忘れられない出産(綾野剛)生きるに値する命も値しない命もない(中村ゆり)優しくしてください(谷村美月)せめて母乳を(奥貫薫)体外受精成功(西田尚美)吸引します(松岡茉優)
もはや恒例の妊婦ゲストの乱打戦である。
まあ・・・周産期母子医療には妊娠期間という枠組があり・・・見せ所がそれぞれにあるわけである。
また・・・出産後のケアというのもこのドラマでは重要なポイントになっている。
悪魔が言うのもアレだが・・・「聖なるもの」が退行した世界では・・・「生命の価値」は「前提」であり、「生命の差異」を論ずることは「禁忌」である。
あらゆる「差異」は「個性」として尊重されるべきだが・・・そこには「苦悩」がつきまとう。
「人種差別」や「障害者差別」をする人々を「理解力が不足していると差別すること」があるわけである。
「理想の道」は遠い。そして「理想の形」は人それぞれである。
誰もが生きやすい世界を作ることは・・・けして容易ではない。
それでも・・・不屈の闘志で・・・「理想の世界」に挑む人間はいるのだ。
すべてがだんだんとよくなることを信じて・・・。
で、『コウノドリ・第8回』(TBSテレビ20151204PM10~)原作・鈴ノ木ユウ、脚本・坪田文、演出・土井裕泰を見た。重い問題とは・・・答えが見えにくいものである。生きていることが幸せでなければ増殖することを望めないという考え方と増殖することが幸せであるという考え方には相反する部分があるわけである。「生まれたいと望んだわけではない人」が子を産み育てることは最初から深刻な問題が含まれている。もちろん・・・五体満足で経済的な困窮も知らず・・・のほほんと生きている人には無縁の悩みかもしれない。しかし・・・確率的に襲ってくる何らかの障害に直面した時・・・人は慄く。助けを求めて差し出された手をとる人がいて欲しい・・・。心ある人々はささやかに願う・・・。
ペルソナ総合医療センターの周産期母子医療センターの産科医・鴻鳥サクラ(綾野剛)には忘れられない出産がある。
二年前のこと・・・川村忠志(永岡佑)・実咲(中村ゆり)夫妻の第一子は妊娠20週で「無脳症」と診断された。無脳症は神経学的奇形症で大脳半球が欠損または小塊に縮小している病状である。生命の維持に重要な役割を担う脳幹の発達も障害され発症した胎児の75%は死産となり出産した場合も生後一週間以上生存することは難しいとされている。
実咲の胎児は出産後の生存は不可能と診断された。
母体の健康のためにも早期中絶を提案するサクラ。
すでに・・・胎動している「わが子」を処分することに同意できない実咲は苦悩する。
「もしも・・・その子のために・・・君が死んだら・・・僕はその子をずっと怨んで生きて行くことになる」
夫の忠志の説得で中絶に同意する実咲だった。
「おめでとうございます・・・男の子です」
しかし・・・母体を出た新生児はすでに息絶えていた。
「死産」である。
「つばさ・・・つばさ・・・」
「・・・」
「名前をつけたんですよ・・・天国に上手に飛んでいけるように・・・」
「いい名前ですね」
母親は泣き、父親も泣いた。
四宮春樹(星野源)はサクラに声をかけた。
「終わったのか・・・」
「うん」
「そうか」
「・・・僕は無力だ」
「俺もだよ」
「・・・僕たちは無力だ」
「そうだな」
実咲は第二子を懐妊し・・・すでに臨月になっていた。
「お腹・・・さわってもいいですか」
「・・・ええ」
待合室で妊娠20週の妊婦である土屋マキ(谷村美月)が声をかけてきた。
「あ・・・動いた」
「・・・」
「私・・・初産なんです・・・お腹の子供が動くだけで・・・こんなに幸せな気持ちになるとは思いませんでした・・・あなたは・・・」
「私は・・・二人目です・・・」
実咲の担当医はサクラだった。
「順調ですね」
「先生・・・私はお腹で赤ちゃんが動く度にこわくなるんです」
「・・・」
「あの子のことが・・・どうしても乗り越えられない」
「・・・」
マキの担当は四宮春樹(星野源)だった。
「お腹の中の赤ちゃんは口唇口蓋裂だと思われます」
「え」
「先天性異常の一つで・・・おそらく口唇の一部に裂け目が現れる状態の口唇裂・・・場合によっては軟口蓋あるいは硬口蓋またはその両方が閉鎖しない状態の口蓋裂かもしれません。出産後に治療ができるので心配することはないですよ」
「ええ」
「次回の検診でくわしいことをお話しします」
「えええ」
ツンツンな四宮の対応にハラハラする助産師の小松留美子(吉田羊)だった・・・。
素晴らしいインターネットの世界で「口唇口蓋裂」を検索したマキはショックを受けるのだった。
「なんで・・・私の赤ちゃんが・・・こんなことに・・・」
待合室で泣きだすマキ。
居合わせた実咲はその背中をそっと撫でる。
夫の昌和(森岡龍)とともに再来院するマキだった。
「私はどうすれば・・・」
「お話した通りです」
「ショックで・・・何も覚えていません」
「赤ちゃんは順調です」
「でも・・・私にできることは・・・」
「治療は出産後にすることなので・・・今は特にありません」
「・・・」
見かねたサクラが土屋夫妻を引きとるのだった。
「私・・・何か悪いことをしたのでしょうか」
「お母さんには・・・問題ありません・・・これは統計的にはおよそ1/500~600の確率で誰にでも起ることなんです」
「・・・」
「評判のいい整形外科医を紹介しますので・・・一度、相談なされたらどうでしょうか」
「・・・お願いします」
サクラは整形外科医に連絡するが・・・すでに四宮が依頼済みだった。
新生児科の後期研修医・白川領(坂口健太郎)はお約束の暴言である。
「治療方法もあるのに・・・大袈裟なんですよね」
しかし・・・四宮は白川の足を踏みつける。
「いたい」
「これは・・・失礼」
「・・・」
不服そうな白川にサクラは告げる。
「妊婦さんはただでさえ・・・不安なものだ・・・ましてわが子が障害を抱えていると知った親がどんなに・・・不安になるか・・・それを大袈裟だなんて言うべきではない・・・と四宮先生は言いたかったんじゃないかな・・・」
「・・・」
新生児へのチューブ挿入の技量不足をベテランの新井恵美(山口紗弥加)に叱責された白川は研修医仲間の下屋加江(松岡茉優)に愚痴る。
「俺・・・この仕事向いてないのかもな・・・実家帰って・・・小児科継いだ方が」
「そうすれば~・・・いいね、逃げる所がある人は・・・赤ちゃんも・・・お母さんも・・・どんなにつらくても・・・病気や障害から逃げることはできないのよ・・・」
吸引技術を習得して無事出産に導いた下屋は成長していた。
「・・・」
未熟児を新生児集中治療管理室に預けている母親の森口亮子(奥貫薫)が母乳を届けにやってくる。
今橋医師(大森南朋)は赤ちゃんへの面会を奨めるが・・・心に葛藤を抱えた亮子は拒絶するのだった。
今橋は人形を使って挿管の練習をする白川に声をかける。
「君に読ませたい手紙がある」
「手紙・・・」
不安を抱えて検診に訪れたマキ・・・。
サクラに同席を申し込んだ白川は・・・一通の手紙を差し出す。
「これは・・・口唇口蓋裂の赤ちゃんを出産したお母さんから病院に届いた手紙です」
手紙には・・・告知された時のショックや・・・その後の経過が綴られ・・・そして治療された愛児の写真が添えられていた。
「同じ悩みを抱えた患者さんに読んでもらいたいと・・・書かれています」
写真を見たマキに・・・困難に立ち向かう勇気が生まれる。
「・・・治るんですね」
「はい」
「私・・・がんばります」
治療にはそれなりの困難がある。
サクラの奨めでマキは実家の両親に相談することに決めた。
「なんで・・・あなたの子が・・・そんなことに・・・」
マキの母親は顔を曇らせる。
「そんなことって・・・なによ・・・」
そこでマキの祖母が言葉を挟む。
「すごいねえ・・・今は・・・お腹の中の写真が撮れるんだねえ・・・マキの赤ちゃん、かわいいねえ」
4Dエコー画像を見て微笑む祖母。
マキの父親は若き日の黒川正宗ではなくてマキの夫である昌和に頭を下げる。
「子供のかわいくない親なんていません・・・どうか、マキのことを支えてやってください」
「お義父さん・・・」
ちなみに・・・「龍馬伝」の武市夫妻そろい踏みである。ついでに「サムライせんせい」の富子もいるのでダブル富子だ・・・わかる奴だけわかればいいので。
生まれてこれなかったものの・・・悲哀・・・生まれてくるものの・・・苦難。
生と死の狭間で・・・ベイビーはプレイをする。
お約束で鳴る呼び出し音。
実咲の陣痛が始ったのだ。
サクラは口紅を拭うのも忘れ・・・病院の女子職員たちの心をあらぬ妄想に導く。
「がんばれ・・・」
「先生・・・」
無事出産である。
「私・・・今・・・あの子がいてくれて・・・よかったと思うことができました・・・」
「そうですよ・・・つばさくんが・・・いたから・・・今のあなたがいるのです」
「はい」
マキは・・・四宮を訪ねた。
「先生・・・私言いたいことが三つあります」
「・・・」
「一つ・・・形成外科に行って説明を聞いてきました・・・二つ・・・私はこの子をきっと治してみせます・・・三つ・・・妊婦にはもっと優しくしてください」
「ふはっ」
小松のハニワにも笑わなかった四宮は密かにデレた・・・。
そして、不妊治療の専門医・岸田秀典(高橋洋)は患者の相沢美雪(西田尚美)に朗報を伝える・・・。
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