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2015年12月16日 (水)

正義とは復讐の別名です(松坂桃李)わが名はハルモニア(木村文乃)わが名はセイレーン(菜々緒)

美しいハーモニーも禍々しいサイレンも空気の振動にすぎない。

しかし、ハルモニアはオリンポスの神々から祝福され、セイレーンは処罰される。

運命の残酷さを示す・・・神々の娘たちのふたつの姿。

幸という文字はサチとも読めるし、ユキとも読める。

一卵性双生児の孤児姉妹の一人は猪熊家でユキとして育てられ、正義の心を持つ警察官となる。

一人は十和田家でサチとして育てられ、シリアルキラーとなった。

サチと瓜二つのユキを見て・・・認知症を発症しているサチの養母は「謝罪の言葉」を口にする。

サチの最初の標的は酒乱の養父である。

このことから・・・サチが養父による性的虐待を幼少時から受けていることが暗示されている。

人間として育てられたユキと・・・性的奴隷として飼われたサチ。

善悪の境界線で・・・二人の魂は反転していく。

サチは死の天使ワルキューレの一人、カラ(荒れ狂う戦意)となる。

サチは虐待されるものから虐待するものに変じたのだった。

結局、魔性のものは世界の本質から生じるのだ。

で、『サイレーン刑事×彼女×完全悪女・最終回(全9話)』(フジテレビ20151215PM10~)原作・山崎紗也夏、脚本・佐藤嗣麻子、演出・本橋圭太を見た。死闘の果てにシリアルキラー・橘カラ(菜々緒)は警視庁機動捜査隊員・猪熊夕貴(木村文乃)によって射殺された。しかし、何者かがカラに魅了されたデザイナー・渡公平(光石研)の別荘に放火し、売春婦のアイ(佐野ひなこ)とレナ(入山杏奈)の通報によって駆けつけた捜査官は脱出に成功した謹慎中の警察官・里見偲(松坂桃李)と猪熊を保護し、一体の焼死体を発見するにとどまった。逃亡中の天才・美容整形外科医・月本(要潤)の消息は不明である。

事件は決着した・・・かのように見えたが・・・色事師である里見は猪熊に対して違和感を覚える。

猪熊の性的技巧が・・・以前とは違っていたのである。

なにしろ、渡に大きく口を開かせただけで絶頂を・・・いや、何でもない。

自分が・・・意識不明であった一ヶ月の間・・・。

(なぜ・・・カラは・・・ユキを殺さなかったのか・・・)

恐ろしい可能性に気が付く里見・・・。

十和田幸は・・・橘カラに・・・整形手術によって変身した。

橘カラは・・・猪熊夕貴にも・・・変身できるのではないか。

もしも・・・猪熊夕貴が橘カラだとしたら・・・本物の夕貴はどこにいるのか。

そして・・・射殺された橘カラは誰だったのか。

(馬鹿な妄想だ・・・)

里見は沸き上がる疑惑をなんとか抑えようとする。

そこに・・・夕貴の養母・三樹(藤吉久美子)がやってくる。

「なんだか・・・あの子の様子がおかしいの・・・まるで別人のように感じる時がある。監禁のショックによるものか・・・とも考えたのだけれど・・・医師の処方していない・・・鎮痛剤を」

「鎮痛剤ですって・・・」

里見は・・・三樹に・・・夕貴の毛髪の採取を依頼する。

それから・・・自分の部屋を検索し・・・夕貴の毛髪を採取する里見だった。

二つの毛髪のDNA鑑定を依頼する里見・・・。

そして・・・夕貴にGPS発信器を仕込んだ合鍵を渡すのだった。

里見よりも回復の遅れている夕貴だったが・・・退院の日は迫っていた。

夕貴が本人であることを証明したい・・・里見。

DNA鑑定の結果・・・二つの毛髪は同一人物のものであることが高いことが判明する。

安堵しかけた里見に三樹が告げる。

「今・・・一緒に監禁されていたレナって子が来ているの・・・」

「レナが・・・」

「夕貴が・・・たこ焼きを食べているのよ」

「・・・なんですって」

たこアレルギーの夕貴は・・・たこを食べられないはずだった。

謎を解く手掛かりを求めて・・・里見は記憶をまさぐる。

「顔はそっくりだけど・・・なんだか違うような気がする」

その言葉を言ったのは十和田幸の同級生・・・良子(中島亜梨沙)だった。

「彼女の父親は自殺したけれど・・・彼女が殺したんじゃないかって噂があって・・・彼女・・・養女だっから・・・」

(養女・・・)

「私・・・養女だからね」

蘇る猪熊夕貴の言葉・・・。

サチとユキ・・・二人の養女・・・。

(まさか・・・)

里見は・・・橘カラの母校に向かう。

(なぜ・・・もっと早く・・・確認しなかったのだ)

里見は自分の無能さを呪う。

卒業アルバムに残る・・・十和田幸の顔は・・・猪熊夕貴にそっくりだった。

生活安全課の千歳弘子(山口紗弥加)は里見からの着信に気が付く。

「里見・・・また単独行動か」

「カラが生きている可能性があります」

「なんだって・・・」

里見から送信される十和田幸の卒業アルバムの画像。

「え」

「夕貴は養女でした・・・そして・・・十和田幸も・・・養護施設に問いあわせて・・・彼女が双子だったかどうかを・・・確認してください」

「・・・わかった・・・」

里見は証拠を求めて彷徨う・・・。

(あの橋の下・・・あれは・・・なにかの目印か・・・まさか墓標)

里見にGPS発信器を仕込んだ夕貴/カラ/幸は・・・追跡を開始していた。

張り巡らされた伏線を見逃したお茶の間のために回想しておこう。

カラの別荘を訪ねた夕貴は・・・カラが印象より小柄だったことに気が付く。

「あれ・・・カラさん・・・私と身長・・・そんなに変わらないのね」

「いつもは・・・ヒールの高い靴をはいているから・・・」

ちなみに・・・サチの回想シーンで養父(Velo武田)を殺害する中学生時代のサチを演じる原菜乃華は・・・ユキの中学生時代も演じている。

そして・・・夕貴も・・・カラも・・・格闘技を・・・。

夕貴と・・・カラ/幸は・・・双子の姉妹だったのである。

幸は・・・カラとなり・・・夕貴と再会する。

愛されて警察官となった・・・もう一人の自分に・・・虐げられてシリアルキラーとなった幸は執着する。

夕貴に注がれる幸の憧憬と羨望の眼差し・・・。

幸は・・・「失った何か」を見つけたのだった。

だが・・・河原の墓標の下に・・・白骨と眼鏡を発見した里見には・・・そのような洞察力はない。

ただ・・・消息不明の本物の夕貴の行方を案じ、焦燥にかられる。

そこへ・・・夕貴となった幸が現れる。

「里見くん・・・こんなところで何をしているの」

「カラは・・・ここにいた」

「・・・」

「夕貴はどこにいるんだ」

「馬鹿ね・・・私はここにいるじゃない」

しかし、幸は必殺のナイフを一閃する。

間一髪・・・里見は顔にかすり傷を受けたのみ。

「サチ・・・お前はカラの顔を奪った・・・今度はユキになりすまして・・・」

「・・・」

問答無用のサチの攻撃を防御する里見。

「ユキはどこだ」

「バカか・・・カラが埋まっている以上・・・ユキも埋まっているに決まっている」

「何・・・」

サチは里見の携帯に画像を送信す。

それは・・・埋葬されかけた猪熊夕貴の姿だった。

憤怒に燃える里見・・・。

「どうする・・・里見・・・芽生えた殺意を・・・お前は行動で示せるのか」

「お前を殺す」

「お前に人間が殺せるのか・・・人間には二種類あるんだぞ・・・」

「・・・」

「殺す人間と・・・殺される人間だ」

里見は攻防の果てにサチの首を絞めあげる。

そこへ・・・通りすがりのパトカーがやってくる。

女性を暴行中の不審者に対して威嚇射撃を行う制服警官たち。

里見は・・・仕方なく橋から飛翔する。

天使の特殊能力である。

普通の人間・・・(例)幸の父親・・・なら死亡するが・・・天使はふわりと着地できるのだ。

里見は暴行の現行犯として・・・県警に緊急手配された。

桜中央署刑事課長の安藤(船越英一郎)に公衆電話から通話する里見。

「猪熊は・・・殺害された可能性があります」

「・・・何を言っている」

「証拠をつかんだら・・・携帯から連絡します」

「待て・・・」

通話は終了した。

事情聴取を受けたサチはつぶやく・・・。

「里見・・・本気で殺す気だったな・・・」

幸の声は・・・夕貴そっくりである。

これはカラの顔を持っていた幸が・・・カラの声色を真似していたということである。

今や・・・幸は夕貴の声色を真似しているのだが・・・双子である以上、声質は本人とほぼ同じということになる。

県警から解放された幸を追跡する里見。

里見の殺意を悟った幸は逃亡のために・・・隠れ家を目指す。

幸の顔面に変化が生じていた。

月本を問いつめる幸・・・。

「これはどういうことだ・・・」

「皮膚が壊死している・・・」

「失敗したのか」

「僕は失敗なんかしないよ・・・君がやりすぎたんだ・・・大丈夫、時間があれば修復できる・・・僕の腕はゴッドハンドなんだから・・・」

そこへ・・・乱入する里見。

「なぜ・・・夕貴を殺した」

「夕貴の持つ・・・すべてを手にいれるためだ・・・」

「そんなことをしても・・・お前は夕貴にはなれない」

「夕貴を守ることもできなかった無能なお前に・・・何がわかるんだ」

羅刹天と化した里見は・・・幸の攻撃力を圧倒するのだった。

「そうか・・・これがお前の本気か」

「・・・」

幸は階上の隠し部屋へと逃げ込む。

階段を駆け上がる里見の前に・・・夕貴が姿を見せる。

幸は夕貴を身代わりとするつもりだった。

しかし・・・天使の嗅覚は監禁されて濃密となった夕貴の体臭を嗅ぎわける。

「夕貴・・・」

「里見くん・・・」

「死ね」

捨て身の攻撃によって階段を転げ落ちる里見と幸・・・。

しかし・・・夕貴の協力で里見は拳銃を入手する。

「お前は間違っている・・・自分のことしか考えない限り・・・お前は夕貴にはなれない」

「お前に・・・私の何がわかるというのだ・・・殺せ」

「里見くん」

里見は銃弾を床に撃ちこんだ。

幸は耳がキーンっとなった。

そこへ・・・里見が発信した携帯電話のGPS機能を追跡したチビデカこと速水刑事(北山宏光)が到着する。

「どけ・・・俺が手錠をかける」

「・・・」

「猪熊夕貴こと橘カラこと十和田幸・・・逮捕する」

「・・・」

「手柄立てちまえばこっちのもんだ」

速水刑事は連続殺人犯逮捕の功績により・・・警視庁捜査一課へのチケットを入手した。

現場に到着した猪熊文一(大杉漣)は娘とそっくりな犯人の姿に驚愕する。

里見の目にはカラに見える幸は・・・無言で連行される。

「里見くん・・・あなたを信じてあげられなくて・・・ごめんなさい」

「いいさ・・・君が生きていれば・・・それで・・・あぶなく人殺しになるところだったよ」

「一体・・・カラさんは・・・誰だったの」

「君の姉さんか・・・妹さ」

「え」

「おそらく・・・君が殺されなかったのは・・・彼女にとって・・・唯一の肉親だったからだ」

「それは・・・俺のセリフだろう・・・」

安藤警部は目を潤ませた。

「別荘の焼死体は・・・カラじゃなかったよ」

それは・・・カラにあこがれ・・・カラに洗脳され・・・整形手術によってカラに変身した格闘技愛好家のまひる(中別府葵)だった。

「それにしても・・・月本の・・・整形技術は凄いわね・・・」

千歳弘子はつぶやいた。

「そうだろう・・・だから・・・釈放してくれ・・・君を原節子にでも吉永小百合にでもしてみせる」

月本は連行された。

「養父・・・橘カラ・・・酒屋の店員・・・先輩キャバ嬢・・・連続殺人犯・・・整形マニア・・・その愛人の妻・・・そしてカラに整形したまひる・・・あの女・・・一人で・・・八人も殺してるのか」

「もっと・・・殺しているのかも」

刑事たちは震撼した。

里見と夕貴は・・・十和田幸の養母を訪ねた。

「サチ・・・」

認知症の養母はサチに土下座する。

「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい」

里見は心の中で幼いサチの悲鳴を聞く。

闇の中に木霊する無力なものの叫び。

世界を呪詛する嘆きの歌を・・・。

二人は公私両面に渡るパートナーとして機動捜査16号車に乗り込む。

「カラさんは・・・あなたのこと・・・好きだったんじゃないかな」

「え」

「双子って・・・同じものを好むって言うし」

「人間・・・遺伝だけでできているわけじゃないさ」

「だって・・・私・・・カラさんに勝てないのよ・・・その私に勝てないあなたが・・・どうして・・・カラさんに勝てたと思っているの」

「・・・」

「カラさん・・・いいえ・・・幸か・・・あの子は・・・私といる時・・・本当に楽しそうだった・・・そして・・・あなたには恋をしていたのよ」

「・・・推理ごっこか・・・」

「私はただそう思うだけ・・・私には分かる・・・だってあの子は私のたった一人の姉妹だもの」

スピーカーから事件発生の入電がある。

恋人たちはプライベートな会話を打ち切り・・・事件現場に急行した。

正義と復讐の女神は三人を静かに見守るのだった。

関連するキッドのブログ→第8話のレビュー

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