« 2015年8月 | トップページ | 2015年10月 »

2015年9月30日 (水)

2015年秋ドラマを待ちながら(キッド)

九月も終わりである。

谷間なのに「デート」が来たりしてなかなかのんびりできないぞ。

夏ドラマでは「表参道高校合唱部!」がノーマークだったのに美少女度が高すぎて有終の美まで飾ってしまったので・・・レビュー予想はあくまで予想ということを肝に銘じるべきだな・・・世間が・・・トミタ栞かっ。

変則スタートの番組が増加しているような気もするが・・・御時勢なのだろう。

風速80メートルの台風が通りすぎて行った月末。

北にはものすごい低気圧が発生している。

これでも温暖化による異常気象というものを認めない学者もいるんだよなあ・・・。

TBS深夜では「JKは雪女」がスタートしている。「アゲイン!!」の枠である。平愛梨の14歳年下の妹・平祐奈が今時の雪女・小雪を演じている。十代の女優が演じる役柄としてはかなりアウトなとんでもドラマだが・・・劇場版「みんエス」のパンチラ担当の池田エライザも出ている。下世話もの・・・というしかない。

美少女というのはいつも冬の時代を生きているのだ。

(月)は石原さとみ&山下智久で「5→9 ~私に恋したイケメンすぎるお坊さん~」である。じいやが老骨に鞭打つわけだな。

(火)はおめでた刑事の黒木メイサが登場する「デザイナーベイビー」が先行スタートして・・・凄く面白いのだった。木村文乃VS菜々緒という本命「サイレーン」危うしである。まして真野恵里菜だけで「結婚式の前日に」を見るのもなんだかなと思う。

(水)は「無痛~診える眼~」の石橋杏奈をとるか、「おかしの家」の八千代薫をとるかである。・・・どういう選択肢だよっ。

(木)は奥貫薫、小西真奈美、松坂慶子を揃えた「ぼんくら2」でまったりしたいのだが・・・夏ドラマでは果たせなかった夢だ・・・。榮倉奈々の「遺産争族」と篠原涼子の「オトナ女子」は脚本が井上由美子VS尾崎将也という手堅い対決にもなっている。新川優愛の「青春探偵ハルヤ」までは手が届かない。

(金)は濱田岳と広瀬アリスの「釣りバカ日誌~新入社員 浜崎伝助」にもそそられる。しかし・・・「コウノドリ」の松岡茉優、「サムライせんせい」の黒島結菜のがっぷりよつだ。これは悩ましい・・・。

(土)はガッキーの「掟上今日子(おきてがみきょうこ)の備忘録」以外考えられない。

(日)は仕方なく「花燃ゆ」・・・。阿部寛、土屋太鳳、杉良太郎という凄い組み合わせの「下町ロケット」は・・・原作者的にもういいだろうと思う気持ちが何度目だ。

連続テレビ小説「あさが来た」は穏やかな感じで子役時代中・・・。なにしろ・・・本編は宮﨑あおいと波留という超絶技巧的姉妹である。これから半年・・・朝から毎日、うっとりするのかと思うと・・・高揚するようだ・・・。

関連するキッドのブログ→2015年夏ドラマを待ちながら

Hc2015f秋恒例・紅葉の森の古城にて観月の宴(松茸食べ放題)

まこ様の2015秋クールドラマチェック其の壱

まこ様の2015秋クールドラマチェック其の弐

くう様の【2015年10月期・秋クールドラマ何見ます?】ラインナップ一覧とキャスト表と期待度

みのむし様の2015年秋ドラマ一覧

| | コメント (6) | トラックバック (3)

2015年9月29日 (火)

デート~恋とはどんなものかしら~2015夏秘湯(杏)めくるめった刺し痴情のくんずほぐれつぽんぽこぽん(長谷川博己)

谷間なのに・・・これか・・・。

いや・・・一時間でさえ・・・再現率高めの上・・・長めになるのに・・・。

二、二時間って。

ま・・・流しておこうよ・・・軽くさ。

だな・・・。

佳織(国仲涼子)も諸事情で別人のようだったしな。

小顔エステと金髪化で誰でも別人になれるんだよ。

結局、別人かよっ。

今回もフリオチのテキストのような展開・・・声のみの出演でフリ、別人のような本人の登場でオチとかな。

数えだすとキリがないんだよな・・・「花火見物なんてダサイ」からの「たまや~」みたいなストレートなものから・・・19年前の夫婦喧嘩から・・・愛から憎しみが生まれ、憎しみを上回る愛による仲直りまでという複雑なフリオチまで・・・ふっておとす、ふっておとす、これでもかとふっておとす・・・連続攻撃だ。

今や・・・追従を許さない領域だよな。

で、『デート〜とはどんなものかしら〜2015夏 秘湯』(フジテレビ20150928PM9~)脚本・古沢良太、演出・武内英樹を見た。発達障害者であり、高学歴者でもある藪下依子(内田愛→杏)と高等遊民と自称するニートの谷口巧(長谷川博己)はともに恋愛不適合者と自覚しつつ・・・結婚を前提とした交際を続けている。恒例の時間軸の転換によって・・・物語は巧の温泉旅行へ向かって突き進む前日譚となっている。このドラマではこの手法が非常に効果的だが・・・下手に真似すると火傷するのでご注意ください。

19年前・・・今は亡き小夜子(和久井映見)は夫の俊雄(松重豊)の浮気を疑い、過激な夫婦喧嘩を展開する。愛するゆえの「醜態」というものは・・・依子にとって「大いなる謎」となるのだった。

46日前・・・制限時速30キロで港の見える丘公園に向かう依子。巧との三十五回目のデートは花火見物だった。

レギュラーシーズンの展開を受けて・・・人ごみの中で怯える巧と・・・ガッツを見せる依子、花火でそれなりに興奮し・・・成長を感じさせる二人。

そして・・・いよいよ・・・二人の契約結婚のための契約内容は完成する。

「合意ということでよろしいですね」

「合意します・・・また・・・プロポーズしなければなりませんね」

「いえ・・・谷口さんは素晴らしいプロポーズをしてくれたので・・・今度は私がお返しをいたします」

「お返し・・・」

「準備中なので・・・期待してお待ちください」

「・・・」

ラス前のオチのためのフリである。

フリオチを楽しむドラマの場合、お茶の間はかなりの記憶力を要求される。認知症の人には無理なドラマなのである。

フリは一種の刺激であり・・・人間の記憶器官をくすぐる。オチの部分でフリの記憶が再生される時、一般人は快感を覚えて病みつきになるのである。不感症の人には無理なドラマなのだな。

契約書にもいくつかのフリが潜んでいるが重要なのは「性交渉の開始時刻が21時から23時に変更になったことである。

42日前・・・谷口家では依子と巧の婚約発表が行われる。

巧の母・留美(風吹ジュン)は招待客のために御馳走を準備している。

テレビで「痴情のもつれによる凶行」という物騒なニュースが流れる。

原因は恋人の浮気らしい。

突然、依子は契約の中に「浮気に関する項目」がないことに気がつく。

しかし・・・留美は「巧に限って浮気はないでしょう」と母親らしい断定をする。

「一人とさえ・・・恋愛ができないのに・・・二股とか・・・ねえ」

結婚を前提としている二人を前にしてアレな発言だが・・・。

「そうですねえ・・・巧さんには荷が重いですね」と同意する依子。

巧は対抗意識を燃やして「藪下依子が昼顔とか無理ですよね・・・巨乳じゃないし」と言わなくてもいいことを言う。

恋愛は苦手だが・・・本当はお互いに相手に恋をしている二人は水面下で火花を散らすのだった。

これが・・・今回の主題としてのフリになっている。

愛の中に潜む・・・独占欲や・・・支配欲・・・それをいかに克服するのか・・・という話である。

やがて・・・依子に失恋した鷲尾(中島裕翔)や谷口努(平田満)、巧の悪友で佳織の兄である島田宗太郎(松尾諭)が顔を揃える。

巧に失恋した佳織が顔を出しにくい席に出席した・・・鷲尾は・・・「依子さんに未練はない」といいながら・・・二人の「契約結婚」に否定的な言動を始める。

「僕は・・・依子さんにめくるめく恋をしてもらいたかった・・・」

「だから・・・そういうのは僕たちには無理なんだよ」

「臆病者・・・だったら・・・僕はあなたから依子さんを奪う」

叫びながら退席する鷲尾・・・。未練たらたらなのである。

「ますます・・・面倒くさいやつになってきた」

「昔の青春ドラマみたいだ」

「一番若いのに・・・」

「そこが彼の可愛いところ・・・」

大人たちは感想を述べ合う。

しかし・・・巧と依子には・・・鷲尾の言葉が重くのしかかってくるのである。

1024は2の10乗なので10月24日は結婚式場の予約が一杯と考える特殊なロマンチストの依子の心を案ずる巧だった。

よからぬことが起こる予感というフリである。

戦争というフィクションを疑似体験したからといって戦争を始めるバカにはなりたくない巧だった。

依子は職場でバカなOLたちの雑談を耳にする。

「結婚する前に同棲するのは是か否か」

「お試しするのはいいが・・・同棲すると別れる場合にもめる」

「だから・・・半同棲がいい」

依子は下々の言葉にも耳を傾けるエキスパートなのであった。

こうして・・・依子による巧との半同棲計画が発動するのだった。

おい・・・このペース・・・危険じゃないか。

島田宗太郎と妻の不和の原因がコロンビア人女性にある件はカットしたぞ。

今、書いてるだろう・・・。

依子によれば半同棲とは一週間の50%を共に過ごすことになる。

つまり、一日おきである。

基本的に巧は家事担当の専業主婦で・・・依子は出勤して家計を支えるという役割分担のために・・・同棲中は・・・巧は二人の住居となる依子の官舎で過ごさなければならない。

引き籠りの巧にとって・・・蔵書やお気に入りのフィギュアなどの・・・自分の一部と分離して過ごすのが苦痛である。

さらに・・・整理整頓に執着する依子のために・・・雑然とした空間を放棄しなければならない。

そして几帳面な依子のたてた分刻みのスケジュールの中で・・・依子の献立通りの食事を準備しなければならない。食材もどこで何を買うか・・・きっちりと決められている。

一種の自閉症相手の保護者を一種の自閉症者がすることになる。

これはもう・・・いろいろな意味で心が痛む。

依子の要求をクリアできない巧。

四角四面のジャガイモなんか・・・美味しいわけがないと叫ぶしかないし。

乱雑に切られたジャガイモは依子にとってはストレスなのである。

なんとか・・・スケジュール通りの性交渉に挑む巧は・・・タブーであるアヒル口や・・・タブーそのものに萎えるのだった・・・。

そして・・・あげくの果てがお互いの拘りを主張して衝突である。

なにしろ・・・譲れないものが多過ぎる二人。

半同棲は最悪の幕切れを迎えるのだった。

しかし・・・それでも・・・依子は巧を愛しているし、巧は依子を愛している。

二人は・・・かねてから約束していた依子の母の墓前で婚約の報告をするのである。

そこで・・・巧は妖艶な美女で・・・竹久夢二(1884~1934)の交際相手の一人と同じ名前の謎の女・ヒコノ(芦名星)と出会うのだった。

引用というのは大きな意味でオチである。夢二というカテゴリがフリになるのである。

引用によるフリオチを楽しむドラマの場合、お茶の間はかなりの教養を要求される。わかるものだけがわかればいい教養のない人には無理なドラマなのである。

もちろん・・・巧はたちまち・・・ヒコノにうっとりしてしまう。

巧が心の中で浮気をしたことをたちまち察する依子・・・。

いろいろなことが読めない依子だが・・・そこだけは読み切るのが一つのオチなのだ。

巧が浮気をすることに・・・恐怖する依子だった。

待てど暮らせど来ぬ人を 

宵待草のやるせなさ

想ふまいとは思へども 

今宵は月も出ぬさうな

巧が他の女に心を移せば・・・依子は巧とデートができなくなってしまうのだ。

依子は契約事項に浮気の項目を追加する。

これは・・・依子が巧に許す範囲のフリである。

①食事をするのはよい

②キスは人種によってはよい

③相手の家を訪問することはよい

④23時を過ぎてはいけない

ヒコノと再会した巧は・・・浮気にならない範囲で・・・ヒコノとの逢瀬を開始する。

しかし・・・その密会の現場を偶然、鷲尾が発見してしまう。

それを知った依子は・・・嫉妬のレンジに静かに着火するのだった。

依子は国家公務員の同期生で捜査のプロ(えなりかずき)から探偵の奥義を学ぶのだった。

島田宗太郎や留美(風吹ジュン)は依子の厳しい追及により・・・情報提供者として協力することを余儀なくされる。

「私は・・・息子を売ったのよ・・・」と嘆く留美。

しかし・・・ゴルゴ13と化した依子は周囲の人々を次々と不眠症に陥れて行く。

一同爆笑の連続である。

だが・・・鷲尾と依子の張り込みも交わし・・・尻尾をつかませない巧。

「踏まぬなら踏ませてやろうこの地雷」

一句を読んだ依子は「一緒に温泉旅行に行こうでも直前にキャンセルして・・・巧の行動を見守る計画」を立てるのだった。

無理矢理・・・旅立つ巧。

尾行する宗太郎・・・。

修善寺温泉で・・・ついに巧の前にヒコノが姿を見せる。

ワサビ味のソフトクリームを食べながら・・・。

まだあげ初めし前髪の

林檎のもとに見えしとき

前にさしたる花櫛の

花ある君と思ひけり

やさしく白き手をのべて

林檎をわれにあたへしは

薄紅の秋の実に

人こひ初めしはじめなり

・・・と島崎藤村(1872~1943)の「初恋」を口走るのだった。

そして・・・二人は古風な温泉旅館へ・・・。

確証を得た依子は包丁を研ぐ・・・。

戦慄の予感に・・・谷口家、藪下家の親たちも修善寺へと急ぐ・・・。

のんびりと温泉につかっていた巧は・・・嫉妬に狂った依子の凶刃に襲われるのだった。

由緒正しいドタバタ闘争劇の果てに石鹸に足を取られて岩風呂に沈む依子だった。

「公務員が痴情のもつれで刃傷沙汰・・・逮捕」のニュースがオチである。

しかし・・・それはもちろん・・・依子の夢というオチ。

そして・・・ヒコノは温泉旅館の女将だったというオチ。

さらに・・・ヒコノは未亡人で・・・亡き夫が巧に似ているというオチ。

亡き夫の老母に巧を会わせていたというやや苦しいオチ。

ついに・・・ヒコノは幼馴染と再婚しているというオチである。

つまり・・・巧は・・・表面上は無実だったというオチ。

気まずさに満ちる一同だった。

特に・・・原因となった鷲尾は・・・罪滅ぼしをしなければならず・・・巧と依子に二人きりになる機会を作る。

「あるはずのない秘湯に二人を導く作戦」である。これがフリなのだ。

もちろん・・・道なき道を直進する依子が巧と二人で遭難するオチである。

帰ってこない二人を捜索する鷲尾と俊雄が二手に分かれるというフリ。

巧と依子は・・・お約束の山小屋に避難する。

見上げる天井の穴の果ての星空。

カレンダーをフリとするスーパームーンのオチ。

「月がきれいですね」

「月は見えません」

夏目漱石(1867~1916)の「英語の授業で I love you を月が綺麗ですねと意訳した伝説」を披露する巧。

依子は巧の教養にうっとりとする。

「私・・・巧さんの心を独占したいのです」

「僕の心なんかでよければすみずみまで全部あげます・・・そのかわり君がほしいです・・・すみずみまで全部ほしいです 」

見つめ合う二人は23時過ぎなのですっかりその気になるが・・・そこに俊雄が到着するオチ。

帰り道で三人は本当に秘湯を発見するオチ。

昼下がりの月が出ているオチ。

そして・・・国家公務員の人脈を駆使した横浜市消防音楽隊の協力による依子のマーチングバンド・パフォーマンスでプロポーズ。

美しいよ、依子、美しいよオチ。

結局、契約書を一から作り直すオチ。

秘湯の命名権オチ。

「依子の湯」オチ。

変顔オチである。

そして・・・リーガルハイの忘れられたあの人(フリ)のように・・・忘れられる鷲尾(オチ)・・・。

峰不二子 ○

峰竜太 ×

オチです。

関連するキッドのブログ→デート〜恋とはどんなものかしら〜・最終回

| | コメント (4) | トラックバック (10)

2015年9月28日 (月)

海内一致の政体を確立し自立自衛の国権を統轄せしめるべし~明治四年廃藩置県(石橋杏奈)

廃藩置県の前夜、大蔵省にあった井上馨は政府に建議する。

全国の租税をいかにして国庫におさめるか・・・という話である。

明治維新の成否はその一点にかかっている。

岩倉具視と三条実美を頂点とする王政復古の官僚システムはすでに現実的なものではなくなっているが・・・維新の元勲たちの間では暗闘が開始されている。

薩摩の大久保利通と西郷隆盛による文民統制と軍事独裁の軋轢である。

官僚派と反官僚派の対立と言うべき相克は長州にも生じている。木戸孝允を筆頭に伊藤博文、井上馨、山縣有朋らは官による全国統制を目指すが、前原一誠らは長州士族の保護を優先する。

しかし、軍事力がなければ官の統制は強制力を失う。

西郷隆盛の軍事的指導力は必要不可欠であった。

一方で西郷は・・・井上らの進める民力の活用には抵抗感がある。

武士という特権階級を否定すれば軍事力の維持は困難と想定するのである。

水面下の駆け引きは続く。

西郷は藩知事たちを東京に集め、廃藩置県のクーデターを実行し、岩倉は・・・中央から県令を派遣する。

現地出身者ではなく・・・他地方からの県令の任命。

それは・・・藩組織の解体を目指すものであった。

長州はその範となるべく・・・藩知事・毛利元徳を解任し・・・中野梧一を初代県令とする。

中野梧一は・・・彰義隊士であり、函館戦争に敗れ降伏した元幕臣だった。

で、『燃ゆ・第39回』(NHK総合20150927PM8~)脚本・小松江里子、演出・末永創を見た。例によってシナリオに沿ったレビューはikasama4様を推奨します。今回は二週連続新作の久坂美和描き下ろしイラスト大公開でお得でございます。別に美和は姉・寿の夫・楫取素彦と不倫関係にあるわけではないのに・・・初恋の人みたいな感じで描かれ・・・必要もなく手をとりあったりして・・・そういう描写を混ぜてくる・・・邪なスタッフの意図をお茶の間が感じちゃうわけですな・・・姉が死んで後家が後妻に入る・・・ロマンのかけらもない展開なのに・・・。どういう時代だったんだよ・・・。愛妻家だったらしい素彦は・・・亡き妻を忍んで美人ではなかったらしい美和をそれほど愛さなかったというもっともらしい話もあるのに・・・ねえ。火のない所に無理矢理、愛の炎を着火しすぎなんですな・・・。今回は・・・東京でいきなり、藩知事の権利を剥奪される元藩主たちの驚愕こそが・・・醍醐味だろうに・・・。全国に配置される・・・地元出身でないことが条件の県令たちのことこそ・・・説明すべきですよねえ。そもそも・・・楫取素彦はその流れに乗って・・・足柄県参事、熊谷県権令、群馬県県令と出世していくわけですしねえ。楫取家としてつながりのある下士や百姓たちに新制度を説明し・・・新政府の官僚になっていく姿を描くべきなのに・・・旧藩主の遺言を主人公が託されるという・・・とんでも展開に・・・まあ・・・基本的に・・・幕末をこよなく愛する一部愛好家は唖然とするしかないですよねえ。

Hanam039明治三年(1870年)山口藩の一揆を鎮圧した新政府は中央集権化の次の一手として廃藩置県を準備する。すでに財政的な破綻に失敗した小藩の中には廃藩を申し出るものもあった。薩長を中心とした政府軍の編成とともに・・・藩の解体を軍事的にも政治的にも進展させることが急務だったのである。士族による軍事独裁政権下の農業立国を目指す西郷隆盛を大久保は東京に招聘する。すべては・・・西郷軍とも言うべき軍事力の利用のためである。明治四年(1871年)一月、西郷は上京する。維新功労者の新政府登用を求めるためである。六月、大久保は人事刷新を行い、自らは大蔵卿となり、参議を木戸孝允と西郷に定めた。薩長の和解を目論んだものだが・・・近代化を求める木戸や大久保と・・・保守的な西郷には路線の違いがあった。七月、山縣と井上は廃藩置県を提議する。新政府による中央集権化の策として西郷は心を動かされる。島津、毛利、鍋島など有力な藩知事たちは皇居に召しだされ・・・廃藩の詔勅を告げられる。続いて再分化された県の統合が進められる。中央集権化のために県令には旧藩とは無縁の人間が配置される。薩長の有能な人材は・・・各地に天下っていったのである。十一月、岩倉具視を正使とする大使節団が米国に渡航する。木戸孝允、大久保利通を伴うために・・・留守を預かる実力者は西郷一人となる。西郷の監視役として井上は神経をすり減らすのだった。

「秀次郎・・・」

萩城下に戻り、久坂家の相続について手続きをしている美和は秀次郎が久坂の屋敷から消えていることにあわてた。

気配を探るが・・・その心は霧に包まれたように定かではない。

その朧な気配を追って美和は橋本川までやってきた。

突然、秀次郎の存在が明瞭になる。

川面にひょっこりと・・・秀次郎の幼い顔が浮かび上がる。

久坂玄瑞は水練が達者であった。

(河童の子は河童か・・・)

美和は血筋という感慨に心が波立つ。

「母上~」

その邪心を打ち消すように久坂秀次郎が笑顔を見せる。

思わず、顔が綻ぶ美和だった。

幼い久坂家当主は人間離れしたスピードで川を遡上していく。

周囲には冬の風が吹きわたっている。

「秀次郎・・・御風邪を召しますよ」

美和は叫んだ。

山口県の仮県庁となった山口城では東京行きを控えた楫取素彦が県令として赴任した中野梧一に最後の連絡業務を終えていた。

「県庁は・・・下関という案もあったと思いますが・・・」

楫取のもてなす茶を喫しながら中野は雑談としてつぶやく。

「お話した通り・・・藩・・・県内にはまだ・・・士族に特別なこだわりを持ったものがいます。これを慰撫するためには萩、下関、三田尻の重要拠点を見渡す・・・山口が・・・ということです」

「・・・なるほど・・・そのことは推薦者の井上様に・・・お聞きしております・・・なかなかに頑固なものが多いそうですな・・・」

「はい・・・中野様が・・・彰義隊にいたということだけで暗殺される惧れがあります」

「物騒ですな」

「しかし・・・長州・・・いや、山口県の主だったものは・・・そういう中野様が県令を無事に勤めてこその明治維新であると理解しております」

「・・・」

「山口の忍びのものは・・・すべて・・・中野様の警護にあたりますので・・・ご案じなされますな・・・」

「ふふふ・・・お飾りはお飾りとして・・・勤めを果たします」

「私もまもなく・・・関東に参ります・・・」

「敵地での任務はなかなかに歯ごたえがございますよ・・・どこも新旧交代には苦労しているようです」

中野は微笑んだ。

「とにかく・・・職業選択の自由、通婚の自由、服装の自由などの掟の解放と・・・私有地の許可で民を導くしかありませぬ・・・私も萩の郊外に新開地を指導して参りました。なにしろ・・・世は浪人だらけになる流れですからな・・・」

「俸禄を失うというのは・・・恐ろしいものですからなあ」

帝都・・・東京・・・。

大蔵省の事務室で井上馨は忍びからの報告に耳を傾ける。

「勝様から岩倉様に託された諸国名士録の写しでございます」

「幕府の隠密の諜報力はなかなかにあなどれんな・・・しかし、適材適所の人材を運用するには・・・重宝する・・・」

「薩摩くぐり衆では暗闘がはじまっております」

「西郷様と大久保様の主導権争いじゃ・・・西郷さんは愛すべきお方だが・・・愛が深すぎるからのう・・・」

「昨夜も酒席で井上様を商人贔屓と罵っておりましたぞ」

「西郷様は・・・農民贔屓・・・相場などというものは・・・お嫌いだからな」

「密談は鹿児島県の独自な兵制を推し進める計画です」

「密談も何も・・・となりの座敷に筒抜けの話ではないか・・・」

「・・・」

「結局・・・あの人は・・・愛するものたちに囲まれ・・・愛するものたちのために・・命を落される・・・惨いことだ」

「忍びに情けは禁物でございます」

「ふふふ・・・じゃったの」

井上馨は西洋酒をグラスに注ぐ。

明治四年が暮れようとしていた。

関連するキッドのブログ→第38話のレビュー

| | コメント (0) | トラックバック (3)

2015年9月27日 (日)

2030かなたの家族(瑛太)三十路のファーストキスはじめました(相武紗季)

本格的な谷間である。

なんだかんだと九月も終わりだな・・・。

天変地異の連続でなんとなく感覚が麻痺している気がする。

矢でも鉄砲でももってこいや的な・・・。

そんなこんなで・・・近未来世界のドラマ・・・。

まっしろ」で堀北真希の独身時代の幕を引いた脚本家である。

今、考えると・・・一種の罰ゲームだったのか。

しかし・・・親世代の死期にうろたえる心情みたいなものはなんとなく反映していたようだ。

これは一種の続編なんだな。

やすらぎを求めているんだねえ。

じたばたしてもしなくても「死」は必ず来る。

しょうがないじゃないか。

「ベンチッチって変な名前ね」

認知症の人に耳元で囁かれつづけることも・・・。

で、『2030 かなたの家族』(NHK総合20150926PM9~)脚本・井上由美子、演出・笠浦友愛を見た。15年後・・・を考える時には・・・つい15年前を考えてしまうものだ。もちろん・・・時代と地域によって変化は停滞したり加速したりするわけだが・・・2001年~2015年と・・・2015年~2030年・・・どちらが激変するのか・・・非常に微妙な問題である。少なくとも・・・2015年安保が馬鹿馬鹿しいほどに話題になることを21世紀初頭に予見していた人は少ないだろう。しかし・・・テレビというメディアが過渡期において・・・非常に偏向していくことは予想できたわけである。皆さまのNHKとか巨人軍のための日本テレビとか民主党的なテレビ朝日とか・・・ねえ。

とにかく・・・報道に接するには背景を想像することが大切である。

まあ・・・踊る阿呆に見る阿呆・・・同じ阿呆なら踊らにゃ損か得かよく考えよう。

2015年・・・カケルこと板倉掛(瑛太)は12歳・・・。

東京西部の郊外にあるニュータウンで板倉一家は花見を楽しんでいた。

父のトオル(松重豊)は41歳で働き盛り・・・不動産ディベロッパーとして都市開発を手掛けこのニュータウンもトオルが関わったビジネスのひとつである。

母のケイコ(小林聡美)は37歳で野心的な高級公務員。家族よりも仕事を優先するキャリア・ウーマンである。

トオルの父であるカツゾウ(山本學)は66歳、定年後は64歳の妻のサトコ(渡辺美佐子)とともにトオルと同居生活をしている。

カケルは・・・父と母の間にある・・・冷やかな関係に苦しんでいる。

特にケイコは・・・「家族」の存在に距離を置くようになっていた。

敏感なカケルは家族の崩壊が近いことを予見している。

「花見なんてつまらない・・・来年は桜なんか咲かなければいい・・・」

10歳の妹のエミイこと絵美衣(安藤美優→蓮佛美沙子)は・・・兄の鬱屈を理解することができず・・・鉄拳制裁を下す。

「お兄ちゃんのバカ・・・」

そして・・・時は流れた。

五年後・・・東京東部に高齢者専用居住区として「永遠シティ」が設立される。

ケイコは管理責任者として重要なポストを得て単身赴任に踏み切る。

すでに準備段階で板倉家からケイコはフェイドアウトしつつあった。

カケルはすでに覚悟していたために・・・それほど傷つかなかったが・・・優柔不断な性格となった。

母親の裏切りに・・・エミイは深く傷つき・・・祖母に育てられながら・・・心が彷徨う人間となる。

ただし・・・学習能力は抜群で・・・高学歴を獲得していった。

まもなく・・・トオルとケイコの離婚は成立し・・・家族は崩壊した。

東京五輪後の東京メガロポリスは・・・中央部に人口が集中する傾向を強め、周辺のニュータウンは過疎化していった。

少子化によってトオルの仕事は傾き・・・高齢化によってケイコの仕事は輝いて行く。

上昇志向の強いカツゾウは・・・ケイコのコネクションによって富裕者層向けの老人天国である永遠シティに高齢労働者として住み込む。

馴染みのない街に移転したサトコは活力を失い、認知症を発症する。

第一次沖縄独立住民投票。琉球人民共和国独立。

第一次沖縄内戦。

第一次中華人民帝国の沖縄占領。

第二次沖縄内戦。

第二次沖縄独立住民投票。琉球人民共和国消滅。

第二次中華人民帝国の沖縄占領。

2030年、北海道新幹線開通。ロシア連邦、火星に到着。インドにディズニーランド開園。

トオルの希望で一年に一度の家族会を行っていた板倉家だったが・・・母親譲りの能力で巨大企業のエリート社員となり東京中央部で働くエミィは家族会の廃止を提案する。

ロボットデザイナーとなって東京南部のシェアハウスで気ままな暮らしをするカケルは妹の提案に同意するのだった。

そして・・・家族は疎遠になった。

カケルは自室で・・・売上が伸び悩む家庭用執事人工知能ナルホド(小日向文世)の改良に取り組む。

「やあ・・・」

「ワタシハダルマジャナカッタ・・・タケシダッタ」

「いつの話だよ」

「ナヤミゴトガアリマスネ・・・ぱてぃしえニナルノハヤメナサイ」

「・・・」

カケルはシェアハウス利用者の一人、ミサエこと荻原美冴(相武紗季)から受胎のための精子提供を求められ困惑していた。

「子供なんか作ってどうするつもりなんだ」

「人間関係はシンプルな方がいいけれど・・・子供は欲しいの・・・」

「よく・・・わからないな・・・」

ミサエは教師であり・・・子育て支援に特化した学園都市への転居が決まっていた。

家族を捨てたカケルは道に迷い・・・父のもとへ向かう。

カケルが生まれ育った街はほとんど廃墟になっており・・・トオルはゴーストタウンの管理人になっていた。

「凄いな・・・今、人口何人いるの」

「12人だ・・・来年、移民法が成立すれば・・・たちまち人口密度は高まると思う・・・」

見果てぬ夢を見る父をカケルは相談相手にはできないと判断する。

永遠シティに向かったカケルは低所得者向けの義肢を装着しサイボーグとなった祖父の活力に圧倒される。

一方・・・祖母は軽度の認知症を発症し・・・どこか憂鬱そうである。

久しぶりにあった母のケイコは管理責任者としてパワフルに働いている。

「まだまだ拡張が必要なの・・・平均寿命は延びるし・・・老人人口は拡大する一方よ」

「・・・」

「そうそう・・・エミィの結婚相手とは会った?」

「け、け、結婚って・・・」

「梅さんかっ」

「ど根性ロスサービスでやんす」

カケルはトウキョウメガロポリスの心臓部に向かう。

千メートルを越える巨大構築物の連なる中央部は魔都のムードを漂わせる。

「彼女とは契約結婚をしましたが・・・半年で契約を解除しました」

「え」

「彼女とはビジネスパートナーでもあったのです・・・しかし、彼女はリスクのなんたるかをまるで忘れてしまったような・・・考えられないミスをしました・・・私は上司として彼女を解雇するしかなかった・・・ただ・・・結婚契約は延長するつもりでした・・・しかし・・・彼女の方から契約破棄を・・・」

「・・・」

東アジア共同体出身らしき妹の元夫は淡々と経緯を語る。

離婚したエミイはスラム化した北部の街の小学校で貧民共同体を経営していた。

「なにやってんだよ」

「スワロウテイルみたいな・・・」

「無国籍な自分探しごっこかよ・・・」

「ここにいるのは・・・親に捨てられた子供、子供に捨てられた親・・・だから・・・家族として再構築するのよ・・・私はみんなのママになるの」

「いかにも・・・危ない人たちもいるが・・・」

「偏見よ・・・彼らはアーティストなの・・・」

「・・・」

怪しげな男(落合モトキ)や女(高月彩良)を従えて原始共産性社会を模索するエミィ。

「ここには・・・無価値な人はいない」

「人間に価値があるかどうかは・・・神のみぞ知るだよ」

「あなたには・・・関係ないでしょう」

しかし・・・裏社会とつながっている底辺の男女は・・・非合法ドラックの生産拠点を地下に構築していた。

「あなたたち・・・ママの言い付けに背くの・・・クスリなんてやめなさい」

「グッバイ、ママ」

真面目な支配者を見捨て・・・無法者たちは去って行く。

「誰かを信じるから・・・傷つくんだよ」

「誰も信じないあなたより・・・マシでしょう」

「馬鹿だなあ・・・お兄ちゃんは・・・お前を信じているよ・・・」

「・・・お兄ちゃん」

家族への巡礼の旅を終えたカケルは・・・リニア新幹線で・・・南の学園都市へ向かう。

「精子提供は・・・できない」

「そうですか・・・」

「できれば・・・結婚を前提に・・・お付き合いがしたいのです」

「あら・・・」

「だめですか・・・」

「とにかく・・・一度相性を確かめてみましょう」

二人は・・・一夜を共にした。

「しょ・・・しょ・・・処女だったの」

「ど・・・ど・・・童貞だったの」

しかし・・・今から十年後でも・・・性行為はそれなりの快感をもたらすのだった。

「きさくなあのこめをとじとじ」

「関西方面の方は逆さに読まないでください」

カケルは両親と祖父母を花見の宴に招待した。

廃墟と化した街で・・・一家は桜の園を独占する。

「ケイコさん・・・子供がいるっていいでしょう」

「そうですね・・・離婚した夫と・・・フレンドリーな関係になることも可能ですし」

「おいおい」

「ケイコさんの玉子焼き・・・甘すぎるわ」

「お義母さん・・・いい年なんだから・・・塩分控えめで・・・」

「エミィも呼んであげればよかったのに・・・」

「エミィはスペースコロニーで難民支援してますよ」

家族たちは虚空を見上げた。

カケルは微笑んだ。

関連するキッドのブログ→若者たち2014

| | コメント (0) | トラックバック (1)

2015年9月26日 (土)

さらば合唱バカ・・・あの素晴らしいSOXをもう一度(芳根京子)

だれが「下ネタという概念の存在しない退屈な世界」をまぜろと・・・。

いやあ・・・ベタベタで茶番劇で文字通りの学芸会の緊張に耐えきれませんでした。

お待たせ・・・最終回だったからな。

まあ・・・歌っちゃうドラマとしては・・・最高だったんじゃないか。

見事に歌えるスターをそろえたよな。

とにかく・・・これで本当の谷間に突入できる・・・。

「ホテルコンシェルジェ」のゲスト・大野いとはいいのか。

美人すぎて変声・・・これは・・・難しいかもしれんね。

表参道高校合唱部で発声練習だ。

で、『表参道高校合唱部!・最終回(全10話)』(TBSテレビ20150925PM10~)脚本・櫻井剛、演出・石井康晴を見た。「愛の歌」を見つけた香川真琴(芳根京子)・・・。しかしおバカな両親は愛をこじらせて痛い感じのまま破局へ向かう。こんなに愛しているのになぜわからないとお互いに思っているのは明らかで・・・自分が傷つくくらいなら子供を傷つけるという情けなさである。だが・・・まあ・・・人間なんて・・・そんなものだからあ・・・。二人があんなことやこんなことをした結果、この世に生まれた真琴としては・・・もう一度、そのまぐわいの日々を両親に想起させるしかない。抑制の影に性欲があり、規制の闇に性器があるように表産道裏あなるだからである。なんのこっちゃ。

「お前、この野郎」

関西方面の方はお前をおめえと発音しないでください。

せっかく・・・両親に復縁のチャンスを与えたのに・・・変な男の意地を見せる父親の雄司(川平慈英)のために・・・離婚が成立しそうになり・・・真琴は思わず悪態をつく。

「すべては最終回のためだ」と誰かが囁く。

売られた喧嘩は買うタイプの母親の美奈代は「おとといきやがれ」と自分からすがりつくような真似はできないプライドの高さを見せる。

交渉決裂である。

「ああ・・・そうかい」

ついにきれる真琴だった。

心配そうに見つめる合唱部一同。

「歌いましょう」と誘うのだが・・・「歌なんか意味ないし」とぐれていく真琴。

「えええええええ」と驚く部員たち。

現実を見ない母親に嫌気がさして・・・父についていく覚悟を決める真琴だった。

「お父さんについていってもいいことないよ」

「だからこそでしょう」

「・・・」

こうして・・・東京残留・美奈代と真弓(松本来夢)、香川移籍・雄司と真琴とトレードが成立する。

驚く・・・ステキ男子のトッキュウ1号こと夏目快人(志尊淳)・・・遠距離片思いなんて嫌だと思うのだった。

一方・・・少子化に伴う生徒数の激減で・・・経営状態の悪化した表参道高校は廃校が決定。

翌年度の生徒募集は行われないことになった。

学校が消えてしまうことに激しく動揺する一同。

「歌え」と合唱部顧問の鈴木有明先生(城田優)は熱血指導するが・・・真琴というエンジンを失った合唱部は走らない。

「お前たち・・・それでいいのか・・・」

「でも・・・合唱バカがいない合唱部なんて・・・」

「彼女がいたから・・・今の私たちがあるのに・・・」

「だったら・・・なんとかしてやれよ」

「なんとかって・・・」

鈴木先生は思わず愛の歌を歌う。

「めぐりあい・・・宇宙だ」

「なんですか」

「結局、シャアは復讐するしかなかったんだよ」

そこへ・・・通りかかる大曽根校長(高畑淳子)・・・。

「その歌・・・懐かしいわね」

「ご存じなのですか・・・」

「あやまりながら家に帰る歌よ・・・」

「なるほど・・・」

「ガンダムネタは禁止だと・・・あれほど」

真琴は・・・お別れの挨拶のために鈴木先生を訪ねる。

「お世話になりました」

「お世話になったのは・・・俺の方だよ」

「・・・」

「あきらめるのか・・・」

「仕方ないんです」

「アムロは最後まであきらめなかったよ・・・」

「何の話ですかっ」

鈴木先生は・・・復縁のためのミュージカル大作戦を真琴に伝授するのだった。

赤い目をしていた真琴に・・・希望の光が差し込む。

「愛の歌」独唱は中島美嘉である。

合唱部と仲良くしたい相原ほのか(長谷川ニイナ)は照明係を買って出るのだった。

真琴が復帰した合唱部は一丸となって特訓に励む・・・。

すべては真琴のために。

真琴の願いである香川家の再結集を叶えるために・・・。

そして・・・ついに・・・真琴の自殺(ウソ)を口実に高校に呼び出される雄司と美奈代・・・。

あの日・・・どれだけ・・・愛し合っていたかを・・・二人に思い出させるための青春再現ミュージカルの開幕である。

「忘れてしまうのは・・・無責任」と瀬山えみり先生(神田沙也加)は語りだす。

若き日の雄司を演じる快人。

若き日の美奈代を演じる真琴。

昔から軽い女だった美奈代(佐藤玲)はスーパーフリーの大学生の餌食になりかかるところを・・・雄司によって救われる。

しかし・・・暴力沙汰によって・・・雄司(千葉一磨)は逮捕され・・・「僕は君を愛する資格がない」と・・・放浪の旅に出るのだった。

真相は知らない美奈代だったが・・・雄司の不在による逢えない日々に愛は深まって行く。

現在の美奈代と雄司・・・過去の美奈代と雄司・・・舞台の美奈代と雄司が交錯し・・・思い出は蘇る。

旅に出た雄司はバスの運転手(モロ師岡)や食堂のおばちゃん(森川葵)、そして元彼女(吉本実憂)などに出会い・・・人間的成長を遂げつつ・・・「愛の歌」を作る。

「逢えない時間が愛育てるのさ」

「つまらない約束なんてするだけ無駄」

「思い出より今が大事」

「好きなら好きと言えば良い」

若き日の大曽根を演じる佐々木美子(萩原みのり)は美奈代を励ます。

部長の相葉廉太郎(泉澤祐希)は美奈代の父・原田万歳(平泉成)を演じる。

ピアノを引き続ける桐星成実(琴平れもん)は美奈代の母の原田知世(立石涼子)・・・。

「まさか・・・お前が・・・犯人だったとはな・・・」

「あなた・・・私のもとから・・・突然消えたりしないでね」

宛先のわからない手紙を書く美奈代に・・・万蔵は・・・雄司からの愛の便りを渡す。

「まったく・・・お前が犯人だったとはな」

愛の歌の大合唱・・・。

「ここからは・・・二人で歌ってください」と長女。

「忘れちゃったわ・・・」と意地を張る母親。

「嘘をついちゃダメ・・・写真だって・・・手紙だって・・・大事にしているくせに」

次女は・・・スライドで・・・両親の恥ずかしい写真を披露するのだった。

青春・・・恋愛・・・結婚・・・出産・・・七五三・・・姉妹の成長・・・。

「もうやめてくれ」

「歌えばいいんでしょう・・・」

ミュージカルスターのデュエットに・・・天草教頭(デビット伊東)も涙ぐむ。

華やかな幕切れ・・・両親の誓いのキス。

「おえっ」

「おえっ」

「おえーっ」

「裏ではゴジラもげろげろげろげろげろ~」

大惨事である。

その模様を撮影する孤独なナンバーワン・竹内風香(小島梨里杏)・・・。

素晴らしいインターネットの世界に投稿された画像は一部愛好家に熱狂的に支持されるのだった。

「報道姿勢には問題があるがこのドラマはいい」

「売国的な偏向がドラマには感じられない」

「是非・・・ウチの子を入学させたい」

こうして・・・表参道高校は離婚の危機を乗り越えた。

原田家の営む蕎麦屋で・・・雄司はうどん担当になった。

2年C組は全員、合唱部に入部した。

「おれ・・・ふられたけど・・・彼女のこと忘れられない」

「もう・・・しょうがないなあ・・・」

優里亞は一肌脱いだ。

「私・・・快人くんが・・・好き・・・」

「俺もだ」

香川の香川の親友である蓮見(葵わかな)は尋問する。

「まさか・・・あなた・・・エッチを・・・」

「下ネタ禁止です・・・」

こうして・・・世界は・・・由緒正しいハッピーエンドを迎えたのだった。

鈴木先生は瀬山先生にデートを申し込んだ。

「たまたま・・・あいてますね」

「たまたま・・・」

「下ネタ禁止です」

大前提として下ネタは禁止されている。

表参道高校合唱部・・・来年はきっと全国大会に出場するのだろう・・・。

真琴の将来の希望は「合唱!!」なのだから・・・。

まあ・・・快人とは合体!!するのかもしれないが・・・。

美少女力的には夏ドラマナンバーワンだったな。

よかったよ・・・みんな・・・。

関連するキッドのブログ→第9話のレビュー

| | コメント (0) | トラックバック (6)

2015年9月25日 (金)

アンダーワールド~君は薔薇より美しい~(ケイト・ベッキンセイル)

谷間である。

21世紀の世界三大美人女優と言えば・・・「レオン」でおなじみナタリー・ポートマン、「パイレーツ・オブ・カリビアン」のキーラ・ナイトレイ、そして「アンダーワールド」のケイト・ベッキンセイルである。

根拠はない。

まあ、SF的でロマンチックで幻想的な美女たちだ。

今回は・・・シルバーウイーク中に「アンダーワールド」シリーズを一挙放送したローカル局があり・・・墓参りの前後にまとめてみたのである。

ヴァンパイア(吸血鬼)とライカン(狼男)の因縁は・・・語りだすと・・・世界の歴史を語りつくさねばならないほどの大だが・・・かなりコンパクトにまとめたわけである。

第4作には最強吸血鬼と最強狼男のハイブリッドによる最強ハーフが登場するわけだが・・・演じるのはインディア・アイズリーで母はオリヴィア・ハッセーである。ただし、1993年生まれなので1989年に離婚した布施明は父ではないのだった。

現実の世界もなかなかにロマンスがあふれているわけである。

「アンダーワールド」は秋には五作目がクランクインするらしい・・・。

で、『アンダーワールド(2003年)・アンダーワールド: エボリューション(2006年)・アンダーワールド:ビギンズ(2009年)・アンダーワールド 覚醒(2012年公開作品)』(TOKYO MX20150922AM10~)脚本・ジョン・ラヴィン(他)、演出・レン・ワイズマン(他)を見た。西暦千年にイシュトバーン1世が建国したハンガリー王国。辺境のトランシルヴァニアには古くからヴァンパイア(吸血鬼)の伝承があった。この物語に登場するアレクサンドル・コルヴィナス(デレク・ジャコビ)は不老不死の遺伝子を獲得し・・・世に潜む。しかし、コルヴィナスの息子のうち・・・兄のマーカス(トニー・カラン)は蝙蝠の遺伝子を取り込んでヴァンパイアの始祖となり、弟のウィリアム(ブライアン・スティール)は狼の遺伝子を取りこむと人狼に変身してしまう。歳月が流れ・・・人狼から生まれたライカン(狼人間)とヴァンパイアは生き残りを賭けて抗争を繰り広げるようになる。21世紀・・・800年間に渡り・・・ライカン・キラーであるヴァンパイア一族の処刑人を務めてきたセリーン(ケイト・ベッキンセイル)はヴァンパイア一族のリーダーであるクレイヴン(シェーン・ブローリー)の行動に不審を感じる・・・。

アンダーワールド

ヴァンパイアの弱点は紫外線・・・ライカンの弱点は銀である。

夜に生きるヴァンパイアのセリーンは銀の弾丸を込めた銃で武装し、ライカンを狩る。

ある日、ライカンを発見したセリーンは・・・彼らが一般男性のマイケル・コーヴィン(スコット・スピードマン)を追跡していることを知る。

マイケルは・・・人間としてコルヴィナスの血を継承してきた男だった。

セリーンはマイケルに魅了され・・・ヴァンパイア一族の掟を破って人間であるマイケルをヴァンパイアの館に連れ帰る。

人類の影の支配者として君臨してきたヴァンパイアたち。

始祖であるマーカス、マーカスの君主であったビクター(ビル・ナイ)は深い眠りの中にあり、現在は三人の長老の一人、アメリア(ジータ・ゴロッグ)だけが目覚めている。

ビクターの代理人を務めるクレイヴンは現在の地位をライカンの指導者ルシアン(マイケル・シーン)を殺害したことによって獲得していた。

ルシアンを失ったことでライカン族は力を弱め、ヴァンパイア族が優勢になったのである。

つまり・・・ライカンたちは不死の存在ではないのだった。

同じようにヴァンパイア一族も・・・致命傷を負えば滅びるのである。

しかし・・・セリーンは死んだはずのルシアンが生きていることを知る。

ルシアンに噛まれたマイケルはライカンとなるが・・・始祖の血が彼を銀に耐性を持つスーパーライカンへと変身させるのだった。

ルシアンはマイケルを使ってライカンの強化を目論んでいたのである。

ヴァンバイアから獣と蔑まれるライカンたちは・・・対ヴァンパイアに有効な紫外線弾さえ開発していた。

マイケルの争奪戦が展開する間に・・・セリーンは・・・ヴァンパイアのクレイヴンとライカンのルシアンとの間に密約が存在していることを知る。

クレイヴンはヴァンパイアの長老の座を狙っていたのである。

セリーンは血を授かった吸血鬼としての父である長老・ビクターを覚醒させる。

14世紀・・・人間だったセリーンの家族が人狼によって殺害された時、ビクターがセリーンを助け、ヴァンパイアの一族に加えたのである。

セリーンにとってビクターは神だった。

しかし、ビクターはセリーンの告発を聞き入れず・・・クレイヴンに信頼を寄せる。

掟を破ってビクターを復活させたセリーンは監禁の憂き目にあう。

だが・・・ルシアンは長老のアメリアを襲い・・・高貴なヴァンパイアの血液を入手していた。

スーパーライカンとなったマイケルをヴァンパイア化し・・・スーパーハイブリッドを誕生させる。

ルシアンは・・・ヴァンパイアとライカンを統合しようと目論んでいたのである。

セリーンは監禁室から脱走し、ライカンの科学者ジンゲ(アーウィン・レダー)を捕える。

噛むことで遺伝子に記録された記憶情報を読みとることのできる不死の一族。

ビクターはジンゲから・・・クレイヴンの裏切りの証拠を得るのである。

一方、セリーンはクレイヴンから・・・ビクターの真実を知る。

セリーンの一族を殺したのはビクターだった。

「なぜ・・・私だけを助けたの・・・」

「お前が・・・彼の死んだ娘に・・・そっくりだったからだ」

一方、マイケルはルシアンの血によって・・・ルシアンの恋人だったソーニャがビクターの娘だったことを知る。

「ライカンはヴァンパイアの奴隷だった・・・ヴァンパイアを日光から守ってきたのだ。しかし、ソーニャはライカンを愛し、俺の子を宿した。禁じられた関係は・・・ビクターを激怒させた・・・彼はソーニャを処刑したのだ」

ヴァンパイアとライカンの乱戦の中・・・セリーンはマイケルと協力し・・・ビクターの殺害に成功する。

数百年の時を越え・・・復讐は完成した。

しかし・・・掟を破ったセリーンはヴァンパイア一族からも・・・ライカンからも追われる立場となったのだった。

アンダーワールド: エボリューション

ライカンのジンゲの流した血液は・・・最後の長老となったマーカスを覚醒させる。

13世紀・・・マーカスの血を受けて領主のビクターはヴァンパイアとなると強いリーダーシップを発揮する。

その頃、人狼となったウイリアムは見境なく人間を襲い、王となったビクターを困惑させる。

人間が人狼化すれば・・・税収が減るのである。

弟に特別な愛情を注ぐマーカスの反対を押し切ってウイリアムを捕獲したビクターは秘密の牢獄に監禁する。

マーカスに牢獄の場所を隠すために・・・ビクターは関係者を処分する。

その中にセリーンの一族が含まれていたのである。

セリーンはヴァンパイアとなったが・・・牢獄の場所を知っていた。

そして・・・ルシアンの恋人・ソーニャは父から秘密の鍵を送られていた。

ルシアンは・・・ソーニャの死後・・・そのベンダントを入手する。

そして・・・牢獄の鍵はマイケルに贈られる。

セリーンとマイケルは・・・ウイリアムを解放するためのセットとなっていた。

目覚めたマーカスは・・・ジンゲというライカンの血によってスーパーヴァンパイアと化していた。

飛行能力と強力な触手を持つモンスターに変身可能となったのである。

盲信的に愛する弟の解放に目がくらんだマーカスは手段を選ばず・・・セリーンとマイケルを追い詰める。

ウイリアムを解放されたら世界が滅ぶと考えたセリーンはマーカスに敵対する道を選ぶ。

逃亡を続けるセリーンとマイケルがたどり着いたのは・・・一千年の間、隠れ潜んでいた始祖・アレクサンドル・コルヴィナスの秘密の船だった。

「あなたなら・・・ウイリアムを殺せたはず・・・」

「可愛い息子を殺せるものか・・・」

不死人たちの肉親に寄せる愛情は・・・異常なのである。

吸血鬼一族と狼人間一族の暗闘を歴史の闇に隠してきたのは・・・アレクサンドルだったのである。

「後始末は・・・大変だ」

「だから・・・ウイリアムを殺しておけば・・・」

「だから・・・息子を手にかけることなんてできないよ」

アンダーワールドでは女たちは恋に盲目、男たちは子供を溺愛するのだった。

ついにマーカスは父であるアレクサンドルを殺し牢獄の鍵を入手する。

セリーンはアレクサンドルから始祖の血を受け継ぎ・・・紫外線を克服する。

ウイリアムを解放するマーカス。

洞窟の中の秘密の牢獄で・・・吸血鬼と狼男の兄弟と・・・スーパーハイブリッドの恋人たちは死闘を繰り広げる。

そして・・・セリーンとマイケルが勝利をおさめるのだった。

アンダーワールド:ビギンズ

ライカンの始祖であるウイリアムに噛まれた人間は人狼になる。

ライカンとは違い・・・一度、人狼になれば人間に戻ることはできない。

狂暴な獣として一生を終えるのである。

捕獲した人狼を研究していたビクターはある日・・・ライカンの始祖・ルシアンを発見する。

人狼でありながら・・・人間の姿をした赤ん坊・・・。

ビクターは殺意を抑え・・・ルシアンを奴隷として育てる。

成長したルシアンはビクターの忠実な下僕として使え、ヴァンパイアの奴隷としてのライカン族を生み出していく。

ビクターは支配する人間の一族から差し出された奴隷をルシアンに噛ませたのである。

ビクターの娘・ソーニャ(ローナ・ミトラ)は父親に反抗的な女戦士だった。

しかし・・・ルシアンに助けられたソーニャは・・・やがて・・・道ならぬ恋に落ちて行く。

奴隷であり、ライカンであるルシアンとの密通。

それは・・・絶対に父には知られてはならない関係だった。

しかし・・・二人の関係をビクターの秘書官タニス(スティーヴ・マッキントッシュ)が見抜いている。

ウイリアムの生み出した人狼は健在であり、増殖を続け、ビクターの悩みの種となっていた。

夜になれば・・・ヴァンパイアの処刑人たちは人狼狩りを続けるが・・・昼間、人狼は自由に人間を襲う。

人狼の増殖を食い止めなければ・・・ヴァンパイア一族は支配者たちの権威を失うのである。

父親の命令に背いて人狼狩りに参加したソーニャは人狼の大軍に囲まれて危機に瀕する。

ルシアンは掟にそむいて自ら首輪を解き・・・救出に駆けつけるのだった。

ルシアンには人狼を従わせる能力があった。

ソーニャの救出に成功したルシアンだったが・・・掟を破った報いにより、使用人の身分を剥奪されてしまう。

奴隷階級となったルシアンは・・・ライカン解放運動のリーダーとなっていく。

ソーニャと駆け落ちするために・・・ライカンたちと脱走するルシアン。

脱走は成功するが・・・ソーニャは監禁されてしまう。

ソーニャを救出するために単独で戻ったルシアンも囚われの身になる。

ソーニャはルシアンの解放を願い出るが・・・ソーニャがルシアンの子を宿していることを知ったビクターは苦しい立場に追いやられる。

ヴァンパイア族の掟で・・・ライカンと密通することは死罪と定められていたのだった。

ヴァンパイアの評議会で・・・娘の処刑に一票を投ずるビクター。

「もう・・・かばいきれぬ・・・」

「お父様・・・」

「実の娘を殺すのですか」

「そうさせたのは・・・お前だ・・・息子のように育てたのに」

「・・・」

ルシアンの目の前で・・・ソーニャは陽光を浴び・・・燃え尽きた。

ルシアンは咆哮する。

その声に応え、ライカンと人狼の軍団がヴァンパイア城を急襲するのだった。

変身したルシアンは脱出に成功し・・・ソーニャのペンダントを形見として身につける。

それは・・・ウイリアムの牢獄のために用意された鍵だった。

こうして・・・ヴァンパイア一族とライカン一族の戦争が開始される。

アンダーワールド 覚醒

時は過ぎ去った・・・不死人の始祖であるアレクサンドルも・・・ヴァンパイアの始祖であるマーカスも・・・人狼の始祖であるウイリアムも・・・ヴァンパイアの支配者となったビクターも・・・ライカンの始祖となったルシアンも・・・すべては滅んだ。

スーパーハイブリッドとなった最強のヴァンパイア・セリーンと最強のライカン・マイケルはつかの間の幸福を得た。

しかし・・・人類はついに・・・不死人の存在に気がつく。

ヴァンパイアとライカンを感染症の一種と断定し・・・その撲滅運動が始ったのである。

人類は不死人たちを容赦なく、粛清し・・・殺戮する。

危機を感じたセリーンとマイケルは都市圏からの脱出を図るが・・・対ライカン弾により、意識を消失したマイケルを救おうとしたセリーンは高性能爆弾の衝撃で意識を失う。

バイオ企業アンディジェン社の研究室で覚醒したセリーンは十数年の歳月が流れていることに驚くのだった。

被験者一号と名付けられたセリーンを救ったのは被験者二号と呼ばれる存在だった。

セリーンには被験者一号の体験が遠隔で共有できるのである。

しかし・・・捜しあてた被験者二号は見知らぬ少女イヴだった。

イヴとともに人類の迫害を逃れ地下に潜むヴァンパイア一族の隠れ家に避難したセリーン。

しかし・・・隠れ家は・・・巨大化したライカンの一団に襲撃される。

不死人化した妻を殺戮され・・・セリーンに同情を寄せる刑事と・・・ヴァンパイア一族の青年の協力を得て・・・真相に迫るセリーン。

「いつか・・・母親に会えると・・・ずっと空想してきた・・・でも・・・あなたの心は冷たかった」

「私は・・・恋人と逃げようとして気を失い・・・気がついたら・・・あなたがいたの・・・私の心は冷たいのではなく・・・壊れていたの」

「・・・」

「あなたの父親のことは・・・何か感じない?」

「何も・・・」

ジャイアント・ライカンとの対決に敗れたセリーンはイヴを奪われてしまう。

出会ったばかりの娘を救出するために・・・アンディジェン社に乗り込むセリーン。

そこは・・・銀に対する耐性を獲得しようとするライカンたちの巣窟だった。

ジャイアント・ライカンは研究の成果である。

「これは・・・ヴァイオ・ハザード的なものに・・・なってきちゃってるわよね」

「それは禁句です」

救出劇の最中・・・被験者ゼロ号であるマイケルを発見するセリーン。

しかし・・・ジャイアント・ライカンとの戦闘中にマイケルは何者かに連れ去られてしまう。

死闘の果てにイヴの救出に成功するセリーン。

しかし・・・ヴァンパイアとライカンの戦争は・・・人類を加えてみつどもえに発展したのである。

サーガはどこまでも壮大に・・・そして終わらないという宿命があります。

関連するキッドのブログ→ダレン・シャン

ザ・ライト -エクソシストの真実-

キック・アス

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2015年9月24日 (木)

SPEC~結~漸ノ篇・爻ノ篇(戸田恵梨香)陰陽交わりて太極となる(加瀬亮)

太極とは宇宙、あるいは宇宙の原理で唯一無二のものである。

しかし、根本原理は二元論に通じて行く。

月と太陽、女と男、正と負、あなたとわたし・・・。

一神教では・・・神は善悪を超越するが・・・そうなると神と悪魔の一体感が生じる。

善神と悪神は総じて神となり、神は聖と邪に分離する。

人類の存亡をかけて展開するこの物語・・・。

しかし・・・大銀河の辺境にある太陽系の一惑星の話と考えると・・・実はローカルな話なのである。

すべての世界は滅びる運命だが・・・滅びた世界と滅びつつある世界には陰陽の二極が浮かび上がる。

全能ゆえに実体がなく・・・無能ゆえに虚無ではない。

二つの存在は・・・境界線で・・・仄かな火花を散らすのだ。

で、『SPEC~結~漸ノ篇・爻ノ篇(2013年劇場公開作品)』(TBSテレビ20150923PM7~)脚本・西荻弓絵、演出・堤幸彦を見た。1950年代生まれの脚本家と演出家である。当然のようにコミックやアニメの影響を受けている。冒頭・・・世界のどこかで・・・野々村光太郎(竜雷太)のメッセージを伝える正汽雅(有村架純)は「銀河鉄道999/松本零士」のヒロイン・メーテルのコスプレをしているわけだが・・・最後に「ケイゾク」シリーズとしての余韻を伝える男女はキャプテン・ハーロック(井上真樹夫)とクイーン・エメラルダス(田島令子)である。一方、先住民と原住民の確執は「ゲゲゲの鬼太郎/水木しげる」の基本的なアイディアである。鬼太郎は人類に滅ぼされた霊人類の子孫なのである。鬼太郎(妖怪)が妖怪を退治する図式は当麻紗綾(戸田恵梨香)とスペックホルダーたちとの対決として展開されていく。水木しげるは1920年代生まれであり・・・従軍して左手を失っている。その作品からは「戦争に対する嫌悪」が滲みでる。松本零士は1930年代生まれであり、戦時中は少年だった。作品で戦争を賛美するわけではないが・・・平和国家としての日本を賛美するわけでもない傾向もある。武装解除され、与えられた平和を生きる人間に冷たい眼差しを送っていることが随所に見られるのだ。なんてったって「宇宙戦艦ヤマト」だ。戦後生まれの日本人は・・・成長するにつれ・・・敗戦国の現実を学んでいくわけであるが・・・水木しげると松本零士は・・・陰陽交わりて太極になっているのである。

スペックホルダー争奪戦はやがて・・・人類とスペックホルダーの種族間戦争の色合いを深める。

世界を支配するものたちの・・・思惑と・・・街の治安を守る刑事たちの・・・魂は・・・いつしか・・・激しくスパークしていくのだった。

スペックホルダーによる犯罪を捜査してきた警視庁公安部公安第五課未詳事件特別対策係の刑事である瀬文焚流(加瀬亮)は相棒の当麻紗綾が「死者を召喚するSPEC」を持っていることに激しく動揺する。

一方・・・死者の存在する場所(冥界)と接続することによって当麻紗綾は「地獄の亡者」たちに心を浸食される。

「私が・・・堕ちたら・・・迷わず撃ってください」

「俺を信じろ」

二人の絆は深まり・・・それは愛というものに限りなく近い。

だが・・・男女交際に関して初心な二人は・・・それを表沙汰にすることはない。

その点に関しては・・・野々村係長と雅その愛があれば充分なのである。

「刑事の妻として・・・内縁だけど・・・覚悟はできてます」

「みやびちゃん・・・」

刑事というものは殉職するために生まれてくる存在なのだ・・・とにかく刑事ドラマでは。

本編は・・・ゴリさん第二の殉職の物語と言っても過言ではない。

ドラマ「ケイゾク」では柴田純(中谷美紀)と殉職した真山(渡部篤郎)の上司だったゴリさんもついにその時を迎える。

「生きて帰ってくると約束したのに・・・」

「・・・」

遺体にすがりつく雅に無言で答えるゴリさんだった。

「ケイゾク」の真山刑事は・・・謎のスペックホルダー朝倉(高木将大)に妹の沙織(多田亜沙美)を凌辱の上で殺害されており・・・復讐心による狂気を秘めている。真山刑事の心は烏によって監視されていた。

人間に生じる心の闇を・・・監視するのが烏の宿命だからである。

やがて・・・本編では・・・烏の正体が明らかにされていく。

烏たちは・・・冥界にあるスペックホルダーの象徴だったのである。

例によって不死身のSPECで蘇生した瀬文は内縁の妻である青池里子(栗山千明)が娘の潤(森山樹)とともに消息不明になっていることを知り動揺する。

潤は時をかける少女であり・・・時間を小刻みに移動するためにしゃっくりが止まらない女(大島優子)と時空連続体を形成している。

やがて・・・新たなスペックホルダー・プロフェッサーJ(遠藤憲一)が現れる。

Jは当麻の父親(佐野元春)の親友・湯田秀樹を装い、当麻家に侵入。

死体に憑依するSPECにより、殺害した当麻の祖母(大森暁美)に憑依し、当麻暗殺を謀るが失敗する。

一方・・・日本国の影の支配者である卑弥呼(北大路欣也)ともつながっていた野々村は・・・米国の影の支配者が実行する「シンプル・プラン」を阻止するために動き出す。

「シンプル・プラン」はスペックホルダーだけを殺すインフルエンザ・ウイルスによる・・・虐殺計画だった。

なぜ・・・スペックホルダーだけを殺すインフルエンザ・ウイルスが存在するのか・・・それは・・・人類の遺伝子が・・・ウイルスに対して弱肉強食の論理で挑む・・・宇宙生命体との混血によって生み出された外来種だったからである。

地球生命体ガイアと共存する旧人類は・・・外来種である人類との生存競争に敗れたのである。

スペックホルダーは・・・旧人類の名残だった。

そのために・・・インフルエンザ・ウイルスに対する抵抗力が低いのであるる

時をかける少女はガイアの一部であり・・・本来・・・霊体であるが・・・智子の妊娠出産によって肉体を得たのである。

人類の滅亡を願う旧人類の意志の結晶である霊体・セカイ(向井理)こそが世界の真の黒幕だった。その正体はゲゲゲの女房の夫である。

セカイは人類そのものを激しく憎悪する。

人類が憎悪の結晶体だからである。

その激しい矛盾に立ち向かう当麻。

当麻の中に殉職した野々村の言葉が蘇る。

「人類の可能性を阻止するものと・・・人類の可能性を信じるもの・・・これは・・・そういう戦争なんだよ」

「我々は戦争はしない・・・ただ・・・人類が滅びるのを眺めるだけだ」

「詭弁よ・・・あなたは仕組んだじゃない」

「・・・」

「神の意志に逆らうものを容赦しないだけだ」

「神が聞いてあきれるわ・・・あなたはただ・・・勝者を許せない敗者・・・それだけの存在よ」

「ふふふ・・・それなら・・・どうする」

「あなたをあなたのいるべき世界へ送ってやる・・・この堕天使野郎」

「なんという暴言だ・・・」

「すべてはダメで元々なんだよ」

Jは御前会議が保護していたスペックホルダーにウイルスを感染させる。

「ケイゾク」では婦人警官だった今井夏紀は・・・スペックホルダーの少女に転生していた。

その死に際して当麻も感染する。

怒りに萌えた当麻は地獄の門を開く。

当麻の左手は冥界への鍵だった。

「お前が世界の秘密の鍵を開くソロモンの鍵・・・人類を滅亡させる・・・引き金なんだよ」

「スペックホルダーは霊体化して・・・復活の時を待つのよ」と時をかける少女。

「すべては計画通り」とユダ。

東京に立ち上るキノコ雲・・・赤く染まる世界。

「人類滅亡の始りだ・・・疑心暗鬼に陥った核保有国はドンパチを始める」

「ウイルス兵器を作りだす米国も・・・クローンスペックホルダーを研究する中国も・・・所詮、同じ穴の下等生物なのよ」

「残念でした」

当麻の左手SPECによって蘇るスペックホルダーたち。

サトリは神の心を悟り、志村美鈴(福田沙紀)は神の暗躍を少し読みとり、冷泉俊明(田中哲司)は神の未来を予知する。

「お前たちの計画なんて・・・お見通しなんだよ」

「ばかな・・・」

「お前たちは・・・平和共存と弱肉強食の境界線に生まれる愛ってやつを知らない」

「愛?」

「だから・・・地獄がお似合いなんだ・・・さあ・・・行こう・・・死者がいるべき世界へ」

当麻は・・・セカイを飲みこむ。

「そんな・・・バカな」

「瀬文さん」

当麻は世界と戦っていた。

「当麻」

「これしかないの・・・刑事でしょう」

瀬文は・・・セカイを飲みこんだ当麻を射殺する。

肉体を失った当麻の魂は・・・セカイを地獄に引きずり込んだ。

たちまち世界は旧人類の記憶を失う。

世界の目論んだ人類滅亡計画は幻想となる。

そして・・・瀬文は刑事殺しの汚名を着た。

人々の暮らしを守る刑事としてやるべきことをやったのだ・・・。

宇宙は無限の泡で構成されている。

当麻の右手は・・・あらゆる宇宙の可能性とつながっていた。

当麻は漂う・・・あらゆる時空を・・・。

当麻の消えた世界で・・・孤独を噛みしめる瀬文。

当麻は瀬文に手を差し伸べる。

その手を瀬文はしっかりとつかんだ。

無数の泡の一つの世界。

時間を遡上した当麻は・・・瀬文と肩を並べ雑踏に消える。

巻き戻され・・・再生される世界。

当麻陽太(神木隆之介)は停止された時間の中で・・・悪意に満ちたスペックホルダーを眺める。

朝倉は友人たちを狂わせ・・・少女を凌辱しようとしている。

陽太は下半身を丸出しにした男たちを交番の前に並べておいた。

そして・・・指を鳴らした。

悪意に満ちた烏は・・・絶望の吐息をもらす・・・。

真山は柴田を見て微笑む。

そして・・・SPECは夢となった。

関連するキッドのブログ→劇場版 SPEC〜天〜

| | コメント (2) | トラックバック (2)

2015年9月23日 (水)

デザイナーベイビー~速水刑事、産休前の難事件~(黒木メイサ)おめでた刑事かよっ(臼田あさ美)

次から次へと登場する重厚なメンバーたち。

2012年に一児の母となった黒木メイサが妊娠8ヶ月の刑事役である。

何やら・・・裏でやっているらしい産婦人科の教授が・・・渡部篤郎と渡辺いっけいだ。

病院長が柴俊夫で、人工授精を専門に行う胚培養士が斉藤由貴。

新生児を盗まれる女が安達祐実で、盗む女が安藤玉恵。

それを追跡する刑事たちが・・・神保悟志、手塚とおる、渡辺大知・・・。

もう・・・お腹一杯だぞ。

掟やぶりの夏の終わりの秋ドラマスタートを敢行する仁義なき公共放送である。

マイペースだよなあ・・・。

で、『デザイナーベイビー~速水刑事、産休前の難事件~・第1回』(NHK総合20150922PM10~)原作・岡井崇、脚本・早船歌江子、演出・岩本仁志を見た。あくまで谷間である。原作から相当なアレンジをしているようでそもそも・・・主人公は速水刑事ではない。だが・・・出産間近の女刑事が有能さを買われて新生児誘拐事件の現場に投入されるという奇妙な展開は・・・女優として静かな成長を見せる主役の実力で意外な奥深さを感じさせる初回となっている。つまり・・・面白いのだ。

城南大学附属病院産婦人科・・・高度生殖補助医療を行う「トータルケアプロジェクト」の特任教授・崎山典彦(渡辺いっけい)は脚光を浴びていた。

オリンビックで金メダルを獲得したマラソンランナー・近森優子(安達祐実)の不妊治療に成功し・・・優子は無事に女児を出産したのだった。

一方、産婦人科のもう一人の教授である須佐見誠二郎(渡部篤郎)は子供を流産した患者である岸田トモ(安藤玉恵)に責められていた。

「こんなことにはならないはずじゃなかったのですか」

「母子ともに・・・危険な状態だったのです」

「赤ちゃんを返して」

分娩のエキスパートである須佐見にとって・・・それは避けられない処置だった。

周産期の専門医である柊奈智(伊藤裕子)が愕然とする事件はその後で発覚する。

優子の病室から・・・新生児が消えたのである。

半狂乱となる優子。

病院長の峠緑郎(柴俊夫)が不在のために・・・事務長の大井出慎(佐伯新)は警察に通報する。

警視庁捜査一課特殊犯捜査係は日村係長(神保悟志)を現場に派遣する。

デリケートな事件であることから・・・腕利きの西室刑事(手塚とおる)は相棒の速水悠里(黒木メイサ)の現場投入を進言する。

若手の福ちゃんこと土橋福助刑事(渡辺大知)は・・・産休間近のために庶務課に異動していた速水刑事をお迎えに出向くのだった。

速水刑事は・・・優子から・・・命名の前ながら・・・新生児を「望」と名付けたかったことや・・・長男に電話をするために・・・病室に新生児を残していた事実を聞きだす。

その時間、アリバイのない須佐見教授が容疑者の一人として浮上する。

「ライバルの担当患者なんですよねえ・・・消えた赤ちゃんは・・・」

「私を疑っているのか・・・証拠でもあるのか」

西室刑事の追及に激昂する須佐見教授だった。

速水刑事は言う・・・。

「犯人は赤ちゃんが・・・欲しかったんでしょうねえ」

病院長秘書の有吉久美(臼田あさ美)が死産患者のリストを届けたことによって・・・須佐見はようやく・・・犯人に心当たりが生じるのだった。

非常階段で・・・岸田トモに連絡する須佐見教授。

受話器の向こうでは新生児の泣き声が響く。

電話に出たトモの夫・裕也(淵上泰史)は須佐見を罵倒する。

「どうなってんだよ・・・お前・・・何したんだよ」

「とにかく・・・その子を・・・」

電話は切れた。

岸田夫妻は「望」を連れて行方をくらますのだった。

須佐見を尾行した福ちゃんは事態を察知する。

カフエを経営する夫の浩介(山崎樹範)に連絡するために屋上に出た速水刑事は・・・人工授精を専門に行う胚培養士の山原あけみ(斉藤由貴)と知りあう。

「あなた・・・ここの患者・・・?」

「あなたは・・・」

「私はね・・・受精卵をいろいろアレする人・・・」

「いろいろ・・・アレですか」

「そう・・・日本ではまだまだデザインベイビーってわけにはいかないけどね」

「デザイン・・・ベイビー・・・」

「そうだよ・・・世界では・・・もう・・・凄いことが行われているんだよ」

「・・・」

逃亡中の岸田裕也から病院に電話が入る。

呼びだされた須佐見が手際よく対応できないために・・・交渉役を買って出る速水刑事だった。

「赤ちゃんを返して・・・」

「あんた・・・誰だ・・・」

「ノゾミの母親よ・・・」

「知ってるぜ・・・マラソンの近森優子だろ・・・俺はあんたみたいなのが一番嫌いなんだ・・・お気楽に出産しやがって・・・」

「同じよ・・・私も不妊治療をして・・・ようやく授かった子なの・・・だから・・・赤ちゃんを返して」

「俺たちも・・・須佐見に何度も同じことを言った」

「須佐見先生と同じことをしないで・・・ノゾミを返してください」

「須佐見に二千万円用意させろ・・・そしたら・・・ノゾミは返す」

何度かのやりとりで・・・逆探知に成功する刑事たち・・・。

しかし・・・速水刑事は・・・誘拐事件の裏に・・・病院の中にある深い闇の匂いを嗅ぎつける。

「この病院には何かあります」

「何があるんだよ・・・とにかく・・・お前はもういいよ」

「いえ・・・ノゾミちゃんをお母さんの元に返すまでは・・・帰れません」

「やはり・・・おめでた刑事か・・・」

「私は・・・薬師丸ひろ子じゃないですよ」

「あまちゃんか・・・あれはおめでた弁護士だし」

「NHKだけどなっ」

関連するキッドのブログ→ギネ 産婦人科の女たち

新参者

| | コメント (0) | トラックバック (1)

2015年9月22日 (火)

あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。(浜辺美波)A感覚夢幻地獄(松井愛莉)

稲垣足穂(1900-1977)の名前になんらかの感傷を知る人も少なくなっているだろう。

Aと聞いただけで美少年を思い浮かべる人も超少数派だと思われる。

基本的にA感覚はV感覚と対立するわけだが・・・A感覚は人類共通という強みがある。

大学時代の先輩たちに「コレ」について熱中しているグループがいて・・・こういうタイトルの自主制作映画があったことを懐かしく思い出す。

ちなみに・・・キッドの悪魔名は「ANUS」であるが・・・まあ・・・どうでもいいな。

そういう悪魔の物語の映画を自主制作した時に・・・その役を演じた親友は・・・「この役名なんとかならないか」とつぶやいた。

ついでに「ANUS」は名詞であり、「ANAL」は形容詞である。

「ANAL」なんとかという場合は、「ANUS」による~ということである。

まあ・・・なんだかんだあるわけだが・・・美少女に「あなる」なんていう仇名をつけてしまう子供の無知で無邪気なことはものすごく困ったものだという話である。

で、『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』(フジテレビ20150921PM9~)原作・超平和バスターズ、脚本・いずみ吉紘、演出・西浦正記を見た。尻穴・・・じゃなくて谷間である。植物学系に進むものが一人もいないグループではよくある話だ。花を観察し、その花の名称を知っていることが恰好いいと思うかどうかも人それぞれであろう。まあ・・・「あの花なんて名前?」と聞かれて答えられないお父さんお母さんは少し恥ずかしい。高校時代も幼少時代もはるか彼方の思い出にすぎない人にはニヤニヤするしかないこのアニメを・・・実写化するとは・・・若いって素晴らしい。

とにかく「secret base 〜君がくれたもの〜/ZONE」(2001年)は名曲なんだな。

秩父市のとある田舎町。じんたんこと宿海仁太(南出凌嘉→村上虹郎)はめんまこと本間芽衣子(谷花音→浜辺美波)、ゆきあつこと松雪集(佐藤瑠生亮→志尊淳)、つるここと鶴見知利子(飯豊まりえ)、あなること安城鳴子(吉岡千波→松井愛莉)、ぽっぽこと久川鉄道(高橋幸聖→高畑裕太)と幼馴染の間柄。

小学生時代、じんたんを隊長に「超平和バスターズ」という組織を結成し、秘密基地で陰謀を巡らせていた仲間たちである。

ある日、目覚めたくない男子と・・・目覚めたい女子の軋轢が生じる。

じんたんと結婚したいと考えたあなるは・・・仲睦まじいじんたんとめんまに嫉妬し・・・決着をつけるべく挑戦状をたたきつける。

「どうでもいいけど・・・じんたんは・・・めんまのこと好きなんでしょう」

(え・・・それ・・・いま・・・ここではっきりさせないといけないのかよ)と動顛するじんたん。

めんまのことを熱愛しているゆきあつもうっかり・・・。

「そうだ・・・はっきりしろよ」と挑発する。

蚊帳の外のぽっぽは「言え、言え」と囃したてる。

もめごとの嫌いなつるこは・・・「めんまも困っているし・・・もうやめなよ」と仲裁する。

しかし・・・じんたんは「こんなブス・・・好きなわけないだろう」と心にもないことを言ってしまうのである。

子供心に・・・めんまを傷つけてしまったことを感じとり・・・後悔するじんたんだったが・・・もう遅い。

その場にとどまることができず逃げ出すじんたん。

そんなじんたんを案じて追いかけるめんま。

そんなめんまをおいかけるゆきあつ。

ゆきあつは・・・かねてから用意したプレゼントの「パッチン」を示す。

「じんたんなんて・・・ほっとけよ・・・めんまのこと好きなんだ・・・これ、めんまに似会うと思うよ」

しかし・・・めんまは困惑する。

「わたし・・・じんたんを捜さなくちゃ・・・」

じんたん・・・屈辱の大失恋である。

そんな・・・他愛もない子供時代の思い出・・・しかし・・・その日、めんまが崖から転落死することによって・・・子供たちは深い傷を負うことになる。

事件の発端となったあなる・・・。

それをあおったゆきあつ。

はやしたてたぽっぽ。

めんまにひどいことを言ったじんたん。

そして・・・本当はゆきあつが好きでなりゆきをおもしろがっていたつるこ。

子供たちは心に闇を抱える。

そして・・・時は流れた。

じんたんは・・・その後、母親の塔子(小泉今日子)を病気で失い、高校受験に失敗してひきこもりになった。

父親の篤(小日向文世)はそんなじんたんを生温かくみまもる。

あなるは・・・美少女に成長したが・・・じんたんへの思いは消えない。

ゆきあつはステキ男子のトッキュウ1号になったが・・・めんまへの思いをひきずりまくっている。

つるこはゆきあつへの思いをひた隠す眼鏡っ子になっていた。

そして・・・ぽっぽは幼い日をなつかしみ・・・いつまでも子供時代に決別できない。

そんなある日・・・ひきこもりのじんたんの元へ・・・成長した姿のめんまの幽霊が出現する。

「なんで・・・成長してるんだよ」

「子供のままだと・・・ロリコンものになっちゃうでしょ・・・通俗的な意味で」

「あ」

最初はとまどっていたじんたんだったが・・・東宝シンデレラ的なめんまに・・・激しく魅かれて行くのだった。

ついに・・・かっての仲間たちにめんまの存在を明らかにする。

じんたんの心の病を疑うもの・・・。

めんまがじんたんにだけ見えることに嫉妬するもの。

そして・・・じんたんがいまだにめんまのことを忘れていないことに動揺するもの。

自分もめんまに再会したいと激しく望むもの。

淡々と静観するもの。

ゆきあつは・・・めんまを思うあまり・・・ついに女装してめんまになりきる行動に至るのだった。

だが・・・めんまの示すそこはかとない霊的存在のアピールにより・・・かっての友情をとりもどしていく仲間たち。

一方・・・めんまは・・・みんなともう一度出会うために・・・生まれ変わることを望む。

そのためには成仏しなければならず・・・そのためには心残りの願いを叶えなければならない。

じんたんたちはめんまの願いを叶えるために・・・奮闘するのだった。

幼かっためんまの・・・死後の世界は・・・病床にあった・・・じんたんの母親との会話で構成されている。

じんたんは・・・めんまの死後・・・はじめて・・・本間家を訪ねる。

めんまの秘密のノートを入手するためである。

そこで・・・めんまの母親(吉田洋)がめんまの死から立ち直っていないことを知るのだった。

秘密のノートに書かれたヒントから・・・「ロケット花火」をめんまが見たがっていたことに気がつくじんたん。

花火師(火野正平)に頼みこみ・・・ついにロケット花火が打ち上げられる。

「とうちゃこ~・・・幼い日に死んだ友達のために・・・是非花火をうちあげてください・・・そうですか・・・着火」

願いが叶い・・・めんまが消えてしまうことに・・・躊躇するじんたん。

しかし・・・めんまは消えない。

めんまの願いは・・・じんたんの母親と約束した・・・母親の死を恐れるあまり感情の麻痺したじんたんを泣かせることだったのだ。

「あの日」にこだわるゆきあつは・・・じんたんに本当のことを言わせるために・・・「あの日」を再現する。

「どうでもいいけど・・・じんたんは・・・めんまのこと好きなんでしょう」

「そうだ・・・はっきりしろよ」

「好きだよ・・・大好きだ」

「めんまもじんたんが好き」

じんたんは・・・泣いた。

そして・・・めんまは昇天する。

じんたんと愉快な仲間たちは・・・めんまの残した置き手紙に涙するのである。

その時・・・消えかかるめんまの姿をみんなが目撃する。

「うわあああああ」

「本当に・・・」

「ゆ、ゆうれい・・・」

「なまんだぶなまんだぶ」

「なんだよ・・・みんな」

「ひでぶ」

阿鼻叫喚の幕引き・・・。

その後・・・じんたんとあなるは交際を開始する。

めんまが何かに生まれ変わったかどうかは誰も知らない・・・。

関連するキッドのブログ→アルジャーノンに花束を

みをつくし料理帖

浪花少年探偵団

山田くんと7人の魔女

表参道高校合唱部!

| | コメント (2) | トラックバック (4)

2015年9月21日 (月)

人民自由ノ権ヲ束縛セザルコト~明治三年反乱軍鎮圧(井上真央)

井上聞多は維新後井上馨を名乗り、長崎府判事から造幣局知事と新政府の要職を歴任する。

動乱の時代を天才的な決断力で牽引した志士の一人である。

当然のことながら・・・その人物像には毀誉褒貶がある。

同じような評判の人間には伊藤博文と山縣有朋もいる。

しかし、この三人が維新のドサクサにドタバタしなければ明治という時代は成立しなかっただろう。

明治二年の長州藩における諸隊の乱では政府軍の鎮圧部隊を木戸孝允とともに井上馨が率いる。

木戸も井上も・・・亡き高杉晋作の盟友と言っていい間柄である。

滅亡の危機にあった長州を救った高杉晋作の作り上げた諸隊を解散し、不平分子による反乱が起こり・・・武力で鎮圧するに至る苦渋はいかばかりであっただろうか。

反乱軍の中心は遊撃隊である。

長州征伐を指揮した毛利親直は英国留学中であり、幹部の石川小五郎は河瀬真孝、山田市之允は山田顕義となって新政府の高官となっている。

優れたリーダーは不在となっていた。

さらに解雇されるのは百姓、町民出身者が多く、銀三百匁の解雇手当てに不満は爆発する。

しかし、版籍奉還により・・・占領していた小倉や浜田といった新領地を失った山口藩にはすでに財政的余裕がなくなっていたのである。

すでに開国は澱みなく展開し・・・攘夷論は影を薄めていたが・・・それを裏切りと感じる思想家たちはこの機を利用したのである。

大楽源太郎や富永有隣といった過激な思想家たちが背後で糸をひく。

中央集権という明治政府の目論みは反乱や一揆の全国的展開という恐るべき危機に瀕していた。

長州の反乱軍は浜田に再度乱入し、百姓一揆を誘発したりもする。

反乱諸隊は歴戦の兵であり・・・実力を伴っているのだ。

再編された山口藩正規軍は初戦で敗退し、山口藩庁が反乱軍に包囲されるという事態となる。

下剋上の果て・・・である。

そうした流れの中で山口県権大参事(知事補佐)に任じられた高杉春樹(晋作の実父)は木戸・井上の新政府部隊と共闘し・・・激戦の果てに反乱を鎮圧したのだった。

その戦後処理にあたって・・・井上は・・・上下の隔たりなく民意を汲んだ。

減税の進言などにその意図が窺われる。

鎮圧直前、戦場に西郷隆盛が現れる。

反乱軍はその姿に勇気づけられたと言う。

しかし、この後・・・士族にこだわった西郷と・・・民間の力を信じた井上は命運を分けるのである。

いずれにしろ・・・政治などというものは綺麗事ではすまないのだ。

で、『燃ゆ・第38回』(NHK総合20150920PM8~)脚本・小松江里子、演出・安達もじりを見た。例によってシナリオに沿ったレビューはikasama4様を推奨します。今回は吉田松陰の妹から久坂玄瑞の妻を経て・・・現在、山口藩知事の奥御殿で怪しい権力をふるう久坂美和の美しい御姿描き下ろしイラスト大公開でお得でございます。もう主人公の設定に無理がありすぎて・・・おにぎりパワーにも限界がございますなあ・・・。包囲中の反乱軍に奥御殿に潜入された時点で・・・警備担当のお女中は厳しいお咎めにさらされるのでは・・・とハラハラいたしますな。なにしろ・・・反乱軍側は殺気だっていて、城方は籠城中、包囲軍の背後から襲撃した鎮圧軍は一度は撃退され三田尻まで退却を余儀なくされるという激戦でございます。基本、男子禁制の奥に・・・自由に出入りする義兄の危うさも格別ですな。まあ・・・くのいちと忍びならなんでもありなわけですが~。

Hanam038明治二年(1869年)九月、平民の徴兵制度により国軍の創設を目指す大村益次郎は元奇兵隊隊士などの不満士族により襲撃される。十一月、益次郎は襲撃の傷により死亡。十二月、山口藩知事毛利元徳は旧長州藩諸隊の兵員削減のために奇兵隊、遊撃隊などの解散・改編を命ずる。諸隊はこれに同意せず「解散反対、洋式軍備反対、藩による幹部任命権反対」などを申し入れる。財政が逼迫し、士族の保護を目指す藩庁は当然、要求に答えることは不可能だった。明治三年(1870年)一月、諸隊から二千名ほどが脱走し、集結。藩庁を包囲して兵糧攻めを開始する。開国による物価高騰に困窮する百姓・町民はこれに連動して一揆を起こした。反乱軍の一部は他藩に進出し、石見国浜田(大森)藩庁を襲撃する。大村益次郎は西国における反乱を予見し、大阪に新政府軍の駐屯を行っていた。二月、山口に入った木戸孝允の要請を受け、井上馨は政府軍を率いて進発。山口藩正規軍と同盟して反乱軍を鎮圧する。乱後、井上馨は藩の俸禄を受ける一万五千人を五千人に減らし、年貢を引き下げることを提言した。一万人の職を農業・工業の振興によって創成し、やがては俸禄人口をゼロにするというある意味、正論すぎる暴論である。不死身人間にだけ許される怖いもの知らずの思いきった意見なのだった。

「兵糧を断たれたとな・・・」

銀姫は眉をひそめる。

「しかし、ご安心くださいませ・・・御殿の蔵には米も味噌も充分な蓄えがございます」

美和は銀姫を慰める。

「まったく・・・長州征伐から・・・気の休まることのない世になったのう・・・」

「私は存じませぬが・・・世に言う生みの苦しみというものではないでしょうか」

「うむ・・・あれはなかなかに・・・苦しいぞ・・・けれど・・・一体、何が生まれようとしているのかのう・・・」

「兄は新しき世と申しておりました」

「新しき世か・・・」

殿様と家来、侍と百姓の身分の差がなくなる世とは美和は言わなかった。

「将軍様ではなく天子様がお上となる世だそうでございます」

「・・・誰が上でも構わぬが・・・もう少し落ち着いてもらいたいものじゃ」

美和は御殿の庭で異変が起きたのを心の耳で聞き、姫の居間を抜けだした。

庭では奥のくのいちたちが・・・紛れ込んだ曲者をとりかこんでいる。

「薺(なずな)、何事です」

「この者が塀を越えて参りました」

薺と蘿蔔(すずしろ)は奥のくのいちの小頭である。

二人は二人ずつくのいちを従え、六方から庭に佇む武士を包囲している。

「名乗りませ・・・」

男は答えず・・・鋭い眼差しで美和を見る。

しかし・・・美和は男の心に浮かんだ意識から男の素性を瞬時に読み解いている。

(見覚えがあると思ったら熊本藩の人斬り彦斎(げんさい)か・・・)

美和は精神感応による京都探索で幾度か河上彦斎に遭遇している。

河上彦斎は狂信的な尊皇攘夷派で・・・倒幕開国という世の流れに憤慨している。

「おいは・・・城方にもの申すべく・・・まかりこしたもんじゃ」

「ここは・・・奥御殿、男子禁制の場所ですぞ・・・」

「うむ・・・そのようじゃな・・・」

河上彦斎は決まり悪そうに視線を落した。

殺気だっているが・・・彦斎は美男である。

美和はかわいい男と思う。

「おわかりになれば・・・来た道を引き返しなされ」

「・・・」

「蘿蔔・・・道を開けておあげ・・・」

くのいちの蘿蔔は城外へ通じる塀を指差し彦斎の退路を示す。

彦斎は・・・跳んだ。

その後を美和が追う。

彦斎は城外の林に入り、振り返る。

「ご無礼した・・・」

美和は一瞬で忍び装束となっている。

「謀反人たちの加勢ですか・・・」

「謀反人とは心外な・・・あのものたちは・・・天朝に命を捧げたものたちではないか」

「城に弓引けば・・・謀反でございます」

「弓か・・・構えているのは鉄砲ばかりだがな・・・」

「攘夷も・・・剣も・・・無用になっていくのです」

「ひどいことを言うの・・・女とて容赦はせんぞ」

彦斎の目に殺気が戻る。

「あなた様が・・・剣に才を見出し・・・修行を積んだのは・・・ただ人を斬るためですか・・・」

「・・・」

「しかし・・・そんなもの・・・西洋のからくりの前には無意味なものとなります」

「おのれ」

美和は電光石火で短筒を取り出した。

高杉晋作の遺品のリボルバーである。

彦斎の抜きかけた刀の鍔がはじけ飛ぶ。

「お・・・武士の魂を・・・」

「無用でございます・・・そんなもの・・・お捨てなさりませ」

「お主とて・・・その忍びの技を身につけるまでには・・・」

「くのいちは・・・女・・・三界に家なきもの・・・あらかじめ世に潜むもの・・・」

「ふん・・・こまっしゃくれた女だ・・・」

彦斎は悔し紛れの捨てゼリフを残すと身を翻し・・・林の中に消えた。

彦斎の流浪が始る。

林の中から童が一人、現れる。

伊藤博文の隠し子の一人で・・・忍びとして育てられた猿二郎だった。

「追いますか・・・」

「いや・・・いい・・・あれは憐れなもの・・・それより・・・塀を越えさせるとは・・・うかつじゃぞ」

「おっかねえほどの・・・使い手でしたから」

「父御に似て・・・口は達者だのう」

美和は懐から干菓子を取り出して、猿二郎に投げる。

「こりゃ・・・うめえ・・・」

美和は微笑むと・・・城中に姿を消す。

冬枯れた林の中に猿飛の術者のけたたましい笑い声が響いた。

春はまだ遠い。

関連するキッドのブログ→第37話のレビュー

| | コメント (0) | トラックバック (3)

2015年9月20日 (日)

お前のシャツの下の人生(松山ケンイチ)帰ってきたぞ帰ってきたぞ(満島ひかり)ど根性不足の時代に(前田敦子)

生前(※)の世界からこの世へ。

この世から死後の世界へ。

現実もフィクションである以上・・・虚構の世界とシンクロすることはままある。

セクシーボイスアンドロボ」の時のように幻にならなくてよかったよ。

どうしても人間は連想する生き物であり・・・先週と今週の間にペルー人による連続殺人事件が発生するなんて奇遇だなあ・・・。

フィクションの存在が現実の出来事に影響されるなんて・・・あってはならないことなんだよ。

あの戦争を生き延びた現在の老人たちは・・・戦争のできない国家を夢想しがちだ。

「どうして真珠湾を奇襲してしまったのか・・・それはそういう能力があったからである」

そういう思いは「二度と戦争ができない国」であることを切望する。

「抑止力」ということでは日本を結果的に戦争に追い込んだ米国においては・・・絶対の自信があっただろう。

「まさか・・・戦争に突入してくるとは・・・」と驚愕したに違いない。

「戦争を仕掛けない国は・・・戦争を仕掛けられない」という願望は・・・せつない願いだ。

その「戦争するくらいなら滅びてしまった方がいい」という幻想は・・・甘美である。

米国の設定したルールを盾に軍事同盟を強めないという方向性を堅持してきたのは頑なな平和への望みがあるからであろう。

しかし・・・自衛隊の存在を認め・・・日米軍事同盟を締結し・・・海外派兵を実行し・・・どうしようもなく世界は日本を孤立したままにはしておかないのである。

東アジアと太平洋の片隅で・・・世界を敵に回し・・・滅びた大日本帝国。

今、中華人民帝国はその道を進み始めている。

その野心を・・・日米同盟が抑止できるかどうかは・・・不明だ。

しかし・・・少なくとも・・・日米同盟の強化は・・・しばらくの間、中国の暴発を抑制するかもしれない。

何もしないよりはマシという程度の法案を青筋立てて反対する売国奴たち。

米国とも中国とも・・・同じような距離感で独立を守れば良いなどという甘い考えは・・・「大東亜共栄圏」の理想とほとんど変わらないと考える。

少なくともまだしばらくは米国と戦争するよりは中国と戦争した方がいいと思うよ。

(※)キッドのブログでは死ぬ以前の存命中の頃という意味で「生前」は使用しない。それは生後で死前だが「生前」ではないからである。死後と対応するなら「それ」は生まれる前を示す言葉である。念のため。

で、『ど根性ガエル・最終回(全10話)』(日本テレビ20150919PM9~)原作・吉沢やすみ、脚本・岡田惠和、演出・菅原伸太郎を見た。ひろし(松山ケンイチ)のTシャツからピョン吉(声・満島ひかり)が消えた。それでも世界は続いて行く。「ひろし・・・いつまで寝てるんだい」と母ちゃん(薬師丸ひろ子)はいつもと変わらない日常を維持しようとするが・・・ひろしはすでに食卓についている。「気を使うなよ」とひろしはわが子を思いやる母を気遣う。「だね」と母ちゃんは・・・そこにはいないピョン吉の口を目指してめざしを突っ込むのだった。

しかし・・・街には異変が起きていた。

ゴリライモ(新井浩文)は・・・完成した「ピョン吉パン」の見本を販売車のディスプレーに飾るが・・・それは消えてしまうのだった。

京子ちゃん(前田敦子)とおばあちゃん(白石加代子)の家では配達された二本の牛乳瓶の一本が空になっていた。

警察官の五郎(勝地涼)は「梨が一個盗まれた」という通報を受ける。

ピョン吉パン一個

牛乳一本

梨一個

「デザート付きの朝食かっ」とツッコミを入れるひろしだった。

パン工場でひろしは・・・ピョン吉パンを作る。

その様子にゴリライモや・・・京子ちゃんは・・・しんみりする。

「担当を変えた方が・・・」

「だから・・・余計なお世話だよ」

ひろしは健気にふるまうのだった。

給料で母ちゃんに寿司を奢り・・・生活費まで手渡す始末である。

ひろしのいない席で・・・母ちゃんはいつものメンバーに語る。

「昔・・・ひろしの好きな絵本があって・・・カバのバーちゃんが人間の子供と友達になる話なんだけど・・・最後はお約束のお別れでおしまい・・・そしたら・・・ひろしは怒りだして・・・そんなのはおかしい・・・友達なんだから・・・ずっと友達でいるべきだって・・・そういう話にしてくれって・・・言うんだよ」

実は矢東薫子だった百合子さんならちゃっちゃっと描いたかもしれないが母ちゃんは描けず・・・代わりにひろし自身がもう一つの結末を描いたらしい。

「終わりのない物語を・・・ひろしは描いたんだ」

「ベストセラーになったら続編を書くのはお約束ですものねえ」

「ねえ・・・」

一同は・・・ひろしを励ます宴を開催する。

「だから・・・気を使うなよ」

「まあまあ」

酔っ払ったひろしは本音をのぞかせる。

「俺が大人になったから・・・さよなら・・・なんておかしいだろう・・・そんなつまらない最終回なんて・・・俺は嫌だ」

その夜・・・母ちゃんは一匹の黄色いアマガエルを目撃する。

「ピョン吉・・・」

思わず母ちゃんは・・・お皿にヤキソバを盛って玄関に置くのだった。

しかし・・・連続つまみ食い事件の犯人は・・・ひろしにそっくりな謎の男だったのである。

一方、バツイチの京子ちゃんは・・・ヒロインとして・・・ついに決意するのだった。

「お願いがあります」

五郎とともにゴリライモにおねだりする京子ちゃん。

「あの日・・・あの場所で・・・同じことをしたら・・・同じ現象がおこるかもしれないから」

ピョン吉が誕生した公園で・・・ゴリライモがひろしを投げ飛ばす再現大作戦である。

ひろしは・・・京子ちゃんから電話で呼び出される。

一方、謎の男は・・・ついに・・・梅さん(光石研)の寿司まで盗み食いをする。

背中にヘビの絵の描かれたTシャツを着る男は・・・「ヘビ野郎」と言われて・・・目についたひろしのTシャツを着こむのだった。

逃走中の男に気がついたひろしは・・・追跡を開始する。

追い込まれた男がたどり着いたのは・・・ゴリライモが待ち構える橋の上。

京子ちゃんと五郎は・・・二人のひろしの出現に驚く。

そうとは知らないゴリライモは・・・ひろしそっくりの男を投げ飛ばす。

そこには一匹のカエルが待ち構えていて・・・ピョン吉が復活するのである。

「えええええええええ」

「おかしなことがあったんだから・・・おかしなことがあってもおかしくないのよ」

興奮する京子ちゃん。

へび野郎は驚いて・・・Tシャツを脱ぎ捨て・・・ひろしは・・・ピョン吉と再会する。

「ひろしぃ」

「ピョン吉っ」

「ピョン吉くん」

「みんなぁ」

「お帰り」

ひろしと五郎とゴリライモと京子ちゃんは抱き合って再会を祝福するのだった。

こうして・・・ピョン吉は復活したのである。

ピョン吉ははがれおちた後・・・風に運ばれて池に落ちた。

そもそも・・・カエルたちは池の妖精だったのだ。

ピョン吉はカエルの妖精に戻り・・・平和なひとときを過ごした。

死後の世界。

それは生前の世界である。

時は満ちて・・・ピョン吉はゴリライモの剛腕により・・・飛翔した男の着たTシャツに宿りし魔力と融合して・・・この世に回帰したのだった。

転生によりリフレッシュしたピョン吉は愛しい友の胸に抱かれて歓喜する。

「あああ・・・ああ・・・あ」

街の名物の凱旋に・・・人々は万歳を三唱するのだった。

ふたたび始る下町人情喜劇。

ピョン吉とともに出勤したひろしは・・・母ちゃんの不在に気がつく。

その頃、母ちゃんはヘビ野郎に襲われていたのだった。

「ひろしくのお母さんが・・・欠勤するなんておかしいよ」

京子ちゃんの指摘に動揺するひろし。

あわてて・・・帰宅するのだった。

その後を追う京子ちゃんと五郎。

ゴリライモはおばあちゃんを背負って走り出す。

梅さんやよし子先生(白羽ゆり)。そして町田校長(でんでん)までがひろしの家に駆けつける。

驚いた蛇野郎は包丁を取り出し、逃げ遅れた京子ちゃんを人質にとるのだった。

「そんなことおやめ・・・」

「話せばわかる」

「梅さんは空手の有段者よ」

「結婚を前提に」

「本官は警察官でやんす」

「教師生活四十一年・・・」

「私は下町の女七十二年」

「蛇はダメです」

「ええい・・・まどろっこしい」

京子ちゃんはバツイチ女のふてぶてしさで・・・蛇野郎を撃退するのだった。

「話を聞きましょう・・・お名前は・・・」

「ヒロシです」

「えええええええええ」

「私は・・・母子家庭で育ち・・・これといってとりえもなく・・・名もなき会社に就職しました・・・そして・・・偶然、再会した幼馴染の女性を好きになりましたが・・・告白する勇気もなく・・・そのうちに会社は倒産・・・家を出て・・・現在に至ります・・・生きるに値しない男です」

「なんで・・・プロポーズしないのよ・・・相手は待っているかもしれないのに・・・たとえふられても好きって言い続ければいいじゃないの・・・この根性無しっ」

「京子ちゃん」とニヤニヤするひろし。

「京子ちゃん」とひろしにのるピョン吉。

どうやら一心同体感覚が深まったらしい。

ゴリライモは少し落胆するのだった。

「生きるに値しない人間なんていないのよ」と母ちゃん。

「っていうか・・・生きるのに値なんてないのよ・・・生まれたからには死ぬまで生きる・・・それだけよ」

「・・・」

「そうだよ・・・俺みたいな男だってこうして生きてるんだ」とひろし。

激しく同意する一同。

「なんだよ・・・それに・・・お前は見るからに良い男じゃないか」

一同は目をそむける。

「おいっ」

ひろしのボケとツッコミに思わずくすぐられるヒロシだった。

「笑ったね・・・よし・・・もっと面白いもんみせてやる」

ひろしはピョン吉にぶどうを与える。

ピョン吉は種なしぶどうの種を吐き出すと言う隠し芸を披露するのだった。

拍手喝采である。

「ひろし2号・・・お前もやってみな」

ヒロシがピョン吉にぶどうを与えると・・・ピョン吉は吐き出した種でヒロシのシャツにカエルを描く。

「ピョン吉2号だい」

一同は和むのだった。

五郎はヒロシを説諭した後で・・・故郷の下町に送り届ける。

そこには・・・おそらく・・・老いた母と・・・初恋の人が心配顔で待っていたのだろう。

もちろん・・・帰る家がなくても・・・ホームレスになればいいのである。

生きている限り・・・奇跡が起こる可能性は・・・ゼロではない。

誰もが幸せになれるかもしれないのだった。

「俺は・・・どんなにダメな奴でも・・・生きてて良かったと思えるような・・・社会を作りたい」

ゴリライモは有権者に誓う。

「なんだか・・・キュンときたわ」と京子ちゃん。

「おいおい」とあせるひろしだった。

東京スカイツリーの青い光が照らす街。

「俺・・・生きてていいんだよな」

「いいに決まってるさ」

「ひろし・・・お前も俺の下で生きな」

「だれが子分だ」

ひろしとピョン吉は走りだす。

母ちゃんは・・・ピンクのアマガエルを見つけた。

「可愛いねえ」

しかし・・・母ちゃんの手からジャンプするカエル。

思わず追いかけた母ちゃんは転び・・・カエルは下敷きに・・・。

「ええええええ」

ピンクのカエルは・・・圧死した。

青空の下・・・人々は・・・生前の世界と死後の世界の間・・・息を吸って吐くのだった。

関連するキッドのブログ→第9話のレビュー

| | コメント (4) | トラックバック (11)

2015年9月19日 (土)

愚かでかわいい女の娘は白ウサギ(芳根京子)失恋の国のアリス(吉本実憂)ハートの女王様(萩原みのり)Cheshire Cat(森川葵)ロリーナ姉さん(柴田杏花)

子供のような大人で満ちたこの国。

なにしろ・・・勝つために戦うことを基本的に禁じられた国なのである。

苦い薬をオブラートで包んで飲むのが普通なのだ。

そういう意味で、母親である前に女だとか、騙されているのに気がつかないとか、自分が幸せになれれば何でもありみたいな生き方をしている主人公の母親は・・・非常に朝ドラマとかぶっているわけだが・・・。

堀内敬子が演じているので・・・非常に怪しいわけである。

机にゴンゴンで血がダラダラでもいいくらいだったな・・・。

最終回ウイークなので・・・最終回気分で見ていたら・・・来週最終回だった・・・。

まあ・・・今週ハッピーエンドでなかったら・・・来週はハッピーエンドというのが大前提である。

で、『表参道高校合唱部!・第9回』(TBSテレビ20150918PM10~)脚本・田辺茂範(他)、演出・池田克彦を見た。「愛の歌」をめぐる香川真琴(芳根京子)の戦い。おバカな両親の不和に悩むのは子供の証である。胡散臭さ満点の出来すぎ男・内田勇輝(石丸幹二)の登場で母親の美奈代(堀内敬子)はよろめき、父親の雄司(川平慈英)は暴走する。そんなこんなで・・・大好きなステキ男子のトッキュウ1号こと夏目快人(志尊淳)に愛を告白されても・・・友達の優里亞(吉本実憂)の気持ちに縛られて「友達としか思えない」などと心にもないことを言ってしまうのだった。なにしろ・・・乙女なのである。

一方・・・本当に出来すぎる高校生・・・快人は・・・雄司に急接近するのだった。

香川家の内情に立ち入りすぎる快人なのである。

一方・・・すっかり仲良しグループとなった合唱部一同は・・・部室でランチである。

話題は・・・「エントリーしていなかった文化祭をどうするか」である。

部長の相葉廉太郎(泉澤祐希)とミコこと佐々木美子(萩原みのり)にとっては深刻な問題。

両親の離婚問題に加えて・・・内田に暴力をふるって留置された父親・・・そして快人の突然の告白と・・・問題山積みでボーッとなった合唱バカ・・・。

しかし・・・「歌えない」の一言に反応するのだった。

「え」

「聞いてなかったのかよ」

「合唱部で歌うのが無理だったら・・・クラスで・・・やろうよ」

「え」

説明しよう・・・合唱部員・・・部長、ミコ、優里亞、あまりんである里奈(森川葵)、桐星成実(柴田杏花)、男子が好きな男子・宮崎祐(高杉真宙)、元野球部・桜庭(堀井新太)、出番少なめのハーフ・山田アンドリュー(瑛)、快人・・・そして真琴の十人は全員・・・同じクラスなのだった。

2年C組は25人学級である。・・・大勢力だぞ・・・。

しかし・・・主流派の竹内風香(小島梨里杏)と相原ほのか(長谷川ニイナ)はメイド・カフェ案を提出し、投票の結果、14VS11でメイド・カフェに決定。

「11人いる・・・」

合唱部以外に誰かが合唱をしたがっていた。

一方・・・内田と連絡がつかないことに困惑する真琴の母・・・。

そして・・・内田が結婚詐欺で逮捕されたニュースが・・・。

「えええ」

「お父さん・・・お母さんを守ろうとしてたんじゃ・・・」

「三十年前と同じだな」

三十年前にも暴力事件を起こしていた真琴の父・・・。

祖父の万蔵(平泉成)は「スーパーフリーの悪い大学生に誘惑されかかっていたお前を守るためだった」と真相を明かす。

「初耳だわ」という真琴の母だったが・・・じゃ・・・どうしてあんたは結婚したのかと野暮なツッコミは必至である。

少し・・・ディテールが甘いけど・・・両親の話は基本的にどうでもいいんだよな。

そもそも・・・東京の高校生カップルがなんで・・・香川でうどん屋を・・・という話である。

香川家だからかっ。

相原ほのかが文化祭費を紛失するという事件が発生。

予算不足のために・・・「合唱」が復活する。

喜ぶ部員たちだが・・・クラスメートたちのノリは悪い。

「どうすれば・・・みんなに参加してもらえるのでしょうか」

合唱部顧問の鈴木有明先生(城田優)にアドバイスを求める真琴。

「言葉にできない感情が・・・音楽としてほとばしる・・・とドビュッシーは言った」

「はあ」

街でクラスメートの一人・前田(ささの友間)がギターケースを担いでいるのを発見する真琴。

「もう一人は前田くんでは・・・」と疑う真琴だが・・・「合唱なんて嫌いだ」と答える前田だった。

そんなある日・・・忘れものをとりに教室に戻った真琴は・・・。

「やっぱり・・・快人が好き」と熱烈アタックする優里亞を目撃してしまう・・・。

胸がキュンとする真琴・・・。

一人、校庭で思わず・・・愛の歌を歌い出すのだった。

めぐりめぐるめぐりあい・・・

思い出を数えるより

昨日を追いかけるより

愛・・・愛

時空を越えて・・・鈴木先生が・・・鈴木先生とデートしたい瀬山えみり先生(神田沙也加)が・・・快人が・・・高校時代の真琴の母親(佐藤玲)が・・・高校時代の真琴の父親(千葉一磨)が・・・ハーモニーを奏でるのだった。

「これが・・・ほとばしる・・・音楽・・・」

真琴は・・・前田を口説く。

「私たちの合唱を恰好よくして」

「・・・」

前田はギターで参加する。

それを見たクラスメートたちは・・・それぞれの隠し芸を披露するのだった。

「合唱」は「合唱パフォーマンス」に進化した。

一方・・・快人は真琴のために・・・真琴の両親を口説く。

「彼女は・・・文化祭に・・・ご両親を招待したいんです」

実は・・・結婚詐欺にあった女性たちを口説いて被害届を出させたのも快人だったのである。

スーパー高校生なんだな。

病み上がりなのにな・・・。

たちまち・・・文化祭当日・・・両親とハグする山田をうらやましそうに見る真琴。

だが・・・ステージ衣装は「不思議の国のアリス」風な白ウサギである。

ホワイトラビット、かわいいよホワイトラビット。

チェシャ猫、かわいいよチェシャ猫。

ハートの女王もアリスもロリーナもかわいいよ・・・なのだった。

時間の国

過去も未来も現在

何度でも何度でも

今をくりかえす

しゃっくりが一万回で止まることを信じて

涙のアリス

あわただしいウサギ

練習は裏切らない

御腹立ちの女王様も

愛の歌を心に

立ち上がれ

11人目は・・・合唱部に屈服したい相原ほのかだった。

カードはすべて裏返った。

真琴は観衆の中に両親を発見する。

夢は叶う・・・。

真琴はときめく・・・。

しかし・・・どうやら学校は廃校になるらしい・・・。

そして・・・父親は母親に離婚届を渡す・・・。

面倒くさいことは・・・最終回の前触れである。

関連するキッドのブログ→第8話のレビュー

| | コメント (0) | トラックバック (4)

2015年9月18日 (金)

初代探偵の探偵(北川景子)二代目探偵の探偵(川口春奈)探偵の探偵の探偵(門脇麦)

主人公に殺人させないための苦肉の手段。

それが敵が勝手に死ぬ・・・という「手」である。

それは・・・「人を殺してはいけません」というこの世の大前提があるからである。

しかし・・・前科者や狂人が中学生などを殺す以上、殺すことこそが正義の名に値するという少数意見もある。

どんなに・・・「国民の声」を代弁しているとバカが言いはっても姑息で暴力的な抗議姿勢は国民には受け入れられない。

60年代安保や・・・70年代安保から・・・彼らは何も学ばないらしい。

よく・・・国民の理解を得るためには憲法を改正するべきだというバカがいるが・・・国民全員が「憲法」を一度でも読む日は来ないと推定する。

だから・・・正しい憲法改正はなかなかに困難なのである。

そのための閣議決定であり・・・立法なのだ。

気に入らなければ選挙に勝ち、法を改正するのが民主主義なのである。

バカなパフォーマンスで支持政党が転換するほど国民はバカではないんだなあ・・・。

反対の反対は賛成なのだ。

反対の反対の反対はくどすぎてバカなのだ。

で、『探偵・最終回(全11話)』(フジテレビ201509172245~)原作・松岡圭祐、脚本・徳永友一、演出・石井祐介を見た。主人公を殺人犯にしないために・・・悪役たちは墜落する。この物語も冒頭で・・・主人公から逃れようとして非常階段から悪役が落下していた。クライマックスでは悪役が自殺未遂をして階段を転げ落ち・・・しかも一命をとりとめるという・・・疑似ハードボイルドを完結する。アホか・・・と思うがそれがお茶の間エンターティメントの限界なんだなあ。思い出せば悪役たちは高いビルから真っ逆様・・・「狼少年ケン」の悪役たちもよく崖から落ちていた。摩天楼は悪役の見せ場作りの建築物なのだ。

児玉庄治(葛山信吾)、黒川勇介(袴田吉彦)、鴨居秀一(梶原善)・・・そして竹内勇樹(岩松了)というおじさん探偵たちの好意的な協力により・・・ついに・・・澤柳菜々(柊子)が「死神」ではなかったことを突き止める対探偵課の探偵・紗崎玲奈(北川景子)。

本当の「死神」である市村凛(門脇麦)は天才的な狂人であり・・・精神的に不安定になっている姉の彩音(中村ゆり)を囮に峰森琴葉(川口春奈)を拉致監禁し・・・琴葉を囮にして・・・営業停止中のスマリサーチ社に玲奈をおびき寄せるのだった。

すでに・・・筋弛緩剤を投与されて虫の息の彩音・・・。椅子に拘束された琴葉。二人の人質を取られて万事休すの玲奈だった。

「あなたが・・・死神・・・なの」

「そうだよ・・・だけど・・・本当の死神はお前だろう」

「・・・」

「馬鹿に大人しいじゃないか・・・」

「私が暴れれば二人に危害を加える気でしょう」

「玲奈さん・・・」

「ゴミはだまっとけ・・・私がいいっていうまでしゃべんな。いいか、絶対にだぞ」

「・・・」

「なんで・・・あなたは・・・」

「わかってるだろう・・・お前には」

「14歳でレイプされ・・・世界が信じられなくなったのね」

「そうだ・・・女を強姦しても死刑にならない法律なんてクソだろう」

「クソの中からはいあがる人もいるわ」

「便器に外があるなんて・・・信じられないほどクソまみれになったんだよ」

「・・・」

「バカな男たちは獲物欲しさに金を払う」

「・・・」

「金を持っているバカな男はクソの代わりに遺産を残す」

「・・・」

「それが・・・生きるってことだろう」

「DV男と結婚したのは擬装なの・・・」

「擬装・・・意味がわかんねえ・・・DV被害者は無敵じゃないか・・・衣食住を無料で提供してもらえる・・・お得だろう」

「あなた・・・おかしいわよ」

「お前も・・・おかしいよ・・・私を庇った刑事を抱きしめて・・・死なないで~・・・笑える・・・お前の妹がどうなったのかも・・・私は見た・・・」

「やめて・・・」

「ギャーって叫んで燃えてたぞ」

「・・・」

「なんだ・・・随分・・・辛抱強いな」

「救急車を呼んで・・・琴葉を解放して」

「さあ・・・どうしよう」

「どうすればいいの・・・」

「その指示は・・・琴葉が出してくれるよ・・・」

「死神」はボイスレコーダーを振りかざす。

「助けられるのは一人だけ・・・姉か・・・玲奈か・・・」

「お姉さんを助けてください」

「はっきり言えよ」

「玲奈は死んでもいいです」

「・・・」

「というわけだ・・・自分で自分を拘束しな」

「玲奈さん」

「いいのよ・・・あなたの選択はまちがっていない」

「まったく・・・ペットロス症候群ってタチが悪いよな」

「死神」は玲奈に心電図をセットし、筋弛緩剤を注入する。

「どうした・・・暴れないのか」

「・・・」

「おまえ・・・意外とつまらなかったな」

「・・・」

「こうやって・・・野放図のリーダーも殺したの」

「口封じは秘密厳守の基本だからねえ」

「・・・」

玲奈の脈は消えた。

「あ~あ・・・死んじゃった」

「死神」は琴葉の拘束を解く。

「救急車を呼んでよ」

「死体の始末が先だ」

琴葉は脱兎のごとく走りだす。

「おいおい、鬼ごっこかよ」

「誰も助ける気なんてないんでしょう」

「当たり前じゃん」

琴葉は「死神」に格闘を挑むが・・・「死神」の方が上手だった。

琴葉の絶体絶命・・・しかし・・・鳴り響く靴音。

「なんだ・・・お前・・・化け物か・・・」

「死神」を蹴り倒す玲奈。

「腋の下で脈を止めるトリックなんて初歩だろ」

「ち」

「あんたは・・・バカの一つ覚えで筋弛緩剤を使うから・・・あらかじめ抗・筋弛緩剤を服用してたんだよ」

「ち」

「琴葉はまんまとあんたをおびき出して・・・私に時間をくれたのさ」

「ち」

「一人より二人の方が強いのさ」

「クソ」

「・・・」

「どうした・・・殺せよ」

奪われたナイフを突きつけられ誘う「死神」・・・。

「あんたと・・・私はちがう」

「いいや・・・一緒さ」

玲奈の握るナイフを自分で突きたてる「死神」・・・。

「ほら・・・これで・・・あんたも・・・人殺し・・・」

「死神」は階段を転げ落ちる。

そこへ・・・伊根涼子(高山侑子)がやってくる。

「あんた・・・バイクを盗んだでしょう・・・え」

事態を悟った涼子はデレた。

「逃げなさい・・・この場は私が・・・」

「・・・」

「スマリサーチ社から犯罪者を出すわけにはいかないでしょう」

玲奈は涼子の車で逃走した。

「つまり・・・お姉さんを助けにきたら・・・市村凛が階段下に転落していたと・・・」

「はい」

「で・・・玲奈はどうした」

「玲奈さんはいませんでした」

「嘘をつけ」

「嘘はついていません」

「・・・まったく探偵なんてどいつもこいつも・・・閻魔様に舌を抜かれちまえばいい」

「昭和ですか・・・」

警視庁捜査一課の坂東志郎(相島一之)は微笑んで退場した。

須磨康臣(井浦新)と桐嶋颯太(DEAN FUJIOKA)は兄弟だった。

「人生は片道切符だ」

「途中下車前途無効だね」

玲奈はスマリサーチ社の対探偵課のポストを琴葉に譲った。

「なんで・・・竹内探偵事務所なんですか」

「原作通りなのよ・・・あなたも嫌なら探偵やめなさい」

「やめませんよ・・・玲奈さんを見張らないと」

「あくまで自己責任で・・・」

「探偵の探偵対探偵の探偵ね」

人の心には闇がある。

闇に光を当て・・・秘密を暴く。

探偵はそういうクソの中に手を突っ込んでクソまみれになる職業なのだ。

静かな病室で「死神」は目覚め・・・ニヤリと笑った。

クソのような世界でクソの中のクソはクソしぶといのだった。

お前・・・今週の「銀魂」に影響されすぎ・・・。

実家の雨漏り騒動に巻き込まれキッド氏は哀しいよ・・・トットルー。

いつか・・・地球のどこかで・・・玲奈は・・・国会議員を恐喝中の悪徳探偵(池田鉄洋)の携帯電話を奪い自分撮りを実行する。

「盗撮です」

「ええええええええ」

犯罪を未然に防ぐ・・・それが本当の名探偵なのだ。

関連するキッドのブログ→第10話のレビュー

| | コメント (6) | トラックバック (8)

2015年9月17日 (木)

復讐のためだ(堤真一)最後まで騙されました(戸田恵梨香)傷だらけの営業マン(森田剛)一人だけ停年間近(志賀廣太郎)終わりだよ~(古田新太)

危機対策室の五人である。

戦隊的にはキケンジャーと言える。

灰色の世界において「善良な市民」というものは危険物に近いのだ。

国会議事堂周辺にたむろしている市民風な人々を見れば一目瞭然だ。

しかし・・・ある年齢層にとっては・・・なかなかにノスタルジーを感じる光景だ。

「この世の大前提」というものを先週から提示しているわけだが・・・それは一種の「灰色の常識」と言える。

「人は死ねば無になる」

「嘘をついてはいけない」

「愛する人を失っても世界は終わらない」

「同性愛は受け入れるべきだが変態は否定してもよい」

「お茶の間に現実はもちこまない」

つまり・・・テレビ番組とはそういう「大前提」でなんとなく作られているということだ。

検閲されないために自粛し、危険なものにはモザイクをかける。

そうやって・・・世の中は・・・もやもやしたものになっていく。

転ばぬ先の杖で転ばなかったものは・・・杖なんかいらないんじゃないかと思いがちなのである。

すべての情報は編集されている。

この世の基本的な大前提である。

で、『リスクの神様・最終回(全10話)』(フジテレビ201509152205~)脚本・橋本裕志、演出・石川淳一を見た。「安全保障」を「戦争」と言い換えるのはほぼ詐称であると思うが・・・「武器」を「軍事関連機器」と言っても嘘にはならないだろう。民主主義を完全に否定するデモに参加する野党議員は・・・与党時代に「武器輸出三原則」の見直しを提言していた。つまり、慎んでいた他国への武器輸出規制をそろそろ緩めようという話である。基本的に軍事産業を育成する話であり・・・少しも平和的ではない。野党になると耳障りのある話は・・・いたしませんという態度は・・・相当に信頼を損ねることだということに・・・そろそろ気がついてもらいたい。そんなことでは国民に「信」を問うことはできない。一方・・・「武器輸出三原則」の見直しは現在の与党では「防衛装備移転三原則」という呼称で武器輸出の規制緩和に傾いている。要するに政権党がなんであれ官僚たちがそちらに舵をきっているわけである。戦争の現実に目をそむけているものは・・・たとえば・・・日本の製品で攻撃されることがおかしくないことにもう少し敏感になるべきだろう。しかし・・・基本的に日本人は戦争には反対でも戦争ビジネスで儲けることには甘い側面を持っている。なにしろ・・・商売は・・・平和的だから。

輸出入は一つのリスクである。

かって・・・戦場で飢餓を体験した元兵士は・・・農園を経営して「食糧危機」についてコメントを求められた時・・・次のように答えた。

「危機になればポリ(警察官)がやってきてキュウリを取っていくだろう・・・しかし、実は取られても葉があれば私は生きていける」

盛大に活動する列島には・・・食糧の自給自足が困難であるのと同様にエネルギー資源も不足している。

死の灰をまき散らす可能性のある発電所も電力の確保のためには建設する国家なのである。

エネルギー源の確保は・・・死活問題なのだ。

なにしろ・・・この文章ですら・・・電力の消費を必要としている時代なのだから・・・。

このドラマの根底にある・・・そういう認識は・・・お茶の間にはあまり・・・浸透していない。そういうものは当たり前のようにそこにあるべきだという国民性なのである。

前社長坂手(吉田鋼太郎)の失策により、役員会クーデターに成功し・・・ついに社長の座に就任した白川元専務(小日向文世)・・・。

白川社長は危機対策室の解体を命ずる。

社長の意向を伝える室長の西行寺智(堤真一)の真意を疑い、神狩かおり(戸田恵梨香)は反発する。

「新体制発足の今こそ・・・危機対策が必要なはずです」

「白川社長は部門それぞれの危機対策を・・・とお考えだ・・・危機対策室員の身の振り方は最大限・・・意向に沿うものにしてくれるそうだ・・・」

「じゃ・・・俺は営業マンになっちゃおうかな」と微笑む渉外担当の結城(森田剛)・・・。

「俺は有休とって・・・バカンスに行こう」と調査担当の種子島(古田新太)・・・。

「白川専務派の君は・・・望む部署に行けるだろう」

西行寺に言われてかおりは疑いを強める。

(復讐のために・・・サンライズをつぶそうとしている)・・・西行寺への懸念が根底にあるかおりだった。

そして・・・西行寺は社長室長に任じられた。

「会社をのっとって・・・つぶすつもりですか」

「とめられるものなら・・・とめてみろ」

西行寺はかおりに嘯く。

かおりの交際相手である薬品部主任の原田清志(満島真之介)は自殺未遂で昏睡状態である。

「何か・・・話してよ」

かおりは病室で問いかけるが・・・もちろん答えはない。

西行寺は・・・再出発のための戦略として・・・企業買収を新社長に働きかける。

白川社長は買収候補に「サウスフロント社」を加えるのだった。

出向の任を解かれ・・・新たな人事移動に備えた待機に入る橘由香(山口紗弥加)・・・。

かおりは・・・西行寺の真意を探るための情報提供を由香に申し入れる。

「鍵は・・・エネルギー部門にあると思うの・・・」

「エネルギーは・・・商社の真髄ですものね・・・」

エネルギー部門に精通した由香は・・・かおりに協力することを誓うのだった。

二人には危機を乗り切った過去があるのだ。

「白川社長は・・・専務時代にシェールガスに関連してミスをしたという噂があるわ・・・」

「白川社長が・・・」

かおりは・・・西行寺の尾行を開始し・・・アジアグローバル証券の代表・フォー(木下ほうか)との密会の場に遭遇する。

しかし、背後から現れた結城にそれ以上の行動を阻止されてしまうのだった。

「君は首をつっこむな・・・」

「あなたは・・・西行寺さんの味方ですか」

「君には探偵の真似は不向きだと言っている」

「・・・西行寺さんは・・・フォーとどういう関係なんですか」

「危機管理の鉄則はなんだと思う」

「情報収集ですか」

「その次は・・・」

「収集した情報の・・・利用」

「君は・・・もう充分な情報を得ているだろう」

かおりは・・・白川社長を直撃する。

「なぜ・・・危機対策室を解散させたのですか」

「君には・・・電機部門で営業力を発揮してもらいたい」

その時・・・かおりは白川社長のデスクでベニグスタン語で書かれた封筒を発見する。

ベニグスタンは・・・坂手元社長と民自党次期総裁候補の一人である薮谷虎之助(名高達男)に関連する旧ソ連に属していた軍事独裁国家である。

かおりは・・・藪谷虎之助についてのスキャンダルを握っている。

「三十年前の事件について調べています」

「私は・・・当時は下っ端だ・・・何も知らない」

「私は本気です・・・先生と心中する覚悟があります」

「困ったお嬢さんだ・・・そうだな・・・ヒントをあげよう・・・君が深く関与した大企業・・・そこに答えがある」

かおりは・・・生島電気の生島徹(風間トオル)を訪ねる。

かおりは・・・生島徹についてのスキャンダルを握っている。

「三十年前の事件について調べています」

「私は・・・当時のことは知らない」

「私は本気です・・・生島さんと心中する覚悟があります」

「あなたには・・・借りがある・・・社内資料へのアクセス権を与えるよ・・・」

かおりは・・・ついに秘密にたどり着いた。

三十年前・・・原則的に禁止されていたソ連への武器輸出・・・。

生島電機は・・・軍事目的に転用可能な・・・魚群探知機を・・・ソ連に向けて輸出していたのである。

それは・・・ソ連領内の油田の採掘権と引き換えの不適切な秘密の取引だった。

西行寺の父親・孝雄(田中泯)が汚名を着てまで隠蔽した事実である。

東西冷戦の最中・・・仮想敵国に武器を提供することは・・・西側の一員である日本国としてもあってはならないことだった。

その時・・・暴漢に襲撃され・・・拉致されかかるかおり。

撃退したのは・・・結城だった。

「こいつは・・・俺を襲った探偵だよ・・・サンライズ物産御用達だ・・・」

「私を尾行していたのですか・・・ストーカーですか」

「おいおい・・・ボデイ・ガードだよ・・・」

「・・・」

「君の彼氏・・・目覚めたみたいだよ・・・これが・・・彼を追い詰めた原因だ」

結城は資料を提示するのだった。

それは・・・サンライズ物産関連企業から・・・裏金が流れるダミー会社を特定したものだった。

「サウスフロント社・・・」

「ケイマン諸島にあるペーパーカンパニーだ・・・新社長は・・・その会社を二千億円で買収するらしい・・・」

「そんな・・・」

かおりは・・・病院の屋上で原田と面会する。

「だめよ・・・」

「最初は何も知らずに・・・月五千万円、年六億円を・・・振り込むだけだった・・・しかし、他の部門からも・・・サウスフロント社に多額の資金が流失していることに気がついた。明らかに不正だとわかった・・・しかし・・・僕は汚れ仕事を続けたんだ」

「あなたに・・・それを・・・命じたのは・・・」

「決まってるだろう・・・」

「馬鹿ね・・・だからって・・・あなたが死ぬことはないのよ」

かおりは原田の手を握る。

「君の手は・・・あたたかい」

「・・・元気になったら・・・もっと暖めてあげるわ」

「元気になるよ」

サンライズ物産・本社・ロビー。

かおりの到着を西行寺が待っていた。

「どうやら・・・すべての情報を得たようだな」

「はい」

「じゃ・・・行くか」

「・・・」

社長室。

「あなたは・・・シェールガス開発で・・・二千億円を損失した」

「仕方なかったんだ・・・ベニグスタン油田の採掘権が期限切れになるから」

「しかし・・・二千億円の損失を隠すために・・・ペーパーカンパニーに資金を流出させるのは犯罪だ」

「石油価格さえ・・・暴落しなければ・・・」

「あなたは・・・危険な賭けをして・・・負けたのです」

「社長は・・・悪気があったわけではない」と秘書の逢沢(丸山智己)は弁護する。

「社長となって最初にしたのが・・・ペーパーカンパニーの買収というのは・・・自分の負債を会社につけかえるようなものです」

「・・・」

「言いわけはできませんよ・・・あなたは社長を退任するしかない」

社長に返り咲いた坂手と・・・顧問の天童(平幹二朗)に西行寺は告げる。

「あなたたちは・・・真相を知らなかったのですね」

「もちろん・・・薄々はわかっていたさ・・・」

「ソ連が崩壊した後も・・・秘密をネタに脅迫され・・・分離した軍事独裁国家と不適切な関係を続けてきたのですね」

「仕方なかったのだ」

「不適切な関係を清算する時が来たのです」

「・・・」

「なかったことをあると言い続けて来た新聞社さえ・・・真相を明かさずにはいられない時代です」

かおりは西行寺に続いて言った。

「サンライズ物産が生き残るためには・・・何が一番大切か・・・決める必要があるのです」

役員たちは総退陣を余儀なくされる。

新社長はメインバンクから迎えることになる。

旧悪を明らかにすることで再生しようとするサンライズ物産。

そのために・・・危機対策室は復活したのであった。

「また・・・騙されました・・・私はそんなに信用できなかったのですか」

「君は・・・二の矢だ・・・私が失敗した時のために・・・真実にたどり着く人間が必要だったのだ」

「念入りですね・・・」

「褒めてもらいたいのか」

「いいえ」

リスクの神様は微笑んだ。

晴れ渡った海辺・・・。

父と子は語らう。

「お父さん・・・私は・・・あなたが守ってきたものを・・・ぶち壊しにするつもりです・・・あなたの人生を否定することになります」

「それでいい・・・サトシ・・・お前にはお前の人生があるのだから・・・」

危機はいつどこにでもある。

人間は結局・・・それに立ち向かうしかないのだ。

死力を尽くして・・・その結果・・・死ぬにしても。

関連するキッドのブログ→第9話のレビュー

| | コメント (2) | トラックバック (9)

2015年9月16日 (水)

死にたくないから殺すだけ(窪田正孝)殺人以外は無罪(優希美青)証拠がなければ送検できません(忍成修吾)

「人は死ねば無になる」というこの世の大前提がある。

つまり・・・お化けなんてないさ・・・死後の世界なんてないさ・・・神も仏もいないのさ・・・ということである。

もちろん、「死後の世界は必ずある」と断言する人もいて・・・意見は分かれているわけである。

しかし・・・唯物的な思想が浸透して・・・世の多くの人が死後の虚無をなんとなく信じているわけである。

たとえば・・靖国神社で戦死者を参拝することが好ましくないとされる問題では・・・戦死者を慰霊する無宗教の施設を作るべきだ・・・などという無思慮な発言も出るわけである。

慰霊するのに・・・無宗教というのは・・・厳密にはありえない。

そもそも・・・無宗教であれば・・・霊そのものがないのである。

無宗教を拡大解釈して・・・宗派の隔てなくという意味だとしても・・・そもそも・・・多神教と違って一神教では・・・他の宗教を認めないのが基本である。

信仰の自由が保障されている以上、日本国あるいは天皇制を護持するために・・・護国戦争で死んだものは靖国神社で神となる・・・という信仰を否定することは困難なのである。

後は・・・信じるか信じないかの問題だ。

しかし・・・多くの人間が「死んだら無」という虚しい思想を根本にもてば・・・お墓参りをして死者と交信することも馬鹿馬鹿しいことになるわけである。

死んだら終わりだから・・・生きている間に好きなことをするのがいい。

この無味乾燥な思想が人々の心にとりついて・・・世界はまた一歩・・・奥深い神秘さを失っていく。

だが・・・天国や地獄が存在することを証明したものがいないように・・・天国や地獄が存在しないことを証明したものもいない。

死んだら無と思って死んで気がつくと地獄の門の前に立っていた時・・・人は真の恐怖を味わうのだな。

えええええ・・・死後の世界は本当にあるのと驚いても遅いのだ。

もちろん・・・この世が・・・あの世に過ぎないという場合もあります。

で、『・最終回(全11話)』(日本テレビ201509132230~)原作・大場つぐみ、小畑健、脚本・いずみ吉紘、演出・猪股隆一を見た。そもそも・・・デスノートの存在を知らないものがデスノートの存在を予測することはほとんど不可能だという大前提を覆すのが不可能を可能にするエルことL.Lawliet(山崎賢人)の存在である。そこで・・・そんな馬鹿なと思わないことが・・・デスノート・ワールドを楽しむ秘訣です。「デスノート2016」はそういう根本的な矛盾を解消するために・・・デスノート所有者同志が殺し合う話だといいなあ・・・。

デスノート(黒)の所有者・キラとライトこと夜神月(窪田正孝)はついにデスノートを取り戻す。

キラを神とあがめ、死神の目を持つデスノート(赤)の所有者・テルテルこと東京地検の検事・魅上照(忍成修吾)、キラの正義を信じデスノート(赤)の断片を持つミサミサこと弥海砂(佐野ひなこ)を従えたライトはついに・・・日村章子(関めぐみ)の削除に成功する。

父親殺しの犯人を日村章子であると偽証したライトは・・・アジトで傷ついたメロを心に抱えたニアことN(優希美青)を殺害すれば・・・キラによる新世界の実現は確実なものとなる・・・と考えるのだった。

夜神総一郎(松重豊)の葬儀は終わり、キラ事件の捜査の指揮を仏の模木完造(佐藤二朗)が受け継いだ。

突然、有能さを発揮した摸木は・・・メロを追い詰めて行く。

一方、メロはライトに日村の端末を使ってメッセージを送る。

「ライト・・・お前がキラなんだろう」

「・・・」

「そして・・・魅上照と弥海砂はお前の愉快な仲間」

「・・・」

「お前ら・・・みんなぶっ殺す」

三人はそれぞれ何者かに命を奪われかかる。

「メロを殺さなければならない」と殺意を高めるライト。

しかし・・・指名手配された犯罪者となっているメロに何ができるだろう。

つまり・・・ライトは油断したのだった。

殺人以外は何でもやる・・・エルの違法捜査を知っていたのに・・・メロにはそれができないと・・・甘く見たのだった。

メロの隠れ場所を特定した捜査チームはSITも動員して包囲網を作る。

検事としての捜査権により・・・現場に姿を見せるテルテル。

ライトはテルテルの死神の目で・・・メロ/ニアの名前を特定し・・・デスノート(赤)で葬る計画だった。

すでに・・・父親を殺したライトにとって・・・邪魔ものに過ぎないキラ捜査チームはメロ殺害後・・・ミサミサのデスノート(赤)断片で殺害する予定である。

しかし・・・すべては・・・生前のエルが仕掛けた壮大な罠だったのである。

逃亡するメロを追いかけたライトとテルテルは・・・まんまと罠にはまるのだった。

「お前・・・メロだろう」

「お前は・・・キラだ」

「何を言ってる・・・」

「あなたは顔と名前で殺せる第一のキラ・・・そして・・・隠れている男が顔を見れば名前がわかる第二のキラですね」

テルテルは勝利を確信し・・・Nate Riverをデスノート(赤)に書きこむ。

「無駄ですよ・・・」

「赤いデスノートが偽物だからか」

「ええ」

「残念だったなあ・・・メロ・・・赤いデスノートは最初から偽物だったのだ」

「ということは・・・ライトさん・・・あなたがキラということですね」

「・・・お前」

「そうです・・・私は・・・ニアです」

「・・・」

「二重人格は便利ですよね・・・たとえばライトさん・・・あなたがキラだったとしても・・・ライトさんとは別人格ということになれば・・・責任能力が問題になります」

「その必要はない・・・お前は死ぬのだから・・・」

「だから・・・死にません」

「おかしい・・・死にません」とテルテル。

「なんだと・・・」

「だから・・・あなたが第二のキラだと推定された時から・・・あなたはずっと監視されていたのです」

「つまり・・・エルを殺した時から・・・ワタリか・・・」

「はい」

「盗聴して、盗撮して、ノートを盗んだと・・・」

「はい」

「泥棒じゃないか」

ワタリ(半海一晃)はエルの命ずることはどんなことでもする無法者である。

「検事が本物だと思っていたノートはすでにフェイクだったのです」

「じゃ・・・俺のノートに書くよ」

「遅いのです」

扉が開いて・・・捜査チームとSITが現れた。

「この模様は全国放送されています」

「え」

「日本中が・・・あなたがキラだと知りました」

「・・・」

「あなたは裁きを続けるために・・・日本人全員を殺しますか」

「・・・」

「神・・・」

「神じゃない・・・ただの殺人鬼・・・友達だろうと・・・実の父親だろうと・・・平気で殺す」

「俺の邪魔をしたからだ」

「ライトくん・・・目を覚ませ」と模木。

「目を覚ますのは・・・そっちの方だよ・・・俺が誰のためにノートを使ったと思う・・・父親を助けるためだ・・・俺がノートを使ってなければ・・・父親はとっくに死んでいた・・・命の恩人だ・・・それをあの父親は・・・恩を仇で返した・・・息子の理想を信じなかった・・・そればかりか・・・自分で自分を殺したんだ・・・良く考えろ・・・キラによって・・・兇悪犯罪は減少している。何が悪い・・・飲酒運転で家族を失った人間は・・・犯人を処刑した俺に感謝こそするが怨んだりはしない。広島市民のために・・・原爆投下関係者を全員処刑することもできる・・・正義は俺にあるのだ・・・お前たちこそ・・・悪なんだよ・・・」

「負け惜しみですね・・・あなたは悪賢いエルに負けた愚か者にすぎないのに」

「じゃ・・・聞くけど・・・お前たちはどうするつもりだ・・・俺が持っているのはノートとペンだけ・・・丸腰の俺を射殺した場合・・・どう見ても単なる殺人だろう」

「・・・」

「だから・・・俺はこれからお前たちの名前を書くよ」

馬鹿な松田桃太(前田公輝)は発砲した。

「馬鹿野郎・・・松田・・・何で撃つんだよ」

「だって・・・僕は死にたくないですから」

「決めた・・・お前の名前を書く」

相沢周市(弓削智久)は発砲した。

「ひでぶ・・・ほら・・見ろ・・・お前たちだって平気で人を殺すだろう」

「確保・・・ライトくんを黙らせないと」

「やめろ・・・神に手を出すな」とテルテルは言った。

「神じゃない」

「神だ・・・その証拠に・・・こんなところに・・・ガソリンの入ったドラム缶がある」

「え・・・」

テルテルはドラム缶に着火した。

爆発・・・炎上。

何故か・・・炎は・・・ライトを取り囲む。

「危険です・・・避難しましょう」

テルテルは捕縛され・・・ライトを残して全員退場である。

「ほら見ろ・・・人命救助のために・・・俺を助ける奴さえ・・・いない・・・ははは・・・俺だ・・・俺だけが・・・人々が平和に暮らせる世界のために・・・けだものを・・・排除できるのだ」

「ライト・・・どうした・・・面白いもの見せてくれるんじゃないか」

「リューク・・・取引だ・・・死神の目を・・・」

「もう遅いよ・・・ライト・・・なぜなら・・・お前の寿命はゼロだから」

デスノート(黒)は燃えあがり・・・ライトを炎に包む。

「・・・」

「ライト・・・死神に取りつかれた人間の末路としては・・・まあまあ面白かったぜ」

デスノート(赤)も燃え尽きた。

所有権を失い・・・デスノートの記憶が消えたテルテル。

本体が失われると断片も・・・効力を失うらしい。

ミサミサもデスノートの記憶を失う。

もちろん・・・ライトへの愛は消えない。

まもなく・・・ミサミサは悲しみに包まれることになる。

愛するライトが・・・この世からいなくなってしまったから。

「すべては・・・エルの計画通り・・・だけど・・・デスノートってなんのことだろう」

「さあ・・・」

ワタリは首をかしげた。

すべての人々はデスノートについて・・・忘れてしまったのである。

「エルの動画があったはずよね」

「いえ・・・そんなものはありません」

「何か・・・恐ろしい事件があって・・・最後のピースは私がはめたのに」

「・・・」

この世にはただ・・・謎の死の謎だけが残るのだった・・・。

ノートに名前を書くだけで人が殺せるなんてはずがないのだから・・・。

そこがデスノートの恐ろしいところです。

そして・・・今日も人は安心して人を殺すのだった。

関連するキッドのブログ→第10話のレビュー

| | コメント (0) | トラックバック (5)

2015年9月15日 (火)

君がくれた夏の終わり(本田翼)僕は君をもっと好きになるだろう(福士蒼汰)僕は許された(野村周平)

「嘘をついてはいけない」という言葉はこの世の大前提である。

もちろん・・・世界そのものが嘘なので矛盾をはらんだ言葉である。

しかし・・・人々は「嘘」によって生じる「罪」を心のどこかで信じている。

たとえば「憲法」という嘘を盲目的に信じる人々がいる。

「憲法」はルールの一つである。

ルールというものは基本的には多数派のためにあるものだ。

あるいは・・・実力を伴う主権者のためにあるものとも言える。

たとえば・・・「殺人」が「悪」とされるのは多数の人間にとってその方が都合がいいからである。

殺人を行うものは・・・目的達成のための手段を間違ったということもできるが・・・「殺人」を「悪」と考えない少数派であったとも言える。

「憲法」には「自衛する権利」が保障されていない。

そのために「憲法信者」は「自衛隊」も認めないし、「正当防衛」すら認めない場合がある。

「けして撃たないと決めたから撃たれたら潔く死ぬ」という信念を持つものはそれはそれで清々しい存在である。

しかし・・・多くの人間にはその覚悟はない。

「撃たないから撃たないでください」ですんだら暴れた犬も射殺されないのである。

「自分の身は自分で守る」という不文律はある。

言わば・・・「憲法」と「不文律」の戦いが今、タケナワなのである。

もちろん・・・法というものは・・・手続きが重要である。

しかし・・・多数決もまた正当な手続きなのである。

全員一致という理想にむかって・・・人は「嘘をついてはいけない」と叫び続ける。

ついてはいけない嘘をついてしまった人間を許すのも許さないのも・・・人間の行いである。

とりかえしのつかないあやまちがもしも許されたなら・・・それは奇跡の一つなのである。

で、『・最終回(全9話)』(フジテレビ20150914PM9~)脚本・桑村さや香、演出・金井紘を見た。三浦葵(福士蒼汰)と芹沢あかり(本田翼)・・・そして蒼井翔太(野村周平)の三角関係は実は善良な男女と邪な人間との葛藤の物語である。蒼井翔太は「欲しいものを手にいれるために嘘をついた人間」である。翔太はあかりの葵への愛のメッセージを盗み、葵からあかりを奪い去った。あかりは苦境に落ちていたために・・・翔太の汚れた手をそうとは知らずに掴んだのである。

たとえば・・・翔太が暴力であかりの純潔を奪ったとしたら・・・その罪は明瞭だった。

しかし、翔太の邪悪さは・・・巧妙に「罪」を隠蔽したところにある。

翔太に一方的に愛されたあかりは・・・一度はその愛を受け入れてしまう。

けれど・・・「罪」は結局・・・翔太自身を押しつぶしていく。

翔太の罪が明らかになった時・・・実は物語は・・・あかりが・・・葵と翔太のどちらを選ぶかという話ではなくなっている。

翔太という「罪人」を・・・あかりと葵が許すのか・・・許さないのか・・という話なのである。

葵にとってはさらに・・・「罪人」に騙されて・・・「純潔を失った乙女」を許すのか・・・許さないのか・・・という話になる。

あかりにとっては・・・「詐偽の被害者」になってしまった自分を・・・葵が慰めてくれるのか・・・慰めてくれないのか・・・という話でもある。

葵があかりを許すことが明らかになり、あかりが葵に慰められた時・・・すでに・・・翔太は除外されているのである。

それでも・・・翔太は・・・あかりを求める・・・求めることによって赦しを乞うのである。

葵は・・・翔太があかりを求め続けることで・・・翔太を許すのである。

翔太が葵を許すために・・・あかりも翔太を許すことができる。

もしも・・・翔太とあかりがそれでも結ばれるというのなら・・・「やったもん勝ち」ということで・・・この世は闇に落ちるのである。

それは・・・あかりの部屋の金魚も許さない・・・禁断の結末と言えるだろう。

もちろん・・・この世は・・・多数派だけではなく少数派も存在している。

十人いれば・・・翔太に味方するものも一人くらいはいるだろう。

そういう人間はいつか中学生を殺す大人になる可能性があります。

もちろん・・・この物語は・・・夏の終わりをそんなに後味悪くはしないのである。

少なくとも・・・表面上は・・・。

瀬戸際まで追いつめられて・・・葵はついに・・・「あかりを絶対にあきらめられない自分」に気がつく。

「第27回新人建築設計コンクール」の会場を飛び出した葵は・・・あかりを追いかけることしか考えない野獣と化すのだった。

高校時代・・・葵とあかりの間にも・・・葵とあかりと翔太の間にも割り込めなかった公平(太賀)だったが・・・三人のすべてを飲みこんでいる。

大好きな兄を手に入れることをあきらめた妹の鑑・七海(大原櫻子)は手を差し伸べる。

公平は葵のためにタクシーを止める。

七海は葵のために有り金を渡すのである。

葵は・・・妹の指し示す富山行きの新幹線のホームを目指すのだった。

翔太は誰よりも早く富山の花火会場に到着し・・・獲物の到着を待つ。

しかし・・・あかりは葵と過ごした故郷の街へやってくる。

あかりは・・・失われた七年間を探そうとする。

自分の生まれた家はすでに人手に渡っている。

葵と通った高校はすでに廃校になっていた。

葵と語らった駅のベンチすら・・・すでに新装されている。

過ぎ去った歳月。

翔太と過ごした時間。

「でも・・・葵だって・・・冴木瑠衣子さん(市川由衣)と交際してたんだもんね」

おあいこなのである。

あかりにはわかっていた。

翔太があんなことをしなければそんなことにはならなかったのだ。

しかし・・・あかりは翔太を責める気にはなれないのだった。

だって・・・好きになったものはしょうがないと思うのだ。

だから・・・翔太を赦そうとあかりは決めるのだった。

川には橋がかかっている。

橋には道が続いている。

向こう岸に渡るためには・・・いくつもの道筋がある。

葵があかりのための家を作ってくれるとわかった以上・・・どの道も・・・その家に続いている。

目の前には翔太と葵がいた。

「俺も・・・あかりをあきらめられない」

「そう言うと思ったよ」

「先にあかりと話をさせてほしい」

「僕にはそれを止める権利なんてないさ」

「ありがとう」

「・・・」

葵は振り向いた・・・。

「あかり・・・二人だけで話がしたい」

「・・・」

二人は肩を並べて歩き出す。

「この街も変わったねえ」

「うん・・・」

「私も変わっちゃった」

「俺には・・・あかりを幸せにできる自信はない」

「・・・」

「でも・・・あかりを好きな気持ちは誰にも負けない」

あかりの顔は輝く。

「あかりのこと・・・初恋だって言っただろう・・・」

「・・・」

「でも・・・七年前より・・・今の方が・・・あかりのことが好きだ・・・十年後にはきっともっと好きになっている」

「バカじゃん」

「あかりのこと・・・あの場所で待っているよ」

「・・・」

「富山みなと祭り納涼花火大会」の花火が夜空を染める。

あかりは翔太に声をかける。

「翔太・・・」

「・・・」

「ごめんね・・・」

「ありがとう・・・あかり・・・」

「うん」

翔太の邪悪な恋は終わった。

葵の前にあかりがやってくる。

「花火・・・きれいだね」

「うん・・・」

「私・・・葵の作った家に一緒に住みたい」

「あかりのいない家なんて・・・考えられない」

「私ね・・・百年後も葵が好きだと思う」

「バカじゃん」

二人は見つめ合い・・・何度もキスをした。

「少しは俺を見ろ」と花火はつぶやいた。

結婚式の前日・・・新郎と新婦は独身生活最後の屋台のラーメンを食べた。

天使のようなラーメン屋(峯田和伸)は微笑んだ。

葵は結婚式で新郎として長いスピーチをした。

「僕は失敗の多い男です・・・肝心な時に失敗します・・・最悪な気分を・・・彼女がいつもなかったことにしてくれます。彼女は僕の甘いシュークリーム。もしも彼女が消えてしまったら僕は最悪な気分をかかえたまま・・・一生を過ごすことになる。彼女が結婚してくれて・・・僕は本当に感謝しています・・・ありがとう・・・あかり」

新婦のあかりは微笑んだ。

罪滅ぼしのために・・・新婦の父親(小林薫)を案内してきた翔太は二人を祝福する。

二人の道は幸いなるかな。

裏切り者を赦す善良さは・・・婚姻相手の浮気くらい大目に見るからだ。

夏の終わり・・・二人は夜店を歩いて行く。

「もうすぐ・・・秋だねえ」

「夏の終わりに・・・あかりと一緒にもう一度花火を見ようと思って・・・」

「楽しかったね・・・夏・・・」

「うん」

善良な二人は記念写真を撮った。

撮影者は通りすがりの指原莉乃だった。

こうしてマリオはピーチ姫と末長く幸せに暮らしましたとさ・・・。

若者たちによる若者たちのための若者のドラマとして名作と言えるだろう。

今まで過ごしてきた夏がこれから過ごす夏より長かった人たちは少し口惜しい気持ちになるかもしれませんねえ。

恋愛にファール・プレイ(反則)はつきものだけど・・・騙す時は死ぬまで騙すことが鉄則。

証拠隠滅はお早めに。

ただし・・・人生終了後・・・悪魔は地獄であなたをお待ちしております。

関連するキッドのブログ→第8話のレビュー

| | コメント (0) | トラックバック (8)

2015年9月14日 (月)

広ク会議ヲ興シ万機公論ニ決スベシ~明治元年スターダストメモリー(東山紀之)

大日本帝国の軍人に女性はいない。

四民平等もついに実現しなかった。

しかし・・・そんな時代にも女性は生きていたのである。

そして、平民たちは夢を見ていたのだ。

男女平等が語られるようになったのは戦後の話である。

女性兵士も自衛隊にならいる。

男に許されたことが女には許されなかった時代。

そういう時代があったことを描きたくないなら・・・歴史劇なんてやらない方がいいよなあ・・・。

今が・・・いかに女性にとって自由で平等な時代なのか・・・わからなくなってしまう・・・。

もちろん・・・自由で平等だからといって女性が幸福だとは限らない。

五寸釘を打ちこみたくなるほど・・・まだまだ不自由で不平等ともいえる。

しかし・・・虐げられるのが当たり前だった時代があったことを・・・どこまでも陰惨に暗黒モードで見せてもらいたいものだ。

それは・・・もう・・・叶わぬ夢ですか。

男のロマンは死んだのですか。

で、『燃ゆ・第37回』(NHK総合20150913PM8~)脚本・小松江里子、演出・安達もじりを見た。例によってシナリオに沿ったレビューはikasama4様を推奨します。今回は明治新政府の総裁局顧問として五箇条の御誓文に深く関与した木戸孝允の描き下ろしイラスト大公開でお得でございます。架空の人物の虚構と実在の人物の虚構には差異があってほしいのですな。架空ならなんでもありだが・・・実在なら制約がある。そうでなければ実在の意味がございません。いつの時代でも人間なんてたいして変わらないという考え方もございます。食べて寝る・・・それだけの存在だ。男と女のあれやこれやで悩ましい。しかし・・・終戦直後の混乱で・・・十四歳の少年は幼い妹が餓死するのを見守らなければならなかった。そういうことは伝えなければならないでしょう。白人たちの奴隷にされる恐怖を感じながらアジアの片隅で・・・回天に命を捧げた人々の物語。もちろん・・・戊辰の戦で・・・命を落したものたちは・・・無駄死にだったのかもしれない。戦などせずに・・・日本統一をすればよかったのかもしれない。しかし・・・現実はそうできなかった。なぜ・・・そうできなかったのか・・・そういうことを描かず・・・たまたま・・・運よく長生きした・・・有名人の妹の荒唐無稽な物語を展開していく・・・なんなんだろう・・・これは・・・と物凄く情けない気持ちになりますねえ。

Hanam037慶応四年(1868年)一月、幕府軍と薩長を中心とした倒幕軍が鳥羽伏見で激突。二月、毛利広封が大村益次郎と共に上洛。三月、明治天皇は大阪に行幸。甲州で近藤勇が板垣退助に敗北。四月、西郷隆盛と勝海舟の談判により江戸城開城。五月、新政府軍と旧幕府残党による彰義隊が上野戦争。大村益次郎が旧幕府軍を一日で殲滅。六月、関東北部の掃討作戦で新政府軍は勝利する。八月、会津戦争始る。九月八日、明治に改元。会津藩降伏。十月、旧幕府軍は蝦夷地に脱出。十一月、明治天皇が江戸に入り、江戸城は東京城となる。十二月、蝦夷共和国成立。函館戦争開始。明治二年(1869年)一月、毛利敬親は版籍奉還を奏す。三月、東京遷都。四月、函館湾海戦。蝦夷共和国海軍全滅。五月、蝦夷地にて土方歳三戦死。六月、戊辰戦争終結。藩籍奉還によって毛利元徳は山口藩知藩事に任じられる。

蒸気船の運用を開始した長州藩では山口からの陸路の煩わしさを避けるために三田尻への藩政府機能の移行を開始している。萩からの丹後を経た京入りも可能だったが、東京に新政府が出来たために瀬戸内海、大阪、名古屋、浜松、神奈川、東京という海運ルートに利があったのである。高杉の夢見た下関開港も実現し・・・山口藩(長州藩)は海運事業に乗り出そうとしている。奥御殿の引越し作業を進める美和は各地に散った塾生たちの動向を読んでいた。

新政府の重鎮の一人となった木戸は長崎にいる。

その任務はキリスト教の弾圧である。

新政府は神道の国教化を進めるために神仏分離を奨め、キリスト教徒の改宗を国是とした。

開国と同時に西欧列強というキリスト教国の文化の流入は避けることができないと考えた新政府首脳はキリスト教徒の弾圧を可能な限り推進したのである。

木戸はキリスト教徒に満ちた長崎での邪教弾圧を監督するために・・・派遣されたのだった。

旧幕府も基本的にはキリスト教弾圧を続けてきたために役人たちは手慣れていた。

隠れキリシタンたちは幕末の動乱の間に姿を見せており、拉致監禁は容易になっている。

「ころばすためにはどのような方法を用いるのか」

「女たちは妊娠していれば牢にて出産を命じます」

「うむ」

「子が生まれれば母と引き離し、牢の外でお乳欲しがる赤子の泣き声を母に聞かせるのです」

「むごいな」

「お乳をあたえたくば改宗せよと問います」

「・・・」

「しかし・・・なかなか転びませぬ・・・」

「赤子は・・・」

「飢えて死にまする」

木戸はその拷問を黙認した。それが新政府の方針だったからである。

前原一誠は東北戦争で華々しい戦功を重ねた後で越後で占領軍司令官となっていた。

明治元年の秋から二年の春にかけて全国では一揆の嵐が吹き荒れている。

政府側の食糧を確保するために強奪を重ねた前原軍は治安を回復するために年貢の半減策を打ち出している。

しかし、函館戦争に勝ち、日本国の支配権をつかみとった新政府はたちまち手のひらを返して、従来通りの年貢を課す方針に転向した。

「なに・・・年貢の半減はならぬと」

「新政府のお達しでございます」

「都でのうのうと暮らしておった貴族たちにこちらの苦労がわかるものか」

「しかし・・・」

「みろ・・・民は飢えている・・・また・・・一揆がおこるぞ」

「武をもって鎮圧せよとのお達しでございます」

「やってられるか」

前原は憤然と官を捨て長州に戻ってきた。

「なに・・・毛利も島津も将軍にはなれぬ・・・と申すか」

病床で元藩主・毛利敬親は新政府とのパイプ役となった楫取に問う。

「新しい幕府は開かれませぬ・・・」

「では・・・武士は誰が束ねるのだ」

「武士は・・・藩主身分のものは華族となり・・・家臣身分のものは士族となり・・・家臣の郎党は卒族となって・・・今上天皇の侍となるのでございます」

「王政復古とはそういうものか・・・」

「長州軍も・・・今や・・・半分は平民で成立しております」

「戊辰の戦では敵味方合わせておよそ一万も死んだというが・・・長州で死んだのはほとんど百姓や町民だったと言うの・・・」

「でございます・・・新政府の軍はやがて平民を主力とするものになりましょう」

「実力主義という奴か・・・まさに下剋上じゃのう・・・」

「・・・」

「しかし・・・それでは・・・俸禄を失った・・・武家のものが騒ぐのではないか・・・」

「世の流れに逆らう無能なものたちは・・・粛清されることになりましょう」

「惨い・・・」

「それが御一新と言うものなのです」

「・・・」

美和は亡き兄の見た後の世が次々と実現していくことを知っている。

しかし・・・その細部は・・・いかにも惨いことの連続であった。

幕府は消え・・・日本国が誕生した。

しかし・・・久坂玄瑞も高杉晋作も・・・消えた。

「兄上・・・これが・・・本当に世直しなのでしょうか・・・世は前より良くなっているのでしょうか」

美和の問いに吉田松陰は答えない。

関連するキッドのブログ→第36話のレビュー

| | コメント (4) | トラックバック (3)

2015年9月13日 (日)

踏み切りの向こうに青春がある(松山ケンイチ)温かい朝食の匂いがする(満島ひかり)夏の日々にさよなら(前田敦子)

事実上の最終回である。

そういう意味では銭ゲバ・最終話の前回に近いテイストだ。

もちろん・・・主人公の消失ということでは泣くな、はらちゃん的であると言ってもいい。

しかし・・・お茶の間の感じる喪失感は・・・やはり・・・ここで終わっても良い感じの銭ゲバに通じる。

カエルで・・・二次元生命体で・・・人間ではないピョン吉だが・・・事実上・・・ひろしの最愛の人である。

最愛の人が死んでしまった・・・それでも生きて行く日常というものを・・・これほど淡々と描いたドラマは・・・ほとんど皆無なのではないかと考える。

この世には大前提がある。

「その人がいるから素晴らしかった人生」であったとしても「その人を失っても続けなければならない」ということである。

そうとはかぎらないじゃないか・・・。

もう終わりにしてもいいじゃないか・・・。

そういう生き方/死に方は本当にダメなのか。

からっぽになった心に吹き抜ける風の音がします。

心が死んでも生き続けるすべての屍のために・・・。

で、『ど根性ガエル・第9回』(日本テレビ20150912PM9~)原作・吉沢やすみ、脚本・岡田惠和、演出・鈴木勇馬を見た。二人が出会ってから16年の月日が流れた。14歳だったひろし(松山ケンイチ)は30歳になった。そして年をとらないピョン吉(満島ひかり)に終わりの日が突然やってくる。16年も着続けられるTシャツなんてないからだ。草臥れちゃうねえ。電脳義体なら交換できるけど・・・平面ガエルの交換技術はまだ確立されていないのだ。そして・・・その日は・・・夕焼けの向こうに迫っている。

夏の終わり・・・秋の祭り・・・。

地元の神社では福男、福女を決めるレースが行われる。

福男になったら・・・神輿の先頭で棒を担ぐことができる名誉を得る。

かっては・・・ひろしも京子ちゃん(前田敦子)と福男&福女になったことがある。

しかし・・・ここ十年は・・・ライバルの五利良イモ太郎(新井浩文)に福男の座を独占されているひろしなのである。

その間に京子ちゃんは・・・街を出て結婚した。

だが・・・今年、京子ちゃんは離婚して街に帰って来たのだった。

だから・・・頑張るんだとひろしはピョン吉に言う。

けれど・・・本心は違うのだ。

ピョン吉といい思い出を作りたい・・・ひろしはそう想っている。

真面目にトレーニングをするひろしだったが・・・ピョン吉に持ちかける。

「パンツになってみないか・・・」

「嫌だ」

下半身にピョン吉を装着すれば勝てるらしい。

ナニが超怒張しているようにしか見えないわけだが。

邪(よこしま)なことを言い出したひろしをいさめるようにゴリライモが現れる。

「負ける気がしない」

そして・・・YANSなランニングウエアの五郎(勝地涼)もやってくる。

「署の代表になったでやんす」

さらに・・・京子ちゃんもやってくる。

「はずかしながら・・・かえってまいりました」

ついにはひろしの母ちゃん(薬師丸ひろ子)までやってくる。

「元陸上部だから」

母ちゃんは抜群のスピードで走り抜けるのだった・・・。

みんなははしゃいで一本道を走りだす。

だが・・・落日の光が照らす景色。

残照なのだ。

刻々と迫る別離の時・・・。

明日、宇宙が終焉するんだ

せめて君とは笑顔で燃え尽きよう

いまだにプロポーズできない梅さん(光石研)に五郎はピョン吉を届ける。

よし子先生(白羽ゆり)の教室に梯子をかける梅さん。

「よし子先生・・・け、け、け、結婚してください」

ピョン吉は梅さんの代弁者なのか。

しかし・・・ピョン吉はよし子先生に頼みがあるのだった。

ひろしを応援するために・・・ファンファーレの指揮がしたいと申し入れるピョン吉。

居合わせた町田校長(でんでん)と京子ちゃんのおばあちゃん(白石加代子)も加わって中学校の吹奏楽部の練習に参加するピョン吉。

よし子先生によるピョン吉着衣はベローンとなるので失敗し、以外にも教師生活41年の町田校長がジャストフィットするのだった。

指揮棒を咥えたピョン吉は意味深である。

その頃・・・ひろしは・・・ピョン吉パンの制作に乗り出していた。

「ピョン吉の喜ぶことをしたい」ひろしなのだが・・・ストレートに表現するのは恥ずかしいのである。

京子ちゃんのアイディアということにしたいひろしだったが・・・京子ちゃんはすべてを暴露するのだった。

「いい話は苦手なんだよ」

「面倒くさい人ねえ」

しかし・・・ピョン吉パンの作成に悪戦苦闘するひろしを京子ちゃんも・・・ひろしの母ちゃんも・・・ゴリライモも・・・微笑んで見守る。

ついに完成したピョン吉パン。

ひろしは・・・ピョン吉以外の人々に・・・ピョン吉パンを配って歩く。

「内緒だけどさ・・・明日、お披露目して・・・ピョン吉を喜ばせてやろうと思うんだ」

しかし・・・ファンファーレの練習終わりの・・・校長先生の背広の下にはピョン吉が潜んでいたのである。

「俺が今・・・こうしているのは・・・ピョン吉のおかげなんだよなあ・・・俺は・・・ピョン吉がいてくれるだけで・・・幸せなんだ」

「若大将か」

「ピョン吉には内緒だよ・・・知ったら・・・あいつ泣いちゃうから」

「そうねえ」

すでに号泣しているピョン吉・・・。

「泣きなさい・・・」

ひろしが去った後で・・・ピョン吉パンを見たピョン吉は泣き濡れる。

二人がかりでピョン吉シャツを絞る校長とおばあちゃん・・・。

滂沱である。

そして・・・福男・福女レースが始る。

ゴリライモの靴を踏み、五郎のシャツを掴み・・・あくまで姑息なひろし。

結局、二人に遅れをとるが・・・最後ははったりのピョン吉ジャンプで福男の座をかすめ取るのだった。

よし子先生も京子ちゃんもがんばったが・・・福女は母ちゃんが獲得する。

「やった・・・我が家が独占だ」

ピョン吉は歓喜するのだった。

その夜・・・ピョン吉とひろしは・・・うれしくて語り合う。

「今日のこと・・・思い出すと・・・ニヤニヤしちゃう」

「明日のこと・・・考えて・・・ワクワクしろよ」

体力を使い果たしたひろしは子供のように眠る。

「ひろし・・・ずっと・・・一緒にいて幸せだった」

しかし・・・その時はくる。

「なんだよ・・・せめて・・・明日まで・・・」

だが・・・ピョン吉は黒ずんでいく。

「・・・ひろし」

朝が来て目が醒めたひろしはピョン吉が消えてしまったことに気がつく。

必死にピョン吉を捜すひろし。

部屋の中。

家の外。

商店街を抜けて公園の草叢へ・・・。

母ちゃんは汚れたランニング姿のひろしを発見する。

「・・・」

ピョン吉が去って行ったことを悟る母ちゃん。

「腹減った・・・朝飯を食べよう」

「・・・そうだね」

ピョン吉の輪郭が虚しく残るTシャツを着るひろし。

焼き魚に玉子焼き・・・お漬物に味噌汁・・・。

母と子の二人だけの朝食・・・。

静かな時が流れて行く。

祭りの雑踏を抜けて神輿の前に出る福男と福女。

「ゴリライモ・・・お前はいつも変わらないねえ」

ゴリライモは気がついた。

「ひろし・・・お前も相変わらずだなあ・・・」

「京子ちゃん・・・嫁に来ないか」

京子ちゃんも気がついた。

「・・・誰があんたなんかに」

五郎も気がついた。

「先輩・・・」

みんな・・・気がついた。

「・・・」

神輿はにぎやかに街を練り歩く・・・。

「おいさ」

「おいさ」

「おいさ」

「おいさ」

世界で一番淋しい祭りが・・・続いて行く。

去年と同じように・・・。

来年もきっと同じように・・・。

それが・・・人間のはかない営みなのだから・・・。

子供たちはまだそれに気がつかない。

関連するキッドのブログ→第8話のレビュー

| | コメント (2) | トラックバック (9)

2015年9月12日 (土)

好きなら好きと言いましょう(芳根京子)何度でも(吉本実憂)なつかしい痛みだ(森川葵)恋しくてMEMORIES(萩原みのり)十三番目のスイーツ(中島美嘉)

この世には「大前提」というものがある。

たとえば学校のクラスの人数の基本は四十人である。

しかし・・・過疎地では・・・全学年の生徒を合わせても四十人に満たないこともある。

少子化によって人口密集地でもクラスが二十~四十人の間で変動する。

少数精鋭の特殊なクラス編成もある。

だから・・・たとえというものは難しい。

性別では男子が二十人。女子が二十人。

で・・・ここに特殊な性意識を持つ人間が十三人に一人であるという怪しい統計を持ちこむ。

つまり・・・ひとつのクラスに男女ともに一人は特性の人がいることになる。

特殊な性意識というものは実に複雑なものである。

単純に性同一性障害なら・・・女性なのに男性の意識、男性なのに女性の意識ということになる。

しかし・・・同性愛には同性を同性として愛したいものも、同性を異姓として愛したいものもいる。

そして、なんでもありの両性愛者も存在する。

ここまで性別意識の問題である。

大前提というのはここからだ。

今は・・・「性別意識の少数派をきもいと言ってはいけない」ということである。

なぜなら・・・それは「病気」ではないからだ。

しかし・・・たとえば低年齢者限定の異性愛者は「病気」なのである。

「豚」しか愛せない「人間」もおそらく「病気」なのだろう。

もちろん、キッドは「大前提」なんてクソだと考えている・・・悪魔だからである。

なにしろ・・・大前提というものはひとつの良識なのである。

「戦争はいけない」とか「殺人はいけない」とか「差別はいけない」とか「あくまで個人的な意見です」とか・・・まあ・・・そういうことについて・・・おちょくりたい気持ちが・・・常に抑えきれないものなのです。

そういう「大前提」があります。

で、『表参道高校合唱部!・第8回』(TBSテレビ20150911PM10~)脚本・渡邉真子(他)、演出・吉田秋生を見た。新学期である。恐ろしいことに生死の境を彷徨ったステキ男子のトッキュウ1号こと夏目快人(志尊淳)は夏休みの間に完全回復して何事もなかったように元気に登校するのだった。そして・・・あっという間に夏休みが過ぎ去って・・・あまりんである里奈(森川葵)は「恋」をエンジョイすることができなかったらしい。一方、部長の相葉廉太郎(泉澤祐希)にふられたミコこと佐々木美子(萩原みのり)は失恋の痛手を忘れようと努めている。謎のピアノ少女・桐星成実(柴田杏花)は霊感少女で別枠である。快人は明らかに合唱バカの主人公・真琴(芳根京子)に好意を寄せており、それを知っていて自分は何度も交際を断られているのにめげずにアタックする幼馴染の優里亞(吉本実憂)・・・。上京中の親友・・ハスミンこと蓮見杏子(葵わかな)に一発で快人への恋心を見抜かれた真琴もそのことに馴染めないのだった。とにかく・・・いろいろともやもやしている青春真っ盛りである。ずっと見てない人にはわからない・・・もやもやとの一体感が楽しいのですな。

怒ったらこわい合唱部副顧問の瀬山えみり先生(神田沙也加)に怯えるアマクソ教頭(デビット伊東)は何故か部室で一人ラーメンである。

大曾根校長(高畑淳子)は合唱部に学園OBのアーティストの前座の仕事を持ってくる。

そのアーティストとはマニアックな人気を持つ・・・神島カナ(中島美嘉)なのだった。

かみしまかなを逆に読むとなかましみかだけどな。

だからひらがな的には神増カナにしてほしかった。

どうでもいいわっ。

挨拶にやってきた高校生たちに歌わせるカナ。

素人にむかって「なんだか・・・嘘っぽいわ」と忌憚のない意見をぶつけるのだった。

だが・・・思い当たることの多い「彼ら」なのだった。

合唱バカは優里亞に「恋のライバル」宣言をされて受けて立つことができずにモヤモヤし、里奈が好きなのに告白できない桜庭(堀井新太)もモヤモヤしている。

そして・・・今回もっともモヤモヤしているのが・・・宮崎祐(高杉真宙)なのである。

かって優里亞の策略で不登校に追い込まれた祐であるが・・・実はもっと根本的な悩みを抱えていたのである。

それは・・・性にまつわる問題だった。

幼い頃から好きになるのは男性ばかりだったのだ・・・。

そんな祐が突然、親友の桜庭が片思い中の里奈にデートを申し込むのだった。

あまりんの呪いなんだな。

別に祐に特別な思いを持っていない里奈だったが・・・恋に恋するお年頃なのでネコミミつけてデートに臨むのだった。

手をつないで・・・キスされても構わない覚悟の里奈。

しかし・・・祐は・・・「僕はやはり普通じゃない」と言って緊急離脱である。

「なんなのよ・・・」

だから・・・あまりんの呪いだってば。

ごめんね・・・青春。

そして・・・「祐が部活やめるってよ」と怒る合唱部顧問の鈴木有明先生(城田優)・・・。

その理由を推測する桜庭。

「親友じゃなくて恋人になりたいって言うから・・・きもいって言っちゃった」

「えええ」と驚く合唱部一同。

「だめじゃん・・・大前提として・・・LGBTは受け入れないと・・・」

「なんだよ・・・それ」

「レズ・ゲイ・バイ・トランスジェンダーよ」

「元野球部には難しすぎる・・・か」

「それはそれで大前提として問題あるわ」

「大前提として表現の自由よね」

「大前提として差別反対よ」

「気持ち悪いものを気持ち悪いと言って何が悪い」

「問題は・・・親友を傷つけちゃったことでしょうが・・・」

意気消沈する・・・合唱部一同。

リハーサルでカナは厳しく指導する。

「嘘くさい上に辛気臭くなってるじゃん」

「・・・」

「どうなってるの・・・一人減ってるし」

「LGBT問題です」

「男同志の世界の男同志のもつれか・・・私も昔・・・女同士でもつれたことあるわ・・・私は親友と一緒にデビューするはずが・・・私だけデビューすることになっちゃって・・・どうしてもそのことが言い出せなかった・・・そしたら・・・その子が猛烈に怒って・・・一緒にデビュー出来ないことが口惜しいんじゃない・・・隠し事をされたのが口惜しいって・・・おかげで私たちは今でも友達よ」

「・・・」

話し合う合唱部。

「複雑に考えることはない・・・相手が同性だろうが凄く年上だろうが危険なくらい年下だろうが・・・既婚者だろうが宇宙人だろうが・・・好きになっちゃった・・・それだけだ」

「私も部長にふられてショックだったけど・・・それはそれとして受けとめたわ」

「私なんか好きな人に好きって言えないのに祐くんは告白して偉いと思うよ」

「まあ・・・それで立ち直れないことになっちゃってるけどな」

「そんなに俺が悪いのか」

「祐抜きのアレンジにするか」

「待とうよ」

「しょうがないなあ・・・」

勇気を出して・・・桜庭は祐に立ち向かうのだった。

「ごめんな・・・正直な気持ちを言っちゃって・・・」

「・・・」

「でも・・・俺はお前の恋人にはなれないけど・・・友達でいたい・・・だからお前と歌いたいんだ・・・ライブ、楽しみにしてる」

ライブ当日である。

懐かしい痛みなのね

恋しくて泣きだすのね

あの日には戻れないのね

ずっと前に忘れていたのね

失った夢だけが美しく見えるのね

あの頃の夢の中へもう一度なのね

幸せって訊かないでね

ウソをついて笑ってね

きっといつかは君のママもわかってくれるのね

客席から合流する祐。

合唱部は燃え・・・カナも歌い出す。

甘い恋の記憶・・・。

カナは・・・昔のパートナーであるえみりと旧交を温め合うのだった。

合唱成功の勢いで快人はついに・・・真琴に「好きだ」と囁く。

真琴は・・・どうしていいのか・・・わからなくなる。

うぶでねんねの合唱バカなのだ。

その頃・・・妹の真弓(松本来夢)は母親の愛人の甘いロールケーキを食べ・・・。

ちょっとお人好しすぎる美奈代(堀内敬子)は内田勇輝(石丸幹二)に三百万円を貸し出し・・・。

内田が結婚詐欺師だと見抜いた雄司(川平慈英)は・・・。

見境なく内田を鉄拳制裁し・・・。

恋に盲目となっている・・・美奈代は激怒して警察に通報し・・・。

憐れ・・・雄司は傷害の現行犯で逮捕されてしまうのだった。

恋しくて甘くない・・・大人たちだった。

いつまでも・・・見ていたい青春絵巻も終幕が近付いている・・・。

関連するキッドのブログ→第7話のレビュー

| | コメント (0) | トラックバック (4)

2015年9月11日 (金)

探偵たちのブルース(北川景子)ただいま失策中(川口春奈)無傷で綺麗な夢(門脇麦)

大自然の猛威・・・集中豪雨と河川の決壊・・・そして突然の危機。

自称・公共放送の伝えるライブ映像に釘付けになるお茶の間。

濁流は次々と家々を押し流していく。

堤防の様子を見に行った夫は決壊に驚き走りだす。

自宅は激流に破壊され流出する。

妻と息子は流されつつ立ち上がる。

夫は電柱にしがみつく。

出動した自衛隊のヘリが救援活動を開始。

鬼怒川よりの民家から家族を救助。

脱出後、倒壊する民家。

流された屋根の上のペット連れの二人。

その背後のコンクリート製の家。

優先順位の選択は困難だが・・・ホバリングで水面に波紋を作りながら淡々と救出活動は続く。

電信柱の男・・・コンクリートハウスの家族・・・そして屋根の上の二人と犬・・・。

避難所で再会する家族たち・・・。

「家流されちゃった」

「命があってよかったよ」

筋書きのないドラマ・・・。

しかし・・・人間という大自然の脅威は・・・筋書きのあるドラマでどうぞ。

で、『探偵探偵・第10回』(フジテレビ201509102245~)原作・松岡圭祐、脚本・徳永友一、演出・品田俊介を見た。イベントで開催が一時間近く遅れたらブーイング半端ないぞ。来週は最終回シーズンなのに・・・またこれやるのかよっ・・・と思う今日この頃です。まあ・・・男子バレーボールにはほとんど興味がないからな・・・女子の時は言わなかったものな。まったく反社会的でない人間はすべてのプライベートが公開されても問題ないわけであろうが・・・多くの人間は羞恥心や反社会的行動から・・・秘密のあることを望む。健全な社会のためにすべてを管理しようとする人間は自分の不健全さだけは隠匿しようとする。自由に生きるための情報戦争はいよいよ佳境に入って行くのである。隠し事ができる社会が健全なのか・・・すべてを丸裸にされる社会が健全なのか・・・探偵たちはそのグレーゾーンに棲息する生き物なのだ。

「死神」をおびき寄せるために自分の所在地を明かし、待ち構えるスマ・リサーチ社の対探偵課の探偵・紗崎玲奈(北川景子)・・・。

しかし、玲奈自家製スタンガンの洗礼を浴びたのは同業者の鴨居秀一(梶原善)だった。

「なんで・・・正規の探偵社の探偵が・・・私をマークしているの」

「おたくの社長が呼びかけて各探偵社に対探偵課ができたんだよ・・・紗崎玲奈の違法行為を摘発するためにな・・・各社こぞってお前を追跡してるんだ」

「ちっ」

張り込みのための買い物袋をぶら下げる鴨居に続き、郵便受けに不在通知を残したり、不要なダイレクトメールに発信器を仕込んだりする児玉庄治(葛山信吾)や黒川勇介(袴田吉彦)の手口から探偵社を特定する玲奈。

「私は今・・・忙しいの・・・また今度にして」

「俺なんか・・・火傷を」

「なめときなさい」

「なめてくれ」

「なめとんのか」

このドラマおよび原作には「時限爆弾の作り方」とか「簡単な自殺方法」とかに似たある意味「危険な情報」が掲載されている。「家庭でできる原子爆弾の作り方」が掲載されても別にいいと思うキッドだが・・・様々な情報についてはお茶を濁しておくことにする。

「食べてはいけないもの」を「食べてしまう」のが人間だからな。

一方・・・精神的に不安定になっている姉の彩音(中村ゆり)から自殺予告メールを受け取った峰森琴葉(川口春奈)は保護中のDV被害者失踪事件の被害者の一人・市村凛(門脇麦)を部屋に残し、姉の元へと向う。

人間失格にならないための探偵失格である。

その頃、スマ・リサーチ社では須磨社長(井浦新)が業務停止処分に伴う事務所封鎖の準備を行っていた。

そこへ・・・とある精神科の病院から連絡が入る。

精神を病んだ玲奈の母親が入院していた病院に「澤柳菜々」が通院していたことを知った須磨は真相を確かめるために玲奈の父親(矢島健一)を訪ねる。

須磨は頑なに心を閉ざす玲奈の父親に・・・玲奈が妹の紗崎咲良(芳根京子)の死の真相を突き止めるために探偵になって死線を乗り越えていることを伝える。

しかし・・・自己中心的で家族を愛することと家族を支配することの区別がつかない玲奈の父親は全く動じない。

須磨は玲奈の父親に絶望を感じるのだった。

玲奈の父親は他人の情熱には何も感じない男だったのだ。

「俺に最初から相談すれば何の問題もなかったのだ」

「あなたのような役立たずには誰も何も期待しないでしょう」

「なんだって」

囮部屋に戻った玲奈を沼園賢治(姜暢雄)が急襲する。

自家製マスタードガス噴霧器を背負った賢治は玲奈を戦闘不能状態に追い込む。

「凛の居場所を言え」

「・・・」

しかし、駆けつけた探偵課の桐嶋颯太(DEAN FUJIOKA)が賢治を悶絶させ、捕獲するのだった。

そこへ・・・探偵たちを引き連れ大手探偵社を営む竹内勇樹(岩松了)が乗り込んでくる。

「なんだ・・・これは忍者の集会かよ」

「そろそろ・・・一体何のために騒ぎを起こしているのか・・・教えてもらおうと思ってね」

仕方なく・・・「死神物語」を語る玲奈。

良心的な探偵たちは玲奈の父親とは違い・・・心を動かされるのだった。

「澤柳菜々・・・聞いた名前だな」

「男だった女ですよ・・・澤柳タケオ」

竹内の部下の児玉から「タケオ」の写真を入手する玲奈。

探偵たちが情報を交換し・・・「タケオ」の電話番号が明らかになる。

「この番号から・・・住所をつきとめられるよな・・・」

「ええ・・・」

玲奈は宅配ピザに配達を申し込むのだった。

宅配ピザは住所と氏名を玲奈に確認する。

「タケオ」の住所はたちまち判明する。

「タケオ」の部屋で元・澤柳菜々を確保する玲奈と愉快な探偵たち。

しかし・・・関係書類に目を通した竹内は断言する。

「彼女は死神じやないな・・・」

「そうね」

九年前に性同一性障害による性別の変更を願い出た元・澤柳菜々。

死神は転出・転入のトリックを使い澤柳菜々の住民票を入手。

四年前に菜々がタケオになると・・・澤柳菜々になりすましたのだった。

「じゃ・・・俺たちはどこにもいない女を追いかけていたのか」

落胆した玲奈は・・・琴葉に定時連絡を入れる。

しかし・・・琴葉は応答しない。

不審に思った玲奈は凛に連絡する。

「出て行きました・・・お姉さんに何かあったらしくて・・・」

姉の自殺を止めようとした琴葉はすでに何者かによって拉致されていた。

玲奈はGPSによって琴葉の居場所を確認する。

そこは・・・封鎖中のスマリサーチ社だった。

笑気ガスによって意識を失っていた琴葉は気がつくと拘束されていた。

同じように拘束された姉には点滴を打たれ・・・心電図モニターにつながれている。

「お姉ちゃん」

「やめてよ・・・言う通りにしたでしょう・・・菜々・・・」

「・・・」

朦朧とした意識の中で・・・琴葉の頭のおかしい姉は友人である菜々の名を呟き続ける。

そして・・・部屋に誰かが現れる。

「あなた・・・誰なの」

「知らない方がいい事を知らなかったあの日には・・・もう、戻れないのよ」

囮部屋に戻り、賢治の尋問を水責めで続ける桐嶋・・・。

「どうやって・・・死神と連絡をしていたんだ」

「連絡なんてしてないよ」

「掲示板で知り合ったのか」

「掲示板・・・なんのことだ・・・俺はいつもの指示通りに」

「指示・・・」

「いつもの場所・・・消火栓の裏に・・・指示があるのさ・・・」

「お前・・・誰かにコントロールされていたのか」

「コントロール・・・いいや・・・あいつはいつだって凛の居場所を教えてくれたんだ・・・」

「お前・・・まさか・・・DVをしていないじゃないのか」

「DVなんてするもんか・・・俺は・・・世界で一番凛を愛しているんだぜ」

「・・・」

警視庁の取調室では野放図のマリコこと笹倉志帆(橋本真実)が取調を受けている。

坂東係長(相島一之)は志帆の証言から・・・DV被害者の中に不審な動きをしている女がいることに気がつく。

DV被害者でありながら・・・自由に行動していた気配がある女。

それは・・・凛だった。

「すべては女探偵の仕業です」

坂東は須磨の言葉を想起する。

盗んだバイクで走り出し・・・スマリサーチ社に急行する玲奈。

琴葉の無事な姿を確認した玲奈は安堵する。

「玲奈さん・・・逃げて」

痛恨の一撃に転倒する玲奈。

現れたのは白い服を着た凛だった・・・。

混乱する玲奈。

そして・・・彩音の心音は弱まって行く。

「琴葉・・・いつもみたいに・・・メソメソしなさいよ・・・私の胸の中で・・・菜々・・・友達でしょう・・・ひどいことしないで・・・琴葉は・・・私の玩具・・・なんだから・・・」

「お姉ちゃん・・・」と琴葉は呻く。

「琴葉・・・」と玲奈は呟く。

凛は無表情に玲奈を見下ろす。

人間は狂気から生まれ、狂気の中で生き、狂気のまま死んでいくのだ。

関連するキッドのブログ→第9話のレビュー

| | コメント (4) | トラックバック (6)

2015年9月10日 (木)

あなたのことをもっともっと知りたくて(戸田恵梨香)ブラッディー・プレジデント!(堤真一)動くもリスク動かざるもリスク(黒坂真美)

雨が降っている。

水は命の源である。

恵の雨なのである。

しかし・・・過ぎれば及ばざるが如し・・・なのだった。

増水した河川はたちまちリスクとなる。

人間は団結の力で自然を克服する。

しかし・・・巨大化した組織はたちまち腐敗する。

清流は濁流となって個人を飲みこんでいく。

一人の小さな手は何もできないが・・・みんなが力を合わせれば地球を滅ぼすこともたやすいのだ。

で、『リスクの神様・第9回』(フジテレビ201509092245~)脚本・橋本裕志、演出・城宝秀則を見た。スポーツファンを取るか・・・ドラマファンを取るか・・・何を一番大切に考えているか・・・結果は常に示される。編成も一つのリスクなのだ。反社会的な人々を管理するのは公的な機関の任務だが、過ぎれば市民は飼育された家畜になってしまう。国家の不正を追及して国家が崩壊し他国の侵略を許せば売国奴である。会社の反社会性を暴露して会社を崩壊させれば職を失ってしまう場合がある。すべては悪魔が念入りに落とし穴を掘っているからだ。人はその狭き安全地帯を導く天使を見出さなければならない。結局。出来るのは最悪の選択を避けることぐらい・・・それでも何もしないよりマシと思う他はない。毒物の危険性を言えば毒物に誘惑されるものも増えるのである。

自民党はとっくに危険であるが・・・その他の野党よりマシなのだ。

・・・なんとかしてもらいたいよねえ。

この苦渋を・・・。

ま、なんともならないんだけどね。

サンライズ物産危機対策室に構成員対立というリスクが芽生える。

巨大企業におけるリスク管理の重要さを・・・室長の西行寺智(堤真一)から学んできた神狩かおり(戸田恵梨香)は・・・リスクの神様と呼ばれた西行寺の動向に不穏な気配を感知したのだった。

西行寺の父親・孝雄(田中泯)が汚れ役を引き受けたことでサンライズ物産は危機を免れ、一つの家族が犠牲となった。

三十年前の地獄帝国・ソビエト連邦と日本政府の密約とも関連するサンライズ物産の暗部。

それを暴くことで・・・サンライズ物産を崩壊させる復讐の企みを・・・西行寺が持っているのではないか・・・。

かおりは・・・サンライズ物産の崩壊の危機を食い止めるために・・・暗躍を開始するのだった。

しかし・・・その実行力は・・・いかにも未熟である。

神様を狩れるのか・・・かおりは自分の負う家名に戦慄を感じる。

困った時の危機対策室ということで・・・吐血した女をホテルの部屋に残し、血まみれ社長・坂手(吉田鋼太郎)が現れる。

「なんとかしてくれ」

「わかりました・・・」

「助かったよ・・・」

「一つだけお願いがあります・・・私には隠し事はしないでください・・・危機対策の支障になりますから」

「もちろんだ」

しかし、すべてを語る気は社長にはないし・・・西行寺も社長を信じたりはしない。

「他人を信じること」は「リスク」そのものなのである。

危機対策室渉外担当の結城(森田剛)はサンライズ物産の100%出資の子会社である「サンエアーズ」の不祥事を内偵中に確証を得て報告する。

「サンエアーズの主力製品である工業用硫化水素除去装置に欠陥があることが確実となりました」

「そうか・・・社に戻る前に・・・社長の女を一人を処理してくれ」

「特別手当だな」

「社長のポケットマネーを確保してある」

男たちが休みなく汚れ仕事を続けている頃、かおりはプライペート・タイムを満喫している。

失態により、系列子会社「サンエナジー」に飛ばされた橘由香(山口紗弥加)との同期会。

しかし・・・もう一人の同期社員で・・・かおりとは肉体的関係のある薬品部主任の原田清志(満島真之介)が姿を見せない。

由香は原田が白川専務(小日向文世)の勉強会にも姿を見せなかったことを告げる。

対策室では原田の闇を追及しているがかおりは蚊帳の外に置かれている。

「あなたは・・・私がエネルギー事業関連で危機対策室に呼び出されたことを知らないの」

「え」

かおりは・・・西行寺への疑念を深めるのだった。

かおりに対する情報開示が不十分であることは・・・西行寺が心を閉ざしていることを意味するからである。

情報不足は予想外の危機を招く・・・かおりは自分の非力を痛感する。

その頃・・・原田はかおりの呼び出しを無視し・・・退職届を準備していた。

かおりは・・・原田の抱える闇についても何も知らなかった。

かおり自身の不祥事に始った世界的な大企業であるサンライズ物産および傘下の関連企業に続発するトラブル。

そのトラブルを最小限の犠牲で解決した西行寺。

しかし・・・その西行寺の不審な言動。

かおりをとりまくリスクの渦は・・・かおりをさらなる危機の中に投げ込もうとしていた。

緊急招集されるメンバーたち。

集うのはかおり、西行寺、結城そして副室長の財部(志賀廣太郎)である。

「サンエアーズの工業用硫化水素除去装置に欠陥があることが判明した」

「変更された認可基準を達成するために検査数値を改竄したことが原因だ」

サンエアーズに出向していた社員(黒坂真美)が本社・環境事業部長の峰岸(伊藤正之)に早期の製品化を急かされ・・・不正に関与してしまったのである。

事情は違うが・・・出向社員のおかれた立場はかってのかおりと同様だった。

「硫化水素除去装置が機能しなければ・・・有毒ガスである硫化水素が発生し・・・事故が発生するのは・・・自明の理なのに・・・なんて愚かな・・・」

「それが・・・人間が存在することのリスクそのものだ」

「何故・・・不正が発覚したのですか」

「たまたまだ」

「何故・・・私はエネルギー事業部に対する事情聴取について知らされていなかったのでしょう」

「たまたまだ・・・それより・・・問題は・・・目の前にある危機に対処することだ」

目の前の利益に幻惑されてリスクが生じる。

しかし・・・目の前のリスクに幻惑されてより大きなリスクを見逃すことはできない。

かおりの中で西行寺に対する疑いは深まって行く。

硫化水素は濃度によっては人を死に至らしめるガスである。

結城や財部の調査によってサンエアーズの工業用硫化水素除去装置を導入した企業で軽微な事故がすでに発生していることが判明する。

坂手社長の還暦を祝うパーティー・・・。

白川専務に財部は・・・社長と同期だったことを明かす。

「すっかり差をつけられてしまいました」

「総合商社の社長業は・・・激務です・・・彼はその激務を五年間全うしている」

民族自決党総務会長の薮谷(名高達男)との会話を打ち切り・・・白川専務の元へやってくる坂手社長。

「白川専務・・・お忙しいのにありがとう」

「坂手社長・・・おめでとうございます」

社長の座を争うライバルは火花を散らして乾杯する。

外国工作員と密会中の座礁事故処理の件で藪谷に恩を売った西行寺は質問を投げかける。

「三十年前の件です・・・」

「話せることは・・・話そう・・・」

事件発生中に担当者が出張中なのはお約束のサンライズ物産。

環境事業部長の峰岸が出張中に・・・ついに硫化水素発生による作業員の病院搬送事案が起こる。

西行寺とかおりは坂手社長と環境事業担当役員である永嶋常務(羽場裕一)と対策会議を実施する。

「この件は速やかに公表し・・・謝罪会見を行う必要があります」

「株価の下落の問題がある・・・発表は週末だ」

「その間により重大な事故が起きたら致命的です」とかおり。

「その時はその時だ」

「よろしいでしょう」と西行寺。

「なぜですか・・・」とかおりは食い下がる。

「企業のリーダーである社長が決定したことだ・・・」

西行寺は危機を増幅しているのでは・・・とかおりの不信感は高まるのだった。

例によって暗躍している種子島(古田新太)は調査報告をする。

「結城を負傷させたのは探偵だ・・・そして・・・その探偵事務所は坂手社長とつながっている」

「目付けの目付けだったな」

かおりは・・・西行寺の秘密を知りたくてついに西行寺の父親を訪問する。

「三十年前の・・・事件のことをくわしく・・・」

「・・・」

「西行寺さんがサンライズ物産に就職していることは御存じなんですよね」

「・・・」

しかし・・・認知症の孝雄に驚愕の気配が滲む。

怪しい週刊誌「週刊新分潮春」に藪谷議員と坂手社長の怪しい癒着関係が報じられる。

「これ・・・西行寺さんの仕業じゃないですよね」

「・・・」

「・・・コンプリートリコール(完全回収)に踏み切るべきです」

「いいだろう・・・社長による記者会見の潮時だ」

「・・・」

その時・・・かおりに由香が緊急事態を伝える。

「原田君が・・・薬の過剰摂取で・・・意識不明の重体よ」

「・・・」

事故か・・・自殺か・・・それとも・・・。

記者会見は失敗する。

「有毒ガスを発生させてどう責任をとるつもりですか」

「発生させたのではなく・・・除去が不十分だったのてす」

「殺人商社だ」

「たたけばホコリの出る人にエンブレムなんかまかせられない」

「愛人は何人いるんですか」

「愛人のマンションの家賃は百万ですか」

「やばいクスリを家族ぐるみでやってたりしてえ」

「お前なんてやめちまえ」

「偉そうな顔してざまあみろ・・・」

「リーダーなんてみんなクソだ」

「戦争法案反対・・・多数決なんて大嫌い」

「増税も強姦も漏洩もいじめも自殺もすべての責任はあなたにある」

「み、耳障りだ・・・か・・・カラマーゾフ・・・ゲスどもめ・・・」と涙目の社長。

「時期を誤った・・・記者会見は失敗だな」と西行寺・・・。

「社長を貶めるのが目的なら・・・大成功でしょう」とかおり。

「・・・白川専務派の君にとっては望むところだろう」

坂手社長は断崖に追い詰められた。

「なぜ・・・西行寺は・・・三十年前の事件にこだわるのだ」

坂手はかおりに問う。

「彼の父親は・・・関口孝雄氏ですから」

「なんだって・・・」

「ご存じなかったのですか・・・」

「・・・」

その頃・・・孝雄は大地に立っていた。

「お父さん・・・僕はただ・・・本当のことが知りたいだけなんです」

海は波音だけを奏でる。

社長の責任問題を追及するサンライズ物産役員会議。

永嶋常務による坂手社長の解任動議提示。

白川専務による議事進行開始。

「クーデターか」

「民主主義の基本・・・多数決ですよ」

白川社長誕生・・・。

「坂手社長・・・お勤め御苦労様でした」

かおりの不安は高まる。

「西行寺さん・・・あなたの狙いは何ですか」

「リスクの管理こそが私の仕事だ」

「もしや・・・あなたが・・・最大のリスクそのものなのでは・・・」

「・・・」

西行寺とかおりは・・・クライマックスにむけて対峙する。

弟子は師を乗り越えることができるのか・・・。

サンライズ物産全従業員数万人・・・の命運は二人に握られているのか。

それはそれでかなりのリスクなんだな。

SPVSSPECなら・・・SPECが勝つわ。

関連するキッドのブログ→第8話のレビュー

| | コメント (0) | トラックバック (5)

2015年9月 9日 (水)

お父さんより大切なノートのために(窪田正孝)疑わしきはぶっ殺せ(優希美青)地下駐車場のバラード(関めぐみ)

両親の愛情に育まれ健全に育った子供は世界の暴力性に気がついた時にどうなるのか。

健全な肉体に健全な魂が宿ってほしいという願いも虚しく、健全な肉体に不健全な魂が宿ることはままある。

神の前の人間平等を歌う宗教は異教徒への無慈悲を許容しやすい。

厳密な定義もなく・・・「神」になろうとする一部の人々。

そういう場合の「神」はおもに「人間を支配するもの」としてのニュアンスが強い。

「顔見知りの人間の名前を書くだけで殺すことができる」という幼稚な発想で展開する世界。

「自分ルール」に過ぎない「死神のルール」に魅了される人々。

「自由」という実現困難な妄想に・・・「神」は「不完全な束縛」を与える。

飼育された豚のように生きること・・・神のルールに従順に従うこと・・・。

キラの新世界は実現目前である・・・。

で、『・第10回』(日本テレビ201509062230~)原作・大場つぐみ、小畑健、脚本・いずみ吉紘、演出・岩﨑麻利江を見た。モンゴールとイスラームの交差点アフガーンで歌舞伎揚げのような国旗が翻る。赤と緑のクリスマスカラーに死を与える黒。悪魔の目には邪悪な妄想が映るのである。エンターティメントとしての「多重人格」にはいくつかの類型がある。普遍的な精神作用としての「自問自答」から発展し、「神」が憑依する「霊媒」も「多重人格」の原型の一つである。ひとつの身体にふたつの精神が同居するアイデアは「ジギル博士とハイド氏」のようななんらかの方法で人格がスイッチする交代制多重人格に発展する。一方で瞑想により世界を感知し、周囲の人間を精神に取り込む同時性多重人格は「夢」として多くの人間が経験する。夢の中に登場する人物はすべて自分なのである。交代制多重人格で問題となるのが「記憶の共有」である。過去の選択が人格によってなされる場合、選択の結果の記憶が残留すれば人格が交代するという定義は曖昧なものになる。エンターティメントの世界では・・・別人格が行動中の記憶は喪失されるのが無難だが・・・善悪の葛藤が軸となると・・・第一の人格に第二の人格の記憶がなくて第二の人格には第一の人格がある・・・という技法が成立する。第二の人格の方が巧妙というパターンである。

キラとライトこと夜神月(窪田正孝)は明らかに多重人格の要素を踏まえた設定である。

デスノートという悪魔の力(魔法)を手に入れたライトはたちまち心を魔に汚染されて行く。

デスノートを失えば・・・ライトという善良だが平凡な男に戻るのだが・・・キラ時代の記憶は失う。

しかし、デスノートを得てキラ化してもライトとしての記憶は失わない。キラは人格として支配的であり・・・未熟で従順なライトの人格を従属させることができるからだ。

ライトがキラ化したことを・・・ライトの精神的成長と捉えるか・・・悪魔による洗脳の結果として捉えるかは・・・各人の自由だろう。殺意と殺人行為の境界線が明白であるのかどうかと同じで・・・それは人間の魂の在り方の問題にすぎない。

誰もが「死ね」と思う。

悪魔が「殺しました」と報告する。

「いや・・・そんなつもりはなかった」と言われてもな。

キラ事件の捜査官のリーダーである夜神総一郎(松重豊)の娘であり、キラ/ライトの妹である粧裕(藤原令子)が誘拐された。

誘拐犯のリーダーは警視庁の捜査官の一人・・・日村章子(関めぐみ)だった。

日村の要求は「人質とデスノートの交換」である。

デスノートを隠匿する総一郎は迷うが・・・キラは「人命尊重」の立場で交換に応じることを説得する。

この機会を利用して「デスノートの奪還」を果たそうと考えるキラだった。

エルに代わってキラ事件の対策司令官となったメロを心に抱えたニアことN(優希美青)は「人質救出作戦」を立案する。

夜神父子がデスノートを持って誘拐犯と対峙し・・・現場を仏の模木完造(佐藤二朗)、馬鹿な松田桃太(前田公輝)、そして偽タキシード仮面の相沢周市(弓削智久)・・・そして警視庁所属の特殊な突入部隊SITが包囲する。

作戦に従って・・・指定された廃墟に向かう捜査官たち。

しかし、エルの秘密基地で指揮をとるニアは体調不良をワタリ(半海一晃)に訴える。

「ニア・・・」

しかし・・・ニアはすでに別人格のメロによって支配されていたのである。

ニア/メロからメロ/ニアに変貌したメロはワタリを拘束する。

そして・・・松田の率いる突入部隊を別の場所に誘導してしまうのだった。

口元をV字に歪めるメロ・・・それは悪魔の微笑みである。

取引現場となる廃墟に正面から侵入する夜神父子。

ステージのある施設の檀上には拘束された粧裕と軽機関銃で武装した男が一人。

客席を挟んだキャットウォークには日村が現れる。

日村は狙撃銃で夜神親子を威嚇射撃し、足止めをする。

裏口から侵入した模木と相沢は突入時間に備えて待機する。

「日村くん・・・君は一体」と父。

(何者なんだ・・・この女)と息子。

「私の狙いはデスノートのみ・・・娘さんの命に興味はありません」

「・・・」

父は・・・交換の条件を出す。

「息子にデスノートを持たせて・・・そちらにやる・・・娘の側の男も遠ざけて・・・私を娘の側にやってくれ・・・それに私たちは丸腰だ・・・そちらの武装解除を要求する」

「良いでしょう」

息子は日村に・・・父は娘に接近する。

息子は支援部隊の突入に合わせて・・・歩調を緩める。

日村はデスノートを手にする。

その時・・・扉が開く。

現れたのは武装解除された模木と相沢・・・そして武装した男二人を従えたメロだった。

「黒いレザージャケットの・・・ニア」

「ニアじゃねえ・・・メロだ・・・俺はエルとは違う・・・疑わしい奴はぶっ殺す」

(何者なんだ・・・メロ)

「ノースリーブはサービスだ」

機関銃が掃射され・・・伏せる一同。

父は娘を救援し・・・抱擁するのだった。

「夜神・・・そして・・・部下たち・・・俺が本名を知ってることを忘れるな・・・メロ様の邪魔をする奴は・・・あはははは」

メロ一味はまんまと逃亡する。

「ちっ・・・」

秘密基地に戻った一同・・・。

「手掛かりが欲しい・・・やつらは何か言ってなかったか」

妹に尋問を開始する息子に違和感を覚える父・・・。

「犯人の一人が・・・メイソンと呼ばれてました」

キラはエルの集積したデータにアクセスする。

「この男・・・」

メイソンのリストの中に現場にいた男を発見するキラ。

「Mason Fujiyama・・・所属不明の工作員・・・」

「雲を掴むような話だな」

「しかし・・・手掛かりがないよりマシだ」

戸惑う捜査員たちの中で息子だけが・・・落ちつきを取り戻したことに不信感を強める父。

(まるで・・・顔と名前がわかっただけで・・・勝利したようじゃないか)

それだけで・・・人を殺せるのは・・・。

キラは・・・一人になると・・・ミサミサこと弥海砂(佐野ひなこ)に指令を与える。

「Mason Fujiyama・・・生田スタジオGst第二控室に公衆電話から電話をかけ仲間の名前と潜伏先の住所を伝えた後で人気の少ない場所へ行き心臓麻痺で死亡」

ミサミサは愛しいキラのために豊満な胸の谷間で温めたデスノート断片に記述する。

まもなく・・・ミサミサの控室の電話が鳴る。

キラは忠実な使徒であるテルテルこと東京地検の検事・魅上照(忍成修吾)に指令を与える。

盗品の携帯電話を使い・・・捜査本部に電話するテルテル・・・。

「私はキラです・・・私はあなたたちに正義があると信じ・・・デスノートの保有を認めていました・・・しかし・・・メロにデスノートが渡ったのは危険です・・・私は・・・メロの潜伏先を突き止めました・・・速やかなるデスノートの回収をお願いします」

「すぐにふみこみましょう」

高揚する息子に違和感を覚える父。

「キラを信じるのか・・・」

「でも・・・手掛かりです」

「それに・・・どうして・・・キラは・・・デスノートが奪われたことを知ったんだ」とバカのくせに核心をつく松田・・・。

「だって・・・手掛かりじゃないですか」

興奮する息子を訝る父だった。

「とにかく・・・突入してみましょう」

模木は進言するのだった。

突入準備中・・・父はワタリに密かに質問する。

「エルのメッセージはまだ・・・あるのか」

「ありますよ・・・あなた様宛てのものが・・・」

エルことL.Lawliet(山崎賢人)の遺言動画・・・。

「私はすでに死んでいます・・・あなたに伝えたいことはただ一つ・・・すべては計画通りです・・・私の願いはただ一つ・・・あなたには・・・生きてもらいたい・・・あなたは私にとってパパみたいなものですから・・・」

エルのメッセージに心を動かされる父だった。

メロのアジトに侵入するSIT・・・。

誘拐犯の男二人は死亡しており、メロは確保されるがデスノートは発見されない。

屋上のキラの会。

「メロの本名はどうするの」とミサミサ。

「誘拐事件についてメロの取調を私が行います・・・死神の目で見ます」とテルテル。

「それでいい・・・新世界は目の前だ」とキラ。

無人の地下駐車場・・・。

キラの前に日村が現れる。

「よく来たな・・・ハル・リドナー・・・」

日村ことハルは・・・デスノートをキラに渡す。

「Halle Lidner・・・地下駐車場で待つ男にデスノートを渡し隠れ家にもどって身元不明になるような手段で自殺」

すでに日村の運命はデスノートの支配下にあった。

日村を見送ったライトに尾行してきた父が声をかける。

「どういうことだ・・・ライト」

「父さん・・・」

「どうして・・・デスノートを持っている」

「これ、デスノートじゃないよ」

「どう見てもデスノートじゃないか・・・こっちによこせ」

「あ・・・」

「ほら・・・デスノートじゃないか・・・まさか・・・お前がキラだとは・・・」

「ちがうよ・・・今、急に渡されたんだよ」

「なせだ・・・なぜ・・・お前が」

「・・・」

「お前がキラだとしたら・・・すべては私の責任だ」

「・・・」

「育て方を間違えた・・・」

「そんなことはないよ・・・父さんが犯罪のない社会を目指して働いたように・・・僕も」

「人を殺しておいて・・・何が犯罪のない社会だ」

「父さんだって・・・犯人を逮捕して・・・死刑台に送ったことがあるだろう」

「それは・・・法的手続きにのっとっている」

「同じじゃないか・・・冤罪だったら・・・無実の人を殺してるし」

「理屈じゃないんだよ・・・ライト・・・命の重さの話だ」

「大切な人を守りたい気持ちが・・・悪に立ち向かわせるんだろう」

「いや・・・もっともやもやしたものだ」

「・・・」

「口で言ってわからないなら・・・父さんが教えてやる」

父はデスノートに自分の名前を書きこんだ。

「父さん・・・やめろよ」

「わかるか・・・ライト・・・これが命の重さだ」

「そんなの単なる無駄死にじゃないか」

「え」

「父さんが死んだって・・・何も変わらないよ」

「お前・・・こんなものがあるからいけないのだ」

デスノートに火をつける父。

猛アタックで阻止する息子。

「やめろ・・・」

「ライト・・・お前・・・父さんより・・・このノートの方が大切なのか」

「当たり前だろう・・・父さんが死んでも世界は変わらない・・・だけどデスノートは世界を変えることができるんだ・・・」

「ライト・・・」

「父さん・・・僕は学んだんだよ・・・何かを犠牲にしなければ・・・平和なんか得られないってことを・・・」

「・・・」

夜神総一郎は死んだ。

「馬鹿だな・・・父さん・・・息子のことが信じられないなんて・・・まあ・・・それぞれの信念なんてそんなものだけどさ」

その頃・・・メロは留置施設から脱走していた。

「すみません・・・」

使徒テルテルはうなだれる。

「気にするな・・・日本の警察なんて・・・そんなものだ・・・」

「・・・」

「大阪で悪いことをした警官がいたな・・・」

「はい」

「とりあえず・・・名前書いちゃえよ・・・万死に値するから」

キラは微笑んだ。

テルテルは微笑み返した。

死神のリュークは悪魔的な哄笑を響かせる。

「やはり・・・人間て面白い・・・恐ろしいくらいに・・・あはは」

凄惨な死神の笑顔。

だが・・・ある種の人間は醜悪な姿形にこそ・・・美を見出すのである。

全国の善良なお父さん涙目のダークファンタジーなんだなあ。

そして悪いお父さんはデスノートの実在を全否定します。

関連するキッドのブログ→第9話のレビュー

| | コメント (2) | トラックバック (4)

2015年9月 8日 (火)

百年続く家(本田翼)僕には自信がない(福士蒼汰)君が幸せになる必要はない(野村周平)

百年続く人生は長い。

男も女もそこにたどり着くことさえ困難である。

生まれてくることさえ許されないものもいる。

生まれて来たのに親に殺されるものもいる。

病気や怪我の心配は絶えることがない。

恐ろしい保母さんがいる。

恐ろしい学校長がいる。

勉強ができたりできなかったり。

友達ができたりできなかったり。

恐ろしい警察官がいる。

恐ろしい施設の職員がいる。

奪った領土を返さない隣国がある。

核弾頭を準備している隣国がある。

就職ができたりできなかったり。

結婚ができたりできなかったり。

健康に恵まれない子供。

苛められる子供。

自殺する子供。

火山は噴火し、大地は崩壊し、津波が街を洗う。

線路にはハイヒールが投げ込まれ、飛行機は民家に墜落する。

恋しい人がさらわれて行く。

恋しい人が別の人を恋しがる。

愛の写真が復讐のために使われる。

ドラマの途中でテロップが入る。

階段を踏み外す。

ブドウの花言葉は「好意」と「思いやり」と「陶酔」と「狂気」・・・。

百年続く関係は・・・手と手をのばしたその先に・・・あるのか・・・ないのか。

心配したって・・・しょうがないよねえ。

で、『・第8回』(フジテレビ20150907PM9~)脚本・桑村さや香、演出・宮木正悟を見た。恋泥棒の三枚目が恋を成就することは王道ではないが・・・色恋沙汰には倫理の及ばぬ点がある。それは・・・なんといっても・・・秘め事というものがあるからだ。マリオとピーチとクッパの三角関係は何度も何度も繰り返される。囚われてしまったピーチ姫を取り戻すためにマリオはクッパの王国のクッパの王城のクッパの牢獄に挑む。いくら花火を打ち上げても、いくら牢獄の鍵をあけても・・・次の瞬間・・・ピーチ姫はクッパに囚われているのである。マリオは何度も死にながら・・・ピーチ姫を求めて・・・前進する・・・その間にもピーチ姫はクッパと秘め事を繰り広げているのである。哀しいぞ・・・マリオ。

三浦葵(福士蒼汰)と芹沢あかり(本田翼)は恋心を秘めた幼馴染。あかりに横恋慕する蒼井翔太(野村周平)は策略によってあかりと交際を開始する。真実を知らずに七年の歳月が過ぎ・・・再会した葵とあかり・・・真実を知りお互いの気持ちを確かめ合った二人だったが・・・開き直った翔太は・・・あかりにプロポーズをするのだった。七年間を過ごした愛の生活と・・・不在だった初恋の人の間で・・・あかりの心は揺れる。

「ひどいことをしたことはわかっている・・・でも・・・十年後、二十年後・・・君がいない人生には耐えられない・・・君を愛する気持ちには嘘がないから・・・僕と結婚してくれ」

「・・・」

偽の花火に照らされてあかりを抱きしめる翔太。

七年前・・・二人の間に割って入れなかった葵は・・・またしても二人に背を向ける。

何故なら・・・葵は翔太と自分を比べてしまうから・・・。

葵に幸せになってもらいたい・・・そのためには・・・建築家の見習いである自分より・・・研修医の翔太の方が相応しいのではないかと考えてしまうから。

翔太が自分が幸せになるためには・・・手段を選ばない男だったとしても・・・。

あかりは・・・葵を愛し・・・翔太に愛され・・・途方に暮れるのだった。

もちろん・・・それは・・・贅沢な悩みなんだけどね。

でも仕方ない・・・あかりはピーチ姫・・・どんなにマリオに助けられても・・・クッパにつかまってしまう定めなのだ・・・最終面までは・・・。

あかりに「愛の告白」をする勢いだった兄・葵が意気消沈して帰って来たことを敏感に察知する妹の鑑・七海(大原櫻子)・・・。

「これ・・・二人で行ってこい」

スタッフ思いの雇用主・丹羽万里子(吉田羊)から贈られた浅草の遊園地「花やしき」のチケットをおバカな親友・公平(太賀)に手渡す葵。

「やった~・・・七海ちゃん・・・一緒に」

「行かない」

居候の公平に・・・胸の痞えを語る葵。

「プロポーズだぜ・・・結婚なんて・・・今の俺には考えられない・・・」

しかし・・・公平は深い眠りの中にあるのだった。

一方・・・あかりの同居人の高梨恵里香(馬場園梓)は報告を暖かく受け入れる。

「それで・・・あかりは・・・なんて」

「何も言えなかったよ・・・」

「でも・・・そんなこと言われたら・・・私なんて幸せすぎて爆発しちゃうね」

ノコノコなのか・・・クリポーなのか。

あかりに励まされ、病院祭りを成功させ、高揚した葵だったが・・・たちまちモチベーションが下がる。

富永美玲(山本美月)が完成させている「第27回新人建築設計コンクール」の応募作が完成しないのである。

部下思いの磯原(永井大)は事情を聴きだす。

「なんだ・・・冴木瑠衣子(市川由衣)と上手くいっていると思ってたのに・・・」

もはや・・・禊は済んだとばかりに・・・葵に挑戦状をたたきつける翔太。

「俺・・・プロポーズしたんだ・・・今年の花火大会にあかりをさそった・・・二人であの場所からやりなおすつもりだ」

平成27年の「富山みなと祭り納涼花火大会」は8月31日(月)・・・開催である。

つまり・・・山城心音(大友花恋)の花火大会のチラシは・・・去年のだったのか・・・。

それとも単なる発注ミスか・・・。

とにかく・・・一年後はないんだな・・・。

花火大会の日は・・・新人コンテストの日とダブルブッキングである。

葵と翔太の背後で・・・葡萄の果実がたわわに実る。

陶酔する翔太。慈善に沈む葵。

心音の転院の日。

見送りにやってきたあかり。

「何があったのか・・・わからないけど・・・あんたたち・・・結構お似合いの二人だよ」

パックンフラワーである。

翔太は・・・貧乏なあかりのために・・・富山までの北陸新幹線のチケットを渡す。

「待っているから・・・」

あかりはチケットを受け取り、マリオ・サイドからは非難轟々である。

「なんで・・・助けても助けても・・・また捕まっちゃうんだよ」

しかし・・・ファイヤーフラワーの七海はついに旅行代理店「エバートラベル」(末長い旅行)への就職を決めるのだった。

「エバートラブル?」

「誰が災難続きじゃ」

キノコの公平は早速、下心を秘めた祝賀パーティーを開催である。

帰宅した・・・七海は・・・あかりを連れ帰っていた。

「あかりちゃんの合格祝いも兼ねて・・・」

その上で・・・あかりは公平と買い出しに出かけ・・・兄とあかりを二人きりにするのだった。

「コンテスト・・・月曜日なんだ・・・」

「うん」

「でも・・・私・・・プロポーズされて・・・その日はあの花火大会に誘われているの」

「・・・」

「私・・・帰るね」

いくなと言わない葵に・・・失望するあかり。

「あかり」

あかりを呼びとめる葵。

「・・・」

「・・・き・・・気をつけて」

一部お茶の間からは・・・お前は梅さんか・・・と嘆きの声があがるのだった。

とぼとぼと家路につくあかりは・・・ふりかえらない。

高い窓からなす術もなく・・・あかりを見送る葵。

夏の終わりである。

マリオは無敵状態のまま・・・落とし穴に落ちて行くのだ。

そこにヨッシーではなく・・・牡羊座生まれの万里子が駆けつける。

「そばとそばつゆは恋愛と仕事みたいなものよ」

「え・・・」

「いいそばができなかったら・・・まずはそばつゆを作って・・・そばつゆにあうそばをね」

「・・・」

「できることから・・・やれってことよ・・・」

「増税のための減税ですか・・・」

「人間関係は切磋琢磨こそ望ましいの」

「それが・・・人生」

単純な葵はすべてを忘れて・・・作品制作に打ち込むのだった。

あかりの望んだ「未来の家のイラスト」を実現するための設計図・・・夢を形に変える第一歩を踏み出す葵・・・。

七海が・・・公平が・・・美玲が・・・磯原が・・・夢中で前進する葵を見つめるのだった。

「そこには・・・隠しマップにつながる土管があるわよ」

万里子も惜しみないアドバイスを送る。

今できることをやり遂げた葵・・・。

妹の鑑である七海は兄を急かす。

「あかりちゃんに・・・見てもらいなよ」

コンクールは公開なのだった。

葵は・・・「きてほしい」とあかりにメールを送る。

哀しいほどに・・・消極的な男の・・・精一杯の命令である。

コンクール会場となるメディアホール・・・。

ただの審査員でないことが明らかな・・・審査員・島野仁(矢島健一)・・・。

本番に弱い葵は緊張しまくる。

あかりの席は空席・・・。

しかし・・・檀上に葵があがると・・・扉が開き、あかりが現れる。

あかりには分かる・・・葵の設計した家が・・・二人の青春の結晶であることが・・・。

課題テーマは・・・「百年続く家」だった。

セプテンバー・イレブンが近いので・・・「表参道高校合唱部」から「恋仲」へ「ハナミズキ」のリレーである。

「オモコー」も「ど根性ガエル」も「恋仲」の話なのである。

甘酸っぱいのは「仕事」でも「結婚」でもなく・・・「恋」なのだ。

葵の発表が終わると・・・あかりは姿を消す。

最優秀賞は逃したが・・・優秀賞を獲得する美玲・・・。

そして・・・葵は審査員賞を受賞する。

「ありがとうございました・・・」

予想外のことに驚く葵。

しかし・・・ただものではない審査員は・・・葵の心を問うのだった。

「百年続く家と言えば・・・誰もが耐震設計に目を向けると思うのですが・・・あなたのコンセプトは違いますね」

「家は・・・住む人がいなければ・・・ただの廃墟です・・・これは僕がずっと住み続けたい家なんです」

「あなた一人で・・・だから・・・寝室とキッチンが一体化しているんですか」

「別々の場所にいても・・・淋しくないように・・・気がつようそうにみえるけれど・・・淋しがり屋だから・・・」

「その人への熱い思いが・・・設計から伝わってきますよ」

「・・・」

「その人を手放すことはできませんね・・・」

「・・・」

「設計で一番大切なのは・・・情熱だと私は思います・・・その人はあなたの情熱の源なんだから」

二人の対話に静まりかえる会場とお茶の間・・・。

「百年続くためには・・・今・・・つながっていないと」

微笑む・・・スーパー審査員・・・同じ苦難を乗り越えたルイージなのか・・・。

葵は会場を飛び出す。

しかし・・・あかりの姿はない・・・。

葵はあかりに電話をかける。

「あかり・・・」

「かんばったね・・・でも噛みすぎだったよね・・・へらへら笑ってないでひらひら舞ってよ」

「今・・・どこにいるんだ・・・」

「もう・・・いかないと・・・」

響き渡る発車のベル・・・。

「最終面にワープだ・・・」

「増殖は・・・」

「十五分延長で・・・」

「結末は・・・」

「ナイショ・・・」

「どこへ・・・」

キリマンジャロではありません・・・」

「君がくれた夏へ」

「奇跡を捜して」

「100人マリオ体制で・・・」

葵はBボタンダッシュで東京駅に向かう。

赤い屋根と青い屋根を飛び越えて・・・。

結婚できない男になるのは・・・マリオなのか・・・クッパなのか・・・。

そこに金魚はいますか・・・。

関連するキッドのブログ→第8話のレビュー

| | コメント (0) | トラックバック (5)

2015年9月 7日 (月)

ポケットの中の平和~おもしろきこともなき世におもしろくすみなすもの(黒島結菜)

妄想は虚構の一種である。

歴史が虚構である以上・・・それは妄想に過ぎない。

逆に言えば・・・共通の歴史認識とは妄想の共有なのである。

時は過ぎ去って行く。

昭和は遠ざかって行く。大正はもうあったのかどうかもわからない。明治は遠くなりにけりである。

幕末という・・・日本という国の大転換期・・・その遥かな過去に何があって現在に至るのか・・・一から妄想するのはなかなかに大変だ。

それでも・・・自分の住んでいる国がどのように成立したのかを・・・なんとなく知っておきたいと思う人間は少なくないだろう。

なにしろ・・・この国では・・・自由な歴史研究が行われ・・・妄想が統一されていないために・・・学校教育で正しい歴史を教えることに不自由があるのである。

史実に寄り添った大河ドラマでなんとなく妄想を共有したいわけである。

そういう意味で・・・かなりとんでも大河ドラマであるこの作品。

このとんでも大河の路線を「天地人」(平均視聴率 21.2%)で確立したとも言える脚本家の登場である。

すげえな・・・超とんでも大河の道をまっしぐらだな。

「花燃ゆ紀行」と本編の落差はナイアガラの滝みたいだぞ。

妄想では・・・「おもしろきこともなき世をおもしろく」の上の句に対し晋作は「民百姓を捨て駒にして」と下の句を作っていてもおかしくないと思うのだが・・・「美人妻よりおかめがなじむ」みたいなことに・・・。

まあ・・・すべては妄想だからな・・・被害妄想でも誇大妄想でも関係妄想でも受け入れるしかないのだな。

で、『燃ゆ・第36回』(NHK総合20150906PM8~)脚本・小松江里子、演出・渡邊良雄を見た。例によってシナリオに沿ったレビューはikasama4様を推奨します。今回は高杉晋作の死去で今後の出演が心配な正妻・高杉雅の描き下ろしでお得でございます。笑顔に続いて二枚目は憂いを秘めていてうっとりでございます。とんでも大河にあって・・・視聴継続のモチベーションのために果たした役割は大きいですよねえ。全体的に「なんだかなあ・・・」の大河にあってキャスティングだけは・・・頑張った・・・と言う他ございません。まあ・・・俳優の皆さんにとって幸福だったかどうかは別として・・・。第二次世界大戦まで続く巨大な戦史の中では・・・第二次長州征伐は「ポケットの中の戦争」だったのかもしれない。そして・・・会津の奥が戦火にさらされたようには・・・戦の惨禍が及ばなかった萩や山口の奥には・・・おそらく「ポケットの中の平和」があったのでしょう。いつの時代にも戦争と平和はあり・・・そして戦争中でも平和な人々はいるものですからねえ。

Hanam036元治二年(1865年)二月、毛利元徳の長男・興丸生誕。慶応二年(1866年)七月、江戸幕府第14代征夷大将軍・徳川家茂病没。将軍職が空位となり、幕府は長州征伐継続が困難となる。この時、興丸は満一歳五ケ月。薩摩藩は島津久光・忠義父子の連名により征長反対の建白書を朝廷に提出。八月、小倉城が落城し、「長州征討止戦」の勅命が下る。これによって長州征伐は事実上の終戦となる。九月、朝廷は孝明天皇と徳川慶喜に対する薩摩藩と一部公家による抗争に発展し、朝廷改革を目的とした列参諫奏を岩倉具視が強行。騒乱を嫌う孝明天皇の逆鱗に触れる。結果として朝廷では徳川慶喜の力が強まる。十二月五日、慶喜は江戸幕府第15代征夷大将軍に就任。二十五日、孝明天皇は天然痘によって崩御。突然の病死に暗殺説が疑われる。この時、興丸は満一歳十ケ月。慶応三年(1867年)一月、満14歳の明治天皇が即位。二月、長州問題、兵庫開港問題などの国事を列侯会議によって決することが薩摩藩によって提唱される。伊達宗城(前宇和島藩主)・山内豊信(前土佐藩主)・松平慶永(前越前藩主)らが同意に傾く。四月十二日、島津久光(薩摩藩主島津茂久の父)が藩兵を率いて入京。十四日、高杉晋作が病没。この時、興丸は満ニ歳二ケ月。五月、山内豊信(容堂)が入京し、四侯会議が開催される。長州征伐の継続の賛否が論じられる。六月、大政奉還を目指す同盟が薩摩藩と土佐藩の間で密約される。九月、小田村素太郎が楫取素彦、桂小五郎が木戸孝允、村田蔵六が大村益次郎に藩命により改名する。この時、興丸は満二歳七ケ月。十月、倒幕及び会津桑名討伐の密勅が下る。慶喜、大政奉還を表明。十一月、坂本龍馬暗殺。十二月、王政復古の大号令。毛利敬親・定広父子の官位復旧が決定し、長州は朝敵を赦免される。

「興丸様は・・・何歳になられたか・・・」

「年が明ければ数えで・・・四歳になられる・・・」

「少し・・・成長が早すぎるようだが・・・」

「守役の美和殿が何やら怪しい薬を煎じているという噂じゃ・・・」

「それにしても・・・季節がおかしいの・・・」

「去年が今年のようで来年も今年のような時間軸の乱れが感じられる・・・」

「春かと思えば夏・・・夏かと思えば年の暮れじゃ・・・」

「天変地異の前触れか・・・」

「どんど天地人の魔法でござろう」

「シュタインズ・ゲートが開くのか・・・」

「なんじゃ・・・それは・・・」

「再放送中の深夜アニメでござる・・・」

美和は船中で隊士たちの心を読んでいる。

荒れた日本海を改造型輸送船第三丁卯丸が航行している。

蒸気機関を供えているが帆走中である。

長州忍びのものたちは鬼兵隊と呼ばれ、くのいちたちは萩女衆と名付けられ、丹後国から秘密裏に上陸し、街道を経て入京することになっている。

倒幕派の忍びと公儀隠密の暗闘はすでに峠を越え、お互いに身動きできぬ状況である。

長州忍びたちは薩長同盟の密約に基づき、薩摩支援の体制をとる長州軍の上洛に備えて薩摩くぐり衆との共闘体制に入るのである。

「文さん・・・いや・・・美和様・・・」

伊藤博文となった俊輔が船室の美和に声をかける。

文は恩師の妹であり、同志の妻であり・・・毛利家の奥のものである。

そして・・・長州くのいち上洛隊の隊長であった。

俊輔にとって主筋のようなものであり博文は文の一字を受けたのだった。

隠し目付けであった博文は表向きは応接係(外交官)であったが・・・今は長州忍び上洛隊の隊長であった。

「そろそろ・・・上陸します・・・上陸艇に移る準備をしてくだされ」

「夜明けが近いですね・・・博文殿」

「はい・・・岸は一応、幕府領ですので・・・ご用心くだされ」

「知っていますか・・・義兄は楫取、桂様は木戸と名乗られたとか」

「もちろんでございます」

「楫取は香取神宮に通じ、木戸は蝦夷征伐にちなんだ氏・・・いずれも関東や陸奥に縁深い名前です・・・お殿様は・・・九州攻めの前に配下の武将に九州武士の古き名を与えた・・・織田信長の気分なのですよ」

「なるほど・・・」

「兄の夢見た・・・維新がまもなく実現します」

「しかし・・・私の出番はあまりないようです」

裏方に徹している博文は気を許した風に唇を尖らせる。

「安心してください・・・博文殿は・・・大層出世なさいますよ・・・」

「マジですかっ」

美和は微笑んだ・・・しかし・・・博文の立身出世の果ての末路については口を噤む。

夢のような慶応三年が終わろうとしていた。

関連するキッドのブログ→第35話のレビュー

| | コメント (0) | トラックバック (3)

2015年9月 6日 (日)

すべてがチャラになる(満島ひかり)いいかげんにしなさい(松山ケンイチ)ひっくりかえるはありません(前田敦子)

すべては変転していく。

どんどん成長していく子供は・・・そのことを忘れがちだ。

変わって行くのが当たり前だから・・・。

人は変わって行くことの恐ろしさや哀しさ・・・虚しさに気がついた時・・・大人に一歩近づくのである。

ぐうたらでダメ男になってしまったひろし。

バツイチでやさぐれてしまった京子ちゃん。

有言実行で街の名士でスマートになったゴリライモ。

ただ・・・ピョン吉だけが・・・昔のままのど根性をみせつける。

「俺が・・・大人になったから・・・お前は消えちゃうのか・・・そんなの嫌だ」

ひろしはあがくが・・・非現実を許さない現実の修正機能。

神様・・・もう少しだけ・・・秋風を吹かさないでください。

しかし・・・九月は否が応でもやってくるのだった。

で、『ど根性ガエル・第8回』(日本テレビ20150905PM9~)原作・吉沢やすみ、脚本・岡田惠和、演出・菅原伸太郎を見た。人は変わらないものを求める時がある。安定した生活。変わらぬ日常。いつもと同じ風景。家族の笑顔・・・。ないものねだりで・・・時々、変化を求めて旅に出たとしても・・・いつもの場所に帰って行きたいのだ。しかし・・・自然は基本的にそういう人間の怠惰に厳しいものだ。油断すればあっという間に津波に飲まれてしまう。運よく助かったものも・・・次に同じように助かるとは限らない。遠い高台よりも近くの階上が正解かもしれない。いつまでも上がり続ける株価はないし・・・恒久的な平和もない。臨機応変に生きて行くか・・・諦念を身につけるか・・・どちらにしろ・・・最後にはすべてがチャラになるのである。泣いて笑ってケンカして・・・人生を謳歌するしかないんだな。

夢の中でひろし(松山ケンイチ)は予感した未来に遭遇する。

ピョン吉(満島ひかり)のいなくなった世界。

母ちゃん(薬師丸ひろ子)が死んでしまった世界。

ひろしは器用に夢の内容を寝言で現実に持ち込み・・・ピョン吉と母ちゃんを楽しませる。

ひろしの中で自分たちが大きな存在であることを堪能するピョン吉と母ちゃん。

しかし・・・喪失感に耐えかねたひろしは・・・夢の中で京子ちゃん(前田敦子)と相思相愛になって淫夢を見始めるのだった。

夢の中で京子ちゃんは積極的に裸になり・・・ひろしの胸に飛び込んでくる。

寝言に答えてはいけないという迷信は・・・睡眠中の脳のストレス緩和に対応している。

抑圧された欲望の解放は・・・上位自我によっても阻止されるが・・・ピョン吉と母ちゃんは自分がないがしろにされたことに腹を立て・・・ひろしをたたき起すのだった。

全能の夢の世界から・・・無能な現実へ・・・引き戻されるひろしだった。

ひろしの心の中で全裸になっていた京子ちゃんは・・・。

区議会議員に立候補して・・・選挙戦を戦う五利良イモ太郎(新井浩文)のウグイス嬢となって・・・選挙カーの中から笑顔をふりまいている。

夢の中で削除されたピョン吉と母ちゃんが実在していることに安堵しながら朝食をとるひろし。

「せっかく・・・京子ちゃんと結婚した夢を見たのに」

「言いたくないけど・・・ゴリライモくんの方が京子ちゃんにはお似合いだよ」

「なんでだよ・・・」

「そんなこと・・・言わなきゃわからないのかい」

「・・・」

ひろしは母ちゃんの乳の下にあるピョン吉の口めがけてメザシを放り込むのだった。

なんなんだろう・・・この21世紀のテクノロジーなのか・・・ものすごい職人技なのか・・・なんだか凄いものを地味に見せられる・・・感覚は・・・。

センス・オブ・ワンダーだな。

ピョン吉に愛されることで・・・主人公ポジションにいるひろしに・・・現実が浸食する。

ゴリライモと京子ちゃんが・・・接近してくるのである。

「五利良イモ太郎・・・五利良イモ太郎をよろしくお願いします・・・イモ太郎・・・頑張っています」

愛しい京子ちゃんが・・・まるで・・・ゴリライモと一心同体になってしまったような悲哀に襲われるひろしだった。

ひろしに気がついた京子ちゃんは少し意地悪な顔になる。

「どこかの誰かとちがって・・・有言実行の男・・・五利良イモ太郎です」

京子ちゃんの中にわだかまる心が・・・ひろしの心をもやもやさせるのだった。

物語の中では一切語られない・・・京子ちゃんの結婚離婚物語・・・京子ちゃんの順風満帆ではない人生・・・そういうことに対する配慮の足りないひろしに・・・少し苛立つ京子ちゃんなのである。

宣伝カーが去ると・・・ゴリライモだけが引き返してくる。

「俺は・・・京子ちゃんにプロポーズするつもりだ・・・お前にだけは断っておこうと思ってな」

「なんだよ・・・それ・・・」

ひろしは・・・慣れ親しんだ世界が・・・また変転するかもしれないことに・・・震えるのだった。

京子ちゃんはひろしの味方で・・・ゴリライモは敵・・・。

もしも・・・京子ちゃんがゴリライモと夫婦になったら・・・ひろしは赤の他人である。

「そんなの・・・ありか」

しかし・・・今や・・・生みの親の母ちゃんや・・・一の子分の五郎(勝地涼)までが・・・区議会議員を目指すゴリライモを応援しているのだ。

戦前の大日本帝国のように孤独なひろし・・・ヒットラーやムッソリーニと手を組みたくなる心情である。

だが・・・ピョン吉がそれを許さない。

あろうことか・・・ひろしもまたゴリライモを応援する一人なのである。

今日はゴリライモの選挙事務所で・・・余興としてピョン吉と漫才を披露する約束があるのだった。

「いやだ・・・」

現実逃避を目指すひろしは・・・ある意味、一番、現実的な警官となった五郎に引きずり出される。

「昔のことは水に流して・・・新たな関係を築いて行く・・・それが男の意地の見せどころでやんす」

「俺は・・・そんな器のでかい男じゃねえよっ」

「先輩・・・意気地なしの意地っ張りはみっともないでやんすよ」

「俺は草野球のキャッチャーかっ」

「高倉健も金八先生も御照覧あれでやんす」

「東映にトラック野郎がいて松竹にフーテンの寅さんがいるのに」

「東宝にはゴジラ、大映にはガメラがいるでやんす」

「日活には八月の濡れた砂が・・・」

「ATGならあらかじめ失われた恋人たちよでやんす」

「石橋蓮司と緑魔子夫妻か・・・誰が昭和の邦画界のノスタルジーにひたれと・・・」

「京子ちゃんも楽しみにしているでやんすよ・・・」

「ちっ」

仕方なく・・・センターマイクの前に立つひろしとピョン吉だった。

蝶ネクタイによるゴムパッチンを披露し大喝采である。

「ゆーとぴあかっ」

「人生とは・・・痛みに耐えるものなんだ」

「いいかげんにしなさいっ」

もちろん・・・ピョン吉も痛いが・・・ひろしも痛いのである。

漫才が大好きな京子ちゃんは笑顔を見せるのだった。

街に戻ってから・・・仏頂面の多い京子ちゃんは・・・宣伝カーでも笑顔を見せていた。

人は誰かの役に立つと笑い・・・馬鹿馬鹿しくても笑うのである。

京子ちゃんの笑顔に一瞬癒されるひろし・・・。

しかし・・・ゴリライモが・・・身内の集まりで・・・。

「当選したら・・・結婚してください」と京子ちゃんにプロポーズ。

たちまち・・・奈落の底に沈むひろしだった・・・。

ひろしは懊悩する・・・ゴリライモは・・・応援したい・・・しかし・・・ゴリライモが当選したら・・・京子ちゃんはゴリライモ夫人になってしまうかもしれない。

投票日・・・。

母ちゃんはひろしを連れてウキウキと投票所に向かう。

選挙権があるのは成人の証である。

ひろしに投票する権利があることを母ちゃんは誇りに思っているらしい・・・。

選挙結果の気になるひろしは・・・出口調査をする記者にからむ。

もしも・・・自分の一票で・・・ゴリライモが当選したら・・・京子ちゃんが・・・。

だが・・・ひろしは・・・ゴリライモに清き一票を投じるのだった。

開票結果を待つ・・・選挙事務所。

次々と当選を決める・・・他の候補者たち。

ついに・・・残りは一枠である。

お通夜のような・・・空気・・・祈りを捧げる京子ちゃん。

ひろしは・・・景気づけのために・・・ピョン吉をゴリライモに貸し出す。

「ゴリライモ・・・俺を着るのは初めてだな」

「・・・うん」

実は・・・ピョン吉を着ることは・・・ゴリライモの密かな憧れだった。

回想シーンでは少女時代の京子ちゃんが登場し、演じる松本来夢は「表参道高校合唱部!」から二夜連続登場である。

「かえるのポーズ」で喜びを表現する練習をする一同。

座が盛り上がったところで・・・開票結果を告げる電話が鳴る。

ゴリライモは4917票を獲得し・・・一票差で当選するのだった。

「俺の一票がゴリライモを当選させた・・・」

複雑な気持ちになるひろし・・・。

しかし・・・ゴリライモは京子ちゃんにすでに「お断り」されたことを告白する。

「みんなの前でプロポーズしたら喜ぶと思った・・・ひろしくんと同じで私の気持ちなんかおかまいなしなのね・・・だって」

一方・・・控室に集まった女たち。

よし子先生(白羽ゆり)にプロボーズしにくる梅さん(光石研)・・・。

「け・・・け・・・結構毛だらけ猫灰だらけケツの周りはクソだらけ・・・」

「それは・・・寅さん・・・」

「失礼しました~」

女たちは言う。

「いつまで待つんですか」

「でも・・・結構、楽しいんですもの・・・プロポーズを待っている時って・・・人生最高の時でしょう」

「ですね・・・」とやさぐれる京子ちゃん。

「一体・・・何があったの・・・あなたの私生活に」と女たち・・・。

当然、根掘り葉掘り聞かれた京子ちゃんだが・・・オフレコである。

五郎は・・・色恋沙汰を堪えて一票を投じたひろしの男気を褒めそやす。

そこへ女たちが合流し・・・気不味い空気が漂うのだった。

「私は・・・結婚に失敗して・・・この街に帰ってきて・・・人としてやり直したいんです・・・結婚とか・・・そういう気分じゃないんです・・・どうかわかってください・・・そういうこと抜きで仲間にしてください」

町田校長(でんでん)は凍結したムードをお決まりのセリフで打破するのだった。

「教師生活41年・・・引退しても・・・仲間にしてください」

夜更けである。

ひろしは・・・ピョン吉と二度目の舞台にあがる。

京子ちゃんの家の前である。

「いっておやり・・・」

京子ちゃんのおばあちゃん(白石加代子)は傷心の孫の背中を押す。

「・・・今さら何を言ってんでしょうねえ・・・」

「まったくです」

「昨日や今日の付き合いじゃありません・・・何があったって仲間ですよね」

「そうですねえ」

「死ぬまで・・・仲間に決まってるじゃないですか」

「その通り・・・」

「いや・・・死んだって仲間だ」

「・・・」

「ひろしくん・・・」

その時・・・はがれおちかかるピョン吉・・・。

京子ちゃんの表情から・・・周辺事態に気がつくひろし・・・。

ピョン吉を抱きかかえる。

「いい加減にしなさい・・・」

なんとか・・・元に戻るピョン吉・・・。

「ひろし・・・」

「ピョン吉くん・・・」

心と心は・・・今も通っているけれど・・・。

あの素晴らしい日々は・・・遠ざかって行く・・・。

とりかえしのつかない時は過ぎて行く・・・すべてがチャラになる日まで。

関連するキッドのブログ→第7話のレビュー

| | コメント (2) | トラックバック (6)

2015年9月 5日 (土)

夏の終わりの美少女祭り(芳根京子)今はもう動かない(吉本実憂)あまくそっ(萩原みのり)アラチョッコンカッタン(柴田杏花)果てない夢(森川葵)沈んじゃうと船頭さんが(葵わかな)めぐるめぐりあい(松本来夢)

どこから切っても美少女である。

つまり・・・男子は全員見ているんだな・・・。

女子の憧れのファッションモデルに男子がほとんど興味なしなのと真逆だ。

いや・・・最近は男子もかわいい風なモデルが好きなんじゃないか・・・それは男子のような女子が・・・だろう。

主人公は変な髪型で・・・美少女じゃない風を装ってるじゃないか・・・。

いやあ・・・それでも美少女なところが美少女なんだよな。

すべての言葉は命令である。

お願いもおねだりも懇願も哀願もすべては命令なのだ。

「目を覚まして」

「泣くなよ」

「バカ」

「私のことが好き?」

「君が好きだ」

質問も答えも命令に過ぎないのだ。

答えてください・・・わかってください・・・とみんなが叫んでいる。

で、『表参道高校合唱部!・第7回』(TBSテレビ20150904PM10~)脚本・櫻井剛、演出・石井康晴を見た。もしも来年死ぬとわかったらどうしよう。もしも来月死ぬとわかったらどうしよう。もしも来週死ぬとわかったらどうしよう。もしも明日死ぬとわかったらどうしよう。もしも一時間後に死ぬとわかったらどうしよう。もしも一分後に死ぬとわかったらどうしよう。もしも一秒後に死ぬと・・・死んだ。

秒単位のスケジュールはわかりやすくていいなあ・・・。

とにかく・・・誰もがいつ死ぬかわからない人生を生きています。

最高に楽しい夏合宿を終えて・・・解散した瞬間・・・急変したステキ男子のトッキュウ1号こと夏目快人(志尊淳)の重い心臓病。

病院に搬送された快人は集中治療室に運ばれる。

駆けつけた快人の母親(中島ひろ子)に担当医は説明する。

「大動脈解離で・・・緊急手術をします・・・生存率は70%・・・手術をしなければおそらくこのまま・・・どうしますか」

「手術でお願いします」

「快人くんのお母さん・・・」

「あ・・・優里亞ちゃん」

幼馴染の優里亞(吉本実憂)は快人の母親とも顔見知りだった。

「快人くん・・・病気だったの」と部員たちは驚く。

「心臓病・・・よくなったと思っていたのに・・・」

「小康状態だったの・・・手術を奨められていたけど・・・助からない可能性があるので・・・ずっとためらっていたのよ・・・」

「・・・いぼ痔じゃなかったんですか」と主人公・真琴(芳根京子)・・・。

静まりかえる病院の廊下。

「お前たち・・・今日は帰れ・・・結果は必ず知らせるから」と合唱部顧問の鈴木有明先生(城田優)・・・。

帰宅した真琴を待っていたのは・・・誘惑に弱い美女の美奈代(堀内敬子)と出来すぎな野獣の内田勇輝(石丸幹二)のツーショット。

妹の真弓(松本来夢)は出来過ぎ男のお土産のマカロンで懐柔されていた。

「あんたね」

「だって・・・おいしいよ」

ついに歌い出す・・・美女と野獣。

「嬉しいことも悲しいこともみな知ってる時計さ」

幸せそうな二人を窓の外から覗くのび太な父親の雄司(川平慈英)だった。

「お父さん・・・」

父親の暮らす路上駐車の軽トラックまで送る真琴。

「ひどいじゃないか・・・大きな古時計は我が家のテーマソングなのに・・・」

「お父さん・・・大丈夫」

「もう・・・遅い・・・帰りなさい」

一人残された雄司は歌い出す。

「めぐるめぐり・・・めぐるめぐりあい・・・のうた・・・愛の唄」

手術は成功した・・・が・・・目が醒めない快人だった。

心臓が停止したために脳にダメージが残り・・・このまま覚醒しない可能性が否定できないのである。

快人の母親は病室で「歌」を流していた。

「快人が好きだったの・・・ハナミズキ・・・セプテンバー・イレブンの悲劇を歌った歌なんですってね・・・」

「え・・・不倫の唄かと思ってました」

「とにかく・・・刺激を与えたら・・・目がさめるかもしれないの」

どうか来てほしい

水際まで来てほしい

響く一青窈の唄声。

どこでも合唱団は・・・ついに「歌」を封印されてしまったのだった。

夏休み中に出番のない竹内風香(小島梨里杏)と相原ほのか(長谷川ニイナ)はファミレスで順番待ちをするのだった。

テーブルを占拠する合唱団。

「都大会の合唱曲を決めなければいけない」と合唱部部長の相葉廉太郎(泉澤祐希)・・・。

「・・・」と心ここにない真琴・・・。

「合唱部が同好会に格下げされるかもしれない・・・危機だ・・・ここは審査員受けが良くて・・・評価されやすい・・・間宮芳生の米搗まだらで行こう」

「難易度が高すぎないか・・・」と元ひきこもりの祐(高杉真宙)は心配する。

「だからこそだよ・・・難しい曲で努力の成果を見せるんだ」

「まだらってなに」

「謎の言葉だ・・・まだら節というのが各地にあって・・・馬渡島がその発祥の地だという」

「ミステリね・・・」

「祝い唄なんで・・・めでたい歌なんだけど・・・一般人が聞くと不気味に聴こえるらしい」

「合唱コンクール曲あるあるだな」

「芸大の先生がこねくりまわした編曲してるからだろう」

「すぐに労働歌とか・・・生活に密着してるとか言い出すからな」

「インテリにありがちだよねえ」

「本当はまだら島のめでた節なのかもしれないのにな」

「めでためでたあのお的な」

「長崎民謡なのか」

「北陸から日本海沿岸に伝播したらしい・・・逆だと言う人もいる」

「だから出船の船頭さんが出てくるんだな」

「変な歌」

「おい・・・審査員の先生の前でそんなこと言うなよ・・・君はどう思う」

「え・・・私・・・」心ここにない真琴は「ハナミズキ」と答えるのだった。

「ポップスはダメだよ・・・審査員受けが悪いし」

「入賞がかかっているのよ」と部長に賛同する部長一筋のミコこと佐々木美子(萩原みのり)・・・。

結局、課題曲は「米搗まだら/間宮芳生」に決定する。

心ここにないまま帰宅した真琴を・・・香川県小豆島高校から夏休み上京旅行中の親友・ハスミンこと蓮見杏子が待っていた。

「どうして東京にいるの~」

「真琴に会いにきたんよ~」

再会を祝して乙女の抱擁である。

コンクールに向けた練習を開始する合唱部。

しかし・・・合唱バカに故障が発生するのだった。

「気持ちが入らなくて・・・声が出ません」

「快人くんのことが・・・心配なのね」と恋愛アンテナを回転させるあまりんである里奈(森川葵)・・・。

森川葵から葵わかなへの恋愛パスなんだな。

「私・・・早退します・・・」

脱走した真琴はお土産爆買いのハスミンと合流する。

「練習は・・・」

「いいの・・・声が出なくて・・・」

「ええっ」

「快人くんが心配で・・・」

「恋をしているのね」

「ええっ・・・違うよ・・・ただ一緒に歌いたいだけで・・・」

「じゃ・・・香川県から引っ越して私と歌えなくなった時に・・・声が出なくなった?」

「・・・」

「ね?」

恋を指摘されて茫然とする真琴。

病院にやってきた真琴。

「快人くんは・・・いつも助けてくれた・・・また助けてよ」

しかし・・・答えない快人。

そこへ・・・大曾根校長(高畑淳子)が見舞いにやってくる。

「練習はどう・・・?」

「歌詞の解釈をしています」

「それはとても大切ね・・・歌の意味を知れば・・・心をこめられる」

「・・・」

「でも・・・意味を知ってもあなたの歌いたい歌じゃないかもしれないわね・・・」

「歌いたい歌・・・」

「そうよ・・・あなたの心が求めている歌は・・・他にあるのかもしれない」

帰宅した真琴は・・・「ハナミズキ」の歌詞を吟味するのだった。

ハスミンは帰り支度をする。

「え・・・もう帰るの」

「うん・・・あなたのことが心配だったけど・・・東京で仲間も出来たし・・・恋までして・・・なんだか口惜しい気分だもの・・・」

「・・・」

「でも・・・安心した・・・今度会う時は・・・香川県代表と東京都代表・・・ライバルよ」

別れの抱擁をする乙女たち・・・。

翌日も恋する快人のところへ向かう真琴。

「ハナミズキは・・・恋人の幸せを願う歌・・・大好きな人を応援する歌でした・・・だから・・・快人くんは・・・いつも私を励まして・・・くれたんですね・・・今度は私が快人くんを助けなきゃならないのに・・・私・・・何にもできない・・・シクシク」

愛する真琴の悲鳴と嗚咽と泣き声に反応する快人。

「ま・・・こと・・・うた・・・え・・・・うたえ・・・・うたえうたえうたえうたえうたえ・・・うたえ」

「歌えばいいのね・・・わかった」

愛する快人の言葉に従う真琴だった。

お茶の間では第一回「ナースコールしろよ」大会が開催される。

部室では・・・天草教頭(デビット伊東)が「このままでは・・・入賞は無理ですな」と嫌味を言う。

「あまくそっ」と暴言を吐くミコ。

天草の寄りかかるドアを真琴が開いてずっこける・・・のお約束あって・・・。

「私・・・ハナミズキが歌いたい」

「だから・・・ポップスは・・・」

「ハナミズキが歌いたいハナミズキが歌いたいハナミズキが歌いたい」

「・・・しょうがないなあ・・・」

折れる部長だった。部長は真琴に甘いのだ。

「それでいいの・・・」と合唱部副顧問の瀬山えみり先生(神田沙也加)が異を唱える。三段跳びのホップである。

しかし・・・曲目変更を了承する鈴木有明先生。

鈴木先生も真琴に甘いのだ。

謎のピアノ少女・桐星成実(柴田杏花)はイントロを奏でるのだった。

真琴が帰って来た合唱部は無敵状態に突入するのである。

瀬山先生は嘆く。三段跳びのステップである。

「私・・・生徒たちのためになろうと・・・がんばってるのに・・・」

「いえ・・・先生は・・・生徒たちをしっかり支えていますよ」と慰める鈴木先生。

「そうでしょうか」

「時には背後から抱きしめてやることも大切です」

「あすなろ抱き・・・」

鈴木先生の優しい言葉に萌える瀬山先生なのである。

恋の唄が満載になってきました・・・。

快人のお見舞いに向かう真琴。

しかし・・・今回は優里亞が先着していた。

「目を覚まして・・・」

もちろん・・・目覚めない快人。

けれど・・・お似合いの二人を真琴は複雑な表情で見つめる。

真琴・・・両親のなんだかんだから三角関係については理解したらしい。

決勝戦・・・大妻中野のような妻夫木中野・・・国立音大付属のような日本音大付属・・・杉並学院のような松並学院など強豪校がひしめくのである。

「十秒ジャンプをしましょう・・・」

ライバルの得意技を進言する優里亞だった。

合唱バカたちは・・・合唱した。

「ハナミズキの花言葉は・・・私の心を知らないあなた・・・である」

そして・・・出場十組中・・・金賞一組、銀賞二組、銅賞三組の・・・入賞を逃したのである。

つまり・・・七位~最下位だ~。

結果報告のために・・・病室を訪れる合唱部。

「ごめん・・・入賞できなかった」

「来週からタイトルは表参道高校合唱同好会!だ」

「え~ん、え~ん」

お通夜のようなメソメソが響き渡る病室。

その中に真琴の泣き声があることを聞きつける快人。

覚醒の時である。

「お前たちの唄・・・聴こえてたよ・・・ありがとう」

「奇跡だわ」と断言する霊感少女・桐星だった。

歓喜に沸く病室。

お茶の間では第二回「ナースコールしろよ」大会が開催される。

見つめ合う・・・真琴と快人だった。

優里亞は微笑む。

どうぞゆきなさい

お先にゆきなさい

教師たちの残念会・・・。

「これで合唱部は・・・同好会に格下げですな」

アマクソ教頭に瀬山えみり先生(神田沙也加)が三段跳びのジャンプを炸裂させる。

「なんだと・・・何・・・寝言抜かしてんだ・・・誰か子守歌を歌ってたのか・・・おいこら・・・お前・・・いい加減にしないとお経あげちゃうぞ・・・このボケ・・・あんじょう成仏せんかい」

「ひえっ・・・あの・・・合唱部は合唱部でいいと思います」

「ひっく・・・ああそう」

瀬山先生は・・・裏に呼び出す属性を秘めていたのだった。

誕生日に掻揚弁当をお見舞いの品として持ち込む真琴。

妖怪のように湧き出るサプライズ合唱団である。

ハッピーバースデイトウユーは練習不足だったが仲良きことは美しいのだ。

美女のために野獣の持ち込んだ思い出のフィルムを上映する真琴・・・。

そこには・・・青春を謳歌する父と母の姿が・・・。

「めぐる~めぐりあいのうた~」

「・・・これが愛の唄・・・」

そして・・・なにやら借金をかかえた出来すぎくんを尾行するのび太・・・。

そこで見たものは・・・。

ああ・・・なんだか・・・最終回が近付いてきました。

すべてのことが永遠ではないからです。

出船の船頭さんが漕いでも漕いでも・・・きっと船が沈んじゃう・・・夏は終わっちゃう。

関連するキッドのブログ→第6話のレビュー

| | コメント (0) | トラックバック (4)

2015年9月 4日 (金)

職務質問には素直に応じること(北川景子)ただいま潜伏中(川口春奈)凌辱されても無抵抗(門脇麦)旅立ちの時間と場所をお知らせします(中村ゆり)

いよいよ・・・夏ドラマも終盤戦である。

連続ドラマである以上・・・続けて見て来たものだけが物語の深みを味わうことができる。

そういう趣味がない人は別の趣味があるのだろう。

夏ドラマなので視聴率はどの枠も惨憺たる結果だが・・・それも御時勢である。

キッドのチョイスした六番組の最新視聴率は・・・。

①「デスノート」↗11.7% ②「恋仲」↗10.6% ③「ど根性ガエル」↘*6.3% ④「探偵の探偵」↘*5.4% ⑤「リスクの神様」↗*4.7% ⑥「表参道合唱部」↘*4.6%となっている。

「デスノート」と「恋仲」は若者向けのコンテンツと言えるわけだが・・・これがオンエアされるドラマのひとつのギリギリのラインである。

つまり・・・10人に一人が見ているドラマなんだな。

20人いたら・・・二人見ている・・・。

なんとか話題になるわけである。

クラスで同じドラマを見ている人が一人もいないというのでは・・・ドラマによって「恋」が進展しないのである。

まあ・・・相手が同性の場合・・・友情を深めるしかないわけだが・・・。

日本を名指しして軍事力を誇示する隣国について生温かく報道するテレビ朝日やTBSテレビの姿勢を見ていると関係ないドラマまでも色眼鏡で見てしまうことになる今日この頃だ。

極めて少数派の反戦主義者たちは・・・なぜ・・・中国大使館に抗議をしないのか・・・などというのは野暮である。

彼らは民主主義が嫌いなのである。

だって・・・少数派なんだもの・・・。

不平不満に満ちた人々は・・・やがて・・・自らの毒に・・・溺れることになるだろうが・・・それもまた人類にはありがちなことなんだな。

「あなたの悩みを解決します」と探偵は誘う。

悩みを他人に明らかにすることが・・・新たなる悩みになる可能性は・・・極めて高いと忠告しておきたい。

日本が戦争を放棄していれば世界から戦争は根絶される・・・本当にそう思いますか?

で、『探偵探偵・第9回』(フジテレビ20150903PM10~)原作・松岡圭祐、脚本・徳永友一、演出・森脇智延を見た。治安の維持された社会は人間が生きて行くために便利である。それは誰とも知れないものが施設に放火し、交通機関に乱れが生じた時に人々が感じる不便さによって露呈する。清廉潔白な人々は警官に職務質問されても素直に応じることができるだろう。しかし・・・悪徳市民がいるように・・・悪徳警官もいる。公務中に不倫のための密会をするような警察官に・・・誰が安心して身を委ねることができるだろうか。弱きものもある程度、防衛策を身に着ける必要がある。つまり、誰もが自己責任で探偵となる必要があるのである。探偵の探偵とは・・・罪なき一般市民・・・あなた自身のことなのです。

スマ・リサーチ社の対探偵課の探偵・紗崎玲奈(北川景子)と峰森琴葉(川口春奈)は・・・超悪徳探偵「死神」の手掛かりを求めて、配偶者の連続不審死に関係している女・澤柳菜々(柊子)と結婚し、死亡した男の妹・高橋理佳(陽月華)を訪ねる。

彼女が依頼した「阿比留綜合探偵社」の調査報告書には澤柳菜々の高校の卒業アルバムのコピーが添付されていた。

澤柳が死神だとすれば・・・玲奈は初めて・・・敵の顔を見たのだった。

「しかし・・・整形しているかもしれません」

「けれど・・・目と目の間隔など・・・整形してもある程度の痕跡は残るものよ」

玲奈の記憶に澤柳に似た女は該当していなかった。

窪塚悠馬(三浦貴大)の死に玲奈が関与していると疑う警視庁捜査一課の刑事・長谷部(渋谷謙人)は玲奈の収得した資料をチェックしようと目論むが投函前の郵便物に偽装した玲奈の防御によって開封を阻まれるのだった。

一方、都内で営業する探偵社の会合に出席したスマ・リサーチ社の須磨社長(井浦新)と桐嶋颯太(DEAN FUJIOKA)は同業者から「対探偵課に属する紗崎玲奈の違法行為」について糾弾される。

しかし、須磨は告発の内容を否定し、各探偵社に対探偵課の設置を求めるのだった。

大手探偵社を営む竹内勇樹(岩松了)は「面白い・・・紗崎玲奈に悪徳探偵の疑いがあるのなら・・・各探偵社の対探偵課がそれを暴けばいいということですな・・・対探偵課の設置・・・検討する価値がありそうだ・・・」

竹内の発言によって・・・各探偵社の発言は封じられるのだった。

その頃、スマ・リサーチ社前の路上で・・・DV被害者失踪事件の被害者の一人・市村凛(門脇麦)が加害者で夫の沼園賢治(姜暢雄)に追われている事態に遭遇する土井課長(伊藤正之)、佐伯(六角慎司)、伊根(高山侑子)の三人。

伊根が市村を保護し、土井と佐伯が沼園を追跡する。

玲奈を尾行して・・・スマ・リサーチ社に張り込んでいた長谷部は一部始終を目撃する。

玲奈は琴葉を事務所に残し、自転車での沼園追跡に参加する。

玲奈は土井や佐伯の位置情報をマークしているのだった。

自転車で逃走経路を先回りして沼園を追い詰めた玲奈だったが、サバイバルナイフで武装した沼園の確保に手間取る。追いついた佐伯は格闘の末、腕を負傷し、沼園は姿を消す。

「ここは・・・袋小路のはずなのに・・・」と呟く土井。

「工事現場の逃走路を誰かが・・・指示していたようね」と玲奈。

「・・・」

「ありがとう」

玲奈は負傷した佐伯に感謝の言葉を述べる。

スマ・リサーチ社に共闘の気配が芽生えていた。

保護した市村から事情を聴く玲奈。

市村は・・・玲奈を名乗る何者かからスマ・リサーチ社の存在を示唆されていた。

市村に届いた玲奈名義の郵便物にはスマ・リサーチ社の封筒が使用されており、GPS発信器が仕込まれている。

「これは・・・おそらく・・・死神の仕業です」

「え」

状況を察した琴葉は被害女性たちに連絡をとる・・・女性たちのもとには「ニセ玲奈からの手紙」が届いていたのだった。

浴槽への水没で追跡機器を無効化する指示を出す玲奈。

「すぐに別の隠れ場所に移動しましょう・・・安心してください・・・あなたの安全は確保します」

玲奈と琴葉は市村を移送する。

非合法で入手した別人の戸籍を使い、隠れ家の賃貸契約を終了させる玲奈。

三人は・・・人気のない物件に身を落ちつけるのだった。

「決着がつくまでは・・・ここで辛抱してください」

「決着・・・」

「あなたの居場所を特定している探偵と対決する必要があるのです・・・」

「私の居場所を・・・」

14歳で強姦され妊娠し流産した過去を持つ市村は・・・それ以来、暴力に対し無抵抗で生きる姿勢を身に付けたのだった。

帰社した須磨社長からの連絡が玲奈に届く。

「復帰したばかりの琴葉が社員名簿に記載されていなかったことを理由に・・・公安が一定期間の業務停止処分を下した・・・おそらく・・・我が社を何者かがつぶしにかかっている」

「死神・・・ですか」

玲奈は死神に対して挑戦することを須磨に申し出る。

「罠を仕掛けるということは・・・お前自身が危険に身をさらすということだぞ」

「わかっています」

玲奈は治安に問題のある地域のウイークリーマンションに本名で登録することにより常設された悪徳探偵たちの情報の網に自ら飛び込むのだった。

須磨はついに・・・「死神」についての情報を探偵たちに明らかにする。

「私は・・・悪徳探偵の一掃による探偵業の地位向上を目標としてきた・・・つまり・・・玲奈を利用してきたということだ・・・」

「妹を殺されて・・・」

「今までたった一人で・・・」

「そんなことがあったのかよ・・・なんて奴だ」

事情を知った探偵たちの感情が動く。

「今・・・玲奈は死神に接近している・・・俺は・・・玲奈を邪魔するものを許さない」

社長の覚悟に同意する探偵たちだった。

入院中だった「野放図」のリーダー淀野瑛斗(丸山智巳)が過去に起こった事件と同様の手口で暗殺される。

容疑者の玲奈のアリバイが尾行によって立証され、捜査の行き詰った坂東係長(相島一之)は情報提供を須磨社長に求める。

「探偵ですよ・・・すべては女探偵の仕業です・・・」

須磨社長は一言で答えるのだった。

別件の裁判に関わり、竹内勇樹の部下の探偵・児玉庄治(葛山信吾)は澤柳菜々を追っていた。

公的機関に澤柳の関係者が現れると言う情報を掴んだ児玉は張り込みを開始する。

現れたのは澤柳菜々にそっくりの男だった。

隠れ家で質素な食事をとる琴葉と市村・・・。

「あの刑事さん・・・私なんかのために・・・命を落して・・・」と嘆く市村。

「私も・・・玲奈さんに会うまでは・・・ただ流されて生きていました・・・親友を殺されても・・・何もできなかった・・・支配的な姉の言うがままに・・・でも・・・今は自分の力で生きていこうと考えています・・・あなたも・・・」

「・・・」

「マイナンバーの通知カードを受け取るために転送届けを出す必要があります・・・DV加害者に配送されたら大変ですから」

「DV加害者が役所の人だったら・・・」

「そういう問題はきっと起こりますよ」

その時・・・姉からの着信を受け取る琴葉。

「私・・・離婚しました・・・あなたに言われて・・・自分のとりかえしのつかない間違いに気が付きました・・・私は今日の夕方(午後六時)・・・近所(駒場商店街側)の踏み切りから旅立ちます・・・さようなら」

姉の自殺予告に激しく動揺する琴葉・・・。

その頃、ウイークリーマンションの付属品から・・・自家製スタンガンを工作した玲奈は嘘のシャワー・シーンのサービスで・・・お茶の間を釣りつつ・・・待ち伏せを成功させる。

玲奈を襲撃した相手は・・・。

死神の正体は・・・誰か・・・クライマックスは近付いている。

関連するキッドのブログ→第8話のレビュー

| | コメント (0) | トラックバック (8)

2015年9月 3日 (木)

艱難辛苦をあなたに(堤真一)遮蔽物からはみださない秘訣(戸田恵梨香)夜の歩道橋にご用心(森田剛)

誰もが願うノーリスク・ハイリターン。

しかし、人間は時にハイリスク・ノーリターンに飛びこんでいく。

絶叫マシーンとかバンジー・ジャンプとかな。

もちろん・・・心がそれを求めている場合、「絶対安全」で「ドキドキできること」はノーリスク・ハイリターンだと言うことができる。

つまり・・・ノーリスク・ハイリターンとハイリスク・ノーリターンは紙一重の概念なのだ。

まあ・・・絶対安全な遊具なんてないし、思ったよりドキドキできないことはあるわけである。

そこでリスクとは危機に陥る確率であると考えることができる。

命の保証はできないけれど・・・それなりの見返りがある。

後は選択の問題だ。

かって・・・キッドは毎週のように飛行機で全国を移動していたことがある。

飛行機で太平洋を渡り、別の大陸に移動したことさえあるのだ。

なんという・・・無謀さだろうか・・・。

こわいものなしって・・・恐ろしいな。

だが・・・飛行機に乗らなくても落ちてくる奴に当たることもあるわけである。

すべてはライト兄弟が悪いんだな。

「鳥人間コンテスト」で学ぶべき一番のポイントはそこだ。

で、『リスクの神様・第8回』(フジテレビ20150902PM10~)脚本・橋本裕志、演出・石川淳一を見た。表現は一つのリスクである。前フリで語った軽口の中には航空事故の犠牲者や遺族を傷つける可能性のあるフレーズが潜んでいる。そういうものはある種の人間にとっては口に出してはならない部類に属するという判断もあるだろう。しかし、感じたことを口にしてはいけない世界で生きるのは息苦しい。だから決死の覚悟で言ってはいけないことを言う人間もいるわけである。もちろん・・・あまり深く考えないで言う人間もいる。その区別は非常に難しい。虎の尾を踏んだらダッシュで逃げるか、虎殺しの魔剣をふるうしかないしな。・・・おいっ。しかし、人間が口を閉ざすのは人を傷つけるのを惧れている場合ばかりではない。悪事の発覚を恐れて黙秘したりもする。そういうわけで隠蔽もまた一つのリスクである。

神狩かおり(戸田恵梨香)は重大なエラーをして、「謝罪」し、ペナルティーとして左遷され・・・サンライズ物産危機対策室に所属することになる。

かおりはリーダーとしてのリスク、プロジェクトのリスク、マネジメントのリスク、リレーションのリスク、ステータスのリスクなど様々なリスクを管理することを学び、一種の人間的成長を遂げる。

かおりを指導したのは・・・危機対策室長・西行寺智(堤真一)である。

危機に遭遇し、それを克服する経験を共に重ねるうちに・・・西行寺とかおりの間にはある種の感情が成長しているようだ。

かおりの手腕を高く評価する白川専務(小日向文世)はかおりの表舞台への復帰を西行寺に申し入れる。

西行寺はかおりへの打診を留保する。

同時に白川は・・・坂手社長(吉田鋼太郎)の推進する「メタンハイドレート開発プロジェクト」への疑義を西行寺に告発する。

西行寺は社内の派閥抗争もからんだ問題に即答を控える。

そこに速やかに対応するべき新たな危機が発生する。

サンライズ物産の創設期から取引がある総合衣料メーカー「トウセン」の粉飾決算を告発するメールが届いたのである。

粉飾決算の有無を見定めるために・・・副室長の財部(志賀廣太郎)は「トウセン」の取引内容を精査し、かおりと渉外担当の結城(森田剛)は「トウセン」の関連企業への聞き取り調査や、「トウセン」社員への隠密接近を展開する。

やがて・・・商品の出荷状況や、社員待遇に不透明な状況が浮かび上がる。

危機管理室の行動に対して「トウセン」から横やりが入ったことを契機として・・・西行寺とかおりは「トウセン」社長・高中桐子(高橋ひとみ)への直接対決に踏み切る。

「トウセン」は帳簿上では黒字経営が続いており、経理部長の小松史郎(阿南健治)は不正会計を否定する。

「しかし、広告費の割合が異常な額になっています」

「企業イメージを高めるためにゴージャスな外国タレントを起用するなど・・・相応の予算配分です。それによって我が社は躍進を続けているので問題はありません」と主張する高中社長。

「それにしては・・・社員の給与などが減額されているようですが」

「海外に出店するための資産を確保しています。さらなる飛躍のために必要な処置です」

高中社長は澱みなく答えるのだった。

しかし、「トウセン」から出荷された「商品」が納品先で確認できないなど・・・対策室の不審は深まる。

在庫管理のトリックを暴くために・・・商品倉庫への潜入を開始する結城。

事務室に侵入した結城は納品リストの入手に成功するが、侵入が発覚して逃走後、何者かに歩道橋の階段から突き落とされ、資料を奪い返された上に負傷してしまう。

緊急搬送され救命処置により一命をとりとめる結城。

病院に駆けつけた西行寺とかおり。

そこで西行寺はサンライズ物産の顧問・天童徳馬(平幹二朗)から西行寺の父・孝雄(田中泯)が施設から消えたことについて連絡を受ける。

西行寺の動揺に不審を感じるかおり・・・。

病床の結城はかおりと雑談する。

「ニューヨークではもっと危険な目にあった・・・」

「その頃から・・・西行寺さんと仕事を・・・」

「一匹狼だった西行寺さんが日本で企業に就職するなんて・・・驚きだったよ」

「・・・」

かおりは・・・潜在している危機を探知することが危機管理の重要な手段であることを学んでいる。

西行寺について知ることはかおりにおいてすでに危機管理の領域になっていた。

ふりかかる火の粉を払う前に火の用心なのである。

手掛かりを失った対策室は・・・小松経理部長を責めることにする。

呼び出した小松に罠を仕掛けるかおり。

「トウセンの取引先企業に倒産の可能性があります。粉飾決算の可能性があるために・・・トウセンにも当局の捜査が入るかもしれません・・・ご用心ください」

「当方に問題はありませんが・・・関係資料の確認は必要ですね」

しかし、小松の顔色は変わっていた。

小松が去った後で西行寺はかおりに問う。

「倒産の可能性がある企業なんて・・・ないだろう」

「可能性は常にゼロではありません・・・しかし、当局の捜査に対応するために改竄した資料の一部を実態に戻す必要が生じます・・・そこに隙が生じるのでは・・・」

「安心したまえ・・・すでに・・・財部副室長が経理部の周囲に潜入している。

小松がマネキン型隠し金庫から裏帳簿のデータを取り出す姿を清掃員に変装した財部は見た。

入手したデータを分析し・・・「トウセン」の経営実態を掴む対策室のメンバーたち。

「ずっと赤字じゃないか・・・」

「経常利益の前倒しで・・・毎年、赤字を黒字に書き変えています」

「粉飾した差額を回収するためにハイリスクハイリターンの投資に手を出していますね」

「そして・・・投資に失敗している」

「負債は膨らみまくっているな」

「120億円の粉飾か・・・地獄だな・・・」

証拠を突きつけられて狼狽する小松部長。

「・・・す・・・すべては私の責任です」

「社長を・・・庇うのか・・・そして・・・庇護してもらうつもりか・・・」

「・・・」

「それは甘い考えだ・・・」

西行とかおりは高中社長を追及する。

「粉飾決算ですって・・・私はまったく関知していないことだわ・・・すべては経理部長の独断よ」

「これほど多額の粉飾に気がつかなかったというのは・・・経営者として問題があります。株主としてサンライズ物産は経営陣の刷新を求めることになるでしょう・・・」

「・・・」

社長の発言を聞かされた小松部長はすべてを白状するのだった。

「社長が・・・銀行から融資を受けるために・・・赤字を黒字にしろと・・・指示を・・・」

「あなたのしたことは犯罪です・・・」

「恐ろしい・・・金額です・・・実際にはない・・・あることになっている・・・恐ろしい金額」

「・・・」

「次の決算で行う粉飾に耐えきれず・・・私はメールを・・・」

「・・・告発したのはあなただったのか」

「自分で自分を止めるのは・・・難しいのです」

粉飾決算の暴露により・・・企業イメージの低下は避けられなかったが・・・なんとか倒産を免れる「トウセン」だった。

「また・・・西行寺さんに上を行かれました」

「いや・・・小松部長を追い込んだのは君だ・・・君は充分・・・実績をあげている」

「私は・・・この部署に必要ですか」

「専務から・・・話があったのか」

「・・・はい」

「ここに残るのも・・・専務の元へ戻るのも・・・君の自由だ」

「・・・」

種子島(古田新太)は調査報告をする。

「広告費とニューヨーク出店準備費の計算の辻褄がどうしても合わない・・・株につぎ込んだ額を差し引いても毎年5億の使途不明金があるのだ・・・TOUSENの海外投資だが裏の窓口はアジアグローバル証券だ・・・」

西行寺は・・・ハゲタカファンドと組んで烏丸屋を乗っ取ろうとしたアジアグローバル証券の代表・フォー(木下ほうか)の顔を想起する。

「あの男か・・・」

フォーは坂手社長ともつながっている謎の存在だった。

「それから・・・結城を襲った男はトウセンとは無関係らしい」

「それは・・・対策室に敵対しているものがあるということか」

「目付けの目付けだよ・・・」

その時、行方不明だった父親が発見されたという連絡が入る。

思わず・・・西行寺を尾行するかおり。

いつもの海岸で事情を説明する天童・・・。

「君の生まれた家の前に佇んでいるところを警官が保護したらしい・・・」

「とっくに人手に渡っているのに・・・」

「そこまでして彼は会社の危機を救ってくれたのだ・・・」

「自分の家族を犠牲にしてまで・・・救うほどの価値が会社にあったのでしょうか・・・」

「資源のない我が国にとって・・・石油の一滴は血の一滴だ・・・エネルギーの確保は国民にとって死活問題なのだ」

「私には・・・すべてが言いわけに聞こえます」

「・・・」

「私の父親の事件は・・・隠れ蓑で・・・本当はもっと巨大な利権についての密約があったのでしょう・・・あの呪われたソビエト連邦との間に・・・」

二人の会話を黙って聞く老いた父親の眼差しに正気の気配がある。

そして・・・立ち聞き名人となったかおりは唇をかみしめる。

かおりは過去の事件を検索し・・・西行寺の生い立ちを知るのだった。

決意を秘めて西行寺に対峙するかおり。

「私は対策室に残ります」

「・・・」

「西行寺さん・・・あなたの目的は復讐ですか・・・もし、そうなら・・・私は破滅の危機から・・・会社を救わなければなりません」

「危機に際し・・・人は・・・優先順位をつけなければならない・・・それが君の答えか」

「私は・・・あなたの答えを聞いているのです」

西行寺は沈黙した。

沈黙もまたリスクの一つである。

恐怖の体験を重ねるうちに人は恐怖に麻痺する場合がある。

その精神に宿るものが正気なのか・・・狂気なのか・・・判断するのは難しい。

関連するキッドのブログ→第7話のレビュー

| | コメント (0) | トラックバック (6)

2015年9月 2日 (水)

キラとライト(窪田正孝)メロとニア(優希美青)邪悪なる善意と正義なる悪意の隙間で(山崎賢人)

凶器とは道具の一種である。

拳銃による犯罪が多発すれば・・・拳銃なんかない方がいいと短絡的に言う人がいる。

しかし・・・人間が猛獣に相対した時に銃器は人助けの道具なのである。

金銭も道具である以上、凶器となる。

殺し屋を雇えるからである。

人命尊重で金銭を譲渡することが批判されるのは・・・金銭でたやすく武器が購入できるからである。

人助けのために使った金が人殺しに使われるのだ。

様々なデザインが積み重ねられた現代・・・。

デザインのオリジナリティーを問うことは虚しいことである。

どんなデザインにも類似なものがあるにちがいない。

白紙に戻して・・・次のデザインにクレームがつかない根拠などない。

国民の理解が得られないという白紙撤回の理由の情けなさである。

国民の理解力にどんだけ期待してるんだ。

ケチくさいとは思うが・・・プレゼン資料の加工画像が盗用であることなんてなんの問題もないわけである。

出張して写真を撮影する手間ヒマを惜しんだだけで目くじらをたてることもない。

そんなものを鬼の首をとったように言い立てるマスメディアは・・・バカとしか言いようがない。

もう・・・こうなったら・・・ドラえもんの顔にTと刻印してエンブレムにすればいいのではないか。

サザエさんにTでも、名探偵コナンにTでもいいよ・・・。

個人的にはぬりかべにTがいいと思うけど・・・。

とにかく・・・いちゃもんつけられて白紙撤回して予算をドブに捨てる・・・どんだけ金が余ってんだ。

そんな金があったら・・・選手の強化費にまわせばいいのに・・・。

大騒ぎして無駄金使わせる人々にも反省してもらいたいよねえ。

そもそも、いかにもインチキっぽい顔の人の作品を採用することが・・・おいっ。

リスモもリスクにリボーンもアボーンに・・・もう、いいぞ。

で、『・第9回』(日本テレビ201508302230~)原作・大場つぐみ、小畑健、脚本・いずみ吉紘、演出・岩﨑麻利江を見た。「自由」という美しい言葉には悪の香りが漂う。そもそも犯罪者とは法律から自由になってしまった人々のことなのである。独裁政権における恐怖政治の巷では犯罪が激減するという推測も成立する。なにしろ・・・ちょっと悪いことをするのが命がけになってなってしまうからである。デスノートによる死刑執行が常識となった世界では・・・飲酒運転も命がけだし、万引きも命がけなのである。恐ろしくて犯罪なんかできないのである。それでも・・・自由を求めて・・・しでかす人々は・・・ある意味・・・英雄なのである。

デスノートに名前を書かれたエルことL.Lawliet(山崎賢人)は・・・死亡しなかった。

「なぜだ・・・」

「ライトくん・・・君がキラである動かぬ証拠です・・・そこに書かれた僕の名が」

ライトこと夜神月(窪田正孝)は茫然とする。

「これは・・・ニセノートか・・・」

「そうです・・・本物は・・・別の場所に保管されています」

エルはキラ事件の捜査官のリーダーである夜神総一郎(松重豊)にデスノート(黒)を託し、ワタリ(半海一晃)にニセノートを作らせたのだった。

「凄く良い出来だな・・・」

「でしょう・・・」

「エル・・・君の勝ちだ・・・僕がキラだよ」

「そうでしょう・・・僕の直感はまるで原作を読んだように正確なのです」

「まあ・・・お茶の間に気を使ってデスノートの実証実験ができないのはアレだけどな」

「どうして・・・キラになってしまったのです・・・僕のたった一人のトモダチ・・・」

「だって・・・喜ぶ人がいるんだもの・・・人を喜ばせるのって気持ちいいから・・・」

「ですよね・・・しかし・・それはいけないことなのです」

「いけないことって・・・素敵なことじゃないのかな」

「そういう考え方は・・・個人的には許せても世間が許さないのです」

「いや・・・どっちかっていうと世間は許しているような・・・」

「大衆ってバカだから・・・」

「そういうのを独善的って言うんだぜ」

「あんたが言うか・・・勝手に死刑執行人が・・・」

「で」

「まもなく・・・皆さんが到着します」

「しかし・・・魔法で行った殺人なんて裁判が成立しないだろう」

「そこは・・・超法規的処置で・・・」

「結局・・・法律の外で裁くのか・・・」

「あははははは」

到着する捜査陣・・・。

「一体・・・何が起こったんだ・・・」

「説明しましょう・・・」

エルは言いかけて心臓麻痺を起こす。

「え・・・」

エルは死んだ。

「エル・・・」と泣き叫ぶライト。

「ライト・・・」

「エルが・・・デスノートに僕の名前を書こうとして・・・思わず・・・僕はエルの名を書いた・・・僕がエルを殺したんだ」

しかし・・・ライトを父親が慰める。

「お前には・・・エルは殺せない・・・これは偽物だからだ」

「えええ」

「お前が・・・キラではないことが証明されたのだ」

「そんな・・・」

ライトは嘘泣きをやめた。

現場を抜けだしたライトの前にミカミカことキラを崇拝する東京地検の検事・魅上照(忍成修吾)が現れる。

「私がやりました」

「よくやった・・・これで新世界の扉が開く」

「神よ・・・」

ライトはミサミサこと弥海砂(佐野ひなこ)を呼び出し、赤いデスノートに触れさせる。

ミサミサにとって愛するライトは崇拝するキラに変貌する。

デスノートの紙片をミサミサに与えるライト。

「キラ・・・」

「私と共に犯罪者のいない新世界を実現させるのだ」

キラは使徒であるミサミサとミカミカに宣言する。

死神のリューク(福島潤)は問う。

「面白いものを見せてくれるのか・・・」

「もちろんだ・・・」

「そいつは楽しみだ・・・」

エルの顔を見た検事たちに疑いがかかる。

しかし、ライトの警告によってミカミカは用心深く行動する。

そして・・・キラによる死刑執行が再開するのだった。

犯罪は激減し・・・学校からいじめはなくなる。

キラによる天国の扉が開かれたのである。

キラを犯罪者とする警察の威信は激しく低下するのだった。

自宅に戻った夜神父子は異変に気がつく。

ライトの妹の粧裕(藤原令子)が姿を消していたのだった。

総一郎に誘拐犯からの着信がある。

「娘さんは預かりました・・・娘さんの生命はデスノートと交換することで確保されます」

「なんだと・・・」

ワタリに呼び出されキラ対策室に集合する捜査官たち。

ワタリは「エルの遺言動画」を公開するのだった。

「皆さんがこの動画を見ているということは・・・僕は死んでいるということです。しかし・・・安心してください・・・キラ対策室には優秀な後継者がいます」

ワタリはメロを心に抱えたニアことN(優希美青)を紹介するのだった。

「子供じゃないか」

「子供だな・・・」

「ずんだずんだ・・・」

しかし・・・エルの遺言を尊重してニアの指揮下に入る一同。

「しかし・・・大丈夫かなあ」と不安に思う仏の模木完造(佐藤二朗)、馬鹿な松田桃太(前田公輝)、そして偽タキシード仮面の相沢周市(弓削智久)・・・。

「今・・・夜神粧裕の誘拐前の行動を監視カメラで追跡しています」

「誘拐・・・」

「そうなんだ・・・娘が誘拐されていた」

「ここで・・・夜神粧裕が拉致されました・・・拉致したのはこの人です」

魔法の画像解析で・・・鮮明になる誘拐犯・・・。

それは捜査官の一人・・・日村章子(関めぐみ)だった・・・。

「うわあ・・・日村くん・・・」

「そういえば・・・いませんね」

「まさか・・・偽警官だったとは・・・」

そこへ・・・日村から着信がある。

粧裕ちゃん緊縛画像サービス付きである。

「そろそろ・・・私の正体に気が付きましたか・・・さあ・・・交換しましょうか」

「娘の命を助けるために・・・殺人兵器を譲渡することはできない」

「しかし・・・人質交換は犯人逮捕のチャンスですよ」

「犯人に言われたくない」

捜査官一同は・・・燃えるのだった。

「粧裕ちゃんを助けて・・・犯人を逮捕しましょう・・・」

ライトは考える。

(一体・・・日村は何が目的なんだ)

そんなライトをニアは微笑んで見つめる。

総一郎はデスノートを取り出した。

現在は黒いデスノート担当の死神レム(恒松あゆみ)が出現し・・・ライトはデスノートが本物であることを確認する。

(とにかく・・・この事件を利用して・・・デスノートをわが手に・・・)

殺人兵器であるデスノートは呪いである。

キラという神になったライトは・・・すでに悪魔めいている。

大切なのは・・・妹の命ではなく・・・デスノートの入手。

ライトにとって人の命はすでに・・・極めて軽いものなのである。

なにしろ・・・生かすも殺すも・・・キラの気分次第なのだ。

恐ろしい新世界が近付く。

ニアはその扉を閉じるために・・・罠を仕掛けているのである。

誘拐事件を舞台にキラとニアの戦いが幕を開けるのだった。

美術さんがいい仕事しているメロ人形にTをだな・・・。

関連するキッドのブログ→第8話のレビュー

| | コメント (0) | トラックバック (4)

2015年9月 1日 (火)

午後七時から午前七時の間に(本田翼)仕事ができない男は恋愛もできない(福士蒼汰)再犯者(野村周平)

飲酒運転者から免許を剥奪し、性犯罪者は去勢。

そうすれば再犯者はなくなるかと言えばそうはいかない。

飲酒した上に無免許運転で、生殖器官を失った人間がより陰湿な性的犯罪を行う。

邪悪な人間の個性を失わせることは困難なものである。

殺すしかないね。

・・・と殺伐としたキャラクター的なセリフで曖昧にするしかないわけである。

まして・・・恋の病ゆえのあやまちは・・・責めるのも省みるのも難しい。

誰かが傷つくかもしれないからもう恋なんてしない・・・ってわけにはいかないからねえ。

愛したり愛されたり愛し愛されたい・・・愛したかったり愛されたかったり愛し愛されたかったり・・・自己増殖の欲望に突き動かされた人間の・・・あやしい情念は・・・世界に波紋を投げかけるのだ。

で、『・第7回』(フジテレビ20150831PM9~)脚本・桑村さや香、演出・金井紘を見た。テレビ番組には予算配分がある。何にどれだけ予算を使うかを考えるのは主にプロデューサーの仕事だが・・・企画を考えるものにもその要素がないわけではない。たとえば、オールロケの仕事とスタジオセットの仕事では・・・予算の配分がかなり変わってくる。ロケの場合は美術費がゼロという可能性もある。・・・もちろん・・・ロケ現場を改装してセット化すれば美術費は発生する。駅舎の駅名を変更して架空の駅にしたり、実在の店舗の内装をちょっといじったり・・・まあ、それも現在ではCGによって編集所の作業になったりもする。セットを立てこむ時には美術部に仕事があり・・・装飾しないロケには仕事がないわけである。低予算の番組でタレントと技術クルーだけで仕上げる企画ばかり立てていると・・・美術費がふんだんに使える番組に眩暈を感じたりもする。今回は・・・登場人物的なリアルさを考えると・・・荒唐無稽な予算と時間の使い方があるわけだが・・・もちろん・・・恵まれたものの社会還元ということでは恵まれない人々のためにこうした余剰力の使い方があってもいいという主張もあるわけである・・・しかし、個人的には美術さんに仕事があってよかったなあ・・・と思うのだった。

約束の時間に現れない芹沢あかり(本田翼)を待つ三浦葵(福士蒼汰)。

容体の急変した山城心音(大友花恋)の治療をする蒼井翔太(野村周平)。

教え子の無事を祈るあかり・・・。

眠れない夜を過ごす男と男と女・・・。

朝方・・・心音の容体はようやく安定する。

病室に置き忘れた荷物を看護師から渡されるあかり。

葵から何度も連絡が入っている端末を見てうろたえるあかり。

お茶の間から・・・もう少しなんとかなっただろうと非難轟々である。

しかし・・・仕方ない・・・あかりはそういう女なのだ。

自分の心配より他人の心配なのである。

そういう人間を愛せば・・・必ず振り回されるのである。

早朝・・・葵の住居に向かってとぼとぼと歩くあかり。

あかりの来るのをずっと待っていた葵は高い窓から声をかける。

「あかり・・・七時が朝の七時だったとは思わなかったよ」

「ごめん」

「翔太は喜んでくれた?」

「今、そっちに行くから」

「いいよ・・・もう出勤時間だから・・・」

あかりは・・・葵が誤解しているのを想像する。

想像するが・・・葵がいない五年間に・・・翔太と過ごした時間は・・・誤解ではないことがあかりの負い目になっている。

19歳から24歳まで・・・あかりが愛し合っていたのは葵ではなく翔太だったのである。

傷ついた葵が姿を消した部屋をふりかえるあかり・・・。

過ぎ去った過去があかりの初恋を監禁するのだった。

葵は・・・翔太とあかりが過ごした夏の夜を妄想しながら・・・ゴミ箱に合格祝いのケーキを投げ込むのだった。おいしく味わう賞味期限が切れたからである。

フレッシュでなくなってしまったのだ。

食べごろのあかりを葵から奪った翔太は・・・罪の意識と愛の欲望の間で揺れる。

「そんなにボクが悪いのか」

翔太の中で囁くものがいる。

「悪いのはボクだけか・・・」

翔太は蹲る。

「ぼやぼやしている葵だって悪いし・・・まんまと騙されたあかりだって・・・」

自分の部屋に戻ったあかりを同居人の高梨恵里香(馬場園梓)が出迎える。

「夏の夜はいろいろあるものねえ・・・」

「まあ・・・誰でもそう思うよね」

あかりは・・・誤解された自分をもてあます。

美味しい自分を初恋の人に捧げられなかった悔いが・・・あかりを呪縛している。

汚れを知らない十代のように素直になれないのである。

あかりは翔太と過ごした甘い時間をなかったことにはできない女だった。

もやもやしたまま・・・出社した葵は落とし穴に落ちる。

「これ・・・どういうこと・・・」

富永美玲(山本美月)から発注された「八王子の水族館」の「ペンギンカフェ」の「プール」の模型を・・・設定変更の前の状態で作ってしまったのである。

あかりという初恋の人が突然帰ってきて天国の階段を登っていた葵は・・・考えられないミスをしていることに気がつかなかったのだ。

今、階段から転落した上に自ら掘った墓穴に頭から突っ込む葵。

「プレゼンに間に合わない・・・お前・・・事務所の顔に泥を塗ったな」

営業担当の磯原(永井大)は葵を叱責する。

「お前・・・このプロジェクトからはずれろ・・・」

蒼白となる葵。

困惑する美玲。

所長の丹羽万里子(吉田羊)は葵を呼び出す。

「あなた・・・バタフライ泳げる・・・?」

「高校まで水泳部でしたから」

「じゃ・・・これ、いいんじゃない・・・水泳教室のインストラクター・・・時給千円」

「・・・」

万里子は葵に転職情報誌を渡す。

「あなた・・・建築家に向いてないと思うわ」

打ちのめされる葵・・・。

ますます困惑する美玲。

出入りの業者である冴木瑠衣子(市川由衣)は茫然とするのだった。

初恋も仕事も将来の夢も・・・すべてを一度に失いかかる葵。

世界は甘くないのである。

うっかりミスで柱のない家に住みたい人間はいないのだ。

葵にはそういう危うさがあるのだった。

大事なところでフライングする男なのである。

一方・・・もう一人の懲りない男・・・翔太は指導医の真山(奥田達士)から心音の転院について聞かされ驚く。

「北海道の心臓移植の権威が引き受けると言ってくれた」

「・・・」

翔太は心音を口実に・・・あかりを呼び出す。

「心音ちゃんを励ましてくれないか・・・」

「わかった・・・」

八月二十三日(土)の「城南花火大会」に幼馴染の星野悠真(萩原利久)と一緒に行くことが夢の心音。

初恋を胸に封じ込めようとするあかりにとって・・・心音の願いを叶えることは・・・せめてもの慰めなのである。

無理矢理な外出許可を得た心音とあかりは・・・浴衣を買いにおでかけするのだった。

ちなみに2015年の8/23は日曜日である。ついでに2014年の8/23が土曜日だ。

作品世界の現在は実は去年の話なのかもしれない。

ということは・・・「一年後」があるかもしれないわけである。

一方・・・仮病を使って設計事務所を休んだ葵。

妹の七海(大原櫻子)と居候の公平(太賀)を誘い、東京スカイツリーにおでかけする。

「東京スカイツリー・・・キターッ!」

「お兄ちゃん・・・テンションが変だよ・・・今にも変身しちゃいそう・・・」

「なんか・・・あったんだろう・・・」

お茶の間は「原因はお前だがな・・・」と叫ぶのだった。

一方・・・心音の前ではしゃぐあかり。

パンケーキを食べながら心音は問う。

「先生・・・変だよ・・・フワフワしてる」

「そんなことないよ・・・それより告白するの」

「私たちは・・・そんなんじゃ・・・」

「好きな人といつまでも一緒にいられると思ったら・・・大間違いだよ」

「・・・それ・・・心臓移植の提供者を待つ患者に言う言葉?」

「ごめん・・・でも・・・パンケーキだって・・・冷めたら美味しくなくなるでしょう」

あかりは・・・24歳の自分を冷めたパンケーキに例えるのだった。

一方、下町でもんじゃを食べる葵組。

「東京にはキラキラの下にドロドロがあるんだな」

「・・・」

「ドロドロを封じ込める土手も必要だよな」

「・・・」

「何があったんだよ」

あかりの来なかった夜のことを話す葵。

原因が自分であることはスルーする公平だった。

兄を気遣う妹・・・。

「でも・・・それだけじゃない・・・自分に才能がないことに・・・気がついてしまったんだ」

「建築家って・・・才能が必要な仕事なのか」

「豆腐作りにだって才能が必要だろう」

「考えたこともなかったよ・・・」

実りなき・・・バカとバカの会話である。

兄を案じる妹だった。

帰宅した三人を待っている美玲。

「これ・・・やっといて・・・」

後輩を案じる先輩は仕事を発注する。

「でも・・・僕は・・・」

腐っている葵は意地を張るのだった。

「じゃ・・・もう頼まない」

美玲は差し伸べた手を引っ込める。

あかり組が病院に戻ると・・・心音の母親と主治医が病室で待っている。

「来週・・・転院が決まった・・・それまでは安静に過ごしてもらう」

「そんな・・・外出許可は・・・」

「無理だ・・・」

病院では基本的に初恋より健康が優先されるのだった。

「私はただ・・・花火を一緒に見たいだけなのに・・・それが悪いことなのかな・・・」

古傷が疼くあかり・・・。

果たせなかった想いが・・・揺らめくのだ。

あかりは・・・優秀な頭脳をフル回転させるのだった。

すべてをあきらめて・・・水泳のインストラクターへの転向を決意する葵。

建築関係の資料をダンボール箱に投棄する。

その中にはあかりの望んだ「未来の家のイラスト」もあった。

砂浜と庭園に面した小さな家。大きなテレビとオープンキッチン・・・。

「建築家になってこういう家を作ってよ」

昔のあかりの声が葵の心の中にこだまする。

それは儚い過去である。

葵は虚しい夢をくしゃくしゃに丸めて捨てた。

そこへ・・・あかりがやってくる。

「あの日のこと・・・説明させて・・・」

「俺には・・・関係ない」

「じゃ・・・お願いを聞いて・・・」

「なんだよ・・・」

「サザエさんの家の見取り図書いて・・・」

「なんじゃそりゃ・・・」

「それから・・・作ってもらいたいものがある」

あかりは新たな設計図を見せるのだった。

「・・・こんなの無理だよ」

あかりは・・・転職情報誌を発見する。

「まさか・・・建築家になるのをやめるつもり・・・」

「・・・」

「いやだよ・・・だって・・・葵が作るもの・・・好きだもの」

「・・・」

「このテーブルだって・・・あのラックだって・・・ウサギ小屋も・・・葵の作るものは心が落ち着くもの・・・」

「・・・」

「だから・・・夢をあきらめないで・・・」

「・・・」

肩を落して部屋を出るあかり・・・。

自分の存在が・・・葵を傷つけてばかりいることに落胆するのだった。

しかし・・・あかりに褒められて希望の宇宙が心に満ちる仮面ライダー・・・。

高い窓からあかりを呼びとめる・・・。

「カレー食べるか?」

「うん」

二人はやり直しのやり直しにとりかかる。

カレーは・・・七年の歳月を忘れさせる・・・いつもの味である。

苦渋を知らぬ幸福な頃の味に・・・二人の心は温められる。

「知ってるか・・・サザエさんは24歳なんだぜ」

「ええ~・・・タメなの~」

自局アニメを推しまくるドラマだった。

サザエさんは・・・一児の母なのに・・・モタモタしている二人である。

帰宅した妹は・・・兄がやる気を出しているのに・・・驚く。

優秀な妹は・・・二人分の食器が出ていることに原因があることを推察し微笑むのだった。

こうして・・・病院夏祭り化計画がスタートするのだった。

美玲から発注された仕事を仕上げ頭を下げる葵。

「迷惑かけてすみませんでした」

事務所の人々はガッツを見せた葵を生温かく迎えるのだった。

「お願いがあります・・・」

「何よ・・・」

葵は・・・事業主に・・・社会還元事業を申し出るのだった。

面白いことが好きな万里子は・・・面白がる。

工務店の棟梁(宇梶剛士)も巻き込む葵。

「無理だよ・・・ボランティアじゃないんだから」

「ボランティアでお願いします」

病院で翔太を呼び出す葵。

「お前になんか頼みたくなかったけど・・・」

「・・・」

「あかりの願いを叶えてやりたいんだ・・・」

「・・・」

「お前だって・・・そうだろう」

「そうだよ」

ポケットマネーが無尽蔵で・・・研修医とは思えない影響力を行使する翔太は・・・病院で夏祭りが開催されることを経営者に承諾させるのだった。

何者なんだ・・・。

こうして・・・その日・・・病院の廊下には露店が並び・・・会議室にはプロジェクターによる花火映像が投影される。

あかりに呼び出された心音の幼馴染は・・・擬似花火大会を満喫するのだった。

心音の夢は叶ったのである。

入院中の子供たちも・・・たこやきや・・・金魚すくい・・・風船釣り・・・綿飴を堪能するのだった。

ひょっとこのお面をかぶった葵をとうふすくいの得意なおかめのお面の万里子が激励する。

「来てくれたんですか」

「面白そうだもの・・・」

「ありがとうございます」

「よくやったわ・・・あなた・・・何か大切なものを掴んだでしょう」

「教えてくれた人がいたんです」

「じゃ・・・ご褒美にこれあげる」

葵は「花やしき」のチケットを入手した。

心音はあかりに感謝する。

「私・・・告白できた・・・来年の花火大会に誘われた・・・だから・・・転院して病気を治すよ」

「よかった・・・」

「先生も・・・がんばって・・・キックしてないで・・・冷えたパンケーキを捧げるのよ・・・まだ食べられないことはないと思うから・・・」

葵はあかりを捜した。

あかりは葵を捜した。

後片付け中の病院の廊下ですれ違う二人。

偽物の花火の前に佇むあかり・・・。

背後から翔太が現れた。

翔太はあすなろ抱きであかりを拘束する。

慣れ親しんだ男の手のひらの温もりを胸に感じるあかり・・・。

「あかり・・・もう一度・・・僕と一緒に花火を見に行ってくれ・・・悪いとは思っている・・・でも・・・後悔はしたくない・・・僕にはあかりが必要なんだ・・・あかり・・・僕と結婚してくれ」

悪く強い男の懲りないプロポーズを・・・善良で気の弱い男がなす術なく立ち聞きする。

戸惑う女の夏の季節が足早に通り過ぎて行くのだった。

そして・・・初恋と大人の恋愛は激しく火花を散らすのである。

勝負は来年の花火大会に・・・持ち越されるのかもしれない・・・。

一面終わってすぐ二面である。

関連するキッドのブログ→第六話のレビュー

| | コメント (0) | トラックバック (5)

« 2015年8月 | トップページ | 2015年10月 »