声無きを訊き形無きを視る・・・明治十二年大警視死す(優香)
薩摩藩出身でありながら西郷を討った川路利良は大警視と陸軍少将を兼任するという軍人警察官である。
首都警察としての警視庁は明治、大正、昭和、平成を経て現在も継続中である。
ある意味・・・明治維新魂がそこでは今も生きているわけである。
犯罪者にとって・・・治安は敵である。
いつ犯罪者になるのかわからない・・・庶民にとって警察組織は・・・忌むべき側面を持っている。
しかし・・・「ごめんですんだら警察いらない」は生活安全の合言葉である。
悪いことをしなければこわくありません。
まあ・・・とにかく・・・そういうこともスルーして・・・明治十年、西郷星が輝きを失うといきなり明治十四年である。
おそろしくとんでも大河だなあ・・・。
木戸孝允や西郷隆盛そして大久保利通の死よりも主人公の姉の死が大事・・・まあ、それはそれでいいでしょう。
で、『花燃ゆ・第47回』(NHK総合20151122PM8~)脚本・小松江里子、演出・渡邊良雄を見た。例によってシナリオに沿ったレビューはikasama4様を推奨します。今回も年末年賀状体制発動のためにイラスト描き下ろしはお休みです。明治五年(1872年)の「監獄則」によって獄衣は柿色と定められていたわけですが・・・これは幕府時代からそうだったので・・・もう少し色褪せていてもいいと思いますね。藩によっては浅黄色だったかもしれません。獄中の松陰は薄墨色だったので・・・ある意味イメージなんでしょうねえ。謀反人続出の杉一族の中にあって寿の夫だけが新政府における出世頭となった・・・。親戚一同が楫取素彦に頼るという自然な流れ・・・。楫取もまた吉田松陰という王政復古の先駆けをした者の名声を利用したとも言えます。維新の功労者の一人である久坂玄瑞の未亡人を後妻に迎えることは美談でございます。まあ・・・儒者である松陰一家としては人倫的にアレですが・・・もう文明開化の時代ですから~。そもそも・・・主君筋の毛利元昭は尾張公の娘・富姫と離縁して三条氏の娘と再婚、富姫も戸田氏と再婚してますし・・・。上流階級なんでもありでございます。そういう普通の関係を不倫まあいやらしい的に描かれても赤面するしかございませんよねえ。
明治十一年(1878年)五月、大久保利通が東京・紀尾井坂で暗殺される。六月、東京株式取引所開業。七月、地方三新法公布。八月、東京竹橋にて大日本帝国陸軍の近衛兵部隊が反乱する。大蔵卿大隈重信公邸が銃撃されるも銃撃戦の末、鎮圧。十二月、陸軍卿山県有朋が軍人訓戒を頒布。明治十二年(1879年)一月、高橋お伝斬首。四月、琉球藩が廃止され沖縄県となる。東京・浦賀・館山間に汽船運航開始。チリがペルー・ボリビアに宣戦布告。五月、アフガニスタンと英国の第二次アフガン戦争勃発。六月、東京招魂社が靖國神社と改称される。九月、千住製絨所開業。この頃、久坂秀次郎が久坂家継承。粂次郎は楫取家に戻る。教育令公布。十月、川路利良死去。十二月、日本橋で大火、一万戸焼失。明治十三年(1880年)三月、十三年式村田銃が国産初の制式化。四月、群馬県教員伝習所所長に宮部襄が就任。十一月、官営工場払下げ開始される。斬首刑は廃止され、「人斬り浅右衛門」は失職。明治十四年(1881年)一月、憲兵設置。両国で大火、一万戸焼失。楫取寿死去。四月、農商務省設置。七月、ビリー・ザ・キッド射殺。十月、伊藤博文に追放され大隈重信下野。国会開設の詔により板垣退助が自由党結成。十二月、陸軍刑法・海軍刑法制定。
横浜の占い師・高島嘉右衛門の元に岩倉具視がお忍びでやってきていた。
「群馬県のことやが・・・」
「毛利家が勝ちまする・・・」
「ほんまか・・・」
「吉田の忍びを甘くみてはなりませぬ・・・」
「そんなら・・・英国式は・・・」
「結局はプロシア流となりましょう・・・」
「それは・・・あかんな・・・」
「まあ・・・右大臣様の命数はまもなく尽きまするゆえ・・・」
「後は野となれ・・・山となれかいな」
岩倉具視は気力の衰えを感じ、肩をすくめた。
美和は高崎の一揆衆と岩鼻の脱獄囚部隊に前橋への道を塞がれていた。
「まずいな・・・佐助・・・」
「は・・・」
「お前は板鼻まで迂回して・・・前橋に入れ・・・」
「美和様は・・・」
「私一人なら・・・結界を突破できる・・・」
「お気をつけて行かれませ・・・」
美和は敵の心を読みつつ・・・包囲線に足を踏み入れた。
(姉上・・・)
前橋城に楫取素彦県令と守備兵を置き、楫取夫人寿子は楫取が建設した公設遊郭・上野楼を出城として篭城していた。
岩鼻獄の囚人を解放したのは土佐科学忍者隊である。
薩摩を味方につけた土佐の政商・岩崎弥太郎が陣頭で指揮をとり・・・上野楼を包囲しようとしていた。
木戸、西郷、大久保という維新の元勲がすべて消えた空白に土佐勢が食い込もうとしていた。それは井上馨が支配する三井と岩崎弥太郎の三菱の前哨戦なのである。
弥太郎は妖術を使い・・・西郷の霊を薩摩の敗残兵たちに降ろそうとしていた。
「見よ・・・天に西郷星が輝いている」
前橋の空に赤い妖星が出現していた。
幻の西郷星に魅入られた薩摩の男たちは・・・身体に熱気が宿るのを感じる。
「おはんらの身体に西郷どんが入った・・・桜島の神が憑依した」
男たちの身体から噴煙が立ち上り・・・それは一つの火球となる。
「はなてえ」
膨れ上がった火球は遊郭に火災を発生させる。
寿子の周囲を守る鉄砲くのいちたちが叫びをあげて燃えあがる。
(まずい・・・)
しかし・・・美和は・・・上野楼の表を流れる川面に親しいものがいるのに気がついた。
(秀次郎・・・間に合ったか)
河童である久坂玄瑞の血を引く秀次郎が水中から躍り出た。
「久坂流水術・・・河津波じゃ」
怒涛が発生し・・・上野楼の火災を消し止めると・・・水流は薩摩の男たちを押し流す。
「こしゃくな」
岩崎弥太郎の顔に鬼のような憎悪の表情が浮かぶ。
(あれが・・・土佐の守銭奴・・・)
美和は夜の闇を駆け抜けながら思わず笑みをこぼす。
一夜を凌げば・・・利根川から毛利水軍の河川砲艦が到着する手筈である。
(勝てる・・・)
美和は勝利を確信する。
もちろん・・・毛利家の勝利は・・・運命により定まっているのである。
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