そして今私は思っています(松山ケンイチ)そうやっていつまでも(前田敦子)主役気分でか(満島ひかり)
人それぞれに事情がある。
教え子に自殺されて一番ショックなのは担任教師だ。
わが子に自殺されて一番責任があるのは親だ。
そのあたりの事情に対する配慮が・・・赤の他人に過ぎない一部マス・メディアの人間に不足していると直感する。
もちろん・・・直感なんて一種の思いこみである。
だが・・・自殺する特殊な子供の問題を共有化しようとしても・・・そこにあるのは虚無だけだと考える。
もちろん・・・誰かがなんらかの理由で死の淵の前でとどまることもあるだろう。
しかし・・・自殺者の死の責任を追及するのは虚しいことだ。
大切なのは・・・その前に一歩を踏み出す人間を抱きとめる人間がいるか・・・いないかの問題なのである。
いじめられて自分を殺すような人間が他の誰かを殺さなくてよかったという考え方もあるのだから。
息子の死の責任を誰かに転嫁する前に・・・省みることがあるだろう・・・。
もう・・・そっとしといてやれ・・・。
察しがわるいにも程がある・・・。
で、『ど根性ガエル・第3回』(日本テレビ20150725PM9~)原作・吉沢やすみ、脚本・岡田惠和、演出・狩山俊輔を見た。ど根性で魂魄がこの世にとどまったカエルの話である。しかし・・・その残留思念も時の彼方に消え果てようとしているのだ。少年マンガの主人公として造形された主人公のひろし(松山ケンイチ)は青年となって・・・現実に直面し・・・懊悩する。ピョン吉(満島ひかり)にはその複雑な気持ちはわからない。さっさと少女から大人の女性となった京子ちゃん(前田敦子)は・・・ひろしに美点を見出しつつ・・・男の子から男へとチェンジすることができない幼馴染を歯がゆく感じるのだった。しかし・・・バツ一なので乙女ではないわけだが・・・幻想の乙女心は揺れるのである。
ひろしの母ちゃん(薬師丸ひろ子)は・・・息子の懊悩を諦観しつつ・・・我が子ゆえに期待もする。
「どうしても・・・大人にならなければいけないのか」・・・ひろしの悩みは深い。
少年マンガの主人公に生まれたのに・・・なんで大人に・・・。
少年マンガの読者たちの胸を熱くさせる苦悩なんだなあ・・・。
成り行きで・・・ゴリラパンへの就職を決めたひろし・・・。
根底にあるのは・・・ゴリライモこと五利良イモ太郎(新井浩文)へのライバル意識である。
主人公として・・・ゴリライモにだけは敗北できないのだ。
ゴリライモに屈服すれば・・・もはや主役とは言えない・・・ひろしには危機感がある。
ゴリラパンに就職した以上・・・いつか主従は逆転し・・・ひろしが社長になる必要があるのだ。
しかし・・・何をやってもゴリラパンには勝てないひろしだった。
「ゴ」の字を作ることも・・・小麦粉の運搬も・・・ゴリライモの技量がひろしを上回る。
遅刻しないために・・・夜の間に工場に忍び込もうとしたひろしは・・・不審者として警察に逮捕されてしまう。
「先輩、少年マンガの主人公としては立派でやんすが・・・社会人としてはNGでやんす」
警官の五郎(勝地涼)も困惑するのだった。
そんなひろしの唯一の理解者は京子のおばあちゃん(白石加代子)なのだ。
入荷直後の酢イカを購入した二人は意気投合するのだった。
「人が動くとかいて働くでしょう・・・じっとなんてしてられねえよ」
「私もお嬢様育ちだから・・・労働とは縁がないのよねえ」
帰宅した京子はひろしの存在に気がつかず着がえとするが・・・露出はなしである。
これ・・・二回続いたから・・・次は露出を期待していいよね。
どこに期待してんだよっ。
そんな・・・ひろしの心の葛藤に気配りをするゴリライモ。
営業にひろしを連れ出すのだった。
二人でゴリラパンを完売するのである。
「おまえ・・・変わったなあ・・・昔は店の手伝いなんてしなかったじゃないか」
「そうさ・・・パン屋なんて・・・基本的にお人好しっぽい職業だし・・・俺のキャラクターとは似合わない。俺は・・・パン屋を馬鹿にしてたんだ。でも・・・親父が倒れて・・・仕方なく母ちゃんの手伝いをするようになって・・・俺は気がついたんだ。親父と母ちゃんは・・・パン屋で働いて・・・その金で・・・俺は育ったんだってな・・・。つまり・・・パン屋をバカにするってことは・・・自分をバカにするのと同じことなんだ・・・ってな。それから・・・俺は仕事に熱中したよ・・・どうせやるからには・・・日本一・・・世界一のパン屋になろうって思ったんだ・・・」
「・・・じゃなんで・・・政治家に立候補してんだよ」
「中小企業は大変なんだ・・・俺の親父や母ちゃんもいろいろと苦労してた・・・そういう人たちを支える仕事も大切だと思ったからだ」
「・・・」
ひろしは・・・ゴリライモが・・・あまりに善良で・・・優秀な人間になっていて・・・闘志を失うのだった。
人間として・・・太刀打ちできないのである。
ゴリライモを見習って真人間になろうとするひろしと・・・少年マンガの主人公としてのひろしは激しく葛藤するのである。
そういう・・・ひろしの心理を理解できないまま・・・元気のないひろしを案ずるピョン吉。
ピョン吉は・・・ひろしを励ます就職祝いの会を催すことにする。
教師生活四十一年目になっている町田校長(でんでん)、梅さん(光石研)のプロポーズを待ち続けて十六年、四十歳になってしまったよし子先生(白羽ゆり)もかけつけて・・・乾杯する一同。
「け・・・健康ランドに・・・」というお約束は達成するが・・・打ちのめされたひろしは鬱屈して・・・ゴリライモにからむ。
「あんたは・・・立派だよ・・・だけど・・・俺は・・・そんな人生まっぴらだね」
ひろしにも立派になってもらいたいピョン吉は思わず・・・ひろしと喧嘩を始めてしまう。
就職祝いは修羅場と化すのだった。
仕事に行かず・・・街をうろつく・・・ひろし。
そして・・・ひろしの最初の就職の時の給料で飼った母ちゃんのがま口が・・・すっかりくたびれていることに気がつく。
ひろしは・・・ピョン吉に頼みこむ。
「明日・・・一緒に工場に行ってくれ・・・」
「おいらが手伝うのは反則だろう・・・」
「いや・・・俺がサボらないように見張ってくれ」
「ひろし・・・」
ひろしは我武者羅に働きだす。
「ひろし・・・頑張れ・・・怠けるな」
「おうっ」
ピョン吉はひろしを励ます。
その目からは涙が・・・。
「なんだい・・・ピョン吉泣いたりして」
「うれしいんだよ・・・ひろしの役に立っていることが・・・うれしいと涙が出るんだねえ」
「・・・」
そして・・・給料日・・・ひろしは・・・母ちゃんに新しいサイフを買うのだった。
「ピョン吉・・・お前には焼き肉おごってやるよ」
「本当かい」
ピョン吉は焼き肉のタレで染まるのだった。
「でも・・・これで仕事はやめだ・・・」
「え」
「だって・・・もう・・・モチベーションが・・・」
「なんだよ・・・それ・・・」
ひろしには・・・まだ・・・主役の意地があるのだった。
ゴリライモの部下で一生を終えるわけにはいかないのだった。
深夜・・・母ちゃんは・・・ピョン吉の異常を発見する。
落魄し・・・崩れかかるピョン吉の・・・「いのち」・・・。
「母ちゃん・・・」
「いいんだよ・・・」
母ちゃんは優しくピョン吉を撫でるのだった。
ひろし・・・ピョン吉がいなくなったらどうするつもりだ・・・。
だって・・・「ど根性ガエル」の本当の主人公はピ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
失われたカエルを求めて街を彷徨うひろし・・・哀愁がすぎるぜ・・・。
何かが胸に突き刺さる・・・。
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コメント
さじ加減が…さじ加減が難しいのでありますね。大人ヒロシは脚本段階ではヘンではない(適度にマンガ的)のかもしれないけれど松山ケンイチが演じるとちょっとやりすぎやろということになってしまう感じ。
でも全体を貫く切なさがそれを補って余りありますね……。
投稿: 幻灯機 | 2015年7月26日 (日) 19時59分
✪マジックランタン✪~幻灯機様、いらっしゃいませ~✪マジックランタン✪
オトナヒロシとコドモヒロシの狭間で
世にも奇妙なヒロシがのたうちまわる。
松ケンはそういう存在を軽妙に演じていると
考えますが・・・いかがでしょうか。
エンディングで・・・ピョン吉を求めて
彷徨うひろし・・・。
哀愁です・・・あまりに哀愁です。
でも・・・失われたものは・・・二度と戻らないわけで・・・。
投稿: キッド | 2015年7月26日 (日) 21時00分