いつしか暗き雲霧を払いつくして百敷の都の月をめで給ふらん(鈴木杏)
文久三年(1863年)八月十八日の政変は・・・公武合体派による尊皇攘夷派の朝廷からの排除である。
しかし、実際は長州藩が主導した大和行幸に孝明天皇が拒否反応を示し、周辺のものがその意を汲んで京都守護職の会津藩を動かしたのだろう。
そもそも・・・異国に恐怖する天皇が・・・自ら攘夷の先頭に立つことなどありえないのである。
ある意味で長州は幻想に酔ってしまったと言える。
一方で薩摩藩は七月に薩英戦争を経験し、敵の実力を知った。
元々・・・公武合体派としての流れを持っている薩摩藩は単純な尊皇攘夷派ではない。
長州の独走を苦々しく感じる在京諸藩の空気にも敏感だった。
こうして・・・長州の代弁者である三条実美ら七人の尊皇攘夷派の公卿が失脚することになるのである。
十八日に謹慎を命じられた公卿たちは二十四日には官位を剥奪され、九月九日には改名を命じられる。
三条実美は三条実となった。
そして・・・京を追放され都落ちとなる。
これが所謂、「七卿落ち」である。
御門警備の任を解かれた長州藩士は・・・追放された公卿たちを護送することになる。
随伴した久坂玄瑞この時、「七卿落ちの歌」を吟じたと言う。
復讐の誓いである。
しかし・・・尊皇攘夷派である彼は・・・誰に復讐するつもりだったのか。
彼らを追放したのが・・・他ならぬ・・・孝明天皇だったのに・・・。
もちろん・・・天皇はその責任を問われたりはしない。あくまで彼らは尊皇なのである。
長州藩の怒りが・・・実行者であった京都守護職に向かうのは必然であった。
で、『花燃ゆ・第23回』(NHK総合20150607PM8~)脚本・大島里美、演出・安達もじりを見た。例によってシナリオに沿ったレビューはikasama4様を推奨します。今回は長州遊撃隊総督で蛤御門の戦いの戦死者・来島又兵衛政久とある時はかわいい生徒会長、ある時はかわいい女子大生の黒島結菜が演じるかわいい高杉雅ちゃんの二大描き下ろしイラスト大公開でお得でございます。まあ・・・もはやキッドにとって最大の楽しみなので出番が少ないとガッカリします・・・。さて・・・久坂玄瑞が京都で馴染みの遊女が出来ようが、そのことを妻に告白して汚らわしいと罵られようが・・・構わないわけですが・・・今回は悲しい女を演じた辰路も少し・・・美少女の面影がありましたな。スーパー美少女子役と地味な演技派女優の間で迷う鈴木杏・・・哀愁でございます。一方・・・キワモノ子役からスター女優となった主人公。年齢がフィットしてきて・・・今回は自然な演技。流石の存在感を示しましたねえ。「いいですよ」と言いながらの生理的拒絶。これこそが・・・井上真央の本来の持ち味・・・前フリ長すぎでございますよね。この一瞬のために・・・22回って・・・。
文久三年(1863年)七月、鹿児島湾において薩摩藩と英国海軍が戦争状態に突入。京都における薩摩藩の軍事力が低下する。攘夷決行の主流となった長州藩家老・益田親施は孝明天皇に謁見し天皇による攘夷親征(大和行幸)(の実行を奏する。八月四日、朝議にて攘夷砲撃に非協力的であった小倉藩の処分が決定する。これに反対する鳥取藩主・池田慶徳が参内し、朝廷に混乱が生じる。長州藩の急進的な姿勢に公武合体派の公卿と大名は大和行幸の中止に傾く。十三日、大和行幸の詔が発せられる。十五日、国事御用掛の尊融法親王(中川宮)は京都守護職・松平容保に混乱の収拾を求め、会津藩は公武合体派の盟友である薩摩藩と共謀。十六日、中川宮は政変計画を奏する。十七日、孝明天皇は中川宮に密命を下す。十八日、会津藩・薩摩藩の軍事力を背景に公武合体派は朝廷クーデターを決行。長州藩は堺町御門警護の任を解かれ、三条実美・三条西季知・四条隆謌・東久世通禧・壬生基修・錦小路頼徳・澤宣嘉ら尊皇攘夷派の公卿は失脚した。十九日、長州藩の千余人は七卿とともに都落ちする。九月、撰鋒隊と奇兵隊の対立により騒動が発生し、事件の責任を問われ高杉晋作は奇兵隊総督を罷免される。土佐浪士の吉村虎太郎らは大和行幸の先鋒となるべく挙兵していたが反乱分子に認定され天誅組の変としてまもなく鎮圧され壊滅する。関白の鷹司輔煕(水戸藩派)は長州への同情を示すがまもなく解任される。後任は水戸藩派であり公武合体派の二条斉敬となる。
文は京都における夫の周辺を探っている。
玄瑞は尊皇攘夷派の公卿との密会に祇園の遊郭を利用していた。玄瑞が芸妓の辰路と馴染みになり、女色に耽溺していることに悋気は感じない。文はくのいちだからである。
くのいちとしての文は京都の忍びたちの暗躍ぶりに関心を寄せていた。
玄瑞の贔屓する辰路もまたくのいちであった。
辰路の上忍を突きとめるべく、心の網を張った文は迷路に迷い込む。
辰路は情報を様々なつなぎ役に伝えていた。
しかし・・・そのつなぎ役たちは時には公儀隠密であり、時には薩摩の忍びであった。
「情報をあやつる忍びか・・・」
文はつぶやく。
敵味方に情報を流し・・・思惑にはめて行くのは忍びの常道である。
だが・・・それならば操り手としての上忍がいるはずである・・・けれど、辰路の周辺にその手ごたえがないのだ。
辰路が情報を伝える相手は無数であり・・・玄瑞さえ・・・その一人であった。
辰路を操り、情報を操作する操り手の正体がつかめない。
文は辰路が情報を流した相手を一人ずつ、追いかけて行く。
薩摩藩の忍びは薩摩藩の実力者(実質的藩主)・島津久光の目付けの一人であった。
その任務は長州藩の動向・・・特に公卿対策を探ることである。
玄瑞は長州藩の朝廷工作のキーマンであり、その動向を薩摩藩は逐一掴んでいる。
長州忍びも対応するが・・・それは後手を踏んでいる。
文はもどかしさを感じる。
公儀隠密は会津藩と密接な関係を持っていたが・・・その首領である服部半蔵は上洛した浪士の群れに混じっている。
半蔵の正体は旗本の一人だったが・・・その動きは慎重だった。
忍びの集団としては圧倒的な組織力を持っているはずの公儀隠密の動きは静謐さに満ちていた。まるで闇に潜む何かを恐れているようである。
小さな忍びの集団は京都に無数に潜んでいる。
公卿の一人が飛騨忍びを飼っていたりするのである。
そういう忍びたちは基本的には主人の護衛役で手いっぱいだった。
そういう小勢力は・・・天下の忍びである公儀隠密にとっては脅威にはならない。
では・・・半蔵は何を恐れているのだろうか・・・。
文は突然・・・思い至った・・・。
天皇の忍び・・・。
京都の影には・・・そういうものがあるはずである。
それらは闇に潜んで滅多に姿を見せぬと言う。
しかし・・・心の探り手である・・・文に正体を隠せる相手はいないはずだった。
だが・・・八月十八日・・・長州藩に危機が迫った時・・・文は漸く気がつくのだった。
辰路の操り手は・・・心を隠す術を心得ているのではないか・・・。
そして・・・もしや・・・。
自分は心を覗かれているのではないかと・・・。
闇の中で・・・何者かがニヤリと笑った気配に・・・文は驚愕するのだった。
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