胸躍る軽井沢探偵(新垣結衣)百億のそれぞれの一日がWAKUWAKUするものでありますように(岡田将生)
百億にはまだだいぶあるんじゃないのか。
およそ73億なので四捨五入すれば百億だ。
地球人口の話かよ・・・。
すぐに忘れてしまう人は面白いよねえ。
昨日の夕食はカキフライだったのだが・・・食べ終わって皿を片づけたところで夕方のニュースの情報コーナーが「カキフライ特集」だった・・・カキフライだって、美味しそうだねえ・・・とその人は言った。
同じ一日の出来事でも人それぞれだからな。
新しい恋人が出来て現在の恋人に別れを告げる人は基本的にワクワクしているからな。
別れを告げられた方は基本的にガッカリだよな。
だめだ・・・例が胸に痛すぎるぞ・・・。
弾んでます。
揺れているのか。
揺れは確認できません。
妄想機能全開。
あ・・・ゆ、ゆれているようないないような・・・。
どっちなんだ・・・。
で、『掟上今日子の備忘録・第5回』(日本テレビ20151107PM9~)原作・西尾維新、脚本・野木亜紀子、演出・佐藤東弥を見た。情報というものには全体と部分がある。情報の意味とは構成要素の関係性によって生じる。意味とは結局、人それぞれの情報処理の結果である。全体の把握にこだわる人、細かい部分の分析にこだわる人、全体と部分の調和にこだわる人、部分と全体の作用にこだわる人・・・それぞれの情報は一個人の処理能力を常に凌駕する。情報の洪水の中で人間は叫ぶ。誰か・・・助けて・・・ここに・・・人がいます・・・と。
一日ですべてがリセットされる忘却探偵・置手紙探偵事務所の掟上今日子(新垣結衣)に恋をした冤罪事件の常習被害者・隠舘厄介(岡田将生)は・・・今日も最初で最期の一日を迎えるのだった。
十月のある日・・・。
「作創社」の編集者である重里(神保悟志)に呼び出された厄介は「須永フェスタ」への参加を求められる。
現在は古本屋で働く厄介だったが漫画家アシスタント時代に重里と知りあい、重里は百万円事件で今日子の存在を知っている、
「ぜひ・・・今日子さんにも参加してもらいたい」
須永フェスタは別名「須永の休日」とも呼ばれる。人気小説家の須永昼兵衛が「新作原稿」を「宝物」に見たて・・・担当編集者たちが須永の出すヒントに基づき「宝探し」をするという厄介な「お遊び」である。もしも・・・出版権をめぐるゲームなら死人が出そうな話である。
「今日子さんの推理力で・・・隠された原稿を捜してもらいたいのです」
「・・・というわけで、今日子さんに頼みたいのですが」
探偵斡旋業も営むアパルトマン「サンドグラス」のオーナー・絆井法郎(及川光博)に相談する厄介。
「いつ・・・」
「十一月一日の日曜日です」
「まだ・・・先の話じゃないか」
「ギャラはなしなんですけど」
「それじゃ無理じゃないの・・・守銭奴だから」
「・・・ですよね」
しかし・・・須永昼兵衛の熱狂的なファンである今日子。
「第六回・須永フェストですって・・・イキマスイキマスゼッタイイキマスイクイクイクイキマスオネガイダカライカセテクダサイ」
何回か・・・昇天しかかる厄介と一部お茶の間である。
厄介にとって・・・フェスタ会場となる軽井沢の須永本人の別荘行きは・・・今日子とのデートと言ってもいい・・・格別の一日になるはずだった。
しかし・・・目印の「めい子」を抱えてバス乗り場で待っていた厄介は太股サービスを受けた後で、観光気分の絆井法郎と「サンドグラス」のウエイトレス・幕間まくる(内田理央)や長距離バスの運転手に変装した潜入捜査員の也川塗(有岡大貴)といういつものメンバーが同行とすることを知るのだった。
「あれは何・・・」
「東京スカイツリーですよ」
休日気分を満喫する今日子とまくる・・・。
右手に電波塔を見ながら軽井沢へ続く道をひた走る長距離バス・・・。
「ひょっとしたら須永先生に会えるかも」と高なる今日子の胸の鼓動・・・。
しかし・・・不運な男・厄介の凶運が発動し・・・その日の朝・・・主催者の須永昼兵衛は心不全でこの世を去っていたのだった。
編集者の重信から訃報を伝えられた厄介は「ワクワクしている今日子の気持ち」を大切にするために・・・「主催者死亡を隠蔽してフェスタ続行」を提案する。
ここから・・・厄介は「真実を隠すドタバタ」を展開するのだ。
編集部を代表するのはバイト君(青木泰寛)で・・・須永の別荘の鍵をあけ・・・宝探しのヒントを配布する。
ここで・・・何故か・・・遠浅深近刑事(工藤俊作)と新米刑事(岡村優)のコンビが参入。
須永ファンである遠浅刑事が権力を濫用して参加資格を得たらしい。
遠浅と今日子の間に危険なファン同志の火花が散るのだった。
ヒントは・・・。
①作品はおよそ120分あれば読めるくらい
②デリケートな場所に隠してある
③あるものではなくないものを捜せ
④
「④は空白ですか」
「かって・・・第四のヒントを・・・須永先生自身が変装して所持していたことがあります」
「いや・・・それはないと思います・・・」
「何故ですか・・・」
理由は言えない厄介だった。
一方、絆井法郎は別荘内でリラックスし、まくるは軽井沢周辺でショッピング、そして潜入探偵は趣味の風景写真撮影に熱中する。
遠浅と今日子は先を争って「須永の書斎」に駆け込む。
「ここに・・・隠されているのですか」
「いえ・・・先生の書斎を拝見したいだけです」
「ふふふ・・・忘却探偵・・・私の勝ちだな」と突然、勝利宣言をする遠浅刑事。
「え」
「貴様は・・・ある時から一日で記憶がリセットされるようになった・・・つまり・・・須永先生の最新作については・・・疎い」
「確かに」
「最新作にヒントが隠されているとしたら・・・貴様にはわかるまい・・・」
「・・・」
ファンとしての屈辱感を味わう今日子に・・・厄介は萌えるのだった。・・・おいっ。
「書斎には・・・先生が45年間に書きあげた全作品があるはずだが・・・一冊が欠けているのだ」
しかし、今日子はすでにファンとして須永の寝室を見学していた。
「かってにベッドに入るのは・・・それに眠くなったらどうするんですか」
「ドキドキして眠れませんよ」
「かわいいよ・・・今日子さん、かわいいよ」
やがて・・・須永の洗面室で合流する遠浅と今日子。
「見ろ・・・黄色だ」
鮮やかな色で塗装された洗面室の反射光で金髪となる今日子。
「どういうことです」
「須永先生の最新シリーズは・・・全四巻」
「盗まれたブルー」
「裏切りの赤」
「青い夕焼け」
「連投グリーン」
「書斎からは盗まれたブルーが消えていた・・・そして・・・四作目は連投グリーン・・・グリーンからブルーを盗めば・・・」
「イエローですか」
しかし・・・今日子はオレンジ色のバランスボールに夢中だった。
「これなんですかあ・・・」
「今日子さん・・・かわいい・・・かわいい・・・かわいい」
「この洗面室は・・・私も読んだことのある小説に登場します・・・しかし、作者あとがきにこう書かれています」
「あとがき・・・」
「母が金色に塗ってしまった洗面室と・・・」
「黄色ではなく・・・金色だったのか」
「しかし・・・盗まれたブルーは・・・」
そこへ・・・須永の娯楽室から戻ってくる絆井法郎。
その手には・・・「盗まれたブルー」が・・・。
「読もうと思ったけど・・・レコード聞いている間に眠ってしまった」
「あんたが・・・持ち出しただけかよ」
宝探しは振り出しに戻る。
そこへ・・・訃報を知ったマスメディアの記者たちが押し掛ける。
応対する厄介。
居合わせた法郎は事情を聴く。
「なるほど・・・今日子さんのために・・・か」
法郎は記者たちの前に出た。
「あなたはどなたですか」
「妻です・・・主人がいつもお世話になっています」
「・・・妻?」
「詳しい話は・・・主人の愛した散歩コースで・・・」
今日子は・・・立ち聞きしていた。
「先生は・・・」
「先生は来ません・・・」
愛する小説家の死を知り悲しみを浮かべる今日子・・・。
しかし・・・須永の来訪を哀訴していると誤解した厄介は・・・。
「そんな顔してもダメですよ」
優しくすれ違う二人の心と心である。
屈指の名場面だったなあ・・・。
魚肉ソーセージや今日子が羨望する1500円のズワイガニの缶詰を盗み食いしたバイト君は「ヒント」をコピーしていた。
原本を求める今日子。
④には「鉛筆が必要となるかもしれない」の文字が修正テープで消されているという「ヒント」があった。
「なるほど・・・作品は120分で読めるくらい・・・」
「僕なら短編しか読めない時間ですが・・・新作は長編だそうです」
しかし・・・今日子は自動掃除ロボットに夢中になっていた。
「こんにちは~はじめまして~」
「なんですか・・・」
「どうやら・・・最新のペットロボットだと勘違いしているらしい」
「お名前はなんですか~」
「かわいい・・・(><)・・・かわいいよ」
しかし・・・世界では「訃報」が呟かれ・・・。
「なんでもかんでも呟くな・・・」と厄介を憤慨させ・・・。
「大変よ」と帰宅したまくるが叫び・・・。
厄介の目の前を横切った黒猫が・・・テレビのスイッチを入れる。
「本日未明・・・人気作家の須永昼兵衛さんが亡くなりました・・・」
「・・・」
「・・・そうですか・・・先生が・・・」
「・・・」
「学生時代・・・つまらないことで悩んでいた時に・・・須永先生の次回作があると思うとワクワクして・・・救われたことがあります」
「今日子さん・・・」
「私がこうなった後も・・・須永先生は・・・たくさんのファンをワクワクさせ続けていたんですよねえ」
「・・・」
「百作目を見つけないと・・・ファンの人たちがガッカリしますね」
「まさか・・・もう・・・謎は解けたんですか?」
「僭越ながら・・・」
今日子は袖から・・・録音用のカセットテープを取り出す。
「レトロなマジックか・・・」
「娯楽室にありました・・・①120分のテープです」
「懐かしい・・・」
「④テープがたるんだら・・・鉛筆でクルクル・・・」
「懐かしすぎる・・・」
「しかし・・・二時間では長編は朗読できまい」
「レトロな時代・・・磁気テープには・・・データも記録できたのです」
「つまり・・・①120分で読み込めるということですか」
「磁気による記録は②デリケートです・・・水にも磁力にも弱い」
「確かに・・・」
「そして、テープがあるのに再生するための機器が見当たりません」
「③あるのに・・・ない・・・ですね」
「ここに・・・暗号があります」
「R6L8R4L2・・・ダイヤル式の金庫だ・・・」
「レトロなテレビの下にレトロな金庫がありました」
金庫の中にあったのは・・・。
「うわあ・・・MZ-700・・・」
MZ-700は実在する1982年発売の8ビットパーソナルコンピュータである。
「IBM5100じゃないのか・・・」
「タイムマシンではなく・・・ゼビウスが遊べますよ・・・エロゲーも」
「立ち上げに10分・・・すべてのデータ読み込みに120分かかりますけどね」
レトロなモニター画面に現れる・・・レトロな文字。
須永昼兵衛の最期のメッセージ。
「タカラサガシノジュンビヲスルノハタノシイ。ワタシニトッテサイコウノキュウジツデシタ・・・」
「・・・」
「ミナサンハタノシンデクレマシタカ?」
「はい・・・」
厄介は今日子の最高の笑顔を記憶した。
軽井沢の黄昏・・・。
楽しい休日はもうすぐ終了である。
「読みたかったなあ・・・須永先生の遺作・・・」
「二ヶ月後に・・・発刊だそうです・・・プレゼントしますよ・・・あ・・・今日子さんは部屋に本を置かないんでしたね」
「ええ・・・一冊の本を毎日読んで・・・一生が終わってしまいます」
「だから・・・今日子さんは探偵として・・・書を捨てて街へ出たのかもしれませんね」
「こうしたら・・・どうでしょう・・・サンドグラスの書棚に・・・あなたのプレゼントをそっと置いてみたら・・・」
厄介の甘い空想が広がる・・・。
ある日・・・書棚に・・・須永昼兵衛の最新作を発見する今日子。
本を手にとった今日子に・・・本にまつわるエピソードを披露する厄介。
ワクワクする未来の情景。
黄昏の金色の光の中で魔法にかかった二人。
そんな二人をカメラに収め・・・潜入探偵は微笑む。
まくるは呼びかける。
「帰る時間ですよ」
厄介の恋の物語は続く・・・しかし、今日子の記憶は続かないのだ。
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