2030かなたの家族(瑛太)三十路のファーストキスはじめました(相武紗季)
本格的な谷間である。
なんだかんだと九月も終わりだな・・・。
天変地異の連続でなんとなく感覚が麻痺している気がする。
矢でも鉄砲でももってこいや的な・・・。
そんなこんなで・・・近未来世界のドラマ・・・。
「まっしろ」で堀北真希の独身時代の幕を引いた脚本家である。
今、考えると・・・一種の罰ゲームだったのか。
しかし・・・親世代の死期にうろたえる心情みたいなものはなんとなく反映していたようだ。
これは一種の続編なんだな。
やすらぎを求めているんだねえ。
じたばたしてもしなくても「死」は必ず来る。
しょうがないじゃないか。
「ベンチッチって変な名前ね」
認知症の人に耳元で囁かれつづけることも・・・。
で、『2030 かなたの家族』(NHK総合20150926PM9~)脚本・井上由美子、演出・笠浦友愛を見た。15年後・・・を考える時には・・・つい15年前を考えてしまうものだ。もちろん・・・時代と地域によって変化は停滞したり加速したりするわけだが・・・2001年~2015年と・・・2015年~2030年・・・どちらが激変するのか・・・非常に微妙な問題である。少なくとも・・・2015年安保が馬鹿馬鹿しいほどに話題になることを21世紀初頭に予見していた人は少ないだろう。しかし・・・テレビというメディアが過渡期において・・・非常に偏向していくことは予想できたわけである。皆さまのNHKとか巨人軍のための日本テレビとか民主党的なテレビ朝日とか・・・ねえ。
とにかく・・・報道に接するには背景を想像することが大切である。
まあ・・・踊る阿呆に見る阿呆・・・同じ阿呆なら踊らにゃ損か得かよく考えよう。
2015年・・・カケルこと板倉掛(瑛太)は12歳・・・。
東京西部の郊外にあるニュータウンで板倉一家は花見を楽しんでいた。
父のトオル(松重豊)は41歳で働き盛り・・・不動産ディベロッパーとして都市開発を手掛けこのニュータウンもトオルが関わったビジネスのひとつである。
母のケイコ(小林聡美)は37歳で野心的な高級公務員。家族よりも仕事を優先するキャリア・ウーマンである。
トオルの父であるカツゾウ(山本學)は66歳、定年後は64歳の妻のサトコ(渡辺美佐子)とともにトオルと同居生活をしている。
カケルは・・・父と母の間にある・・・冷やかな関係に苦しんでいる。
特にケイコは・・・「家族」の存在に距離を置くようになっていた。
敏感なカケルは家族の崩壊が近いことを予見している。
「花見なんてつまらない・・・来年は桜なんか咲かなければいい・・・」
10歳の妹のエミイこと絵美衣(安藤美優→蓮佛美沙子)は・・・兄の鬱屈を理解することができず・・・鉄拳制裁を下す。
「お兄ちゃんのバカ・・・」
そして・・・時は流れた。
五年後・・・東京東部に高齢者専用居住区として「永遠シティ」が設立される。
ケイコは管理責任者として重要なポストを得て単身赴任に踏み切る。
すでに準備段階で板倉家からケイコはフェイドアウトしつつあった。
カケルはすでに覚悟していたために・・・それほど傷つかなかったが・・・優柔不断な性格となった。
母親の裏切りに・・・エミイは深く傷つき・・・祖母に育てられながら・・・心が彷徨う人間となる。
ただし・・・学習能力は抜群で・・・高学歴を獲得していった。
まもなく・・・トオルとケイコの離婚は成立し・・・家族は崩壊した。
東京五輪後の東京メガロポリスは・・・中央部に人口が集中する傾向を強め、周辺のニュータウンは過疎化していった。
少子化によってトオルの仕事は傾き・・・高齢化によってケイコの仕事は輝いて行く。
上昇志向の強いカツゾウは・・・ケイコのコネクションによって富裕者層向けの老人天国である永遠シティに高齢労働者として住み込む。
馴染みのない街に移転したサトコは活力を失い、認知症を発症する。
第一次沖縄独立住民投票。琉球人民共和国独立。
第一次沖縄内戦。
第一次中華人民帝国の沖縄占領。
第二次沖縄内戦。
第二次沖縄独立住民投票。琉球人民共和国消滅。
第二次中華人民帝国の沖縄占領。
2030年、北海道新幹線開通。ロシア連邦、火星に到着。インドにディズニーランド開園。
トオルの希望で一年に一度の家族会を行っていた板倉家だったが・・・母親譲りの能力で巨大企業のエリート社員となり東京中央部で働くエミィは家族会の廃止を提案する。
ロボットデザイナーとなって東京南部のシェアハウスで気ままな暮らしをするカケルは妹の提案に同意するのだった。
そして・・・家族は疎遠になった。
カケルは自室で・・・売上が伸び悩む家庭用執事人工知能ナルホド(小日向文世)の改良に取り組む。
「やあ・・・」
「ワタシハダルマジャナカッタ・・・タケシダッタ」
「いつの話だよ」
「ナヤミゴトガアリマスネ・・・ぱてぃしえニナルノハヤメナサイ」
「・・・」
カケルはシェアハウス利用者の一人、ミサエこと荻原美冴(相武紗季)から受胎のための精子提供を求められ困惑していた。
「子供なんか作ってどうするつもりなんだ」
「人間関係はシンプルな方がいいけれど・・・子供は欲しいの・・・」
「よく・・・わからないな・・・」
ミサエは教師であり・・・子育て支援に特化した学園都市への転居が決まっていた。
家族を捨てたカケルは道に迷い・・・父のもとへ向かう。
カケルが生まれ育った街はほとんど廃墟になっており・・・トオルはゴーストタウンの管理人になっていた。
「凄いな・・・今、人口何人いるの」
「12人だ・・・来年、移民法が成立すれば・・・たちまち人口密度は高まると思う・・・」
見果てぬ夢を見る父をカケルは相談相手にはできないと判断する。
永遠シティに向かったカケルは低所得者向けの義肢を装着しサイボーグとなった祖父の活力に圧倒される。
一方・・・祖母は軽度の認知症を発症し・・・どこか憂鬱そうである。
久しぶりにあった母のケイコは管理責任者としてパワフルに働いている。
「まだまだ拡張が必要なの・・・平均寿命は延びるし・・・老人人口は拡大する一方よ」
「・・・」
「そうそう・・・エミィの結婚相手とは会った?」
「け、け、結婚って・・・」
「梅さんかっ」
「ど根性ロスサービスでやんす」
カケルはトウキョウメガロポリスの心臓部に向かう。
千メートルを越える巨大構築物の連なる中央部は魔都のムードを漂わせる。
「彼女とは契約結婚をしましたが・・・半年で契約を解除しました」
「え」
「彼女とはビジネスパートナーでもあったのです・・・しかし、彼女はリスクのなんたるかをまるで忘れてしまったような・・・考えられないミスをしました・・・私は上司として彼女を解雇するしかなかった・・・ただ・・・結婚契約は延長するつもりでした・・・しかし・・・彼女の方から契約破棄を・・・」
「・・・」
東アジア共同体出身らしき妹の元夫は淡々と経緯を語る。
離婚したエミイはスラム化した北部の街の小学校で貧民共同体を経営していた。
「なにやってんだよ」
「スワロウテイルみたいな・・・」
「無国籍な自分探しごっこかよ・・・」
「ここにいるのは・・・親に捨てられた子供、子供に捨てられた親・・・だから・・・家族として再構築するのよ・・・私はみんなのママになるの」
「いかにも・・・危ない人たちもいるが・・・」
「偏見よ・・・彼らはアーティストなの・・・」
「・・・」
怪しげな男(落合モトキ)や女(高月彩良)を従えて原始共産性社会を模索するエミィ。
「ここには・・・無価値な人はいない」
「人間に価値があるかどうかは・・・神のみぞ知るだよ」
「あなたには・・・関係ないでしょう」
しかし・・・裏社会とつながっている底辺の男女は・・・非合法ドラックの生産拠点を地下に構築していた。
「あなたたち・・・ママの言い付けに背くの・・・クスリなんてやめなさい」
「グッバイ、ママ」
真面目な支配者を見捨て・・・無法者たちは去って行く。
「誰かを信じるから・・・傷つくんだよ」
「誰も信じないあなたより・・・マシでしょう」
「馬鹿だなあ・・・お兄ちゃんは・・・お前を信じているよ・・・」
「・・・お兄ちゃん」
家族への巡礼の旅を終えたカケルは・・・リニア新幹線で・・・南の学園都市へ向かう。
「精子提供は・・・できない」
「そうですか・・・」
「できれば・・・結婚を前提に・・・お付き合いがしたいのです」
「あら・・・」
「だめですか・・・」
「とにかく・・・一度相性を確かめてみましょう」
二人は・・・一夜を共にした。
「しょ・・・しょ・・・処女だったの」
「ど・・・ど・・・童貞だったの」
しかし・・・今から十年後でも・・・性行為はそれなりの快感をもたらすのだった。
「きさくなあのこめをとじとじ」
「関西方面の方は逆さに読まないでください」
カケルは両親と祖父母を花見の宴に招待した。
廃墟と化した街で・・・一家は桜の園を独占する。
「ケイコさん・・・子供がいるっていいでしょう」
「そうですね・・・離婚した夫と・・・フレンドリーな関係になることも可能ですし」
「おいおい」
「ケイコさんの玉子焼き・・・甘すぎるわ」
「お義母さん・・・いい年なんだから・・・塩分控えめで・・・」
「エミィも呼んであげればよかったのに・・・」
「エミィはスペースコロニーで難民支援してますよ」
家族たちは虚空を見上げた。
カケルは微笑んだ。
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