拝啓、父上様、籠の中の鳥は解き放たれてまだうまく飛べないけどいつかは風を切って・・・(石橋杏奈)
高杉晋作は英国、仏国、米国、蘭国の四カ国連合艦隊との和議交渉のために野山獄から解放され、荻から下関へと向う。
藩主・毛利敬親の命により、家老・宍戸備前の養子となり、宍戸刑馬を名乗る。
連合艦隊旗艦・ユーリアラス号の艦内において講和のための談判を行う。
晋作は次の三点について合意した。
一、戦闘は朝廷および幕府の命令によって行われたものであり、賠償の責任は長州にあらず。
一、領土はすべて皇室の治めるものであり、他国への割譲・貸借について長州の決するところにあらず。
一、下関は万国に向けて開港す。
連合艦隊としては下関を通過して、入港し、便宜を図ってもらえればそれでよく、賠償金を幕府から得ることは道理であり、租借交渉は棚上げでも構わない・・・後の世から見ればパーフェクトな交渉結果である。
天才なんだな・・・。
進発(先制攻撃)を叫んだものは玉砕し、割拠派(篭城)は焦土作戦を主張、恭順派(降伏開城)はひたすら謝罪工作・・・。
混乱する藩の上下の中で・・・一人、高杉晋作(宍戸刑馬)だけが覚醒しているかのようである。
晋作は山口で藩主に仕える父親に文を認める。
「籠の鳥であった私が今、大空を飛び、どこへ行くかも定かではなく、迷いつつ勤めを果たそうとあがいております。愚か者であろうと志し、ここまで無我夢中で生きて来た私ですが・・・藩命により馬関応接役を仰せ付かり、なんとかその任をはたしましたことをご報告いたします」
父は晋作を溺愛していた。晋作は狂いつつその愛に応えようとしていた。
で、『花燃ゆ・第28回』(NHK総合20150712PM8~)脚本・宮村優子、演出・渡邊良雄を見た。例によってシナリオに沿ったレビューはikasama4様を推奨します。今回は長州藩・第12代藩主・毛利斉広の娘にして第13代藩主・毛利敬親の正室・都美子の描き下ろしイラスト大公開でお得でございます。まあ・・・なんだかんだ松阪慶子さんが出てくるだけで「大河」っぽくはなりますけどねえ。なんだろう・・・この各所から立ち上る民放時代劇っぽい安普請のオーラは・・・。なんだかんだ・・・説明不足なんですよねえ。都美姫様がどれだけ高貴かわからないと・・・主人公が結構・・・大事にされてる感じがわからないわけで・・・女同志のいじめを描きたいだけで・・・それ・・・主人公の不遇捏造・・・をやっちゃうと完全に本末転倒ですよねえ。長州藩の派閥抗争の複雑さと・・・下剋上の流れ・・・そして国難に際して天才たちが躍動する・・・それがあっての幕末長州でございますのに・・・。未亡人になったために・・・奥勤めの見習いとなる・・・才能があるので史実通り、後継者夫人のお付になる・・・こういう自然な流れでいいのになあ・・・。
元治元年(1864年)八月五日、四カ国艦隊下関砲撃。守備側は壊滅し、各砲台は艦隊の上陸兵により占拠される。野山獄から解放され、萩城下高杉屋敷で謹慎中の高杉晋作は英国より帰国した伊藤俊輔、井上馨らと共に和平交渉にあたることを藩主・毛利敬親より命じられ、クーパー艦長と談判を開始。長州側が「攘夷実施の命令書」の写しを提出したことにより、賠償責任が長州から幕府に責任転嫁されることになる。禁門の変の後、京に潜伏した桂小五郎は出石に逃亡。四カ国艦隊との和平が成立すると、藩内は幕府への徹底抗戦を叫ぶ正義派(攘夷派)と幕府への恭順を掲げる保守派(俗論派)が対立。正義派は下関など戦場に拡散したために、山口藩庁では一時期、椋梨藤太に保守派が主導権を握る。保守派にとって幕府に対立する指導者的立場である高杉は政敵であり、正義派にとっては下関開港に同意した高杉は裏切り者であった。これにより高杉晋作は両者の暗殺対象となり、潜伏を余儀なくされる。七月の長州追討の勅命を受けて幕府は八月、征長総督を尾張藩の前々藩主である徳川慶勝に決する。九月、周布政之助、切腹。十月、大坂城における軍議で征長軍は十一月開戦を決定する。高杉晋作は萩より脱走。椋梨籐太が政務役となる。
西国街道における山口の小郡から下関の長府までは山中、船木、厚狭市、吉田、小月の五つの宿場町を通過する。一日一宿の旅程ならば六日を要する。
隠し目付け配下として、山口の奥御殿に奉公に登った久坂文は侍女見習いとして「みわ」の名を授かった。
藩主の後継者で養子の毛利元徳の正室である銀姫はこの年二十二歳で懐妊していた。
みわは銀姫のお付の一人となったのである。
銀姫は長府藩主毛利元運の二女で夫の元徳と同じく、藩主夫妻の養女となっている。
藩主夫人の都美姫は先代藩主の長女である。
そして、長州のくのいちの上忍であった。
銀姫を通じて、都美姫に呼び出されたみわは奥の間の庭に平伏した。
「そなたが・・・吉田松陰の妹で・・・久坂玄瑞の寡婦か・・・」
「みわでございます」
「ふふふ・・・佳い名であろう・・・毛利に命を捧げたものの縁者として妾が贈りし名じゃ」
「お方様が・・・」
「そなた・・・高杉晋作とも面識があろうな・・・」
「高杉様は兄の塾の塾生でございましたので・・・」
「これより・・・殿の密書を下関の高杉に届けてもらう」
「私が・・・」
「腕利きのくのいちを護衛につける・・・まりと申すものじゃ」
音もなく・・・くのいちのまりがみわの背後に畏まる。
「お見知りおきを・・・」
二人のくのいちは六日の行程を一昼夜で駆け抜ける。
高杉晋作は・・・一回目の交渉を終えて下関の遊郭に籠っていた。
「高杉様・・・」
「お・・・殿の使いは・・・ふみ女か・・・」
「こんなところでのんびりなさっていてよろしいのですか」
「馬鹿どもから・・・命を狙われている」
「高杉様のお命を・・・」
「黒船の砲撃から命からがら逃げ出した匹夫どもが・・・俺の交渉内容が気に食わんと息まいておるのだ・・・脱力するわ・・・」
もちろん・・・下関の情勢は読心の術を心得るみわにはお見通しである。
「殿からの密書をお預かりしています」
「そうか・・・お墨付きがきたか・・・」
「これは・・・お墨付きでございましたか」
「全権委任状じゃ・・・俺の答えが殿の答えということでないと・・・まとまるものもまとまらん・・・」
「まとまるのですか・・・」
「まとめるのさ・・・今はとにかく・・・敵の数を減らさねばならん・・・四面楚歌じゃからの」
「・・・」
「久坂のことは・・・残念じゃった・・・」
「武士でございますから・・・」
「・・・そうか」
下関では蝉が鳴いていた。
関連するキッドのブログ→第27話のレビュー
| 固定リンク
« ど根性ガエル(満島ひかり)ひろし、三十歳独身(松山ケンイチ)永遠のマドンナにはなれない(前田敦子) | トップページ | ミサミサ、君のためなら殺せる(窪田正孝)ニアです・・・そしてメロです(優希美青) »
コメント
武芸のたしなみのある奥女中で、なぜか下関までの道中と宿場に詳しい鞠。ぜひ木曜時代劇でやってほしいものです。
雅も忍者の疑いあり……入山法子じゃなかった江口のりこも忍者か……。銀粉蝶はもちろん忍者だし……。って、山田風太郎かーい!((c)人生という名のコントLIFE 石橋杏奈ツッコミ芸)。
ていうか、高杉と文が見つめ合うシーンで感動できるというのは朝ドラ見てきてよかったなーと思える数分でした。
なんだかんだいって、時代劇系辛口批評サイトがすなおに褒めずに文章の半分くらいまでストーリーに触れずにレビューを書いていたし、普通に面白かった今回でした。
やっぱりゲームバランスというかそういうものがあるから下関の会談はあれで良しと。ただ小田村様があそこであれこれ説明してしまうのはまた今回もだめなのか、「あほなんかー」と思って危うかった。
投稿: 幻灯機 | 2015年7月14日 (火) 09時06分
大島脚本より宮村脚本の方が
少し陰影があって盛り返しますな・・・。
まあ・・・どうしても木曜日にやればいいのに・・・
と思わせる本作でございます。
基本的にすべての武士は忍者ですし
武士の女はみんな!くのいちだよ!なので
今回は王道展開でしたな。
「なぜ・・・私に・・・」
「腕がたつ・・・くのいちと聞いておる」
これで問題ありません。
下忍・江口のりこが
顔をつぶして死ぬところがみたい・・・。
山田風太郎先生、万歳!
ふふふ・・・陽子とその夫ですな。
行脚というのは
徒歩移動が前提の幕末において
絶対に必要な描写なんですな・・・。
それだけで現代じゃないと一目瞭然なんですものねえ。
その上で船というものもある・・・そういう感じも
欲しいですよねえ。
魔王・高杉晋作ですからな。
やはり・・・晋作には信長の影がある。
龍馬には光秀の影がある。
そして博文には秀吉の影が・・・。
じゃあ・・・家康は・・・。
ここが一番難しいところ・・・。
誰なんでしょうねえ・・・明治維新の本当の勝者は・・・。
投稿: キッド | 2015年7月14日 (火) 11時32分