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2015年10月25日 (日)

忘れじのお着替え探偵(新垣結衣)愛の釘を刺された男(岡田将生)

神話時代のギリシャでは天空と大地は主神の座を争う。

ガイアは母なる大地を示す主神である。

ガイアは天空の神であるウラヌスを生む。

ウラヌスは支配者として君臨するが・・・その子・クロノスは父を去勢する。

クロノスは農耕の神であり・・・ガイアの後継者である。

そして、最終的にクロノスの子・ゼウスが親殺しをして世界を支配するのだった。

大地から天空へ、天空から大地へ、主権は移り・・・最後に天地を支配する神々の王ゼウスが登場するわけである。

子孫たちの血なまぐさい抗争を・・・母なるガイアは見つめ続けるのだった。

で、『掟上今日子の備忘録・第3回』(日本テレビ20151024PM9~)原作・西尾維新、脚本・野木亜紀子、演出・茂山佳則を見た。カオスという混沌から・・・古の人々の妄想は・・・言葉を得て物語るようになる。古代ギリシャには二柱のクロノスがある。農耕神であるクロノスは・・・土に潜むサターンの別名となる。一方でカオスから生まれたクロノスは世界を動かす時を象徴する。クロノスαとクロノスβは別の神であるというが・・・時間こそが・・・魔そのものであるという思想を浮上させる。愛するものを裏切らせるのも時・・・愛する者を奪い去るのも時なのである。大地の子・クロノスと混沌を制したクロノスは・・・やはり同じ神であると言えないこともないと悪魔は考える。

目覚めてから眠るまで・・・睡眠と睡眠の間の記憶だけを持続できるのは幸せなことかもしれない。

一分前の記憶も定かではない認知症の人間は基本的に・・・嫌なことがない。

たとえ・・・息子に「クソババア」と暴言をはかれてもたちどころに忘却してしまう。

悩みがないとはこのことだ。

もちろん・・・自分が・・・そうなってしまうのはなんだか恐ろしいことではある。

頭脳明晰な掟上今日子(新垣結衣)は抜群の推理力でリセットされてしまう一日をそれなりに理解し・・・味わい・・・生き抜いていくのだった。

昨日、何があったか・・・思い出せなくても・・・人間はそれなりに生きていける。

特別なあの日から・・・何日たったのか・・・多くの人間だっていつか忘れてしまうのだ。

転職王・隠舘厄介(岡田将生)は警備員の仕事を得て、東洋美術館に配属される。

常設展示場の担当だが・・・特別展示場では「小説家・須永昼兵衛(フィクション)の世界展」が行われている。

今日子は須永昼兵衛ファンであり・・・何処かで開催を知ると・・・たちまち東洋美術館に来館するのであった。

今日子に恋する厄介にとって・・・連日、今日子のご尊顔を拝することができる幸せがある。

しかし・・・今日子にとって厄介は単なる警備員に過ぎない。

毎日、顔を合わせても顔馴染みになることさえできないのだった。

ご満悦で特別展示場を出てくる今日子は常設展示場の一枚の絵の前で立ち止まる。

厄介には抽象画にしか見えない「母」という作品である。

ある日・・・思い切って声をかける・・・厄介。

「その絵がお好きなんですか・・・」

「絵というより・・・金銭的価値に魅かれたのです」

「高価な作品なんですか」

「二億円くらいの価値がありますね」

「えええええ」

いつも二億円の「もの」を警備していたと知り、腰が抜ける厄介。

そんな・・・厄介を面白がり・・・唆す・・・悪魔的な喫茶店「サンドグラス」オーナー・絆井法郎(及川光博)・・・。

「今度はデートに誘ってみれば」

調子に乗った厄介はついに決断をする。

「この絵は・・・二億円くらいの価値があるんですよね・・・よかったら・・・」

「二億円・・・とんでもない・・・二百万円くらいですよ」

「えええええええええ」

会話のきっかけを失い・・・失意の厄介の前に天才少年・剥井陸(高木星来)が現れる。

「母」を精巧に模写する少年。

「すごくうまいね・・・この絵が気に入ったの」

「色遣いには興味がないけど・・・構図がね」

「構図・・・」

「地球の切り取り方が面白い」

「地球・・・」

厄介はその絵が・・・宇宙から見た地球を描いたものであることに気がつく。

「ああ・・・母なる大地なのか・・・」

「今、気がついたの・・・ま、警備員さんじゃ・・・仕方ないか・・・この美術館にして・・・この警備員ありだよね」

「まるで・・・この美術館もダメみたいな言い方だね」

「だって・・・最低だもの・・・ここ」

謎の言葉を残して少年は去る。

次に老人(山田明郷)がやってきた。

老人は「母」を見ると激怒し、絵に襲いかかる。

思わず制止した厄介。

そこに美術館の敷原館長(相島一之)がやってきて・・・「その方から手を離せ」と命令。

仕方なく厄介が手を離すと・・・勢い余った老人の杖が「母」を切り裂く。

「ただではすまんぞ」と老人は激昂して去って行く。

「あの人・・・どなたなのですか」

「知らん」

「え・・・」

「何事です・・・」と警備主任(小松利昌)が駆け寄ってくる。

「こいつだ・・・こいつのせいで・・・こんなことに」

「えええええええ」

仕方なく・・・厄介は「置手紙探偵社」に連絡するのだった。

「はじめまして・・・掟上今日子です」

そこはかとないくりかえしのギャグである。

事情を聞いた今日子は「評価の変化」について意見を求める。

「ゴッホの絵だって・・・死後価値があがったっていうし・・・あ・・・今回はさがったのか」

絆井法郎は自説にツッコミを入れ自己完結する。

「老人は・・・絵の作者に怨みがあったのでは・・・」と「サンドグラス」のウエイトレス・幕間まくる(内田理央)は自説にのめり込む。

「老人には若い美貌の妻がいた・・・しかし・・・絵の作者はその美貌の妻の誘惑に負け、肉体関係を結ぶ・・・たちまち巻き起こるドロドロの愛憎劇・・・老人は画家を憎み・・・その作品に復讐を・・・」

ついに正拳突きでお盆を真っ二つに割るまくるだった。

「鋸村ギーコ的な・・・」

「さらしと六尺ふんどしを着用しているのか」

「来年公開予定の血まみれスケバンチェーンソーの話はそこまでだ」

「とにかく・・・美術館に行ってみましょう」

美術館では・・・人気画家の新作「雲の音」が話題を呼んでいる。

「なるほど・・・」

「まさか・・・もう・・・わかったんですか」

「まあまあ・・・」

「あ・・・そっちは・・・関係者以外立ち入り禁止ですよ・・・」

しかし、事務室に潜入した今日子は事務員の制服を拝借して変装するのだった。

今日子は臨時職員のふりをして職員たちから情報を収集する。

館長が天下りであること・・・絵に関心がないこと・・・金にうるさいことなどが判明する。

そして・・・さりげなく・・・作品のデータが披露される。

作品名 母

作者 水本櫓

備考 P120・油彩

休憩タイムである。

「贋作当てゲームって知ってますか」

「なんですか・・・」

「海外の美術館などではイベントとしてよくあるそうです。本物の中に贋作を混ぜて・・・来場者が当てる趣向です」

ジュースで例示する今日子は・・・すべてのジュースにハバネロを投入する。

「あててください・・・」

「うえ・・・」

「実は全部・・・まずいのです」

「・・・」

「あの館長は・・・全部、贋作の展示をして・・・評判悪かったのです」

「美味しいものがひとつもないと・・・」

「ええ」

「あの・・・今日子さんは・・・何がお好きなんですか」

「お金です」

「・・・」

もったいない精神で不味いジュースを飲む今日子。

「うえっ」

高まるガッキー、かわいいよガッキーの一部愛好家の熱唱。

「まさか・・・あの作品も贋作だったとか・・・」

「それを確かめに行きましょう」

雑誌記者に変身した今日子は水本画伯(恩田括)を訪ねるのだった。

「変わるわよ」

「ハニーですかっ」

だが・・・水本画伯は・・・破損した絵が本物だったと証言する。

次にイラストレーターに変装した今日子は・・・天才少年の暮らす芸術家のためのマンション「アトリエ荘」を訪ねる。

「君も・・・アトリエ荘の入居希望者?」

「先生に・・・美術館の事故を・・・警備員の責任にするらしいと伝えて」

「・・・」

「一体・・・何のことですか・・・」

「いよいよ・・・事件は大詰めです」

「えええええ」

警備室の監視カメラの映像を上司にチェックしてもらう二人。

「おかしい・・・あの日の映像だけが削除されている」

「それができるのは?」

「館長だけだ・・・」

二人は美術館にやってきた。

「君たちはなんだ・・・」

「あなたは・・・すべての責任を・・・彼におしつけようとしましたよね」

「何・・・」

「話題の新作・・・雲の音・・・サイズは・・・P120ですね」

「え」

「しかし・・・絵に関心のないあなたは・・・うっかり・・・F120で額縁を発注してしまった」

「額縁?」

「ええ・・・額縁にはF(Figure)、P(Paysage)、M(Marine)、S(Square)と言った規格があるの・・・同じ120号でもFとPでは・・・高さが違うのです・・・あわてて再発注したけれど公開に間に合ったのはお安いレンタル額縁だけだった・・・そこで・・・あなたは・・・母・・・雲の音・・・二つの額縁を交換したんですよね・・・」

「・・・」

「額縁を・・・交換・・・」

「実は私・・・変装の間に私服も着替えていたの」

「え」

今日子のおしゃれな一日。

普通のスカート。

美術館制服。

プリーツ。

雑誌記者モード。

ボックス・プリーツ。

イラストレーターモード。

ラップスカート。

「全然気がつかなかった・・・」

「一般男性にとっては・・・どうでもいいことだけど・・・女子には大切なこと」

「つまり・・・」

「芸術家にとって・・・絵と額縁は・・・ひとつの作品なのよ」

「・・・」

そこへ・・・老人が登場する。

驚愕する館長。

「あなたは・・・一体・・・」

「私は額縁匠の和久井だ・・・」

「額縁ショー・・・」

「誰が・・・帝都座の名画アルバムだ・・・私がストリッパーに見えるか」

「戦後性風俗史はそこまでよ」

「つまり・・・あなたが激昂したのは・・・額縁が変わっていたのに気がついたから」

「そうだ・・・母・・・の額縁を作ったのは私だからな」

「額縁の巨匠・・・」

「館長・・・こんな何も知らぬ若者に責任を押し付けるとは・・・お前が業者から賄賂をもらいまくっていることを暴露してやる」

「ひでぶ・・・」

「今日子さん・・・すべてご存じだったのですね」

「ええ・・・でも・・・一日を有意義に過ごして・・・あなたも納得して探偵料を払う気になったでしょう・・・」

「・・・お金がすきなんですね・・・」

「はい・・・それから・・・あなたが・・・私に声をかけたのは・・・私に恋をしているからなのでしょう?」

「え」

「でも・・・私・・・そういうのパスなので」

「ええ」

「またのご利用をお待ちしています」

「えええ」

失恋する厄介・・・。

名探偵には惚れるなよ。

告白する前に推理されてお断りされるんだよ。

しかし・・・今日子もまた・・・厄介をふったことも忘れてしまうのだ。

もちろん・・・今日子が・・・厄介に特別な関心を持っていて・・・自分自身に置手紙をしていないとは限らないわけだが・・・。

今の厄介にできるのは・・・心の痛みを・・・味わうことだけなのだった。

海と空の間には・・・哀しいのか優しいのかわからない雨が降るのである。

関連するキッドのブログ→第2話のレビュー

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コメント

つまり第三話にきて「キタ━(゚∀゚)━!」っていうかまだ続く!

やっぱり私は
第一話 前半 40点
第一話 後半 55点
第二話 70点
第三話 90点以上(お着替え点、お着替えが本篇に絡んでいる点、美術館黒髪職員点、ミステリ点、ギャラリーフェイク好き贋作点、失恋点、記憶喪失由来点、ツタヤ図書館揶揄点、まだまだ続く点)

投稿: 幻灯機 | 2015年10月25日 (日) 16時16分

✪マジックランタン✪~幻灯機様、いらっしゃいませ~✪マジックランタン✪

掟上今日子というキャラクターは
一種のコスチュームプレイでございます。
この手のものは
馴染めば馴染むほど抵抗し難い魅力を醸しだすもの。
スケバン刑事やデカワンコと同じなのですな。

一度眠ればケロリと忘れる恐ろしいリセット女。
恋するものには魔性の女と言えますな。

今回は絵画と額縁・・・女体と装束という
意味深なたとえで
着せ替えごっこを楽しめるという
一部愛好家熱狂の展開でしたな。

掟上今日子フィギュア(ガッキー・ヴァージョン)や
掟上今日子リカちゃん人形の
登場が待たれます。

BOXには絶対特典としてつけてもらいたい。
着せ替えセットは全衣装付きで・・・。

変態かっ。

投稿: キッド | 2015年10月25日 (日) 20時59分

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