いいもわるいも気分しだい(窪田正孝)敵に渡すな殺人ノート(山崎賢人)死んだ死んだ(優希美青)
少年マンガで言えば「鉄人28号/横山光輝」の系譜が匂う「デスノート」である。
圧倒的な凶器として・・・デスノートは「鉄人のリモコン」と同じだ。
リモコンを持てば正義も悪もロボット兵器「鉄人」を操縦できるのである。
名前を書くと死ぬというアイディアは古典的で・・・陰陽道では「呪殺防止」のために本名を隠す必要があるわけである。
だから、古代の人々は・・・仮名生活をしていたわけである。
真名を呪者に知られたら・・・どんな恐ろしい目にあうか・・・わからないからだ。
まあ・・・匿名という奴は・・・その延長線上にあるわけである。
芸名=本名の芸能人というのは基本的に怖いもの知らずなんだな。
そうではない迷信深い人の心を揺らすコンテンツなのである。
で、『デスノート・第8回』(日本テレビ201508232230~)原作・大場つぐみ、小畑健、脚本・いずみ吉紘、演出・猪股隆一を見た。知性と知性の激突・・・緻密なコンゲームとはかなり違う展開だが・・・キラは結構、ドジを踏んでるし、エルはどう考えても「原作」を読んで「デスノート」の存在を知っているとしか思えない推理を述べる。まあ・・・そういう大雑把な感じが・・・一部お茶の間にフィットしていると思える。夏なので・・・おかしいだろうって言い出すとくたびれるために・・・なんだかんだ楽しめるわけである。多次元世界的・・・似て非なるデスノート的状況。ストーリーは「ああ・・・歴史が変わった」「ああ・・・修正された」という繰り返しである。結局、誰かを殺さずにはいられない人間が実在する以上・・・デスノートの存在そのものがホラーなのである。
ミサミサこと弥海砂(佐野ひなこ)をこよなく愛する死神レムの脅迫によってデスノート放棄作戦を実行したライトこと夜神月(窪田正孝)は黒のデスノートをレムに託し、火口卿介(柏原収史)に貸し出す。
ライトはリュークに「偽のデスノート・ルール」を追記させている。
「デスノート使用者は十三日に一度使用しないと死ぬ」
「デスノートを廃棄すればデスノートに接触したものは死ぬ」
これにより・・・警察関係者あるいはエルことL(山崎賢人)がデスノートを入手した時に簡単にはデスノートを使用することも廃棄することもできはないとライトは考えた。
「死刑囚に・・・死刑囚の名前を書かせ・・・十三日後の様子を見るというのはどうでしょう」
「死刑囚は・・・死刑に処せられるのであって・・・人体実験の対象者ではない」と今さらながらお固いことを言う日本におけるキラ事件の捜査官のリーダーである夜神総一郎(松重豊)・・・。
「ですか・・・」と微笑むエル。「地上波お茶の間暗黙のルールですね」
「とにかく・・・ライトくんもミサミサちゃんもキラではないよね・・・拘束期間中・・・ノートを使用しなかったのに・・・十三日を過ぎても生きている」と仏の模木完造(佐藤二朗)・・・。
「ですね・・・」
「しかし・・・ノートに名前を書くだけで・・・人が死ぬなんて・・・本当なのかな」とライト。
「ですよねえ・・・」
エルは本心を隠しながらライトを見る。
エルはライトが犯人であると直感した以上・・・ライトが犯人である論理しか信じないのである。
すでに・・・ノートに接触し・・・デスノート所有の呪いによりキラ化しているライトには・・・エルが自分への疑いを捨てていないことを直感するのだった。
エルとキラ化したライトは・・・思いこみの激しい似たもの同志なのである。
直感とはスパースモデリングのようなものかもしれない。
限定された情報から望ましい回答を捏造するスパースモデリング・・・。
意志伝達とは・・・基本的にそういう怪しいものを含んでいる。
誤解こそが正解なのである。
意味をわかって言ってんのか。
なんとなく・・・で。
つまり、穴だらけに見える推論こそが王道なのである。
「とにかく・・・ヨツバグループの生き残りたちに尋問する必要がある・・・ライトくん、君にも手伝ってもらいたい」
「かまわないさ・・・」
ライトは解放されたミサミサに指令を下す。
リュークと共に封印した赤のデスノートの発掘である。
このドラマのミサミサにそんな重要な任務を与えていいのか・・・と思うが・・・想定通り・・・ミサミサは油多川(牧田哲也)という探偵に赤のデスノートを強奪されてしまうのだった。
油多川にミサミサを尾行させていたのはキラを崇拝する東京地検の検事の魅上照(忍成修吾)だった。
お宝発掘現場に遭遇した油多川は思わず、ミサミサを昏倒させ、お宝を持ち去ったのだった。
その正体を確かめもせず、金目当てでお宝を魅上照に譲渡する油多川・・・。
赤のデスノートを手に入れた魅上照はたちまち第四のキラと化すのだった。
不起訴になった凶悪犯罪者たちに死を与える魅上・・・。
ミカミカの誕生である。
ミカミカは無慈悲な削除を続けるのだった。
一方、ミサミサを襲撃した犯人の捜査に乗り出すライトとちょっと馬鹿な松田桃太(前田公輝)・・・。
ライトは単なる大学生なのだが・・・大雑把な展開はツッコミを許さないのだった。
エルが承諾すれば基本的になんでもありらしい・・・。
しかし・・・エルの右腕である左腕にメロを抱えたニアことN(優希美青)は防犯カメラの映像を解析し、元探偵で詐偽師の油多川を襲撃犯と断定する。
ライトと松田は油多川を取り逃がすが・・・ニアは油多川を捕縛。
松田はニアを殴り倒すが狂暴な第二の人格メロに強制的な尋問を受ける。
「依頼者が・・・検事ということは聞き出したが・・・死んじゃった」
油多川を誰が殺したのかは伏される。
エルやニアに殺人戒があるのかどうかは不明である。
そもそも・・・彼らは快楽推理者なのである。
謎が解ければ・・・人類がどうなろうと知ったこっちゃないという性格でも問題ない。
もちろん、お茶の間対策として・・・メロが殺人鬼ではなく・・・ミカミカによる口封じの線もあるわけである。
しかし・・・メロが殺したと思わせた方がインパクトがあると考える筋立てなんだな。
あざといよねえ。
再度・・・現場を訪れたライトは検事の名刺を入手するのだった。
ミサミサが記憶を取り戻せなかったために・・・新しいパートナーとしてミカミカを迎えることにするライト。
ミカミカの元にいるリュークに林檎を宅配するのだった。
まあ・・・普通に考えて・・・その行動のすべては・・・エルとニアに筒抜けなのである。
それでも・・・決定的な証拠がない以上・・・探偵たちに状況は不利なのである。
「あなたが・・・キラなのですか・・・」
「私がキラだ・・・」
「わが神よ・・・」
「なぜ・・・汝は我をあがめるのか」
「私は・・・かって・・学級委員長だった・・・正義のために苛められた子を庇ったのです・・・しかし・・・いじめっ子たちは私をいじめた・・・そして私の母親は・・・そんないじめっ子を許せと言った・・・しかし・・・神は交通事故で母といじめっ子たちに死を賜った・・・それから・・・私は神は正義を実現すると悟りました」
「キラの作る新世界を見たいか」
「どこまでもお伴します」
検事の立場を利用したミカミカは・・・キラ対策室に保管されたデスノートを証拠品として押収する作戦を開始する。
しかし、逸早くエルはデスノートとともにライトを別室に連れ出していた。
「一体・・・エルはどこに・・・」と日村章子(関めぐみ)・・・。
「エルとライトは最終決戦をする・・・生きて帰るのは一人だけ・・・」とニア・・・。
ワタリ(半海一晃)はモニターに・・・対決会場のライブ映像を公開するのだった。
「一体・・・何の真似だ・・・」
「デスノートの使い方について・・・いろいろと考えたのです。ひょっとしたら・・・ちぎっても使えるのではないかとか・・・死に方を指定できるのではないかとか・・・嘘のルールを死神に書きこませたり、所有を放棄したら記憶を失ったり・・・」
「原作、読んだのかよ」
「そうなると・・・やはり・・・キラは・・・ライトくんしか考えられない」
そこで・・・カメラをオフにするエル。
「できれば・・・ライトくんがキラではないと証明したい・・・でも・・・どう考えてもライトくんはキラなんですよ・・・困りました」
「なぜ・・・友達を信じることができないんだ・・・」
「そうです・・・友達が・・・死を操る男だと信じるしかありません」
「・・・信じる方向が間違ってる」
「どうしてですか・・・最初はちょっとした悪戯心・・・次は必要に迫られて・・・しかし・・・その後は快楽殺人犯になってしまう」
「快楽・・・?」
「だってそうでしょう・・・理想の世界を作るなんて・・・快楽そのものじゃないですか」
「・・・」
「もはや・・・試してみるしかありません」
「何をだ」
「このノートにライトくんの名前を書いて・・・それから・・・十三日後に僕が死ぬかどうか」
「なんで・・・俺で試すんだ」
「ライトくんなら命がけでキラの逮捕に協力してくれるでしょう」
「エルの名前を俺が書いてもいいじゃないか」
「いや・・・ライトくんに・・・人を殺させるわけにはいかない」
夜・・・神・・・月を書きかけるエル。
「やめろ・・・」
ついにエルに肉弾戦を挑むライト。
「無駄ですよ・・・君は僕の本名を知らない・・・ノートに名前を書けるのは僕だけだ」
「今・・・エルを殺しても正当防衛だ」
「ノートに名前を書こうとしたからですか・・・それでは正当防衛は無理だな」
「急に法治国家みたいなことを・・・」
しかし・・・その時・・・死神の目を手に入れたミカミカからメールが届く。
「L.Lawliet・・・か」
「誰かが・・・死神と取引したんですね」
「もう・・・遅い・・・死ね」
ライトはエルの名をデスノートに記す。
四十秒後・・・エルは死ななかった・・・。
「何故だ・・・何故なんだ・・・」
「チェックメイトです・・・ライトくん」
キラと化したライトは・・・凄惨な表情で・・・不死身のエルを見た。
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