素晴らしきセーラー服探偵(新垣結衣)希死念慮なんて知らない(岡田将生)恥ずかしがり屋の殺人者(浅見姫香)
恥ずかしくて消えてしまいたい気持ちと邪魔ものを消したい気持ちは背中合わせである。
テロリストたちは・・・恥ずかしさでいっぱいになり・・・見ず知らずの人を殺さずにはいられないのかもしれない。
誰かを殺したいほどの怒り・・・その恥ずかしさ・・・。
恥ずかしながら生きて行く人々の・・・堪え性の強さ・・・。
人々は危ういバランスの上でスキップをするのだった・・・それな。
殺されるくらいなら身も心も捧げる人は・・・強いのか、弱いのか・・・よくわからない。
相手を挑発するのはよくない・・・という人がいるが・・・弱味を見せればつけこまれるものである。
絶対安全な場所など・・・この世にはない。
しかし・・・運がよければ地雷原さえ・・・突破できるのだ。
人生は・・・サバイバルの連続に過ぎないのである。
で、『掟上今日子の備忘録・第6回』(日本テレビ20151114PM9~)原作・西尾維新、脚本・野木亜紀子、演出・小室直子を見た。十一月も半ば・・・2015年も終わりが見えて来た。イスラム原理主義者と中国共産党帝国という二つの独善的な組織が東西で摩擦を起こす年の瀬である。ドーピング帝国も「共通の敵」を見出してなんとか自分の汚れた手を隠そうとしている。まあ・・・敵の敵は味方だし、味方の敵は敵なのである。私のことは放っておいてと言ってもそうはさせじとストーカーなんだな。明日は七五三・・・由緒正しいコスプレ日和である・・・もう、いいか。
探偵斡旋業も営むアパルトマン「サンドグラス」のオーナー・絆井法郎(及川光博)は・・・今日も一日ですべてがリセットされる忘却探偵・置手紙探偵事務所の掟上今日子(新垣結衣)に恋をした冤罪事件の常習被害者・隠舘厄介(岡田将生)の愚痴を聞くのだった。
「死にたいほど恥ずかしいって・・・誰が・・・」
「無限堂古書店の奥さんです・・・」
厄介は無限堂古書店でアルバイトをしていたのだ。主人(おかやまはじめ)には気に入られたのだが・・・夫人(山下裕子)が青春時代に交際していた恋人に・・・厄介は瓜二つだった。
恋人に貢いでいた赤面の過去を思い出し・・・半狂乱になる無限堂古書店夫人・・・。
「で・・・クビに・・・」
「いえ・・・自主的に辞めました・・・」
「それで・・・」
「最近・・・そういうことは不運だと思わないようになりました・・・ある人から・・・人生に無駄なことはないって言われて・・・確かにあらゆる職業を経験しているので・・・たいていのことはこなせますし・・・今回は経歴のおかげで・・・中学校の管理作業員に採用されたんです」
「よかったねえ」
「でも・・・問題がありまして・・・女子校なんです」
「サンドグラス」のウエイトレス・幕間まくる(内田理央)や変装した潜入捜査員の也川塗(有岡大貴)も思わず頷く。
「それは・・・アレだねえ」
「だから・・・生徒とは目も合わせないようにしています」
だが・・・冤罪体質の厄介を見逃すほど・・・五十嶺学園の女生徒たちは甘くなかったのである。
ある日の放課後・・・。
廊下が水浸しになっていて・・・掃除を開始した厄介は用具室に導かれる。
そこでは・・・女生徒・逆瀬坂雅歌(浅見姫香)が倒れていて・・・室内には文化祭用の二酸化炭素ボンベからガスが漏れていた。閉まったドアは内側から開かないように細工されており、遺書が床に落ちている。窓も強力接着剤で開閉不能。このままでは・・・厄介は女生徒と一緒に窒息死である。
しかし・・・サバイバル雑誌でのアルバイトが役に立ち・・・懐中電灯の集光器とほぐした縄、そして油性マジックで着火装置を自作した厄介は太陽光で煙を発生させ、火災警報の作動に成功する。
意識を取り戻した厄介の前に遠浅深近刑事(工藤俊作)と新米刑事(岡村優)のコンビが現れる。
「まさか・・・」
「ごめん・・・見舞いの天国プリン・・・二つしか売れ残ってなかった・・・」
「あの子は・・・」
「自殺未遂ということになっている・・・しかし・・・覚醒しないんだ」
「・・・」
「だから・・・お前が無理心中を仕掛けたんじゃないかという線でも捜査が進んでいる」
「え」
「いや・・・俺たちは・・・お前がそういう奴じゃないことはわかってるけどさ」
「・・・」
仕方なく・・・厄介は・・・今日子に依頼するのだった。
捜査開始の日・・・天国プリンは四つしか売れ残っていなかった。
「残念だねえ」
「サンドグラス」の人々は死ぬほど美味い天国プリンを味わう。
「プリンを食べられない運命なんです」
「確認しておきますが・・・本当に逆瀬坂雅歌(さかせざかまさか)さんとは面識がないんですね」
「はい・・・」
「一方的に思いを寄せていたとか」
「ありません」
「だって・・・厄介くんは他に好きな女性がいるものね」とオーナー。
もちろん・・・その相手とは今日子だが・・・今日子はそれを知っていても忘れてしまうのである。
「自殺の証明をすればよろしいんですね」
「自殺の証明か・・・女子中学生が自殺する気だったことを・・・裏付けるなんて・・・」
「今、そこですか」
「・・・」
「遺書には自殺の理由が書かれていなかったのですか」
「人気バンドのELIZA HEADの詩が引用されているだけだったので・・・」
「・・・」
「これは自殺のための自殺だ」
「なるほど」
「ところが・・・彼女の部屋には・・・ELIZA HEADのファンであることを匂わせるものが何もなかったんです」
「そのために・・・第一発見者のあなたが・・・容疑者として浮上したんですね」
「はい」
「では・・・現場に行きましょう」
しかし・・・校門で厄介は女性警官(高橋あゆみ)と霊長類最強の女性警官(吉田沙保里)に職務質問された上に抱えあげられてしまう。
「もにもに」
「不審人物、確保」
しかし・・・顔見知りの学校図書館の司書(桜井聖)によって救助される厄介。
「助かりました・・・」
「君が真面目な人だって先生方はみんな知ってます・・・しかし・・・保護者の皆さんが・・・」
「・・・」
「そういえば・・・彼女・・・変わった本の借り方をしていました・・・というか・・・いつも読み切れないほどの本を借りてたんです」
「名作映画とアダルトビデオを混ぜて借りるみたいな・・・」
「それだ」
一方・・・ファッション誌「SG」(フィクション)のモデルほ装って三年D組に潜入した今日子は中学生にもみくちゃにされて服を脱がされ燃やされて見本のセーラー服を着用することを余儀なくされてしまう。
・・・どういう状況だよ。
ガッキーと宮﨑あおいは永遠に中学生ができるよな。
合流した厄介もうっとりである。
現場検証をした二人は背後に不審な影を見つける。
「そう言えば・・・あの時も・・・廊下に誰かいたような・・・」
「そうだとすると・・・これは殺人事件なのかもしれません」
「え」
「密室に見せかけて・・・誰かが・・・彼女を・・・まあ、可能性の一つです」
「自殺の方は・・・」
「彼女は存在感の薄い人だった・・・そして・・・自分の内面を人に悟られるのを恐れていた・・・図書館で・・・読みたい本を借りる時にカモフラージュを必要とするほどに・・・」
「自意識過剰・・・」
「ええ・・・遺書が抽象的なのもカモフラージュなのかもしれない・・・いじめとか孤独とかで・・・死んだと思われたくない・・・それな」
「・・・」
「でも・・・なんとなく死にたくて・・・自殺願望あるいは希死念慮を抱くことはあるのかもしれない」
「それはどう違うのです」
「わかりません」
「・・・」
「わかられるのがいやという気持ちの一つですからね」
「・・・」
「まあ・・・乙女心ですよ」
「・・・」
「ところで・・・洋服買ってきてもらえますか・・・」
「え」
「厄介さんの予算の範囲で・・・」
今日子に服をプレゼントするチャンスに飛び付く厄介。
またしても・・・貯金はゼロになるのだった。
ルンルン気分で戻ってきた厄介はまたしても婦人警官たちに確保される。
「女性の服です・・・タグなしです」
「すぐに着るので外してもらったんです・・・もにもに」
今度は潜入探偵に救われる厄介。
「兄は・・・スカートを穿くタイプの人なので」
「ああ」
女装趣味をあてがわれモヤモヤする厄介だった。
「今日子さんから・・・サンドグラスに戻るようにと・・・」
「え」
今日子は一人暮らしの逆瀬坂雅歌の部屋に不法侵入し・・・殺風景な部屋に残された古書と古書店のレシートを入手していた。
「この女性に心当たりは・・・」
「あ・・・トンボちゃん・・・」
「最後にこの店に来たのは・・・いつですか」
「あの時は厄介くんが応対したんだったな」
「え」
厄介は・・・「彼女」にあっていた。
しかも・・・彼女の好みの本を推奨するという・・・「虎の尾」を踏んでいたのだった。
彼女にとってそれは「死ぬほど恥ずかしいこと」だった。
霊感の強い今日子はすでに鏡の中に第二の少女の姿を発見していた。
第二の少女・・・山之内茂美(米山穂香)は彼女に日記を読まれてしまい・・・内容を誰かに話されるのではないかと・・・彼女を尾行していた。
そして・・・廊下に水を撒く彼女の姿を目撃している。
病院にやってきた厄介はベッドに横たわる今日子を発見する。
「今日子さん・・・」
「きゃあああああ」
かわいいよ、ガッキーかわいすぎるよ。
「・・・」
「安心してください・・・彼女の気持ちを考えていただけです」
「彼女が入院中・・・自分で点滴を外していることが判明し・・・僕は無罪になりました」
「洋服は・・・」
厄介は白いニットの上下を買ってきた。
「この意味は・・・」
「最初に逢った時に・・・白だったので」
「気に入りました」
「よかった・・・」
「彼女は・・・恥ずかしかった・・・けれど忘れようとしました・・・二人にとって不幸だったのは・・・厄介さんの転職です」
「あ」
「二度と会うまいと思っていた人に毎日会う苦痛・・・」
「・・・」
「しかも・・・彼女は・・・学校でも・・・家庭でも孤独だった・・・死ぬほど恥ずかしい・・・辱しめた相手を殺したい・・・彼女の気持ちはどうしようもなく・・・高まっていた・・・そして・・・あの日・・・あなたを殺して・・・自分も死のうと思った・・・すべてを秘密にするために・・・」
「・・・」
「でも・・・私には彼女を問いつめることはできません・・・忘れたいのに忘れられない人に・・・忘れたくなくても忘れてしまう人間は・・・語る言葉がないのです」
「・・・」
「これ・・・天国プリン・・・一つだけ残っていました・・・洋服の御礼にどうぞ」
厄介は・・・プリンを持って病室に向かった。
「僕は・・・殺されそうになって怒るべきなのかもしれません・・・でも・・・冴えない人生を送る人の気持ちはわかるつもりです。僕はずっと・・・みっともない人生を送ってきました。小学生の時・・・ぼくは・・・」
厄介は眠ったふりをする彼女に・・・自分の人生がどれほど恥ずかしいものだったかを物語る。
今日子は夕陽に照らされながら・・・その言葉を聞いていた。
彼女は天国プリンを食べた。
「サンドグラス」のオーナーは今日子の独り言を聞いた。
「今日は救われたような気分になりました・・・闇に光が灯ったような・・・素敵な人だったなあ」
今日子の告白にオーナーは微笑んだ。
その日暮らしの人に向ける・・・優しい言葉に代えて・・・。
厄介は好きな相手に思われた・・・しかし、それも今日限りのことなのである。
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