傷つけたかったのは誰の心(堤真一)個人的事情の犯罪(戸田恵梨香)女の敵は女(中山忍)
暗いサラリーマンの日常である。
クスリの話なのにクスリとも笑わない男と女たち。
ギスギスした職場環境ではハラスメント(嫌がらせ)が日常化し、もはや嫌味さえ感じられない。
緊張に耐えられない人間は笑いが欲しくて機密漏洩してしまいそうだ。
皮肉な結末にはそこそこのユーモアが潜んでいるのだが・・・全体のトーンがそれを押しつぶす。
最初からすべてを見抜いている主人公は・・・あのミステリを彷彿とさせる。
ヒロインはまさに「相棒」である。
冷徹な主人公に対し、少し、熱血で・・・感傷的で・・・甘さの残るキャラクター設定。
ヒロインのお相手に・・・裏の顔がある・・・となるとますます・・・そういう感じである。
そうなるとサブキャラクターたちがもう少し、エキセントリックでもよかった気がする。
まあ・・・「カメヤマ~」とか「ヒマか」とか「お前は」とか「お調べの件ですが」とか・・・名物を生むにはそれなりに時間が必要なわけですが・・・仕掛けてみないことにはね。
で、『リスクの神様・第6回』(フジテレビ20150819PM10~)脚本・橋本裕志、演出・菊川誠を見た。長期的プロジェクトはひとつのリスクである。「成果」を得るために「投資した時間と金」が必ずしも回収されるとは限らないからだ。画期的な「製品」が生み出される裏には「失敗と挫折」が死屍累々と横たわる。結局、人間はギャンブルに溺れる。「仕事」なのか「遊び」なのかは気分の問題なのである。
サンライズ物産と新陽薬品が共同開発中の「花粉症治療新薬」が完成し、サンライズ物産薬品部主任の原田(満島真之介)は新陽薬品の新薬開発プロジェクトリーダーの望月貴子(中山忍)は喜びを分かち合う。
しかし、新薬の特許出願は受理されなかった。
ライバル会社のヒューマン製薬が同じ製法ですでに特許を出願していたのである。
恋人の神狩かおり(戸田恵梨香)を頼って危機対策室に駆け込む原田だった。
サンライズ物産危機対策室長・西行寺智(堤真一)は「機密情報漏洩」と断定し、新陽薬品の進藤社長(中丸新将)に内部調査の開始を進言するのだった。
「調査の協力者として望月くんを推薦する・・・女だと甘くみてはいかんよ・・・彼女は優秀な研究員だ」
匂い立つ・・・時代を超越した・・・進藤社長の男尊女卑思考。
プロジェクト総責任者・大鷹取締役(筒井真理子)は唯一の女性役員だったが・・・調査は大鷹にも秘密裏に行われることになる。
大鷹も容疑者の一人なのだ。
非常事態を知らぬまま・・・望月に声をかける大鷹・・・。
「御苦労様・・・この間の日経ビジネスのインタビュー記事・・・よかったけど・・・少し、女を売りにしすぎたわね」
「女を売りにしない」のが大鷹の口癖であり、男女同権主義者にありがちな女性蔑視が匂い立つのだった。
男性社長からは「女であること」を馬鹿にされ、女性役員からは「女であること」を否定される・・・迫害される望月の立場に・・・一部お茶の間は「犯人」が誰か・・・わかってしまう仕組みである。
なにしろ・・・演じているのが白石美帆(37)でも中山美穂(45)でもない中山忍(42)なのである。
・・・おいっ。
いやあ・・・いつまでも若いなあ・・・。
区別がつかないくせに・・・。
地味なドラマがそれだけで潤うよね。
・・・もう、いいか。
さっそく・・・出動する危機対策室のメンバーたち。
西行寺とかおりは・・・プロジェクトルームの入室用ナンバーキーや製剤機密へアクセスするためのパスワードが定期的に変更されていなかったことを指摘し・・・危機管理の甘さを追及する。
進藤社長や役員の大鷹に対するのと同様、西行にも低姿勢の望月だった。
一方・・・副室長の財部(志賀廣太郎)も清掃員に変装し、現場へ。
盗聴器を探索する元産業スパイの結城(森田剛)をバックアップする。
清掃員を見たら調査員と思えである。
役員室から盗聴器が発見され・・・少なくとも新陽薬品にはスパイが侵入していることが確認される。
「狙われていたな・・・」
「まあ・・・狙われていないものなんてない・・・というのが前提だけどな」
容疑者は木村室長(野間口徹)をはじめとする研究員たち・・・そして、望月や原田に絞られる。
「原田もですか」
「新薬開発情報に接する機会は彼にもあったからな」
西行寺と財部は「情報漏洩の経緯」をアクセス履歴から検証し、かおりと結城は人間関係の調査を担当する。
聞き込みの中でかおりは望月が引退後はサンフランシスコに永住したいと考えていることや「恋人の原田」が望月に「かおりへ寄せる愛情」について話していることを知る。
「新薬開発への情熱」を感じ、かおりは無意識に望月を容疑者リストから外すのであった。
やがて・・・大鷹がヒューマン製薬の社長と個人的な交際をしていることや・・・ヒューマン製薬で開発に携わった関東医科大学の石森教授と木村室長が学会で顔を合わせていることなど・・・不審な点が隠密探偵の種子島(古田新太)によってもたらされる。
また・・・特許出願の遅れがデータの改竄によってコントロールされていたことが判明する。
そして・・・情報への不正アクセス日時が特定され・・・木村室長にはアリバイがないことが疑われる。
大鷹に対する不透明な金の流れが投書によって告発され・・・危機感を持った進藤社長は証拠不十分のまま・・・情報漏洩について記者会見をしてしまうのだった。
殺到するマス・メディアによって・・・新陽薬品の男尊女卑の体質、大鷹のモラルハラスメントぶり、社長と大鷹の対立など・・・あることないことで・・・新陽薬品の社会的信用は低下しまくるのだった。
「なぜ・・・中途半端なことを・・・」
「ヒューマンが新薬開発の発表をしたのだ・・・このままでは・・・我が社の敗北は濃厚だ・・・闘志した四百億が・・・水の泡だ・・・」
「あなたの・・・失態は責任追及の対象になりますよ・・・」
かおりは・・・西行寺に疑問をぶつける。
「進藤社長に・・・大鷹さんへの疑惑を進言したのは・・・望月さんです・・・でも・・・それは西行寺さんが・・・望月さんにそのことを伝えたからではないですか」
「結果として・・・進藤社長も・・・大鷹も苦しい立場になった」
「・・・」
「情報流出の日・・・望月にもアリバイはない」
「望月さんをはめたんですか・・・」
「彼女に連絡してみたまえ・・・」
「・・・」
望月は辞表を提出し・・・所在不明になっていた。
「彼女はどうする気だと思う」と問う西行寺。
「国外逃亡ですか・・・」と答えるかおり。
「だな」
空港で望月を確保する西行寺とかおり。
「なぜ・・・あなたが・・・」
「会社は・・・女性社員を・・・不当に扱ってきた・・・そんな時、大鷹さんが役員になって・・・私に希望の光が灯ったの・・・でも・・・彼女にとって私は出世の道具に過ぎなかったの」
「復讐ですか・・・」とかおり。
「あなたのしたことは単なる犯罪ですよ」と西行寺。
「男のあなたには私の気持ちはわからない」
「女の私にもわかりません・・・望月さん・・・あなたの望みは何ですか・・・出世ですか・・・待遇改善ですか・・・新薬を開発することじゃなかったんですか」
「・・・」
「あなたと一緒に心血を注いだ研究員たちのことを・・・考えてみてください」
長い悪夢から目覚める望月・・・。
「あなたの研究を取り戻すためには・・・自首するしかありません」
望月は観念するのだった。
望月は匿名で石森教授に相談をもちかけ・・・研究データを送っていたのだった。
二人の不適切な関係が証明され・・・ヒューマンは特許申請を取り下げたのだった。
「金銭的解決か・・・」と種子島。
「すべては痛み分けですよ・・・向こうの研究費の穴埋めをして・・・数千億円の利益を確保する。確実な投資と言えます」
「進藤社長と大鷹は解任され・・・人事権はサンライズが握る・・・まるで新陽薬品がはめられたみたいだな」
「また・・・裏切られてしまいました」とかおり。
「いや・・・望月を説得したのは君だ・・・真心は時には必殺兵器だからな・・・ジェットモグラのように人の心を穿つのだ」
「・・・」
原田から御礼の食事に誘われたかおりは心が和むのを感じる。
「君には感謝している」
「こちらこそ・・・私を頼ってくれて・・・ありがとう」
しかし・・・種子島は西行寺に報告していた。
「周辺調査を進める課程で・・・不審なダミー会社を発見した」
「サンライズからの月額五千万円の・・・使途不明金か・・・」
「担当は原田だ」
「・・・」
「奴には注意が必要だ」
浜辺に佇む父と子・・・。
「お父さん・・・あなたに再会してから・・・私の心は落ち着きません・・・あなたが一番大切にしていたのが・・・私たち家族ではなかったことについて・・・心が疼くのです・・・自分がこんなに感傷的な男だったとは・・・意外ですよ・・・私はただ・・・あなたに愛されていたのかどうか・・・それだけが知りたいのかもしれません」
西行寺の父・孝雄(田中泯)は黙って海を見つめていた。
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