ワイルド・ヒーローズ!暴走族VS国家権力!風を愛する友!(桜田ひより)
土曜よりもさらにバカさを増した日曜である。
しかし、わかりやすい娯楽に徹してバカドラマを提供することはテレビの使命とも言える。
なんてったってお茶の間にいるのは基本的にバカな人々なのである。
素晴らしいインターネットの世界に少しバカを奪われたと言っても・・・まだまだ、バカを相手のビジネスは成立するのだった。
人はバカとして生まれ・・・バカとして生き・・・かなりバカになって死んでいく・・・そういう生き物だからである。
日曜の夜にそっと花開くバカの花。バカバカしくて面白いぞ。
それでいいのだ~。
で、『ワイルド・ヒーローズ・第1回~最終回(全10話)』(日本テレビ201504192230~)脚本・蛭田直美、演出・佐藤東弥(他)を見た。脚本家は日本映画製作者連盟の「第39回城戸賞」(2013年)で準入賞した人で・・・奇想天外な定番話を堅実にまとめている。この手の話に需要があれば・・・なかなかに期待がもてそうだ。奇談に・・・もう少し信憑性を加える工夫が欲しいが・・・そんなことを言ってもな・・・。
日本風な国家の・・・地方都市・・・。
医療機器メーカーに勤務する営業マンの瀬川希一(TAKAHIRO)は転勤によって十年ぶりに故郷に戻ってくる。
希一は高校時代、ヤンキーグループ「風愛友(フー・アー・ユー)」の一員で喧嘩上等の不良であり・・・仲間たちからキー坊と呼ばれていた。
しかし、総長の田川(塚本高史)を頂点とするヤンキー・グループは暴力団からの麻薬汚染を許し、傘下の「風愛友」は希一を中心にこれに抗する。
ついに・・・100対6の壮絶な激突が起きる・・・しかし・・・その日が大学受験と重なった希一は抗争の現場に現れなかったのだ。
再婚する母親(朝加真由美)のために・・・ヤンキーから足を洗うことを決意した希一である。
しかし・・・仲間を裏切った希一と裏切られた仲間たちにはわだかまりが残る。
そして・・・「ヘタレのキー坊」は伝説となっていたのだった。
そんな・・・希一の前にヤクザの若頭となった田川に追われる謎の少女(桜田ひより)が現れる。
少女に救いを求められた希一はヤクザの手から少女を守る。
だが・・・少女を逃がすために・・・希一は田川に囚われてしまう。
希一は少女をかっての仲間の一人、チョコこと佐伯春太郎(岩田剛典)に託す。
しかし・・・希一の居場所を田川に密告したのはチョコだった。
希一の帰還を知って集まったかっての仲間たち・・・ミッキー(青柳翔)、ポンジャラ(野替愁平)、ピーちゃん(八木将康)、テンテン(黒木啓司)の心情は複雑だった。
しかし・・・事情を知っているミッキーは語りだす。
「仲間より・・・親をとるなんて・・・だっせえけどさ・・・ほら・・・ウチのおふくろ・・・最近、認知症になっちゃっただろう・・・今なら・・・わかるんだよ・・・親孝行しなきゃやってらんねえ・・・あいつの気持ち。あいつはよ・・・俺たちより先に背負っちゃったんだよ・・・家族って重荷・・・つるんで好き勝手やってきた俺たちより・・・あいつの方が・・・きっと痛かったんじゃねえか・・・心がよ」
「なんで・・・そのこと黙ってたんだ」とチョコ。
「俺だって・・・ずっとムカついてたんだよ」
そこへ・・・ミッキーを慕う高校生のメロス(佐藤大樹)が少女を連れて現れる。
その頃、ヤクザの事務所では・・・希一が拷問を受けていた。
「ヘタレのキー坊のくせに頑張るじゃねえか」
「俺は負けないんだよ・・・負けたって思わないから」
「ああ・・・お前はそういう奴だったよなあ」
「・・・」
「あの時も・・・お前がいればあいつら勝てたのか」
「だから・・・負けてないんだって・・・俺もあいつらも」
「アホか・・・」
だが・・・ヤクザの事務所に殴りこみをかける「風愛友」のメンバーたち。
「本当にアホばかりだな」
ダンスのような乱闘で「風愛友」は希一を奪還するのだった。
チョコの経営するカラオケボックス『ウララ』に帰還した希一たちは旧交を温める。
そこへ・・・顔見知りの刑事・赤城(内藤剛志)がやってくる。
少女に捜索願いが出ていて保護しに来たと告げる赤城。
「この子・・・名前はなんて言うんです」
「五嶋日花里ちゃんだ・・・」
しかし・・・田川に指令を出していたのは赤城だった。
ヒカリの背後には・・・底知れぬ闇が広がっている・・・。
・・・という第一回である。
ヤクザも警察も・・・さらには怪しい宗教団体も動かす謎の組織・・・。
ヒカリは彼らの「儀式」のために必要な存在だったのだ。
その「儀式」とは・・・実の父親を娘に殺させ・・・闇の象徴である「レインマン」を継承させるものだった。
ヒカリの母親である陽子(横山めぐみ)が現在のレインマンなのである。
表の国家権力を裏から操る男たちは「儀式」を通じて・・・あらゆる非合法を超越する存在として結束を固めるのである。
ヒカリも十一歳の誕生日に・・・父親の幸雄(大浦龍宇一)を殺す宿命を背負わされていたのだった。
闇の組織の支配下にある教団「かがやきの方舟」から逃れた美史(水沢エレナ)も加わり、廃墟に立て籠もった希一たちは・・・儀式の日を妨害するために徹底抗戦を展開する。
そして、最終回・・・。
廃墟に突入する機動隊を撃退した・・・「風愛友」だったが・・・闇の組織はついに・・・百人の特殊部隊を送り込む。
銃火器で武装した特殊部隊・・・。
しかし・・・「彼らに私は殺せない」とヒカリが申し出て・・・ヒカリを盾にした武装解除に成功する希一。
輪になってヒカリを守護する男たち。
そして・・・ヒカリの誕生日は終了する。
ついに・・・歴史の闇を支配した「レインマン」の継承は阻止されたのだった。
闇の男たちは呟く。
「ヒカリだけでは世界は焼き尽くされてしまう」
「この世には雨が必要なのだ」
「その象徴たるレインマンが・・・」
しかし・・・そんなことはないのだった。
希一たちは・・・恐ろしい妄想の世界から解放され・・・日常に帰還していく。
しかし・・・日常とは・・・ひょっとしたら・・・ただの集団幻想にすぎないのかもしれない。
レインマンを失った世界は・・・滅びのカウントダウンを始めているのかもしれません。
とにかく・・・幻想に満ちた春ドラマはこんなところでも花開いていたという話である。
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