« 2015年11月 | トップページ | 2016年1月 »

2015年12月31日 (木)

まれ〜また会おうスペシャル〜(土屋太鳳)スターと一般女性との恋(中村ゆりか)素晴らしいインターネットの世界のお見合い(清野菜名)マリー・アントワネットより愛をこめて(清水富美加)

なんだかんだで大晦日である。

米屋からおもちが届き、切ってしまたので昨夜から御雑煮を食べている。

母方の流れの御雑煮は鳥肉でだしをとり、醤油・みりん・砂糖・清酒・削り節・昆布で味付け、大根、ニンジン、サトイモ、ホウレンソウの具材だ。

父方はもう少しシンプルだが、鳥肉を買ってしまうと母方風になってしまうのだった。

スーパーマーケットではいつものかまぼこのコーナーにかまぼこがなく、周辺はおせちセットであふれ返っている。

仕方なくいつもより高い小田原のかまぼこを買う。

築地市場の玉子焼きやら栗きんとんやらたこやらかずのこやらが届くのでどんどん食べる。

いつの間にか年越し蕎麦を食べる前におせちを食べる習慣になってしまった。

まあ・・・こうして・・・戦後70年の年も暮れて行くのだった。

このままではいけないと思うと吉永小百合は語るが・・・だからどうしろとは言わない。

世の中なんて誰かがどうにかするものではないわけである。

少なくとも・・・悪魔はそう考える。

で、『ザ・プレミアム まれ〜また会おうスペシャル〜』(NHK総合201512231605~)脚本・池谷雅夫、篠﨑絵里子、演出・津田温子(他)を見た。本編に対しては平均視聴率があの「純と愛」以来20%を切ったこととともにツッコミが炸裂し、大河ドラマ「花燃ゆ」とともに駄作の太鼓判を押されていたわけだが「花燃ゆ」ほどではなかったとキッドは考えるのだった。要するに臨機応変でも人生はなんとかなったりならなかったりするという話なのである。ただし・・・狙っても「あまちゃん」のような奇跡は生まれないのだ。そんなことでは「あまちゃん」が奇跡ではなくなってしまうからな。しかし、柳の下の泥鰌を狙う下劣な品性は人間ならではのものであり、悪魔としてはそういう点も含めて楽しめたのだった。

さて・・・これはBSプレミアムからのおさがりである。前編「僕と彼女のサマータイムブルース」が10月24日に、後篇「一子の恋〜洋一郎25年目の決断〜」が10月31日に放送されている。

ドラマ内時空は2015年で1983年生まれの津村希(土屋太鳳)は32歳になっている。

同級生たちはみんな三十路を越えているわけで・・・なんちゃっての嵐が吹きまくる。

実年齢は土屋太鳳(20)、清水富美加(21)、中村ゆりか(18)、清野菜名(21)、門脇麦(23)である。

こんなピチピチの三十女はいない・・・が・・・このリアリティーの欠如こそ・・・「まれ」の世界なのだな。

いろいろなしがらみから解放されて・・・脇役たちの「恋」に特化したスピンオフ。

狙ったギャグは相変わらずすべっているが・・・ドラマとしては非常にわかりやすくなっているのだった。

最終回の視聴率が48%を越えた「ミスター・パイロット」の主演俳優となった二木高志(渡辺大知)だったが・・・本業のロックミュージシャンとしては・・・時空を越えた熟女愛による津村藍子(常盤貴子)への思いを断ち切ったことによってスランプとなり・・・楽曲作りが進まなくなっていた。

一方、池畑輪子(りょう)の占いによって婚約解消、司法書士試験失敗という悪運を払うために北西へと向う池畑美南(中村ゆり)は高志と合流し、紺谷希となった共通の友人を訪ねて能登に漂着するのだった。

蔵本一子(清水富美加)への恋一筋に生きる角洋一郎(高畑裕太)は美南にたちまち一目惚れをする。

だが・・・太極拳の達人である美南は洋一郎をたちまち投げ飛ばすのだった。

「私はいつも60点の女だから・・・」

「でも・・・希ちゃんなんかいつも0点だぜ」

「だって・・・希ちゃんは0点満点だもの」

「・・・」

自己憐憫の虜でありながら・・・美しい美南を慰めるうちに・・・高志に恋が芽生えるのだった。

つまり・・・不幸そうな美人がタイプの高志なのである。

能登の仲間たちの支援を受けて・・・ついに告白の歌を完成する高志。

君は不幸でいいのさ

僕が幸せにするから

こうして・・・国民的スター(なにしろ視聴率40%の男である)と一般女性は恋のテイク・アウト・・・ではなくて恋のテイク・オフを果たすのである。

まあ・・・美南のキャラクター設定もかなりアレだけどな。

一方、一子から「最高の仲間だけれど・・・どうしても男としては惹かれない」と告げられた洋一郎は素晴らしいインターネットの世界のSNS「フェイスノート」で知り合った栗林仁子(清野菜名)とデート・・・。

「東京に憧れたけど、大阪に行って、夢が捨てきれずに東京でイラストレーターをしている」というなんだかとっても「一子」のプロフィールによろめく洋一郎だった。

希のケーキ店「プチ・ソルシエール」でも・・・「美味そうだけど高い・・・高くて美味いのは当たり前」と「一子」みたいなことを言う仁子だった。

仁子の登場に突然、燃えあがる「一子」の嫉妬心。

希に複雑な心境を「ベルサイユのばら/池田理代子」の登場人物になぞらえて説明する。

「基本的にアンドレ→オスカル→フェルゼン→マリー・アントワネットなんだけど・・・やがてアンドレの包容力も備えた大人の男性としての魅力に・・・オスカルが気がつくわけ」

「ほうけ・・・」

「心優しくあたたかい男性こそが 真に男らしい男性なのだと気付くとき・・・大抵の女はすでに年老いてしまっている・・・」

「・・・」

裸祭りを経て仲間たちに「一子の代役で仁子はダメ」と忠告される洋一郎・・・。

ついに・・・仁子は「一子」をモデルとした架空の性格であることが暴露される。

失恋した仁子は・・・「一子」を真似て洋一郎と結婚しようとしていたのだった。

そこへ・・・浮気症で仁子から借金しているという・・・仁子の元彼である猪俣雄二(渋谷謙人)が現れる。

そのあまりの「仁子を不幸にしそうなタイプ」ぶりに・・・洋一郎の男気が火を吹くのだった。

「お前に・・・彼女を渡せるか」

洋一郎の暴力が炸裂する。

洋一郎は力づくで仁子をものにしたのだった。

「仁子ちゃんに嫉妬したんじゃないのけ・・・」

「ただの独占欲だった・・・」

「ほうけ・・・」

親友である希に愚痴る一子・・・。

「私はこのまま・・・一人で朽ちていくのかしら」

「マリー・アントワネットだって結婚して出産してから本当の恋をしたんだし・・・一子だってまだまだこれから・・・」

「マリー・アントワネットは37歳で断頭台の露と消えますから・・・」

「ほうけ・・・」

連続テレビ小説「いちこ」は始らないらしい・・・。

しかし・・・「まれ」に登場した二十代女優たちの戦いはこれからなのだ。

さようなら・・・2015年・・・楽しかったよ・・・。

関連するキッドのブログ→まれ

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2015年12月30日 (水)

トランジットガールズ(伊藤沙莉)義姉と義妹で同性愛で(佐久間由衣)

性愛の奥義は玄妙である。

そういうものに公序良俗を持ちこむのは一種の病気であるが・・・持ち込んだ方にはそういう自覚がないのが普通である。

未成年者の同性愛の一番の利点は妊娠の心配がないことである。

ただし、適齢期になった時に繁殖が難しくなるのではないかと倫理主義者は案じる。

性的興奮は甚だしい快楽の根源の一つである。

その追及の果てにいろいろと問題が生じ、社会的混乱をもたらす場合には法的な歯止めが求められる。

たとえば、従軍慰安婦が公的売春制度なのか、性的奴隷制度なのか、あるいは両者は同じなのかという合意を得るのはなかなかに困難である。

自慰と性的な交わりの境界線は曖昧である。

そこに・・・愛があるのかどうか・・・愛とは何か・・・人間は永遠に迷うのだと考える。

で、『トランジットガールズ・第1回~最終回(全8話)』(フジテレビ201511072340~)脚本・加藤綾子、演出・前田真人を見た。ほとんどの日本人がカレーライスとラーメンを好きであることは大前提だが・・・中にはインド的なものや中華的なものが苦手でおにぎりと蕎麦しか美味しいと感じない人もいるかもしれない。逆におにぎりと蕎麦だけは美味しいと感じない人もいるかもしれない。多くの人間がカレーライスもおにぎりもラーメンも蕎麦も美味しいと感じるとすれば・・・人間は両性愛者的だと言えるのである。

異性愛オンリーの人や、同性愛オンリーの人がいかに偏っているかがおわかりいただけただろうか・・・そういうものでたとえられてもだな。

しかし、弱肉強食と平和共存の両輪で制度を積み上げてきた人間社会では大自然によって歪になった精神というものがあり、一夫一婦制度だの、夫婦別姓だの、同性婚の否定だの、売春禁止だの、強姦罪だの、年齢制限だの、緊縛変態だのといろいろと面倒くさいことが現実化しているわけだ・・・もう、ミソもクソも一緒だがな。

まあ・・・悪魔なので・・・すべてはなんでもありだと考えています。

そういう世界でのお茶の間エンターティメントとしてのガールズラブドラマである。

それが衝撃的なのかどうか・・・悪魔なのでよくわからないのだな。

さて・・・オーソドックスに言うと同性愛には先天的なものと後天的なものがある。

先天的な場合は・・・片思いの度合いが強い。たとえば女性が女性を求めているわけであるが・・・本来、女性は男性を求めているからである。

女性を求めている女性同志が出会っても・・・お互いが求めているのは女性なのであって・・・女性を求めている女性ではないのだ。

後天的な場合は多種多様な状況が想定される。異性嫌悪からの同性愛もあれば、両性愛者の同性愛もあり、性的好奇心の過剰による同性愛もあれば、前世の因縁による同性愛もあるわけである。

まあ・・・いろいろとあるが・・・結局、カップルの誕生なんてものはすべて妥協の産物にすぎないのである。

理想の相手とめぐり会うなんてことがあってたまるか・・・おいっ。

ぼんやりとした性的描写(主に接吻)があるために・・・主人公の女子高校生・葉山小百合(18)を演じるのは1994年5月生れで実年齢21歳の伊藤沙莉である。

ある意味で合法ロリータものなのである。

小百合の父親である葉山圭吾(Mummy-D)が志田まどか(霧島れいか)と再婚することになり、まどかの連れ子であるカメラマン志望のゆい(21)を演じるのが佐久間由衣で1995年3月生れで実年齢20歳なのだ。

女優たちはつまり・・・同級生なのである。

そして・・・実年齢では八ヶ月ほど先に生まれている伊藤沙莉が妹を演じているので・・・二人はなんちゃって姉妹なのだ・・・そこかっ。

思春期で・・・母親への思慕の強い小百合は父親の再婚に反発する。

ところが・・・ゆいはいきなり小百合の唇を奪うのだった。

ゆいの性的指向のベクトルは曖昧だが・・・男性経験もあり・・・両性愛者の側面も垣間見える・・・とにかく・・・小百合を愛しく思うわけである。

小百合は・・・思ってもみない出来事に動揺するが・・・潜在的に同性愛気質であったらしく・・・やがて・・・二人は両想いになっていく。

お茶の間的には・・・表現されないが・・・同性同志の接吻の後、裸になった二人はお互いの性的器官を愛撫しあい、大陰唇や小陰唇をすり合わせ、お互いの乳首を吸引し、お互いの陰核を激しく刺激し、愛液にまみれて快感の宴をくりひろげるのだ・・・いい加減にしておけよ。

キッドは何人か、同性愛の女性から赤裸々な告白をされたことがあるが・・・たとえば男性と性交するよりも・・・女性と性的関係を持つ方が明らかに快感が強いと告げられ・・・激しく興奮したことがある・・・なんでもありだからな。

しかし・・・いかに興奮しても相手が求めているのは男性ではないわけである。

・・・残念だったんだな。

女の子と女の子のカップル誕生に周囲は様々な反応を示す。

いたってノーマルな門脇未來(吉田里琴)や小百合に片思いの深澤直(健太郎)なども登場するのである。

しかし・・・まあ・・・基本的には・・・抱擁力のある大人の同性愛者であるゆいとまだまだ初心な同性愛者である小百合との心のゆらめきが・・・ポイントになってくる。

つまり・・・恋愛ものとしては・・・非常にノーマルというわけだ。

終盤、娘と娘の性的な結びつきに・・・両親は動揺する。

なにしろ・・・このままでは・・・孫の顔が見れないわけである。

まあ・・・来年、人類が滅亡するとなると・・・多くの人は一緒だけどな。

迫りくるクリスマス・・・ストレートに愛を貫くゆいに対して・・・いろいろと躊躇ってしまう小百合。

結果として・・・家族は一度瓦解してしまう。

しかし・・・一度知ってしまった禁断の果実に誘われて・・・おいっ・・・ゆいの心に潜む優しさを感じた小百合は一人暮らしを始めたゆいを迎えにいくことを決心するのだった。

ゆいが小百合を見初めた神社の境内でゆいの胸に飛び込む小百合。

「キスしてよ」

めくるめく官能の嵐である。

二人は手を繋ぎ仲良く・・・神社の階段を下りてゆくのだった。

まあ・・・相手が同性だろうが異性だろうが・・・愛が永遠に続くものとは限らないわけだが。

関連するキッドのブログ→ラスト・フレンズ

シェアハウスの恋人

ごめんね青春!

| | コメント (2) | トラックバック (1)

2015年12月29日 (火)

赤めだか(二宮和也)立川談志物語だねえ(ビートたけし)恋より落語か(清野菜名)

「笑点」の初代司会者だった立川談志は昭和四十四年(1969年)の第170回で前田武彦にバトンタッチした。

それから・・・昭和四十六年(1971年)には参議院議員に当選している。

昭和三十八年(1963年)に真打に昇進してから十年の間にすでに波乱万丈の人生がある。

昭和五十八年(1983年)は真打昇進から二十年である。立川談志は落語協会を脱会し、落語立川流の家元となる。

その翌年・・・昭和五十九年(1984年)・・・立川談春は高校中退し、立川流に入門する。

「立川」は「たちかわ」ではなく「たてかわ」である。

平成九年(1997年)・・・立川談春は真打となる。

平成二十三年(2011年)十一月、立川談志逝去。

時は流れて行く・・・。

で、『赤めだか』(TBSテレビ20151228PM9~)原作・立川談春、脚本・八津弘幸、演出・タカハタ秀太を見た。立川談春(二宮和也)が十七歳で談志(ビートたけし)の門下生となり、見習い、前座を経て二つ目に昇進するまでを描いた物語である。師弟愛を根底とした談春の心の成長が主題となっている。ちなみにビートたけしは落語立川流の門人で立川錦之助という高座名を持っています。談志だかビートたけしだかわからないと感じる人もいるだろうが・・・似たようなものなんだと妄想するしかないのだった。

ついでに・・・「立川談かん」はたけし軍団の「ふんころがし」を経て「ダンカン」になっている。

ダンカンは今回、お届けものの配達員として登場していた。

埼玉県の高校生だった信行は薬師丸ひろ子のナレーションに背中を押されて落語立川流の門人となる。

「親の承諾が必要だ」という談志に「親は死にました」と応じる信行だった。

両親(寺島進・岸本加世子)に「落語家になること」を反対され家出していたのだ。

「赤穂藩には四十七士の他にも武士はいたが・・・みんな逃げちゃった・・・落語は逃げちゃった方にスポットを当てるもの」という談志の言葉が信行を動かしていた。

馬鹿なのである。

「笑点」を作り、「国会議員」にもなったが・・・「落語家」としては一流だった談志は・・・信行を「立川談春」として育てることにしたらしい。

兄弟子には二つ目の立川志の輔(香川照之)がいて、借金持ちの立川談々(北村有起哉)、上方から流れてきた立川関西(宮川大輔)、野球くずれの立川ダンボール(新井浩文)がいた。

談志は様々な雑用を弟子たちに言い付ける。

「窓の桟を拭け、牛乳と豚肉百グラム買ってこい、机の上のはがきを出しておけ、事務所に電話してギャラを確認しろ、写真を整理しておけ、スリッパの裏をきれいにしろ、枕カバーを洗え、となりの家が荷物を預かってるからもらってこい、つつじの花を摘め、桜の木に害虫駆除の薬を撒け、シャワーの出が悪いから直せ、職人を呼んでもいいが金は使うな、戸袋の鳥の巣をなんとかしろ、塀の上の猫を撃て、ただし殺すな・・・」

弟子たちはてんやわんやで用をするのだった。

「師匠だっていちいち覚えてないだろう」

「ところが・・・覚えているんだな」

「十四個です」

「すごいな」

「数えてました」

「で・・・なんや・・・」

「いや、数えていただけなので」

「ギャラってなんでしたっけ」

「シャワーが壊れました」

「つつじに殺虫剤かけちゃいました」

馬鹿なのである。

やがてダンボールが廃業することとなり・・・師匠が「金魚を買え」と言った金で焼き肉送別会をする談春。

おつりで「めだか」を買い・・・「珍しい金魚」と称する談春だった。

後の「赤めだか」である。

「風邪」を理由に稽古を断った談春は・・・談志の機嫌を損ねる。

それが「しくじり」であることに思い当たらない談春は・・・「築地市場」に修行に出されるのだった。

魚河岸の女将(坂井真紀)に叱責されて・・・ぼやく談春。

女将の娘(清野菜名)の熱い眼差しも眼中にはない。

一方、後輩の立川志らく(濱田岳)は談志に気に入られ頭角を現す。

辛抱しきれず談志に不平をぶつけようとした談春は機先を制されるのだった。

「なんでも他人のせいにするやつはダメだ。そういう奴は嫉妬に目がくらむ。自分ができないことを他人のせいにするのは楽だからな。政治が悪い。世の中が悪い。そんなことをいって何かが変わるか。現実ってものを受けとめることが大切だ。そうすれば・・・何故、ダメなのかがわかる。理由がわかれば・・・それをどうにかしようと工夫ができる。全部自分が悪いんだと思えば・・・腹なんか立たないんだ」

いわゆるひとつの実存主義である。

今年は昭和九十年だった。

敗戦の年、昭和二十年から七十年である。

今、八十代の人間は昭和ヒトケタの生まれで「戦争」でひどいめにあった子供たちである。

そういう人々の「戦争」への嫌悪はなかなかのものだ・・・しかし・・・そういう人々はなぜ、そういう時代になってしまったのかは知らない。

知るためには・・・歴史を学ばなければならない。

そうでなければ・・・すべては「親のせい」になってしまうのである。

「安全保障」と聞いただけで「戦争」を叫ぶのは・・・「現実」を否定した戦前の人々と通じるものがあるわけである。

談志は弟子たちに・・・「人から可愛がれられる道」を説く。

そして・・・「人に迷惑をかけても許してもらえる人間になれ」と言うのだった。

この・・・恐ろしい矛盾こそが「現実」の醍醐味だからである。

沖縄開発政務次官に就任した談志は沖縄海洋博視察の記者会見に二日酔いで応じ、記者から「公務と酒とどっちが大事か」と問われて「酒にきまってんだろ」と答えたのだった。

無茶苦茶だが・・・面白ければそれでいいと思う。

談志は昭和十一年(1936年)生まれでそこそこひどい目にあっているわけである。

談春は談志の「愛」を感じた。

そして・・・精進したのであった。

「落語はリズムとメロディーだ」と持論をもっていた談志。

ドラマ全体に薄いBGMとして郷愁を誘う歌が流れる。

世代にもよるだろうが・・・演出としてはこれが心を持っていく仕掛けになっているようだ。

懐かしい歌に残るリズムとメロディーのように・・・。

談志がこの世から消えても・・・立川流の落語は生きているのである。

たとえハッピーエンドでもどこか淋しい。

談春の青春を・・・二宮和也は見事に演じたと考える。

関連するキッドのブログ→オリエント急行殺人事件

ちりとてちん

昭和の爆笑王林家三平ものがたり・おかしな夫婦でどーもスィマセーン!

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2015年12月28日 (月)

HiGH&LOW〜THE STORY OF S.W.O.R.D.〜(窪田正孝)お前らの好きなそのスジの話だよ(小島藤子)

EXILE系に興味のない人は・・・しばらく我慢しなければならない。

しかし・・・中盤でRUDE BOYSのリーダーのスモーキー(窪田正孝)が登場すると・・・ストーリーもバトルアクションもそれなりにエンジョイすることができる。

それだけは保証しておきたい。

喧嘩しかとりえのない若者の話は王道で・・・チーム同志の抗争は妄想が広がるところである。

とある世界を支配していたギャングチーム「ムゲン」と雨宮三兄弟(長男は未登場)の抗争の果て・・・。

世界は五つのチームによって分割される。

つまり・・・連合国と大日本帝国の戦後・・・国際連合に5大国による安保理常任理事国が設置されたということである。

米国にあたるヤンキー要素の強い山王連合会、紳士の国で時計仕掛けの英国にあたるWhite Rascals、おフランス的な文化の香りのする鬼邪高校、貧民たちの集うソ連なRUDE BOYS、臥薪嘗胆で復讐を誓う中国的な達磨一家・・・。

まさに現代世界の縮図が展開していく。

彼ら・・・半端なグレン隊には・・・世界の周囲からの接触がある。

それを神と悪魔と考えてもいいし・・・カタギとヤクザと考えても良い。

カタギを守る警察が出てくると話が終わるので・・・基本的にはヤクザな組織暴力団が・・・アマチュアたちを支配下に置くために触手を伸ばしてくるという定番である。

ま・・・そうやって妄想すれば・・・そこそこ深みのあるストーリーになっています。

で、『HiGH&LOW〜THE STORY OF S.W.O.R.D.〜・第1回~最終回(全10話)』(日本テレビ201510220129~)脚本・Team HI-AX、演出・山口雄大(他)を見た。パチンコ友達の小竹のママ(小泉今日子)と朝比奈寿子(YOU)たちが見守る山王街で育ったコブラ(岩田剛典)とヤマト(鈴木伸之)は幼馴染である。喧嘩バカだった彼らには秀才の親友であるノボル(町田啓太)がいた。ノボルは大学に進学する。しかし、この世界の大学はスーパーに悪い大学生が女子大生を凌辱するためにしか存在していないために・・・ノボルは恋人の美保(平田薫)を自殺に追い込んだ男たちを殺害し服役することになる。

コブラとヤマトはノボルの帰る場所として山王連合会を組織するのだった。

しかし・・・刑務所で勧誘されたノボルは・・・山王連合会、White Rascals、鬼邪高校、RUDE BOYS、達磨一家の支配する通称・SWORD地区を狙う組織暴力団・九龍グループ・家村会の会長(中村達也)の舎弟・二階堂(橘ケンチ)の子分になってしまうのだった。

そんなこととは知らないヤマトは街でリンチされているチハル(片岡千晴)を助けてしまう。

しかし、チハルは掟を破った鬼邪高校の生徒だった。

他のグループとはトラブルを起こさないという山王連合会の現総長・コブラの決めごとに抵触してまったヤマトは・・・なんとか・・・独力で事を治めようとする。

レディースチーム「苺美瑠狂」のリーダー・純子(小島藤子)は・・・「やっちまったな」と呟くのだった。

しかし・・・結局は喧嘩である。

山王連合会と鬼邪高校は全面戦争に突入。

しかし、最後は鬼邪高校の番長・村山良樹(山田裕貴)とコブラのタイマン勝負となり、コブラの勝利で決着がつくのだった。

晴れてチハルは鬼邪高校の生徒でありながら山王連合会の一員となる。

一方、山王連合会のダン(山下健二郎)は謎の女ララ(藤井夏恋)に誘われてクラブ「HEAVEN」の闇取引に巻き込まれる。ダンは現場で騒ぎを起こして逃げ出すが・・・「HEAVEN」はWhite Rascalsの根城だったために・・・山王連合会とWhite Rascalsの間に摩擦が生じる。White Rascalsのリーダー・ロッキー(黒木啓司)はゴールデンボンバーな手下たちに山王連合会の溜まり場を襲撃させるのである。

問題を解決しようと女を捜索したダンは・・・RUDE BOYSの支配する無名街に迷い込む。

巨大なジャングルジムのような廃墟で・・・アクロバティックなバトルを展開するRUDE BOYS・・・。そのリーダーは喀血する男・スモーキー(窪田正孝)だった。

無名街の住人たちは・・・孤児出身であり・・・鉄の結束力を誇っていた。

しかし・・・スモーキーの妹ララは外貨を稼ぐためにちょっとした仕事を引き受けたのである。

ララたちは・・・スモーキーには隠して廃墟に危険ドラッグの製造工場を作っていた。

工場に潜入したダンはそこに・・・チハルの姿を発見して驚く。

すべては・・・SWORD間に抗争を起こさせ、弱体化させようとするノボルの策略だったのである。

スモーキーとコブラはタイマンを張るが・・・スモーキーは無敵だった。

しかし、スモーキーの喀血のために逃走に成功するコブラ。

コブラとヤマトは工場を襲撃し、ララたちの陰謀を暴く。

「ドラッグはご法度だ」

「だって・・・兄貴の医療費を稼ぎたかったんだもん・・・」

「ララ・・・」

コブラと・・・スモーキー、そしてロッキーが・・・家村会の策略に気がついた頃・・・ノボルのライバル的存在である家村会のキリンジ(小野塚勇人)は達磨一家の頭・日向紀久(林遣都)にSWORDの支配を焚きつけていた。

日向紀久は・・・九龍グループに属しムゲンに敗北した日向会の残党だった。

日向はSWORDを支配することで・・・さらに・・・日向会の対立組織だった家村会を潰す企みを持っていた。

ついに・・・山王連合会と達磨一家の抗争が開始される。

地下駐車場から廃墟と化した商業施設で乱闘につぐ乱闘が展開する。

そこへ・・・ドラッグ工場壊滅の責任を負わされたノボルが拳銃を持って乗り込む。

ノボルは発砲するが・・・誰も殺傷することができない。

「そんな物騒なものは捨てろ」

「俺は汚れちまった・・・」

「馬鹿だな・・・お前の帰れる場所は・・・俺たちのところしかないだろう」

「帰ってもいいのか」

「当たり前だ・・・」

よくわからないが・・・大団円らしい。

とにかく・・・ムゲンの総長・琥珀(AKIRA)や雨宮兄弟の次男(TAKAHIRO)や三男(登坂広臣)は健在で・・・戦いは第二章へと続くのだった。

まあ・・・暇じゃない人はお気に入りのキャラが登場するところを楽しめばいいと思うよ。

関連するキッドのブログ→エリートヤンキー三郎

クローズZERO

ヤンキー君とメガネちゃん

クローバー

ワイルド・ヒーローズ

| | コメント (2) | トラックバック (1)

2015年12月27日 (日)

いつかティファニーで朝食を(トリンドル玲奈)男子より美味しいものを求める女たち(中村ゆりか)

長い谷間なのだが・・・いつまでたっても秋ドラマを語り終えない。

このブログは本来アナログテレビの終焉を看取る雑記だったのだが・・・余生は地上波デジタルのドラマにほぼ限ったレビューである。

他メディアからのお下がり放映も含めているが・・・基本は地デジでオンエアされたドラマに限っている。

それなのに・・・コンテンツが多過ぎるわけである。

まさに・・・今は戦国時代なのかもしれない。

なにが良くて・・・なにが悪いかは・・・人それぞれだが・・・たとえば・・・ヒットドラマというものがあり・・・ビジネス上では・・・それはよいドラマと言える。

そういうものが何故ヒットしたかを分析するのも一興である。

しかし・・・まあ・・・そういうことはその道のプロにまかせたい。

キッドはあくまで妄想を記録していくだけである。

暮れゆく2015年・・・お付き合いくださる読者の皆様・・・暴飲暴食にご注意ください。

で、『いつかティファニーで朝食を・第1回~最終回(全12話)』(日本テレビ201510110125~)原作・マキヒロチ、脚本・足立紳、演出・中茎強(他)を見た。原作は新潮社系のコミックという微妙な立ち位置である。言わずと知れた小説「ティファニーで朝食を/トルーマン・カポーティ」(1958年)のもじりによるタイトルであり・・・オードリー・ヘプバーン主演の同名映画の・・・あの朝食が素敵だと感じるセンスが基盤にあるわけである。半世紀以上前の感覚を変わらない何かと捉えるか・・・それともノスタルジーと捉えるかも・・・人それぞれだろう。原作のヒロインが・・・売春婦であったように・・・庶民としての女子のやるせない鬱屈はそこそこ漂っている。

アパレル会社勤務の佐藤麻里子(トリンドル玲奈)は28歳・・・女優の実年齢が23歳なのですでにちょっぴりフワフワしています・・・七年間交際していて同棲中の吉田創太郎(岩井拳士朗)との生活に倦怠感を覚えている。

麻里子は創太郎との性生活にも嫌悪感を覚えているのだった。

そこには・・・ときめくものがないわけである。

そして・・・創太郎は釣った魚に餌をやらないタイプなのである。

たとえば・・・麻里子はたまにはおしゃれなカフェでデートがしたいのだが・・・創太郎にとってそれは時間と金の無駄遣いにしか思えないのだろう。

そういうカップルを街で見かければ悪魔はニヤニヤするばかりである。

創太郎と距離を置くことを決意した麻里子は引越し先を勤務先のPCでリサーチする。

同僚の立花先輩(竹厚綾)や眼鏡を外すと美少女の伊達公子(中村ゆりか)はたちまち・・・麻里子の状況を見抜くのだった。

「28歳で・・・七年交際した相手と別離かよ・・・大丈夫か」

「悲惨ですね」

「ひでぶ」

そんな・・・麻里子の心の支えは・・・群馬県出身の麻里子の高校時代の仲良しグループなのだった。

卒業後・・・十年・・・変わらぬ友情で支え合う女友達・・・である。

バーの雇われ店長でオーナーと不倫中の阿久津典子(森カンナ)、専業主婦で四歳の息子(横山歩)がいる那須栞(徳永えり)・・・この二人は実年齢・27歳・・・だ。そして、実年齢22歳のヨガインストラクターの新井里沙(新木優子)の四人組。

28歳の同級生カルテットになんとか・・・ギリギリ見えるのは・・・麻里子が少し幼い性格設定で・・・個性派の二人がそこそこ平均年齢をあげ・・・高校生も演じる新木優子が大人びた顔立ちだからだろう。

麻里子の友人たちも・・・それぞれに悩みを抱えて群像劇展開になっている。

ただし・・・これも「食をめぐるドラマ」の一つなのである。

そういう意味では「ラーメン大好き小泉さん」ほどのどうしても見たい感じをキッドは抱かないが・・・これはこれで成立しているのだった。

モヤモヤする麻里子はみんなを誘うが・・・なかなか時間があわない。

そこで・・・恋人と行きたかったカフェのモーニング・メニューが登場する。

二日酔いの典子も子供の幼稚園への送り出しがある栞も朝食会なら参加可能なのである。

おしゃれな「朝食」にときめく・・・28歳の乙女たち・・・。

麻里子はリフレッシュして・・・倦怠期の恋人に別れを通告するのだった。

麻里子の実家では・・・「朝食」はボリューム満点で・・・「家族」がそろってにぎやかな食卓を囲んでいた。

麻里子は・・・そういう生活を求めているのである。

・・・まあ、ある種の人間にとっては相当に面倒くさい女だよな。

とにかく・・・なんだかんだあって・・・クリスマスイブ。

最近、麻里子は・・・少し、同僚の菅谷浩介(柳俊太郎)に心が傾いている。

しかし、浩介の真意はわからない。

素晴らしいインターネットの世界の通販カタログを担当している麻里子は・・・年末年始用のデザイン変更を手掛けるが・・・ありえないほどのミスをして・・・徹夜でお直しすることになる。

納品期日がクリスマスということで・・・社員全員がお手伝いである。

なんて・・・フレンドリーな職場なんだ・・・。

「ああ・・・眠くて数字が入ってこない」

自分の失敗を棚にあげて・・・弱音を吐く麻里子。

「おいおい」

一同は生温かくツッコミを入れる。

なんて・・・やさしい同僚たちなんだ。

家族サービスのために帰宅した五人の子持ちの社長(津田寛治)もサンタに変装して妻の手作りの御馳走を差しいれしてくれる。

「さあ・・・今夜は奥さんに六人目をプレゼントするかな・・・」

「六人目・・・性的なほのめかし・・・セクハラです」

テレビ東京の松丸アナ(34)のような麻里子である。

朝・・・素晴らしい同僚たちのおかげでなんとか作業を終える麻里子・・・。

麻里子はクリスマスの朝に「朝食会」を予定していた。

「もしよかったら・・・ウチで朝ごはん食べませんか」

麻里子の家に集合する女たちと浩介と栞の息子・・・。

朝食のメニューは・・・。

炊きたてのごはん。

納豆。

温野菜のサラダ。

玉子焼き。

味噌汁。

焼き鮭。

・・・つ、漬物はないのですか。

「これって・・・麻里子の家の朝ごはんだよね」

「えへ」

「おいしい・・・これ・・・おいしい」

浩介の言葉に思わず泣きだす麻里子。

「どうしたの・・・」

「だって・・・うれしくて・・・」

「うふふ」

一同は微笑むのだった。

とにかく・・・そういう朝ごはんは・・・ティファニーでは出ないと思う・・・。

年が明けると二期がスタートするってよ・・・。

可もなく不可もないからねえ・・・。

関連するキッドのブログ→山田くんと7人の魔女

びったれ!!!

監獄学園-プリズンスクール-

小暮写眞館

まれ

| | コメント (0) | トラックバック (1)

2015年12月26日 (土)

ビューティフル・スロー・ライフ(常盤貴子)彼と彼女のメリークリスマス(北村一輝)

聖夜にささやかなドラマを楽しむ風習というものがある。

クリスチャンなら教会で子供たちが「クリスマスキャロル」を演じたりする。

それがエンターティメントだとすればちょっとしたクリスマスの贈り物というものだろう。

女優・常盤貴子が好きで好きでたまらない人にとっては・・・素晴らしいプレゼントだったと言えるだろう。

常盤貴子に告白して結婚して子宝に恵まれ幸せな家庭生活を送るという疑似体験をしながら・・・彼女を堪能し、最後には彼女を看取るのである。

そして、後生での再会を約束してもらうのだ。

そういう・・・素晴らしいクリスマス・プレゼント。

まあ・・・ドラマなんですけどね。

もちろん・・・キッドは彼女を心から愛しているのでうっとりしましたが。

で、『ビューティフル・スロー・ライフ』(NHK総合20151224PM10~)脚本・演出・源孝志を見た。ドラマ「ビューティフルライフ」(2000年)から15年である。ドラマの中では・・・夫に髪を切ってもらう妻の場面もあり・・・彼(北村一輝)は・・・木村拓哉の代役のようにも見えるのだった。この手のドラマの傑作はオムニバスドラマ「賢者の贈り物」(2001年広島ホームテレビ)で・・・特に「祭典の日」の小学生リリカ(柳英里紗)が抜群なのであるが・・・これはこれでクリスマス・プレゼントとして丁寧に梱包されていたと考える。悪魔は「人生はいいものだ」と言われたら微笑むしかないのである。

タイトルにある通り、人生のある瞬間をスローモーションでお届けするのがひとつのコンセプトになっている。

そして・・・物語を彩るのはマエストロK(小日向文世)の指揮するオーケストラの調べ。

妻帯者であるらしい彼は・・・妻から「帰りに牛乳買ってきて」というメールを演奏前に受け取るのだった。

第一楽章「ステーション」

1987年・・・彼女(常盤貴子)は舞台女優である。

演出家は彼女に「卵」を握らせて演技指導をする。

「なぜ・・・卵を握るんですか」

「君が女優の卵だからさ」

彼女が卵を落した時のために・・・劇団の美術スタッフである彼は・・・卵を茹でていてた。

「茹でてくれて・・・ありがとう」

「落しても食べることができるからね・・・僕は・・・君が入団した時から思っていたことがある」

「なんでしょう・・・」

「これ・・・僕の電話番号・・・よかったら・・・お茶でも飲まないか」

03-397-1234・・・。

なんだか・・・なつかしい番号だ。

しかし、彼女は答えない。

「・・・」

「あ・・・気にしないで・・・忘れてくれ」

この時、彼は三十歳くらい。

彼女は・・・十代~二十代の女優の卵なのである。

彼の特攻精神に乾杯したいところである。

彼は「・・・宮前」という駅で黄色い電車に乗り込む。

そこで・・・世界はスローモーションになる。

駅のホームで・・・佇む彼女。

彼女は・・・彼のメモを見て微笑んでいたのだ。

第二楽章「チャンス」

1988年。

彼と彼女は交際を始める。

「覚えていないと・・・おっしゃるの・・・贈り物にはあなたの優しい言葉も添えてありました・・・だから・・・私は・・・これをなによりもたいせつな・・・宝物だと・・・それが嘘だったというのなら・・・これはあなたに・・・お返しします・・・心がなければすべてのものはゴミだもの」

彼女は「ハムレット/シェイクスピア」で可憐なオフィーリアを演じている。

「尼寺へ行け」と言われるのである。

彼女は女優として成功を掴みつつあった。

ハムレット俳優(石井一孝)は囁く。

「結婚するんだって・・・」

「ええ」

「よく・・・考えたまえ・・・チャンスというのは無愛想なものだ」

「・・・」

彼女は彼に言う。

「どうだった・・・」

「僕の感想なんて・・・いつも上から見ているし・・・」

「私は・・・あなたの降らせる雪が好き・・・優しいもの」

彼女は彼に婚姻届を渡す。

「いいのかい」

「明日・・・一緒に出しにいきましょう」

彼女には「嵐が丘」の仕事が待っていたが・・・妊娠していることが明らかになる。

「君のチャンスを・・・」

「私・・・チャンスを掴んだの・・・あなたの子供が産めるチャンスを・・・」

「僕は・・・舞台の仕事を辞めて・・・就職しようと思う」

「・・・」

「君と生まれてくる子供を守るチャンスだから・・・」

彼は商品をディスプレーする会社に就職した。

予定日よりも早く産気づいた彼女・・・。

彼は走って病院に向かう。

階段から転げ落ちるテニスボールをかきわけて・・・。

スローモーションの中・・・最期の一個で転倒する彼・・・。

第三楽章「ランチボックス」

2003年。

彼女は「人形の家/イブセン」でノラを演じている。

「楽しいクリスマスをしようってことよね」

彼女は長男、長女、そして次女と三人の子供の母となり・・・そして女優としても成功していた。

「私はいつだって人形みたいなもの・・・あなたの妻じゃなくて・・・ただの人形妻よ・・・昔・・・父の前で人形子供だったみたいにね」

だが・・・最近・・・夫の仕事が忙しくて構ってもらえないのが不満だった。

「私は人間だもの・・・あなたと同じ人間だもの・・・少なくとも人間になろうとしているんだもの」

反抗期の子供たちがクリスマスツリーの飾り付けを手伝わないことに苛立つ彼女。

その夜は彼の会社でトラブルが発生し・・・彼は残業の果てに朝帰りである。

彼女は鍵を残して家出をした。

「心当たりはないの」

「海だと思う」

「お母さん・・・海が好きだものね」

子供たちに責められて捜索を開始する彼。

彼女は・・・新婚旅行で訪れた浜辺に佇む。

「あれから・・・十五年か・・・」

夫の気配に振り向いた彼女は・・・砂浜を走りだす。

逃げる妻と追いかける夫・・・。

ざわめくお茶の間。

スローモーションはもう少し胸元を強調するべきだな。

「・・・」

「メリークリスマス」

「・・・」

「これ・・・子供たちと作ったんだ」

彼は彼女にお弁当を差し出した。

彼の黒焦げの卵焼きを食べる彼女。

「不味い・・・」

第四章「私を離さないで」

2013年。

彼女は小説「私を離さないで/カズオ・イシグロ」を読書中だ。

「この小説は2005年に発表されたけど・・・」

「篠田節子の・・・短編集・・・静かな黄昏の国・・・その中の一編・・・子羊・・・と似たような話だよね」

「まあ・・・クローン技術が生まれた時からの必然よね」

「デザイナーベイビーに至るだよね」

「アイランドもあるしね」

「2016年にドラマ化されるって・・・」

しかし・・・彼女は・・・「死に至る病」を発病する。

彼は・・・車椅子生活となった彼女のために最期の舞台を用意する。

見守るのは・・・彼と三人の子供たち。

それは・・・彼女の最初の舞台・・・「桜の園/チェーホフ」である。

「私は・・・この家が・・・大好き・・・桜の園のない人生なんて・・・想像するのも無理って感じよ・・・ここを売り飛ばすというのなら・・・私も一緒に売っ払っておくれよ・・・後生だからさ」

舞台で前のめりに倒れる彼女。

彼は桜の木の下の彼女に駆け寄る・・・。

「今度・・・生まれ変わったら君の子供になりたいな」

「私・・・あなたのお母さんになるのはいや・・・」

「ちぇっ」

「また・・・私と結婚して下さい」

「三十年も待つのか・・・」

「何度生まれ変わっても・・・あなたと結婚すれば・・・それは永遠ってことよ」

「・・・」

2015年・・・思い出の浜辺で一人佇む彼・・・。

思い出すのは・・・新婚旅行で・・・波に戯れていた彼女の姿・・・。

再び・・・少しざわめくお茶の間・・・。

まあ・・・添い遂げるってことは・・・大変なことだからなあ・・・。

演奏を終えたマエストロKに妻からの着信がある。

「・・・うん・・・わかってるよ・・・牛乳ね・・・卵はいいのかな」

関連するキッドのブログ→まれ

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2015年12月25日 (金)

黒崎くんの言いなりになんてならない(小松菜奈)悪魔(中島健人)天使(千葉雄大)イチャイチャにニヤニヤしてエロキュンしなさい(夏帆)

前夜の男子コミックから続いて女子のコミックである。

男女雇用機会均等法の世界なので主題は同じく「いきなりキス」だ。

しかし・・・女子→男子の「いきなりキス」は合法で・・・男子→女子の「いきなりキス」は非合法という暗黙の了解は生きているのだった。

合法と非合法の差異は大前提として述べない。

海外で数万人の買春を行った元教育者が「性豪」として敬われることはなく犯罪者のレッテルを貼られるのが一般的だ。素晴らしいインターネットの世界で知り合った少女を自宅に連れ帰れば誘拐だし、彼女へのプレゼントのために宝石店の老女店員からアクセサリーを強奪するのは「美談」ではない。

それが大前提というものである。

ドラマの大前提である「イチャイチャ」は一部の他人の幸福を絶対に許容できない人格者によって深夜にこっそりやる風潮なのか・・・。

だが・・・素晴らしい「イチャイチャ」はきっと評価され・・・ニヤニヤされることになるのだ。

それにしても星屑組は・・・意地悪で綺麗なお姉さん系を眼鏡をとったら美少女枠に見事にはめ込んでくるよね。

で、『黒崎くんの言いなりになんてならない・第一夜~二夜』(日本テレビ201512230019~)原作・マキノ、脚本・松田裕子、演出・河合勇人を見た。言葉というものは基本的にすべて命令である。なにしろ・・・どんな言葉も基本的に「理解しろ」と言っているのである。人間は言葉を得た時から命令し命令されることにならされて一生を送る。それが幸福なのか不幸なのかはわからない・・・と理解しろ。とにかく、言いなりになるのは命令に従うことであり、言いなりにならないのは自分の命令に従っているわけだ・・・と理解しろ。つまり・・・言葉なんて煩わしいのである・・・と理解しろ。

中学時代に眼鏡っ子だった赤羽由宇(小松菜奈)は「赤地蔵」と仇名されて苛めに耐えて生きていた。高校進学とともに学園寮に住むことになった由宇は自己改革をして自分自身の地位向上を目指す。

その目標は・・・。

一、下を向かない

二、笑う

三、自分から話しかける

四、言いたいことを言う

五、デートをする

六、友達をつくる

七、彼氏をつくる

・・・の七つである。

しかし、入寮の日・・・そこで待っていたのは暴力的な男子の黒崎くん(中島健人)だったのだ。

同級生を苛めている黒崎くんを発見した由宇は・・・目標に従って・・・命令する。

「やめて」

黒崎くんは・・・その瞬間に由宇に一目惚れするのである。

・・・乙女の考えることです。

由宇に接近した黒崎くんは長髪を由宇の洋服のボタンにからめとられてしまう。

「すぐにほどけ」

命令された由宇は思わず鋏で黒崎くんの髪を切ってしまう。

つまり・・・傷害罪です。

由宇の行動力に愛がこみあげた黒崎くんは由宇の唇を奪うのだった。

つまり・・・痴漢行為です。

しかし・・・二人の恋はこの時、スタートしたのである。

・・・乙女の考えることです。

「お前は・・・俺の奴隷だ」

「えええ」

そんな二人の馴れ初めを微笑んで見つめる黒崎くんの親友・・・白河くん。

白河くんは・・・学園の王子様で・・・国民的彼氏と呼ばれる存在なのだ。

・・・乙女の・・・もういいか。

こうして・・・由宇は黒崎くんの奴隷となったのでした。

しかし・・・黒崎くんが命じるのは主に学園寮の掃除。

由宇によって学園寮の廊下、トイレ、換気扇、浴室、天井などは磨きあげられていくのだった。

そんな由宇に何故か・・・手を差し伸べる白河くん。

彼は唇スイッチを押すと・・・疑似恋人に変身してくれるのである。

白河くんと恋人ごっこを始めた由宇に黒崎くんは嫉妬の炎をメラメラと燃やすのだった。

由宇が黒崎くんから与えられたコマンド「クリスマスツリーの星を探せ」を手伝ったクラスメートの芽衣子(高月彩良)は「はじめてのともだち」になってくれるのだった。

新生活にヘトヘトになった由宇を慰めるのは・・・就寝時間に誰かが奏でるピアノの調べである。

そこへ・・・黒崎くんと白河くんの幼馴染である鈴音(夏帆)が現れる。

「私・・・結婚して・・・ニューヨークに行く」

鈴音の発言に戸惑う二人を由宇は見た。

鈴音は由宇にこっそりと告げる。

「黒崎くんは私の好きな人・・・白河くんは私を好きな人・・・黒崎くんと・・・白河くんの仲をこわしたくないから・・・私は告白しなかった・・・あなたも二人の仲を壊すことだけはしないで」

「そんな・・・おこがましいこと・・・できません」

「いいえ・・・あなたはきっと二人に愛される」

とにかく断言する鈴音だった。

「私は誰かのものになるけど・・・黒崎くんが誰かのものになるのは我慢できない」

(この人は・・・何を言っているんだ)と理解不能な由宇である。

そんな由宇の元へ・・・「同窓会のおしらせ」が届く。

「必ず出席しろ」という黒崎くん。

「僕とデートしよう」という白河くん。

何故か敵対する二人に・・・思わず由宇は・・・。

「行きたくないけど行きます」

・・・と宣言してしまうのだった。

苛められ中学生から・・・可愛い高校生に変身した由宇にいじめっ子が絡みだす・・・嫌な同窓会。

「もう・・・私は赤地蔵じゃありません」

「赤地蔵のくせに生意気なんだよ」

そこへ・・・登場する黒王子様と白王子様である。

黒以上に暴力的な白は・・・いじめっ子を半殺しにするのだった。

「俺の彼女に手を出すなよ」

明らかに過剰防衛である。

二人に挟まれて・・・由宇は・・・生まれてきてよかったと感じるのだった。

そんな二人を寮母さんは「まるでタッチみたい」と評するのである。

やがて・・・由宇は・・・白河くんから疑似恋愛の終了を告げられる。

「ごめんね」

「そんな・・・夢のように幸せでした・・・ありがとうございます」

白河くんは・・・黒崎くんにこっそりと告げるのだった。

「彼女を奪うよ」

「ゲームは好きじゃない」

「ゲームじゃないよ」

「彼女は俺の奴隷だ」

「素直になれよ・・・これは・・・俺とお前の勝負だよ」

「・・・」

白河くんと疑似別離して少し淋しい由宇。

しかし・・・気がつけば目標は次々とクリアしているのだった。

残されたのは・・・彼氏をつくる・・・だけである。

夜想曲に誘われて集会場にやってきた由宇・・・そこにいたのは・・・。

黒崎くんだった。

「何をしている・・・」

「すごく・・・素敵だったから・・・」

「・・・」

「私・・・ピアノ弾いたことないので・・・」

由宇を坐らせた黒崎くんは背後から手を添えてサテイをつま弾く・・・。

「・・・」

「うれしい・・・まるで自分で弾いているような気がした」

「つけあがるな・・・お前は俺のものだ」

「え」

そんな二人を見つめる白河くん・・・。

三角関係は・・・これからなのだった。

続きは劇場で・・・まあ・・・キッドは行きませんが~。

そりゃ・・・そうだな。

関連するキッドのブログ→近キョリ恋愛〜Season Zero〜

恋して悪魔~ヴァンパイア☆ボーイ

戦う!書店ガール

信長協奏曲

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2015年12月24日 (木)

監獄学園~プリズンスクール~(中川大志)お前の大切なものを奪ってやったぞ(森川葵)

おそらく・・・来年の月9は問題作になるのだろうが・・・有村架純と高良健吾で、脚本・坂元裕二、そして演出・並木道子である。

これに・・・森川葵がキャスティングされているわけである。

「スプラウト」(2012年)から三年、二十歳になった森川葵は・・・このドラマでお茶の間的限界にチャレンジしていると言っても過言ではない。

アニメだったら何でもありだが・・・実写版には限度があるという・・・壁を突破しています・・・。

昔だったら「体当たり演技」と書かれるクラスである。

たとえば・・・志田未来は「女王の教室」で、沢尻エリカは「1リットルの涙」で失禁シーンを演じている。

それぞれのドラマで重要なシーンだが・・・このドラマの場合は・・・失禁というよりは放尿であり・・・つまり、一部お茶の間的には明らかにプレイに属している。

キッドは人権や公序良俗の美名のもとに表現の自由を抑圧するものに常に危険な匂いを嗅ぐタイプである。

かっては「芸術」だったものが「犯罪的行為」に置換されるのは恐ろしいことなのである。

だが素晴らしいインターネットの世界が登場するとともに・・・メディアの持つ恐ろしい暴力特性への歯止めというものはある程度必要になったとも言える。

大前提というものは少なからずある。

個人の性的趣向が・・・法によって抑圧される境界線というものは確実に存在するわけである。

それによって増幅される不健全な「健全さ」は不快だが・・・ある程度の妥協は許容しなければならない。

そういう意味で・・・このドラマにおける森川葵はジャンヌ・ダルクであり・・・すげえ・・・と叫ぶ他はない。

で、『監獄学園-プリズンスクール-・第1回~最終回(全9話)』(TBSテレビ20151028011~)原作・平本アキラ、脚本・北川亜矢子(他)、演出・井口昇を見た。妄想学園ドラマである。なにしろ・・・学園の中に裏生徒会の管理する監獄があり・・・生徒が自主管理して運営しているという超設定なのである。まず・・・そこを・・・そういうものなんだと納得すれば・・・高校生たちの歪んだ性のあれやこれやが心から楽しめる趣向なのだ。まあ・・・ある意味で・・・世界は監獄のようなものであり、国家も監獄のようなものなので・・・学校も監獄で・・・学園の中に監獄があっても何の問題もない。

女子高校から男女共学に変わった私立八光学園。

全寮制の高校だが・・・男女比は1:200であり、全校生徒千人に対し、男子は五人なのだった。

実年齢17歳の中川大志が演じるキヨシこと藤野清志は親友のシンゴこと藤野清志(矢野聖人)・・・三国志おタクのガクト(柄本時生)・・・フードから顔を出さないジョー(宮城大樹)、肥満体のアンドレ(ガリガリガリクソン)たちとともに・・・女子の集団に慄く日々を送っていた。

そんなある日・・・クラスで一番の美少女である栗原千代(武田玲奈)と「相撲消しゴム」が縁で親しくなるキヨシ・・・。

しかし・・・女子に囲まれて性的欲求が極限まで昂進した四人は・・・女子浴場の覗きを企画する。

ターゲットは・・・キヨシのクラスの女子の入浴時間。

盗撮カメラとして無断使用されていたケータイ端末を・・・動揺して女子更衣室に落してしまうキヨシ。

キヨシは・・・コンタクトレンズを外した千代に女子と間違われ・・・浴場へと導かれてしまう。

めくるめく世界・・・しかし・・・男子たちの犯罪的行為は・・・裏生徒会の知るところになる。

裏生徒会の会長で千代の姉である栗原万里(山崎紘菜)は「男性不信」という設定であり・・・「退学」か「一ヶ月の監獄行き」かを・・・五人の男子に迫るのである。

こうして・・・キヨシたち五人の男子生徒は・・・監獄送りになるのであった。

監獄の看守は・・・裏生徒会の副会長である白木芽衣子(護あさな)と・・・書記の緑川花(森川葵)なのだった。

かくて「監獄から一人が脱獄すれば連帯責任」「脱獄三回で退学」というルールにのっとり・・・「男子退学作戦(DTO)」を画策する裏生徒会長と・・・憐れな囚人男子たちの抵抗運動が開始されるのである。

そして・・・物語は・・・キヨシと千代・・・そして花の奇妙な三角関係として展開していくのだった。

グラピア・アイドルで実年齢25歳の護あさなが演じる白木芽衣子は懲罰としての強制労働に励む五人を監視するが・・・「苛められること」に快感を見出す囚人たちには逆効果であることが判明する。

そこで投入された花は・・・空手の有段者であり・・・あまり・・・セクシーでないために・・・囚人たちはガッカリするのだった。

一方・・・女子浴場を覗いた罪で監獄入りとなったキヨシを・・・冤罪と信じる千代は・・・「相撲見物デート」に誘う。

千代と連絡をとるために・・・樹木に登ったキヨシは・・・木陰で用を足そうとした花の放尿現場を目撃してしまう。

見られた花は屈辱のあまり・・・キヨシの放尿を監視するというとんでもない決意を下す。

花に放尿を強要されたキヨシは・・・結果として花に尿を浴びせかけるというさらなる段階に・・・。

キヨシの尿を浴びた花は復讐のために・・・キヨシに尿を浴びせかけることを決意するのであった。

まさに・・・スカトロ・ラブコメという他はない顛末である。

策士であるガクトの作戦により・・・脱獄デートは成功するが・・・千代が姉の万里に「彼氏とのツーショット自撮り画像」を送ったために・・・発覚してしまうのだった。

万里はシンゴを裏生徒会のくのいち・横山杏子(新木優子)を使って誘惑し、脱獄させたり、アンドレをおしおき禁断症に追い込んだり、魔女としてカラスを使い、ジョーの飼育するアリを急襲したりする。

一方でキヨシに保健室で復讐しようとした花は・・・キヨシのエリンギを太腿に押しつけられ失神するのであった。

基本的に花は・・・処女のヤンデレだけどデレないというキャラクター設定です。

ついに・・・退学寸前となる五人。

千代と万里の父親でもある学園の理事長(高嶋政宏)に裏生徒会の陰謀を直訴するキヨシ。

バストよりヒップを愛する理事長は・・・キヨシに問う。

「胸と尻ではどちらが好き・・・かな」

追い詰められたキヨシは・・・理事長が尻の画像を収集していたことを思い出す。

「尻です・・・人類が二足歩行を始める前に・・・尻はいつも目の前にあったのだから」

「エレガントだ・・・」

執行猶予を勝ち取ったキヨシたちは・・・裏生徒会室に侵入し・・・「DTOのメモ」を強奪することを目論む。

そのために・・・キヨシは・・・花を保健室に誘いこむのだった。

「さあ・・・放尿しなさい」

命令する花に対し下半身を露出して攻勢に出るキヨシ。

負けずと花も下半身を露出する。

そのメデューサ的なものに圧倒され・・・下半身の一部分が石のように硬くなるキヨシだった。

「これでは放尿できません」

「それなら・・・お前の大切なものを奪ってやる」

「え」

「お前は千代ちゃんが好きなのだろう・・・しかし・・・ファーストキスを千代ちゃんに捧げることは許さない」

「ええ」

唇を花に奪われるキヨシだったが・・・そのキスがお子様のキスだったために・・・花の正体を見破るのだった。

そして・・・花の唇の中に舌を侵入させたのである。

ディープキスの洗礼に・・・花は我を忘れ・・・官能の高まりの果てに脱力する。

もう・・・一同爆笑するしかありません。

作戦は成功し・・・監獄から解放される男子たち。

そして・・・裏生徒会の三人は監獄送りとなるのだった。

「一体・・・誰が・・・」

「彼女たちが裏生徒会だったんだから・・・表生徒会なんじゃ・・・」

男子たちは・・・新たなる戦いの予兆を感じるのだった。

とにかく・・・あまりん最高!と言う他はないキッドである。

関連するキッドのブログ→ごめんね青春!

表参道高校合唱部!

| | コメント (0) | トラックバック (1)

2015年12月23日 (水)

わたしをみつけて(瀧本美織)みんないい子になりたかった(溝端淳平)

この枠の前作である「デザイナーベイビー~速水刑事、産休前の難事件~」が変則的な時期で終了したために・・・キッドの個人的な意図でレギュラー・レビューにはならなかったが・・・見ごたえのあるドラマだった。

なにより・・・女優・瀧本美織に対する評価が跳ね上がったのである。

もちろん・・・はまり役だった・・・という考え方もあるが・・・凍結されていた人格のある部分が融けていく感じを見事に演じていたと考える。

ドラマの核心である「イチャイチャ」から一番遠い場所で・・・「イチャイチャ」の結果から生じる「ある問題」を心温まる物語に仕上げて行くのは一種の王道である。

たとえば「コウノドリ」はその典型と言える。

個人的に負ったハンディー・キャップを克服した成功例で・・・社会的な力を賞賛するのはうさんくさいものである。

しかし・・・捨て子だったけれどピアノも上手な産科医になる話より、捨て子だったけれど准看護士になる話の方がリアルに感じるということもあるよね・・・。

「あなたに私の何がわかるの」という拒絶に・・・「わかりません・・・捨て子なので」という激しい応答・・・。

一種の「必殺技」を見事に決めて・・・最後は「しかし・・・武器よさらば」というフィニッシュ。

そういう人々には・・・「イチヤイチャ」は遥か彼方にそびえる霊峰なんだなあ・・・。

とにかく・・・名作だ。

で、『わたしをみつけて・第1~最終回(全4話)』(NHK総合20151124PM10~)原作・中脇初枝、脚本・森脇京子、坂口理子、演出・野田雄介を見た。階級制度は一種の身分制度であるが、公正な競争によって獲得する資格はひとつの地位の象徴である。しかし、経済格差が医師と看護師、看護師と准看護士の「個人的ななりやすさ」に影響を及ぼしていることは間違いない。チームワークが円滑に行われるために・・・そこに亀裂を生じさせる問題があれば・・・制度設計を見直すこと。しかし、現場では個人が階級闘争を繰り広げる他はない。それぞれの能力を最大限に発揮することは社会を向上させる基本であると信じて。

看護師不足の時代に准看護士制度が生まれた。

専門的な教育を受ける看護師に準ずる資格・・・つまり・・・なりやすさにおいてハードルが看護師より低いということである。

病床数130床の星美ヶ丘病院の准看護士である山本弥生(瀧本美織)は・・・新任の看護師長である藤堂優子(鈴木保奈美)に「何故、看護師になったのか」と問われる。

「それしかできなかったので」と答える弥生・・・。

怪訝な顔をする藤堂看護師長である。

生まれてすぐに捨てられて両親を知らない弥生。

山本は当時の区長の姓であり、「捨てられたのが三月なので弥生」なのだった。

救急看護認定と緩和ケア認定というスキルを持つスーパー看護師である藤堂は抜群の指導力で・・・少し弛んでいた職場の空気を引き締め・・・五十嵐奈菜(奥村佳恵)、関美千代(野村麻純)、飯野七海(志保)、神田恵美子(初音映莉子)といった癖のある看護師たちをまとめ上げて行く。

ここで・・・藤堂と弥生にある特殊な関係も想像できるが・・・ドラマはそういう方向には傾いていかない。

世界から捨てられたと感じている弥生は極度の緊張感で日々を過ごしている。

里親に対し・・・「悪い子でも愛されるか」というチャレンジをした弥生は・・・再び、放棄され・・・「いい子でなければ捨てられる」という信念を勝ち取っていた。

忠実に職務を遂行し・・・自転車で通勤し・・・一人暮らしのアパートで冷や奴に生姜をすり下ろす。

唯一の贅沢はホーム・プラネタリウムによって天井に投影された星空を見ながら就寝すること。

「自分で自分の居場所を確保すること」が弥生の日常なのである。

しかし・・・ボランティアで近所の小学校の登下校の見守りをしている菊地勇(古谷一行)に声をかけられたことから・・・弥生の人生は転機を迎えるのだった。

弥生の通勤路の途中にあるアパートで・・・「子供の泣き声がして・・・気になる」と菊地は告げるのだった。

愛犬ラッキーと散歩中の菊地に対して・・・応答に戸惑う弥生。

虐待があるのかもしれない・・・と心配する菊地。

(この家の子は・・・この人に見つけてもらえるのだろうか・・・けれど・・・見つけてもらえなかった私に・・・何ができるだろう)

弥生は漠然とした壁を世界に感じている。

(見つけてもらえなかったとしても・・・ひっそりと生きて行くしかない)

弥生には・・・そういう覚悟があるのだった。

弥生の担当患者であった虫垂炎で入院中の楠山幸一(木内義一)の容体が急変して死亡する。

病院長であり優秀な外科医でもある後藤啓一郎(本田博太郎)の「誤診だった」と見抜く藤堂看護師長。

患者の遺族に対して・・・「真実」を告げさせないために弥生は・・・藤堂に対して別の患者のカルテがなくなったと報告して時間を稼ぐ。

「院長に命じられたら・・・何でもするの」と問いかける藤堂。

「いい子でいないと・・・捨てられてしまいます」と答える弥生。

藤堂は・・・弥生の履歴に・・・何か特別なことがあると察し・・・観察を開始するのだった。

しかし・・・担当患者を救えなかったことは弥生の心を大きく揺さぶっているのである。

藤堂を病院に招聘したのは事務長で院長の息子である後藤雅之(溝端淳平)だった。

星美ヶ丘病院の三代目に生まれながら・・・医師になれなかった雅之には父親との確執がある。

医師ではない病院の後継者として・・・ジレンマを抱える雅之。

「病院の閉鎖」の噂が発生し・・・弥生は雅之に真相を聞く。

「それは・・・ただの噂だよ・・・それに君ならどこでもやっていけるだろう」

「困るんです・・・ここがなくなったら・・・」

「そんな・・・この病院に縛られている僕と違って・・・君は自由じゃないか・・・」

「自由・・・」

弥生と「自由」とは無縁だった。

菊地が・・・大腸がんを発症し患者として入院してくる。

そして・・・訪れる大量の見舞客。

菊地は地域で愛されている男だった。

妻や娘・・・そして孫に囲まれて幸福そうな菊地。

(私が入院しても・・・誰も見舞いには来ない)

菊地と自分が同じ人間だとは思えない弥生だった。

しかし・・・孫との会話から・・・弥生が九九ができないことを見抜く菊地。

「ひょっとして・・・九九ができないんじゃないか」

「養護施設にいて・・・九九を習う時に学校に行けなかったのです」

弥生は九九を足し算で独学していた。

菊地は「ひらがなで書いた九九のメモ」を弥生に贈る。

「九九は・・・言葉にして・・・暗記するしかないんだよ」

「いんいちがいち・・・」

弥生は涙が止まらない。

弥生が「九九」を知らないことを「みつけてくれた人」がいたからである。

またしても・・・病院長が執刀した患者の容体が急変する。

弥生は・・・藤堂に相談するのだった。

藤堂は「誤診」を見抜き・・・別の病院への緊急搬送を独断で行う。

「でも・・・そんなことをしたら・・・」

「私たちの仕事は・・・患者さんに寄り添うことよ・・・」

藤堂の行為に激怒する院長・・・。

藤堂は解雇されることになる。

しかし・・・事務長は父親に外科医としての引退を迫るのだった。

「私たちの居場所は・・・いつでも患者さんの側にある」

看護師たちに言い残して・・・星美ヶ丘病院を去る藤堂。

「これから・・・どうなさるのですか」

「別の病院から・・・誘われているの」

「・・・そうですか」

「あなた・・・正看護師を目指してみたら・・・」

「考えたこともありませんでした」

「私と一緒に来ない?」

「え」

「あなたは・・・きっといい看護師になれる」

「私が・・・」

「私も家が貧しかったから・・・准看護士から始めたの・・・」

藤堂にとっては切り札である。

「私は捨て子なので・・・」

切り替えされてひるむ藤堂だった。

「・・・」

「ひとつ問題があります」

「問題・・・」

「別の病院に行くためには引越しをしないと」

「・・・」

「施設を出る時は・・・施設長さんが保証人になってくれたのです」

「・・・」

「だけど・・・施設を出たら・・・もう保証人になってくれる人が」

「・・・私が保証人になるわ」

捨て子の想像を越えた不自由さに心を苛まれる藤堂だった。

「本当ですか」

「あなたは・・・立派よ・・・自分で自分を立派に育ててきた・・・私が保証するわ」

「・・・」

人生の終末を迎える・・・ふぞろいの林檎たち。

嫁と姑ではなく・・・母親と娘として登場する一宮シメ(佐々木すみ江)と一宮幸子(根岸季衣)である。

臨終の間際に・・・看病している娘の名前ではなく息子の名を呼ぶシメ・・・。

しかし・・・東堂は・・・「お母さん・・・本当は娘に感謝している・・・でもなかなか素直に口に出して言えないとおっしゃっていましたよ」と嘘をつく。

「なんで・・・あんなことを・・・」

「お母さんは・・・娘に幸子という名前をつけた・・・子供の幸せを祈らない親はいない」

「私は・・・捨てられて弥生という名前ですけどね」

「そんなことはないよ・・・あなたは拾われて弥生になった・・・幸せを祈られているのよ」

「ひろわれた・・・」

弥生の心の封印が解ける。

施設の寮母が・・・施設の仲間たちが・・・多くの人々が・・・幼い弥生を見守ってくれていた事実。

「私・・・たくさんの人に・・・育てられていたんですね」

「・・・」

弥生は菊地に頼まれていた「あの部屋のこと」を実行した。

子供の泣き声と・・・暴力的な男・・・。

部屋で子供と暴力を受けていたのは・・・同僚の神田だった。

「どうしましたか・・・」

「すみません・・・」

「あやまらないでください」

「でも・・・どうしても・・・あの人と別れられないの・・・子供は施設に預けようと思っています」

「私は・・・捨て子です」

「え」

「施設に預けられても・・・それで終わりじゃありません」

「・・・」

「あなたは・・・子供を守ってきた・・・」

「・・・」

「あなたには・・・子供がいるじゃないですか」

「・・・」

「あなたが・・・子供の居場所になってください・・・お母さん」

捨て子に逆らえる人間はいないのである。

心ある人間ならば・・・。

神田はイチャイチャをあきらめて・・・母親として強くなる他はないのだった。

藤堂に食事に誘われる弥生。

「いつ頃・・・引っ越すの・・・」

「引っ越せません・・・患者さんがいるので・・・」

「そう言うと思ったわ・・・」

微笑む二人だった。

菊地は・・・あえて・・・院長の手術を望む。

「でも・・・院長は・・・」

「あの人はまだ・・・やりきっていない・・・私はあの人の花道になりたい」

善人の道を極める菊地である。

「お前は・・・どう思う」

父は息子に問う。

「僕は・・・お父さんに命を預ける気にはなりません・・・しかし・・・患者の意向には答えなければなりません・・・事務長として・・・執刀をお願いします」

事務長は弥生に頼む。

「父を・・・助けてください」

弥生は看護師として・・・全力で菊地の手術に臨むのだった。

予期せぬ出血で動揺する院長。

「落ちついてください・・・圧迫止血で・・・血小板輸血をするべきです」

「ああ・・・それな・・・」

弥生の適切なアドバイスで菊地は死地を脱した。

院長は引退を決意する。

「後は・・・まかせたぞ・・・三代目・・・」

「・・・お父さん」

退院する菊地は・・・弥生に問いかける。

「くく」

「はちじゅういち」

人は誰でも幸せになれるのだ・・・たとえ捨て子であっても・・・。

誰かにみつけてもらえれば・・・。

関連するキッドのブログ→フラガールと犬のチョコ

| | コメント (0) | トラックバック (2)

2015年12月22日 (火)

超限定能力(竜星涼)いじめられて・・・(永野芽郁)おいのりされて・・・(太賀)

毎度おなじみのフジテレビヤングシナリオ大賞のドラマ化である。

ヤングなので「青春ドラマ」の傾向があり・・・今回も主人公は大学生だ。

いつが・・・青春なのかは・・・難しいところである。

キッドは小学校高学年から大学生までを限定(仮)としているが・・・大学をいつまでも卒業しない人もいるので・・・アレなんだな。

初潮から処女喪失までという考え方もあるが・・・男子に青春はないのかよっ。

こういう考え方は危険な御時勢である。

とにかく・・・なんとなく・・・青くて春めいた人生のひととき・・・をめぐるドラマは・・・本当は老若男女が楽しめる素材である。

なにしろ・・・誰もが青春時代を過ごすからである。

しかし・・・意外と青春ドラマの名作というのは少ない。

まあ・・・それは・・・多くの人間が・・・ろくでもない青春を送っているからだと考える。

で、『限定能力』(フジテレビ201512210045~)脚本・青塚美穂、演出・野田悠介を見た。2014年度の第27回フジテレビヤングシナリオ大賞受賞作である。即戦力といえば・・・「世にも奇妙な物語」系であることが・・・ポイントである。次は構成力で・・・さらにセリフの美味さというのも評価の対象であろう。青春ドラマである必要は特にない。しかし、ファンタジー要素は青春ドラマと相性がいいのである。たとえば・・・「時をかける少女」は時間跳躍をする女の子の話だし、「エコエコアザラク」は魔女の話だ・・・それを青春ドラマと言うつもりかっ・・・「白線流し」とか「あまちゃん」とかファンタジーではない青春ドラマがいかに凄いかという話である。

このドラマの場合・・・直近に「みんな!エスパーだよ!」という超名作青春ドラマがあり・・・もう一つの青春ドラマのパターンである・・・青春ノスタルジーとしての「アオイホノオ」と並んでテレビ東京深夜の青春ドラマの凄味を醸しだしている。

若者が・・・変な超能力に覚醒する・・・これは基本なんだな。

で・・・今回の主人公・・・三流大学生だが・・・家が裕福なので・・・なんとなくまったりしている秋山舜太郎(竜星涼)に芽生えるのは・・・乗車中の電車の車内で・・・乗客の降車駅が見える・・・という能力である。

混雑した電車で・・・座りたいと思う時に・・・とても便利な超能力なのである。

座っている乗客の中から・・・次の駅で下車する人を選択し、その前に陣取れば・・・座席をゲットできるのだ。

最近の若者は「つかれやすい」らしいので・・・凄く魅力的な超能力なのかもしれない。

さて・・・単発ドラマでは・・・登場人物の設定を説明する時間はあまりない。

そういう時には・・・なんとなく・・・「ドラえもん」の世界が役に立つ。

今回の主人公は・・・スネ夫の未来形である。

裕福な家庭以外あまり・・・とりえのない男なのだ。

そのために・・・友人は・・・のび太形である。

親のコネで就職の心配がない舜太郎に対し、親友の斎藤宜秀(太賀)は就職活動に追われている。

「お前は・・・いいよなあ・・・いざとなったら・・・親の会社があるし」

「・・・」

もちろん・・・舜太郎は青春ドラマの主人公なので・・・「本当にそれでいいのか」という迷いがないわけではない。

そういう日常の中で舜太郎は電車の中で転倒し・・・能力を獲得するのである。

なぜ・・・そんな能力が・・・はファンタジーなので特に不必要だが・・・きっかけとして謎のサラリーマン(ルー大柴)が登場する。いわば・・・シンデレラにおける魔法使いの役回りである。

頭を強打した舜太郎が見上げると・・・介抱してくれた謎のサラリーマンの頭上に駅名が輝いていたからである。

経済的に恵まれている上にお得な能力まで獲得する舜太郎・・・親友の斎藤は少し羨ましく思うが・・・憎悪したりはしないのが青春の1ページである。

大学教授の大澤(紺野まひる)の講義でも二人は仲良く席を並べる。

先生と学生も青春ドラマのポイントだが・・・教師側を主とすると学園ドラマになってしまう。男女関係なら・・・危険な青春に一直線だ。

ここでは・・・主人公と友人が・・・ダメな学生ながら・・・それなりに仲良しであること象徴するために登場する。

二人は講義中に雑談をして教授に叱責される同志なのである。

さて・・・青春には恋愛がつきものであるが・・・失恋した女子大生が投身自殺をして授業中の教室の窓の外を落下していったり、同棲中の女子大生の浮気が発覚し鬱屈した男子学生が焼身自殺したりする大恋愛は特に必要ない。

舜太郎は通学途中で見かける女子高校生・橋田美雪(永野芽郁)に仄かに恋心を描く程度である。

「なんとなく・・・影があるところがいい」と言う舜太郎・・・。

何不自由なく暮らしている舜太郎は・・・不幸に対して漠然とした憧れを持っているのだ。

ここで・・・舜太郎は・・・超限定能力の・・・別の側面を見出す。

乗客のサラリーマンの中に下車駅不明の男(ダンディ坂野)を発見するのだった。

好奇心で駅名のない男を尾行した舜太郎・・・。

ショッキングな出来事は・・・男が投身自殺をしたことであった。

「死」というものに敏感だった舜太郎は激しく動揺する。

しかし・・・だからといって・・・何かをしようとは思わない。

「人身事故」の報せに・・・「死」に鈍感な人々は素晴らしいインターネットの世界で悪態をつく。

「そんなひどいことをいわなくても・・・」

しかし、たまたま・・・人身事故の発生で面接に遅刻してしまった親友の斉藤は反発する。

「言いたくなる気持ちはわかるさ・・・死ぬなら人に迷惑かけないでほしいよ」

「そんな・・・」

「お前はゆとりがあっていいよな」

「なんだよ・・・」

舜太郎と斉藤は些細なことで決裂してしまう。

舜太郎は・・・斉藤と仲直りしたいのだが・・・意地をはって舜太郎からの着信をスルーする。

「不採用」の「あなたの前途をお祈りメール」の連打に打ちのめされた斉藤は自殺を図るのだった。

「・・・俺を必要としてくれる場所がない・・・俺は行き先不明だよ・・・」

意識不明の重体となった斉藤からの最期の伝言を聞く舜太郎に渦巻く後悔の念・・・。

そして・・・車内で件の女子高校生を発見した・・・舜太郎は・・・彼女の行き先がないことに驚愕する。

思わず・・・下車した彼女を追いかける舜太郎。

投身自殺しようとする女子高校生を引きとめるのだった。

「ほっといてよ・・・」

「そんなことはできないよ・・・」

「あんた・・・誰」

「僕は・・・エスパーだよ・・・」

「・・・」

有無を言わさず・・・斉藤の病室に彼女を連れて行く舜太郎。

まあ・・・ここが最大に難しい所です。

彼女には自殺しようとした負い目があり・・・舜太郎が元キョウリュウレッドだから仕方がないと補完しておく。

「こんな風になっちゃうんだぞ」

「・・・」

「どうして・・・君に行き先がないなんて・・・思うんだ」

「学校で・・・仲間はずれにされているの・・・」

「・・・」

「失恋した友達の・・・うっぷん晴らしよ・・・」

「君・・・かわいいから・・・」

「え」

「僕でよかったら・・・相談相手になるよ」

自殺未遂の親友の病室で・・・ナンパする舜太郎である。

悪意で見るのはやめましょう。

そんなことをしたので・・・誤解した彼女の父親(武藤敬司)に鉄拳制裁される舜太郎だった。

やがて・・・奇跡的に回復した斉藤と仲直りする舜太郎。

そんなある日・・・またもや車内で転倒した舜太郎は謎のサラリーマンに介抱され能力を失うのだった。

舜太郎は・・・「人生の目的地」を求めて親に依存しない就職活動を開始する。

謎のサラリーマンは・・・舜太郎が茨の道を歩み出したことに満足する。

その顔に浮かぶ・・・悪魔の微笑み・・・だから・・・悪魔サイドで妄想するなよ。

関連するキッドのブログ→人生ごっこ

隣のレジの梅木さん

輪廻の雨

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2015年12月21日 (月)

アンダーウェア(桐谷美玲)それは下着です(河北麻友子)サルでもわかりますか?(石田ニコル)

本格的な谷間である。

結構、とりこぼしているコンテンツがあるのは・・・最近、ドラマの数が激増しているからだな。

こうなってくるとメジャーとマイナーの線引きは非常に困難だ。

このドラマも・・・配信によるウェブドラマからのお下がり放映である。

東京キー局としてもっとも遅番になったことがやはりダメージになっていると思われるチャンネルで・・・その編成もバタバタしている感じが否めない。

金曜プレミアムと決めながら、巨匠の追悼のために・・・「ゲゲゲの鬼太郎 千年呪い歌」を差しこんで・・・土曜の昼間(関東ローカル)に最終回を差し替え・・・。

つまり・・・自ら「ゲゲゲの鬼太郎」↘「アンダーウェア」を宣言してしまうわけである。

センスとかテイストとかというふわっという問題ではなく・・・お茶の間の厳しい目をちょっと忘れている気がいたします。

で、『アンダーウェア・第1回』(フジテレビ20151113PM9~)脚本・安達奈緒子、演出・尾形竜太(他)を見た。こういう実験的な作品での起用が多い桐谷美玲である。フェリス女学院を卒業した今年。映画中心で・・・やや、淋しかったのだが・・・来年は一月から金曜ナイトドラマがあるのだな。ロイドARX IXは年齢不詳だからな。

で、実年齢26歳だが・・・大卒の新入社員役である。

勤務先は銀座にあるオーダーメードの高級下着メーカー「Emotion」・・・。

下着界のカリスマ的な社長が実年齢59歳の大地真央が演じる南上マユミ・・・。

その家庭生活は謎だが・・・父子家庭で育った時田繭子(桐谷美玲)とは疑似母娘関係が仄かに漂う・・・。

サングラスの縁を咥えたり、鉛筆をかじったり、紙をやぶったり、頭をかきむしったりと神経質な描写のあるマユミは・・・一方の主軸である。

大学で繊維の研究していた・・・ファッション感覚とは無縁の繭子を何故・・・マユミが採用したのかも謎だが・・・田舎育ちのださい女の子がドレスアップして素敵女子になるのは・・・少女漫画的定番なのか・・・脚本家の趣味なのか・・・。

しかも・・・繭子は前向きな性格で・・・整理整頓が大好きというシンデレラ気質なのである。

女子向けお仕事ドラマの・・・お約束の展開で・・・あまり冒険的とは言えないが・・・新メディアの実験作にはありがちで・・・これはこれで楽しい気がする。

援助交際のビジネス化に成功したアイドルグループのトップたちが・・・朝のトークショーで・・・ガールズトークを繰り広げる時代だからな。

で、「Emotion」は一点、十万円の高級下着・・・。

二千円くらいの下着しかつけていない繭子は眩暈を感じるのである。

基本的にお客様は予約制である。

しかし・・・繭子が一人で留守番しているところに・・・「はじめてのお客様」が入店し・・・繭子は営業に成功するが・・・たちまちキャンセルされてしまうのである。

「お客様のことを考えなかったことが原因」と思い知る繭子。

名前を手掛かりにお客様を捜し出すと・・・謝罪する繭子。

問題は・・・商品の価格だったのだ。

すると・・・マユミは「半額」でどうかと打診する。

「いや・・・それでは」とお客様。

「いつもは・・・おいくらほどの下着を・・・」

「2500円くらいです」

「では・・・2500円の20回払いでどうでしょう」

「よろしいんですか・・・」

「お客様は・・・私の下着に恋してくださったのでしょう・・・いつもウインドウを見てくださって・・・」

「え」

「だから・・・是非、着ていただきたかったのです・・・」

「・・・うれしい」

結局、「はじめてのお客様」は五万円の下着を購入くださるのだった。

ここで・・・下着なんて・・・肌触りがよければそれでいいじゃないかなどと貧乏くさいことを言ってはいけません。

デザイナーの瑞希(酒井若菜)と史香(マイコ)のライバル関係もどこか・・・のんびりしていて・・・麗子(千葉雅子)や猿橋(海東健)も包容力に満ちている。

理想的な職場環境に・・・いつしか繭子もその気になっていくのだった・・・。

親友でウェディングドレス・アドバイザーを目指している由梨(河北麻友子)や、いつでも空腹なモデルの沙里衣(石田ニコル)も配置され・・・ものすごくいいムードである。

まあ・・・こんなに・・・恵まれた環境が・・・働く女性たちに共感されるのかどうかは別として・・・。

さて・・・繭子の「はじめてのお客様」が示唆した・・・価格問題。

実は・・・プレタポルテ(既製服)展開は・・・マユミが一度挫折した長年の夢なのである。

オーダーメードとは別に・・・低価格商品のセカンドラインを展開する。

マユミの戦友で経理担当の麗子は危ぶむが・・・「Emotion」は賭けに出るのだった。

はたして・・・繭子は・・・華麗なる女子に変身できるのか・・・まあ、できるんですけどね。

20~60歳のおしゃれな女子をターゲットにしているのだろうが・・・そこに客がいるのかどうか・・・よくわからない悪魔だった。

関連するキッドのブログ→地獄先生ぬ〜べ〜

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2015年12月20日 (日)

青春探偵ハルヤ(玉森裕太)なんちゃって二十歳の嵐!(新川優愛)大人の悪を許さない(高田翔)

本格的な谷間である。

しかも、年末年始の谷間に突入である。

しかし・・・何事にも例外はあるので・・・まだやってるドラマもあるね。

コノ枠なんか・・・毎度のことだけどな。

(火)10の関西テレビ枠とならぶ(木)深夜の読売テレビ枠である。

関西弁の警視庁の刑事は許せないが、関西弁の東京の大学生には問題がない。

大学時代を思い出して郷愁にひたれる。

しかし・・・関西弁=お笑い枠というのはなんだかなと思う。

たまには関西弁の二枚目でもいいじゃないか・・・と思うのだった。

まあ・・・帝国と興行国の棲み分けがあるから・・・しょうがないか。

で、『青春探偵ハルヤ~大人の悪を許さない!~第1~9話』(日本テレビ201510152359~)原作・福田栄一、脚本・中村由加里(他)、演出・大塚徹(他)を見た。帝国が二枚目分野以外にも手を広げる中で・・・ふかわりょうの領域を脅かす惧れがある・・・「サイレーン」の制服警官・三宅涼介(高田翔)・・・まだまだ子供だと思っていたらもう大人なのだった。今回はテンション高めの大学生・窪寺和臣(20)役で・・・地味めの本人が「本当の自分とは違う」とトークしていたが・・・それが役者というものじゃないか。まあ・・・天才の多い帝国スターで現場でしか脚本読まないという豪のものもいるからな・・・。でも・・・それぞれの持ち味があるんじゃないのか。じっくり考えて役作りに励むタイプも欲しいよねえ。気をつけないと淘汰されるぞ。

さて・・・主人公は・・・浅木晴也(玉森裕太)でヒロインは能見美羽(新川優愛)である。

どちらも二十歳の大学生役であるが・・・実年齢は25歳と21歳なのだった。

まあ・・・主人公は料理人ケンとして信長のシェフになるためにタイムスリップしているから実年齢不詳なのかもな。

一方、ヒロインは「GTO」「35歳の高校生」「夜のせんせい」「水球ヤンキース」などキワモノ学園物で女子高校生のキャリアは充分で・・・夏ドラマではなぜか研修医にまで役年齢が上昇していた。

結局・・・日本のティーンズを主人公として描いた青春ドラマは・・・ほとんど成立しないということである。

だから「表参道高校合唱部」は奇跡のようなものなんだな。

教師のそえものとして生徒がいるなんて・・・哀しいことだなあ・・・。

そんな二人はもう一つの関西枠である「銭の戦争」で脇役として出会い・・・ついにカップルになったのだった。あくまで役柄の話ですが。

しかし・・・この二人の青春の軌跡を描いた方が・・・凄いドラマになるんじゃないか。

だがら・・・それ「あまちゃん」ですから・・・ああそう。

ついでに芸人枠だが標準語の「ゴマ」も「シロミ」も知らない男・阿見201が演じるのは篠原俊喜(20)が阿見201は(36)なのだった。

で・・・正義感が強く、喧嘩が上手で、頭もきれる・・・浅木晴也と・・・ミス・キャンパスの能見美羽はそこはかとなく・・・恋に落ちるわけである。

美人女子大生なのでストーカーにつけ狙われる美羽を晴也が助けたりして・・・この枠おなじみの軽いミステリ展開となる。

しかし・・・本当のエンターティメントは老若男女が楽しめるものでなければならないを拡大解釈する日本のスタッフたちは・・・大学生同志の恋の世界をドロドロと描いたりしないわけである。

ゲストを見れば一目瞭然なのである。

田中美奈子、伊藤かずえ、中島ひろ子、宮地真緒、いしのようこ・・・熟女祭りかっ。

もちろん・・・学生たちのたまり場であるスナック「アラバマ」のママが高島礼子だったり、バイト先の上司が宇梶剛士だったりするのは許容範囲である。

だが・・・そんなメンバーでは「アオイホノオ」は燃えまい・・・。

貧乏学生の晴也とちがい・・・家が裕福だが三枚目キャラクターの和臣はおばあちゃんっ子設定である。

第9話では初対面の高齢者・三浦節子(丘みつ子)に親切にしたあげく・・・だまされて犯罪にまきこまれる和臣だった。

節子は女友達を騙した男(名高達男)を追いかけて上京してきたのである。

その背後には・・・あきらかに組織暴力団関係の筋の人が絡んでいる。

そうとは知らずに詐偽グループのアジトに節子を案内した和臣は拉致監禁されてしまうのだった。

和臣を案じる晴也は美羽や篠原を連れてヤクザの事務所に殴りこみをかけるのだった。

連続時代劇レベルのアクションで和臣たちの救出に成功する晴也なのだった。

ちなみに晴也には年の離れた妹(篠川桃音)がいたり、晴也に片思いの女子大生(柳ゆり菜)がいたりします。

まあ・・・帝国が幅広い客層にアピールしたいという気持ちはよくわかります。

しかし・・・ヤクザの事務所に殴りこみかけたりしたら・・・後がこわいので・・・良い子は真似をしてはいけません。

まあ・・・とにかく・・・そんなわけで・・・12/24(木)深夜・・・最終回でございます。

一応・・・主人公とヒロインは寸止め中です。

関連するキッドのブログ→銭の戦争

| | コメント (0) | トラックバック (1)

2015年12月19日 (土)

生まれてしまったものはしょうがない(綾野剛)死んでしまったものはしょうがない(木南晴夏)自然淘汰に対しコードブルーを宣言します(松岡茉優)

いよいよ・・・最終回の連打もフィナーレだ。

スター・ウォーズ祭りとかぶったけどな。

最後の妊婦ゲストは・・・小泉響子/鳥飼カエデ/ベビーエロ/自虐少女隊カイラ/三國茜/ムラサキ/かしこさんでおなじみの木南晴夏 だ~。

最期まで凄い妊婦ゲスト陣だったな・・・。

「彼女は簡単には口を割らない・・・」

彼女が誰かを知っていれば心に響くあの方のセリフ・・・。

裏番組が録画できる時代でよかったな・・・。

砂漠を彷徨う金色のロイドはまるで三蔵法師様・・・。

これ・・・悟空~って言い出しそうだ・・・。

おい・・・また妄想混線してるぞ。

入間しおりも頑張ってるね・・・。

今回、下屋かっけ~の巻でがんす。

あ・・・遠藤真奈の馬子先輩始る・・・。

誰だよっ。

・・・師走だな。

で、『コウノドリ・最終回(全10話)』(TBSテレビ20151218PM10~)原作・鈴ノ木ユウ、脚本・山本むつみ、演出・土井裕泰を見た。「生まれてくる命はそれぞれがたった一つです」という後期研修医の下屋加江(松岡茉優)のつぶやきで始る最終回。生と死が交錯するペルソナ総合医療センターの周産期母子医療センターを舞台に静かに成長していく研修医・下屋の物語・・・でもあるこのドラマ。「生きるべきか・・・死すべきか」・・・永遠の謎に答えはない。しかし・・・産科医は・・・とにかく・・・出産を上手にお手伝いするしかないのである。一度も失敗は許されないのだ。ま、誰でも失敗はするんだけどね。

産科医・鴻鳥サクラ(綾野剛)は・・・児童養護施設の保育士・小野田景子(綾戸智恵)から手紙を受け取る。

「あなたの・・・お母さんについて・・・わかったことがあります・・・聞きたかったら話します・・・聞きたくなければそれはそれでええで」

サクラの産みの母は・・・抗がん剤治療を打ち切って・・・出産直後に死亡。

未婚の母だったためにサクラの父親は・・・正体不明だった。

サクラの胸には・・・「母親の命を奪った子供を父親がどう思うのか」という棘が刺さっていた。

まあ・・・正体不明の時点で・・・99%ひどい父親なんだがな・・・。

その頃・・・妻のゆきえの死と引き換えに・・・愛児・メイを授かった永井浩之(小栗旬)は育児と仕事の両立に困難を感じていた。

「もう無理なんです・・・子育てに追われて・・・仕事に集中できない・・・メイを田舎の母親に預けようと思ってます」

「・・・」

「それに・・・いつか・・・この子に・・・母親のことを話さなければならないと思うと・・・気が重くて・・・」

「・・・」

「だって・・・この子のせいで・・・」

「話してあげてください・・・お母さんが・・・メイちゃんが生まれてくることをどんなに待ち望んでいたかを・・・そして・・・あなたがそれをどう感じたかを・・・」

「でも・・・」

「僕は・・・メイちゃんと同じです」

「え・・・」

「僕も・・・母親の命を犠牲にして・・・この世に生まれてきたのです」

「父親は・・・」

「・・・最初からいませんでした」

「・・・」

「だから・・・父親の気持ちを・・・知りたいと思います」

「・・・父親の」

「もうすぐ・・・メイちゃんの誕生日でしょう・・・お好きだとおっしゃっていたので・・・これどうぞ」

「え・・・この日付・・・メイの誕生日じゃないですか」

サクラはピアニスト・ベイビーのライブ・チケットを渡した。

「このライブは・・・赤ちゃん連れ歓迎なのです」

「そんな・・・阿鼻叫喚な・・・ライブを・・・」

不妊治療の成果を得た相沢美雪(西田尚美)は・・・ベイビーがサクラだと知り・・・スキャンダラスな記事を書こうとしていた。

そのために・・・ペルソナ総合医療センターに取材を申し込む。

宣伝効果を期待して快諾する守銭奴の大澤院長(浅野和之)だった。

取材に訪れた美雪は・・・新生児病棟に母乳を届けに来るが愛児・ナオトとの面会を拒む・・・母親・森口亮子(奥貫薫)の存在を知る。

「私・・・ナオトが・・・18トリソミーであることが・・・まだ受け入れられないのです」

「私たちは・・・ナオトくんと・・・いつでもお母さんをお待ちしていますから」

「・・・」

新生児科の今橋医師(大森南朋)は優しい猫撫で声で亮子を誘う。

「18トリソミーとは何ですか」

「染色体異常の一種です。トリソミーは2本で対をなしている染色体が3本になっているということです。18番染色体が過剰であるために先天性障害を引き起こすのです。高齢出産によりリスクが高まると言われています・・・」

「高齢出産で・・・」

「18トリソミーの男子の平均寿命は2~3ヶ月というデータもあり・・・NICU(特定集中治療室)で生涯を終える赤ちゃんも・・・」

「・・・そんな・・・」

四宮春樹(星野源)が読み聞かせを続けて来た生まれてから一度も目覚めないつぼみは息をひきとった。

一度も面会に来なかった父親は・・・無言でつぼみを引きとって行った。

四宮は・・・父親の悲哀を痛いほどに感じている。

「このまま・・・赤ちゃんに・・・会わないなんて・・・」

「・・・」

亮子の哀願に無言で応じる夫の武史(戸田昌宏)だった。

四宮は武史に特攻した。

「あなたが・・・恐怖で・・・ナオトくんに会いにいけないこと・・・わかってます」

「あんたに・・・何がわかる」

「私は・・・知っています・・・このままで・・・あなたは・・・とりかえしのつかない・・・傷を心に負います」

「・・・」

「勇気を出して・・・ナオトくんに会うべきです」

「ほっといてくれ」

助産師の小松留美子(吉田羊)は味方を求めて・・・四宮を口説く。

「よく言った・・・四宮先生」

「・・・」

「誰かが・・・背中を押してあげるのも・・・大切だよ」

「・・・」

「さあ・・・四宮先生も・・・勇気を出して・・・私の胸に」

「飛び込みませんよ」

小松の独身時代に終止符は打たれなかった。

高齢出産によるリスク・・・自身が妊婦である美雪は出生前診断を受けるかどうかについて悩んでいた。

医療とは・・・自然に対する反逆である。

淘汰されるべき命を時には救ってしまう。

しかし・・・人間も自然の一部だと考えれば・・・自然に対する反逆もまた自然なのである。

リスクを避けるために技術は革新され・・・革新は新たなリスクを産む。

美雪の上司は素知らぬ顔で毒を吐く。

「この忙しい時に・・・君まで妊娠したとか・・・冗談でもやめてくれよ・・・」

人類は妊娠して出産されなければ存続しない。

しかし、一人の人間が雑誌編集の戦力になるためには多くの歳月が必要となる。

月刊誌の締め切りはひと月に一度やってくる。

美雪は経済の危うく恐ろしいバランス感覚に眩暈を感じるのだった。

ここまでが・・・ほぼ前フリである。

父親を知らず母親も知らないサクラ。

母体も新生児も救えなかった四宮。

障害を持つわが子への対面を怖れる森口夫妻。

育児と仕事の両立に苦しむ永井。

妊娠していることを職場で公言できない美雪。

生殖相手さえいない小松・・・。

このそれぞれの苦悩は複雑に絡み合い・・・やがて・・・収束していく。

それを繋ぐのが・・・破水したものの陣痛の納まった妊婦・・・飯塚律子(木南晴夏)と・・・担当医の下屋である。

研修医だが・・・女医として・・・妊婦たちにそれなりに人気の下屋なのだった。

「担当が下屋さんでよかった」

「ありがとうございます」

「陣痛治まったから・・・退院ですか」

「破水しているので・・・入院です」

「そうなんだ・・・じゃ・・・旦那を呼び付けて正解だったんだ」

「大正解ですよ」

「よろしくお願いします」

「まかせてください」

そして・・・突然、止まる律子の心臓・・・。

その日は・・・メイちゃんの誕生日。

お気に入りのベイビーのピアノ演奏に機嫌が良くなるメイちゃん。

思わず・・・パパと初めての言葉を放つ。

パパがいる時は・・・いつも・・・プレイヤーからベイビーのピアノが聞こえていたのだった。

演奏が「ハッピー・バースデイ」に変じ、ベイビーからのささやかなバースデイケーキが届く。

場内の聴衆たちのあたたかい拍手・・・。

メイちゃんのパパとして永井は愁眉を開く。

(仕事なんかなんでもいい・・・でもメイはメイじゃなくちゃダメだ・・・)

子育てしやすい部署への配置転換を希望することにする永井だった。

四宮に背中を押された森口夫妻はナオトくんと対面した。

「大きくなったんだなあ・・・」

「もっと・・・早く来ればよかった・・・」

「ナオトくんの時間は・・・我々より・・・早く過ぎ去っていくかもしれません」

「・・・」

「だから・・・濃密な時間を過ごしているとも言えるのです。・・・我々の一瞬が・・・ナオトくんにとっては永遠なのかもしれない」

「・・・」

「どうです・・・せっかくだから・・・ナオトくんを入浴させてあげてみては・・・」

「ナオトを入浴させる・・・そんなことが・・・できるんですか」

「できますよ」

「あなた・・・落さないでよ・・・」

「落すわけないだろう・・・」

突然。ベッドに崩れ落ちた律子に・・・動顛する夫(佐野泰臣)・・・。

「律子ちゃん・・・」

「すみません・・・場所をあけてください」

「一体・・・何が・・・」

「奥さんの心臓は止まっています」

ここで・・・麻酔科の船越医師(豊本明長)が「愛は勝つ/KAN」のメロディーで歌い出す。

「し~んぱくないからね」

「ないない」

「子宮左方転位を行います」

「胸骨圧迫します」

「圧迫位置・・・頭部よりに・・・AED用意して」

「人工呼吸開始します」

「輸液急いで」

「心拍戻りません」

「アドレナリン投与・・・」

「AED・・・準備できました」

「コードブルーを宣言します・・・」

下屋のアナウンスに・・・耳を傾ける医療スタッフたち。

「産科で・・・コードブルー」

緊急事態発生に全員集合体制に急速移行するのだった。

懸命に蘇生を続ける下屋。

そこへ・・・四宮が到着する。

「心肺停止です」

「続けろ」

麻酔科、新生児科、救命救急科などのスタッフが続々集結する。

「心拍もどりません」

「母体を優先する・・・死戦期帝王切開術だ」

「はい」

そこへ・・・サクラが帰ってくる。

「どうした・・・」

「死戦期帝王切開術です」

子宮を小さくして下大静脈と大動脈の圧迫を解除し、母体血行動態を改善するための・・・胎児の分娩である。

「よし・・・一分で赤ちゃんだすよ」

「下屋・・・第一助手だ」

「え」

「お前が担当だろう」

「はい」

「赤ちゃんもお母さんも助けるよ・・・」

「はい」

「おめでとうございます」

新生児科新井医師(山口紗弥加)の傷心休養の穴を懸命に埋める後期研修医・白川(坂口健太郎)・・・。

「頑張れ・・・頑張れ・・・」

「心肺・・・戻りません」

「チャージして・・・」

響き渡る新生児の産声・・・。

「はい泣いた」

精神感応する七瀬・・・いや律子だった。

「心拍・・・出ました」

母子はともに・・・淘汰を免れた。

わが子の気配に覚醒する七瀬・・・いや律子だった。

妊婦を演じるために盛っているのではないかと疑う一部お茶の間だが・・・本来、グラビアアイドル的ナイスボディです・・・念のため。

「どうして・・・突然、心肺停止したのでしょうか」

「QT延長症候群の疑いがあるな・・・」

「心臓の収縮後の再分極の遅延がおき不整脈で・・・心室細動による突然死につながる家族性突然死症候群ですか」

「とにかく・・・下屋・・・よくやったな・・・ただし・・・手術中はよそ見するな」

「四宮先生・・・」

下屋は四宮にご褒美として牛乳をもらった。

「どうやら・・・四宮に認められたみたいだな」

「え・・・今の・・・そうなんですか・・・サクラ先生」

サクラは四宮の背中を見て微笑んでいるかどうかを判定できるのだった。

生と死の境界線を乗り越えて・・・サクラは景子ママに会う。

「あなたのお母さんは・・・単身赴任中の男性と交際していたの」

「・・・」

「男性が去った時・・・お母さんはその人を追わなかった・・・」

「・・・」

「男性には別に家庭があった・・・」

「・・・」

「お母さんは・・・波風立てたくなかったのね・・・」

「・・・」

「そして・・・あなたが生まれたの」

自分が不義密通の成果だと知って・・・微妙な気持ちになるサクラだった。

棘は・・・大きくなったんじゃないのか。

「お父さんに会いたかったら・・・」

「少し・・・考えさせてください」

「あまり・・・待たせると・・・永遠の秘密になっちゃうぞ」

「・・・」

「サクラに父親を責めさせるのは無理よ・・・波風を立てない母親の血が流れているのですもの」

「・・・そこが心配だ」

誰だか知らないが・・・そんなことを言ってると黒焦げになるぞ・・・。

現実の出産を目撃した美雪は・・・スキャンダル記事をあきらめ・・・自分の妊娠と真剣に向き合う覚悟を決めるのだった。

記事は内容の変更ができるが・・・自分の子供を産むのは自分だけなのだから。

ペルソナ総合医療センターに聖なる夜がやってくる。

やぶれかぶれの小松は・・・サクラにピアノ演奏をリクエストする。

「え・・・サクラ先生・・・ピアノ弾けるんですか」

「サクラは・・・弾けるぞ・・・紅白歌合戦には出ないけどな」

四宮はサクラをフォローした。

きよしこのよる

ほしはひかり

すくいのみこは

みははのむねに

「妊娠は病気ではありません。けれど・・・出産の現場は生と死の境界線にあります。私たちは・・・妊婦と胎児を守り、新生児をこの世に迎えるお手伝いをします・・・それが私たちの仕事です・・・そしてお給料をもらうのです」

人類が存続する限り・・・彼らのドラマに終焉はないのだった。

素晴らしい新生児たちの映像表現は見ごたえ抜群だったなあ・・・。

今も何処かで聖なるファンファーレが鳴り響く・・・。

助産師角田真弓(清野菜名)の出産スペシャル・・・あるかな・・・。

関連するキッドのブログ→第9話のレビュー

| | コメント (0) | トラックバック (3)

2015年12月18日 (金)

すき焼きに生卵がついている地獄(石橋杏奈)結婚も二度目なら少しは茶番劇も上手に(榮倉奈々)

谷間である。

谷間だが・・・谷間に消えたレビューの最終回を・・・。

変則的な「デザイナーベイビー」がなければ・・・どちらかは残った気がするな。

いや・・・どちらを残すかで決着つかなかったんじゃないか。

つまり・・・石橋杏奈と榮倉奈々は甲乙つけがたいということか・・・。

そこかよっ。

「無痛」は普通ヴァージョンと「エンジェルハートまじっちゃいました」ヴァージョンがあるぞ。

「遺産」は「悪いイクオ」ヴァージョンもあるな。

どうせ・・・妄想なんだから・・・なんでもいいよ。

99人のアイドル大集合のコラボ9曲目はどうせAKI氏曲なら「僕たちは戦わない」がよかったよな。

おい・・・妄想混線してるぞ。

で、『無痛〜診える眼〜・最終回(全10話)』(フジテレビ20151216PM10~)原作・久坂部羊、脚本・小川智子、演出・佐藤祐市を見た。脚本家が四人ということで・・・「花燃ゆ」と共通点があるのだが・・・そういう意味で気になるのが医師・為頼英介(西島秀俊)と井上和枝(浅田美代子)の関係だよな・・・そこな。設定では英介(43)で和枝(56)だが、和枝の妹で一年前に他界した英介の妻・為頼倫子(相築あきこ)の年齢は不詳である。実年齢を参照すると・・・西島(44)浅田(59)相築(48)である。つまり・・・倫子と和枝の年齢差は10歳くらいで・・・倫子は英介より年上の女だったわけである。死んだ妹の夫と同居する和枝・・・花燃えてるんじゃないのか・・・西島秀俊の一部愛好家(around fifty)へのサービスじゃないか・・・。

「こんなの・・・ただの動物的な勘みたいなものだ」

・・・いや、完全に特殊能力だよ。

為頼英介は「殺意」が見える男なのである。

このドラマでは「殺人衝動」は一種の精神疾患の趣きがある。

だが・・・動物的な攻撃性と・・・人間の教育による衝動性の抑制の関係についてはあまり深くは述べられなかった。

あくまで・・・一つの「ネタ」なんだよな。

為頼英介と同じように「犯因症」を視ることができる白神陽児(伊藤英明)は結局・・・イバラ(中村蒼)を凶器として使用した殺人者であり・・・為頼英介は白神の「殺意」を見抜けなかったわけである。

殺人後・・・時間経過により「犯因症」が自然治癒したということか・・・。

そういう意味で・・・「ネタ」についての定義が少し甘めである。

「殺意」と「殺人行為」の関連についても詰めの甘さがある。

また「悪意」と「殺意」の境界線も曖昧になっている。

やはり・・・主題は・・・和枝の花萌えなのか・・。

物語の主軸である「教員一家殺害」はあの未解決事件を連想させるわけだが・・・そこには被害者と加害者の意識のズレの問題が持ちこまれる。

そういうごった煮感覚がおいしいと感じる人もいるが・・・もう少し、ダシの味はシャープにしてもらいたい気がする。

無能であるために事件が解決できない港中央警察署の刑事・早瀬順一郎巡査部長(伊藤淳史)は「教員一家殺害」の動機を解明できない。

セルフコントロール不足で・・・犯人に対する殺意を抑えきれないという精神的に問題のある警察官なのだ。

白神陽児の謎に迫る為頼英介は・・・医者だが・・・動機を解明してしまうのだった。

そもそも・・・殺人事件の古典的動機は「痴情のもつれ」である。

宝塚女優のように美しい院長秘書の横井清美(宮本真希)は白神に片思いをしていて・・・白神に大切にされる臨床心理士の高島菜見子(石橋杏奈)に嫉妬し・・・ついに殺人未遂にいたるわけである。

「まさか・・・殺されるほど・・・怨まれているとは」

被害者の予想もしない加害者の動機・・・。

まあ・・・殺人事件の多くは本質的にそういうものなのである。

被害者の一人である教師は南サトミ(浜辺美波)の声帯に障害があるとは知らずに「発声すること」を強要する。

サトミは教師の鈍感さに殺意を覚える。

しかし・・・実際に殺人を実行したのはイバラだった。

イバラは無痛の人として・・・白神の「無痛薬開発」のための人体実験に使用される。

その上で「薬物の過剰投与」による「暴走」を喚起され・・・白神によって「教員一家殺害」へと誘導されたのである。

「弟は精神的に弱く・・・私は肉体的に弱かった・・・自殺した弟の心臓を移植することで・・・私は心身ともに強くなったのだ」

「まさか・・・エンジェルハート症が・・・」

「そうだ・・・弟の心臓には記憶があった・・・あの雌犬・・・弟を捨てて、教員の妻となり、二人も子供を産み、幸せを満喫している女・・・彼女に対する怨嗟が」

「それは・・・デビルハート症・・・」

「私には我慢できなかった・・・可愛い弟を自殺においやっておきながら・・・幸せな家族、幸せな家庭を自慢していたあの女が・・・不条理じゃないか」

「・・・しかし・・・子供たちには罪がないだろう」

「寝言だな・・・弟から愛するものを奪った男と同様に・・・二人の生殖行為によって増殖した子供も同罪だし・・・罪の報いを女が充分に知るためにただ殺したのでは不足だ・・・わが子を殺される苦痛を味わうべきだ」

「君は・・・心臓の記憶によって・・・理性を失ったのか」

「いや・・・完全な理性を得たのだ」

二人の医師の会話についていけない早瀬・・・。

「なんなの・・・結局、悪いのは誰なの」

そこへ・・・イバラが登場する。

「先生は大切な人・・・先生は素晴らしい人・・・でも・・・先生は悪い人・・・ボクに悪いことをさせました」

イバラは白神と心中した。

「辛いことがあっても・・・生きていかないといけないと告げるのが私の仕事です」

高島菜見子はつぶやく。

「刑事の仕事は・・・犯人の逮捕であって・・・処刑ではないと・・・警察学校で教わっていたことを忘れていました」

早瀬は・・・少し反省する。

栄一は・・・菜見子が家族のように為頼家を訪れる度に・・・和枝の目が怪しく光ることに気がついた。

身の危険を感じる栄一・・・。

「少し・・・旅に行って来るよ」

「それも・・・いいかもね」

和枝はひっそりとため息をつく。

痛みは慈悲深い神の恩寵であると人は言う・・・。

関連するキッドのブログ→第2話のレビュー

で、『遺産争族・最終回(全9話)』(テレビ朝日20151022PM9~)脚本・井上由美子、演出・松田秀知を見た。佐藤育生(向井理)を捨てた無責任な父親である佐藤肇(光石研)は最終回直前にそれほど悪い男できなかった風にフェイドアウトである。「サイレーン」の渡公平(光石研)も悪女に使い捨てられて最終回には登場しない・・・。光石研は最終回には登場しない貴重な脇役になってしまったのか・・・。

一方、葬儀社の社長令嬢として・・・甘えっ子に育った河村楓(榮倉奈々)は最後まで「愛してくれなきゃ嫌いになっちゃう」的な・・・キャラクターを演じ切ったのであった。

Nのために」の後だからな・・・。

次はD警務部秘書課の警察官か・・・。

ついに・・・遺産の十億円を手中にしかけた育生だったが・・・認知症を発症している河村龍太郎(伊東四朗)は気分が変わって遺言を破棄した。

「ちっ」

育生は微笑みながら舌打ちする。

その時・・・焦げ臭い匂いが不毛な家族の食卓に押し寄せる。

「おじいちゃんの部屋・・・」

「仏壇の燈明じゃないの・・・」

「火事だ」

「あわてないで・・・煙を吸い込まなければ大丈夫です」

「なんで・・・あんたが命令するのよ」

「婿のくせに生意気よ」

「息を止めて死ねって言うの・・・」

「楓・・・水を持ってきてくれ」

「はい」

楓は凛々しい育生にうっとりするのだった。

テーブルクロスを水でぬらし、対煙マスクを手作りする育生。

しかし・・・認知症を発した龍太郎は火元へ向かう。

(まだ・・・死なせるわけにはいかない・・・ここで死なれたら普通の遺産相続になってしまう)

「おじいちゃんは僕が連れ出す・・・お父さんはみんなを連れ出してください」

「わかった」

自分が一番大事な恒三(岸部一徳)は了承する。

「金だ・・・ワシの金が」

「まさか・・・おじいちゃん・・・遺産を現金に・・・」

「ワシの全財産」

「大丈夫・・・金庫は防火性がありますから」

しかし・・・認知症を発症している龍太郎は理性では動かない。

「ワシの八十年の人生を費やした金だ」

「開けたら・・・金庫の中の酸素に引火します」

「金・・・今、助けてやる」

「バカ」

開かれた金庫が巻き起こすバックドラフト。

燃えあがる札束。

「ワシの金が・・・」

(オレの金が・・・)

「燃える・・・」

「くそったれ・・・」

病院のベッドで意識を取り戻す・・・。

「よかった・・・」

安堵する楓・・・。

しかし・・・育生の心はドス黒い落胆で覆われていた。

(この・・・元資産家のバツイチ女め・・・)

「・・・」

「どうしたの・・・育生」

「僕のせいで・・・こんなことに・・・」

「育生のせいじゃないよ・・・」

「いや・・・僕があんなことをしたから・・・」

「お金に目がくらんだ家族のためにしてくれたことじゃない」

「でも・・・家族はバラバラのままだし・・・お金もなくなった」

「しょうがないよ」

「別れよう・・・」

「え」

(金の切れ目が縁の切れ目なんだよ・・・)

いつもの居酒屋で飲んだくれる育生。

「喧嘩でもしたの」

育生の幼馴染である渡辺美香(朝倉あき)は案じる。

「喧嘩じゃない・・・離婚だ」

「じゃ・・・私と結婚する?」

(なんだと・・・どんなに可愛くたって居酒屋で働いている娘と俺が結婚だと・・・するわけないだろう・・・第一・・・お前は悪の秘密結社の総帥だろうがっ)

「ねえ・・・育生・・・」

(そうだ・・・現金がなくなったって・・・まだあの家にはいろいろと資産が残っているじゃないか・・・目の前で現金が燃えるのを見て・・・動顛しすぎたな・・・貧乏症って恐ろしいな)

育生は河村家に戻った。

「解散なんて・・・ダメです・・・僕は・・・たとえ・・・最低の家族でも・・・みなさんと・・・家族になりたいんです」

「育生・・・」

育生の心にもないセリフに手玉にとられる楓だった。

そして・・・龍太郎の心臓が止まる。

「この鍵・・・どこの鍵かしら・・・」

「もしかして・・・どこかに・・・隠し財産が・・・」

「なんだと」

龍太郎の脈を診る育生の耳に・・・遺品をあさる家族の声が届く。

思わず・・・口元が緩む育生。

(俺たちの争いはこれからだ!)

・・・リセットされたな。

まあ・・・「カワムラメモリアル」を中心に・・・もっと様々な遺産争族を見ていくという展開もあるよねえ・・・。

龍太郎だって・・・また蘇生しそうだしな・・・。

関連するキッドのブログ→第1話のレビュー

| | コメント (0) | トラックバック (8)

2015年12月17日 (木)

武市半平太の反省(錦戸亮)坂本龍馬のまとめ(神木隆之介)富子の祈り(谷村美月)美しすぎる血脈(比嘉愛未)美少女の実力(黒島結菜)

未亡人となって半世紀・・・武市富子は大正六年(1917年)の春にこの世を去る。

大正三年(1914年)に第一次世界大戦が勃発し、日英同盟中の日本はすでに英国軍と協力して、アジア、太平洋の独国領土を占領している。

英国の要請で地中海に海軍を派遣することに・・・大日本帝国は慎重であった。

しかし、大正六年の三月・・・日本海軍の特務艦隊はついにシンガポールを出航して地中海を目指す。

日本海軍の任務は同盟国の商戦護衛だった。

四月に中立を守っていた米国はドイツに対して宣戦布告。

ロシアでは混乱の中、革命が開始される。

二十三日、富子は死去する。

二十六日、日本海軍の駆逐艦「榊」は沈没した輸送船「トランスシルバニア」の乗員多数を救助し、賞賛を受ける。

六月、駆逐艦「榊」は敵潜水艦の雷撃により大破・・・上原艦長(山口県出身)以下、乗組員五十九人が戦死した。

大正七年(1918年)、第一次世界大戦は終結する。

それから・・・一世紀近くが過ぎ去った・・・。

で、『サムライせんせい・最終回(全8話)』(テレビ朝日201512112315~)原作・黒江S介、脚本・黒岩勉、演出・片山修を見た。あさはひるになります。ひるはよるになります。あしたはやってきます。きのうにはもどれません。いきているひとはしにます。しんだひとはかえらない。けれど、タイムスリップがおきるときのうしんだひとにあしたあえることがあります。しんだというのはうそだったことになります。とてもふしぎなことです。(小学生にもわかるかもしれないタイムスリップ)

六本木のような街の雑居ビルの屋上。

投資家の海道匠(忍成修吾)の闇カジノから脱出した武市半平太(錦戸亮)は楢崎こと坂本龍馬(神木隆之介)を問いつめる。

「平成建白書とはなんじゃ・・・」

「素晴らしいインターネットの世界に構築した秘密の隠れ家で・・・わしが作った一揆の回状じゃ」

「龍馬・・・おんし・・・一揆を煽るつもりか」

「わしは百姓や町民が・・・大統領になれる国を作るつもりじゃったのに・・・今や、金持ちがこの世を動かしている」

「商人の世か・・・」

「貧富の差が広がって・・・貧乏人は死ねと言われる国になってしまったき・・・」

「なんと・・・」

「じゃき・・・わしは・・・不平不満を抱えるものたちを集めて・・・もう一度、日本を洗濯しちゃる」

「世直しか・・・」

「わしは・・・あの海道に天誅を加えた上で・・・腐れ役人や汚れた政治家たちの悪事を公にするき。さすれば・・・一万人の同志が決起する手筈じゃ・・・」

「なんと・・・一万人・・・」

「武市さんには・・・これを預かってほしいんじゃ・・・わしにもしものことがあれば・・・」

「しかし・・・龍馬・・・おんしは人を殺すのは好かんのじゃなかったのか」

「好かん・・・しかし・・・殺されるのはもっと・・・好かん」

「・・・覚悟を定めたのじゃな」

「しかと」

「しかし・・・京の天子様に・・・もしものことがあっては・・・」

「あ・・・天子様は・・・今、東京在住だから・・・」

「なんと・・・東京に・・・」

「だから・・・江戸は東の京になったんだよ・・・」

「そうなのか・・・天子様はいずこに・・・」

「ええと・・・あそこに東京タワーが見えるから・・・あっちの方が皇居」

思わず姿勢を正し参拝する半平太だった。

「龍馬・・・お主の覚悟は分かった・・・この武市半平太にできることがあれば助力いたそう」

「武市先生・・・」

「先生はよせ・・・おんしとわしは・・・同志ぜよ」

半平太とはぐれ・・・夜の東京を彷徨う佐伯晴香(比嘉愛未)と寅之助(藤井流星)の姉弟の元に・・・龍馬からの着信がある。

「楢崎さん・・・今、どこですか・・・え・・・マンキツ」

半平太と龍馬は漫画喫茶に潜伏していた。

「穴倉のようなところじゃな」

「まあ・・・これでも読んでいてください」

「なんじゃ・・・これは」

ドラマ化された「サムライせんせい」の武市半平太(本人)は「お〜い!竜馬/作:武田鉄矢、画:小山ゆう」を坂本龍馬(本人)に推奨されるのだった。

漫画喫茶に到着した晴香は・・・衆道的な気配に立ちすくむ。

「・・・それでは・・・海道に天誅を下すのは・・・テレビ局で・・・刻限は七つ半・・・」

漏れ聞こえるのは物騒な話だった。

「曲者・・・なんじゃ・・・晴香殿か・・・」

侍二人に挟まれる晴香・・・。

昔弟だった(どんと晴れ)龍馬(22)と二つ年上の半平太(31)に挟まれる晴香(29)・・・。

一部お茶の間熱狂の両手にサムライ状態の晴香だった。

「晴香さんは・・・武市さんを・・・神里村に連れて帰ってください」

「え」

「佐伯殿に挨拶したいのだ」

こうして・・・神里村に帰還する半平太だった。

「理由あって・・・この家を出ることにいたした・・・佐伯殿にはお世話になり申した」

「それでは・・・ぜひ・・・あなたにお見せしなければならないものがあります」

佐伯真人(森本レオ)は半平太を待たせ、奥の間に去る。

一方、スナック「カーニバル」ではなんでもやる課の小見山課長(梶原善)が先週から延々と選挙資金の算段に頭を悩ませている。

スナックのママ・篠原理央(石田ニコル)は「サルでもわかる幕末」から「小学生でもわかる幕末」にステップアップを果たし、偉大な龍馬先輩に会いたいと晴香におねだりをする。

そこへ現れる海道とボディガードの男・・・。

「サムライを捜しています・・・発見した方への賞金は一千万円・・・」

「え」

目の色が変わる一同だった・・・。

寅之助に案内されて佐伯家にやってきた海道。

晴香は・・・半平太を説得する。

「立ち聞きしてしまいました・・・人を殺すなんて許されません」

「武士は名誉や志のために・・・命を惜しまぬものなのじゃ」

「だから・・・平成では・・・命は・・・名誉や志より重いんですってば・・・」

「志を持たぬ生に何の意味があろうか」

「生きているから・・・志があるんです」

だが・・・海道は・・・半平太の持っている機密データに用があるのだった。

「大人しく・・・返してくれ・・・それなりに金は払う」

海道のボディガードは拳銃を不法所持していたのだった。

走り去ろうとする半平太を銃撃する男。

「なんてことを・・・」

しかし・・・半平太は闇に身を隠す。

「ち・・・私はテレビ出演のために・・・東京に戻る・・・なんとしても奴をつかまえろ」

負傷した半平太は意識を失う。

半平太を救助したのは・・・塾の子供たちだった。

秘密基地で半平太を看病する子供たち。

そこへ・・・母親たちが現れる。

「先生は渡せません」

「私たち・・・先生を売ったりしないわよ」

神里村の女子供は半平太のファンになっていたのだった。

夢の中で・・・半平太はみすぼらしい家で暮らす妻の富子(谷村美月)にめぐり会っていた。

「旦那様・・・どうして・・・」

「・・・すまぬ・・・わしが切腹したために・・・家禄を奪われたのだな・・・」

「旦那様が生きておられれば・・・それだけで充分です・・・でも・・・あの骸は・・・」

「信じられぬかもしれぬが・・・わしは・・・生きておる・・・今より百五十年の後の世で」

「それが・・・旦那様の後生・・・」

「そうじゃ・・・できるものなら・・・お主にも・・・後の世を見せてやりたいものじゃ・・・」

「旦那様・・・」

「泣くな・・・・」

「いいえ・・・これは・・・旦那様に逢えたうれし涙です」

「富子・・・」

蝋燭の炎が消えるようにすべては闇に落ちる。

目覚めた半平太は佐伯家にいた。

「お目覚めになりましたか」

佐伯真人が微笑む。

「夢を見ており申した・・・恥ずかしながら・・・妻の夢を・・・」

「それは夢ではございません」

「なんと・・・」

真人は・・・一通の手紙を取り出す。

「私は・・・あなたの遠縁のもの・・・武市富子様のあなた様宛の手紙を代々・・・預かってきた一族の末なのでございます」

「富子の・・・手紙」

「あなたは・・・ひととき・・・未亡人となった富子様の元へ現れた」

「・・・」

「富子様は・・・後の世にあなたが生きていることを信じ・・・文をお残しになったのです」

「富子が・・・わしに・・・」

「あなた様が・・・現れた時・・・どんなにうれしかったか・・・しかし・・・あなた様は過去の歴史について・・・お知りになりたくないとおっしゃった・・・そこでお手紙をお渡しすることをためらっていたのです・・・」

「・・・」

「どうぞ・・・お読みください」

二度と逢えないと思い定めし旦那様に逢えたこと・・・

富子は嬉しゅうございました・・・

旦那様は私の貧しい暮らしぶりを見て・・・御心を痛められたご様子・・・

けれど・・・ご安心ください

旦那様の目指した王政復古の世となり・・・

あなた様の罪は許され・・・

今では何不自由のない暮らしをしております

後藤様をはじめとする上士の方々からも丁重に詫びていただき・・・

大殿様も・・・あなたを惜しんで落涙なさったと伝え聞きました・・・

世はゆきすぎて・・・

今も大戦が続いております・・・

いつの日にか・・・

夫婦が笑って暮らす世の中になればよい・・・

後の世の旦那様に・・・それだけを申し伝えたく

一筆啓上つかまつり候・・・

・・・半平太はうなだれた。

「武市様・・・」

「わしは・・・愚かじゃった・・・一番大切なものを守れずして・・・何が尊皇攘夷か」

「しかし・・・あなた様方が・・・命を賭けて作られたからこそ・・・この世は・・・かくも平和なものとあい成ったのでございます」

「・・・」

半平太は龍馬との約束を思い出す。

「行かねば・・・」

「待って・・・どうしても暗殺を・・・」

晴香は半平太に問う。

「いや・・・わしは・・・龍馬を止めに行くのじゃ」

「わかりました・・・それでは・・・ご一緒いたします」

そこへ・・・海道のボディガードが現れる。

「大人しくしろ」

しかし・・・篠原理央の一撃がボディガードをノックアウトするのだった。

「私たちは・・・ぺーた先輩を応援してますから」

「かたじけない・・・」

半平太と佐伯姉弟は再び・・・上京した。

龍馬は・・・コインロッカーに準備した真剣を取り出す。

平成の世に・・・最強のテロリストが復活したのである。

龍馬はテレビ番組の収録を終えた海道を待ち伏せるのだった・・・。

これはもう・・・リアルであり、幕末であり、死んでもらいますであり、つかこうへいであり、唐獅子牡丹であり、もう何がなんだんわからない凄い世界である。

「天誅でござる」

「馬鹿な・・・現代の日本で暗殺なんて本気で出来ると思ってんの?」

海道のボディーガード軍団が龍馬に迫る。

龍馬はS&Wを抜き放ち、天に向かって威嚇射撃。

「え」

「高杉晋作さんからもらったS&W33口径6連発は寺田屋で失くしちゃったんでこれはわが妻お龍とおそろいで買ったやつ・・・」

突然の発砲に・・・パニックを起こし脱走するボディーガードたち。

「おい・・・こら・・・給料泥棒かっ」

「上に立つものに・・・仁徳がなければ・・・命を投げ出すものなどいない」

「それ・・・中東の人たちにも言えるのかよ」

「お命頂戴」

「ひ」

しかし・・・龍馬が用意した予備の刀を持ちだした半平太が割って入るのだった。

「武市さん」

「龍馬、いかんぜよ」

「邪魔やき・・・ひいてつかあさい」

「龍馬、やめとき」

「ならば・・・斬る」

「龍馬・・・人を殺すなぞ・・・人気順位が変動する元じゃ」

「問答無用」

「なんだかんだ・・・殺すのが嫌いっていうことで現代人受けしとるんじゃぞ・・・お主は・・・」

「武市さん・・・嫉妬ですか」

「似合わんちゅうとるんじゃあ」

火花散る白刃の舞・・・。

「なんなの・・・あいつら・・・」

呻く海道。

「かっこいいじゃないすか・・・やばいほど・・・熱くて」

寅之助は萌える。

「・・・と・・・アップロード終了」

操作終了の晴香。

「あ・・・それは・・・」

「おっと・・・」

例の機密データは素晴らしいインターネットの世界で誰でも閲覧可能になった。

「待て・・・」

逃げる晴香・・・追う海道。

二人は生放送のお天気コーナーに飛び込む。

「はい・・・こちら・・・海道さんの色々怪しい裏帳簿公開中です・・・カイドーワイロで検索」

「ひでぶ」

「与党野党問わず国会議員全員が・・・政治資金規正法的に完全アウトになってます~」

「やめてくれ~・・・誰か・・・助けて・・・どなたかデスノート持ってませんか~」

いつしか・・・勝負に夢中になって行く二人・・・。

「さすがじゃの・・・あご・・・」

「おんしもな・・・あぎ・・・」

「あんとき・・・お前が・・・おってくれたらのう・・・」

「武市さんが死んだと聞いて・・・中岡も・・・わしも覚悟を決めたんじゃき・・・」

「龍馬・・・」

「武市さんを殺すような世の中・・・絶対ぶっこわしてやるってな」

「龍馬・・・」

「まあ・・・そんで二人で殺されてりゃ・・・世話ないがのう・・・」

「龍馬・・・」

「そこまでだ・・・」

「!」

警視庁の捜査官・氏家八尋(神尾佑)と警官隊が現れた。

「銃刀法違反の現行犯で逮捕する」

「こんなところで捕まるわけにはいかん」

身を翻す龍馬。

発砲する氏家。

身を投げる半平太。

二人は非常階段を転がり落ちる。

「逃がすな」

警官たちは追う。

氏家は・・・エレベーターで龍馬と半平太を回収するのだった。

「さあ・・・参りましょう」

「どういうことじゃ・・・」

「氏家さんは・・・平成建白書に最初に賛同してくれた同志じゃき・・・」

「ええええええええ」

「坂本龍馬さん・・・最高!」

三人は警察車両で封鎖を突破した。

「龍馬・・・これからどうするつもりじゃ・・・」

「じっくり考えてみますよ・・・世直しのアイディア・・・次から次へと浮かぶんで・・・とにかく・・・まずは・・・プチ整形から・・・」

「プチ・・・」

「武市さんはどうするつもりですか」

「わしは・・・帰ろうと思う」

「幕末へ・・・ですか」

「いや・・・神里村じゃ・・・あの村の子供たちには借りができてしもうた・・・」

「律義だなあ・・・」

「龍馬・・・本当にあの者を殺すつもりだったのか」

「わしは・・・人を殺すなどよう・・・しませんき・・・」

「・・・それにしても・・・わしらはどうして・・・ここにきたんかのう」

「理由なんて・・・どうでもいいじゃないですか・・・生まれてくるのに理由はないでしょう」

「そうじゃの・・・人生は・・・為すか為さぬかじゃの」

神里村は「サムライの郷」となった。

「龍馬暗殺の真相」を自らが語る動画をアップした赤城サチコ(黒島結菜)は莫大な資産を築く人生をスタートした。

寅之助は一生を尻にひかれて過ごす。

晴香は村長選挙に立候補して当選・・・美しすぎる村長として一世を風靡した。

海道は逮捕され・・・国会議員は総辞職した。

神にとって永遠は一瞬である。

だから・・・一瞬は永遠である。

神は・・・二人の一瞬を永遠に変えたのだった。

二人が過去に戻れば死が待っている。

だから・・・龍馬と半平太は・・・帰らない・・・今の時点では。

関連するキッドのブログ→第7話のレビュー

| | コメント (0) | トラックバック (3)

2015年12月16日 (水)

正義とは復讐の別名です(松坂桃李)わが名はハルモニア(木村文乃)わが名はセイレーン(菜々緒)

美しいハーモニーも禍々しいサイレンも空気の振動にすぎない。

しかし、ハルモニアはオリンポスの神々から祝福され、セイレーンは処罰される。

運命の残酷さを示す・・・神々の娘たちのふたつの姿。

幸という文字はサチとも読めるし、ユキとも読める。

一卵性双生児の孤児姉妹の一人は猪熊家でユキとして育てられ、正義の心を持つ警察官となる。

一人は十和田家でサチとして育てられ、シリアルキラーとなった。

サチと瓜二つのユキを見て・・・認知症を発症しているサチの養母は「謝罪の言葉」を口にする。

サチの最初の標的は酒乱の養父である。

このことから・・・サチが養父による性的虐待を幼少時から受けていることが暗示されている。

人間として育てられたユキと・・・性的奴隷として飼われたサチ。

善悪の境界線で・・・二人の魂は反転していく。

サチは死の天使ワルキューレの一人、カラ(荒れ狂う戦意)となる。

サチは虐待されるものから虐待するものに変じたのだった。

結局、魔性のものは世界の本質から生じるのだ。

で、『サイレーン刑事×彼女×完全悪女・最終回(全9話)』(フジテレビ20151215PM10~)原作・山崎紗也夏、脚本・佐藤嗣麻子、演出・本橋圭太を見た。死闘の果てにシリアルキラー・橘カラ(菜々緒)は警視庁機動捜査隊員・猪熊夕貴(木村文乃)によって射殺された。しかし、何者かがカラに魅了されたデザイナー・渡公平(光石研)の別荘に放火し、売春婦のアイ(佐野ひなこ)とレナ(入山杏奈)の通報によって駆けつけた捜査官は脱出に成功した謹慎中の警察官・里見偲(松坂桃李)と猪熊を保護し、一体の焼死体を発見するにとどまった。逃亡中の天才・美容整形外科医・月本(要潤)の消息は不明である。

事件は決着した・・・かのように見えたが・・・色事師である里見は猪熊に対して違和感を覚える。

猪熊の性的技巧が・・・以前とは違っていたのである。

なにしろ、渡に大きく口を開かせただけで絶頂を・・・いや、何でもない。

自分が・・・意識不明であった一ヶ月の間・・・。

(なぜ・・・カラは・・・ユキを殺さなかったのか・・・)

恐ろしい可能性に気が付く里見・・・。

十和田幸は・・・橘カラに・・・整形手術によって変身した。

橘カラは・・・猪熊夕貴にも・・・変身できるのではないか。

もしも・・・猪熊夕貴が橘カラだとしたら・・・本物の夕貴はどこにいるのか。

そして・・・射殺された橘カラは誰だったのか。

(馬鹿な妄想だ・・・)

里見は沸き上がる疑惑をなんとか抑えようとする。

そこに・・・夕貴の養母・三樹(藤吉久美子)がやってくる。

「なんだか・・・あの子の様子がおかしいの・・・まるで別人のように感じる時がある。監禁のショックによるものか・・・とも考えたのだけれど・・・医師の処方していない・・・鎮痛剤を」

「鎮痛剤ですって・・・」

里見は・・・三樹に・・・夕貴の毛髪の採取を依頼する。

それから・・・自分の部屋を検索し・・・夕貴の毛髪を採取する里見だった。

二つの毛髪のDNA鑑定を依頼する里見・・・。

そして・・・夕貴にGPS発信器を仕込んだ合鍵を渡すのだった。

里見よりも回復の遅れている夕貴だったが・・・退院の日は迫っていた。

夕貴が本人であることを証明したい・・・里見。

DNA鑑定の結果・・・二つの毛髪は同一人物のものであることが高いことが判明する。

安堵しかけた里見に三樹が告げる。

「今・・・一緒に監禁されていたレナって子が来ているの・・・」

「レナが・・・」

「夕貴が・・・たこ焼きを食べているのよ」

「・・・なんですって」

たこアレルギーの夕貴は・・・たこを食べられないはずだった。

謎を解く手掛かりを求めて・・・里見は記憶をまさぐる。

「顔はそっくりだけど・・・なんだか違うような気がする」

その言葉を言ったのは十和田幸の同級生・・・良子(中島亜梨沙)だった。

「彼女の父親は自殺したけれど・・・彼女が殺したんじゃないかって噂があって・・・彼女・・・養女だっから・・・」

(養女・・・)

「私・・・養女だからね」

蘇る猪熊夕貴の言葉・・・。

サチとユキ・・・二人の養女・・・。

(まさか・・・)

里見は・・・橘カラの母校に向かう。

(なぜ・・・もっと早く・・・確認しなかったのだ)

里見は自分の無能さを呪う。

卒業アルバムに残る・・・十和田幸の顔は・・・猪熊夕貴にそっくりだった。

生活安全課の千歳弘子(山口紗弥加)は里見からの着信に気が付く。

「里見・・・また単独行動か」

「カラが生きている可能性があります」

「なんだって・・・」

里見から送信される十和田幸の卒業アルバムの画像。

「え」

「夕貴は養女でした・・・そして・・・十和田幸も・・・養護施設に問いあわせて・・・彼女が双子だったかどうかを・・・確認してください」

「・・・わかった・・・」

里見は証拠を求めて彷徨う・・・。

(あの橋の下・・・あれは・・・なにかの目印か・・・まさか墓標)

里見にGPS発信器を仕込んだ夕貴/カラ/幸は・・・追跡を開始していた。

張り巡らされた伏線を見逃したお茶の間のために回想しておこう。

カラの別荘を訪ねた夕貴は・・・カラが印象より小柄だったことに気が付く。

「あれ・・・カラさん・・・私と身長・・・そんなに変わらないのね」

「いつもは・・・ヒールの高い靴をはいているから・・・」

ちなみに・・・サチの回想シーンで養父(Velo武田)を殺害する中学生時代のサチを演じる原菜乃華は・・・ユキの中学生時代も演じている。

そして・・・夕貴も・・・カラも・・・格闘技を・・・。

夕貴と・・・カラ/幸は・・・双子の姉妹だったのである。

幸は・・・カラとなり・・・夕貴と再会する。

愛されて警察官となった・・・もう一人の自分に・・・虐げられてシリアルキラーとなった幸は執着する。

夕貴に注がれる幸の憧憬と羨望の眼差し・・・。

幸は・・・「失った何か」を見つけたのだった。

だが・・・河原の墓標の下に・・・白骨と眼鏡を発見した里見には・・・そのような洞察力はない。

ただ・・・消息不明の本物の夕貴の行方を案じ、焦燥にかられる。

そこへ・・・夕貴となった幸が現れる。

「里見くん・・・こんなところで何をしているの」

「カラは・・・ここにいた」

「・・・」

「夕貴はどこにいるんだ」

「馬鹿ね・・・私はここにいるじゃない」

しかし、幸は必殺のナイフを一閃する。

間一髪・・・里見は顔にかすり傷を受けたのみ。

「サチ・・・お前はカラの顔を奪った・・・今度はユキになりすまして・・・」

「・・・」

問答無用のサチの攻撃を防御する里見。

「ユキはどこだ」

「バカか・・・カラが埋まっている以上・・・ユキも埋まっているに決まっている」

「何・・・」

サチは里見の携帯に画像を送信す。

それは・・・埋葬されかけた猪熊夕貴の姿だった。

憤怒に燃える里見・・・。

「どうする・・・里見・・・芽生えた殺意を・・・お前は行動で示せるのか」

「お前を殺す」

「お前に人間が殺せるのか・・・人間には二種類あるんだぞ・・・」

「・・・」

「殺す人間と・・・殺される人間だ」

里見は攻防の果てにサチの首を絞めあげる。

そこへ・・・通りすがりのパトカーがやってくる。

女性を暴行中の不審者に対して威嚇射撃を行う制服警官たち。

里見は・・・仕方なく橋から飛翔する。

天使の特殊能力である。

普通の人間・・・(例)幸の父親・・・なら死亡するが・・・天使はふわりと着地できるのだ。

里見は暴行の現行犯として・・・県警に緊急手配された。

桜中央署刑事課長の安藤(船越英一郎)に公衆電話から通話する里見。

「猪熊は・・・殺害された可能性があります」

「・・・何を言っている」

「証拠をつかんだら・・・携帯から連絡します」

「待て・・・」

通話は終了した。

事情聴取を受けたサチはつぶやく・・・。

「里見・・・本気で殺す気だったな・・・」

幸の声は・・・夕貴そっくりである。

これはカラの顔を持っていた幸が・・・カラの声色を真似していたということである。

今や・・・幸は夕貴の声色を真似しているのだが・・・双子である以上、声質は本人とほぼ同じということになる。

県警から解放された幸を追跡する里見。

里見の殺意を悟った幸は逃亡のために・・・隠れ家を目指す。

幸の顔面に変化が生じていた。

月本を問いつめる幸・・・。

「これはどういうことだ・・・」

「皮膚が壊死している・・・」

「失敗したのか」

「僕は失敗なんかしないよ・・・君がやりすぎたんだ・・・大丈夫、時間があれば修復できる・・・僕の腕はゴッドハンドなんだから・・・」

そこへ・・・乱入する里見。

「なぜ・・・夕貴を殺した」

「夕貴の持つ・・・すべてを手にいれるためだ・・・」

「そんなことをしても・・・お前は夕貴にはなれない」

「夕貴を守ることもできなかった無能なお前に・・・何がわかるんだ」

羅刹天と化した里見は・・・幸の攻撃力を圧倒するのだった。

「そうか・・・これがお前の本気か」

「・・・」

幸は階上の隠し部屋へと逃げ込む。

階段を駆け上がる里見の前に・・・夕貴が姿を見せる。

幸は夕貴を身代わりとするつもりだった。

しかし・・・天使の嗅覚は監禁されて濃密となった夕貴の体臭を嗅ぎわける。

「夕貴・・・」

「里見くん・・・」

「死ね」

捨て身の攻撃によって階段を転げ落ちる里見と幸・・・。

しかし・・・夕貴の協力で里見は拳銃を入手する。

「お前は間違っている・・・自分のことしか考えない限り・・・お前は夕貴にはなれない」

「お前に・・・私の何がわかるというのだ・・・殺せ」

「里見くん」

里見は銃弾を床に撃ちこんだ。

幸は耳がキーンっとなった。

そこへ・・・里見が発信した携帯電話のGPS機能を追跡したチビデカこと速水刑事(北山宏光)が到着する。

「どけ・・・俺が手錠をかける」

「・・・」

「猪熊夕貴こと橘カラこと十和田幸・・・逮捕する」

「・・・」

「手柄立てちまえばこっちのもんだ」

速水刑事は連続殺人犯逮捕の功績により・・・警視庁捜査一課へのチケットを入手した。

現場に到着した猪熊文一(大杉漣)は娘とそっくりな犯人の姿に驚愕する。

里見の目にはカラに見える幸は・・・無言で連行される。

「里見くん・・・あなたを信じてあげられなくて・・・ごめんなさい」

「いいさ・・・君が生きていれば・・・それで・・・あぶなく人殺しになるところだったよ」

「一体・・・カラさんは・・・誰だったの」

「君の姉さんか・・・妹さ」

「え」

「おそらく・・・君が殺されなかったのは・・・彼女にとって・・・唯一の肉親だったからだ」

「それは・・・俺のセリフだろう・・・」

安藤警部は目を潤ませた。

「別荘の焼死体は・・・カラじゃなかったよ」

それは・・・カラにあこがれ・・・カラに洗脳され・・・整形手術によってカラに変身した格闘技愛好家のまひる(中別府葵)だった。

「それにしても・・・月本の・・・整形技術は凄いわね・・・」

千歳弘子はつぶやいた。

「そうだろう・・・だから・・・釈放してくれ・・・君を原節子にでも吉永小百合にでもしてみせる」

月本は連行された。

「養父・・・橘カラ・・・酒屋の店員・・・先輩キャバ嬢・・・連続殺人犯・・・整形マニア・・・その愛人の妻・・・そしてカラに整形したまひる・・・あの女・・・一人で・・・八人も殺してるのか」

「もっと・・・殺しているのかも」

刑事たちは震撼した。

里見と夕貴は・・・十和田幸の養母を訪ねた。

「サチ・・・」

認知症の養母はサチに土下座する。

「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい」

里見は心の中で幼いサチの悲鳴を聞く。

闇の中に木霊する無力なものの叫び。

世界を呪詛する嘆きの歌を・・・。

二人は公私両面に渡るパートナーとして機動捜査16号車に乗り込む。

「カラさんは・・・あなたのこと・・・好きだったんじゃないかな」

「え」

「双子って・・・同じものを好むって言うし」

「人間・・・遺伝だけでできているわけじゃないさ」

「だって・・・私・・・カラさんに勝てないのよ・・・その私に勝てないあなたが・・・どうして・・・カラさんに勝てたと思っているの」

「・・・」

「カラさん・・・いいえ・・・幸か・・・あの子は・・・私といる時・・・本当に楽しそうだった・・・そして・・・あなたには恋をしていたのよ」

「・・・推理ごっこか・・・」

「私はただそう思うだけ・・・私には分かる・・・だってあの子は私のたった一人の姉妹だもの」

スピーカーから事件発生の入電がある。

恋人たちはプライベートな会話を打ち切り・・・事件現場に急行した。

正義と復讐の女神は三人を静かに見守るのだった。

関連するキッドのブログ→第8話のレビュー

| | コメント (0) | トラックバック (7)

2015年12月15日 (火)

お寺の階段昇る~あなたに捧げるクリスマスツリー(山下智久)お見合い結婚してさしあげます(石原さとみ)

クリスマスイブの早出しである。

まあ・・・すでにクリスマス気分の季節で・・・ただし、キッド的にはスターウォーズ一色の気配が漂っている。

なにしろ・・・1983年の「スター・ウォーズジェダイの帰還」(エピソード6)の続きである。

「つづく」から32年って・・・どんだけ待たせるんだ・・・絶対死んだ奴がいるぞ。

そういう意味では一週間後に続きが見れる連続ドラマは良心的なシステムと言える。

「がんばれ・・・あと一週間で最終回だ・・・」

病床の誰かに誰かが励ましの言葉を告げる。

誰もが最終回を見られるわけではない。

最終回を見られる幸せというものはあるのだ。

「クリスマスイブ」の約束は果たされた・・・聖なる恋の成就・・・まあ、お見合い結婚ですけれど~。

で、『5→9〜私に恋したお坊さん〜・最終回(全10話)』(フジテレビ20151207PM9~)原作・相原実貴、脚本・小山正太、演出・平野眞を見た。由緒正しい一橋寺の次期住職候補・星川高嶺(山下智久)は色恋とは無縁のシンデレラ。英会話学校ELAの講師・桜庭潤子(石原さとみ)は家族に恵まれ、仕事にも恵まれたロマンスの王子様である。二人のイチャイチャぶりがひたすら楽しいこのドラマだったが・・・ラブ・ストーリーの王道で最終回直前の別離である。もちろん、これは「手」なのであって・・・そのために「見どころ」が封印されるのは痛し痒しだが・・・ハッピーエンドを迎えるためには必要不可欠なんだな。もちろん・・・そうでない「手」もあるが・・・たまにはこのようにストレートを投げ込んでもらいたいのである。初めてラブコメを見る人だっているんだから・・・。そして直球にはそれなりに魅力があるのだ。

桜庭潤子はニューヨークの象徴とも言える清宮真言(田中圭)の元に帰還するが・・・憧れの清宮に抱きしめられても反応しない。

なぜなら・・・潤子はもはや・・・高嶺を心から愛しているのである。

一方・・・一橋寺に戻った高嶺は別離の一因となった弟の星川天音(志尊淳)に「まるで死んだ人間のような顔をしている」と告げられる。

なぜなら・・・潤子と別れることは・・・高嶺にとってすべてを失うことなのである。

高嶺と潤子は・・・二人でイチャイチャしないと生きていけない病に侵されているのだった。

まあ・・・男と女がイチャイチャすることは・・・大自然のルールのようなものだからな。

男と男や、女や女でイチャイチャするのはどんなルールにも例外があるということにすぎない。

イチャイチャは基本的に腐っても鯛だ・・・意味不明だぞ。

さて・・・二人のイチャイチャはどうなってしまうのか・・・。

愛の試練篇の開幕である。

潤子は退職届を提出していたのだが・・・潤子側のキーパーソンである高宮はこれを受理しない。

潤子は「高嶺との別離」によって・・・「ニューヨーク行きの夢」を取り戻す。

木村アーサー(速水もこみち)や・・・山渕百絵(高梨臨)は潤子の職場復帰を祝う。

「潤子さんが戻ってくれるなんて・・・ふってくれた星川さんに御礼を言いたいくらい」

事務員の伊能蘭(中村アン)は空気が読めないフリを装って核心を突くのだった。

仕事ではイチャイチャの喪失をカバーできないと指摘したのである。

イチャイチャは宇宙よりも貴いのである。

立ちすくむ一同だった。

桜庭の母である恵子(戸田恵子)は足音で娘の変調を見抜く。

「だから今夜はアジフライよ」

「・・・」

「お姉ちゃん、カニの次にアジフライが好きだもんね」

妹・寧々(恒松祐里)はおそらく・・・毛利まさこ(紗栄子)→蜂屋蓮司(長妻怜央)→里中由希(髙田彪我)というラインで・・・すでに姉の失恋を察知しているのだ。

それにしても、第一位カニ、第二位アジフライってどうなんだよ。

・・・っていうか、潤子、百絵、まさこって・・・中三トリオか。

あぶなく、忘れるところだったな。

イチャイチャの欠損をそこそこの笑いで凌ぐ・・・ラブストーリーの苦しさよ。

「こういう時には・・・高嶺くんに来てもらいたいわね」

母もまた・・・寧々から情報を得ているはずだが・・・素知らぬフリをしている。

そこへ・・・高嶺がやってくるのだった。

父・満(上島竜兵)も含めて総出で出迎える桜庭ファミリー。

しかし・・・潤子だけはアジフライに逃避するのだった。

「え・・・別れた・・・」

まるで初めて知ったように大袈裟にリアクションする母娘・・・しかし、初耳の父はショックを受けるのだった。

「申し訳ありません・・・」

高嶺は・・・悄然として去って行く。

「俺が・・・一言いってやる」

父は高嶺を追いかける。

「高嶺君・・・呼びとめてごめん」

「いえ・・・」

「寒くないかい・・・」

「いえ・・・」

「こういう時は・・・銭湯に行きたいね」

「・・・」

「我が家は・・・女三人だから・・・みんなで銭湯に行っても男湯に一人なんだ・・・高嶺くんが来てくれたら・・・一緒に入れたのになあ・・・入りたかったなあ・・・」

「・・・すみません」

揺れる高嶺の心・・・。

桜庭家の父・・・名演じゃないかっ。

一橋寺で・・・天音は旅支度をしている。

「結局・・・兄貴には勝てなかった・・・僕は京都に帰るよ」

「帰る必要はありません・・・」

「え」

「私は潤子さんに家族があることの幸せを教えてもらった・・・そんな私が・・・家族であるあなたをないがしろにはできません・・・お祖母様がなんと言おうと・・・これからはこの寺で一緒に修行に励みましょう」

「兄ちゃん・・・」

その一言で天音は会心し、改心し、回心するのだった。

このドラマにおいて・・・邪悪な妄執によって生きながら地獄に落ちているのが星川ひばり(加賀まりこ)であることが明らかになる。

ひばりは・・・生老病死の苦に囚われ、人の心を忘れている鬼婆なのである。

もう少し・・・ひねってもよかった気もするが・・・潤子と天音の顔立ちがどことなく似ていることはこのドラマの重要な伏線なのだ。

ひばりが天音を京都に追いやったことと・・・潤子が忌み嫌われることは・・・同じ源泉に発しているのである。

さて・・・シンデレラは魔法によって王子様のハートを射止めるわけだが・・・そのたぐいまれなる仏の道への邁進によって生じた高嶺の法力の功徳は潤子の心に点火したと同時に・・・高嶺のハートにも火をつけている。

潤子への思いを封印すればするほど・・・身体が火照って火照って仕方ない高嶺だった。

滝行で心頭滅却を図れども流水が蒸発する勢いなのである。

単なるお茶の間サービスだろうがっ。

潤子の入浴サービスはタイトルのセルフサービスだが・・・笑いを堪えているっぽい表情が沁みるのだ。

姉の心を察した妹は・・・「高嶺と潤子の仲直り大作戦」を発する。

初めての友達に尽くしたい百絵は・・・アーサーを動かし・・・アーサーは一席設けるのだった。

恋愛マスターであるまさこは尋ねる。

「やり残したことはないの」

「・・・」

「やることはやっとかないと・・・後悔するわよ」

「後悔と言っても・・・ただ・・・せっかく作ったお弁当は食べてほしかったかな・・・」

「ち」

レベル中学生に舌うちする恋愛マスター。

しかし・・・「食」に関することだけに即座に反応する美食マスターだった。

アーサーにそんな設定ないだろう。

・・・基本属性です。

なんかの種族なのかっ。

「まさに天啓・・・それで・・・いきましょう・・・」

「へ」

三嶋聡(古川雄輝)は涙やら涎やらをこらえた。

アーサー監修の・・・やはり特殊技能なのか・・・特製弁当を仕上げた潤子は・・・独身仲間たちに背中を押され・・・一橋寺特攻を敢行する。

おりしも・・・唯一の恋のライバル・・・足利香織(吉本実憂)が高嶺と同行中である。

このドラマでは一番の被害者である足利香織だが・・・東十条司(東幹久)にだって何の罪もないのだ。しいて言えば・・・ライバルを殺さなかったことが悪い。わかる奴だけわかればいい禁止。このドラマのヒロインは高嶺なので・・・香織は東十条ポジションに配置された不運を嘆くしかないのだった。

すでに・・・高嶺のストーカーと化した潤子は・・・手作り弁当アタックである。

しかし・・・潤子の存在を無視してスルーする高嶺。

潤子を眼中に入れたら「嫌いな嘘をつき続ける自分自身」が崩壊する高嶺だった。

匂い立つ二人の関係に圧倒される香織・・・。

立ちすくむ潤子を救うのは・・・仏の道に目覚めた天音である。

「憐れなものですね」

「・・・」

「拙僧が有り難く頂戴いたします」

「ありがとう・・・持って帰るのも・・・アレだったから・・・助かったわ」

「恋文なども・・・供養いたしますよ」

「・・・」

「信じるものは救われる・・・この世のすべては汚れているとも清らかであるともいえない。あなたが伝えたいと願うものは・・・必ず伝わるのです」

「お坊さんみたいなことを・・・」

「如来の本願が救済である以上・・・人はみな他力本願でしか救われないのです・・・御仏の慈悲を疑えば年賀状を投函することもできない」

「・・・お願いします」

天音は託された潤子の手紙を高嶺に渡すのだった。

三嶋は学生時代からの友人として潤子に尽くす。

「あきらめるなよ」

「でも・・・相手に嫌われたら・・・どうしようもないよ」

「そんなの・・・自分が傷つくことを恐れる人間の言いわけさ」

「・・・」

「俺がそうだから・・・間違いない」

「・・・」

「俺はせめて・・・自分の好きな人には幸せになってもらいたいんだ」

「三嶋・・・」

「俺なりにライバルのことは研究したつもりだ・・・あの人は・・・こういうのが好きだと思う」

「三嶋・・・研究の方向が間違ってるよ」

潤子は「東京自然史博物館」(フィクション)のチケットを入手した。

三嶋のお膳立てにより・・・高嶺は呼び出され・・・仲間たちは総力をあげて・・・潤子と高嶺の「はじめてのデート」を成立させる。

とにかく・・・そこは・・・超不人気スポットであるらしい・・・数年間の常設展示で入館者数が3333人だからな。

一日・・・二~三人くらいだぞ・・・。

閑散とした場内・・・。

「こういうところ・・・興味なかったですか」

迸りだす・・・高嶺の潤子への思い・・・。

「説明して差し上げましょう・・・私はこの施設の常連です」

「ぇ」

「自然の営みを察することは・・・真理への道にとって大切なのです」

「ぇぇ」

「カマラサウルスは空洞を持つトカゲという意味の学名です。体重は二十トンですがジュラ期後期の恐竜としてはそれほど大型とは言えず・・・それが繁栄した理由であるという学説もあります」

「ぇぇぇ」

「潤子さんこそ・・・楽しいですか」

「楽しいですよ・・・あなたとなら・・・どこにいても・・・何をしていも楽しいです」

「・・・」

「あなたが・・・そう・・・私に言ってくれたのではないですか」

「・・・忘れました」

「一生離さないって」

「・・・記憶にありません」

潤子必殺のあすなろ抱き攻撃に耐える高嶺・・・。

「この恐竜・・・なんていう名前ですか・・・いつ頃生きていたのかな・・・何を食べていたんですか」

「・・・」

背を向けて涙をこらえる潤子から目をそらす高嶺。

そこへ・・・警備員がやってくる。

「閉館時間です・・・」

「あと・・・五分だけ・・・お願いします」

「・・・」

高嶺は五分以上、我慢する自信がなかったのだ。

「高嶺さん・・・お茶しませんか」

「・・・」

「最後に一つだけお願いがあります」

「何でしょう」

「あなたの笑顔を見せてください」

しかし・・・高嶺は笑うことができないのだった。

「・・・ごめんなさい・・・もういいです」

「・・・」

「星川さん・・・私の誕生日に迎えにきてくれてありがとう・・・とてもうれしかった・・・一緒に回転木馬にのれなくて・・・ごめんなさい・・・」

「・・・」

「もうお会いしません・・・さようなら」

父はタクシーで迎えに来た。

「お父さん・・・だめだったよ」

「そうか」

「でも・・・あの人・・・優しかった」

「そうか」

「私・・・あの人の・・・優しいところが・・・好きだったの」

「そうか」

桜庭家の父・・・名演過ぎるじゃないかっ。

閉館時間なのに・・・冬なのに・・・外が明るすぎるという皆さまへ。

閉館時間が午後三時なのです。

不人気施設だからな・・・。

それよりも涙で前が見えないタクシードライバーに歩行者は注意するべきだよな。

潤子は正社員になるための試験にエントリーする。

高嶺は潤子の記憶を封印し・・・修行に励む。

香織は高嶺の手を握ろうとするが・・・高嶺はそれを修行の妨げと感じる。

東十条司(東幹久)に何の罪もないように香織にも罪はない。

しかし・・・この世に罪など何一つもなくても香織は高嶺に受け入れてもらえない。

そこには恐るべき秘密が隠されているのだ。

寺田光栄(小野武彦)は高嶺に詫びた。

「お前には・・・人を愛する心を知ってもらいたくて・・・お見合いを・・・」

「・・・」

「すまなかった」

「よろしいのです・・・私は・・・潤子さんと恋をして・・・人を愛する喜びを知りました・・・仏に仕えるものとして・・・それを知ることは・・・大切なことでしょう・・・しかし、私は決めたのです・・・こんな苦しい思いをするくらいなら・・・もう二度と恋をしないと・・・」

「・・・」

高嶺は最後に・・・潤子の周囲の人々に礼状をしたためる。

「ご温情に感謝します・・・桜庭潤子さんを介してあなたに出会えたことは生涯の喜びでした・・・」

心温まる手紙を受け取った人々は・・・何かをせずにはいられないのだった。

一橋寺に結集する・・・高嶺に感謝された人々・・・。

「こちらこそ・・・」

彼らは高嶺の感謝状を空に捧げた。

「君に会えてよかったよ・・・」

香織は心を決める。

「高嶺様・・・私は・・・総本山の方とお見合いいたします」

「・・・」

「今度こそ・・・私を愛してくれる方と出会いたい・・・」

「香織さん・・・ありがとう」

潤子は試験に合格した。

研修のために渡されるニューヨーク行きのチケット・・・。

光栄はひばりに直訴する。

「高嶺は・・・また・・・笑うことを忘れてしまいました」

「・・・」

「あなたは・・・それで・・・本当によろしいのですか」

天音がひばりに手紙を届ける。

「あなたにとって・・・不出来な孫の・・・最期のお願いです・・・どうか・・・この手紙をお読みください」

天音は・・・潤子の手紙を・・・ひばりに届けた。

高嶺さん・・・あなたの笑顔が私は好きです 

クリスマスもお正月もお盆もあなたの側にいたい 

いつでもあなたの笑顔が見ていたい 

いつか・・・その願いが叶うことを・・・私は信じています 

その日が来るのを私はいつまでも待ち続けます

ひばりは天を仰ぐ。

清宮は桜庭に声をかける。

「桜庭さん・・・もうすぐ出発だね・・・星川さんのことはもういいのかい」

「・・・」

「星川さんから・・・お礼状が届いたんだ・・・一緒に銭湯に入っていただきありがとうございました・・・僕のアドバイスに報いることができず、君を泣かせてしまったことを僕に何度も詫びている・・・僕だけじゃない・・・星川さんは・・・君に言いたいことをみんなに言ってる・・・本当に変な人だ」

「私も・・・あの人のおかげで・・・自分の家族や・・・自分の職場が・・・大切なものであることを知ることができました。ここではないどこかではなくて・・・ここで自分が・・・とても幸せであることを・・・」

「君は・・・いつか・・・あの人に会えると思っている・・・でもね・・・人は必ずしも・・・会いたい人に会えるとは限らない・・・僕の妻は・・・死んだ・・・いくら会いたくても・・・もう会うないんだよ」

「・・・」

田中圭は最近死ななくなったという噂があるが・・・ここでは妻が死んでいるのだった。

「君は・・・会いたい人に会うべきだ・・・何度でも」

「・・・」

大切な人間を失うことは辛いことである。

あらゆる宗教が・・・根源的な・・・苦しみからの解放を目指していると言うこともできる。

そこにあるのは・・・生と死の問題である。

この物語の二人のキーパーソンは同じ悲しみを抱えている。

清宮は愛する妻を失った。

そして・・・ひばりは・・・。

逡巡する潤子の前に・・・もう一人のキーパーソンが現れる。

「お祖母様・・・」

「潤子さん・・・人の好みは十人十色というでしょう」

「はあ・・・」

「美人じゃなくても・・・女が結婚できるのは・・・男が美人からだけ生まれてくるわけじゃないからよ」

「え」

「男にとって・・・最高の美人は・・・母親なのよ」

「ええ」

「だから・・・母親に似ていれば・・・誰でも美人になれるわけ」

「えええ」

「私・・・あなたを見た時に・・・なぜ・・・高嶺があなたを好きになったのか・・・一目でわかったの」

「・・・」

「あなたは・・・息子の嫁・・・つまり・・・高嶺の母親にそっくりなのよ」

「え」

「だから・・・私はあなたが・・・嫌いだった」

「ええ」

「あの女は・・・寺の生活に馴染めず・・・家出して・・・息子は・・・あの女を迎えに行って・・・その帰りに事故を・・・」

「えええ」

「どれだけ・・・あの女のことを憎んだかしれない・・・でもね・・・あなたを見ていて気がついた・・・あなた・・・私の若い頃に・・・そっくりよ・・・」

「・・・えええええええええええ」

「結局・・・男なんてみんなマザコンなのよ」

「はあ・・・」

「だけど・・・あなたは・・・あの女とは違う人間・・・私があの女と違う人間であるように・・・私はあなたに寺の嫁になれとは言いません・・・でも・・・高嶺の嫁になることは許します」

「・・・」

「お行きなさい・・・高嶺は一橋寺であなたを待っている」

潤子は走る。

クリスマス・イブの街を・・・。

まさこは高校生にプロポーズされる。

アーサーは百絵のためにルシファー様を演じる。

寧々はホームパーティーに男装の里中由希を招く。

三嶋は一人で朝までスター・ウォーズである。

僧侶たちはクリスマスパーティーを・・・。

イエスは述べる。

「罪なきものはこの罪人に石もて報いよ・・・しかし罪の有無を決めるのは神である」

シッダルタは告げる。

「善悪など人に決めることはできない・・・すべては仏の慈悲の元にただ還るのだ」

すべての教えは・・・人にイチャイチャを許しも禁じもしない。

イチャイチャしなければ・・・終わる・・・それだけなのだ。

潤子は一橋寺にそびえ立つ巨大なクリスマスツリーを見上げた。

「高嶺さん・・・」

「潤子さん・・・私はお約束しました・・・クリスマスツリーの下で記念撮影をすることを・・・」

「檀家の皆さんの・・・浄財をこんなことに・・・」

「檀家の皆さんの浄財で・・・婚約指輪も買ってしまいました」

「高嶺さん・・・指がしもやけになっているじゃないですか」

「暖冬なのに奇跡的に寒波が」

「徹夜でツリーを飾りつけていたのね・・・」

「潤子さん・・・私の酷い仕打ちをどうか・・・許して下さい・・・そして、私と結婚してください」

「許しません・・・」

「・・・」

「一生かけて償ってもらいます・・・あなたと結婚してさしあげます」

見つめ合う二人。

渾身のホワイトクリスマスが・・・最期の寸止めキスを達成する。

「潤子さん・・・私に・・・どうして潤子さんが好きになったのか・・・お尋ねになられましたね」

「あ・・・それ・・・もういいです」

「いいえ・・・私は言いたいのです・・・潤子さんのすべてが・・・好きだと・・・」

潤子は高嶺にキスをした。

サンタがママにキスをするように・・・。

潤子は高嶺の妻となり・・・ニューヨークに旅立つことになった。

「ほら・・・急がないと飛行機が・・・」

「待ってください・・・急いては事をし損じます」

「そんなこと言って出発前に入籍したいってあなたが言うからこんな時間に・・・」

「印鑑が見つからなかったのです」

「ハンコなんて百均のゴム印で充分なんです」

「ヒャッキンとはなんですか」

「そこからかよっ」

潤子は澄み渡る青空の下、唇で高嶺の口を封じた。

「・・・」

「さあ・・・行きますよ」

「・・・もう一度、お願いします」

「だから・・・時間がないんですって・・・」

二人のイチャイチャを世界が祝福する。

ずっと見ていたいと思うから・・・。

お茶の間の初心者の皆さん・・・これがラブコメです。

素敵でしょう?

関連するキッドのブログ→第9話のレビュー

59010ごっこガーデン。神と仏の忘年会会場セット。

エリ「さあ・・・それでは年末イチャイチャしまくる大会を開始します。クリスマスツリーの前でイチャイチャからスタートでス~。この後、おこたでイチャイチャ、ドライブでイチャイチャ、ゲレンデでイチャイチャ、遊園地でイチャイチャ、クラブでイチャイチャ、雪山遭難イチャイチャとイチャイチャ三昧をするのでしゅ~・・・じいや・・・次はハワイでイチャイチャのスタンバイよろしくお願いしまス~。イチャイチャしてイチャイチャしてイチャイチャしまくるのでス~・・・グフフ

| | コメント (10) | トラックバック (9)

2015年12月14日 (月)

降る雪や明治は遠くなりにけり・・・昭和六年三月事件未遂(井上真央)

楫取美和子は天保十四年(1843年)に生まれ大正十年(1921年)に死去する。

八十年に足らない人生で天保、弘化、嘉永、安政、万延、文久、元治、慶応、明治、大正と十の元号の時代を生きたのだった。

吉田松陰の妹・杉文は・・・久坂玄瑞の妻・久坂文となり、未亡人となって久坂美和を名乗り、姉の夫の後妻となって楫取美和子となる。

波乱万丈の人生だったが・・・その事跡はあまりにも不明である。

いわば・・・歴史の影のような存在なのである。

脚本家たちは・・・影に物語性を与えようとして試行錯誤し・・・結局、ゴール地点を楫取夫妻の成立に決めた。

その最終形態は・・・一分の隙もない超絶的な善男善女である。

その結果・・・歴史の矢面に立たされ・・・善悪の境界線で懊悩した歴史的人物たちは・・・憐れなほどに卑小化され、あるいは消滅させられる。

たとえば・・・伊藤博文は明治天皇から国の行く末をたくされ・・・まがりなりにもそれをやりとげた人間である。

かっては肖像が千円札に刻印されたほどの人物だ。

吉田松陰の門弟である伊藤博文は師・吉田松陰の妹に対して敬意を払ったかもしれないが・・・それ以上に吉田松陰の妹は・・・卑賤の身から国家の重鎮にまで成り上がった兄の弟子にもう少し敬意を払うべきだろう。

世界の公共放送を目指す制作企業が・・・日本国を敵視する隣国に配慮し・・・朝鮮半島出身のテロリストに暗殺される「彼」について深入りしないことを目指しているにしてもだ。

テロリストの兄とテロリストの夫を持ちながら最期は特権階級に属した女の一生。

もう少し・・・面白おかしく描くことができなかったかと・・・思う今日この頃である。

美和子の死後・・・関東大震災、昭和恐慌、日中戦争、太平洋戦争と大日本帝国は坂道を転げ落ちて行く。

で、『燃ゆ・最終回(全五十話)』(NHK総合20151213PM8~)脚本・小松江里子、演出・渡邊良雄を見た。例によってシナリオに沿ったレビューはikasama4様を推奨します。最終回も年末年賀状体制発動のためにイラスト描き下ろしはお休みです。画伯、そろそろフィニッシュなさいましたかな。来年は戦国絵巻・・・キッドは脚本家についてはそれほど高く評価していませんが一部お茶の間の期待は高まるばかりなのですな。タイトルから妄想すると・・・慶長十九年(1614年)の大阪冬の陣における十二月四日の真田丸の戦いの前後五十時間を描く感じでしょうかね。・・・なわけあるか~いっ。まあ・・・守備側の真田信繁や攻撃側の前田利常の回想シーンをもりこんで・・・十二月四日を全五十話で描き切るのかもしれませんな・・・なわけあるか~い。まあ・・・冗談はともかく・・・キッドはくのいち・きりの入浴シーンだけはきっとあると信じて来年を待ちたいと考えます。一年間、素晴らしい描き下ろし作品の数々ありがとうございました。来年もあくまでマイペースでお願い申しあげまする。

Hanamoe50明治十七年(1884年)五月、群馬県北甘楽郡で農民による自由民権運動が激化、妙義山麓陣場ヶ原で蜂起が発生し、群集は松井田警察分署を襲撃、高利貸岡部為作邸を打ちこわした。政府転覆を図る不平分子たちの武装蜂起の先駆となった事件である。七月、群馬県令・楫取素彦は辞任。後任は山口県出身の佐藤與三である。明治二十三年(1890年)、吉田松陰の母・瀧が死去。明治二十五年(1892年)、楫取素彦が華浦幼稚園を設立。明治二十七年(1894年)、日清戦争勃発。明治二十九年(1896年)、台湾で芝山巌事件が発生し、楫取道明が惨殺される。明治三十年(1897年)楫取素彦が明治天皇第十皇女・貞宮多喜子内親王の御養育主任となる。明治三十二年(1899年)、貞宮多喜子内親王夭折。明治三十七年(1905年)、日露戦争勃発。明治四十二年(1909年)、伊藤博文、朝鮮民族主義活動家の安重根に暗殺される。大正元年(1912年)、楫取素彦死去。大正三年(1914年)、第一次世界大戦勃発。大正十年(1921年)五月、ココ・シャネルが香水「NO.5」を発売する。七月、上海で中国共産党が創立される。九月、楫取美和子死去。十一月、鉄道労働者・中岡艮一が原敬首相を暗殺する。恩赦により出獄した中岡は後にムスリムに改宗する。

群馬における暴動の背後に反政府忍者の存在を探知した美和は・・・毛利忍びを率いて討伐に出動する。

追い詰められたのは紋次郎と名乗る侠客だった。

「神妙にお縄につけ・・・」

「ふふふ・・・毛利のくのいちか・・・もはや・・・これまでじゃ・・・」

相手が観念したとみた佐助が進み出るのを美和が制する。

「待て・・・うかつに近付くな」

「風魔流秘術・・・凩(こがらし)・・・」

突然、周囲に旋風が巻き起こった。砂塵にまぎれて風魔手裏剣が佐助を襲う。

しかし、佐助は見切りの術でそれをかわした。

銃声が響く。

美和は拳銃を発砲していた。

「くそ・・・新政府の雌犬が・・・お・・・お主は・・・千里眼か・・・」

「なに・・・」

「見える・・・私にも・・・見える・・・お主は心に鬼を飼っている」

「なに・・・そなたも天知通の術を・・・」

「おお・・・恐ろしや・・・護国の鬼じゃ」

「なんじゃと・・・」

しかし・・・風魔の紋次郎は絶命していた。

死の床で美和子はあの日の出来事を思い出す。

あれから・・・美和子は平穏な日々を過ごしてきた。

国外では兵士たちが山に海に屍を晒していたが・・・皇国の御世は安泰だった。

美和子はすでに悟っていた。

美和子は単なる観相者ではなかったのだ。

吉田松陰は死にあたり・・・美和子の精神に転移し・・・美和子の精神を通じて・・・政治を操っていたのである。

美和子が他者の心を覗くことは・・・松陰が他者の心を導く行為でもあった。

美和子の心に救う松陰の神霊は・・・松陰の祈願する未来へと・・・軌道修正を行っていたのだった。

松陰に導かれた民草は・・・圧倒的な神がかりによって・・・絶対に勝てない戦を・・・勝利してきたのだった。

松陰に囁かれた為政者たちは・・・薄氷の勝利を刻み続ける。

ミカドが代替わりしてからの・・・世界の大戦も無事に乗り切った。

しかし・・・松陰の魂が憑依した・・・美和子の肉体も朽ちようとしている。

美和は朧げになる意識の中で・・・懐かしい兄の気配を感じる。

その・・・冷酷でありながら・・・灼熱の輝き・・・。

(兄上・・・)

呪われた護国の鬼は・・・解き放たれた。

美和子は虚無の中に消える。

関連するキッドのブログ→第49話のレビュー

反省会場はコチラへ→くう様の【花燃ゆ】第50回 「いざ、鹿鳴館へ」感想(最終回) ツイッター「花燃ゆ反省会会場」まとめ

| | コメント (4) | トラックバック (6)

2015年12月13日 (日)

愛すべき忘却探偵(新垣結衣)あなたが忘れてしまっても僕が覚えていますから(岡田将生)

忘れられない人に毎日忘れられるという・・・せつなさののクライマックスである。

あなたのこと・・・一生忘れない・・・と言われてその気になって・・・はじめまして・・・と言われるのだ。

しかし・・・まあ・・・多くの人間にとって・・・そんなに珍しいことではないよね。

あなた・・・誰だっけ・・・なんて言われるのは日常茶飯事である。

生まれた病院の・・・保育園の・・・幼稚園の・・・小学校の・・・中学校の・・・高校の・・・大学の・・・職場の・・・すべての人間の顔と名前を記憶している人の方が珍しいだろう。

そういう人間から見れば・・・多くの人間は・・・記憶力がなさすぎるのだ・・・。

一度会った人のことは絶対忘れません・・・そういう人に・・・忘れちゃってごめんと謝罪したい。

とにかく・・・もしも・・・明日、私がすべてを忘れても・・・私のことを忘れないでいて・・・なんて・・・ガッキーじゃなかったら・・・誰が言えるんだ。

で、『掟上今日子の備忘録・最終回(全10話)』(日本テレビ20151212PM9~)原作・西尾維新、脚本・野木亜紀子、演出・佐藤東弥を見た。大前提として・・・殺人事件の犯人で結納坂仲人でもあり澤野信二でもある謎の男(要潤)は同性愛者である。そうとでも考えないといろいろと辻褄が合わないし、重要なシーンが省略されすぎているようでモヤモヤするので妄想的には断定しておきます。そこは重要じゃないだろうがっ。

目が覚めた澤野里美/掟上今日子(新垣結衣)は見知らぬ天井を見る。

見知らぬ部屋・・・見知らぬベッド。

習慣的に「身体」をチェックするがそこには何もない。

(何があると思ったんだろう)

自分自身への置手紙について・・・彼女は忘却している。

テレビの前のメモに従い・・・彼女は映像音声メディアを再生する。

「おはよう・・・きっと君はとまどっているだろう。君は眠ると記憶がリセットされてしまう障害を持っている。君が昨日だと思っている日は・・・もう何年も前のことだ。僕は君がそうなってしまってから君と出会い・・・君と結婚した・・・僕は澤野シンジ・・・今の君は澤野サトミだ・・・大変だと思うけど・・・一緒に頑張ろう」

薬指にはウェディングリングのようなものが嵌っている。

彼女の中に疑惑が浮かぶ。

(このサイズ・・・)

キッチンには見知らぬ男がいる。

「おはよう・・・サトミ」

「おはようございます・・・シンジさん」

彼女の中に警戒感が広がる。

「メッセージを見てくれたんだね」

「まるで自分のこととは思えませんでした」

「だけど・・・僕たちは夫婦なんだ」

「料理はあなたが・・・」

「朝食は僕が担当・・・僕が仕事にでかけたら・・・君は自分で昼食を食べ・・・夕食は君が作ってくれる。それから部屋の掃除と洗濯も・・・」

「私は専業主婦ですか」

「君が・・・外で仕事をするのは難しいから・・・また・・・行方不明になられても困るし」

「そんなことがあったんですか」

「君を見つけるまですごく・・・不安だったよ」

「・・・」

その男とウエディングドレスを来た彼女の写真が飾られている。

(嘘くさい・・・)

まるで合成写真だと彼女は思う。

「夕食は肉じゃがが食べたいな」

「私が作るの・・・」

「料理が上手になりたいと言っていたじゃないか・・・」

「・・・」

「外出する時はウイッグを忘れずにね」

「必要ですか」

「目立ちたくないからと言っていたじゃないか・・・」

「・・・」

「それじゃ、行ってきます」

「いってらっしゃい」

男が出かけると彼女は家の中を調査する。

書棚には「記憶」に関する本が並んでいる。

「記憶障害」について男が彼女のために勉強していた風な痕跡・・・。

冷蔵庫には・・・食材が満載されている。

肉とじゃがいもを取り出してみたが・・・触発されるレシピのようなものはない。

(肉じゃが・・・って何味なんだろう)

玄関に施錠はされておらず・・・監禁されているわけではない。

(自由・・・)

彼女はとりあえず外出してみた。

お惣菜屋さんで「肉じゃが」を二人分購入。

書店で・・・「サル」シリーズを見かける。

(サルでもできる簡単レシピ・・・サルは料理しないだろう)

ふと・・・ポスターに目が止まる。

「名探偵めい子劇場版・・・リバイバル上映中」

彼女は劇場に向かい・・・十日前の掟上今日子の失踪以来・・・劇場を張り込む隠舘厄介(岡田将生)に遭遇するのだった。

看板を眺めている黒髪の今日子に厄介は声をかける。

「今日子さん・・・掟上今日子さん・・・」

「オキテガミ・・・キョウコって誰ですか?」

「探偵の掟上今日子さんでしょう」

「ナンパなら・・・もう少し気のきいたセリフを」

「・・・」

思わず今日子の腕のメモを確かめる厄介。

しかし・・・そこは空白だった。そこにはただ今日子の腕があるだけ・・・。

「何をするんですか・・・しつこい上に・・・乱暴な人ですね」

今日子に威嚇され・・・たじろぐ厄介。

「帰ります・・・主人が待っているので」

今日子に薬指の指輪を示されて唖然とする厄介。

だが・・・厄介はワトソンとして修行している・・・諦めきれずに尾行を開始する。

しかし・・・探偵である今日子にとってそれは児戯に等しい。

「なんだって・・・男に尾行された・・・」

「近所の公園まで・・・でもまいてやったわ」

「・・・」

夫と名乗る男の顔色が変わる。

「明日は・・・家を出ない方がいいんじゃないか」

「明日は・・・映画を見に行くつもり」

「映画・・・」

今日子は腕のメモを見せる。

名探偵めい子 リバイバル上映 シネトピック

そのメモは翌朝消えていた。

今日子に夫を名乗る男が言う。

「昨日・・・君に本を買ってきたよ」

「まあ・・・須永昼兵衛の・・・」

「今日は読書をしたどうだろう」

「でも・・・これ・・・シリーズが一冊抜けているわ」

「じゃあ・・・明日・・・買いに行こう」

「明日・・・」

厄介は・・・探偵斡旋業も営むアパルトマン「サンドグラス」のオーナー・絆井法郎(及川光博)に今日子そっくりの女に会ったことを話す。

「今日子さんが・・・結婚していた・・・と」

「もう一度・・・公園に行ってみるつもりです」

「でも・・・おかしいよな・・・実業家・態条空真が死んでから・・・急に今日子さんがいなくなって・・・」

潜入捜査員の也川塗(有岡大貴)が顔を曇らせる。

「あれ・・・ヌルくんが・・・推理してるよ」

ウエイトレス・幕間まくる(内田理央)は面白がるのだった。

「しかし・・・君たちもそろそろ今後のことを考えないとね・・・サンドグラスを僕がいつまでも維持するのは無理だし・・・」

キズ・ナイ・ホーローはクールに弱音を吐く。

だが・・・今日子ロスでカレーを五人前テーブルに並べてしまうのだった。

厄介は今日子との出会いからの日々を綴った「Kの備忘録」をプリントアウトした。

苦境から救いだしてくれた今日子。その美貌と天才的な頭脳に魅了された厄介。

今日子がスピード解決した事件の軌跡。今日子がいついかなる時も厄介の賞賛の対象であったこと。

そこには今日子の失った昨日が保存されている・・・。

厄介の口説きをパスする時も・・・守銭奴の時も・・・舌打ちさえも・・・かわいいよ、今日子かわいいよな厄介だった。

何度も不運に見舞われて今日子に救われ続ける厄介にしか記録できない愛の賛歌・・・。

いざとなったら・・・これを読んでもらおう・・・。

君の名前は里美。一度眠ると記憶がリセットされる。

今日子はメッセージを読む。

違和感があふれる夫婦生活。

(何かが足りない・・・)

「家にいるのが退屈ならば・・・猫でも買おうか」

「猫を飼います」

近所の公園で猫に心を奪われる今日子。

「君は・・・猫かな」

猫と今日子の戯れる姿を見た厄介は足を速める。

「きょ・・・」

その前に立ちふさがる澤野・・・。

「あなたは・・・」

「僕は彼女・・・里美の夫・・・」

「・・・」

東京都中央区にある(株)立乃木流通マーケティング部シニアアドバイザーの澤野信二は家庭の事情を・・・厄介に話す。

今日子が本当は里美かもしれないと考えた厄介は迷う。

「里美さんと話をさせてもらえませんか」

「いいでしょう」

「きょ・・・里美さん・・・僕はあなたと何度もあっています」

「・・・」

「あなたに会うまでの僕は・・・不運の連続で・・・人生に希望を見出せなかった・・・そんな僕に・・・自分にもできることがあると・・・あなたは教えてくれたのです」

「・・・」

「一つだけ教えてください・・・あなたは今、幸せですか」

「幸せの数は星の数ほどあるといいます・・・何が幸せかの定義は人それぞれ・・・衣食住に不自由せず・・・特に困ったこともない・・・私には少しのお金とちょっとした謎があれば充分・・・だとすれば・・・私は幸せと言えるでしょう」

「そうですか・・・あなたが・・・幸せでよかった・・・今日という日を大切にしてください・・・さようなら」

厄介は憔悴と焦燥を滲ませながら今日子と訣別した。

その後ろ姿を見送る今日子・・・。

澤野は囁く。

「これで・・・よかったのかな」

「ええ・・・猫は・・・」

「猫は明日にしよう・・・」

「・・・」

今日子は太腿にメモをとる。

隠館やくすけ誰?

いつものように今日子に睡眠薬入りのお茶を飲ませた澤野は・・・眠りについた今日子の身体からメモを消す。

澤野の表情からは悪意も善意も読みとれない。

失意の厄介に遠浅深近刑事(工藤俊作)と新米刑事(岡村優)が声をかける。

「お前が・・・掟上今日子が消えたというあのビルは・・・殺人事件があった場所だとわかった」

「え」

「しかも・・・事件は掟上今日子が解決している」

「・・・」

「ところが・・・裁判で犯人は不起訴となってしまった・・・」

「まさか・・・重要な証人の記憶力に問題が・・・あったからじゃ・・・」

「そこまでは・・・知らん・・・犯人の結納坂仲人はこの男だ・・・見なかったことにしてくれ」

写真を見た厄介は驚く。

「こいつ・・・澤野信二じゃないか」

「誰だ・・・」

主人が失踪中の置手紙探偵事務所・・・その所在地である「サンドグラス」で助手たちは顔を揃える。

「澤野は・・・今日子さんに・・・怨みを抱いている人物でした」

「勤務先が立乃木流通か・・・これでつながったな」

「つながった・・・」

絆井法郎に代わって也川塗が答える。

「大阪に行って・・・真空状態じゃなかった態条空真について調べて来た。遺産相続について問題が発生していた。故人にはマキコという隠し子がいて・・・遺産が半分贈られるということになっている。遺産を全額もらうつもりでいた男が立乃木という名前だ」

「まさか・・・今日子さんが・・・隠し子」

「つまり・・・立乃木と結納坂仲人はグルで・・・掟上今日子の存在を抹消しようとしている」

結納坂は立乃木に連絡していた。

「大丈夫だ・・・今夜のうちに引っ越す・・・とにかく・・・あの女には毎日同じ本を読ませておくさ・・・その間に・・・そちらは秘書と弁護士の買収を進めてくれ」

君の名前は里美。一度眠ると記憶がリセットされる。

いつもと変わらぬ朝食。

新聞を見た今日子が叫ぶ・・・。

「今日は十二月十七日・・・のたくりの日だわ・・・」

「のたくりの日・・・」

「須永信者にとって重要なイベントの日なの・・・雛古神社で・・・ニセイルカの花を供えないと」

「ニセイルカ・・・」

「名前の通り・・・イルカに似た美しい花よ」

唐突な今日子の行動に対処が遅れる結納坂は・・・最初の日の拉致に使ったスタンガンを準備する間に玄関の扉を開かれてしまう。

仕方なく今日子と同伴する結納坂・・・。

今日子は雛古神社のある台東区雛古(フィクション)にやってきた。

「花屋を捜しましょう」

「・・・」

しかし・・・今日子の視線は・・・不動産屋に注がれている。

「先手を打たれました・・・家はもぬけのからです・・・勤務先でも・・・居場所がつかめません」

「グルだからな」

サンドグラスの助手たち・・・。

「映画館は・・・」

「めい子の上映終わっちゃいました」

「須永関係のイベントはないの・・・」

「誕生祭は・・・三月だし・・・そうだ・・・のたくりの日」

「のたくりの日・・・」

厄介は・・・イベントの元ネタとなった須永の著作を書棚から取り出す。

鳥取の神社で・・・サツキの花を・・・五月十五日に備える・・・」

「全然、ダメじゃん」

花屋にニセイルカの花はなかった。

「素晴らしいインターネットの世界で・・・捜した方が」

結納坂は・・・今日子の脱走に気が付く。

結納坂は・・・今日子に敗北したことを忘れたかった。

だから・・・彼女の探偵力を過小評価していたらしい。

あるいは・・・二つの疑わしい事実から・・・一つの真実を見抜く力を・・・。

今日子は・・・ヒナコンが目印のヒナコ不動産に乱入する。

「あの・・・隠館厄介さんは・・・」

「今日はお休みですよ」男女島社長(遠山俊也)が応じる。

今日子は行動予定表で隠館が休みであることを確認すると・・・デスクに貼られた隠館へのメモを見つけ・・・引き出しをあける。

「あなた・・・何を・・・」

茫然とする女事務員・・・。

今日子は給与所得者の扶養控除等申告書で厄介の住所を確認した。

そこへ・・・結納坂が現れる。

裏口から逃走する今日子だった。

その日に限って休日・・・厄介の不運が今日子の前に立ちはだかる。

台東区谷中の厄介の部屋。

その日に限って外出中の厄介。

しかし・・・問答無用で窓を割り、屋内に侵入する今日子だった。

まだ見ぬ未来の・・・厄介の貯金残高が修繕費支出のために減るのだった。

今日子を口説くための必要経費である。

今日子は「Kの備忘録」に気が付く。

速読によって内容をざっと把握しかけた時・・・。

ドアの外に結納坂がやってくる。

「ここにいるはずだ・・・ドアを破壊しろ」

厄介の貯金残高が・・・。

今日子は・・・大量の履歴書を発見する。

そこに書かれた携帯電話の番号に・・・。

その日に限って脱いだ上着をイスにかけている厄介だった。

しかし・・・鋭敏な也川塗はマナーモードの着信音に反応する。

(自宅から・・・)

厄介は・・・非常事態の予感に震える。

「もしもし・・・」

「あなたの部屋からかけています」

「今日子さん」

「私・・・今日を大切にしろと言ったあなたを信用しました・・・あれから・・・眠っていません・・・ネームプレートで」

「勤務先を知って・・・家の窓ガラスを割ったんですね」

「僭越ながら・・・」

しかし・・・結納坂の手下が・・・電話線を切断する。

ドアの破壊に成功した結納坂と黒服軍団・・・。

だが・・・すでに・・・今日子は脱走していた。

「捜せ」

「キーッ」

仮面ライダーG3ではなくて結納坂の前に立ちはだかる仮面ライダー3号ではなくて絆井・・・。

「ここは通さない」

「邪魔するな」

しかし・・・武術が得意なウエイトレス・・・仮面ライダードライブの警視庁特状課巡査・詩島霧子ではなくて幕間まくるが突撃するのだった。

モップ棒術の也川塗も参戦である。

「そりゃ」

「キーッ」

資産家の遺産をめぐり遺産争族大戦勃発である。

今日子は逃げる。

蘇る解明されていない遠い記憶の疾走・・・。

黄昏が迫り・・・歩道橋で今日子は持ちだした「Kの備忘録」を読み始める。

そこに綴られているのは・・・一日で記憶がリセットされる名探偵の大活躍・・・。そして・・・名探偵を愛したワトソン役の心の葛藤。

厄介への信用は信頼に代わり・・・やがて・・・彼女の愛の扉を開く。

「厄介さん・・・」

一陣の風が原稿を撒きあげた。

今日子を追いかける厄介と・・・結納坂の手下は同時にそれを発見する。

連絡を受けた結納坂は悪人の笑みを浮かべる。

しかし・・・その行手を阻む絆井・・・。

「ラスボス対決だな・・・」

「ふん・・・」

嘲笑して背を向ける結納坂。

手下たちが絆井に迫る。

「武闘派の探偵の皆さん、出番ですよ」

サンドグラスに登録している探偵たちが総動員されたらしい・・・。

「やっちまいな・・・」

「え・・・」

金でやとわれたあらくれたちはそれなりに相殺される。

その男がこの世界から消えたことはその男が同性愛者であることと同様に省略。

号泣する今日子を連れて厄介は隠れ家に潜んでいた。

「もう少し・・・隠れていた方がいいみたいです」

「厄介さん・・・」

「今日子さん・・・疲れたでしょう・・・もう、眠っても大丈夫ですよ」

「眠りたくない・・・」

「・・・」

「あなたを忘れたくないの・・・」

「僕は大丈夫です・・・あなたが忘れても・・・僕があなたを忘れません」

「・・・」

「何度でも今日子さんの名前を呼びます」

「厄介さん」

「何度でも何度でも何度でも呼びます・・・今日子さんと声が枯れるまで」

今日子は限界に達して厄介の唇を奪う。

「・・・」

「明日になったら・・・一から私を口説いてね」

「今日子さん・・・」

厄介は今日子の唇を貪った。

そして・・・今日子は安らかに眠った。

厄介の上で目を覚ました今日子は飛び起きる。

「あなた・・・誰なの」

厄介は微笑んだ。

「おはようございます・・・今日子さん」

置手紙探偵事務所の営業は再開された。

「結局・・・今日子さんは隠し子ではなかったと・・・」

「隠し子の目印は・・・木彫りの熊」

「え」

幕間まくる所有の木彫りの熊には「空真」の刻印が・・・。

「え」

「ま・くまだよ」

「ええ」

「まきこのまきは真来なんだ・・・」

「あ・・・真・・・来る」

「ただいま・・・」

大阪土産を持ってまくるが帰還する。

「サンドグラスの維持には問題ないって・・・」

「これは・・・これは・・・まくるお嬢様・・・」

執事と化した絆井だった。

目覚めた今日子は腕を見る。

私は掟上今日子 探偵

記憶が一日でリセットされる

今日子の太腿に何が書かれているかは秘密である。

今日子は厄介に名刺を渡す。

「探偵の掟上今日子です・・・御用がありましたら・・・どうぞ」

「コーヒーをご一緒しませんか」

「そういうの・・・パスです」

「最短記録更新だね」と絆井。

「いいんです・・・今日子さんから・・・口説けって・・・お墨付きをもらったので」

「・・・めげない男だねえ」

「今度・・・めい子の映画が上映されます」

「パスですね」

微笑む今日子・・・ひょっとしたら・・・今日子は太腿に・・・厄介について・・・何かメモを残しているのかもしれない。

しかし・・・天井の文字「お前は今日から掟上今日子探偵として生きていく」を書いたのは誰なのか。

今日子がいつから今日子になったのか。

今日子が幻視する地下通路のような場所はどこなのか。

多くの謎が残されている。

厄介の不運が死ぬまで続くのかどうかも謎だ。

しかし・・・明日のことなど誰にもわからない。

人は砂時計の中で彷徨う・・・砂が落ち切ればグラスの隙間から下に落ちるだけだ。

誰もが今日を大切に生きて行くことしかできない。

そして・・・続編のためには・・・少しの謎とちょっとした予算が必要なのだ。

再会の日を信じるお茶の間の人々は・・・今日子と厄介が今日も素敵な初日を送ることを祈るばかりなのである。

この世のすべての一瞬は・・・物語の最終回の始りに過ぎないのだ。

怒涛の最終回週間、絶好のスタートである。

関連するキッドのブログ→第9話のレビュー

| | コメント (2) | トラックバック (12)

2015年12月12日 (土)

普通の赤ちゃん(綾野剛)助けちゃってごめんなさい(山口紗弥加)うう・・・ん(岡本玲)最初で最後の抱擁(酒井美紀)

師走の最終回シーズン・・・。

足早に駆け去っていくのだな・・・。

コレは来週だぞ。

今期は・・・医療ものが多いわけだが・・・「無痛」での衝撃は・・・「エンジェルハート」とかぶったことだな。

白神が心臓押さえだしたあたりから・・・ああ・・・と思い・・・「弟の心臓だ」で・・・そこでかぶるのかと思わずうれしく思った・・・。

まあ・・・ある意味、キワモノ同志の交差点だよな・・・。

コレが通りすぎるとレギュラー的には「掟上今日子」「花燃ゆ」「5→9」「サイレーン」「サムライ」と続々最終回である。

つまり・・・コレがフィナーレなのだなあ・・・。

2015年も終わって行く。

そろそろ・・・年末の宴の季節だが・・・いろいろなお誘いをお断りして申し訳ありません。

そこそこ忙しいので・・・勘弁してください。

この場を借りて関係者各位にお詫び申し上げます。

で、『コウノドリ・第9回』(TBSテレビ20151211PM10~)原作・鈴ノ木ユウ、脚本・山本むつみ、演出・金子文紀を見た。最近、戦後のシンボルのような人の他界が続くわけである。「戦争なんで腹がへるだけだからやるな」という人や「たとえ殺されても軍隊なんていらない」という人も・・・去って行った。この世に生を受けて・・・ショッキングな出来事を乗り越えて八十年とか九十年生きたら・・・まあまあと思う他はない。もっと生きたかったかもしれないが・・・どんな人生も・・・普通の人生に過ぎないのである。

生の天使たちは・・・女子大学の文化祭で講演会を終えて一番可愛い女子大生を誘いだし、真っ赤なスポーツカーで軽井沢の別荘地までドライブして、他人の別荘にもぐりこみ、ベッドに真っ赤なバラを敷き詰めて、ホットな一夜を過ごす先生の元にも現れる。しかし、避妊具を使用されると・・・ほとんど空振りになってしまうのだった。

しかし・・・死の天使たちは・・・あらかじめ定められた場所に降り・・・奇跡でも起きない限り・・・任務を終了する。

魂が言語化されていない新生児たちは・・・死の天使の通りすぎて行く通路を見る。

そして・・・言葉ではない言葉でささやくのだった。

(ほら・・・あそこ)

(お迎えの天使だよ)

(つぼみちゃんのところだね)

六年前・・・四宮春樹(星野源)が担当し・・・出産と同時に母親をなくしたつぼみは・・・小児科のベッドで生まれてから一度も目覚めないまま・・・息をひきとった。

四宮は執刀中であり・・・その臨終に立ち会うことはできなかった。

生と死が交錯するペルソナ総合医療センターの周産期母子医療センターの産科医・鴻鳥サクラ(綾野剛)は不妊治療の成果を得た相沢美雪(西田尚美)から相談を受ける。

「胎児の遺伝子について出生前に診断を行う遺伝子学的検査としての出生前診断を受けるかどうか悩んでいます」

「そうですね・・・それは誰もが悩むところです・・・しかし・・・検査の結果によってはあらかじめ対応を準備できる利点があります・・・けれど・・・それによって新たな悩みが生じる場合もあります・・・どちらにしろ・・・ご夫婦そろって事前にカウンセリングを受けることをお奨めします・・・ご主人とよく話し合われてみてはどうでしょうか」

「はい・・・」

サクラは常に優しい猫撫で声で妊婦を安心させるのだった。

あくまでドラマなので・・・現実の担当医師がサクラのように優しくなくても失望しないこと。

新生児集中治療管理室を含む新生児病棟の前で未熟児「ユウタ」の母である西山亜希菜(岡本玲)は祈りを捧げる。

新生児科の今橋医師(大森南朋)は優しい猫撫で声で挨拶する。

「ユウタくんのお母さん・・・いつもご苦労様です」

「私・・・ここに来るときは・・・ユウタに何か起こっていないかと・・・心配で」

「大丈夫ですよ・・・順調です」

後期研修医の白川(坂口健太郎)はユウタくんの担当である。

「ユウタくん・・・体重1600グラムを越えましたよ」

「ここに来た時は・・・570グラムだったのに・・・みんな先生たちのおかげです」

「いいえ・・・毎日・・・お母さんが届けてくれる母乳のおかげですよ」

(ゆうたくんのママはいつもくるね)

(それにくらべて・・・)

(なおとくんのママはこないね)

(・・・)

未熟児で生まれたわが子との対面を拒む両親もいるのだった。

その時・・・産婦人科に救急車から通報がある。

後期研修医の下屋加江(松岡茉優)は指示を仰ぐ。

「23週と一日の切迫早産です」

「新生児科に受け入れ可能が聞いてみて」

新生児科は満床だった。

新生児科医の新井恵美(山口紗弥加)は提案する。

「ユウタくんをかかりつけの医院のベッドに戻して・・・空きを作りましょう」

「でも・・・まだ・・・ユウタくんは完全に安心できる状態では・・・」

産科では・・・下屋が新生児科の返事がないので・・・催促の電話をしかける。

「待って・・・返事がないのは・・・向こうが頑張っている証拠です・・・もう少し待ちましょう」

「すみません・・・出前が遅いと電話しちゃうタイプなので・・・」

西山は医師たちに相談される。

「うう・・・ん・・・もし・・・断ったら・・・」

「・・・」

「う・・・ん・・・・う・・・ん・・・わかりました」

「お母さん」

「ユウタも・・・前の赤ちゃんがベッドを空けてくれたから・・・命拾いしたんです・・・そういうこってす」

切迫早産の妊婦・小泉明子(酒井美紀)の受け入れが決まり、準備を整える一同。

分娩された新生児は・・・死ととなりあわせている。

「おめでとうございます・・・男の子です」

「がんばれ・・・がんばれ」

新井医師は懸命に救命処置を行う。

産声をあげないわが子に・・・明子は・・・深刻な事態の気配を感じる。

「赤ちゃんは・・・無事なんでしょうか」

「赤ちゃん・・・頑張ってますよ」

サクラは優しい声で慰める。

その声が・・・不吉な気配を帯びていることを直感する明子だった。

明子の夫・大介(吉沢悠)が駆けつける。

新井医師は・・・両親に・・・赤ちゃんの状態を説明する。

「早産のために・・・予断を許さない状況です・・・最善を尽くしますが・・・場合によっては予後不良になることも・・・」

「予後不良って・・・」

「障害が残る場合も」

「じゃ・・・なんで・・・助けたんだよ」

予想外の事態に・・・気が動顛する大介・・・。

しかし・・・その一言は・・・新井医師のハートを直撃するのだった。

「ジャナンデタスケタンダヨ」弾は新井医師の心に深く突き刺さって行く。

小さなわが子を受け入れられない両親・・・。

(だよね・・・)

(よくあるよね・・・)

(わりとね・・・)

「私・・・赤ちゃんにあうのが・・・こわいんです・・・あんなに管だらけでかわいそうで・・・早く産んでしまって・・・責められているようで・・・ひどい母親ですよね」

明子の問いに答えるサクラ。

「お母さんは普通のお母さんですよ・・・赤ちゃんも普通の赤ちゃんです・・・管がたくさんなのは赤ちゃんが頑張っている証拠です。早く生まれてしまったのは誰のせいでもありません・・・お母さんが自分を責めることはないのです・・・お母さんはひどいお母さんではありませんよ」

明子は母親として気力を振り絞る。

「男の子だったら・・・陽介にしようと思っていたの・・・陽介と・・・大ちゃんと私で・・・いつか陽だまりの中を・・・」

「ごめん・・・僕は今・・・まいっている・・・名前なんてつけたら・・・いざっていう時に・・・余計、つらくなるんじゃないか・・・僕・・・仕事に戻るよ」

未熟児の父親であることから・・・逃避する大介だった・・・。

「大ちゃん・・・」

新井医師は・・・不眠不休で「0623473コイズミアキコベイビー」の治療を続けていた。

「少し休んでください」

「あなたにはまかせられない」

研修医を退ける新井医師。

「26週の新生児は・・・外気がすでに・・・ストレスになるからな・・・」

今橋は研修医を慰める。

明子がNICU(新生児集中治療室)にやってくる。

「陽介・・・がんばれ・・・陽介・・・がんばれ」

「・・・」

「この子が生まれた時・・・先生が・・・励ましてくれたでしょう・・・」

「・・・」

「がんばれ」

「がんばれ」

新井医師の心の傷を「ヨウスケガンバレ」弾が広げて行く。

事故で母親を失った新生児の父親・永井浩之(小栗旬)は育児と仕事の両立の困難さに見舞われていた。

重要な会議中に・・・保育園からの呼び出しがかかる。

「すみません・・・今、手がはなせないので」

「発熱があるので・・・今すぐお迎えお願いします」

上司は微笑む。

「保育園・・・行ってこい・・・そして・・・このプロジェクトからは外れろ」

「・・・」

天国の扉が開く。

死の天使たちが下降する。

(あ・・・)

(お迎えだ・・・)

(陽介くん・・・)

「陽介くん・・・急変しました」

「心臓の動脈の閉鎖が不完全で出血が止まらず・・・脳にも出血があります・・・腸の組織の一部が壊死して・・・そこからも出血が・・・輸血を続けて状態が回復すれば・・・まだ・・・望みはあります」

新井医師は説明する。

「最善を尽くしますが・・・ご両親には見守っていただきたいのです」

今橋は両親を誘導する。

研修医は呟く。

「心拍数百を切りました・・・もって数時間です」

「お母さん・・・陽介くんを抱いてあげませんか」と今橋。

「でも・・・今・・・カバーを開けたら」と新井。

「陽介くんを一度も親に抱いてもらえなかった赤ちゃんにしたいのか・・・」

「・・・わかりました」

明子は小さすぎるわが子を抱く。

「陽介・・・ごめんね・・・よくがんばったね」

大介はわが子に触れ落涙する。

「ようすけ・・・ようすけ・・・」

新井医師の心に突き刺さる「ジャナンデタスケタンダヨ」「ガンバレヨウスケ」「ヨウスケヨウスケ」弾の連鎖。

死の天使たちは陽介の魂を抱いて飛翔する。

(バイバイ)

(バイバイ、陽介くん)

(バイバイ)

天国の扉は閉じた。

屋上で・・・四宮の尻をおいかけて桜は佇む。

「よかったな・・・陽介くんは・・・両親に看取ってもらえて・・・」

「うん」

「つぼみちゃんも・・・お父さんに・・・看取ってもらえたらよかったのに・・・お父さんに・・・つぼみ・・・よくがっばったな・・・ってほめてもらえたら・・・」

「うん」

新井は恋人からプロポーズされる。

そこへ病院から呼び出しがかかる。

「返事は今でなくていいよ」

「ごめんなさい」

双子のカイザー。

新生児に挿管しようとした新井の手が凍りつく。

ついに「ジャナンデタスケタンダヨ」爆弾が炸裂した。

新井の心は壊れた。

廊下に佇む新井にサクラと今橋がダブルで優しい声をかける。

「双子は無事だよ」

「お母さんも無事です」

「ごめんなさい・・・」

「・・・」

「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい」

新井は長期療養にはいった。

助産師の小松留美子(吉田羊)は案じる。

「新井先生・・・大丈夫かなあ・・・」

「フィアンセが・・・支えてくれるでしょう」

「なんだって・・・」

「フィアンセが・・・」

「ああああああああああ・・・新井先生・・・仲間じゃないのかよ」

小松の孤独な戦いは続く。

(フフフ)

(フフフ)

(フフフ)

新生児室に声なき笑い声が響く。

関連するキッドのブログ→第8話のレビュー

| | コメント (0) | トラックバック (4)

2015年12月11日 (金)

エンジェル・ハート(上川隆也)XYZ(三吉彩花)私がママよ(相武紗季)

谷間である。

コレが谷間になってしまうのは・・・今季がなかなかに魅力的なコンテンツであふれている証拠だろう。

もちろん・・・コレはキッドの趣味ではないが・・・恐ろしいファンを獲得しているコンテンツなのである。

「キャッツ♥アイ」「シティーハンター」そしてコレと1980年代から21世紀になってまで・・・延々と続く大人の少年マンガ・・・である。

とにかく・・・「アニソン」のコンテンツとして「CAT'S EYE/杏里」と「Get Wild/TM NETWORK」はなかなかに無視できない威力がある。

そして・・・コレが好きらしい上川隆也は渾身で主人公を演じているらしい。

とにかくコレは「ブラック・ジャック/手塚治虫」にも登場する「臓器移植による記憶転移」という微妙なアイディアで・・・怪しい家族の絆を描き切る。

そして・・・なんといっても・・・人間離れした美少女を活かしきっているところが・・・素晴らしいのだった。

で、『エンジェル・ハート・第1回~最終回』(日本テレビ201510112230~)原作・北条司、脚本・高橋悠也(他)、演出・狩山俊輔(他)を見た。「熱海の捜査官」といえば東雲麻衣(三吉彩花)の物語である・・・といっても過言ではないほど十年に二、三人レベルの美少女である。基本的にテレビは美少女の扱いがあまり上手ではない。美少女はよほどのスタッフにめぐりあうか・・・自己プロデュース力がないと美少女として開花しないのが一般的である。特に東雲麻衣のレベルから始ると・・・心身の変化の季節を乗り切れない。で、なんだかんだで十九歳になってしまいました。しかし・・・今回は謎の組織に属する暗殺者として心を病んで自殺したが・・・事故死した女シティハンター・槇村香(相武紗季)の心臓を得て蘇生するという・・・人間離れした役柄で・・・見事に美少女として輝いたわけである。トレビアン!

東京都新宿区区役所通りあたりのマンションに住む冴羽獠(上川隆也)はシテイハンターを自称するトラブルの清掃員である。元傭兵のファルコン(ブラザートム)がマスターの喫茶「キャッツアイ」で「エックスワイゼット」という暗号を言うと「もめごとを解決してくれる」可能性があるらしい。・・・この荒唐無稽さはマンガみたいだが・・・マンガです。

好色漢の冴羽はもっこりする美女に食いつくタイプだが・・・パートナーの香と結婚する覚悟を決める。

しかし・・・香織は不慮の事故で他界・・・ドナー登録していたため移植用に心臓が摘出されるが・・・何者かが香の心臓を強奪する。

香の心臓は・・・李堅強(竜雷太)の率いる謎の組織・・・秘密結社「レギオン」の暗殺者・シャンインこと香瑩(三吉彩花)に移植されてしまうのだった。

この荒唐無稽さはマンガみたいだが・・・マンガです。

幼い頃に誘拐されて暗殺者として育成され・・・凄腕の暗殺者となったシャンインだったが・・・いつしか心を病み・・・ついに投身自殺・・・心臓破裂である。目覚めたシャンインはなぜか・・・導かれるように・・・喫茶「キャッツアイ」に向かう。

移植された香の心臓が・・・香の心を保持しており・・・シャンインは・・・シャンイン/香の二重人格者となっていたのだった。

香は・・・両親に養育されなかったシャンインの母として・・・病んだ心を修復していくのだった。

この荒唐無稽さはマンガみたいだが・・・マンガです。

裏切りを許さない組織はシャンイン暗殺司令を発する。

しかし・・・シャンインの中で香が生きていると知った冴羽は・・・シテイハンターとしての能力を使い、彼女を保護するのだった。

追手であるシンホンこと劉信宏(三浦翔平)が変心して喫茶「キャッツアイ」の見習店員になったり、ストリートチルドレンのミキ(渡邉このみ)をファルコンが拾ったり、ゲイのホーリー(山寺宏一)やモッチー(ゴリ)がかしましかったり、新宿西警察署の捜査官・野上冴子(高島礼子)と部下の小宮山(高橋努)がイチャイチャしたり、花園診療所にはドク(ミッキー・カーチス)と看護師(齋藤めぐみ)がいたりします。

他にもレギオンの暗殺者としてシャンインと同様に心を病んだパイランこと白蘭(前田亜季)とか怪しい占い師(小沢真珠)など・・・それなりにゲストも登場して・・・それなりに盛り上げる。

凄いのは「第4話」である。幼い頃に心臓移植で延命し・・・億万長者となった高畑(鳥羽潤)のリクエストで・・・シテイハンターは・・・ぼったくりバーのホステス・倉本彩菜(林香帆→高田里穂)との仲を取り持つのだった。

実は・・・移植された高畑の心臓は・・・事故死した彩菜の姉・沙織(中川真桜)のものだった。

高畑は心臓の記憶で・・・彩菜が誰かを悟ったのである。

ドナーとレシピエントのための秘密保持が・・・「奇跡」によって無力化するわけだ。

このドラマでは基本的に移植された心臓には記憶があることが大前提です。

この荒唐無稽さはマンガみたいだが・・・マンガです。

「そんなマンガみたいなこと信じない」という彩菜・・・。

「この街には心臓をもらった人間が・・・心臓に宿った故人の心に動かされ・・・見知らぬ人に会いに行ったという話があります」

「嘘くさい・・・」

「本当なのです・・・それは・・・私です」

シャンインは胸元を開き・・・手術の跡をサービスする。

冴羽はシャンインを援護する。

「確かに・・・彼女の心臓は・・・私のフィアンセのものだった・・・私はそれを奇跡と呼んで・・・神に感謝したい気持ちになった・・・」

冴羽はパートナーを労わるのだった。

「あの人は・・・もう・・・長くないようです・・・今なら・・・あなたのお姉さんの・・・心臓が動いています」

姉妹は山で遭難し・・・姉は妹を助けるために命を落していたのだった。

「お姉ちゃん・・・ごめんなさい」

「今・・・私は夢を見ていました・・・仲のいい・・・二人の姉妹・・・さーやは・・・いまも・・・あーやの幸せを願っています・・・」

「お姉ちゃん・・・」

この荒唐無稽さはマンガみたいだが・・・涙で前が見えなくなるのです。

最終回・・・レギオンの・・・総帥が・・・実はシャンインの肉親だったことが明らかになる。

「私の組織は・・・多くの人間の命を奪ってきた・・・しかし・・・孫娘のような娘の命は奪えない・・・虫のいい話だと思うかも知れんが・・・」

「特別におんぶすることを許可します」

いろいろあって・・・失神しているシャンインをおんぶして・・・桃源郷を彷徨う総帥だった。

悪魔にはよくわからないが・・・これが人情・・・というものなのだろう。

そして・・・シャンインは香をママに・・・冴羽をパパとして・・・心の再生を達成する。

シテイハンターとして・・・冴羽の新しいパートナーとなったシャンイン。

顧客にもっこりする冴羽を美術スタッフ渾身の小道具「100tハンマー」で叩きのめすシャンインである。・・・原作に敬意を表した素晴らしいオチだった。

エンディング・テーマの「Save me/西内まりや」は一部お茶の間の「SPEC」愛好家にとって「瀬文のテーマ」として記憶に残った・・・。

とにかく・・・美少女は・・・一度死んで蘇るくらいの・・・ゾンビ属性を持たせるのが「手」だよな。

関連するキッドのブログ→GTO

小さな故意の物語

2030 かなたの家族

ブザー・ビート~崖っぷちのヒーロー~

| | コメント (0) | トラックバック (5)

2015年12月10日 (木)

はじめての回転寿司(錦戸亮)平成建白書のひみつ(神木隆之介)目にもの見せてくれるわ(比嘉愛未)

武市半平太と坂本龍馬は土佐藩による二つの建白書に影を落している。

武市半平太は文久二年(1862年)に土佐藩主・山内豊範が朝廷に提出した建白書の起草者とされている。

建白の内容は「山城国、摂津国、大和国、近江国を天皇の直轄地とすること」「商人に御用金を課すこと」「天皇の命令で大名に武力を行使させること」「天皇の命令は幕府抜きで大名に直接発すること」「参勤交代の制度を緩和すること」などである。

基本的に・・・「幕府より天皇が上に立つこと」を進言しているが・・・「幕府」を倒すとは言っていない。

坂本龍馬は慶応三年(1867年)に土佐藩主・山内豊範が将軍・徳川慶喜に提出した建白書の発案者だと言われる。

建白の内容は「徳川幕府が政権を明治天皇に返上すること・・・すなわち大政奉還の勧め」である。

薩長が同盟し、幕府に対し軍事行動(討幕)を計画していた時期であり・・・大政奉還により徳川家の存続を図ったとも推測されている。

つまり、「幕府」は討たないのである。

武市半平太の「建白書」は歴史的には荒唐無稽なものとなり、坂本龍馬の建白書は歴史となった。

だが・・・テロリストでもある二人の心に・・・共通する「平和的解決」を望む穏健な思想が隠されていることは・・・明らかなのである。

そして・・・龍馬の建白書によって・・・半平太の建白書の目指すところは・・・ほぼ実現するのである。

「大日本帝国」「税金徴収」「徴兵制」「大東亜共栄圏」「参勤交代の廃止」・・・是非はともかく・・・。

で、『サムライせんせい・第7回』(テレビ朝日201512042315~)原作・黒江S介、脚本・黒岩勉、演出・植田尚を見た。歴史の認識という問題はかなり根深い。まず・・・正史という問題がある。本当に正しいのかどうかわからないわけである。現代史でも同じ歴史的事件が国家によって解釈を異にするという問題があるし・・・同じ国民でさえ教養の差が滲みでるわけである。たとえば「坂本龍馬」は小説家・司馬遼太郎の小説でかなり高名になったと言われる。しかし・・・小説の内容が歴史的事実ではないわけである。だが・・・世の中には司馬遼太郎を一冊も読まずに一生を終える人もいて・・・どちらが・・・龍馬について大まかなことを知っているかと考えると・・・「竜馬がゆく」も読まないで「坂本龍馬が好き」と言われても困惑するのだなあ・・・。「あまちゃん」を一度もみないのにクドカンを語れるかという話である。

だから・・・「月形半平太」のモデルが武市半平太で・・・。

「月様、雨が・・・」

「春雨じゃ・・・濡れて行こう」

このやりとりが合言葉レベルでないと・・・本当は・・・このドラマを・・・楽しめないのではないかと危惧するのである。

まあ・・・余計なお世話だがな。

どれだけ「幻想の坂本龍馬」や「幻想の武市半平太」が妄想されようとも・・・本人たちは何も言わないのである。

そして・・・死後百五十年が経過すれば・・・本人たちを知るものも誰も何も言わないのだった。

警視庁の捜査官・氏家八尋(神尾佑)は楢崎こと坂本龍馬(神木隆之介)に対する事情聴取のために佐伯家を訪問する。

「奉行所のお役人が何故・・・」

「楢崎は・・・素晴らしいインターネットの世界で・・・平成建白書というホームページを公開しています」

「平成建白書・・・」

「自由と平等を手段を選ばずに勝ち取ろうという・・・過激な思想に感化され・・・信者が殺人事件を起こしているのです」

「・・・」

「信者は一万人いると言われています」

「しかし・・・龍馬は・・・人を唆して・・・悪事を成す男ではない・・・」

「龍馬?」

「拙者・・・坂本龍馬の遠縁にあたる武市半平太でござる」

「え」

温厚な佐伯先生(森本レオ)のとりなしで・・・凶悪犯を逮捕した侍風の男が半平太(錦戸亮)であることが説明され・・・氏家たちは一応、納得したらしい。

半平太は龍馬が嫌疑を避けて身を隠したと察するのだった。

龍馬のPCが開かれ・・・閲覧履歴から・・・龍馬が投資家の海道匠(忍成修吾)について調べていたことが明らかになる。

一方、赤城サチコ(黒島結菜)とつりあう男になるために一攫千金を狙う佐伯寅之助(藤井流星)は新しいビジネスとして「サムライ先生」を映画化することを宣言する。

神里村役場に勤務する晴香(比嘉愛未)は「またかよ・・・」と思うのだった。

しかし・・・サチコは「素晴らしいインターネットの世界で動画を公開する」というアドバイスで寅之助をフォローするのだった。

「はじめてのシャワー」「はじめての水洗トイレ」など・・・文明と未開人の遭遇ネタならいけるかもしれないと・・・晴香も納得である。

篠原理央(石田ニコル)が経営する「カーニバル」ではなんでもやる課の小見山課長(梶原善)は「選挙には金がかかる」という伏線を張るのだった。

理央は「楢崎が坂本龍馬と知っているのに知らない」という一般人の歴史認識不足問題を象徴する。

なにしろ・・・坂本龍馬が何者かを知らなくても人間は生きていけるのだ。

だが・・・キッドは・・・ある歴史番組を担当する放送作家が・・・司馬遼太郎を一冊も読んだことがないと豪語しているのを聞いて背筋が冷たくなったことがある。

なんていうか・・・最低限っていうものがあるからな・・・。

しかし・・・今は・・・司馬遼太郎を読まなくても・・・坂本龍馬の一生を検索できる時代なのだ。

ある意味・・・恐ろしいことだ。

佐伯先生に所望した藁で草鞋を編み旅支度を整えた半平太は・・・龍馬を捜すために江戸へ旅立つことを宣言する。

「まさか・・・徒歩で・・・」と呆れる晴香。

「神里村は上州の北・・・越後の湯沢温泉あたりにあるようなので前橋から高崎に出て、そこから中山道をたどれば江戸まで五日ほどで到着するでござろう」

「大丈夫ですか」

「江戸には剣術修行で逗留したことがある。上州で暮らしている晴香殿より・・・土地勘がござる」

「なんか・・・むかつく」

サチコは東京に圧倒される武市半平太を直感的に認知し・・・その「おいしさ」に目を輝かせるのだった。

「これは・・・ビッグ・チャンスだわ」

「そうね・・・まず・・・新幹線を体験してもらいましょう」

こうして・・・武市半平太と晴香・・・そして「おもしろ画像」撮影担当の寅之助は・・・上京するのだった。

サチコの予想通りに東京の変貌に腰を抜かす半平太だった。

「ペット愛好家に生類憐みの令」「外人観光客に夷戎」「ティッシュ配りに太股」「回転寿司の給油機に罠」を感じる半平太・・・。

晴香と寅之助の姉弟は半平太の珍プレーの連打にお腹がよじれるのだった。

晴香は・・・有給休暇なのか。

やがて・・・龍馬の東京での住居を訪ねた三人は大家の中村恵美子(左時枝)にめぐりあう。

そこで・・・上京した坂本龍馬の奮闘記を知るのである。

「私が転んだ時に助けてくれて・・・近頃じゃ・・・珍しいほど礼儀正しい人で・・・住む場所に困っているようだったので・・・部屋を貸してげたのよ・・・しばらくは図書館に通って勉強していたみたい・・・それから文章を書く仕事を始めて・・・出世払いでいいと言ったのにきちんとお家賃も払ってくれたの・・・最近、顔を見せないので心配していたのよ」

「この時代にも・・・人情は生きていたのだな」と感激する半平太。

しかし・・・寅之助は「坂本龍馬の後家殺しの手腕」に舌を巻くのだった・・・。

「そうそう・・・楢崎さんから・・・お侍さんが来たら渡して欲しいと頼まれていたものがある」

半平太はメモリーカードを手に入れた。

晴香がPCで中身を確認すると・・・それは「海道匠による政治献金の裏帳簿データ」だった。

晴香は中身の危険性を直感で感じ取り、メモリーカードを半平太に返却する。

半平太は・・・自分の恥ずかしい姿が悪用されることを直感で感じ取り、寅之助のムービーカメラを没収するのだった。

やがて・・・半平太は監視者の存在を感知し・・・佐伯姉弟と別行動することで敵をおびき出す。

「そなたたち・・・何者じゃ」

「楢崎から預かったものを渡せ・・・」

「断る」

現れた男たちが実力行使に出るが・・・半平太には太刀打ちできないのである。

「くそ・・・」

「お主たち・・・まさか・・・アザを・・・」

「あの男に会いたければ・・・案内しよう・・・」

男たちは龍馬を監禁していたのだった・・・。

海道の経営する闇カジノに案内された半平太はその退廃的なムードに眉をひそめる。

「あなたが・・・あの男の・・・」

禍々しいオーラを発散する海道・・・。

「武市半平太と申す」

「なるほど・・・どうですか・・・現代は・・・」

「お主・・・我らの正体を知っておるのか・・・」

「幕末から・・・タイムスリップしてきたんでしょう・・・彼はそう言っていた」

「・・・」

「あなたの時代には士農工商があった・・・今は象徴天皇制で・・・身分制度は崩壊している・・・しかし・・・世の中から階級が消えることなんてない・・・今は貧富の差がすべてです・・・金持ちは自由で平等・・・貧乏人は奴隷・・・それだけです・・・シンプルになったでしょう」

「シンプル・・・」

「単純明快になったんですよ・・・実例をお目にかけましょう」

海道は借金に追われる若者たちを賞金目当てに戦わせ・・・愉悦を感じるのだった。

「愚かな・・・」と半平太は勝者に説教を始める。

「一体・・・お主は何のために戦ったのじゃ」

「金のために決まっているだろう」

「それで・・・心が満ち足りたか」

「・・・」

「確かに金を集めるのも大切じゃ・・・しかし・・・その金で何を成すか・・・それを見失っていては・・・ただの金の亡者・・・」

「何・・・」と顔色を変える海道。

「お前たちには志がない・・・だから・・・心が腐っておる」

「もういい・・・どうせ・・・金が目当てだろう」

海道は拷問されて弱った龍馬を引きずり出す。

男の一人が拳銃を所持しているのを見て・・・半平太は龍馬を無事に連れ出すことが難しいのを悟る。

「勝った方に金をやる」

「武市さん・・・あれを渡して・・・金を受け取れ」

「龍馬・・・」

龍馬は闘士用の木刀を拾う。

阿吽の呼吸で応じる半平太。

「俺は・・・半分商人じゃ・・・金の使い方は知っている」

「何を申す」

しかし・・・龍馬の目に計略のあることを一瞬で見抜く半平太。

偽闘を演じるのだった。

半平太の一撃で倒れる龍馬。

男たちの一瞬の隙を縫い・・・龍馬は海道を人質にとることに成功する。

「お前たちは・・・本当の命のやりとりを知らぬ」

「・・・」

「我らは殺す時は殺すのじゃ」

「お前たち・・・手を出すな・・・」

エレベーターの中で海道は恫喝する。

「このまま・・・逃げられると思うのか」

「大丈夫です・・・これ・・・返しますから」

「・・・」

龍馬は・・・半平太の風呂敷包みから・・・メモリーカードを取り出し海道に渡す。

「あなたも騒ぎを起こして・・・得することはないでしょう」

二人は脱出に成功した。

東京タワーの見える工事中のビルで休憩する二人・・・。

「一体・・・お主は・・・何をしようとしているのじゃ・・・」

「武市さん・・・見たでしょう・・・今の世は汚れきっている」

「・・・」

「わしは・・・この世を洗濯してやるき・・・」

「洗濯じゃと」

「それが・・・わしの使命じゃと・・・思うちょるき・・・」

「しかし・・・あれを返してよかったのか・・・」

「大丈夫です・・・あれはこのカメラにはいっちょってた身代わりの品ですから」

「まさか・・・それには・・・絵が入っていたり・・・するのか」

「動く写真が入ってます」

「う」

半平太の恥ずかしい動画は流出した。

果たして・・・坂本龍馬は・・・平成の世をどのように洗濯するつもりなのか・・・。

汚れきっているからな・・・。

まあ・・・漂白するのは簡単だけどな。

関連するキッドのブログ→第6話のレビュー

| | コメント (0) | トラックバック (2)

2015年12月 9日 (水)

無計画こそわが人生(松坂桃李)計画変更お願いします(木村文乃)ただいま変身中(菜々緒)ただいま手術中(要潤)

風が吹いている。

風の音はむせび泣く。

地球のどこかでだれかが悲しみの気持ちを吐息によって告げる。

悲しみは木霊し、世界を震わせる。

鳴り響く・・・魂の絶叫。

風は静寂を破る。

人々は慄く。

あれは・・・サイレーン。

心を狂わせる魔性の神々の声なり・・・と。

で、『サイレーン刑事×彼女×完全悪女・第8回』(フジテレビ20151208PM10~)原作・山崎紗也夏、脚本・佐藤嗣麻子、演出・本橋圭太を見た。常識的には「人が人を殺すこと」はあまり好ましくない行為である。様々な事情で「人が人を殺すこと」はあるが・・・基本的には好ましくないと思いつつ行為してもらいたいと常識的に考えられる。しかし、「人が人を殺すこと」が好ましいことだと感じる人がいないわけではない。なぜなら・・・常識的には「世界では常識でははかりしれないこと」も存在するからである。

「カラさん・・・あなたは間違っている・・・あなたには終わりがない」

拘束された警視庁機動捜査隊員・猪熊夕貴(木村文乃)は説得する。

「いいえ・・・終わらない人生なんかないのよ」

シリアルキラー・橘カラ(菜々緒)は宣告した。

猪熊の人生の終焉を・・・。

カラに魅了されたデザイナー・渡公平(光石研)によって突き落とされた謹慎中の警察官・里見偲(松坂桃李)は警察病院に収容される。

渡は現行犯で逮捕される。

里見は警察に監視されていたのである。

里見は意識不明の重体となった・・・。

渡を取り調べるチビデカこと速水刑事(北山宏光)・・・。

「なんで・・・あんなことをした」

「あの男は私の恋人のストーカーなんです」

「恋人・・・」

「橘カラさんです」

「・・・橘カラ」

生活安全課の千歳弘子(山口紗弥加)は渡が相談に来た事実を告げる。

「橘カラは里見が暴行未遂をした女です」

チビデカは告訴されなかった件に言及する。

捜査会議で桜中央署刑事課長の安藤(船越英一郎)はまとめる。

「すると・・・こうか・・・里見は橘カラをストーカーしていた・・・カラの恋人である渡は警察に相談に訪れたが・・・生活安全課は動かなかった・・・里見は橘カラを襲ったが立件されなかった・・・憤慨した渡は里見と口論になり・・・里見は階段から落ちた・・・」

「ですね」

「警察の無能って・・・言われそうだな」

「すでにお茶の間では定説です」

「無断欠勤をしたまま・・・消息をたっている猪熊の件があります」

「猪熊は里見と交際していたという噂があるが・・・」

「カラに対する暴行事件の後で・・・別れたそうです」

「おい・・・まさか・・・里見の奴・・・猪熊を・・・」

安藤課長は頭を抱えた。

千歳捜査官はカラに事情を聴取する。

「すると・・・里見に・・・」

「つきまとわれていました」

証拠として変装して尾行中の里見の画像を提出するカラ・・・。

「猪熊と親しかったそうですが・・・相談しなかったのですが・・・」

「猪熊さんは・・・里見さんと交際していたので・・・」

「事件以来・・・猪熊と会いましたか」

「いいえ・・・あれきりです」

同行した雨宮ひかる捜査官(岡崎紗絵)は感想を述べる。

「なんだか・・・淡々としすぎていませんか」

「だからといって・・・性格は罪に問えないぞ」

カラは・・・何者かの待つ車に乗り込む。

「指示通りにしましたよ」

何者かは無言で応じた。

カラは・・・監禁中の猪熊との会話を楽しむ。

「続きを聞かせて・・・父親を殺したあなたは・・・それからどうしたの」

「平静を装って暮らしたよ・・・しかし・・・ある日、噂を聞いた・・・私が父親を殺したという噂だ・・・私は失敗した・・・だから・・・二度と失敗しないと決めた」

「・・・」

「高校生になった私は・・・橘カラと出会った」

「え」

「私と同じように・・・周囲と馴染まない女だった。二人ははみ出したもの同志ということで接近した。橘カラの趣味は美容整形で・・・私は誘われて手術を体験した。違う外見になること・・・美容整形を私は気に入った」

「・・・」

「私は・・・橘カラになることに決めた・・・」

「ええ」

「最初に橘カラの両親を事故にみせかけて殺した。天涯孤独となった橘カラを川辺のキャンプに誘いだし・・・殺害した」

「えええ」

「カラの死体は隠し・・・本当のカラは家出をしたことにした・・・そして・・・私はカラの顔を手に入れ・・・カラの戸籍を奪った」

「じゃ・・・あなたは誰なの」

「私は・・・橘カラだよ・・・今のところはね」

「今のところって・・・」

そこに月本(要潤)が現れる。

「月本医師・・・」

月本は冷たい目で猪熊の「顔」を見た。

猪熊は嫌な予感に襲われた。

三宅捜査官(高田翔)は里見の寝顔を見ていた。

里見は夢を見ている。

(猪熊・・・可愛かったなあ・・・制服が似合っていた・・・ドラマの推理対決で勝った俺を・・・十字固めで制裁してくれた・・・ファーストキスはあの河に架かったあの橋の上・・・)

三宅は突然、覚醒した里見に驚く。

「ここは・・・」

「よかった・・・一ヶ月も目を覚まさないから・・・もうだめかと思いましたよ」

「・・・一ヶ月だと・・・」

里見は・・・警察病院に隣接した警察官宿舎の女子寮を訪ねる。

管理人は・・・「焼酎」が山梨県川口湖が送られたことを伝える。

安藤は里見から事情を聴取する。

「すると・・・お前は殺人事件の背後にカラという女が関係していると睨んで・・・単独捜査をしていたということか・・・」

「はい」

「だが・・・状況証拠は・・・お前が限りなく変態警官であると・・・」

「それは・・・あの女の罠です」

「どこに・・・罠だという証拠が・・・」

「・・・それに猪熊さんは・・・カラの恋人が殺された事件を調べていました」

「なんだと・・・調書があるのか」

「事件当時の捜査では・・・カラが恋人であるという証言はなく・・・彼女が独自に突き止めたんです」

「どうやって・・・」

「それは・・・」

「また・・・推測か・・・お前・・・まさか・・・猪熊を・・・」

「僕がなんでそんなことを・・・」

「痴情のもつれだよ・・・一番ありがちな線じゃないか」

「・・・」

「とにかく・・・本格的な取り調べは・・・退院してからだ」

「渡の取り調べは・・・」

「とにかく・・・拘留中だ・・・お前の意識が戻らなかったからな」

「カラは僕が猪熊と同棲しているマンションを監視するために・・・渡を利用していました」

「かなりの資産家らしいな」

「渡が山梨県に・・・なんらかの不動産を持っているかどうか・・・調べてください」

「何故だ・・・」

「・・・刑事の勘です」

「・・・里見・・・よく考えろ・・・お前は・・・殺人未遂事件の被害者でもあるが・・・もし、猪熊の失踪に事件性があるとしたら・・・重要参考人だぞ」

「・・・」

「とにかく・・・大人しくしていろ」

だが・・・一ヶ月は・・・死体が腐敗し白骨化するほどの時間である。

冷たい骸となった猪熊のイメージが里見を追いたてる。

天使の力で・・・売春婦のアイ(佐野ひなこ)を呼びよせる里見・・・。

「レナちゃんは・・・」

「行方不明です」

「河口湖に手掛かりがあるかもしれない」

「河口湖・・・」

そこへ天使の力に導かれ倉本医師(笛木優子)が現れる。

「麻弥ちゃんが・・・」

月本医師による殺人未遂事件の被害者とされている田沢麻弥(三上紗弥)が覚醒したのだった。

朦朧としている麻弥の手を握り、天使の力を送り込む里見。

「君は・・・カラという女を知っているか」

「・・・はい」

「カラは・・・何かしなかったか・・・」

「・・・殺した」

「何」

しかし・・・再び麻弥は意識を失う。

だが・・・妄想力の発達した里見にはそれで充分だった。

「すべての殺人事件の犯人は・・・カラだ」

里見は桜中央署での取調のために移送中の渡を襲撃した。

「お前・・・デザイナーだそうだな・・・指を一本ずつ切り取ってやる」

「やめろ・・・」

「川口湖で思い当たることがあるだろう・・・」

「べ・・・別荘がある」

「住所を言え」

里見はアイとともに車で河口湖に向かう。

猪熊の両親(大杉漣・藤吉久美子)に事情聴取をしていた安藤は出遅れた。

「で・・・里見はどうした」

「おそらく・・・山梨県の渡所有の別荘へ・・・」

「じゃあ・・・追えよ」

「山梨県警には・・・」

「警視庁の不祥事だぞ・・・挨拶は後回しだ」

夜の別荘地に先着した里見とアイ。

「ここからは・・・危険だ・・・車で待て」

「はい」

しかし・・・別荘地には陰湿なブービートラップが仕掛けられている。

天使の勘で降り注ぐ矢をかわす里見である。

しかし・・・拳銃で武装したカラが背後から迫る。

絶体絶命の里見にアイが声をかける。

「里見さん・・・」

間隙をついて反撃に出る里見。

しかし・・・格闘力で里見を上回るカラにより・・・再びお手上げとなる。

「帰れって言われたけど・・・来ちゃった」

すでに別荘内に侵入したアイは護身用のスタンガンを里見にパスすることに成功する。

電撃により身体の自由を奪われたカラを拘束する里見。

バスルームに監禁されていたレナ(入山杏奈)の救出をアイに託し・・・地下室へと下りる。

そこには・・・衰弱した猪熊の姿があった。

「無事だったのか・・・」

水分を補給するために口移しでサービスする里見。

その背後に斧を持ったカラの姿が・・・。

だが・・・間一髪・・・意識を取り戻した猪熊は里見の保持していた拳銃でカラを射撃するのだった。

披露困憊し・・・床に倒れる里見。

警察が駆けつけると別荘はすでに猛火に包まれていた。

果たして・・・カラは死んだのか。

里見と猪熊は別荘から脱出できたのか。

カラに命じていたのは誰か。

月本はどこに消えたのか。

そして・・・カラを躊躇なく撃った猪熊は・・・本当に・・・。

女癖の悪い天使と魔性の女の対決は・・・クライマックスに突入するのだった。

もうすでに死体の山を築いているので・・・ハッピーエンドである必要のないドラマである。

物凄いバッドエンドでありますように・・・。

関連するキッドのブログ→第7話のレビュー

| | コメント (0) | トラックバック (4)

2015年12月 8日 (火)

真夜中の鐘が鳴ったので帰ります(山下智久)除夜の鐘には早すぎる(石原さとみ)

クリスマス・プレゼントに因んだ物語といえば・・・「賢者の贈り物/オー・ヘンリー」が思い浮かぶ。

あまり裕福ではない夫婦の話である。

妻は夫のために自慢の長い髪を売って金時計の鎖を買う。

夫は妻のために金時計を売って鼈甲の櫛を買うのである。

相手のことを思いやるあまり・・・すれちがう二人。

しかし・・・愛があるから大丈夫なのである。

真夜中の鐘が鳴ったらシンデレラは階段をかけおりる。

魔法が解けてしまうから・・・。

だが・・・愛があるので・・・王子は残された手掛かりを頼りに捜索活動を開始するのである。

愛する人のために別れを告げる昨日と今日の境界線。

けれども・・・安心してください・・・最終回前ですよ。

で、『5→9〜私に恋したお坊さん〜・第9回』(フジテレビ20151207PM9~)原作・相原実貴、脚本・小山正太・根本ノンジ、演出・平野眞を見た。由緒正しい一橋寺の次期住職候補・星川高嶺(山下智久)は英会話学校ELAの講師・桜庭潤子(石原さとみ)と出会い恋に落ちる。紆余曲折あって相思相愛になった二人だが・・・潤子は正社員となってニューヨークに行く夢を捨て一橋寺の嫁となる覚悟を決めたものの高嶺の祖母で女魔王の星川ひばり(加賀まりこ)は二人の結婚に大反対し・・・潤子と結婚するなら一橋寺を継承させないと高嶺に宣言する。いろいろと・・・謎の多い一橋寺のシステムだが・・・ラブコメなのであまり深く追求してはいけません。

妄想すると・・・血統的に・・・星川一族の娘がひばりで・・・婿養子の住職(故人)があり、ひばりの息子(故人)の嫁(故人)との間に何か問題があったのだろう。

よくあるのは・・・高嶺は父親に似ていて弟の星川天音(志尊淳)は母親似なのである。

で・・・高嶺が潤子に一目惚れするのは・・・母親の面影があるからだと思われる。

当然・・・ひばりは潤子に憎しみを抱くことになる。

まあ・・・基本的に・・・ひばりの知性に問題があるのは・・・明らかである。

もちろん・・・天音の知性にも問題がある。

呪われた祖母と呪われた弟を抱えて・・・シンデレラ・高嶺は苦悩するのだった。

ニューヨークの象徴とも言える清宮真言(田中圭)に結婚歴があったことで幻滅した潤子は一途に自分を慕う・・・ストーカーだが・・・高嶺にいつしか靡いていく。

高嶺が住職を継承するために自分がひばりに嫁として認められる必要があると感じた潤子は講師の職を辞する覚悟を決めるのだった。

「そんな・・・ひどい」

嘆く山渕百絵(高梨臨)・・・。

百絵にとって潤子は生まれて始めて出来たリアルなフレンドだったのである。

「泣くほどのことか」

毛利まさこ(紗栄子)はドライに呆れるのだった。

「でも・・・よく決心できましたね」

「愛があるから・・・」

「愛があるんですか」

まさこは「愛」とは無縁の存在なのである。

潤子、百絵、まさこって・・・中三トリオか。

少し、遅いじゃないか。

「ELA四天王崩壊ですね」

出番を確保するためにすべりこむ事務員の伊能蘭(中村アン)だった。

桜庭家では・・・父・満(上島竜兵)の退院祝い、母・恵子(戸田恵子)の帰宅祝いが行われていた。

辞職を発表する潤子・・・。

潤子の決意に・・・高嶺の心は揺れる。

「何も・・・仕事を辞めなくても」

「お義祖母様に認めてもらうには・・・覚悟を決めないと」

「なんだ・・・反対されているのか」

「なんで・・・ひばり様は・・・反対しているのかしら」

「もしや・・・お姉ちゃん・・・ノーメイクのひばり様を見てしまったとか・・・」

「キャーッ」

妹・寧々(恒松祐里)と母とで・・・恐ろしいセリフをふられているのだった。

「なんてことを・・・」

結婚に向けて大きく前進を始めた潤子に対して・・・高嶺は戸惑う。

そこには大きな試練が待ち構えていると予感したのである。

しかし・・・潤子に「あ~んして」と歯ブラシを咥えさせられる高嶺。

「結婚したくないの」

「したいです」

すでに・・・高嶺よりも結婚に前向きな潤子なのだった。

こうして・・・「ひばり様に結婚を許してもらおう大作戦」が始るのだった。

今回は・・・ある意味で・・・虐げられる潤子の転落の回である。

桜庭家という庶民の家に生まれ・・・夢を見て来た独身貴族が・・・シンデレラに恋をして・・・安楽な庶民の王家を捨てる覚悟をしてしまったからである。

そのためには・・・「ニューヨーク」を捨てなければいけないのだ。

「シンデレラ」でもかなり問題が発生していたはずである。

「王子様・・・庶民の娘と結婚するなんて・・・とんでもない」

「なりませんぞ」

「いけません」

とにかく・・・潤子は「シンデレラ」では王子様ポジションなのだ。

第一ラウンドは・・・高嶺によるひばりの説得である。

「潤子さんは仕事をやめて一橋寺の嫁になる覚悟です」

「だめよ・・・あの女はお前を不幸にする」

「どうしてですか」

「私が嫌いだから」

「・・・」

高嶺の説得は失敗した。

・・・というか・・・言葉の通じる相手じゃないよね。

ひばりの言動は・・・「実は潤子と高嶺は兄妹」でもなければ頭がおかしなことになっているレベルである。

寺田光栄(小野武彦)の「高嶺には四人の恋人がいた」・・・実は交際はすべて高嶺が朴念仁すぎて自然消滅・・・的なやや甘い脚本だからな・・・。

まあ・・・王道だから・・・これでいいけどね。

今回は・・・潤子の墜落を中心に描くので息抜きを引き受けるのは・・・木村アーサー(速水もこみち)だった。

百絵のために三嶋聡(古川雄輝)への告白の席をセッティングするアーサー。

「さあ・・・三嶋さんへの秘めた思いを・・・」

「え」と驚く三嶋。

「思いは秘めていません」

「しかし」

「三嶋さんは・・・BLに出てくる好きなキャラに似ているだけで・・・」

「キャラ・・・」

「如月様は攻めの中の攻め・・・スーパー攻め様で・・・クーデレの神・・・ちなみにクーデレとはクールだけど相手と二人になるとデレてデュフフフフフ」

おしゃれな店内を闊歩する腐女子百絵だった・・・。

「・・・というわけで・・・三嶋さん・・・ごめんなさい」

「なんか・・・僕がふられた感じになってますけど・・・」

「若手の二枚目にはありがちなことですよ・・・奢ります」

第二ラウンドは高嶺と潤子のお寺訪問・・・。

しかし・・・ひばりに塩をまかれて撃退される二人だった。

第三ラウンドはひばりの「おでかけ」を張り込む高嶺と潤子。

ここで・・・高嶺は・・・潤子のために「あんぱん」「牛乳」「カニおにぎり」「マットレス」「玩具」などを法衣から取り出すが・・・カイロだけは準備していなかった。

滝行のし過ぎで体温調節機能が狂い、冬でも暖房入らずの身体になっているからだろう。

「お話だけでも聞いてください・・・」

「古臭いやり口ね・・・」

脚本家がついに自虐を始めた・・・。

すかさず・・・土下座する潤子。

「お願いします・・・一橋寺の嫁として・・・どんなことでもする覚悟です」

「・・・そうですか・・・その覚悟を見せてもらいましょう」

第四ラウンドは・・・ひばりの潤子いじめである。

その間・・・天音はどんな権利があるのかわからないが・・・不動産関連のデベロッパーと一橋寺取り壊しの打ちあわせを進める。

そのことをひばりに告げる高嶺だが・・・ひばりは全く動じない。

そもそも・・・一橋寺を天音がどうにかできるわけがないが・・・ひばりがそういうことに疎い可能性もある。

まあ・・・このドラマの場合・・・基本的には「情」の部分で説明していくのだろう。

ひばりが・・・おそらく檀家筆頭である足利家に借金でもしていない限り・・・潤子が高嶺の嫁になれない「情」を持っているということである。

少なくとも・・・ひばりの振る舞いは足利香織(吉本実憂)よりも上の立場を示している。

ラブコメなので・・・あまり仕掛けすぎると・・・面白みが損なわれるが・・・ある程度の隠された謎は許容したい。

苦しいなりに辻褄はあわせているここまでである。

炊事洗濯掃除にひばりの買い物まで手伝わされ・・・披露困憊の潤子。

「潤子さん・・・無理をしないでください」

「星川さん・・・私はあなたを住職にしたい・・・そして住職のお嫁さんになりたいのです」

「潤子さん・・・」

見つめ合う二人・・・二人は顔を寄せるが那覇三休(寺田心)が会心のお邪魔虫である。

・・・最終回前なので。

最終ラウンド・・・大切な檀家の法要が近付き・・・潤子が手伝いを名乗り出る。

祖母の着物を着て・・・会食の給仕に挑む潤子だが・・・嫌味な賓客(大島蓉子)に汁物をぶちまけるという粗相をしてしまう。

「あなたが・・・どんな・・・努力をしても無駄よ・・・生まれも育ちも寺の嫁に相応しくない・・・第一・・・私はあなたが嫌いなの」

理不尽この上ないひばり・・・。

離れに下がった潤子の元へ高嶺がやってくる。

「席に戻ってください」

「あなたが心配です」

「私・・・星川さんの足手まといになりたくない・・・」

「足手まといなどではありません・・・潤子さん・・・私はあなたに・・・愛を教えてもらったのです」

「・・・」

「今の私があるのは・・・潤子さんのおかげです」

一人になった潤子に母から励ましの着信がある。

「大丈夫・・・」

「大丈夫よ・・・」

さらに・・・清宮から送別会の日程確認の着信・・・。

「どうかしたのか」

「どうもしません・・・」

「どうもしないって・・・声じゃないじゃないか」

「なんでもありません・・・」

潤子は送別会のスピーチの練習をする。

「私には夢がありました・・・いつかニューヨークで暮らす夢・・・ここはまるでニューヨークのような職場で・・・私の夢は半分かなったようでした・・・皆さんと過ごした時間・・・私はとても幸せでした・・・」

潤子のスピーチに耳をすまし・・・心が揺れる高嶺である。

愛を知らなかった自分に・・・愛を教えてくれた潤子。

潤子の夢を奪うことが・・・自分の愛なのか・・・という迷いが生じたのであった。

一方・・・ひばりから「京都に戻って修行をやり直せ」と命じられた天音は・・・豪華な食材を土産に桜庭家に潜入するのだった。

アーサーと百絵のひととき・・・。

「釣りではありませんよ」

「・・・」

「私は心からあなたを愛しています」

「なんだろう・・・この胸の高鳴りは・・・BLで感じる感動を何倍にも増幅したようなときめき・・・こんなにドキドキするのは生まれて初めて・・・」

「それは恋ですよ」

百絵は職場で踊りだすのだった。

百絵の演技プランは・・・今までの出演ドラマの中で・・・抜群じゃないか。

・・・まあ・・・地味な役が多かったからな。

消耗した潤子を一度家に送る高嶺・・・。

潤子は・・・英会話学校ELAを訪問して・・・仲間たちに温かい歓迎を受ける。

楽しかった日々を追憶する潤子に・・・アーサーは清宮の最初の妻が早世し・・・その後で潤子と出会った過去を明かす。

しかし・・・それは潤子にとって終わった恋であった・・・この時点では・・・。

ついに・・・建築スタッフを連れて・・・寺に殴りこみをかける天音。

何故か・・・動揺するひばり・・・。

「天音・・・馬鹿なことはやめなさい」

「何が馬鹿だ・・・兄さんは・・・桜庭さんの家に頻繁に出入りしているようですな。新しい家族でも作ったつもりですか。兄さんは・・・寺も女も手に入れていい気分でしょう・・・でも・・・あの婆がそんなに簡単に許してくれますかね」

「天音・・・」

「結局・・・兄さんは・・・婆に可愛がられて我儘放題に育ったんだ・・・婆に捨てられて・・・一人で生きて来た俺の気持ちはわからないよ」

「お祖母さまは・・・お前を捨てたりしていない」

「一度でも俺に会いにきたかよ・・・兄さんには他人の気持ちはわからない。兄さんは女を手に入れられていい気分かもしれないが・・・潤子さんはそのために夢を捨てたんだ・・・兄さんは・・・自分が寺も女も手に入れるために・・・潤子さんに夢を捨てさせたんじゃないか」

「・・・」

高嶺の心を抉る天音。

結局、騒動は天音の構ってほしい気持ちから生じたものだったらしい。

不動産屋としては迷惑な話なので・・・金銭的解決が求められることだろう・・・。

いや・・・契約のための文書偽造で通報されるぞ・・・。

しかし・・・潤子が夢を捨てて・・・嫁になる覚悟をしたように・・・高嶺は潤子のために・・・潤子を諦めようと決意する。

まあ・・・潤子の意志に反しているところが・・・論理的には矛盾しているが・・・なにしろ最終回前なのである。

いつものベンチで潤子と待ち合わせをする高嶺。

「待ち合わせして・・・星川さんと会うなんて・・・まるでデートみたい」

「・・・」

「お腹すいているでしょう・・・お弁当作ってきましたよ」

「潤子さん・・・あなたとは別れます」

「え」

「香織さんと結婚します」

「ええ」

「あなたのことはもう・・・大嫌いになりました」

「えええ」

・・・最終回前である。

街を彷徨った潤子の前に清宮が現れた。

清宮は潤子を抱きしめた。

・・・最終回前なのです。

頭のおかしな祖母と弟がいたら資産家でも結婚相手にそれなりに配慮するけどな。

申し訳ないもんな。

関連するキッドのブログ→第8話のレビュー

59009ごっこガーデン。神秘と歓喜の仏像コレクションセット。

エリ高嶺Pにあ~んさせて・・・歯ブラシぶっこみ・・・なんだかよくわからないけど・・・これが高嶺P受けの潤子攻めなのでしょうか~?・・・なんだかよくわからないけどセクシーな感じの調教プレイの一種でしゅか~。グフフ・・・。仏像ロイド皆さんは如来もあれば弥勒もありますが・・・チベット系の怪しいエロエロ仏は年齢制限があるのでじいやが鍵つき倉庫に収納していてご開帳なしなのでしゅ~。後でまこちゃんやアンナちゃんとこっそり覗いてみる予定でス~

| | コメント (8) | トラックバック (7)

2015年12月 7日 (月)

大いに屈する人を恐れよと伊藤博文は言った・・・明治十五年壬午事変(宮崎香蓮)

エジプトでは英国に対するウラービーによる反植民地運動が発生していた。

朝鮮半島では王父と王妃が権力闘争を繰り広げ、暴動が発生し、日本公使館員ら十数名が殺害される。

日本海軍は新鋭のコルベット艦「金剛」や「比叡」を朝鮮水域警備に派遣する。

朝鮮半島をめぐる清国と大日本帝国の思惑が軋轢を生じ始めていた明治十五年。

しかし・・・前妻を明治十四年に亡くし、後妻を明治十六年に迎える群馬県令・楫取素彦には・・・そんなの関係ないわけである。

伊藤博文と離婚後、大蔵官僚である長岡義之と結婚して十年以上の入江すみは当然、東京府在住と思われる。

すみの兄である野村靖は内務省の官僚となって、まもなく子爵となる。

伊藤博文は憲法調査のためにヨーロッバを外遊中である。

視察を命じた明治天皇は「芸者遊びはほどほどにせよ」と伊藤に意見したと言う。

井筒タツは京都の豪農と結婚して十年以上が過ぎている。

久坂玄瑞の母方の遠縁の家で養育された久坂秀次郎はこの頃、品川弥次郎と関係の深い大倉財閥に就職したらしい。

大倉財閥の大倉喜八郎は三井財閥と組んで、海運業を独占していた三菱に対抗した一派である。

もちろん・・・そこには長州閥と・・・土佐と組んだ薩摩閥の派閥争いの影が見える。

ついでに・・・あの内乱以来・・・富永有隣は国事犯として監獄に収容されている。

そういう・・・いろいろと面白い情勢は・・・この大河ドラマでは表現されません。

で、『燃ゆ・第49回』(NHK総合20151206PM8~)脚本・小松江里子、演出・末永創を見た。例によってシナリオに沿ったレビューはikasama4様を推奨します。今回も年末年賀状体制発動のためにイラスト描き下ろしはお休みです。楫取久子が明治十四年に没し、明治十六年に楫取美和子が誕生する。・・・スルーされた昭和十五年には明治維新の元勲である岩倉具視が亡くなり・・・続いて徳川幕府の大奥を閉めた天璋院が没している。時代を象徴する人間と・・・そうではない人間の対比というだけでも・・・そこそこ面白くなるのにと思うばかりでございます。どうせフィクションなら・・・鹿鳴館を建設するのは大倉組なので・・・就職した久坂秀次郎が・・・千代田城近郊で汗を流しているくらいであってほしい。なにしろ・・・鹿鳴館設立に一番熱心なのは不死身の外務卿・井上馨なのでございますから・・・。まあ、とにかく・・・師走ですな・・・。これほど大河ドラマで燃えない年末・・・記憶にございませんねえ。三年後の2018年は明治150年・・・なんか期待しちゃうんですが。ま・・・期待するだけあれでございますな・・・。

Hanamoe49明治十五年(1882年)一月、軍人勅諭が発布される。三月、伊藤博文が渡欧する。上野動物園が開園する。四月、板垣退助が岐阜で暴漢に襲われる。五月、講道館が設立される。米国で排華移民法が成立する。六月、アレクサンドリアで暴動が発生。七月、朝鮮の漢城で暴動が発生し日本公使館員らが多数殺傷される。岩倉具視死去。八月、戒厳令が制定される。英国軍がアレクサンドリアに上陸。九月、英国軍がエジプトを占領。十月、日本銀行開業。東京専門学校創立。十一月、天璋院死去。十二月、福島県で自由民権運動が高まり、警察署を襲撃、二千名が逮捕される。明治十六年(1883年)三月、新潟県で自由民権運動が高まり、活動家が誤認逮捕される。七月、鹿鳴館落成。日本鉄道により上野・熊谷間が開業する。八月、伊藤博文が帰国する。九月、三池炭鉱、高島炭鉱で暴動発生。十一月、鹿鳴館開館・・・。

前橋の県令邸では楫取素彦と美和子祝言披露が行われていた。東京からは伊藤博文の先妻である長岡すみ子が祝いに駆けつける。伊藤は派閥政治には無頓着と言われるが・・・忍びである。毛利目付け衆を軸とした独自の諜報網を持っている。すみ子はその組織に属するくのいちであった。

「その後・・・三菱の横やりはどうですか」

「土佐の忍びが潜伏して・・・妙義山周辺に忍び宿を作っているようです。松方様の方策で・・・没落した農民たちは困窮していますからね・・・福島県の一揆のような火種はどこにでもありますよ」

「福島の鬼県令は薩摩のお方・・・西郷様のお供をしたくぐり衆が多いので・・・忍びの数が不足していたようです」

「毛利忍びも・・・洋行中の伊藤閣下の護衛で人手が足りないのではありませんか」

「ほほほ・・・閣下などとは・・・大袈裟な・・・まあ・・・伊藤様は・・・猿飛ですから・・・いざとなったら逃げ足は天下一でございましょうけど・・・」

美和子は口の悪い年下の幼馴染に微笑んだ。

「おや・・・」

美和子は気配に振り返った。

「これは・・・おっかさん」

「まあ・・・佐助・・・大きくなったねえ」

「すみ様も・・・お達者そうで・・・」

「あら・・・山猿がお愛想を言うようになったよ」

「佐助は・・・術も伸びて・・・重宝しております」

「文・・・いえ、美和子様の仕込みのおかげでございます」

「佐助・・・どうした」

「やはり・・・旅の博徒を装って・・・明智流の忍びが北甘楽郡あたりに入り込んでいるようでございます・・・」

「そうか・・・旦那様の任期は来年あたりで終わるようだが・・・それまでは火消をしなければなるまいな」

「しかし・・・厄介ですね・・・相手は忍びでもなく・・・ただのあぶれ者ですし・・・」

「いつの世にも・・・はみ出して不平を唱えるものの種は尽きぬ・・・まあ・・・あの兄上の妹が言うのもなんだけれど」

「まさしく」

明治政府のくのいち・・・長岡すみ子は口元を歪めた。

関連するキッドのブログ→第48話のレビュー

| | コメント (0) | トラックバック (3)

2015年12月 6日 (日)

帰らざる失踪探偵(新垣結衣)待ち人来らずでも落胆しない男(岡田将生)狙った獲物は逃さない(要潤)

「リーガルハイ」の黛真知子と羽生春樹でおなじみの二人だが・・・今回は名探偵とワトソンくんというパートナーとなって・・・回を追うごとに親密さを増し・・・一日限りの恋を繰り返す間柄となっている。

設定上、これ以上なくせつない恋の物語である。

そして・・・そのことが・・・二人をベストカップルに仕上げている。

今朝のキッドの「夢」は豪華二本立てだった。

一本目は・・・上野樹里の「仮面ライダーのだめ」という変態的なものだっだが・・・そういう夢を見ていることが一種問題じゃないか・・・二本目は実写版「マッハGOGOGO/吉田竜夫」である。

マッハ号のレーサー三船剛が岡田将生・・・父親の仇を討つために遠隔操縦車マレンゴ号を操る山中四郎が要潤、そして運転席にいるだけの四郎の妹ユリがガッキーである。

「もう・・・復讐なんてやめて・・・兄さん」

「いやだ・・・復讐が終わるまで・・・お前が車を降りることは許さない」

「やめろ・・・お前は妹を殺すつもりなのか・・・復讐なんてやめて・・・自首するんだ」

ああ・・・お見せできないのが残念です・・・だから、そういう夢を見ていることがだな・・・。

で、『掟上今日子の備忘録・第9回』(日本テレビ20151205PM9~)原作・西尾維新、脚本・野木亜紀子、演出・小室直子を見た。気が付けば十二月である。すでに・・・秋ドラマも最終回に向かう最終コーナーに向かっている。本作品は一話完結のスタイルをとり・・・しかも・・・主人公の記憶が一日でリセットされるという究極の完結せざるをえない設定なのに・・・最終回へと続く最終回前・・・。この「間違えたリセット」を「初期化」できるかどうか・・・という話の流れが・・・心を騒がせるよねえ・・・。復元されないまま眠るハードディスクの群れがキッドを見つめているだけに・・・。

お前は今日から掟上今日子探偵として生きていく

掟上今日子(新垣結衣)の寝室の天井に書かれた文字。

「何か・・・知っているのでしょう」

隠舘厄介(岡田将生)は探偵斡旋業も営むアパルトマン「サンドグラス」のオーナー・絆井法郎(及川光博)を問いつめる。

しかし・・・キズナイホーローは・・・「今日子さんが探偵か・・・探偵が今日子さんか」などと意味不明の言動で厄介の追及をかわすのだった。

そこで・・・厄介はできる限り・・・朝の「サンドグラス」に顔を出す。

厄介の来ない日に今日子はウエイトレス・幕間まくる(内田理央)や潜入捜査員の也川塗(有岡大貴)が今日子から「もう一人のメンバー」について問う。

「・・・ということは・・・今日子さんの身体に・・・厄介くんの名前が刻まれている」と推理する三人だった。

厄介さん信用できる

今日子の身体にはそういう追記が発生していた。

「僕は・・・ただの客ですが・・・今日子さんとは何度もあっています・・・一緒にコーヒーをいかがですか」

「はい」

厄介にとって・・・至福の時は・・・今日子と過ごす瞬間である。

「ああ・・・そろそろ・・・行かないと」

厄介の出勤時間。

「今日は天気がいいから・・・私も散歩することにします」

至福の時間延長である。

勇気を出して・・・今日子を映画「名探偵めい子」(主演・ベッキー)に誘う厄介。

「いいですよ」

「え」

「あら・・・本気で誘っていなかったんですか」

「いや・・・本気です」

狼狽する厄介・・・微笑む今日子。

しかし・・・不運な厄介のために事件は動きだす。

「はい・・・置手紙探偵事務所です・・・江東区陽炎町三丁目ですか・・・」

今日子に仕事の依頼が発生する。

「気にしないでください・・・また・・・誘います」

「大丈夫です・・・仕事を終えたら・・・午後七時に映画館の前で待ち合わせしましょう」

「飲み物に注意してください」

「どうして・・・」

「睡眠薬でも入っていたら大変です」

喜びで跳び上がる厄介に微笑む今日子。

今日子は依頼者の待つ怪しい会社「縁結人」に向かう。

厄介はアルバイト先の「ヒナコ不動産」に向かう。

厄介は・・・待ち合わせの時間を待ちながら・・・不動産屋の男女島社長(遠山俊也)の指示に従い・・・真面目に勤務するのだった。

空いた時間には・・・今日子の過去について・・・調べるのが厄介の日課である。

今日子と知りあう前に不運な厄介が冤罪被害から脱出するために利用していた探偵の工藤(菊池均也)からは・・・「サンドグラス」のオーナーが三年前に法郎に代わり・・・法郎は金一封で探偵たちを傘下に治めたのだと聞かされる。

今日子一人のために運営される「サンドグラス」の資金源が気になる厄介なのである。

その頃・・・法郎は関西の実業家・態条空真の死亡記事を発見して顔色を変えていた。

「縁結人」で今日子を待っていたのは・・・経営者を名乗る結納坂社長(要潤)だった。

オフィスには血で描かれたような文字が残されている。

血の匂いを嗅ぎあてた今日子だったが・・・結納坂は「赤い絵の具で血ではない」と否定する。

「この文字は・・・金庫のナンバーを秘めた暗号です」

「なぜ・・・そう思うのですか」

「副社長の縁淵の筆跡で・・・金庫のナンバーを変えたのが彼だと思われるからです」

「なぜ・・・そう思うのですか」

「この金庫には・・・不正な手段で入手した個人情報の書類が入っています。縁淵は・・・それを悪用しようとして・・・私が叱責しました・・・私が書類を処分しようとしたのを知り・・・彼は金庫のナンバーを変え・・・この文字を残して・・・姿を消したのです」

「なぜ・・・文字を残したのでしょう・・・」

「おそらく・・・私への嫌がらせだと思います・・・彼は暗号作りが得意なことを私にいつも自慢していましたから・・・口惜しかったら解いてみろ・・・ということでしょう」

「なるほど・・・暗号には・・・いくつかの種類がありますが・・・基本的には・・・本当のことを隠すという目的があります」

「・・・」

「無意味な言葉に見えて実は意味があったり・・・意味があるように見えるけれど無意味だったり・・・」

丸いと四角が仲違い

逆三角形ならなれなれしい

直線ならば懐っこい

「この言葉にはそれなりに意味があるようですが・・・」

「そうですねえ・・・」

「コーヒーでも飲みますか」

「ここに来る途中で出前してくれるカフェのチラシをもらいました・・・経費でよろしいですか」

「構いません」

出前されたコーヒーを飲み終えた今日子は謎解きにかかる・・・。

「社長は・・・数学にお詳しいのでしょうか」

「数学は苦手です」

「丸と四角が相対するのは・・・円積問題を連想させます」

「えんせき・・・」

「円の正方形化が不可能だということは数学的に証明されています。しかし・・・見果てぬ夢を追う人は多い・・・円を四角にすることが無理だと知っているのに・・・世界を相手に戦争を始める大日本帝国の例があります」

「・・・」

「冗談はさておき・・・これは三行詩です」

「三行詩・・・」

「そう・・・しかも・・・πポエム・・・略してパイエムです」

「パイで・・・エム・・・」

「そうです・・・たとえば・・・英語でYes,I have・・・と言えば単語の文字数は314となります」

「314」

「円周率ですよ・・・およそ3.14ということです」

「・・・」

「ゆとりの場合は、youでもandでもnowでもいいわけです・・・およそ3ですから」

「まさか・・・もう・・・答えが」

「僭越ながら・・・まるい・・・3・・・と・・・1・・・四角い・・・4・・・が・・・1」

「ああ・・・」

「つまり・・・金庫のナンバーは31415926535」

「ナンバーは12ケタですが・・・」

「八文字の言葉が思いつかなかったのでしょう・・・でも円周率だから次は8に決まっているのです」

「・・・素晴らしい」

「しかし・・・本題は・・・ここからです」

「なんですって・・・」

「縁淵さんは・・・何故・・・暗号を残したのか」

「・・・」

「それは・・・犯人に血文字を消させないため・・・」

「犯人・・・」

「そうです・・・自分を殺した犯人・・・あなたですよ」

「何を・・・」

「気になるのは・・・整然としたオフィスに雑然と積まれた箱です・・・何かを隠すために・・・どこからか・・・運び出したような」

「・・・」

「ここでしょうか」

今日子がロッカーを開くと飛び出す死体・・・。

「見逃してくれ」

「それは無理ですね・・・出前の人に警察に連絡するようにメモを渡して置きました」

ドアの向こうに誰かがやってくる。

「警察です」

「タダ働きは残念ですが・・・犯罪を見逃すわけにもいきません」

しかし・・・ドアの向こうから現れたのは・・・出前の人だった。

そして・・・死体は生き帰り・・・一礼して去って行く。

「・・・」

「今日子・・・これは・・・君がかって・・・解決した事件だよ」

「・・・」

「君は忘れているだろうが・・・私は縁淵の親友だったのだ・・・事件の時に君と出会い・・・私と君は恋をした・・・そして一年以上・・・交際して結婚の約束もしていたのだ・・・ところがある日・・・君は消えた」

「あなたの話はおかしいですね・・・リセットされる前の私なら・・・あなたのことを覚えていますよ」

「君はいつから記憶を失ったんだい」

「企業秘密です」

「君は・・・リセットされる度に・・・昔の記憶が少しずつ消去される可能性を考えてみたか」

「・・・」

「君は・・・少しずつ・・・リセットされる前の記憶も失っているんだよ・・・」

「自分の知らない過去に付き合う気はありません・・・今日の私を待っている人がいるのです」

「なぜ・・・わかってくれないんだ・・・」

謎の男は今日子を抱きしめる。

誰かが映画「50回目のファースト・キス」を見たのだな。

今日子を待つ厄介は・・・想像する。

今日子はやってきて・・・チケットの代金がどちら持ちか確認する。

そして・・・飲み物とポップコーンの代金ももちろん厄介が払う。

それから・・・二人は映画を見る。

しかし・・・何時間待っても今日子は現れなかった。

そして・・・「サンドクラス」にも帰ってこなかった。

「関西の資産家の指示で・・・置手紙探偵事務所を維持していた」と法郎は言った。

「その人に月に一回・・・今日子さんの無事を定期報告をしていました」と塗は言った。

「私だけ・・・何もしらなかった」とまくるは言った。

「あの人が死んでしまった今は・・・すべてが謎だ」

「そんな・・・」

今日子は消えた。

厄介は・・・依頼の電話の言葉を頼りに・・・捜索をしてみる。

白髪で眼鏡の今日子は多くの人間に目撃されていたが・・・依頼者は架空の存在だった。

厄介は・・・思う。

まさか・・・あの今日子さんが・・・罠に落ちるなんて・・・。

十日後・・・映画館の前で黒髪の今日子が看板を眺めている。

厄介は声をかける。

「今日子さん・・・掟上今日子さん・・・」

「オキテガミ・・・キョウコって誰ですか?」

厄介は絶望した。

これは絶対に見逃せない最終回リストに入るな・・・。

関連するキッドのブログ→第8話

| | コメント (0) | トラックバック (7)

2015年12月 5日 (土)

忘れられない出産(綾野剛)生きるに値する命も値しない命もない(中村ゆり)優しくしてください(谷村美月)せめて母乳を(奥貫薫)体外受精成功(西田尚美)吸引します(松岡茉優)

もはや恒例の妊婦ゲストの乱打戦である。

まあ・・・周産期母子医療には妊娠期間という枠組があり・・・見せ所がそれぞれにあるわけである。

また・・・出産後のケアというのもこのドラマでは重要なポイントになっている。

悪魔が言うのもアレだが・・・「聖なるもの」が退行した世界では・・・「生命の価値」は「前提」であり、「生命の差異」を論ずることは「禁忌」である。

あらゆる「差異」は「個性」として尊重されるべきだが・・・そこには「苦悩」がつきまとう。

「人種差別」や「障害者差別」をする人々を「理解力が不足していると差別すること」があるわけである。

「理想の道」は遠い。そして「理想の形」は人それぞれである。

誰もが生きやすい世界を作ることは・・・けして容易ではない。

それでも・・・不屈の闘志で・・・「理想の世界」に挑む人間はいるのだ。

すべてがだんだんとよくなることを信じて・・・。

で、『コウノドリ・第8回』(TBSテレビ20151204PM10~)原作・鈴ノ木ユウ、脚本・坪田文、演出・土井裕泰を見た。重い問題とは・・・答えが見えにくいものである。生きていることが幸せでなければ増殖することを望めないという考え方と増殖することが幸せであるという考え方には相反する部分があるわけである。「生まれたいと望んだわけではない人」が子を産み育てることは最初から深刻な問題が含まれている。もちろん・・・五体満足で経済的な困窮も知らず・・・のほほんと生きている人には無縁の悩みかもしれない。しかし・・・確率的に襲ってくる何らかの障害に直面した時・・・人は慄く。助けを求めて差し出された手をとる人がいて欲しい・・・。心ある人々はささやかに願う・・・。

ペルソナ総合医療センターの周産期母子医療センターの産科医・鴻鳥サクラ(綾野剛)には忘れられない出産がある。

二年前のこと・・・川村忠志(永岡佑)・実咲(中村ゆり)夫妻の第一子は妊娠20週で「無脳症」と診断された。無脳症は神経学的奇形症で大脳半球が欠損または小塊に縮小している病状である。生命の維持に重要な役割を担う脳幹の発達も障害され発症した胎児の75%は死産となり出産した場合も生後一週間以上生存することは難しいとされている。

実咲の胎児は出産後の生存は不可能と診断された。

母体の健康のためにも早期中絶を提案するサクラ。

すでに・・・胎動している「わが子」を処分することに同意できない実咲は苦悩する。

「もしも・・・その子のために・・・君が死んだら・・・僕はその子をずっと怨んで生きて行くことになる」

夫の忠志の説得で中絶に同意する実咲だった。

「おめでとうございます・・・男の子です」

しかし・・・母体を出た新生児はすでに息絶えていた。

「死産」である。

「つばさ・・・つばさ・・・」

「・・・」

「名前をつけたんですよ・・・天国に上手に飛んでいけるように・・・」

「いい名前ですね」

母親は泣き、父親も泣いた。

四宮春樹(星野源)はサクラに声をかけた。

「終わったのか・・・」

「うん」

「そうか」

「・・・僕は無力だ」

「俺もだよ」

「・・・僕たちは無力だ」

「そうだな」

実咲は第二子を懐妊し・・・すでに臨月になっていた。

「お腹・・・さわってもいいですか」

「・・・ええ」

待合室で妊娠20週の妊婦である土屋マキ(谷村美月)が声をかけてきた。

「あ・・・動いた」

「・・・」

「私・・・初産なんです・・・お腹の子供が動くだけで・・・こんなに幸せな気持ちになるとは思いませんでした・・・あなたは・・・」

「私は・・・二人目です・・・」

実咲の担当医はサクラだった。

「順調ですね」

「先生・・・私はお腹で赤ちゃんが動く度にこわくなるんです」

「・・・」

「あの子のことが・・・どうしても乗り越えられない」

「・・・」

マキの担当は四宮春樹(星野源)だった。

「お腹の中の赤ちゃんは口唇口蓋裂だと思われます」

「え」

「先天性異常の一つで・・・おそらく口唇の一部に裂け目が現れる状態の口唇裂・・・場合によっては軟口蓋あるいは硬口蓋またはその両方が閉鎖しない状態の口蓋裂かもしれません。出産後に治療ができるので心配することはないですよ」

「ええ」

「次回の検診でくわしいことをお話しします」

「えええ」

ツンツンな四宮の対応にハラハラする助産師の小松留美子(吉田羊)だった・・・。

素晴らしいインターネットの世界で「口唇口蓋裂」を検索したマキはショックを受けるのだった。

「なんで・・・私の赤ちゃんが・・・こんなことに・・・」

待合室で泣きだすマキ。

居合わせた実咲はその背中をそっと撫でる。

夫の昌和(森岡龍)とともに再来院するマキだった。

「私はどうすれば・・・」

「お話した通りです」

「ショックで・・・何も覚えていません」

「赤ちゃんは順調です」

「でも・・・私にできることは・・・」

「治療は出産後にすることなので・・・今は特にありません」

「・・・」

見かねたサクラが土屋夫妻を引きとるのだった。

「私・・・何か悪いことをしたのでしょうか」

「お母さんには・・・問題ありません・・・これは統計的にはおよそ1/500~600の確率で誰にでも起ることなんです」

「・・・」

「評判のいい整形外科医を紹介しますので・・・一度、相談なされたらどうでしょうか」

「・・・お願いします」

サクラは整形外科医に連絡するが・・・すでに四宮が依頼済みだった。

新生児科の後期研修医・白川領(坂口健太郎)はお約束の暴言である。

「治療方法もあるのに・・・大袈裟なんですよね」

しかし・・・四宮は白川の足を踏みつける。

「いたい」

「これは・・・失礼」

「・・・」

不服そうな白川にサクラは告げる。

「妊婦さんはただでさえ・・・不安なものだ・・・ましてわが子が障害を抱えていると知った親がどんなに・・・不安になるか・・・それを大袈裟だなんて言うべきではない・・・と四宮先生は言いたかったんじゃないかな・・・」

「・・・」

新生児へのチューブ挿入の技量不足をベテランの新井恵美(山口紗弥加)に叱責された白川は研修医仲間の下屋加江(松岡茉優)に愚痴る。

「俺・・・この仕事向いてないのかもな・・・実家帰って・・・小児科継いだ方が」

「そうすれば~・・・いいね、逃げる所がある人は・・・赤ちゃんも・・・お母さんも・・・どんなにつらくても・・・病気や障害から逃げることはできないのよ・・・」

吸引技術を習得して無事出産に導いた下屋は成長していた。

「・・・」

未熟児を新生児集中治療管理室に預けている母親の森口亮子(奥貫薫)が母乳を届けにやってくる。

今橋医師(大森南朋)は赤ちゃんへの面会を奨めるが・・・心に葛藤を抱えた亮子は拒絶するのだった。

今橋は人形を使って挿管の練習をする白川に声をかける。

「君に読ませたい手紙がある」

「手紙・・・」

不安を抱えて検診に訪れたマキ・・・。

サクラに同席を申し込んだ白川は・・・一通の手紙を差し出す。

「これは・・・口唇口蓋裂の赤ちゃんを出産したお母さんから病院に届いた手紙です」

手紙には・・・告知された時のショックや・・・その後の経過が綴られ・・・そして治療された愛児の写真が添えられていた。

「同じ悩みを抱えた患者さんに読んでもらいたいと・・・書かれています」

写真を見たマキに・・・困難に立ち向かう勇気が生まれる。

「・・・治るんですね」

「はい」

「私・・・がんばります」

治療にはそれなりの困難がある。

サクラの奨めでマキは実家の両親に相談することに決めた。

「なんで・・・あなたの子が・・・そんなことに・・・」

マキの母親は顔を曇らせる。

「そんなことって・・・なによ・・・」

そこでマキの祖母が言葉を挟む。

「すごいねえ・・・今は・・・お腹の中の写真が撮れるんだねえ・・・マキの赤ちゃん、かわいいねえ」

4Dエコー画像を見て微笑む祖母。

マキの父親は若き日の黒川正宗ではなくてマキの夫である昌和に頭を下げる。

「子供のかわいくない親なんていません・・・どうか、マキのことを支えてやってください」

「お義父さん・・・」

ちなみに・・・「龍馬伝」の武市夫妻そろい踏みである。ついでに「サムライせんせい」の富子もいるのでダブル富子だ・・・わかる奴だけわかればいいので。

生まれてこれなかったものの・・・悲哀・・・生まれてくるものの・・・苦難。

生と死の狭間で・・・ベイビーはプレイをする。

お約束で鳴る呼び出し音。

実咲の陣痛が始ったのだ。

サクラは口紅を拭うのも忘れ・・・病院の女子職員たちの心をあらぬ妄想に導く。

「がんばれ・・・」

「先生・・・」

無事出産である。

「私・・・今・・・あの子がいてくれて・・・よかったと思うことができました・・・」

「そうですよ・・・つばさくんが・・・いたから・・・今のあなたがいるのです」

「はい」

マキは・・・四宮を訪ねた。

「先生・・・私言いたいことが三つあります」

「・・・」

「一つ・・・形成外科に行って説明を聞いてきました・・・二つ・・・私はこの子をきっと治してみせます・・・三つ・・・妊婦にはもっと優しくしてください」

「ふはっ」

小松のハニワにも笑わなかった四宮は密かにデレた・・・。

そして、不妊治療の専門医・岸田秀典(高橋洋)は患者の相沢美雪(西田尚美)に朗報を伝える・・・。

関連するキッドのブログ→第7話のレビュー

| | コメント (0) | トラックバック (5)

2015年12月 4日 (金)

南くんの恋人〜my little lover(山本舞香)ちよみのこと嫌いになったんだよ(中川大志)逮捕しちゃって(吉田里琴)

谷間である。

「南くんの恋人」がほぼ10年ぶりのドラマ化なのである。

キッドはなんとなく・・・深田恭子版の「ちよみ」をレビューしていた気がするのだが・・・木曜ドラマ「南くんの恋人」(2004年)なのでこのブログの開始前の作品だったんだなあ・・・。

その前の高橋由美子版が1994年、第一作の石田ひかり版が1990年である。

最初の映像化から・・・25年、原作漫画(1985年)からは30年の月日が過ぎ去っている。

それなのに・・・「彼女が小さくなってしまうこと」という主題は・・・まったく古びないな。

もちろん、アンデルセンの童話「親指姫」を下敷きにした小美人艶話だから・・・と言えるのだが・・・やはり・・・フィギュア大美少女所有は男子一生の夢だから・・・ではなくて・・・そこには聖なるものへの憧憬があると考えられる。

邪悪な悪魔が言うのもなんだけれど・・・聖なるものの否定が蔓延した世界では・・・巨大なる神の対極に・・・小さくて儚い聖なるものの存在が・・・怪しい燐光を放つのである。

ちよみ、かわわいいよ、ちよみ・・・と囁くしかないのだ。

で、『南くんの恋人〜my little lover・第1回』(フジテレビ201511100235~)原作・内田春菊、脚本・新井友香、演出・小中和哉を見た。「南くん」なので浩之(武田真治)だったり進(二宮和也)だったりもするが今回は南瞬一(中川大志)である。四代目ちよみは堀切ちよみ(山本舞香)で・・・歴代ちよみの中でも屈指のちよみっぽさがあると思う・・・どういう基準だよ。

今回の舞台は田舎の海辺の街・・・。ちよみは高校生で・・・通学しているのが館山第一高校なので千葉県なのだろう・・・。とにかく・・・東京は通勤圏ではないらしい。

南くんとちよみは幼馴染で・・・家は小道を挟んで隣接している。

幼い頃・・・南くんの祖母・登美子(角替和枝)は二人に「一寸姫」の伝説を物語る。

河原で遊んでいた幼女時代のちよみは自分の靴を流してしまい・・・川面に浮かぶ靴の中に一寸姫を垣間見るのだった。

演出がウルトラマン・シリーズの人なのでグイグイ来ます。

南くんは幼いちよみに花冠を贈り・・・永遠の愛を誓う・・・。

そして、月日は流れた。

ちよみは・・・カフェ「花泥棒」を経営する両親・・・川島なお美より三歳下の女子大生タレントではなくて母・律子(秋本奈緒美)・・・ケータイ刑事の鑑識ではなくて父・譲二(大堀こういち)と大物子役ではなくてクールな妹・明日香(吉田里琴)に囲まれて明るい女子高校生になっていた。

しかし・・・同じクラスに通う瞬一は・・・中学生の時に父親の昇・(宮川一郎太)が出奔、看護師の母親・笑子(有森也実)に育てられ・・・何故か屈折してしまったらしく・・・成績は優秀だが無口で暗い男子高校生になっていた。

父親が家を出て行った時に父親に縋りついた姿を・・・ちよみに見られた瞬一の中に「わだかまり」が生じたらしい。

翌日も「おはよう」と声をかけたちよみに返事をしなかった瞬一。

それ以来・・・二人は疎遠になってしまった。

高校に進学したちよみはダンス部で活動しながら・・・瞬一に対する鬱屈した思いを月兎ミカエラのペンネームでオンラインノベルに託し発散している。

クラスには親友の御木本あみ(佐々木萌詠)やちよみに想いを寄せる手芸部の高木睦(鈴木身来)もいて・・・それなりに充実した生活である。

お約束の出会いがしらのキスをするちよみと南くんである。

しかし・・・高校三年生の新学期・・・学級委員選挙で南くんが選ばれると・・・やはり選出されたちよみが躊躇している間に・・・野村リサコ(千葉麗子)や野村麗花(宮地真緒)に続く宿命のライバル野村・・・南くんの母が勤める病院の一人娘である二十歳のなんちゃって高校生ではなくて野村さより(中山絵梨奈)が立候補して・・・南くんのパートナーの座をかっさらっていく。

そして・・・月兎ミカエラの正体を見抜いた高木はちよみに告白する。

高木の好意を心から喜べないちよみ。

南くんと野村が相合傘で歩いているのを目撃したちよみは・・・中学時代から鬱積していた南くんへの思いを爆発させるのだった。

そして館山の街には「嵐」が近付いていた。

雨の中・・・帰宅したちよみは・・・将来の夢であるダンサーを両親に否定される。

「せっかくそこそこの高校に入ったんだから・・・受験勉強に本腰を入れて・・・将来のことを考えなさい」

「お母さんだって・・・できちゃった結婚で・・・私を産んだくせに」

「なにっ」

何か痛い所を突かれたらしく・・・初めて娘に手を出す父。

とどろく・・・雷鳴の中・・・ちよみは家を飛び出す。

嵐に備えてパトロール中の駐在・堺沢(富岡晃一郎)はちよみの姿を見かける。

母からは「お醤油買ってきて」と優しいメールが届く。

帰り道で・・・南くんと遭遇したちよみ。

「どうして・・・私を避けるの・・・」

「お前こそ・・・俺の行く先々に現れるなよ」

「昔は・・・仲良しだったのに・・・もうずっと話もしていない」

「わからないのか・・・お前のこと嫌いになったんだよ」

「・・・」

ちよみの中で悲しみが爆発し・・・風に煽られて赤い傘が飛んでいく。

傘を追いかけてちよみは・・・昔、幼い南くんに告白された岩場にたどり着く・・・。

岩陰で雨宿りするちよみ・・・。

「なんでこんなことに・・・もう一度・・・あの日に帰りたい・・・小さかった私になりたい」

怪しい低気圧が激しい風雨をもたらす。

いつしか・・・眠りに誘われねちよみ・・・。

気がつくと・・・ちよみは全裸だった。

「え」

周囲に広がるちよみの巨大な衣服・・・。

「私・・・ちっちゃくなっちゃった・・・」

仕方なく高木からプレゼントされたマスコットの衣装を着用するちよみ・・・。

「うそおおおおおおお」と叫ぶのだった。

しかし・・・その叫び声は・・・小さいのだ。

原作の「南くんの恋人」には設定やストーリーらしいものはほとんどない。

脚本家の妄想が・・・設定を造形していく面白みがある。

問題は・・・原作では「はかなく・・・死ぬ運命」が・・・ドラマではお茶の間の反対で描きにくいことである。

まあ・・・だって・・・ちよみは・・・死ぬには惜しい存在だものねえ。

はたして・・・今回の結末はどうなるのでしょう。

関連するキッドのブログ→めぞん一刻

| | コメント (2) | トラックバック (0)

2015年12月 3日 (木)

鞠躬尽力死而後已こそ武士の本懐(錦戸亮)諸葛亮かぶれかっ(神木隆之介)軽いけど強い(比嘉愛未)

坂本龍馬の土佐脱藩は文久二年(1862年)三月二十四日のこととされている。

後に武市半平太が投獄される要因となる吉田東洋の暗殺は同年四月八日である。

このために・・・龍馬は東洋暗殺の実行犯として疑われている。

土佐藩の影の実力者である前藩主・山内容堂は・・・東洋に激しい執着があり・・・恐ろしいほどの執念で復讐を遂げる。

尊皇攘夷派の利用価値がある間は半平太を重用し、文久三年の政変で長州藩が失脚するとついに逮捕、投獄を命ずる。

半平太は長州藩への亡命を拒否し、君命に従ったのだった。

獄中の半平太が首謀者として最期まで容疑を認めないと知ると「不敬」という名目で切腹を命じたのである。

半平太が切腹したのは慶応元年(1865年)閏五月十一日のことである。

容堂は一度は脱藩の罪を許した龍馬に帰藩命令を出していた。

第一次長州征伐後の混乱の中で薩長同盟を画策する龍馬は君命を無視し、西郷隆盛とともに薩摩と下関を往還していた。

土佐勤王党壊滅の報せに龍馬がどれほどの憤怒をしたか・・・想像にあまりあるものがある。

その怒りの矛先がいつか・・・自分たちに向けられることを・・・土佐の指導者たちは忘れなかっただろう。

龍馬暗殺の首謀者の一人に山内容堂があげられる由縁である。

で、『サムライせんせい・第6回』(テレビ朝日201511272315~)原作・黒江S介、脚本・黒岩勉、演出・片山修を見た。幕末の土佐では・・・徳川幕府によって土佐一国の主となった山内家臣団を祖とする上士と・・・旧国主であった長宗我部家臣団を祖とする郷士との間に確執があった。武市半平太は郷士あがりの上士であり・・・山内家に対する忠誠を誓いながら、郷士たちの代表として土佐勤王党を指導していた。階級闘争を展開しつつ武士としての倫理に縛られる。この矛盾が半平太を切腹に追い込んでいくのである。勤王志士である前に土佐藩士であるべきか・・・土佐藩士である前に勤王志士であるべきか・・・このような葛藤は日本国民と沖縄県民にも脈々と受け継がれている。甘えているのが誰なのかは・・・出口のない迷宮へと心ある人を誘いこむだろう。誰かが誰かの責任を問う時・・・「死」はたとえようのないインパクトで人心を揺さぶるものなのである。

多くのいい加減な人々は・・・そんなこと言われてもな・・・という本音を必死に隠すしかないのだ。

だが・・・武士はいつでも責任をとって切腹するものなのである。

そうでない場合は暗殺されるので。

ついに日常化した・・・武市半平太(錦戸亮)と楢崎こと坂本龍馬(神木隆之介)のいる佐伯家の朝食風景。

神里村役場に勤務する晴香(比嘉愛未)は「このままでいいのか」と疑問を投げかけるが・・・なにしろ半平太と龍馬は無国籍なのである・・・「いいんじゃないでしょうか」と受け流す佐伯先生(森本レオ)だった。

赤城サチコ(黒島結菜)とつりあう男になるために一攫千金を狙う佐伯寅之助(藤井流星)は新しいビジネスとして「ヤンキーグッズのアンティークショップ」の立ち上げを宣言する。

「なにしろ・・・群馬県はヤンキーグッズの宝庫だから」

「誰が買うのよ・・・」と晴香。

「海外のクールジャパンファンが」

「微妙だな」と龍馬。

「結局・・・骨董屋か・・・」と半平太。

しかし、サチコは・・・おそらくお小遣いで・・・大量のヤンキーグッズを収集するのだった。

これが上州名物・・・嬶天下体質なのか。

半平太と龍馬は連れだっていつもの看板の元へやってくる。

時間漂流者の仲間探しは日課らしい・・・。

今回、二人が発見したのは・・・「11人いる!」のサムではなくて傷ついた前科者・鬼沢克己(RED RICE)である。

カラオケスナック「カーニバル」に鬼沢を担ぎこむ半平太と龍馬。

アルバイトをしている寅之助は鬼沢と気が付いて驚愕する。

「この人・・・群馬の暴走族の頭だった・・・鬼ダルマです。昔、俺も世話になったことが・・・」

「暴走族・・・」と半平太。

「謀反人の集団っていうか・・・山賊の卵っていうか・・・半端な渡世人というか」と龍馬。

「侠客の親分なのか」

「まあ・・・当たらずとも遠からずというか」

「五年前に栃木の暴走族と抗争して・・・一人で相手を全滅させたけど・・・そのために傷害罪で服役して・・・」

「なに・・・獄につながれておったのか」

「ここに置いておくのは・・・いろいろと問題が・・・」

「何故だ」

「優菜ちゃんの父親なので」

「何・・・すると理央殿のご亭主ではないか・・・」

たちまち・・・感情移入する半平太。

自分と妻の富子(谷村美月)と・・・鬼ダルマと「カーニバル」の経営者である篠原理央(石田ニコル)と優菜(岩崎春果)の母娘を重ね合わせたのである。

「理央殿は・・・富子のように・・・夫の帰りを待つ身であったか・・・」

「あら・・・ペータ先輩いらっしゃい」

「おお・・・理央殿・・・御亭主が獄より戻られたぞ」

「ええっ」

しかし・・・鬼ダルマに愛想をつかした理央はすでに獄中離婚をしていたのだった。

「何・・・獄にある間に・・・離縁じゃと・・・」

自分の身に置き換えて涙目になる半平太だった。

「こんな男より・・・ペータ先輩の方がずっといい」

「何・・・」と顔色を変える鬼ダルマ。

鬼ダルマは半平太を神社の境内に連れ出す。

「俺とタイマンで勝負しろ」

「タイマン?」

「果たし合いだよ」

「何故じゃ・・・」

しかし、問答無用で喧嘩を始める鬼ダルマ・・・無論・・・鏡心明智流免許皆伝の半平太の敵ではない。

「まいった・・・あんた・・・強いな・・・あんたになら・・・理央をまかせられる」

「なんじゃと・・・」

「実は・・・俺に怨みを持つ栃木の暴走族連中が・・・理央を狙っている・・・俺はどうなっても構わないが・・・理央たちに迷惑をかけられない・・・」

あわてて・・・店に戻るが・・・理央の姿はない。

「理央さんは・・・買い出しに・・・」と寅之助。

「いかん・・・」

しかし、龍馬は慌てず騒がず・・・理央に携帯電話で連絡するのだった。

理央と合流するために優菜のいる学習塾に向かう一同。

佐伯家の庭は・・・サチコの集めたヤンキーグッズが占拠していた。

「チョリ~ス」

サチコは売れっ子なのでスケジュールが立て込んでいるらしく・・・去って行くのだった。

しかし・・・父親の件で苛められたらしい優菜は脚をすりむいていた。

「平気だよ・・・慣れているから」

しかし・・・半平太の怒りは学習塾の生徒に向かう。

「お前たち・・・黙って見ていたのか」

「だって・・・相手は上級生だし・・・」

「義をみてせざるは勇なきなりじゃ」

しかし・・・子供たちの母親がやってきて・・・理央母娘を遠ざける。

「私たちを巻き込まないで」

「ご迷惑かけてすみません」

女子供を相手にそれ以上言うのを憚った半平太は店に戻る理央の護衛役を務める。

しかし・・・待ち伏せしていた栃木の猿軍団に眼つぶしスプレーや電撃という近代兵器で不意打ちされ・・・不覚をとる半平太だった。

「鬼ダルマに・・・女房を返して欲しかったら・・・いつもの倉庫に来いと伝えろ」

「待て・・・」

しかし・・・理央は猿軍団に拉致されてしまう。

駆けつけた龍馬に救助される半平太。

理央の危機を知った鬼ダルマは死地に赴く。

後に続こうとする半平太を龍馬が制止する。

「その体で行くなんて・・・無謀だよ」

「そうだよ・・・」と寅之助。

「寅之助・・・お前は鬼ダルマ殿に恩義があるのではなかったのか」

「それは・・・」

「晴香殿も・・・理央殿の友であろうが・・・」

「でも・・・」

「とにかく・・・世話になった理央殿を見捨てることなど・・・わしにはできん」

「おんしは・・・いつもそうじゃのう・・・久坂さんも・・・中岡も・・・長州に逃げろと言うたんじゃろう・・・それじゃっちゅうに・・・おんしは・・・諸葛亮孔明の出師表など持ちだして・・・なんが・・・慎みかしこまって死ぬまで力を尽くすがじゃ・・・死んだら元も子もないき」

「龍馬・・・」

「・・・」

「やはり・・・おんしとわしは・・・道が違うようじゃのう」

猿軍団のリーダーは理央を緊縛し恫喝する。

「待ってろ・・・今、鬼ダルマの目の前でヒーヒーいわせてやっから」

「・・・」

そこへ鬼ダルマ登場。

「仕返しは俺にしろ・・・理央に手を出すな」

鬼ダルマは無抵抗で袋叩きになる。

「地獄をみせてやるぜ・・・女房もガキも売り飛ばす」

「そこまでだ・・・」

半平太登場である。

「なんだ・・・丁髷か・・・」

「拙者は・・・武市半平太」

特攻する半平太・・・しかし多勢に無勢である。

「やっちまえ」

「待った・・・」

龍馬と特攻服の晴香・寅之助姉弟登場である。

「なんだ・・・お前ら」

「わしは・・・土佐の龍じゃ」

「・・・北吾妻の寅」

「聴こえねえぞ」

「村役場の晴香」

「むらやくば・・・」

「わしは・・・武市半平太の身内じゃ・・・よって助太刀いたす」

龍馬は一陣の風となって猿軍団をなぎ倒した。

「強い・・・何者なんだ」

「あれ・・・知らなかった・・・あの人は坂本龍馬よ・・・」

「えええええええ」

坂本龍馬は北辰一刀流の達人である。

半平太は息を吹き返す。

「龍馬・・・」

「これでもわしは土佐勤王党に血判を捺した男じゃき・・・」

「お前がおったら・・・負ける気がせん・・・」

晴香は隙を見て理央に封印されていた赤いメリケンサックを渡す。

「今回だけよ」

「ありがとう」

猿軍団は壊滅し、軍団長は理央を人質に逃走を図る。

しかし・・・目に飛び込む赤い凶器。

「う・・・そのメリケンサックは・・・あんた・・・紅の理央なのか」

「うざいんだよ」

一撃で軍団長を屠る理央だった。

大勝利である。

後腐れのないように死体は埋めるのか・・・。

塾に凱旋する武市軍団。

しかし・・・佐伯家に・・・警察関係者である氏家八尋(神尾佑)の姿を見かけた龍馬は何故か身を隠す。

そして・・・何者かが龍馬を昏倒させるのだった。

現代に先着した龍馬は・・・どうやら・・・何かをしでかしていたようだ。

まあ・・・そもそも・・・龍馬は・・・武市半平太より・・・ずっと危険な革命家なのである。

関連するキッドのブログ→第5話のレビュー

| | コメント (0) | トラックバック (4)

2015年12月 2日 (水)

ただいま転落中(松坂桃李)ただいま監禁中(菜々緒)殺さないと生きていけない人って・・・(木村文乃)

拒食症や過食症に悩む人は精神的に失調している。

失調には心理的な原因があることもないこともある。

痛みには苦しみが伴う事が多い。

苦しみという名の電車に乗っている人間は生きながら地獄の振動に揺られている。

食べ過ぎは健康に悪いが・・・食べなければやがて死ぬ。

食べなくても生きていけるのは植物のような状態の人間だけである。

殺さずに生きていける動物はいない。

殺し過ぎるのも病気だが・・・殺せないのも病気なのだ。

なぜ・・・そんなことを・・・するの。

「そうしなければ生きていけないからさ」と死の天使は囁く。

で、『サイレーン刑事×彼女×完全悪女・第7回』(フジテレビ20151204PM10~)原作・山崎紗也夏、脚本・佐藤嗣麻子、演出・白木啓一郎を見た。正常な人間の目から平常心で人間を殺傷できる人間は異常に見える。しかし、シリアルキラーにとってそういう人間は単なる獲物に過ぎない。シリアルキラーにとって人間を殺せない人間は心を病んでいるとしか思えない憐れな存在なのである。多くの人間は後天的に・・・訓練などによって殺人の恐怖を克服する。しかし・・・先天的に人間を殺すために生まれて来た人間がいないとは誰にも断言できないだろう。少なくとも人間は人間を殺すことがあると・・・誰もが知っている。

殺人の禁忌(タブー)が亢進し「人を殺しても必ずしも死刑にならない」社会では非殺人者は心の安定を得やすい。近親者を殺害されたものの復讐心は愚行を招く間違った精神状態と見なされ、殺人者の更生を願い信じる態度を肯定する。

真なる殺人者にとって・・・非殺人者は・・・愚者あるいは狂人にすぎないのかもしれない。

戦場に死の天使が現れる。ヴァルキリーたちは殺し殺されたものを祝福し・・・天上に導いていく。翼ある死の御使いたちは殺人者の賛歌を奏でる。

航海者たちを死の天使が襲う。ハーピーは冒険するものに喜びと恐怖を授ける。怪鳥の叫びを響かせて。

翼を失ったセイレーンは夜の静寂に蹙る。波の音や風の音は古き神の声である。冥府へ向かう魂は死の旋律に身を委ねる。

脚を失くしたローレライは誘う。生きる苦しみから人間を解き放ち、喜ばしい死へと人間を導く。その歌声は愛に満ちている。

どこにでもいる・・・特別じゃない・・・死神たち。

橘カラ(菜々緒)に魅了された孤独な資産家の渡公平(光石研)の人里離れた別荘。

隔離された地下室で警視庁機動捜査隊員・猪熊夕貴(木村文乃)は目覚める。

失神前の記憶は混乱している。

(誰かがいた気配があった)(カラさん)(カラさんの他に誰かが)(殴られた)(殴ったのはカラさん)(そんなはずはない)(カラさんはどこに)(カラさんは無事なのか)

猪熊は拘束具によって身動きができない。

打撃された後頭部の鈍痛。

(しかし)(私を殴って失神させたのはカラさんだった)(そんなはずはない)

地下室へ続く階段を赤いドレスのカラが下りてくる。

「カラさん・・・」

「猪熊さん・・・」

「・・・無事なの・・・」

「もちろん・・・」

「私を殴った相手は・・・」

「私よ・・・」

「そんな」

「あなたは・・・素晴らしい正義感を持っているけど・・・懐疑する能力に欠けたところがある」

「・・・何を言っているの」

「大丈夫・・・安心して・・・あなたに素晴らしいプレゼントがあるから」

「・・・」

「だから・・・大人しくしていてもらうわ・・・」

「やめて・・・痛い」

薬物を注射された猪熊は意識を失った。

売春婦のレナ(入山杏奈)を通じてキャバクラ嬢としてのカラの常連客の前川(石井正則)から情報を得た謹慎中の警視庁機動捜査隊員・里見偲(松坂桃李)はとある地方にある栄西高校を訪問していた。

「橘カラは・・・67期生・・・平成16年度の卒業生ですから・・・今年、30歳になりますね」

里見はカラの実年齢に違和感を覚える。

(俺より・・・年上なのか・・・やはり化け物だな)

卒業写真の橘カラは眼鏡を使用していたが・・・確かに面影がある。

(どこを整形したのか・・・わからない)

大切なのは・・・カラが眼鏡をしていたことである。

(今は・・・コンタクト使用なのか)とも考えない里見。

卓抜なカラの身体能力と視力の関連性を考察できない里見の捜査官としての洞察力不足。・・・致命的じゃないか。

再び・・・目が覚めた猪熊はカラに化粧を施されている。

衣装はミニスカポリスに着替えさせられている。

「ほら・・・警察官でも・・・こんなに美しくなれるのよ」

「これは・・・着せ替え人形ごっこなの」

「あなたを・・・最高の形で殺したいの」

「殺したい・・・」

「そうよ・・・あなたには何の怨みもないけれど・・・私が殺すの」

「何故・・・」

「あなたの魂を手にいれるためよ」

「え」

一瞬の隙をつき、猪熊は攻撃に転じる・・・しかし、拘束された状態でカラに敵うわけもなくねじ伏せられる。

里見は個人情報について無頓着な学校関係者から聞きだしたカラの実家を訪ねる。

しかし・・・橘家は無人だった。

近所の農家の女性が通りかかる。

「美人さんだったねえ・・・学校の成績も良くて・・・礼儀正しい娘だったよ・・・」

「・・・」

「それが急に見えなくなって・・・」

「他に何かご存じありませんか・・・十和田さんのお嬢さんと仲がよかったね」

「十和田・・・」

里見はまた着替えさせられていた。

「女の子らしい服も似合うわね・・・」

「一体・・・何の真似・・・」

「猪熊さん・・・その服は・・・私の友達の服なのよ・・・」

「友達・・・」

「高野乃花・・・知っているでしょう」

高野乃花(足立梨花)を「殺人を犯したあげくに自殺した者」として警察は処理している。

「たかの・・・のはな・・・」

「乃花は誰も殺していないし・・・自殺もしていないの」

「まさか・・・あなたが・・・」

「そうよ・・・殺したのは私・・・ようやく・・・正解できたね」

「そんな・・・」

「あなたの知っている人間だけでも・・・五人・・・」

「え・・・」

「狂ったタクシー・ドライバー、前の店のキャバクラ嬢、そして酒屋の男・・・美人妻と乃花を殺したのは・・・あなたのためよ」

「私の・・・」

「ええ・・・あなたの信頼を勝ち取るため・・・」

「・・・」

橘カラの正体に衝撃を感じると同時に・・・激しい悔恨に襲われる猪熊だった。

「そうよ・・・あなたは・・・殺人者とお友達になって・・・喜んでいたの」

猪熊は・・・かってのパートナーだった里見の言葉を想起する。

《あの女に深入りするな》

《あの女は・・・殺人事件に・・・絡み過ぎている》

《君は・・・あまりにも・・・見えていない》

(見えていたなら・・・教えてよ・・・口下手にも程があるわ)

猪熊は歯ぎしりをしてカラに噛みついた。

「・・・」

「・・・」

「あらあら・・・せっかく・・・綺麗に殺しあげようとしたのに・・・口紅落ちちゃったじゃないの」

カラは腕に残る歯型を見つめる。

里見は十和田家にたどり着いていた。

しかし・・・無人である。

隣の家の男が声をかける。

「十和田さんの家の人は認知症で施設に入っているよ」

「娘さんがいたはずですが・・・」

「かなり前に家出したよ・・・」

「家出」

「おい・・・よしこ・・・家の娘は十和田さんちの子と同級生なんだ・・・」

里見は橘リカの友人の十和田サチの同級生・良子(中島亜梨沙)に出会った。

「一体・・・何のために・・・」

「あなたは・・・高槻とおるの事件を調べているでしょう」

「・・・」

カラは猪熊をナイフで刺す。

苦悶の叫びをあげる猪熊。

「彼をナイフで刺した時・・・彼は声を殺していた・・・私が警察に捕まることを惧れたの・・・彼を刺す度に・・・彼の優しさが伝わってきた」

「なんてことを・・・」

「彼を殺して・・・私は優しさを手に入れた」

「何を言ってるの」

「あなたを殺して・・・あなたの正義感を・・・もらうの」

「そんな馬鹿な・・・」

カラは猪熊を何度も刺す。

「こうして・・・動脈を切り刻めば・・・血が流れる・・・ゆっくりと逝けるわ」

里見はよしこから昔話を聞く。

「ええ・・・サチと橘さんは・・・仲良しでした・・・亀見橋の下でキャンプごっこをしているのを何度も見かけたわ・・・」

「橘カラは・・・この人ですか」

「ええ・・・やはり・・・凄い美人になっていたのね・・・あら・・・でも・・・どこか変ね」

「変」

「印象が・・・でも・・・もう・・・何年もあっていないから・・・」

十和田サチの写真を入手していない・・・どこまでも手抜かりの多い里見。

行方不明の二人の女。

整形しているのに整形していないように見える橘カラ。

昔とはどこかが違う橘カラ。

眼鏡をかけていた橘カラ。

殺人事件に深く関与している橘カラ。

では・・・カラの同級生・・・十和田サチはどこに消えたのか。

サチはカラに殺されたのだろう。

あるいは・・・サチがカラを・・・。

里見は亀見橋を探索する。

その時・・・売春婦のアイ(佐野ひなこ)から連絡が入る。

「・・・どうした」

「レナが・・・帰ってきません」

「なんだって」

カラの出身中学校、カラの出身小学校・・・カラのおいたちを探る旅は・・・手つかずの部分を残して中断する。里見は無能だし・・・中途半端な警官だったのだ。

東京に急行する車中の里見は猪熊の母・三樹(藤吉久美子)からの着信に驚く。

「・・・御無沙汰しています」

「夕貴と一緒ですか」

「え・・・お母さんと温泉旅行では・・・」

「温泉旅行・・・あの子と連絡が取れないんです」

(まさか・・・橘カラと・・・)

里見は・・・焦燥感を覚えた。

(まさか・・・相手は・・・自分より上手なんじゃ・・・)

遅すぎる疑惑が・・・里見を捉えかかる。

謹慎中の身で・・・桜中央署に乗り込む里見。

本当の里見を知っているらしい生活安全課の千歳弘子(山口紗弥加)は「猪熊は休暇で埼玉方面へ旅行」の届けが出ていると告げる。

「僕には・・・母親と温泉に行くと・・・」

「じゃ・・・お母さんと一緒だろう」

「しかし、お母さんはそんな予定はなかったと・・・」

「なんじゃ・・・それは・・・わかってるのか・・・里見・・・お前、暴行未遂の現行犯で逮捕されて・・・被害者が告訴しなかったんで謹慎中だぞ・・・そんな男の元交際相手が消息不明になったら・・・どうなると思う・・・」

「え」

「お前が一番の重要参考人だよ」

「そんな・・・そうですね」

「わかったら・・・大人しく帰れ」

本当の里見を知っているらしい千歳・・・それは温情かけすぎである。

・・・里見の個人的な協力者である売春婦のレナも消息を絶っている。

(身の危険を感じて行方をくらましたのか・・・)

とっくにレナの正体がカラに割れているとは考えない甘いマスク以上に考え方が甘い里見・・・。

いくら・・・相手が売春婦だとはいえ・・・一般人を事件に巻き込んでいる自覚が・・・恐ろしいほどにない里見・・・。

猪熊のことだけしか心配してないよな・・・。

ある意味・・・大胆で凄味を感じさせるキャラクター設定だ。

猪熊の父親であり、機動捜査隊の元上司である文一(大杉漣)を頼る里見である。

「夕貴さんと連絡がとれません」

「お前が原因じゃないだろうな」

「夕貴さんは・・・昔の事件を調べていました」

「とにかく・・・情報を共有しよう」

しかし・・・違法捜査ばかりしている里見は・・・警察関係者と情報を共有できないのである。

やぶれかぶれの里見は・・・カラのキャバクラに入店した。

「いらっしゃい・・・」

「レナって子を知らないか・・・」

「指名しておいて・・・他の女の子の話ですか」

「猪熊と・・・会っただろう」

「あの日が最後ですよ・・・あなたが・・・謹慎処分になった日・・・」

「あれは・・・お前が・・・」

「そんなことを誰が信じるんですか」

「・・・」

「里見さん・・・あなた・・・今のままでは・・・ダメですよ」

「なんだって・・・」

「男として・・・パートナーに秘密を作りすぎている・・・そのうち・・・誰からも相手にされなくなりますよ」

「随分と・・・親切なんだな」

「私・・・今、とても充実しているんです・・・みんなに幸せになってもらいたいんですよ」

「・・・」

「カラさん・・・三番テーブルご指名です」

「ごめんなさい・・・いかなくちゃ・・・」

「・・・トワダサチ・・・」

「?」

「高校時代・・・仲がよかったんだろう・・・今はどうしている」

「さあ・・・」

里見・・・意味もなくとっておきのカードをきって・・・ブラフでしくじったばかりなのに・・・。

しかし・・・里見も守護天使に見守られているらしい。

街角で・・・渡に遭遇するのだった。

まあ・・・超ご近所さんだからな・・・里見の観察力不足が明確になっているわけだが。

素人の渡の尾行に漸く成功する里見。

近所の商店主の雑談で・・・渡がストーカーを警察に訴えに来た男であることを掴む。

(まさか・・・この男が・・・カラの恋人?)

渡の家を突き止めた里見・・・。

(ええええええええええ)

当たってくだけろ体質なので渡の部屋を訪問する里見だった。

愛するカラのために勇気を出してストーカーと対峙する渡。

「あなたの・・・恋人は・・・橘カラですか」

「そんなことを訊いてどうするつもりだ・・・このストーカーが・・・」

「いえ・・・私は・・・ある事件で・・・カラさんを調べているだけです」

「そんな話を誰が信じると思う・・・」

「みんなにそう・・・言われてます・・・まあ・・・無駄だと思いますが・・・あなたも気をつけてください」

「脅しか・・・」

「・・・警察官としての警告です」

だが・・・里見の発するサイレンは誰の耳にも届かない。

(夕貴・・・)

猪熊の前にレナが現れた。

衰弱して怯えた表情を浮かべるレナ・・・。

「あなたは・・・」

「紹介しましょう・・・里見が買った女・・・レナちゃん・・・・こちらは里見の元パートナーの猪熊さん・・・」

「やめて・・・その子は助けて」

「殺さないで」

「おやおや・・・人の秘密を探っておいて・・・今さら・・・命ごいか・・・」

「一体・・・あなたは・・・何人殺せば気が済むの・・・」

「一度満腹したら・・・人間はもう・・・一生、食事をしないとでも・・・?」

「あなた・・・いつから・・・殺してるの」

「うん・・・いい質問ね・・・原点にはいつも何かがかくされているもの」

「・・・」

「あれは・・・十四歳の頃・・・カエルを踏みつぶすぐらいでは・・・もう満足できなかった」

「・・・」

「父親が橋の上にいたの・・・格闘技を学んでいれば・・・わかるわよね・・・人間が下半身を責められたら・・・どれだけ脆いかを・・・」

「まさか・・・自分の父親を・・・」

「真っ逆様に落ちて行く父親の叫びを聞きながら・・・私は父の魂を手にいれた高揚感で震えるような気分になった・・・」

「なんてことを・・・あなた・・・おかしいわよ」

「そうかしら・・・あなたはそんなおかしい人に・・・好きなようにされているのよね」

「・・・」

「おかしいのはあなたじゃないって・・・誰かが助けてくれるかな」

(里見くん・・・あなたを信じなかった私を許して・・・里見くん・・・助けて)

「猪熊さん・・・あなたは愛されて育った・・・あなたは美しい・・・だから・・・少しおかしくなっても・・・仕方ないと思うの・・・でも・・・あなたには素晴らしい正義感があるじゃない・・・それで充分でしょう・・・だから・・・私がそれをもらってあげる」

「カラさん・・・そんなことをしたって・・・あなたは何も手に入れられない」

「それを決めるのは・・・あなたじゃなくて・・・私だよ」

「・・・」

「大丈夫・・・あなたはまだ殺さないわ」

地下室にゾンビのような顔色の男が現れる。

それは行方不明の整形外科医・月本(要潤)・・・。

「月本・・・こんなところに・・・」

猪熊は理解を越えた展開に・・・正気を失いかけていた。

カラは微笑んだ。

カラの通う格闘技のジムに・・・カラに憧れる女・まひる(中別府葵)がいた。

「私・・・カラさんみたいになりたいです」

「あら・・・なれるわよ」

カラはまひるを「使える女」と認定していた。

カラは蜘蛛を掌で遊ばせるように・・・人間を使用するのだ。

「使える男」と認定された渡を言葉巧みに操るカラ・・・。

「あの男には気をつけて・・・心配させないように黙っていたけど・・・私はあの男にレイプされかかったの・・・あなたに何かあったら・・・私・・・生きていけない・・・」

猪熊の監禁は続いている。

無断欠勤が発覚し・・・署内では一部のものが動揺していた。

さくら寮の管理人は・・・猪熊が監禁前に発送した「土産」が宅配されたことを何故か・・・ここやや苦しいぞ・・・里見に告げる。

猪熊の立ち回り先が分かる最期の手掛かりである。

土産物屋の先には渡の別荘が隠されているのだ。

里見は猪熊に通じる蜘蛛の糸があったことに喜びを感じる。

「今、すぐ・・・そちらに」

その背後で金属バットをふるう渡・・・。

「死ね・・・」

里見ははぐれ刑事の登場人物のように・・・階段を転げ落ち・・・意識不明の重体となった。

人間の街には・・・誰にも聴こえないサイレンが鳴り響いている。

禁忌の裏側には「ま」がある。

そこには「まもの」が潜んでいるのだ。

関連するキッドのブログ→第6話のレビュー

| | コメント (0) | トラックバック (3)

2015年12月 1日 (火)

南無阿弥陀仏接吻一遍極楽往生(山下智久)あなたが好きです(石原さとみ)

この世が苦渋に満ちているかどうかは人それぞれの気分に左右される。

宗教とは人が人に心を楽にする術を伝えるシステムだ。

神や仏に苦しみを委ねることで人は憂さを晴らすことができる。

たとえば・・・仏教では「苦行」によって真の苦しみから逃れようとする。

「出家」するのは「家族」から解放されるためである。

一家の主が出家すればそれは責任放棄だ。

やがてブッダとなるシッダルタは親も妻も子も捨て出家するわけである。

残されたものの「見捨てられた感じ」は半端ないわけであるが・・・そういう他人の気持ちを思いやっていたら「悟り」など開けないのである。

「煩わしいなにもかも」を捨て「さっぱり」したいのだ。

しかし・・・シッダルタは・・・自分が「さっぱり」を求めていることに気が付く。

求めているということは「さっぱり」に執着しているということであり、少しも「さっぱり」していないのである。

逃れられないものから逃れようとする「愚」を察したシッダルタは・・・そういうすべてが「空」であると断じた。

もちろん・・・そうせずにはいられなかったのである。

そうなると・・・もう「空」さえもが煩わしくて仕方ないのだった。

親鸞は・・・そういうシッダルタの心境を推定し・・・出家をあきらめる。

もう・・・妻がいてもいいじゃないか・・・妻がいようがいまいが・・・念仏を唱えることはできるのだから。

このアイディアは結構、受けて大教団を出現させるのだった。

おそらく・・・このドラマの「一橋寺」はそういう宗派に属するのである。

で、『5→9〜私に恋したお坊さん〜・第8回』(フジテレビ20151123PM9~)原作・相原実貴、脚本・小山正太・根本ノンジ、演出・相沢秀幸を見た。大教団である「一橋寺」は当然、法人化されているだろうから・・・たとえ土地などの所有者として女魔王・星川ひばり(加賀まりこ)がある程度、発言権を持っているとしても「法統」とは無縁だと思われる。だから・・・ひばりには少し認知症の傾向があり・・・次期後継者の祖母として・・・周囲も仕方なくその言動に付き合っていると考えるのが無難だろう。家族の誰かが認知症になる煩わしさはそうならなければわからないよねえ。本人が「私は認知症だが自尊心を持って生きている」と断言していたとしてもだ。「断言してるよ・・・」と思う他ないわけである。

そういう意味で・・・「俺はないがしろにされた・・・だから家族みんなに復讐してやる」という星川天音(志尊淳)の登場も・・・ひがみっぽい性格の弟がちょっと困った方向に行ってしまったというよくある話である。まあ、パリで銃撃戦でも始めない限り放置しておいて問題ないだろう。

そういうわけで・・・一橋寺の門を閉められた星川高嶺(山下智久)はウキウキしながら愛しい桜庭潤子(石原さとみ)の待つ家へとUターンしたのだった・・・。

まあ・・・ハラハラしたい人は「潤子か一橋家かの二者択一」もお楽しみくださいということなんだな。

「私たち、付き合ってます」

高嶺と潤子に報告されて祝福する父・満(上島竜兵)、母・恵子(戸田恵子)、妹・寧々(恒松祐里)の桜庭家一同。

「やったね」

「そう・・・ついに」

「お義兄さん」

「なんで戻ってきたんですか」

「来ちゃった・・・」

まんざらでもない潤子とかわいい高嶺、そして桜庭トリオの楽しいかけあいである。

「お寺の方は・・・」

「暇(いとま)をいただいてまいりました」

「休暇ってことね」

「お付き合い休暇です」

「じゃ・・・この際、同棲しちゃえば」

「同棲・・・」

「イチャイチャしてチューチューしてラブラブだよ」

「イチャイチャ」

「調子にのらない」

「チューチュー」

「前のめりにならない」

「ラブラブ」

「メモすんな」

「すぐに同棲しましょう」

「えええ」

「善は急げね」

「お姉ちゃん、私、場所あけるね」

「模様変えだ」

「ええええええええええ」

話が早い桜庭家だった。

なんていうか・・・解放されているよね。

一方、一橋寺では天音の策略に踊らされたひばりが・・・。

「寺は天音に継承させます」と雇われ住職である寺田光栄(小野武彦)に宣言する。

「香織さんには天音と結婚していただきます」と足利香織(吉本実憂)に告げるひばり。

困惑する香織だった・・・。まあ・・・常軌を逸した相手には正論を言っても仕方ないわけである。一橋寺の後継者なら誰でもいいというわけではない香織である。

天音は悪辣な感じでウッヒッヒと笑うのだった。

「シンデレラ」で言えば・・・ひばりは継母、天音は連れ子のポジションなのである。

そういう意味では・・・光栄は後妻に支配された実の父、香織は存在感の薄い連れ子の妹のポジションなんだな。

とにかく・・・物語の最後ではみんなそろって「キーッ」となったり、「ポカン」としたりする運命なのである。

見つめ合う頭のおかしなひばりと頭のおかしな天音だった。

桜庭家では・・・姉妹のベッドを並べた高嶺と潤子の就寝タイム。

「では・・・イチャイチャを」

「できるか」

「なぜです・・・」

「そんな急には・・・」

「では気分を変えるために・・・お互いの呼び方を変えましょう・・・なんとお呼びすれば」

「普通に呼び捨てでいいんじゃない」

「じゅ・・・じゅ・・・じゅ・・・」

潤子と言えずに田中邦衛顔になる高嶺。

「北の国からか」

「カナダですか・・・」

「もういいです」

「では・・・せめて・・・手を」

潤子は手を差し出した。

高嶺は手をつないだ。

高嶺は修行感覚で眠りにつく。

潤子はうっとりするのだった。

翌朝、潤子は遅刻寸前である。・・・潤子の出勤時間を考えると・・・かなりイチャイチャしたわけである。

「すみません・・・潤子さんの寝顔見たさに目覚まし時計を止めてしまいました」

「もう・・・」

「お弁当です」

「重い・・・ありがとう」

「では・・・ありがとうのチューを」

「これ・・・合鍵」

「合鍵記念日・・・」

「いってきます」

「お出かけのチューを・・・」

高嶺のおでこにキスをする潤子。

それだけで高嶺は昇天したらしい。

ラブラブなんだな。

この二人・・・ラブコメカップルとしては相性抜群なんじゃないか。

だな。

英会話学校ELAでついに潤子と山渕百絵(高梨臨)、そして毛利まさこ(紗栄子)が顔を揃える。

潤子、百絵、まさこって・・・中三トリオか。

・・・それ・・・どうしても言う必要あるの。

「ええっ・・・星川さんと同棲ですか・・・」

「星川さんの・・・粘り勝ちか・・・」

「お寺に嫁ぐ覚悟はできたんですか」

「それは」

「美坊主に囲まれたハーレム」

「毎日ご飯たいては弟子たちに食べさせる一生ですよ」

「それは相撲部屋の女将さんね・・・」

「はっけよいで攻めてのこったで受ける・・・まったまったでじらしたりして・・・いけず~」

「まさ子ちゃんこそ・・・年下の男の子とは」

「問題外なんですよ・・・高校生だし・・・でもお金は持ってるんですよね」

「・・・」

高嶺は一橋寺にやってきた。

「天音・・・何を考えているのです」

「だまされたって何故いわないんや・・・」

「嘘をついて心が一番苦しいのは自分自身でしょう」

「嘘も方便や・・・ちやほやされて育った兄さんにはわからんのや・・・邪魔ものあつかいされ京都に厄介払いされたわての気持ちが・・・わてはどないしても一橋寺の住職になってみせます」

「・・・」

いつもの離れで那覇三休(寺田心)と光栄と密会する高嶺。

「大奥様は・・・ヘソを曲げられている・・・ああなると長いぞ」

「長いですね」

「今は・・・桜庭の家に・・・」

「お世話になっています」

「よし・・・大奥様のことは・・・拙僧にまかせよ」

「お願いします」

廊下で高嶺の胸に飛び込む香織。

「私は・・・高嶺様が好きなのです」

「私は潤子さんとお付き合いすることになりました・・・あなたもお家にお戻りなさい」

「・・・」

香織は涙するのだった。

ラブコメの中で清純であることはひとつのお笑いなのである。

一方でシンデレラの父親役である光栄は「お家」のために「愛」を踏みにじる「裏切り者」になる宿命である。

おそらく、ひばりに懸想しているのだろう。

いつの間にか身を引いた清宮真言(田中圭)は正社員試験のエントリーシートを潤子に渡し・・・「ニューヨークへの夢」をシリアスに挿入する。

しかし・・・事務員の伊能蘭(中村アン)はラブコメであることを再確認するためにホワイトボードに相関図を書き込むのだった。

スーちゃんとミキちゃんはきっと名もなき事務員二人なんだな。

・・・それ・・・どうしても言う必要あるの。

「錯綜しているんですよね」

「え」

蘭のあらすじ語りに戸惑う潤子。

「とにかく・・・清宮さんと・・・潤子先生は終わって・・・今は星川さんと同棲中なんですよね」

「ええ」

「もう・・・お腹にはベイビーもいるとか」

「えええ」

木村アーサー(速水もこみち)は百絵を狙っているが・・・百絵は三嶋聡(古川雄輝)と怪しいらしい。

百絵は三嶋にBLボイスをおねだりしていた。

「お前の欲しいものを言ってごらん」

「はうん」

そうとは知らずに傷つくアーサー。

蜂屋蓮司(長妻怜央)とまさこ。

里中由希(髙田彪我)と寧々にまで言及する蘭だった。

「いい感じに出番を確保したわね」

「御蔭様で・・・」

「来週、最終回前なのよね」

「シンデレラで言うと今、真夜中の階段を駆け下りているところですね」

「結構、バタバタするわよねえ」

「10日早いクリスマスか・・・」

「カレンダー的な問題ですものねえ」

とにかく・・・英会話学校は出会いの場ではない・・・と思う。

潤子のビジネスクラスで席を並べる高嶺と三嶋。

「寺社にも英語教育は必要な時代です」

「あなたの話は回りくどい」

「では・・・単刀直入に申し上げましょう・・・私と潤子さんはお付き合いしています」

「え」

「しかも同棲しています・・・これは合鍵です」

「ええ」

「そして・・・すでに潤子さんのお腹には二人の愛の結晶が宿っています」

「えええ」

「おまえか・・・言いふらしているの」

群像劇展開を最低限に抑えたアレンジになっているのだが・・・主人公とヒロインが寸止め展開を続行中なので・・・バランスをとるために・・・キスの三連打である。

蜂屋はプレゼントの受け入れを拒絶するまさこにキス。

「これで・・・そういう関係でしょ」

「・・・へたくそ」

悪態をつきながら恋に落ちるまさこ。

ルシファー様のイベントを口実にアーサーに呼び出された百絵。

「あなたを愛しています」

水槽のクラゲが見守る中で唇を奪われる百絵の唇。

Ⓐ 初めての恋人との出会い

Ⓑ ・・・とみせかけた釣り

「釣りだろうけど・・・でも」

遅すぎるファースト・キスに揺れる百絵だった・・・。

不在の高嶺の代わりに仏壇に花を供える香織。

記憶にない両親に暗い怒りを燃やす天音。

餓鬼のように香織の唇を奪うのだった。

平手打ちで応酬する香織だったが・・・涙するのだった。

ラブコメの中で清純であることはひとつのお笑いなのである。

まあ・・・一種の近親相姦プレーなんだけどな。

二人とも・・・高嶺が欲しいわけである。

この二人が一番・・・危険な領域なのだ。

アーサーはともかく、三嶋、天音、蜂屋は次世代ラブコメ要員のお披露目レースである。

あなたはどの馬を買いますか・・・だな。

キスの嵐の後は・・・潤子を襲うペアルックの嵐。

二人の部屋はラブラブなセンスで占領されているのだった。

「なんじゃあこりゃあ」である。

高嶺は・・・未来の父と入浴中。

「高嶺君に背中を流してもらえるなんて・・・」

「実の父にはできなかったので・・・うれしいです」

熱湯風呂に入れなかったタクシードライバーはお尻の不調を訴えるのだった。

しかし、潤子は高嶺の輪袈裟に香織の口紅の跡を発見し嫉妬の炎を燃やすのだった。

「これはなんですか」

「これは輪袈裟(わげさ)です。輪袈裟(りんげさ)とも呼びます」

「そうじゃなくって・・・この口紅ですよ」

「それは・・・香織さんですね」

「白状したわよ」

「キーッ」

あからさまな嫉妬とクールな対応。

かわいい二人の横で母は父の昔の悪行を思い出し、逆上するのだった。

ついにはタクシードライバーと高嶺は玄関からお払い箱である。

「寒い」

「お父さん・・・しっかりしてください」

「近所迷惑でしょう」

「あなたは死になさい」

高嶺は回収されるが・・・タクシードライバーは放置され持病を悪化させるのだった。

「許したわけじゃありませんからね」

「・・・」

「大体なんですか・・・このペアルック」

「この書物に愛しあう男女はペアルックにするものと描いてありました」

コミック「ひみつの回転木馬/白雪みすず」(フィクション)・・・である。

「昭和の少女マンガかっ」

バストを上下ではさみこむ変則あすなろホールドを決める高嶺。

「きゃあ」

「すみません・・・潤子さんの笑顔が見たくて・・・いろいろなことをしてしまうのです」

「離してください」

「離しません・・・」

「いやん」

「私のことを好きだとおっしゃってください」

「もう言いました」

「もう一度お願いします」

「・・・」

基本的に「好き」と言ってと求めるのはラムちゃんだが・・・ここでは潤子があたるなのである。

「言うっちゃ」

「死ぬ前にな」

誰が「うる星やつら」の話をしろと・・・。

いいムードからの父乱入でキスの寸止め展開。

「高嶺のうつ伏せタヌキ寝入り」に一部お茶の間熱狂である。

結局・・・ラブ寝具の大きなハートに包まれて・・・潤子は満足したようだ。

翌朝、すでにおそろいの綿入れで仲良しな高嶺と潤子だった。

しかし・・・母は家を出たのだった。

少しおろおろする高嶺。

「気にしないで」

「年に一度の恒例行事だから」

クールな桜庭姉妹・・・。

「夫婦なんてこんなものよ」

「夫婦・・・それは摩訶不思議なもの・・・」

庶民生活という「王宮」の眩しさに眩暈を感じるシンデレラなのである。

謎の女のいるバーで三嶋は潤子にアプローチ。

「俺・・・ニューヨークに転勤するんだ」

「そう・・・よかったわねえ」

友達として軽く祝福され・・・ブルーになる三嶋だった。

一方・・・天音の動向に慌てる光栄。

「なんだか・・・変なことを・・・不動産屋を読んだりして・・・」

まあ・・・由緒正しい寺なので・・・名門の墓があるわけで・・・そんなに簡単にビルにはできないのである。

しかし・・・神はそういう盛り上げ方をしたいらしい。

「天音・・・嘘は許しませんよ」

「女と淫らなことをしているくせに」

パーラージカ(大罪)の「淫戒」と「大妄語戒」で対抗する兄弟。

しかし、先代の息子の兄弟が跡目争いをしているのだから・・・この宗派には「淫戒」はないのである。

「淫戒」があれば出家者は性交できないのだ。

一方で「後継者を天音に定め、香織に許嫁の変更」までしておいて・・・何故か、潤子に高嶺と別れることを命令しにくるひばり・・・。

まあ・・・すべては陰謀であると考えてもいいが・・・認知症を発症しているようにしか見えないのだった。

「あなたと高嶺は住む世界が違うのです。いいですね」

「・・・」

思いこみの激しい認知症の患者への対応は難しいものだ・・・。

一方・・・父危篤である。

しかし・・・持病の痔疾が悪化しての入院だった。

少しおたおたする高嶺。

「大丈夫よ・・・四年に一度の恒例行事だから」

「五輪かよっての」

クールな桜庭姉妹だった。

寧々は父の尻をスパンキングする豪快さである。

職場に戻った潤子を今度は光栄が訪ねてくる。

「実は・・・高嶺が後継者問題で・・・困っている」

「え」

「大奥様がご機嫌斜めで・・・」

「はあ・・・」

「だから・・・高嶺と別れてください」

「えええ」

まあ・・・高嶺の味方でありながら・・・二週間で自然消滅している歴代恋人の件といい・・・世俗のことに・・・光栄は明らかに疎い・・・ダメ人間なんですな。

それは・・・シンデレラの父親ポジションだから・・・な。

一方・・・潤子の父に付き添う高嶺の元には・・・清宮がやってくる。

「潤子さんを泣かせたら・・・私が奪いにきます」

こういうセリフを言わせたら天下一品だな。

奪える気配が微塵もないのが凄いぞ。

そりゃあ・・・負け犬の帝王・石田三成にまで上り詰めた男だからな。

こうして・・・二人の交際にあえてブーイングする人々にげっそりする高嶺と潤子である。

二人だけの・・・夜。

寧々は夜遊びなのか・・・父親に付き添いか・・・。

はじめてのカップラーメンである。

「どうして・・・大切なことを黙っていたの」

「心配をかけたくなかったので・・・」

「私・・・星川さんと別れたくない・・・好きだから」

「私も潤子さんと絶対に別れません」

「・・・」

「・・・」

ピピピと三分経過のタイマーが鳴り・・・寸止め。

気を取り直して・・・挑む二人。

チンとコロッケを電子レンジにかけていた高嶺。

「私たちのことを神様は邪魔しているのかしら」

「神も仏も人間の邪魔はしません」

「・・・じゃ・・・誰が」

「・・・脚本家ですよ」

それでもキスに挑む二人。

三度目の正直ではなくて・・・二度あることは三度あるのだった。

ピンポーンと玄関のチャイム。

お邪魔音で三回は基本に忠実な姿勢である。

「お母さんかな・・・」

しかし・・・狂犬と化した天音乱入である。

「天音・・・」

「兄さんと姉さんに見てもらいたいもんがありますのや・・・これ・・・一橋寺ぶっつぶしてビルにしまひょ・・・星川ヒルズなんて・・・どうでっしゃろ」

「・・・」

まあ・・・シンデレラなので最終回前は・・・逢えない時間が愛育てるのさタイムである。

関連するキッドのブログ→第7話のレビュー

59008ごっこガーデン。大下町の小さな公営住宅ラブ寝室セット。

エリイチャイチャに続くイチャイチャ。うっとりに続くうっとり。はううんに続くはううんでスー。永遠に続く愛のカタチ・・・それがラブコメですのね。お布団の下ではもう・・・あんなことやこんなことが繰り広げらているのでしょう・・・。さあ・・・次は、アンナちゃんのダーロイドとPパイセンロイドの滝行対決ですよ~。じいや、修行の滝セットの出力マックスでお願いしまス~・・・頑張れ~高嶺P~

| | コメント (4) | トラックバック (6)

« 2015年11月 | トップページ | 2016年1月 »