逃げる女(水野美紀)謎の女(仲里依紗)二児の母(安藤玉恵)消えた女(田畑智子)
冤罪被害者は・・・犠牲者である。
冤罪という可能性がありながら法治国家を運営する制度そのものの犠牲者である。
たまたま乗っていた飛行機が墜落するようなもので・・・不運な犠牲者なのである。
それで・・・冤罪被害者が納得できるかという話である。
しかし・・・無実の罪で死刑になったものには何もできないが・・・冤罪が晴れて釈放されたものにはいろいろなことができるのだ。
冤罪は新たな犯罪を生む可能性がある。
冤罪被害者が犯罪者となった時・・・それを裁くものは・・・天を仰ぐ。
人が人を裁くことの恐ろしさを想わずにはいられないからだ。
で、『逃げる女・第1回』(NHK総合20160109PM10~)脚本・鎌田敏夫、演出・黒崎博を見た。ベテランの脚本家で味はあるのだが・・・少し、技巧的過ぎる感じがする。制度的な問題と・・・人間ドラマの交差点が曖昧で・・・「第一次世界大戦」では数百万人、「第二次世界大戦」では数千万人の犠牲者があった・・・とか。「殺人」は「衝動的なもの」だとか。やや・・・言葉が甘いのである。まあ・・・そういう作風なので・・・仕方ないか。
女子刑務所・・・西脇梨江子(水野美紀)は殺人犯として服役中である。
番号で呼ばれること八年。
縫製工場でミシンを使用する日々に突然、終止符が打たれる。
真犯人が自首したことにより・・・無罪放免となったのである。
私物を変換され・・・懲役によって得た収入およそ24万円を支給され・・・釈放される。
迎えに現れたのは・・・無能な国選弁護人だけであった。
「できるだけのことはしたんだよ」
「・・・嘘つき」
三十代のほとんどを無実の罪によって刑務所で過ごした西脇梨江子の心の中は・・・窺い知れない。
しかし・・・殺人事件の冤罪で・・・マスメディアに対する記者会見が開かれないのはどういうことだ。
警察も司法当局も・・・腫れものあつかいだろうが・・・。
とにかく・・・放置されたような梨江子は・・・真っ先に職場へと向う。
そこは・・・基地の街、佐世保である。
そこに・・・梨江子が問い質したい相手がいるのだった。
大学院卒で臨床心理士の資格を持つ梨江子は児童養護施設の職員だった。入所児童が転落死して・・・容疑のかかった梨江子。
しかし、梨江子は児童の死亡時間に・・・外出中で・・・同僚の川瀬あずみ(田畑智子)と言葉をかわしていた。
絶対的なアリバイ・・・しかし、川瀬はそのアリバイを全否定したのだった。
「彼女とはあっていません・・・その日、私は外出しませんでした」
「嘘をつかないで・・・」
「被告は静粛に・・・」
親友だったあずみが・・・何故・・・八年間・・・梨江子は狂おしいほどに考え続けて来た。
しかし・・・あずみは不在だった。
施設長(リリィ)は「あの事件のあと・・・彼女は辞職しました・・・人を怨んだら・・・不幸になるわよ」と言葉を濁す。
「冤罪」であることは報道されていたが・・・「西脇梨江子が殺人犯」であったという記憶は人々の心に根付いている。
仕方なく・・・実家に戻った梨江子は・・・そこが空き地になっていることを知る。
近所の女性は・・・「ひ、人殺し」と言って家に逃げ込むのだった。
八年の間に・・・梨江子の家族は離散していた。
梨江子のもう一人の同僚(安藤玉恵)は結婚して二児の母になっていた。
そういう「時」を奪われた梨江子・・・。
そんな梨江子の前に事件の取調にあたった刑事である佐久間(遠藤憲一)が現れる。
「刑事補償金の手続きを・・・」
「・・・」
「私にできることは・・・」
「死ね」
梨江子の気持ちは荒んでいた。
若い刑事の安藤(賀来賢人)は佐久間に問い糺す。
「贖罪ですか・・・」
「女房に逃げられたんだよ・・・」
「え」
「その直後に事件が起きた・・・あの女のアリバイが崩れた時・・・俺は我を失っていた・・・女房に対する憎しみを・・・あの女にぶつけたんだ」
「クズじゃないですか」
「刑事だって・・・人間だから」
「軽いな・・・俺たちの旅レベルの苦悩の問題じゃないでしょう」
「・・・じゃ・・・どうすればいいんだよ」
「死ぬしかないんじゃないかな」
その頃・・・佐世保には謎の女(仲里依紗)が現れていた。
ヤクザに拾われた女は・・・拳銃を奪ってヤクザを殺す。
人を殺しても動じない女は・・・街へと彷徨い出る。
殺人事件の発生に・・・県警の刑事課長・天野(加藤雅也)は訓示する。
「不名誉な冤罪事件があったばかりである・・・捜査員一同、もう一度正義というものを胸に刻んでももらいたい」
「そこは・・・慎重に・・・じゃないのかよ」
ベテランの柏木刑事(でんでん)は毒づいた。
梨利子は再び施設を訪れる。
施設長は折れた。
消えたあずみの消息をもらしたのである。
ギラギラと燃えあがる梨江子の瞳・・・。
場末の街でちゃんぽんを食べる梨江子の前に謎の女が現れる。
「あんた・・・人を殺した?」
「・・・」
「人を殺しそうな目をしてる」
「・・・」
殺人者と冤罪被害者は見つめ合う・・・。
殺したのにつかまっていない女と殺していないのにつかまった女・・・。
二人の旅は交錯するらしい・・・。
視聴者ははたしてどこへ連れて行かれるのか・・・少し不安になります。
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