控えよ!天下御免の桜吹雪・・・姫様のご懐妊じゃ!(田中麗奈)
長州藩最後の藩主・毛利元徳の長男・興丸(毛利元昭)が誕生するのは元治二年(1865年)二月七日である。
少なくとも元治元年の秋には懐妊が明らかになっていただろう。
動乱の最中である。
そもそも・・・長州藩の藩祖は毛利元就の孫である毛利輝元だった。
輝元の直系は四代吉広まで続く。
しかし、五代目からは元就の子・穂井田元清系の支藩である長府藩の子孫が継いでいる。
長州藩第十三代藩主の毛利敬親も、夫人の都美姫も、養女の銀姫も穂井田元清系なのである。
一方、敬親の養子となった元徳は支藩・徳山藩で・・・脈々と受け継がれてきた毛利輝元系の男子なのである。
元徳と銀姫の夫妻は養子夫婦であり・・・毛利輝元系と穂井田元清系の融和を目指していた。
生まれた男子は・・・長州藩と支藩である長府藩・徳山藩を融合した抜群の血筋を持つことになる。
動乱の最中とはいえ・・・銀姫の懐妊が・・・毛利家そして長州藩士の希望の光であったことは間違いないのだ。
だから・・・些少の作劇には瞑目するしかありません。
で、『花燃ゆ・第30回』(NHK総合20150726PM8~)脚本・宮村優子、演出・橋爪紳一朗を見た。例によってシナリオに沿ったレビューはikasama4様を推奨します。今回はついに登場・・・毛利家最後の藩主・毛利元徳描き下ろしイラスト大公開でお得でございます。一人・・・また一人と大河ファンを絶句させていく本シリーズ・・・どんだけさいはての極地まで到達するのか・・・。なんだろう・・・マゾなのか・・・。歴史の苦手な人にはまったく話がわからず・・・歴史の好きな人は唖然とするだけ・・・小さなお友達も大きなお友達も雪崩れていくばかりでございますねえ・・・。羊羹の下に隠された密書・・・夜のお迎えにスキップしていく姫君・・・なんだろう・・・女のロマン(禁句)なのか・・・まあ・・・やることやったからご懐妊なので・・・これでいいのだと言う他ないのですな・・・。主人公・・・してやったりなのか・・・そうなのか・・・がんばれ・・・井上真央と思わず両手を握りしめたい気分でございます。
十月、松島剛蔵、小田村素太郎(伊之助)ら、非恭順派がお役御免を命じられ、高杉晋作は政務役を罷免される。非恭順派が野山獄に投獄される中、晋作は萩から脱走。恭順派(俗論党)の椋梨籐太が政務役に任命される。謹慎中の長州藩主親子は山口から萩へと帰還する。銀姫の懐妊が明らかとなる。攘夷実行者、京都進発派が次々と粛清される中、下関、山口の非恭順派諸隊と萩の恭順派との対立が表面化する。一部勢力は両者の間をとりもつ中立鎮静派として活動を開始する。十一月、長州藩の内部抗争が深刻かするのを確認して幕府軍は撤退を開始。長門清末藩の第八代藩主・毛利元純は謹慎中の藩主の代理として藩内融和を図るが椋梨籐太は粛清を強行する。奇兵隊など攘夷派諸隊でも内部分裂が発生。高杉晋作は逃亡先の九州から帰還。軍事クーデターのための内部工作を開始する。征長軍司令・徳川慶勝は長州藩士同志の軍事衝突の気配を察し、長州の降伏を確認したことを理由に独自に撤退を開始する。幕府軍という後ろ盾を失った恭順派は・・・革命勢力の打破を目指して攻撃準備を開始する。恭順派と非恭順派の武力衝突は・・・明治維新へとつながる戦闘の始りである。高杉晋作の倒幕の戦いが始るのだ。
「世も末だな・・・」
美和は高杉晋作の父・高杉小忠太が呟く声を聞いた。
萩の藩庁は椋梨籐太によって牛耳られている。
息子の晋作の捜索を命じられた小忠太は会議から退席していた。
親友だった長井雅楽が切腹してから一年・・・長州は混乱の極みに陥っている。
(殿と若殿を幕府軍に差し出せとは・・・幕府の犬め・・・なりふりかまわぬか)
美和は小忠太の心の叫びを聞いた。
城から下がった小忠太の前に現れたのは美和の父・百合之助と兄の梅太郎だった。
身分の違う三人は会話をせずに符牒を交わす。
百合之助も梅太郎も長州藩・隠し目付である。
そして・・・高杉小忠太こそが・・・隠し目付頭なのである。
小忠太は百合之助に誘われ、路を変えた。
椋梨籐太の放った刺客たちは・・・獲物が姿を見せないことに苛立つ。
美和は・・・萩城下に侵入した見知らぬ忍びたちの気配を感じ取っている。
萩は混乱に乗じて紛れ込んだ忍びたちで満ちていた。
多くは椋梨籐太が呼び寄せた公儀隠密・・・幕府の犬たちである。
しかし・・・数も少なく目立たないながら・・・長州忍びでも、公儀隠密でもない忍びも混じっている。
それは・・・薩摩の西郷隆盛の放ったくぐり衆の草のものたちだった。
彼らは行商人や旅芸人に身をやつし・・・城下の動向を探索していた。
今も椋梨籐太の手のものたちが待ち伏せしている様子を・・・くぐり衆は観察しているのだった。
もちろん・・・それを知るのは美和一人である。
そこに・・・美和の兄・梅太郎に率いられた長州の隠し目付けが殺到していく。
美和の一番上の姉である千代とその夫の児玉祐之進の姿もある。
姉はくのいちであり、舅の児玉源太は鉄砲忍びであった。
松本村界隈のものはみな・・・長州の草のものなのである。
忍び装束の公儀隠密のものどもは殺気に気が付き、抜刀する。
しかし・・・吹き矢、手裏剣、毒矢などが四方から幕府の犬に襲いかかる。
「退け」
頭らしきものが命じた時、暗殺者の多くは絶命していた。
生き残ったものは屋敷の塀に飛びあがったところを鉄砲で撃たれる。
静寂が訪れる。
どこからともなく大八車を牽く人夫が現れた。
粗末な身なりのものたちは・・・死体を素早く片付ける。
暗闘の傷痕はたちまち消える。
その顛末をくぐり衆の忍びたちは無言で見つめている。
その冷徹な気配を美和は感じる。
長州における倒幕の戦いは・・・こうして幕をあけたのである。
公儀隠密・椋梨籐太は・・・奢り高ぶり・・・長州に潜む闇の一族を軽く見過ぎていた。
(憐れな・・・)
成果の報告を待ち・・・一人待つ政務役筆頭。
その命は風前の灯のように儚いものだった。
四年後には幕府は跡かたもなく消え果てる・・・美和はそれを知っていた。
兄・吉田松陰の見た夢は・・・恐ろしいほどに現実となっていく・・・。
美和はようやく・・・それを悟った。
関連するキッドのブログ→第29話のレビュー
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コメント
かつて天地人や江を見た際
「これ以上ひどいドラマはもうないだろ」と
思っていたんですが
それを超えるドラマってのはできるんだなと
人間は反省しても忘れてしまう生き物なんだと
思ってしまう今日この頃
女性視点をいれて、女性心理もいれたけど
史実もいれたい、この人も見せたいとか
したもんで
いろんなエピソードてんこもりで
これほどドラマとして収拾がつかないというのも
ほんとすごいですね
ちなみに毛利元徳を演じる三浦貴大さんを見てて
そういやぁ前作で毛利輝元を演じてたのは
三浦浩一さんの息子さんだったなとというのを
さっき思い出しました; ̄∇ ̄ゞ
投稿: ikasama4 | 2015年7月29日 (水) 01時06分
時代劇、歴史ドラマ、そして大河ドラマ・・・。
どんなものにも「型」はございますよね。
そういうものを打破しようとして・・・
木端微塵の様相を呈しておりますな・・・。
なんで・・・三人も脚本家がいるのか・・・。
つまり・・・プロデューサーがそれでいいと思ったわけで・・・。
オリジナルの歴史ドラマをかける
力量というのは・・・脚本家の資質にも関係してきます。
今回もストーリーとしては成立していますが・・・。
「幕末」の魂が抜けおちている感じですねえ。
「天地人」も「江」も「戦国」の魂が抜けおちていたと言えるでしょう。
時代ものの小説家が・・・
コツコツと築きあげていく歴史絵巻。
そういう史実オンリーとは別の魂の世界・・・。
それに惚れこんで脚色していく・・・。
そういうスタイルをもう一度見つめ直してほしいものです。
てんこもりにしておけば
なんとかなるというのは・・・
結局・・・不勉強の極みですからな・・・。
脚本家にも・・・。
どうにもならないタイプ。
原作があればなんとかするタイプ。
オリジナルで圧倒できるタイプの三段階はございます。
その見極めができていない・・・。
プロデューサーが元凶と考える今日この頃でございます。
ふふふ・・・二世タレントの起用も・・・。
育ちの良さによりかかるだけでは
なんだかなあ・・・と思う次第でございまする。
投稿: キッド | 2015年7月29日 (水) 04時08分