超限定能力(竜星涼)いじめられて・・・(永野芽郁)おいのりされて・・・(太賀)
毎度おなじみのフジテレビヤングシナリオ大賞のドラマ化である。
ヤングなので「青春ドラマ」の傾向があり・・・今回も主人公は大学生だ。
いつが・・・青春なのかは・・・難しいところである。
キッドは小学校高学年から大学生までを限定(仮)としているが・・・大学をいつまでも卒業しない人もいるので・・・アレなんだな。
初潮から処女喪失までという考え方もあるが・・・男子に青春はないのかよっ。
こういう考え方は危険な御時勢である。
とにかく・・・なんとなく・・・青くて春めいた人生のひととき・・・をめぐるドラマは・・・本当は老若男女が楽しめる素材である。
なにしろ・・・誰もが青春時代を過ごすからである。
しかし・・・意外と青春ドラマの名作というのは少ない。
まあ・・・それは・・・多くの人間が・・・ろくでもない青春を送っているからだと考える。
で、『超限定能力』(フジテレビ201512210045~)脚本・青塚美穂、演出・野田悠介を見た。2014年度の第27回フジテレビヤングシナリオ大賞受賞作である。即戦力といえば・・・「世にも奇妙な物語」系であることが・・・ポイントである。次は構成力で・・・さらにセリフの美味さというのも評価の対象であろう。青春ドラマである必要は特にない。しかし、ファンタジー要素は青春ドラマと相性がいいのである。たとえば・・・「時をかける少女」は時間跳躍をする女の子の話だし、「エコエコアザラク」は魔女の話だ・・・それを青春ドラマと言うつもりかっ・・・「白線流し」とか「あまちゃん」とかファンタジーではない青春ドラマがいかに凄いかという話である。
このドラマの場合・・・直近に「みんな!エスパーだよ!」という超名作青春ドラマがあり・・・もう一つの青春ドラマのパターンである・・・青春ノスタルジーとしての「アオイホノオ」と並んでテレビ東京深夜の青春ドラマの凄味を醸しだしている。
若者が・・・変な超能力に覚醒する・・・これは基本なんだな。
で・・・今回の主人公・・・三流大学生だが・・・家が裕福なので・・・なんとなくまったりしている秋山舜太郎(竜星涼)に芽生えるのは・・・乗車中の電車の車内で・・・乗客の降車駅が見える・・・という能力である。
混雑した電車で・・・座りたいと思う時に・・・とても便利な超能力なのである。
座っている乗客の中から・・・次の駅で下車する人を選択し、その前に陣取れば・・・座席をゲットできるのだ。
最近の若者は「つかれやすい」らしいので・・・凄く魅力的な超能力なのかもしれない。
さて・・・単発ドラマでは・・・登場人物の設定を説明する時間はあまりない。
そういう時には・・・なんとなく・・・「ドラえもん」の世界が役に立つ。
今回の主人公は・・・スネ夫の未来形である。
裕福な家庭以外あまり・・・とりえのない男なのだ。
そのために・・・友人は・・・のび太形である。
親のコネで就職の心配がない舜太郎に対し、親友の斎藤宜秀(太賀)は就職活動に追われている。
「お前は・・・いいよなあ・・・いざとなったら・・・親の会社があるし」
「・・・」
もちろん・・・舜太郎は青春ドラマの主人公なので・・・「本当にそれでいいのか」という迷いがないわけではない。
そういう日常の中で舜太郎は電車の中で転倒し・・・能力を獲得するのである。
なぜ・・・そんな能力が・・・はファンタジーなので特に不必要だが・・・きっかけとして謎のサラリーマン(ルー大柴)が登場する。いわば・・・シンデレラにおける魔法使いの役回りである。
頭を強打した舜太郎が見上げると・・・介抱してくれた謎のサラリーマンの頭上に駅名が輝いていたからである。
経済的に恵まれている上にお得な能力まで獲得する舜太郎・・・親友の斎藤は少し羨ましく思うが・・・憎悪したりはしないのが青春の1ページである。
大学教授の大澤(紺野まひる)の講義でも二人は仲良く席を並べる。
先生と学生も青春ドラマのポイントだが・・・教師側を主とすると学園ドラマになってしまう。男女関係なら・・・危険な青春に一直線だ。
ここでは・・・主人公と友人が・・・ダメな学生ながら・・・それなりに仲良しであること象徴するために登場する。
二人は講義中に雑談をして教授に叱責される同志なのである。
さて・・・青春には恋愛がつきものであるが・・・失恋した女子大生が投身自殺をして授業中の教室の窓の外を落下していったり、同棲中の女子大生の浮気が発覚し鬱屈した男子学生が焼身自殺したりする大恋愛は特に必要ない。
舜太郎は通学途中で見かける女子高校生・橋田美雪(永野芽郁)に仄かに恋心を描く程度である。
「なんとなく・・・影があるところがいい」と言う舜太郎・・・。
何不自由なく暮らしている舜太郎は・・・不幸に対して漠然とした憧れを持っているのだ。
ここで・・・舜太郎は・・・超限定能力の・・・別の側面を見出す。
乗客のサラリーマンの中に下車駅不明の男(ダンディ坂野)を発見するのだった。
好奇心で駅名のない男を尾行した舜太郎・・・。
ショッキングな出来事は・・・男が投身自殺をしたことであった。
「死」というものに敏感だった舜太郎は激しく動揺する。
しかし・・・だからといって・・・何かをしようとは思わない。
「人身事故」の報せに・・・「死」に鈍感な人々は素晴らしいインターネットの世界で悪態をつく。
「そんなひどいことをいわなくても・・・」
しかし、たまたま・・・人身事故の発生で面接に遅刻してしまった親友の斉藤は反発する。
「言いたくなる気持ちはわかるさ・・・死ぬなら人に迷惑かけないでほしいよ」
「そんな・・・」
「お前はゆとりがあっていいよな」
「なんだよ・・・」
舜太郎と斉藤は些細なことで決裂してしまう。
舜太郎は・・・斉藤と仲直りしたいのだが・・・意地をはって舜太郎からの着信をスルーする。
「不採用」の「あなたの前途をお祈りメール」の連打に打ちのめされた斉藤は自殺を図るのだった。
「・・・俺を必要としてくれる場所がない・・・俺は行き先不明だよ・・・」
意識不明の重体となった斉藤からの最期の伝言を聞く舜太郎に渦巻く後悔の念・・・。
そして・・・車内で件の女子高校生を発見した・・・舜太郎は・・・彼女の行き先がないことに驚愕する。
思わず・・・下車した彼女を追いかける舜太郎。
投身自殺しようとする女子高校生を引きとめるのだった。
「ほっといてよ・・・」
「そんなことはできないよ・・・」
「あんた・・・誰」
「僕は・・・エスパーだよ・・・」
「・・・」
有無を言わさず・・・斉藤の病室に彼女を連れて行く舜太郎。
まあ・・・ここが最大に難しい所です。
彼女には自殺しようとした負い目があり・・・舜太郎が元キョウリュウレッドだから仕方がないと補完しておく。
「こんな風になっちゃうんだぞ」
「・・・」
「どうして・・・君に行き先がないなんて・・・思うんだ」
「学校で・・・仲間はずれにされているの・・・」
「・・・」
「失恋した友達の・・・うっぷん晴らしよ・・・」
「君・・・かわいいから・・・」
「え」
「僕でよかったら・・・相談相手になるよ」
自殺未遂の親友の病室で・・・ナンパする舜太郎である。
悪意で見るのはやめましょう。
そんなことをしたので・・・誤解した彼女の父親(武藤敬司)に鉄拳制裁される舜太郎だった。
やがて・・・奇跡的に回復した斉藤と仲直りする舜太郎。
そんなある日・・・またもや車内で転倒した舜太郎は謎のサラリーマンに介抱され能力を失うのだった。
舜太郎は・・・「人生の目的地」を求めて親に依存しない就職活動を開始する。
謎のサラリーマンは・・・舜太郎が茨の道を歩み出したことに満足する。
その顔に浮かぶ・・・悪魔の微笑み・・・だから・・・悪魔サイドで妄想するなよ。
関連するキッドのブログ→人生ごっこ
→輪廻の雨
| 固定リンク
コメント