壁に耳あり(北川景子)ただいま盗聴中(川口春奈)発覚しなければお咎めなし(井浦新)
罪悪感とか罪の意識というものを最近はどう考えているのだろうか。
無人の交差点で赤信号を無視する人間が感じる心の揺らぎというようなものが今も常識としてあるのかどうか・・・謎である。
赤信号、みんなで渡ればこわくないという言葉が生まれた時、心の在り方は大きく変わったような気がする。
キリスト教などの一神教では神による人間支配が根底にある。
宗教には戒律があり、ルールである以上、犯してはならないものである。
それを破るということは神に逆らうことになる。
汝、殺すなかれと定められていれば・・・殺すことには心理的抵抗が生じる。
もちろん・・・多くの人間は殺すという面倒な行為に最初から積極的ではないという考え方もある。
ただし・・・「一度死んでみろ」が口癖の人間も多い。
とにかく・・・ルールだから・・・殺さない人間は・・・発覚しなければ殺す人間である。
たたりとか・・・のろいとか・・・そういうものも恐ろしいが・・・殺そうと思えば殺せる人間も恐ろしい。
しかも・・・殺しても心が揺るがないとなれば・・・それは・・・一種の超越者なのだ。
うっかり・・・気を許せば・・・とんでもない目にあわされる。
だから・・・世界は一寸先が暗闇なのである。
で、『探偵の探偵・第6回』(フジテレビ20150813PM10~)原作・松岡圭祐、脚本・徳永友一、演出・品田俊介を見た。紗崎玲奈(北川景子)の妹・咲良(芳根京子)の居所をストーカーの殺人鬼・岡尾芯也(岡田義徳)に売った探偵「死神」・・・。その正体は謎である。兇悪な結果を導いた死神だが・・・その行為は「情報提供」にすぎない。暴力沙汰とは違い情報提供者のプロフィールは混沌としている。老若男女・・・誰もが死神になれる。探偵業者のプロとして・・・いかにも怪しい・・・「スマ・リサーチ」の須磨社長(井浦新)から・・・いかにも素人同然の峰森琴葉(川口春奈)まで・・・あらゆる人間に可能性がある。
琴葉の姉である織田彩音(中村ゆり)が「暴力衝動を解放する女」という秘めた顔を持っていたように・・・羊の皮をかぶった狼はどこにでも潜んでいる。
優しかった姉が・・・兇悪な素顔を隠していたという件はこの物語の一つの象徴である。
おそらく・・・死神の正体は・・・それほど恐ろしくない存在であるような気がする。
恐ろしいことをする人が恐ろしい人であってほしい。
しかし・・・「ふつうの人でした」という街の声は絶えないのだから。
捜査一課の窪塚刑事(三浦貴大)と長谷部刑事(渋谷謙人)は・・・DVシェルターから失踪した芦原遥香(西原亜希)に暴力をふるった男・升瀬淳史(中野裕太)を訪ね、玲奈と琴葉に遭遇する。
「男はいたの?」
「留守だった」
「そう・・・」
「お前が何をする気なのか知らないが・・・あの時・・・お前に協力したのは・・・人質の安全を優先させたからだ・・・私も人の親だからな・・・」
「あなたが・・・まともな刑事でよかったわ」
「しかし・・・今度・・・お前が法を破れば見逃すことはできないぞ」
「私は・・・順法精神でいっぱいの探偵よ・・・その証拠に前科なしよ」
「・・・」
刑事たちが去ると・・・玲奈は無許可で男の郵便受けを解錠し中身を押収する。
法令順守をすりこまれた琴葉は良心の呵責を感じる。
「男が帰ってきたら・・・通報されてしまうのでは?」
しかし、玲奈は男の妻を装い・・・文書の再送付を請求するのだった。
「素晴らしいインターネットの世界では個人情報は一端が判明すれば・・・まるで無防備になる」
「・・・」
「しかも・・・その間には優柔不断な人間という要素が加わるの」
「しかし・・・それは犯罪じゃないんですか」
「DV加害者の情報なんて・・・すべて公開されるべきなのよ」
「・・・」
「しかし・・・私は公開したりするわけじゃない・・・必要な情報を得るだけよ」
「悲劇を・・・避けるために」
「私は・・・溺れている人間がいれば・・・手を差し伸べる・・・ただそれだけのこと」
「私は何をすればいいですか」
「社に戻って・・・男の利用する金融機関をローラー作戦で見つけて・・・それから・・・探偵課に頼んで・・・その他のDV加害者たちの動向を探ってもらって・・・」
「わかりました」
その頃、「スマ・リサーチ」には刑事たちの上司・坂東係長(相島一之)が訪問していた。
「久しぶりだな」
「ベテラン警部殿がわざわざお越しとは・・・」
「結構・・・儲かっているようじゃないか」
「探偵業は今では正規な事業ですからそれなりに・・・」
「指定暴力団が看板おろしたからって・・・中身はあまり変わらんぞ」
「我が社は合法的に運営しています」
「獅靱会のような・・・暴力団の依頼はもう受けないか・・・」
「・・・」
「もっとも・・・獅靱会も今や合法的な企業だ・・・汚れ仕事はハングレまかせさ」
「指定されていない暴力団は・・・一般市民扱いですか・・・」
「こっちは・・・探偵だって市民として扱ってやってるよ」
「恐縮です」
「お前らの後釜は・・・野放図とかいう奴らで・・・やりたい放題だよ・・・知ってるか」
「初耳です」
「とにかく・・・玲奈という女探偵に忠告してやれ・・・警察をなめるなと」
「探偵業務は基本的に自己責任ですから・・・この盗撮カメラはお返しします」
「・・・おっと・・・いつ・・・鞄から落ちたんだ」
「手ぶらですよ・・・警部殿」
事務所に戻ってきた琴葉は・・・二人の会話を盗み聞きしていた。
須磨社長と獅靱会・・・悪徳探偵の阿比留もそのことについて仄めかしていた。
琴葉は・・・野放図の名を記憶に刻みこむ。
琴葉もまた・・・探偵としての資質を開花させようとしていた。
「男の口座は東京第一銀行です・・・そこに預金が300万円あります。男は家賃を滞納していますが・・・その金だけは手をつけていません」
「報酬・・・のために準備された金ということね」
「スマ・リサーチ」に琴葉の姉がやってくる。
「こんな危険な仕事はやめて・・・私のところへ戻りなさい」
「いやよ・・・姉さんは・・・私を飼いたいだけなんでしょう」
「・・・」
「姉さんが私を支配しようとしていたこと・・・私はもう・・・わかったの」
「何を言ってるの・・・話が通じないわ」
「姉さんは・・・自分の都合のいい話しかしないものね」
琴葉は姉をエレベーターに叩きこんだ。
男の携帯番号が判明したために・・・玲奈は電話をかける。
「東京第一銀行の・・・花咲と申します。お客様の口座に裁判所からの差し押さえ請求が来ています・・・このままでは口座が凍結される可能性がございます」
「なんだって・・・」
「必要書類にご署名いただけると・・・執行猶予が可能ですが・・・いかがなされますか」
「それでいい」
「では・・・ご自宅に書類を郵送します」
「いや・・・今・・・外なんだ・・・池袋駅前ホテルに頼む」
「畏まりました」
玲奈は男の妻を装い、結婚記念日のサプライズを口実に隣室にチェックインするのだった。
カード・キーのトリックを使って男の部屋に侵入した玲奈は男のスマホのメールをチェックし、「野放図」の名を発見する。
玲奈は男のスマホを操作し、メールを同期する設定をプログラムする。
そして・・・男の室内で「死神の調査報告書」を発見する。
男の隣室で玲奈と琴葉は合流する。
琴葉の持ち込んだ壁面設置型収音器で隣室を盗聴する二人。
「あの男は・・・死神の調査報告書を持っていた・・・」
「野放図はハングレ集団です」
「男は何かを待っている・・・」
「野放図は男たちを池袋にあつめているようです」
「男たちを集めて・・・女たちを宛がうか」
「動きました」
「私は仕掛けたGPSで後を追う・・・あなたは寮に戻って」
「一緒に行きます」
「今度の相手は・・・油断できないの・・・同じ失敗を繰り返す気はないわ」
「姉のことを許してください」
「いいのよ・・・人間はみんな・・・獣だから」
狩人は男を追跡する。
琴葉は・・・内通者がいる可能性のある探偵課への連絡を禁じられ・・・窪塚を頼るのだった。
窪塚は裏サイトの情報から背後に野放図が絡んでいることを突き止めたが・・・手掛かりを失っていた。
「なんだって・・・あの女は・・・なんて手が早いんだ」
「警察じゃなくて・・・探偵だからです」
「なぜ・・・俺に頼ってきた」
「私がただの足手まといだから・・・」
「・・・」
「玲奈先輩を助けてください・・・」
走りだす窪塚刑事。
男たちの集会場。一人の女が姿を見せる。
「野放図のマリコです・・・彼女たちはとある場所で皆さんをお待ちです・・・入金をお願いします」
しかし・・・銀行預金に関するトラブルを口にした男によって・・・野放図は警戒を強める。
室内を盗聴していた玲奈は発見され・・・逃走するが・・・乱闘の末・・・野放図の手に落ちる。
ガスによって意識を失う玲奈。
すべては闇に包まれる・・・。
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