサス書店吉祥寺ホテルとなった店舗で・・・限定客が宿泊できるサービスなのである。

宿泊料は・・・三冊以上の書籍購入だ。

どうなんだ・・・全従業員が・・・残業手当をもらって・・・その上で売上出るのか・・・これは売り上げ倍増戦略ではなくて・・・話題性による宣伝効果を狙った展開なんじゃないか・・・。

とにかく・・・商店街とタイアップして・・・銭湯や夜食を確保するお祭り展開。

寝そべって夜通し読まれた本が・・・その後、売り物として書棚に戻されるのは・・・古書店や図書館の本が基本的に嫌いなキッドには絶対・・・無理だ。

立ち読み禁止の本屋の方が好きなんだな。

まあ・・・御蔭で同じ本を何冊も買っちゃうけどな。

とにかく・・・書店員たちは・・・楽しい夜を過ごしたのだ。

結果・・・売上目標は達成されず・・・閉店決定である。

本社から戻った理子の開口一番が・・・「みんな・・・どうしたの」である。

最後まで・・・隠蔽体質が抜けないのだ。

書店員一同・・・退職覚悟で団結しているのにである。

「どうなりましたか・・・」

「・・・閉店です」

「・・・」

「でも・・・残りたい人がいれば・・・私が本社とかけあいます」

「それを言ったら・・・誰の首を切るか決めろというエリアマネージャーと一緒ですよ」

「一蓮托生の意味もわからないんですか・・・」

「みんな・・・力不足でごめんなさい」

しかし・・・そこにホワイトなユニコーン堂が登場である。

「今度・・・吉祥寺店を出店することになりました・・・全員、引きとります」

「万歳」

そもそも・・・吉祥寺はチェーン展開される書店の激戦地である。

ペガサス書店しか・・・ないみたいな設定そのものが・・・実はファンタジーだったのである。

からっぽになったペガサス書店。

「理子さんはどうしてユニコーン堂に行かなかったんですか」

「そろそろ・・・新しいことをやりたいと思って・・・」

「何するつもりですか」

「それは秘密・・・あなたは・・・」

「私は結婚式をしますよ・・・花嫁姿でも見せないことにはサービス悪いって言われちゃうから」

「書店員慰安旅行の回で海の家水着サービスとか温泉旅館入浴サービスもしなかったよねえ」

「まあ・・・先輩・・・年も年なんで無理させられませんから・・・由美かおる路線もありだと思いますけどね」

「時代劇枠がもう少しあれば・・・」

「ドラマ視聴率平均5%時代になれば・・・復活すると思います」

「過渡期なのよねえ」

お約束の結婚式・・・抜群の飛距離でブーケは亜紀から理子へ・・・。

エピローグ。

おしゃれな自費出版ビジネスも兼ねる趣味の書店をそこそこ成功させている理子。

そこへ亜紀がやってくる。

「来たのね」

「そろそろ・・・私が必要かなって思いまして」

「や・・・疫病神のくせに・・・」

「この店・・・暗くないですか・・・もっと明るくしましょうよ」

「亜紀・・・恐ろしい子・・・」

一話が抜けていたとは思えない・・・澱みない展開である。

とにかく・・・これで来週は・・・谷間なのである。

長かったなあ・・・春ドラマの谷間なし・・・。

関連するキッドのブログ→第8話のレビュー

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コメント

キッドさま、最後まで観てしまいましたが、結局なんの話だったのか……(笑)。だいたい、木下ほうかがギャフンに言わせずに終わるなんて……(笑)。

投稿: 幻灯機 | 2015年6月11日 (木) 06時26分

✪マジックランタン✪~幻灯機様、いらっしゃいませ~✪マジックランタン✪

基本的にこの脚本家は人をスカッとさせるより
モヤモヤさせる方が好きなんじゃないかと妄想しています。

だから・・・スカッと書店にはならないんですよね。

全十話マイナス一話でこの結果なら
紺野まひるとか
木下ほうかは
もう少し出番があったのかもしれません。

よろめいたことを泣いてわびるまひるとか
結局、店舗が縮小したことで
エリアマネージャーの枠がなくなりリストラされるほうかとか・・・。

しかし・・・ネット書店が成功するかどうかは別として
二代目社長にもそれなりの経営理念があるわけで
そうなると・・・キャスティング的に少し
問題あったよなあ・・・と考える。
まあ・・・もう終わったので
全員、地味でそろえたオールスターズと思えば
味わい深いものもありますな。

まあ・・・主演の人は・・・
深夜の暴力ドラマで
ネズミだった頃からのお気に入りなので
結局、完走してしまったことを
ここで報告しておきます。

今のゲームでトリオのCMくらい絞った感じや
巻毛のプリンセスな髪型の方が
よかったんじゃないのか。
まあ・・・おタク的には思ったりもしますな。

毎回、イベントで毎回、コスプレくらいの
サービスあってもよかったですよねえ。

前田以外はドラマの選択失敗していると思う・・・
今日この頃・・・。

今は・・・しゃちほこのそれでいいのだ~がお気に入りです。

投稿: キッド | 2015年6月11日 (木) 08時50分

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