彼氏が結婚するから仕事をやめると言い出しまして(蒼井優)それは少し様子が変ですね(堺雅人)
人間は模倣する生き物である。
そもそも、遺伝子は基本的にコピーシステムなのである。
親が笑えば子も笑うのだ。
親が歩けば子も歩くのである。
日本人に囲まれれば日本人になっていく。
親が狂えば子も狂う。
精神病患者に接し続ける精神科医は当然、精神を病むわけである。
ものまね芸人が模倣するように・・・人はあらゆるものを真似てしまう。
ニヤニヤされたらニヤニヤするしかない。
若者の真似をしようとしてうっかり腰を痛めて・・・もう若くないと悟るのだ。
だから・・・精神病は伝染する病なのだ。
常識的には間違ってるぞ。
で、『Dr.倫太郎・最終回(全10話)』(日本テレビ20150617PM10~)原案・清心海(協力・和田秀樹)、脚本・中園ミホ、演出・水田伸生を見た。基本的には精神科医が美人の患者さんと相思相愛になれたらいいなあ・・・という妄想の話である。ここに気がつくと話全体が気持ち悪い感じになるので気がつかない方がいいだろう。そもそも、キッドはドラマなら基本的になんでもいける口なので大丈夫だ。しかし、世の中にはスターが好き過ぎてドラマと現実と自分の妄想の区別がつかなくなる人もいるので注意したい。特に私生活でおめでたいことがあったスターのドラマがなんとなくつまらないとか・・・いつもはもっと面白いはずなのにとか言い出したら要注意である。
キッドは基本的に受動的な人間なのでドラマに限らず、巨大掲示板とか、ツイッターとかもいつまでも眺めていることができる。
こうして記事を書いているのだから・・・書きこんだり、つぶやいたりもできるはずなのだが・・・なんとなく億劫なんだな。
だから・・・書きこんだり、つぶやいたりできる人は積極的でうらやましい。
だが・・・じっと眺めていると・・・明らかに様子のおかしい人はいて・・・おやおやと思うわけである。
誰が見ても美人の女優を美人ではないと言い出したり、誰が見ても演技の上手な役者を下手だと言い出す人は・・・どれだけ美人でどれだけ演技が上手なのか・・・すごく不思議な気持ちになります。
しかし・・・まあ・・・基本的に誰もが少し頭がおかしいんだよなあ・・・と納得もできるのだ。
このドラマの主人公は明らかに最初から狂っているわけだが・・・そう思わない人は正常なのか・・・異常なのか・・・不明なんだなあ。
思春期の家族の死によって深刻な精神失調を経験したヒノリンこと日野倫太郎(高橋楓翔→堺雅人)は病んだまま精神科医になったのであった。
しかし・・・精神分析的手法で患者に共感することで症状を改善するスーパー・ドクターとして患者に人気を博すのだった。
だが・・・母親からの育児放棄と虐待によって乖離性同一性障害を発症した新橋の芸者・夢乃/相沢明良(木内心結→蒼井優)との出会いがヒノリンの凍った心を加熱処理するのだった。
「これきりにしましょう」と夢乃に告げられたヒノリン・・・。
病院内で夢乃を追いかけたヒノリンは・・・患者を抱きしめてしまう。
「別れろ切れろは芸者の時にいう言葉です・・・僕はずっとあなたといます」
ヒノリンは・・・中学生以来・・・初めて女子を好きになったのだった。
ねえ・・・頭おかしいでしょう。
幼馴染であり・・・ヒノリンに片思いをし続けて三十年超のキャリアを誇る外科医・水島百合子(吉瀬美智子)は茫然とする。
報告を受けたヒノリンの主治医・荒木重人(遠藤憲一)は状況を看護師・桐生薫(内田有紀)を相手に再現して確認する・・・。
「抱きしめたって・・こうじゃなくて・・・こうか」
・・・明らかにセクハラである。
「どう思いますか」
「かなり本気だな」
「それは患者に対してですか」
「いや・・・そうではないかもしれん」
「じゃ・・・どうなんですか」
「わからん・・・なぜなら・・・俺はヒノリンじゃないから」
「・・・ああ」
激しく動揺する・・・百合子だった・・・。
ヒノリンは謹慎中なのをいいことに夢乃を時自宅に連れ帰る。
愛犬・弥助はモフモフと二人を癒す。
夢乃はヒノリンがずっと一緒にいるという約束を果たしたことに心を開く。
ヒノリンの許容を模倣した夢乃は明良を許し、明良は夢乃を許す。
二人の自我境界線は曖昧なものとなり・・・明良は恋が叶ったことにより・・・幼少時代から求めていた安堵を感じ・・・夢乃は警戒心を解いて・・・分離中の自我は一部融合するのだった。
明良でもあり夢乃でもあるユメノアキラはヒノリンとの同棲ごっこをエンジョイするのだった。
「ずっと一緒なんですね」
「ずっと一緒だよ」
「お風呂も一緒ですか」
「一緒だとも」
「ベッドもですか」
「もちろんだよ」
「うれしいな」
「ボクもうれしいよ」
その頃、菊千代こと・・・夢乃の母親・相澤るり子(高畑淳子)はますます心を荒廃させる。社会的規範は心から脱落し・・・精神的退行は進む。そして・・・ついに無銭飲食を働くのである。
一方・・・慧南大学病院の理事長・円能寺一雄(小日向文世)は新病院買収計画が大臣の脱税発覚によって頓挫したことにより・・・心身に異常を起こしていた。
副病院長兼脳外科医主任教授の蓮見(松重豊)、精神科主任教授の宮川(長塚圭史)は狂を発した円能寺に困惑する。
「だれだ・・・だれが俺の邪魔をする」
「いえ・・・理事長の邪魔など・・・」
「日野か・・・あいつか・・・」
「日野は謹慎中です」
「みんな・・・俺を騙す気か」
「そんな・・・」
「蓮見・・・お前、馬になれ」
「馬・・・」
「俺は・・・天下をとるんだ」
「天下・・・」
「俺を誰だと思ってるんだ・・・俺は・・・信長だ」
「信長・・・」
イチャイチャ中の二人は・・・卵の白身と黄身をかきまぜる。
「まざっちゃいました」
「まざっちゃったねえ」
「私・・・もう夢乃でも明良でもないような気がします」
「僕は君に合鍵を渡すよ」
しかし・・・ヒノリンに夢千代こと置屋の女将・益田伊久美(余貴美子)から着信がある。
夢千代は菊千代が無銭飲食で逮捕されたことを告げるのだった。
警察署に実母の身柄を引き取りに行く夢乃・・・ヒノリンと夢千代は付き添うのだった。
「娘さんが身元引受人になりますか」と担当官。
「もし・・・引き受けない場合は・・・」
「処分が決まるまで拘置することになります」
「・・・」
「私が代わりに・・・」と申し出る夢千代。
「いえ・・・私が・・・私の母ですから」と夢乃。
「無理しなくていいんだよ」と夢乃の手に手を重ねるヒノリン。
「大丈夫です・・・先生がいつも一緒にいてくれるから・・・」と夢乃・・・。
そこへ菊千代が現れる。
「あきら~・・・おかあさん・・・おかねがないのに・・・おなかすいたんだよ~」
「・・・」
四人はヒノリンの家に戻るのだった。
「なんで・・・こんな家にこなくちゃいけないのさ」と菊千代。
「無銭飲食した女がなにいってんだ」
「あんたこそ・・・五千万円をどうしたんだよ」
「・・・」
「ねえ・・・明良・・・こんな家を出て・・・二人で昔みたいに仲良く暮らそうよ~」
「お母さん・・・もう嘘はやめて・・・」
「嘘・・・何が嘘なのさ・・・」
「私・・・お母さんが帰ってくるのを一人で待ってた・・・冷蔵庫の中がからっぽになっても・・・お母さんは帰ってこなかった。お腹がすいて・・・お腹がすいて・・・金平糖もなくなったし、ケチャップもなくなったし・・・お金もないし・・・お腹がすいて・・・お腹がすいて・・・食べるものはないし・・・お腹がすいて・・・帰ってきたお母さんは・・・男の人と仲良くしてた・・・私は部屋の外に出された・・・お腹がすいて・・・寒くて・・・風が冷たくて・・・お母さんは私にあんたなんか産まなければ良かったって言った・・・私は・・・お母さんに抱きしめてもらいたかったのに・・・私とお母さんは・・・いつ・・・仲良く暮らしてたの・・・」
「そりゃ・・・お前・・・お前が覚えてないだけさ・・・」
「私はそれから働いて・・・置屋のお母さんに踊りを教えてもらって・・・働いて・・・踊りは好きだった・・・お母さんは私を褒めてくれた・・・私は追い出されたりしないように・・・働いて・・・働いて・・・明良じゃなくなって・・・夢乃になって・・・お金を・・・あなたに・・・渡して・・・」
「仕方ないじゃないか・・・お金が必要だったんだよ」
「置屋のお母さんは優しかった・・・いつも私を守ってくれた・・・」
「夢乃・・・」
「あんたは・・・私から・・・お金をとっただけじゃないか・・・」
「明良・・・」
「もう・・・私は・・・私なの・・・お母さんとは・・・さよならするの・・・」
「さよなら・・・明良のお母さん」
「え・・・」
「ありがとう・・・夢乃のお母さん・・・」
「夢乃」
「明良のお母さん・・・最後に一度だけ抱きしめてあげる・・・あなたもさびしかったのよね」
「あ・・・あきら・・・」
「お母さん・・・いつも・・・私のために心配してくれて・・・ありがとう・・・これからは・・・私・・・いっぱい親孝行します」
「夢乃・・・」
「いやだ・・・あきら・・・捨てないでおくれよ・・・」
夢乃は夢千代としっかりと抱き合う。
菊千代は迷子のように夢乃の裾を掴んで泣きじゃくるのだった。
ヒノリンは微笑んで・・・その光景を見つめる。
アキラとユメノは限りなく一つに近い人格に統合されたようだ。
アキラの記憶とユメノの記憶は共有された。
ヒノリンがアキラに共感したことをユメノが模倣し、ヒノリンがユメノに共感したことをアキラが模倣する。
共感とは感情の模倣であると同時に・・・自他が同じ感覚を得ているという幻想を共有することなのである。
擬似的な一体感が・・・人間を孤独の監獄から一時的に解放することで精神をリフレッシュさせるのである。
「ヒノリンはいつもがんばらなくてもいいっていうよね」
「僕が中学生の時・・・帰宅すると部屋がいつもより綺麗になっていました・・・僕は母が頑張ったんだなと思いました・・・すると・・・電話がかかってきて・・・母が電車に飛び込んだことを伝えられたのです」
「それは・・・きっと・・・どうしようもないことだったのよ・・・かわいそうなヒノリン」
「同情」と「共感」のニュアンスに差異を感じる人は「同情するなら金をくれ」と思いつつ「愛し合い一緒に感じたい」と思っているのである。
ヒノリンの電話がなる。
「早く来てくれ・・・」
「今は愛しあってるんですが」
「俺のことはどうでもいいのか」
行政府報道長官の池(石橋蓮司)を心療するヒノリン。
「お前が切れって言ったから切ったのに・・・まだ責められる」
「責められるようなことをしたのですか」
「俺は何もしていない」
「何か・・・まだ隠していることがあるのでは」
「人には言えることと言えないことがあるだろう・・・たとえば・・・正常位と騎乗位のどっちが好きかとか」
「僕はどちらもしたことがありません」
「童貞かっ」
「人間は秘密を持っている相手には敏感なものです・・・そして秘密が知りたくてたまらない生き物なのです」
「別件で疑われ・・・痛くもない腹を探られるのか・・・」
「そういうこともあるかもしれません・・・正直ものの頭に神が宿ると言います」
「頭隠して尻隠さずだな」
ヒノリンの共感療法は・・・池長官を死地に追いやるのだった。
ヒノリンの電話が鳴る。
「お前は俺が病気だというのか」
円能寺は頬を痙攣させながら言う。
「いわゆる・・・チック症状ですね」
「ふざけるな・・・だれが・・・こいつを呼んだ」
「私です」と蓮見副院長。
「みんな・・・何故・・・私に逆らう・・・」
「私は言われた通りに謹慎していました」
「ニヤニヤするな」
「こういう顔なんです」
ヒノリンは蓮見と密談する。
「どうかね」
「急性のストレス性障害でしょうか・・・錯乱なさっているようです」
「・・・だね」
宮川主任は矢部街子(真飛聖)ら愚痴る。
「なぜ・・・みんな・・・あいつばかりをチヤホヤするんだ」
「先生には・・・私がいるじゃないですか」
「ちがう・・・私だって・・・患者にあいされたいんだ」
「患者にチヤホヤされて・・・どうする気ですか」
「・・・」
ヒノリンは・・・荒木の診療室を訪ねる。
「円能寺さんの診療をお願いしたいのです」
「お前がやれば・・・いいだろう」
「私は・・・精神科医を辞すつもりです」
「そうか・・・本気の恋をしたからか・・・」
「はい」
「それは・・・」
ビョーキだという言葉を飲み込む荒木である。
荒木は告知しない主義らしい。
患者によっては病名を知って病状を悪化させる場合があるからである。
そこへ・・・ギャンブル依存症の治療のために荒木診療所の住み込みの家政婦となった菊千代が現れる。
「あんた・・・何しに来たのよ」
「心配しないで・・・こいつも患者だから」
「あら・・・そうだったの・・・道理でおかしなことばかり言うと思ったわ」
「・・・」
菊千代は・・・反復筆記による暗示療法中である。
「私は・・・ギャンブルしなくても・・・大丈夫です」
私はギャンブルしなくても大丈夫です
私はギャンブルしなくても大丈夫です
私はギャンブルしなくても大丈夫です
「もう・・・お腹が減って・・・書けない」
「頑張りなさい・・・昼休みまであと百回」
「私は・・・天丼が食べたい・・・それがダメならカツ丼が食べたい・・・それでもだめなら玉子丼」
「ドンドンガバガバ・・・じゃ・・・うな丼にするか・・・」
「先生・・・大好き~」
菊千代に春が訪れたらしい。
ヒノリンは夢乃に青いワンピースをブレゼントした。
「ありがとう・・・ヒノリン」
ヒノリンは夢乃と弥助を連れて海までドライブした。
「ありがとう・・・ヒノリン」
浜辺で弥助と幼女のように戯れる夢乃。
絵にかいたように幸せな二人と一匹・・・。
「ありがとう・・・ヒノリン」
ヒノリンは幸福だった。
定例の記者会見で・・・脱税大臣と円能寺理事長とのパイプ役を疑われる池長官。
「隠してるんでしょう」
「隠してません」
思わず・・・擬似頭髪を脱落させる池長官。
沈黙する取材陣。
半分の記者たちは思わず・・・頭を隠す。
いたたまれない気持ちで夢千代はテレビを消す。
「池さんも大変ねえ」
「あれじゃ・・・お小遣いもねだれないわ・・・」
小夢(中西美帆)もしょんぼりしてしまうのだった。「円様も・・・大変そうだし」
「円様を悪く言ってはだめよ・・・円様を悪く言う人がいても・・・私たちにとっては・・・大切な恩人なんだからね」
夢千代の背後から幽鬼のように現れる円能寺・・・。
息を飲む小夢・・・。
「ありがとう・・・夢千代」
「円さま・・・」
夢千代は円能寺の痙攣する頬を優しく撫でる。
母親が子供の傷を手当するように・・・。
ヒノリンの電話が鳴る。
「俺は・・・終わりだ・・・融資が受けられず・・・病院買収ができない」
「理事長はなぜ・・・ここに」
「さあ・・・俺はもうすっからかんだ」
「ここに大切なものがあるからではないですか」
「ここに・・・おい・・・夢千代・・・ここになんか・・・あるのか」
夢千代は涙ぐむ・・・。
「おい・・・夢千代・・・どこに行った」
「はい・・・ここにおりますよ」
「ここに大切なものがあるんだそうだ・・・お前・・・わかるか・・・」
「さあ・・・何でしょうねえ」
微笑む・・・夢千代・・・。
夢千代にも春が訪れたらしい。
「俺は・・・三男で・・・二人の兄は医者だ・・・買収しようとしていた病院は親父の経営する病院だ・・・俺は愛されなかった・・・だから・・・親父からすべてを奪ってやることにしたんだ」
「それは・・・素晴らしい情熱ですね・・・復讐は常に美しいものです」
「そうか・・・」
「しかし・・・憎悪のエネルギーは時に・・・自分自身を燃やしてしまう場合があります」
「・・・」
「火加減が大切なのです」
「・・・」
「地震が起きたら火を止める人は多いでしょう」
「最近は自動的に止まるぞ」
「そうです・・・理事長も・・・自動的にブレーキがかかっているんですよ」
「・・・」
「危険が去るまで・・・じっとしている・・・それも大切なことです」
「私は・・・どうすればいいのだ」
「何もしなくて・・・いいんですよ・・・あなたは・・・充分に働いたじゃありませんか・・・」
「・・・」
「神様だって・・・週に一回は休むのです」
「なるほど」
長い坂道を登って・・・二人は日野家の墓にやってくる。
そこには美しい百合の花が揺れている。
夢乃は百合の花言葉「失楽園の涙」「母の乳」「処女の気負い」を思い浮かべる。
「私は・・・二十七年連続で墓参りをしませんでした・・・私の父は海外で仕事をしていました・・・私の母は・・・その間・・・父以外の男性と恋愛をして楽しんでいたのです。それを知った私は・・・母を問いただし責めることもできずに・・・ただ・・・心の中で嫌悪したのです・・・しかし・・・母はそのことに気がついたのでしょう・・・鬱屈して・・・ついに自殺してしまった・・・」
「先生のせいではないですよ・・・」
「私は・・・こうして・・・母のお墓の前で・・・あなたに伝えたいことがあるのです・・・夢乃さん・・・私と結婚してください・・・私はあなたを愛しています」
「・・・」
「返事は今でなくて構いません」
「いえ・・・今・・・お断りします」
「ぇぇぇぇぇぇぇえええええええええ」
「先生・・・患者を医師が愛してしまうのは・・・逆転移ですよ・・・先生の本に書いてありました・・・」
「・・・しかし・・・私の気持ちは・・・」
「恋愛は一過性の精神障害の一種だと・・・それに・・・お母さんは先生のせいで自殺したとは限りません・・・ひょっとしたら愛人に冷たくされて絶望なさったのでは・・・あなたは・・・母親に捨てられ・・・一人残されて・・・それを怨んで女性不信になってしまった。私にお墓の前で告白したのは・・・母親以外の別の女性を愛することを見せつけて・・・お母さんへの怨みを晴らすつもりだったのでしょう・・・」
「そ、そんな・・・」
「私・・・患者にのぼせあがって・・・プロポーズしちゃうような・・・そういう方とは結婚を考えられません・・・先生・・・しっかりしてください」
「はい・・・」
「最後に・・・お聞きします・・・私の病気・・・良くなってますか」
「かなり・・・よくなってますね」
「ありがとう・・・ヒノリン」
「あの・・・でも・・・なにか・・・あったら・・・電話してくださいねえええええ」
背を向けた夢乃は必死に唇をかみしめる・・・。
邪悪な妹・中畑まどか(酒井若菜)は呆れる。
「お兄ちゃんをふるなんて・・・お兄ちゃん・・・手玉にとられちゃったの」
「とられてないもん」
「医者をやめるつもりだったの・・・」と考え込む百合子。
「医者は患者とは恋愛できないからね」
「私・・・ちょっと用事を思い出した」
百合子は去って行く。
「なんだよ・・・百合子の奴・・・」
「そりゃ・・・百合子さんだって怒るわよ・・・」
「なんでだよ・・・」
「まさか・・・お兄ちゃん・・・百合子さんの気持ちがわからないの・・・」
「気持ちって」
「お兄ちゃんのことが好きなのよ」
「ええええええええええええええええええええええええええええええええええええ」
まどかは心の底から兄を蔑んだ。
百合子は夢乃を訪ねていた。
「好きなんでしょう」
「あなただって・・・」
「私は・・・」
「だって・・・ヒノリンのこと好きじゃなくて・・・どうしてここに・・・」
「・・・」
「私・・・結婚なんてしてる場合じゃないんです・・・実母の借金返済をしなくちゃいけないし・・・置屋のお母さんにも楽をさせたいし・・・芸者としてお金を稼ぎまくらないと・・・」
「夢乃さん・・・」
「ヒノリンのこと・・・よろしくお願いします」
「このドラマでは・・・患者以外のことを考えて・・・たとえば・・・結婚したりする医者は・・・堕落した医者なんですよね」
「医者に対してあまりにも幻想抱き過ぎですよね」
研修医・福原大策(高橋一生)は「ふられたんですね」と復讐する。
桐生の息子は文字盤で「ふ・ら・れ・た」と同情する。
桐生は連絡事項を伝える。
「先生・・・講義のお時間です」
「・・・」
ヒノリンは教壇に立つ。
「精神分析的心療の・・・成果は・・・共感療法にあると・・・私は信じています・・・科学的に患者の心を分析し・・・善意に基づいて・・・全身全霊で・・・患者の心に寄り添う・・・それが愛です・・・愛と言わずになんと呼べばいいのでしょう・・・私はこれからも患者を愛し続けます・・・見返りは診療報酬以外に求めてはいけません」
こうして・・・人類は発狂し続ける。
精神科医たちは・・・発狂しても・・・大丈夫・・・それは一種の個性・・・それにみんな一緒と囁き続けるのである。
そんな人類を乗せて今日も地球は回るのだ。
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