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2015年10月31日 (土)

二人だけの秘密だよ(綾野剛)私は空気が読めない(松岡茉優)先天性風疹症候群というリスク(山田望叶)

妊娠は病気ではありません・・・いや・・・病気なんじゃないか。

ヒューマニズムという・・・不可解な思想はデリケートな問題をオブラートに包む。

サイコパスにとってはいろいろと厄介なことである。

「命の大切さ」を説きながら殺虫剤に点火することの不条理におりあいをつける必要から・・・人間第一主義は生まれる。

暗黙の了解とか・・・不文律とか・・・そういう曖昧なルールが法の抜け穴を生み出していくのである。

喫煙という刺激が・・・刺激的なことは明らかである。

飲酒も刺激的だし、観光旅行も刺激的だ。

そういう刺激を求めることと適度な安静は対立するに決まっている。

しかし、無知や怠惰は・・・人間の不完全性の表出でもある。

感染症というリスクに刺激されるかどうか・・・情報と言うものへの接し方の問題がある。

特別な細胞分裂は個人と世界の接点である。

人の道は・・・世界へと続いて行く。

それが「病」の一種であることは間違いない。

で、『コウノドリ・第3回』(TBSテレビ20151030PM10~)原作・鈴ノ木ユウ、脚本・山本むつみ、演出・金子文紀を見た。性交・受精・妊娠・出産というシステムで繁殖する人類は哺乳類として動物の王座に君臨する。しかし、ハロウィンで冥界から逆流する悪霊は時に人類の繁殖を妨害する。妊娠10週までに妊婦が風疹ウイルスに初感染すると90%の胎児に様々な影響を及ぼし先天性風疹症候群の新生児を誕生させることがある。喫煙は女性ホルモン生成に必要な酵素を抑制し、卵巣機能不全にする。喫煙期間が長いければ卵子や胎芽が減少し、喫煙量が増えれば卵子の質が低下し受精率が低下し、妊娠中の喫煙は早期破水、前置胎盤、胎盤異常、妊娠期間短縮、自然流産、早産、難産、死産、周産期死亡、新生児死亡、未熟児、妊娠合併症などのリスクを高める。妊娠中の海外渡航は想定外の出来事に対して妊婦の主治医が関与しにくい場合がある。顧客獲得の必要性に迫られて「リラックスのためにマタニティー旅行はいかが?」と推奨する旅行業者は悪霊に憑依されているのかもしれない。飲酒はこれらの事象をはるかに凌駕するリスクであるがスポンサーの顔色を窺う場合にはネタとしてスルーしましょう。

後期研修医の下屋加江(松岡茉優)は若さゆえに転びやすい。

「四宮先生は・・・患者に人気がありません」

「まあ・・・妊婦さんは患者ではないのだけれど・・・妊娠は病気ではないからね」

「あ」

鴻鳥サクラ(綾野剛)は四宮春樹(星野源)の過去について「ここだけの話」を始める。

下屋や助産師の小松(吉田羊)の誤解を修正するためである。

情報の共有はリスク管理の基本だ。

サイコパス要素の低い人間は感情で左右されやすく、円滑な人間関係の醸成はリスク低減に欠かせない。

サクラと四宮はかって・・・喫煙によるリスクを無視した妊婦と胎児の異常出産に立ち会った。四宮は妊婦に嫌われることを惧れ、「禁煙」を強く推奨しなかった。妊婦が子宮の温存を希望していたために子宮摘出の判断が遅れ結果として母親は死亡した。新生児は後遺症として昏睡を続ける「つぼみちゃん」として・・・五年間・・・入院を続けている。父親は事態に対応できずに家庭は崩壊した。

四宮は・・・つぼみの部屋へ夜毎通い続ける傷心者なのである。

「四宮先生は・・・喫煙妊婦に厳しいし、子宮温存よりも母体優先の傾向が強いのです」

「・・・」

下屋の知らないことは多い。

研修医仲間の白川(坂口健太郎)は好きな女の子を口汚く罵るタイプなので下屋に構うのだが・・・下屋は知らないのである。

助産師の角田真弓(清野菜名)が気配り上手でさりげなく白川に給仕していることは下屋に対するライバル宣言なのだが・・・下屋は知ったこっちゃないのである。

サクラが担当する妊娠安定期に入った根岸若菜(佐藤栞里)は夫の大輝(渡辺裕太)と共に海外のリゾート地にバカンスに行く計画を話す。

「安定期は・・・安全期ではありません・・・赤ちゃんの生育に必要な条件が整ったというだけで・・・お奨めできません・・・何かあっても・・・私が飛んでいけませんし」

「え・・・ドクターヘリとか」

「国境は越えられませんから」

下屋は流行に敏感である。

「マタたびですね」

「なんだい・・・それは」

「マタニティー旅行ですよ・・・マタニティー・ブルー回避のためのリフレッシュです」

「妊娠そのものがブルーになるわ」

「あ」

下屋はうっかりさんである。

新生児科の今橋医師(大森南朋)がサクラに盲目の少女ピアニスト・瀬戸遙香(山田望叶)を紹介する。

「この人・・・誰ですか」

「君が生まれた時のお医者さんだよ」

「その節はお世話になりました」

「どういたしまして」

遙香の母親の加奈子(石田ひかり)は顔に苦労の滲みでる女である。

加奈子は妊娠中に風疹を発症し、そのために先天性風疹症候群によって遙香は心臓疾患を抱え、白内障も患い目が不自由となってしまった。

そんな遥香に加奈子の夫・啓介(音尾琢真)の知人の報道関係者から「風疹の予防接種を啓蒙するためのテレビ番組」への出演依頼があったらしい。

同席した下屋は無思慮に発言する。

「それは素晴らしいですね・・・妊娠初期に風疹にかかるリスクは周知されていませんし」

「私は・・・反対なのです・・・それでなくても・・・ハンデを抱えているあの子を世間の好奇の目にさらすのは・・・」

「あ」

「目が見えないから・・・他人の視線は気にならないのでは・・・」という言葉を流石に飲み込む下屋である。

加奈子のやつれ方に・・・娘に障害を負わせてしまった愚鈍な母親の気配を察したのだった。

下屋は・・・まんざら空気の読めない子ではない。ただ、少し口が滑るだけなのだ。

「そのこと」に触れたくないのは母親自身だったのだ。

「そうですか・・・」

言葉を濁す大人のサクラだった。

「あの子・・・ジャズピアニストのベイビーのファンなんです」

「ベイビー・・・誰ですか」

今橋医師は問う。

「知らないんですか・・・凄い人気のピアニストですよ・・・見た目は少し、のだめのミルヒーに似ています」

下屋の知らないことは多い。

「ミルヒー・・・」

むせかえるサクラ・・・ベイビー本人である。

「週末・・・あの子の誕生日に・・・ベイビーのライブへ連れて行く約束をしています」

「うわ・・・いいなあ」

「・・・」

喫煙の習慣をやめられない木村法子(山田真歩)が道に倒れていると・・・ドラマ的な運命に基づき通りかかる四宮。

「あなた・・・まだ・・・喫煙していたのですか」

「先生・・・赤ちゃんを・・・赤ちゃんを助けてください」

「ちっ」

舌打ちはしないで・・・緊急搬送する四宮だった。

喫煙を憎んで喫煙者を憎まずである。

法子は喫煙リスクによって発症の可能性が高まるとされている胎盤早期剥離で母子ともに危険な状態だった。

サクラも駆けつけ、診断の結果、緊急の帝王切開による出産が決断される。

「カイザーします」

「出血も多いぞ」

「胎児の心音弱くなっています」

修羅場である。

「胎児出ました」

四宮の心の傷は記憶のフラッシュバックによって開き・・・心の血が流れ出す。

「出血が止まらない」

「四宮」

「だめだ・・・子宮を全部摘出するしかない」

「四宮」

「死ぬぞ・・・また死ぬぞ」

「四宮」

「また殺すのか」

「落ちつけ・・・赤ちゃんは無事生まれた・・・あの時とは違う・・・」

「・・・サクラ」

「処置を続けるぞ・・・」

修羅場で施術中の医師が正気を失う。

恐ろしい体験をして震える下屋だった。

この世には・・・下屋の知らない世界がまだまだあるのだった。

母子ともに救われた病室。

「先生・・・喫煙してすみません」

「・・・」

「先生・・・赤ちゃんを助けてくれてありがとう・・・」

「・・・まだ油断はできません・・・できるだけ・・・安静にしてください」

正気を取り戻す四宮。

遥香の母親加奈子は今橋に報告する。

「あの話は断りました」

「そうですか・・・親は子供が転びはしないかと案じるものです」

「はい・・・」

「しかし・・・転ばない子供はいません」

「・・・」

「転んだ時に・・・手を差し伸べたり・・・起きあがることを教えられる親でありたいと・・・私は思っています」

遥香のバースデー。

ベイビーのライブ会場に着席する瀬戸夫妻と十歳の遥香。

ベイビーは突然、客席にやってきて・・・遥香をステージに招く。

「一緒に引きましょう・・・」

「できるかな・・・」

「昔・・・神様は悪い人間に罰を与えるために洪水をおこしました・・・神様はやりすぎたと思って・・・もうしないと人間に約束しました・・・その証が虹なのです・・・虹を渡れば苦難の果てに希望はいつもあるのです」

「クヨクヨしたってしょうがないって話ね」

「その通り・・・」

響き渡るベイビーと少女の奇跡の連弾。

会場は歓喜する。

加奈子は・・・娘の成長に驚くのだった。

「あの子・・・一人で生きていくのね」

「そうさ・・・だれもが・・・いつかは旅立つのだ」

加奈子は肩の荷を下ろす。

「お誕生日おめでとう・・・」

「ありがとう・・・サクラ先生・・・」

「え・・・」

「声と匂いと手触りでわかるのよ・・・」

「・・・内緒にしておいてくれるかな」

「そうね・・・誰にだって秘密にしておきたいことがあるもの」

「君は・・・大人だね」

「でも・・・手を出したら犯罪になるのよ」

「だね」

下屋の知らないことは多いのである。

遥香はテレビに出演した。

「悲劇をくりかえさないために・・・ワクチン接種を推奨します」

旅行好きの根岸夫妻がやってくる。

「ワクチン接種を受けることにしました」

「よろしいですね」

「旅先でキャリアに会ったら大変ですからね」

「え」

「海外旅行はあきらめました」

「よろしいですね」

「で・・・沖縄県のリゾート地に行くことにしました」

「え」

「国内ならドクターヘリは」

「飛びません・・・コードブルーじゃありませんから」

下屋の知らないことは多い。

しかし・・・一般人は下屋よりずっと無知なのかもしれない。

それでいいのだ。

人類はそうやって・・・なんとなく繁殖し続ける。

人生の終焉・・・この世の終わりまで・・・。

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2015年10月30日 (金)

サムライせんせい(錦戸亮)孫の手で変質者から仄かに香るブラを奪還始めました(比嘉愛未)ちょり~す(黒島結菜)

「無痛〜診える眼〜」「遺産争族」「釣りバカ日誌~新入社員 浜崎伝助~」をなぎ倒してこれか・・・。

これだ。

今、「あさが来た」も「花燃ゆ」も明治時代に突入しているからねえ。

そういう意味では唯一の幕末ものと言える。

現代が舞台じゃないか・・・。

「あさが来た」で・・・主人公が蒸気機関車を物凄い感じでイメージしてたよな。

「誰もが知っていることを知らない」という人を馬鹿にする「人」の愚かさというものをもっともっと伝えてもらいたいよねえ。

そういう「人」は基本的に「何も知らない」場合が多いんだよねえ。

それにしても素晴らしいインターネットの世界の噂では「第10回全日本国民的美少女コンテスト」でグラビア賞だった紅蓮女が麻薬及び向精神薬取締法違反(所持)容疑で警視庁組織犯罪対策5課に逮捕されていたらしい・・・。

一部愛好家の皆様の心痛・・・如何許りか・・・。

噂ではコレにも出演していたらしい・・・当然、出番はカットだよな。

重要なシーンでなければ良いが・・・。

国民的美少女系に汚染が拡大していないことを祈る今日この頃である。

遺法薬物には手を出すな・・・美少女は特に・・・なのである。

で、『サムライせんせい・第1回』(テレビ朝日201510232315~)原作・黒江S介、脚本・黒岩勉、演出・片山修を見た。時間跳躍ファンタジーである。基本的に現代人が過去に跳躍するものと・・・過去の有名人が現代に跳躍するものがある。もちろん、現代より未来や、より過去に跳躍する場合もあるが・・・現代と歴史との関連性を描く場合には現代と過去の往還がわかりやすいわけである。今回は幕末の有名人が現代に時間跳躍してきたら・・・という話である。跳躍してくるのは土佐勤王党の首魁・武市瑞山(1829~1865年)である。

ふたゝひと 返らぬ歳を はかなくも 今は惜しまぬ 身となりにけり

あの日に帰りたいと思っても過去には戻れないという虚しさを死んでしまえばもう感じない・・・と辞世を残して切腹して果てる武市半平太(錦戸亮)・・・。

夫の切腹の沙汰を知り・・・半平太の妻・富子(谷村美月)は高知城下を刑場へとひた走る・・・。

「おまんさまあ・・・おまんさまあ・・・」

愛妻があなた、あなたと叫ぶ声も虚しい慶応元年閏五月十一日(1865年7月3日)・・・。

土佐藩郷士・武市瑞山・・・享年37。

目覚めると半平太は・・・見知らぬ山村にいる。切腹のための白装束のままである。

そこは・・・群馬県吾妻郡神里村(フィクション)・・・。

通りかかったヤンキースタイルの若者たち・・・佐伯寅之助(藤井流星)と赤城サチコ(黒島結菜)は驚愕するのだった。

「異人(外国人)か・・・」

「丁髷・・・」

「チョリ~ス」

そこは西暦2015年・・・平成の世だった。

半平太は150年の時を越えてしまったのである。

「ここは・・・地獄なのか・・・」

「?」

しかし・・・自分が生きているようだと感じた半平太は・・・土佐勤王党の仲間が・・・救出してくれたのかもしれないと・・・希望的観測をする。

紛れ込んだスーパーマーケットで・・・「ヤキソバ」を試食した半平太は・・・「泥色の蕎麦のあまりの美味しさ」に感嘆するのであった。

通報を受けて駆けつけた神里村役場のなんでもやる課の職員・佐伯晴香(比嘉愛未)は半平太の異装に驚く。

晴香のセクハラ上司である小見山喜一課長(梶原善)は「変質者」に慄くのだった。

洋装の異人たちに囲まれて逃げ出した半平太は・・・商品を破損してしまいお尋ね者となる。

駐在の中嶋和樹(山本圭祐)は「ちょっと駐在所でお話しましょう」と呼びかけるが・・・相手が横目(警察官)の類と察した半平太は一目散に走りだす。

「変な走り方なのに・・・なんて早いの・・・」

驚嘆する晴香だった。

一年八箇月の獄中生活で衰弱している半平太は精根尽き果て路上に倒れる。

そこへやってきた篠原優菜(岩崎春果)・・・村の小学生たち。

「お侍さんだ・・・」

「お侍さんだよ・・・」

小学生たちは学習塾を経営する佐伯真人(森本レオ)に生き倒れの侍の存在を伝える。

真人先生は・・・半平太を自宅に連れ帰り介抱するのだった。

目覚めた半平太は・・・見慣れぬ晴香のブラジャーを手にとり・・・思わず匂いを嗅ぐ。

そこへ・・・帰宅する真人の孫である晴香と寅之助の姉妹・・・。

「へ、変質者・・・」

「この武市瑞山・・・変節などはせぬ・・・」

「わ、私のブラを返しなさいよ」

「ブラ・・・とな」

真人は慌てず騒がず・・・半平太に食事を与えるのだった。

「あなたは・・・」

「武市半平太と申す」

「そうですか・・・ここはあなたがいた慶応の世から・・・百五十年の後・・・平成の世です」

「・・・なんと・・・」

「はい・・・」

真人の落ちつき・・・物凄い度量・・・あるいは・・・何らかの事情を知っている者か・・・。

「ここは日の本なのか」

「日本国となりました・・・」

「土佐藩は・・・」

「土佐藩も幕府もありません・・・」

「今上天皇は・・・」

「孝明天皇から明治天皇、大正天皇、昭和天皇を経て・・・今は平成の御世でございます」

「そ、それでは・・・勤王の志は・・・」

「はい・・・今では日本国民の誰もが・・・象徴的に勤王でございます」

しばし・・・感涙にむせぶ半平太。

しかし・・・徹夜をしてテレビを視聴し・・・現代のなんたるかを垣間見た半平太は・・・。

世の変節を直感するのだった。

「このような・・・アホの世を作るために・・・わしらは・・・殺し殺されたのか・・・」

半平太は絶望を感じる。

迫りくる西洋列強の手から皇統を守るために尊皇攘夷の志を掲げ、反対派を粛清しまくり・・・その果てに君命により切腹を申しつけられた我が身を虚しく感じる半平太。

その頃・・・上司にお尻を触られても無言で堪える現代人の晴香は親友であり、優菜の母でもあるシングルマザーの篠原理央(石田ニコル)の経営するカラオケスナックで愚痴をこぼす。

「まったく・・・変質者騒ぎで大変だったのよ」

「そんで・・・ペータさんだっけ・・・どんな人なの」

「幕末の人だって言うのよ」

「バクマツ・・・」

「ええとねえ・・・平成の前の昭和の前の大正の前の明治の前ね・・・」

「原始時代・・・」

「そこまではいかないけど・・・」

「日本にアメリカの軍艦が最初にやってきた時、百五十年前の日本の政府・・・幕府は凄く弱腰だったの・・・このままでは日本は外国の植民地になってしまうかもしれないと・・・みんなが立ちあがったわけ・・・武市半平太は土佐勤王党のリーダーだったのよ」

「え・・・ペータ先輩って・・・族のリーダーだったってこと・・・」

「・・・まあ・・・似たようなものよ」

翌朝・・・武市半平太は・・・あの場所にいた。

孫の晴香とともに・・・置き手紙を残して去った半平太を捜す真人先生。

「半平太さん・・・」

「何してるのよ・・・」

「ここが・・・私の来た場所だ・・・ここにいれば帰れるのではないかと思ってな」

「帰ったって・・・切腹するだけでしょう」

「しかし・・・こんな世は嫌だ・・・誰もが西洋にかぶれて・・・大和魂のかけらもない・・・」

「そんな世ですけど・・・私はこれから出勤して働かなきゃならないんです」

「はちきん(金玉八個分の男たち(普通は四人)を手玉にとる女)が・・・」

「誰が広末涼子だって・・・」

「・・・おいっ」

「だれか・・・そういう道具を持っておらんのか」

「タイムマシーンは・・・ド・・・いえ、まだ発明されていません」

「そうか・・・」

「あなたが・・・あなたたちの努力で守られた・・・この世に来たのは・・・何かの縁でございましょう・・・来たからには・・・いつか戻るのかもしれません・・・それまでは・・・この世で生きていくのも・・・天命かもしれません・・・」

「天命・・・天が私に・・・何かをさせようと・・・」

「そうだ・・・どうでしょう・・・私の塾で先生をやってみては・・・」

「私が・・・」

武市半平太は・・・真人先生の大きさを想う。

もしも・・・かっての自分が現代人に会い・・・百五十年の時を越えて来たと言われたら・・・おそらく・・・問答無用で斬ってしまう・・・。

それに比べて・・・真人先生の心の広さは・・・。

半平太は・・・現代の子供たちと向き合うことにしたのだった。

その頃・・・東京では・・・殺人事件が発生する。

指名手配となった橋本(渋谷謙人)は神里村に潜入するのだった。

橋本となんらかの接点を持つジャーナリストの楢崎(神木隆之介)は神里村に武士が現れたという情報に驚く。

「武市半平太の画像」を見た楢崎はさらに目を瞠るのだった。

どうやら・・・楢崎は・・・武市半平太を知っている人物らしい。

楢崎龍といえば・・・坂本龍馬の正妻である。

ひょっとしたら楢崎の正体は・・・まあ・・・坂本龍馬なわけですが。

学習塾の子供たちに相撲を指南し・・・母親たちに白い目で見られる半平太。

さらに塾をさぼった二人の男子が行方不明になってしまう。

「コンビニの裏の森」という子供たちの言葉を手掛かりに・・・捜索を開始する。

恩人である真人先生に迷惑をかけるわけにはいかないのである。

佐伯姉弟と夕暮れの森にやってきた半平太だった。

その頃・・・子供たちは・・・森の中の廃屋で殺人犯・橋本に監禁されていた。

丸腰の武市半平太は・・・果たして・・・子供たちを救うことができるのか。

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龍馬伝

Ss001ごっこガーデン。群馬県風千葉県の田園風景セット。

まこ龍馬と半平太は親戚なのでしゅか

じいや「坂本龍馬の父親の兄の妻の姉の娘の夫が武市半平太でございます」

まこ「・・・?

じいや「武市半平太の妻の母親の妹の夫の弟の息子が坂本龍馬でございます」

まこ「・・・??

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2015年10月29日 (木)

百人巨乳ミニスカポリスは封鎖できません(松坂桃李)私は正義の心を持つ女(木村文乃)今夜も誰かの悲鳴が聞こえます(菜々緒)

禍々しいムードを湛えるドラマである。

サイレーンは半人半鳥の海の魔物だが・・・その正体は冥界の女王ペルセポネの侍女である。

ぺルセポネは豊穣の神デメテルとゼウスの娘だが・・・冥界の王ハーデスに略奪されて嫁ぐことになる。

すでにペルセポネの侍女であったサイレーンはペルセモネを熱愛するデメテル女神に激しく叱責され、死の運命をつかさどるケレスに願い、黄泉路に向かう。

ケレスは死の翼をサイレーンに与え、サイレーンは翼ある乙女となったのである。

ゼウスとハーデスの密談により・・・冬の季節を除いてペルセポネはデメテルの元に里帰りすることが許される。

サイレーンは海中に存在する冥界の扉の番人の一人となり・・・女神ペルセポネの帰還を待つ。

そして・・・忠実な侍女として・・・ペルセポネの純潔を奪った男性原理というものに復讐し続けるのだった。

海の男たちをその魔性の歌声で死へと誘うのである。

サイレーンはローレライの名では人魚と化している。

恋のために足を得た人魚姫は歌うことを封じられたサイレーンなのだ。

タロットカードの死神たちの正体の一人はサイレーンである。

タロットカードの中で札番が不安定なカードは四種類。

札番を示さないことがある「愚者」と「死神」、そして「八番目」と「十一番目」を共有する「力」と「正義」だ。

「死神」が「正義」を伴うことが明白なのが「死の裁き」・・・つまり「死刑」なのである。

愚者は正義によって九番目の「世捨て人」になる。

愚者は力によって十二番目の「吊るされた男」となる。

「正義」の神は・・・ゼウスの二番目の妻・掟の神テミスの娘・ジャスティス女神である。

サイレーンにとって・・・ジャスティスはペルセポネの異母姉妹であるために忠誠の対象となる。

異様に見えるキャラクターたちも・・・古き神話に見える人の心のシンボルに過ぎない。

死の神サイレーンは正義の神ジャステイスに憧れるものなのだ。

で、『サイレーン刑事×彼女×完全悪女・第2回』(フジテレビ20151027PM10~)原作・山崎紗也夏、脚本・佐藤嗣麻子、演出・本橋圭太を見た。日本シリーズ中継のために日付をまたぐ呪われたオンエアである。どれだけ夜更かしさせたら気が済むのだ。「死神くん」「民王」と軽いタッチのヒット作を続ける演出家だが・・・オカルト愛好家の脚本家との相性は抜群である。ただし・・・「リアルっぽい警察もの」が普遍化しているお茶の間的には「警視庁の機動捜査隊が所轄の刑事に下っ端扱い」とか「証拠提出のための書類」とか「医師の守秘義務」とか・・・かなり欠落している部分も気になるところだろう・・・しかし・・・ここはオカルト三昧の世界なので少し割り引くべきだろう。サイレーンが呼び寄せる凶事の連続に身を委ねてうっとりするべきだ。

桜中央署の生活安全課の千歳弘子(山口紗弥加)に狩りだされ、2005年に特定外来生物に指定され輸入、飼育、販売、譲渡、遺棄が禁止されているカミツキガメ密売者の行動確認(尾行)中の機動捜査車両16号担当の警視庁機動捜査隊員・里見偲(松坂桃李)と猪熊夕貴(原菜乃華→木村文乃)・・・。

二人が恋人同志であることは周囲には秘密だった。

どちらかが警視庁の捜査一課に配属されたら結婚する・・・というよくわからないルールで交際中の二人なのである。

オタク気質である里見捜査官は被疑者の立ち回り先であるメイド喫茶のメニューで蘊蓄を傾け、大人の玩具屋で「婦人警官系グラビア雑誌」を購入し、相棒の猪熊を呆れさせるのだった。

被疑者が通行人と衝突するというアクシデントによってかわいい幼体が散乱する。

「外来種被害防止法違反の容疑で逮捕します」

「え」

二人は出世のために地道に手柄を立てるのだった。

ちなみに捕獲された亀は基本的に冷凍(殺)処分されます。

処分された亀の追悼集会で桜中央署の安藤実刑事課長(船越英一郎)とチビデカこと速水翔刑事(北山宏光)とともに二次会の会場を求める里見は・・・二つの殺人事件に関係している謎の女・橘カラ(菜々緒)の勤務する平和通りのキャバクラ店に向かう。

突然、来店した里見をカラは警戒するが・・・トイレで酔いつぶれた里見の醜態に安堵するのだった。

しかし・・・里見は・・・酔いつぶれた自分を軽々と抱き起したカラの怪力に驚くのだった。

白鳥麗子殺害事件の手掛かりを暗示したために・・・親交を深めるカラと猪熊。

カラに根拠のない疑いを感じる里見は・・・その関係に危機感を覚える。

「彼女って・・・何か特別なトレーニングをしているのかな」

「柔術を嗜んでいるって・・・」

「・・・なるほど」

「キャバクラのトイレで酔いつぶれるなんて・・・だらしないぞ」

「すみません・・・」

白鳥麗子殺害の犯人とされる自殺した高野乃花(足立梨花)の動機を裏付けるために高野乃花の整形歴を洗う捜査本部。

里見は整形外科医の月本圭(要潤)のクリニックから「高野乃花のカルテ」を借用するお使いを命じられる。

婦人警官の雨宮ひかる(岡崎紗絵)と衝突するというアクシデントによってひかるのスカートを履いていたあの夜の記憶が喚起される里見。

カラと遭遇した時に・・・もう一人の男がいたことを思い出したのである。

クリニックの受付嬢(沖絵莉)に案内されて院長室に入る里見。

その男が・・・月本圭だったことを知り・・・里見はカラへの疑いを強める。

キャバクラで盗撮したカラの写真を見せて・・・二人の関係をそれとなく・・・探る里見。

「この子・・・整形しているっていうんですけど・・・」

「・・・」

「先生が・・・手がけたんですか」

「いや・・・全く知らない子だね」

「・・・」

(なぜ・・・関係を隠すのか・・・守秘義務なのか・・・)

里見は苛立つのだった。

自殺した風俗店「マックス」のベテランキャバクラ嬢・小坂瞳・・・。

その同僚だったカラ・・・。

自殺した白鳥麗子殺害犯の高野乃花・・・。

高野乃花の整形を手掛けた月本医師。

月本医師となんらかの関係があるカラ・・・。

里見の心中では疑惑の糸がカラを中心に絡み合っていた。

「怪しい・・・だからといって・・・何が怪しいのか・・・わからない」

里見は恋人の夕貴との性行為の間も・・・心に警報音が鳴り響いているような気がする。

デザイナーの渡公平(光石研)のマンションの一室から・・・カラは二人の愛の巣を監視していた。

カラは・・・何故か・・・猪熊夕貴に強く魅かれているのである。

休日をカラと過ごす夕貴・・・。

格闘技ショーを鑑賞した後で・・・二人はスポーツバーで会話を嗜む。

「あなたはどうして警察官になったのですか」

「私・・・警察一家だから・・・」

「昔から正義感が強かったのですか」

「昔・・・いじめられている子を庇ったら・・・自分がいじめられた事があって・・・」

悩んで学校をさぼった夕貴の前に養父の猪熊文一(大杉漣)が現れた。

「困っている人がいたら助ける・・・悪いことをしている人には立ち向かう・・・それはお前の素晴らしい素質だ・・・お前は正義の心を生まれた時から持っているのだ」

養父は娘を励ました。

「なんて言われてその気になって・・・警察官になったのよ」

「・・・」

正義の心・・・「それ」は・・・どうやら・・・カラには欠如しているものらしい。

カラは・・・ないものねだりで・・・「それ」に憧れを抱くのだった。

その頃・・・里見は・・・連日のように月本クリニックを張り込んでいた。

月本とカラの関係を突きとめるためである。

しかし・・・その日は水曜日で月本クリニックの定休日だった。

「しまった・・・」

だが・・・その時・・・赤い車に乗った月本が帰宅する。

その助手席にいたのは・・・カラだった。

カラはメンテナンスを受けていた。

「やはり・・・君は最高だな」

「・・・」

「できれば・・・僕の仕事を手伝ってもらいたい・・・君なら・・・」

「・・・」

「そうか・・・君は別に金が欲しいわけじゃなかったな・・・」

「今度・・・試したいことがあります」

「そうか・・・君は本当にチャレンジャーだな」

渡公平は一人でチャーハンを食べていた。

素晴らしいインターネットの世界で質問する公平。

「三十七歳まで独身でした。今、女性と同棲していますが・・・一線を越えることができません・・・どうしたらいいでしょうか」

次々に答える心優しい通りすがりの人々。

「死ね」

「バカ」

「殺されるぞ」

公平は苦笑した。

サイレンが鳴り響いても耳の不自由な人には届かない。

平和通りで江津孝明(岡田義徳)が通行人と衝突するアクシデントが発生する。

江津はサバイバルナイフを所持している人生に絶望したらしい男だった。

通行人は刺されて倒れた。

悲鳴を上げる人々。

通り魔プロフェッショナルある時はマザーゲームの風来坊夫よっちゃん炸裂である。

わかる奴だけわかればいいにもほどがあるぞ。

江津は手当たり次第に通行人たちを刺しまくる。

飛び散る鮮血に・・・逃げ出す人もいれば・・・恐怖のために身をすくませる人もいる。

夜の街は現場に犠牲者を呼びこむのである。

カラは悲鳴を聞きつけた。

「大変だ・・・店の外に通り魔がいる」

逃げ込んできた男が叫ぶ。

腰の抜けた姉を抱えて・・・妹(小芝風花)は叫ぶ。

「お姉ちゃん・・・逃げないと・・・大変だよ・・・オスカーはそれでなくてもピンチなんだから」

「なんてことを・・・」

通り魔は・・・二人に目標を定める。

その前に立ちはだかる魔性のキャバクラ嬢カラ・・・。

カラは発信器によって・・・機動捜査車両16号が現場に急行していることを知っている。

「なんだ・・・お前・・・」

「来なさいよ・・・私は見たいものがあるの」

「地獄を見せてやるよ」

通り魔はナイフを突きだすが・・・超人的な見切りで身をかわすカラ。

「・・・」

「くそ・・・」

カラは無表情にナイフをかわす。

利き腕を抑えられた通り魔はバッグから二本目を取り出す。

二本のナイフも鮮やかにかわすカラ。

支柱を利用して・・・一本を叩き落とす実力を見せる。

「まだまだよ・・・」

カラは身を翻し、男を誘う。

現場に救急車やパトカーが到着するが・・・覆面パトカーの16号車はまだなのだ。

カラはホームセンターに男を誘いこむ。

「ち・・・」

ようやく、現場に到着する里見と夕貴。

「犯人は向こうに・・・」

交番勤務の三宅亮介(高田翔)が二人を誘導する。

地獄と化した現場を抜けてホームセンターに向かう二人。

「俺は裏に回る・・・」

「私が正面から犯人を説得する・・・」

夕貴の到着を知ったカラは抵抗をやめてあえて人質になるのだった。

カラは囁く・・・。

「見せてもらいたいの」

「何をだよ」

そこで・・・拳銃を携帯した防刃ベスト着用の夕貴が声をかける。

「落ちついて・・・話しましょう」

「うるさい」

「一体・・・何をしてるの」

「俺は死ぬんだよ・・・その前にお伴を作ってるんだ・・・」

「でも・・・その人は関係ないでしょう」

「誰でもいいんだよ」

「じゃ・・・私にしなさいよ・・・ほら・・・拳銃もここに置くし・・・防護服も脱ぐし・・・」

「・・・全部は脱がないのか」

「それは・・・ちょっと」

「じゃ・・・こいつを殺してからお前も殺す」

しかし、カラは片手で通り魔のナイフを封じるのだった。

その機をとらえて犯人に飛びかかる夕貴。

背後からは里見と・・・到着したチビデカが通り魔を抑える。

「確保」

チビデカはカラの肩に手をまわしいやらしい感じで人質を保護するのだった。

駆けつけたマスコミにさりげなくカメラ目線でアピールするチビデカだった。

カラは・・・夕貴の「正義の心」を垣間見たようだ。

しかし・・・まだ満足はできなかった。

「彼女の正義をもっと見たい」・・・カラの欲望に火がついたのだ。

里見は夕貴を賞賛した・・・。

「よくやったな・・・どうやら・・・捜査一課に先発するのは・・・やはり・・・先輩らしい」

「だめよ・・・普通の人なら・・・刺されていた・・・私の説得は無駄だった・・・人質がカラさんだから・・・無事だったの・・・彼女が・・・犯人のナイフを制御したのよ」

「そんな・・・」

「彼女が・・・私を助けてくれたの」

「・・・夕貴・・・」

夕貴の中で何かが崩れかけている・・・。

里見は・・・恐ろしいほどの警報が心に鳴り響くのを感じる。

しかし・・・彼にはまだ・・・なす術がない。

正義の女神が死神に魅了されているとしても・・・。

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2015年10月28日 (水)

私は赤ちゃんに私を強要する刑事(黒木メイサ)私は赤ちゃんに救世主たることを・・・(安達祐実)

自分が一番かわいい・・・ひとつの基本的な考え方である。

自分を保全することは自分に対する責任であると言える。

そのために・・・安全を確保しようとして・・・私たちは激しく衝突するのだった。

東京を守るためには日本を守らなければならない。

日本を守るためには日本近海を守らなければならない。

日本近海を守るためには地球を征服しなければならないのだ。

だから・・・中国は南シナ海は歴史的にシナだと主張するのだし、米国は地球は誰のものではない・・・主に米国のものだと主張するわけである。

平和主義者たちは・・・誰のものでもいいから・・・穏便にと願うのだが・・・そんなことを言っていると靖国神社に参拝するだけでレアメタルを輸出してもらえなくなるのだった。

保身は・・・難しい。

人は自分の保身に甘く、他人の保身に厳しいものである。

自分の赤ちゃんより・・・他人の赤ちゃんの無事を願う母親は・・・ある意味で・・・頭がおかしいのです。

で、『デザイナーベイビー~速水刑事、産休前の難事件~・第6回』(NHK総合20151027PM10~)原作・岡井崇、脚本・早船歌江子、演出・長沼誠を見た。全八回だとすれば二話が一段の起承転結という構成が基本である。そういう意味では今回は「転の後篇」ということになる。ほぼすべての謎が出そろい・・・「結の前後篇」に流れ込む仕上がりになっている。岸田トモ(安藤玉恵)による近森優子(安達祐実)が出産したノゾミこと新生児「望」(仮名)誘拐事件は・・・城南大学附属病院の院長・峠緑郎(柴俊夫)と息子・峠則孝(柿澤勇人)の父子対立によるノゾミ殺害未遂事件へと発展し・・・ついに産婦人科における分娩担当の須佐見誠二郎教授(渡部篤郎)は不妊治療の「トータルケアプロジェクト」を推進する崎山典彦特任教授(渡辺いっけい)の闇を追及する。しかし・・・不妊のための核移植技術を上回る秘密がノゾミには隠されていたのだった。

非常階段から・・・転落する崎山特任教授・・・。

頭部に重傷を負い意識不明の重体である。

峠則孝の愛人で病院長秘書・有吉久美(臼田あさ美)にノゾミを乳児院に預けることを指示した崎山の変事に・・・乳児院からまたしても何者かに連れ去られたノゾミは行方不明となる。

事件の指揮をとる与那国令子管理官(松下由樹)は度重なる不手際の連続に・・・「生きたまま新生児を救出」する以外には出世の道が閉ざされ唇をかみしめる。

再び、暗礁に乗り上げた「ノゾミ救出」に独自捜査を展開する妊婦刑事・速水悠里(黒木メイサ)は刑事魂を燃やす。

しかし・・・次の水曜日は・・・定期検診として、妊婦健康診査を受ける予約があった。

事件に追われる速水刑事は夫の下地浩介(山崎樹範)に連絡されるまで・・・予約があることを失念していたのだった。

そして・・・事件解決のために・・・予約をキャンセルするのだった。

与那国管理官は・・・すべての責任を速水刑事の暴走に押し付けるために彼女の捜査活動を制限する。

さらに・・・不手際を警視庁捜査一課特殊犯捜査係に押し付けるために捜査に特命係を増員するのだった。

長いものにまかれる主義の特殊犯捜査係の日村係長(神保悟志)は自分の保身のために速水刑事に自重を促すのである。

与那国管理官はフクスケこと土橋福助刑事(渡辺大知)に速水刑事の監視を命ずる。

「崎山教授は・・・赤ちゃんを見たがっていました・・・医者が特別な病例に関心を持つ感じで・・・」

逮捕された有吉久美の証言から・・・ノゾミが特別の中の特別であることを察知した速水は母親の近森優子に真意を問いただそうとするが・・・「確定するまでノゾミの生存を秘匿したい」と考える与那国管理官は速水刑事と優子の接見を許さない。

そして・・・お茶の間は・・・・ゴッドハンドの胚培養士・山原あけみ(斉藤由貴)の回想によって・・・非常階段での出来事を知るのだった。

「まさか・・・先生は・・・すべてを公開するつもりですか」

「今・・・ここで何が行われているか・・・世間は真実を知るべきだ」

「そんなことをしたら・・・あの子は世間の好奇の目にさらされてしまいます・・・」

「それがどうした・・・」

「・・・」

そこへ・・・現れた近森優子の担当医・皆本順(細田善彦)は非常階段から崎山を投げ落とすのだった。

驚愕するゴッドハンド山原・・・。

「安心してください・・・これで秘密は守られました・・・もう大丈夫ですよ」

ゴッドハンド山原は・・・皆本順が目的達成のために手段を選ばないサイコパスであることを知るのだった。

ゴットハンド山原とサイコパス皆本は・・・共犯者だったのだ。

悪役プロレスラーのタッグチームみたいだぞ・・・。

なにしろ・・・スケバンとよしひこだからな・・・。

ラスボスとして申し分ない・・・。

そして・・・近森優子の長男・新(あらた)は急性骨髄性白血病を発症する。

優子は・・・ノゾミの出産によって治療のための臍帯血を確保していたことを新の担当医に告げる。ノゾミは臍帯血移植のためのドナーとして白血球の血液型ともいわれるHLA型が一致していたのだった。

しかし・・・確保していた臍帯血の造血幹細胞は治療のためには不十分であることが判明する。

絶望的な骨髄移植のための適合する骨髄を持つドナー待ち状況。

「この日のために・・・ノゾミを準備したのに・・・」

優子はついに隠していた心情を吐露する。

その言葉を・・・夫で足の不自由な近森博(池内万作)は複雑な表情で聞く。

警視庁で事件の報告書を作成する速水刑事。

監視するフクスケは・・・後ろめたさをごまかすために・・・素晴らしいインターネットの世界の情報を示すのだった。

遺伝子操作によるゲノム編集で作られた動物たちのデザイナー・ベイビーの画像である。

「昔、有名な文豪に・・・美人女優が言いました」

「・・・?」

「私の美貌とあなたの頭脳を供えたベイビーが欲しいわと・・・すると文豪は答えました・・・逆だったらどうする・・・と。しかし・・・今や・・・ジョークは成立しなくなったと言うことですよ」

「近森夫妻の場合・・・夫の優秀な頭脳と・・・妻の優秀な身体を供えた・・・子供が・・・」

「実際には・・・病弱な長男が・・・生まれてしまったんですけどね」

「だから・・・今度は・・・デザイナー・ベイビーを・・・」

「え」

「おっと・・・定期検診としての妊婦健康診査の時間だわ」

妊娠を理由に監視の目を逃れ出る速水刑事をフクスケは尾行する。

速水の主治医の病院では義母と胎内の異母兄弟の身を案じるゾンビマニア下地雄介(若山耀人)が待機していた。

速水刑事は二人をやり過ごし・・・城南大学附属病院に向かうのだった。

「ごめんね・・・許してくれる」

「・・・」

胎児は無言だった。

「隠し続けるなんて・・・無理よ」

「そんなことは・・・ありません」

ゴッドハンド山原にサイコパス皆本は圧力をかける。

「お借りしていた・・・これをお返しします」

「え」

それは・・・卵子貯蔵タンクのキーだった。

「1号タンクです・・・」

「私の卵子を・・・どうしたの」

「大切に保管していますよ・・・」

ゴッドハンド山原は・・・サイコパス皆本に急所を制圧されたらしい・・・。

ゴッドハンド山原もまた・・・妊娠出産に関する・・・望みを持っていたらしい。

崎山転落に関して疑いを持たれている須佐見教授は速水刑事とともに・・・崎山研究室を捜索する。

「ノゾミが特別な子供であることを・・・確認したいのです」

「ノゾミは・・・アラタと・・・HLA型が完全に一致している」

「・・・」

「移植可能なドナーということですか・・・」

そこへ・・・特命係がやってきて事情聴取のために須佐見を連行するのだった。

残された速水刑事は・・・製薬会社から・・・崎山にかかってきた電話を取る。

「お尋ねの・・・納品酵素の件なのですが・・・ZAP-2ですね」

「それは・・・どういう酵素なのですか」

「DNA制御酵素ですが・・・」

「・・・」

崎山は・・・何者かがオーダーした酵素について問い合わせをしていたらしい・・・。

それが・・・サイコパス皆本であることはお茶の間的には明らかである。

しかし・・・ゴッドハンドとサイコパスはお互いアリバイを証言し・・・非常階段には不在だったとして捜査の手を逃れていた。

速水刑事はフクスケとゾンビマニアに発見される。

「・・・」

「どうして・・・さぼったんですか」

「いま・・・仕事が・・・」

「それは・・・お義母さんでなければ・・・できない仕事ですか」

「・・・」

「お腹の中にいる赤ちゃんを生めるのは・・・お義母さんだけなんですよ」

痛いところを突かれた速水刑事はぐうの音もでないのだった。

しかし・・・捜査の手を休めるわけにはいかない。

ノゾミの命を守ることは・・・刑事の使命なのだから。

速水刑事は・・・ゴッドハンド山原を急襲する。

「捜査状況はどうなの・・・」

「あなたのことを教えてください・・・」

「独身・・・仕事が好き・・・それだけよ」

「仕事をしていると・・・神になった気分になりますか」

「そんなことはない・・・人にはどうしても手の届かない領域があることを思い知るだけよ・・・科学者ほど・・・神の存在を実感するのよ・・・そして人が神ではないことを・・・」

隣室で・・・サイコパスは・・・聞き耳を立てる。

そして・・・ゴッドハンドの動揺を見抜き・・・警告のための着信音を響かせる。

ゴッドハンドは口を封じられた。

「・・・失礼・・・忙しいので・・・これで」

追い出された速水とフクスケは・・・管理官に捕獲されてしまうのだった。

「こんなところで・・・何をしているの・・・」

「ノゾミについて新事実が・・・」

「ノゾミが特別な子供だったことは・・・こちらの捜査でもわかっている」

「・・・それが誘拐犯への手掛かりに」

そこへ・・・ノゾミの父親がやってくる。

「・・・ノゾミは生きているのですか」

「・・・」

心の中で舌打ちする管理官だった。

サイコパスはゴッドハンドをたしなめる。

「ダメですよ・・・うっかり・・・秘密を打ち明けたりしたら・・・」

「・・・」

「それよりも・・・崎山先生が意識を回復しそうなんです・・・」

「え」

「崎山先生には・・・完全に沈黙してもらわないと・・・困りますよね」

サイコパスに命じられゴッドハンドは・・・患者に投与するのは不適切な薬剤を入手する。

サイコパスは・・・看護師とニアミスして・・・崎山の点滴様薬剤を・・・沈黙を促すクスリにすり替えるのだった。

快調に飛ばすよしひこである。

速水刑事を叱責する管理官・・・そこへブラックマザー近森優子が現れる。

「マスメディアを通じて・・・犯人に呼び掛けて」

「誘拐事件では人質の命が優先です・・・現段階では犯人を刺激するようなことはできません」

「アラタのために・・・ノゾミが必要なのよ・・・後、二日でノゾミを取り戻さなければ・・・アラタが死んでしまう・・・」

「ご子息の件は・・・残念ですが・・・」

「あなた・・・子供いないでしょう・・・」

「・・・」

管理官は・・・妊娠出産よりも・・・出世を選んだ女なのである。

「速水さん・・・あなたなら・・・わかるでしょう・・・」

「・・・私は・・・母親としてはまだ・・・思慮にかけているようです・・・そして・・・警察官として・・・ノゾミちゃんの命を第一に・・・考えるべきだと・・・」

「・・・もういいわ・・・警察には頼らない」

管理官は追いつめられる。

ブラックマザーを非常階段に誘いたい気分なのである。

ブラックマザーは・・・オリンピックのゴールド・メダリストだった。

マスメディアに対する発言力を行使できるのである。

ブラックマザーは・・・マスメディア関係者のリストを持っていた。

「なんとかしなくては・・・」

保身のための対応に迫られる管理官。

残された速水刑事は・・・疲労感による動悸を覚える。

ロビーのソファに大股開きで座り込む速水。

そこへ須佐見教授が現れる。

「大丈夫かね」

「取調は終わったのですか・・・」

「・・・うん」

「ZAP-2って何ですか」

「DNAを操作する酵素だ・・・」

「?」

「つまり・・・ゲノム編集だ・・・」

「ノゾミは・・・」

「兄を救うために生まれたデザイナーベイビー・・・救世主妹なのさ・・・」

「それは・・・合法ですか」

「英国ではね・・・日本ではまだ・・・認められていない」

「・・・」

「犯人は・・・ノゾミをどうするつもりなのでしょう・・・」

「・・・さあ・・・君はどう思う?」

「ノゾミは・・・存在そのものが・・・犯罪の証拠・・・」

投与されてはいけない薬剤が点滴装置に装填される。

意識を取り戻しかけた崎山が呻く。

「う・・・う・・・」

「大丈夫ですよ・・・鎮痛剤も入ってます」

何も知らない看護師は微笑む。

管をしたたり落ちる毒の滴。

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2015年10月27日 (火)

かわいい、あなたはかわいい(山下智久)私の前から突然消えたりしないでね(石原さとみ)

償いの「花言葉」というものは数少ない。

花言葉を贈る人々が謝罪というものに慣れていないためだろう。

基本的に「謝ったら負け」の傾向がある文化だからな。

どこの文化だよっ。

ちなみに「赤いアンスリウム」の花言葉は「煩悩」である。

「煩悩」とは「煩わしい悩み」であるから・・・「謝罪」ではないが・・・「煩悩があって・・・ごめん」という意味で高僧としてわびているわけなのだろう。

花言葉でストレートに「ごめんなさい」を意味するのは紫のヒヤシンスで「please forgive me」(どうかご慈悲を・・・)というニュアンスもある。

無邪気さゆえの罪を・・・勘弁してください的なトーンなら・・・ディアスキア(ニカクソウ)の花言葉が「私を許して」ということになっている。

謝罪することが善である・・・この国では・・・もっと「つぐない」を意味する花があってもいいよね。

で、『5→9〜私に恋したお坊さん〜・第3回』(フジテレビ20151026PM9~)原作・相原実貴、脚本・小山正太(他)、演出・平野眞を見た。「野ブタ。」や「銭ゲバ」などで脚本協力していた根本ノンジが脚本に参加したわけだが・・・原作からかなりアレンジしているだけに脚本家の複数化は賛成しかねる。どうしてもぶれるからね。今回、少し・・・そういう気配があった。「真犯人」を星川ひばり(加賀まりこ)にしたことで・・・「私が頼んだ」という星川高嶺(山下智久)のセリフの整合性や、星川ひばりが桜庭潤子(石原さとみ)の進路妨害をする必然性についての辻褄が・・・微妙に揺らいでいるわけである。全体の流れとしては問題ないのだが・・・ラブコメというのは精密機械のようなものでひとつの歯車が狂うととんでもないことになります。まあ・・・あくまで妄想なので見当違いかもしれません。

「本当はいい人」というのはお茶の間向けの常套手段だが・・・本来、この主人公は「本当は悪い人」で推したいのである。

だって恋に善悪は関係ないんだもん。

「あなたを幸せにすると決めたのです」

「私の・・・気持ちは・・・考えないんですね」

「・・・」

高嶺が「正社員採用試験」に裏から手をまわし「採用されていたのに不採用にしたこと」を告白したために・・・逆上する潤子であった。

「私がどれほど・・・正社員になりたかったか・・・そのために今までどれだけ頑張ってきたか・・・そういうすべてをあなたは踏みにじった・・・最低だ・・・私はあなたのことを絶対許さない・・・あなたのことを好きになるなんて金輪際ありえない」

泣きながら一橋寺を脱走する潤子だった。

街角でしゃがみ込み泣き濡れる潤子。

その様子を・・・じっと見つめるストーカー高嶺だった。

潤子の気持ちは晴れない。

とにかく・・・高嶺のことで頭がいっぱいなのである。

「がんばりましたね」と高価なハイヒールを履かせてくれた高嶺。

「どうして優しくしてくれるの」と問えば「あなたのことが好きだから」と答える高嶺。

しかし・・・その高嶺は・・・人として最低のストーカー独裁天上天下唯我独尊野郎なのである。

「こんな靴」とハイヒールを捨てかかる潤子だったが「靴に罪はない」と思いなおすのだった。

なにしろ・・・根が貧乏なのでもったいないと思うのだ。

哀しいぞ・・・潤子。

「残念会」の席でも落ち込み続ける潤子を案じる正社員講師の山渕百絵(高梨臨)・・・。

酒に飲まれた潤子は百絵の部屋にお泊まりなのである。

ジュンコとかモモエとか・・・いつの時代だと・・・一応言っておきたい。

あ・・・だから・・・毛利まさこ(紗栄子)なのか・・・今、気がついたのかよっ。

毛利まさこは狙った獲物であるエリート商社マンの三嶋聡(古川雄輝)を酔いつぶし、見事に肉体関係を結ぶ。

目が醒めた三嶋は・・・唖然とするのだった。

三嶋は「俺と潤子はそういうのじゃないから」と言いながら「そういうのになりたくてなりたくて仕方ない」男なのである・・・。それなのにジュンコじゅなくてまさこと・・・そこまでだ。

一方、二日酔いでのたうちまわった潤子は・・・百絵の秘密のカーテンを開いてしまう。

そこにあったのは百絵の「ボーイズラブ・コレクション」・・・。

百絵は「男子と男子があっはんうっふんする世界」が大好物の腐った女子だったのである。

誰にも知られたくなかった秘密を知られ・・・絶望する百絵。

しかし・・・潤子は気軽に一冊を手にとり・・・。

「こういうの嫌いじゃないかも」と救いの手を差し伸べる。

「え」

「一冊、借りてもいい?」

「ももももももももちろん・・・どんなのがいいかしら。花恋CIELダリアCharaコミックJUNE麗人コミックアクアBE×BOY GOLDアクアBLキングダムやはり最初はオーソドックスにシャア攻めのアムロ受けかしら・・・それとも思い切ってジョー攻めのおっちゃん受け・・・立ててジョー立てて・・・まあ、段平はワンコ攻めが基本だけどね・・・もうジョーが好きで好きでたまらないのです」

意味不明ながらも軽く引く潤子だった。

追い打ちをかける百絵の目ざましキャラ。

「トモカズ・・・そろそろ・・・立ててよ」

「トモガズ・・・朝からビンビン・・・」

「トモカズ・・・もう・・・おくれちゃうぞ」

くりかえしのギャグは三回だとしつこく感じる世代というものがあるのかもしれない。

潤子を引きたてようとニューヨーク帰りのジェネラルマネージャー・清宮真言(田中圭)は英会話学校ELA主催の「ハロウィン・パーティー」の責任者に彼女を抜擢する。

「生徒だけでなく・・・本部からも人が来るから・・・アピールするチャンスだぞ」

なんとか・・・落ちつきをとり戻そうとする潤子の前に・・・アンスリウムの花束を抱えて現れる高嶺。

潤子の厳しい拒絶反応に・・・教室に入るのもためらう高嶺なのである。

しかし、生徒なので入れてもらえるのだった。

「週末はHalloweenです・・・ハロウィーンについて何か知っている人はいますか」

「毎年10月31日に行われるお祭りで・・・起源は古代ケルト人にあると言われています・・・本来は秋の収穫祭としての行事でしたが・・・米国では魔女やお化けに仮装した子供たちが「お菓子をくれないと悪戯するよ」と近所の家を訪問する民間行事として定着しています」

「・・・」

「この花は・・・実は仏炎苞です・・・私の恋にもだえる心の象徴なのです・・・それゆえの・・あやまちを・・・あなたに・・・許して」

「授業に関係ないことを言う人には退席してもらいますよ」

「・・・」

潤子から事情を聞いた百絵は・・・「あなたはひどい人だ」と高嶺を詰る。

高嶺は・・・反論もできずに項垂れるが・・・百絵の追及を押しとどめる潤子。

潤子の中で・・・高嶺に一度は心を許した記憶と信じられない裏切りの記憶が葛藤し混沌としているのだった。

赤いハートの仏炎苞は揺れて・・・ELAの事務員・伊能蘭の手に落ちて行く。

スーちゃんとミキちゃんはいないんだな。

ELAの人気講師である木村アーサー(速水もこみち)は捨てられた子犬に弱いタイプらしく・・・高嶺に恋の手ほどきを開始する。

「女の子なんて・・・キスして・・・」

「失敗しました」

「ハグして・・・」

「ダメでした」

「かわいいよ・・・だよ」

「それは・・・まだ試していません」

「だろ」

「なるほど」

納得するところなのかどうかで沸騰する一部お茶の間。

自家用の滝に打たれ・・・断食・・・あるいは食が喉に通らない高嶺を・・・寺田光栄(小野武彦)や那覇三休(寺田心)・・・そして足利家の娘・香織(吉本実憂)までが案ずるのであった。

高嶺は・・・謝罪の心を示すために潤子の大好物のカニ三昧な弁当を作る。

しかし・・・潤子は拒絶。

豪華なお重はELAの事務員・伊能蘭の手に落ちて行く。

くりかえしのギャグなのでできれば三回欲しいところである。

中身がカニと知り、少し揺れる潤子。

ここは涎を垂らすくらいでいいよね。

高嶺が夢にまで見た潤子とのランチタイムは・・・ジェネラルマネージャー・清宮真言に奪われる。

ハロウィン・モードの可愛いお菓子で潤子を励ます清宮だった。

清宮がもっとも潤子のゴールに近い男なのだが・・・なんとなく・・・清宮はその気がないような気がして来たぞ。まさか・・・BLなんじゃないだろうな。

いや・・・奥手なだけだろう。ラスボスじゃないと。

やがて・・・高嶺は最後のチャレンジを開始する。

あやまちの修正である。

しかし・・・因果律を覆すのは難しい。

割れたコップは元に戻らないものだ。

ついには・・・清宮にも相談する高嶺だった。

事情を知った清宮は・・・潤子と高嶺の仲を取り持つ行動に出る。

だが・・・怒りの収まらない潤子は・・・高嶺に発言の機会を与えない。

「二度と、私の前に顔を出さないでください」

仕方なく高嶺は・・・潤子のいる世界から旅立つ決意を固めるのだった。

「何を言ってるの」

「山に籠ります」

「いつまで・・・」

「一生です」

「えええええ」

どうやら即身仏(ミイラ)になる決意をしたらしい高嶺に・・・二人の恋路を邪魔する女魔王・星川ひばり(加賀まりこ)は驚愕するのだった。

「だから・・・言ったじゃないですか」とひばりを責める寺田光栄・・・。

「だって・・・」とひばり・・・真相はこうなのである。

潤子が邪魔ものだと・・・檀家である英会話学校ELAの重役にこぼしたことが曲解され・・・潤子は宗派に対する不適格者として不採用になったのだった。

恐ろしい話である。

高嶺は・・・その決定を覆そうとELAの重役たちに働きかけていたのだった。

「それで・・・僕のところにも・・・なんとかならないかと相談にいらっしゃったのだ・・・しかし・・・定員のあることなので・・・決定は覆らなかった・・・」

「え・・・じゃ・・・あの人が・・・邪魔したわけじゃ・・・」

「ないんだよ」

にわかには信じられない潤子である。

一度・・・憎んだ気持ちがなかなかには褪めないのが人間である。

そして・・・ハロウィン・パーティーは始った。

魔性のものたちが集う邪悪な夜・・・。

「渋谷王子」こと高校生の蜂屋蓮司(長妻怜央)は王子に・・・女装高校生の里中由希(髙田彪我)は「不思議の国のアリス」に・・・コスプレするのだった。

潤子は魔女である。

三嶋とまさこは同伴で現れるが・・・冷やかされると「いや・・・僕たちはそういう関係じゃないから」と叫ぶ三嶋。

「ひでぶ」

そこへ・・・「助けてください」と駆け込む那覇三休・・・。

「高嶺様が・・・人跡未踏の深山に登ってしまいます」

「どのくらい人跡未踏なの・・・」

「52年かけてキタサンブラックみたいな・・・」

高嶺と半世紀も会えなくなるのは・・・嫌だったらしい潤子は走り出すのだった。

祭りである。

一橋寺に現れた潤子に戸惑う高嶺。

「どうして・・・正直に言わなかったの・・・」

「私は・・・あなたが不合格になったことを・・・心のどこかで喜んでしまいました・・・だから同罪なのです」

「正直すぎる・・・」

「あなたはかわいい・・・すべってころんで灰をまいた時も可愛かった・・・カニを食べる姿も可愛い・・・ずぶぬれの時、雑巾がけの時、眠っている時、泣いている時、怒った時・・・すべてのあなたがかわいくて・・・かわいくて・・・私はそれだけで・・・」

「ダメよ」

「・・・」

「私の許しもなく・・・勝手に何処かに言ったらダメよ」

「それでは・・・結婚してさしあげましょう・・・皆さんに披露宴の通知を出さなければ」

「だから・・・段取りがあるでしょう・・・」

「披露宴の前に挙式を・・・その前に・・・接吻を」

しかし・・・キスは許さない潤子だった。

「まずは・・・友達から」

「友達」

潤子は高嶺の手をとり・・・走り出すのだった。

たどり着いたのは・・・ハロウィン・パーティー。

「カニさんとトナカイさんのご到着です」

花→弁当ときてここが伊能蘭の第三のポイントだよな。こういうところが大切なんだけどな。

ニヤニヤさせるための一工夫が足りなくてもやっとするんだよな。

仲直りした二人を祝福する参加者たち。

しかし・・・その中でまず・・・アリスが名乗りを上げる。

「私・・・潤子ちゃんに告白する」

「え」

負けじと・・・三嶋が正体を現すのだった。

「大事な話がある・・・ちょっと来てくれ」

「え」

突然、潤子の唇を奪う三嶋・・・。

その光景に・・・地獄の門が開き、嫉妬の火炎がめらめらと高嶺の心を焦がすのだった。

ハロウィン過ぎればクリスマスは遠からじである。

関連するキッドのブログ→第2話のレビュー

Hc2015hhllsごっこガーデン。摩訶不思議のハロウィンパーティーセット。

エリ好きな人の前で他の男にキスされる・・・どんな高等プレイですか・・・そんなふしだらは許されないのでスー。でも、こっそりとならアバンチュールですか。チューはアバンチュールのチューでしゅか~・・・じいや、カニ皿盛りおかわりですよ~・・・大盛りでね~まこあさが来る前はよる・・・はろうぃんかまぼこ絶賛発売チュー!・・・びっくりぽんでうどんのつけまとれるハビハビハロウィンメイクさんつけまつけて~アンナ月9の後はスマスマ・・・邪悪なダーリン待機中ぴょ~んシャブリあさが来たの水準に・・・負けるな夜ドラマなのでありましたくうですね~mana時代は結婚式に花婿の恋人が乗り込んで卒業する方向に・・・妄想高僧びっくりぽん

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2015年10月26日 (月)

吾今国の為に死す、死すとも君恩に背かず・・・明治九年萩の乱(佐藤隆太)

武士をどうするか・・・明治維新の立役者たちはそれぞれに頭を悩ませる。

明治天皇はもちろん、武士ではない。

政府の要職を占める二人の公家、三条実美と岩倉具視も武士ではない。

しかし、実際に新政府を動かす、木戸、大久保、西郷は武士だった。

長州と薩摩ということでは・・・木戸と大久保、西郷は対立する。

しかし、官僚か武士かとなると・・・大久保と西郷は対立し、木戸は中立の立場となる。

帝国による朝鮮半島侵略を目指す第二次征韓論では・・・西郷は武士による軍事政権を確立するためにこれを求め、大久保は予算の点からこれを否定した。

たとえ・・・半島全域を日本の領土としても・・・赤字になることが大久保には恐ろしかったのである。

戦争を厭う天皇、公家は大久保に賛同した。

「東京を蒸気機関都市に」と夢見た佐賀の江藤新平、土佐の板垣退助らは西郷と共に野に下る。

彼らは基本的に・・・武士がなくなることなど・・・考えられないという魂を持っていた。

しかし・・・四民平等の夢は・・・彼らの矜持を木端微塵に打ち砕くのだった。

で、『燃ゆ・第43回』(NHK総合20151025PM8~)脚本・小松江里子、演出・安達もじりを見た。例によってシナリオに沿ったレビューはikasama4様を推奨します。今回は松下村塾の創始者にして吉田松陰の叔父であり師匠である玉木文之進描き下ろしイラスト大公開でお得でございます。そうですね・・・今回のサブタイトル「萩の乱に誓う」とは・・・誰が何を誓ったのでしょうかね。さっぱりわからないのですが・・・もしかして・・・主人公と姉の夫が愛を誓ったわけでしょうか・・・なんのこっちゃでございます。人気の「あさが来た」では主人公は別の家に嫁ぐはずだったという設定があるわけですが・・・こちらの主人公・文(美和)の相手には木戸孝允こと桂小五郎も挙がっていたという話もあります。そういう意味では・・・姉・寿の死後に楫取の後妻となる主人公について・・・いろいろな妄想があっても・・・構わないと思うのですが・・・はっきりいって・・・どうでもいいですよねえ。本来・・・政府高官の木戸と群馬県令の楫取がこれまでのことを振り返るなら・・・死んでいった吉田松陰関係者の・・・恐るべき数に・・・慄くべきところでしょうに・・・。そして・・・主人公のことに触れるなら・・・久坂の妻ではなく・・・桂の妻だったら・・・全く違う人生だったろうに・・・というあたりが順当と言えます。まあ・・・「天地人」の人に何を言っても無駄でしょうが・・・あれだけ・・・土に親しむことに熱中していた主人公が・・・何故、蚕だけは苦手なのか・・・意味不明でございます。長州の土中は虫だらけじゃないのか。そして・・・どんだけ幼い頃から主人公が働いていたのか・・・忘れすぎにもほどがありますよねえ。

Hanamoe43明治九年(1876年)三月、廃刀令発布。士族たちの特権剥奪政策の一環である。「武士の魂の携帯」を禁じられた軍人でも警察でもない士族たちはついに追い詰められた。十月二十四日、熊本県で神風連の乱が発生。二十七日、福岡県で秋月の乱が発生。二十八日、前原一誠が挙兵し、萩の乱が発生する。杉民治の長男で吉田松陰家を継いでいた吉田小太郎、長女の婿養子で玉木家に養子に入った玉木正誼は明倫館出身の三浦梧楼陸軍少将の率いる広島鎮台兵の攻撃により戦死する。当時、熊本鎮台にあった乃木希典少佐は玉木正誼の実兄である。同じ長州出身の士族たちが政府軍と反乱軍に分かれて戦ったことになる。各陣営は多数派工作を行い、乃木も反乱軍からの誘いを受けている。乃木はその誘いを断ったが、萩の乱における軍事活動が消極的だったことを指摘されている。乃木もまた玉木文之進の門弟の一人だったのである。圧倒的な軍事力で乱は鎮圧され、十一月六日、玉木文之進は自害。十二月三日、捕縛された前原一誠は斬首となった。吉田家は民治の妹の一人である千代の子・庫三が民治の娘婿となり継承する。ここに杉家の吉田松陰家継承の執念が覗える。

帝都の改装は進んでいる。海外から招かれた建築家たちは全国から集合した大工たちを指導し、皇居周辺に洋風の館を構築していった。

一方で幕府が消失し、解体されたいつくつかの大名屋敷では蓄財に長けた政府高官が新居を構えていた。皇居の南、赤坂で異彩を放つのは新たに参議となった勝海舟の邸宅である。

その地下には科学忍者隊の秘密基地があった。

公儀隠密と海援隊しのびの合流した科学忍者隊は言ってみれば節操のない集団である。しかし、幕臣でありながら倒幕の黒幕と噂される勝海舟ならではのいかがわしさで・・・新時代の忍びたちは統轄されていたのである。

伊藤博文は木戸孝允の密使として勝屋敷を訪問している。

「西の方の乱の兆しは・・・いよいよ明らかになっております」

「まあ・・・そりゃそうだろうよ・・・刀を捨てろと言われたら・・・頭に血が登る輩がまだまだいっぺえいるだろうからな。おいらなんか・・・あんな重てえもん、持つなと言われりゃ幸いだと思うがなあ」

「勝様の仰せのごときなら・・・苦労はありません」

「で・・・要件はなんだい」

「勝様の電信部隊をお借りしたいと思います」

「いよいよ・・・西郷どんの討伐か・・・」

「佐賀、山口などが・・・乱の先駆けとなるでしょう」

「広島や熊本の鎮台には兵の集結が済んでるのかい」

「はい・・・あとはタイミングでございます」

「タイミングか・・・萩や佐賀に忍ばせた密偵と鎮台をつなぎたいと・・・そういうわけか」

「はい・・・できれば、各鎮台と・・・大阪、京、東京を結んでいただきたい」

「それはいくらなんでも・・・手が足りねえな・・・」

「噂によれば・・・幕府が密かに作った忍び電信線があるとか・・・」

「・・・どうやら・・・公儀隠密にも手を突っ込まれちまったようだな」

「ミカドの忍びたちは・・・なかなかに恐ろしゅうございますから・・・」

「くぐり衆はどうなった・・・」

「岩倉卿を襲ったものたちは・・・すべて始末されたようです・・・そもそも・・・くぐり衆も半分は大奥のお方が引きとったのでございましょう。西郷様につくものは多くはなかったようです」

「つまり・・・西郷どんは・・・情報戦で負けた・・・と言うわけか」

「いざ・・・戦となれば・・・西郷様ほどの大将はいないでしょうが・・・反乱勢力は各個撃破され・・・最終的には戦力差がものを言うでしょう・・・」

「士族たちは・・・結局、国民皆兵の術に敗れるわけだ・・・」

「なにしろ・・・西郷一族でさえ・・・多くのものが新政府に残っております・・・」

「恐ろしいねえ・・・江戸開城の談判から・・・十年・・・すべては・・・松陰の予知のままか・・・」

「松陰先生の・・・何でございますか」

「いや・・・それはこちらのことだ・・・とにかく・・・電信のことは引き受けた・・・もう・・・いい加減・・・内戦は終いにしねえとな・・・」

「感謝いたします」

美和は毛利屋敷の女中部屋で思わず目を瞠った。

(兄の予知を知るものがいた・・・)

美和は意識の触手を伊藤博文から引き抜き・・・対面している勝海舟に向ける。

(・・・これは)

美和は勝海舟の心が灰色に閉ざされているのを知った。

灰色の霧の彼方から・・・こちらを窺っている気配がある。

(・・・この人か・・・)

幕末の一時期・・・美和は・・・心を閉ざしたくのいちたちと暗闘したことがあった。

維新後・・・その気配は途絶え・・・美和もいつしかそのことを忘却していたのだった。

(あれは・・・藤原のくのいちだと思っていたが・・・)

公儀隠密の服部半蔵の一人であった勝海舟・・・。

その人もまた・・・美和と同じ術者であったらしい・・・。

(そういえば・・・兄上は・・・勝様と・・・佐久間様のことを・・・何かお話だったような気がする)

美和は意識を後退させながら・・・記憶を手繰る。

しかし・・・時の流れは美和の心に澱みを作っていた。

吉田松陰が決定した未来はあまりにも残酷で・・・耐えられぬほどの流血沙汰の果てにあった。

その日々は美和の心をいつしか疲弊させていた。

迫りくる・・・反乱は・・・美和の身内をまたしても生贄として求めているのである。

美和は・・・兄の作った未来を見届けることに・・・もはや憂鬱を感じているのだった。

東京にはガス燈が灯り、遠くで汽笛が鳴っている。

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2015年10月25日 (日)

忘れじのお着替え探偵(新垣結衣)愛の釘を刺された男(岡田将生)

神話時代のギリシャでは天空と大地は主神の座を争う。

ガイアは母なる大地を示す主神である。

ガイアは天空の神であるウラヌスを生む。

ウラヌスは支配者として君臨するが・・・その子・クロノスは父を去勢する。

クロノスは農耕の神であり・・・ガイアの後継者である。

そして、最終的にクロノスの子・ゼウスが親殺しをして世界を支配するのだった。

大地から天空へ、天空から大地へ、主権は移り・・・最後に天地を支配する神々の王ゼウスが登場するわけである。

子孫たちの血なまぐさい抗争を・・・母なるガイアは見つめ続けるのだった。

で、『掟上今日子の備忘録・第3回』(日本テレビ20151024PM9~)原作・西尾維新、脚本・野木亜紀子、演出・茂山佳則を見た。カオスという混沌から・・・古の人々の妄想は・・・言葉を得て物語るようになる。古代ギリシャには二柱のクロノスがある。農耕神であるクロノスは・・・土に潜むサターンの別名となる。一方でカオスから生まれたクロノスは世界を動かす時を象徴する。クロノスαとクロノスβは別の神であるというが・・・時間こそが・・・魔そのものであるという思想を浮上させる。愛するものを裏切らせるのも時・・・愛する者を奪い去るのも時なのである。大地の子・クロノスと混沌を制したクロノスは・・・やはり同じ神であると言えないこともないと悪魔は考える。

目覚めてから眠るまで・・・睡眠と睡眠の間の記憶だけを持続できるのは幸せなことかもしれない。

一分前の記憶も定かではない認知症の人間は基本的に・・・嫌なことがない。

たとえ・・・息子に「クソババア」と暴言をはかれてもたちどころに忘却してしまう。

悩みがないとはこのことだ。

もちろん・・・自分が・・・そうなってしまうのはなんだか恐ろしいことではある。

頭脳明晰な掟上今日子(新垣結衣)は抜群の推理力でリセットされてしまう一日をそれなりに理解し・・・味わい・・・生き抜いていくのだった。

昨日、何があったか・・・思い出せなくても・・・人間はそれなりに生きていける。

特別なあの日から・・・何日たったのか・・・多くの人間だっていつか忘れてしまうのだ。

転職王・隠舘厄介(岡田将生)は警備員の仕事を得て、東洋美術館に配属される。

常設展示場の担当だが・・・特別展示場では「小説家・須永昼兵衛(フィクション)の世界展」が行われている。

今日子は須永昼兵衛ファンであり・・・何処かで開催を知ると・・・たちまち東洋美術館に来館するのであった。

今日子に恋する厄介にとって・・・連日、今日子のご尊顔を拝することができる幸せがある。

しかし・・・今日子にとって厄介は単なる警備員に過ぎない。

毎日、顔を合わせても顔馴染みになることさえできないのだった。

ご満悦で特別展示場を出てくる今日子は常設展示場の一枚の絵の前で立ち止まる。

厄介には抽象画にしか見えない「母」という作品である。

ある日・・・思い切って声をかける・・・厄介。

「その絵がお好きなんですか・・・」

「絵というより・・・金銭的価値に魅かれたのです」

「高価な作品なんですか」

「二億円くらいの価値がありますね」

「えええええ」

いつも二億円の「もの」を警備していたと知り、腰が抜ける厄介。

そんな・・・厄介を面白がり・・・唆す・・・悪魔的な喫茶店「サンドグラス」オーナー・絆井法郎(及川光博)・・・。

「今度はデートに誘ってみれば」

調子に乗った厄介はついに決断をする。

「この絵は・・・二億円くらいの価値があるんですよね・・・よかったら・・・」

「二億円・・・とんでもない・・・二百万円くらいですよ」

「えええええええええ」

会話のきっかけを失い・・・失意の厄介の前に天才少年・剥井陸(高木星来)が現れる。

「母」を精巧に模写する少年。

「すごくうまいね・・・この絵が気に入ったの」

「色遣いには興味がないけど・・・構図がね」

「構図・・・」

「地球の切り取り方が面白い」

「地球・・・」

厄介はその絵が・・・宇宙から見た地球を描いたものであることに気がつく。

「ああ・・・母なる大地なのか・・・」

「今、気がついたの・・・ま、警備員さんじゃ・・・仕方ないか・・・この美術館にして・・・この警備員ありだよね」

「まるで・・・この美術館もダメみたいな言い方だね」

「だって・・・最低だもの・・・ここ」

謎の言葉を残して少年は去る。

次に老人(山田明郷)がやってきた。

老人は「母」を見ると激怒し、絵に襲いかかる。

思わず制止した厄介。

そこに美術館の敷原館長(相島一之)がやってきて・・・「その方から手を離せ」と命令。

仕方なく厄介が手を離すと・・・勢い余った老人の杖が「母」を切り裂く。

「ただではすまんぞ」と老人は激昂して去って行く。

「あの人・・・どなたなのですか」

「知らん」

「え・・・」

「何事です・・・」と警備主任(小松利昌)が駆け寄ってくる。

「こいつだ・・・こいつのせいで・・・こんなことに」

「えええええええ」

仕方なく・・・厄介は「置手紙探偵社」に連絡するのだった。

「はじめまして・・・掟上今日子です」

そこはかとないくりかえしのギャグである。

事情を聞いた今日子は「評価の変化」について意見を求める。

「ゴッホの絵だって・・・死後価値があがったっていうし・・・あ・・・今回はさがったのか」

絆井法郎は自説にツッコミを入れ自己完結する。

「老人は・・・絵の作者に怨みがあったのでは・・・」と「サンドグラス」のウエイトレス・幕間まくる(内田理央)は自説にのめり込む。

「老人には若い美貌の妻がいた・・・しかし・・・絵の作者はその美貌の妻の誘惑に負け、肉体関係を結ぶ・・・たちまち巻き起こるドロドロの愛憎劇・・・老人は画家を憎み・・・その作品に復讐を・・・」

ついに正拳突きでお盆を真っ二つに割るまくるだった。

「鋸村ギーコ的な・・・」

「さらしと六尺ふんどしを着用しているのか」

「来年公開予定の血まみれスケバンチェーンソーの話はそこまでだ」

「とにかく・・・美術館に行ってみましょう」

美術館では・・・人気画家の新作「雲の音」が話題を呼んでいる。

「なるほど・・・」

「まさか・・・もう・・・わかったんですか」

「まあまあ・・・」

「あ・・・そっちは・・・関係者以外立ち入り禁止ですよ・・・」

しかし、事務室に潜入した今日子は事務員の制服を拝借して変装するのだった。

今日子は臨時職員のふりをして職員たちから情報を収集する。

館長が天下りであること・・・絵に関心がないこと・・・金にうるさいことなどが判明する。

そして・・・さりげなく・・・作品のデータが披露される。

作品名 母

作者 水本櫓

備考 P120・油彩

休憩タイムである。

「贋作当てゲームって知ってますか」

「なんですか・・・」

「海外の美術館などではイベントとしてよくあるそうです。本物の中に贋作を混ぜて・・・来場者が当てる趣向です」

ジュースで例示する今日子は・・・すべてのジュースにハバネロを投入する。

「あててください・・・」

「うえ・・・」

「実は全部・・・まずいのです」

「・・・」

「あの館長は・・・全部、贋作の展示をして・・・評判悪かったのです」

「美味しいものがひとつもないと・・・」

「ええ」

「あの・・・今日子さんは・・・何がお好きなんですか」

「お金です」

「・・・」

もったいない精神で不味いジュースを飲む今日子。

「うえっ」

高まるガッキー、かわいいよガッキーの一部愛好家の熱唱。

「まさか・・・あの作品も贋作だったとか・・・」

「それを確かめに行きましょう」

雑誌記者に変身した今日子は水本画伯(恩田括)を訪ねるのだった。

「変わるわよ」

「ハニーですかっ」

だが・・・水本画伯は・・・破損した絵が本物だったと証言する。

次にイラストレーターに変装した今日子は・・・天才少年の暮らす芸術家のためのマンション「アトリエ荘」を訪ねる。

「君も・・・アトリエ荘の入居希望者?」

「先生に・・・美術館の事故を・・・警備員の責任にするらしいと伝えて」

「・・・」

「一体・・・何のことですか・・・」

「いよいよ・・・事件は大詰めです」

「えええええ」

警備室の監視カメラの映像を上司にチェックしてもらう二人。

「おかしい・・・あの日の映像だけが削除されている」

「それができるのは?」

「館長だけだ・・・」

二人は美術館にやってきた。

「君たちはなんだ・・・」

「あなたは・・・すべての責任を・・・彼におしつけようとしましたよね」

「何・・・」

「話題の新作・・・雲の音・・・サイズは・・・P120ですね」

「え」

「しかし・・・絵に関心のないあなたは・・・うっかり・・・F120で額縁を発注してしまった」

「額縁?」

「ええ・・・額縁にはF(Figure)、P(Paysage)、M(Marine)、S(Square)と言った規格があるの・・・同じ120号でもFとPでは・・・高さが違うのです・・・あわてて再発注したけれど公開に間に合ったのはお安いレンタル額縁だけだった・・・そこで・・・あなたは・・・母・・・雲の音・・・二つの額縁を交換したんですよね・・・」

「・・・」

「額縁を・・・交換・・・」

「実は私・・・変装の間に私服も着替えていたの」

「え」

今日子のおしゃれな一日。

普通のスカート。

美術館制服。

プリーツ。

雑誌記者モード。

ボックス・プリーツ。

イラストレーターモード。

ラップスカート。

「全然気がつかなかった・・・」

「一般男性にとっては・・・どうでもいいことだけど・・・女子には大切なこと」

「つまり・・・」

「芸術家にとって・・・絵と額縁は・・・ひとつの作品なのよ」

「・・・」

そこへ・・・老人が登場する。

驚愕する館長。

「あなたは・・・一体・・・」

「私は額縁匠の和久井だ・・・」

「額縁ショー・・・」

「誰が・・・帝都座の名画アルバムだ・・・私がストリッパーに見えるか」

「戦後性風俗史はそこまでよ」

「つまり・・・あなたが激昂したのは・・・額縁が変わっていたのに気がついたから」

「そうだ・・・母・・・の額縁を作ったのは私だからな」

「額縁の巨匠・・・」

「館長・・・こんな何も知らぬ若者に責任を押し付けるとは・・・お前が業者から賄賂をもらいまくっていることを暴露してやる」

「ひでぶ・・・」

「今日子さん・・・すべてご存じだったのですね」

「ええ・・・でも・・・一日を有意義に過ごして・・・あなたも納得して探偵料を払う気になったでしょう・・・」

「・・・お金がすきなんですね・・・」

「はい・・・それから・・・あなたが・・・私に声をかけたのは・・・私に恋をしているからなのでしょう?」

「え」

「でも・・・私・・・そういうのパスなので」

「ええ」

「またのご利用をお待ちしています」

「えええ」

失恋する厄介・・・。

名探偵には惚れるなよ。

告白する前に推理されてお断りされるんだよ。

しかし・・・今日子もまた・・・厄介をふったことも忘れてしまうのだ。

もちろん・・・今日子が・・・厄介に特別な関心を持っていて・・・自分自身に置手紙をしていないとは限らないわけだが・・・。

今の厄介にできるのは・・・心の痛みを・・・味わうことだけなのだった。

海と空の間には・・・哀しいのか優しいのかわからない雨が降るのである。

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2015年10月24日 (土)

釣りバカ日誌~新入社員 浜崎伝助~(濱田岳)まだ合体はありません(広瀬アリス)君たちは幸せそうだなあ(小栗旬)自分の命より大切なもの(川村ゆきえ)

・・・おいっ。

恐ろしい金曜日が来たんだよ・・・テレビ東京の深夜が地味目でよかったなあ・・・と思っていたらそうじゃなかったんだな。

とにかく・・・「松竹映画」のクオリティーでドラマが作られているんだなあ・・・。

「フーテンの寅」シリーズを連続放映していたテレビ東京だけにな・・・。

とにかく・・・今季のラインナップは決まった。

(月)「5→9」

(火)「デザイナーベイビー」

(水)「サイレーン」

(木)「サムライせんせい」

(金)「コウノドリ」

(土)「掟上今日子」

(日)「花燃ゆ」

・・・以上である。

(火)は残り三回(予定)なので・・・その後は谷間になるかもしれない。

(木)はほぼ一週間遅れだが・・・なるべく軽めで・・・。

今回は「釣りバカ」→「コウノドリ」で「信長協奏曲」の家康→信長リレーが達成されている。

・・・そこかっ。

で、『釣りバカ日誌〜新入社員 浜崎伝助〜・第1回』(テレビ東京20151023PM8~)原作・やまさき十三/北見けんいち、脚本・佐藤久美子、演出・朝原雄三を見た。ある意味、濱田岳は浜崎伝助を演じるために生まれてきたような感じだもんな。ハマちゃんだけに・・・。そして・・・まだ独身の小林みち子(広瀬アリス)の純情可憐な存在感・・・。ゾンビからの奇跡の復活を成し遂げたのだなあ・・・。オリジナルを知るものには・・・佐々木和男(吹越満)の痛恨の一撃である「ハマサキデンスケの釣りバカ化」が入社以前に発生しているというパラレルワールド展開だが・・・映画版よりニュアンスが原作に近いテイストでリニューアルされている感じである。

初々しいハマちゃんと引退間近いスーさん(西田敏行)のおかしな関係が見事に再現されているのだ。

うっとりするよね・・・。

秋田生まれのみち子が大失恋の果てに叔父の小林平太(きたろう)の不味い料理屋に転がり込み、天才的な料理上手の腕を発揮しハマちゃんの胃袋を鷲掴みするという展開はテレビ東京っぽいけどな。

第一回は「釣りバカ」屈指のエピソードと言える・・・鈴木建設の創業期秘話。鈴木一之助と朝本信一郎の「釣り」をめぐるエピソード。

朝本信一郎を武田鉄矢が演じるという豪華ゲスト展開である。

「みごろ!たべごろ!笑いごろ!」~「みごろ!ゴロゴロ!大放送!!」(1976年~1979年)を知る人はもうニヤニヤして見るしかないのである。

カバ大将(西田敏行)とイモ大将(武田鉄矢)の一夜限りの復活劇なのである。

二人のコマセぶっかけあいから生霊対決を丸く収める・・・ハマちゃんの大物ぶり・・・。

真相を語る秋山営業部長(伊武雅刀)まで澱みない布陣である。

基本的に映画「ニッポン無責任時代」(1962年)の遺伝子を受け継ぐ「釣りバカ日誌」である・・・ハマちゃんとは無責任男・平均(植木等)の生まれ変わりなのだ。

「こつこつやる奴ぁ、ご苦労さん」なのである。

しかし・・・単に調子がいいだけではなく・・・「釣り」という「趣味」を持つことによって・・・等身大でありながら・・・夢のサラリーマン・ライフを送るハマちゃんは・・・しがないサラリーマンたちの「夢の男」と化す。

そういう「人情」は・・・「男はつらいよ」(1969年)がベースなのである。

フーテンの寅さんのヒロインは妹のさくら・・・これが専業主婦・みち子の原型であることは言うまでもない。

「ニッポン無責任野郎」と「フーテンの寅さんの妹のさくら」の結婚・・・それが「釣りバカ日誌」なのである。

まあ・・・そんなこんなで・・・2015年に新生した独身時代のハマちゃんとみち子は・・・ものすごく可愛い。

これはもう・・・うっとりして見るしかないんだな。

関連するキッドのブログ→玉川区役所 OF THE DEAD

で、『コウノドリ・第2回』(TBSテレビ20151023PM10~)原作・鈴ノ木ユウ、脚本・山本むつみ、演出・土井裕泰を見た。「釣りバカ日誌」のカップルののほほんぶりの後にどシリアスなコチラを見ると・・・深刻ぶったりする様が・・・些少、臭く感じるわけだが・・・これは脚本家のどストレートなセリフにもかなり責任がある。「頑張ってとか・・・当たり前のことしか言えませんでした」「それで・・・いいんじゃないか」と自画自賛しているしな。しかし、悪魔以外の一般人にとって・・・これはこれでうっとりできるのかもしれない。産婦人科ものにはおなじみのエピソードを使って・・・リニューアルするのはそれなりに意味があるだろう。なにしろ「誕生」があるから・・・人生のすべてはスタートするのである。

「ファイナルデッド・ピタゴラスイッチ」の果てに妊娠三十六週の妊婦・永井晴美(川村ゆきえ)を死の赤い車が襲撃する。

「聖ペルソナ総合医療センター」の救急救命科医の加瀬(平山祐介)は患者を搬送中の救急隊員からの連絡に顔色を変え、産婦人科に顔を出す。

子宮の状態に問題のある患者・村川郁恵(虻川美穂子)の処置について意見の分かれる鴻鳥サクラ(綾野剛)と四宮春樹(星野源)・・・。

「今回は・・・三児目の出産ですが・・・患者は今後も出産を希望しており・・・」

「三人産んだら充分だろう・・・子宮摘出の方が安全だ」

「しかし・・・」

「子宮を保全する術式では母子ともにリスクが高まる・・・患者に配慮しすぎて殺したら本末転倒だ・・・冷静に対処するべきだ・・・」

「冷静と冷淡は違うよ」

二人の対立に戸惑う研修医の下屋加江(松岡茉優)だった。

そこへ割って入る加瀬医師。

「事故で・・・頭部を損傷した患者がくる・・・妊婦だ」

「・・・」

新規契約を獲得したサラリーマン・永井浩之は妻の用意しているすき焼きに想いを馳せる。

しかし・・・すべてをキャンセルする一本の電話。

「そんな・・・」

病院に駆けつけた浩之を待っていたのは変わり果てた妻の姿だった。

「脳の腫れがひどいために・・・今、頭蓋骨をはずしてあります」

「妻と話せますか」

「損傷が大きいために・・・奥様の意識が戻る可能性は・・・極めて低いと考えます」

救急救命科の加瀬医師は唇をかみしめる。

「そんな・・・」

「お子さんは・・・無事です・・・一緒に見てください・・・ほら・・・心臓が脈打っています」

サクラは瀕死の妊婦のエコー画像を示すのだった。

「今なら・・・お子さんを帝王切開術で助けることができます・・・ただし・・・母体にはかなりの負担になります・・・父親として・・・選択してください」

「そんな・・・妻も・・・子供も助けてくださいよ」

産婦人科のサクラは悶える。

研修医の下屋加江はサクラを批判する。

「そんなの・・・選べるわけないじゃないですか」

「しかし・・・選んでもらわないと・・・赤ちゃんを助けられない・・・」

「・・・」

四宮は患者の木村法子(山田真歩)が喫煙の習慣をやめないことを厳しく指摘する。

「喫煙は・・・やめてくださいと言いましたよね」

「私も・・・いろいろとストレスがたまるので・・・」

「あんたはすでに母親失格だ」

患者からのクレームで大澤院長(浅野和之)は四宮を説諭する。

「もう少し・・・言い方をだね」

「愛想のない有能な医師と、愛想のいい無能な医師・・・どちらがいいですか」

「そんな極論必要ない・・・愛想がよくて有能でいいじゃないか」

「それだとキャラクターが立たないんですよ」

危篤状態が続く永井晴美・・・。

「奥さんは・・・必死にお腹の赤ちゃんを守っています・・・事故の時も自分の頭ではなくて・・・お腹をかばっていました・・・決断してください」

「そんなの・・・無理ですよ」

過酷な現実から目をそむけようと・・・庭のベンチで過去の動画を見る永井浩之・・・。

妻からの・・・妊娠の報告・・・母子手帳・・・近付く臨月。

「すごいな・・・エイリアンみたい」

「ひどいわね・・・でも・・・私・・・わかったの・・・」

「?」

「自分の命よりも大切なものがあるんだなって・・・」

「・・・」

「これが・・・愛なのよ」

直後に停止する愛妻の心臓・・・。

必死に心臓マッサージをする救命医。

そこへ・・・サクラが駆け込んでくる。

「助けてください・・・子供の命を・・・それが・・・妻の願いだから」

「やります」

「四分でやってくれ」

四宮と研修医・・・そして新生児科の今橋医師(大森南朋)も駆けつける。

そして・・・女児出産。

「おめでとう」

「ご臨終です」

生と死の交差点に佇む・・・医療チームたち・・・。

号泣する家族・・・。

「後は僕が・・・」とサクラ。

「何を言う・・・こんなに頑張った母親を残していけるか」と四宮。

死体の縫合が開始される。

研修医は泣いた。

自分の両親と・・・亡妻の両親に支えられて永井浩之は父親として育児を開始する。

「この子が生まれてきてよかったと思えるように・・・がんばります」

「・・・がんばってください」

村川郁恵は第三子の出産を無事終える。

「母親も子供も・・・運が良かったな」と四宮。

「・・・」

「口惜しいのかしら・・・子宮保全に反対してたから」と研修医。

「いや・・・彼は・・・そういうやつじゃないよ・・・」

助産師の小松(吉田羊)は四宮の過去をサクラに問う。

しかし・・・サクラの口は重い。

そして・・・眠り続ける幼女つぼみに読み聞かせをする四宮。

脳裏に閃く・・・鮮血の記憶・・・。

生まれて来た命は・・・生きて・・・いつか終焉を迎える。

これはその束の間の物語である。

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2015年10月23日 (金)

遺産争族(向井理)二度目とは思えない純情そうな花嫁(榮倉奈々)結婚ご愁傷様です(朝倉あき)

「新★乾杯戦士アフターV」で復帰しているので「これが復帰作でいいのかしら・・・新★乾杯戦士アフターV」も書く気満々だったわけだが・・・さりげなくココに紛れ込んできたな。しかも・・・居酒屋の娘からサイレーンな紅いドレスの女に変身である。・・・本当は総帥が変身している小倉さんじゃないのか・・・。

一部愛好家モードはそこまでだっ。

しかし・・・始るドラマ、始るドラマ・・・次々と面白いという・・・「殺す気かモード」の秋ドラマである。

これも・・・今回限りになる可能性があるよね・・・。

これはもう・・・「サムライせんせい」とガチンコだな・・・。

そういうわけで・・・脱落する可能性大の「無痛~診える眼~」は・・・。

くう様の【無痛~診える眼~】第3話のレビューでお楽しみください。

そして・・・いつか谷間に登場するかもしれない・・・シングルマザーはアイドルとおんなじで恋愛禁止!と尾野真千子が叫び、週に一回は風俗に行って深夜バイトの給料を半分以上使っちゃってるオダギリジョーが佇む駄菓子屋恋愛譚は・・・。

きこり様の「おかしの家」 第一話 恋と恐怖でお願いします。

他力本願かっ。

で、『遺産争族・第1回』(テレビ朝日20151022PM9~)脚本・井上由美子、演出・松田秀知を見た。近親者の入院がフィードバックしていたらしい「まっしろ」はかなりグダグタした印象があるのだが・・・ある意味、その後の話であるコチラはかなりネチネチと面白い感じである。やはり・・・可愛いヒロインを描くよりも・・・ドロドロした人間関係を描いた方が・・・実力者として仕事ができるのかもしれませんな・・・。先生はっ。

今後の世界を暗示させる正妻と愛人の阿鼻叫喚する葬儀を仕切るのは・・・。

葬儀業界のトップ企業である「カワムラメモリアル」・・・その創業者で会長の河村龍太郎(伊東四朗)は重度の糖尿病を患っている。五年前に妻を亡くした八十歳の老人は・・・死期が近いことを意識しているのでございます。

十億円とも言われる遺産を誰に残すのか・・・龍太郎は頭を悩ませる。

医者に内緒で大福を食べただけで死にそうになる身なのである。

当直だった研修医の佐藤育生(向井理)の適切な処置で命をとりとめた龍太郎だった。

実は・・・育生医師は・・・龍太郎の孫娘・河村楓(榮倉奈々)の交際相手である。

楓は一度、結婚に失敗しており・・・自称・満身創痍であり、現在は乗馬クラブのインストラクターをしている。楓が誕生した時には「カワムラメモリアル」はすでに一流企業となっていたので・・・お嬢様育ちの世間知らずらしい。

龍太郎の快気祝いの席で・・・育生との交際を発表した楓に・・・葬儀社の一族は戸惑うのであった。

葬儀社と医者は・・・切っても切れない仲なのでございます。

さらに・・・母一人子一人の佐藤家。女手一つで育生を育てた母親・華子(岸本加世子)の職業は生命保険の外交員なのだった。

ある意味、コントの設定でございます。

息子から「結婚したい人がいる」と告げられてものすごく動揺する母親。

「嫁をいびる姑になんかならない」と公言する華子は・・・中盤では「私と楓さん・・・どっちが大切なの」と言い出します。

まあ・・・母と息子は一心同体幻想は誰にもございますので・・・。

しかし・・・「母親の幸せと息子の幸せが常に一緒とは限らないこと」は世の常である。

息子の相手が・・・「お嬢様」と聞き・・・両家のつり合いがとれずに・・・自分が蔑まれることが一番気にかかる・・・明らかに困った母親です。

しかし・・・味方がいないわけではない・・・待ち合わせの場所に使われた居酒屋の娘で・・・育生の幼馴染であるらしい渡辺美香(朝倉あき)は・・・おしとやかな烏龍茶の注文に生ビールをジョッキで出すのだった。

「ここは居酒屋だからねっ」

やはり・・・総裁の変身した小倉さんじゃないのか・・・。

好きなんだよ・・・育生が。

飲みっぷりで早くも火花を散らす楓と華子である。

リッチなレストランで行われる両家の顔合わせ。

育生は食べたことのないくらい美味しいステーキに夢中だが・・・華子は・・・格下扱いされることをひたすら恐れるのである。

研修医である育生はまだまだ薄給の身の上なのだった。

楓の父親であるカワムラメモリアル代表取締役社長の河村恒三(岸部一徳)は育生と育生を育てた母親をほめたたえた後で・・・。

「一つだけ・・・条件というか・・・お願いがあります・・・息子さんには・・・医師をやめて河村の婿になっていただきたい」

「え」

逆上して・・・パンを鞄につめこんだ華子は会食の席を去るのだった。

「ごちそうさまでした」

一礼して・・・母の後を追う育生。

「パパ・・・ひどいよ」

「お前は一度結婚に失敗している・・・今度こそ・・・すべてを捨ててでもお前を幸せにしたい男しか・・・私は認めない」

夫と娘のやりとりを黙って見つめる・・・恒三の妻・陽子(余貴美子)だった。

路上で泣きながらパンを貪る華子。

「あの子はやめときな・・・お前にはもっといい子がいる」

「母さん・・・結婚するのは僕だよ・・・僕は楓を愛しているんだ」

「えええ」

息子の裏切りに唖然とする母親。

お腹を痛めた母親とそうでない息子では感じ方が違います・・・何のことだよっ。

そして・・・河村恒三が仕切る華麗なる葬儀を見学にやってくる育生。

「お父さん・・・河村家に入ろうと思います・・・ただ・・・医師は意義のある職業だと考えていますのでやめません・・・いかがですか」

「否」とは言えない恒三だった。

そして・・・「河村家・佐藤家」の結婚式当日。

「ちっ・・・佐藤家・河村家だろうがっ・・・ちっ・・・ちっ」と三度舌打ちする華子。

一方で龍太郎は・・・腹心のカワムラメモリアル執行役員・吉沢貴志(渡辺いっけい)を通じて弁護士の金沢利子(真飛聖)に遺言書の作成を依頼する。

「金が沢山、利子がつくと書いて金沢利子でございます」

「娘たちの他に・・・どうしても遺産を分与したい人間が一人いる」

「では・・・まず家系図をお願いします」

はたして・・・龍太郎は誰に遺産を残そうとしているのか・・・。

「佐藤育生って奴は・・・いつもお金がなくて・・・同じTシャツばかり着て唐揚げ食べてるの・・・ 金目当てで婿に行くような奴じゃない・・・だから佐藤育生は死んだ」

口惜しくて紅いドレスで騎乗位のポーズをとる渡辺美香・・・。

しかし、友人たちは「今日からは河村育生だもんなあ」と軽くスルーするのだった。

華麗なる挙式・・・しかし・・・華子には不吉な着信がある。

「おめでとう・・・と伝えてくれ」

「・・・あんた」

家庭内暴力の果てに借金を残し家族を捨てた・・・育生の父親・肇(光石研)登場である。

楓の祖父・龍太郎には三人の娘がいる。

「楓・・・おめでとう」 

「ありがとう・・・ママ」 

長女は陽子。楓の母である。つまり恒三も入り婿なのであった。 

「お父さん・・・育生さんに意地悪しないでよ」 

「お義父さんが私にしてくれたように・・・親切にするさ・・・」 

意味深である。

「すっごく清純そう・・・」 

次女は矢幡月子(室井滋)でカワムラメモリアル常務取締役である。夫に先立たれた未亡人だが・・・一人息子がいる。 

月子の息子・正春(鈴木浩介)はカワムラメモリアルの広報担当執行役員である。 

従妹の楓の花嫁姿を見る正春の目は怪しく光るのだった。

「とても二度目とは思えないよ」  

三女は自称写真家の河村凛子(板谷由夏)・・・。 

「十億あれば相続税で四億国にもってかれても六億・・・一人二億ある」

これ以上なく妖しさ深まる布陣でございます。

この他にも・・・恒三の行きつけの銀座のクラブ「おりひめ」のママ・亀山まるみ(堀内敬子)も妖しく配置され・・・。

社長秘書の南リエ(堀田茜)もそれなりに妖しい・・・。

そして・・・謎につつまれた楓の初婚の相手も妖しい・・・。

もちろん・・・「結婚式」を「ご愁傷様」と締めくくるナレーションの高畑淳子も妖しいのでございます。

愛によって結ばれた・・・楓と育生のつないだ手の内にそっとのぞく・・・紙幣・・・。

「僕には僕の考えがある」・・・欲深い一族に意外にイケメンな子羊が一匹紛れ込んだらしい・・・。

これは・・・濃厚・・・。

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乾杯戦士アフターV

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2015年10月22日 (木)

サイレーン刑事(松坂桃李)×彼女(木村文乃)×完全悪女(菜々緒)~シリアルキラーの最期と整形女の末路~

セイレーンは死の妖精である。

ゼウスの姉神デメーテル(大地の神)の娘・ペルセポネーの侍女だったが、ペルセポネーが冥府の王・ハーデースに誘拐された時に鳥となって捜索活動を展開する。

紆余曲折あって・・・ペルセポネーが冥府の女王となった後・・・セイレーンは船乗りを死に導く声を持つ妖女となってしまう。

セイレーンの歌声の誘惑に耐えられる男はいないとされている。

愛する姫を奪われた嘆きの声は・・・あらゆる男性に復讐するために・・・夜の海に響き渡るのである。

そのうなり声を模したのが・・・サイレンの音なのだ。

セイレーンは警告する。

しかし、警告を耳にしたものは死ぬのである。

で、『サイレーン 刑事×彼女×完全悪女・第1話』(フジテレビ20151020PM9~)原作・山崎紗也夏、脚本・佐藤嗣麻子、演出・本橋圭太を見た。やはり、これか。・・・「無痛」が生き残るかどうかは・・・微妙な状態だな。(月)「5→9」(火)「デザインベイビー」(水)「サイレーン」(木)未定(金)「コウノドリ」(土)「掟上今日子」(日)「花燃ゆ」という状況だから・・・。絶望的じゃないか・・・。(金)に「コウノドリ」と生き残りをかけてバトルが展開される。やはり、絶望的じゃないか。だって血管浮き出るばかりのドラマだからな・・・ひでぶっ。

警視庁機動捜査隊は二人一組で覆面パトカーに乗車し、巡回警邏を行い、事件発生の場合は現場に急行して初動捜査を担当する部署である。

警視庁に属するために所轄の刑事よりも格上だが・・・ドラマでは桜中央署(フィクション)に関係が深く・・・桜中央署の要請に応じて生活安全課の家宅捜索に協力したり、殺人事件の捜査会議に出席したりしている。・・・ご愛嬌である。

機動捜査車両16号は桜中央署管内を縄張りとしているらしい。

捜査員は19歳の時に交番勤務の警官となって八年の元・機動隊員・里見偲(松坂桃李)と年上の恋人・猪熊夕貴(木村文乃)・・・。

二人の目標は本庁の捜査一課の刑事になることだった。

夕貴は女子寮住まいだが・・・ほとんど里見のマンションで暮らしている。

つまり・・・半同棲状態である。

性的関係にあることは職場では秘密であり、結婚を前提として交際しているが・・・時期については温度差がある。

夕貴は両親に里見を紹介したいのだが・・・里見はそこはかとなく消極的なのであった。

こういうタイプの男はダークカイトになる可能性があります。

夕貴は些少の不満を感じているが・・・年下の男の子とイチャイチャしていると我を忘れるタイプらしい。

桜中央署の生活安全課の千歳弘子(山口紗弥加)は二人の先輩であり、カラオケに付き合うこともある。

里見は酔うと婦人警官の雨宮ひかる(岡崎紗絵)のスカートを着用するという変態的な側面も持っている。

カラオケルームの廊下で酔いつぶれた里見は・・・妖艶な女にまたがれる。

女は里見を見下すと立ち去るが・・・その男を優男が追いかけていくのだった。

恐ろしい事件の幕があがったことを・・・里見はまったく気がつかなかった。

「司令センターより各局へ・・・南新町四丁目で女性の変死体が発見された・・・最寄車両の現場への急行求む」

「こちら・・・16号車・・・了解」

二日酔いの二人は現場へ急行する。

二人の後輩である交番勤務の三宅亮介(高田翔)がすでに到着していた。

「早いな」

「待ったなしの仕事ですから」

「偉いね」

「でも一番乗りは速水刑事です」

「ちっ」

「チビデカがっ」

チビデカこと速水翔刑事(北山宏光)は桜中央署の刑事課に属している。二人と同様に捜査一課ほ目指している。

二人がチビデカを蔑視するのは・・・点数稼ぎのために捜査手順を無視するゴマスリ野郎だからである。

「おらおら・・・所轄の刑事は機捜の邪魔すんな」

「鑑識も入ってないのにウロチョロすんなよ」

「・・・」

しかし・・・速水刑事はすでに被害者のスマートフォンをちょろまかしていた。

コソドロのような刑事なのだった。

死体は風俗店「マックス」のベテランキャバクラ嬢だった。

「着衣に乱れなし・・・目立った外傷なし」

桜中央署の安藤実刑事課長(船越英一郎)が到着し見解を述べる。

「急性アルコール中毒か・・・睡眠薬自殺か・・・」

「自殺です・・・スマホに遺書が・・・」

チビデカはしゃしゃり出るのだった。

(仕事につかれたし生きていてもいいことないみたいみんな今までありがとう)

「決まりだな」

その時・・・里見は・・・夕貴を見つめる一人の女がいることに気がついた。

その女・・・死んだキャバクラ嬢の同僚である橘カラ(菜々緒)は・・・事情聴取に素直に応じていた。

「昨夜は・・・店が終わってすぐ帰宅しました・・・」

初動捜査を終えた二人は巡回を再開する。

「あの女・・・君を見ていた」

「あなたじゃないの・・・見つめ合っちゃって・・・」

「いや・・・彼女は嘘をついている・・・俺、昨日、カラオケルームで彼女を見た」

「え」

「だけど・・・泥酔状態だったから・・・確信できない」

「しょうがないわねえ」

カラは二人の乗った覆面パトカーを見つめていた。

「見つけた・・・」

謎の呟きをもらすカラ。

キャパクラ嬢たちの発言から・・・カラは・・・理想とする女性の模倣に秀でていることが伺われる。

そういう意味では・・・表参道高校合唱部出身のような変な髪型の夕貴を理想のタイプと認定したのかもしれない。

しかし・・・ダブル・ミーニング(二重の意味)は・・・シナリオの常套手段である。

カラと夕貴には過去に因縁がある可能性がある。

夕貴は機動隊員の猪熊文一(大杉漣)と元婦人警官の三樹(藤吉久美子)の娘として育てられたが・・・養女であった。

幼児には施設で過ごしたらしい。

ひょっとすると・・・人生の何処かでカラと夕貴は出会っていた可能性がある。

とにかく・・・カラは・・・夕貴を密かに尾行すると・・・里見のマンションを監視できる部屋の住人でデザイナーの渡公平(光石研)の運転する車にわざと接触し、被害者を装って接近すると・・・その美貌で彼をたちまち籠絡するのである。

夕貴は・・・カラに監視されるのだった。

生活安全課の徳永刑事が自殺と断定された「マックス」の孤坂瞳の父親(野添義弘)の話を桜中央署に顔を出した里見に伝える。

「娘は絶対自殺なんかしないって・・・言いはるんだ・・・気持ちは分かるけど」

「刑事課が自殺と断定したんだから・・・しょうがない」

機動捜査隊の任務はあくまで初動捜査なのである。

事件に深入りはできないのだった。

里見と夕貴はお決まりのもどかしさを感じながら巡回を続ける。

「司令センターより各局へ・・・宮川町で女性の変死体が発見された・・・最寄車両の現場への急行求む」

「こちら・・・16号車・・・了解」

若い女性・・・山田元子(由井香織)はマンションの階段下で絞殺されていた。

不似合いな白いソックスを着用し・・・口には同じような白いソックスが片足分だけ押しこまれている。

「変質者ね・・・」

「夜なら・・・ここは死角になるな・・・計画的犯行かもしれない」

桜中央署に「宮川町女性殺害事件」の捜査本部が設置される。

里見は・・・白いソックスが片方だけであることから・・・もう片方を記念品として犯人が持ち帰った可能性について発言する。

「・・・だから・・・どうした」

「連続殺人事件の可能性があります」

「連続って・・・被害者は一人だぞ」

「管内で若い女性の行方不明が頻発しています・・・」

「だから・・・シリアルキラー(連続殺人犯)だってえのか・・・ドラマの見過ぎだよ」

安藤課長は里見の推理を一笑して葬った。

「焦りすぎだよ・・・」と夕貴は里見を窘める。

「・・・」

巡回中の二人の前にカラが現れる。

「私のこと・・・覚えてる」

「ええ・・・カラさん・・・あの時は・・・ご協力ありがとうございました」

カラの言葉は意味深である。もっと古くからの知り合いであることを仄めかしているようでもある。

カラは新しい店の名刺を取り出し・・・夕貴に渡す。

「あなたのもちょうだい・・・」

「ごめんね・・・今、切らしていて・・・何かあったら桜中央署の生活安全課に連絡してください」

素っ気なく対応する夕貴だった。

妖しい微笑みを浮かべるカラ。

「まだ・・・こっちを見てるぞ・・・やはり・・・君のことを見ている」

「同性愛者・・・かしら」

「そうかもな」

「あなた・・・興味があるんでしょう・・・」

「いや・・・なんだか・・・恐ろしい気がする」

「勘なの・・・」

二人はファミリーレストランで休憩する。

「最近・・・店に入るといつも同じ匂いがするんだ」

「なにそれ・・・」

「すごく・・・いい匂いなんだけど」

「あなた・・・鼻が利き過ぎるのよね」

変装して二人を尾行していたカラはそっと退席するのだった。

「あいつ・・・邪魔ね・・・」

部屋に戻ったカラは愛用していた香水を捨てた。

職務を終えて帰宅する里見と夕貴。

「この間・・・送ってもらった時に・・・父に見られちゃったみたい」

「げっ・・・」

里見は・・・夕貴の両親に挨拶することを・・・夕貴の父親が機動隊時代の上司であることを理由に避けていた。

「もう・・・覚悟しなさいよ・・・何を読んでいるの・・・」

里見は「シリアルキラー~心の闇~」という本を示す。

「シリアルってのはシリアルナンバー(続き番号)のシリアルでつまり・・・連続ってこと・・・キラーは殺人鬼ってことだから・・・つまり、連続殺人犯ってことだけど・・・実在の犯罪者・テッド・バンディについて元FBI捜査官のロバート・K・レスラーが提唱した呼称なんだ・・・そこには単なる殺人犯とは違う・・・特徴があるってこと・・・」

「サイコキラーとはどう違うの・・・」

「サイコキラーは・・・精神障害的要素が強い・・・連続しない場合もあるし・・・シリアルキラーは純粋に殺しの常習者といった意味合いが強いのさ」

「ゴルゴ13みたいな」

「あれは一種のテロリストだろう・・・職業だし・・・シリアルキラーは殺人そのものが目的なんだよ」

「厄介ね・・・」

「シリアルキラーにとって・・・殺人は一種の儀式なんだ・・・だから・・・手順とか・・・殺害方法とかに・・・拘るし・・・獲物についての記念品をコレクションしたりする」

「それが・・・片方だけの白いソックスってわけ」

「うん・・・場合によっては・・・獲物とある程度、親密になることに拘るタイプもある」

「そうなると・・・この町には・・・バッグに白いソックスをつめこんで配りまくっている奴がいるってことになるわね」

「そうさ・・・そいつは・・・獲物に白いソックスをはかせて・・・獲物を殺し・・・それから口に白いソックスを詰め込んで・・・残った方を記念品にしてるんだ・・・」

「変な奴」

それは・・・タクシーの運転手(板尾創路)だった。

夜の街に・・・妖女が立っていた。

女は夜のビジネスのために出勤するところらしい。

女はカラだった。

運転手はカラを客として乗せた。

「お客さん・・・寒くないですか・・・よかったら・・・このソックスはいてください・・・前のお客さんが暑がりで・・・クーラーを少し効かせすぎたので・・・」

カラはソックスを受け取って素直にそれをはいた。

「変ね・・・」

「最近の若い人は白いソックスあまりはんないんですよね・・・私はクーラーが苦手で・・・いつもストックしてるんですよ・・・でも・・・白いソックスは一目で汚れていないことがわかるでしょう・・・」

「・・・」

「あれ・・・ちょっと待ってください・・・エンジンの調子がおかしいな・・・」

「・・・」

雨が降っていた。トンネルの下にタクシーを停車させた運転手は乗客に協力を求める。

「ちょっとフロントの下の部分を見ててもらえますか・・・」

「・・・」

指示に従い腰をかがめたカラの首に背後からロープを巻きつける運転手。

「私はねえ・・・白いソックスが大好きなんです・・・昔、白いソックスの似合う女の子と付き合っていてね・・・その子に夢中になって受験に失敗しました・・・それからは下り坂ですよ」

運転手は苦悶するカラを引きづり、廃材の鉄の支柱にロープをからませる。

「今日は・・・吊りあげてみましょうね・・・素直に白いソックスをはいてくれたお礼です・・・あなたはスタイルがいいから・・・きっと綺麗に仕上がりますよ・・・」

しかし、カラは強烈な脚力で逆襲に転じる。

「う・・・」

運転手はカラの太腿で首を絞められ悶絶した。

カラは運転手の首にロープを回し吊りあげた。

「うう・・・」

「運が悪かったわねえ・・・」

「ううう・・・」

「・・・」

「・・・」

シリアルキラーは死んだ。

二人はタクシー運転手の死体を見上げた。

タクシーのダッシュ・ボードの上には「シリアルキラー~心の闇」が置かれている。

ダッシュボードの中には白いソックス(未使用)が満載されていた。

運転手のスマートホンには・・・複数の被害者の記念写真が残されていた。

「これは・・・まるで贈りものみたいだな・・・」

「誰が・・・誰に・・・何を贈るっていうの」

「何者かが・・・刑事に・・・犯罪者を・・・」

「何者って・・・結局、犯罪者じゃないの」

「うん・・・だけど・・・被害者が逆襲したのかもしれない・・・」

カラは偶然を装い・・・夕貴に近付いて行く。

夕貴の利用する市民スポーツセンターで・・・夕貴の実力を上回るスカッシュの腕前を披露するカラ。

更衣室での盗撮事件に居合わせるカラ。

ついに・・・カラは夕貴の個人的な連絡先を手に入れるのだった。

「もっと・・・仲良くならなければ・・・ね・・・人間から信頼を勝ち取るには役に立ってみせること・・・」

カラの友人である高野乃花(足立梨花)は一度関係した男に執着していた。

「彼には奥さんがいるのよ・・・でも・・・きっと彼は私を愛してると思うの・・・」

「奥さんがいなくなれば・・・あなたは幸せになれるのね・・・」

「私・・・奥さんと同じ顔に整形しようと思うの・・・そうすれば若い私の勝ちでしょう」

「でも・・・奥さんが邪魔するかも・・・」

カラは巧に乃花を誘導し・・・不倫相手の妻・白鳥麗子を襲わせる。

白鳥家に侵入した二人は・・・麗子を気絶させる。

しかし・・・怖気づいた乃花はカラを残して逃げ去る。

カラは白鳥麗子を絞殺すると剃毛刃で麗子の顔を切り刻んだ。

カラは手袋をしたまま・・・部屋を出る。

マンションの監視カメラは定刻の自動更新を開始する。

帰宅し・・・妻の死体を発見した白鳥氏は・・・第一発見者として重要参考人となる。

盗撮事件の目撃者として夕貴に証言聴取を受けるために桜中央署にやってきたカラ。

テレビでは・・・「白鳥麗子殺害事件のニュース」が流れていた。

「きっと・・・犯人は女ですね」

「え・・・」

「だって・・・顔を刻むなんて・・・女の怨みでしょう・・・」

「怨み・・・」

「ご主人の愛人が犯人だったりして・・・」

カラの助言により・・・捜査線上に浮上する高野乃花・・・。

乃花の部屋をカラが訪問する。

「私・・・やはり・・・月本先生にまたお願いしようと思うの・・・」

月本圭(要潤)は整形外科医だった。

「今日は乃花ちゃんに・・・私のとっておきのハーブ・ティーを味見してもらいたいの」

「・・・美味しいわ」

「とっておきですもの」

やがて・・・意識が混濁し始める乃花・・・。

「私・・・一度聞きたかったの・・・カラちゃんは・・・なんで整形したのかなって・・・」

「それは・・・美しい方が・・・いろいろと都合がいいからよ」

「わかる・・・わ・・・そ・・・れ・・・」

浴室に乃花を運びこんだカラは浴槽に湯を満たし・・・剃毛刃で彼女をリストカットした。

たちまち咲く紅い花。

スマートホンに遺書を残すと部屋を出るカラ。

(あいしているから・・・ひどいことをしてしまいました・・・ごめんなさい)

マンションの監視カメラは定刻の自動更新を開始する。

容疑者として浮上した乃花の自宅へ急行する二人。

しかし・・・そこにあったのは死体だった。

事件解決に関与して父親に褒められ・・・機嫌がいい夕貴。

「どこへいくの・・・」

「カラちゃんと・・・スカッシュの約束をしているの」

「随分・・・仲良くなったんだね・・・でも・・・なんだか・・・変な感じがするよ」

「何が・・・」

「カラちゃんさ・・・そう・・・最近の事件って・・・みんなカラちゃんが絡んでるような気がして」

「だじゃれか・・・」

スポーツジムのテレビには・・・自殺した殺人犯として乃花の顔写真が映っている。

「彼女・・・整形してますね」

「どうして・・・わかるの」

「わかりますよ・・・だって私も・・・整形してますから・・・」

「へえ・・・そうなんだ」

隠していることを明かすことは親密さを深める。

夕貴はまた一歩、カラに心を許す。

「私の本当の顔を知ったら・・・夕貴さん・・・きっと驚きますよ」

「そんな・・・」

ダブルミーニングである。

夕貴は・・・美しくなかった頃のカラの顔に・・・何か別のものを見出すのかもしれない。

圧倒的な魅力を湛え・・・サイレーンの神話が開闢する。

女優・菜々緒の底知れぬ実力が爆発的に輝くのだった。

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主に泣いてます

ファースト・クラス

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2015年10月21日 (水)

赤ちゃんはリレーのバトンじゃありません(黒木メイサ)可愛いものを置き去りにはできない(臼田あさ美)

人間は運命を受け入れることができなければ苦悶する。

「般若」とは「智恵」のことである。

人生が「虚しいもの」であるという教えである。

人生を虚しいと感じたものに・・・それを受け入れることが「自然であること」を諭すのである。

しかし・・・多くの人間は「虚しさ」から逃れようといろいろとしでかすものだ。

自分の人生が虚しいものであってたまるかとあがくのである。

けれど・・・どのような栄光も一瞬の夢に過ぎない。

生老病死・・・人間はその運命から逃れることはできないのである。

「生」が一瞬であるように「死」もまた一瞬だ。

すべては虚無から生まれ、虚無に帰って行く。

世界は・・・虚無なのである。

で、『デザイナーベイビー~速水刑事、産休前の難事件~・第5回』(NHK総合20151020PM10~)原作・岡井崇、脚本・早船歌江子、演出・岩本仁志を見た。城南大学附属病院・産婦人科においてオリンピックで金メダルを獲得したマラソンランナー・近森優子(安達祐実)が出産した新生児「望」(仮名)は岸田トモ(安藤玉恵)によって誘拐され、院長・峠緑郎(柴俊夫)の息子・峠則孝(柿澤勇人)によって拉致される。父親への憎悪によって逆上した則孝は「望」を橋の上から急流に投げ落としたように見えた。刑事たちは凶事の前に立ちすくむ・・・。

「こちら・・・日村・・・」

奥多摩山中の警視庁捜査一課の日村係長(神保悟志)は現地対策本部の与那国令子管理官(松下由樹)に報告する。

「どうした・・・何があった・・・」

「川に投げ落とされました・・・」

「川に・・・何を・・・」

「誘拐された・・・赤ん坊だと思われます・・・」

「なんだって・・・」

思わずふりかえった与那国管理官の目に母親の近森優子の姿が映る。

近森優子の夫で足の不自由な近森博(池内万作)を制して川面に飛びこむ警視庁捜査一課特殊犯捜査係の土橋福助刑事(渡辺大知)・・・。

「落下物の確保を最優先に・・・犯人を確保」

「二手に分かれます・・・増員を願います」

一瞬の隙をつき・・・身代金を狙う則孝だったが・・・緑郎と出会う。

「お前・・・なんて・・・馬鹿なことを・・・」

「馬鹿だからさ・・・」

山中に逃げ戻る則孝を追跡する日村係長と警察官たち・・・。

しかし・・・何故か則孝は行方をくらます。

「国道方面に追い込んで・・・」

「やってます・・・しかし・・・逃げ足が速い」

「最悪だ・・・」

「望(のぞみ)」と思われる落下物を捜索する警官たちを見つめる近森夫妻。

「もう一度・・・やるしかない」とつぶやく妻に夫は取り乱す。

「もう・・・やめてくれ・・・今は・・・そんなこと言ってる場合じゃない」

「望」について見解の分かれる二人だった・・・。

「望」の出生の秘密が・・・二人の間に溝を作っていた。

別ルートで則孝を追っていた速水悠里刑事(黒木メイサ)は・・・与那国管理官から・・・犯人の父親である峠緑郎の東京への護送を命じられる。

車内で・・・速水刑事が妊婦であることに改めて気がつく峠院長。

「妊娠三十三週というところか・・・」

「わかりますか・・・」

「これでも産婦人科医だ・・・診るだけでわかるさ・・・」

「・・・」

「若い人が妊娠するのは・・・難しいことではない・・・ウチはなかなか授からなくてね・・・」

「・・・」

「妻には体外受精を奨めたが・・・嫌がられた・・・当時はまだ偏見が強くて・・・安全だといくら言っても聞かないんだ・・・結局、七年目に・・・自然に・・・あの子を・・・則孝を・・・」

「・・・」

「私はただ・・・晩婚化が進むこの国で・・・高齢出産を願う人に希望を与えたかっただけだ」

「卵子の若返りですか・・・」

「実際に・・・卵子を若返らせるわけじゃない・・・若い卵子から・・・核を除去して・・・不妊症に悩む患者の核を移植させただけだ・・・高齢者の遺伝子情報を保存したまま・・・若い卵子で受精卵を作る・・・それだけのことだ・・・あくまで不妊治療なのだ」

「しかし・・・あなたは嘘をつきました」

「仕方ないだろう・・・人体に対する核移植技術は・・・日本では認可されていないんだ」

「そのために・・・岸田トモは・・・夫以外の精子による受精という罪悪感に苛まれた・・・そして事件を引き起こした・・・あなたが嘘をつかなければ・・・息子さんだってこんなことをしなくてすんだかもしれないんですよ」

「・・・あの子を医者にしたかった・・・妻もそれを望んでいた・・・しかし、あの子は勉強が苦手だったんだ・・・ついには・・・別荘地に勉強部屋まで作ったのに無駄だった・・・山で遊ぶことに夢中になってしまったと妻は嘆いていたよ・・・」

「山で・・・あの山ですか・・・」

「いや・・・あの山の向こう側だ・・・」

路上に観光用の案内図を発見した速水刑事は車を停車させる。

現在の地図にはないトンネルに注目する速水刑事。

「このトンネルは・・・」

「廃止されたんじゃないか」

「今も残っている可能性は・・・」

「さあ・・・」

速水刑事は寄り道を開始した。

廃墟となったトンネル付近で血痕を発見する速水刑事。

「別荘地は・・・トンネルの向こうですね」

「・・・そうだ」

与那国管理官を呼び出す速水・・・。

「犯人の逃走ルートを発見しました・・・」

「すぐに応援を派遣する」

逃走中に負傷した則孝は山小屋に潜んでいた。

父親の狩猟趣味に閉口した少年が・・・則孝の潜伏場所に逃げ込む。

「・・・」

「おじさん・・・ちょっと怪我をして・・・休んでいるんだ・・・その本・・・懐かしいな」

狩猟よりも読書が好きな少年は「マンガで読む偉人伝・・・サー・アレクサンダー・フレミング」を抱えていた。

「・・・」

「フレミングが・・・ペニシリンを発見したところまで読んだかい」

「黄色ブドウ球菌のコロニーとアオカビのコロニーが出会うところでしょ・・・もう最後まで何回も読んだし・・・」

「医者になりたいのか」

「ううん・・・漫画家・・・」

「なんじゃ・・・そりゃ」

「おじさんは・・・医者になりたかったの・・・それともお医者さん?」

「うん・・・なれなかったけどな・・・医者になりたかった・・・ただのサラリーマン」

そこへ・・・棍棒を持った速水刑事が乗り込む。

少年を人質にしようとした則孝は速水の一撃で確保される。

「なぜ・・・こんなことを・・・」

「親父に・・・思い知らせてやりたかったのさ・・・俺が・・・ひどいできそこないだってことを・・・」

「そんなことをして・・・何の意味があるの・・・」

「・・・」

「あの子は・・・あんたのくだらない復讐のために生まれてきたんじゃないのよ」

「俺は・・・復讐したかった・・・それだけだ・・・」

「あの子と・・・一緒に過ごした時間・・・あなたは・・・何も思わなかったの」

「赤ん坊なんて・・・我儘な生き物だな・・・自分の思うままにならないと・・・ずっと泣きやがる」

「あんただって・・・きっとそうだったんだよ」

「・・・」

そこへ・・・警官隊が突入する。

「おじさん・・・覚えてないの・・・フレミングは商船会社に勤めてから・・・医者になったんだよ」

「・・・」

少年に告げられて則孝は微笑む。

峠院長は力なく頷くのだった。

福助と合流した速水は・・・則孝の潜伏場所に向かう。

紙オムツを発見した速水は匂いを嗅ぐ。

「これ・・・まだ新しい・・・」

「おえっ」

共犯者の病院長秘書・有吉久美(臼田あさ美)が「望」を連れて逃亡していることを確信する速水だった。

置き捨てられた時刻表にこれみよがしの印が残る。

「鉄道で・・・逃走している可能性があります」

絶望的な展開から救われた与那国管理官は・・・立ち回り先の駅に捜査員を派遣する。

院内では・・・院長代理に立候補した須佐見誠二郎教授(渡部篤郎)が「トータルケアプロジェクト」の隠匿のために崎山典彦特別任命教授(渡辺いっけい)の追放を決意していた。

「そこまで・・・私の研究を認めたくないのか」

「病院を守るためだ・・・ここは実験室じゃないんだ」

しかし・・・院長が「実験について告白したこと」によって・・・状況は変化する。

「もう・・・すべてを明らかにするしかなさそうだ・・・」

「勝手だな・・・結局・・・保身だろう・・・あんたたちは・・・自然の摂理に反するとか・・・いつでも腰が引けてる・・・そんなこと言ったら医者なんてみんな同じだろう・・・泣いて諦めるしかなかったことを・・・実現可能にする・・・世界は常に前進していくんだ」

「どんなスピードで進むかが肝心なのだ・・・あなたたちはもっとゆっくりと進むべきだった」

「・・・」

追い詰められた崎山に追い詰められた有吉から着信がある。

「私・・・捨てろって言われたんです・・・でも捨てられなくて・・・もうどうしていいか・・・」

「わかった・・・私の言う通りにしろ・・・悪いようにはしない」

そのやりとりに聞き耳をたてる・・・近森優子の担当医・皆本順(細田善彦)・・・。

そして皆本順に推薦されたらしい・・・ゴッドハンドの胚培養士・山原あけみ(斉藤由貴)・・・。

禁断の核移植に深く関わっていることは明白な二人だった・・・。

捜査員たちは監視カメラの映像で・・・有吉の逃亡経路を把握する。

「赤ちゃんだ・・・赤ちゃんを抱いている」

「赤ん坊は生きている」

改札口を出た有吉は赤ん坊を抱いていた。

しかし・・・早送りした映像で・・・戻ってきた有吉は空手だった。

「なんとしても・・・有吉を確保して」

駅に配備された刑事たちは・・・ついに有吉を確保する。

「赤ん坊はどこだ・・・」

「崎山教授の指定した育児院に預けました・・・」

しかし・・・駆けつけた刑事たちは・・・またしても空のベッドを発見するのだった。

「なんで・・・こうも後手後手なのよ・・・」

与那国管理官は何度も天国と地獄の間を往復するのだった。

与那国の上司(半海一晃)は叱咤する。

「子供が助かれば局長昇進の目もあるが・・・死亡したら管理官止まりだ」

彷徨う新生児「望」・・・。

母親の病室から・・・岸田トモに連れ去られ・・・峠則孝から有吉久美へ・・・そして崎山教授の指定した産院から・・・またしても「彼女」を誰かが奪っていく。

そして・・・手掛かりを握る崎山は病院で転落して流血である。

さらに・・・近森優子の長男で白血病の新(あらた)は山中で負傷し・・・病院のトイレで倒れる。

はたして・・・速水刑事は明日に控える定期健診を受診できるのか・・・。

手に汗握る展開は続くのだった。

ゴールはまだ遠いらしい・・・。

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2015年10月20日 (火)

此処ではない何処かへ(石原さとみ)よくがんばりましたね・・・ご褒美です(山下智久)

仏教はゴータマ・シッダルタの説いた教えであると言われる。

もちろん、それ以前にも「教え」(宗教)は存在しており、シャキャ(釈迦)国の王子だったシッダルタは「教え」を求めて国を捨てたのである。

そういう意味で・・・東京都荒川区熊野前を脱出し、日本人であることから逃避し、ニューヨークでアメリカンとして生きたいと願うヒロインは・・・まさに出家直前のシッダルタと同じと言うことができる。

一方で・・・シッダルタが説いた教えはおよそ二千五百年という時を経て・・・「仏教」となり、日本国を形成するひとつの要素として結実している。

由緒正しい大寺であるらしい「一橋寺」(フィクション)の次期住職候補である主人公は・・・すでに仏の道に身を置き・・・紆余曲折を経て仕上がった「僧侶」としての戒律に縛られて生きている。

有髪であることから・・・浄土真宗系であることが連想される「一橋寺」は有力な檀家を抱えて、ある意味、社会的に強い影響力を持っているらしい。

つまり・・・主人公は一つの有力な集団の指導者として期待されている「王子様」なのである。

すでに「聖域」にいる主人公の憧れは「俗世間」なのである。

世界で一番有名なネズミのいる国の王子様に恋焦れるヒロインは・・・自分の隣近所にいる王子様の求婚に戸惑う。

だって・・・「王子様はお坊さんじゃないでしょう」なのである。

これは・・・そういうお伽噺です。

で、『5→9〜私に恋したお坊さん〜・第2回』(フジテレビ20151019PM9~)原作・相原実貴、脚本・小山正太、演出・平野眞を見た。一橋寺の後継者候補である星川高嶺(山下智久)は葬儀の席で英会話学校ELAの非常勤講師である桜庭潤子(石原さとみ)と運命的な出会いをする。潤子に恋焦がれる高嶺はストーカーとなって一心不乱につきまとい、ついには一心同体を語って不埒な自宅監禁におよぶのだった。

「疲れたでしょう・・・お休みください」

「出してください」

「出せません・・・あなたと一緒にいたいのです」

「困ります」

「私はあなたから離れません」

「あなた・・・婚約者がいるでしょう」

「あなたでなければダメなのです」

「私だって家に帰らないと」

「押し入れに作務衣があるので寝間着になります」

「ここでは眠れません」

「布団は自分で敷いてください」

「音楽が無いと眠れません」

「私がお経を読んで差し上げます」

「こわいわっ」

すでに息のあった漫才を展開する運命の二人だった。

会話がかみあわないことこそが夫婦和合の秘訣なのである。

・・・おいっ。

見事に本懐を遂げかかる高嶺だったが・・・そこに二人の恋路を邪魔する女魔王・星川ひばり(加賀まりこ)が現れる。ひばりは高嶺の祖母だったが・・・仏の教えに背き、由緒ある寺の格式に執着しているために・・・庶民の娘である潤子を次期住職の妻とすることには大反対なのである。

祖母を恐れる高嶺は「意外と快適な監禁生活」に満足しかかった潤子を解放するのだった。

「この道をお逃げください・・・追手は私が引き受けます」

「正義の味方かっ」

近所であるために徒歩で帰宅する潤子・・・。

純朴な熊野前商店街の人々は作務衣姿の潤子を生温かく見守るのだった。

帰宅した潤子を待っていたのは・・・先に到着した高嶺と・・・仲睦まじく談笑する母・恵子(戸田恵子)と妹・寧々(恒松祐里)である。

「お風呂温いよ・・・あ・・・これは娘さんをくださいってやつ?」

個人タクシーの運転手である父・満(上島竜兵)は正装としての喪服に着替える始末である。

桜庭家は・・・由緒正しい寺の住職の妻の座に潤子が座ることを玉の輿と考えている。

「ちがうっ」

しかし、遠方まで謝罪に行き、雨に降られ、高嶺のお迎えの車でドライブ後に監禁され、入浴後に帰宅した潤子は・・・空腹だった。

潤子のお腹は鳴り、高嶺のお腹も鳴る。

「気が合うわねえ」と母は夕餉の支度をするのだった。

「高嶺さん、唐揚げ食べて」

「フライドチキンですけど」

「なんなのよ」

「こんな・・・にぎやかな食事は・・・初めてで・・・美味しいです」

「高嶺君・・・」

「お義母さんと呼んでいいのよ」

「お義兄さん・・・」

「よしてよっ」

そこへ・・・来襲する魔王ひばり。

「わかりました・・・明日から・・・花嫁修業をしてもらいましょう」

「え」

「七日間の修行に耐えられたら・・・花嫁候補と認めます」

「ええ」

「明日からどうぞ」

「えええ」

花嫁修業と言う名の・・・御寺暮らしである。

「お願いします」

「嫌です」

「わかりました・・・七日間の修行をしてくだされば・・・もう、あなたにつきまといません」

「・・・」

午前五時から午前九時まで・・・一橋寺で花嫁修業。

午前九時~正午まで自由。

正午から午後五時まで出勤。

午後五時から午後九時まで講師として授業。

午後九時から翌朝午前五時まで自由。

「いつ眠ればいいのよ」

「空いてる時間を使ってご自由に・・・」

「仮眠かっ」

しかし、一橋寺の修行僧たちは潤子の私物を寺に強制移送するのだった。

花嫁修業の朝は早い。

炊事、繕いもの、雑巾がけ・・・すべてにおいて上手くできない潤子である。

朝餉では・・・沢庵を音を立てて噛み、味噌汁を音を立ててすする潤子。

「お静かに・・・」

「だって・・・沢庵ですよ」

潤子は・・・静かな食事の意味を知るのだった。

これが・・・高嶺の住む世界なのである。

出勤した潤子は・・・正社員講師の山渕百絵(高梨臨)との英会話でリフレッシュする。

「アメリカン・・・」

しかし・・・教室には高嶺が待っている。

「・・・ジャパニーズ」

掃除中に負傷した潤子の傷を案じる高嶺。

そこへ・・・生徒の「渋谷王子」こと高校生の蜂屋蓮司(長妻怜央)と女装高校生の里中由希(髙田彪我)が現れ「イチャイチャする二人を見る」というお約束(くりかえしのギャグ)がある。

一方・・・百絵はなにやら秘密を握られ人気講師の木村アーサー(速水もこみち)に口説かれるのだった。

潤子の憧れの人であるニューヨーク帰りのジェネラルマネージャー・清宮真言(田中圭)は特別枠の「正社員採用試験」に潤子をエントリーさせる。

採用枠は一名だが・・・採用されたら即日ニューヨーク勤務なのである。

つまり・・・ニューヨークの人に日本語を教えるのか?

一週間後の試験を目指し・・・潤子の日常はよりハードになるのであった。

花嫁修業一日目を終えて披露困憊の潤子だった。

潤子の監禁部屋には花に添えた高嶺のメッセージがある。

「お勤め御苦労様でした・・・私とあなたは一蓮托生です」

一蓮托生とは死後、極楽浄土で・・・同じ蓮華の上に生まれようという・・・仏教徒同志の誓いである。

もちろん・・・そんなこと知ったこっちゃない潤子だった。

夜食を運んできた高嶺は・・・疲れて机の前で眠りこんだ潤子を見て激しく懸想する。

お姫様抱っこで布団に潤子を運び、横たえた高嶺は・・・愛しい女の唇を奪いかかるのであった。

高嶺が継承するまでのつなぎの雇われ住職である寺田光栄(小野武彦)は高嶺の味方であるが・・・「僧侶である前に人としていけないこと」として高嶺を咎める。

仕方なく・・・唇強奪を断念する高嶺だった。

小坊主でニンジンの苦手な那覇三休(寺田心)は「まだまだ煩悩にまみれておりますな」と高嶺を諭すのだった・・・。

潤子の出勤のために車で送迎する高嶺。

注意・・・運転中は靴を履いています。

「言わなければいけないことがあります」

「なんですか・・・」

「眠っているあなたに接吻しようとしてしまいました」

「げっ」

「・・・」

「黙っていればわからないのに・・・」

「あなたに隠し事はしたくないのです」

「隠してよっ」

花嫁修業二日目・・・三日目と・・・屈託のない潤子の人柄に魅了されていく・・・お寺の僧侶たち・・・。

魔王・ひばりは苛立ち・・・潤子のライバルとして・・・有力な檀家であり名門である足利家の娘・香織(吉本実憂)を花嫁修業に参加させるのだった。

「足利香織と申します」

花嫁として完璧な香織だったが・・・恋敵としてはピンとこない潤子である。

なにしろ・・・高嶺と結婚することは・・・潤子の望みでもなんでもないのだった。

姉の勤務するELAを通りかかった寧々は由希にパーティーに誘われる。

「渋谷王子」の「彼女」に誘われてうっとりとなる寧々だった。

そのパーティー当日・・・。

「腐れ縁」と言う言葉とはうらはらに・・・密かに潤子を想っているらしいエリート商社マンの三嶋聡(古川雄輝)は・・・潤子に嫉妬するELA事務員の毛利まさこ(紗栄子)から「彼女は僧侶と同棲している」というショッキングな事実を告げられ動揺する。

「お坊さんと一緒に暮らしてるって本当か・・・君は何がしたいんだ」

突然、問いつめられ驚く潤子だった。

つまり・・・まさこ→三嶋→潤子である。

その頃・・・慣れぬパーティー会場で「悪い金髪」に騙された寧々は・・・「怪しいカラオケルーム」に連れ込まれてしまうのだった。

「お姉ちゃん・・・助けて・・・」

「どこにいるの」

「シロクマさんが目印です」

慌てて、英会話学校を出た潤子。

出待ちをしていた高嶺はその後を追う。

「やめてよ・・・」

「まあまあ・・・いいじゃないか」

お約束で寧々の貞操の危機である。

駆けつけた潤子は妹の窮地を救おうとするが・・・。

「やめなさい」

「姉妹で・・・いいじゃないか」

ピンチとなった桜庭姉妹を高嶺が救おうとするが・・・。

「彼女に触れてはいけません」

「なんだ・・・ふざけんな」

乱暴狼藉である。

潤子を庇い、身を盾にして専守防衛する高嶺。

専守防衛は基本的に痛みに耐える必要があります。

つまり・・・自衛隊とは・・・国民の代わりに血を流す職業です。

その事実を身をもって示す高嶺。

そこへ・・・米軍ではなくて「渋谷王子」と「彼女」が救援に駆けつける。

「おまえら・・・渋谷出禁だろう・・・」

「ちくしょう・・・おぼえてやがれ・・・」

どうやら・・・「渋谷王子」は渋谷界隈のヤンキー界の頂点に立っているらしい。

「バカ・・・こんな危ないことをして」

妹の頬を打ち叱る姉だった。

一橋寺に戻った潤子と高嶺。

「あなたも・・・危険だったのですよ」

「・・・わかっています」

もちろん・・・修羅場を抜けて潤子と高嶺の距離は縮まっているのだった。

じわじわと・・・男と女の間に流れる川を渡りはじめる潤子なのである。

「あの花・・・なんていう花ですか」

「花麒麟・・・花言葉は・・・逆境に耐えて・・・です」

「・・・」

「kiss me quiick(早くキスしてよ)」

「え」

「花麒麟の別名ですよ・・・花が唇の形に見えるから・・・」

「たらこ唇ですね・・・」

「茨の冠とも言われます・・・キリストが磔刑になった時に・・・かぶったのはハナキリンだったとも言われています」

「仏教徒のくせに・・・何なの・・・そのエピソード」

そして・・・採用試験当日。

潤子は・・・僧侶への授業風景を面白おかしく話し・・・審査員たちの心をとらえる。

「hang in there」・・・「ここは辛抱だ」・・・その線を越えれば栄光が待っている。

しかし・・・清宮ジェネラルマネージャーは一本の電話に表情を曇らせる。

「残念だったな・・・不合格だった」

「そうですか・・・」

「しかし・・・チャンスはまたある」

「はい」

落胆した潤子の姿に・・・心を痛める清宮だった。

つまり・・・清宮→潤子なのである。

潤子・・・モテモテじゃないかっ。

花嫁修業最終日・・・。

魔王ひばりは花嫁失格の烙印を押すのだった。

「残念ですが・・・やはり住職の妻としては認められません」

「私も無理だと思いました・・・」

「話が違うじゃないですか」

「花嫁としては香織さんの方が相応しいに決まってます」

「・・・」

いつもの公園で・・・一人・・・傷心に耐える潤子。

そこへ・・・高嶺がやってくる。

「よく・・・がんばりましたね」

「一週間がんばったら・・・つきまとわないと言ったじゃないですか・・・」

「お誕生日のご褒美を届けに来たのです」

「この間・・・もらった花で充分です」

「嘘を言ってはいけません」

「嘘って・・・」

「私の前で心を隠すことはないのですよ・・・」

「・・・」

あの日壊れたハイヒールが十足は買える高級なハイヒールを取り出す高嶺。

「JIMMY CHOO・・・?」

心を奪われる潤子だった。

下僕のように・・・潤子の足にハイヒールを履かせる高嶺。

どんなプレーだよっ。

靴はこれ以上なく・・・ぴったりサイズなのだった。

ストーカーの力のなせる術である。

「何故・・・やさしくしてくれるの」

「あなたが好きだから・・・」

「はじめて・・・好きっていいましたね・・・」

男と女の間に流れる川の中で濡れる潤子だった。

「あなたの心が癒えるまで・・・今夜はずっと側にいて差し上げます」

「なぜ・・・さりげなく・・・上から目線なのよっ」

監禁部屋に潤子を連れ帰る高嶺・・・。

「結局・・・ここですか」

「他に思いつかなかったので・・・」

三休や僧侶たちもやってきて和む潤子。

夜も更けて・・・二人の時間である。

「よくがんばりました・・・」

「でも・・・ダメでした」

「そんなことはありません・・・」

「採用試験の話ですよ」

「あなたが・・・一番でした・・・私のことを話して盛り上がったそうですね」

「どうして・・・そのことを・・・」

「檀家に・・・ELAの重役の方がいるのです・・・その人にお願いして・・・あなたを不合格にしていただきました・・・あなたと離れるわけにはいかないのです」

「ええええええええええええええええ」

高嶺の告白に潤った身体が瞬間冷凍される潤子である。

関連するキッドのブログ→第1話のレビュー

59002ごっこガーデン。自立した純愛のための温室セット。

エリ恋人のピンチに絶対駆けつける・・・それはストーカーだけが持つ必殺テクニックなのでス~。市民の安全を守るために常に監視を怠らないヒーローならではの苦労が忍ばれねのでス~。いつでも見守っていてくれる安心感・・・恐ろしいとか不気味とか気持ち悪いと言っては罰があたりますよ~。高嶺Pの美しい瞳にずっと見つめられている・・・想像するだけで三倍美人になるような気がします。視線を意識することが・・・美しさの秘訣なのでス~・・・じいや遺伝子操作しすぎですよ~・・・マンモスフラワーかっ・・・なになに恋の成就を願って悪魔に魂を売るには花麒麟のトゲがかかせないと・・・どんな黒魔法ですかっ

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2015年10月19日 (月)

人民ノ凶害ヲ予防シ安寧ヲ保全スルニアリ・・・明治八年行政警察規則布告(優香)

神奈川県令だった陸奥宗光は「地租改正」を提唱し、地租改正局長に転身する。

地租改正は新政府の財源確保のために絞れるところから絞る重税策だった。

幕藩体制ですでに搾取の構造が成立しており、新政府はこれを改良して利用するしかなかった。

土地所有を人民に認めるという開放政策でありながら、搾取階級である地主を育成し、小作人を極貧に導くのである。

幕府時代より過酷な重税を農民に課し、鉄道・通信を整備し、官営工場を建設し、都市の近代化と軍備の拡張をはかる。

当然のこととして農民一揆は各地で勃発した。

正規軍を士族の反乱用に準備した新政府は・・・農民一揆の対応策として行政警察を展開する。

全国に配置された巡査たちは・・・極貧にあえぐ農民たちの不穏な気配を監視し、厳しく取り締まるのである。

まあ・・・基本的に政府と人民の関係は・・・常にこんなものなのである。

だが・・・そうしなければ日本の近代化など達成されるはずもなかったのだった。

で、『燃ゆ・第42回』(NHK総合20151018PM8~)脚本・小松江里子、演出・渡邊良雄を見た。例によってシナリオに沿ったレビューはikasama4様を推奨します。今回は土曜の夜の天使・掟上今日子(新垣結衣)の描き下ろしをなされたので大河イラストはお休みです。まあ・・・せっかくの大御所登場も・・・架空の人物では・・・興が乗らない・・・のかもしれませんので・・・あくまでマイペースでお願いします。ドラマの楽しみ方も人それぞれなので・・・少なくとも当事者の皆さんはこれが面白いと思ってやっていると信じたい・・・。けれど・・・ある程度、お茶の間の期待にも答えてもらいたいですよねえ。大河ドラマの基本は見知らぬ時代に生きた人間を描くことで見知らぬ世界を感じさせることだと考えます。つまり・・・登場人物たちは世界を描く道具であるべき・・・。それなのにこの作品では・・・主人公と周辺の人々を描くために世界が道具になっている。そのあげく・・・主人公の業績をでっちあげるために・・・その他の人々までが架空の人間に・・・。なんじゃ・・・そりゃあ・・・でございます。歴史に名を残した人も人間なので・・・毀誉褒貶はつきものですが・・・歴史上の人物を単純明快な悪党にすることが憚れるという意図があまりにもくっきりと浮き彫りでございます。だったらせめて実在の人物を複雑に描いてもらいたいと考えます。現代人から見れば愚かな行為がいかに苦渋の果てのことだったか・・・そういうものを描いたドラマが見たい・・・本年度はこのまま・・・それを痛切に感じる一年になるのでしょうかねえ・・・。

Hanamoe42明治九年(1976年)、官僚主義の大久保利通と軍人主義の西郷隆盛の決裂は決定的なものとなっていた。尊皇攘夷の志士たちにとって・・・文明開化を外国人教師が指導する新体制は悪夢そのものである。征韓論を掲げた西郷の意図するところは軍事力の行使からの軍事政権による独裁を目指すものであった。しかし、大久保はそれを成すものが旧士族ではなく、国民的軍隊であると考えていた。どちらが軍事的に優位性を持つのか・・・決着を着けるのはいつの時代も軍事衝突なのである。倒幕戦争によって・・・それを知る二人は・・・結局、そうするしかなかったのだ。松平直方の上野前橋藩は前橋県となり、大河内松平輝声の高崎藩は高崎県となった。土岐頼知の沼田藩は沼田県。秋元礼朝の館林藩は館林県に。新島襄を生んだ板倉勝殷の安中藩は安中県。奥平松平忠恕の小幡藩は小幡県。酒井忠彰の伊勢崎藩は伊勢崎県。鷹司松平信謹の吉井藩は吉井県。前田利昭の七日市藩は七日市県に・・・。それぞれの元藩主は上京し、各藩は統合されて群馬県となる。長州藩の下級武士にすぎなかった楫取素彦は群馬県令として・・・大出世を遂げたのだった。星野長太郎・新井領一郎という豪農出身の実業家を起用した楫取である。官営模範工場として建設された富岡製糸場はすで操業から四年、前年にお雇い外国人が帰国し、尾高惇忠所長の元でこの年、大幅な黒字に転じる。巨大化した工場は民営化の目途が立たず、明治二十四年の三井家への払い下げまで官営が続く。ちなみに広岡浅子の生家である出水(小石川)三井家もまた明治以後、三井財閥を構成する三井の一族である。この年、浅子は長女・亀子を出産している。

(人手が足りない・・・)

山口県のくのいち諜報組織を指揮する久坂美和は義兄の楫取素彦が群馬県令になったことにより、組織改編に追われていた。

旧藩知事の毛利元徳公爵家のために・・・主だった忍びやくのいちは東京に移住している。

山口県の役人を務める兄の杉民治は目付け系の忍びを支配していたが・・・すでに忍びのものたちは高齢化の兆しをみせている。

政府の布告による行政制度としての警察官は・・・密偵としては役不足だった。

地主階級の台頭によって小作人は疲弊しており・・・一揆の気配は絶えずあったが・・・監視もままならない状況である。

そもそも・・・誰のために忍び働きをするか・・・という問題が生じている。

杉の一族も・・・楫取素彦のように大出世したものから・・・松下村塾を再興し、不平士族の溜まり場と化している玉木家まで・・・立場や意見を異にしている。

忍びは乱においては戦働きをし、治においては見張りをするものである。

しかし・・・幕藩体制が消えた今・・・治の行方は定かではなかった。

(もはや・・・しのびやくのいちの時代ではないのかもしれぬ)

美和は維新後の動乱の後・・・抜け忍が続出した頃から・・・その思いに囚われていた。

「美和様・・・」

庭から忍びが呼びかける。

伊藤博文の隠し子の一人で幼名を猿二郎といった少年忍者である。

今は伊藤佐助を名乗っている。

今、美和の子飼いの忍びといえるのは佐助一人だった。

父親は政府の高官として大出世しているわけであるが・・・育ての親でもある美和を慕い・・・佐助は忠実な忍びとして仕えているのだった。

「明倫館の様子はどうじゃ・・・」

「人数が集まっています・・・どうやら・・・決起は避けられぬようです」

「・・・」

「玉木家や杉家の方々も・・・戦支度をしています」

「やはり・・・なるようにしかならぬな・・・」

美和は・・・甥たちに・・・それとなく意見したのだが・・・流血の定めを変えることはできなかった。兄・吉田松陰の定めた未来は・・・呪いのようにこの世を呪縛している。

すでに・・・県内に入った政府軍の密偵たちは・・・電信を使って危機を政府に報告していた。

一方で・・・義にこだわる男たちは昔ながらの回状で決起を促していた。

「佐助・・・お前も好きにしていいのだぞ・・・」

「・・・」

「この騒ぎが終わったら・・・私は帝都東京に参るつもりじゃ・・・」

「・・・」

「銀姫様につけた薺や蘿蔔が・・・岩倉卿のくのいちたちに・・・手こずっているようなのでな」

「新政府は・・・華族の没落を画策しているのですね」

「俸禄はすくないほど・・・いいからのう・・・」

「口減らしですか・・・」

「一緒に帝都に参るか」

「美和様の行くところ・・・どこにでもついて参ります」

「・・・」

美和は忍びの師として育てた佐助に人として情を感じていた。

くのいちとしては失格である。

しかし・・・時代は・・・それを許すのだった。

(東京で一働きしたら・・・次は群馬か・・・これは手がかかりそうな・・・)

一県を治めるための諜報組織の形成は大事業だった。

しかし、姉の寿とともに先発したくのいちたちがすでに工作を開始している。

成功の手ごたえはあった。

兄の夢見た・・・富国強兵の時代が始まろうとしている。

(やはり・・・どんな時代になっても・・・忍びはなくならぬか・・・)

美和は佐助を台所に招く。

握り飯を振る舞うつもりである。

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2015年10月18日 (日)

恋する潜水探偵(新垣結衣)今日子さんと呼んでもいいですか(岡田将生)

変な髪型で変な眼鏡をかけてもかわいいのだから・・・完全防備すぎるダイバースーツのような水着でもサービスなのである。

どんだけ・・・ガッキーに甘いんだよ。

まあ・・・酸いも甘いも味わうのが大人だ。

割り切れない現実を適当に処理していくのが有能な人間というものだからな。

親の因果が子に報い・・・謝罪謝罪で終わった20世紀の日本人の如くだな。

「今日」という日を生きるために「忘却」できたらどんなにお気楽だろう・・・ということだ。

「従軍慰安婦に謝れ」と言われても「南京大虐殺に謝れ」と言われても「記憶にございません」で済ませればいいんだよな。

どんな因果にどんな応報があるのか・・・本当は誰も知らないのだ。

謝罪するのは敗戦したから。

敗戦したのは戦争したから。

謝罪しないためには戦争しなければよかった・・・というのは簡単だ。

南沙諸島をめぐって米中が冷戦を展開すれば・・・恐ろしい未来が待っているかもしれない。

しかし・・・世界の敵・・・最後の敗戦国からの脱出のために・・・それは一つの機会かもしれないのだ。

もちろん・・・世界が幸福であるために・・・この国が不幸であり続けるという選択肢もあります。

で、『掟上今日子の備忘録・第2回』(日本テレビ20151017PM9~)原作・西尾維新、脚本・野木亜紀子、演出・佐藤東弥を見た。氷の海から古代人が残した臓器に石を詰めたトナカイが発見された時・・・それを宗教的儀式の名残と感じるか・・・保存食確保のための冷凍保存の一種と考えるかで・・・人間性が分かれるだろう。あるいは・・・この世に神があることを信じるか・・・信じないか・・・という話である。人の「死」をめぐり紡がれる物語は・・・時に神秘的である。とりとめない・・・人の心というものを自分と同じように理解してくれる存在は有り難い。罪を悔いるのが・・・自己保身のためか・・・ただの自己表現なのか・・・その見極めに何の意味があるのか。だが・・・時に・・・人は無意味を愛するのだ。

喫茶店「サンドグラス」で・・・隠舘厄介(岡田将生)は愚痴をこぼしていた。

「また失職してしまいました」

探偵斡旋業も営む「サンドグラス」のオーナー・絆井法郎(及川光博)は気のない応対をする。

「例の研究所を・・・」

「あそこはとっくに解雇されて・・・害虫駆除の仕事をしていたんです」

「へえ」

「だけど・・・宇名木という気難しい顧客がいて・・・室内作業を許してくれなかったのです・・・ノルマが達成できずに解雇されてしまいました」

「・・・ああ」

「サンドグラス」のウエイトレス・幕間まくる(内田理央)は片道30分の砂時計をひっくり返す。

「入店から30分経過です」

「そろそろ・・・ご注文していただかないと・・・」

「僕専用砂時計ですかっ」

「カスタムスーツを着こなすのがエースパイロットの宿命だよ」

「ガンダムネタですか」

「今回のオチがね・・・」

「オチ?」

「それはそうと・・・今日子ちゃんとはどうなの?」

「どうもこうも・・・僕の不運を利用して車道を渡ろうとするし・・・」

「でも・・・嫌いな人なら・・・手をつないだりしないんじゃないかしら・・・」

「え」

掟上今日子(新垣結衣)登場である。

その腕には常に「私は掟上今日子、探偵、眠るとリセットされる」と自分自身への置き手紙が記された忘却探偵なのである。

起床後、文言が確実に目に入るように全裸で睡眠していることが妄想できる・・・おいっ。

厄介は今日子の言葉に希望を感じる。

つまり・・・今日子は・・・厄介を嫌いではないらしい。

「はじめまして・・・掟上今日子と申します」

名刺(二枚目)を渡されて落胆する厄介だった。

そこへ・・・水泳選手で・・・スイミングクラブのインストラクターである鯨井留可(堀井新太)が現れる。

「くじらなのか・・・いるかなのか」

「いるかはくじらの一種ですよ」

「大型のいるかがくじらだよね」

「そうなの・・・」

鯨井留可は探偵に人探しをしてもらいたいと述べる。

鯨井のライバルである宇名木九五(篤海)が・・・自宅の浴室でドライヤーによる感電死を疑われる変死体で発見された。

発見者は鯨井本人である。

警察は・・・鯨井による殺害の可能性を疑っているのだった。

「でも・・・僕にはアリバイが・・・宇名木の死亡時刻に・・・僕は素敵な女性と一緒だったのです」

「その人を探してもらいたいと・・・」

「ええ・・・銀髪の眼鏡っ子で・・・名前は今日子さん・・・」

「ああ・・・その人は・・・すぐ見つかりますが・・・アリバイの証人にはなれません」

「え」

しかし・・・忘却探偵は・・・事件の解決に乗り出すのだった。

捜査中の刑事たちも上司とコネのある今日子のために協力を促されるのである。

「もう・・・一人・・・容疑者がいます・・・害虫駆除業者で・・・被害者とトラブルがあったらしい」

「え」

「おやおや・・・ついに殺人犯ですか」

「ひでぶ」

アリバイの立証が困難だった場合にそなえて・・・真犯人としてキープされる厄介だった。

しかし・・・厄介は・・・現場近くで鯨井を目撃していた。

(事件当日の行程)

午後一時 厄介は鯨井のスニーカーを目撃。

午後二時 今日子はナンパされて鯨井とテラスでお茶会。

午後三時 宇名木が感電死

午後四時 今日子と鯨井は解散。

午後五時 鯨井が宇名木の死体を発見。

もちろん・・・事件当日の今日子の記憶は忘却されている。

今日子は当日の会話の内容を鯨井に問う。

「小説家の須永昼兵衛の話をしました・・・僕は一番好きな小説の話を・・・」

「改心刑/須永昼兵衛」(フィクション)は古い短編集の一作だった。

悪の限りをつくした犯罪者が・・・精神改造手術で悪意を取り除かれ、社会復帰を果たす。

善意の塊となった男は他人に騙され、すべてを失い、野たれ死にするという結末である。

今日子は・・・最近の自分の行動で謎だった部分が解明されたと感じる。

今日子はその日の午後五時に・・・「改心刑/須永昼兵衛」が収録された文庫本(フィクション)を購入しているのである。

それは・・・鯨井とのお茶会の結果であると推測できる。

「好きな人の読んだ本を・・・読んでみたくなる・・・そういうことってありますよね」

今日子の鯨井に対する仄かな恋心を察し、せつない気持ちになる厄介である。

鯨井と事件現場を訪れた今日子は・・・宇名木が死んだ浴槽に身を沈める。

その首をそっと絞め・・・「気絶させておいて・・・時限装置を仕掛け・・・アリバイ作りのためにナンパに出た・・・という可能性もありますね」とつぶやく鯨井。

「ええ・・・基本的に・・・すべての事件は穴だらけですから」

鯨井の勤務するプールを急襲する今日子。

「私と水泳で勝負して私が勝ったら・・・告白してください」

「え・・・僕は・・・元日本代表ですよ」

「サービスです」

「だったら・・・もっと露出を・・・」

「駆け引きです」

「・・・」

油性だと書き換えが大変だし水性は濡れると消えちゃうしな。

無呼吸潜水泳法で・・・鯨井の虚をつく今日子。

「ずるいですよ」

「死ぬかと思いました・・・」

鯨井は今日子を背後からそっと抱きしめた。

今日子はすでに真実を見抜いている。

「警察が来た時・・・あなたは裸足でしたね」

「・・・」

「でも・・・厄介さんはあなたが白い靴下をはいていたと証言しています」

「・・・」

「つまり・・・浴槽から・・・水があふれていて・・・あなたの靴下は濡れてしまった」

「・・・」

「浴槽があふれていたのは・・・水が流れっぱなしだったから・・・つまり・・・ドライヤーを浴槽の縁に置いた簡単な時限装置・・・しかし・・・宇名木さんからは薬物も外傷も発見されなかった・・・つまり・・・自殺・・・あなたがしたのは・・・それを他殺にみせかけるために・・・蛇口を停めたことだけでしょう・・・あなたは彼に呼び出されて最期の頼みを聞き、それから私をナンパしてアリバイを作り・・・彼の死後・・・現場に戻ったのです・・・誰が彼を殺したのか・・・永遠の謎にするために・・・」

「僕たちは・・・ライバルでした・・・愛し合っていたと言ってもいいでしょう・・・しかし・・・僕は彼にはずっと勝てなかったのです。勝負の世界に生きるものは・・・時にどんな手段も選ばずにいられない心を生みだします。僕は魔が差した・・・。彼がドーピングをしているという・・・密告をしたのです。確かに・・・彼は禁止薬物を服用していた。しかし・・・それは表示外成分で・・・彼の疑惑はグレー・ゾーンでした。しかし・・・結局、彼はピークにおいて出場停止処分となった・・・。僕は・・・彼のいない国内で・・・勝利しましたが・・・世界では敗北した・・・彼なら・・・世界で勝利していたのかもしれません。僕はライバルというパートナーを裏切ったのです。敗北者となった彼は・・・自殺を決意しました。しかし・・・自分で自分を殺したことを世間に知られたくなかったのです。それが彼の最後のプライドだったのです。彼に協力を求められた時に・・・僕は断ることができなかった・・・罪の償いをしなければならなかったのです」

「意味がわからない」と戸惑う刑事。

「懺悔ですよ・・・完全犯罪を許さなかった探偵に対しての犯人のセオリーというか・・・礼儀です・・・とやかく言うのは無粋です」

「・・・」

見つめ合う・・・犯人と探偵。

「また・・・あなたとは・・・話がしてみたいな」

「喜んで」

鯨井は自殺幇助の容疑で逮捕された。

容疑の晴れた厄介は今日子に礼を言う。

「また・・・あなたに助けられた・・」

「・・・」

「一つ、お願いをしてもいいですか」

「何でしょう」

「今日子さんと呼んでもよろしいでしょうか」

「構いませんよ」

「やった・・・今日子さん」

「はい」

「今日子さん、今日子さん・・・マチルダさ~ん」

「オチか」

「一日だけの恋の成就・・・」

「まあ・・・恋なんて・・・一日あれば・・・成就も破局も可能だという考え方もありますよね」

潜入捜査担当の也川塗(有岡大貴)は情熱が迸る厄介をクールに見つめる。

今日子の一日が終わる。

翌朝・・・すべては・・・リセットされてしまうのだった。

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2015年10月17日 (土)

コウノドリ(綾野剛)いつかきっと(松岡茉優)母子心中未遂キターッ!(清水富美加)お尻にテニスボールはじめました(臼田あさ美)

さて・・・金曜日の第一弾は結構、強力だったな。

ここまで・・・。

(月)「変態ラブコメ」

(火)「医療ミステリ」

(水)(仮)

(木)(仮)

(金)「医療ヒューマン」

(土)「おとぼけミステリ」

(日)「それでも大河」

これを決めてしまうと・・・残り二枠になってしまう・・・。

なにしろ・・・医療か、ミステリか、医療ミステリになってしまうという・・・秋ドラマである。

なるべく・・・気分を変えたいよねえ。

で、『コウノドリ・第1回』(TBSテレビ20151016PM10~)原作・鈴ノ木ユウ、脚本・山本むつみ、演出・土井裕泰を見た。人生の始りは混沌である。精子と卵子は融合し分裂を開始する。増殖して増殖して増殖しまくって変化して変化して変化しまくってすべての準備を整えた個体は世界へと出発する。そこには残酷で美しい光景が広がっている。刺激を受け入れそれは誰かになるための最初の反応を示す。ここはどこなの・・・私は誰なの。

やがてそれは世界と自分を分離するだろう。

大切なのは・・・たとえ世界が残酷でも自分が美しいとは限らないということだ。

しかし、時にそれは何もかも忘れて無心になりたいと願う。

コウノドリに揺られて旅をしていた頃のように。

素晴らしいインターネットの世界と接続されたカフェで・・・時は満ちる。

残酷な世界に押し出されてあがきながらここにたどり着いた矢野夏希(矢崎由紗→清水富美加)は一体化した別の個体の運命に翻弄されて呻く。

「大丈夫ですか」

トラブルを嫌う従業員が・・・数パーセントの善意を示しながら問う。

「・・・救急車を呼んでください」

痛烈な痛みが・・・彼女の絶望と・・・一時的な決意を凌駕した。

朦朧とした意識の中で彼女はそれに語りかける。

「ここに来ても・・・いいことなんかないよ」

それは無言である。

それはまだ・・・ただ蠢くだけの生き物なのだから。

「聖ペルソナ総合医療センター」の医師・鴻鳥サクラ(高村佳偉人→綾野剛)はジャズピアニストのBabyでもある。サクラは産婦人科医である前にピアニストであり、それ以前は施設で暮らす孤児だった過去を持つ。サクラにとってピアノ演奏は生きる喜びであり、医師であることは生きるための職業と言える。しかし・・・ピアノを演奏することよりも医師としての使命を果たすことが最優先されるという自覚がある。

病院に呼び出されたサクラはライブ・ハウスでの実演を中断し、病院に向かう。

大澤院長(浅野和之)は医師がピアニストであることを秘匿するようにサクラに命じている。経営者として・・・問題が発生した時に・・・専門分野に専心していないことを落ち度として指摘されることを危惧するからである。しかし・・・サクラの個人情報を知っている院長は・・・サクラがピアニストであることは許容する。

人が職業だけで生きているわけではないことを知っているからである。

死線を彷徨う矢野夏希と胎児は盥回しにされている。

健康保険に加入しておらず、未受診の妊婦を受け入れる病院が見つからないのである。

研修医の下屋加江(松岡茉優)は受け入れ要請への応答に屈していた。

「・・・母子手帳もないんですか・・・」

サクラの同僚医師・四宮春樹(星野源)は帝王切開中だった。

「手術室は使用中だし・・・受け入れるのは無理だ」

「でも・・・」

「まさか・・・まさかお前・・・未受診妊婦を受け入れるつもりじゃないだろうな?」

「でも・・・破水がシャーッ」

「受け入れましょう・・・」

「コウノドリ先生・・・」

サクラは「野良妊婦」を拾った。

搬送された母子は危険な状態だった。

「足が出ている」

「え」

「臍帯が胎児の気道を圧迫して呼吸困難にしている」

「ええ」

「手をつっこんで押し戻せ」

「えええ」

ストレッチャーに乗せられた矢野夏希の股間から膣内に腕を挿入し、下屋は産室に急行する。

その様子を妻・小早川頼子(臼田あさ美)の出産に立ち会うために来院していた夫・小早川俊也(要潤)は唖然として見ていた。

陣痛に襲われ苦悶する矢野夏希・・・。

経験不足の研修医・下屋はうろたえる。

そこへ・・・本日付けで着任した助産師の小松留美子(吉田羊)が参戦する。

ドリカムのメンバーが三人だった頃を知っているベテランで・・・サクラや四宮の研修医時代を知っている小松は強力な援軍だった。

「あなたは・・・手術室と連絡をとって・・・」

第一のコウノトリが虚空を渡り去って行く。

四宮は帝王切開の施術を終えていた。

「矢野夏希さん・・・赤ちゃんを取り出すために・・・お腹を切りますよ・・・いいですか」

「・・・はい・・・」

激痛に耐えながら矢野夏希はサクラの問いに答えていた。

手術室が空き、新たなる患者が運び込まれる。

麻酔科医の船越(豊本明長)は残留する。

「麻酔をしないとますいでしょう・・・なんちゃって」

「おう・・・シット!」

「一分で出しましょう」

サクラは腕のいい産婦人科医だった。

第二のコウノトリが虚空を渡り去って行く。

響き渡る産声・・・。

「娘さんですよ」

矢野夏希は胎児と対面し・・・そして目をそらす。

新生児特定集中治療室(NICU)の今橋貴之医師(大森南朋)は受け入れ準備をする。

研修医の白川(坂口健太郎)は知ったような口をきくタイプである。

「未受診妊婦なんて・・・まずいんじゃないですかね・・・感染症とか」

「生まれくるものは・・・善悪では測れません」

「・・・」

第三のコウノトリは躊躇していた。

小早川夫妻の胎児は・・・出発の支度に手間取っている。

長いお産なのである。

「他の赤ちゃんに追い越されてばかりだ」とぼやく小早川氏。

「赤ちゃんには赤ちゃんの都合があるのよ」と医療チーム。

「膣口が開いて来ましたよ」

「テニスボールをお尻の穴にあてて・・・」

「はい」

「うーっ」と苦悶する小早川夫人。

戦いは24時間続く。

医療(メディカル)ソーシャルワーカーの向井祥子(江口のりこ)が召集される。

「健康保険にも入っていないようですし・・・住所不定で・・・生活費捻出のために短期バイトをしていたようです・・・新生児の父親・・・自身の両親などの家族については・・・質問に答えてくれません・・・」

「つまり・・・ホームレスで無一文か・・・」

「引き続き・・・支援について相談してみます」

「最悪の親をもって・・・生まれて来たな」

「・・・」

心があるのかないのか・・・微妙な会話をする医療チーム。

プロであるために・・・理想ではなく現実的に対処するのだった。

下屋は・・・母親としての自覚を促そうと・・・新生児との対面を矢野夏希に語りかける。

「車椅子も用意できますよ」

「無理よ・・・痛くて動けない」

「・・・」

そして・・・矢野夏希は脱走した。

「産み逃げか・・・」

「捜してみます」

「それは・・・医者の仕事じゃないだろう」

「だけど・・・母子ともに・・・健康な状態で退院させるのは医者の仕事だ」

「・・・」

仄かに対立するサクラと四宮だった。

ベンチに座る矢野夏希を捕獲するサクラ。

「帰りましょう・・・」

「ほっといて・・・あなたの仕事は終わったでしょう・・・私は生んだし・・・」

「あなただってまだ危険な状態ですよ」

「いいの・・・」

「赤ちゃんは・・・あなたを待ってます」

「医者になんか・・・わからない・・・恵まれて育って・・・幸せなあんたになんか・・・」

「・・・」

「あたしのことなんか・・・わからない」

矢野夏希の脳裏に飛来する人生の記憶。

夏希に父親の記憶はない。

母親は「あんたなんか生まなければよかった」が口癖だった。

育児放棄され・・・義務教育もまともに受けられず・・・十代から売春婦になった。

貢いだ男は夏希の妊娠を知ると暴言を残して去ってった。

「風俗嬢の子供なんか・・・だれが父親がわかるもんかよ」

夏希に対していつも残酷だった世界。

「・・・わかりません・・・だけど・・・あなたは・・・赤ちゃんを見た時・・・微笑んだ・・・うれしかったでしょう・・・」

「・・・」

「私・・・いつか・・・きっと・・・赤ちゃんにひどいことを・・・」

「あなたにとって・・・世界はひどいものかもしれない・・・でも・・・あなたがひどいことをする必要はないんですよ」

「・・・」

小早川頼子は胎児の肩がつかえる肩甲難産だった。

パニックになる研修医・下屋。

「カイザー(帝王切開)・・・カイザーにしましょう」

「落ちついて」と助産師・小松。

そこへ・・・サクラが帰還する。

「体位を変えましょう・・・赤ちゃんを回転させます」

「いきんで」

「押して」

「ああああああああ」

第三のコウノトリが虚空を渡り去って行く。

矢野夏希は新生児室にやってきた。

今橋医師は・・・新生児の保育器を見えやすい位置に運ぶ。

「・・・子供の名前は・・・こころにしたいんですが」

「こころちゃんか・・・いい名前です」

「この子は・・・幸せになれるでしょうか」

「人より・・・苦労するかもしれません・・・だけど・・・人より幸せになれるかもしれません・・・未来のことは誰にもわからない・・・」

そこへ・・・小早川夫妻がやってくる。

小屋は二組の親子の境遇の違いを案じる。

二人の胎児は並んでいる。

夫に愛された妻が微笑む。

幸福感に包まれた夫はフレンドリーにつぶやく。

「うちは・・・男の子なんです・・・あなたのところは・・・娘さんですか・・・あなたに似てかわいいですね・・・」

「・・・」

夫婦は新生児室に入って行く。

輝く矢野夏希の顔。

「聞きましたか・・・ウチの子・・・かわいいって・・・かわいいって言われました」

サクラは微笑む。

どんなに貧しさに打たれて荒んでいても親バカにはなれるのだ。

「まず・・・あなたの生活を立て直しましょう」

ケースワーカー・向井に連れられて矢野夏希は退院する。

研修医・下屋は見送りに出る。

「矢野さん・・・いつか・・・こころちゃんを・・・」

言葉を飲み込む下屋。

振り返った矢野夏希は深く深く頭を下げた。

矢野こころは施設に送られた。

四宮は眠り続ける謎の幼女・つぼみに絵本の読み聞かせをする。

四宮を変えた来歴の暗示。

サクラは過去を回想する。

「税金泥棒」

「施設の子と遊ぶなってママが言うよ」

「・・・」

心なき言葉の暴力と・・・それに対する反抗。

迎えに来た寮母・小野田景子(綾戸智恵)に幼いサクラは問う。

「僕は捨て子なの」

「あんたのお母ちゃんは死んだのよ」

「・・・」

「でも・・・それは仕方のないこと・・・気にすることはない」

景子はサクラにピアノを教えた。

世界は残酷でも・・・美しさを秘めている。

「転ばないように気をつけて」

夫(小栗旬)は外出中の妻を気遣った。

「大丈夫よ」

妻(川村ゆき)は端末に朗らかに答える。

そこへファイナル・デッドカーが暴走して来た。

禍々しい衝突音。

救急救命科医の加瀬(平山祐介)が産婦人科にやってくる。

「まもなく・・・頭部外傷の患者が来る・・・妊娠している・・・」

産婦人科チームはどよめく・・・。

第四のコウノトリは来週まで待たされるのだった。

キャスティングが絶妙だな。

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She

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2015年10月16日 (金)

幽霊大好き杉下さん(水谷豊)其処は地獄であるべきかさもなくば天国(反町隆史)

ダークナイトこと甲斐享(成宮寛貴)が懲戒免職となり・・・無期停職の処分を受けた杉下右京(水谷豊)の帰還である。

秋ドラマのミステリー色は強いわけだが・・・もはや老舗の風格漂う・・・これは別格なのだろう。

法治国家とは何か・・・ここを問うてくるドラマである。

もちろん・・・法は秩序を維持するための道具だが・・・当然の如く、それは既得権益を保護する性格を持つ。

反体制を標榜するものは基本的に敵なのである。

権力者と一般市民と犯罪者。

誰の権利を守るべきか・・・警察官たちは時に苦悩する。

場合によってかなり反権力的である主人公は・・・警察権力を行使する・・・矛盾した存在だ。

自らの正義に基づき激昂する杉下右京・・・それは愚かな人間の象徴なのである。

で、『相棒 season14 ・第1回』(テレピ朝日20151014PM8~)脚本・輿水泰弘、演出・和泉聖治を見た。刑務所は法務省矯正局の管轄する施設である。西多摩刑務所(フィクション)も法務省の管轄下ということになる。刑務所内で発生した殺人事件の捜査にあたり・・・法務省のキャリア官僚であり、人事交流で警視庁警務部付に出向中の冠城亘(反町隆史)が容疑者となった受刑者の美倉(小柳心)の取調に立ち会うことが・・・東京都公安委員会が管理する警視庁の刑事たちとの「合同捜査」と言う名目になる由縁である。

西多摩刑務所は邪悪な思想に支配されている。

受刑者が更生するためには・・・刑務官がより人道的になるべきだという受刑者・梅津源平(井之上隆志)の教えを信じる梅津教が蔓延しているのである。

信者となった受刑者は歯ブラシを加工した鋭利物で胸に・・・×印を刻印するという自傷行為に及び、梅津教の信奉者であることを表明するのだった。

その元凶となったのは・・・増渕刑務官(阿部丈二)を中心とした過激な懲罰遂行である。

しかし・・・快適な刑務所というものが・・・更生には相応しくても懲罰として相応しい場所なのかどうか・・・意見が分かれるところである。

愛するものを殺されたものが・・・殺人犯が快適な場所で過ごした後・・・社会復帰することをどう思うかという話である。

やがて・・・梅津は獄中で病死する。

そして・・・刑務官の田代伊久夫(栩原楽人)が作業中の受刑者である美倉に殺害されるという事件が発生するのだった。

「警察を呼んでくれ」

美倉の希望に従い捜査一課の刑事たちと冠城が事情を聴取する。

「なぜ・・・殺した」

「田代が梅津さんを殺したから・・・仇をとったのです」

「誰が・・・そんなことを・・・お前に言った」

「梅津さんの幽霊から・・・聞きました」

一同は・・・茫然とした。

停職中の杉下右京が東京に戻り、「花の里」の月本幸子(鈴木杏樹)に顔を見せた時、警視庁刑事部鑑識課の米沢(六角精児)は「幽霊による殺人教唆」について話す。

なにしろ・・・右京は・・・「幽霊」に深い関心を持っているのだった。

実質的に廃された「特命係」は法務省からの出向者である冠城の個室となっていた。

古巣に顔を出した右京は・・・冠城と出会うのだった。

「あなたが・・・噂の・・・魔物ですか」

「はいぃ?」

二人は・・・西多摩刑務所に潜む亡霊狩りに乗り出すのである。

梅津源平は強盗殺人を犯し、無期懲役で服役中だった。

被害者は梅津を虐待した過去のある義父である。

梅津の胸の傷は義父による折檻の名残だったという。

梅津に個人的な興味を持った教戒師の僧侶・慈光(大和田獏)は面会を重ね、野獣のような男を・・・教化する。

その結果、梅津は六法全書を読みこなし、「源氏物語」を原文で読むほどの教養を身につける。

梅津の反抗的態度は・・・理論武装されたのである。

「刑務官の無法ないじめに耐えることが・・・更生の妨げになる」

梅津の言葉は・・・無法者の語る正論であるがゆえに一部の人間の心を支配する力を持つに至ったのである。

「つまり・・・カリスマ性を持ったのですな」

「心の弱いものほど・・・他人の言動に影響されやすいですから」

「昨日・・・安保法制に反対するデモを主導する学生たちのドキュメンタリーを見ましたよ。音大受験に失敗した受験生が・・・自分を選ばなかった体制に反発し、復讐していく心理が見事に描かれていました」

「それでも生きて行かなければなりませんからねえ・・・1970年の三波春夫ではなくて1968年の加藤登紀子の心情で」

「両親も兄も・・・安保法制に賛成という家族の中で・・・反体制的言動に熱中するしか・・・生きる術がなくなっていく・・・実に無惨な姿でしたね」

「しかし・・・そういう人間が生まれるのが社会というものではありませんか」

「善人なほもて往生をとぐ、いはんや悪人をや・・・ですか」

「有髪の僧侶がブームなんですな」

「あなたは・・・更生施設に置いて刑務官の理不尽な暴力に反旗を翻す梅津に・・・受刑者として我慢することを諭さなかったのですか・・・矯正とはつまるところ・・・理不尽な社会に折り合う人格形成ということでしょう」

「私は・・・好きにしなさいと言いました・・・個性を抑圧することは・・・好ましいことではありません」

「なるほど・・・殺人行為も・・・個性の発露ということですか」

「・・・」

右京の洞察力に魅了されつつ・・・冠城は独自の捜査を展開する。

右京をムチとして・・・自分はアメとなり・・・刑務官たちの重い口を開かせることを目論むのだった。

冠城が危険人物である杉下右京と行動することを危ぶむ・・・法務省の上司である日下部彌彦(榎木孝明)・・・。

息子・享の事件により警察庁長官官房付に降格された甲斐峯秋(石坂浩二)は・・・右京の復職の機会を窺う。

上司たちの思惑を越え・・・暴走を始める新たなる相棒たち・・・。

受刑者への懲罰につながる動静小票に注目した右京は・・・殺された田代刑務官の発行数が極端に少ないことから・・・田代刑務官が受刑者に寛容なタイプだったことを推測する。

逆に発行数の多い伊達刑務官に事情を聴取する右京。

「私が・・・勤務に忠実だからといって・・・田代刑務官がそうではなかったというつもりはありません」

「そういう人がいるのではないのですか」

「ここだけの話・・・増渕刑務官は・・・田代刑務官に批判的でした・・・お分かりでしょう・・・ここにいるのは・・・人畜無害な一般人ではない・・・犯罪を犯した経歴のあるものたちなのです。そういう人間に対するのは・・・恐ろしいことでもあるのですよ」

やがて・・・梅津信者たちが暴動を起こし・・・増渕の身柄を要求するという事件が発生する。

捜査一課の芹沢刑事(山中崇史)を身代わりに仕立てた二人は難を逃れ・・・事件の真相にたどり着く。

磐城所長(川島一平)は梅津の遺物を踏み絵させることで・・・梅津信者を割り出していた。

増渕刑務官は隠れ信者だった美倉を見逃し、美倉と同室の受刑者たちを利用し、就寝中の美倉に「田代に殺された」という梅津の亡霊としての言葉を吹き込んだのである。

美倉は・・・増渕のトリックに誘導されて・・・田代を殺害したのだった。

受刑者たちの噂から真相を知った伊達は・・・梅津信者たちに・・・「増渕が美倉を騙して田代を殺させた」という真相を流す。

刑務官でありながら梅津信者だった図書貸出担当だった坂崎(真田幹也)は詩集を使った通信手段で暴動を手引きしたのだった。

「なぜ・・・余計なことをしたのです」

「増渕を助けたことですか」

「あんな奴・・・殺されてしまえばよかった」

「・・・」

「私だって・・・受刑者たちを更生させる刑務官でありたかったんだ」

「自分の正義に従って・・・理想の刑務官になることもできたはずだ」と冠城。

「そして・・・田代さんのように殺されれば良かったと?」

「・・・」

殺人教唆の罪で増渕刑務官は逮捕される。

「あんた・・・味方じゃなかったのか」と冠城を詰る増渕。

「私は・・・正義の味方だ・・・」

「ポイズン・・・」

右京は真の黒幕である・・・僧侶・慈光を追及する。

「梅津は自殺だったのでしょう・・・心臓発作が起きた時に・・・あえて・・・助けを呼ばなかったのはそのためです・・・しかし、梅津にとっての性の教科書だった源氏物語に・・・暗号で遺書が残されていた・・・田代さんはそれに気が付き・・・あなたを責めたはずだ・・・」

「そうです・・・私は・・・梅津を正しく導いたつもりだった・・・しかし、刑務所の秩序を乱すほどの怪物に成長した梅津が恐ろしくなったのです。私がフランケンシュタイン博士なら・・・梅津は私が生みだしたモンスターでした・・・」

「そのたとえは・・・一般的とは言えないでしょうね」

「ええ・・・」

「あなたは・・・本当は梅津になんと言ったのです」

「お前は失敗作だと・・・」

「苦界から自分を救ってくれた第二の父親に見捨てられ・・・梅津は・・・死を覚悟したのですね」

「・・・」

「自分は安全な場所にいて・・・命がけの理想を他人に強いる・・・そういう人を・・・何と言うのでしょう。私なら・・・こう言います・・・この卑怯者!」

右京の痛烈な言葉にうなだれる住職だった。

こうして・・・男だらけの世界で新たなる相棒たちの冒険が幕を開けるのだった。

やはり・・・このドラマはテレビ朝日の良心のようだ。

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2015年10月15日 (木)

正義感が強すぎる(西島秀俊)君が欲しい(伊藤英明)刑事だから(伊藤淳史)

これは消える可能性があるね。

あるなあ・・・。

面白いんだけどな・・・。

どうしても嫌な点があるよな。

神奈川県港中央署の刑事課長が標準語でしゃべらないことか・・・。

それだ。

どうして・・・どうして・・・こんなことするのかな。

それは・・・関西での視聴率が欲しいんじゃないか。

アホだな。

アホだよな。

アホでんがな・・・。

で、『無痛〜診える眼〜・第2回』(フジテレビ20151014PM10~)原作・久坂部羊、脚本・香坂隆史、演出・佐藤祐市を見た。土橋章宏が「超高速!参勤交代」の脚本で第37回城戸賞入選(2011年)を受賞した時の準入賞の脚本家である。ちなみに「デザイナーベイビー」の早船歌江子は第35回の準入賞者だ。入選でなくても・・・生きていけるわけである。大切なのは才能と努力そして運だな。

医師・為頼英介(西島秀俊)は「白神メディカルセンター」にやってきた。

通り魔事件で負傷した看護師・井上和枝(浅田美代子)が退院するのである。

井上は為頼の亡妻・倫子(相築あきこ)の姉だった。

為頼は街の診療所を倫子と二人で運営しているのである。

病室に・・・宝塚女優のように美しい院長秘書の横井清美(宮本真希)が現れる。

美人秘書は・・・院長の白神陽児(伊藤英明)が為頼に院内を見学してもらいたい意向があることを伝える。

為頼が了承すると白神院長自身が院内をガイドするのだった。

最新のテクノロジーが完備された院内。

待合室に・・・患者の数が少ないことに気がつく為頼。

「病院で待つのは・・・気分のいいものではないでしょう・・・そうならないように運営しているのです」

「・・・」

「当院では・・・サービスを料金によって差別化しています」

「富裕層中心ということですか」

「そうではありません・・・豊かな人から多くいただいて・・・そうでない人のために還元するということです・・・医療サービスそのものの向上はそうしないと実現しないと考えたのです」

「・・・なぜ・・・私にそんなことを・・・」

「あなたが・・・素晴らしいトリアージ能力をお持ちだと感じたから・・・」

「・・・」

そこへ・・・臨床心理士の高島菜見子(石橋杏奈)が通りかかる。

高島は・・・為頼と面識があった。

その時、高島の携帯端末に着信がある。

ロビーの上の階から・・・謎の少女・南サトミ(浜辺美波)が一同を見下ろしている。

診療所に戻った二人・・・井上は「自分で作った料理が一番美味しい」と豆腐を切るが・・・あまり料理上手とは言えない手さばきだった。

そこに腹痛を訴える娘(吉澤梨里花)を連れて三十代の母親(荻野友里)が来院する。

為頼は「神の診察眼」でたちまち診断を下す。

「痛がったでしょう・・・どうして、もっと早く連れてこなかったのです」

「あの・・・治療費は・・・いくらくらいでしょうか」

「・・・」

「お金がないんです」

「支払いは・・・ある時払いで結構です」

貧しい母子が去ると・・・井上が呟く。

「収入があるために生活保護が受けられなくて・・・保険料が払えない・・・そういうケースは増えているらしいわよ」

「・・・」

その頃・・・素晴らしいインターネットの世界で診断学の権威である久留米実(津嘉山正種)の存在を知った港中央警察署の刑事・早瀬順一郎巡査部長(伊藤淳史)は久留米の終の棲家を訪ねていた。

「診るだけで・・・病気がわかる・・・なんてことが本当にあるんですか」

「本来・・・医者とはそういうものだ・・・」

「為頼という医者は・・・犯罪者まで・・・見抜きました」

「犯因症か・・・」

「ご存じなのですか・・・」

「彼は・・・私が知る限り・・・最も優秀な診断者だ・・・」

「・・・」

憎悪のエネルギーが過多になった状態を為頼は診ることができるのだ。

所轄管内で変死体が発見される。

アパートの一室で山田輝久(ジジ・ぶぅ)という男が胸に包丁を刺して死んでいた。

目撃者の証言で・・・金の入った封筒をもった不審な男が現場から立ち去ったことが判明する。

翌日、山田輝久の知り合いだった工藤一尊(有薗芳記)が署に出頭する。

「私が・・・山田を殺しました」

しかし・・・刑事の直感で・・・早瀬刑事は・・・工藤の自白に疑わしさを感じる。

工藤刑事は後輩の太田刑事(馬場徹)とともに・・・周辺の捜査を開始するのだった。

一方、白神院長は・・・為頼の診療所を訪問する。

「去年・・・私の病院で死亡した患者は・・・全員・・・あなたの診療所から・・・紹介された方々です」

「・・・患者に求められて・・・紹介状を書きました」

「つまり・・・治る見込みのない人たちを治すのは無駄だと判断したということですか」

「いいえ・・・無駄な治療はせずに・・・最後の時に寄り添いたいと考えたのです」

「あくまで・・・治療を望む患者だけをご紹介いただいた・・・ということですか」

「・・・」

「おかげで・・・当院は末期医療で儲けさせていただきました」

「それを言うために・・・」

「いいえ・・・私にも・・・あなたと同じ・・・診断力があるのです」

「・・・」

「私はその能力を使って・・・理想の医療というものを目指しています」

「理想の医療・・・」

「私の目指すところは・・・患者を苦痛から解放することです」

「それは・・・無理な話ではないでしょうか」

「痛みを緩和する医療は・・・まだまだ未開拓の分野です・・・そのためにも・・・研究に費やす資金を得なければなりません」

「・・・」

「私は・・・まもなく新しい病院を開業する予定です・・・あなたには院長をお願いしたい」

「え」

「よく考えて・・・お答えください」

病を透視する二人の医師。

二人の何が共通して・・・何が相違するのか。

今はまだ不透明である。

おそらく・・・そこには善意と悪意の交差点が存在すると思われる。

苦痛からの解放・・・それは「死」を意味するからである。

早瀬刑事は・・・為頼医師に捜査協力を依頼する。

それは・・・被害者と加害者の診断だった。

被害者の山田は・・・肺気腫を患っていた。呼吸困難や嚥下障害の苦痛から鬱病を発症し、体重減少が顕著だった。

加害者とされる工藤は重症筋無力症を発症していた。

「おそらく・・・山田さんは・・・自殺・・・そして、あなたに犯人になることを推奨した・・・容疑者となれば・・・警察病院で・・・治療を受けられると・・・」

医師として為頼は取調室で工藤に語りかける。

「友人の自殺を利用して・・・無料で・・・病気を治す気だったのか・・・」

「・・・どうすりゃいいんだよ・・・金もないし・・・」

「お前・・・封筒に入った金・・・山田さんの母親に届けたんだよな・・・」

「あいつが・・・あの身体で・・・一生懸命貯めた金なんだよ・・・」

「安心しろ・・・自殺幇助・・・あるいは・・・保護責任者遺棄罪で・・・起訴してやる」

「・・・え・・・」

「・・・」

「なんでもいいや・・・俺はもう・・・疲れたんだよ」

富めるものにも貧しいものにも分け隔てなく病は発現するのだった。

惨めな被害者と同じように惨めな加害者・・・やり場のない怒りを発する早瀬刑事。

「君は・・・犯罪を憎みすぎる・・・」

為頼は・・・早瀬が犯因症を発症していることを知っている。

「俺は刑事なんだよ・・・仕方ないだろう・・・」

為頼は言葉を捜す。

「君は・・・正義感が強すぎるんだ」

謎の清掃員・イバラ(中村蒼)は手のひらに裂傷を負い・・・居合わせた高島臨床心理士は手当をする。

イバラと密会する白神はイバラの包帯に気がつく。

「誰だ・・・誰が手当てをした」

白神の闇が・・・ひっそりと花開く。

痛みからの解放・・・恐怖からの解放・・・ドラゴンヘッドの行きつく先は・・・虚無なのである。

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2015年10月14日 (水)

妊婦にはむかない職業(黒木メイサ)卵子は老化します(斉藤由貴)

スピンオフで男たちはサプライズについて話している。

主人公の出産の祝い方についてのミーティングである。

捜査二課では・・・出産を花火で祝ったらしい。

捜査一課では・・・なにもしないことがサプライズだとベテラン刑事は言う。

捜査に全力を傾注していることが・・・最高の祝意ではないか・・・と。

新人刑事は言う。

プレゼントをしないことが・・・最高の愛の表現だ・・・ですんだら楽ですよね。

会議室は・・・沈黙で支配される。

そんな時間があるのなら・・・捜査しろ・・・。

・・・と、邪悪な一般市民は考えるのだった。

で、『デザイナーベイビー~速水刑事、産休前の難事件~・第4回』(NHK総合20151013PM10~)原作・岡井崇、脚本・早船歌江子、演出・長沼誠を見た。神の支配する世界では・・・人間のあらゆる行為は神に対する反逆性を持っている。たとえば・・・医学は神の定めた寿命に対する反逆である。人間は生きるべき時を生き、死ぬべき時に死ぬ。それが神の摂理だからである。しかし、多くの人間は神など信じない。だから、ガンさえも克服してしまうのである。神が定めた出産に適した卵子を有する女性の年齢が18歳~35歳だったとしても・・・40歳でも生めるようにするべきだと主張するのである。そういう人間を悪魔は素晴らしいと考える。不可能に挑戦することは美しいことなのだから。

完全な人間を生産するために・・・人体実験を繰り返した古の医師のように・・・。

新生児誘拐犯の岸田トモ(安藤玉恵)から新生児すり替えによって・・・・オリンビックで金メダルを獲得したマラソンランナー・近森優子(安達祐実)の娘「望」(仮名)を奪ったのは・・・城南大学附属病院の院長・峠緑郎(柴俊夫)の息子・峠則孝(柿澤勇人)だった。

エリートの父親に対する何らかの感情のもつれが・・・則孝の心を歪めてしまったらしい。

おそらく・・・院長の息子という来歴に惹かれて交際を開始したと邪推される病院長秘書の有吉久美(臼田あさ美)は計算外の「男の行動」に舌うちしつつ・・・情に流され・・・共犯者となっていく。

「望」の泣き声を乗せて・・・則孝と久美は夜の街を「破滅」に向かってドライブする。

息子は父親に「望」の身代金として一千万円を要求した。

表の顔と裏の顔を持つ不妊症治療のための「トータルケアプロジェクト」を推進する峠院長と崎山典彦特別任命教授(渡辺いっけい)は密談をする。

「なんとかして・・・息子を説得して・・・新生児はとりかえす」

「お金は・・・」

「明日・・・定時になれば金庫が開く」

そこへ・・・警視庁捜査一課の日村係長(神保悟志)と速水悠里刑事(黒木メイサ)が現れる。

すでに・・・誘拐の容疑者として謎の男の「画像」が確保されていた。

「この男性に心当たりはありませんか」

「知らんね」

日村は院長を信じ・・・速水は疑った。

日村は誘拐事件の容疑者の特定を急いでいたのである。

しかし・・・速水は事件の裏に「トータルケアプロジェクト」の闇が潜んでいると考えている。

「トータルケアプロジェクト」の主要人物が二人・・・顔を揃えていることが匂うのだった。

速水は鼻の利く刑事なのである。

だが・・・誘拐事件の真相はもう少し単純だった。

父親のような医師になることが叶わずに・・・薬品会社に勤務している則孝は・・・自堕落な性格となり、会社の金を横領していた。

会社で監査が行われることになり・・・使いこんだ金の穴埋めのために大金が必要となったのである。

死産した岸田トモが乳幼児を抱いて病院から出てくるのを目撃した則孝はトモを追跡し・・・金になるモノを入手したのだった。

「望」は泣いている。

「泣きやませろ」

「無理よ・・・私、赤ちゃんなんか・・・抱いたこともないのに」

「頼むよ・・・他に頼れるやつなんかいないんだから」

「どうして・・・そんな大金が必要なの」

「会社に監査が入るんだよ」

「まさか・・・横領・・・」

「人聞きの悪いこと言うなよ・・・ちょっと会社の金を借りただけだ・・・」

「こんなことをせずに・・・お父様に・・・相談すれば」

「あの親父が俺のために金なんか・・・出すかよ・・・こうするしかないんだ」

久美は・・・人生の陥穽に嵌ったことを悟った。

須佐見誠二郎教授(渡部篤郎)は峠院長を追及していた。

「何者かが・・・秘匿されていた研究ノートを届けてくれました」

「何のことだ」

「まさか・・・そこまでやっているとは思いませんでしたよ」

本来・・・一人であるべき教授が二人いる・・・産婦人科の現状改革について・・・須佐見にも戦う理由があるらしい。

「トータルケアプロジェクト」が裏の顔・・・生命倫理学的問題を孕んでいるらしい・・・を持つことを須佐見は穏便に利用する気らしい。

峠院長が切羽詰まっていることを須佐見は知らない。

﨑山特任教授は・・・秘密のロッカーから・・・資料が持ちされていることに気がつく。

院内には・・・「トータルケアプロジェクト」に対する反逆者がいるのである。

「脅迫のための望の写真」を速水と係長のコンビは・・・近森優子と夫の博(池内万作)に見せる。

「背景に映っているスカーフなどに見覚えがありませんか」

「ないわ・・・一体、どうなっているの・・・犯人はなぜ・・・何も言ってこないの」

「・・・」

その時、近森夫妻の長男が発熱し、聴取は中断される。

「すみません・・・妻は・・・まだ・・・体調が万全ではないので・・・」

「お察しします・・・」

係長は社交辞令を述べる。

しかし・・・速水刑事の嗅覚は・・・「望」にも「秘密」があることを嗅ぎ取っている。

「誘拐されたのも・・・長男との電話中だったな・・・」

係長は・・・何気なく言葉を漏らす。

明らかに・・・近森夫妻の子供たち・・・病弱な兄と・・・誘拐された妹・・・には何らかの秘密の関係があることが推察されるのだが・・・係長の直感は鈍っていた。

須佐見教授と速水刑事の起こした騒ぎにより・・・院内では誘拐事件に須佐見教授が関与していたという噂が広がっていた。

須佐見教授を庇う柊奈智医師(伊藤裕子)・・・。

ギネ」ではカイザー(帝王切開)の柊医師(藤原紀香)と鉗子分娩の須佐見教授(國村隼)は好敵手だったのだ。

伊藤裕子にも一回くらいカイザーを披露してもらいたいぞ・・・。

近森優子は担当医の皆本順(細田善彦)を問いつめる。

「知っていることを教えて・・・」

「噂では・・・」

仕方なく、須佐見黒幕説をもらす皆本医師だった。

皆本医師・・・悪者ではなく・・・小心者なのか・・・。

激怒した・・・近森は須佐見を急襲する。

「あんたなの・・・あんたが・・・誘拐を・・・」

近森はペチペチと須佐見を叩くのだった。

「違います・・・誤解です」

見当はずれの読みで須佐見をマークしているベテランの西室刑事(手塚とおる)は茫然とするが・・・速水刑事は仲裁に入る。

しかし、激昂した近森は速水を突き飛ばす。

床に倒れる妊婦・・・。

「あ・・・」

近森も須佐見も西室も・・・お茶の間も蒼ざめる。

「大丈夫ですよね・・・ここ・・・病院だから・・・」

顔を顰めながら・・・速水は身重の体を起こすのだった。

須佐見は診察して・・・名医ぶりを披露する。

「とりあえず・・・母子ともに・・・問題ないようです」

「よかった・・・」

そこへ・・・駆けつける速水の夫である下地浩介(山崎樹範)・・・。

「なんで・・・」

「私が呼びました・・・患者の容体を家族の皆さんに伝えるのも医師の仕事です」

「・・・」

「大丈夫ですよ」と夫に告げる須佐見。

「そうですか・・・でも・・・この人・・・頑丈だから・・・そんなに心配していませんよ」

「父さん・・・なんてことを・・・」

父よりも義理の母親の身を案ずる雄介(若山耀人)だった。

その正確は亡き母親譲りらしい。

雄介と速水刑事のお腹の子の間にもそれなり複雑な関係があるわけである。

しかし・・・そういう関係が良好なものになるのか・・・劣悪なものになるのかは・・・ケース・バイ・ケースという話なのである。

呑気な康介と繊細な雄介の関係はそれなりに良好であり・・・エリートの峠院長と落ちこぼれの則孝の関係が最悪になっているように・・・。

速水刑事は「トータルケアプロジェクト」の闇についてなんらかの情報を持っていると思われる胚培養士の山原あけみ(斉藤由貴)を待ち伏せる。

「旦那の連れ子と仲がいいの」

「映画にいきました」

あけみは・・・他人のプライベートを知るのが趣味だった・・・レクター博士である。

「映画はどんな」

「ゾンビです」

「まあ・・・なんで」

「趣味なんじゃないですか」

「なるほど・・・その辺は掘り下げないのね・・・実母じゃないから」

「・・・それより・・・岸田夫妻は・・・奥さんの方に問題があったんですよね」

「年齢的な問題よ・・・つまり加齢による卵子の老化」

「・・・それはどうしようもないのでは」

「卵子を若返らせる方法はないことはないのよ・・・」

「・・・」

「でも・・・今の日本ではそれは許されていない」

「デザイナー・・・ベイビー・・・ですか」

「・・・」

ネーミングの問題でそこはかとなく親を怨んでいる新人の土橋福助刑事(渡辺大知)は監視カメラの映像から容疑者の車がレンタカーであることを特定する。

そして・・・周辺のレンタカー会社の情報で容疑者が峠則孝であることが判明するのだった。

「お手柄じゃないの・・・」

「えへへ・・・」

一方・・・身代金を持った峠院長は・・・受け渡し場所に向かうところだった。

追跡を開始する妊婦と新人の刑事コンビ。

院長と息子の則孝の思惑はすれ違っていた。

身代金の受け渡しを円滑に進めるために秘書である愛人の久美を指名する則孝。

しかし・・・息子が容疑者である以上、第三者を介したくない則孝は自ら出向くのである。

父親なら当然そうするであろうことを・・・予測できない息子・・・。

明らかに・・・愚かな息子なのだった。

そして・・・父親が自分の思い通りに動かないことを・・・自分に対する愛情の欠如と思いこむ。

息子の心はこじれているのだった。

「なんで・・・あんたが・・・自分でくるんだよ」

「コドモはどこだ・・・」

「まず・・・金だ」

「こんなことをしなくても・・・金が必要なら・・・」

「嘘をつけ・・・あんたが・・・できそこないの息子に金なんかだすもんか・・・」

「・・・」

「あんたには・・・自分の子供より・・・研究が大切なんだろう・・・デザイナーベイビーか・・・理想の子供がそんなに・・・欲しいのか」

「馬鹿な・・・何を言ってるんだ・・・トータルケアプロジェクトはあくまで不妊治療だ・・・」

「嘘つけ・・・まあいいや・・・金よこしな・・・」

成り行きを見守っていた二人の刑事・・・。

しかし・・・新人が思わず音を立てる。

「ち」

金を残し、逃走する則孝・・・。

またもや・・・容疑者の逃走を許す・・・福ちゃんだった。

「犯人に逃げられました・・・」

「また・・・お前か」

院長の息子が誘拐犯であることは・・・周知の事実となった。

則孝は・・・身代金の運び屋として近森博を指名してきたのである。

須佐見と﨑山・・・二人の教授は対峙する。

「院長は・・・破滅だ」

「だが・・・私はあきらめない・・・プロジェクトは存続させる・・・」

身代金受け渡しの場所として犯人が指定して来たのは奥多摩の山中だった。

「なぜ・・・」と疑問を感じる速水。

「受け渡し時間は夕暮れだ・・・夜陰に乗じて逃走するつもりだろう」と係長。

「完璧に包囲せよ」

陣頭指揮をとる与那国令子管理官(松下由樹)・・・。

しかし・・・捜査陣の配置が完了する前に・・・山中に木霊する赤ん坊の泣き声・・・。

「犯人は・・・自暴自棄になっているかも・・・」

速水は直感で・・・惨事を予見する。

なし崩し的に・・・山中に入る捜査陣。

指定された場所には「思い知れ」とメッセージが残されている。

山中の川に架かった高架橋の上に白い布包みを持った則孝が現れる。

「やめろ・・・」

誰もが絶叫した時・・・。

則孝は・・・それを・・・投げおろす。

水しぶきをあげ・・・それは・・・水中に沈んだ。

「あああああああああああ」

木霊する父親の悲痛な叫び。

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2015年10月13日 (火)

5→9~私に恋したお坊さん~(石原さとみ)おめでとうございます(山下智久)

「ドラゴン桜」(2005年)から10年か・・・。

そこかっ。

今季は「下町ロケット」に阿部寛、「掟上今日子の備忘録」にガッキー、そしてここに山Pと健在ぶりを示しているぞ。

ついでに紗栄子ことサエコもいるぞ。

「5時から9時まで」は働きすぎだろう・・・ブラック企業かよっ。

違うだろう・・・。

元ネタの映画「9時から5時まで(9 to 5)」(1980年)を知る人も少なくなってるんじゃないか。

あれから・・・35年か・・・。

つまり・・・アフター5っていうことだよな。

長い夜の間のアレコレということか。

出勤直前までかよ。

朝チュンを越えて・・・な。

で、『5→9〜私に恋したお坊さん〜・第1回』(フジテレビ20151012PM9~)原作・相原実貴、脚本・小山正太、演出・平野眞を見た。原作はレディのためのコミックだが・・・初回を見る限り・・・かなりお茶の間向けマイルド仕上げになっているようだ。なにしろ・・・月9なので・・・Sex and the Cityなことをストレートにやられても困惑するからな。ちょっとエロティックなコメディーくらいにしてもらいたい。まあ・・・冒険したい気持ちはわかるけどね。

とある・・・告別式・・・。

近所の誼で会葬したらしい桜庭家の人々。

正座の苦手な長女の桜庭潤子(石原さとみ)は躓いて、香炉をひっくり返し、僧侶の頭上に灰を散布するのだった。

あえて言えば・・・このドラマでは王子様は潤子でシンデレラは灰をかぶった僧侶なのだ。

ふりかえった僧侶は有髪であるので肉食妻帯が許される浄土真宗派なのであろう。

由緒正しい寺の継承者として経済的に恵まれ、東京大学文学部思想文化学科インド哲学仏教学専修課程を修めたエリート僧・・・星川高嶺(山下智久)はどうやら・・・その瞬間に潤子に一目惚れをしたらしい。

恐ろしいことである。

妙にスタイリッシュな英会話学校ELAに勤務する潤子は28歳・・・それなりの英語力はあるが非常勤講師だった。

潤子の周囲にはそれなりのイケメンたちが配置されている。

同僚の英会話講師は有閑マダムに人気の木村アーサー(速水もこみち)、ニューヨーク帰りのジェネラルマネージャー・清宮真言(田中圭)、生徒のエリート商社マン・三嶋聡(古川雄輝)、高校生の蜂屋蓮司(長妻怜央)、そして女装高校生の里中由希(髙田彪我)・・・いかにも乙女向けエロゲー的布陣なのだった。

潤子は講師時代の清宮の生徒だったらしく・・・いまも会えば胸がときめくらしい。

田中圭・・・最近、殺されずにすむことが多いな。

三嶋とは大学のサークル仲間であり・・・誕生日は祝ってもらえるらしい。

男性陣を狙う女性陣も当然のように配置されている。

三嶋を狙う毛利まさこ(紗栄子)、何やら秘密を持っているらしい山渕百絵(高梨臨)、なんとなく伊能蘭(中村アン)なのである。

明らかにキャスティング過多だよな。

潤子の夢はいつか憧れのニューヨーク・ライフを送ることだが・・・まだニューヨークに行ったことはないのだった。

都心から地下鉄に乗り、町屋で都電荒川線に乗り換え、早稲田方面に向かって三つ目の熊野前停留所で下車。かって元気が出る商店街があった街が潤子のホームタウンだった。

家族は、うだつのあがらなそうな父・満(上島竜兵)、最近まで魔女だった母・恵子(戸田恵子)、そして高校生の妹・寧々(恒松祐里)である。

彼らは・・・潤子に何かを隠し・・・潤子の誕生日をカニ料理で祝うと言い出すのだった。

誕生日の数日前、潤子は高級そうな料亭に招かれるのだが・・・待っていたのは家族ではなく・・・件の僧侶・高嶺だった。

「え」

「おめでとうございます・・・あなたを僕の妻にしてさしあげます・・・これからは末長く仲睦まじくいたしましょう・・・」

「えええ」

誕生祝いとは嘘で・・・お見合いだった。

「よろしく」

「お断りします・・・」

しかし・・・そこにカニが運ばれてくる。

カニは・・・潤子の大好物だった。

席を立てずにカニに目を奪われる潤子。

「お好きなんでしょう・・・」

「・・・」

高嶺は・・・優しく・・・カニの殻を剥いてくれるのだった。

「カニ・・・お好きなんですか・・・」

「嫌いではないです」

しかし・・・高嶺の眼差しは・・・無心にカニを食べる潤子に注がれる。

恐ろしいことである。

ニューヨークと僧侶・・・そぐわないイメージに戸惑い・・・高嶺を射程に捉えることのできない潤子だった。

ある意味、恐ろしいことである。

そして・・・翌日・・・生徒として潤子の前に現れる高嶺。

「おめでとうございます・・・生徒が一人増えました」

「そんな・・・困ります・・・ここは英語を勉強するところです」

たちまち、大人のKISS英語でルート66〜たった一人のアメリカな英会話を披露する高嶺だった。

「式は仏式で和装でなければ困りますが新婚旅行はニューヨークで構いません。自家用ジェットもありますし、クリスマスを盛大に祝うことはできませんが、クリスマスツリーの前で記念撮影するくらいなら問題ありません」

「・・・」

秋ドラマなのである。主題歌が「クリスマスソング/back number」である以上、クリスマスでハッピーエンドは約束されたのだった・・・マジかよっ。

とにかく・・・恐ろしいことです。

こっそりとランチタイムを近所の公園にておにぎりですますときも。

憧れの清宮とそこはかとなくイチャイチャする時も。

高嶺の目は光っているのだった。

「男性と・・・ふしだらな行為をしていましたね」

「金輪際、私につきまとわないでください」

ついに・・・厳しい言葉を投げかける潤子だった。

高嶺には僧侶としての後見人らしい寺田光栄(小野武彦)がいて・・・高嶺を応援しているのだが・・・高嶺の祖母であり・・・実力者らしい星川ひばり(加賀まりこ)はどこの馬の骨かわからない潤子との交際には断固反対である。

「あなたが・・・あの女と手を切らないなら・・・弟の天音に寺を継がせます・・・」

滝に打たれて修行するサービスを終えた高嶺は仕方なく、ひばりの進める由緒正しい美少女・足利香織(吉本実憂)とお見合いをするのだった。

主人公に吉本実憂、ヒロインに田中圭・・・「アイムホーム」と同じポジションである。

吉本実憂は夏ドラマでは表参道高校で合唱していたのだった。

キャスティング的には・・・大人組と高校生組に分かれているのだが・・・原作では世代を越えて肉弾戦に突入するわけである。ここをどう処理するのか・・・。

恐ろしいことである。

一方的な絶縁の詫び状を潤子に渡しかねる高嶺・・・交際してないぞ。

突然、赤いジャージでくつろいでいる潤子を檀家あるいは僧侶集団を引き連れて襲撃するひばり・・・。

「高嶺とはきっぱり別れていただきます」

「安心してください・・・交際してませんよ」

恐ろしいことだなあ。

清宮の交友関係におけるパーティーに招待された潤子は有頂天になる。

妹と自宅ファッションショーを展開し、とっておきの靴でおしゃれするのだった。

しかし・・・木村アーサーのピンチヒッターで引き受けた有閑マダム相手の授業が仇となり、言われなきクレームのために・・・謝罪に出向くことになる潤子。

その日は誕生日当日だった。

有閑マダム(ふせえり)の別荘は人里はなれた小湊鉄道方面の月見高原にある。

片道二時間半である。

有閑マダムたちの暇つぶしの嫌がらせで謝罪する潤子は・・・これ以上ない罵詈雑言を浴びる。

しかし・・・正社員になってニューヨーク本部で働くためにはひたすら頭を下げるしかない。

「私たちは別に英語を習いたいわけじゃないの・・・イケメンにチヤホヤされたいのよ」

「お言葉ですが・・・」

「文句を言いに来たの・・・お詫びに来たの」

「申し訳ありませんでした」

悪意に満ちた有閑マダムから解放された・・・ひょっとすると・・・こうなることを狙って・・・誰かがスケジュールを・・・潤子はバスに乗り遅れ、靴を壊し、ピョン吉に鳴かれ、雨に降られて・・・途方に暮れるのだった。

もう少しなんとかしてもらいたいお天気雨のどしゃぶりの中・・・白い車で現れる高嶺。

「おめでとうごさいます」

「・・・」

「お誕生日ですよね」

「・・・」

「それだけは・・・どうしても言いたくて」

戸惑う・・・潤子を抱きしめる高嶺・・・。

流れるようにキスというところで体が冷えた潤子はくしゃみをするのだった。

「帰りましょう・・・」

車の助手席には・・・深紅の薔薇の花束・・・。

「他に・・・思いつかなかったので・・・」

思わず花束を抱きしめる潤子だった。

しかし・・・潤子を寺に連れ帰った高嶺は・・・座敷牢に監禁するのだった。

「あなたと出会ってから・・・私の心は乱されっぱなしだ・・・修行の妨げになるので・・・もう、どこにも行かせない」

「ええええええええええええええ」

恐ろしいことなのだ。

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59001ごっこガーデン。情熱と暗黒の座敷牢セット。

エリいやん・・・山P先輩のお坊さんにストーカーされてカニ剥いてもらってどん底の場面で迎えにきてもらって抱きしめられてくしゃみするなんて・・・言語道断横断歩道でス~。監獄ロックで・・・愛し合う・・・これは・・・噂に聞く・・・変態プレーでしょうか~・・・じいや、すぐにムチとロープを用意しなさい・・・早くしないとお仕置きでス~・・・人類の奇跡におめでとう!

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2015年10月12日 (月)

天は人の上に人をつくらず人の下に人をつくらずといへり~明治五年学問のすゝめ(井上真央)

徴兵制の施行と時を同じくして福澤諭吉は「學問ノスヽメ」を出版する。

当時としては圧倒的なベストセラーとなり、多くの人々に指針を示したことは間違いない。

しかし、幕府の旗本であった経歴から・・・薩長中心の新政府とはそこはかとない距離感があった。

そのために主流派ではないものたちとの交流も目立つ。

ある意味で福澤諭吉は「米国派」と言えるだろう。

一方で新政府の主流を作った井上毅は「西欧派」である。

「人が平等」であることは「人が自由」であることに他ならない。

しかし・・・自由と平等は矛盾した概念でもある。

福澤諭吉の理想は・・・明治七年(1874年)に板垣退助・後藤象二郎・江藤新平が下野すると反政府的になる。

新しい権力は・・・秩序を作りはじめていたのである。

西郷隆盛にシンパシーを感じていた諭吉はその末路に憤慨したりもする。

諭吉は学問によって人民が成長することを夢見た。

しかし・・・成長した人々は支配の味を覚える。

諭吉の育てた優等生たちはたちまち・・・無学な人民の搾取を開始するのだった。

それでも諭吉は・・・文明を開化する学問に縋るしかないのだった。

平等で自由な人間は・・・諭吉の心の中にだけ存在するのである。

諭吉はけして戦わない。

しかし、人間が戦うことを否定しない。

だから、岩倉具視も消え、大隈重信も消え、伊藤博文が消えても・・・諭吉は消えないのだった。

諭吉は常に「自由で平等な人間」の上に君臨しているのである。

で、『燃ゆ・第41回』(NHK総合20151011PM8~)脚本・小松江里子、演出・渡邊良雄を見た。例によってシナリオに沿ったレビューはikasama4様を推奨します。今回は長州における不平士族の反乱である萩の乱の首謀者・前原一誠の描き下ろしイラスト大公開でお得でございます。このドラマそのものに鬱屈する・・・大河ファンの心情を爆発させているような鬼気迫る前原一誠でございますねえ。聞くところによれば脚本はこのまま・・・最後まで続くそうでございます。このドラマにはここまで、大島里美、宮村優子、金子ありさも投入されているのですが・・・前半は五月雨式でした。一人一人はそこそこの実力者。どうせ、四人なら四季に分けて起用してあげれば・・・もう少しまとまりがあったんじゃないかと考えます。冬は吉田松陰の妹、春は久坂玄瑞の妻、夏は未亡人、秋は楫取素彦の後妻・・・このくらいの感じでそれぞれの作家にまかせていれば・・・それぞれの時代や・・・それぞれの人の生きざまがもう少し・・・描きやすかった気がします。プロデューサーはそのあたりまで・・・もう少し読んでもらいたいものです。まあ・・・歴史なんかどうでもいいと言われると何を言っても虚しいわけですが・・・。歴史的な人物は基本的に大量殺人者・・・この辺りのショックを乗り越えないと・・・歴史の醍醐味はとてもじゃないが伝えられないのでは・・・と愚考いたします。

Hanamoe41明治六年(1873年)九月、大久保利通により内務省が設立される。十月、西郷隆盛、板垣退助、江藤新平、後藤象二郎らが下野。新政府瓦解の危機が訪れる。明治二年に暗殺された大村益次郎が危惧した通り、西に乱の兆しが現れたのである。大村は新政府軍の軍事拠点を大阪に置き、山縣有朋が大村の予見を継承していた。明治七年(1874年)二月、江藤新平による佐賀の乱が勃発。徴兵による鎮台兵や帝国海軍が出動し、三月には政府軍が鎮圧に成功する。士族の反乱を抑圧するための徴兵制度が結果として士族の反乱を導き、そして結果として士族は徴兵制度による政府軍に敗れたのだった。この内戦では電信による連絡が開始される。戦後、徴兵派と士族派の対立はますます強まって行く。四月、江藤新平処刑。参議の大隈重信、陸軍中将西郷従道は台湾出兵の準備に着手。木戸孝允は出兵に反対して参議を辞する。五月、薩摩主導による海軍が台湾に上陸。六月には一部を占領するが兵がマラリヤに感染し、戦闘不能状態となる。この暴挙は清国政府との国際問題に発展するが・・・撤兵を条件に日本は琉球を日本に帰属させる外交的勝利をおさめる。兵員輸送を担当した岩崎弥太郎の三菱商会は飛躍のきっかけを作る。これを主導したのが福澤諭吉の門下生である荘田平五郎や豊川良平であった。続いて諭吉は岩崎に炭鉱経営を指南する。こうして諭吉は人民による人民の支配を支援するのだった。明治八年(1975年)二月、平民の称姓が許される。八月、大久保利通・伊藤博文・井上馨らの説得により木戸は新政府に復帰する。明治九年(1876年)三月、廃刀令が発せられる。武士の特権が次々と剥奪され、官からあぶれた士族たちの鬱屈は一挙に深まる。八月、楫取素彦は群馬県令となる。十月、熊本県で神風連の乱、福岡県で秋月の乱、山口で秋の乱が勃発する。久坂美和の実兄の杉民治の長男・吉田小太郎、長女・豊の夫・玉木正誼は反乱に参加し、戦死する。

萩城下は夏の陽射しの下にあった。

美和は久坂家で養子の粂太郎が明倫館から戻るのを待ちながら・・・東京の伊藤博文の心を読んでいた。

伊藤は東京の皇居を守る忍び衆を指揮している。

伊藤は忍びのものたちを東京密偵と呼んでいた。

東京で暗躍する忍びは最期の服部半蔵である勝海舟とその意を受けた福澤諭吉の支配する公儀隠密の残党である。

福澤は忍びの者たちを慶応衆と呼んでいる。

すでに・・・幕府再興の夢は消え・・・伊藤も福澤も新政府に通じるものだったが・・・いつの世にも派閥闘争は消えない。

伊藤と福澤は敵対する諜報網を用いて阿吽の呼吸で東京の聖域化を進めていた。

しかし・・・伊藤の気持ちは鬱屈している。

その心に生じている危惧は・・・木戸孝允の健康状態であった。

(もしも・・・木戸様が・・・亡くなられたら・・・)

新政府と反政府のバランスが崩れる惧れがあった。

富国強兵を進める新政府と・・・あらゆる権力に屈服することを潔しとしない士族。

そのバランスは・・・木戸と西郷隆盛の・・・拮抗した勢力によって辛うじて保たれていた。

吉田松陰による未来予知を受けている美和にとって伊藤の危惧はある意味で杞憂に過ぎない。

まもなく・・・明治は最後の内戦に突入する。

それが・・・終われば・・・木戸と西郷は消えるのである。

明治は真の新時代に突入するのだった。

その戦で・・・美和は・・・多くの松陰の弟子たちが・・・とりわけ・・・甥の吉田小太郎と・・・姪の婿である玉木正誼が命を失うことを知っている。

松陰がその命を賭けて選択した回天の世界は残酷なものであった。

松陰は次の吉田家の後継者として死後に生まれた庫三を指名しているのである。

その運命から・・・逃れることはできないと美和は知っている。

(知らないのは・・・自分の定めだけ・・・)

美和は東京から意識を引き上げた。

若者たちが激論を交わす明倫館から自宅へ戻ってくる養子の粂次郎の意識が浮かぶ・・・。

(粂太郎はまだ・・・生きて行く・・・)

美和はそのことにつかのまの安堵を覚えるのだった。

蝉が鳴いている。

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2015年10月11日 (日)

掟上今日子の備忘録(新垣結衣)太腿語(ふとももがたり)だよ(岡田将生)

なんか・・・ガッキー久しぶりだなあ・・・。

CMで見てるだろう。

「ドラゴン桜」(2005年)から10年か・・・。

最近の大物芸能人おめでたラッシュを考えると・・・長澤まさみもガッキーもお年頃なんだよな。

特別進学クラスではサエコが独走したからな・・・。

そして、シャワーシーンでのシルエット裸体からの太股サービス・・・脱皮か・・・脱皮しようとしているのか。

甘エビもイクラもウニも克服したしな。海鮮丼しやがれかっ。

結局、今週、ガッキー漬けかよっ。

で、『掟上今日子の備忘録・第1回』(日本テレビ20151010PM9~)原作・西尾維新、脚本・野木亜紀子、演出・佐藤東弥を見た。記憶喪失はフィクションの常套手段だが・・・本作品では睡眠と睡眠間の逆向性健忘患者が主人公である。かなり、器用な記憶喪失能力と言えるが・・・「一晩ぐっすり眠って忘れてしまいなさい」とアドバイスする人がいるように睡眠と記憶にはある程度の関係がある。睡眠中に記憶が保存されるという説もあり、睡眠前の逆向性健忘は保存された記憶が再生できない障害と考えることもできる。記憶についてはまだまだ解明されていないことが多く、嘘がつきやすいわけである。

原作者は深夜アニメ化された作品が独特の映像表現で一部愛好家を獲得しており、ドラマでの演出表現に影響を与えている。まあ、ベテラン演出家も勉強しているという話なんだな。

ミナバラ研究所・笑井研究室の室員・隠館厄介(岡田将生)は昔から不運であり、冤罪被害者体質である。何かがなくなると必ず疑われてしまうのだった。「正直に言え、隠しだてをするな」と言われても身に覚えがないのだが・・・挙動不審な態度をとってしまうウロタエモノなのである。そのために職場を追われることも度々あり・・・スキルアップもままならず・・・いつも最低賃金に近い収入で働いているのだった。

今回も・・・笑井室長(三宅弘城)のデスクから開発中のコンタクトレンズ型ディスプレイの機密(キミチュ)情報が入ったSDカードが盗まれ、犯人として疑われてしまうのだった。

トラブルに巻き込まれることが多い厄介は探偵斡旋業も営むアパルトマン「サンドグラス」のオーナー・絆井法郎(及川光博)のお得意さんだった。

「厄介な状況です・・・工藤さんをお願いできますか」

「工藤ちゃんは・・・廃業したのよ・・・息子たちは大活躍しているけどね・・・ミズタクとか桃太郎とか・・・急ぎなら・・・優秀な探偵を紹介するわよ」

ただちに派遣されてきたのが・・・睡眠間の記憶を喪失してしまう忘却探偵・掟上今日子(新垣結衣)だった。

白髪・眼鏡っ子のコスプレ・ガッキーで全身に覚書をしているために・・・肌を露出します。

しかし・・・その推理力は抜群で・・・事件はその日のうちに必ず解決するという名探偵なのである。

名探偵は容疑者たちを別室(物置)に呼び、証言を得る。

①岐阜部ながめ(中越典子)・・・給与に不満がある。

②誉田英知(蕨野友也)・・・査定担当。

③蓮根結子(霧島れいか)・・・誉田と特殊な関係。

④笑井室長・・・子煩悩で幼児語がクセになっている。

この時点で・・・「犯人の目星はついた」と語る名探偵。

最期の証言を得るために厄介と別室に。

そこでコーヒーを飲んだ名探偵は眠りこみ・・・捜査は振り出しに戻ってしまう。

コーヒーに睡眠薬が混入していたのである。

「もう・・・ダメだ・・・」と絶望する厄介。

「安心してください・・・犯人はミスを冒しました・・・」

「え」

「私の記憶を奪うなんて・・・許せない」とガッキー史上まれな悪相を見せる名探偵。

「・・・」

伏線回収型の謎解きである。

①ミナバラのロゴ入りボールペンは印刷ミスで「ミナバカ」になっている。

②社員は全員使用している。

③ポールペンは熱で消えるインクを採用。

④研究室の人間は全員ブラック派なのでミルクも砂糖もマドラーもない。来客もない。

⑤睡眠薬は常備薬で誰でも使用可能。

⑥睡眠薬は溶けにくい顆粒。

⑦SDカードの社外持ち出しは厳禁

⑧持ち出すためには室長の許可が必要

⑨犯人は・・・「私は無実」と紙に書けない人物。

「君が・・・」

「あなたは・・・黒柳徹子方式で・・・頭に・・・隠していますね」

観念する岐阜部ながめだった・・・。

「私・・・三年間・・・昇給なしです」

「すまなかった・・・しかし、社内規定で・・・君は解雇される・・・こんなことになって残念だ」

名探偵は成功報酬を受け取る・・・。

その日のうちに受け取らないと忘れてしまうからである。

「クラウドも・・・摩擦熱で消せるボールペンも知らないなんて・・・いつから・・・記憶がないのですか」

「それは企業秘密です」

「大変ですね」

「毎日が新鮮でいいと思います」

「前向きですね・・・僕なんか・・・自分の不運のことばかり考えてしまう・・・あの時、隕石が落ちてこなければ・・・とか」

「ものは考えようです・・・隕石が見れたなんてラッキーじゃないですか」

「・・・」

しかし・・・その時・・・謎の一団によって「作創社」の大文字の入った車両に拉致されてしまう厄介・・・。

名探偵は・・・厄介がかなり不運かもしれないと考えなおすのだった。

厄介が連れこまれたのは・・・かっての職場である・・・人気漫画家・里井(上野なつひ)の自宅兼仕事場だった。

大手出版社の編集者である重里(神保悟志)は厄介を「百万円窃盗犯」と断定する。

そこへ現れる名探偵。

「助けましょうか」

「お願いします」

里井のデスクから消えた百万円・・・。

①「百万円を返して欲しかったら一千万円払え」という要求があった。

②犯人は「百万円」が「特別な価値を持つ百万円と知る人物」である。

③犯人が誰かを里井は知っている。

最近、辞めたチーフアシスタントの紗流(映美くらら)が犯人だった。

里井は紙幣番号を暗証番号として利用していたのだった。

百万円の中には・・・里井のアイディアを蓄積したクラウドの暗証番号も秘められていたのだった。

「私・・・言ってはならないことを言ってしまったの・・・彼女は大切なアシスタントだったのに・・・」

「・・・」

「いいよねえ・・・何も生み出してないくせに・・・何かつくった気になって・・・って」

「リーダーと構成員、自由と平等・・・人々の絆はイズムの幻想によって成立していますからね」

「・・・」

紗流を捜索中の編集者たちは・・・間一髪でネットカフェ潜伏中の彼女を確保した。

彼女は・・・里井のアイディアのすべてを消去しようとしていた。

「外部記憶に蓄積された情報・・・それは情報の創作者にとっても・・・再現不可能な質量を持っているのです」

「構築された情報も・・・人間関係も一度壊れたら修復するのは面倒くさいものよ」

「・・・」

笑井とながめ・・・里井と紗流・・・二人の上司と部下は・・・破局したのだった。

「ありがとうございました」

「事件はまだ終わっていませんよ」

「え」

「おそらく・・・ながめさんは・・・個人的な記録の入ったSDカードを持ちだしています」

「・・・」

「しかし・・・そこには削除されたキミチュが入っているのです」

「データ復元ツールのトリックか・・・」

「笑井さんの罪悪感につけこんだ・・・巧妙な作戦と言えます・・・機密がライバル会社に流れれば・・・研究室は閉鎖・・・」

「また・・・失職か・・・」

「まだ間に合います・・・」

アパルトマン「サンドグラス」従業員で潜入捜査担当の也川塗(有岡大貴)が名探偵の指示でながめを足止めしていたのだった。

「嫌な思い出の方が忘れにくい場合があります。忘れようとすれば思い出すから・・・」

「・・・」

「でも・・・嫌な思い出に負けたら・・・道を誤りますよ」

「あの・・・また・・・何かあったらお願いできますか」

「もちろん・・・いつでもどうぞ・・・だけど・・・明日になったら・・・あなたのことは忘れてしまいます」

思い出の積み重ねが愛だとすれば・・・厄介にできるのは・・・一方的な恋だけなのである。

まあ・・・一度寝た相手のことを忘れられれば・・・ゴルゴ13も倦怠期に襲われることはないのだが・・・。

いろいろともどかしいガッキーのドラマ始りました。

自筆メモである・・・今度、生まれ変わる時はサインペンになってもいい。変態かっ。

次があるとは限らないから・・・大切に見ていきたいよねえ。

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2015年10月10日 (土)

乙女のあさが来た(波瑠)お手々つないで女の道を行きましょう(宮﨑あおい)堪忍しとくんなはれ(玉木宏)

やるのか・・・。

堪忍しとくれやす・・・大人篇もやらんとあかんのどす。

方言彼女にうっとりなのか・・・。

単にえらいぺっぴんさん姉妹だからどす。

結局・・・そこか・・・。

こんなもん毎朝見せられたらうっとりが止まらんわな・・・。

もう・・・標準語の世界に帰ってこい・・・。

いつまで待てばアグネスプリンの回がありますか。

それはないと思うでえ。

深夜の馬乳育ちの馬子先輩(大野いと)にもうっとりしています。

で、『あさが来た・第7~12回(第2週)』(NHK総合20151005AM8~)原案・古川智映子、脚本・大森美香、演出・西谷真一を見た。元治元年十二月、高杉晋作は功山寺にて挙兵。世に言う元治の内乱である。明けて元治二年二月、幕府は天狗党の武田耕雲斎らを斬首する。東と西で動乱が渦巻く世の末である。数え十七となった今井あさ(波瑠)と姉のはつ(宮﨑あおい)は王都・京都から商都・大坂へと嫁ぐ・・・嫁入り前の日々を過ごしていた。

あさの気がかりは・・・姉のはつの許嫁である眉山惣兵衛(柄本佑)が貧乏ゆすりが止まらず、能面のように笑わない、白蛇ブルブル野郎だったことである。

あさの許嫁の白岡新次郎(玉木宏)は根っからの遊び人だが・・・あさに「恋文」をくれる細やかな情愛を感じさせる色男・・・しかも・・・本当は・・・あさとはつの相手はあべこべだったのである。

本当は自分が白蛇のお嫁さんになるはずだったと思うと・・・あさは後ろめたい気持ちになるのだった。

そこで・・・あさは大坂の新次郎に「姉の許嫁のことをお知らせくださるように」と文を出すのである。

しかし・・・白岡家は長男の正太郎が労咳を患い、明日をも知れぬ容体で・・・それどころの話ではなかった。

それでも小まめなところのある新次郎は・・・義理の兄弟となる惣兵衛を酒席に誘う。

「眉山のおうちでは・・・あんたの母上はんが偉いそうですな」

「わてが母親の顔色窺ってるだけの男と思ったら大間違いや・・・わてはあの女、いつか殺したろうと思うてる」

「・・・」

新次郎は・・・惣兵衛の心の闇にうっとなるのだった。

眉山菊(萬田久子)は入り婿の栄達(辰巳琢郎)や息子の惣兵衛を侮っているらしい。

あさとはつの両親、今井忠興(升毅)と今井梨江(寺島しのぶ)は嫁入りする二人の娘のお付の女中を誰にするかでもめる。

梨江は大人しい性格のはつが性悪そうな姑にいびられないようにベテランのうめ(友近)をはつに、小娘のふゆ(清原果耶)をあさにと提案する。

しかし・・・忠興は・・・突拍子もないことをしでかすあさを案じてうめをあさにふゆをはつに付けようと考えていた。

親思う心に勝る親心である。

結局、忠興は折れてあさのお付はふゆとなる。

板挟みになったうめは悩むが・・・最後にあさと相撲をとって「女の道」を悟らせようと決心する。

「八卦良い」のである。

うめにとって・・・幼い頃からお守りしてきた姉妹は・・・どちらも宝のような存在なのである。

出来のいいはつは自慢だし、出来の悪いあさは可愛いのである。

なにしろ・・・あさは・・・街角で出会った薩摩の武士・五代才助(ディーン・フジオカ)が一目惚れするほどのインパクトを持った異端児だった。

恐ろしい存在感なのだ。

別れの時が近付き、琴を弾く姉妹・・・。

「お姉ちゃんは・・・うまいなあ・・・ウチももっとお稽古すればよかった・・・」

「ウチは・・・あさを見ていると本当に楽しい・・・けれど・・・ウチはあんたのようにお嫁に行きたくないとは思わん・・・お母はんかて・・・お嫁さんや・・・お母さんのようになることは・・・子供の頃からの夢やった・・・」

「でも・・・相手が白蛇はんなんて・・・あんまりや・・・お姉ちゃん・・・ウチと手に手をとって駆け落ちしまへんか」

「また・・・滑稽本やお芝居みたいなことを・・・第一、駆け落ちは男はんとするもんどす」

「・・・」

「でも・・・お手々だけはつなぎましょ」

手をとりあった二人は思わず落涙である。

一度、嫁入りすれば・・・実家とも疎遠になる時代だった。

あさは白岡家の女、はつは眉山家の女になる定めなのである。

場合によっては今生の別れになることもある。

嫁入り前の娘二人に心得を聞かせる父の忠興。

「あさ・・・お前はどんどん前にいく性分やが・・・女には家を守る大事な仕事があることを忘れるな・・・」

そこではつがはじめて父にものを申す。

「お願いがございます・・・あさのお付はうめにしてください。この家の思い出として・・・最後に姉らしいことをしたいのです」

姉思いの妹である。

妹思いの姉だった。

全国の不仲な姉妹は反省である。

この時代ならでは・・・しかし、いつの時代にも通じあう「情」というものをしっかり描いてくるドラマである。

だが・・・嫁入り寸前・・・大坂では・・・白岡家の長男がついに他界・・・。

京都にやってきた白岡正吉(近藤正臣)と新次郎はあさとその両親に頭を下げる。

「堪忍しとくんなはれ・・・婚義を日延べしてもらいたい・・・」

「そんなこととは露知らず・・・堪忍しとくれやす」

出遅れるあさだった・・・。

しかし、「手紙、うれしかった」と新次郎に言われ萌えるあさである。

「新次郎さんは・・・やさしいお方・・・お兄様の分までしっかり生きておくれやす」

「おおきに」

草に心で芯なのである。

半年早く・・・川を下るはつ。

「お姉ちゃん・・・お姉ちゃん・・・」

メーテルを追いかける鉄郎の如きあさだった。

はつはお守りを握りしめる。

お付のふゆはあえての無表情だが・・・お嬢様と女中という身分の差がそこはかとなく匂い立ち・・・ある意味、恐ろしい。

そして・・・圧倒的に美しい花嫁に・・・目が泳ぐ眉山惣兵衛・・・。

あっという間に半年が過ぎ・・・あさも嫁入り・・・。

梨江は姉妹おそろいのお守りを用意していたのだった。

「あさ・・・あんたはただのじゃじゃ馬ではなくウルトラスーパーデラックスメジロラモーヌや・・・三冠目指して気張なはれ・・・お父さんも一言」

「まるで・・・花嫁みたいや・・・帰ってくんな」

「大事なことなので二度目どすか」

「はよう・・・いけ・・・」

涙が堪え切れぬ忠興である。

あさが・・・大坂に着くと・・・新次郎は美和(野々すみ花)と三味線抱えて紅葉狩り中・・・。

「びっくりぽんや」

大人篇も面白おかしくスタートどす。

来週は和宮のストーカーである土方歳三が来るらしい。

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2015年10月 9日 (金)

JKは雪女(平祐奈)安心してください・・・裸エプロンではありません(池田エライザ)雪女はJK(玉城ティナ)

夏と秋の間にひっそりと暮らす雪女ドラマである。

脚本家的にはスルーしたいドラマなのだが・・・う、撃たないで~・・・見事に空白の一日が発生しているんだな。

未成年女優を使ったエロティックな演出はものすごくお下劣なのだが・・・それがまた・・・いかにもチープで三流作品な感じの仕上がりになっていて・・・もう・・・ほとんど涙ぐんでいるわけである。

まあ・・・事務所がそういう方針ならしょうがないよな。

もちろん・・・「表現の自由」を謳歌する意味では・・・こういう作品があるべきなのだ。

だから・・・できれば・・・もう少し・・・芸術的だとよかったと思うよ。

で、『JKは雪女・第1~2回』(TBSテレビ201509300111~)脚本・秦建日子、演出・田中誠を見た。雪女は日本を代表する妖怪の一種である。小泉八雲の描く「お雪」は冷たいけれど温かいという矛盾した存在で・・・ロマンチックに仕上がっている。こうして人間を凍死させる雪の怪は・・・クール・ビューティーとして再生したのだった。グレース・ケリーか雪女か・・・なのである。・・・おいっ。以来、雪女は・・・このキャラクターの範囲を右往左往するのである。

日本のとある山奥。

雪女の里に棲息する雪女たちは・・・時に人里に下りて男の精を得て、繁殖していた。

雪女のババ様(柴田理恵)の命令で・・・優等生の咲雪(玉城ティナ・・・17歳)が下界に降りたのだが・・・消息不明になってしまう。

咲雪は凍りついた一室で悶えていて・・・何故、そうなったのかは不明である。

咲雪の妹の小雪(平祐奈・・・16歳)は人間が捨てて行ったファッション雑誌を読むのが趣味の劣等生で妖力も未熟だが・・・姉を捜索するために下界に下りることになる。

ババ様は・・・小雪が怠けないように「炎の刻印」の呪いをかける。

おへその横の刻印が黒から赤に変わると小雪は融けてしまうのだった。

おへその刻印を確認するために・・・上衣をまくり、スカートをずり下げるシーンが見どころになっている。

ある意味・・・ただそれだけの作品だと言っても過言ではない。

雪女の相手の男は・・・志羽神社当主と定められているらしい。

現在の当主・志羽龍之介(戸塚純貴)は高校生で・・・小雪は謎の転校生として春日野学園2年B組に現れる。

深夜アニメかっ。

龍之介の同級生で志羽家に仕える下男でもある安藤玲(横浜流星)は咲雪の消息を知っているようだが・・・口が重い。

深夜アニメなのか・・・。

突然、龍之介の精●を狙う女子高校生の明洞院朱音(池田エライザ・・・19歳・・・劇場版「みんな!エスパーだよ!」の平野美由紀役である)がやってきて小雪を抹殺しようとする。朱音は妖怪・狐火の一族で炎系の妖術使いなのである。

深夜アニメなんだな・・・。

低温VS高温の術比べはやがて・・・ポーズ合戦となる。

「ザー●ンを奪うにはセクシーなポーズが一番なの」

「男を勃●させるのは・・・上目使いが効果的なのよ」

もはや・・・鬼畜ゲームか。

ドラマ>深夜アニメ>鬼畜ゲームという差別化基準を適用しています。

そして・・・まったく決着がつかないまま・・・妖怪たちは・・・うだうだと男の胃袋を鷲掴みにするための「野菜炒め対決」へとなだれ込むのだった。

これはもう・・・三流脚本家の烙印を四流に引き下げる勢いだな・・・。

こんな苦界に沈められた十代女優の将来が案じられるわけだが・・・夜明け前が一番暗いと信じる他はないのだった。

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ダークシステム 恋の王座決定戦

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2015年10月 8日 (木)

偽装の夫婦(天海祐希)VS無痛~診える眼~(西島秀俊)・・・失われた家族たち(浜辺美波)

・・・おい・・・。

恒例じゃないか・・・。

毎週やる気か・・・。

いや・・・もう・・・そんなことはできない。

結構、甲乙つけがたい水10なんだよな。

父親あるいは夫嫌いの脚本家は・・・今回、夫をゲイにしてきたぞ・・・。主人公の父親は不在だが・・・きっと、凄く・・・嫌な人間として途中で参戦してくるな。そして・・・主人公は処女を捧げた王子様に25年間も執着し続けるという・・・恐ろしい女だ・・・。

一方・・・原作者が「破裂」の人で・・・同じクールでかぶるという・・・妖しい医者がらみの刑事ドラマ・・・。ものすごく・・・危うい感じがするよね。どう考えても・・・とんでもドラマだよな。それを・・・凸凹コンビがやぶれかぶれの演技力でギリギリ支えて行くという・・・そこそこ面白いじゃないか。

でもねえ・・・名作の香りがする「デザイナーベイビー」とかなりかぶってるしねえ。

来週、どちらかが残るか・・・それとも水曜日は・・・。

つまり・・・「サイレーン」次第なんだな。

で、『偽装の夫婦・第1回』(日本テレビ20151007PM10~)脚本・遊川和彦、演出・深川栄洋を見た。「だじゃれ」は「おやじギャグ」として何故か蔑まれる古典のお笑いだが・・・今回は「理想の夫婦」のだじゃれであり、おやじが言うから・・・ますます地位向上が危くなるわけである。例によって・・・家族に恵まれなかった主人公の嘉門ヒロ(天海祐希)は親戚の郷田照乃(キムラ緑子)に育てられる。絵が上手で文才がありピアノも上手で運動神経抜群の少女だったヒロは照乃の娘(坂井真紀)と息子(佐藤二朗)を劣等感によってダメ人間にしてしまう。大学に進学し自由となったヒロは王子様の陽村超治(沢村一樹)と一夜を共にした後で捨てられ以来図書館司書として働きながら読書に逃避し続ける。25年ぶりに再会した超治は幼稚園の園長代理・・・別れた理由は・・・どうしようもなくゲイだったからだった。書籍の重みで部屋の床が抜け賠償金三百万円の捻出に苦慮するヒロ。そこへ老母(富司純子)が末期癌となり最後の親孝行をしたいという理由で超治は偽装結婚を申し出る。そんな折、図書館で知り合った障害者の母(内田有紀)と娘(井上琳水)が幼稚園の障害物競争出場を躊躇していると知ったヒロは超人として覚醒するのだった・・・おいっ。

まあ・・・この暗黒の世界が好きな人は・・・楽しめばいいと思うな。

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で、『無痛〜診える眼〜・第1回』(フジテレビ20151007PM10~)原作・久坂部羊、脚本・大久保ともみ、演出・佐藤祐市を見た。(火)「サイレーン」と(水)「無痛」と二夜連続刑事コンビが活躍する編成である。もちろん、「犯罪の質量」が違うのだろうが・・・ネタがかぶらないことを祈るばかりである。それはなんだかきっと恥ずかしいぞ。ニュートリノについてほとんどわからないくらいの恥ずかしさなのかもしれないが。

猟奇的な殺人事件が発生する。一家が惨殺されるのだが・・・刑事たちは犯人を非人間的な精神の持ち主と断定する。殺人犯に人間性があるのかどうかは別として・・・。

街の診療所の医師・為頼英介(西島秀俊)は看護師で亡妻の姉である井上和枝(浅田美代子)と往診を終えて・・・帰路につく。

為頼は患者の外見を観察しただけで「病名」を診断することができる「神の診察眼」を持つ男だった。

その特殊な能力は・・・無法な行動をとる人間の「兆し」さえ読みとるのだった。

為頼は頭に血が上る状態を「犯因症」と呼び・・・「危険」を察知するのである。

目の前に重度の「犯因症」患者が現れ・・・思わず警察に通報する為頼・・・。

そして・・・患者は凶行を開始する。サパイバルナイフによる無差別殺傷事件発生である。

妊婦が刺され、幼い子供を庇った井上看護師も刺される。

駆けつけた警官は拳銃を構えるが・・・患者は「死」を望んでいるように凶行をやめない。

思わず、患者と警官の間に身を入れる為頼医師・・・。

そこへ刑事の早瀬順一郎(伊藤淳史)が現れる。警官の銃を奪った早瀬刑事は警告射撃抜きで発砲、患者/犯人を行動不能状態にする。

為頼医師は・・・早瀬刑事の顔に・・・「犯因症」の症状が現れていることに・・・危惧を感じる。

事件の負傷者たちが搬送されたのは・・・「白神メディカルセンター」のERである。

院長の白神陽児(伊藤英明)は「神の診察眼」とともに「ゴッド・ハンドの手術力」を併せ持つ天才医師だった。

白神医師の素晴らしい医療技術にうっとりとする為頼医師だった。

白神は・・・「苦痛からの解放」こそが医療の未来の姿と語り、足を踏まれても顔をしかめない謎の清掃員・イバラ(中村蒼)に何故か、手術室への入室見学を許可するのだった。

一命を取り留めた井上看護師は・・・心のケアに現れた臨床心理士の高島菜見子(石橋杏奈)が犯人に同情的であることを咎め、「ダメな男にひっかかりやすいから」と注意を促す。

高島臨床心理士は直線的な描写で絵を描き続け強迫神経症が疑われる南サトミ(浜辺美波)も担当している。

サトミは鬱な感じの「人間」を描き続ける。

早瀬刑事は・・・為頼医師が事件発生前に「通報」してきた事実に注目する。

「刑法第39条・・・第1項・・・心神喪失者の行為は、罰しない。第2項・・・心神耗弱者の行為は、その刑を減軽する。そんなのくそくらえ」

早瀬刑事は・・・異常なほどに「犯罪者」を憎んでいた。

為朝医師の不審な行動に目を光らせる早瀬刑事だったが・・・それが「見るだけで病気がわかる能力」によるものだと・・・たちまち察するのである。

早瀬刑事は「挙動不審者がわかる能力」を持っていたのだ。

周囲の人間は・・・早瀬刑事の暴走を警戒しているのだった。

所轄管内で・・・不審死が発生する。

鑑識は「密室状態で外傷がないことから・・・自然死」と結論するが・・・早瀬刑事は「犯罪の痕跡が匂う鼻」も持っていた。

司法解剖が上司によって握りつぶされると・・・早瀬は為頼に協力を依頼する。

「病死かどうか・・・見てくれ」

「おれは・・・監察医じゃないよ・・・」

「死の直前の監視カメラの映像だ・・・この映像で・・・病気かどうかわからないか・・・」

「この人は・・・健康だと思う」

「それじゃ・・・遺体を見てもらえませんか」

「それって・・・違法なんじゃないのか」

「問題がなければ・・・問題にならないてしょう・・・」

「君は・・・危険な人だな・・・」

しかし・・・遺体には薬物による中毒死の痕跡が現れていた。

「神経ガスかもしれない・・・周囲の住民は大丈夫か」

応答しない死者の隣人・・・。

令状なき家宅捜査に踏み切った早瀬刑事は・・・。

隣人こそが・・・自宅で毒ガスを製造している犯罪者だと断定する。

隣人は・・・研究ノートに・・・アイドルグループのCheeky Paradeのライブ会場で大量殺人をする計画を書きのこしていた。

犠牲者は・・・毒ガスの実験台にされたのである。

「許せん・・・」

早瀬刑事の行動を危ぶむ為頼医師は同行を申し出る。

盛り上がるライブ会場・・・狂信的な信者である隣人は・・・伝説を作ろうとしていた。

しかし・・・凶行は刑事と医師によって阻止される。

「頭のおかしい人間がおかしいことをするのを誰も罰することはできない」

「ふざけるな」

容赦ない暴行を容疑者に加える早瀬刑事。

為頼医師は患者を制止する。

「やめたまえ」

沈黙するライブ会場。

そこへ・・・警官隊が突入してくる。

「頭のおかしな犯罪者に対するには頭のおかしな刑事になるしかないのか・・・」

為頼医師は・・・暗澹たる思いを抱え込むのだった。

白神メディカルセンターで絵を描くサトミ。

高島臨床心理士は問う。

「あなたの家族の絵・・・?」

「私は家族を殺しました」

臨床心理士は蒼ざめる・・・。

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BORDER

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2015年10月 7日 (水)

子供の作り方を教えてください(黒木メイサ)知ってるくせにっ(斉藤由貴)あなたにはわからない(安藤玉恵)

三回目である。

もはや谷間ではなくなってるじゃないか・・・。

だって、面白いんだもの・・・刑事ものとしては本年度最高かもしれん・・・。

これをレギュラーと考えると・・・。

(月)「山Pが僧侶」

(火)「デザイナーベイビー」

(水)「未定」

(木)「未定」

(金)「未定」

(土)「未定」

(日)「花燃ゆ」

残り四枠しかないのか・・・「あさが来た」の週末版は無理だな。「サイレーン」、「無痛」、「おかしの家」、「青春探偵」、「コウノドリ」、「サムライせんせい」、「おきてがみ」、「ロケット」の八作品の半分が消えるという恐ろしい世界なのだ。

「ニュートリノには質量がありま~す」

「それは・・・世の中の役に立ちますか」

「立つか立たないかはあなたしだいで~す」

で、『デザイナーベイビー~速水刑事、産休前の難事件~・第3回』(NHK総合20151006PM10~)原作・岡井崇、脚本・早船歌江子、演出・長沼誠を見た。妊娠と出産は自然の驚異である。かって・・・親にとって子供は神からの授かりもの・・・だった。しかし、人間たちは神が許さなかったものを生み出そうとする。人間もまた自然の一部である以上、それもまた神の計画の一部かもしれない。しかし・・・誘拐された新生児と・・・その行方を追う妊娠中の刑事の胎児がどうか・・・無事でありますようにとお茶の間を釣りあげるこのドラマ・・・見事なサスペンスである。

速水悠里(黒木メイサ)の活躍により・・・確保された新生児は・・・オリンビックで金メダルを獲得したマラソンランナー・近森優子(安達祐実)の娘・望(仮)ではなかった。

DNA鑑定で近森優子と母子関係にないことが確認された新生児(B)・・・。

警視庁捜査一課の与那国令子管理官(松下由樹)の取調に対して、新生児誘拐犯の岸田トモ(安藤玉恵)は口を閉ざす。

「子供が欲しい・・・ただそれだけのことで・・・世の中に迷惑をかけているのよ・・・いい加減、正直に話しなさい」

エリートすぎる与那国管理官は・・・人情を解さないタイプではなく・・・単に高圧的なのである。

城南大学附属病院内の捜査本部で仮眠をとる・・・速水刑事。

タフな妊婦なのである。良い子は真似してはいけない。

日曜日の朝・・・人畜無害系の速水刑事の結婚相手である下地浩介(山崎樹範)は帰ってこない人を案じる電話をかける。

「ごめんね・・・日曜日は私の食事当番なのに」

「気にしないで・・・気をつけて」

連れ子で中学生の雄介(若山耀人)は「ザリガニ採り」に出かけるらしい。

「ザリガニ・・・」

「モンスター系だからな・・・」

岸田トモから回収した新生児がノゾミではなかったことで捜査は振り出しに戻る。

「どうなってんだ・・・」

特殊犯捜査係の日村係長(神保悟志)は部下たちに問う。

「ボクは確かに・・・岸田トモから・・・赤ちゃんを取り戻しました」

土橋福助刑事(渡辺大知)はせっかくの手柄が・・・手柄でなかったことに茫然とする。

「ノゾミは死んでいて・・・どこからか・・・別の新生児を入手したということですかな」

腕利きの西室刑事(手塚とおる)は深まる謎にチャレンジする。

「それなら・・・どこかで・・・新たな新生児誘拐事件が発生しているはずだ」

しかし・・・警察にはまだ・・・そういう情報は寄せられていない。

「一体・・・犯人は何がしたいんだ・・・」

「私は・・・やはり・・・須佐見教授が怪しいと思う」と西室刑事・・・。

「須佐見誠二郎(渡部篤郎)だし」

「それなら崎山典彦(渡辺いっけい)だって・・・」

「皆本順(細田善彦)もな」

「それを言うなら病院長の峠緑郎(柴俊夫)だって・・・」

「配役であたりをつけるのはやめましょう・・・」

「だな・・・」

「私・・・この捜査を続けていいんですか」

「上の了解はとっている・・・事件が事件だけに妊婦がいた方が心強い」

「なぜです」

「母心がわかるだろう」

「男ってがさつな生き物ですね」

わが子を誘拐された母親も・・・死産した誘拐犯も・・・お腹の大きな刑事に冷たく対応するのだった。

「検査なんかしなくたって・・・わかるのよ・・・早く、私の子を捜してちょうだい」

搾乳に苦しむ近森優子は・・・速水刑事の腹部を睨む。

妊婦同志のシンパシーは通わず・・・妊婦刑事はこの場合、不適任なのである。

察しの悪い土橋刑事にもそのことだけはなんとなくわかるのだった。

西室刑事は・・・院内の派閥争いに固執して・・・須佐見が黒幕ではないかと疑う。

一方で・・・須佐見は・・・分娩の専門家として・・・受胎に問題があったのではないかと・・・疑いを強めるのだった。

トモの夫である裕也(淵上泰史)との会話が須佐見にヒントを与えたらしい。

しかし・・・その会話内容を須佐見は刑事たちに明かさない。

やがて・・・新たな新生児誘拐事件が発生する。

しかし・・・新生児が連れ去られたのは二時間前・・・トモの逮捕より後のことだった。

事件は謎の男(柿澤勇人)が監視していた「向井産婦人科」で起こっていた。

前日の通院者のリストに「内藤優子」の名前を発見する刑事たち。

「近森優子の・・・旧名じゃないか・・・」

前日の防犯カメラの映像に・・・トモの姿があった。

「死産した容疑者に・・・妊娠している刑事が取調をして・・・有効かどうか・・・楽しみね」

エリートすぎる管理官は・・・取調室を速水に明け渡す。

「ちゃんと答えろよ」と速水刑事に期待できない土橋刑事はトモに問う。

「内藤優子って・・・偽名を使ったのよね・・・彼女と話したの」

変化球を投げる速水刑事。

土橋刑事の浅はかな予測を裏切って話しだすトモ・・・。

「病院で何度も聞いたわ・・・彼女の名前・・・授乳の時間に病室にいなくて・・・何度も看護師に呼び出されていた・・・なんでって・・・思ったわ・・・私は赤ちゃんを産めなかったのに・・・あの人は・・・赤ちゃんを待たせてばかり・・・私なら・・・そんなことをしない」

「・・・」

「わからないわよね・・・自然に赤ちゃんを授かったあなたには・・・不妊治療をして・・・あんなことまでしてしまった私の気持ち・・・」

「あんなことって・・・」

「・・・」

「あなたは・・・なぜ・・・赤ちゃんをすり替えたの・・・」

「え?」

向井産婦人科チームに連絡する速水。

「トモは・・・赤ちゃんがノゾミではなかったことを知らなかったようです」

「防犯カメラに不審な人間が映っていた・・・」

発熱したノゾミを向井産婦人科に連れて行ったトモを尾行する謎の男。

男は・・・見学と称して新生児室に侵入していた。

そして・・・新たなる新生児誘拐の発生時間に・・・謎の男は再び姿を見せている。

「この男が・・・ノゾミを別の新生児にすり替えて・・・今日・・・ノゾミを誘拐したのだ」

「冴えてますね・・・ラムネでも舐めているのですか」

「うん」

土橋の回収した新生児と・・・新たに誘拐された新生児の母親の母子関係DNAは一致した。

新たなる容疑者となった謎の男は・・・製薬会社の社員として城南大学附属病院に現れる。

病院長秘書の有吉久美(臼田あさ美)は男に命じられ・・・病院内の掲示板にノゾミの写真を貼り出すのだった。

地味に潜伏中の旅館の女将のような産婦人科の医師・柊奈智(伊藤裕子)は・・・ノゾミの写真を発見する。

須佐見の調査を危険視する「トータルケアプロジェクト」の医師の一人、皆本順(細田善彦)はリーダーの特任教授・崎山と密談する。

「まずいのではないですか」

「調べたって・・・何も発見できないさ」と嘯く崎山。

いのちを作る作業を終えた胚培養士の山原あけみ(斉藤由貴)に質問する・・・速水刑事。

「どうやって・・・子供を作るんですか」

「体位にはいろいろあるわね」

「そうじゃなくて・・・」

「男性に問題がある場合・・・たとえば・・・精子が少ないとか・・・AID(非配偶者間人工授精)という手があるわ・・・」

「つまり・・・」

「他の男の種で子供を作るのよ・・・」

録音されていた須佐見と岸田裕也の雑音除去作業が終わる。

裕也は・・・叫んでいた。

「あの子は・・・俺の子じゃなかったんだ」

「これが・・・彼女のした・・・悪いこと・・・」と考える速水。

一方、土橋に尾行されている須佐見は研究室で見知らぬ封筒を発見する。

中身の資料を読んで顔色を変える須佐見。

それは・・・トータルケアプロジェクトの内部資料だった。

須佐見の端末に謎の人物からメッセージが届く。

《これはあなたの武器になるでしょう》

《誰だ》

《告発者です》

《君は・・・間違っている》

須佐見は何故か・・・資料を持って部屋を飛び出す。

あわてて追いかけるが須佐見を見失う土橋。

「見失っちゃいました」

「またかよ」

しかし・・・焼却炉前の須佐見を発見する速水だった。

「校舎裏の焼却炉ですか・・・」

「・・・」

ガスバーナーで資料に点火する須佐見。

「やめなさい・・・」

火のついた資料を取り出す速水。

「なんてことをするんですか・・・証拠隠滅ですか」

「君たちは・・・医師の守秘義務というものを知らないのか」

燃え残った資料に・・・受精卵の画像を見出す速水。

「彼は・・・叫んでましたよね・・・自分の子ではないと・・・」

「・・・」

「何をしたのか・・・説明してください」

「おい・・・お前たち・・・」

トイレ休憩に行ったために・・・現場不在だった西室刑事が制止する。

「みんな・・・聞いてるぞ・・・」

病院の窓から・・・多くの人間が・・・速水と須佐見に注目していた。

その頃・・・院長は・・・新生児誘拐犯からの脅迫電話を受け取る。

「お前は・・・」

「わかったでしょう・・・あの写真に死んだ母さんのスカーフが映っているのを・・・」

謎の男は・・・院長の息子の峠則孝だった・・・。

「何を考えているんだ」

「それは・・・また来週・・・」

緊張と緩和・・・謎の解明・・・そして、謎が謎を呼ぶ素晴らしい展開である。

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2015年10月 6日 (火)

図書館戦争2013~2015(榮倉奈々)私の愛した本(土屋太鳳)

「図書館戦争」と「図書館警察」は似ているが・・・もちろん違う。

しかし、両者は・・・図書館をめぐる恐怖を描いていることでは同じようなものである。

図書館が駆逐される世界の恐ろしさと・・・図書館そのものが恐ろしい世界はかなり違うだろうがっ。

図書館の恐怖を描いているという理由で「図書館警察/スティーヴン・キング」が図書館の有害図書に指定されることがないことを祈るわけである。

図書館で借りた本は返さなければならないのだ。

谷間である。

あまりに・・・重いテーマは・・・避けたい。

特に「知る権利」と「表現の自由」に関わることは軽く書けない問題である。

だけど・・・軽く書いちゃうもんね。

で、『図書館戦争(2013年劇場公開作品)』(TBSテレビ20151004PM9~)『図書館戦争 ブック・オブ・メモリーズ』(TBSテレビ20151005PM9~)原作・有川浩、脚本・野木亜紀子、演出・佐藤信介を見た。西暦1989年の改元が「平成」ではなく「正化」となり分岐した平行世界の物語である。「平成」では1989年には宮崎勤による連続幼女誘拐殺人事件が発生し、1990年に朝日新聞が漫画が子供に悪影響を与えるという社説を披露し、1991年には東京都議会が「有害図書類の規制に関する決議」を採択する。あらゆる図書が有害であろうがなかろうが規制されることの恐ろしさを無知ゆえに知らない人々の愚行が萌芽しているのである。しかし・・・図書によって知性化されている人々の地道な抵抗が・・・これまでのところ・・・暗黒世界の到来を抑制しているわけである。一方、「正化」では「メディア良化法」が制定され、メディア良化委員会が「表現の自由」とか「知る権利」は「公序良俗」を乱し、「人権」を侵害する「悪」として抑圧するディストピアが誕生する。もちろん・・・メディアである以上、テレビ放送や、素晴らしいインターネットの世界も監視されるわけだが・・・大衆の娯楽を封じることに抵抗を感じる抑圧者たちは・・・「本がなくても別にいい」と考える多数派の支持を得て・・・「図書」を狙い撃ちするのだった。そのために・・・「図書館」が焼き打ちされるという事件さえ起きる。ここに・・・禁書、焚書という「図書に対する弾圧」に対抗する組織として「図書館」が現れる。

メディア良化委員会の実力行使部隊である特務機関「メディア良化隊」に対応するために図書館は専守防衛の組織「図書隊」を立ち上げたのである。

矛盾する国民の権利を代表する二つの機関に対して、司法は中立の立場をとり・・・ここに「良化隊」と「図書隊」の仁義なき戦いが開始されたのだった。

高校三年生の笠原郁(榮倉奈々)は「大切な本」を良化隊に押収されそうになった時、一人の図書隊員に救われる。

後ろ姿しか記憶にない「図書隊の王子様」を追って・・・図書隊・防衛部・図書特殊部隊に入隊する郁。

そこには・・・チビの鬼教官で・・・郁の直属上司である・・・堂上篤(岡田准一)が待っている。

もちろん・・・堂上班長こそが・・・郁の王子様その人なのであるが・・・記憶力に問題のある郁はそのことに気がつかない。

堂上班長の厳しい指導に反発して「あのチビ野郎」と陰口をたたいたり、訓練中に背後から跳び蹴りをくらわす始末だった。

一方・・・就職面接で・・・郁の志望理由を聞いた堂上班長は・・・自分がきっかけで命がけの任務に着任することになる郁に・・・ある種の後ろめたさを感じると同時に・・・郁のスタイル抜群の肢体にそこはかとなく欲情するのだった。

こうして・・・「図書館の自由」を武力の行使で守るという荘厳な主題の中・・・郁と堂上班長の甘い恋物語が進展するのだった。

これを共存させるというのは・・・かなり悪辣で有害な図書の要素を原作は備えているわけである。

図書隊司令の仁科巌(石坂浩二)、特殊部隊長の玄田(鈴森勘司)に見守られ、副班長の小牧(田中圭)、図書館協会会長の父を持つエリート隊員の手塚光(福士蒼汰)、そして業務部に籍を置きながら情報部に所属し・・・郁に特殊な友情を持つ柴崎麻子(栗山千明)と職務に励む郁なのである。

しかし・・・堂上班長は・・・郁をなるべく危険な目に会わせたくないと時々・・・私情を交えるのだった。

閉館の決まった私立図書館から・・・図書を移送する作戦を開始する図書隊。

図書の強奪を目論む良化隊の隊長・尾井谷(相島一之)は圧倒的な戦力で私立図書館を包囲する。

死者が出るかもしれない危険な作戦に・・・堂上は・・・郁を式典に出席する仁科司令の護衛任務につかせることで回避する。

だが・・・焚書愛好家による非合法組織は・・・仁科司令誘拐作戦を実行するのだった。

仁科司令とともに囚われの身となった郁。

「きっと・・・あの人が助けに来てくれる」と信じる郁。

「あいつだけは・・・絶対に守る」と口走る堂上班長。

恥ずかしさが炸裂するクライマックスのために・・・柴崎麻子は情報を分析し・・・郁の監禁場所を特定する。

死地に飛びこんだ班長の・・・日本で一番格闘アクションができるアイドルとしての本領が発揮される。

だが・・・多勢に無勢である。

最後は力尽き・・・班長の命は風前の灯に・・・。

だが・・・近距離射撃で最後は「敵の射殺」を敢行する郁。

「よくやった・・・」と部下の頭を撫でる班長だったが・・・その手に・・・「王子様」を感じる郁だった。

(まさか・・・班長が・・・王子様・・・そんな)

赤面が止まらない郁だった。

恋の花が咲き乱れる図書隊。

手塚は・・・柴崎を意識し・・・柴崎は謎の図書館利用者・朝比奈(中村蒼)に接近する。

玄田隊長と週刊誌の編集者・折口マキ(西田尚美)は昔の同棲相手である。

そして・・・小牧副班長は・・・突発性難聴の女子高校生・中澤毬江(土屋太鳳)と年の差恋愛中である。

まりえであってまれではなす毬江は自分の声が聞きとれないために無口な少女であり、強力な美少女力を発揮する。

小牧がまりえを励ますために推薦した「聴覚障害者の女の子が主人公の物語」が「差別を助長する図書」として指定され・・・小牧はまりえに対するハラスメントの容疑で拘束される。

すべては・・・図書隊を貶めることを目的とした一部勢力の陰謀なのである。

一方、郁の両親である克宏(中原丈雄)・寿子(相築あきこ)が上京。

危険な特殊部隊に所属していることを親に内緒にしている郁は困惑する。

母親の寿子は「娘を殴ってでもやめさせる」覚悟である。

これに対して「親を殴ってでもやめない気持ち」の郁だったが・・・班長は「親に内緒にしていることが・・・すでに覚悟が足りない」と諌めるのだった。

「あなたが・・・危険な目にあってまで・・・なぜ・・・本を守らなければいけないの」

「誰もが・・・目をそむけている間に・・・お母さんが教えてくれた本を読む喜びが消えてしまう・・・私は・・・そんなの嫌なんだ」

「・・・」

秘密警察のような組織で自白を強要される小牧。

しかし・・・「あの本は素晴らしい本なんだ・・・お前たちは本を燃やすようなバカだから・・・わからないだろうが」と拷問にも屈しない。

民間人を巻き込むなという班長の指示を無視して・・・まりえにすべてを話して協力を求める郁。

小牧の無実を証明するためのまりえの記者会見がセッティングされる。

反図書館組織は・・・妨害工作を開始するが・・・柴崎麻子は敵の裏をかくのである。

拘留延長を目論む良化隊だったが・・・まりえの記者会見が成功し、世論は逆転する。

救出された小牧の胸に飛びこむまりえ。

「女として・・・見てくれますか」

「とても・・・子供とは思えないものが・・・あたっているとしかいえない」

全お茶の間が赤面するのだった。

反図書館組織のリーダーは光の兄・慧(松坂桃李)だった。

「本なんて人を腐らせるだけだ・・・」

弟に腐った感じで執着する兄は・・・さらに大いなる陰謀を企てるのだった・・・。

人命より・・・図書が大切という人間賛歌である。

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軍師官兵衛

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2015年10月 5日 (月)

人タルモノ心力ヲ尽シ国ニ報イルベシ~明治五年全国寡兵の詔(井上真央)

明治五年(1872年)、新政府は「廃藩置県」により、技術的に可能になった「徴兵制度」に着手する。

一部の士族は「徴兵軍」には反対する。

「徴兵軍」が反乱した場合を危惧したのである。

そこには士族による「軍事力の独占」を維持する目論みが含まれている。

しかし、すでに薩長などの戦勝県による新政府直轄部隊である「近衛兵」があり、それが抑止力になるという論理で長州の山縣有朋や薩摩の西郷従道は反対派の長と見なされる西郷隆盛を説得する。

「報国」は最初から矛盾をはらんでいる。

国民が国に恩を感じ、報いるために兵となるのと、将たちが万骨を枯らすための捨て駒になることが同じ意味であるというのはあまりにも惨いことと言えるだろう。

この矛盾は大日本帝国の滅亡まで解決されないまま続いて行く。

一方で・・・青年将校たちは反乱を起こす。

一方で・・・官僚たちは死ねと言われたら死なねばならない特攻兵器を生み出す。

だが・・・西欧列強が「力の論理」でアジア諸国の植民地化を推し進めている時代である。

新政府に選択の余地はなかったのだ。

で、『燃ゆ・第40回』(NHK総合20151004PM8~)脚本・小松江里子、演出・橋爪紳一朗を見た。例によってシナリオに沿ったレビューはikasama4様を推奨します。今回はイラスト描き下ろし公開はお休みですが・・・前回、リンクを貼り間違えた(すでに修正)・・・久坂美和2(2015)を再度リンクさせていただきます。すでに・・・大河ドラマをこよなく愛するお茶の間からは・・・絶望のため息しか漏れない秋でございますな。大河史上もっとも歴史音痴だった脚本家をまとめとして投入する・・・一種の嫌がらせでございますよね。もちろん・・・いろいろなタイプの作家がいても構わない・・・歴史が苦手な作家がいてもいいという考え方もあります。しかし・・・歴史というものは一種の常識でございます。作家が過去や現在や未来を物語る存在である以上・・・作文ができるのとおなじくらい基礎の教養であってほしいと思うのですな。三人姉妹が二人姉妹になったり・・・すでに足柄県(神奈川県の一部)の役人になっている楫取素彦がいつまでも山口県にいたり・・・徴兵制に反対だった西郷隆盛が徴兵制度を宣言したり・・・もう・・・いろいろと愕然とするわけです。士族に対する優遇策をセットで・・・と不服そうに口を尖らせているじゃないか・・・などと弁明されても困るのですな。駆け足で通りすぎていくなら・・・最低限のわかりやすさが作法というものでございますからなあ・・・。ああ・・・このまま・・・今年は暮れていくのでしょうなあ・・・。できれば、毎週、日曜日が待ち遠しい・・・そんな時代がまた来るとよろしいですなあ・・・。

Hanam040大河名物加速展開であるが・・・本年度は常に加速気味であるので「今」が幕末であるのか維新後であるのかも定かではない按配である。新政府が「日本」を描こうとするのが困難なのと同様に平成の人が「明治」を描くのは困難なんだな。明治三年(1870年)、ドイツ統一戦争に端を発した欧州の戦乱はドイツを統一したプロイセンとフランスが雌雄を決する普仏戦争へと発展する。明治四年(1871年)、プロイセン(ドイツ)はフランスに勝利し、フランス留学中の西園寺公望はフランスの敗北を体感した。陸軍がフランス式よりもドイツ式を選択する大いなる要因である。特にドイツの戦場への兵の動員力は徴兵制度の必要性を日本に知らしめた。明治五年(1872年)、明治政府は全国寡兵の詔を発する。この年、楫取素彦は足柄県参事となり、以後、明治七年(1874年)に熊谷県権令、明治九年(1876年)に群馬県令と順調に出世していく。新政府は文明開化と称する欧米化路線を進み・・・攘夷を目的として倒幕を果たした志士たちは時代から取り残され、不満を高めて行く。防衛戦争としての征韓論に最後の望みを託した西郷隆盛は自重を促され・・・大日本帝国成立のための最後の内戦へと追い立てられて行くのである。日本の夜明けはまだ遠いのだった。明治二年、京都島原の桔梗屋抱え芸妓で久坂の愛妾辰路の子とされる久坂秀次郎はフランス留学前の品川弥二郎によって山口県に送られる。久坂家はすでに楫取素彦の子・粂次郎が継承していたたために秀次郎は玄瑞の従姉が嫁いでいた椿家で養育されることになる。後に文の兄・杉民治と素彦が談合し、粂次郎は楫取家に戻され、秀次郎が久坂家を継承。やがて秀次郎は品川弥二郎と関係の深い日本初の貿易商社・大倉組商会(後の大倉財閥)に入社することになる。真偽は別として久坂玄瑞の血脈は受け継がれたのである。

「文・・・文・・・」

昔の名で呼ばれて久坂美和は意識を取り戻した。

目の前に長姉の児玉芳子(千代)がいて・・・美和の顔を覗き込んでいた。

「姉上・・・」

美和は児玉家に嫁いだ姉の顔を見る。芳子は七才になった息子の庫三(くらぞう)を連れて玉木文之進が再興した松下村塾を訪れていた。庫三は吉田松陰の吉田家を継承することが決まっている。そのために松陰と同じように松陰の叔父である文之進の教えを受けているのだった。

美和は法事の打ち合わせで萩郊外の杉家を訪れ、縁側で東京の新政府要人たちの心を読んでいる間に意識を失っていたらしい。

「心を遊ばせすぎてはなりません」

杉一族に伝わる特殊な能力について当然ながら芳子は理解している。

美和ほどではないが芳子にも察相の力があった。

「はい・・・」

美和は頷いた。その「力」と妊娠・出産にはなんらかの関係があるらしく・・・石女となった美和の力は弱まらない。処女の巫女のように読心力は強まっている。

「人の心を読みすぎれば・・・あなた自身の心を失くしますよ」

「・・・」

美和は幽かな苛立ちを感じながら・・・芳子の言葉を聞く。

居ながらにしてあらゆる要人の心を知る美和は一種の神である。

最先端の知見を持つ美和にとって芳子はただの女に過ぎない。

芳子の言葉が耳触りなのである。

しかし・・・芳子はくのいちとして言霊の法を美和に仕掛けている。

「満月・・・盆のような月」

芳子が千代と名乗っていた頃・・・幼い妹・文にかけた暗示の呪文が美和の心を呼び覚ます。

「月はかけて消えて新月」

美和は一瞬にして千代の妹である文となり・・・人としての記憶の再生が展開していく。

優しい・・・父母・・・優しい・・・兄・・・そして・・・久坂の家に嫁ぎ・・・後家となり・・・奥御殿に勤め・・・。

美和は人としての悲しみを感じ・・・我を取り戻す。

「・・・」

「文・・・いや・・・美和殿・・・人としての心を失くしてはなりません・・・辛く・・・苦しいことが多かろうとも・・・そこには喜びもあったはず・・・」

「雲の上に・・・月はいつでもあるのですね・・・」

「そうです・・・今夜は三日月です」

美和は月光を心に感じる。

鬱屈していた思いが解き放たれたように・・・心は落ち着いていた。

美和は・・・姉の心にある労りの気持ちを素直に感じる。

「姉上・・・ありがとうございます」

「世話はありませんよ」

芳子は微笑むと立ち上がる。

美和は夕餉の支度をする老母を手伝うために台所に向かう。

兄の民治が家路についている気配がある。

そこに緊張感が漂っていることに美和は気付く。

萩城下では・・・不穏な気配が膨らみ始めていた。

「叔父上・・・」

美和は・・・兄・松陰の示した未来の景色を思い出す。

玉木文之進の最後の時が迫っていた。

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2015年10月 4日 (日)

孤独のグルメ(松重豊)すっかりオモニになったよ(西尾まり)

役作りで増量したのかよっ。

一日の始りは深夜である。

夜中に焼き肉を食べると・・・昔のアイドルを思い出す。

あの子が死んだ朝も近所で焼き肉食べていたからな。

なんだかんだしていると一日はあっという間だ。

一年もあっという間だし・・・一生もあっという間なのかもしれない。

深夜アニメの視聴継続を決めるためにとにかく一話は見なければならない。

そうこうしている間に誰かに感謝祭では田中圭がぶら下がって勝利している。

首をつっているのかと思ったぞ。

そして・・・テレ朝のサスペンスでは中山忍がスパナで後頭部を一撃されて死亡。

しかし、安心してください・・・来週も出演しています。

その少し前にダレノガレ明美は歴代最低点でとにかく明るいバカとなった。

そして・・・ラグビーワールドカップ2015のグループBで・・・日本は南アフリカ代表に続いてサモア代表を破り二勝目を挙げた。地上波で日本代表が勝つのを見たのは初めてだ。

勝ち点の関係で決勝トーナメント進出は難しそうだが・・・とにかく・・・三勝目に期待したい・・・。

スポーツとしてはかなりバカな感じで面白いからな・・・。

日本女子オープンゴルフ選手権競技は三日目で首位が菊地絵理香、二位が柏原明日架である。

きくちにかしわばら・・・なんだか・・・とてもなつかしい響きだなあ・・・。

ももことかよしえとか・・・。

で、『ドラマ24 孤独のグルメ Season5・第1回』(テレビ東京201510030012~)原作・久住昌之/谷口ジロー、脚本・田口佳宏、演出・溝口憲司を見た。雑貨輸入商を営む井之頭五郎(松重豊)が仕事で訪れた町で空腹感に襲われ食事をする・・・というある意味、それがどうしたという話だが・・・美味しいものに縁がない人たちは美味しいものを見るだけで満足できるのかもしれない。

そういう人たちに支えられて・・・食べ続ける五郎・・・バカだな。

今回は・・・ふとん店の佐古田(寺田農)にヨーロッパ製の家具をお奨めした後で・・・空腹感を得る五郎なのです。

南武線稲田堤駅(神奈川県川崎市)もよりの・・・美味い店を独特の嗅覚で発見する五郎。

「炭火焼肉・寿」は煙対策で扉を外している店。

オモニ(西尾まり)は四人掛けのテーブルに五郎を導くのです。

「蒸し暑くなってきたね・・・私は暑い時は相模原のスーパー銭湯に行くのよ」

オモニは饒舌だった。

そこからは・・・烏龍茶をジョッキで頼むと・・・五郎はメニューから注文を開始。

炭火の熱が・・・五郎の溶鉱炉にも着火するのです。

分厚いタン塩・・・。

一口には大きいのでトングで掴んでハサミで切る五郎。

薬味のゴマを両面につけると・・・かなり香ばしい。

(これは・・・勉強になった)

それを・・・今か・・・と思うが・・・バカだからな。

そして漬けて二時間の白菜(ペチェ)のキムチ・・・。

(うーまい)

そして・・・お奨めのメニュー「ガーリックハラミ」・・・。

まぶしたニンニクは・・・皿に落して焼き・・・後につけるという・・・なんだか危険な匂いのする展開だが・・・。

(なーるほど・ザ・ガーリック)

焼き肉をごはんにのせる喜び。

(おーおう)

オモニが素手で網を換え、ごはんはおかわり・・・。

塩辛がサービスである。

そして・・・「サムギョプサル」(豚のバラ肉)は胡瓜とネギの付け合わせ。

(あっ!そういうこと!・・・)

そして・・・「上カルビ」は塩とタレで一枚ずつ・・・。

(ぶたうま~)

満腹する五郎・・・バカなのである。

オモニは常連客のお土産の「梨」をお裾わけしてくれるのだった。

(これ以上・・・ナッシング・・・)

「ごちそうさま・・・」

真夜中にテレビを見て涎を垂れ流す・・・こんなにバカなことはないのです。

日本は・・・平和だ。

でも・・・五郎より・・・小泉さんが好きだ。

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2015年10月 3日 (土)

あさが来た(玉木宏)新しい朝が来た(鈴木梨央)希望の朝だ(守殿愛生)

最終回の頃をスルーした「まれ」の後が「あさが来た」である。

人生に王道なしという意味では「まれ」は「まれ」で良かったのだと思う。

ちゃらんぽらんでいきあたりばったりで幸せでも不幸せでなくてもなんとなく生きて行くのが人間である。

しかし・・・朝からどうでもいい他人の人生の愚痴を聞くのは「純と愛」でやめておくべきだったな。

朝はとにかく・・・さわやかになりたいお茶の間である。

まあ・・・21世紀の最高の朝ドラマ「あまちゃん」の後ではどんなドラマだって些少の見劣りをする。

「まれ」の場合・・・現代ものということでさらに「粗」が目立っただけなのである。

オリジナルって・・・厳しいよねえ。

そういうわけで・・・今回は実在の人物に材をとり・・・しかも「小説 土佐堀川 女性実業家・広岡浅子の生涯」というそこそこまとめられたものがある。

脚本家は実力派である。

まったりできるといいよねえ・・・朝が楽しみになるとよろしいですな。

で、『あさが来た・第1~6回(第1週)』(NHK総合20150928AM8~)原案・古川智映子、脚本・大森美香、演出・西谷真一を見た。ヒロインのモデルは広岡浅子で嘉永二年(1849年)の生まれである。実際は妾腹で父親の三井高益は浅子が数えで十歳の時に没している。二歳年上の異母姉の春も妾腹であり、二人は妾腹の異母姉妹。老舗である三井家の別家から養子の三井高喜が来て、春は高喜の養女、浅子は義妹となる。

江戸時代の商家なのである。

このままだと・・・お茶の間に受け入れられるのが困難なのでフィクションにするのだ。

三井家は・・・今井家になる。

義兄の三井高喜は実父の今井忠興(升毅)に変換され、実の実父の三井高益は祖父の今井忠政(林与一)に変換される。

二人の妾は存在を抹消され、姉妹の実母・今井梨江(寺島しのぶ)が挿入される。

これは「戦国自衛隊」的パラレルワールドの話なのである。

こうして・・・誕生した今井はつ(守殿愛生→宮﨑あおい)と今井あさ(鈴木梨央→波瑠)の同母姉妹なのだった。

子役変換的には守殿愛生→波瑠で、鈴木梨央→宮﨑あおいのような気がして仕方ないがα軸からβ軸の変換中に移送ミスがあったと解釈できるので大丈夫だ。

・・・もういいか・・・。

とにかく・・・幕末とか明治に生きる人々をお茶の間に届けるのはいろいろと大変なんだなあ。

嘉永二年。江戸では近藤勇が天然理心流剣術道場・試衛場で目録を受けている。京都の両替商・今井家の次女・あさが生まれる。

嘉永六年。黒船来航。

安政元年。あさは凧とともに飛ぼうとして木から落ちる。あさは数え年で七歳だった。

文久二年。あさは数え十三歳である。

実在の浅子は大坂の豪商・加島屋久右衛門の次男・広岡信五郎に嫁ぐことになるのだが、あさは白岡新次郎(玉木宏)の許嫁となる。

広岡進五郎は天保十二年(1841年)生まれなのであさとは八歳違い。この年、二十一歳である。玉木宏の実年齢が満三十五歳なのがアレだという人がいるが、ドラマ「リモート」(2002年)で深田恭子の婚約者として「そげな~」と言っている頃と今もほとんど同じように見えるとキッドは考えます。

鈴木梨央の実年令が満十歳なので年の差二十歳じゃないかとか・・・お茶の間はあまり深く考えてはいけません。

実年齢より若く見えたり、実年齢より老けて見えるのは日常茶飯事ではありませんか。

あさは蛇をぶんぶん振りまわし、男の子と相撲をとり、男の子のように褌しめたがる・・・十三人に一人いるタイプだったので・・・大人の男性を前にして・・・複雑な気持ちになるのでした。

しかも・・・新次郎はいかにも軽薄そうな遊び人タイプだったのです。

そして・・・小猿のような振る舞いのあさを「小猿ちゃん」と呼び・・・父親に折檻されたあさの「おいど(お尻)」の心配をしたりするのです。

男の子のようになりたい女の子のあさは・・・もう頭が沸騰するのでした。

あさは・・・今井家の長男・久太郎(興津正太郎)のように学問がしたいのです。

しかし・・・時代は良妻賢母以前・・・女は子供を生むための道具でしかなかったのです。

「女に学問は必要ない」

これは戦前までは常識だったのです。

「女が学問なんかしたらろくなことはない」とほとんどの男たちが本気で思っている時代です。

けれど・・・あさは・・・朝ドラマのヒロインに相応しい特別な子供です。

「なんでどす・・・うちかて・・・自分の行く道くらい・・・決めとうおます・・・」

そして・・・また折檻されるあさでした。

「うちのしつけが・・・悪かった・・・」

母の梨江は暗澹たる気持ちになりました。

それでもパラレルワールドなので・・・父の忠興は本当は娘を案じるマイホーム・パパ。

娘たちの許嫁の様子を見るために大阪へ一家で旅をします。

大老の井伊直弼が桜田門外で暗殺された翌年です・・・世情は騒がしさで一杯。

薩摩の大久保一蔵は公家の岩倉具視とともに公武合体を目指して京都で暗躍中。

長崎海軍伝習所で航海術を学んだ五代才助(ディーン・フジオカ)は探偵になるために水夫に身をやつし上海に渡航。

そして・・・姉のはつの許嫁は眉山惣兵衛(柄本佑)は貧乏ゆすりのとまらない白蛇でした。

白岡新次郎の両親は・・・正吉(近藤正臣)、よの(風吹ジュン)・・・。

母親には高等遊民の母の風格が漂います。

京都に戻った姉妹・・・。

気丈で優等生タイプの姉もさすがに・・・許嫁が白蛇だったので・・・落涙です。

新次郎に冷たくあしらわれた妹も号泣です。

しかし・・・翌朝・・・姉はいつものようにすましています。

世の中にはどうにもならないことがあると受け入れたのです。

それが・・・母も歩んだ女の道だから・・・。

しかし・・・あさは・・・不可能を可能にする朝ドラマのヒロインです。

「おかしいのはうちじゃない・・・世の中どす」

押し入れに立て篭もり徹底抗戦の構え。

そこへ・・・新次郎がやってきます。

お土産は・・・あさの欲しがっていたパチパチさんこと・・・算盤・・・。

「嫌なことは嫌やもんなあ・・・でも・・・これから・・・とくと考えて・・・その気になったら・・・お嫁はんになりなはれ・・・その時は・・・仲良うしておくんなはれ・・・」

あさは・・・新次郎の様子の良さに・・・実は一目惚れをしているのである。

優しくされたら・・・その気になっちゃうんだねえ。

ホクロの位置でバトンタッチする子役と主役。

実は白蛇サイドからフライング行為によるNGを出されていたあさ。

それを救ってくれたのが未来の夫である。

どうやら・・・びっくりぽんな人生がスタートしたらしい。

幸不幸は紙一重。

禍福は糾える縄の如し。

長州一発大逆転。

京都・甲州・函館と土方(堀北真希の夫)の人生辛かった。

「梅ちゃんは咲いてますえ」

ラジオ体操が始まりそうな朝ドラマ・・・子役時代は無難なスタートです。

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2015年10月 2日 (金)

戦後70年~一番電車が走った(阿部寛)順々におつめ願ひます(黒島結菜)

十月の谷間である。

第二次世界大戦を描くことは・・・色々な意味で困難な作業である。

安全保障についての法整備を「戦争準備」だと喚き散らす馬鹿がいる時代である。

平和学者であり、積極的平和を提唱するヨハン・ガルトゥングは「日本は軍隊を持たず、外国の攻撃に備えることをしないのが理想だ」と語るが、母国のノルウェーは第二次世界大戦でドイツ軍に占領され、現在のノルウェー軍は男女ともに徴兵制を施行している。まずは母国の武装解除をしてもらいたい。

もちろん・・・戦争はしない方がいい。

しかし・・・戦争の危機はいついかなる時もある。

自衛隊という軍隊を持つことは「やれるものならやってみろ」ということである。

強力な同盟軍を持つことは「やったらただじゃすまない」ということである。

それ以上の意味はない。

シリア上空には様々な軍の爆撃機が旋回する。

無防備な人々は爆撃に無力なだけだ。

そこに平和があるというのなら・・・頭が少しおかしいと言う他はない。

で、『戦後70年「一番電車が走った」(2015年8月10日NHK広島) 』(NHK総合20151001PM10~)脚本・岡下慶仁(他)、演出・岸善幸を見た。戦局が悪化の一途をたどる昭和十八年(1943年)・・・日本を敗戦に追い込んでいくのは連合国と言う名の米軍である。しかし・・・このドラマには米軍の姿はない。誰がそれをしたかは問題ではないのである。誰かがそういうことをする・・・それが人間だから・・・と言う話だ。

そういう意味では第二次世界大戦の現実を描いた傑作の一つと言えるだろう。

二千二百万人が死んだと言われる第二次世界大戦で・・・虐殺を重ねた米国と米国によって滅亡した大日本帝国の末裔たちが軍事同盟を締結していることは一種の奇跡・・・あるいは皮肉というものだろうから。

戦地に男たちが狩りだされ、大リーグに女子プロ野球のプリティー・リーグが誕生したように、男手の足りない広島電鉄は広島電鉄家政女学校を作り、少女運転手を育成した。広島周辺からは希望に燃える少女たちが集ったのである。

雨田豊子(黒島結菜)はその第一期生で・・・すでに少女運転士として面電車に乗務している。

豊子の従妹で第二期生のさっちゃんこと小西幸子(清水くるみ)や同じく第二期生の西八重子(秋月成美)は家政女学校の女子寮で豊子を師と仰ぎ、車掌として勤務している。

戦時下の広島で・・・豊子たちは貴重な市民の足を担っていたのだった。

昭和十九年、軍需省から転職し、広島電鉄電気課課長となった松浦明孝(阿部寛)は妻を病気で亡くした三人の子供を広島市郊外で育てている。通勤に使う路面電車で松浦は豊子と顔見知りになるのだった。

食糧事情は厳しくなり、少女たちの発育は遅れ、十代になってようやく八重子が初潮を迎えても赤飯を炊くことなどは夢である。虱に食われた体を川で洗う少女たちには石鹸もないのだった。

陸軍軍曹の森永勘太郎(中村蒼)は運転席の豊子に惹かれ・・・出征前の思い出として、団子を餌に直子を写真館に誘う。

妹として写真を撮影される直子。

それを胸に戦地へ向かう森永軍曹の気持ちを感じることが・・・豊子の初恋だった。

そうとは知らずに団子を食べるさっちゃん・・・。

「まずいね・・・」

「まずいと思ったら食べないで・・・みんなお腹へらしとるんよ」

優しい豊子も殺気立つのである。

田舎の母親から送られてきた桃を八重子が取り出し・・・無心に味わう三人娘なのである。

これが平和というものだ。

米軍による本土空襲が予想され、松浦は発電施設の疎開を命じられる。

しかし、広島電鉄千田町変電所勤務の安永(新井浩文)は人手不足を理由に難色を示すのだった。

実現不可能の命令に・・・松浦は中間管理職として頭を悩ませる。

広島の暑い夏・・・八月六日の朝はあわただしくやってくる。

朝の体操に出た安永は原爆の放射線を浴びる。

運転手の豊子、車掌の八重子、運転士見習いの幸子を乗せた路面電車は爆心地から二キロほどを運行中だった。

吹き飛ばされた豊子が意識を取り戻すと・・・広島市は瓦礫の山と化している。

燃えあがる市街地、横たわる死体の群れ・・・。

「さっちゃん・・・八重ちゃん・・・あああああああ」

豊子は頭部から血を流しながら・・・友人たちの姿を捜す。

八重子は背中に重傷を負った幸子を支えていた。

「さっちゃん・・・背中にガラスり破片がいっぱい刺さって」

「とよちゃん・・・」

「とにかく学校に戻って・・・お医者様に見せないと」

幸子を支えて・・・歩きだす三人。

「痛い・・・痛くて・・・もう歩けない」

気力の萎えた幸子は歩くのをやめる。

「死んでしまうよ」

「私・・・ここで死んで・・・地獄に行くわ」

「ここが地獄なのよ」

「豊ちゃんは・・・鬼だわ・・・」

「ほうじゃのう」

「こらえてつかあさい」

「じゃけんのう」

幸子を宥めすかしてよろめくように歩く三人。

市内の被害を調査中の松浦は娘を捜して道を尋ねる男に躊躇する。

「役所はどこかのう・・・」

「・・・」

「線路に沿ってまっすぐです」

豊子の凛とした声が響く。

うろたえていた松浦は足元の線路が無事であることにようやく気がついたのである。

「とにかく・・・被害の少ない路線で・・・運転再開だ・・・」

電車バカの誕生だった。

避難所となった学校は・・・負傷者であふれている。

豊子の父親が田舎から迎えに来るが・・・友人たちを見捨てられない豊子。

「帰れんよ・・・」

広島電鉄家政女学校教諭の高村(モロ師岡)は心を鬼にして豊子の父親に叫ぶ。

「ここは・・・怪我人だらけだ・・・動けるものに看病してもらう他ないのです」

豊子の父親は・・・高村に頭を下げるのだった。

高村も頭を下げる。

一部路線の復旧の目途が立った松浦は・・・運転士を確保するために学校にやってくれ。

「明日から・・・走らせる・・・運転士を頼みたい」

「こんなにみんな・・・苦しい思いをしているのに・・・電車を走らせないとならんのじゃろか」

ついに悲痛な思いを叫ぶ豊子。

「頼みます・・・他に頼める人がおらんのじゃ」

そして・・・一番電車は走った。

車中には道を尋ねていた男がいた。

男は十銭を差し出す。

「今日は無料です」

「なにか・・・美味いもんでも食べてくれ・・・あんたのおかげて娘が見つかった」

男は娘の遺骨が入った弁当箱を抱えていた。

学校に戻った豊子は幸子が消えているのに気がつく。

「さっちゃんは・・・お母さんが迎えにきて・・・田舎に帰ったよ・・・これ・・・」

八重子は幸子の母親の残して言った桃を差し出す。

「あとで・・・一緒に食べよう」

しかし・・・大量に被曝した八重子の身体は急速に衰えていた。

八月十五日・・・玉音放送の後・・・。

生き残った豊子たちは・・・八重子の死体を裏山で火葬する。

豊子は一人・・・桃を食べる。

一人ぼっちになった豊子はそれでも電車を走らせる。

森永軍曹は戦死した。何者かがその報せを学校に残す。

豊子はそれでも電車を走らせる。

安永には死相が浮かんでいる。

「新型爆弾には・・・毒性があるらしい・・・下痢がとまらない」

「家族のもとへ・・・」

「くやしいが・・・もう・・・家族は・・・」

妻子を亡くした安永は黒こげのでんでん太鼓を示した。

「・・・」

「下痢をしても・・・腹は減りますな」

郊外の家に戻った松浦は幼い娘の佐和子(根本真陽)が握る配給の胡瓜を施しとしてもらいうける。

それでも・・・松浦は電車は走らせる。

そして・・・九月。

戦地から男たちが復帰して・・・少女たちの役目は終わった。

家政女学校は解散となったのだ。

立ちすくむ豊子のもとへ・・・松浦がやってくる。

「ありがとうございました」

「ありがとうございました」

二人はそれぞれの思いを胸に別れた。

豊子は・・・川で禊をする。

そして・・・戦後七十年を生きる。

その間、日本は耐えがたきを耐え忍びがたきを忍び・・・概ね・・・平和だった。

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2015年10月 1日 (木)

産休直前刑事は走らない(黒木メイサ)そもそも走れるのかよっ(安達祐実)

これかっ・・・二回目をやっちゃうとレギュラーの可能性が残るぞ。

だって・・・面白いんだもの。

公務員の人権が保障されている感じがな・・・。

妊娠した女性が軽易な業務に転換しているしな。

さらに・・・自然分娩の予定日から6週間以内の女性が産前産後休業を請求した場合は就業させてはならないという労働基準法第65条に定められた通りになっている。

少子化対策の徹底とは・・・これが民間レベルでも守られるように国家が補助することなんだよな。

男女雇用機会均等法はそれでこそ・・・なんだな。

だから・・・デートの佳織(国仲涼子)が別人となっていることは素晴らしいことなのだ。

第1子男児が誕生した直前なので産休中だったのだからな。

すべては向井理が悪いんだな。

・・・違うよっ。

で、『デザイナーベイビー~速水刑事、産休前の難事件~・第2回』(NHK総合20150929PM10~)原作・岡井崇、脚本・早船歌江子、演出・岩本仁志を見た。あくまで谷間であるのだが。産休一週間前の速水悠里(黒木メイサ)は警視庁捜査一課特殊犯捜査係の刑事だったが・・・庶務課に移動中である。しかし・・・その能力は高く評価されているらしい。新生児誘拐事件が発生し、特殊犯捜査係の日村係長(神保悟志)は速水刑事を現場に召喚するのだった。誘拐された新生児はオリンビックで金メダルを獲得したマラソンランナー・近森優子(安達祐実)の娘・望(仮)・・・。誘拐したのは城南大学附属病院産婦人科で子供を死産したばかりの岸田トモ(安藤玉恵)だった。トモの夫・裕也(淵上泰史)と電話で交渉した速水刑事はトモの分娩を担当した産婦人科の教授である須佐見誠二郎(渡部篤郎)が身代金の受け渡し人として指名されたことに違和感を感じる。

「この病院・・・なんだか・・・変です」

しかし・・・事件の糸口が見えたことで・・・一応の役目を終える速水刑事だった。

警察も所在を掴めない岸田夫妻の居所を・・・掴んでいる男(柿澤勇人)がいた。

城南大学附属病院・病院長秘書の有吉久美(臼田あさ美)と何らかの関係を持っているらしい。荒んだ雰囲気を持つ謎めいた男は・・・何故か・・・岸田夫妻をマークしているのだった。

土曜日・・・二千万円入りの目立たず、運びやすいカバンを持った須佐見教授は受け渡し場所に指定された新宿駅東口の地下街に到着する。

周囲を固める刑事たち・・・。

しかし・・・約束の正午を過ぎても・・・犯人は姿を見せなかった。

解放された速水刑事はどうやらお腹の子の父親らしい下地浩介(山崎樹範)の連れ子らしい中学生の雄介(若山耀人)との映画鑑賞に向かう。

養母として息子の趣味を知っておきたかったらしい。

しかし・・・雄介は・・・生と死の狭間に生きるゾンビをこよなく愛するホラー・フリークだった。

城南大学附属病院では事件についてのリスクマネジメント会議が行われていた。

教授たちは・・・事件になんらかの関わりがあったとして須佐見の責任を追及する。

病院長の峠緑郎(柴俊夫)は須佐見を庇う言動を見せるが、事務長の大井出慎(佐伯新)は中立的な立場を演じ・・・高度生殖補助医療を行う「トータルケアプロジェクト」の特任教授・崎山典彦(渡辺いっけい)は素知らぬ顔を装っている。

「死産に問題があったのではないのですか」

「須佐見くんは・・・分娩の権威だ・・・」

もしも・・・問題があったとしたら・・・不妊治療に何らかの原因が求められるという含みである。

病院はやはり・・・何かを隠しているようだ。

身代金の受け渡し現場に・・・犯人が現れない。

混乱する病院内の捜査本部に・・・別事件を解決した警視庁捜査一課の与那国令子管理官(松下由樹)が合流する。

エリート官僚として出世を目指す与那国管理官は・・・現場の状況から佐伯刑事を呼び戻すことを提案する。

不慮の事態になった場合に・・・犯人との交渉にあたった速水に責任を負わせようと言う魂胆らしい。

愛児を奪われた近森優子は搾乳を続けている。

腕利きの西室刑事(手塚とおる)は病室で優子の長男が天才であることを実感している。

夫の連れ子から・・・臓物はみだしゾンビフィギュアをプレゼントされた速水刑事は現場に戻ってくるのだった。

「犯人が現れない」

「何か・・・状況が変化したのかもしれません」

「誘拐された新生児が・・・死んだとか・・・」

サイコパスのムードを漂わせる与那国は・・・速水刑事を冷たく見据える。

「岸田夫妻の周辺を洗ってみます」

「・・・そうしてちょうだい」

身重の速水刑事の運転手に指名される土橋福助刑事(渡辺大知)・・・。

功名心に狩られ始めたらしい・・・。

「現場にでたかったんですよ」

速水は岸田トモの姉(つみきみほ)を訪ねる。

子宝に恵まれた姉の家は子供たちの歓声に満ちている。

手柄を求めて高圧的な態度に出る土橋刑事。

「隠し事をすると・・・いいことないですよ」

「あの子は・・・この家には来ないと思います」

不妊治療に励んでいた妹の苦境を思いやる姉・・・。

妊婦であることを武器に相手の懐に入り込む速水刑事だった。

「いろいろと・・・大変だったでしょうねえ」

そして・・・あっさりと引き下がる速水刑事。

「捜査しないんですか・・・」

「これからは黙っていて」

「何故ですか・・・」

「捜査の邪魔だからよ・・・」

土橋の暴走に釘をさす速水だった。

しかし・・・若く愚かな土橋は腑に落ちない。

「捜査ってなんですか・・・」

「犯人とトモダチになることよ」

「・・・」

背後からトモの姉が声をかける・・・。

「そういえば・・・見舞いに行った時・・・あの子・・・バチがあたったって・・・」

「バチですか・・・」

速水刑事は夫の職場に保険の外交員を装って潜入する。

土橋刑事はふてくされていた。

「こんなところ・・・所轄の刑事があたってますよ」

「そうね・・・」

職場の同僚たちは・・・「学資保険の勧誘」と聞いて顔色を変える。

「ダメだったんだよ・・・早く帰った方がいい」

「そうですか」

土橋は口をとがらせる。

「ダメだったじゃないですか」

「岸田裕也は仲間に愛されていたことが・・・わかったわ」

「それが・・・何になるんです」

しかし・・・二人の前に裕也が現れる。

「ダメよ・・・」

速水は自重を促すが土橋は猟犬のように追跡を開始する。

しかし・・・土地勘のある裕也は土橋の追跡を振り切るのだった。

失態に蒼ざめる土橋・・・。

「これで・・・岸田裕也は警察が動いていることを知ってしまったわね」

「・・・」

「現場の捜査員を引き揚げさせる」と与那国管理官。

「待ってください・・・」と速水刑事。

「何よ」

「岸田裕也が・・・身代金を受け取りに来なかったのは・・・トモに逃げられたからだと思います。だから・・・裕也は職場に戻ってきた。そこで警察官の存在を知った裕也は・・・家族も職も失ったことを悟った・・・もう自分には何もない・・・それなら・・・怨んでいる医師と・・・彼の持っている金を・・・」

「推測では捜査員を無駄にできないわ・・・捜査は解除します」

しかし・・・捜査員が持ち場を離れた隙に・・・裕也が現れ・・・須佐見を攫う。

須佐見は裕也に暴行され・・・身代金を奪われる。

失敗を挽回しようと現場に駆けつける土橋。

警官たちは・・・裕也を包囲していく。

「危ないわ・・・」

「何が・・・」

「彼には・・・失うものが・・・もうありません」

「・・・」

与那国は可能性に気がつく。

「早急に確保しなさい」

しかし・・・神田川にかかる高架橋に犯人を追いつめる警官たち。

裕也は・・・川に身を投げた。

「ああああああああああああ」

とりかえしのつかないことをしてしまったと自責の念にかられる土橋だった。

「なんだって・・・投身自殺したのかよ」

「死んではいないみたい・・・」

有吉久美(臼田あさ美)は謎の男と通話する。

「金はどうなった・・・回収されたのか」

「そんなの・・・知らないわよ」

謎の男は・・・「向井産婦人科」の建物を見つめる。

これはフリである。

別の産婦人科には・・・別の新生児がいるのだ。

落ち込む土橋に指令を与える速水・・・。

「彼女が勤務先を辞めた後のバイト先を洗いなさい」

「妊婦さんは・・・人遣いが荒いですね・・・」

「そういうものよ・・・覚えておきなさい」

速水は患者のフリをして・・・妊婦たちに紛れ込む。

「死産の後で経過観察のための入院って・・・辛いよね」

「・・・」

流産を繰り返していたトモがなぜ・・・この病院では・・・速水は疑問を﨑山主任教授に問う。

「特別なことはしてないよ・・・トータルでケアしているだけだ」

「なぜ・・・結局・・・」

「一定数起きてしまうことです・・・それでも・・・妊娠高血圧症候群とわかった時、すぐに胎児を取り出すのか、少し様子を見るのかの選択はありましたが・・・いずれにせよ、リスクはありますし」

医師の一人、皆本順(細田善彦)は代弁する。

胚培養士の山原あけみ(斉藤由貴)はカンファレンスにやってくる。

「あなた・・・まるで刑事さんみたい」

「刑事です」

「あらあら・・・」

明らかに鍵を握っているキャスティングである。

怪我の治療を終えた須佐見とすれ違う速水・・・。

しかし・・・言葉を飲み込む速水だった。

深夜・・・病院に・・・電話が入る。

「・・・赤ちゃんが泣きやまないの」

居合わせた速水刑事は応対する。

「どうしましたか・・・」

「バチがあたったの・・・」

「落ちついてくださいね」

「ニセモノだから・・・」

逆探知した電話番号は・・・土橋の調べた岸田トモのバイト先と一致した。

刑事たちは現場に急行する。

妊婦の速水と死産したトモの恐ろしいほどの緊迫感・・・。

「赤ちゃんはちょっと起源が悪いだけかも・・・」

「何をしてもダメ・・・」

「いろいろとあるんですよ・・・スーパーのレジ袋をくしゃくしゃすると泣きやんだりします」

「・・・」

速水はレジ袋をくしゃくしゃした。

その音がトモを一瞬、正気に戻す。

「赤ちゃんにも聞かせてみて・・・」

泣く子が黙るのだった・・・。

トモはレジ袋をくしゃくしゃする。

新生児は音に耳を澄ます。

「泣きやんだ・・・」

「もう・・・大丈夫ですよ・・・赤ちゃんを抱いてあげて・・・」

トモは赤ん坊を抱き上げた。

受話器から流れ出す・・・トモの子守唄・・・。

刑事たちは現場に到着した。

逸る土橋を西室刑事(手塚とおる)がいさめる。

「親しき仲にも礼儀ありだ・・・そっとだぞ・・・そっと・・・」

トモは逮捕され・・・新生児は病院に戻る。

看護師の制止を振りきり・・・駆け寄る近森優子・・・。

速水刑事が気を緩めた瞬間・・・。

「ちがう・・・この子じゃない・・・私の赤ちゃんじゃない・・・私の赤ちゃんは・・・どこ・・・私の赤ちゃんを返して」

優子の悲痛な叫び・・・。

速水刑事は息を飲む。

事件はふりだしに戻る・・・。

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