破裂(椎名桔平)助けてください(仲代達矢)天寿安楽死国民生活財政危機超高齢化禁じ手ぴんぴんぽっくり万歳(滝藤賢一)
谷間である。
なんだかんだ・・・ドラマが多過ぎると思う。
こんなにコンテンツが多いと・・・視聴率なんて下がって当然だよな。
物凄く駄作で誰が見ても失敗作と超絶的な名作とが混然一体となって流れ去って行く御時勢なのである。
そろそろ・・・観測を続けることも困難になってきたよねえ。
中途半端な感想よりも・・・「完全な感想」を求めて・・・一日一本を続けていると・・・どうしても語り残した気分が強くなってくる。
谷間の記事は最初から中途半端になるわけだが・・・補完的中途半端がキッドの中で求められているわけである。
「デザイナーベイビー」が中途半端な時期で終了したのを契機に思い切って谷間の日にしました。
さあ・・・中途半端で行くぞっ。
で、『破裂・第1回』(NHK総合20151010PM10~)原作・久坂部羊、脚本・浜田秀哉、演出・本木一博を見た。最終回直前じゃいかっ。・・・ピンピンポックリは理想の死に様である。しかし・・・世の中にはいつまでも生きていたいという不思議な感覚を持つ人もいて・・・そんなことを言ってはいけないらしい。ゆりかごから墓場までを国家が保証するというユートピアで・・・年金生活者となり・・・一日中ゲームをして暮らす・・・労働者諸君はそのために汗水流して働きたまえと朗らかに言うことは一種のブラックユーモアと言えるだろう。そういう意味で・・・このドラマの第一回は「世にも奇妙な物語」としては完結しているのだ。何しろ心臓が若返るという画期的な療法が開発されるが副作用として間もなく心臓が爆発するというオチなのである。オチかっ。そんなちょっとしたお笑いを・・・重厚な俳優陣がねっとりとした人間ドラマに仕上げて行くのである。これだけで一同爆笑の展開だな。
基本的にこの国の自称公共放送は・・・「私たちの言うことは基本的に間違いではありません」という妖しい機関である。その魔性が・・・「何があってもとにかく死ぬまで受信料は払いましょう」という呪いを高らかに謳いあげるのである。
実は戦災孤児である国民的俳優・倉木蓮太郎(仲代達矢)は「最期の映画」の完成を目前として「死の床」につく。俳優として全力疾走し続けた心臓は老化して停止寸前なのだった。
倉木の中では・・・敗戦直後の暗い情念が燃えている。
馬鹿な大人たちのために・・・ひどい目にあった実体験である。
「戦前の日本人は悪であった・・・それだけは絶対正しい」という占領軍の政策をそのまま受け継ぐあらゆる制度が・・・その信念を補佐する。
現代から見ればとんでもないことは・・・過去にはいくらでもある。
たとえば・・・東京大空襲で・・・家族を殺され・・・家を焼きつくされた人間には・・・国家は何一つ援助しなかったのである。
驚くことに義援金さえなかったのだ。
だが・・・そんなことは「悪」ではない・・・単なる事実だ。
それが「悪」なら・・・広島や長崎で放射能にまみれた人々もすべて「悪」になってしまう。
しかし・・・奇妙なことに・・・この国の正しさは・・・そこには触れない。
そういうことをやり続けると・・・やがて・・・理由もなく国を怨む人が増え・・・公共機関に卵が投げつけられます。
ま・・・それはそれで面白いわけだが・・・。
倉木は俳優として完全燃焼するために・・・「鬼」となった。
そういう人間を愛する人もいるのが・・・面白いところで内縁の妻・須藤彰子(キムラ緑子)は神に仕える巫女のように・・・病床の倉木を支える。
倉木の乱れた私生活の途中で・・・やり捨ての憂き目にあった女(中原果南・無名塾)の私生児として生まれた香村鷹一郎(椎名桔平)は認知もされず・・・極貧の中で育ち・・・太政大臣の息子の公爵の息子の男爵の娘の息子の娘を母親に持ちながら父親が不明の人のようなもやもやした気持ちを持って・・・どこかクールな医者になった。
身体障害者の息子の私立進学が難しいという妻・朋美(黒沢あすか)の愚痴に対し・・・「身体障害者は普通の人間ではない・・・頭を使って世間を見返してやればよい」という信念を吐露する男である。
医師として研究に打ち込んだ香村は「老化した心臓を若返らせる心筋再生成長因子」を発見し、画期的な「香村療法」の完成を目前にしていた。
一方で・・・悪魔のような顔をした国民生活省大臣官房主任企画官・佐久間和尚(滝藤賢一・無名塾)は独自の着眼点で・・・「香村療法」を利用しようと考える。
佐久間は開発者の香村よりも早く・・・「香村療法」のある効果を掴んでいたのである。
それは・・・国家財政を暗礁に乗り上げさせている国民の超高齢化を一挙に解消する政策の立案につながる。
国民生活省老人衛生局長・城貞彦は「それは禁じ手なんじゃないか」と案じる。
しかし、佐久間は「官僚のすることなんてすべて禁じ手でしょう」と微笑むのである。
佐久間は・・・香村の研究成果を制御するために・・・あらゆる手段を駆使するのだった。
やがて・・・香村医師の元に・・・倉木が現れ・・・「お前の研究の実験台になる」と告げる。
人体に対する治験は時期尚早と考える香村は・・・父親への積年の恨みを込めて・・・父親の希望を一蹴する。
しかし・・・教授選を控える香村が医療ミスをしたと訴える怪文書が届くのだった。
死亡した患者の遺族である峰丘枝利子(松浦唯・無名塾)は香村の昔の恋人で人権派弁護士の松野公子(坂井真紀)に医療過誤として訴訟したいと依頼する。
松野は打倒・香村に燃える。
追い込まれた香村は・・・佐久間の「息子を捨てた父親の希望を叶える画期的な治療の成功者」という筋書きを了承する。
嵐の夜・・・捨てられた息子は捨てた父親を実験台にすることを決意するのだった。
実験は成功し・・・蘇った倉木は内縁の妻を抱きしめる。
祝杯をあげる研究チーム・・・その時・・・動物実験に使われた犬のサリーの突然死が発生する。
解剖したサリーの心臓は破裂していた。
「これは・・・心筋再生成長因子の・・・副作用でしょうか」と助手たち・・・。
「蘇った心臓は・・・破裂する運命なのか」
そして・・・悪魔の微笑みを浮かべ佐久間は「ぴんぴんぽっくり」と呟くのだった。
ある意味、「ぴっくりぽん」系だよな。
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