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2015年10月16日 (金)

幽霊大好き杉下さん(水谷豊)其処は地獄であるべきかさもなくば天国(反町隆史)

ダークナイトこと甲斐享(成宮寛貴)が懲戒免職となり・・・無期停職の処分を受けた杉下右京(水谷豊)の帰還である。

秋ドラマのミステリー色は強いわけだが・・・もはや老舗の風格漂う・・・これは別格なのだろう。

法治国家とは何か・・・ここを問うてくるドラマである。

もちろん・・・法は秩序を維持するための道具だが・・・当然の如く、それは既得権益を保護する性格を持つ。

反体制を標榜するものは基本的に敵なのである。

権力者と一般市民と犯罪者。

誰の権利を守るべきか・・・警察官たちは時に苦悩する。

場合によってかなり反権力的である主人公は・・・警察権力を行使する・・・矛盾した存在だ。

自らの正義に基づき激昂する杉下右京・・・それは愚かな人間の象徴なのである。

で、『相棒 season14 ・第1回』(テレピ朝日20151014PM8~)脚本・輿水泰弘、演出・和泉聖治を見た。刑務所は法務省矯正局の管轄する施設である。西多摩刑務所(フィクション)も法務省の管轄下ということになる。刑務所内で発生した殺人事件の捜査にあたり・・・法務省のキャリア官僚であり、人事交流で警視庁警務部付に出向中の冠城亘(反町隆史)が容疑者となった受刑者の美倉(小柳心)の取調に立ち会うことが・・・東京都公安委員会が管理する警視庁の刑事たちとの「合同捜査」と言う名目になる由縁である。

西多摩刑務所は邪悪な思想に支配されている。

受刑者が更生するためには・・・刑務官がより人道的になるべきだという受刑者・梅津源平(井之上隆志)の教えを信じる梅津教が蔓延しているのである。

信者となった受刑者は歯ブラシを加工した鋭利物で胸に・・・×印を刻印するという自傷行為に及び、梅津教の信奉者であることを表明するのだった。

その元凶となったのは・・・増渕刑務官(阿部丈二)を中心とした過激な懲罰遂行である。

しかし・・・快適な刑務所というものが・・・更生には相応しくても懲罰として相応しい場所なのかどうか・・・意見が分かれるところである。

愛するものを殺されたものが・・・殺人犯が快適な場所で過ごした後・・・社会復帰することをどう思うかという話である。

やがて・・・梅津は獄中で病死する。

そして・・・刑務官の田代伊久夫(栩原楽人)が作業中の受刑者である美倉に殺害されるという事件が発生するのだった。

「警察を呼んでくれ」

美倉の希望に従い捜査一課の刑事たちと冠城が事情を聴取する。

「なぜ・・・殺した」

「田代が梅津さんを殺したから・・・仇をとったのです」

「誰が・・・そんなことを・・・お前に言った」

「梅津さんの幽霊から・・・聞きました」

一同は・・・茫然とした。

停職中の杉下右京が東京に戻り、「花の里」の月本幸子(鈴木杏樹)に顔を見せた時、警視庁刑事部鑑識課の米沢(六角精児)は「幽霊による殺人教唆」について話す。

なにしろ・・・右京は・・・「幽霊」に深い関心を持っているのだった。

実質的に廃された「特命係」は法務省からの出向者である冠城の個室となっていた。

古巣に顔を出した右京は・・・冠城と出会うのだった。

「あなたが・・・噂の・・・魔物ですか」

「はいぃ?」

二人は・・・西多摩刑務所に潜む亡霊狩りに乗り出すのである。

梅津源平は強盗殺人を犯し、無期懲役で服役中だった。

被害者は梅津を虐待した過去のある義父である。

梅津の胸の傷は義父による折檻の名残だったという。

梅津に個人的な興味を持った教戒師の僧侶・慈光(大和田獏)は面会を重ね、野獣のような男を・・・教化する。

その結果、梅津は六法全書を読みこなし、「源氏物語」を原文で読むほどの教養を身につける。

梅津の反抗的態度は・・・理論武装されたのである。

「刑務官の無法ないじめに耐えることが・・・更生の妨げになる」

梅津の言葉は・・・無法者の語る正論であるがゆえに一部の人間の心を支配する力を持つに至ったのである。

「つまり・・・カリスマ性を持ったのですな」

「心の弱いものほど・・・他人の言動に影響されやすいですから」

「昨日・・・安保法制に反対するデモを主導する学生たちのドキュメンタリーを見ましたよ。音大受験に失敗した受験生が・・・自分を選ばなかった体制に反発し、復讐していく心理が見事に描かれていました」

「それでも生きて行かなければなりませんからねえ・・・1970年の三波春夫ではなくて1968年の加藤登紀子の心情で」

「両親も兄も・・・安保法制に賛成という家族の中で・・・反体制的言動に熱中するしか・・・生きる術がなくなっていく・・・実に無惨な姿でしたね」

「しかし・・・そういう人間が生まれるのが社会というものではありませんか」

「善人なほもて往生をとぐ、いはんや悪人をや・・・ですか」

「有髪の僧侶がブームなんですな」

「あなたは・・・更生施設に置いて刑務官の理不尽な暴力に反旗を翻す梅津に・・・受刑者として我慢することを諭さなかったのですか・・・矯正とはつまるところ・・・理不尽な社会に折り合う人格形成ということでしょう」

「私は・・・好きにしなさいと言いました・・・個性を抑圧することは・・・好ましいことではありません」

「なるほど・・・殺人行為も・・・個性の発露ということですか」

「・・・」

右京の洞察力に魅了されつつ・・・冠城は独自の捜査を展開する。

右京をムチとして・・・自分はアメとなり・・・刑務官たちの重い口を開かせることを目論むのだった。

冠城が危険人物である杉下右京と行動することを危ぶむ・・・法務省の上司である日下部彌彦(榎木孝明)・・・。

息子・享の事件により警察庁長官官房付に降格された甲斐峯秋(石坂浩二)は・・・右京の復職の機会を窺う。

上司たちの思惑を越え・・・暴走を始める新たなる相棒たち・・・。

受刑者への懲罰につながる動静小票に注目した右京は・・・殺された田代刑務官の発行数が極端に少ないことから・・・田代刑務官が受刑者に寛容なタイプだったことを推測する。

逆に発行数の多い伊達刑務官に事情を聴取する右京。

「私が・・・勤務に忠実だからといって・・・田代刑務官がそうではなかったというつもりはありません」

「そういう人がいるのではないのですか」

「ここだけの話・・・増渕刑務官は・・・田代刑務官に批判的でした・・・お分かりでしょう・・・ここにいるのは・・・人畜無害な一般人ではない・・・犯罪を犯した経歴のあるものたちなのです。そういう人間に対するのは・・・恐ろしいことでもあるのですよ」

やがて・・・梅津信者たちが暴動を起こし・・・増渕の身柄を要求するという事件が発生する。

捜査一課の芹沢刑事(山中崇史)を身代わりに仕立てた二人は難を逃れ・・・事件の真相にたどり着く。

磐城所長(川島一平)は梅津の遺物を踏み絵させることで・・・梅津信者を割り出していた。

増渕刑務官は隠れ信者だった美倉を見逃し、美倉と同室の受刑者たちを利用し、就寝中の美倉に「田代に殺された」という梅津の亡霊としての言葉を吹き込んだのである。

美倉は・・・増渕のトリックに誘導されて・・・田代を殺害したのだった。

受刑者たちの噂から真相を知った伊達は・・・梅津信者たちに・・・「増渕が美倉を騙して田代を殺させた」という真相を流す。

刑務官でありながら梅津信者だった図書貸出担当だった坂崎(真田幹也)は詩集を使った通信手段で暴動を手引きしたのだった。

「なぜ・・・余計なことをしたのです」

「増渕を助けたことですか」

「あんな奴・・・殺されてしまえばよかった」

「・・・」

「私だって・・・受刑者たちを更生させる刑務官でありたかったんだ」

「自分の正義に従って・・・理想の刑務官になることもできたはずだ」と冠城。

「そして・・・田代さんのように殺されれば良かったと?」

「・・・」

殺人教唆の罪で増渕刑務官は逮捕される。

「あんた・・・味方じゃなかったのか」と冠城を詰る増渕。

「私は・・・正義の味方だ・・・」

「ポイズン・・・」

右京は真の黒幕である・・・僧侶・慈光を追及する。

「梅津は自殺だったのでしょう・・・心臓発作が起きた時に・・・あえて・・・助けを呼ばなかったのはそのためです・・・しかし、梅津にとっての性の教科書だった源氏物語に・・・暗号で遺書が残されていた・・・田代さんはそれに気が付き・・・あなたを責めたはずだ・・・」

「そうです・・・私は・・・梅津を正しく導いたつもりだった・・・しかし、刑務所の秩序を乱すほどの怪物に成長した梅津が恐ろしくなったのです。私がフランケンシュタイン博士なら・・・梅津は私が生みだしたモンスターでした・・・」

「そのたとえは・・・一般的とは言えないでしょうね」

「ええ・・・」

「あなたは・・・本当は梅津になんと言ったのです」

「お前は失敗作だと・・・」

「苦界から自分を救ってくれた第二の父親に見捨てられ・・・梅津は・・・死を覚悟したのですね」

「・・・」

「自分は安全な場所にいて・・・命がけの理想を他人に強いる・・・そういう人を・・・何と言うのでしょう。私なら・・・こう言います・・・この卑怯者!」

右京の痛烈な言葉にうなだれる住職だった。

こうして・・・男だらけの世界で新たなる相棒たちの冒険が幕を開けるのだった。

やはり・・・このドラマはテレビ朝日の良心のようだ。

関連するキッドのブログ→相棒 season13 最終回スペシャル

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