きみがためつくせやつくせおのがこのいのちひとつをなきものにして(生田絵梨花)
元治元年(1864年)十一月十一日。
徳山藩預かりとなっていた益田親施、国司親相の両家老が切腹を命じられる。
益田氏は長州藩永代家老の家柄である。禁門の変の敗軍の将となった親施は益田家の第三十三代であった。
国司親相は高洲氏の出自で五千六百石の国司迪徳の養子となった。長井雅楽の切腹検視役正使を務めた男である。京都から長州に帰還したのは・・・最後に腹を切る覚悟であったと伝えられる。享年23・・・。その辞世はストレートすぎて・・・泣ける。
二人とも藩主・毛利敬親から親の字を偏諱として授かっている。
十一月十二日。
福原元僴は岩国藩において切腹。
福原氏は毛利元就の生母の実家であり、益田氏と同じく永代家老の家柄である。
家臣としては名門中の名門の出身であった。
幕府軍の要求に応じ・・・三家老が切腹して果てたのは・・・すべて・・・藩のため・・・藩主のためである。
それが江戸時代の武士というものだからである。
で、『花燃ゆ・第29回』(NHK総合20150719PM8~)脚本・宮村優子、演出・安達もじりを見た。例によってシナリオに沿ったレビューはikasama4様を推奨します。今回はついにキター!・・・石橋の杏奈氏が演じる長州藩奥御殿御次・お鞠の描き下ろしイラスト大公開でお得でございます。実に凛としてますな。今回の演出家は結構・・・狙ってくるタイプですからな・・・最後に平成時代に転生して初森ベマーズとなる側室候補生全員集合場面では・・・クローン軍団かよっ・・・と一同大爆笑でございましたぞ~。まあ・・・本編の方はダイジェストにつぐダイジェストでアレでしたが・・・聞多暗殺未遂シーンがあり・・・不死身人間ファンとしては感涙でございました・・・。妄想するぞ、妄想するぞ、妄想するぞ・・・でございます。
元治元年(1864年)七月、朝廷は幕府へ対して長州追討の勅命を発す。八月、尾張藩主・徳川慶勝が征長総督に任じられる。十月、慶勝は上洛して天皇に拝謁・・・スローペースである。この間・・・九月に・・・薩摩藩は長州藩の準支藩である岩国藩の吉川監物経幹と事前交渉を開始する。吉川監物は恭順姿勢を示し・・・長州藩に降伏を勧告する役目を担う。征長軍の軍事顧問である西郷吉之助は大軍勢による軍事的圧力により「戦わずして勝つ」方針を慶勝に進言し、慶勝の同意を得ていた。吉川監物は山口舘にて長州藩に幕府の要求を伝える。これに対し、下関に割拠する諸隊は武備恭順(武装解除に応じない)を主張、椋梨籐太ら謝罪恭順(無条件降伏)を主張する派閥は主導権を得るため、九月二十五日、井上聞多を暗殺未遂。同日、免職された周布政之助は切腹する。これによって・・・藩論は謝罪恭順に傾き、恭順の意を示すために藩主親子の萩城帰還が決定する。高杉晋作は父・小忠太か謹慎を命じられたと知ると直後に出奔する。長州藩・椋梨籐太は吉川監物とともに戦犯である三家老の首を征長総督に届け出る。西郷吉之助の謀略は圧倒的な勝利をおさめたのである。
「武装解除に応じれば・・・もはや長州に未来はありません」
井上聞多は御前会議で熱弁を振るう。
それを無表情に見つめる椋梨籐太の心を美和は読んでいた。
(この期におよんで・・・無用なことを・・・)
籐太は徹底抗戦など無意味だと見切っていた。
(攘夷の戦も馬鹿げていたが・・・禁門の戦も愚かなことだ・・・このままでは長州は滅びる)
しかし・・・籐太がさほど長州の行く末を案じていないことも美和は読みとっている。
(長州はひたすら恭順し・・・幕命に従う他はない・・・最終的には・・・東の僻地で・・・小大名になるだろう・・・)
籐太の思考は・・・長州藩の家臣というよりは・・・幕臣に近いものであった。
小早川隆景死後に毛利氏家臣となった小早川氏庶流椋梨氏の血をひく籐太は歴代の草のもの・・・公儀隠密なのである。
その正体を隠し・・・萩に潜む・・・名門派閥を操る籐太は成り上がり者を憎む上士たちをけしかけていた。
(すべては・・・実力主義の人材登用の弊害でござろう・・・そういうものを排除しなければ・・・長州藩は滅びますぞ・・・)
籐太は上士たちの主力である先鋒隊による井上聞多暗殺を画策する。
山口屋敷を出て・・・高杉晋作の潜む小屋へ出向いた聞多は・・・殺気を感じる。
「なんだ・・・俺の口を封じにきおったか・・・」
「問答無用」
十人の忍び装束の刺客が聞多を包囲する。
聞多は抜刀する。
その瞬間、背中に矢が突き刺さる。
「痛いではないか・・・背後から・・・飛び道具とは・・・卑怯な」
聞多の眉間に矢が尽き立つ。
「む」
男たちは殺到した。
後ろから前から・・・そして左右から・・・聞多は滅多切りとなる。
さらに前後から槍が繰り出される。
聞多は心臓を一突きにされる。
腕達者な刺客は突いた槍を引きぬく。
鮮血がほとばしり・・・聞多は昏倒した。
男たちは聞多にとどめを指し・・・その息が絶えたことを確認すると・・・無言で立ち去って行く。
やがて・・・闇が聞多を隠して行った。
そこへ・・・乞食に変装した高杉晋作がやってくる。
「お・・・これは・・・聞多・・・」
周辺に漂う血の匂いに・・・晋作は思わず合掌する。
「成仏しろよ・・・」
「誰がだ・・・」
晋作は唖然とした。
聞多の眉間を貫いていた矢がパサリと音を立てて地面に落ちた。
聞多はむっくりと起きあがった。
「いててて・・・・」
「・・・」
「おい・・・晋作・・・手を貸してくれ・・・」
「・・・お前・・・不死身という噂は本当だったのか・・・」
「さあ・・・とにかく・・・まだ死んだことはないな・・・」
聞多は闇の中でニヤリと笑う・・・。
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