図書館戦争2013~2015(榮倉奈々)私の愛した本(土屋太鳳)
「図書館戦争」と「図書館警察」は似ているが・・・もちろん違う。
しかし、両者は・・・図書館をめぐる恐怖を描いていることでは同じようなものである。
図書館が駆逐される世界の恐ろしさと・・・図書館そのものが恐ろしい世界はかなり違うだろうがっ。
図書館の恐怖を描いているという理由で「図書館警察/スティーヴン・キング」が図書館の有害図書に指定されることがないことを祈るわけである。
図書館で借りた本は返さなければならないのだ。
谷間である。
あまりに・・・重いテーマは・・・避けたい。
特に「知る権利」と「表現の自由」に関わることは軽く書けない問題である。
だけど・・・軽く書いちゃうもんね。
で、『図書館戦争(2013年劇場公開作品)』(TBSテレビ20151004PM9~)『図書館戦争 ブック・オブ・メモリーズ』(TBSテレビ20151005PM9~)原作・有川浩、脚本・野木亜紀子、演出・佐藤信介を見た。西暦1989年の改元が「平成」ではなく「正化」となり分岐した平行世界の物語である。「平成」では1989年には宮崎勤による連続幼女誘拐殺人事件が発生し、1990年に朝日新聞が漫画が子供に悪影響を与えるという社説を披露し、1991年には東京都議会が「有害図書類の規制に関する決議」を採択する。あらゆる図書が有害であろうがなかろうが規制されることの恐ろしさを無知ゆえに知らない人々の愚行が萌芽しているのである。しかし・・・図書によって知性化されている人々の地道な抵抗が・・・これまでのところ・・・暗黒世界の到来を抑制しているわけである。一方、「正化」では「メディア良化法」が制定され、メディア良化委員会が「表現の自由」とか「知る権利」は「公序良俗」を乱し、「人権」を侵害する「悪」として抑圧するディストピアが誕生する。もちろん・・・メディアである以上、テレビ放送や、素晴らしいインターネットの世界も監視されるわけだが・・・大衆の娯楽を封じることに抵抗を感じる抑圧者たちは・・・「本がなくても別にいい」と考える多数派の支持を得て・・・「図書」を狙い撃ちするのだった。そのために・・・「図書館」が焼き打ちされるという事件さえ起きる。ここに・・・禁書、焚書という「図書に対する弾圧」に対抗する組織として「図書館」が現れる。
メディア良化委員会の実力行使部隊である特務機関「メディア良化隊」に対応するために図書館は専守防衛の組織「図書隊」を立ち上げたのである。
矛盾する国民の権利を代表する二つの機関に対して、司法は中立の立場をとり・・・ここに「良化隊」と「図書隊」の仁義なき戦いが開始されたのだった。
高校三年生の笠原郁(榮倉奈々)は「大切な本」を良化隊に押収されそうになった時、一人の図書隊員に救われる。
後ろ姿しか記憶にない「図書隊の王子様」を追って・・・図書隊・防衛部・図書特殊部隊に入隊する郁。
そこには・・・チビの鬼教官で・・・郁の直属上司である・・・堂上篤(岡田准一)が待っている。
もちろん・・・堂上班長こそが・・・郁の王子様その人なのであるが・・・記憶力に問題のある郁はそのことに気がつかない。
堂上班長の厳しい指導に反発して「あのチビ野郎」と陰口をたたいたり、訓練中に背後から跳び蹴りをくらわす始末だった。
一方・・・就職面接で・・・郁の志望理由を聞いた堂上班長は・・・自分がきっかけで命がけの任務に着任することになる郁に・・・ある種の後ろめたさを感じると同時に・・・郁のスタイル抜群の肢体にそこはかとなく欲情するのだった。
こうして・・・「図書館の自由」を武力の行使で守るという荘厳な主題の中・・・郁と堂上班長の甘い恋物語が進展するのだった。
これを共存させるというのは・・・かなり悪辣で有害な図書の要素を原作は備えているわけである。
図書隊司令の仁科巌(石坂浩二)、特殊部隊長の玄田(鈴森勘司)に見守られ、副班長の小牧(田中圭)、図書館協会会長の父を持つエリート隊員の手塚光(福士蒼汰)、そして業務部に籍を置きながら情報部に所属し・・・郁に特殊な友情を持つ柴崎麻子(栗山千明)と職務に励む郁なのである。
しかし・・・堂上班長は・・・郁をなるべく危険な目に会わせたくないと時々・・・私情を交えるのだった。
閉館の決まった私立図書館から・・・図書を移送する作戦を開始する図書隊。
図書の強奪を目論む良化隊の隊長・尾井谷(相島一之)は圧倒的な戦力で私立図書館を包囲する。
死者が出るかもしれない危険な作戦に・・・堂上は・・・郁を式典に出席する仁科司令の護衛任務につかせることで回避する。
だが・・・焚書愛好家による非合法組織は・・・仁科司令誘拐作戦を実行するのだった。
仁科司令とともに囚われの身となった郁。
「きっと・・・あの人が助けに来てくれる」と信じる郁。
「あいつだけは・・・絶対に守る」と口走る堂上班長。
恥ずかしさが炸裂するクライマックスのために・・・柴崎麻子は情報を分析し・・・郁の監禁場所を特定する。
死地に飛びこんだ班長の・・・日本で一番格闘アクションができるアイドルとしての本領が発揮される。
だが・・・多勢に無勢である。
最後は力尽き・・・班長の命は風前の灯に・・・。
だが・・・近距離射撃で最後は「敵の射殺」を敢行する郁。
「よくやった・・・」と部下の頭を撫でる班長だったが・・・その手に・・・「王子様」を感じる郁だった。
(まさか・・・班長が・・・王子様・・・そんな)
赤面が止まらない郁だった。
恋の花が咲き乱れる図書隊。
手塚は・・・柴崎を意識し・・・柴崎は謎の図書館利用者・朝比奈(中村蒼)に接近する。
玄田隊長と週刊誌の編集者・折口マキ(西田尚美)は昔の同棲相手である。
そして・・・小牧副班長は・・・突発性難聴の女子高校生・中澤毬江(土屋太鳳)と年の差恋愛中である。
まりえであってまれではなす毬江は自分の声が聞きとれないために無口な少女であり、強力な美少女力を発揮する。
小牧がまりえを励ますために推薦した「聴覚障害者の女の子が主人公の物語」が「差別を助長する図書」として指定され・・・小牧はまりえに対するハラスメントの容疑で拘束される。
すべては・・・図書隊を貶めることを目的とした一部勢力の陰謀なのである。
一方、郁の両親である克宏(中原丈雄)・寿子(相築あきこ)が上京。
危険な特殊部隊に所属していることを親に内緒にしている郁は困惑する。
母親の寿子は「娘を殴ってでもやめさせる」覚悟である。
これに対して「親を殴ってでもやめない気持ち」の郁だったが・・・班長は「親に内緒にしていることが・・・すでに覚悟が足りない」と諌めるのだった。
「あなたが・・・危険な目にあってまで・・・なぜ・・・本を守らなければいけないの」
「誰もが・・・目をそむけている間に・・・お母さんが教えてくれた本を読む喜びが消えてしまう・・・私は・・・そんなの嫌なんだ」
「・・・」
秘密警察のような組織で自白を強要される小牧。
しかし・・・「あの本は素晴らしい本なんだ・・・お前たちは本を燃やすようなバカだから・・・わからないだろうが」と拷問にも屈しない。
民間人を巻き込むなという班長の指示を無視して・・・まりえにすべてを話して協力を求める郁。
小牧の無実を証明するためのまりえの記者会見がセッティングされる。
反図書館組織は・・・妨害工作を開始するが・・・柴崎麻子は敵の裏をかくのである。
拘留延長を目論む良化隊だったが・・・まりえの記者会見が成功し、世論は逆転する。
救出された小牧の胸に飛びこむまりえ。
「女として・・・見てくれますか」
「とても・・・子供とは思えないものが・・・あたっているとしかいえない」
全お茶の間が赤面するのだった。
反図書館組織のリーダーは光の兄・慧(松坂桃李)だった。
「本なんて人を腐らせるだけだ・・・」
弟に腐った感じで執着する兄は・・・さらに大いなる陰謀を企てるのだった・・・。
人命より・・・図書が大切という人間賛歌である。
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