はじめての回転寿司(錦戸亮)平成建白書のひみつ(神木隆之介)目にもの見せてくれるわ(比嘉愛未)
武市半平太と坂本龍馬は土佐藩による二つの建白書に影を落している。
武市半平太は文久二年(1862年)に土佐藩主・山内豊範が朝廷に提出した建白書の起草者とされている。
建白の内容は「山城国、摂津国、大和国、近江国を天皇の直轄地とすること」「商人に御用金を課すこと」「天皇の命令で大名に武力を行使させること」「天皇の命令は幕府抜きで大名に直接発すること」「参勤交代の制度を緩和すること」などである。
基本的に・・・「幕府より天皇が上に立つこと」を進言しているが・・・「幕府」を倒すとは言っていない。
坂本龍馬は慶応三年(1867年)に土佐藩主・山内豊範が将軍・徳川慶喜に提出した建白書の発案者だと言われる。
建白の内容は「徳川幕府が政権を明治天皇に返上すること・・・すなわち大政奉還の勧め」である。
薩長が同盟し、幕府に対し軍事行動(討幕)を計画していた時期であり・・・大政奉還により徳川家の存続を図ったとも推測されている。
つまり、「幕府」は討たないのである。
武市半平太の「建白書」は歴史的には荒唐無稽なものとなり、坂本龍馬の建白書は歴史となった。
だが・・・テロリストでもある二人の心に・・・共通する「平和的解決」を望む穏健な思想が隠されていることは・・・明らかなのである。
そして・・・龍馬の建白書によって・・・半平太の建白書の目指すところは・・・ほぼ実現するのである。
「大日本帝国」「税金徴収」「徴兵制」「大東亜共栄圏」「参勤交代の廃止」・・・是非はともかく・・・。
で、『サムライせんせい・第7回』(テレビ朝日201512042315~)原作・黒江S介、脚本・黒岩勉、演出・植田尚を見た。歴史の認識という問題はかなり根深い。まず・・・正史という問題がある。本当に正しいのかどうかわからないわけである。現代史でも同じ歴史的事件が国家によって解釈を異にするという問題があるし・・・同じ国民でさえ教養の差が滲みでるわけである。たとえば「坂本龍馬」は小説家・司馬遼太郎の小説でかなり高名になったと言われる。しかし・・・小説の内容が歴史的事実ではないわけである。だが・・・世の中には司馬遼太郎を一冊も読まずに一生を終える人もいて・・・どちらが・・・龍馬について大まかなことを知っているかと考えると・・・「竜馬がゆく」も読まないで「坂本龍馬が好き」と言われても困惑するのだなあ・・・。「あまちゃん」を一度もみないのにクドカンを語れるかという話である。
だから・・・「月形半平太」のモデルが武市半平太で・・・。
「月様、雨が・・・」
「春雨じゃ・・・濡れて行こう」
このやりとりが合言葉レベルでないと・・・本当は・・・このドラマを・・・楽しめないのではないかと危惧するのである。
まあ・・・余計なお世話だがな。
どれだけ「幻想の坂本龍馬」や「幻想の武市半平太」が妄想されようとも・・・本人たちは何も言わないのである。
そして・・・死後百五十年が経過すれば・・・本人たちを知るものも誰も何も言わないのだった。
警視庁の捜査官・氏家八尋(神尾佑)は楢崎こと坂本龍馬(神木隆之介)に対する事情聴取のために佐伯家を訪問する。
「奉行所のお役人が何故・・・」
「楢崎は・・・素晴らしいインターネットの世界で・・・平成建白書というホームページを公開しています」
「平成建白書・・・」
「自由と平等を手段を選ばずに勝ち取ろうという・・・過激な思想に感化され・・・信者が殺人事件を起こしているのです」
「・・・」
「信者は一万人いると言われています」
「しかし・・・龍馬は・・・人を唆して・・・悪事を成す男ではない・・・」
「龍馬?」
「拙者・・・坂本龍馬の遠縁にあたる武市半平太でござる」
「え」
温厚な佐伯先生(森本レオ)のとりなしで・・・凶悪犯を逮捕した侍風の男が半平太(錦戸亮)であることが説明され・・・氏家たちは一応、納得したらしい。
半平太は龍馬が嫌疑を避けて身を隠したと察するのだった。
龍馬のPCが開かれ・・・閲覧履歴から・・・龍馬が投資家の海道匠(忍成修吾)について調べていたことが明らかになる。
一方、赤城サチコ(黒島結菜)とつりあう男になるために一攫千金を狙う佐伯寅之助(藤井流星)は新しいビジネスとして「サムライ先生」を映画化することを宣言する。
神里村役場に勤務する晴香(比嘉愛未)は「またかよ・・・」と思うのだった。
しかし・・・サチコは「素晴らしいインターネットの世界で動画を公開する」というアドバイスで寅之助をフォローするのだった。
「はじめてのシャワー」「はじめての水洗トイレ」など・・・文明と未開人の遭遇ネタならいけるかもしれないと・・・晴香も納得である。
篠原理央(石田ニコル)が経営する「カーニバル」ではなんでもやる課の小見山課長(梶原善)は「選挙には金がかかる」という伏線を張るのだった。
理央は「楢崎が坂本龍馬と知っているのに知らない」という一般人の歴史認識不足問題を象徴する。
なにしろ・・・坂本龍馬が何者かを知らなくても人間は生きていけるのだ。
だが・・・キッドは・・・ある歴史番組を担当する放送作家が・・・司馬遼太郎を一冊も読んだことがないと豪語しているのを聞いて背筋が冷たくなったことがある。
なんていうか・・・最低限っていうものがあるからな・・・。
しかし・・・今は・・・司馬遼太郎を読まなくても・・・坂本龍馬の一生を検索できる時代なのだ。
ある意味・・・恐ろしいことだ。
佐伯先生に所望した藁で草鞋を編み旅支度を整えた半平太は・・・龍馬を捜すために江戸へ旅立つことを宣言する。
「まさか・・・徒歩で・・・」と呆れる晴香。
「神里村は上州の北・・・越後の湯沢温泉あたりにあるようなので前橋から高崎に出て、そこから中山道をたどれば江戸まで五日ほどで到着するでござろう」
「大丈夫ですか」
「江戸には剣術修行で逗留したことがある。上州で暮らしている晴香殿より・・・土地勘がござる」
「なんか・・・むかつく」
サチコは東京に圧倒される武市半平太を直感的に認知し・・・その「おいしさ」に目を輝かせるのだった。
「これは・・・ビッグ・チャンスだわ」
「そうね・・・まず・・・新幹線を体験してもらいましょう」
こうして・・・武市半平太と晴香・・・そして「おもしろ画像」撮影担当の寅之助は・・・上京するのだった。
サチコの予想通りに東京の変貌に腰を抜かす半平太だった。
「ペット愛好家に生類憐みの令」「外人観光客に夷戎」「ティッシュ配りに太股」「回転寿司の給油機に罠」を感じる半平太・・・。
晴香と寅之助の姉弟は半平太の珍プレーの連打にお腹がよじれるのだった。
晴香は・・・有給休暇なのか。
やがて・・・龍馬の東京での住居を訪ねた三人は大家の中村恵美子(左時枝)にめぐりあう。
そこで・・・上京した坂本龍馬の奮闘記を知るのである。
「私が転んだ時に助けてくれて・・・近頃じゃ・・・珍しいほど礼儀正しい人で・・・住む場所に困っているようだったので・・・部屋を貸してげたのよ・・・しばらくは図書館に通って勉強していたみたい・・・それから文章を書く仕事を始めて・・・出世払いでいいと言ったのにきちんとお家賃も払ってくれたの・・・最近、顔を見せないので心配していたのよ」
「この時代にも・・・人情は生きていたのだな」と感激する半平太。
しかし・・・寅之助は「坂本龍馬の後家殺しの手腕」に舌を巻くのだった・・・。
「そうそう・・・楢崎さんから・・・お侍さんが来たら渡して欲しいと頼まれていたものがある」
半平太はメモリーカードを手に入れた。
晴香がPCで中身を確認すると・・・それは「海道匠による政治献金の裏帳簿データ」だった。
晴香は中身の危険性を直感で感じ取り、メモリーカードを半平太に返却する。
半平太は・・・自分の恥ずかしい姿が悪用されることを直感で感じ取り、寅之助のムービーカメラを没収するのだった。
やがて・・・半平太は監視者の存在を感知し・・・佐伯姉弟と別行動することで敵をおびき出す。
「そなたたち・・・何者じゃ」
「楢崎から預かったものを渡せ・・・」
「断る」
現れた男たちが実力行使に出るが・・・半平太には太刀打ちできないのである。
「くそ・・・」
「お主たち・・・まさか・・・アザを・・・」
「あの男に会いたければ・・・案内しよう・・・」
男たちは龍馬を監禁していたのだった・・・。
海道の経営する闇カジノに案内された半平太はその退廃的なムードに眉をひそめる。
「あなたが・・・あの男の・・・」
禍々しいオーラを発散する海道・・・。
「武市半平太と申す」
「なるほど・・・どうですか・・・現代は・・・」
「お主・・・我らの正体を知っておるのか・・・」
「幕末から・・・タイムスリップしてきたんでしょう・・・彼はそう言っていた」
「・・・」
「あなたの時代には士農工商があった・・・今は象徴天皇制で・・・身分制度は崩壊している・・・しかし・・・世の中から階級が消えることなんてない・・・今は貧富の差がすべてです・・・金持ちは自由で平等・・・貧乏人は奴隷・・・それだけです・・・シンプルになったでしょう」
「シンプル・・・」
「単純明快になったんですよ・・・実例をお目にかけましょう」
海道は借金に追われる若者たちを賞金目当てに戦わせ・・・愉悦を感じるのだった。
「愚かな・・・」と半平太は勝者に説教を始める。
「一体・・・お主は何のために戦ったのじゃ」
「金のために決まっているだろう」
「それで・・・心が満ち足りたか」
「・・・」
「確かに金を集めるのも大切じゃ・・・しかし・・・その金で何を成すか・・・それを見失っていては・・・ただの金の亡者・・・」
「何・・・」と顔色を変える海道。
「お前たちには志がない・・・だから・・・心が腐っておる」
「もういい・・・どうせ・・・金が目当てだろう」
海道は拷問されて弱った龍馬を引きずり出す。
男の一人が拳銃を所持しているのを見て・・・半平太は龍馬を無事に連れ出すことが難しいのを悟る。
「勝った方に金をやる」
「武市さん・・・あれを渡して・・・金を受け取れ」
「龍馬・・・」
龍馬は闘士用の木刀を拾う。
阿吽の呼吸で応じる半平太。
「俺は・・・半分商人じゃ・・・金の使い方は知っている」
「何を申す」
しかし・・・龍馬の目に計略のあることを一瞬で見抜く半平太。
偽闘を演じるのだった。
半平太の一撃で倒れる龍馬。
男たちの一瞬の隙を縫い・・・龍馬は海道を人質にとることに成功する。
「お前たちは・・・本当の命のやりとりを知らぬ」
「・・・」
「我らは殺す時は殺すのじゃ」
「お前たち・・・手を出すな・・・」
エレベーターの中で海道は恫喝する。
「このまま・・・逃げられると思うのか」
「大丈夫です・・・これ・・・返しますから」
「・・・」
龍馬は・・・半平太の風呂敷包みから・・・メモリーカードを取り出し海道に渡す。
「あなたも騒ぎを起こして・・・得することはないでしょう」
二人は脱出に成功した。
東京タワーの見える工事中のビルで休憩する二人・・・。
「一体・・・お主は・・・何をしようとしているのじゃ・・・」
「武市さん・・・見たでしょう・・・今の世は汚れきっている」
「・・・」
「わしは・・・この世を洗濯してやるき・・・」
「洗濯じゃと」
「それが・・・わしの使命じゃと・・・思うちょるき・・・」
「しかし・・・あれを返してよかったのか・・・」
「大丈夫です・・・あれはこのカメラにはいっちょってた身代わりの品ですから」
「まさか・・・それには・・・絵が入っていたり・・・するのか」
「動く写真が入ってます」
「う」
半平太の恥ずかしい動画は流出した。
果たして・・・坂本龍馬は・・・平成の世をどのように洗濯するつもりなのか・・・。
汚れきっているからな・・・。
まあ・・・漂白するのは簡単だけどな。
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