すべてがチャラになる(満島ひかり)いいかげんにしなさい(松山ケンイチ)ひっくりかえるはありません(前田敦子)
すべては変転していく。
どんどん成長していく子供は・・・そのことを忘れがちだ。
変わって行くのが当たり前だから・・・。
人は変わって行くことの恐ろしさや哀しさ・・・虚しさに気がついた時・・・大人に一歩近づくのである。
ぐうたらでダメ男になってしまったひろし。
バツイチでやさぐれてしまった京子ちゃん。
有言実行で街の名士でスマートになったゴリライモ。
ただ・・・ピョン吉だけが・・・昔のままのど根性をみせつける。
「俺が・・・大人になったから・・・お前は消えちゃうのか・・・そんなの嫌だ」
ひろしはあがくが・・・非現実を許さない現実の修正機能。
神様・・・もう少しだけ・・・秋風を吹かさないでください。
しかし・・・九月は否が応でもやってくるのだった。
で、『ど根性ガエル・第8回』(日本テレビ20150905PM9~)原作・吉沢やすみ、脚本・岡田惠和、演出・菅原伸太郎を見た。人は変わらないものを求める時がある。安定した生活。変わらぬ日常。いつもと同じ風景。家族の笑顔・・・。ないものねだりで・・・時々、変化を求めて旅に出たとしても・・・いつもの場所に帰って行きたいのだ。しかし・・・自然は基本的にそういう人間の怠惰に厳しいものだ。油断すればあっという間に津波に飲まれてしまう。運よく助かったものも・・・次に同じように助かるとは限らない。遠い高台よりも近くの階上が正解かもしれない。いつまでも上がり続ける株価はないし・・・恒久的な平和もない。臨機応変に生きて行くか・・・諦念を身につけるか・・・どちらにしろ・・・最後にはすべてがチャラになるのである。泣いて笑ってケンカして・・・人生を謳歌するしかないんだな。
夢の中でひろし(松山ケンイチ)は予感した未来に遭遇する。
ピョン吉(満島ひかり)のいなくなった世界。
母ちゃん(薬師丸ひろ子)が死んでしまった世界。
ひろしは器用に夢の内容を寝言で現実に持ち込み・・・ピョン吉と母ちゃんを楽しませる。
ひろしの中で自分たちが大きな存在であることを堪能するピョン吉と母ちゃん。
しかし・・・喪失感に耐えかねたひろしは・・・夢の中で京子ちゃん(前田敦子)と相思相愛になって淫夢を見始めるのだった。
夢の中で京子ちゃんは積極的に裸になり・・・ひろしの胸に飛び込んでくる。
寝言に答えてはいけないという迷信は・・・睡眠中の脳のストレス緩和に対応している。
抑圧された欲望の解放は・・・上位自我によっても阻止されるが・・・ピョン吉と母ちゃんは自分がないがしろにされたことに腹を立て・・・ひろしをたたき起すのだった。
全能の夢の世界から・・・無能な現実へ・・・引き戻されるひろしだった。
ひろしの心の中で全裸になっていた京子ちゃんは・・・。
区議会議員に立候補して・・・選挙戦を戦う五利良イモ太郎(新井浩文)のウグイス嬢となって・・・選挙カーの中から笑顔をふりまいている。
夢の中で削除されたピョン吉と母ちゃんが実在していることに安堵しながら朝食をとるひろし。
「せっかく・・・京子ちゃんと結婚した夢を見たのに」
「言いたくないけど・・・ゴリライモくんの方が京子ちゃんにはお似合いだよ」
「なんでだよ・・・」
「そんなこと・・・言わなきゃわからないのかい」
「・・・」
ひろしは母ちゃんの乳の下にあるピョン吉の口めがけてメザシを放り込むのだった。
なんなんだろう・・・この21世紀のテクノロジーなのか・・・ものすごい職人技なのか・・・なんだか凄いものを地味に見せられる・・・感覚は・・・。
センス・オブ・ワンダーだな。
ピョン吉に愛されることで・・・主人公ポジションにいるひろしに・・・現実が浸食する。
ゴリライモと京子ちゃんが・・・接近してくるのである。
「五利良イモ太郎・・・五利良イモ太郎をよろしくお願いします・・・イモ太郎・・・頑張っています」
愛しい京子ちゃんが・・・まるで・・・ゴリライモと一心同体になってしまったような悲哀に襲われるひろしだった。
ひろしに気がついた京子ちゃんは少し意地悪な顔になる。
「どこかの誰かとちがって・・・有言実行の男・・・五利良イモ太郎です」
京子ちゃんの中にわだかまる心が・・・ひろしの心をもやもやさせるのだった。
物語の中では一切語られない・・・京子ちゃんの結婚離婚物語・・・京子ちゃんの順風満帆ではない人生・・・そういうことに対する配慮の足りないひろしに・・・少し苛立つ京子ちゃんなのである。
宣伝カーが去ると・・・ゴリライモだけが引き返してくる。
「俺は・・・京子ちゃんにプロポーズするつもりだ・・・お前にだけは断っておこうと思ってな」
「なんだよ・・・それ・・・」
ひろしは・・・慣れ親しんだ世界が・・・また変転するかもしれないことに・・・震えるのだった。
京子ちゃんはひろしの味方で・・・ゴリライモは敵・・・。
もしも・・・京子ちゃんがゴリライモと夫婦になったら・・・ひろしは赤の他人である。
「そんなの・・・ありか」
しかし・・・今や・・・生みの親の母ちゃんや・・・一の子分の五郎(勝地涼)までが・・・区議会議員を目指すゴリライモを応援しているのだ。
戦前の大日本帝国のように孤独なひろし・・・ヒットラーやムッソリーニと手を組みたくなる心情である。
だが・・・ピョン吉がそれを許さない。
あろうことか・・・ひろしもまたゴリライモを応援する一人なのである。
今日はゴリライモの選挙事務所で・・・余興としてピョン吉と漫才を披露する約束があるのだった。
「いやだ・・・」
現実逃避を目指すひろしは・・・ある意味、一番、現実的な警官となった五郎に引きずり出される。
「昔のことは水に流して・・・新たな関係を築いて行く・・・それが男の意地の見せどころでやんす」
「俺は・・・そんな器のでかい男じゃねえよっ」
「先輩・・・意気地なしの意地っ張りはみっともないでやんすよ」
「俺は草野球のキャッチャーかっ」
「高倉健も金八先生も御照覧あれでやんす」
「東映にトラック野郎がいて松竹にフーテンの寅さんがいるのに」
「東宝にはゴジラ、大映にはガメラがいるでやんす」
「日活には八月の濡れた砂が・・・」
「ATGならあらかじめ失われた恋人たちよでやんす」
「石橋蓮司と緑魔子夫妻か・・・誰が昭和の邦画界のノスタルジーにひたれと・・・」
「京子ちゃんも楽しみにしているでやんすよ・・・」
「ちっ」
仕方なく・・・センターマイクの前に立つひろしとピョン吉だった。
蝶ネクタイによるゴムパッチンを披露し大喝采である。
「ゆーとぴあかっ」
「人生とは・・・痛みに耐えるものなんだ」
「いいかげんにしなさいっ」
もちろん・・・ピョン吉も痛いが・・・ひろしも痛いのである。
漫才が大好きな京子ちゃんは笑顔を見せるのだった。
街に戻ってから・・・仏頂面の多い京子ちゃんは・・・宣伝カーでも笑顔を見せていた。
人は誰かの役に立つと笑い・・・馬鹿馬鹿しくても笑うのである。
京子ちゃんの笑顔に一瞬癒されるひろし・・・。
しかし・・・ゴリライモが・・・身内の集まりで・・・。
「当選したら・・・結婚してください」と京子ちゃんにプロポーズ。
たちまち・・・奈落の底に沈むひろしだった・・・。
ひろしは懊悩する・・・ゴリライモは・・・応援したい・・・しかし・・・ゴリライモが当選したら・・・京子ちゃんはゴリライモ夫人になってしまうかもしれない。
投票日・・・。
母ちゃんはひろしを連れてウキウキと投票所に向かう。
選挙権があるのは成人の証である。
ひろしに投票する権利があることを母ちゃんは誇りに思っているらしい・・・。
選挙結果の気になるひろしは・・・出口調査をする記者にからむ。
もしも・・・自分の一票で・・・ゴリライモが当選したら・・・京子ちゃんが・・・。
だが・・・ひろしは・・・ゴリライモに清き一票を投じるのだった。
開票結果を待つ・・・選挙事務所。
次々と当選を決める・・・他の候補者たち。
ついに・・・残りは一枠である。
お通夜のような・・・空気・・・祈りを捧げる京子ちゃん。
ひろしは・・・景気づけのために・・・ピョン吉をゴリライモに貸し出す。
「ゴリライモ・・・俺を着るのは初めてだな」
「・・・うん」
実は・・・ピョン吉を着ることは・・・ゴリライモの密かな憧れだった。
回想シーンでは少女時代の京子ちゃんが登場し、演じる松本来夢は「表参道高校合唱部!」から二夜連続登場である。
「かえるのポーズ」で喜びを表現する練習をする一同。
座が盛り上がったところで・・・開票結果を告げる電話が鳴る。
ゴリライモは4917票を獲得し・・・一票差で当選するのだった。
「俺の一票がゴリライモを当選させた・・・」
複雑な気持ちになるひろし・・・。
しかし・・・ゴリライモは京子ちゃんにすでに「お断り」されたことを告白する。
「みんなの前でプロポーズしたら喜ぶと思った・・・ひろしくんと同じで私の気持ちなんかおかまいなしなのね・・・だって」
一方・・・控室に集まった女たち。
よし子先生(白羽ゆり)にプロボーズしにくる梅さん(光石研)・・・。
「け・・・け・・・結構毛だらけ猫灰だらけケツの周りはクソだらけ・・・」
「それは・・・寅さん・・・」
「失礼しました~」
女たちは言う。
「いつまで待つんですか」
「でも・・・結構、楽しいんですもの・・・プロポーズを待っている時って・・・人生最高の時でしょう」
「ですね・・・」とやさぐれる京子ちゃん。
「一体・・・何があったの・・・あなたの私生活に」と女たち・・・。
当然、根掘り葉掘り聞かれた京子ちゃんだが・・・オフレコである。
五郎は・・・色恋沙汰を堪えて一票を投じたひろしの男気を褒めそやす。
そこへ女たちが合流し・・・気不味い空気が漂うのだった。
「私は・・・結婚に失敗して・・・この街に帰ってきて・・・人としてやり直したいんです・・・結婚とか・・・そういう気分じゃないんです・・・どうかわかってください・・・そういうこと抜きで仲間にしてください」
町田校長(でんでん)は凍結したムードをお決まりのセリフで打破するのだった。
「教師生活41年・・・引退しても・・・仲間にしてください」
夜更けである。
ひろしは・・・ピョン吉と二度目の舞台にあがる。
京子ちゃんの家の前である。
「いっておやり・・・」
京子ちゃんのおばあちゃん(白石加代子)は傷心の孫の背中を押す。
「・・・今さら何を言ってんでしょうねえ・・・」
「まったくです」
「昨日や今日の付き合いじゃありません・・・何があったって仲間ですよね」
「そうですねえ」
「死ぬまで・・・仲間に決まってるじゃないですか」
「その通り・・・」
「いや・・・死んだって仲間だ」
「・・・」
「ひろしくん・・・」
その時・・・はがれおちかかるピョン吉・・・。
京子ちゃんの表情から・・・周辺事態に気がつくひろし・・・。
ピョン吉を抱きかかえる。
「いい加減にしなさい・・・」
なんとか・・・元に戻るピョン吉・・・。
「ひろし・・・」
「ピョン吉くん・・・」
心と心は・・・今も通っているけれど・・・。
あの素晴らしい日々は・・・遠ざかって行く・・・。
とりかえしのつかない時は過ぎて行く・・・すべてがチャラになる日まで。
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コメント
キッドさん
こんばんは(*^_^*)
今年は残暑も厳しいだろうな と覚悟していましたが
イキナリ涼しくなってしまい 雨の多い毎日に
もう秋になってしまったのかと ちょっと戸惑っています
ここ何週間かスポーツイベントが目白押しだったので
今回と前回 2話分まとめて録画したものを見ました
印象に強く残ったのは前回で
こんな独特な世界観のドラマを生み出す創り手を本当尊敬しちゃいます
ちょっとお説教じみてみえる回もあった気がしますが
前回はほんわかしてたし ファンタジー色も強くって
今までで一番好きです
このドラマを見ると毎回
ノスタルジーを感じ 最後ほろっとしてしまいますが
この枠のメインターゲットにこのドラマがどんな風に受け止められてるのか
ちょっと気になってしまいます
楽しんでくれているといいなぁ
演者も最高に上手くって寄席を見ているような楽しさもありますが
初回から死が色濃く出ていた分
視聴者を裏切った最終回になること
願ってます✨
投稿: chiru | 2015年9月 6日 (日) 23時09分
シンザンモノ↘シッソウニン↗・・・chiru様、いらっしゃいませ・・・大ファン
連日の猛暑日の後は長雨・・・。
今年の夏休み後半の子供たちはええええええっていう感じでございましたでしょうねえ。
世界陸上、サッカー、バレー、野球、バスケット、水泳と観るもの多過ぎっでございましたな。
前回は旅行、今回は選挙とイベント展開のど根性ワールド・・・。
とにかく・・・二次元のカエルが三次元のTシャツに憑依している世界の話ですからねえ。
基本的にこの世の話ではないのですな。
基本的にはこの世とあの世の境界線で
生者と亡者が混在しているわけです。
生死の境を彷徨う心が
夢を見ているようなものでございます。
ファンタジーであり、ノスタルジーでもある。
まさに奇妙な世界と言えましょう。
主な登場人物であの世に一番近いのは
ピョン吉を除けば
京子ちゃんのおばあちゃん・・・。
時々、この世のものとは思えない感じを・・・
出してますよねえ・・・。
基本的にフーテンの寅さんに親しんだ世代にしか
わからないネタが散りばめられていますが
ピョン吉の存在そのものは
小学生にも受けていると信じます。
ああいう・・・Tシャツが
世界のどこかにあるかもしれないと
信じる子供がいるといいなあ・・・。
ふふふ・・・死ぬ死ぬ詐偽で
ピョン吉よ・・・永遠なれ・・・。
本当にそれでも許せますよねえ。
まあ・・・ひろしとピョン吉の愛は
ひろしと京子ちゃんの結婚の邪魔でしかないとも思いますが・・・。
投稿: キッド | 2015年9月 7日 (月) 07時09分