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2015年10月22日 (木)

サイレーン刑事(松坂桃李)×彼女(木村文乃)×完全悪女(菜々緒)~シリアルキラーの最期と整形女の末路~

セイレーンは死の妖精である。

ゼウスの姉神デメーテル(大地の神)の娘・ペルセポネーの侍女だったが、ペルセポネーが冥府の王・ハーデースに誘拐された時に鳥となって捜索活動を展開する。

紆余曲折あって・・・ペルセポネーが冥府の女王となった後・・・セイレーンは船乗りを死に導く声を持つ妖女となってしまう。

セイレーンの歌声の誘惑に耐えられる男はいないとされている。

愛する姫を奪われた嘆きの声は・・・あらゆる男性に復讐するために・・・夜の海に響き渡るのである。

そのうなり声を模したのが・・・サイレンの音なのだ。

セイレーンは警告する。

しかし、警告を耳にしたものは死ぬのである。

で、『サイレーン 刑事×彼女×完全悪女・第1話』(フジテレビ20151020PM9~)原作・山崎紗也夏、脚本・佐藤嗣麻子、演出・本橋圭太を見た。やはり、これか。・・・「無痛」が生き残るかどうかは・・・微妙な状態だな。(月)「5→9」(火)「デザインベイビー」(水)「サイレーン」(木)未定(金)「コウノドリ」(土)「掟上今日子」(日)「花燃ゆ」という状況だから・・・。絶望的じゃないか・・・。(金)に「コウノドリ」と生き残りをかけてバトルが展開される。やはり、絶望的じゃないか。だって血管浮き出るばかりのドラマだからな・・・ひでぶっ。

警視庁機動捜査隊は二人一組で覆面パトカーに乗車し、巡回警邏を行い、事件発生の場合は現場に急行して初動捜査を担当する部署である。

警視庁に属するために所轄の刑事よりも格上だが・・・ドラマでは桜中央署(フィクション)に関係が深く・・・桜中央署の要請に応じて生活安全課の家宅捜索に協力したり、殺人事件の捜査会議に出席したりしている。・・・ご愛嬌である。

機動捜査車両16号は桜中央署管内を縄張りとしているらしい。

捜査員は19歳の時に交番勤務の警官となって八年の元・機動隊員・里見偲(松坂桃李)と年上の恋人・猪熊夕貴(木村文乃)・・・。

二人の目標は本庁の捜査一課の刑事になることだった。

夕貴は女子寮住まいだが・・・ほとんど里見のマンションで暮らしている。

つまり・・・半同棲状態である。

性的関係にあることは職場では秘密であり、結婚を前提として交際しているが・・・時期については温度差がある。

夕貴は両親に里見を紹介したいのだが・・・里見はそこはかとなく消極的なのであった。

こういうタイプの男はダークカイトになる可能性があります。

夕貴は些少の不満を感じているが・・・年下の男の子とイチャイチャしていると我を忘れるタイプらしい。

桜中央署の生活安全課の千歳弘子(山口紗弥加)は二人の先輩であり、カラオケに付き合うこともある。

里見は酔うと婦人警官の雨宮ひかる(岡崎紗絵)のスカートを着用するという変態的な側面も持っている。

カラオケルームの廊下で酔いつぶれた里見は・・・妖艶な女にまたがれる。

女は里見を見下すと立ち去るが・・・その男を優男が追いかけていくのだった。

恐ろしい事件の幕があがったことを・・・里見はまったく気がつかなかった。

「司令センターより各局へ・・・南新町四丁目で女性の変死体が発見された・・・最寄車両の現場への急行求む」

「こちら・・・16号車・・・了解」

二日酔いの二人は現場へ急行する。

二人の後輩である交番勤務の三宅亮介(高田翔)がすでに到着していた。

「早いな」

「待ったなしの仕事ですから」

「偉いね」

「でも一番乗りは速水刑事です」

「ちっ」

「チビデカがっ」

チビデカこと速水翔刑事(北山宏光)は桜中央署の刑事課に属している。二人と同様に捜査一課ほ目指している。

二人がチビデカを蔑視するのは・・・点数稼ぎのために捜査手順を無視するゴマスリ野郎だからである。

「おらおら・・・所轄の刑事は機捜の邪魔すんな」

「鑑識も入ってないのにウロチョロすんなよ」

「・・・」

しかし・・・速水刑事はすでに被害者のスマートフォンをちょろまかしていた。

コソドロのような刑事なのだった。

死体は風俗店「マックス」のベテランキャバクラ嬢だった。

「着衣に乱れなし・・・目立った外傷なし」

桜中央署の安藤実刑事課長(船越英一郎)が到着し見解を述べる。

「急性アルコール中毒か・・・睡眠薬自殺か・・・」

「自殺です・・・スマホに遺書が・・・」

チビデカはしゃしゃり出るのだった。

(仕事につかれたし生きていてもいいことないみたいみんな今までありがとう)

「決まりだな」

その時・・・里見は・・・夕貴を見つめる一人の女がいることに気がついた。

その女・・・死んだキャバクラ嬢の同僚である橘カラ(菜々緒)は・・・事情聴取に素直に応じていた。

「昨夜は・・・店が終わってすぐ帰宅しました・・・」

初動捜査を終えた二人は巡回を再開する。

「あの女・・・君を見ていた」

「あなたじゃないの・・・見つめ合っちゃって・・・」

「いや・・・彼女は嘘をついている・・・俺、昨日、カラオケルームで彼女を見た」

「え」

「だけど・・・泥酔状態だったから・・・確信できない」

「しょうがないわねえ」

カラは二人の乗った覆面パトカーを見つめていた。

「見つけた・・・」

謎の呟きをもらすカラ。

キャパクラ嬢たちの発言から・・・カラは・・・理想とする女性の模倣に秀でていることが伺われる。

そういう意味では・・・表参道高校合唱部出身のような変な髪型の夕貴を理想のタイプと認定したのかもしれない。

しかし・・・ダブル・ミーニング(二重の意味)は・・・シナリオの常套手段である。

カラと夕貴には過去に因縁がある可能性がある。

夕貴は機動隊員の猪熊文一(大杉漣)と元婦人警官の三樹(藤吉久美子)の娘として育てられたが・・・養女であった。

幼児には施設で過ごしたらしい。

ひょっとすると・・・人生の何処かでカラと夕貴は出会っていた可能性がある。

とにかく・・・カラは・・・夕貴を密かに尾行すると・・・里見のマンションを監視できる部屋の住人でデザイナーの渡公平(光石研)の運転する車にわざと接触し、被害者を装って接近すると・・・その美貌で彼をたちまち籠絡するのである。

夕貴は・・・カラに監視されるのだった。

生活安全課の徳永刑事が自殺と断定された「マックス」の孤坂瞳の父親(野添義弘)の話を桜中央署に顔を出した里見に伝える。

「娘は絶対自殺なんかしないって・・・言いはるんだ・・・気持ちは分かるけど」

「刑事課が自殺と断定したんだから・・・しょうがない」

機動捜査隊の任務はあくまで初動捜査なのである。

事件に深入りはできないのだった。

里見と夕貴はお決まりのもどかしさを感じながら巡回を続ける。

「司令センターより各局へ・・・宮川町で女性の変死体が発見された・・・最寄車両の現場への急行求む」

「こちら・・・16号車・・・了解」

若い女性・・・山田元子(由井香織)はマンションの階段下で絞殺されていた。

不似合いな白いソックスを着用し・・・口には同じような白いソックスが片足分だけ押しこまれている。

「変質者ね・・・」

「夜なら・・・ここは死角になるな・・・計画的犯行かもしれない」

桜中央署に「宮川町女性殺害事件」の捜査本部が設置される。

里見は・・・白いソックスが片方だけであることから・・・もう片方を記念品として犯人が持ち帰った可能性について発言する。

「・・・だから・・・どうした」

「連続殺人事件の可能性があります」

「連続って・・・被害者は一人だぞ」

「管内で若い女性の行方不明が頻発しています・・・」

「だから・・・シリアルキラー(連続殺人犯)だってえのか・・・ドラマの見過ぎだよ」

安藤課長は里見の推理を一笑して葬った。

「焦りすぎだよ・・・」と夕貴は里見を窘める。

「・・・」

巡回中の二人の前にカラが現れる。

「私のこと・・・覚えてる」

「ええ・・・カラさん・・・あの時は・・・ご協力ありがとうございました」

カラの言葉は意味深である。もっと古くからの知り合いであることを仄めかしているようでもある。

カラは新しい店の名刺を取り出し・・・夕貴に渡す。

「あなたのもちょうだい・・・」

「ごめんね・・・今、切らしていて・・・何かあったら桜中央署の生活安全課に連絡してください」

素っ気なく対応する夕貴だった。

妖しい微笑みを浮かべるカラ。

「まだ・・・こっちを見てるぞ・・・やはり・・・君のことを見ている」

「同性愛者・・・かしら」

「そうかもな」

「あなた・・・興味があるんでしょう・・・」

「いや・・・なんだか・・・恐ろしい気がする」

「勘なの・・・」

二人はファミリーレストランで休憩する。

「最近・・・店に入るといつも同じ匂いがするんだ」

「なにそれ・・・」

「すごく・・・いい匂いなんだけど」

「あなた・・・鼻が利き過ぎるのよね」

変装して二人を尾行していたカラはそっと退席するのだった。

「あいつ・・・邪魔ね・・・」

部屋に戻ったカラは愛用していた香水を捨てた。

職務を終えて帰宅する里見と夕貴。

「この間・・・送ってもらった時に・・・父に見られちゃったみたい」

「げっ・・・」

里見は・・・夕貴の両親に挨拶することを・・・夕貴の父親が機動隊時代の上司であることを理由に避けていた。

「もう・・・覚悟しなさいよ・・・何を読んでいるの・・・」

里見は「シリアルキラー~心の闇~」という本を示す。

「シリアルってのはシリアルナンバー(続き番号)のシリアルでつまり・・・連続ってこと・・・キラーは殺人鬼ってことだから・・・つまり、連続殺人犯ってことだけど・・・実在の犯罪者・テッド・バンディについて元FBI捜査官のロバート・K・レスラーが提唱した呼称なんだ・・・そこには単なる殺人犯とは違う・・・特徴があるってこと・・・」

「サイコキラーとはどう違うの・・・」

「サイコキラーは・・・精神障害的要素が強い・・・連続しない場合もあるし・・・シリアルキラーは純粋に殺しの常習者といった意味合いが強いのさ」

「ゴルゴ13みたいな」

「あれは一種のテロリストだろう・・・職業だし・・・シリアルキラーは殺人そのものが目的なんだよ」

「厄介ね・・・」

「シリアルキラーにとって・・・殺人は一種の儀式なんだ・・・だから・・・手順とか・・・殺害方法とかに・・・拘るし・・・獲物についての記念品をコレクションしたりする」

「それが・・・片方だけの白いソックスってわけ」

「うん・・・場合によっては・・・獲物とある程度、親密になることに拘るタイプもある」

「そうなると・・・この町には・・・バッグに白いソックスをつめこんで配りまくっている奴がいるってことになるわね」

「そうさ・・・そいつは・・・獲物に白いソックスをはかせて・・・獲物を殺し・・・それから口に白いソックスを詰め込んで・・・残った方を記念品にしてるんだ・・・」

「変な奴」

それは・・・タクシーの運転手(板尾創路)だった。

夜の街に・・・妖女が立っていた。

女は夜のビジネスのために出勤するところらしい。

女はカラだった。

運転手はカラを客として乗せた。

「お客さん・・・寒くないですか・・・よかったら・・・このソックスはいてください・・・前のお客さんが暑がりで・・・クーラーを少し効かせすぎたので・・・」

カラはソックスを受け取って素直にそれをはいた。

「変ね・・・」

「最近の若い人は白いソックスあまりはんないんですよね・・・私はクーラーが苦手で・・・いつもストックしてるんですよ・・・でも・・・白いソックスは一目で汚れていないことがわかるでしょう・・・」

「・・・」

「あれ・・・ちょっと待ってください・・・エンジンの調子がおかしいな・・・」

「・・・」

雨が降っていた。トンネルの下にタクシーを停車させた運転手は乗客に協力を求める。

「ちょっとフロントの下の部分を見ててもらえますか・・・」

「・・・」

指示に従い腰をかがめたカラの首に背後からロープを巻きつける運転手。

「私はねえ・・・白いソックスが大好きなんです・・・昔、白いソックスの似合う女の子と付き合っていてね・・・その子に夢中になって受験に失敗しました・・・それからは下り坂ですよ」

運転手は苦悶するカラを引きづり、廃材の鉄の支柱にロープをからませる。

「今日は・・・吊りあげてみましょうね・・・素直に白いソックスをはいてくれたお礼です・・・あなたはスタイルがいいから・・・きっと綺麗に仕上がりますよ・・・」

しかし、カラは強烈な脚力で逆襲に転じる。

「う・・・」

運転手はカラの太腿で首を絞められ悶絶した。

カラは運転手の首にロープを回し吊りあげた。

「うう・・・」

「運が悪かったわねえ・・・」

「ううう・・・」

「・・・」

「・・・」

シリアルキラーは死んだ。

二人はタクシー運転手の死体を見上げた。

タクシーのダッシュ・ボードの上には「シリアルキラー~心の闇」が置かれている。

ダッシュボードの中には白いソックス(未使用)が満載されていた。

運転手のスマートホンには・・・複数の被害者の記念写真が残されていた。

「これは・・・まるで贈りものみたいだな・・・」

「誰が・・・誰に・・・何を贈るっていうの」

「何者かが・・・刑事に・・・犯罪者を・・・」

「何者って・・・結局、犯罪者じゃないの」

「うん・・・だけど・・・被害者が逆襲したのかもしれない・・・」

カラは偶然を装い・・・夕貴に近付いて行く。

夕貴の利用する市民スポーツセンターで・・・夕貴の実力を上回るスカッシュの腕前を披露するカラ。

更衣室での盗撮事件に居合わせるカラ。

ついに・・・カラは夕貴の個人的な連絡先を手に入れるのだった。

「もっと・・・仲良くならなければ・・・ね・・・人間から信頼を勝ち取るには役に立ってみせること・・・」

カラの友人である高野乃花(足立梨花)は一度関係した男に執着していた。

「彼には奥さんがいるのよ・・・でも・・・きっと彼は私を愛してると思うの・・・」

「奥さんがいなくなれば・・・あなたは幸せになれるのね・・・」

「私・・・奥さんと同じ顔に整形しようと思うの・・・そうすれば若い私の勝ちでしょう」

「でも・・・奥さんが邪魔するかも・・・」

カラは巧に乃花を誘導し・・・不倫相手の妻・白鳥麗子を襲わせる。

白鳥家に侵入した二人は・・・麗子を気絶させる。

しかし・・・怖気づいた乃花はカラを残して逃げ去る。

カラは白鳥麗子を絞殺すると剃毛刃で麗子の顔を切り刻んだ。

カラは手袋をしたまま・・・部屋を出る。

マンションの監視カメラは定刻の自動更新を開始する。

帰宅し・・・妻の死体を発見した白鳥氏は・・・第一発見者として重要参考人となる。

盗撮事件の目撃者として夕貴に証言聴取を受けるために桜中央署にやってきたカラ。

テレビでは・・・「白鳥麗子殺害事件のニュース」が流れていた。

「きっと・・・犯人は女ですね」

「え・・・」

「だって・・・顔を刻むなんて・・・女の怨みでしょう・・・」

「怨み・・・」

「ご主人の愛人が犯人だったりして・・・」

カラの助言により・・・捜査線上に浮上する高野乃花・・・。

乃花の部屋をカラが訪問する。

「私・・・やはり・・・月本先生にまたお願いしようと思うの・・・」

月本圭(要潤)は整形外科医だった。

「今日は乃花ちゃんに・・・私のとっておきのハーブ・ティーを味見してもらいたいの」

「・・・美味しいわ」

「とっておきですもの」

やがて・・・意識が混濁し始める乃花・・・。

「私・・・一度聞きたかったの・・・カラちゃんは・・・なんで整形したのかなって・・・」

「それは・・・美しい方が・・・いろいろと都合がいいからよ」

「わかる・・・わ・・・そ・・・れ・・・」

浴室に乃花を運びこんだカラは浴槽に湯を満たし・・・剃毛刃で彼女をリストカットした。

たちまち咲く紅い花。

スマートホンに遺書を残すと部屋を出るカラ。

(あいしているから・・・ひどいことをしてしまいました・・・ごめんなさい)

マンションの監視カメラは定刻の自動更新を開始する。

容疑者として浮上した乃花の自宅へ急行する二人。

しかし・・・そこにあったのは死体だった。

事件解決に関与して父親に褒められ・・・機嫌がいい夕貴。

「どこへいくの・・・」

「カラちゃんと・・・スカッシュの約束をしているの」

「随分・・・仲良くなったんだね・・・でも・・・なんだか・・・変な感じがするよ」

「何が・・・」

「カラちゃんさ・・・そう・・・最近の事件って・・・みんなカラちゃんが絡んでるような気がして」

「だじゃれか・・・」

スポーツジムのテレビには・・・自殺した殺人犯として乃花の顔写真が映っている。

「彼女・・・整形してますね」

「どうして・・・わかるの」

「わかりますよ・・・だって私も・・・整形してますから・・・」

「へえ・・・そうなんだ」

隠していることを明かすことは親密さを深める。

夕貴はまた一歩、カラに心を許す。

「私の本当の顔を知ったら・・・夕貴さん・・・きっと驚きますよ」

「そんな・・・」

ダブルミーニングである。

夕貴は・・・美しくなかった頃のカラの顔に・・・何か別のものを見出すのかもしれない。

圧倒的な魅力を湛え・・・サイレーンの神話が開闢する。

女優・菜々緒の底知れぬ実力が爆発的に輝くのだった。

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